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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/22 20060101AFI20221031BHJP
   G01R 31/52 20200101ALI20221031BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
G01R1/22 D
G01R31/52
G01R19/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018150133
(22)【出願日】2018-08-09
(65)【公開番号】P2020026958
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】成田 康平
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 健明
(72)【発明者】
【氏名】赤松 祐太
(72)【発明者】
【氏名】相澤 文仁
(72)【発明者】
【氏名】藤森 康彦
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3046008(JP,U)
【文献】特開平11-064258(JP,A)
【文献】特開2012-068191(JP,A)
【文献】特開平04-138380(JP,A)
【文献】特開2009-141817(JP,A)
【文献】特開2010-133767(JP,A)
【文献】特開2006-226917(JP,A)
【文献】特開2010-243157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/22
G01R 31/52
G01R 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象電線の漏れ電流を測定する測定装置であり、
クランプセンサが取得した測定対象電線の信号が入力され、この信号から前記測定対象電線を流れる電流値を演算する演算手段を含む信号処理部を有し、
前記信号が前記信号処理部に入力される経路には、商用周波数より高い周波数成分を除去するローパスフィルタを介して前記信号処理部に入力される経路と、前記ローパスフィルタを介さずに前記信号処理部に入力される経路とを有する、
測定装置であって、
前記ローパスフィルタを介さない信号と、前記ローパスフィルタを介した信号とが並列して前記信号処理部に入力され、
前記演算手段は、並列入力された前記ローパスフィルタを介さない信号から前記電流値を演算するとともに、前記ローパスフィルタを介した信号から前記電流値を演算し、
前記信号処理部は、前記ローパスフィルタを介さない信号からの前記電流値と前記ローパスフィルタを介した信号からの前記電流値とを比較する比較手段を有する、
ことを特徴とする測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の測定装置において、
前記信号処理部は、前記ローパスフィルタを介さない信号からの前記電流値と前記ローパスフィルタを介した信号からの前記電流値との差が所定値以上である場合には、ローパスフィルタ設定を促す報知を行う手段を有することを特徴とする測定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の測定装置において、
前記信号処理部は、前記ローパスフィルタを介さない信号からの前記電流値と前記ローパスフィルタを介した信号からの前記電流値との差が所定値以上である場合には、その旨を報知する、または、両方の電流値を出力することを特徴とする測定装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の測定装置において、
前記信号処理部は、前記ローパスフィルタを介さない信号からの前記電流値と前記ローパスフィルタを介した信号からの前記電流値との差の値を出力する手段を備える
ことを特徴とする測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置に関する。本発明は、特に測定対象電線の電流あるいは電圧・電力等を測定する測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
漏れ電流が生じているときの分電盤等での漏れ電流箇所の探索にクランプメータが用いられている。このクランプメータは、活線状態にある測定対象電線に電流センサであるクランプセンサを装着して測定対象電線の電流を測定する。クランプセンサは、磁気コアや検出コイルからなっており、このクランプセンサは、測定装置と一体となって、クランプメータ全体を構成している。
