(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】X線診断システム及び陽極回転コイル駆動装置
(51)【国際特許分類】
H05G 1/66 20060101AFI20221031BHJP
H05G 1/70 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
H05G1/66 C
H05G1/70
(21)【出願番号】P 2018098252
(22)【出願日】2018-05-22
【審査請求日】2021-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2017102102
(32)【優先日】2017-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】石山 文雄
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-150193(JP,A)
【文献】特開2001-110591(JP,A)
【文献】米国特許第05105141(US,A)
【文献】特開2014-191935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05G 1/00 - 1/70
H01J 35/00 -35/32
A61B 6/00 - 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された二つのコンデンサの間に設けられたコンデンサ間端子と、
直列に接続された二つの第1のスイッチング素子の間に設けられた第1のスイッチング素子間端子と、
直列に接続された二つの第2のスイッチング素子の間に設けられた第2のスイッチング素子間端子と、
直列に接続された二つの第3のスイッチング素子の間に設けられた第3のスイッチング素子間端子と、を備え、
前記第1のスイッチング素子間端子と前記第2のスイッチング素子間端子と前記第3のスイッチング素子間端子とにより三相交流電力が供給可能に設けられ、前記第1のスイッチング素子間端子、前記第2のスイッチング素子間端子及び前記第3のスイッチング素子間端子のうち二つと前記コンデンサ間端子と
で構成した単相ハーフブリッジインバータ回路による二相交流電力が供給可能に設けられている、
X線診断システム。
【請求項2】
前記第1のスイッチング素子間端子、前記第2のスイッチング素子間端子および前記第3のスイッチング素子間端子への接続と前記第1のスイッチング素子間端子、前記第2のスイッチング素子間端子及び前記第3のスイッチング素子間端子のうち二つと前記コンデンサ間端子とへの接続とを切り替える切り替え回路をさらに備える、
請求項1に記載のX線診断システム。
【請求項3】
前記第1のスイッチング素子間端子、前記第2のスイッチング素子間端子及び前記第3のスイッチング素子間端子を三相交流電力により駆動される第1のX線管の三つのコイルそれぞれに接続して、三相フルブリッジインバータ回路を構成する、請求項1又は2に記載のX線診断システム。
【請求項4】
前記コンデンサ間端子を第2のX線管の共通端子に接続し、前記第1のスイッチング素子間端子、前記第2のスイッチング素子間端子及び前記第3のスイッチング素子間端子のうち二つを二相交流電力により駆動される第2のX線管の二つのコイルそれぞれに接続して、
前記単相ハーフブリッジインバータ回路を構成する、請求項1~3のいずれか一つに記載のX線診断システム。
【請求項5】
三相交流電力により駆動される第1のX線管に三相交流を供給するように各スイッチング素子のオン及びオフを制御し、二相交流電力により駆動される第2のX線管に二相交流を発生させるように各スイッチング素子のオン及びオフを制御するスイッチング素子駆動回路を備える請求項1~4のいずれか一つに記載のX線診断システム。
【請求項6】
前記コンデンサ間端子を第2のX線管の共通端子に接続し、前記第1のスイッチング素子間端子、前記第2のスイッチング素子間端子及び前記第3のスイッチング素子間端子のうち二つを二相交流電力により駆動される第2のX線管の二つのコイルそれぞれに接続して、
前記単相ハーフブリッジインバータ回路を構成し、
前記第1のX線管及び前記第2のX線管は、所定の電圧で駆動され、
前記三相フルブリッジインバータ回路の入力電圧は、前記所定の電圧であり、
前記単相ハーフブリッジインバータ回路の入力電圧は、前記所定の電圧の2倍の電圧である、請求項3に記載のX線診断システム。
【請求項7】
電源供給部から供給された交流から直流電圧を発生させるAC/DC変換回路と、
前記AC/DC変換回路と前記二つのコンデンサとの間に挿入され、前記直流電圧を昇圧又は降圧した電圧を前記二つのコンデンサに印加する昇圧/降圧コンバータと、
前記昇圧/降圧コンバータが前記直流電圧を昇圧する場合と、前記昇圧/降圧コンバータが前記直流電圧を降圧する場合と、前記昇圧/降圧コンバータが前記直流電圧の昇圧及び降圧を行わない場合とを切り替える昇圧/降圧切り替え回路と、
を更に備える、請求項1~6のいずれか一つに記載のX線診断システム。
【請求項8】
前記昇圧/降圧コンバータは、
昇圧/降圧コイルと、
前記昇圧/降圧コイルの一端を挟んで直列接続された第1の昇圧/降圧スイッチング素子及び第2の昇圧/降圧スイッチング素子と、
前記第1の昇圧/降圧スイッチング素子及び前記第2の昇圧/降圧スイッチング素子に電圧パルスを供給する昇圧/降圧スイッチング素子駆動回路と、
を有し、
昇圧/降圧切り替え回路は、
前記直流電圧を昇圧する場合、並びに降圧する場合のいずれでも、前記昇圧/降圧コンバータの低電圧側の端子を前記AC/DC変換回路の低電圧側の端子及び前記二つのコンデンサの低電圧側の端子に接続し、
前記直流電圧を昇圧する場合、前記昇圧/降圧コンバータの高電圧側の端子を前記二つのコンデンサの高電圧側の端子に接続し、前記昇圧/降圧コイルの他端を前記AC/DC変換回路の高電圧側の端子に接続し、
前記直流電圧を降圧する場合、前記昇圧/降圧コンバータの高電圧側の端子を前記AC/DC変換回路の高電圧側の端子に接続し、前記昇圧/降圧コイルの他端を前記二つのコンデンサの高電圧側の端子に接続し、
前記直流電圧の昇圧及び降圧を行わない場合、前記AC/DC変換回路の高電圧側の端子を前記二つのコンデンサの高電圧側の端子に接続し、前記AC/DC変換回路の低電圧側の端子を前記二つのコンデンサの低電圧側の端子に接続する、請求項7に記載のX線診断システム。
【請求項9】
電源供給部から供給された交流から直流電圧を発生させるAC/DC変換回路と、
前記AC/DC変換回路と前記二つのコンデンサとの間に挿入され、前記直流電圧を昇圧した電圧を前記二つのコンデンサに印加する昇圧コンバータと、
前記昇圧コンバータが前記直流電圧を昇圧する場合と、前記昇圧コンバータが前記直流電圧の昇圧を行わない場合とを切り替える昇圧切り替え回路と、
を更に備える、請求項1~8のいずれか一つに記載のX線診断システム。
【請求項10】
前記昇圧コンバータは、
昇圧コイルと、
アノードが前記昇圧コイルの一端に接続されたダイオードと、
一端が前記昇圧コイルの前記一端に接続された昇圧スイッチング素子と、
前記昇圧スイッチング素子に電圧パルスを供給する昇圧スイッチング素子駆動回路と、
を有し、
前記昇圧切り替え回路は、
前記直流電圧を昇圧する場合、前記ダイオードのカソードを前記二つのコンデンサの高電圧側の端子に接続し、前記昇圧スイッチング素子の他端を前記AC/DC変換回路の低電圧側の端子及び前記二つのコンデンサの低電圧側の端子に接続し、前記昇圧コイルの他端を前記AC/DC変換回路の高電圧側の端子に接続し、
前記直流電圧の昇圧を行わない場合、前記AC/DC変換回路の高電圧側の端子を前記二つのコンデンサの高電圧側の端子に接続し、前記AC/DC変換回路の低電圧側の端子を前記二つのコンデンサの低電圧側の端子に接続する、請求項9に記載のX線診断システム。
【請求項11】
前記第1のスイッチング素子間端子、前記第2のスイッチング素子間端子および前記第3のスイッチング素子間端子への接続と前記第1のスイッチング素子間端子、前記第2のスイッチング素子間端子及び前記第3のスイッチング素子間端子のうち二つと前記コンデンサ間端子とへの接続とを切り替える切り替え回路により実現されるインバータ回路を制御するスイッチング素子駆動回路を更に備え、
前記スイッチング素子駆動回路は、前記直流電圧を降圧した電圧を前記二つのコンデンサに印加する場合は、前記インバータ回路が有する各スイッチング素子のオン時間の短縮、又は、前記インバータ回路の各スイッチング素子をオンするオン信号の変調を行う、請求項10に記載のX線診断システム。
【請求項12】
直列に接続された二つのコンデンサの間に設けられたコンデンサ間端子と、
直列に接続された二つの第1のスイッチング素子の間に設けられた第1のスイッチング素子間端子と、
直列に接続された二つの第2のスイッチング素子の間に設けられた第2のスイッチング素子間端子と、
直列に接続された二つの第3のスイッチング素子の間に設けられた第3のスイッチング素子間端子と、を備え、
前記第1のスイッチング素子間端子と前記第2のスイッチング素子間端子と前記第3のスイッチング素子間端子とにより三相交流電力が供給可能に設けられ、前記第1のスイッチング素子間端子、前記第2のスイッチング素子間端子及び前記第3のスイッチング素子間端子のうち二つと前記コンデンサ間端子と
で構成した単相ハーフブリッジインバータ回路による二相交流電力が供給可能に設けられている、
陽極回転コイル駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線診断システム及び陽極回転コイル駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線画像診断の分野では、複数の撮影装置を有するX線診断システムが使用される。X線診断システムは、例えば、第1の撮影装置及び第2の撮影装置を有する。第1の撮影装置は、例えば、X線TV装置である。X線TV装置は、例えば、消化管造影検査、尿路造影検査、脊髄腔造影検査、胆道造影検査に用いられる。第1の撮影装置は、陽極の回転を迅速に立ち上げ、適切なタイミングでX線画像を撮影するため、三相交流により駆動される陽極を有する第1のX線管を有することがある。一方、第2の撮影装置は、例えば、一般X線撮影装置である。第2の撮影装置は、第1の撮影装置に比べ、陽極の回転を立ち上げる時間に余裕があるため、二相交流により駆動される陽極を有する第2のX線管を有する。
【0003】
このため、第1のX線管及び第2のX線管の両方を駆動することができる陽極回転コイル駆動装置が開発されている。この陽極回転コイル駆動装置は、第1のX線管に接続され、第1のX線管の陽極を回転させる。或いは、この陽極回転コイル駆動装置は、第2のX線管に接続され、第2のX線管の陽極を回転させる。この陽極回転コイル駆動装置は、例えば、第1のX線管を駆動する場合、三相インバータを制御して位相差が120度の三相交流を供給し、第2のX線管を駆動する場合、三相インバータを制御して位相差が90度の二相交流を供給する。しかし、この陽極回転コイル駆動装置は、二相交流を供給する場合、アーム短絡を起こすことがある。
