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特許7166751基準信号を用いた非接触電圧測定システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】基準信号を用いた非接触電圧測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/04 20060101AFI20221031BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
G01R15/04
G01R19/00 A
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017218390
(22)【出願日】2017-11-13
(65)【公開番号】P2018141769
(43)【公開日】2018-09-13
【審査請求日】2020-08-31
(31)【優先権主張番号】62/421,124
(32)【優先日】2016-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/413,025
(32)【優先日】2017-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509233459
【氏名又は名称】フルークコーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Fluke Corporation
【住所又は居所原語表記】6920 Seaway Boulevard, Everett, Washington 98203 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド・ステウエアー
(72)【発明者】
【氏名】ポール・アンドリュー・リングスラッド
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・ウォーロンズ
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ラッダ
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン・カール・シュミッツザー
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05473244(US,A)
【文献】特開平09-280806(JP,A)
【文献】特開昭59-204774(JP,A)
【文献】特開2002-071726(JP,A)
【文献】特開2002-365315(JP,A)
【文献】特開2010-256125(JP,A)
【文献】特開2016-003989(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0060300(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/04
G01R 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁導体における交流(AC)電圧を測定するためのシステムであって、
ハウジングと、
前記ハウジングに物理的に結合されており、前記絶縁導体に直接電気的に接触することなく前記絶縁導体の近傍に選択的に配置可能であり、かつ、前記絶縁導体に容量結合している導電センサと、
前記導電センサを少なくとも部分的に包囲し、前記導電センサに直接電気的に接触せず、かつ、前記導電センサを迷走電流から遮蔽するようにサイズ決め及び寸法決めされており、前記システムの内部電気アースに直接電気的に結合されている導電性の内部アースガードと、
前記ハウジングの少なくとも一部を包囲し、前記導電性の内部アースガードに直接電気的に接触せず、かつ、前記導電性の内部アースガードと外部アースとの間の電流を減少させるようにサイズ決め及び寸法決めされており、動作中、前記外部アースに容量結合している導電性の基準シールドと、
動作中、基準周波数を有する交流(AC)基準電圧を発生させ、かつ、前記導電性の内部アースガードと前記導電性の基準シールドとの間で電気的に結合されているコモンモード基準電圧源と、
前記導電センサに電気的に結合されており、かつ、動作中、前記導電センサに通電する電流を示すセンサ電流信号を生成する電流測定サブシステムと、
前記電流測定サブシステムに通信可能に連結された少なくとも1つのプロセッサであって、動作中、
前記電流測定サブシステムから前記センサ電流信号を受信し、
前記センサ電流信号、前記AC基準電圧、及び前記基準周波数に少なくとも部分的に基づいて、前記絶縁導体における前記AC電圧を算出する少なくとも1つのプロセッサと、を含む、システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つのプロセッサは、動作中、
前記受信したセンサ電流信号をデジタル信号に変換し、
前記デジタル信号を処理して、前記センサ電流信号の周波数領域表現を得る、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つのプロセッサは、動作中、高速フーリエ変換(FFT)を実施して、前記センサ電流信号の周波数領域表現を得る、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記コモンモード基準電圧源は、前記少なくとも1つのプロセッサによって実施されたFFTの窓と同位相となる前記AC基準電圧を発生させる、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記センサ電流信号をフィルタリングする少なくとも1つの電子フィルタを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記少なくとも1つのプロセッサは、動作中、前記センサ電流信号を処理して、前記絶縁導体における前記AC電圧の周波数を算出する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記導電性の基準シールドは、前記導電性の内部アースガードを少なくとも部分的に包囲する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記導電センサ及び前記導電性の内部アースガードはそれぞれ、非平面状の形状である、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記導電性の内部アースガードは、ガード開口を含む表面を含み、前記導電センサは、前記ガード開口を含む前記導電性の内部アースガードの前記表面に対して相対的に凹となっている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記少なくとも1つのプロセッサは、動作中、前記コモンモード基準電圧源が消されている場合は第1センサ電流信号を取得し、前記第1センサ電流信号に少なくとも部分的に基づいて、前記基準周波数の周波数値を算出し、前記コモンモード基準電圧源の前記基準周波数を前記周波数値に設定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
絶縁導体における交流(AC)電圧を測定するための方法であって、
導電性の内部アースガードとAC電圧測定システムの導電性の基準シールドとの間で電気的に結合されているコモンモード基準電圧源に、基準周波数を有する交流(AC)基準電圧を発生させることと、であって、
前記AC電圧測定システムにおいて、前記導電性の内部アースガードは、導電センサに直接電気的に接触することなく、前記導電センサを少なくとも部分的に包囲し、前記導電センサは、前記絶縁導体に直接電気的に接触することなく、前記絶縁導体の近傍に選択的に配置可能であり、前記導電性の基準シールドは、前記導電性の内部アースガードに直接電気的に接触することなく、外部アースに容量結合しており、