【0003】
クランプメータには、ローパスフィルタ(LPF)が設けられていて、クランプセンサで取得した信号をローパスフィルタを介して、測定装置の信号処理部に選択可能に入力するものがある。
【0004】
このようなクランプメータの構成の一例を図6を用いて説明する
このクランプメータは、電流センサ10と測定装置本体20とを備え、測定用途に応じて、電流センサ10が選択されて測定装置本体20に接続される。電流センサ10としては、測定対象電線の周りに環状に配置される閉鎖磁路を形成する磁気コアと磁気コアの磁気を検出するホール素子や検出コイルからなる磁気センサとを備えたものがある。また、ケーブルタイプのフレキシブル電流センサもある。
測定装置本体20は、電流センサ10の出力が入力される増幅器21と、この増幅器の出力が入力されるローパスフィルタ(LPF)22と、増幅器21の出力、または、ローパスフィルタ22の出力とを選択するスイッチ23と、このスイッチ23の出力が入力されるアナログディジタル変換器(A/D)24とを備える。また、測定装置本体20は、演算手段であるCPU(Central Processing Unit )26と、プログラムあるいはデータ、演算結果等を記憶するメモリ27と、CPU26にインタフェース(I/0)28を介して接続されている操作部31と、通信部32と、表示部(LCD)33と、音響出力部34とを備えている。
【0005】
この図6に示した測定装置の動作を説明する。
電流センサ10から出力される信号は、増幅器21で増幅され、分岐した一方の信号は、スイッチ23の一方の入力端子に、分岐した他方の信号は、ローパスフィルタ22を通過して商用周波数に対して高い周波数成分が除去されてスイッチ23の他方の入力端子に入力される。スイッチ23は、増幅器21の出力、または、ローパスフィルタ22の出力の一方を選択して、その出力は、アナログディジタル変換器24に入力される。ローパスフィルタ22は、カットオフ周波数をたとえば150Hzまたは180Hzとするフィルタで、商用周波数成分を通過させ、商用周波数に混入した高調波などの高い周波数成分を除去するフィルタである。なお、以下で符号22で示されるローパスフィルタは、単にフィルタと略することがある。
アナログディジタル変換器24は、入力された信号をディジタル信号に変換し、ディジタル信号をCPU26に出力する。CPU26は、メモリ27に記憶されているプログラムに基づいて、アナログディジタル変換器から入力されたディジタル信号を演算して、測定対象電線の電流値を演算する。この出力は、インタフェース28を介して、表示部33に表示され、また演算された測定値は、メモリ27にも記憶される。また、入力された信号は、たとえば移動平均値などを演算して測定値を演算するために、メモリ27に記憶される。操作部31は、各種設定、操作の入力を行う。通信部32は、たとえばブルートゥース(Blue tooth 登録商標)により外部に測定値等の情報を出力することを可能とする。また、音響出力部34は、各種操作等の音響を出力することができる。
このようなクランプメータについては特許文献1に記載されている。
【0006】
ここで、ローパスフィルタ22の動作について説明する。
近年の各種電気機械器具の電源部には、インバータを備えており、電源線には、インバータによって生ずる高調波による商用周波数より高い周波数成分が混入することがある。また、電源でのUPSなどの利用も、電源線に高い周波数の高調波成分が混入する原因となっている。
このような、高い周波数成分を含めて測定対象電線に流れる電流として検出すると、測定目的によっては、不正確な測定となることがある。
たとえば、漏れ電流測定で、商用周波数成分に加えて、高い周波数成分を含めた電流値として検出すると、本来の漏れ電流の値より、測定電流値は大きくなる。一方、漏れ電流は、商用周波数成分について地絡が生じている現象であるので、高い周波数成分も含めて検出すると、漏れ電流値として検出した値が大きくなりすぎて、正確な漏れ電流値とならない。このため、上述のように、50Hzまたは60Hzの商用電源周波数帯域を通過させ、高い周波数成分をカットするように、カットオフ周波数を150Hzあるいは180Hzとするローパスフィルタが設けられている。
【0007】
もし、漏れ電流検出において、高い周波数成分を含めて漏れ電流値として検出すると、不正確な測定となって漏れ電流箇所の探索に誤りが生じ、漏れ電流箇所の探索作業に手戻りが生じてしまい。漏れ電流箇所の探索に時間がかかることになる。
【0008】