【0004】
或いは、第2のX線管が有する二つのコイルに同時に電圧が印加されないように、これらのコイルに印加される電圧パルスの幅を出力する交流電圧の周期の1/4以下にする陽極回転コイル駆動装置がある。しかし、この陽極回転コイル駆動装置は、コイルに印加する電圧の実効値が低いため、陽極の回転の立ち上げに時間がかかってしまうことがある。
【0005】
或いは、二つのインバータ及び各インバータと第1のX線管又は第2のX線管との間に挿入された絶縁トランスを有する陽極回転コイル駆動装置がある。この陽極回転コイル駆動装置は、アーム短絡を起こすことはない。しかし、この陽極回転コイル駆動装置は、絶縁トランスを有するため、重量及び寸法が大きくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-150193号公報
【文献】特開2011-109732号公報
【文献】再公表WO2012/073983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、重量及び寸法の増加を抑制しつつ、二相交流により駆動されるX線管も、三相交流により駆動されるX線管も素早く立ち上げることができるX線診断システム及び陽極回転コイル駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係るX線診断システムは、直列に接続された二つのコンデンサの間に設けられたコンデンサ間端子と、直列に接続された二つの第1のスイッチング素子の間に設けられた第1のスイッチング素子間端子と、直列に接続された二つの第2のスイッチング素子の間に設けられた第2のスイッチング素子間端子と、直列に接続された二つの第3のスイッチング素子の間に設けられた第3のスイッチング素子間端子と、を備え、前記第1のスイッチング素子間端子と前記第2のスイッチング素子間端子と前記第3のスイッチング素子間端子とにより三相交流電力が供給可能に設けられ、前記第1のスイッチング素子間端子、前記第2のスイッチング素子間端子及び前記第3のスイッチング素子間端子のうち二つと前記コンデンサ間端子とにより二相交流電力が供給可能に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るX線診断システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係るX線高電圧装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る陽極回転コイル駆動装置が第1のX線管に三相交流を供給する場合における陽極回転コイル駆動装置の回路構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、X線管切り替え回路を説明するための図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態において、第1のX線管のコイルに印加される電圧と、各スイッチング素子のオン/オフとの関係を示すタイミングチャートである。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る陽極回転コイル駆動装置が第2のX線管に二相交流を供給する場合における陽極回転コイル駆動装置の回路構成の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態において、第2のX線管のコイルに印加される電圧と、各スイッチング素子のオン/オフとの関係を示すタイミングチャートである。
【
図8】
図8は、第1の実施形態に係る陽極回転コイル駆動装置が第1のX線管に三相交流を供給する場合における陽極回転コイル駆動装置の回路構成の別の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態に係る陽極回転コイル駆動装置が第2のX線管に二相交流を供給する場合における陽極回転コイル駆動装置の回路構成の別の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、第1の実施形態に対する比較例を示す図である。
【
図11】
図11は、第2の実施形態に係る陽極回転コイル駆動装置の回路構成の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、スイッチング素子駆動回路が行うPWM制御を説明するための図である。
【
図13】
図13は、スイッチング素子駆動回路が行うPWM制御を説明するための図である。
【
図14】
図14は、スイッチング素子駆動回路が行うPWM制御を説明するための図である。
【
図15】
図15は、スイッチング素子駆動回路が行うPWM制御を説明するための図である。
【
図17】
図17は、陽極回転コイル駆動装置の回路構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら実施形態に係るX線診断システム及び陽極回転コイル駆動装置を説明する。なお、以下の実施形態では、重複する説明は適宜省略する。
【0011】
(第1の実施形態)
まず、
図1を参照しながら、第1の実施形態に係るX線診断システム1の構成について説明する。
図1は、第1の実施形態に係るX線診断システムの構成の一例を示すブロック図である。X線診断システム1は、
図1に示すように、第1の撮影装置10aと、第2の撮影装置10bと、コンソール20と、X線高電圧装置3とを有する。第1の撮影装置10aは、X線TV装置である。X線TV装置は、例えば、消化管造影検査、尿路造影検査、脊髄腔造影検査、胆道造影検査に用いられる。第1の撮影装置10aは、R/Fシステムとも呼ばれる。第2の撮影装置10bは、一般X線撮影装置である。第2の撮影装置10bは、Rシステムとも呼ばれる。なお、X線診断システム1の構成は、下記の構成に限定されるものではない。
【0012】
第1の撮影装置10aは、絞り調整回路11aと、駆動回路12aと、第1のX線管13aと、絞り14aと、寝台15aと、検出器16aと、生成回路17aとを有する。
【0013】
絞り調整回路11aは、絞り14aを制御して、第1のX線管13aが発生させたX線の照射範囲を調整する。具体的には、絞り調整回路11aは、絞り14aが有する絞り羽根をスライドさせることにより、X線の照射範囲を調整する。絞り調整回路11aは、後述する記憶回路24に格納されているプログラムを読み出して実行することにより、その機能を実現する。
【0014】
駆動回路12aは、第1のX線管13a及び寝台15aを駆動する。具体的には、駆動回路12aは、第1のX線管13aの向き及び位置を調整する。駆動回路12aは、寝台15aが有する天板の高さ、位置及び傾きを調整する。駆動回路12aは、後述する記憶回路24に格納されているプログラムを読み出して実行することにより、その機能を実現する。
【0015】
第1のX線管13aは、陰極及び陽極を有する。陰極は、電子を放出する。陰極は、例えば、タングステンで作製されたフィラメントである。フィラメントは、熱電子を放出する。熱電子とは、フィラメントに流れる電流により発生した熱により励起され、フィラメントの外に飛び出す電子である。陰極が放出した電子は、陽極と陰極との間に印加された電圧により加速され、陽極に衝突する。陽極は、陰極が放出する電子を受けてX線を発生させる。
【0016】
第1のX線管13aは、三相交流電力で駆動するX線管であり、一対のコイルを三つ有する。これらのコイルは、導線を環状に巻くことにより作製される。一対のコイルは、それぞれ陽極を挟んで対向するように配置されている。これらの一対のコイルの軸は、陽極の回転軸と直交する平面上において、陽極の回転軸上の一点で交差している。また、これらの一対のコイルの軸は、他の一対のコイルの軸と60度の角度をなしている。これらのコイルは、最大値280V、実効値200Vの電圧が供給される必要がある。第1のX線管13aのコイルは、実効値200Vの電圧で駆動する。
【0017】
絞り14aは、第1のX線管13aが発生させたX線の照射範囲を調整する。絞り14aは、例えば、スライド可能な四枚のX線絞り羽根を有する。絞り14aは、これらのX線絞り羽根をスライドさせることで、第1のX線管13aが発生させたX線の照射範囲を調整する。
【0018】
寝台15aは、被検体Pが載せられる天板を有する。天板の高さ、位置及び傾きは、駆動回路12aにより調整される。また、天板は、検出器16aを内蔵している。
【0019】
検出器16aは、第1のX線管13aが照射したX線を検出する。検出器16aは、例えば、FPD(Flat Panel Detector)である。検出器16aは、マトリックス状に配置された検出素子を有する。検出素子は、第1のX線管13aが照射したX線を電気信号に変換して蓄積する。蓄積された電気信号は、生成回路17aに送信される。
【0020】
生成回路17aは、各検出素子が出力した電気信号に基づいてX線画像を生成する。生成回路17aは、後述する記憶回路24に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、その機能を実現する。なお、生成回路17aは、例えば、プロセッサにより実現される。
【0021】
第2の撮影装置10bは、絞り調整回路11bと、駆動回路12bと、第2のX線管13bと、絞り14bと、寝台151bと、支持部材152bと、検出器161bと、検出器162bと、生成回路17bとを有する。
【0022】
絞り調整回路11b、絞り14b、検出器161b、検出器162b及び生成回路17bは、それぞれ第1の撮影装置10aが有する絞り調整回路11a、絞り14a、検出器16a及び生成回路17aと同様である。
【0023】
駆動回路12bは、第2のX線管13b、寝台151b及び支持部材152bを駆動する。具体的には、駆動回路12bは、第2のX線管13bの向き及び位置を調整する。駆動回路12bは、寝台151bが有する天板の高さ及び位置を調整する。駆動回路12bは、支持部材152bが支持する検出器162bの高さ及び位置を調整する。
【0024】
第2のX線管13bは、二相交流電力で駆動するX線管であり、共通端子と、二つの一対のコイルとを有する。これらのコイルは、導線を環状に巻くことにより作製される。一対のコイルは、それぞれ陽極を挟んで対向するように配置されている。一方の一対のコイルの軸は、他方の一対のコイルの軸と直交している。また、これらのコイルは、最大値280V、実効値200Vの電圧を供給される必要がある。第2のX線管13bのコイルは、第1のX線管13aのコイルと同様に、実効値200Vの電圧で駆動する。