前記導電センサに電気的に結合されている電流測定サブシステムを介して、前記導電センサに通電する電流を示すセンサ電流信号を生成することと、
前記電流測定サブシステムからの前記センサ電流信号を、少なくとも1つのプロセッサによって受信することと、
前記センサ電流信号、前記AC基準電圧、及び前記基準周波数に少なくとも部分的に基づいて、前記絶縁導体における前記AC電圧を、前記少なくとも1つのプロセッサによって算出することと、を含む、方法。
【請求項12】
前記絶縁導体における前記AC電圧を算出することは、
前記少なくとも1つのプロセッサによって、前記センサ電流信号をデジタル信号に変換することと、
前記少なくとも1つのプロセッサによって、前記デジタル信号を処理して、前記センサ電流信号の周波数領域表現を得ることと、を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記デジタル信号を処理することは、高速フーリエ変換(FFT)を実施して、前記センサ電流信号の周波数領域表現を得ることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記絶縁導体における前記AC電圧を算出することは、前記センサ電流信号を電子的にフィルタリングすることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記絶縁導体における前記AC電圧を算出することは、前記センサ電流信号を処理して、前記絶縁導体における前記AC電圧の周波数を算出することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記コモンモード基準電圧源が消されている場合は、前記少なくとも1つのプロセッサによって第1センサ電流信号を取得することと、
前記第1センサ電流信号に少なくとも部分的に基づいて、前記基準周波数の周波数値を、前記少なくとも1つのプロセッサによって算出することと、
前記コモンモード基準電圧源の前記基準周波数を前記周波数値に、前記少なくとも1つのプロセッサによって設定することと、を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
絶縁導体における交流(AC)電圧を測定するためのシステムであって、
ハウジングと、
前記ハウジングに物理的に結合されており、前記絶縁導体に直接電気的に接触することなく前記絶縁導体の近傍に選択的に配置可能であり、かつ、前記絶縁導体に容量結合している導電センサと、
前記導電センサを少なくとも部分的に包囲し、かつ、前記導電センサに直接電気的に接触せず、前記システムの内部電気アースに直接電気的に結合されている導電性の内部アースガードと、
前記ハウジングの少なくとも一部を包囲し、かつ、前記導電性の内部アースガードに直接電気的に接触せず、動作中、外部アースに容量結合している導電性の基準シールドと、
動作中、基準周波数を有する交流(AC)基準電圧を発生させ、かつ、前記導電性の内部アースガードと前記導電性の基準シールドとの間で電気的に結合されているコモンモード基準電圧源と、
前記導電センサに電気的に結合されており、かつ、動作中、前記導電センサに通電する電流を検出する測定サブシステムと、
前記測定サブシステムに通信可能に連結された少なくとも1つのプロセッサであって、動作中、
前記測定サブシステムから、前記導電センサに通電する前記電流を示す信号を受信し、
前記信号、前記AC基準電圧、及び前記基準周波数に少なくとも部分的に基づいて、前記絶縁導体における前記AC電圧を算出する少なくとも1つのプロセッサと、を含む、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、電気特性の測定に関し、より詳細には、交流(AC)電圧の非接触測定に関する。
【背景技術】
【0002】
電圧計は、電気回路における電圧測定に使用される機器である。1種類以上の電気特性を測定する機器はマルチメータ又はデジタルマルチメータ(digital multimeter、DMM)と呼ばれ、概してサービス、トラブルシューティング、及び保守の用途に必要な多数のパラメータを測定するように動作する。かかるパラメータは、典型的には、交流(AC)電圧及び電流、直流(DC)電圧及び電流、並びに抵抗又は導通を含む。他のパラメータ(例えば、電力特性、周波数、容量、及び温度)が、特定の用途の要求に応じて測定されることもある。
【0003】
AC電圧を測定する従来の電圧計又はマルチメータを使用した場合、少なくとも1つの測定電極又はプローブの導体へのガルバニック(galvanic)接触を必要とする。このことにより、絶縁電線の絶縁体の一部を切除すること、あるいは測定用の端子を事前に提供することがしばしば必要となる。ガルバニック接触用の露出した線又は端子を必要とすることに加え、被覆が剥がれた線又は端子に電圧計のプローブを接触させる工程は、電気ショック又は感電死のリスクという理由で比較的危険であることがある。
【0004】
一般的には、非接触電圧検出器が、回路へのガルバニック接触を必要とせずに、交流(AC)電圧、典型的には高電圧の存在を検出するために使用される。電圧が検出されると、ライト、ブザー、又は振動モータなどの表示によって、ユーザは警告を受ける。しかし、かかる非接触電圧検出器は、AC電圧の有無を示すのみであり、AC電圧の実際の大きさ(例えば、RMS値)は示さない。
【0005】
そのため、テスト対象の回路へのガルバニック接触を必要とせずに、便利かつ正確な電圧測定を行うAC電圧測定システムが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-111087
【文献】実用新案公開平6-28748
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
絶縁導体における交流(AC)電圧を測定するためのシステムの概略としては、ハウジングと、ハウジングに物理的に結合されており、導体にガルバニック接触することなく絶縁導体の近傍に選択的に配置可能であり、かつ、絶縁導体に容量結合している導電センサと、導電センサを少なくとも部分的に包囲し、導電センサからガルバニック絶縁されており、かつ、導電センサを迷走電流から遮蔽するようにサイズ決め及び寸法決めされている導電性の内部アースガードと、ハウジングの少なくとも一部を包囲し、内部アースガードからガルバニック絶縁されており、かつ、内部アースガードと外部アースとの間の電流を減少させるようにサイズ決め及び寸法決めされている導電性の基準シールドと、動作中、基準周波数を有する交流(AC)基準電圧を発生させ、かつ、内部アースガードと導電性の基準シールドとの間で電気的に結合されているコモンモード基準電圧源と、導電センサに電気的に結合されており、かつ、動作中、導電センサに通電する電流を示すセンサ電流信号を生成する電流測定サブシステムと、電流測定サブシステムに通信可能に連結された少なくとも1つのプロセッサであって、動作中、電流測定サブシステムからセンサ電流信号を受信し、受信したセンサ電流信号、AC基準電圧、及び基準周波数に少なくとも部分的に基づいて、絶縁導体におけるAC電圧を算出する少なくとも1つのプロセッサとを含んでもよい。動作中、電流測定サブシステムは導電センサからの入力電流を受信してもよく、センサ電流信号は、導電センサから受信した入力電流を示す電圧信号を含んでもよい。電流測定サブシステムは、電流電圧変換器として動作し得る演算増幅器を含んでもよい。少なくとも1つのプロセッサは、動作中、受信したセンサ電流信号をデジタル信号に変換してもよく、デジタル信号を処理して、センサ電流信号の周波数領域表現を得てもよい。少なくとも1つのプロセッサは、高速フーリエ変換(fast Fourier transform、FFT)を実施して、センサ電流信号の周波数領域表現を得てもよい。コモンモード基準電圧源は、少なくとも1つのプロセッサによって実施されたFFTの窓と同位相となるAC基準電圧を発生させてもよい。少なくとも1つのプロセッサは、受信したセンサ電流信号をフィルタリングする少なくとも1つの電子フィルタを含んでもよい。