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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】移動局による地上設備間通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 92/20 20090101AFI20221031BHJP
   H04W 8/24 20090101ALI20221031BHJP
   H04M 11/00 20060101ALI20221031BHJP
   H04M 3/42 20060101ALI20221031BHJP
   H04W 8/22 20090101ALI20221031BHJP
【FI】
H04W92/20
H04W8/24
H04M11/00 301
H04M3/42 101
H04W8/22
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018181172
(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2020053829
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】藤川 祐也
【審査官】桑原 聡一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-016990(JP,A)
【文献】特開2013-093678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
H04M 11/00
H04M 3/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に設置された複数の基地局と、
複数の前記基地局との間の位置関係が時間的に変動し、複数の前記基地局の各々との間で通信を行う複数の移動局と、を具備する地上設備間通信システムであって、
前記移動局は、一つの前記基地局から他の前記基地局へ情報を送信する際の中継を行い、
前記情報は、一つの前記移動局における一部の機能を制限する旨の制御を行わせるための機能制限指令であり、当該機能制限指令には、前記一つの前記移動局の識別情報が含まれ、
前記基地局の各々に対して前記移動局の各々が通信可能となる領域が前記基地局毎に定まり、
前記移動局は、一つの前記領域において対応する前記基地局から前記情報を受信した場合、前記識別情報より、前記機能制限指令が自身に対するものであるか否かを判定し、自身に対するものでない場合には、前記情報を記憶し、他の前記領域に移動した場合に、記憶された当該情報を当該他の前記領域に対応する前記基地局に送信することを特徴とする地上設備間通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置が時間的に変動する移動局と、この移動局から離間した箇所でこの移動局と無線通信を行う基地局とが用いられる地上設備間通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動体に搭載された移動局と、地上に固定された基地局との間で無線通信を行い、列車の運行のために互いに各種の情報を授受する通信システムが用いられている。こうした場合には、例えば、緊急時には列車を緊急停止させる旨の警報が基地局から移動局側に、あるいは移動局から基地局側に発せられる。一方、基地局側の無線機は固定された大型の設備であるのに対して、移動局側の無線機は携帯型の無線機とされる場合もあるため、特に移動局側の無線機は紛失や盗難にあうおそれがある。
【0003】
特に、移動体が救急車等の緊急車両である場合には、無線機の悪用を防止する必要があるため、こうした場合には、即時にこの無線機における無線機側から信号を発する機能を無効化することが好ましい。このため、このように移動局側の無線機が盗難されたことが基地局側で認識された場合には、基地局側の無線機から、この移動局側の無線機を無効化するような指令(機能停止指令)が発せられる。基地局は複数の移動局との通信を行う場合もあり、この中で盗難された無線機(移動局)のみの機能が無効化され、他の移動局と基地局との間の通信はこの影響を受けずに正常に行われる必要がある。
【0004】
こうした要求を満たすために、例えば、特許文献1に記載の技術においては、基地局側で全ての移動局側の無線機を識別子で認識し、無効化すべき移動局側の無線機の識別子が動作禁止端末識別子として一括して全ての移動局側に送信される。移動局側の無線機は、自身の識別子とこの動作禁止端末識別子が一致した場合に自身の使用者による動作を無効化する。これにより、無効化される対象となった移動局側の無線機は無効化されると共に、これ以外の移動局側の無線機は通常に動作し通常の通信を基地局との間で行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-170903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