【0025】
寝台151bは、被検体Pが載せられる天板を有する。天板の高さ及び位置は、駆動回路12bにより調整される。また、天板は、検出器161bを内蔵している。支持部材152bは、検出器162bを支持する。
【0026】
コンソール20は、入力回路21と、ディスプレイ22と、画像記憶回路23と、記憶回路24と、処理回路25とを有する。
【0027】
入力回路21は、指示や設定を入力するユーザにより使用される。入力回路21は、例えば、マウス、キーボードに含まれる。入力回路21は、ユーザが入力した指示や設定を処理回路25に転送する。入力回路21は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0028】
ディスプレイ22は、ユーザが参照するモニタである。ディスプレイ22は、例えば、液晶ディスプレイである。ディスプレイ22は、例えば、X線画像、ユーザが指示や設定を入力する際に使用するGUI(Graphical User Interface)を表示する旨の指示を処理回路25から受けて、X線画像及びGUIを表示する。
【0029】
画像記憶回路23は、生成回路17aにより生成されたX線画像及び生成回路17bにより生成されたX線画像を記憶する。記憶回路24は、絞り調整回路11a、絞り調整回路11b、駆動回路12a、駆動回路12b、生成回路17a及び生成回路17bが上述した機能を実現するためのプログラムを記憶する。記憶回路24は、処理回路25が後述する機能それぞれを実現するためのプログラムを記憶する。記憶回路24は、後述する制御回路9がその機能を実現するためのプログラムを記憶する。画像記憶回路23及び記憶回路24は、記憶されている情報をコンピュータにより読み出すことができる記憶媒体を有する。記憶媒体は、例えば、ハードディスクである。
【0030】
処理回路25は、撮影制御機能251と、制御機能252とを有する。処理回路25は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0031】
撮影制御機能251は、絞り調整回路11a、駆動回路12a、生成回路17a及び後述するX線高電圧装置3を制御し、X線画像を撮影する機能を含む。また、撮影制御機能251は、絞り調整回路11b、駆動回路12b、生成回路17b及び後述するX線高電圧装置3を制御し、X線画像を撮影する機能を含む。撮影制御機能251は、例えば、第1の撮影装置10aを次のように制御する。
【0032】
まず、撮影制御機能251は、駆動回路12aを制御し、第1のX線管13a、絞り14a、寝台15a及び検出器16aを撮影に適した位置に移動させる。次に、撮影制御機能251は、絞り調整回路11a及びX線高電圧装置3を制御し、被検体PにX線を照射する。そして、撮影制御機能251は、生成回路17aを制御し、X線画像を生成させる。なお、動画を撮影する場合、撮影制御機能251は、生成回路17aを制御し、これらの処理を動画のフレームごとに行う。或いは、撮影制御機能251は、第2の撮影装置10bを上述したように制御する。
【0033】
制御機能252は、第1の撮影装置10a、第2の撮影装置10b、コンソール20及びX線高電圧装置3の各構成要素を目的に応じて適切なタイミングで動作させる機能及びその他の機能を含む。
【0034】
次に、
図2を参照しながら、
図1に示すX線高電圧装置3の概要について説明する。
図2は、第1の実施形態に係るX線高電圧装置の構成の一例を示すブロック図である。X線高電圧装置3は、
図2に示すように、AC/DC変換回路4と、陽極回転コイル駆動装置5と、X線管切り替え回路6と、高圧発生インバータ回路71と、高電圧発生器72と、フィラメント加熱回路81と、フィラメントトランス82と、制御回路9とを有する。
【0035】
AC/DC変換回路4は、電源供給部である三相交流電源ACから供給された交流から直流電圧を発生させる。AC/DC変換回路4は、三相交流電源ACから三相交流の供給を受ける。三相交流電源ACは、例えば、実効値400Vの三相交流又は実効値200Vの三相交流を供給する。AC/DC変換回路4は、この三相交流を全波整流し、直流電圧を発生させる。AC/DC変換回路4は、この直流電圧を陽極回転コイル駆動装置5、高圧発生インバータ回路71及びフィラメント加熱回路81に供給する。
【0036】
陽極回転コイル駆動装置5は、AC/DC変換回路4から供給された直流電圧を三相交流に変換する。陽極回転コイル駆動装置5は、この三相交流を第1のX線管13aが有する三つの一対のコイルに供給し、第1のX線管13aが有する陽極を回転させる。或いは、陽極回転コイル駆動装置5は、AC/DC変換回路4から供給された直流電圧を二相交流に変換する。陽極回転コイル駆動装置5は、この二相交流を第2のX線管13bが有する二つの一対のコイルに供給し、第2のX線管13bが有する陽極を回転させる。
【0037】
高圧発生インバータ回路71は、AC/DC変換回路4が発生させた直流電圧を交流電圧に変換し、これを高電圧発生器72に供給する。高電圧発生器72は、この交流電圧を直流電圧に変換しつつ昇圧し、これを管電圧として第1のX線管13a又は第2のX線管13bに供給する。
【0038】
フィラメント加熱回路81は、AC/DC変換回路4が発生させた直流電圧を交流電圧に変換し、これをフィラメントトランス82に供給する。フィラメントトランス82は、第1のX線管13a又は第2のX線管13bが有するフィラメントに流れる電流を制御する。フィラメントトランス82は、フィラメント加熱回路81と、第1のX線管13a又は第2のX線管13bが有するフィラメントとを絶縁している。フィラメントトランス82は、
図2に示すように、高電圧発生器72に含まれている。
【0039】
X線管切り替え回路6は、陽極回転コイル駆動装置5が第1のX線管13aと接続される場合と、陽極回転コイル駆動装置5が第2のX線管13bと接続される場合とを切り替える。また、X線管切り替え回路6は、高電圧発生器72が第1のX線管13aと接続される場合と、高電圧発生器72が第2のX線管13bと接続される場合とを切り替える。
【0040】
制御回路9は、AC/DC変換回路4、陽極回転コイル駆動装置5、X線管切り替え回路6、高圧発生インバータ回路71、高電圧発生器72、フィラメント加熱回路81及びフィラメントトランス82を目的に応じて制御する。制御回路9は、記憶回路24に格納されているプログラムを読み出して実行することにより、その機能を実現する。なお、制御回路9は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0041】
次に、
図3を参照しながら、AC/DC変換回路4、陽極回転コイル駆動装置5、X線管切り替え回路6、高圧発生インバータ回路71及び高電圧発生器72について詳細に説明する。
図3は、第1の実施形態に係る陽極回転コイル駆動装置が第1のX線管に三相交流を供給する場合における陽極回転コイル駆動装置の回路構成の一例を示す図である。
【0042】
第1のX線管13aは、陽極130aが三相交流により駆動されるX線管であり、
図3に示すように、三つの一対のコイル(コイル131a、コイル132a及びコイル133a)を有する。
図3に示す一例では、コイル131a、コイル132a及びコイル133aそれぞれの一端は、スター結線されている。これらのコイルは、陽極回転コイル駆動装置5から三相交流の供給を受け、回転磁界を発生させる。陽極130aは、この回転磁界により回転する。
【0043】
AC/DC変換回路4は、
図3に示すように、三相整流ダイオードブリッジ41と、平滑コンデンサ42とを有する。三相整流ダイオードブリッジ41は、三相交流電源AC4に接続されている。
図3に示す三相交流電源AC4は、実効値400Vの三相交流を発生する電源供給部である。三相交流電源AC4は、三つの出力端子を有し、これら三つの出力端子は、三相整流ダイオードブリッジ41に接続されている。
【0044】
平滑コンデンサ42の二つの端子は、高圧発生インバータ回路71に接続されている。高圧発生インバータ回路71は、高電圧発生器72に接続されている。
図3では、AC4から実効値400Vの三相交流が供給されたAC/DC変換回路4は、560Vの直流電圧を発生し、発生した560Vの直流電圧を高圧発生インバータ回路71に供給するとともに、陽極回転コイル駆動装置5に供給する。
【0045】
陽極回転コイル駆動装置5は、n型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)511と、n型MOSFET512と、昇圧/降圧コイル513と、昇圧/降圧スイッチング素子駆動回路514と、昇圧/降圧切り替え回路515とを有する。n型MOSFET511、n型MOSFET512、昇圧/降圧コイル513及び昇圧/降圧スイッチング素子駆動回路514は、昇圧/降圧コンバータを構成している。また、n型MOSFET511は、第1の昇圧/降圧スイッチング素子とも呼ばれ、n型MOSFET512は、第2の昇圧/降圧スイッチング素子とも呼ばれる。
【0046】
n型MOSFET511とn型MOSFET512は、昇圧/降圧コイル513の一端を挟んで直列接続されている。すなわち、n型MOSFET511のソースとn型MOSFET512のドレインと昇圧/降圧コイル513の一端が接続されている。n型MOSFET511のドレインは、平滑コンデンサ42の高電圧側の端子に接続されている。n型MOSFET512のソースは、平滑コンデンサ42の低電圧側の端子、及び、後述するコンデンサ522の低電圧側の端子に接続されている。昇圧/降圧コイル513の他端は、後述するコンデンサ521の高電圧側の端子に接続されている。昇圧/降圧スイッチング素子駆動回路514は、n型MOSFET511のゲート、及び、n型MOSFET512のゲートに接続されている。つまり、昇圧/降圧コンバータは、AC/DC変換回路4と、次に述べるコンデンサ521及びコンデンサ522との間に挿入されている。
図3に示す昇圧/降圧コンバータの構成等については、後に詳述する。
【0047】
陽極回転コイル駆動装置5は、コンデンサ間端子52nを挟んで直列に接続された二つのコンデンサ(コンデンサ521及びコンデンサ522)を有する。また、陽極回転コイル駆動装置5は、第1のスイッチング素子間端子53uを挟んで直列に接続された二つの第1のスイッチング素子(第1のスイッチング素子53及び第1のスイッチング素子54)を有する。また、陽極回転コイル駆動装置5は、第2のスイッチング素子間端子54vを挟んで直列に接続された二つの第2のスイッチング素子(第2のスイッチング素子55及び第2のスイッチング素子56)を有する。また、陽極回転コイル駆動装置5は、第3のスイッチング素子間端子55wを挟んで直列に接続された二つの第3のスイッチング素子(第3のスイッチング素子57及び第3のスイッチング素子58)を有する。二つのコンデンサ、二つの第1のスイッチング素子、二つの第2のスイッチング素子及び二つの第3のスイッチング素子は、AC/DC変換回路4及び昇圧/降圧コンバータを介して、電源供給部であるAC4と接続される。