このような不都合が生ずることを懸念して、漏れ電流検知には、スイッチ23を操作して、フィルタ22をオンにするとともに、フィルタの設定を行って電流測定を行うようにしている。一方、電気機器の負荷電流の測定では、機器の負荷に流れる電流を検出するため、フィルタをオフとして、測定対象電線に流れる全体の電流測定を行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2009-002539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のクランプメータは、分電盤等の現場で使用されるものである。フィルタ機能のオン、オフやパラメータ等の設定作業は、測定の都度、作業者が行う必要がある。たとえば、作業者が測定前にクランプメータのフィルタ機能を設定(たとえばスイッチ23でフィルタ22をオン)して、測定対象電線にクランプする。クランプメータの表示部33に、設定に基づく測定値が表示される。
【0011】
しかしながら、上述のように、漏れ電流の検出のときは、フィルタを設定し、電気機器の負荷電流の測定では、フィルタをオフして使用するというように、使用目的によってフィルタをオンオフする必要があり、フィルタをオンしなければいけないのに、フィルタをオフの状態で測定を行ってしまうことが生じていた。本来フィルタを用いて不要な信号を除去して測定すべき状態でフィルタなしで測定した測定値は不正確なものとなる。このような不正確な測定値をもとに、漏れ電流箇所を探索しようとすれば、無駄な作業が生じ、漏れ電流検知作業時間が長くかかる。また、逆に、フィルタをオフ状態にして測定すべきときに、フィルタをオン状態として測定すれば、誤った測定になってしまう。
【0012】
本発明は、このような、フィルタを介さない信号とフィルタを介した信号を入力して、それぞれの測定値を演算、出力することができる測定装置において、フィルタ機能が設定されていないことを作業者に報知することができる測定装置を提供することを目的とする。また、本発明は、フィルタを介した信号とフィルタを介さない信号とを入力して比較し、両者の測定値を表示し、また両者の測定値の差分を表示して作業者に知らせることで、測定作業を効率化することができる測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第一の側面は、センサが取得した測定対象電線の信号が入力され測定値を演算する演算手段を含む信号処理部を有し、信号が信号処理部に入力される経路には、フィルタを介して信号処理部に入力される経路と、フィルタを介さずに信号処理部に入力される経路とを有する、測定装置であって、フィルタを介さない信号と、フィルタを介した信号とが並列して信号処理部に入力され、信号処理部は、フィルタを介さない信号の測定値とフィルタを介した信号の測定値とを比較する比較手段を有することを特徴とする。
【0014】
なお、本発明の信号処理部は、フィルタを介さない信号の測定値とフィルタを介した信号の測定値との差が所定値以上である場合には、フィルタ設定を促す報知を行う手段を有することができる。また、フィルタを介さない信号の測定値とフィルタを介した信号の測定値との差が所定値以上である場合には、その旨を報知する、または、測定値の両方の測定値を出力することができる。また、フィルタを介さない信号の測定値とフィルタを介した信号の測定値との差の値を出力する手段を備えることができる。
【0015】
さらに、本発明の測定装置は、クランプセンサを介して測定対象電線の電流を測定するクランプメータであって、フィルタは、商用周波数より高い周波数成分を除去するローパスフィルタであり、測定対象電線の漏れ電流を測定するときは、ローパスフィルタにより商用周波数より高い周波数成分を除去した漏れ電流の測定を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
フィルタを介さない信号とフィルタを介した信号とからそれぞれ測定値を得て、これらを比較することができるので、フィルタ機能が有効となっていないことを報知して設定を促し、あるいは、両方の測定値、測定値の差などが表されて作業者が知ることができるので、漏れ電流の検知などの測定作業の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態であるクランプメータの構成の一例を示す図である。
図2】本発明の実施の形態のクランプメータの動作の一例を説明するフローチャートである。
図3】本発明の実施の形態のクランプメータの動作の一例を説明するフローチャートである。
図4】本発明の実施の形態のクランプメータの動作の一例を説明するフローチャートである。
図5】本発明の実施の形態のクランプメータの動作の一例を説明するフローチャートである。
図6】従来のクランプメータの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の第一実施の形態のクランプメータの構成を示す図であり、図6に示す従来のクランプメータと同一のものと同じ構成については同一の符号をしている。
