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特許7166809リアルタイム3次元(3D)心臓撮像におけるガラス状態ビューのためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】リアルタイム3次元(3D)心臓撮像におけるガラス状態ビューのためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20221031BHJP
   A61B 18/12 20060101ALI20221031BHJP
   A61B 18/14 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
A61B5/00 D
A61B18/12
A61B18/14
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018124084
(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公開番号】P2019010513
(43)【公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-04-28
(31)【優先権主張番号】15/638,886
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・コーエン
(72)【発明者】
【氏名】ナタン・シャロン・カッツ
(72)【発明者】
【氏名】リオール・ザール
(72)【発明者】
【氏名】オシュラト・ベン・ゼイケン
(72)【発明者】
【氏名】ドロール・バーマン
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-160397(JP,A)
【文献】特開2009-136679(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0281415(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0153128(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/01
A61B 18/12-8/14
A61B 34/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアルタイム3次元(3D)心臓撮像システムであって、
心構造の解剖学的データを取得し、前記心構造の3Dモデルを生成するように構成されている処理装置と、
心臓処置に関連する視覚データを生成するように構成されている前記処理装置であって、前記視覚データは、カテーテルの位置及び向き、タグ、点、前記心構造の色分けされた温度情報、前記カテーテルの色分けされた温度情報、又は前記心構造の色分けされた局所興奮時間(LAT)のうちの少なくとも1つを含む、前記処理装置と、
前記視覚データを、前記心構造の前記3Dモデルに重ね合わせて視覚的に表示するように構成されている視覚表示装置と、
少なくとも1つの解剖学的特徴の視野を遮る前記視覚データの少なくとも一部を除去すること及び前記心構造の前記3Dモデルにエッジ強調を加えることを含む前記視覚データの第1の修正セットを生成することによって、第1のガラス状態ビューを生成するように構成されている前記処理装置と、
前記第1のガラス状態ビューに関する要求に応じて、前記視覚データの前記第1の修正セットを前記心構造の前記3Dモデルに重ね合わせて視覚的に表示するように構成されている前記視覚表示装置と、を含む、リアルタイム3次元(3D)心臓撮像システム。
【請求項2】
前記処理装置は、
【数1】
に比例する明度値を計算することであって、式中、Kは定数値であり、Nは、前記心構造の前記3Dモデル上の前記点における法線ベクトルであり、Vは、視点から前記心構造の前記3Dモデル上の前記点までの視野経路を表すベクトルである、こと、及び
前記心構造の前記3Dモデル上の前記点に前記明度値を加算すること、によって、前記心構造の前記3Dモデル上の各点に対して前記エッジ強調を生成するように更に構成されている、請求項1に記載のリアルタイム3D心臓撮像システム。
【請求項3】
前記処理装置は、前記少なくとも1つの解剖学的特徴の視野を遮る前記視覚データの少なくとも一部を除去することを含み、かつ、前記第1のガラス状態ビュー及び前記視覚データの前記第1の修正セットとそれぞれ異なっている、前記視覚データの第2の修正セットを生成することによって、第2のガラス状態ビューを生成するように更に構成されている、請求項1に記載のリアルタイム3D心臓撮像システム。
【請求項4】
前記視覚データの前記第1の修正セットは、前記視覚データからの前記心構造の前記色分けされた温度情報を全て維持している、請求項1に記載のリアルタイム3D心臓撮像システム。
【請求項5】
前記視覚データの前記第1の修正セットを生成することは、前記視覚データ内の前記心構造の前記色分けされた温度情報を、グレースケール又は陰影のある低密度の着色に変換することを含む、請求項1に記載のリアルタイム3D心臓撮像システム。
【請求項6】
前記視覚データの前記第1の修正セットは、前記カテーテルの前記位置及び向きを維持し、かつ、前記点及び前記タグを前記視覚データから除去する、請求項1に記載のリアルタイム3D心臓撮像システム。
【請求項7】
前記視覚データの少なくとも一部を除去することは、前記心臓処置中に、前記カテーテルの先端部及び前記カテーテルの前記先端部に対する周囲の心臓の解剖学的構造の視野を妨げる邪魔な視覚データを除去することを含む、請求項1に記載のリアルタイム3D心臓撮像システム。
【請求項8】
操作者から前記第1のガラス状態ビューに関する前記要求を受信し、かつ、前記第1のガラス状態ビューに関する前記要求を前記処理装置に送信するように構成されている操作者インターフェースを更に含む、請求項1に記載のリアルタイム3D心臓撮像システム。
【請求項9】
操作者から前記第1のガラス状態ビューに関する視覚的な好みを受信し、かつ、前記視覚的な好みを前記処理装置に送信するように構成されている操作者インターフェースを更に含み、
前記処理装置は、前記視覚的な好みに基づいて、前記視覚データの前記第1の修正セットに含めるべき視覚情報を定義するように更に構成されている、請求項1に記載のリアルタイム3D心臓撮像システム。
【請求項10】
心臓マッピング及びアブレーションシステムの一部として実施される、請求項1に記載のリアルタイム3D心臓撮像システム。
【請求項11】
リアルタイム3D心臓撮像システムの作動方法であって、
前記リアルタイム3D心臓撮像システムが、心構造の解剖学的データを取得し、前記心構造の3Dモデルを生成することと、