【0048】
なお、
図3では、第1のスイッチング素子53及び54と、第2のスイッチング素子55及び56と、第3のスイッチング素子57及び58とが、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)とダイオードとの逆並列回路である場合を例示したが、IGBTの代わりに、バイポーラ・トランジスタ、パワーMOSFET、ジャンクションFETなどを使用してもよい。
【0049】
コンデンサ521の低電圧側の端子及びコンデンサ522の高電圧側の端子は、コンデンサ間端子52nに接続されている。また、コンデンサ521とコンデンサ522は、静電容量が等しい。コンデンサ521の高電圧側の端子は、昇圧/降圧コイル513の他端に接続されている。コンデンサ522の低電圧側の端子は、n型MOSFET512のソース、及び、平滑コンデンサ42の低電圧側の端子に接続されている。
【0050】
スイッチング素子駆動回路59は、第1のスイッチング素子53及び54、第2のスイッチング素子55及び56、第3のスイッチング素子57及び58のゲートに接続されている。
【0051】
X線管切り替え回路6は、コンデンサ間端子52nと、第1のスイッチング素子間端子53uと、第2のスイッチング素子間端子54vと、第3のスイッチング素子間端子55wとの出力に基づいて、三相交流電力で駆動する第1のX線管13aへの電力供給と二相交流電力で駆動する第2のX線管13bへの電力供給とを切り替える。
【0052】
X線管切り替え回路6は、第1のX線管13aがX線を照射する場合、第1のスイッチング素子間端子53u、第2のスイッチング素子間端子54v及び第3のスイッチング素子間端子55wで第1のX線管13aに電力を供給する。すなわち、X線管切り替え回路6は、
図3に示すように、第1のX線管13aがX線を照射する場合、第1のスイッチング素子間端子53uをコイル131aに接続し、第2のスイッチング素子間端子54vをコイル132aに接続し、第3のスイッチング素子間端子55wをコイル133aに接続する。なお、X線管切り替え回路6は、
図3に示すように、コンデンサ間端子52nを、コイル131a、132a、133aのいずれとも接続しない。
【0053】
図4は、X線管切り替え回路を説明するための図である。X線管切り替え回路6は、
図4に示すスイッチ群61のオン/オフを制御する。X線管切り替え回路6は、第1のX線管13aがX線を照射する場合、
図4に示す第1スイッチ群611をオンとし、
図4に示す第2スイッチ群612をオフにする。第1スイッチ群611は、第1のスイッチング素子間端子53uとコイル131aとを接続する導線に設けられたスイッチと、第2のスイッチング素子間端子54vとコイル132aとを接続する導線に設けられたスイッチと、第3のスイッチング素子間端子55wとコイル133aとを接続する導線に設けられたスイッチとで構成される。
【0054】
「第1スイッチ群611:オン、第2スイッチ群612:オフ」とすることで、陽極回転コイル駆動装置5は、陽極130aのスタータとして、
図3に示すように、三組の「二つのスイッチング素子」を使った三相フルブリッジインバータ回路を有する構成となる。
【0055】
なお、X線管切り替え回路6は、第2のX線管13bがX線を照射する場合、第1スイッチ群611をオフとし、第2スイッチ群612をオンにする。第2のX線管13bがX線を照射する場合については、後述する。
【0056】
次に、n型MOSFET511と、n型MOSFET512と、昇圧/降圧コイル513と、昇圧/降圧スイッチング素子駆動回路514とで構成される昇圧/降圧コンバータと、昇圧/降圧切り替え回路515とについて説明する。三相交流電源AC4は、三相整流ダイオードブリッジ41に実効値400Vの三相交流を供給する。平滑コンデンサ42は、560Vの直流電圧を陽極回転コイル駆動装置5に出力する。一方、第1のX線管13aのコイル131a、コイル132a及びコイル133aは、実効値が200Vとなる交流電圧280Vで駆動される。このため、三相フルブリッジインバータ回路においては、コンデンサ521の高電位側とコンデンサ522の低電位側との間に280Vの直流電圧が印加される必要がある。三相フルブリッジインバータ回路の入力電圧は、第1のX線管13a及び第2のX線管13bの駆動電圧である。従って、実効値400Vの三相交流を入力として第1のX線管13aを駆動する場合には、昇圧/降圧コンバータにより560Vの直流電圧を280Vの直流電圧に降圧する必要がある。
【0057】
昇圧/降圧切り替え回路515は、AC/DC変換回路4が発生させる直流電圧を降圧する場合と、AC/DC変換回路4が発生させる直流電圧を昇圧する場合と、直流電圧の昇圧及び降圧を行わない場合とを切り替える。
【0058】
昇圧/降圧切り替え回路515は、降圧する場合、
図3に示すように、昇圧/降圧コンバータの低電圧側の端子(n型MOSFET512のソース)を、AC/DC変換回路4の低電圧側の端子(平滑コンデンサ42の低電圧側の端子)及び二つのコンデンサ521及び522の低電圧側の端子(コンデンサ522の低電圧側の端子)に接続する。また、昇圧/降圧切り替え回路515は、降圧する場合、
図3に示すように、昇圧/降圧コンバータの高電圧側の端子(n型MOSFET511のドレイン)を、AC/DC変換回路4の高電圧側の端子(平滑コンデンサ42の高電圧側の端子)に接続する。また、昇圧/降圧切り替え回路515は、降圧する場合、
図3に示すように、昇圧/降圧コイル513の他端を、二つのコンデンサ521及び522の高電圧側の端子(コンデンサ521の高電圧側の端子)に接続する。
【0059】
この接続によって、昇圧/降圧コンバータは、降圧コンバータとして機能し、AC/DC変換回路4が発生させた560Vの直流電圧を降圧した電圧をコンデンサ521及びコンデンサ522に印加する。昇圧/降圧コンバータは、例えば、次のように動作する。
【0060】
昇圧/降圧スイッチング素子駆動回路514は、n型MOSFET511のゲート及びn型MOSFET512のゲートに電圧パルス(オン信号)を供給する。すなわち、昇圧/降圧スイッチング素子駆動回路514は、n型MOSFET511及びn型MOSFET512それぞれのソースの電位を基準としてn型MOSFET511及びn型MOSFET512それぞれのゲートに電圧を印加する。これにより、昇圧/降圧スイッチング素子駆動回路514は、n型MOSFET511とn型MOSFET512を一定の周期で交互にオンにする。この場合、n型MOSFET511及びn型MOSFET512は、次の式で表されるデューティ比で交互にオンにされる。ここで、Tonは、n型MOSFET511がオンになっている時間であり、Toffは、n型MOSFET511がオフになっている時間である。
【0061】
【0062】
すなわち、n型MOSFET511及びn型MOSFET512は、約0.5のデューティ比で交互にオンにされる。これにより、昇圧/降圧コンバータは、AC/DC変換回路4が発生させた560Vの直流電圧を280Vまで降圧する。これらの電圧とデューティ比の関係は、次の式で表される。ここで、Vinは、AC/DC変換回路4が発生させた560Vの直流電圧であり、Voutは、昇圧/降圧コンバータが出力する280Vの直流電圧である。
【0063】
【0064】
次に、
図5を参照しながら、第1の実施形態に係る陽極回転コイル駆動装置5が第1のX線管13aを駆動する方法を説明する。
図5は、第1の実施形態において、第1のX線管のコイルに印加される電圧と、各スイッチング素子のオン/オフとの関係を示すタイミングチャートである。
【0065】
コンデンサ521及びコンデンサ522は、昇圧/降圧コンバータが出力する280Vの直流電圧が印加される。スイッチング素子駆動回路59は、第1のスイッチング素子53、第1のスイッチング素子54、第2のスイッチング素子55、第2のスイッチング素子56、第3のスイッチング素子57及び第3のスイッチング素子58に電圧パルスを供給する。スイッチング素子駆動回路59は、例えば、
図5に示したタイミングでこれらのスイッチング素子に電圧パルスを供給する。これにより、スイッチング素子駆動回路59は、三相フルブリッジインバータ回路によって三相交流を発生させるように各スイッチング素子のオン及びオフを制御する。
【0066】
第1のスイッチング素子53がオンであり、第1のスイッチング素子54がオフであり、第2のスイッチング素子56がオンである場合、第1のスイッチング素子間端子53uと第2のスイッチング素子間端子54vとの間に、第2のスイッチング素子間端子54vを基準として+280Vの電圧が印加される。すなわち、この場合、コイル131a及びコイル132aは、第2のスイッチング素子間端子54vを基準として+280Vの電圧が印加される。この+280Vの電圧は、コンデンサ521及びコンデンサ522に印加された280Vの電圧である。
【0067】
第1のスイッチング素子53がオフであり、第1のスイッチング素子54がオンであり、第2のスイッチング素子55がオンである場合、第1のスイッチング素子間端子53uと第2のスイッチング素子間端子54vとの間に、第2のスイッチング素子間端子54vを基準として-280Vの電圧が印加される。すなわち、この場合、コイル131a及びコイル132aは、第2のスイッチング素子間端子54vを基準として-280Vの電圧が印加される。この-280Vの電圧は、コンデンサ521及びコンデンサ522に印加された280Vの電圧である。
【0068】
つまり、スイッチング素子駆動回路59は、第1のスイッチング素子53と第1のスイッチング素子54とを一定の周期で交互にオンにし、これに合わせて第2のスイッチング素子56又は第2のスイッチング素子55をオンにする。これにより、スイッチング素子駆動回路59は、コイル131a及びコイル132aに
図5に示した矩形波交流を供給する。なお、コイル131a及びコイル132aに印加される電圧は、線間電圧とも呼ばれる。
【0069】
同様に、スイッチング素子駆動回路59は、第2のスイッチング素子55と第2のスイッチング素子56とを一定の周期で交互にオンにし、これに合わせて第3のスイッチング素子58又は第3のスイッチング素子57をオンにする。これにより、スイッチング素子駆動回路59は、コイル132a及びコイル133aに
図5に示した矩形波交流を供給する。また、スイッチング素子駆動回路59は、第3のスイッチング素子57と第3のスイッチング素子58を一定の周期で交互にオンにし、これに合わせて第1のスイッチング素子54又は第1のスイッチング素子53をオンにする。これにより、スイッチング素子駆動回路59は、コイル133a及びコイル131aに
図5に示した矩形波交流を供給する。