【0019】
クランプメータの測定装置は、測定装置本体20に、測定対象電線にクランプされる電流センサ10が接続される。この実施形態のクランプメータの測定装置本体20は、電流センサ10からの信号を増幅する増幅器21と、増幅器21からの信号から商用周波数より高い周波数の信号を除去するローパスフィルタ22と、増幅器21の出力をアナログディジタル変換するアナログディジタル変換器24と、ローパスフィルタ22の出力をアナログディジタル変換するアナログディジタル変換器25と、アナログディジタル変換器24の出力およびアナログディジタル変換器25の出力が入力されるCPU26と、メモリ27と、CPU26にインタフェース28を介して接続される操作部31、通信部32、表示部33、音響出力部34とを備えている。
図6の従来例のクランプメータと比較すると、スイッチ23を設けることなく、増幅器21の出力をそのままアナログディジタル変換を行うアナログディジタル変換器24と、ローパスフィルタ22の出力をそのままアナログディジタル変換するアナログディジタル変換器25とを備えており、ふたつのアナログディジタル変換器24、25の出力が並列して同時にCPU26に入力され、フィルタ22を介した信号とフィルタ22を介さない信号の両者から測定値を演算して、比較する構成である点が相違している。
【0020】
(第一の使用形態)
次にこの本発明の実施の形態のクランプメータの第一の使用形態の動作を説明する。
まず、フィルタ機能の設定の必要性の報知をする例を図2に基づいて説明する。なお、このフィルタ機能の設定は、作業者が操作部31を介してフィルタの設定を行う例であり、スイッチを操作することなく、フィルタ機能の設定を行う例で説明する。
【0021】
作業者は、測定対象電線に電流センサ10をクランプして、測定開始指示を行う(ステップS11)。これにより、電流センサ10の出力は、フィルタ22を介さない信号とフィルタ22を介した信号の両者がCPU26に同時に入力されることになる。そして、CPU26は、フィルタ22を介した信号と介さない信号との両方の信号から電流値をそれぞれ演算する(ステップS12)。ここで、CPU26は、演算した結果の電流値を比較して、両者に差があるか否かを判定する(ステップS13)。
【0022】
この差の判定方法としては、以下のような判定方法がある。
まず、フィルタを介した信号による電力の実効値×αが、フィルタを介さない信号による電力の実効値より小さい場合に差があると判定する。
フィルタオン実効値×α<フィルタオフ実効値(αは任意に設定)
あるいは、フィルタを介した信号による電力の実効値からフィルタを介さない信号による電力の実効値を引いた値が、任意に設定されたβの値より大きい場合に差があると判定する。
|フィルタオン実効値-フィルタオフ実効値|>β(βは任意に設定)
このような条件を満たすときは、フィルタの設定を促す警告を行う(ステップS14)。この警告としては、たとえば表示部33に、「FILTER」の文字を表示して作業者にフィルタの設定を促すようにする。また、音響出力部34でブザー音を出力したり、フィルタを設定してくださいとの音声出力を行ってもよい。両者に差がないと判断した場合には、フィルタ設定の警告をしない(ステップS15)。
【0023】
この実施の形態では、フィルタ22を介さない信号とフィルタ22を介する信号が並列してCPU26に入力されて、両者の信号による測定値の演算結果をそれぞれ得て、その測定値を比較しているので、周波数帯域によって異なる測定値を同時に比較することができ、周波数帯域によって異なる測定値がある場合の電流測定をより正確に測定することを可能である。
なお、フィルタ機能の設定は、操作部31を作業者が操作することで行うことができ、任意に設定することができる、α、βの値を入力するとともに、フィルタを介した信号による測定値を出力(あるいは記憶する)、フィルタを介さない信号による測定値を出力あるいは記憶する等の指示を行う。
【0024】
本実施の形態では、作業者がフィルタの設定をし忘れていた場合に生ずる測定作業の手戻りを防止することが可能であり、また、作業者がフィルタ機能を適切に設定することができるので、誤り測定を防止することが可能である。
【0025】
(第二の使用の形態)
つぎに、本発明の実施の形態のクランプメータを用いて、フィルタを介さない信号とフィルタを介した信号の両方の信号から演算した測定値の両方の測定値を表示する第二の使用の例を図3を参照して説明する。図1に示すクランプメータの構成では、フィルタを介した信号とフィルタを介さない信号の両方の信号がCPU26に入力されて、CPU26は、両方の信号から、測定値を演算することができる。この両方の測定値をクランプメータの表示部で表示することで、測定している作業者は、測定対象電線に流れている電流のフィルタありとフィルタなしの測定値を読み取ることが可能である。