少なくとも1つのプロセッサは、センサ電流信号を処理して絶縁導体の電流成分及び基準電流成分を算出してもよく、絶縁導体の電流成分は、絶縁導体における電圧によって導電センサを通電する電流を示し、基準電流成分は、コモンモード基準電圧源の電圧によって導電センサを通電する電流を示す。少なくとも1つのプロセッサは、センサ電流信号の算出された絶縁導体の電流成分の周波数を算出してもよい。少なくとも1つのプロセッサは、絶縁導体の電流成分、基準電流成分、絶縁導体の電流成分の周波数、基準周波数、及びAC基準電圧に基づいて、絶縁導体におけるAC電圧を算出してもよい。少なくとも1つのプロセッサは、センサ電流信号を処理して、絶縁導体における電圧の周波数を算出してもよい。コモンモード基準電圧源はデジタル-アナログ変換器(DAC)を含んでもよい。導電性の基準シールドは、導電性の内部アースガードを少なくとも部分的に包囲してもよい。導電センサ及び導電性の内部アースガードはそれぞれ、非平面状の形状であってもよい。導電性の基準シールドの少なくとも一部は、円筒状の形状であってもよい。導電性の内部アースガードは、ガード開口を含む表面を含んでもよく、導電センサは、ガード開口を含む内部アースガードの表面に対して相対的に凹となっていてもよい。少なくとも1つのプロセッサは、コモンモード基準電圧源が動作不能である場合は第1センサ電流信号を取得してもよく、コモンモード基準電圧源が動作可能である場合は第2センサ電流信号を取得してもよく、第1及び第2センサ電流信号、AC基準電圧、及び基準周波数に少なくとも部分的に基づいて、絶縁導体におけるAC電圧を算出してもよい。
【0008】
絶縁導体における交流(AC)電圧を測定するためのシステムを動作させる方法の概略としては、システムは、ハウジングと、ハウジングに物理的に結合されており、かつ、導体にガルバニック接触することなく絶縁導体の近傍に選択的に配置可能な導電センサと、導電センサを少なくとも部分的に包囲し、導電センサからガルバニック絶縁されており、かつ、導電センサを迷走電流から遮蔽するようにサイズ決め及び寸法決めされている導電性の内部アースガードと、ハウジングの少なくとも一部を包囲し、内部アースガードからガルバニック絶縁されており、かつ、内部アースガードと外部アースとの間の電流を減少させるようにサイズ決め及び寸法決めされている導電性の基準シールドとを含み、内部アースガードと導電性の基準シールドとの間で電気的に結合されているコモンモード基準電圧源に、基準周波数を有する交流(AC)基準電圧を発生させることと、導電センサに電気的に結合されている電流測定サブシステムを介して、導電センサに通電する電流を示すセンサ電流信号を生成することと、電流測定サブシステムからのセンサ電流信号を、少なくとも1つのプロセッサによって受信することと、受信したセンサ電流信号、AC基準電圧、及び基準周波数に少なくとも部分的に基づいて、絶縁導体におけるAC電圧を、少なくとも1つのプロセッサによって算出することとを含む。センサ電流信号を生成することは、導電センサから入力電流を受信することと、導電センサから受信した入力電流を示す電圧信号を生成することとを含んでもよい。センサ電流信号は、電流電圧変換器として動作する演算増幅器を用いて生成されてもよい。絶縁導体におけるAC電圧を算出することは、少なくとも1つのプロセッサによって、受信したセンサ電流信号をデジタル信号に変換することと、少なくとも1つのプロセッサによって、デジタル信号を処理して、センサ電流信号の周波数領域表現を得ることとを含んでもよい。デジタル信号を処理することは、高速フーリエ変換(FFT)を実施して、センサ電流信号の周波数領域表現を得ることを含んでもよい。絶縁導体におけるAC電圧を算出することは、受信したセンサ電流信号を電子的にフィルタリングすることを含んでもよい。絶縁導体におけるAC電圧を算出することは、センサ電流信号を処理して絶縁導体の電流成分及び基準電流成分を算出することを含んでもよく、絶縁導体の電流成分は、絶縁導体における電圧によって導電センサを通電する電流を示してもよく、基準電流成分は、コモンモード基準電圧源の電圧によって導電センサを通電する電流を示してもよい。絶縁導体におけるAC電圧を算出することは、センサ電流信号の算出された絶縁導体の電流成分の周波数を算出することを含んでもよい。絶縁導体におけるAC電圧は、絶縁導体の電流成分、基準電流成分、絶縁導体の電流成分の周波数、基準周波数、及びAC基準電圧に基づいて算出されてもよい。絶縁導体におけるAC電圧を算出することは、センサ電流信号を処理して、絶縁導体における電圧の周波数を算出することを含んでもよい。絶縁導体におけるAC電圧を算出することは、コモンモード基準電圧源が動作不能である場合は、少なくとも1つのプロセッサによって第1センサ電流信号を取得することと、コモンモード基準電圧源が動作可能である場合は、少なくとも1つのプロセッサによって第2センサ電流信号を取得することと、第1及び第2センサ電流信号、AC基準電圧、及び基準周波数に少なくとも部分的に基づいて、絶縁導体におけるAC電圧を、少なくとも1つのプロセッサによって算出することとを含んでもよい。
【0009】
絶縁導体における交流(AC)電圧を測定するためのシステムの概略としては、ハウジングと、ハウジングに物理的に結合されており、導体にガルバニック接触することなく絶縁導体の近傍に選択的に配置可能であり、かつ、絶縁導体に容量結合している導電センサと、導電センサを少なくとも部分的に包囲し、かつ、導電センサからガルバニック絶縁されている導電性の内部アースガードと、ハウジングの少なくとも一部を包囲し、かつ、内部アースガードからガルバニック絶縁されている導電性の基準シールドと、動作中、基準周波数を有する交流(AC)基準電圧を発生させ、かつ、内部アースガードと導電性の基準シールドとの間で電気的に結合されているコモンモード基準電圧源と、導電センサに電気的に結合されており、かつ、動作中、導電センサに通電する電流を検出する測定サブシステムと、測定サブシステムに通信可能に連結された少なくとも1つのプロセッサであって、動作中、測定サブシステムから、検出した電流を示す信号を受信し、受信した信号、AC基準電圧、及び基準周波数に少なくとも部分的に基づいて、絶縁導体におけるAC電圧を算出する少なくとも1つのプロセッサとを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図面では、同一の参照番号は、類似の要素又は作用を示す。図面における構成要素のサイズ及び相対位置は、必ずしも尺度どおりに描かれていない。例えば、種々の要素及び角度は、必ずしも尺度どおりに描かれておらず、これらの要素の一部は、図を見やすくするために任意に拡大されたり配置されたりしていることがある。更に、描かれている要素の特定の形状については、特定の要素の実際の形状に関する情報を伝えることを必ずしも意図しておらず、図中で認識しやすくするためだけに選択されたものであり得る。
図1A図1Aは、図示された一実施態様による、絶縁線へのガルバニック接触を必要とせずに、絶縁線内に存在するAC電圧を測定するために、オペレータが非接触電圧測定システムを用いることができる環境の絵図である。
図1B図1Bは、図示された一実施態様による、絶縁線と非接触電圧測定システムの導電センサとの間に形成された結合容量と、絶縁導体の電流成分と、非接触電圧測定システムとオペレータとの間の人体容量とを示す、図1Aの非接触電圧測定システムの上面図である。
図2図2は、図示された一実施態様による、非接触電圧測定システムの種々の内部構成部品の概略図である。
図3図3は、図示された一実施態様による、非接触電圧測定システムの種々の信号処理構成部品を示すブロック図である。
図4図4は、図示された一実施態様による、高速フーリエ変換(FFT)を実施する非接触電圧測定システムの概略図である。
図5図5は、信号と基準信号とを分離する別の例による、アナログ電子フィルタを実施する非接触電圧測定システムのブロック図である。
図6図6は、図示された一実施態様による、非接触電圧測定システムの概略回路図である。
図7A図7Aは、図示された一実施態様による、種々の漏れや浮遊容量を示す、非接触電圧測定システムの概略図である。