【0070】
コイル131a及びコイル132aに供給される矩形波交流の周期と、コイル132a及びコイル133aに供給される矩形波交流の周期と、コイル133a及びコイル131aに供給される矩形波交流の周期とは等しい。
【0071】
ただし、スイッチング素子駆動回路59は、第2のスイッチング素子55及び第2のスイッチング素子56を交互にオンするタイミングを第1のスイッチング素子53及び第1のスイッチング素子54を交互にオンするタイミングよりも矩形波交流の周期の1/3遅くしている。このため、コイル132a及びコイル133aに供給される矩形波交流は、コイル131a及びコイル132aに供給される矩形波交流よりも位相が120度遅くなっている。また、スイッチング素子駆動回路59は、第3のスイッチング素子57及び第3のスイッチング素子58を交互にオンするタイミングを第1のスイッチング素子53及び第1のスイッチング素子54を交互にオンするタイミングよりも矩形波交流の周期の2/3遅くしている。このため、コイル133a及びコイル131aに供給される矩形波交流は、コイル131a及びコイル132aに供給される矩形波交流よりも位相が240度遅くなっている。
【0072】
第1のスイッチング素子53がオフしてから第1のスイッチング素子54がオンするまでの期間及び第1のスイッチング素子54がオフしてから第1のスイッチング素子53がオンするまでの期間、第1のスイッチング素子53及び54は、いずれもオフとなる。第2のスイッチング素子55がオフしてから第2のスイッチング素子56がオンするまでの期間及び第2のスイッチング素子56がオフしてから第2のスイッチング素子55がオンするまでの期間、第2のスイッチング素子55及び56は、いずれもオフとなる。第3のスイッチング素子57がオフしてから第3のスイッチング素子58がオンするまでの期間及び第3のスイッチング素子58がオフしてから第3のスイッチング素子57がオンするまでの期間、第3のスイッチング素子57及び58は、いずれもオフとなる。これらの期間は、デッドタイムである。
【0073】
コイル131a及びコイル132aに供給される矩形波交流の電圧は、
図5に示すように、その値がゼロになる期間を経た後、反転する。この期間の長さは、矩形波交流の周期の約1/6である。ただし、第1のスイッチング素子間端子53uの電圧、第2のスイッチング素子間端子54vの電圧及び第3のスイッチング素子間端子55wの電圧は、IGBTのデッドタイムを除きゼロとならない。以上により、コイル131a、コイル132a及びコイル133aは、回転磁界を発生させる。陽極130aは、この回転磁界により回転する。
【0074】
次に、
図6を参照しながら、陽極回転コイル駆動装置5が第2のX線管13bを駆動する場合について説明する。
図6は、第1の実施形態に係る陽極回転コイル駆動装置が第2のX線管に二相交流を供給する場合における陽極回転コイル駆動装置の回路構成の一例を示す図である。なお、
図3を参照しながら説明したAC/DC変換回路4、陽極回転コイル駆動装置5、X線管切り替え回路6、高圧発生インバータ回路71及び高電圧発生器72の説明のうち重複する事項については、説明を省略する。
【0075】
第2のX線管13bは、陽極130bが二相交流により駆動されるX線管であり、
図6に示すように、二つの一対のコイル(コイル131b及びコイル132b)と、共通端子13cとを有する。コイル131bの一端及びコイル132bの一端は、共通端子13cに接続されている。これらのコイルは、陽極回転コイル駆動装置5から二相交流の供給を受け、回転磁界を発生させる。陽極130bは、この回転磁界により回転する。なお、コイル131b及びコイル132bの一方のコイルは、主コイルと呼ばれ、他方のコイルは、補助コイルと呼ばれる。
【0076】
図6に示すAC/DC変換回路4は、
図3と同様に、三相整流ダイオードブリッジ41と、平滑コンデンサ42とを有し、三相整流ダイオードブリッジ41は、実効値400Vの三相交流を発生する三相交流電源AC4に接続されている。AC/DC変換回路4は、560Vの直流電圧を発生し、発生した560Vの直流電圧を高圧発生インバータ回路71に供給するとともに、陽極回転コイル駆動装置5に供給する。
【0077】
コンデンサ521の高電圧側の端子は、平滑コンデンサ42の高電圧側の端子に接続されている。コンデンサ522の低電圧側の端子は、平滑コンデンサ42の低電圧側の端子に接続されている。つまり、昇圧/降圧コンバータは、AC/DC変換回路4が発生させる直流電圧の昇圧及び降圧を行わないため、AC/DC変換回路4と、コンデンサ521及びコンデンサ522との間に挿入されない。その理由については後述する。
【0078】
X線管切り替え回路6は、第2のX線管13bがX線を照射する場合、コンデンサ間端子52nと、第1のスイッチング素子間端子53u、第2のスイッチング素子間端子54v及び第3のスイッチング素子間端子55wのうち二つとで第2のX線管13bに電力を供給する。すなわち、X線管切り替え回路6は、コンデンサ間端子52nを共通端子13cに接続し、第1のスイッチング素子間端子53u、第2のスイッチング素子間端子54v及び第3のスイッチング素子間端子55wのうち二つを第2のX線管13bのコイル131b及びコイル132bそれぞれに接続する。X線管切り替え回路6は、例えば、これらの端子を
図6に示すように接続する。
【0079】
コンデンサ間端子52nは、第2のX線管13bの共通端子13cに接続される。第1のスイッチング素子間端子53uは、第2のX線管13bのコイル131bに接続される。第2のスイッチング素子間端子54vは、第2のX線管13bのコイル132bに接続される。第3のスイッチング素子間端子55wは、第2のX線管13bのコイル131b及びコイル132bのいずれにも接続されない。なお、この場合、コイル131bは、主コイルとも呼ばれ、コイル132bは、補助コイルとも呼ばれる。
【0080】
図6に示す接続状態は、
図4に示す第2スイッチ群612を用いて実現される。
図4に示す第2スイッチ群612は、第1のスイッチング素子間端子53uとコイル131bとを接続する導線に設けられたスイッチと、第2のスイッチング素子間端子54vとコイル132bとを接続する導線に設けられたスイッチと、コンデンサ間端子52nと共通端子13cとを接続する導線に設けられたスイッチとで構成される。
【0081】
「第1スイッチ群611:オフ、第2スイッチ群612:オン」とすることで、陽極回転コイル駆動装置5は、陽極13bのスタータとして、
図6に示すように、中性点(コンデンサ間端子52n)及び二組の「二つのスイッチング素子」を使った単相ハーフブリッジインバータ回路を有する構成となる。
【0082】
ここで、平滑コンデンサ42は、560Vの直流電圧を陽極回転コイル駆動装置5に出力する。第2のX線管13bのコイル131b及びコイル132bは、実効値が200Vとなる交流電圧280Vで駆動される。このため、単相ハーフブリッジインバータ回路においては、中性点を基準として、コンデンサ521の高電位側に+280Vが印加され、コンデンサ522の低電位側に-280Vが印加される必要がある。単相ハーフブリッジインバータ回路の入力電圧は、第1のX線管13a及び第2のX線管13bの駆動電圧の2倍である。従って、実効値400Vの三相交流を入力として第2のX線管13bを駆動する場合には、平滑コンデンサ42が出力する560Vの直流電圧を、昇圧及び降圧することなく、スタータに供給すればよい。
【0083】
かかる場合、昇圧/降圧切り替え回路515は、AC/DC変換回路4の高電圧側の端子(平滑コンデンサ42の高電圧側の端子)を二つのコンデンサ521及び522の高電圧側の端子(コンデンサ521の高電圧側の端子)に接続し、AC/DC変換回路4の低電圧側の端子(平滑コンデンサ42の低電圧側の端子)を二つのコンデンサ521及び522の低電圧側の端子(コンデンサ522の低電圧側の端子)に接続する。
【0084】
次に、
図7を参照しながら、第1の実施形態に係る陽極回転コイル駆動装置5が第2のX線管13bを駆動する方法を説明する。
図7は、第1の実施形態において、第2のX線管のコイルに印加される電圧と、各スイッチング素子のオン/オフとの関係を示すタイミングチャートである。これにより、スイッチング素子駆動回路59は、単相ハーフブリッジインバータ回路によって二相交流を発生させるように各スイッチング素子のオン及びオフを制御する。なお、
図5を参照しながら説明した第1の実施形態に係る陽極回転コイル駆動装置5が第1のX線管13aを駆動する方法と同様である事項については、説明を省略する。
【0085】
三相交流電源AC4は、三相整流ダイオードブリッジ41に実効値400Vの三相交流を供給する。三相整流ダイオードブリッジ41は、この三相交流を全波整流し、平滑コンデンサ42に560Vの直流電圧を印加する。なお、この560Vの直流電圧は、三相交流電源AC4が三相整流ダイオードブリッジ41に供給する三相交流の電圧の最大値である。平滑コンデンサ42は、コンデンサ521及びコンデンサ522に560Vの直流電圧を印加する。すなわち、AC/DC変換回路4は、560Vの直流電圧を発生させ、これをコンデンサ521及びコンデンサ522に印加する。これにより、コンデンサ521及びコンデンサ522は、それぞれ280Vの直流電圧が印加される。
【0086】
スイッチング素子駆動回路59は、第1のスイッチング素子53、第1のスイッチング素子54、第2のスイッチング素子55及び第2のスイッチング素子56に電圧パルスを供給する。これにより、スイッチング素子駆動回路59は、例えば、
図7に示したタイミングで第1のスイッチング素子53、第1のスイッチング素子54、第2のスイッチング素子55及び第2のスイッチング素子56をオン又はオフにする。
【0087】
第1のスイッチング素子53がオンであり、第1のスイッチング素子54がオフである場合、コイル131bは、共通端子13cを基準として+280Vの電圧が印加される。この+280Vの電圧は、コンデンサ521に印加された280Vの電圧である。第1のスイッチング素子53がオフであり、第1のスイッチング素子54がオンである場合、コイル131bは、共通端子13cを基準として-280Vの電圧が印加される。この-280Vの電圧は、コンデンサ522に印加された280Vの電圧である。スイッチング素子駆動回路59は、第1のスイッチング素子53と第1のスイッチング素子54とを一定の周期で交互にオンにすることにより、コイル131bに
図7に示した矩形波交流を供給する。なお、コイル131bに印加される電圧は、相電圧とも呼ばれる。
【0088】
