(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】メッシュ適合アルゴリズム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/343 20210101AFI20221031BHJP
A61B 5/33 20210101ALI20221031BHJP
A61B 5/25 20210101ALI20221031BHJP
A61B 5/06 20060101ALI20221031BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20221031BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20221031BHJP
G06T 7/70 20170101ALI20221031BHJP
【FI】
A61B5/343
A61B5/33
A61B5/25
A61B5/06
A61B5/00 G
G06T7/00 614
G06T7/70 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018165864
(22)【出願日】2018-09-05
【審査請求日】2021-06-22
(32)【優先日】2017-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・コーエン
(72)【発明者】
【氏名】リオール・ザル
(72)【発明者】
【氏名】ナタン・シャロン・カッツ
(72)【発明者】
【氏名】アハロン・ツルゲマン
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-107330(JP,A)
【文献】特開2016-036731(JP,A)
【文献】特開2017-076397(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0078036(US,A1)
【文献】特開2007-298332(JP,A)
【文献】米国特許第6106466(US,A)
【文献】米国特許第6650927(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05 - 5/0538
A61B 5/24 - 5/398
A61B 5/00 - 5/01
A61B 5/06 - 5/22
G06T 7/00 - 7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極を有し、かつ生体被験者の心臓内への挿入に適合されたプローブと、
プロセッサであって、前記電極から電気信号を受信し、かつ
該電極の位置マップを構築する工程であって、該位置マップが
、前記電極の位置情報であるマッピング点を有し、かつ該心臓の3次元表面をシミュレーションする、工程と、
該位置マップを該心臓の取得画像と位置合わせして載置する工程と、
該位置マップに基づいて、該心臓の該3次元表面をモデル化するメッシュを構築する工程であって、該メッシュが頂点を有する、工程と、
該メッシュと該取得画像との位置合わせを改善するために、該マッピング点に対して該頂点の位置を調整する工程と、
を実施するよう構成されている、プロセッサと、
を含
み、
前記頂点の位置を調整する工程が、
選択されたマッピング点から所定の距離内にある前記メッシュの全ての頂点を識別する工程と、
該識別された頂点と該選択されたマッピング点との間の距離に基づいて、それぞれの重み係数を算出する工程と、
該それぞれの重み係数に従って、該選択されたマッピング点に向かうシフトを含む、該識別された頂点の新たな位置を計算する工程と、
該新たな位置に基づいて新たなメッシュを画定する工程と、を含む、
装置。
【請求項2】
前記メッシュが三角形マトリクスである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記それぞれの重み係数が、前記識別された頂点と前記選択されたマッピング点との間の距離の逆2乗に従って計算される、請求項
1に記載の装置。
【請求項4】
前記新たな位置が、前記全ての頂点を識別する工程、及び前記新たな位置を計算する工程の実施において決定された、各マッピング点に向かうシフトのベクトル和として決定される、請求項
1に記載の装置。
【請求項5】
前記識別された頂点と前記選択されたマッピング点との間の距離が、測地距離である、請求項
1に記載の装置。
【請求項6】
コンピュータ
プログラムであって
、コンピュータに、
心臓内の複数の電極からの電気信号を受信する工程を実行させ、かつ、
該電極の位置マップを構築する工程であって、該位置マップが
前記電極の位置情報である、マッピング点を有し、かつ該心臓の3次元表面をシミュレーションする、工程と、
該位置マップを該心臓の取得画像と位置合わせして載置する工程と、
該位置マップに基づいて、該心臓の該3次元表面をモデル化するメッシュを構築する工程であって、該メッシュが頂点を有する、工程と、
該メッシュと該取得画像との位置合わせを改善するために、該マッピング点に対して該頂点の位置を調整する工程と、
を実行させ、
前記頂点の位置を調整する工程が、
選択されたマッピング点から所定の距離内にある前記メッシュの全ての頂点を識別する工程と、
該識別された頂点と該選択されたマッピング点との間の距離に基づいて、それぞれの重み係数を算出する工程と、
該それぞれの重み係数に従って、該選択されたマッピング点に向かうシフトを含む、該識別された頂点の新たな位置を計算する工程と、
該新たな位置に基づいて新たなメッシュを画定する工程と、を含む、
コンピュータ
プログラム。
【請求項7】
前記メッシュが三角形マトリクスである、請求項
6に記載のコンピュータ
プログラム。
【請求項8】
前記それぞれの重み係数が、前記識別された頂点と前記選択されたマッピング点との間の距離の逆2乗に従って計算される、請求項
6に記載のコンピュータ
プログラム。
【請求項9】
前記新たな位置が、前記全ての頂点を識別する工程、及び前記新たな位置を計算する工程の実施において決定された、各マッピング点に向かうシフトのベクトル和として決定される、請求項
6に記載のコンピュータ
プログラム。
【請求項10】
前記識別された頂点と前記選択されたマッピング点との間の距離が、測地距離である、請求項
6に記載のコンピュータ
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(著作権情報)