前記リアルタイム3D心臓撮像システムが、心臓処置に関連する視覚データを生成することであって、前記視覚データは、カテーテルの位置及び向き、タグ、点、前記心構造の色分けされた温度情報、前記カテーテルの色分けされた温度情報、又は前記心構造の色分けされた局所興奮時間(LAT)のうちの少なくとも1つを含む、ことと、
前記リアルタイム3D心臓撮像システムが、前記視覚データを前記心構造の前記3Dモデルに重ね合わせて視覚表示装置に視覚的に表示することと、
前記リアルタイム3D心臓撮像システムが、少なくとも1つの解剖学的特徴の視野を遮る前記視覚データの少なくとも一部を除去すること及び前記心構造の前記3Dモデルにエッジ強調を加えることを含む前記視覚データの第1の修正セットを生成することによって、第1のガラス状態ビューを生成することと、
前記リアルタイム3D心臓撮像システムが、前記第1のガラス状態ビューに関する要求に応じて、前記視覚データの前記第1の修正セットを前記心構造の前記3Dモデルに重ね合わせて前記視覚表示装置に視覚的に表示することと、を含む、リアルタイム3D心臓撮像システムの作動方法。
【請求項12】
前記リアルタイム3D心臓撮像システムが、
【数2】
に比例する明度値を計算することであって、式中、Kは定数値であり、Nは、前記心構造の前記3Dモデル上の前記点における法線ベクトルであり、Vは、視点から前記心構造の前記3Dモデル上の前記点までの視野経路を表すベクトルである、こと、及び
前記リアルタイム3D心臓撮像システムが、前記心構造の前記3Dモデル内の前記点に前記明度値を加算すること、によって、前記リアルタイム3D心臓撮像システムが、前記心構造の前記3Dモデル上の各点に対して前記エッジ強調を生成することを更に含む、請求項11に記載のリアルタイム3D心臓撮像システムの作動方法。
【請求項13】
前記リアルタイム3D心臓撮像システムが、前記少なくとも1つの解剖学的特徴の視野を遮る前記視覚データの少なくとも一部を除去することを含み、かつ、前記リアルタイム3D心臓撮像システムが、前記第1のガラス状態ビュー及び前記視覚データの前記第1の修正セットとそれぞれ異なっている、前記視覚データの第2の修正セットを生成することによって、第2のガラス状態ビューを生成すること、を更に含む、請求項11に記載のリアルタイム3D心臓撮像システムの作動方法。
【請求項14】
前記視覚データの前記第1の修正セットは、前記視覚データからの前記心構造の前記色分けされた温度情報を全て維持している、請求項11に記載のリアルタイム3D心臓撮像システムの作動方法。
【請求項15】
前記視覚データの前記第1の修正セットを生成することは、前記リアルタイム3D心臓撮像システムが、前記視覚データ内の前記心構造の前記色分けされた温度情報を、グレースケール又は陰影のある低密度の着色に変換することを含む、請求項11に記載のリアルタイム3D心臓撮像システムの作動方法。
【請求項16】
前記視覚データの前記第1の修正セットは、前記カテーテルの前記位置及び向きを維持し、かつ、前記点及び前記タグを前記視覚データから除去する、請求項11に記載のリアルタイム3D心臓撮像システムの作動方法。
【請求項17】
前記視覚データの少なくとも一部を除去することは、前記リアルタイム3D心臓撮像システムが、前記カテーテルの先端部及び前記カテーテルの前記先端部に対する周囲の心臓の解剖学的構造の視野を妨げる邪魔な視覚データを除去することを含む、請求項11に記載のリアルタイム3D心臓撮像システムの作動方法。
【請求項18】
前記リアルタイム3D心臓撮像システムが、操作者から操作者インターフェースを介して前記第1のガラス状態ビューに関する前記要求を受信することを更に含む、請求項11に記載のリアルタイム3D心臓撮像システムの作動方法。
【請求項19】
前記リアルタイム3D心臓撮像システムが、操作者から操作者インターフェースを介して前記第1のガラス状態ビューに関する視覚的な好みを受信することと、
前記リアルタイム3D心臓撮像システムが、前記視覚的な好みに基づいて、前記視覚データの前記第1の修正セットに含めるべき視覚情報を定義することと、を更に含む、請求項11に記載のリアルタイム3D心臓撮像システムの作動方法。
【請求項20】
前記リアルタイム3D心臓撮像システムが心臓マッピング及びアブレーションシステムの一部として実装されている、請求項11に記載のリアルタイム3D心臓撮像システムの作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
リアルタイム3次元(3D)心臓撮像システム及び方法が開示される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
心構造の解剖学的データを取得することができ、心構造の3Dモデルを生成することができる。カテーテルの位置及び向き、タグ、点、色分けされた温度情報、及び/又は心構造の色分けされた局所興奮時間(LAT)などの、心臓処置に関連する視覚データを生成することができる。心構造の3Dモデル上に重ね合わされた視覚データは、視覚表示装置に視覚的に表示されることができる。ガラス状態ビューは、対象となる解剖学的特徴及び/又はカテーテルの視野を遮る視覚データの少なくとも一部を除去すること並びに心構造の3Dモデルにエッジ強調を加えることを含む、視覚データの修正セットを生成することによって生成されることができる。
【0003】
エッジ強調を生成することは、視野経路に基づいて明度値(例えば、白加算)を計算することと、心構造の3Dモデルの各対応点の値を加算することを含むことができる。ガラス状態ビューは、例えば操作者インターフェースを介して、視覚表示装置に視覚的に表示されるように、操作者によって要求され得る。視覚データの修正セットは、色分けされた温度情報の一部又は全部を維持することができ、及び/又は色分けされた温度情報を、グレースケール又は陰影のある低密度着色に変換することができる。視覚データの修正セットは、カテーテルの位置及び向きを維持し、及び/又は視覚データから点及びタグを除去することができる。2つ又は3つ以上の異なるガラス状態ビューは、視覚データの異なる修正セットを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
本特許又は出願書類は、カラーで作製された図面として少なくとも1枚のカラー図面又は写真を含む。カラー図面を備える、本特許又は特許出願公開の複製は、要請があれば、必要な手数料を支払うことにより、特許庁によって提供されるであろう。
【0005】
図1】CARTO(登録商標)3 Systemによって生成された、患者の心臓の例示の3次元(3D)心臓マップである。
図2A】例示の心臓マッピング及びアブレーションシステムの概略図である。
図2B図2Aの例示の心臓マッピング及びアブレーションシステムに含ませることができる例示のカテーテルの概略図である。
図3】ガラスビューが付加されている、図1の3D心臓マップに対応する例示の3D心臓マップの3D画像である。
図4A】3D画像の表面に陰影を加えることによって球体の3D画像にガラスビューを付加する例示の方法を示す。
図4B】3D画像の表面に陰影を加えることによって球体の3D画像にガラスビューを付加する例示の方法を示す。