第2のスイッチング素子55がオンであり、第2のスイッチング素子56がオフである場合、コイル132bは、共通端子13cを基準として+280Vの電圧が印加される。この+280Vの電圧は、コンデンサ521に印加された280Vの電圧である。第2のスイッチング素子55がオフであり、第2のスイッチング素子56がオンである場合、コイル132bは、共通端子13cを基準として-280Vの電圧が印加される。この-280Vの電圧は、コンデンサ522に印加された280Vの電圧である。スイッチング素子駆動回路59は、第2のスイッチング素子55と第2のスイッチング素子56を一定の周期で交互にオンにすることにより、コイル132bに
図7に示した矩形波交流を供給する。なお、コイル132bに印加される電圧は、相電圧とも呼ばれる。
【0089】
コイル132bに供給される矩形波交流の周期は、コイル131bに供給される矩形波交流の周期と等しい。ただし、スイッチング素子駆動回路59は、第1のスイッチング素子53及び第1のスイッチング素子54を交互にオンするタイミングと第2のスイッチング素子55及び第2のスイッチング素子56を交互にオンするタイミングを矩形波交流の周期の1/4ずらしている。このため、コイル131bに供給される矩形波交流とコイル132bに供給される矩形波交流は、位相が90度ずれている。これにより、コイル131b及びコイル132bは、回転磁界を発生させる。陽極130bは、この回転磁界により回転する。
【0090】
第1のスイッチング素子53がオフしてから第1のスイッチング素子54がオンするまでの期間及び第1のスイッチング素子54がオフしてから第1のスイッチング素子53がオンするまでの期間、第1のスイッチング素子53及び第1のスイッチング素子54は、いずれもオフとなる。これらの期間中、コイル131b及びコイル132bに印加される電圧は、ゼロとなる。これは、第1のスイッチング素子53及び第1のスイッチング素子54が同時にオンとなり、陽極回転コイル駆動装置5が故障することを防ぐためである。第1のスイッチング素子53及び第1のスイッチング素子54がオフとなっている期間は、デッドタイムとも呼ばれる。また、これらは、第2のスイッチング素子55及び第2のスイッチング素子56についても同様である。なお、第3のスイッチング素子57及び第3のスイッチング素子58は、常にオフとなっている。
【0091】
上記では、AC/DC変換回路4は、三相交流電源AC4から実効値400Vの三相交流の供給を受けた。しかし、X線高電圧装置3は、実効値400Vの三相交流を入力とする他に、実効値200Vの三相交流を入力とする場合もある。以下では、X線高電圧装置3が、実効値200Vの三相交流を入力として、第1のX線管13aを駆動する場合と、第2のX線管13bを駆動する場合とについて、説明する。
【0092】
まず、
図8を参照しながら、実効値200Vの三相交流を入力とする際に、陽極回転コイル駆動装置5が第1のX線管13aを駆動する場合について詳細に説明する。
図8は、第1の実施形態に係る陽極回転コイル駆動装置が第1のX線管に三相交流を供給する場合における陽極回転コイル駆動装置の回路構成の別の一例を示す図である。
【0093】
三相整流ダイオードブリッジ41は、三相交流電源AC2に接続されている。三相交流電源AC2は、三相整流ダイオードブリッジ41に実効値200Vの三相交流を供給する。平滑コンデンサ42は、280Vの直流電圧を陽極回転コイル駆動装置5に出力する。
【0094】
X線管切り替え回路6は、第1のX線管13aがX線を照射する場合、実効値400Vの三相交流を入力とする場合と同様の制御を行う。すなわち、X線管切り替え回路6は、第1のX線管13aがX線を照射する場合、第1のスイッチング素子間端子53u、第2のスイッチング素子間端子54v及び第3のスイッチング素子間端子55wで第1のX線管13aに電力を供給する。例えば、X線管切り替え回路6は、第1のX線管13aがX線を照射する場合、
図4に示す第1スイッチ群611をオンとし、
図4に示す第2スイッチ群612をオフにする。これにより、陽極回転コイル駆動装置5は、陽極130aのスタータとして、
図3と同様、
図8に示すように、三組の「二つのスイッチング素子」を使った三相フルブリッジインバータ回路を有する構成となる。
【0095】
第1のX線管13aを三相フルブリッジインバータ回路で駆動するので、平滑コンデンサ42が出力する280Vの直流電圧は、昇圧及び降圧が不要である。かかる場合、昇圧/降圧切り替え回路515は、AC/DC変換回路4の高電圧側の端子(平滑コンデンサ42の高電圧側の端子)を二つのコンデンサ521及び522の高電圧側の端子(コンデンサ521の高電圧側の端子)に接続し、AC/DC変換回路4の低電圧側の端子(平滑コンデンサ42の低電圧側の端子)を二つのコンデンサ521及び522の低電圧側の端子(コンデンサ522の低電圧側の端子)に接続する。なお、陽極回転コイル駆動装置5が第1のX線管13aを駆動する方法は、
図5を用いて説明した方法と同様である。
【0096】
次に、
図9を参照しながら、実効値200Vの三相交流を入力とする際に、陽極回転コイル駆動装置5が第2のX線管13bを駆動する場合について詳細に説明する。
図9は、第1の実施形態に係る陽極回転コイル駆動装置が第2のX線管に二相交流を供給する場合における陽極回転コイル駆動装置の回路構成の別の一例を示す図である。
【0097】
X線管切り替え回路6は、第2のX線管13bがX線を照射する場合、実効値400Vの三相交流を入力とする場合と同様の制御を行う。すなわち、X線管切り替え回路6は、
第2のX線管13bがX線を照射する場合、コンデンサ間端子52nと、第1のスイッチング素子間端子53u、第2のスイッチング素子間端子54v及び第3のスイッチング素子間端子55wのうち二つとで第2のX線管13bに電力を供給する。例えば、X線管切り替え回路6は、第2のX線管13bがX線を照射する場合、
図4に示す第1スイッチ群611をオフとし、
図4に示す第2スイッチ群612をオンにする。これにより、陽極回転コイル駆動装置5は、陽極130bのスタータとして、
図6と同様、
図9に示すように、中性点(コンデンサ間端子52n)及び二組の「二つのスイッチング素子」を使った単相ハーフブリッジインバータ回路を有する構成となる。
【0098】
第2のX線管13bを単相ハーフブリッジインバータ回路で駆動することから、平滑コンデンサ42が出力する280Vの直流電圧は、560Vの直流電圧に昇圧する必要がある。第1の実施形態では、昇圧する場合も、n型MOSFET511と、n型MOSFET512と、昇圧/降圧コイル513と、昇圧/降圧スイッチング素子駆動回路514と、昇圧/降圧切り替え回路515とで構成される昇圧/降圧コンバータを用いる。
【0099】
具体的には、昇圧/降圧切り替え回路515は、降圧する場合と同様、昇圧する場合も、
図9に示すように、昇圧/降圧コンバータの低電圧側の端子(n型MOSFET512のソース)を、AC/DC変換回路4の低電圧側の端子(平滑コンデンサ42の低電圧側の端子)及び二つのコンデンサ521及び522の低電圧側の端子(コンデンサ522の低電圧側の端子)に接続する。また、昇圧/降圧切り替え回路515は、昇圧する場合、
図9に示すように、昇圧/降圧コンバータの高電圧側の端子(n型MOSFET511のドレイン)を二つのコンデンサ521及び522の高電圧側の端子(コンデンサ521の高電圧側の端子)に接続する。また、昇圧/降圧切り替え回路515は、昇圧する場合、
図9に示すように、昇圧/降圧コイル513の他端をAC/DC変換回路4の高電圧側の端子(平滑コンデンサ42の高電圧側の端子)に接続する。
【0100】
すなわち、昇圧/降圧切り替え回路515は、「n型MOSFET511と、n型MOSFET512と、昇圧/降圧コイル513とで構成される回路」の入力と出力とを、
図3に示す状態から入れ替える。具体的には、昇圧/降圧切り替え回路515は、昇圧/降圧コイル513の他端を、コンデンサ521の高電圧側の端子からコンデンサ42の高電圧側の端子につなぎ替え、n型MOSFET511のドレインを、平滑コンデンサ42の高電圧側の端子からコンデンサ521の高電圧側の端子につなぎ替える。
【0101】
これにより、昇圧/降圧コンバータは、昇圧コンバータとして機能し、AC/DC変換回路4が発生させた280Vの直流電圧を昇圧した電圧をコンデンサ521及びコンデンサ522に印加する。昇圧/降圧コンバータは、例えば、次のように動作する。
【0102】
昇圧/降圧スイッチング素子駆動回路514は、n型MOSFET511のゲート及びn型MOSFET512のゲートに電圧パルスを供給し、n型MOSFET511とn型MOSFET512を一定の周期で交互にオンにする。この場合、n型MOSFET511及びn型MOSFET512は、約0.5のデューティ比で交互にオンにされる。これにより、昇圧/降圧コンバータは、昇圧/降圧コイル513の他端とn型MOSFET512のソースの間に印加された280Vの直流電圧を560Vまで昇圧する。これらの電圧とデューティ比の関係は、次の式で表される。ここで、Vinは、昇圧/降圧コイル513の他端とn型MOSFET512のソースの間に印加された280Vの直流電圧であり、Voutは、昇圧/降圧コンバータが出力する560Vの直流電圧である。
【0103】
【0104】
なお、陽極回転コイル駆動装置5が第2のX線管13bを駆動する方法は、
図7を用いて説明した方法と同様である。
【0105】
上述したように、第1の実施形態に係る陽極回転コイル駆動装置5は、1台の装置で、二相交流及び三相交流の両方を発生させることができる。すなわち、陽極回転コイル駆動装置5は、三相フルブリッジインバータ回路及び単相ハーフブリッジインバータ回路の双方を、1つの回路「コンデンサ521及びコンデンサ522と、三組の二つのスイッチング素子(第1のスイッチング素子53及び54、第2のスイッチング素子55及び56、第3のスイッチング素子57及び58)」の接続状態を切り替えることで実現することができる。その結果、陽極回転コイル駆動装置5は、三相フルブリッジインバータ回路で三相交流を第1のX線管13aに供給できるので、陽極130aの回転を適切なタイミングで素早く立ち上げることができる。このため、第1の撮影装置10aは、適切なタイミングでX線画像を撮影することができる。
【0106】
また、陽極回転コイル駆動装置5は、単相ハーフブリッジインバータ回路で二相交流を第2のX線管13bに供給できるので、三相インバータを用いて二相交流を発生させる場合に行っていた出力電圧パルス幅の制限が不要となり、陽極130bの回転も適切なタイミングで素早く立ち上げることができる。このため、第2の撮影装置10bは、適切なタイミングでX線画像を撮影することができる。また、三相インバータを用いて二相交流を発生させる場合にアーム短絡の防止に必要だった絶縁トランスは、本実施形態の構成ではでは不要となる。
【0107】
また、陽極回転コイル駆動装置5は、高圧発生インバータ回路71に供給するために整流・平滑された直流電圧を電源として使い、昇圧/降圧コンバータを有するため、三相交流電源ACが供給する交流電圧の実効値が400Vであるか200Vであるかに関らず、第1のX線管13aも、第2のX線管13bも駆動させることができる。また、かかる構成とすることで、第1の実施形態では、重量及び寸法の増加を抑制することができる。これについて、