本特許文献の開示の一部には、著作権保護の対象となる資料が含まれる。著作権者は、特許文献又は特許情報開示のうちの任意のものによる複製に対して、それが特許商標庁特許出願又は記録において明らかであるとき、異議を唱えないが、そうでなければ、たとえ何であっても全ての著作権を保有する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は画像データ処理に関する。より具体的には、本発明は、心臓の3次元画像のモデリング及び位置合わせに関する。
【背景技術】
【0003】
医療カテーテル法は今日慣例的に実施されており、例えば、心臓組織の諸区域が隣接組織に電気信号を異常に伝導し、それによって正常な心周期を阻害し、非同期的な律動を引き起こすときに発生する、心房細動などの心不整脈の場合に使用されている。不整脈を治療するための手技としては、不整脈を発生させている信号の発生源を外科的に破壊することと、そのような信号の伝導路を破壊することが挙げられる。カテーテルを介してエネルギー、例えば、高周波エネルギーを適用することにより、心臓組織を選択的にアブレーションすることによって、心臓の一部分から別の部分への望ましくない電気信号の伝播を、停止又は変更することが可能な場合がある。アブレーション法は、非伝導性の損傷部位を形成することによって望ましくない電気経路を破壊するものである。このような手順では、心臓の解剖学的構造の便利な表示を操作者に提供することが望ましい。
【0004】
位置センサを収容するカテーテルを使用して、心臓表面の各点の軌跡を判定してもよい。これらの軌跡を使用して、組織の収縮力などの運動特性を推測することができる。参照により本明細書に援用される米国特許第5,738,096号(Ben Haimに付与)に開示されているように、心臓内の十分な数の点で軌跡の情報が標本化されると、そのような運動特性を示すマップが構築され得る。
【0005】
心臓内のある点における電気活性は通常、遠位先端にあるいはその近くに電気センサを収容したカテーテルを、心臓内のその点へと前進させ、組織をセンサと接触させ、その点におけるデータを収集することによって測定される。単一の遠位先端電極のみを収容したカテーテルを使用して心室をマッピングすることに伴う1つの欠点は、全体としての心腔の詳細なマップに要求される必要な数の点に対して、点ごとにデータを集積するために長時間が要求されることである。したがって、心腔内の複数の標本化点での電気活性(例えば、局所興奮時間(ocal activation times、LAT))を同時に測定するために、マルチ電極カテーテルが開発されてきた。
【0006】
例えば、参照により本明細書に援用される、本願と同一譲受人に譲渡された、米国特許出願公開第2017/0103570号(Zarら)は、心臓の3次元再構築を開示しており、これは、マッピング電極を備えたプローブを用いて心臓にカテーテルを挿入することと、心臓の関心領域内のそれぞれの位置から電気的データを取得することと、その電気的データの位置を点のクラウドとして表すことと、その点のクラウドから心臓のモデルを再構築することと、そのモデルにフィルタセットを適用して、フィルタ処理済み容積を生成することと、そのフィルタ処理済み容積を分割して心臓の構成要素を確定することと、分割されたフィルタ処理済み容積を報告することと、により実施される。
【0007】
米国特許第8,428,700号(Harleyら)は、電極で測定された信号と、電極の位置に関する情報とに基づいて、患者の心臓の電気解剖学的な表現を生成することを提案している。この方法は、他の撮像モダリティ(例えばMRIなど)とのカテーテル位置合わせ手順を実行することと、測定された信号に注釈付けすることと、特定の測定信号に空間的に近接している他の測定信号について、注釈を調整することと、を含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
典型的なカテーテル法セッションは、スキャンされたCT/MRI画像を3次元電気解剖学的マップと位置合わせすることを含む。しかしながら、位置合わせの後も、CT/MRIの画像と、現在位置マップにおいて決定されたリアルタイムの解剖学的構造との間には依然として差がある。手順中に、リアルタイムのカテーテル位置が確立され、カテーテル電極が心臓壁に接触していることが確認される(例えば力閾値測定によって、又は組織近接指標によって)。現在位置マップはCT/MRIの画像と位置合わせされる。
【0009】
メッシュ適合アルゴリズムは、リアルタイムでその差を特定し、解消する。現在位置マップをモデル化するために、3次元マトリクスが構築される。次に、現在位置マップ上の点により近接するように、マトリクス上の点が調整される。
【0010】
本発明の実施形態によれば、方法であって、心臓にマルチ電極プローブを挿入することと、電極の位置マップを構築することと、心臓の3次元表面をシミュレーションすることと、によって実施される方法が提供される。この方法は更に、位置マップを心臓の取得画像と位置合わせして載置することと、位置マップに基づいて、心臓の3次元表面をモデル化するメッシュを構築することと、メッシュと取得画像との位置合わせを改善するために、位置マップにマッピングされた点に対してメッシュの頂点の位置を調整することと、によって実施される。
【0011】
本方法の更なる一態様によると、このメッシュは三角形マトリクスである。
【0012】
本方法の一態様において、頂点の位置を調整することは、選択されたマッピング点から所定の距離内にあるメッシュの全ての頂点を識別することと、識別された頂点と選択されたマッピング点との間の距離に基づいて、それぞれの重み係数を算出することと、それぞれの重み係数に従って、選択されたマッピング点に向かうシフトを表す、識別された頂点の新たな位置を計算することと、当該新たな位置に基づいて新たなメッシュを画定する工程と、を含む。
【0013】
本方法の更に別の態様によれば、それぞれの重み係数は、識別された頂点と選択されたマッピング点との間の距離の逆2乗に従って計算される。
【0014】
本方法の更に別の一態様において、新たな位置は、全ての頂点を識別することと、新たな位置を計算することとの実施において決定された、各マッピング点に向かうシフトのベクトル和として決定される。
【0015】
本方法の付加的な一態様によれば、識別された頂点と選択されたマッピング点との間の距離は、測地距離である。
【0016】
本方法の別の一態様によれば、プローブを挿入することは、電極と心臓の壁との組織接触を確認することを含む。
【0017】