図7B図7Bは、図示された一実施態様による、種々の漏れや浮遊容量を示し、かつ、基準電圧信号に対する補償を含む、非接触電圧測定システムの概略図である。
図7C図7Cは、図示された一実施態様による、図7Bのシステムのための例示的なセンサ構成を示す。
図8図8は、図示された一実施態様による、非接触電圧測定システムのセンサと外部アースとの間の容量を示す、非接触電圧測定システムの概略回路図である。
図9A図9Aは、図示された一実施態様による、非接触電圧測定システムの内部アースガードと外部アースとの間の容量を示す、非接触電圧測定システムの概略回路図である。
図9B図9Bは、図示された一実施態様による、非接触電圧測定システムの内部アースガードと外部アースとの間の容量を示す、非接触電圧測定システムの概略回路図である。
図10図10は、図示された一実施態様による、非接触電圧測定システムのセンサ及び内部アースガード組立体の斜視図である。
図11図11は、図示された一実施態様による、非接触電圧測定システムの「U」形又は「V」形センサの前端の断面図である。
図12図12は、図示された一実施態様による、非接触電圧測定システムの円弧状センサ前端の正面図である。
図13図13は、図示された一実施態様による、非接触電圧測定システムの円筒状センサ前端の斜視図である。
図14A図14Aは、図示された一実施態様による、内部アースガードのガードリングクランプが閉位置にある場合の、非接触電圧測定システムのセンサ前端の上面図である。
図14B図14Bは、図示された一実施態様による、内部アースガードのガードリングクランプが開位置にある場合の、図14Aに示す非接触電圧測定システムの前端の上面図である。
図15図15は、図示された一実施態様による、内部アースガードのガードリングクランプを取り外した状態の、図14Aに示すセンサ前端の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明では、本開示の種々の実施態様を完全に理解するために、特定の詳細を順を追って明らかにする。しかし、当業者であれば、これらの特定の詳細のうちの1以上を欠いても、あるいは他の方法、構成部品、材料などを用いても、実施態様が実現可能であることを理解するであろう。他の例では、実施態様の説明が不必要に不明確になることを回避するため、コンピュータシステム、サーバコンピュータ、及び/又は通信ネットワークに関連する既知の構造についての詳細は、図示したり説明されたりしていない。
【0012】
その内容が特別に必要としない限り、明細書及びそれに続く請求項において、「含む(comprising)」という単語は「含む(including)」と同義であり、包括的又はオープンエンドな単語である(すなわち、記載されていない追加的な要素又は方法の動作を除外しない)。
【0013】
本明細書全体の「一実施態様」又は「実施態様」について言及したことは、かかる実施態様に関して記述された特定の特徴部、構造体又は特性が、少なくとも1つの実施態様に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な箇所におけるフレーズ「一実施態様では」又は「実施態様では」とは、必ずしも全てが同一の実施態様に対する言及ではない。更に、特定の特徴部、構造体又は特性は、1つ以上の実施態様において任意の好適な方法で組み合わせることができる。
【0014】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用するとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。また、用語「又は/あるいは/もしくは(or)」は、概して、その内容について別段の明確な指示がない限り、「及び/又は(and/or)」の意味を含むものとして用いられている。
【0015】
本明細書中の見出し及び本開示の要約は、便宜上用いられているだけであり、本実施態様の範囲又は意味を説明するものではない。
【0016】
本開示の1つ以上の実施態様は、導体とテスト電極又はプローブとの間のガルバニック接続を必要とせずに、絶縁された又は裸の(blank)絶縁されていない導体(例えば、絶縁線)の交流(AC)電圧を測定するためのシステム及び方法に関する。概して、アースに対する絶縁導体におけるAC電圧信号を容量センサを使用して測定する、非ガルバニック接触(又は「非接触」)電圧測定システムを提供する。ガルバニック接触を必要としないかかるシステムは、本明細書中では「非接触」と称される。本明細書で使用するとき、「電気的に結合」とは、別段の記載がない限り、直接的な電気的結合及び間接的な電気的結合の両方を含む。
【0017】
図1Aは、非接触電圧測定システム102と絶縁線106との間のガルバニック接触を必要とせずに、絶縁線106内に存在するAC電圧を測定するために、オペレータ104が本開示の非接触電圧測定システムを用いることができる環境100の絵図である。図1Bは、動作中の非接触電圧測定システムの種々の電気特性を示す、図1Aの非接触電圧測定システム102の上面図である。非接触電圧測定システム102は、グリップ部又はグリップ端110と、グリップ部に対向するプローブ部又はプローブ端112(本明細書においては前端とも呼ばれる)とを含むハウジング又は本体108を含む。ハウジング108はまた、非接触電圧測定システム102とのユーザインタラクションを容易にするユーザインターフェース114を含んでもよい。ユーザインターフェース114は、任意の数の入力(例えば、ボタン、ダイヤル、スイッチ、タッチセンサ)及び任意の数の出力(例えば、ディスプレイ、LED、スピーカ、ブザー)を含んでもよい。非接触電圧測定システム102はまた、1つ以上の有線及び/又は無線通信インターフェース(例えば、USB、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標))を含んでもよい。
【0018】
少なくともいくつかの実施態様では、図1Bにおいて最もよく示されるように、プローブ部112は、第1延在部118及び第2延在部120によって画定される凹部116を含んでもよい。凹部116は絶縁線106(図1A参照)を受ける。絶縁線106は、導体122と、導体122を包囲する絶縁体124とを含む。凹部116はセンサ又は電極126を含んでもよい。かかるセンサ又は電極は、絶縁線が非接触電圧測定システム102の凹部116内に配置されたときに、絶縁線106の絶縁体124の近傍に位置する。明確さのために図示されていないが、センサと他の物体との間の物理的かつ電気的接触を防止するために、センサ126はハウジング108の内側に配置されてもよい。
【0019】
図1Aに示すように、使用中、オペレータ104はハウジング108のグリップ部110を把持して、プローブ部112を絶縁線106の近傍に配置してもよい。それによって、非接触電圧測定システム102は、接地(又は別の基準ノード)に対する、線内に存在するAC電圧を正確に測定することができる。プローブ端112は凹部116を有するものとして図示されているが、他の実施態様では、プローブ部112はそれとは異なるように構成されていてもよい。例えば、少なくともいくつかの実施態様では、プローブ部112は、センサを含む選択的に移動可能なクランプ、フック、平ら又は円弧状の表面、あるいは、非接触電圧測定システム102のセンサを絶縁線106の近傍に配置することができる他のタイプの界面を含んでもよい。種々のプローブ部及びセンサの例を、図10図15を参照して以下で説明する。
【0020】
接地/アースへの基準としてオペレータの身体が作用するのは、いくつかの実施態様においてのみであることがある。本明細書で説明する非接触測定機能は、接地に対する測定を行うだけの用途に限定されない。外部基準が、任意の他の電位に容量結合されていてもよい。例えば、外部基準が三相系統の別の相に容量結合されている場合、相間電圧が測定される。概して、本明細書で説明される概念は、基準電圧及び他の任意の基準電位に接続された人体容量結合のみを用いた接地への言及に限定されない。
【0021】