図10の比較例を用いて説明する。
図10は、第1の実施形態に対する比較例を示す図である。
【0108】
図10に示す比較例では、X線管130は、陽極1300が単相交流により駆動されるX線管であり、コイル1310及びコイル1320と、進相コンデンサ1330とを有する。コイル1310及びコイル1320には、実効値200Vの交流が供給される必要がある。
図10に示すAC/DC変換回路40は、三相整流ダイオードブリッジ410と、平滑コンデンサ420とを有し、三相交流電源AC40に接続されている。三相交流電源AC40は、実効値400Vの三相交流を発生させる。三相整流ダイオードブリッジ410は、三相交流電源AC40が供給する三相交流を全波整流し、コンデンサ420に直流電圧を印加する。高圧発生インバータ回路710は、コンデンサ420に印加された直流電圧を交流電圧に変換し、これを高電圧発生器720に供給する。高電圧発生器720は、この交流電圧を直流電圧に変換しつつ昇圧し、管電圧としてX線管130に印加する。
【0109】
図10に示す陽極回転コイル駆動装置50は、変圧器510と、ダイオードブリッジ520と、コンデンサ530と、IGBT5410と、IGBT5420と、IGBT5510と、IGBT5520とを有する。変圧器510は、三相交流電源AC40の三つの出力端子のうちの二つに接続され、実効値400Vの交流を実効値200Vの交流に変換する。変圧器510は、実効値200Vの交流を陽極回転コイル駆動装置50に供給する。ダイオードブリッジ520は、変圧器510が供給する交流を全波整流し、コンデンサ530に直流電圧を印加する。IGBT5410及びIGBT5520がオンである状態とIGBT5420及びIGBT5510がオンである状態が一定の周期で交互に繰り返され、陽極回転コイル駆動装置50は、X線管130に単相交流を供給する。
【0110】
陽極回転コイル駆動装置50が出力する単相交流は、コイル1310及びコイル1320に供給される。しかし、コイル1320に接続されている進相コンデンサ1330は、この単相交流の位相を90度進める。このため、コイル1310を流れる交流とコイル1320を流れる交流は、位相が90度ずれる。これにより、コイル1310及びコイル1320は、回転磁界を発生させる。陽極1300は、この回転磁界により回転する。
【0111】
しかし、
図10に示す比較例では、進相コンデンサ1330を有するため、重量及び寸法が増加してしまっていた。また、
図10に示す比較例では、三相交流電源が供給する交流の電圧の実効値が400Vである場合、実効値200Vの三相交流に変換する変圧器510を必要とするため、重量及び寸法が更に増加してしまっていた。
【0112】
これに対して、第1の実施形態に係る陽極回転コイル駆動装置5は、
図10に示す変圧器510を必要としない。さらに、第2のX線管13bは、
図10に示すX線管130と異なり、進相コンデンサ1330を必要としない。従って、第1の実施形態では、重量及び寸法の増加を抑制することができる。また、陽極回転コイル駆動装置5は、「n型MOSFET511と、n型MOSFET512と、昇圧/降圧コイル513とで構成される回路」の入力と出力との接続を切り替えるだけで、同じ回路で昇圧も降圧も行うことができる。
【0113】
(第2の実施形態)
上述したX線診断システム1では、実効値400Vの三相交流を入力として第1のX線管13aを駆動する場合、インバータの入力電圧を560Vから280Vに降圧する必要があり、実効値200Vの三相交流を入力として第2のX線管13bを駆動する場合、インバータの入力電圧を280Vから560Vに昇圧する必要がある。一方、実効値200Vの三相交流を入力として第1のX線管13aを駆動する場合、及び、実効値400Vの三相交流を入力として第2のX線管13bを駆動する場合、昇圧及び降圧は不要である。そのため、第1の実施形態では、「入出力の入れ替えにより昇圧も降圧も可能となる昇圧/降圧コンバータ」がAC/DC変換回路4と二つのコンデンサ521及び522の間に挿入される構成と、昇圧/降圧コンバータを挿入しない構成とを切り替え可能な構成としていた。
【0114】
ところで、降圧コンバータを使用せずに、インバータ回路の制御により印加電圧の実効値を200Vに下げることができる。かかる方法としては、インバータ回路のスイッチング素子のオン時間を短くする方法や、インバータ回路のスイッチング素子をオンするオン信号に、X線管のコイル(第1のX線管13aのコイル131a,132a,133a)に印加する交流電圧の周波数よりも高いキャリア周波数で変調をかける方法がある。ただし、これらの方法では、昇圧はできないため、実効値200Vの三相交流を入力として第2のX線管13bを駆動する場合には、インバータの前段に昇圧コンバータが必要になる。この場合、昇圧のみに機能を限定すればよいので、第1の実施形態で説明した昇圧/降圧コンバータより簡素な構成の回路(昇圧コンバータ)を配置すればよい。
【0115】
第2の実施形態では、昇圧コンバータのみを配置する構成について説明する。なお、第2の実施形態でも、X線管切り替え回路6は、第1の実施形態と同様の接続切り替えを行う。
図11は、昇圧コンバータのみを有する陽極回転コイル駆動装置5xの一例を示している。
図11は、第2の実施形態に係る陽極回転コイル駆動装置の回路構成の一例を示す図である。
図11は、実効値200Vの三相交流を供給する三相交流電源AC2を電源供給部として、第2のX線管13bがX線を照射する場合の陽極回転コイル駆動装置5xの回路構成の一例を示している。陽極回転コイル駆動装置5xは、上述したn型MOSFET511、n型MOSFET512、昇圧/降圧コイル513及び昇圧/降圧スイッチング素子駆動回路514の代わりに、ダイオード511x、IGBT512x、昇圧コイル513x及び昇圧スイッチング素子駆動回路514xを有する。「ダイオード511x、IGBT512x、昇圧コイル513x及び昇圧スイッチング素子駆動回路514x」は、昇圧コンバータとも呼ばれる。IGBT512xは、昇圧スイッチング素子とも呼ばれる。
【0116】
昇圧コンバータにおいて、ダイオード511xのアノードと、IGBT512xの一端(コレクタ)とが、昇圧コイル513xの一端に接続されている。昇圧/降圧切り替え回路515は、第2の実施形態では昇圧切り替え回路であり、昇圧コンバータが直流電圧を昇圧する場合と、昇圧コンバータが直流電圧の昇圧を行わない場合とを切り替える。
【0117】
昇圧/降圧切り替え回路515は、直流電圧を昇圧する場合、ダイオード511xのカソードを二つのコンデンサの高電圧側の端子(コンデンサ521の高電圧側の端子)に接続する。また、昇圧/降圧切り替え回路515は、直流電圧を昇圧する場合、IGBT512xの他端(エミッタ)をAC/DC変換回路4の低電圧側の端子(平滑コンデンサ42の低電圧側の端子)及び二つのコンデンサの低電圧側の端子(コンデンサ522の高電圧側の端子)に接続する。また、昇圧/降圧切り替え回路515は、直流電圧を昇圧する場合、昇圧コイル513xの他端をAC/DC変換回路4の高電圧側の端子(平滑コンデンサ42の高電圧側の端子)に接続する。
【0118】
これにより、昇圧コンバータは、AC/DC変換回路4と二つのコンデンサ(521、522)との間に挿入され、直流電圧を昇圧した電圧を二つのコンデンサ(521、522)に印加する。昇圧スイッチング素子駆動回路514xは、昇圧スイッチング素子に電圧パルスを供給する。すなわち、昇圧スイッチング素子駆動回路514xは、IGBT512xのゲートに電圧パルスを供給し、IGBT512xのオン/オフをデューティ比約0.5(50%)で切り替える。これにより、昇圧コンバータは、昇圧コイル513xの一端とIGBT512xのエミッタの間に印加された280Vの直流電圧を560Vまで昇圧する。
【0119】
なお、昇圧/降圧切り替え回路515は、昇圧しない場合、昇圧コンバータを介さずに、AC/DC変換回路4と二つのコンデンサ(521、522)とを接続する。具体的には、昇圧/降圧切り替え回路515は、平滑コンデンサ42の高電圧側の端子をコンデンサ521の高電圧側の端子に接続し、平滑コンデンサ42の低電圧側の端子をコンデンサ522の低電圧側の端子に接続する。
【0120】
これにより、実効値200Vの三相交流を入力として第1のX線管13aを駆動する場合、陽極回転コイル駆動装置5xは、
図6に示す回路構成となる。また、実効値400Vの三相交流を入力として第2のX線管13bを駆動する場合、陽極回転コイル駆動装置5xは、
図9に示す回路構成となる。
【0121】
そして、第2の実施形態では、実効値400Vの三相交流を入力として第1のX線管13aを駆動する場合も、陽極回転コイル駆動装置5xは、
図6に示す回路構成となる。かかる場合、上述したオン時間の短縮処理や、変調処理を、例えばスイッチング素子駆動回路59が実行することで、三相フルブリッジインバータ回路に対する印加電圧の実効値を200Vに下げる。これにより、第1のX線管13aを駆動することが可能になる。
【0122】
(その他の実施形態)
上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてもよい。
【0123】
(PWM制御)
上述した実施形態では、陽極回転コイル駆動装置5は、第1のX線管13aが有するコイル131a、コイル132a及びコイル133aに
図5に示した矩形波交流を供給し、第2のX線管13bが有するコイル131b及びコイル132bに
図7に示した矩形波交流を供給したが、これに限定されない。
【0124】
上述した実施形態では、スイッチング素子駆動回路59は、
図5又は
図7に示したタイミングで第1のスイッチング素子53、第1のスイッチング素子54、第2のスイッチング素子55、第2のスイッチング素子56、第3のスイッチング素子57、第3のスイッチング素子58を所定の期間中オンにしたが、これに限定されない。スイッチング素子駆動回路59は、この所定の期間中、パルス幅変調(Pulse Width Modulation:PWM)をかけることにより、これらのIGBTのオン/オフを切り替えてもよい。
図12~
図15は、スイッチング素子駆動回路が行うPWM制御を説明するための図である。例えば、陽極回転コイル駆動装置5は、
図12に示すPWM制御を行って、第1のX線管13aのコイル131a、コイル132a及びコイル133a又は第2のX線管13bのコイル131b及びコイル132bに疑似的な正弦波交流を供給することができる。また、スイッチング素子駆動回路59が細かくパルス幅変調をかけた場合、この疑似的な正弦波交流は、例えば、
図12に示した点線Dで表される正弦波交流に近づく。
【0125】