本発明の実施形態によれば、装置であって、生体被験者の心臓内への挿入に適合されたマルチ電極プローブと、プロセッサであって、当該電極から電気信号を受信し、かつ電極の位置マップを構築する工程と、心臓の3次元表面をシミュレーションする工程と、位置マップを心臓の取得画像と位置合わせして載置する工程と、位置マップに基づいて、心臓の3次元表面をモデル化するメッシュを構築する工程と、メッシュと取得画像との位置合わせを改善するために、位置マップにマッピングされた点に対してメッシュの頂点の位置を調整する工程と、を実行させるように構成されたプロセッサ、を含む装置が更に提供される。
【0018】
本発明の実施形態によれば、コンピュータソフトウェア製品であって、コンピュータプログラム命令が記憶された非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を含み、この命令は、コンピュータによって実行されるとき、コンピュータに、電極の位置マップを構築する工程と、心臓の3次元表面をシミュレーションする工程と、位置マップを心臓の取得画像と位置合わせして載置する工程と、位置マップに基づいて、心臓の3次元表面をモデル化するメッシュを構築する工程と、メッシュと取得画像との位置合わせを改善するために、位置マップにマッピングされた点に対してメッシュの頂点の位置を調整する工程と、を実行させる、コンピュータソフトウェア製品が更に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明をより深く理解するため、本発明の詳細な説明を実例として参照するが、この説明は以下の図面と併せて読むべきものである。図中、同様の要素には同様の参照数字を付してある。
【
図1】本発明の一実施形態による、生体被験者の心臓における電気的活動を評価するためのシステムの描図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、アブレーション及び有効現在位置(active current location、ACL)回路の概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態による、プロセッサの態様のブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態による、心臓カテーテルの遠位セグメントの長さに沿った断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態によるメッシュの概略図である。
【
図6】本発明の一実施形態による、心臓の3次元モデルをCT/MRI画像に適合させる方法のフローチャートである。
【
図7】本発明の一実施形態に従って処理され得る三角形メッシュの一部分の概略図である。
【
図8】本発明の一実施形態による、マッピング点と位置合わせされたシミュレーションマトリクスである。
【
図9】本発明の一実施形態による、頂点の変位に追従する
図8のマトリクスである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の説明では、本発明の様々な原理が十分に理解されるように、多くの具体的な詳細について記載する。しかしながら、これらの詳細の全てが本発明を実施する上で必ずしも必要であるとは限らない点は当業者には明らかであろう。この場合、一般的な概念を無用に分かりにくくすることのないよう、周知の回路、制御論理、並びに従来のアルゴリズム及びプロセスに対するコンピュータプログラム命令の詳細については、詳しく示していない。
【0021】
参照により本明細書に援用される文書は本出願の一体部分と見なされるべきであり、いずれかの用語が、それらの援用された文書内で、本明細書で明示的又は暗示的に行われる定義と相反するように定義される場合を除き、本明細書における定義のみが考慮されるべきである。
【0022】
概論
次に図面を参照し、
図1を最初に参照すると、この図は、開示される本発明の実施形態に従って構築され、動作する、生存被験体の心臓12に対して診断的又は治療的手技を実施するためのシステム10を絵で表したものである。このシステムは、患者の脈管系を通って心臓12の腔又は脈管構造内に操作者16によって経皮挿入されるカテーテル14を備えている。通常は医師である操作者16は、カテーテルの遠位先端18を、心臓壁、例えば、アブレーション標的部位と接触させる。その開示が参照により本明細書に援用される、米国特許第6,226,542号及び同第6,301,496号、並びに本願と同一譲受人に譲渡された米国特許第6,892,091号に開示される方法に従って、電気的活動マップが作成され得る。
【0023】
システム10は、以下に説明する機能を実行するための好適なソフトウェアでプログラムされた汎用又は組込み型コンピュータプロセッサを備えることができる。したがって、システム10の、本明細書の他の図に示されている部分は、いくつかの別個の機能ブロックを含むものとして示されているが、これらのブロックは必ずしも別個の物体ではなく、むしろ例えば、プロセッサが利用できるメモリに格納されている異なる計算タスク又はデータオブジェクトを表し得る。これらのタスクは、単一のプロセッサ又は複数のプロセッサで動作するソフトウェアで実行することができる。ソフトウェアは、1つ又は2つ以上のプロセッサに、CD-ROM又は不揮発性メモリのような有形の非一時的媒体で提供され得る。あるいは、又は加えて、システム10は、デジタル信号プロセッサ又は実配線ロジックを備えてもよい。システム10の要素を具現化する1つの市販の製品は、Biosense Webster,Inc.(3333 Diamond Canyon Road,Diamond Bar,CA 91765)より入手可能な、CARTO(登録商標)3システムとして入手可能である。このシステムは、本明細書に説明される本発明の原理を具現化するように、当業者によって変更されてもよい。
【0024】
例えば電気的活動マップの評価によって異常と判定された領域は、熱エネルギーの印加によって、例えば、心筋に高周波エネルギーを印加する、遠位先端18の1つ又は2つ以上の電極に、高周波電流をカテーテル内のワイヤを介して流すことによって、アブレーションすることができる。エネルギーは組織に吸収され、組織をその電気興奮性が永久に失われる点(通常は50℃超)まで加熱する。成功裏に行われた場合、この処置によって心臓組織に非伝導性の損傷部が形成され、この損傷部が、不整脈を引き起こす異常な電気経路を遮断する。本発明の原理は、異なる心室に適用されて、多数の異なる心不整脈を診断及び治療することができる。
