(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】電子レセプト処理システム、プログラムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G16H 10/60 20180101AFI20221031BHJP
【FI】
G16H10/60
(21)【出願番号】P 2018168508
(22)【出願日】2018-09-10
【審査請求日】2021-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】595121227
【氏名又は名称】株式会社ファルコバイオシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100083725
【氏名又は名称】畝本 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100140349
【氏名又は名称】畝本 継立
(74)【代理人】
【識別番号】100153305
【氏名又は名称】畝本 卓弥
(74)【代理人】
【識別番号】100206933
【氏名又は名称】沖田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】高野 知広
(72)【発明者】
【氏名】本橋 聡
【審査官】吉田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特許第5433814(JP,B2)
【文献】特開2014-120094(JP,A)
【文献】特開2002-183297(JP,A)
【文献】特開2012-59071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受診者単位で作成された電子レセプトを格納する記憶部と、
前記記憶部から読み出された前記電子レセプトを認識し、各電子レセプトを属性の異なる複数のデータ群に分解し、各データ群に
含まれる同じ受診日のデータに対してそれぞれを関係付けるための関連性情報を付した電子レセプトに変換して前記記憶部に格納する処理部と、
を備え、前記関連性情報
が付された
前記データを含む前記電子レセプトの各データ群を用いて診療行為の関連性を検索可能としたことを特徴とする電子レセプト処理システム。
【請求項2】
前記記憶部に格納された前記電子レセプトを受け取る情報端末を備え、
前記関連性情報が付された前記電子レセプトの各データ群を用いて診療行為の関連性を
検索可能としたことを特徴とする請求項1記載の電子レセプト処理システム。
【請求項3】
コンピュータで実現するためのプログラムであって、
受診者単位で作成された電子レセプトを記憶部に格納する機能と、
前記記憶部から読み出された前記電子レセプトを認識し、各電子レセプトを属性の異なる複数のデータ群に分解し、各データ群に
含まれる同じ受診日のデータに対してそれぞれを関係付けるための関連性情報を付した電子レセプトに変換して前記記憶部に格納する機能と、
前記関連性情報
が付された
前記データを含む前記電子レセプトの各データ群を用いて診療行為の関連性を検索する機能と、
を前記コンピュータで実現するためのプログラム。
【請求項4】
受診者単位で作成された電子レセプトを記憶部に格納する工程と、
前記記憶部から読み出された前記電子レセプトを認識し、各電子レセプトを属性の異なる複数のデータ群に分解し、各データ群に
含まれる同じ受診日のデータに対してそれぞれを関係付けるための関連性情報を付した電子レセプトに変換して前記記憶部に格納する工程と、
前記関連性情報
が付された
前記データを含む前記電子レセプトの各データ群を用いて診療行為の関連性を検索する工程と、
を含む
各工程をコンピュータが実行することを特徴とする電子レセプト処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子レセプトを用いた受診者(患者など)や診療行為などの一連性検索の情報処理に関する。
【背景技術】
【0002】
診療機関から発行される電子レセプトには、診療を受けた受診者単位で作成され、診療行為、医薬品、器材などの情報が格納されている。この電子レセプトは、診療機関が診療行為に対して診療報酬を請求するためのものであるが、診療や医薬など、診療に関する有益な情報が含まれている。
この電子レセプトに関し、特定した診療行為の種別が指定または入力された場合に、コメントの入力を促す表示や、必須の入力事項に特定するなどの処理をコンピュータに実行させることが知られている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