X線管では、モータの回転子がX線管の真空容器中にあり、容器の外壁を挟んだ外側に固定子コイルがあるため、回転子と固定子間のギャップが大きい。このため、X線管を矩形状の波形で駆動しても、一般的なモータのように、トルクの変動によるコギング現象が起こりにくい。しかし、疑似的な正弦波交流を発生させることで、陽極130aとコイル131a、コイル132a及びコイル133aとの間に発生するトルクの変動及び陽極130bとコイル131b及びコイル132bとの間に発生するトルクの変動が更に抑制される。このため、陽極回転コイル駆動装置5は、陽極130a及び陽極130bを滑らかに回転させ、第1のX線管13a及び第2のX線管13bが振動現象を起こすことにより発生する振動や異音を抑制できる。
【0126】
また、スイッチング素子駆動回路59は、
図13に示すように、上述した所定の期間の最初と最後にのみパルス幅変調をかけることにより、これらのIGBTのオン/オフを切り替えてもよい。この場合でも、陽極回転コイル駆動装置5は、第1のX線管13a及び第2のX線管13bの振動現象を抑制することができる。
【0127】
陽極130a又は陽極130bの回転を開始する場合又は陽極130a又は陽極130bの回転速度を上昇させる場合、陽極回転コイル駆動装置5は、例えば、コイル131a、コイル132a及びコイル133a又はコイル131b及びコイル132bに実効値200Vの交流電力を供給する。一方、回転速度が規定まで上昇した後、陽極130a又は陽極130bの回転速度を現状のまま維持する場合、陽極回転コイル駆動装置5は、例えば、コイル131a、コイル132a及びコイル133a又はコイル131b及びコイル132bに実効値40Vの交流電流を供給する。この場合、陽極回転コイル駆動装置5は、例えば、
図14又は
図15に示したPWM制御を行う。これらのPWM制御は、電圧の実効値が40Vとなるよう、デューティ比が調整されている。
【0128】
(第1のX線管)
上述した実施形態では、第1の撮影装置10aは、コイル131a、コイル132a及びコイル133aがスター結線されている第1のX線管13aを有するが、これに限定されない。
図16は、第1のX線管の別の一例を示す図である。第1の撮影装置は、
図16に示すように、コイル131d、コイル132d及びコイル133dがデルタ結線されている第1のX線管13dを有していてもよい。コイル131dの一端は、第1のスイッチング素子間端子53uに接続され、コイル131dの他端は、第2のスイッチング素子間端子54vに接続される。コイル132dの一端は、スイッチング素子間端子54vに接続され、コイル132dの他端は、第3のスイッチング素子間端子55wに接続される。コイル133dの一端は、第3のスイッチング素子間端子55wに接続され、コイル133dの他端は、第1のスイッチング素子間端子53uに接続される。この場合において、陽極回転コイル駆動装置5が第1のX線管13dの陽極130dを回転させる方法は、上述した実施形態と同様である。
【0129】
上述した実施形態では、第1のX線管13aが第1の撮影装置10aに含まれ、第2のX線管13bが第2の撮影装置10bに含まれていたが、これに限定されない。第1のX線管13a及び第2のX線管13bが一つの撮影装置に含まれていてもよい。
【0130】
また、上述した実施形態では、X線診断システム1が、第1のX線管13a及び第2のX線管13bを有する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、X線診断システム1は、第1のX線管13a及び第2のX線管13bのいずれか一方のみを有する場合であってもよい。
【0131】
例えば、陽極回転コイル駆動装置5は、
図17に示すように、第1のスイッチング素子間端子53uと、第2のスイッチング素子間端子54vと、端子56xとを有する。端子56xは、スイッチ613により、第3のスイッチング素子間端子55w及びコンデンサ間端子52nのいずれか一方と接続される。なお、
図17は、陽極回転コイル駆動装置5の回路構成の一例を示す図である。
【0132】
図18Aに示すように、X線診断システム1が第1のX線管13aのみを有する場合、端子56xは、第3のスイッチング素子間端子55wと接続される。また、第1のスイッチング素子間端子53uは、第1のX線管13aにおけるコイル131aと接続される。また、第2のスイッチング素子間端子54vは、第1のX線管13aにおけるコイル132aと接続される。また、第3のスイッチング素子間端子55wと接続される端子56xは、第1のX線管13aにおけるコイル133aと接続される。そして、陽極回転コイル駆動装置5は、第1のスイッチング素子間端子53uと、第2のスイッチング素子間端子54vと、第3のスイッチング素子間端子55wとにより、三相交流電力を、第1のX線管13aに供給する。なお、
図18Aは、陽極回転コイル駆動装置の回路構成の一例を示す図である。
【0133】
一方で、
図18Bに示すように、X線診断システム1が第2のX線管13bのみを有する場合、端子56xは、コンデンサ間端子52nと接続される。また、第1のスイッチング素子間端子53uは、第2のX線管13bにおけるコイル131bと接続される。また、第2のスイッチング素子間端子54vは、第2のX線管13bにおけるコイル132bと接続される。また、コンデンサ間端子52nと接続される端子56xは、第2のX線管13bにおける共通端子13cと接続される。そして、陽極回転コイル駆動装置5は、第1のスイッチング素子間端子53uと、第2のスイッチング素子間端子54vと、コンデンサ間端子52nとにより、二相交流電力を、第2のX線管13bに供給する。なお、
図18Bは、陽極回転コイル駆動装置の回路構成の一例を示す図である。
【0134】
上述したように、X線診断システム1は、第1のX線管13a及び第2のX線管13bのいずれか一方のみを有する場合においても、三相交流電力及び二相交流電力を切り替えて供給することができる。例えば、X線診断システム1は、三相交流電力により駆動されるX線管と、二相交流電力により駆動されるX線管とが交換された場合において、交換前後のいずれのX線管についても、素早く立ち上げることができる。
【0135】
また、
図4では、スイッチ群61のオン/オフを制御することにより、三相交流電力の供給と二相交流電力の供給とを切り替える場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。
【0136】
例えば、X線診断システム1は、
図17、
図18A及び
図18Bに示したように、
図4のスイッチ群61に代えて、スイッチ613を有する。スイッチ613は、第3のスイッチング素子間端子55wとの接続、及び、コンデンサ間端子52nとの接続を切り替える。即ち、スイッチ613は、コイル133a及び共通端子13cを、第3のスイッチング素子間端子55w及びコンデンサ間端子52nのいずれか一方に接続する。
【0137】
例えば、スイッチ613は、
図18Aに示したように、コイル133aと、第3のスイッチング素子間端子55wとを接続する。この場合、陽極回転コイル駆動装置5は、第1のスイッチング素子間端子53uと、第2のスイッチング素子間端子54vと、第3のスイッチング素子間端子55wとにより、三相交流電力を、第1のX線管13aに供給する。
【0138】
或いは、スイッチ613は、
図18Bに示したように、共通端子13cと、コンデンサ間端子52nとを接続する。この場合、陽極回転コイル駆動装置5は、第1のスイッチング素子間端子53uと、第2のスイッチング素子間端子54vと、コンデンサ間端子52nとにより、二相交流電力を、第2のX線管13bに供給する。
【0139】
なお、スイッチ613の切り替えについては、X線管切り替え回路6が行ってもよいし、ユーザが行なってもよい。例えば、ユーザは、X線診断システム1が備えるボタンを押下することにより、端子56xの接続先を、第3のスイッチング素子間端子55wからコンデンサ間端子52nへと切り替える。また、ユーザは、ボタンを再度押下することにより、端子56xの接続先を、コンデンサ間端子52nから第3のスイッチング素子間端子55wへと切り替える。なお、スイッチ613の切り替えをユーザが行なう場合、X線診断システム1は、X線管切り替え回路6を有しない場合であってもよい。
【0140】
上述した実施形態では、昇圧/降圧コンバータは、n型MOSFET511と、n型MOSFET512とを有するが、これに限定されない。昇圧/降圧コンバータは、例えば、IGBTを有していてもよい。
【0141】
上述したプロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(Programmable Logic Device:PLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)である。また、プログラマブル論理デバイス(Programmable Logic Device:PLD)は、例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)である。
【0142】
上述した実施形態では、絞り調整回路11a、絞り調整回路11b、駆動回路12a、駆動回路12b、生成回路17a、生成回路17b及び処理回路25は、記憶回路24に保存されたプログラムを読み出して実行することにより、その機能を実現したが、これに限定されない。記憶回路24にプログラムを保存する代わりに、これらの回路それぞれにプログラムを直接組み込んでもよい。この場合、これらの回路は、直接組み込まれたプログラムを読み出して実行することにより、その機能を実現する。
【0143】
図1に示した各回路は、適宜分散又は統合されてもよい。例えば、処理回路25は、撮影制御機能251及び制御機能252それぞれの機能を実行する撮影制御回路及び制御回路に分散されてもよい。また、例えば、絞り調整回路11a、絞り調整回路11b、駆動回路12a、駆動回路12b、生成回路17a、生成回路17b及び処理回路25は、任意に統合されてもよい。
【0144】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、重量及び寸法の増加を抑制しつつ、二相交流により駆動されるX線管も、三相交流により駆動されるX線管も素早く立ち上げることができるX線診断システム及び陽極回転コイル駆動装置を提供することができる。
【0145】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0146】
521、522 コンデンサ
52n コンデンサ間端子
53、54 第1のスイッチング素子
53u 第1のスイッチング素子間端子
55、56 第2のスイッチング素子
54v 第2のスイッチング素子間端子
57、58 第3のスイッチング素子
55w 第3のスイッチング素子間端子
59 スイッチング素子駆動回路
6 X線管切り替え回路