【0025】
カテーテル14は、典型的には、ハンドル20を備えており、このハンドル上に好適な制御部を有して、操作者16がアブレーションを行うためにカテーテルの遠位端の操舵、位置決め、及び方向付けを所望のとおりに行うことを可能にする。操作者16を補助するために、カテーテル14の遠位部分には、コンソール24内に配置されたプロセッサ22に信号を供給する位置センサ(図示せず)が収容されている。プロセッサ22は、後述のようないくつかの処理機能を果たすことができる。
【0026】
カテーテル14は、マルチ電極カテーテルであり、これは、吹き出し37の右部分に示されているようなバルーン若しくはバスケットカテーテル、又は左側部分に示されているようなスプラインカテーテルであり得る。いずれの場合にも、複数の電極32が存在し、これらは、感知電極として使用され、バスケット又はスプライン上の既知の位置、及びそれらの既知の相互関係を有する。このため、カテーテルが心臓内に配置されると、例えば、現在位置マップを構築することにより、心臓内の電極32の各々の位置が分かる。現在位置マップを生成するための1つの方法は、参照により本明細書に援用される、本願と同一譲受人に譲渡された、Bar-Talらに対する米国特許第8,478,383号に記載されている。
【0027】
電気信号は、カテーテル14の遠位先端18に又は遠位先端18近くに配置された電極32からケーブル34を介して心臓12へと、かつ心臓12からコンソール24へと伝達され得る。ペーシング信号及び他の制御信号は、コンソール24から、ケーブル34及び電極32を介して、心臓12へと伝達され得る。
【0028】
ワイヤ接続部35は、コンソール24を、身体表面電極30、並びにカテーテル14の位置座標及び方向座標を測定するための位置決めサブシステムの他の構成要素と連結する。プロセッサ22又は別のプロセッサ(図示せず)は、位置決めサブシステムの要素であってよい。参照により本明細書に援用される、Govariらに付与された米国特許第7,536,218号において教示されているように、電極32及び身体表面電極30を使用して、アブレーション部位における組織インピーダンスを測定してもよい。温度センサ(図示せず)、通常、熱電対又はサーミスタが、カテーテル14の遠位先端18近くに搭載されてもよい。
【0029】
コンソール24には、典型的には、1つ又は2つ以上のアブレーション発電機25が収容されている。カテーテル14は、例えば、高周波エネルギー、超音波エネルギー、及びレーザー生成光エネルギー等の任意の既知のアブレーション技術を使用して、心臓にアブレーションエネルギーを伝えるように適合され得る。そのような方法は、参照により本明細書に援用される、本願と同一譲受人に譲渡された米国特許第6,814,733号、同第6,997,924号、及び同第7,156,816号に開示されている。
【0030】
一実施形態では、位置決めサブシステムは、磁場生成コイル28を使用して、所定の作業体積内に磁場を生成し、カテーテルにおけるこれらの磁場を検知することによって、カテーテル14の位置及び向きを判定する磁気位置追跡配置を備える。好適な位置決めサブシステムは、参照により本明細書に援用される米国特許第7,756,576号、及び上記の米国特許第7,536,218号に記載されている。
【0031】
上述のように、カテーテル14は、コンソール24に連結されており、これにより操作者16は、カテーテル14を観察し、その機能を調節することができる。コンソール24は、プロセッサ、好ましくは、適切な信号処理回路を有するコンピュータを含む。プロセッサは、モニタ29を駆動するように連結される。信号処理回路は、通常、カテーテル14内の遠位に位置する上述のセンサ及び複数の位置検知電極(図示せず)によって生成される信号を含むカテーテル14からの信号を、受信、増幅、フィルタリング、及びデジタル化する。デジタル化された信号は、コンソール24及び位置決めシステムによって受信され、カテーテル14の位置及び向きを計算し、かつ以下に更に詳細に記載される電極からの電気信号を分析するために使用される。
【0032】
簡略化のために図示されないが、通常、システム10は、他の要素を含む。例えば、システム10は、心電図(ECG)モニタを含み得るが、このECGモニタは、ECG同期信号をコンソール24に供給するために、1つ又は2つ以上の体表面電極から信号を受信するように連結される。上述のように、システム10は、通常、被験者の身体の外側に取り付けられた外側取付参照パッチ上、又は、心臓12内に挿入され、かつ心臓12に対して固定位置に維持された、内側に配置されたカテーテル上のいずれかに、基準位置センサも含む。システム10は、MRIユニットなどのような外部の画像診断モダリティからの画像データを受信することができ、画像を生成及び表示するためにプロセッサ22に組み込まれる又はプロセッサ22によって呼び出されることができる画像プロセッサを含む。
【0033】
次に、
図1に示されるシステムと共に使用するためのアブレーション及び有効現在位置(ACL)回路の概略図である、
図2を参照する。この構成は、参照により本明細書に援用される、Govariらによる米国特許出願公開第2006/0173251号、及びOsadchyによる米国特許出願公開第2007/0038078号に記載されているものと同様である。構成は、本発明の原理に従って動作するように変更され得る。説明の便宜上、以下に簡潔に記載する。
【0034】
接着皮膚用パッチであり得る、身体表面の複数の電極42は、対象46の身体表面44(例えば、皮膚)に結合される。身体表面の電極42は、本明細書で「パッチ」と称されることがある。心臓用途では、身体表面の電極42は、通常、心臓を取り囲むように、3つが対象の胸に、3つが背中に割り振られる。しかしながら、身体表面の電極42の数は重要ではなく、それらは医療処置部位付近全体の、身体表面44上の便利な位置に定置してよい。
【0035】
通常、コンソール24(
図1)内に配置される制御ユニット48は、電流測定回路50、及びそれぞれの動作周波数で1つ又は2つ以上の電極42を通して1つ又は2つ以上の身体表面の電極42に電流を駆動するための、1つ又は2つ以上のカテーテル電極伝送器52を含む。制御ユニット48は、位置決めプロセッサ(
