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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】モールド形静止誘導機器
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/30 20060101AFI20221031BHJP
   H01F 27/04 20060101ALI20221031BHJP
   H01F 30/10 20060101ALI20221031BHJP
   H01F 30/12 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
H01F27/30 130
H01F27/04 B
H01F30/10 U
H01F30/12 U
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018145937
(22)【出願日】2018-08-02
(65)【公開番号】P2020021872
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】城条 雅之
(72)【発明者】
【氏名】井上 新
(72)【発明者】
【氏名】中山 伸一
(72)【発明者】
【氏名】▲陦▼ 裕介
(72)【発明者】
【氏名】中前 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】高井 洋輔
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-128708(JP,U)
【文献】実開昭57-041634(JP,U)
【文献】特開昭56-024911(JP,A)
【文献】特開昭56-042313(JP,A)
【文献】実開昭48-088916(JP,U)
【文献】実公昭41-006504(JP,Y1)
【文献】実公昭55-033628(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/04-27/06、27/28-27/30
H01F 30/00-30/16、37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線と前記巻線の中心部に通された鉄心とを有し前記巻線の表面が絶縁部材で覆われた機器中身と、
前記機器中身を収容する容器と、
前記容器の天井部に設けられたブッシングと、
表面が絶縁部材で覆われて剛性を有し、前記容器に対して相対的に移動不可となるように固定され、前記容器内において上下方向に伸びてその下端部が前記容器の底部に支持固定されその上端部が前記ブッシングに電気的に接続された第1接続導体と、
表面が絶縁部材で覆われて構成され、前記巻線と前記第1接続導体とを電気的に接続する第2接続導体と、
を備えるモールド形静止誘導機器。
【請求項2】
前記第2接続導体の一端部は、前記巻線の上下方向の中心よりも下側部分で前記巻線に電気的に接続されて、他端部は、前記第1接続導体の上下方向の中心よりも下側部分で前記第1接続導体に電気的に接続されている、
請求項1に記載のモールド形静止誘導機器。
【請求項3】
前記第2接続導体は、水平方向に延びている、
請求項1又は2に記載のモールド形静止誘導機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、モールド形静止誘導機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、巻線の表面を樹脂等の絶縁部材でモールドすることで絶縁性能を確保したモールド形静止誘導機器が知られている。このようなモールド形静止誘導機器は、モールドされた巻線を容器内に格納し、その容器内にドライエア等を充填することで、更に高電圧に適用させることが可能となる。
【0003】
このようにモールドされた巻線を容器内に格納したモールド形静止誘導機器は、外線と容器内の巻線とを電気的に接続するため、各巻線に対応したブッシング及び接続導体を備えている。ブッシングは、容器の天井部分にその天井部分を貫いて設けられている。そして、外線は、容器の外部においてブッシングに電気的に接続されており、接続導体は、容器内において巻線とブッシングとを電気的に接続している。これにより、各相の巻線は、接続導体及びブッシングを介して、外線に電気的に接続されている。
【0004】