後で更に説明するように、少なくともいくつかの実施態様では、非接触電圧測定システム102は、AC電圧測定中のオペレータ104とアース128との間の人体容量(C)を利用することができる。アースという用語はノード128に対して使用されるが、かかるノードは必ずしも接地/アースでなくてもよく、容量結合によって他の任意の基準電位にガルバニック絶縁された状態で接続されていることもあり得る。
【0022】
AC電圧を測定するために非接触電圧測定システム102によって用いられる特定のシステム及び方法について、図2図15を参照して以下で説明する。
【0023】
図2は、図1A及び図1Bにも示されている、非接触電圧測定システム102の種々の内部構成要素の概略図である。この例では、非接触電圧測定システム102の導電センサ126は、略「V形」であり、テスト対象の絶縁線106の近傍に配置され、かつ、絶縁線106の導体122に容量結合されており、それによって、センサ結合コンデンサ(C)を形成している。非接触電圧測定システム102を操作するオペレータ104は、アースに対して人体容量(C)を有している。このため、図1B及び図2に示すように、線122におけるAC電圧信号(V)が、絶縁導体の電流要素又は「信号電流」(I)を、直列に接続されている結合コンデンサ(C)及び人体容量(C)に対して発生させる。いくつかの実施態様では、人体容量(C)はまた、アース又は任意の他の基準電位に対して容量を発生させる、ガルバニック絶縁されたテストリードも含み得る。
【0024】
測定対象の線122におけるAC電圧(V)は、外部アース128(例えば、中性線)に接続している。非接触電圧測定システム102自体もまた、オペレータ104(図1)が手で非接触電圧測定システムを保持しているときに、主に人体容量(C)からなるアース128に対する容量を有している。容量C及びCの両方によって導体ループが形成され、かかるループ内の電圧によって信号電流(I)が発生する。信号電流(I)は、導電センサ126に容量結合したAC電圧信号(V)によって発生し、非接触電圧測定システムのハウジング108とアース128に対する人体コンデンサ(C)とを通って外部アース128へとループバックする。電流信号(I)は、非接触電圧測定システム102の導電センサ126とテスト対象の絶縁線106との間の距離、導電センサ126の特定の形状、及び導体122のサイズ及び電圧レベル(V)に依存する。
【0025】
信号電流(I)に直接影響する距離のバラツキ及びその結果生じる結合コンデンサ(C)のバラツキを補償するために、非接触電圧測定システム102は、基準周波数(f)を有するAC基準電圧(V)を発生させるコモンモード基準電圧源130を含む。
【0026】
迷走電流を低減又は回避するために、非接触電圧測定システム102の少なくとも一部は、導電性の内部アースガード又はスクリーン132によって包囲されていてもよい。それによって、絶縁線106の導体122と共に結合コンデンサ(C)を形成する導電センサ126を、大部分の電流が通過するようにする。内部アースガード132は任意の好適な導電性材料(例えば、銅)から形成することができ、中実であってもよく(例えば、フォイル)、1つ以上の開口を有していてもよい(例えば、メッシュ)。
【0027】
更に、内部アースガード132と外部アース128との間の電流を回避するために、非接触電圧測定システム102は、導電性の基準シールド134を含む。基準シールド134は任意の好適な導電性材料(例えば、銅)から形成することができ、中実であってもよく(例えば、フォイル)、1つ以上の開口を有していてもよい(例えば、メッシュ)。コモンモード基準電圧源130は、基準シールド134と内部アースガード132との間で電気的に結合されており、それによって、非接触電圧測定システム102用の基準電圧(V)及び基準周波数(f)を有するコモンモード電圧が生成される。かかるAC基準電圧(V)は、追加の基準電流(I)を、結合コンデンサ(C)及び人体コンデンサ(C)を通過するように駆動する。
【0028】
導電センサ126の少なくとも一部を包囲する内部アースガード132は、導電センサ126と基準シールド134との間で基準電流(I)の望ましくないオフセットを生じさせるAC基準電圧(V)の直接的な影響から、導電センサを保護する。上述したように、内部アースガード132は、非接触電圧測定システム102用の内部電気アース138である。少なくともいくつかの実施態様では、内部アースガード132はまた、非接触電圧測定システム102の電子部品の一部又は全てを包囲して、AC基準電圧(V)が電子部品に結合するのを回避する。
【0029】
上述したように、基準シールド134は、基準信号を入力AC電圧信号(V)に注入するために用いられる。また、2つ目の機能として、接地アース128容量に対するガード132を最小にする。少なくともいくつかの実施態様では、基準シールド134は、非接触電圧測定システム102のハウジング108の一部又は全てを包囲する。かかる実施態様では、電子部品の一部又は全ては、導電センサ126と絶縁線106内の導体122との間で基準電流(I)も生成する基準コモンモード信号を参照する。少なくともいくつかの実施態様では、基準シールド134の間隙のみが、非接触電圧測定システム102の動作中に導電センサ126を絶縁線106の近傍に配置させるための、導電センサ用の開口であってもよい。
【0030】
内部アースガード132及び基準シールド134は、非接触電圧測定システム102のハウジング108(図1A及び図1B参照)の周りに二層スクリーンを提供してもよい。基準シールド134はハウジング108の外面上に配置されてもよく、内部アースガード132は内部シールド又はガードとして機能してもよい。導電センサ126は、ガード132によって基準シールド134から遮蔽されている。その結果、導電センサ126とテスト対象の導体122との間の結合コンデンサ(C)によって、任意の基準電流の流れが生じる。
【0031】
センサ126を包囲するガード132はまた、センサの近くにある隣接線の漂遊的な影響も低減する。
【0032】
図2に示すように、非接触電圧測定システム102は、反転電流電圧変換器として動作する入力増幅器136を含んでもよい。入力増幅器136は、非接触電圧測定システム102の内部アース138として機能する内部アースガード132に電気的に結合した非反転端末を有している。入力増幅器136の反転端子は導電センサ126に電気的に結合していてもよい。フィードバック回路137(例えば、フィードバック抵抗器)を入力増幅器136の反転端子と出力端子との間に結合することもでき、それによって、フィードバック及び適切なゲインを提供して入力信号の調整を行い得る。
【0033】
入力増幅器136は、導電センサ126から信号電流(I)及び基準電流(I)を受信して、受信した電流を、入力増幅器の出力端末において、導電センサの電流を示すセンサ電流電圧信号に変換する。センサ電流電圧信号は、例えば、アナログ電圧であってもよい。アナログ電圧は信号処理モジュール140へと送られ得る。このモジュールは、後で更に述べるように、センサ電流電圧信号を処理して絶縁線106の導体122におけるAC電圧(V)を算出する。信号処理モジュール140は、デジタル及び/又はアナログ回路の任意の組み合わせを含んでもよい。
【0034】
非接触電圧測定システム102はまた、算出したAC電圧(V)を提示するために、あるいは、インターフェースによって非接触電圧測定システムのオペレータ104と通信するために、信号処理モジュール140に通信可能に連結されたユーザインターフェース142(例えば、ディスプレイ)を含み得る。
【0035】
図3は、非接触電圧測定システムの種々の信号処理構成部品を示す、非接触電圧測定システム300のブロック図である。図4は、図3の非接触電圧測定システム300の詳細図である。
【0036】
非接触電圧測定システム300は、上述した非接触電圧測定システム102と類似又は同一であり得る。したがって、類似又は同一の構成部品には、同じ参照番号が付与されている。図示されているように、入力増幅器136は、導電センサ126からの入力電流(I+I)を、かかる入力電流を示すセンサ電流電圧信号へと変換する。そして、センサ電流電圧信号は、アナログ-デジタル変換器(analog-to-digital converter、ADC)302を用いてデジタル変換される。