実際には複数の移動局に対して複数の基地局が設けられる場合もあり、この場合には、上記のような無効化すべき移動局に関する情報は全ての基地局で共通して認識される必要があり、かつこの認識は速やかに行われる必要がある。
【0007】
複数ある地上の基地局の間が例えばネットワークを介して接続され、常時直接通信可能である場合にはこのように情報を共有化することは容易である。しかしながら、例えば複数の基地局が異なる会社の管理下にある場合には、少なくともこれらの間は常時通信可能ではない場合がある。また、移動局が長距離にわたる移動をし、移動局が地域毎に異なる基地局との間で通信をする場合もあり、こうした場合には基地局間の通信が困難である場合もある。これらの場合には、上記の認識を速やかに行うことができない基地局が発生する。このため、複数の基地局の間が通信可能でない場合においても、移動局に関する情報を全ての基地局が速やかに認識することができることが望まれた。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みなされたもので、上記課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、地上に設置された複数の基地局と、複数の前記基地局との間の位置関係が時間的に変動し、複数の前記基地局の各々との間で通信を行う複数の移動局と、を具備する地上設備間通信システムであって、前記移動局は、一つの前記基地局から他の前記基地局へ情報を送信する際の中継を行い、前記情報は、一つの前記移動局における一部の機能を制限する旨の制御を行わせるための機能制限指令であり、当該機能制限指令には、前記一つの前記移動局の識別情報が含まれ、前記基地局の各々に対して前記移動局の各々が通信可能となる領域が前記基地局毎に定まり、前記移動局は、一つの前記領域において対応する前記基地局から前記情報を受信した場合、前記識別情報より、前記機能制限指令が自身に対するものであるか否かを判定し、自身に対するものでない場合には、前記情報を記憶し、他の前記領域に移動した場合に、記憶された当該情報を当該他の前記領域に対応する前記基地局に送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、複数の基地局の間が通信可能でない場合においても、移動局に関する情報を複数の基地局が速やかに認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】基地局と移動局を具備する一般的な通信システムの構成を示す図である。
図2】従来の通信システムの構成を示す図である。
図3】基地局と移動局の構成を示すブロック図である。
図4】本発明の実施の形態に係る通信システムの動作(第1の例)が行われる際の構成を示す図である。
図5】本発明の実施の形態に係る通信システムの動作(第1の例)を示すシーケンス図である。
図6】本発明の実施の形態に係る通信システムの動作(第2の例)が行われる際の構成を示す図である。
図7】本発明の実施の形態に係る通信システムの動作(第2の例)を示すシーケンス図である。
【0012】
次に、本発明を実施するための形態を図面を参照して具体的に説明する。図1は、本発明の対象となる通信システム(地上設備間通信システム)の構成の例を模式的に示す図である。図1に示された範囲内では、この構成は従来の通信システムと本発明とで共通する。
【0013】
この通信システムは、2つの端末(移動局)10(10A、10B)を具備する。端末10A、10Bは、それぞれ移動体MA、MBに搭載され、移動体MA、MBの移動に伴って移動する。端末10A、10Bと通信が可能な通信装置(基地局)20A、20Bはそれぞれ地上における異なる地点で固定されている。ただし、端末10A、10Bが通信装置20Aと通信可能なのは図1における領域Xにいる場合のみであり、端末10A、10Bが通信装置20Bと通信可能なのは領域Yにいる場合のみである。すなわち、端末10A、10Bが領域Xにある場合にはこれらは通信装置20Bとの間で通信をすることができず、端末10A、10Bが領域Yにある場合には通信装置20Aとの間で通信をすることができない。
【0014】
図2は、このような前提条件の下で動作する従来の通信システムの構成を模式的に示す図である。また、図3は、端末10、通信装置20A、20Bの構成を簡略化して示すブロック図であり、図3の構成は、従来の通信システムと本発明で共通する。