図1)に連結される。制御ユニット48は、少なくとも1つのアブレーション発生器56を備えるアブレータ54に連結される。身体表面の電極42及びアブレータ本体表面の電極58を通る電流は、アブレーション発生器56を有する回路内を流れ、本明細書では「パッチ測定回路」と称されることもある、身体電極受信器60内に配置されるそれぞれの電流測定回路によって測定される。身体電極受信器60は、通常、制御ユニット48に組み込まれる。代替的に、それらは、身体表面の電極42に貼り付けられてもよい。カテーテル電極は、測定電極62(円)及び二重目的用電極64(楕円)として表される。二重目的用電極64は、アブレーション電極として機能し、また測定電極の1つとしての役割も果たす。
【0036】
身体表面の電極42は、アブレーション及び除細動電流からシステムを保護するパッチボックス66を介して身体電極受信器60に接続される。典型的には、システムは、6つの身体電極受信器60を備えて構成される。パッチボックスの寄生インピーダンス68(Z)は、製造中に測定されるため、事前に知られている。これらのインピーダンスについて以下で論じる。
【0037】
典型的には、便宜上2つの測定電極62のみが示されているが、約80の測定電極がインピーダンス測定に用いられる。典型的には、1つ又は2つのアブレーション電極が存在する。身体内部のカテーテルの座標は、カテーテル上の電極と身体表面の電極42との間に電流を通すことにより、位置決めシステムで決定される。
【0038】
制御ユニット48はまた、アブレータ54を有するアブレーション回路、及び二重目的用電極64を制御し得る。アブレータ54は、通常、制御ユニット48の外部に配置され、アブレーション発生器56を内蔵する。アブレーション発生器56は、アブレータ本体表面の電極58、及びこの例では制御ユニット48内に示される、アブレータフィルタ70と接続している。ただし、この位置は、必須ではない。スイッチ72は、以下に記載される様々な動作モードのためのアブレータ回路を構成する。電圧測定回路が、カテーテル電極伝送器52の出力を決定するために提供される。アブレーション回路は、カテーテル電極伝送器52のうちの1つに接続されていることが分かるであろう。
【0039】
ここで
図3を参照すると、同図は、本発明の実施形態によるプロセッサ22の態様のブロック図である。プロセッサ22は、コンソール24(
図1)内に配置されるのが通例であるが、遠隔にある場合もあれば又は幾つかの場所に分散される場合もある。プロセッサ22は、追跡モジュール74のような追跡モジュールを用いて、上述の場所検知装置からの信号を、磁場生成コイル28(
図1)により確定される3次元座標系内の位置座標に変換できる。プロセッサ22は、グラフィックスプロセッサ76に連結されている。グラフィックスプロセッサ76は、通例およそ2,000プロセッサを有する並列処理ユニットである。
【0040】
心臓の壁に対する電極の位置を決定するために、組織接触を確認する必要がある。1つの有用な技術は、
図4に示す温度測定に基づく方法である。この図は、本発明の一実施形態による心臓カテーテルの遠位セグメント78の長さに沿った断面図である。遠位セグメント78は組織80に近接しており、かつ流体82中に浸っていると想定されるので、組織80は、この流体に接触している表面29を有する。流体82は典型的に、血液と生理食塩水との混合物を含む。例として、遠位セグメント78は本明細書において、全体的に平坦な表面88によって一方の端が閉じられた円筒86の形状の絶縁基材84から形成されていると想定される。円筒86は、対称軸90を有する。湾曲部92は、平坦な表面88と円筒86とを接合している。円筒86の典型的な直径は2.5mmであり、湾曲部92の典型的な半径は0.5mmである。
【0041】
遠位セグメント78は、互いに絶縁された3つの電極94、96、98を備える。これらの電極94、96、98は典型的に、絶縁基材84上に形成された薄い金属層を含む。典型的に、この遠位先端は、電極94、96、98から絶縁された他の電極を有するが、単純化のため図には示されていない。先端電極94は、平坦な底部を備えたカップ形状を有し、本明細書においてカップ電極とも呼称される。カップ電極94は典型的には約0.1mm~約0.2 30mmの範囲の厚さを有する。第2及び第3の電極94、96は通常リング状であり、リング電極としても知られている。
【0042】
電極94、96、98は、コンソール24(
図1)内のコントローラに、ワイヤ(図示なし)により接続されている。電極のうちの少なくとも1つが、組織80のアブレーションに使用される。典型的に、アブレーション中は、アブレーション電極内及び周囲の領域において熱が生成される。熱を消散させるために、カップ電極内に小さな潅注開口部100がある。開口部100は典型的に、約0.1~0.2mmの範囲の直径を有する。潅注チューブ102がこの開口部100に生理食塩水を供給し、開口部100を通る生理食塩水の流量(これにより流体82が血液と生理食塩水との混合物となる)は、コンソール24(
図1)内の潅注モジュール(図示なし)によって制御される。生理食塩水の流量は、典型的には約2~20cc/分の範囲であるが、この範囲より多くても少なくてもよい。
【0043】
生理食塩水温度センサ104(典型的には熱電対)はチューブ102内に配置され、コンソール24(
図1)モジュール56内の回路に信号を供給し、これによりこのコンソール24が、開口部100に流入する生理食塩水の温度を測定することができる。生理食塩水は、例えば約19~25℃の範囲の室温で提供することができるが、この溶液は、カテーテルを通って流れる間にわずかに加熱されてもよく、これによって最終的な灌注温度はわずかに高くなってもよい。
【0044】
典型的に、1つ又は2つ以上の位置検出デバイス106が遠位先端に組み込まれる。デバイス106は、システムが遠位セグメント78の位置及び/又は向きを確認できるように、プロセッサ22(
図1)に信号を提供するように構成されている。
【0045】
一実施形態において、遠位セグメント78は、1つ又は2つ以上のほぼ同様の温度センサ108(例として、図に2つが示される)を有し、温度センサ108は、絶縁体により、表面から突出するようにしてカップ電極の外側表面94にしっかりと接続される。センサ108は、約0.3mmの典型的な直径、及び10約1.5mmの長さを有する。一実施形態において、センサ108は、General Electric Company(Schenectady,New York)製のサーミスタNTCタイプAB6である。別の一実施形態において、センサ108は、Semitec USA Corporation(Torrance,15 California)製の「F」タイプのサーミスタを含む。例として、下記の説明では、軸51に関して対称的に分布し、カップ電極の湾曲部110上に配置された、3つのセンサ108があると想定している。カップ電極の湾曲部110は、20遠位先端の湾曲部92に重なり合っている。湾曲部110は、トロイド形状、典型的にはおよそ0.5mmの管半径を有する部分円環面である。