電子レセプトの解析に関し、診療行為、調剤行為、医薬品などからシミュレーションデータを抽出し、診療費用のシミュレーションを行うことが知られている(たとえば、特許文献2)。
診療に関する情報システムに関し、患者側端末を用いて患者由来情報を取得し、患者の症状を分析することにより、医師における診療の正確性を高め、効率的な診療を実現することが知られている(たとえば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-167610号公報
【文献】特許第6323925号公報
【文献】特開2013-73253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、診療機関では受診者に対する診療行為に対して電子レセプトが作成される。この電子レセプトは、診療行為データ、医薬品データ、器材データなど、診療行為に関わる診療報酬請求の基礎となるものである。
この電子レセプトによれば、受診者、診療機関、診療行為などの各種の情報や、一連性の確認が可能である。しかしながら、この電子レセプトは膨大なデータ量であり、目視で検索することは現実的ではないし、一連性検索において、主要なデータの欠落などの不都合がある。
そこで、本発明は上記課題に鑑み、電子レセプトの検索や分析の容易化など、利便性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の電子レセプト処理システムの一側面によれば、受診者単位で作成された電子レセプトを格納する記憶部と、前記記憶部から読み出された前記電子レセプトを認識し、各電子レセプトを属性の異なる複数のデータ群に分解し、各データ群に含まれる同じ受診日のデータに対してそれぞれを関係付けるための関連性情報を付した電子レセプトに変換して前記記憶部に格納する処理部とを備え、前記関連性情報が付された前記データを含む前記電子レセプトの各データ群を用いて診療行為の関連性を検索可能とした。
上記電子レセプト処理システムにおいて、前記記憶部に格納された前記電子レセプトを受け取る情報端末を備え、前記関連性情報が付された前記電子レセプトの各データ群を用いて診療行為の関連性を検索可能としてよい。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のプログラムの一側面によれば、受診者単位で作成された電子レセプトを記憶部に格納する機能と、前記記憶部から読み出された前記電子レセプトを認識し、各電子レセプトを属性の異なる複数のデータ群に分解し、各データ群に含まれる同じ受診日のデータに対してそれぞれを関係付けるための関連性情報を付した電子レセプトに変換して前記記憶部に格納する機能と、前記関連性情報が付された前記データを含む前記電子レセプトの各データ群を用いて診療行為の関連性を検索する機能とをコンピュータで実現する。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の電子レセプト処理方法の一側面によれば、受診者単位で作成された電子レセプトを記憶部に格納する工程と、前記記憶部から読み出された前記電子レセプトを認識し、各電子レセプトを属性の異なる複数のデータ群に分解し、各データ群に含まれる同じ受診日のデータに対してそれぞれを関係付けるための関連性情報を付した電子レセプトに変換して前記記憶部に格納する工程と、前記関連性情報が付された前記データを含む前記電子レセプトの各データ群を用いて診療行為の関連性を検索する工程とを含む各工程をコンピュータが実行する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、次のいずれかの効果が得られる。
(1) 電子レセプトから分解された各データ群が、データ群毎に付された関連情報により関連付けられた結果、電子レセプトから診療行為の分析や解析を容易に行うことができる。
(2) 電子レセプトから分解された各データ群に関連情報が付されているので、この関連情報を以て各データ群の関連付けを行うことができ、たとえば、受診者が複数の診療機関で受診した際に発行される電子レセプトから各診療行為の分析や解析を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施の形態に係る電子レセプト処理システムを示す図である。
【
図2】レセプトデータ処理装置の一例を示す図である。
【
図3】Aは電子レセプトを説明するための図、Bはデータ群を説明するための図である。
【
図4】電子レセプトの処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】Aは一実施例に係る電子レセプトを示す図、Bは電子レセプトを診療行為データに分解して示す図、Cは電子レセプトを医薬品データに分解して示す図である。