【0037】
線122におけるAC電圧(V)は、式(1)によってAC基準電圧(V)に関連付けられる:
このとき、(I)は導体122におけるAC電圧(V)によって導電センサ126を流れる信号電流であり、(I)はAC基準電圧(V)によって導電センサ126を流れる基準電流であり、(f)は測定中のAC電圧(V)の周波数であり、(f)は基準AC電圧(V)の周波数である。
【0038】
AC電圧(V)に関連するインデックス「O」を伴う信号は、コモンモード基準電圧源130に関連するインデックス「R」を伴う信号とは異なる特性を有する。図4の実施態様では、高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズム306を実施する回路などのデジタル処理を用いて、信号の大きさを分離することができる。後述する図5の実施態様では、「O」信号特性(例えば、大きさ、周波数)を「R」信号特性から分離するために、アナログ電子フィルタを用いることもできる。
【0039】
電流(I)及び(I)は、周波数(f)及び(f)にそれぞれ依存する。これは、結合コンデンサ(C)によるものである。結合コンデンサ(C)及び人体容量(C)を通って流れる電流は周波数に比例する。そのため、上記の式(1)に用いられる信号周波数(f)に対する基準周波数(f)の比率を算出するためには、テスト対象の導体122におけるAC電圧(V)の周波数(f)を測定する必要がある。あるいは、基準周波数はシステム自体が発生させるものであるため、既知である。
【0040】
入力電流(I+I)が入力増幅器136によって調整されてADC 302によってデジタル化された後、デジタルのセンサ電流電圧信号をFFT 306を用いて周波数領域で表現することによって、かかる信号の周波数成分を算出することができる。周波数(f)及び(f)の両方が測定された場合、周波数ビンを算出して、FFT 306からの電流(I)及び(I)の基本の大きさを計算してもよい。
【0041】
次に、ブロック308によって示すように、電流(I)及び(I)の基本高調波の比率(それぞれI及びIと示す)は、算出した周波数(f)及び(f)によってそれぞれ補正され得る。そして、この要素を用いて、線122における高調波(V)を加算することにより、測定した元の基本電圧又はRMS電圧を計算してもよい。これは、ディスプレイ312上でユーザに対して提示されてもよい。
【0042】
結合コンデンサ(C)は、概して、絶縁導体106と導電センサ126との間の距離、並びに、センサ126の特定の形状及び寸法に応じて、例えば約0.02pF~1pFの範囲内の容量値を有し得る。人体容量(C)は、例えば、約20pF~200pFの容量値を有し得る。
【0043】
上記の式(1)から、コモンモード基準電圧源130が発生させるAC基準電圧(V)は、信号電流(I)及び基準電流(I)が同様の電流の大きさとなるようにするために、導体122におけるAC電圧(V)と同じ範囲内である必要はないことが理解できる。基準周波数(f)を比較的高く選択することにより、AC基準電圧(V)を比較的低くすることができる(例えば、5V未満)。一例では、基準周波数(f)として、信号周波数(f)60Hzを有する典型的な120VRMS AC電圧(V)の50倍高い、3kHzを選択することができる。このような場合、信号電流(I)と同じ基準電流(I)を発生させるために、AC基準電圧(V)として選択できるのは2.4V(すなわち、120V÷50)のみである場合がある。概して、基準周波数(f)として信号周波数(f)のN倍を設定することによって、AC基準電圧(V)の値を線122におけるAC電圧(V)の(1/N)倍とすることができ、互いに同じ範囲内の電流(I)及び(I)を生じさせ、IとIに対して類似の不確実性が得られる。
【0044】
任意の好適な信号生成器を使用して、基準周波数(f)を有するAC基準電圧(V)を発生させることができる。図3に示す例では、シグマ-デルタ・デジタル-アナログ変換器(Sigma-Delta digital-to-analog converter、Σ-Δ DAC)310が用いられている。Σ-Δ DAC 310は、ビットストリームから、定義済みの基準周波数(f)及びAC基準電圧(V)を用いて波形(例えば、正弦波形)信号を作成する。少なくともいくつかの実施態様では、Σ-Δ DAC 310は、FFT 306の窓と同位相となる波形を発生させて、ジッタを低減してもよい。
【0045】
少なくともいくつかの実施態様では、ADC 302は、14ビットの解像度を有していてもよい。動作中、ADC 302は、入力増幅器136からの出力を、公称50Hzの入力信号に対してサンプリング周波数10.24kHzでサンプリングして、FFT 306による処理に備えて100msで2個のサンプル(1024)(FFT306のために10Hzのビン)を提供してもよい。60Hzの入力信号に対しては、サンプリング周波数は、例えば12.28kHzであってもよい。ADC 302のサンプリング周波数は、基準周波数(f)の全サイクル数に同期化されていてもよい。入力信号周波数は、例えば、40~70Hzの範囲内であってもよい。AC電圧(V)の測定した周波数に応じて、AC電圧(V)のビンをFFT 306を用いて算出してもよい。また、ハニング窓関数を用いて更に計算を行い、集約間隔内に取り込まれた不完全な信号サイクルによって生じる位相シフトジッタを抑制してもよい。
【0046】
一例では、コモンモード基準電圧源130が、2419Hzの基準周波数(f)を有するAC基準電圧(V)を発生させる。この周波数は、60Hzの信号については40番目の高調波と41番目の高調波の間にあり、50Hzの信号については48番目の高調波と49番目の高調波との間にある。期待されるAC電圧(V)の高調波でない基準周波数(f)を有するAC基準電圧(V)を提供することにより、AC電圧(V)は、より基準電流(I)の測定に影響しにくくなる。
【0047】
少なくともいくつかの実施態様では、コモンモード基準電圧源130の基準周波数(f)として、テスト対象の導体122におけるAC電圧(V)の高調波によって最も影響を受けにくい周波数が選択される。例を挙げると、基準電流(I)が限界を超えるとコモンモード基準電圧源130はオフになってもよい。それによって、導電センサ126がテスト対象の導体122に接近していることを示してもよい。測定(例えば、100ms測定)をコモンモード基準電圧源130がオフの状態で行って、候補の基準周波数の数(例えば、3つ、5つ)だけ信号高調波を検出してもよい。そして、AC電圧(V)における信号高調波の大きさを、候補の基準周波数の数だけ算出して、候補の基準周波数のうちのいずれがAC電圧(V)の信号高調波によって最も影響を受けにくいかを識別してもよい。そして、識別された候補の基準周波数を、基準周波数(f)として設定してもよい。このようにして基準周波数を切り替えることにより、信号スペクトル内のあり得る基準周波数成分の影響(かかる影響は、測定した基準信号を増加させたり精度を低下させたりすることがあり、それによって不安定な結果をもたらすことがある)を回避又は低減することができる。
【0048】
図5は、電子フィルタを実施する非接触電圧測定システムの信号処理部500のブロック図である。信号処理部500は、電流測定サブシステム(例えば、入力増幅器136)からの導電センサ126の電流(I+I)に比例するセンサ電流電圧信号を受信し得る。
【0049】