図4C】3D画像の表面に陰影を加えることによって球体の3D画像にガラスビューを付加する例示の方法を示す。
図5】心臓マッピング及びアブレーションシステムにおいて用いることができる、リアルタイム3D心臓撮像におけるガラス状態ビューの実施のための、ガラスビュー手順による例示の視覚ノイズ除去のフローチャートである。
図6A】視覚データを含む例示の3D心臓マップである。
図6B】ガラスビュー及び減少した視覚データを含む起動されたガラス状態ビューを有する、対応する3D心臓マップである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
心臓アブレーションは、リズムの欠陥の一因となる心臓内の組織を破壊する外傷を作ることによって、不整脈として知られる心臓リズムの欠陥を補正するために使用され得る、電気生理学者によって実行される医療処置である。心臓アブレーションを使用して治療され得る例示的不整脈には、心臓の心房で生じる異常な心臓リズムである、心房細動(AF)がある。
【0007】
心臓アブレーションは、鼠径部の小さい切開部及び血管を通して心臓に挿入されることができる、長い可撓性カテーテル(内視鏡)を用いることができ、心臓アブレーションを使用して、小さい傷又は損傷を生じさせるためのエネルギー(例えば、無線周波(RF)エネルギー又は超低温)を組織に適用して、心臓リズム障害の原因であり得る不完全な電気インパルスを遮断することができる。リアルタイム3次元(3D)位置特定及びマッピングテクノロジーは、心臓内のカテーテルの正確な位置及び向きを可視化し、電気生理学者が、カテーテルを可視化して慎重に先導し、適切な場所にRFエネルギーを適用することを可能にするための、高度なナビゲーションシステムとして機能するように用いられ得る。心臓アブレーションの目標は、不整脈を取り除いて、患者の心臓を正常な心臓リズムに戻すこと、又は不整脈の頻度及び患者の症状の重大度を低減させることである。
【0008】
心臓アブレーション用のリアルタイム3D位置特定及びマッピングシステムの一例は、Johnson & Johnsonの子会社である、Biosense Webster(登録商標),Inc.製のCARTO(登録商標)3 Systemである。CARTO(登録商標)3 Systemは、患者の心構造の3Dマップを作製し、心臓内のカテーテル(又はその他の対象物)の正確な場所及び向きを表示するために電磁テクノロジーを使用している。CARTO(登録商標)3 Systemは、心構造の、正確かつリアルタイムでの可視化を確保するために、患者及び心臓の動きを補償する。
【0009】
図1は、CARTO(登録商標)3 Systemによって生成された、患者の心臓の例示の3D心臓マップ100である。心臓処置中、1つ又は2つ以上のカテーテル102の位置及び向きを、心臓100の3D可視化画像内に示し得る。図示されてはいないが、以下に挙げるがこれらに限定されない他の物体及び画像を、図1に示す3D可視化画像に含ませてもよい:追加のカテーテル及び装置の位置及び向き、マッピングされた心臓100内での配向のために用いられる3D合成心臓モデル、方向性(例えば、上、下、後、前)配向を支援するための2次元(2D)画像、及び蛍光透視画像又は他の背景画像。
【0010】
図2Aは、本明細書の開示による、統合リアルタイム3D位置特定及びマッピングテクノロジー(例えば、CARTO(登録商標)3 System又は他の3D位置特定及びマッピングテクノロジー)を用いた、例示的心臓マッピング及びアブレーションシステム200の概略図である。心臓マッピング及びアブレーションシステム200は、限定するものではないが、以下の構成要素のいずれかを含むことができる:コンソールシステム201、心臓外センサ214、基準装置群215、エネルギー源219、及び/又はカテーテル(複数可)220。コンソールシステム201は、限定するものではないが、以下の構成要素のいずれかを含むことができる:処理装置(複数可)202(プロセッサ(複数可))、ローカル記憶装置208、視覚表示装置216、及び/又は操作者インターフェース(複数可)218。心臓マッピング及びアブレーションシステム200の特定の要素は、視覚化及び診断に使用される情報を収集するため、及びアブレーション治療を実行するために、患者205の上で、中で、及び/又は患者に近接して、直接使用され得る。この情報は、処理、視覚化、並びに操作者制御及び指示のために、コンソールシステム201に提供され得るが、その一部を以下で説明する。
【0011】
基準装置群215(例えば、位置特定パッドと呼び得る)は、患者205の下方に置かれる、コンピュータ制御の(例えば、処理装置(複数可)202によって制御される)磁石からなる環を含み得る。磁石は、周辺空間の磁場に対する原点基準点として使用され得る、既知かつ固定の強度及び位置の値を有し得、心臓の正確な3D画像を作製するのに使用される処理装置(複数可)202に基準情報を提供し得る。
【0012】
心臓外センサ(複数可)214は、例えば、患者205の皮膚上の電極であり得る。心臓外センサ(複数可)214は、心臓の電気生理学的パターンに因る皮膚上の電気的変化の検出を介して心臓の電気活動を検出し、不整脈の診断及び治療行動方針の決定に使用されるよう、電気活動に関する情報を処理装置(複数可)202に提供することができる。心臓外センサ(複数可)214によって検出された心臓外信号は、処理された形態で、例えばグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)の視覚表示装置216に表示することができる。
【0013】
治療及び診断の目的で、患者205に対して1つ又は2つ以上の装置が使用され得る。例示の心臓マッピング及びアブレーションシステム200では、これらの目的のためにカテーテル(複数可)220が図示及び記載されている。しかしながら、他の装置を診断及び/又は治療的処置に用いてもよい。
【0014】
1つ又は2つ以上のカテーテル220は、医師により、患者205の脈管系を通して患者205の心臓に経皮的に挿入され得る。カテーテル(複数可)220は、診断用マッピングのための情報を収集する及び/又は治療処置を施す(例えば、アブレーションを実施する)目的で、位置センサ、電気センサ、圧力センサ、画像センサ、及び/又は温度センサなどの様々なセンサを装備していてもよい。異なる種類のカテーテル(複数可)220を使用することができ、種類としては、限定するものではないが、以下の例示の種類が挙げられる:固定カテーテル、偏向可能なカテーテル、双方向カテーテル、単方向カテーテル、三尖弁マッピング用カテーテル、ハロー型の先端を有するカテーテル、バスケットカテーテル、及び/又はラッソ型カテーテル。カテーテル220(複数可)が目的の場所(例えば、経路に沿った1つ又は2つ以上の場所)で、例えばRFエネルギーを印加することによって、アブレーションを実施するのに使用される場合、カテーテル(複数可)220は、処理装置202(複数可)によって命令され得るように、エネルギー源219からRFエネルギーを受信し得る。一例では、カテーテル(複数可)220は、エネルギー源219から直接RFエネルギーを要求し得る。