【0046】
図4の拡大断面
図112は、センサ108の1つを詳細に示したものである。拡大断面
図112に示すように、センサ108は、絶縁体114によって、カップ電極94の湾曲部110から分離されている。絶縁体114は、良好な断熱性及び電気絶縁性を提供するよう選択され、いくつかの実施形態では、絶縁体114は、湾曲部110にセンサ108を接着する接着剤を含み得る。ワイヤ116は、センサ108をコンソール24(
図1)に接続する。
【0047】
センサ108をカップ電極94の外側表面から突出させることによって、これらセンサ108は、組織80に緊密に接触することができる。このようにしてプロセッサ22(
図1)は、センサ108からの信号を使用して、組織80の直接温度測定を提供することができる。一実施形態において、センサ108は電極94の外側表面から0.7以下だけ突出し、典型的には約0.5mmだけ突出している。
【0048】
温度測定に基づく組織接触の判定の追加的な詳細は、本願と同一譲受人に譲渡された米国特許出願公開第20170079738号に見られ、この文献は参照により本明細書に援用される。代替的に、例えば、本願と同一譲受人に譲渡された米国特許出願公開第20170127974号(この文献は参照により本明細書に援用される)に記述されているように、接触力センサを用いて組織接触を判定することができる。更に代替的に、米国特許出願公開第2008/0288038号及び同第2008/0275465号(いずれもSauaravら)(これらの文献は参照により本明細書に援用される)に記述されているようにインピーダンスに基づく方法を用いて、あるいは、本願と同一譲受人に譲渡された同時係属の米国特許出願第15637191号(この文献は参照により本明細書に援用される)に記述されているように超音波トランスデューサを用いて、組織接触を判定することができる。この方法は、例えばアーチファクトを除外するための呼吸ゲーティングなど、他のフィルタと組み合わされてもよい。
【0049】
ここで
図5を参照すると、同図は、本発明の実施形態によるメッシュの点118の概略図である。点は、電極32(
図1)が心臓12の心内膜表面と接触した際に電極32によって位置合わせされる。典型的には上記に言及されているマッピング中に、プロセッサ22は最初に、磁場生成コイル28により規定された3次元基準系120内で測定される点118の3次元座標を記憶する。次いで、プロセッサ22は、本明細書において3次元頂点とも呼ばれる、点118の3次元座標を、線分122で接続して、接続された3次元三角形のセット、例えば、三角形124、126、128を生成する。参照により本明細書に援用される、本願と同一譲受人に譲渡された米国特許出願公開第20150164356号、発明の名称「Dynamic Feature Rich Anatomical Reconstruction from a Point Cloud」に記載の方法を用いることによって、メッシュ130を生成することが可能である。他の好適なアルゴリズムは、メッシュ130を生成するためのボール旋回アルゴリズムを含む。典型的には、ボール旋回アルゴリズムを用いた場合、ボールのサイズは、後述するボクセルのサイズに対応するように設定される。代わりに、メッシュをドロネー三角形分割として生成してもよい。メッシュの要素はそれぞれ3次元座標を有する。
【0050】
1つの適用例では、三角形メッシュ130によって心内膜表面がモデル化される。プロセッサ22(
図3)は、グラフィックスプロセッサ76を用いてメッシュ130をレンダリングしてモニタ29(
図1)上に表示される画像を生成する。
【0051】
最初に、メッシュ130上のリアルタイム位置が、コンピュータ断層撮影又は磁気共鳴イメージング(本明細書では「CT/MRI画像」と呼ばれる)のような他のモダリティによって得た心臓の画像と位置合わせされて配置される。これが済むと、対象となる点は、画像の座標からメッシュ130の座標へと変換することができる。
【0052】
ただし、CT/MRI画像とメッシュとの間の残差が、位置合わせ手順の後に残る。これらの差は本発明の実施形態により低減される。ここで
図6を参照すると、この図は、本発明の一実施形態による、心臓の3次元モデルをCT/MRI画像に適合させる方法のフローチャートである。工程段階は、説明を分かりやすくするために、特定の線形的順序で示されている。しかしながら、かかる工程の多くは、並行して、非同期的に、又は異なる順序で行われてもよい点は明らかであろう。当業者であれば、プロセスを、例えば、状態図において、多数の相互に関連する状態又は事象としても代替的に表すことができることを理解するであろう。更に、例示されている工程段階の全てが、かかる方法の実施に必要とされるわけではない。このアルゴリズムは下記を含む。
【0053】
各マッピング点、好ましくは、心臓呼吸ゲーティングによってフィルタされた点について:
1.フィルタされた点から特定の半径内にある、元のメッシュ内の全ての頂点を識別する。
2.識別された頂点ごとに、フィルタされた点までの距離に基づいて重み係数を計算する。一実施形態において、重み係数は距離の逆2乗である。
3.工程2で算出された重みにより、識別された各頂点をフィルタされた点に向かって移動させる。
【0054】
最初の工程132では、従来法により、典型的には、電極がバスケット又はスプライン上の既知の位置を有し、かつ互いに対して既知の関係を有する、バルーン又はバスケットカテーテルなどのマルチ電極マッピングカテーテルを用いて、心臓にカテーテルが挿入される。
【0055】
次に、工程134で、上述の方法のうち1つを用いて、電極が心臓の壁に接触していることが確認される。工程134が完了した後、工程136において現在位置マップ内で電極の位置を決定するために電流読み取り値が得られ、これにより、心臓内の各電極32の位置を特定する現在位置マップを構築する。現在位置マップを生成するための1つの方法は、
図2に示す回路を使用する。詳細は上述の米国特許8,478,383号に記載されている。
【0056】
次に、工程138で、現在位置マップをCT/MRI画像と位置合わせして配置する。米国特許第7517318号及び同第8320711号、並びに米国特許出願公開第20160120426号(これらは全て本願と同一譲受人に譲渡され、参照により本明細書に援用される)の教示を、この工程を達成するために用ることができる。代替として、上記のCARTOシステムのCARTOMERGE(商標)モジュール及び他の機能は、同じ又は異なるセッションで作成された心臓の画像を使用してこの工程を達成することができる。