【
図6】Aは一連性番号を付加した診療行為データを示す図、Bは一連性番号を付加した医薬品データを示す図である。
【
図7】電子レセプトの分解処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図8】電子レセプトの分解処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図9】電子レセプトの分解処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図10】データ検索の処理手順を示すフローチャートである。
【
図11】一実施例に係る電子レセプトを示す図である。
【
図12】電子レセプトと関連番号の関係を説明するための図である。
【
図13】電子レセプトと関連番号の関係を説明するための図である。
【
図14】Aはレコード識別を説明するための図、BはCSVの記録と一連番号の関係を示す図、Cはレセプトの表示を示す図である。
【
図15】A、BおよびCはSIデータを示す図である。
【
図17】A、BおよびCはTOデータを示す図である。
【
図19】Aは電子レセプトを示す図、Bはデータ変換後の電子レセプトを示す図である。
【
図20】Aは電子レセプトの原データを示す図、Bはコメント分解イメージを示す図である。
【
図21】電子レセプト処理システムの活用形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、一実施の形態に係る電子レセプト処理システムを示している。
図1に示す構成は一例であり、斯かる構成に本発明が限定されるものではない。
この電子レセプト処理システム2はコンピュータのネットワークシステムであり、電子レセプト処理システム2にはレセプトデータ処理装置4、単一の情報端末または複数の情報端末6-1、6-2、・・・、6-Nが備えられる。
【0012】
レセプトデータ処理装置4はたとえば、サーバーコンピュータであり、電子レセプト(
図3)の格納、データ群への分解、検索などの情報処理を行う。
各情報端末6-1、6-2、・・・、6-Nはレセプトデータ処理装置4とインターネットなどのネットワーク8を介して有線または無線で連係され、個別にレセプトデータ処理装置4と情報交換を行う。各情報端末6-1、6-2、・・・、6-Nにはたとえば、パーソナルコンピュータ(PC)が用いられる。
【0013】
<レセプトデータ処理装置4>
図2はレセプトデータ処理装置4の一例を示している。このレセプトデータ処理装置4はコンピュータであり、制御部10、記憶部12、情報提示部14、操作入力部16、通信部17などを備える。
制御部10は電子レセプトを処理する処理部の一例である。この制御部10はプロセッサを備え、電子レセプトの処理として、記憶部12にあるOS(Operating System)やレセプト処理プログラムなどを実行する。
記憶部12には主記憶装置18および補助記憶装置20が備えられる。主記憶装置18にはROM(Read-Only Memory)やRAM(Random-Access Memory)が備えられる。補助記憶装置20は電子レセプト記憶領域20-1、データ群記憶領域20-2が設定される。電子レセプト記憶領域20-1には、分解前の電子レセプト22x(
図3)が格納され、データ群記憶領域20-2には電子レセプト22xから複数に分解されたデータ群24xが格納される。
【0014】
情報提示部14はたとえば、LCD(Liquid Crystal Display)で構成される。操作入力部16は、キーボード、マウスの他、LCDの表示画面上に設置されたタッチパネルなどで構成される。他の入力手段としてバーコード入力装置やQRコード(登録商標)入力装置を用いてもよい。
【0015】
<電子レセプト22xおよびデータ群24x>
図3のAは電子レセプト22xを示している。電子レセプト22xは、たとえば保険区分別に作成され、請求月を単位とする複数の電子レセプト22-1、22-2、22-3、・・・で構成される。この保険区分別、かつ請求月単位の各電子レセプト22-1、22-2、22-3、・・・には1または複数の受診者の情報が受診者単位で記録されている。
図3のBは電子レセプト22xから分解されるデータ群24xを示している。
データ群24xは、保険区分別、かつ請求月を単位とする電子レセプト22xから受診者を単位として分解する。このデータ群24xには、たとえば受診者別に区分したデータ群24-0と、診療行為や医療品などを区分した複数のデータ群24-1、24-2、24-3、・・・で構成される。