このような構成のモールド形静止誘導機器は、接続導体についても絶縁性能を確保する必要があるため、接続導体の外側表面は絶縁部材で覆われている。しかしながら、例えばモールド形静止誘導機器を当該誘導機器の製造工場から設置場所まで搬送し設置する際などにおいては、モールド形静止誘導機器に振動が加わることが避けられない。そして、搬送及び設置の際にモールド形静止誘導機器に振動が加わると、その振動によって容器内部の接続導体が揺れて他の部品と接触したりし、その結果、接続導体の外部を覆う絶縁部材が破損するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-225894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、搬送等によって接続導体に振動が加わった場合であっても接続導体の破損を抑制することができるモールド形静止誘導機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のモールド形静止誘導機器は、巻線と前記巻線の中心部に通された鉄心とを有し前記巻線の表面が絶縁部材で覆われた機器中身と、各前記機器中身を収容する容器と、前記容器の天井部に設けられたブッシングと、表面が絶縁部材で覆われて剛性を有し、前記容器内において上下方向に伸びてその下端部が前記容器の底部に支持固定されその上端部が前記ブッシングに電気的に接続された第1接続導体と、表面が絶縁部材で覆われて構成され、前記巻線と前記第1接続導体とを電気的に接続する第2接続導体と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態によるモールド形静止誘導機器の概略構成を示すもので、機器中身を部分的に破断して示す縦断側面図
図2】一実施形態によるモールド形静止誘導機器の概略構成を示すもので、容器を部分的に破断して示す平面図
図3】一実施形態によるモールド形静止誘導機器の概略構成を示すもので、図2のX3-X3線に沿って示す縦断正面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1図3に示すモールド変圧器10は、モールド形静止誘導機器の適用例の一例であり、例えば電力系統や受変電設備に用いられるものである。本実施形態の場合、モールド変圧器10は、U相、V相、W相の巻線を有する三相の変圧器である。なお、モールド変圧器10は、三相変圧器に限られない。
【0010】
モールド変圧器10は、機器中身20、容器30、熱交換器40、ブッシング51、52、及び接続導体61、62、63を備えている。機器中身20は、モールド変圧器10の各相に対応して設けられている。例えば本実施形態において、モールド変圧器10は、U相、V相、及びW相を有する三相変圧器であるため、図2に示すように、U相、V相、及びW相のそれぞれに対応した3つの機器中身20を備えている。
【0011】
機器中身20はそれぞれ、鉄心21、高圧側巻線22、低圧側巻線23、及びスペーサ24を有している。高圧側巻線22は、モールド変圧器10を例えば電力系統に適用した際に高圧電力が入力される1次側の巻線として機能する。また、低圧側巻線23は、モールド変圧器10を例えば電力系統に適用した際に低圧電力を出力する2次側の巻線として機能する。
【0012】
高圧側巻線22及び低圧側巻線23及びは、それぞれ表面が樹脂等の絶縁部材によって覆われている。つまり、高圧側巻線22及び低圧側巻線23の表面は、電気絶縁性を有する樹脂等の絶縁部材によってモールドされている。高圧側巻線22及び低圧側巻線23は、それぞれ中心部に鉄心21が通されてコイルを構成している。この場合、高圧側巻線22は、低圧側巻線23の外周側に設けられている。
【0013】
各相の鉄心21は、共通の上部ヨーク211及び下部ヨーク212を有しており、各鉄心21の上端部及び下端部がそれぞれ上部ヨーク211及び下部ヨーク212によって相互に連結されている。そして、下部ヨーク212は、下端部が容器30の底部に支持固定されている。そのため、容器30に振動が加わった場合でも、少なくとも鉄心21の下端部は、容器30に対して相対的に移動し難い。つまり、少なくとも機器中身20の下端部は、容器30に対して相対的に移動し難くなっている。
【0014】
スペーサ24は、高圧側巻線22と低圧側巻線23との間に設けられている。つまり、スペーサ24は、高圧側巻線22の内周側でかつ低圧側巻線23の外周側に設けられている。スペーサ24は、高圧側巻線22及び低圧側巻線23の全周に亘って波型に形成されている。このスペーサ24により、高圧側巻線22と低圧側巻線23との間に空隙25が形成されて、冷却用の気体を流す空間を確保するとともに、高圧側巻線22と低圧側巻線23との間における必要な絶縁強度を確保している。なお、スペーサ24は、高圧側巻線22と低圧側巻線23と間の絶縁強度及び冷却用の空間を確保できる形状であれば波型に限られない。