【0057】
次に、工程140において、3次元モデル、例えば三角形メッシュ130(
図5)が、ACL読み取り値と現在位置マップとに基づいて作成される。これは、上述の米国特許出願公開第20150164356号の教示を用いて達成することができる。マトリクスの頂点は、カテーテル14の電極に対応するマッピング座標に割り当てられる。
【0058】
次に、メッシュ適合アルゴリズムが実行される。メッシュ内の各頂点について、測地距離GD内の全てのマッピング点が識別され、その頂点に対して、マッピング点(1/GD^2)に対するそれぞれの重みが割り当てられる。マッピング点は、複数の頂点の影響半径内にある可能性があり、その場合、頂点のそれぞれの重みが、そのマッピング点に対して割り当てられる。頂点は、割り当てられた重みに従って、それぞれの影響半径内のマッピング点に向かってシフトされる。頂点の実際のシフトは、3次元ベクトルの和として表すことができる。
【0059】
このアルゴリズムは、頂点の有意な変化が生じ続ける限り、あるいは他の終了基準に到達するまで、繰り返される。
【0060】
工程142では、マッピング点を選択する。現在のマッピング点の所定の距離、典型的には2~15mm以内の全ての元の頂点が、後続の工程で評価される。「元の頂点」とは、アルゴリズムの現在の反復の開始時における頂点の位置を指す。
【0061】
工程143では、メッシュ130の元の頂点を選択する。次に、工程144において、最も近い対応するマップ位置までの測地距離(適切に転置された3次元座標系内)を決定する。
【0062】
次に、判定工程146では、工程144において決定された距離が所定の距離よりも短いかどうかを判定する。判定工程144での判定が肯定である場合には、制御は工程148に進む。重みは、頂点とマップ位置との間の距離の逆2乗により割り当てられる。
【0063】
工程148を実行した後、又は判定工程146での判定が否定である場合、判定工程150において、更なる頂点の調整が必要かどうかが判定される。判定工程150における判定が肯定である場合には、制御は工程143に戻って、ループを繰り返す。
【0064】
判定工程150での判定が否定である場合には、判定工程151において、評価すべき更なるマッピング点が残っているかどうかが判定される。判定工程151での判定が肯定である場合には、制御は工程142に戻る。
【0065】
判定工程151での判定が否定である場合には、判定工程153で、頂点シフトが必要かどうかが判定される。すなわち、全ての必要なシフトが所定の最小値未満となりアルゴリズムが収束したか、あるいは、他の終了条件が発生したか(例えば所定の回数の繰り返しが実施されたか)が判定される。
【0066】
判定工程153での判定が否定である場合、手順は、最終工程152で終了する。あるいは、工程155で、算出したシフトが実行される。メッシュ130は、割り当てられた重みに従って、対応するマップ位置に向けて頂点を移動させることによって調整される。次に、制御は工程142に戻り、新たなメッシュ位置を用いてアルゴリズムを繰り返す。
【0067】
ここで
図7を参照すると、この図は、本発明の一実施形態に従って処理され得る三角形メッシュの一部分の概略図である。工程140(
図6)で最初に構築されたメッシュは、頂点154、156、158を有する。ACLによるマッピング点は、CT/MRI画像と位置合わせされて配置されており、点160、162、164、166として示されている。頂点154、156、158を中心とする同一半径の円168、170、172は、
頂点にシフトを生じさせるマッピング点と頂点との最大距離を表す。
【0068】
点162、164及び頂点154は円172内にある。しかし、点162は点164よりも頂点154に近い。したがって、頂点154は点162に向かって距離D1だけシフトし、頂点154は第1の新たな位置となる。点164も円172内にある。したがって、点164と頂点154との間の元の距離に基づいて、新たな重み付けが算出される。点164の方向への第2のシフトが行われる。最終位置174は、ベクトル
図165に示すように、頂点154から点162、頂点154から点164に向かう重み付けしたベクトルの和に相当する。
【0069】
頂点156と最も近いマッピング点160との間の距離は、円168の半径を超える。よって、頂点156はシフトしない。
【0070】
頂点158と点166は円170内にある。点166は円170のほぼ境界にあるが、点162は頂点154の比較的近くにあり、頂点154と円172の境界との間のほぼ中点になっていることが分かる。頂点158は点166に向かって距離D2だけシフトし、位置176となる。距離D1、D2は、図の左側に揃って示されている。距離D2は距離D1よりも短いことは明らかである。
【0071】
調整されたマトリクスが、位置174、176及び頂点156をつなぐ破線で示されている。
【0072】
頂点がシフトされたとき、その近傍も影響を受けることは明らかである。この影響は
図8及び
図9に見ることができる。これらは、マッピング点180と位置合わせされた心臓の3次元表面の一部分をシミュレーションするマトリクス178の一部を示す。頂点182は、マッピング点180に最も近い頂点である。
【0073】
図8は、工程155(
図6)における第1の頂点シフトより前の、マッピング点180と頂点182との間の関係を示している。
図9は、工程155を実施した後のマトリクス178を示す(分かりやすくするために、影響を意図的に強調している)。ここで頂点182は、マッピング点180に向かって変位している。隣接する頂点184、186、188も、マッピング点180の近くにあることにより影響を受け、よって、マッピング点180に向かって変位している。頂点184、186、188の変位は、頂点182の変位よりも小さい。これは、これらの点がマッピング点180からより離れており、これに応じて、工程148(
図6)でこれらの点に割り当てられた重みは、頂点182の重みよりも低くなっているためである。
【0074】
この変位の影響により、頂点184、186、188は、マッピング点180からより遠くにある頂点から引き離される。このことは、
図8及び
図9における頂点184と遠方頂点196との間の関係の違い、並びに、
図9における領域190、192、194の歪みから明らかである。頂点196は、マッピング点180の影響を受けず、判定工程146(