【0015】
1つの例示的なカテーテル(複数可)220が図2Bにより詳細に示されているが、それには、カテーテル220に含まれ得る要素のうち、全てではなく一部が示されている。カテーテル220は、限定するものではないが、次の構成要素のうちの任意の1つ又は2つ以上を含むことができる:電極(複数可)222、温度センサ(複数可)223、非接触型電極224、画像センサ(複数可)225、位置決めセンサ(複数可)226、遠位先端228、遠位端230、ハンドル232、及び/又はケーブル240。図2Bのカテーテル220の概略図は、カテーテル220の考えられる構成要素の高次表現であり、カテーテル220内の構成要素の位置及び構成は、図示とは異なるものであってもよい。
【0016】
カテーテル220の遠位端230は、心臓組織の電気特性を測定するのに使用され得る電極(複数可)222を、遠位先端228に含み得る。電極(複数可)222はまた、診断の目的で電気信号を心臓に送信するのに使用され得る。電極(複数可)222はまた、アブレーションの所望の場所で心臓組織に直接エネルギー(例えば、RFエネルギー)を印加することによって、欠陥のある心臓組織に対するアブレーションを実施し得る。
【0017】
カテーテル220の遠位端230は、遠位端230に接触する心臓組織の温度を測定する及び/又は遠位端230自体の温度を測定するための温度センサ(複数可)223を含むことができる。例えば、温度測定用の熱電対又はサーミスタを、温度センサ(複数可)223としての機能を果たすように、遠位端230に沿ったいずれかの場所に配置することができる。
【0018】
遠位端230は、列状に配置される非接触電極224を含み得るが、非接触電極は、患者205の心室の壁から遠電界の電気信号を同時に受信し、測定するのに使用され得る。電極(複数可)222及び非接触電極224は、心臓の電気特性に関する情報を、処理のために処理装置(複数可)202に提供する。
【0019】
カテーテル(複数可)220は、1つ又は2つ以上の画像センサ225を装備し得るが、その画像センサの例としては、電荷結合素子(CCD)画像センサ、及び/又は体腔に挿入された際に内視鏡画像をキャプチャするためのカメラが挙げられる。画像センサ(複数可)225は、遠位端230に配置され得る。
【0020】
遠位端230は、カテーテル220の遠位先端228に位置決めセンサ(複数可)226(場所センサとも呼ばれる)を含み得、このセンサは、身体内のカテーテル220の位置及び向き(かつ/又は距離)を決定するのに使用される信号を生成し得る。一例では、遠位先端の正確な位置決め情報の取得を容易にするため、位置決めセンサ(複数可)226、電極(複数可)222及び遠位先端の相対的な位置及び向きが固定され、既知のものとなる。例えば、位置決めセンサ(複数可)226の位置は、心臓の外部の既知の位置に対する相対的位置に、部分的に基づいて(例えば、心臓外センサ214に基づいて)決定され得る。カテーテル220の位置情報が患者205の解剖学的構造に関連しているため、位置決めセンサ(複数可)226の使用により、周辺空間の磁場内の場所特定の正確さの改善がもたらされ得、患者の動きにも適応可能な場所情報が提供され得る。
【0021】
カテーテル220のハンドル232は、医師によって操作され得るが、医師が遠位先端228を所望の方向に効果的に向けるのを可能にする制御装置234を含み得る。
【0022】
電極222、224、及びセンサ223、225、226は、位置情報、電気情報、画像情報、及び/又は温度情報などの情報をコンソールシステム201に提供するために、ハンドル232及びケーブル240を通過し得るワイヤを介して、処理装置(複数可)202に接続されてもよく、心臓内のカテーテル220をリアルタイムで操作し、その機能を表示するために使用され得る。
【0023】
図2Aを参照すると、コンソールシステム201内に、処理装置(複数可)202(例えば、プロセッサ(複数可))は、例えば、コンピュータ内に収容され得る1つ又は2つ以上の信号処理回路を含み得る。処理装置(複数可)202は、心臓マッピング及びアブレーションシステム200の機能を実行するため、ハードウェアに実装され、かつ/又はソフトウェア内にプログラミングされ得る。このソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子形態で処理装置(複数可)202にダウンロードされてもよく、かつ/又は磁気若しくは光学媒体若しくは他の不揮発性メモリなどの有形媒体で提供されてもよい。例えば、ソフトウェアモジュールを処理装置(複数可)202にダウンロードし、インストールすることによって、心臓マッピング及びアブレーションシステム200の心臓可視化及び診断能力の拡張を実現し得る。一例では、処理装置(複数可)202は、汎用コンピュータを含み得る。
【0024】
処理装置(複数可)202は、センサ223、225、及び226、並びに電極222及び224によって生成された信号を含む、カテーテル220からの(情報又はデータを伝達する)信号を受信、増幅、フィルタリング、及び/又はデジタル化することができる。信号は処理装置(複数可)202によって受信され、処理装置(複数可)は受信した信号を用いて、カテーテル220の位置及び向き、カテーテルの温度、並びに心腔内組織の電気特性及び/又は温度などのデータを計算する。一例では、すでに増幅、フィルタリング、及び/又はデジタル化された信号を処理装置(複数可)202が受信するように、適切な回路機構がカテーテル220自体に関連付けられ得る。
【0025】
処理装置(複数可)202は、また、情報又は命令を含む信号を生成し、心臓マッピング及びアブレーションシステム200内の他の要素にそれらの信号を送信するのに使用され得る。例えば、処理装置(複数可)202は、視覚表示装置216上に表示するためのリアルタイム3D心臓マップ情報を生成して送信し得る。別の例では、処理装置(複数可)202は、情報をローカル記憶装置208へ/から情報を送信/受信し得る。別の例では、処理装置(複数可)202は、カテーテル(複数可)220に信号を送信して、エネルギー源219によって提供されるRFエネルギーをアブレーション対象に印加し得る。
【0026】
上で説明したように、処理装置(複数可)202は、処理装置(複数可)202内で別個のユニットとして(例えば、説明上又は物理的に)表現され得る、特定の機能を実装し得る。例えば、処理装置(複数可)202は、カテーテル220内のセンサからの信号を受信するように構成され得るデコーダーユニット204(例えば、ハードウェアに処理回路として及び/又はソフトウェアにソフトウェアモジュールとして実装される)を含むことができ、かつ、信号を使用して、カテーテル遠位先端228に関する位置、向き、距離、温度及び/又は心電図(ECG)の値を算出することができる。