【0015】
容器30は、モールド変圧器10の外郭を構成するものであり、例えば鋼板等の金属製の筐体を主体として構成されている。容器30は、気密性を有した箱状に構成されている。機器中身20は、容器30の内部に収納されている。本実施形態の場合、三相各相に対応した3つの機器中身20は、図2に示すように、容器30内において等間隔で一列の直線状に配置されている。このため、容器30は、全体として一方向に長い形状、例えば平面視において長方形となる箱状に形成されている。
【0016】
この場合、隣接する機器中身20同士、及び機器中身20と容器30の内壁面とは、それぞれ離間している。これにより、隣接する機器中身20の間、及び機器中身20と容器30の内壁面との間には、それぞれ隙間301、302が確保されている。この隙間301、302によって、冷却用の気体を流す空間を確保するとともに、各機器中身20間、及び機器中身20と容器30の内壁との間における必要な絶縁強度を確保している。
【0017】
また、容器30は、図3にも示すように、上部接続ダクト31及び下部接続ダクト32を有している。上部接続ダクト31及び下部接続ダクト32は、容器30内と熱交換器40とを接続している。すなわち、容器30内と熱交換器40とは、接続ダクト31、32を通して相互に連通している。この場合、上部接続ダクト31は、容器30の上部、具体的には巻線22、23の上端よりも上側に設けられている。また、下部接続ダクト32は、上部接続ダクト31の下方でかつ容器30の下部、具体的には巻線22、23の下端よりも下側に設けられている。
【0018】
容器30内は、気密性が維持された密閉空間となっている。この場合、容器30内には大気圧よりも高い圧力のドライエア等が充填される。空気の絶縁耐力はその絶対圧力にほぼ比例する。このため、容器30内に大気圧よりも高い圧力のドライエアを充填することで、モールド変圧器10は、機器中身20を大気圧中に設置した場合に比べてより高い絶縁耐圧を得ることができる。
【0019】
熱交換器40は、容器30の長手方向の両外側にそれぞれ設けられており、上部接続ダクト31及び下部接続ダクト32を介して容器30内に連通している。熱交換器40は、機器中身20の動作によって発生した熱を大気中に放熱する機能を有する。容器30内の気体は、機器中身20で発生した熱によって熱せられると、図3の白抜き矢印で示したように、機器中身20の外部に形成された隙間301、302、及び機器中身20の内部に形成された空隙25を通って容器30内を上昇する。
【0020】
そして、容器30内を上昇した気体は、上部接続ダクト31を通って熱交換器40内に流入し、気体の熱が熱交換器40の作用によって大気中に放熱される。その後、放熱して温度が下がった気体は、下部接続ダクト32から容器30内に流入し、隙間301、302及び空隙25を通って再び上昇する。このようにして容器30内を自然循環する気体の流れが発生し、その気体の流れによって各機器中身20が自然冷却される。なお、例えば接続ダクト31、32内等に送風機を設けて、容器30内の気体を強制循環させる構成としても良い。これによれば、モールド変圧器10内の冷却効率を更に向上させることができる。
【0021】
また、モールド変圧器10は、図1及び図2に示すように、各機器中身20に対応してそれぞれ高圧側ブッシング51、低圧側ブッシング52、高圧側第1接続導体61、高圧側第2接続導体62、及び低圧側接続導体63、を備えている。ブッシング51、52は、巻線22、23と電力系統や受変電設備等の外線91、92とを、容器30に対して絶縁を確保した状態で電気的に接続する機能を有する。各相のブッシング51、52は、それぞれ各相の機器中身20に対応しており、容器30の天井部35を貫いて設けられている。各ブッシング51、52は、一方の端部が容器30の外部に露出しており、他方の端部が容器30内に挿入されている。この場合、高圧側ブッシング51は、各機器中身20の高圧側巻線22に対応している。また、低圧側ブッシング52は、各機器中身20の低圧側巻線23に対応している。
【0022】