上述したように、信号電流(I)は、基準電流(I)とは異なる周波数を有する。信号電流(I)を基準電流(I)から分離するために、信号処理部500は、信号電流(I)は通過させるが基準電流(I)は遮断するように動作する第1フィルタ502を含み得る。フィルタリングされた信号は、その後、第1整流器504によって整流され、第1 ADC 506によってデジタル化され得る。デジタル化された信号は、上述したように、好適なプロセッサ508に供給され、計算に用いられ得る。同様に、基準電流(I)を信号電流(I)から分離するために、信号処理部500は、基準電流(I)は通過させるが信号電流(I)は遮断するように動作する第2フィルタ510を含み得る。フィルタリングされた信号は、その後、第2整流器512によって整流され、第2 ADC 514によってデジタル化され得る。デジタル化された信号は、好適なプロセッサ508に供給され、計算に用いられ得る。第1フィルタ502及び第2フィルタ510は任意の好適なアナログフィルタであってもよく、また、多数の個別部品(例えば、コンデンサ、インダクタ)をそれぞれ含んでもよい。
【0050】
図6は、上述の非接触電圧測定システムのうちのいずれかなどの非接触電圧測定システムを部分的に示す概略回路図であり、コモンモード基準電圧源130、人体容量(C)、結合コンデンサ(C)、線122、外部アース128、及び内部アース138によって形成されるループを示している。
【0051】
図7Aは、種々の漏れや浮遊容量を示す、非接触電圧測定システム102の概略図である。概して、システム(例えば、センサ126)から見られる様々な浮遊コンデンサの影響の除去は、たとえ高度な遮蔽技術を有する特殊なセンサ設計及びスクリーニング法によっても、完全に達成することはできない。上述したように、本開示の実施態様は、コモンモード基準電圧源130を用いて、測定した信号周波数(f)とは異なる基準周波数(f)を有する基準電圧を発生させて、システムから見られる浮遊容量を補償する。
【0052】
特に、結合コンデンサ(C)に加えて、図7Aは、人体容量(C)、容量(C)、容量(CSENS-REF)、及び容量(C)を示している。人体容量(C)は結合コンデンサ(C)と直列の関係にあり、典型的な応用例では、人体容量(C)は結合コンデンサ(C)よりもはるかに大きい。そのため、人体容量(C)は電流(I+I)の大きさにのみ影響し、電流の比率(I/I)には影響しない。
【0053】
図7A及び図8に示すように、容量(C)は、導電センサ126と外部アース128との間のセンサ容量である。結合コンデンサ(C)は、線122とセンサ126との間の唯一の容量ではない。容量(C)もまた、センサ126と外部アース128との間、特にセンサ126の領域を実質的に覆っていない細い線に対して存在する。容量(C)は、信号電流(I)に対して容量性分圧効果を有しており、AC電圧(V)が低電圧測定となることがある。そのため、容量(C)は、電流(I+I)の大きさを低下させる。しかし、基準電流(I)が同じ比率で分割され、また、浮遊コンデンサ(C)を補償するため、比率(I/I)には影響しない。非接触電圧測定システムの外部への内部電流の流れを回避するためにも、少なくともいくつかの実施態様で上述したように、感知領域を除く測定システム全体が基準シールド134によって外部環境から遮蔽されており、基準電流(I)を生じさせるためにコモンモード基準電圧源130の出力に接続されている。
【0054】
図7Aに示すように、容量(CSENS-REF)は、基準シールド134と導電センサ126との間の残存容量である。容量(CSENS-REF)は、線106におけるAC電圧(V)の測定中でなくても、存在するセンサ電流(I+I)に対するオフセットを生じさせる。
【0055】
図7A及び図9Aに示すように、容量(C)は、内部アース138と外部アース128又は基準電位との間の容量である。容量(C)は基準電流(I)の並列経路であり、基準電流を低減させる。このため、容量(C)は、線106おけるAC電圧(V)の計算結果に増加を生じさせる。容量(C)の影響を示す図9Bを参照されたい。特に、容量(C)がI及びIに与える影響は異なるため、比率I/Iに影響を与える。
【0056】
上記の式(2)~(5)から分かるように、比率I/IはC/Cに依存する。基準スクリーンが非接触電圧測定システム102の包囲体及びセンサの周囲にあるとき、容量Cは非常に小さい。
【0057】
図7Bは、反転基準信号(-V)と、反転基準信号をセンサ126に結合させる構成とを用いることによって、基準電圧(V)のセンサ126への影響に対する補償を提供する実施態様を示している。図7Cは、反転基準信号補償を有する例示的なセンサ構成を示している。
【0058】
図7Bでは、調節可能な反転増幅器141を使用してセンサ126に反転基準信号(-V)を提供して、基準電圧(+V)のセンサへの影響を補償している。これは、センサ126の近傍に位置する容量結合(C)によって達成され得る。容量結合(C)は、センサの近傍に位置する線、スクリーン、シールドなどの形状であってもよい。かかる補償は、絶縁導体106が比較的小径を有している場合に特に有利であり得る。というのは、そのような場合、基準シールド134からの基準電圧(V)は、センサ126に対して最も大きい影響を有し得るからである。
【0059】
図7Cは、上述の基準信号補償を提供する実施態様で用いられる例示的なセンサ構成139を示している。センサ構成139は、センサ139aと、絶縁層139b(例えば、Kapton(登録商標)テープ)と、内部アースガード139cと、反転基準信号層139d(-V)と、絶縁層139eと、基準信号層139f(+V)とを含んでいる。
【0060】
図10は、上述した非接触電圧測定システムのうちのいずれかなどの非接触電圧測定システム用の例示的なセンサ及びガード組立体1000の斜視図である。この例では、センサ及びガード組立体1000は、導電センサ1002、内部アースガード1004、及びかかるセンサと内部アースガードとの間に配置された分離層1006を含んでいる。概して、センサ組立体1000は、センサ1002とテスト対象の線との間に良好な結合容量(C)を提供するべきであり、他の隣接する線との容量及び外部アースとの容量を抑制するべきである。センサ組立体1000はまた、センサ1002と基準シールド(例えば、基準シールド134)との間の容量(CSENS-REF)を最小化するべきである。
【0061】
シンプルな例として、センサ1002、ガード1004、及び分離層1006は、一片のフォイルをそれぞれ含んでもよい。ガード1004はキャリアに連結されていてもよく(図11参照)、分離層1006(例えば、Kapton(登録商標)テープ)はガードに連結されていてもよく、センサ1004は分離層に連結されていてもよい。
【0062】
図11は、センサ組立体1000とあらゆる物体との間の直接的なガルバニック接触を避けるためにセンサ組立体を覆うハウジング層1102(例えば、プラスチック)を含む非接触電圧測定システムの、プローブ又は前端1100のセンサを実現したものの例を示す断面図である。前端1100は、図1A及び図1Bに示す非接触電圧測定システム102の前端112に類似又は同一であり得る。この図では、センサ1002と、ガード1004と、分離層1006とを含むセンサ組立体1000は「U」形又は「V」形であり、これによって、センサ組立体1000が異なる径の絶縁線を包囲すること、結合容量(C)を増加させること、並びに、ガードによって、隣接する導電性物体に対する良好な遮蔽を行うことを可能にしている。
【0063】
図11に示す例では、センサ組立体1000は、比較的大きい径を有する絶縁線1104や比較的小さい径を有する絶縁線1106などの、様々な径の絶縁線を収容するような形状を有している。いずれの場合でも、センサ組立体1000は、線が前端1100の凹部1108内に配置されたときに、かかる線を実質的に包囲する。凹部1108を画定し、かつ、センサ組立体1000とテスト対象の線との間に配置される、前端1100の壁は比較的薄くてもよく(例えば、1mm)、それによって、ガルバニック絶縁を提供しつつ、好適な容量結合を可能としている。
【0064】
図12は、非接触電圧測定システムの円弧状の前端1200の正面図である。前端1200は、第1延在部1204及び第2延在部1206によって画定される凹部1202を含んでいる。凹部1202は、比較的大きい上部円弧状部1208を含んでおり、これは比較的大きい径を有する絶縁線1210を受ける。凹部1202はまた、かかる部1208の下に、比較的小さい下部円弧状部1212を含んでおり、これは比較的小さい径を有する絶縁線1214を受ける。センサ組立体1216は、図10に示すセンサ組立体1000と類似していてよく、部1208及び1212によって覆われており、円弧状部1208及び1212に実質的に沿うような形状を有していてもよい。その結果、センサ組立体1216は、比較的大きい径を有する線(例えば、1210)及び比較的小さい径を有する線(例えば、1214)を実質的に包囲する。