【0027】
別の実施例では、処理装置(複数可)202は、心臓マッピング及びアブレーションシステム200内の他の装置に命令を送信するためのコントローラユニット207を含むことができる。例えば、コントローラユニット207は、アブレーション用のRFエネルギーをカテーテル(複数可)220に提供するよう、エネルギー源219に命令を送信し得、RFエネルギーをアブレーション対象(例えば、経路に沿った1つ又は2つ以上の場所)に印加するよう、カテーテル(複数可)220に命令を送信し得る。
【0028】
別の例では、処理装置(複数可)202は、例えば磁気共鳴映像法(MRI)システム及び/又はコンピュータ断層撮影(CT)システムのような医療用撮像システム(不図示)から画像データを収集するように、かつカテーテル(複数可)220(例えば図2Bの画像センサ(複数可)225から)から画像データを収集するように構成され得る、3D画像再構成ユニット206(例えば、ハードウェアに処理回路として及び/又はソフトウェアにソフトウェアモジュールとして実装される)を含み得る。3D画像再構成ユニット206は、画像データを用いて患者205の心室の疑似表面を構築し、それを視覚表示装置216に送信して表示することができる。
【0029】
処理ユニット204、206、及び207は、例であり、処理装置(複数可)202に実装され得る、可能な機能の全てを含んでいるわけではない。他の機能及び/又は処理ユニットも、処理装置(複数可)202に含まれ得るが、図示されていない。
【0030】
視覚表示装置216は、処理装置(複数可)202で実行された情報処理に基づいて、心臓の2D及び/又は3D視覚的表現及び/又はマップを表示し、心臓内のカテーテル220の正確な場所及び向きを示すために使用され得る。例えば、マップは、解剖学的マップ、心臓電気活動マップ、心臓電気伝播マップ、心臓電位マップ、インピーダンスマップ、心腔幾何学、及びECG断片化マップとして表示され得る。
【0031】
心臓を表現したもの/マップ及びカテーテル(複数可)に加えて、視野にある物体、及び/又はマッピング、診断、及び治療処置に関連する情報(例えば、ラベル、診断など)も、視覚表示装置216に表示され得る。心臓マッピングの3D視覚的表現は、診断及び心臓アブレーションなどの心臓の治療処置を実行するための正確なリアルタイム視覚ガイドを提供するために医師によって使用される重要なツールである。
【0032】
操作者インターフェース(複数可)218は、心臓マッピング及びアブレーションシステム200と相互作用し、それを制御するために、1人又は2人以上の操作者によって使用され得る。操作者インターフェース(複数可)218には、限定するものではないが、以下の装置を含むことができる:キーボード、タッチセンシティブディスプレイ、及び/又はマウス。操作者インターフェース(複数可)218により、操作者は視覚情報にアクセスしてそれを操作することができ、かつ、操作者は、視野を変更する、並びに、個々の患者に対する治療方針を追跡するために変性部にタグ及び/又はラベル付けすることができる。
【0033】
心臓マッピング及びアブレーションシステム200の操作者としては、限定されるものではないが、例えば、カテーテルを制御し、診断を収集して解釈し、アブレーション処置を実行し得る医師(例えば、電気生理学者)と、処置中に医師のアシスタントとして働く、臨床アプリケーションスペシャリスト(CAS)と、が挙げられ得る。
【0034】
図2Aに示される心臓マッピング及びアブレーションシステム200のような心臓マッピング及びアブレーションシステムは、心臓系及び/又は心臓系と接触している装置(例えば、カテーテル)の電気活動及び/又は温度に関する情報を提供することができ、また、この情報を3Dマップ上に視覚的に表示することができる。例えば、心臓組織の電気信号は、心臓組織に近接して及び/又は心臓組織と直接接触して配置されたセンサ/電極(例えば、図2Aの心臓外センサ(複数可)214及び/又は図2Bのカテーテル220上の電極(複数可)222)によって測定されて、3D心臓マップにリアルタイムで表示され得る。心室内の異なるゾーンの局所興奮時間(local activation times、LAT)に起因する電気的興奮順序は、開始から終了までの電波を示す色を使用して3D心臓マップに表示され得る(例えば、赤色は初期のLATを示し、紫色は最新のLATを示し、色スペクトル内の他の色はそれらの間のLATを示す)。同様に、アブレーションを行う際に熱くなる心臓組織の温度及び/又はカテーテルなどの装置の温度を示すために、色を使用することができる。例えば、赤色は高温(例えば、60℃)を示し、青色は低温(例えば、30℃)を示し、色スペクトル内の他の色はそれらの間の温度を示してもよい。
【0035】
上述したように、CARTO(登録商標)システムなどの3D心臓マッピング及びアブレーションシステムは、多数の解剖学的特徴、物体、点、タグ、及び幅広いスペクトルの色を有する複雑な心臓マップを表示することができる。例えば、点は、特定の時点における解剖学的位置と心内ECGとのペアリングを示してもよく、タグは、医師が基準のための特定の点及び位置を標識化するために使用されてもよく、色は、温度及び/又は電気活動を示すために使用されてもよい。
【0036】
治療又は診断手順中にこれらの3D心臓マップを使用する場合、医師は、タスクを効果的に完了するために3D心臓マップ内の視覚情報のサブセットに注目する必要があり得、他の視覚情報は視覚ノイズとして作用して医師の手順を妨げる場合がある。例えば、医師は、アブレーションが行われているときには、周囲の心臓組織に対するカテーテルの位置及び3Dマップ上の温度分布に注目する必要があり得るので、他の視覚情報の一部が除去された方が良好な視野が得られる。別の例では、カテーテルの温度分布は、(例えば、電気活動、心臓組織の温度などを示すために)3D心臓マップでも使用される色、例えば、赤色、黄色、緑色などを用いて色分けされる場合があり、このことが、医師がカテーテルの温度分布を同定し、それを周囲の3D心臓マップと区別するのを困難にする。
【0037】
3D可視化画像内の視覚ノイズの一部を除去するのを補助するために医師が使用することができるツールは、マップの透明化である。しかしながら、マップの透明化は解剖学的詳細を欠き、医師が周囲の生体構造を理解する能力を妨げる可能性がある。実際に、透明なマップは、生体構造の視覚的詳細が必要となる用途(例えば、アブレーション中の場合などであり得る)に適していない場合がある。
【0038】
また、既存のシステムでは、必要のない場合に3Dマップから不要な視覚情報を除去するために、医師が多くのメニューを手動で操作して、過剰なデータをフィルタアウトする必要があり、この作業は複雑かつ非直観的で、時間がかかり得る。このため、3D心臓マップ中の特定の温度分布及び/又は関心点を可視化し、必要に応じて無関係な視覚ノイズを除去する、便利でアクセス可能な解決策を有することが医師にとって望ましい。
【0039】