この例では、データ群24xには、診療行為データ24-11、24-12、24-13、・・・、医薬品データ24-21、24-22、24-23、・・・、器材データ24-31、24-32、24-33、・・・、コメントデータ24-41、24-42、24-43、・・・、その他のデータ24-N1、24-N2、24-N3、・・・、が含まれる。
【0016】
<制御部10によるデータ処理>
レセプトデータ処理装置4の制御部10によるデータ処理には、a)電子レセプト22xの取込み処理、b)電子レセプト22xの分解処理、c)関連性情報の付加処理、d)検索処理などが含まれる。
a)電子レセプト22xの取込み処理
電子レセプト22xの取込み処理は、各情報端末6-1、6-2、・・・、6-Nからの電子レセプト22-1、22-2、22-3、・・・の取込みを行う。
【0017】
b)電子レセプト22xの分解処理
電子レセプト22xの分解処理では、電子レセプト22-1、22-2、22-3、・・・が複数のデータ群24-0、24-1、24-2、24-3、・・・に分解される。具体的には、電子レセプト22-1、22-2、22-3、・・・が
図3のBに示すように、受診者データ24-01、24-02、24-03、診療行為データ24-11、24-12、24-13、・・・、医薬品データ24-21、24-22、24-23、・・・、器材データ24-31、24-32、24-33、・・・、コメントデータ24-41、24-42、24-43、・・・、その他のデータ24-N1、24-N2、24-N3、・・・に分解される。
【0018】
c)関連性情報の付加処理
関連性情報の付加処理では、電子レセプト22-1、22-2、22-3、・・・から分解された各データ群24-0、24-1、24-2、24-3、・・・に対し、関連性情報としてたとえば、一連性番号が付される。
d)検索処理
検索処理は、一連性番号で関連付けられたデータ群24-0’、24-1’、24-2’、24-3’、・・・を用いてたとえば、診療行為毎に関連性検索が行われる。また、この検索処理には、たとえば一連性情報で識別される1または2以上の特定データを受診者、診療行為、医薬品、器材、またはコメントのいずれかまたは2以上に関係付けて検索可能とする。
【0019】
<処理シーケンス>
図4は、電子レセプト処理システム2の処理シーケンスを示している。この処理シーケンスにおいて、Sは処理手順または工程を示し、Sに付した番号はその処理順を示している。
各情報端末6-1、6-2、・・・、6-Nは電子レセプト22xを取得し、レセプトデータ処理装置4に向けて送出する(S101)。
レセプトデータ処理装置4は、各情報端末6-1、6-2、・・・、6-Nから電子レセプト22xを取り込み(S102)、補助記憶装置20の電子レセプト記憶領域20-1に格納する(S103)。
レセプトデータ処理装置4は、所定のタイミングで電子レセプト22xをデータ群24xに分解し(S104)、各データ群24xに関連性情報を付加する(S105)。
【0020】
この関連性情報は、電子レセプト22x内におけるたとえば、同日内における診療行為、医薬品、器材、コメントなど、関連性のあるデータであり、これらを特定できるたとえば、一連性番号などでよい。
レセプトデータ処理装置4は、関連性情報を付加した各データ群24xをデータ群記憶領域20-2に格納し(S106)、保存する。
各情報端末6-1、6-2、・・・、6-Nはデータ解析の契機により、レセプトデータ処理装置4に向けてデータ検索指示を送出する(S107)。この検索指示はたとえば、一連性のある診療行為であり、既述の関連性情報で特定される。すなわち、情報端末から関連性情報である一連性番号で識別される1または2以上の特定データを受診者、診療行為、医薬品、器材、またはコメントのいずれかの情報単位で抽出可能とする。
【0021】
検索処理の指示を受けたレセプトデータ処理装置4は、関連性情報の指定を以て検索処理を実行し(S108)、その検索結果として提示情報を出力し(S109)、検索指示を発した情報端末6-x(たとえば、x=1、2、・・・、Nの何れか)に提示情報を送出する。
この提示情報を受けた情報端末6-xは、レセプトデータ処理装置4の検索結果を提示する(S110)。この検索結果を受けた診療機関、医師、医療事務などは、その結果情報を活用することができる。
【0022】
<電子レセプト22xの構成>
図5のAは、電子レセプト22xの構成例を示している。この電子レセプト22xでは対象行の一例として3行で示している。第1行および第2行は診療行為データ24-11、24-12であり、第3行は医薬品データ24-21である。
この電子レセプト22xは
図5のBに示す診療行為データ24-11、24-12と、
図5のCに示す医薬品データ24-2とに分解される。