各高圧側ブッシング51及び各低圧側ブッシング52は、図2に示すように、それぞれ容器30の長手方向に沿って、等間隔で一列の直線状に配置されている。換言すれば、各高圧側ブッシング51及び各低圧側ブッシング52は、それぞれ各相の機器中身20の配置に沿って等間隔で一列に配置されている。この場合、各高圧側ブッシング51の配置の間隔は、例えば各機器中身20の配置間隔よりも小さい。つまり、各高圧側ブッシング51は、1箇所に集められて配置されている。また、各低圧側ブッシング52の配置の間隔も、例えば各高圧側ブッシング51の配置間隔に等しい。
【0023】
また、この場合、各高圧側ブッシング51は、容器30の天井部35において、容器30の幅方向の中心でかつ各機器中身20の中心に対して幅方向の一方側寄りに設けられている。また、各低圧側ブッシング52は、容器30の天井部35において、容器30の幅方向の中心でかつ各機器中身20の中心に対して他方側寄りつまり高圧側ブッシング51とは反対側寄りに設けられている。
【0024】
各ブッシング51、52のうち少なくとも高圧側ブッシング51は、図2に示すように、平面視において、それぞれ対応する機器中身20及び他の機器中身20のいずれとも重ならない位置に設けられている。本実施形態の場合、各高圧側ブッシング51は、対応する各機器中身20に対して容器30の幅方向の一方側にずらして配置されている。また、低圧側ブッシング52は、平面視において、それぞれ対応する機器中身20と重なる位置、つまり自己が接続される低圧側巻線23を有する機器中身20の上方に設けられている。
【0025】
各高圧側ブッシング51は、図1及び図2に示すように、容器30の外部において電力系統や受変電設備の高圧側の外線91に接続されており、容器30の内部において高圧側接続導体61に接続されている。また、各低圧側ブッシング52も、高圧側ブッシング51と同様に、容器30の外部において電力系統や受変電設備の低圧側の外線92に接続されており、容器30の内部において低圧側接続導体63に接続されている。これにより、容器30内の各機器中身20は、容器30から絶縁を確保した状態で外線91、92に電気的に接続される。
【0026】
高圧側第1接続導体61及び高圧側第2接続導体62は、高圧側巻線22と高圧側ブッシング51とを電気的に接続するものであり、それぞれ第1接続導体及び第2接続導体として機能する。高圧側接続導体61は、図1に示すように、導電性を有する部材で構成された導体部611と、この導体部611の外側表面を覆う樹脂等の絶縁部材612と、を有して構成されている。つまり、高圧側接続導体61は、導体部611の外側表面が樹脂等の絶縁部材でモールドされている。高圧側第1接続導体61の導体部611は、例えば金属棒や金属板等の屈曲不可な剛体で構成されている。すなわち、高圧側第1接続導体61は、容器30内において、屈曲不可な剛性を有した柱状又は壁状に構成されている。
【0027】
高圧側第1接続導体61は、図1に示すように、容器30内において対応する高圧側ブッシング51の直下に設けられており、上下方向つまり垂直方向に延びるようにして設けられている。この場合、各高圧側第1接続導体61は、それぞれ対応する各機器中身20の周囲に設けられている。また、各高圧側第1接続導体61は、それぞれ対応する各機器中身20に対して容器30の幅方向の一方側にずらして配置されている。高圧側第1接続導体61の下端部は、容器30の底部に支持固定されているとともに、絶縁部材612に覆われており、容器30に対する絶縁が確保されている。
【0028】
また、高圧側第1接続導体61の上端部は、対応する高圧側ブッシング51に電気的に接続されているとともに、高圧側ブッシング51を介して又は直接的に、容器30の天井部35に支持固定されている。これにより、高圧側第1接続導体61は、容器30に対して相対的に移動不可となるように固定されている。このため、容器30に振動が加わった場合でも、高圧側第1接続導体61には、容器30に対する相対的な揺れが生じ難い。
【0029】
高圧側第2接続導体62は、一方の端部が高圧側巻線22に電気的に接続されており、他方の端部が高圧側第1接続導体61に電気的に接続され、これにより高圧側巻線22と第1接続導体61とを電気的に接続している。この場合、高圧側第2接続導体62の一方の端部は、高圧側巻線22の上下方向の中心よりも下側部分で高圧側巻線22に電気的に接続されている。つまり、高圧側第2接続導体62と高圧側巻線22との接続部分は、高圧側巻線22の上下方向の中心よりも下側部分に位置している。本実施形態の場合、高圧側第2接続導体62と高圧側巻線22との接続部分は、高圧側巻線22の下端付近に位置している。
【0030】