心臓系の心臓マッピング及びアブレーション処置に関する開示について以下で述べるが、当業者であれば、呼吸器/肺系統、呼吸器系及び肺系、消化器系、神経血管系、並びに/又は循環系などであるが、これらに限定されない、任意の体腔又は体組織において使用することができるシステム及び処置に本開示を適用することができることを理解する。
【0040】
本明細書の開示によれば、システム及び方法は、不要な視覚データ(例えば、点、タグ、及び/又は色)をフィルタアウトする及び/又は心臓の解剖学的構造にエッジ強調を加えることによって、心臓処置の3Dビューにおける可視化画像データの簡略化及び/又は明確化のレベル(「ガラス状態(glass state)」又は「ディム状態(dim state)」のビューと称される)を、例えばボタン又はメニューを用いて選択する能力を、医師又は操作者に提供する。ガラス状態ビューにおいて除去される及び維持される可視化データは、例えば、医師の表示の好みによって定義されても、医師の表示の好みに合わせて調整されてもよい。心臓マッピング及びアブレーションシステムにおけるガラス状態の機能性は、心臓処置を行う際に視覚データのサブセットに焦点を合わせる迅速かつ効率的な方法を医師に提供し、医師の視界を妨げている視覚データを除去する。
【0041】
開示された心臓マッピング及びアブレーションシステムの一部として、ガラス状態ビューは、(例えば、図2Aの心臓マッピング及びアブレーションシステム200の視覚表示装置216に表示される)視覚的3D心臓マップ中の心臓の解剖学的構造にエッジ強調(「ガラスビュー(glass view)」と称される)を加えることを含むように実施されてもよい。ガラスビューは、3D心臓画像に適用されてもよく、図3に図示するように、解剖学的特徴を強調表示することによって、3D心臓マップ上の心臓の解剖学的構造の詳細のはっきりした可視性を提供する。
【0042】
図3は、図1の3D心臓マップ100に対応する例示の3D心臓マップ300であり、ガラスビューが付加され、カテーテル302の位置及び向きを示している。ガラスビューは、医師が所望する場合に、着色情報(例えば、温度分布、電気活動などを示す色)を保持することができる陰影又はエッジ強調を伴う透過ビューの一種を提供する。ガラスビューにより、所望のレベルの色付き分布データを維持しつつ、3D心臓マップ300においてカテーテル302をより見やすくすることができる。ガラスビューを有する3D心臓マップ300は回転させることができるので、ガラスビューにより、3D解剖学的心臓構造を複数の側面から同時に見ることが可能になる。
【0043】
図4A図4B、及び図4Cは、3D画像の表面に陰影を加えることによって球体の3D画像にガラスビューを付加する例示の方法を示している(同じ方法が3D心臓画像又は他の解剖学的画像に適用されてもよく、図3のガラスビュー心臓マップ300を生成するために使用されてもよい)。3D画像の表面上点xに関し、ベクトルVは視点(例えば、3D画像の視覚的表示を見ている操作者)からの視野経路であり、ベクトルLは光源からの光の経路であり(光源/光路は明度加算に影響を与えない)、ベクトルRは反射光経路であり、ベクトルNは法線ベクトル(すなわち、3D画像上の点に垂直又は直角)である。光路Lと法線ベクトルNとの間の角度αは、反射光経路Rと法線ベクトルNとの間の角度αと同じである。
【0044】
ガラスビューを生成するために、3D画像の表面上の各点に、以下の式に従って明度値(例えば、光、陰影、白色、その他の色)を生成し、加算する。
【0045】
【数1】
式中、Kは小さい定数(例えば、0.00001)である。図4Bに示すケースでは、ベクトルL及びVは同じ場所から生じており(すなわち、光源は視点と同じ位置にある)、法線ベクトルNは視点に向けられている。ベクトルN及びVは同一又はほぼ同一であるので、ベクトルの積|N・V|は1に等しいか近くなり、定数Kが小さいことから明度加算値は非常に小さくなる。図4Cに示すケースでも、ベクトルL及びVは同じ場所から生じているが、法線ベクトルNは視野経路Vに直角又はほぼ直角である。この場合、ベクトルの積|N・V|はほぼ0となり、明度値加算値は大きくなる。ベクトルの積|N・V|の結果が0の場合には、明度加算値は最大明度値に設定され得る(例えば、白加算では、値は純白に相当する)。一例では、明度加算値は0と1との間で正規化され、1は最大明度値(例えば、純白)であり、0は、3D画像中の点に明度(色)が加算されていないことを意味する。
【0046】
開示された心臓マッピング及びアブレーションシステムの一部として、ガラス状態ビューは、医師がマップの後方でカテーテルを容易に見ることができるように、心臓の解剖学的構造の形状を残しながら、3D心臓マップから視覚ノイズを除去することを含むように実施されてもよい。開示されたガラス状態ビューは、所望の量の色分けされたデータ(例えば、色分けされた温度情報)を3D心臓マップ中に維持することを更に含むように実施されてもよい。一例では、ガラス状態ビューを選択するときに、3D心臓マップ中の色分けされた情報の一部のみを除去することができる。一例では、開示されたガラス状態ビューは、着色(例えば、LAT色分け、温度色分けなど)をグレースケール又は陰影のある低密度の着色に変換することによって、3D心臓マップ中の過剰な着色情報を低減又は除去することができる。一例では、過剰な着色は、医師の視覚化ニーズに応じて全体的に除去することができる。
【0047】
ガラス状態ビューは、3D心臓マップ内の着色量並びに/又は点及びタグの数などの視覚データを減らすことによって、視覚ノイズを低減する。3D心臓マップ上の無関係な視覚データをフィルタアウトすることによって、医師が重要な視覚情報に容易かつ迅速に焦点を合わせることができる。更に、ガラス状態ビューは、例えば、医師がアクセスしやすいボタン又はメニューを介して瞬時に起動又は起動解除され得るように事前にプログラムされているので、医師は、過剰なデータをフィルタアウトするために複数のメニューを処理する必要がない。一例では、医師は、(例えば、選択可能なメニューを介して)2つ又は3つ以上の異なるガラス状態ビューを利用することができる。例えば、第1のガラス状態ビューは、ガラスビュー、カテーテル、及び温度色分け視覚データを含むが、全ての他の点、物体、及びタグが除去されていてもよく、第2のガラス状態ビューは、同様にガラスビュー及びカテーテルを含むが、グレースケールの心臓マップを示し、温度色分け情報が除去されていてもよい。
【0048】
視覚ノイズ低減の一例として、ガラス状態ビューは、医師又は操作者によって選択されなかった全てのデータ点(例えば、タグ、ラベルなど)を隠し、選択された点及び1つ又は2つ以上のカテーテルを3D心臓マップ内に表示することができる。上記のように、ガラス状態ビューは、心臓の解剖学的構造にガラスビューを追加することもできる。
【0049】