【0023】
診療行為データ24-11、24-12にはレコード識別情報、診療識別、負担区分、診療行為コード、数値データ、点数などが含まれる。また医薬品データ24-21には、レコード識別情報、診療識別、負担区分、医薬品コード、使用量、点数などが含まれる。
診療行為データ、医薬品データ、器材データ、コメントデータ、その他のデータは、受診者を単位とするデータ群である。診療行為データは、受診者に対する診療行為を表すデータである。
医薬品データは、診療に供される医薬品を表すデータである。器材データは、診療に用いられた器材を表すデータである。コメントデータは、医者などの診療機関が診療に付す診療情報のコメントである。
【0024】
<データ群に対する関連性情報の付加>
図6のAは関連性情報が付加された診療行為データ24-11’、24-12’を示している。
関連性情報はたとえば、一連性番号であり、この例では診療行為データ24-11’には一連性番号「1」、診療行為データ24-12’には一連性番号「2」が付されている。
図6のBは関連性情報が付加された医薬品データ24-21’を示している。
関連性情報はたとえば、一連性番号であり、この例では医薬品データ24-21’には一連性番号「2」が付されている。
【0025】
<レセプトデータ処理装置4による処理手順>
この処理手順には、データ分解処理1(
図7)、データ分解処理2(
図8)、データ分解処理3(
図9)、データ検索処理4(
図10)が含まれる。
図7は、電子レセプトのデータ分解処理1の処理手順を示している。
この処理手順では、電子レセプト22xの取込みにおいて、電子レセプト22xの最終行の到来を以て、データ分解処理2(
図8)の継続を判断する(S201)。電子レセプト22xの行が終端(=最終行)であれば(S201のYES)、データ分解処理1を終了する(S202)。
したがって、レセプトデータ処理装置4は電子レセプト22xの行位置がファイルの終端が到来するまで、データ分解処理2を継続する(S203)。
【0026】
図8は、データ分解処理2の処理手順を示している。
レセプトデータ処理装置4は、電子レセプト22xを取得し、データ分解処理を実行する(S301)。このデータ分解処理2は、たとえば電子レセプトの行単位で診療行為データ、医薬品データ、器材データ、コメントデータの順で実行する。
レセプトデータ処理装置4は電子レセプトの行判断処理として、先ず、電子レセプト22xが診療行為行であるかを判断し(S302)、電子レセプト22xのデータ分解処理に移行する。電子レセプト22xが診療行為行であれば(S302のYES)、レセプトデータ処理装置4は診療行為データのデータ分解処理3(
図9)を実行する(S303)。
【0027】
電子レセプト22xが診療行為行でなければ(S302のNO)、レセプトデータ処理装置4は次に、電子レセプト22xの行判断処理として、電子レセプトが医薬品行であるかを判断し(S304)、電子レセプト22xのデータ分解処理に移行する。電子レセプト22xが医薬品行であれば(S304のYES)、レセプトデータ処理装置4は医薬品データのデータ分解処理3を実行する(S305)。
【0028】
電子レセプト22xが医薬品行でなければ(S304のNO)、レセプトデータ処理装置4は次に、電子レセプト22xの行判断処理として、電子レセプト22xが器材行であるかを判断し(S306)、電子レセプト22xのデータ分解処理に移行する。電子レセプト22xが器材行であれば(S306のYES)、レセプトデータ処理装置4は器材データのデータ分解処理3を実行する(S307)。
【0029】
電子レセプト22xが器材行でなければ(S306のNO)、レセプトデータ処理装置4は次に、電子レセプト22xの行判断処理として、電子レセプト22xがコメント行であるかを判断し(S308)、電子レセプト22xのデータ分解処理に移行する。電子レセプト22xがコメント行であれば(S308のYES)、レセプトデータ処理装置4はコメントデータのデータ分解処理3を実行する(S309)。
レセプトデータ処理装置4は、コメントデータのデータ分解処理3の完了で、この分解処理を終了する。
なお、データ分解処理2は、分解する対象が診療行為データ、医薬品データ、器材データ、コメントデータに限られず、たとえば受診者データやその他のデータの分解処理を行ってもよい。
【0030】
図9は、データ分解処理3を示している。このデータ分解処理3は、データ分解処理2で実行される一連性番号を付与する処理手順である。
既述のデータ分解処理(S303、S305、S307、S309)において、一連性のある診療行為つまり、データ群である診療行為、医薬品、器材、コメントに関連性情報として一連性番号を付与する。