図6)で無視される。
【0075】
当業者であれば、本発明が上記で具体的に図示及び記載されたものに限定されない点を理解するであろう。むしろ、本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせ、並びに上記の説明を読むことで当業者には想到されるであろう、先行技術にはない上述の特徴の変形例及び改変例をも含むものである。
【0076】
〔実施の態様〕
(1) 心臓にマッピング電極を有するプローブを挿入する工程と、
該マッピング電極の位置マップを構築する工程であって、該位置マップがマッピング点を有し、かつ該心臓の3次元表面をシミュレーションする、工程と、
該位置マップを該心臓の取得画像と位置合わせして載置する工程と、
該位置マップに基づいて、該心臓の該3次元表面をモデル化するメッシュを構築する工程であって、該メッシュが頂点を有する、工程と、
該メッシュと該取得画像との位置合わせを改善するために、該マッピング点に対して該頂点の位置を調整する工程と、
を含む、方法。
(2) 前記メッシュが三角形マトリクスである、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記頂点の位置を調整する工程が、
選択されたマッピング点から所定の距離内にある前記メッシュの全ての頂点を識別する工程と、
該識別された頂点と該選択されたマッピング点との間の距離に基づいて、それぞれの重み係数を算出する工程と、
該それぞれの重み係数に従って、該選択されたマッピング点に向かうシフトを含む、該識別された頂点の新たな位置を計算する工程と、
該新たな位置に基づいて新たなメッシュを画定する工程と、
を含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記それぞれの重み係数が、前記識別された頂点と前記選択されたマッピング点との間の距離の逆2乗に従って計算される、実施態様3に記載の方法。
(5) 前記新たな位置が、前記全ての頂点を識別する工程、及び前記新たな位置を計算する工程の実施において決定された、各マッピング点に向かうシフトのベクトル和として決定される、実施態様3に記載の方法。
【0077】
(6) 前記識別された頂点と前記選択されたマッピング点との間の距離が、測地距離である、実施態様3に記載の方法。
(7) 前記プローブを挿入する工程が、前記電極と前記心臓の壁との組織接触を確認する工程を含む、実施態様1に記載の方法。
(8) 複数の電極を有し、かつ生体被験者の心臓内への挿入に適合されたプローブと、
プロセッサであって、前記電極から電気信号を受信し、かつ
該電極の位置マップを構築する工程であって、該位置マップがマッピング点を有し、かつ該心臓の3次元表面をシミュレーションする、工程と、
該位置マップを該心臓の取得画像と位置合わせして載置する工程と、
該位置マップに基づいて、該心臓の該3次元表面をモデル化するメッシュを構築する工程であって、該メッシュが頂点を有する、工程と、
該メッシュと該取得画像との位置合わせを改善するために、該マッピング点に対して該頂点の位置を調整する工程と、
を実施するよう構成されている、プロセッサと、
を含む、装置。
(9) 前記メッシュが三角形マトリクスである、実施態様8に記載の装置。
(10) 前記頂点の位置を調整する工程が、
選択されたマッピング点から所定の距離内にある前記メッシュの全ての頂点を識別する工程と、
該識別された頂点と該選択されたマッピング点との間の距離に基づいて、それぞれの重み係数を算出する工程と、
該それぞれの重み係数に従って、該選択されたマッピング点に向かうシフトを含む、該識別された頂点の新たな位置を計算する工程と、
該新たな位置に基づいて新たなメッシュを画定する工程と、
を含む、実施態様8に記載の装置。
【0078】
(11) 前記それぞれの重み係数が、前記識別された頂点と前記選択されたマッピング点との間の距離の逆2乗に従って計算される、実施態様10に記載の装置。
(12) 前記新たな位置が、前記全ての頂点を識別する工程、及び前記新たな位置を計算する工程の実施において決定された、各マッピング点に向かうシフトのベクトル和として決定される、実施態様10に記載の装置。
(13) 前記識別された頂点と前記選択されたマッピング点との間の距離が、測地距離である、実施態様10に記載の装置。
(14) コンピュータソフトウェア製品であって、コンピュータプログラム命令が記憶された非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を含み、該命令は、コンピュータによって実行されるとき、該コンピュータに、
心臓内の複数の電極からの電気信号を受信する工程を実行させ、かつ、
該電極の位置マップを構築する工程であって、該位置マップがマッピング点を有し、かつ該心臓の3次元表面をシミュレーションする、工程と、
該位置マップを該心臓の取得画像と位置合わせして載置する工程と、
該位置マップに基づいて、該心臓の該3次元表面をモデル化するメッシュを構築する工程であって、該メッシュが頂点を有する、工程と、
該メッシュと該取得画像との位置合わせを改善するために、該マッピング点に対して該頂点の位置を調整する工程と、
を実行させる、コンピュータソフトウェア製品。
(15) 前記メッシュが三角形マトリクスである、実施態様14に記載のコンピュータソフトウェア製品。
【0079】
(16) 前記頂点の位置を調整する工程が、
選択されたマッピング点から所定の距離内にある前記メッシュの全ての頂点を識別する工程と、
該識別された頂点と該選択されたマッピング点との間の距離に基づいて、それぞれの重み係数を算出する工程と、
該それぞれの重み係数に従って、該選択されたマッピング点に向かうシフトを含む、該識別された頂点の新たな位置を計算する工程と、
該新たな位置に基づいて新たなメッシュを画定する工程と、
を含む、実施態様14に記載のコンピュータソフトウェア製品。
(17) 前記それぞれの重み係数が、前記識別された頂点と前記選択されたマッピング点との間の距離の逆2乗に従って計算される、実施態様16に記載のコンピュータソフトウェア製品。
(18) 前記新たな位置が、前記全ての頂点を識別する工程、及び前記新たな位置を計算する工程の実施において決定された、各マッピング点に向かうシフトのベクトル和として決定される、実施態様16に記載のコンピュータソフトウェア製品。
(19) 前記識別された頂点と前記選択されたマッピング点との間の距離が、測地距離である、実施態様16に記載のコンピュータソフトウェア製品。