作業者は、測定対象電線に電流センサ10をクランプして、測定開始指示を行う(ステップS21)。これにより、CPU26は、フィルタ22を介した信号とフィルタ22を介さない信号との両方の信号から電流値をそれぞれ演算する(ステップS22)。そして、CPU26は、演算した結果の両方の測定値を、表示部33に、フィルタオン、フィルタオフの表示をして、表示する(ステップS23)。
【0026】
作業者は、フィルタ機能がオンの状態の測定値とフィルタ機能がオフの状態の測定値の両方が表示されているので、装置のフィルタ機能の設定をし忘れによる手戻りを少なくすることができる。また、フィルタ機能があり、なしによる電流測定値を知ることができるので、その測定値の値から測定している電線に生じている現象の推測が可能である。たとえば、非常に高調波の混入が大きいとか、あるいは、ほぼ高調波が混入されておらず、漏れ電流のみを検出している等などを表示された両方の測定値から推測することが可能である。
【0027】
(第三の使用の形態)
第二の使用の形態では、フィルタオンの状態の測定値とフィルタオフの状態の測定値とを表示するようにしたが、両者の差分を表示することもできる。
【0028】
図4に基づいて説明する。
作業者は、測定対象電線に電流センサ10をクランプして、測定開始指示を行う(ステップS31)。これにより、CPU26は、フィルタ22を介した信号とフィルタ22を介さない信号との両方の信号から電流値をそれぞれ演算して、両者の差分を演算する(ステップS32)。そして、CPU26は、演算したフィルタオンとフィルタオフとの測定電流値の差分を表示部33に表示させる。
【0029】
これにより、作業者は、クランプメータのフィルタ機能の設定を切り替えることなく、フィルタを介したときの測定値とフィルタを介さないときの測定値の差分を知ることができるので、作業の効率化を図ることができる。また、その差分から、高い周波数成分の混入がどれだけあるかを知ることができる。
【0030】
(その他の使用の形態)
本発明のクランプメータは、電流センサからの測定信号がフィルタを介さない測定信号とフィルタを介した測定信号の両方の信号が並列してCPU26に入力されて演算処理が行われる。CPU26に波形解析などの解析機能があれば、波形解析や周波数成分の解析を行って、その結果を表示することができる。
それにより、どの程度の商用周波数を超える高い周波数成分が混入しているかを計測することが可能である。たとえば、そのような解析として、漏れ電流の歪み波形の解析、混入した高調波の解析などをすることができる。
【0031】
図5を参照して、このような周波数解析の例を説明する。
作業者は、測定対象電線に電流センサ10をクランプして、測定開始指示を行う(ステップS31)。これにより、CPU26は、フィルタ22を介した信号とフィルタ22を介さない信号との両方の信号から電流測定値をそれぞれ演算して比較する(ステップS42)。そして、作業者の指示により、商用周波数を超える高い周波数成分の混入があるので、周波数成分の解析を行い(ステップS43)、その結果を表示部33に表示する(ステップS44)。この高い周波数成分の表示は、フィルタを介さない信号の周波数解析を行って、周波数分布をグラフなどで表示する。
【0032】
このように周波数解析を行うことで、漏れ電流自体の歪み波形も解析することができ、漏れ箇所だけでなく、歪んだ漏れ電流の解析から原因の究明を可能である。
【0033】
(その他の実施の形態)
上述の実施の形態の説明は、測定対象電線の電流を計測するクランプメータを例として説明したが、電圧計、電力計などで実施できるのはいうまでもなく、また、センサを測定対象電線にクランプする測定装置に限られないことはいうまでもない。
【0034】
また、実施の形態では、アナログディジタル変換器をふたつ設けた例で説明したが、フィルタを介さない信号とフィルタを介した信号の両方をアナログディジタル変換器で時分割サンプリングを行うことで、アナログディジタル変換器を一つにしてもよい。この場合には、CPUにて、時分割サンプリングされたフィルタを介した信号のディジタル信号と、フィルタを介さない信号のディジタル信号とから、ふたつの測定値を演算して比較すればよい。
【符号の説明】
【0035】
10 電流センサ
20 測定装置本体
21 増幅器(AMP)
22 ローパスフィルタ(LPF)
23 スイッチ
24、25 アナログディジタル変換器(A/D)
26 CPU
27 メモリ
28 インタフェース(I/O)
31 操作部
32 通信部
33 表示部
34 音響出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6