レセプトデータ処理装置4は診療行為、医薬品、器材またはコメントのレコードに一連性が無いかを判断する(S401)。一連性が無ければ(S401のYES)、一連性番号を生成させ、該当するデータ行に付加し(S402)、この処理を終了する。
一連性が有れば(S401のNO)、一連性番号を該当するデータ行に付加し(S403)、この処理を終了する。
【0031】
図10は、データ検索処理4の処理手順を示している。このデータ検索処理4は一連性番号を用いたデータ検索である。
レセプトデータ処理装置4は、指示された条件が一連性のある抽出であるかを判断し(S501)、その条件が一連性のある抽出であれば(S501のYES)、一連性番号を用いてデータ群24xから対象データを抽出する(S502)。
レセプトデータ処理装置4は、この対象データに対して指示された条件で検索する(S503)。また、レセプトデータ処理装置4は、指示された条件が一連性のある抽出でなれば(S501のNO)、S502をスキップして対象データに対して指示された条件で検索し(S503)、この処理を終了する。
【0032】
<一実施の形態の効果>
この一実施の形態によれば、次の効果が得られる。
(1) 電子レセプト22xをデータ群24xに分解し、各データ群24xに関連性情報を付与するので、この関連性情報を以て各データ群24xが関係付けられる。
(2) 各データ群24xは、関連性情報を以て迅速かつ容易に検索し、各データ群24x間の診療行為や医薬品などの個別情報を有機的に把握することができる。
(3) 一連性のある診療行為は電子レセプト上では診療識別を省略しているので、一連性番号などの関連性情報を以て判断することができる。
(4) 医師や事務担当は診療行為の調査・分析のために一連性のある診療の行為を検索、抽出したいとき、分解したデータの中で一連性番号のデータを再抽出して処理することができ、電子レセプトのデータ処理の利便性が高められる。
【実施例】
【0033】
図11は、一実施例に係る電子レセプト22xを示している。この電子レセプトには診療行為、医薬品、医療機関のコメントなど、複数のデータが格納されている。
この電子レセプト22xについて、
図12に示すデータテーブルには、たとえば行数毎に、電子レセプト部28、関連番号部30が備えられる。電子レセプト部28には電子レセプト22xが格納されている。関連番号部30には関連性情報としてたとえば、関連番号「3562」・・・「3568」が付されている。そのほか各データには、図示しない関連番号の定義事項などを指示する備考データが含まれてもよい。たとえば関連がある電子レセプト22xについては、行数が異なっても同一の関連番号が付されることなどの指示が含まれる場合がある。
【0034】
図13は、電子レセプトと関連番号の関係を示している。この関係について、Aは電子レセプト22x、Bは電子レセプト22xから分離したSIデータ、Cは電子レセプト22xから分離したIYデータ、Dは電子レセプト22xから分離したTOデータ、Eは電子レセプト22xから分離したCOデータを示している。これらのデータについて、関連番号には共通の関連番号「3566」が付されており、これらのデータの関連付けが行われている。
図14のAはレコード識別を示している。関連番号は、同一診療識別で、診療識別コード記録単位で昇順に付与される。
図14のAは、関節腔内注射を行った場合を示している。
図14のAに示すレコード識別において、SIは診療行為を表すデータ、IYは医薬品を表すデータ、COはコメントを表すデータである。
【0035】
図14のBは、CSVデータの記録について、一連番号「1」、「2」、「3」、「4」の定義事項を示している。
図14のCは、レセプトの表示の一例を示している。
【0036】
各データシートにはレセプト、RE、KO、SY、SI、IY、TO、CO、SJなどの各データが含まれる。
電子レセプトには電子レセプトの一人の受診者を抜粋したものに追加で元データの行番号、データ、関連番号(一連性番号)、説明の項目が設けられる。REデータは分解後のREデータ(レセプト共通データ)である。KOデータは分解後のKOデータ(公費データ)である。SYデータは分解後のSYデータ(傷病データ)である。SIデータは分解後のSIデータ(診療行為データ)である。IYデータは分解後のIYデータ(医薬品データ)である。TOデータは分解後のTOデータ(特定器材データ)である。COデータは分解後のCOデータ(コメントデータ)である。SJデータは分解後のSJデータ(症状詳記データ)である。
これら各データのうち、この処理システムにより関連番号(一連性番号)が追加的に付与されるのはSIデータ、IYデータ、TOデータ、COデータの4データである。
【0037】