また、高圧側第2接続導体62の他方の端部は、上述した一方の端部と同様に、高圧側第1接続導体61の上下方向の中心よりも下側部分で高圧側第1接続導体61に電気的に接続されている。つまり、高圧側第1接続導体61と高圧側第2接続導体62との接続部分は、高圧側第1接続導体61の上下方向の中心よりも下側部分に位置している。本実施形態の場合、高圧側第2接続導体62と高圧側巻線22との接続部分は、高圧側巻線22の下端付近に位置している。
【0031】
高圧側第2接続導体62は、機器中身20の高圧側巻線22と高圧側第1接続導体61との間において水平方向に配置されている。つまり、高圧側第2接続導体62は、高圧側巻線22との接続部分から高圧側第1接続導体61側へ向かって水平方向に伸びている。これにより、高圧側第2接続導体62は、高圧側第1接続導体61と機器中身20つまり高圧側巻線22との間を最短距離で接続している。
【0032】
高圧側第2接続導体62は、導電性を有する導体部621と、この導体部621の外側表面を覆う樹脂等の絶縁部材622と、を有して構成されている。つまり、高圧側第2接続導体62も、導体部621の外側表面が樹脂等の絶縁部材622でモールドされている。高圧側第2接続導体62の導体部621は、例えば複数の導線を撚って構成されている。この場合、高圧側第2接続導体62は、高圧側第1接続導体61に比べて柔軟性を有し、屈曲可能に構成されていても良い。
【0033】
この場合、高圧側接続導体61、62には、低圧側接続導体63よりも大電流が流れる。そのため、高圧側接続導体61、62の導体部611、621の直径は、いずれも低圧側接続導体63の導体部の直径よりも太く、また、高圧側接続導体61、62の絶縁部材612、622は、いずれも低圧側接続導体63の絶縁部材よりも厚い。このため、高圧側接続導体61、62は、いずれも低圧側接続導体63よりも剛性が高い。
【0034】
本実施形態の場合、高圧側第1接続導体61は、柔軟性を有しておらず、折り曲げ不可能な剛体に構成されている。また、高圧側第2接続導体62は、高圧側第1接続導体61よりも柔軟性を有しているものの、低圧側接続導体63よりは剛性が高い。本実施形態の場合、高圧側第2接続導体62は、作業者の力では容易に折り曲げることが出来ず、仮に強引に折り曲げた場合には絶縁部材622が破損してしまう程度の剛性を有している。
【0035】
一方、低圧側接続導体63は、高圧側接続導体61、62ほど大きな電流は流れない。そのため、低圧側接続導体63の導体部の直径は、高圧側接続導体61、62の導体部611、621の直径よりも細くすることができ、また、低圧側接続導体63の絶縁部材は、高圧側接続導体61、62の絶縁部材612、622よりも薄くすることができる。そのため、低圧側接続導体63は、高圧側接続導体61、62よりも比較的柔軟性を有したものとすることができる。
【0036】
以上説明した実施形態によれば、モールド変圧器10は、機器中身20と、容器30と、高圧側ブッシング51及び低圧側ブッシング52と、高圧側第1接続導体61と、高圧側第2接続導体62と、を備える。機器中身20は、高圧側巻線22及び低圧側巻線23を鉄心21に巻いて構成されている。これら巻線22、23の表面は、絶縁部材で覆われている。容器30は、機器中身20を収容する。高圧側ブッシング61及び低圧側ブッシング62は、容器30の天井部35に設けられている。高圧側第1接続導体61は、表面が絶縁部材612で覆われて剛性を有しており、容器30に対して相対的に移動不可となるように固定されている。そして、高圧側第1接続導体61は、容器30内において上下方向に伸びてその上端部が高圧側ブッシング51に電気的に接続されている。高圧側第2接続導体62は、表面が絶縁部材622で覆われて構成され、高圧側巻線22と第1接続導体61とを電気的に接続している。この場合、高圧側第1接続導体61及び高圧側第2接続導体62は、それぞれ第1接続導体及び第2接続導体として機能する。
【0037】
すなわち、上記実施形態の構成によれば、高圧側ブッシング51と高圧側巻線22との間は、1つの接続導体によって電気的に接続されてはおらず、高圧側第1接続導体61と高圧側第2接続導体62とによって電気的に接続されている。この場合、高圧側ブッシング51には、高圧側第1接続導体61が接続されており、この高圧側第1接続導体61は、剛性を有し、容器30に対して相対的に移動不可となるように固定されている。そして、機器中身20つまり高圧側巻線22と高圧側第1接続導体61との間は、高圧側第2接続導体62によって接続されている。
【0038】