【0065】
図13は、非接触電圧測定システムの円筒状の前端1300の斜視図である。この例では、前端1300は、テスト対象の線の近傍に配置され得る側壁1304及び前面1306を有する円筒状の内部アースガード1302を含んでいる。内部アースガード1302の前面1306は、中央開口1308を含んでいる。テスト対象の線と共に結合コンデンサ(C)を形成する導電センサ1310は、内部アースガード1302の開口1308より後方に凹んでおり、それによって、隣接する物体との容量結合を回避する。センサ1310は、例えば、内部アースガード1302の前面1306からある距離(例えば、3ミリ)だけ凹んでいてもよい。
【0066】
内部アースガード1302の側壁1304は、分離層1314によって内部アースガードから分離されている円筒状の基準シールド1312によって包囲されていてもよい。コモンモード基準電圧源(例えば、電圧源130)は、内部アースガード1302と基準シールド1312との間で接続されていてもよく、それによって、上述の機能を提供し得る。
【0067】
図14A及び図14Bは非接触電圧測定システムの前端1400の上面図であり、図15はかかる前端の一部を示す斜視図である。この例では、前端1400は、前面1404を含む内部アースガード1402を含み、かかる前面に対して、テスト対象の線1406(図15)が配置され得る。前面1404は、この場合は長方形の縁1407を含み、かかる縁は、前面における開口1408を画定する。この小さい長細い長方形の開口は、長細いが側方から見ると薄い形状を有する線形状を収容する。これによっても、隣接する線の影響が低減される。テスト対象の線と共に結合コンデンサ(C)を形成する導電センサ1410は、内部アースガード1402の前面1404の開口1408よりある距離(例えば、3mm)だけ後方に凹んでいる。
【0068】
内部アースガード1402はまた、前面1404の側方縁から前方へ(テスト対象の線に向かって)延在する側壁1412及び1414を含んでいる。内部アースガード1402はまた、第1クランプアーム1416A及び第2クランプアーム1416Bを含む、導電性ガードリングクランプ1416を含んでもよい。クランプアーム1416A及び1416Bは、図14Bに示すように、開口位置へと選択的に移動することができ、それによって、テスト対象の線を内部アースガード1402の前面1404の近傍に配置することができる。線が適所に配置されると、クランプアーム1416A及び1416Bは、図14Aに示すように、閉位置へと選択的に移動することができ、それによって、センサ1410の周りに、外部環境(例えば、隣接する導体、隣接する物体)との結合に対するシールドを提供し得る。閉位置においては、ガードリングクランプ1416は、例えば、センサ1410の上下に延伸する高さを有する略円筒形状であり得る。クランプアーム1416A及び1416Bは、任意の好適な手動又は自動作動サブシステム1418を用いて、選択的に移動可能でもよい。例えば、クランプアーム1416A及び1416Bは、作動システム1418として機能するばね又は他の付勢機構によって閉位置(図14A)に向けて付勢され得る。かかる付勢は、クランプアームを開位置(図14B)へと移動させるために、オペレータによって克服することができる。その結果、テスト対象の線を、内部アースガード1402の前面1404の近傍に配置することができる。
【0069】
上述の詳細な説明では、ブロック図、図式、及び例を用いて、本装置及び/又はプロセッサの種々の実施態様について説明した。かかるブロック図、図式、及び例が1つ以上の機能及び/又は動作を含む限りにおいて、当業者であれば、かかるブロック図、フローチャート、又は例における各機能及び/又は動作は、独立して及び/又は共同で、広範囲のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの実質的に任意の組み合わせによって実施可能であることを理解するであろう。一実施態様では、本主題は、特定用途向けIC(ASIC)を介して実施することができる。しかし、当業者であれば、本明細書に開示された実施態様の全体又は一部が、1つ以上のコンピュータ上で実行される1つ以上のコンピュータプログラムとしての(例えば、1つ以上のコンピュータシステム上で実行される1つ以上のプログラムとしての)、1つ以上のコントローラ(例えば、マイクロコントローラ)上で実行される1つ以上のプログラムとしての、1つ以上のプロセッサ(例えば、マイクロプロセッサ)上で実行される1つ以上のプログラムとしての、ファームウェアとしての、又はこれらの実質的に任意の組み合わせとしての、標準的な集積回路において同等に実施可能であること、並びに、回路の設計、及び/又はソフトウェア及び/又はファームウェア用のコードを書き込むことは、本開示を参照して為される当分野における通常の技術範囲内であることを理解するであろう。
【0070】
当業者であれば、本明細書で述べた方法又はアルゴリズムは追加の動作を用いることができ、いくつかの動作を省略することができ、及び/又はここで述べた順序とは異なる順序で動作を実行することができることを理解するであろう。一例として、少なくともいくつかの実施態様では、非接触電圧測定システムは、指示の実行にプロセッサを用いなくてもよい。例えば、非接触電圧測定システムは、本明細書で説明した機能の一部又は全てを提供するために、ハードウェアで実現(hardwired)されていてもよい。更に、少なくともいくつかの実施態様では、非接触電圧測定システムは、本明細書で説明した異なる測定を生じさせる又は開始するためにプロセッサを用いなくてもよい。例えば、かかる非接触電圧測定システムは、1つ以上の別個の入力(例えば、測定を生じさせるための、ユーザにより作動されるボタン)に依存していることがある。
【0071】
更に、当業者であれば、本明細書で教示されたメカニズムは、種々の形態のプログラム製品として配布することができること、並びに、例示的な実施態様は、実際に配布を行うために用いられる特定タイプの信号担持媒体を問わず、等しく適用されることを理解するであろう。信号担持媒体の例としては、フロッピーディスク、ハードディスクドライブ、CD-ROM、デジタルテープ、及びコンピュータメモリなどの記録可能型媒体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
上述の様々な実施態様を組み合わせて、更なる実施態様を提供することができる。本明細書中の特定の教示及び定義と矛盾しない限りにおいて、本明細書中で参照した及び/又は出願データシートに列挙された全ての米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、及び非特許文献が、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。かかる文献には、例えば、2016年11月11日にファイルされた米国特許仮出願第62/421,124号が挙げられるが、これに限定されない。本実施態様の側面は、必要に応じて修正を加えて、種々の特許、出願、及び文献のシステム、回路、概念を採用することができ、それによって、更なる実施態様を提供することができる。
【0073】
これらの及び他の変更を、上述の説明を考慮して、実施態様に対して行うことができる。概して、以下の請求項で用いられる用語は、本請求項を、本明細書及び本請求項に開示された特定の実施態様に制限するものと解釈するべきでなく、かかる請求項が権利を有する全範囲の等価物と共に全ての可能な実施態様を含むものと解釈するべきである。したがって、請求項は、本開示によって制限されるものではない。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15