図15のA、BおよびCはSIデータ、
図16のAおよびBはIYデータ、
図17のAおよびBはTOデータ、
図18のAおよびBはCOデータを示している。
このように電子レセプト22xから分解されたSIデータ、IYデータ、TOデータおよびCOデータには関連性を表す関連番号で関係付けられ、これらのデータが特定の受診者のデータであることを示している。
このようなデータ処理について、
図19のAは電子レセプトの原データを示し、Bはデータ分解後、再成型した電子レセプトのイメージを示している。つまり、この電子レセプトの原データ(
図19のA)は、たとえば保険区分、かつ月毎のデータである。これに対し、変換されたデータ(
図19のB)は、複数の原データを受診者毎に、複数の月のデータをまとめて表示している。
そして、
図20は原データからSIデータ行にコメントデータが含まれていた場合にコメントデータを分解した際、関連番号で関係付けられる。つまり、レセプトデータの分解処理では、たとえば所定の読み出し条件に従い、SIデータ行にコメントデータが含まれるか否かを判断し、コメントデータが含まれている場合(
図20のA)には、新たに「CO」のデータ行を作成して、コメントデータを分解して記憶させる(
図20のB)。この読み出し条件は、たとえば「SI」、「IY」、「TO」・・・などのデータ群で同じ条件を設定してもよく、またはデータ群毎に異なる位置を読み出すように設定してもよい。
【0038】
<電子レセプト処理システム2の活用形態>
図21は、電子レセプト処理システム2の活用形態を示している。電子レセプト処理システム2を含む診療システム40では、従前から連係されている総合医療を担当する医療機関としての病院42、地域医療を担当するクリニック44および診療報酬を担当する支払い機関である支払基金46を中心に、医療会計コンサルティング会社48、医療機関検索ポータルサイト50、医薬メーカー52が関連している。これに対し、電子レセプト処理システム2は、電子レセプト22xを基軸に医療システムに必要なデータを提供することができる。つまり、従前の診療報酬請求のためにのみ使用されてきた電子レセプト22xが受診者の診療行為の分析、関連付け、医薬品の適正化などに対して貴重なデータ源を提供し、ひいては、受診者の安全性までも高めることが可能である。
【0039】
<実施例の効果>
この実施例によれば、次の効果が得られる。
(1) 電子レセプト処理システム2は診療報酬請求の活用域を超えて診療行為や投薬などの分析、総合的な医療行為の一助として活用することができる。
(2) 電子レセプトからSIデータ、IYデータ、TOデータ、COデータを分解、抽出しても関連番号で関連付けされるので、原データとの関連性を失うことなく、データ活用の利便性を高めることができる。
【0040】
以上説明したように、本発明の最も好ましい実施の形態等について説明した。本発明は、上記記載に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載され、または発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能である。斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
この発明は電子レセプトに含まれている診療行為データ、医薬品データ、器材データ、コメントデータなど、データ群に関連性情報を付加することで、関連性のある受診者、診療行為などについて、分析や判断などに必要な情報処理を容易かつ迅速に行うことでき、有益である。
【符号の説明】
【0042】
2 電子レセプト処理システム
4 レセプトデータ処理装置
6-1、6-2、・・・、6-N 情報端末
8 ネットワーク
10 制御部
12 記憶部
14 情報提示部
16 操作入力部
17 通信部
18 主記憶装置
20 補助記憶装置
20-1 電子レセプト記憶領域
20-2 データ群記憶領域
22x 電子レセプト
24x データ群
22-1、22-2、22-3、・・・ 電子レセプト
24-0、24-1、24-2、24-3、・・・ データ群
24-01、24-02、24-03、・・・ 受診者データ
24-11、24-12、24-13、・・・ 診療行為データ
24-21、24-22、24-23、・・・ 医薬品データ
24-31、24-32、24-33、・・・ 器材データ
24-41、24-42、24-43、・・・ コメントデータ
24-N1、24-N2、24-N3、・・・ その他のデータ
28 電子レセプト部
30 関連番号部
40 診療システム
42 病院
44 クリニック
46 支払基金
48 医療会計コンサルティング会社
50 医療機関検索ポータルサイト
52 医薬メーカー