これによれば、まず、高圧側第1接続導体61について見ると、高圧側第1接続導体61は、剛体を有し容器30に対して相対的に移動不可となるように固定されている。このため、高圧側第1接続導体61は、モールド変圧器10に振動が加わった場合においても、容器30に対して相対的に揺れ難くいものとなっている。
【0039】
更に、高圧側第1接続導体61よりも揺れ易い高圧側第2接続導体62について見ると、高圧側第2接続導体62は、機器中身20の近傍に位置する高圧側第1接続導体61に接続されている。これにより、高圧側第2接続導体62は、容器30の天井部35に設けられた高圧側ブッシング51まで直接伸ばした場合に比べて、高圧側第2接続導体62の長さ寸法を極力短いものとすることができる。これにより、高圧側第2接続導体62は、モールド変圧器10に振動が加わった場合においても、容器30に対して相対的に揺れ難くいものとなる。
【0040】
このような構成により、例えば搬送時や設置作業の際にモールド変圧器10に振動が加わった場合であっても、高圧側第1接続導体61及び高圧側第2接続導体62は揺れ難く、また、仮に揺れた場合であってもその揺れ幅を極力小さくすることができる。その結果、高圧側接続導体61、62が揺れて機器中身20に接触したりして高圧側接続導体61、62の絶縁部材612、622が破損することを、抑制することができる。
【0041】
ここで、図1等に示すように、一般にモールド変圧器10の機器中身20において、鉄心21の下端部は容器30に接続されているが、鉄心21の上端部は容器30に接続されていないことが多い。この構成において、モールド変圧器10に振動が加わった場合、機器中身20は、鉄心21の下端部を支点に揺れる可能性がある。そして、その揺れ幅は、上側へ行くほど大きくなる。
【0042】
そこで、本実施形態において、高圧側第2接続導体62の一端部は、高圧側巻線22の上下方向の中心よりも下側部分で高圧側巻線22に電気的に接続されており、他端部は、高圧側第1接続導体61の上下方向の中心よりも下側部分で高圧側第1接続導体61に電気的に接続されている。つまり、高圧側第2接続導体62は、高圧側巻線22及び高圧側第1接続導体61に対してそれぞれの下部に接続されている。
【0043】
これによれば、高圧側第2接続導体62は、高圧側巻線22及び高圧側第1接続導体61に対して、揺れ幅の小さい下側部分で接続されている。そのため、モールド変圧器10に振動が加わっって機器中身20が揺れた場合でも、高圧側第2接続導体62に対するその揺れの影響を極力小さくすることができる。その結果、高圧側接続部61、62が揺れて機器中身20に接触したりして高圧側接続導体61、62の絶縁部材612、622が破損することを、更に効果的に抑制することができる。
【0044】
また、高圧側第2接続導体62は、水平方向に延びている。これによれば、高圧側第1接続導体61と機器中身20つまり高圧側巻線22との距離を最短距離にすることができる。すなわち、これによれば、高圧側第2接続導体62の長さ寸法を最短なものにすることができる。これによれば、高圧側第2接続導体62が揺れた場合の揺れ幅を更に小さくすることができ、その結果、高圧側第2接続導体62が揺れて機器中身20に接触したりして高圧側第2接続導体62の絶縁部材622が破損することを、更に効果的に抑制することができる。
【0045】
なお、上述した高圧側巻線22と高圧側ブッシング51との接続構造を、低圧側巻線23と低圧側ブッシング52との接続構造に適用することもできる。すなわち、上記実施形態では、低圧側巻線23と低圧側ブッシング52とを、単に1つの低圧側接続導体63で接続する構成としたが、この構成に換えて、低圧側巻線23と低圧側ブッシング52との間を、高圧側第1接続導体61及び高圧側第2接続導体62と同様の構成された低圧側第1接続導体及び低圧側第2接続導体によって接続しても良い。
また、上記実施形態では、モールド形静止誘導機器の一例としてモールド変圧器について説明したが、これに限られず、モールド形リアクトルでも良い。
【0046】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれる内容と同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0047】
図面中、10はモールド変圧器(モールド形静止誘導機器)、20は機器中身、21は鉄心、22は高圧側巻線(巻線)、23は低圧側巻線(巻線)、30は容器、35は天井部、51は高圧側ブッシング(ブッシング)、52は低圧側ブッシング(ブッシング)、61は高圧側第1接続導体(第1接続導体)、612は絶縁部材、62は高圧側第2接続導体(第2接続導体)、622は絶縁部材、を示す。
図1
図2
図3