心臓マッピング及びアブレーションシステム(例えば、図2Aの心臓マッピング及びアブレーションシステム200)において実施される本開示のガラス状態ビューは、特定の心臓処置を実施するのに必要な及び選択された関心点に焦点を合わせるのに必要な、カテーテル及び解剖学的視覚情報の改善された視野を医師に提供する。ガラス状態ビューにおいて有用であり得るカテーテル及び解剖学的視覚情報の例としては、限定するものではないが、以下の視覚情報のいずれかが挙げられる:カテーテル先端部、カテーテル上の電極の数、3D心臓画像の再構成内の偏向及び組織近接指示(tissue proximity indication、TPI)(すなわち、カテーテルの電極が心臓組織と接触していることを示す可視化画像における変化)、及び/又は色分けされた温度情報。
【0050】
図5は、心臓マッピング及びアブレーションシステムにおいて用いることができる、リアルタイム3D心臓撮像においてガラス状態ビューを実施するための、ガラスビュー手順500による例示の視覚ノイズ除去のフローチャートである。502において、心構造の解剖学的データを取得し、心構造の3Dマップ(モデル又は画像)を生成するためにこれを使用し、生成した3Dマップを視覚的表示に表示することができる。例えば、心構造の3Dモデルは、例えばCARTO(登録商標)3 Systemのようなリアルタイム3D心臓位置特定及びマッピングシステムを用いて生成され得る。
【0051】
504において、心臓処置(例えば、マッピング及びアブレーションなどの診断又は治療のための心臓処置)中に、視覚データを生成し、心構造の3Dマップ上に表示することができる。視覚データの例としては、限定するものではないが、以下の情報を含めることができる:物体(例えば、カテーテル、他の装置、3D合成心臓モデル等)、点及び/又はタグ(例えば、システムによって自動的に追加されてもよいし、又は操作者によって手動で追加されてもよい、関心点を識別するための点)、及び/又は色分け情報(例えば、電気活動、解剖学的温度、装置温度等を示すため)。506において、視覚データの修正セットを生成することによって、少なくとも1つのガラス状態ビューを生成する。修正には、ガラスビューを追加すること(例えば、図4A図4Cに記載された方法を用いて)、及び、点、物体、タグ及び/又は色分け情報などの不要な視覚データを低減する又は3D心臓マップから除去することが含まれ得る。例えば、除去される視覚データは、医師によって選択又はタグ付けされていない点、物体、及び/又は色分け情報と一致してもよい。
【0052】
一例では、ガラス状態ビューに含まれる視覚データの修正セットは、デフォルト設定に基づいてもよいし、又は医師の好みに合わせて調整されてもよい。例えば、医師は、どの視覚データをガラス状態ビューに含めるべきかを定義するために、システムに入力を提供することができる。例えば、図2Aを参照すると、医師(又はCAS)は、操作者インターフェース(複数可)218を使用してよく、3D画像再構成ユニット206によって使用される処理装置(複数可)202に、ガラス状態ビューに含めるべき好ましい視覚データを提供する。好ましい視覚データは、例えば、ローカル記憶装置208のコンソールシステム201に記憶され得る。
【0053】
図5を参照すると、508において、ガラス状態ビューに関する(例えば、操作者からの)要求に応じて、要求されたガラス状態ビューを視覚表示装置に表示し、それによって、心臓処置中に邪魔な視覚データを除去することができる。ガラスビュー手順500による例示的な視覚ノイズ除去は、図2Aの心臓マッピング及びアブレーションシステム200において実施されてもよい。例えば、図2Aを参照すると、ガラスビュー手順による視覚ノイズ除去は、3D画像再構成ユニット206(例えば、ハードウェアに処理回路として及び/又はソフトウェアにソフトウェアモジュールとして実装される)において実施されてもよく、また、例えば、視覚表示装置216に視覚的に表示されるボタンを選択することにより、操作者インターフェース218を介して医師によって起動されてもよい。
【0054】
図6Aは、カテーテル602、点604(白い十字で示す)、再構成上の投影点606(着色された偏球で示す)、操作者によってタグ付けされた点に対応するタグ608(大きな球体で示す)、LATを示す色分け610、及び配向に用いられる3D合成心臓モデル612のような視覚データを含む例示の3D心臓マップ600Aである。図6Aにおける多数の視覚的データは、カテーテル602の視界を遮り、正確な処置を行う医師の能力を妨げる可能性がある。更に、心構造の表面の詳細は見にくい。例えば、心臓の解剖学的構造中の左心耳(left atrial appendage、LAA)620は、周囲の視覚データと区別しにくい。
【0055】
図6Bは、ガラス状態ビューが起動された状態の、3D心臓マップ600Aに対応する例示の3D心臓マップ600Bである。図6Bに示すガラス状態ビューでは、点604といくつかの投影点606とを含む視覚データが除去されており、ガラスビューが付加されて心臓の解剖学的構造に陰影が付けられている。3D心臓マップ600Bでは、ガラスビューの追加と邪魔な視覚データの除去により、LAA 620及びカテーテル602がより可視化されている。LATを示す色分け情報610は、ガラス状態ビュー内に維持されているが、代替方法として除去されてもよい。多数の視覚ノイズデータを有する図6Aの心臓マップ600Aに比べて、図6Bの心臓マップ600Bでは、心臓の解剖学的構造に対するカテーテルの視認性が向上しており、そのため、医師にはより見やすくなり、アブレーションなどの心臓処置をより容易に行うことができる。
【0056】
本明細書に記載の実施形態及び処置は、ハードウェア及び/又はソフトウェアに実装され得る。アブレーションを実行するためのコンピュータシステムは、本明細書に記載の処置を含む、付加的な機能を導入するソフトウェアモジュールを実行することができ得る。本明細書に記載の処置は、高度な心臓可視化と、心臓リズム障害を診断し、治療する医師の能力を強化するための診断能力を有効にし得る。本明細書に開示される処置は、心臓系のアブレーション処置に関して述べられているが、本明細書に開示されるシステム及び処置は、身体の他の部分における治療及び診断手順にも同様に使用され得る。
【0057】
〔実施の態様〕
(1) リアルタイム3次元(3D)心臓撮像システムであって、
心構造の解剖学的データを取得し、前記心構造の3Dモデルを生成するように構成されている処理装置と、
心臓処置に関連する視覚データを生成するように構成されている前記処理装置であって、前記視覚データは、カテーテルの位置及び向き、タグ、点、前記心構造の色分けされた温度情報、前記カテーテルの色分けされた温度情報、又は前記心構造の色分けされた局所興奮時間(LAT)のうちの少なくとも1つを含む、前記処理装置と、
前記視覚データを、前記心構造の前記3Dモデルに重ね合わせて視覚的に表示するように構成されている視覚表示装置と、
少なくとも1つの解剖学的特徴の視野を遮る前記視覚データの少なくとも一部を除去すること及び前記心構造の前記3Dモデルにエッジ強調を加えることを含む前記視覚データの第1の修正セットを生成することによって、第1のガラス状態ビューを生成するように構成されている前記処理装置と、
前記第1のガラス状態ビューに関する要求に応じて、前記視覚データの前記第1の修正セットを前記心構造の前記3Dモデルに重ね合わせて視覚的に表示するように構成されている前記視覚表示装置と、を含む、リアルタイム3次元(3D)心臓撮像システム。
(2) 前記処理装置は、
【数2】
に比例する明度値を計算することであって、式中、Kは定数値であり、Nは、前記心構造の前記3Dモデル上の前記点における法線ベクトルであり、Vは、視点から前記心構造の前記3Dモデル上の前記点までの視野経路を表すベクトルである、こと、及び
前記心構造の前記3Dモデル上の前記点に前記明度値を加算すること、によって、前記心構造の前記3Dモデル上の各点に対して前記エッジ強調を生成するように更に構成されている、実施態様1に記載のリアルタイム3D心臓撮像システム。
(3) 前記処理装置は、前記少なくとも1つの解剖学的特徴の視野を遮る前記視覚データの少なくとも一部を除去することを含み、かつ、前記第1のガラス状態ビュー及び前記視覚データの前記第1の修正セットとそれぞれ異なっている、前記視覚データの第2の修正セットを生成することによって、第2のガラス状態ビューを生成するように更に構成されている、実施態様1に記載のリアルタイム3D心臓撮像システム。
(4) 前記視覚データの前記第1の修正セットは、前記視覚データからの前記心構造の前記色分けされた温度情報を全て維持している、実施態様1に記載のリアルタイム3D心臓撮像システム。
(5) 前記視覚データの前記第1の修正セットを生成することは、前記視覚データ内の前記心構造の前記色分けされた温度情報を、グレースケール又は陰影のある低密度の着色に変換することを含む、実施態様1に記載のリアルタイム3D心臓撮像システム。
【0058】
(6) 前記視覚データの前記第1の修正セットは、前記カテーテルの前記位置及び向きを維持し、かつ、前記点及び前記タグを前記視覚データから除去する、実施態様1に記載のリアルタイム3D心臓撮像システム。
(7) 前記視覚データの少なくとも一部を除去することは、前記心臓処置中に、前記カテーテルの先端部及び前記カテーテルの前記先端部に対する周囲の心臓の解剖学的構造の視野を妨げる邪魔な視覚データを除去することを含む、実施態様1に記載のリアルタイム3D心臓撮像システム。
(8) 操作者から前記第1のガラス状態ビューに関する前記要求を受信し、かつ、前記第1のガラス状態ビューに関する前記要求を前記処理装置に送信するように構成されている操作者インターフェースを更に含む、実施態様1に記載のリアルタイム3D心臓撮像システム。
(9) 操作者から前記第1のガラス状態ビューに関する視覚的な好みを受信し、かつ、前記視覚的な好みを前記処理装置に送信するように構成されている操作者インターフェースを更に含み、
前記処理装置は、前記視覚的な好みに基づいて、前記視覚データの前記第1の修正セットに含めるべき視覚情報を定義するように更に構成されている、実施態様1に記載のリアルタイム3D心臓撮像システム。
(10) 心臓マッピング及びアブレーションシステムの一部として実施される、実施態様1に記載のリアルタイム3D心臓撮像システム。
【0059】
(11) リアルタイム3D心臓撮像システムによって実施されるリアルタイム3次元(3D)心臓撮像の方法であって、
心構造の解剖学的データを取得し、前記心構造の3Dモデルを生成することと、
心臓処置に関連する視覚データを生成することであって、前記視覚データは、カテーテルの位置及び向き、タグ、点、前記心構造の色分けされた温度情報、前記カテーテルの色分けされた温度情報、又は前記心構造の色分けされた局所興奮時間(LAT)のうちの少なくとも1つを含む、ことと、
前記視覚データを前記心構造の前記3Dモデルに重ね合わせて視覚表示装置に視覚的に表示することと、
少なくとも1つの解剖学的特徴の視野を遮る前記視覚データの少なくとも一部を除去すること及び前記心構造の前記3Dモデルにエッジ強調を加えることを含む前記視覚データの第1の修正セットを生成することによって、第1のガラス状態ビューを生成することと、
前記第1のガラス状態ビューに関する要求に応じて、前記視覚データの前記第1の修正セットを前記心構造の前記3Dモデルに重ね合わせて前記視覚表示装置に視覚的に表示することと、を含む、方法。
(12)
【数3】
に比例する明度値を計算することであって、式中、Kは定数値であり、Nは、前記心構造の前記3Dモデル上の前記点における法線ベクトルであり、Vは、視点から前記心構造の前記3Dモデル上の前記点までの視野経路を表すベクトルである、こと、及び
前記心構造の前記3Dモデル内の前記点に前記明度値を加算すること、によって、前記心構造の前記3Dモデル上の各点に対して前記エッジ強調を生成することを更に含む、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記少なくとも1つの解剖学的特徴の視野を遮る前記視覚データの少なくとも一部を除去することを含み、かつ、前記第1のガラス状態ビュー及び前記視覚データの前記第1の修正セットとそれぞれ異なっている、前記視覚データの第2の修正セットを生成することによって、第2のガラス状態ビューを生成すること、を更に含む、実施態様11に記載の方法。
(14) 前記視覚データの前記第1の修正セットは、前記視覚データからの前記心構造の前記色分けされた温度情報を全て維持している、実施態様11に記載の方法。
(15) 前記視覚データの前記第1の修正セットを生成することは、前記視覚データ内の前記心構造の前記色分けされた温度情報を、グレースケール又は陰影のある低密度の着色に変換することを含む、実施態様11に記載の方法。
【0060】
(16) 前記視覚データの前記第1の修正セットは、前記カテーテルの前記位置及び向きを維持し、かつ、前記点及び前記タグを前記視覚データから除去する、実施態様11に記載の方法。
(17) 前記視覚データの少なくとも一部を除去することは、前記心臓処置中に、前記カテーテルの先端部及び前記カテーテルの前記先端部に対する周囲の心臓の解剖学的構造の視野を妨げる邪魔な視覚データを除去することを含む、実施態様11に記載の方法。
(18) 操作者から操作者インターフェースを介して前記第1のガラス状態ビューに関する前記要求を受信することを更に含む、実施態様11に記載の方法。
(19) 操作者から操作者インターフェースを介して前記第1のガラス状態ビューに関する視覚的な好みを受信することと、
前記視覚的な好みに基づいて、前記視覚データの前記第1の修正セットに含めるべき視覚情報を定義することと、を更に含む、実施態様11に記載の方法。
(20) 前記リアルタイム3D心臓撮像システムが心臓マッピング及びアブレーションシステムの一部として実装されている、実施態様11に記載の方法。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B