【0015】
ここで、端末10A、10Bは同一仕様の装置である必要はないが、簡略化した構成は同様であるため、これらをここでは端末10として記載している。通信装置20A、20Bについても、同様に、これらをここでは通信装置20として記載している。端末10、通信装置20には、それぞれの全体を制御するCPUを具備する制御部11、21が設けられる。また、端末10、通信装置20の各々をユーザーが操作するための操作部12、22、この際に各種の情報を表示する表示部13、23がそれぞれに設けられる。また、これらの動作を行うための各種の情報を記憶する記憶部14、24、互いに無線通信を行うためのインターフェースとなる通信部15、25がそれぞれに設けられる。移動体Mに搭載されるために自身の位置が変わる端末10には、自身の位置を示す位置情報を認識するための位置情報認識部16が設けられる。
【0016】
例えば移動体MA、MBが列車である場合には、、端末10(10A、10B)においては、制御部10は、位置情報認識部16によって得られた自身の位置情報を通信装置20A又は20Bに送信し、これを受信した通信装置20A又は20Bの制御部21は、この位置情報に基づいた指示を端末10A、10B側に送信し、移動体MA、MB側のユーザー(運転手等)は、この指示内容を表示部13によって認識することができる。また、例えば突発事項によって移動体MAが緊急停止した等の異常事態が発生した場合には、端末10Aの制御部11は、その旨を通信装置20A又は20B側に送信し、これを受信した通信装置20A又は20Bの制御部21は、これに応じた指示を端末10Aに送信することができる。
【0017】
ここで、例えば端末10Aが盗難にあう等、端末10Aが適正な管理下でなくなった場合には、以降は例えば上記のような異常事態を通信装置20A、20Bに送信する機能が適正に行われず、通信装置20A、20Bや他の端末10Bが実際とは異なる認識をし、不適正な指示が出される可能性がある。このため、このように端末10Aが盗難にあった場合には、この端末10Aにおける異常事態であることを発する機能を無効とする(制限する)ことが好ましい。この操作は、一つの基地局(例えば通信装置20A)から行うことができる。この場合、端末10Aの機能が制限された旨は、端末10A自身、及びこのための操作が行われた通信装置20Aで共通して認識することができる。更に、通信システムに全体として適正な動作をさせるためには、このように端末10Aの機能が制限された旨が、通信装置20B、端末10Bにも速やかに認識されることが必要である。
【0018】
図2においては、端末10A(移動体MA)が領域Xにある場合にこのように端末10Aが適正な管理の下になくなったことを通信装置20A側のユーザーが認識した場合には、このユーザーによる通信装置20Aの操作部22の操作により、制御部21は、上記のように端末10Aの機能を制限する旨の指示を端末10Aに送信する。これを受信した端末10Aの制御部11は、自身の操作部12の操作等に関わらずにこの機能を制限するように、自身を設定することができる。このように自身の設定が行われた旨は自身の記憶部14に記憶される。この点については、前記の特許文献1に記載の技術と同様である。以降は、上記のように端末10Aの機能は制限される。この場合、端末10Aの制御部11は、自身の機能を制限する設定が完了した旨を通信装置20A側に送信し、通信装置20Aの制御部21は、その旨を記憶部24に記憶させる。これによって、このように端末10Aの機能が制限された旨の認識を端末10A、通信装置20Aの間で共有することができる。
【0019】
一方、図1、2において端末10Aは通信装置20Bと通信することができないため、上記のように端末10Aの機能が制限された旨を通信装置20Bが認識するためには、通信装置20Bが通信装置20A側からこの情報を入手することが必要である。このため、通信装置20Bの制御部21は、この旨を通信部25を介して通信装置20A側から受信する、あるいは通信装置20A側のユーザーが、通信部25を介さない他の通信手段によってこの旨を通信装置20B側のユーザーに伝え、このユーザーが通信装置20Bの操作部22を操作することによって、この旨を通信装置20B側で認識させることが必要である。また、領域Yにある端末10Bがこの旨を認識するためには、この情報を通信装置20Bから入手することが必要である。
【0020】
こうした動作のためには、通信装置20A、20Bが互いに通信可能であることが必要となる。しかしながら、一般的には通信装置20A、20Bは共通のネットワーク環境下にはなく、これらが互いに通信可能であるとは限らない。例えば、通信装置20A、20Bの管理が互いに異なる会社の下である場合には、少なくともこれらが常時通信可能ではない場合もある。こうした場合には、少なくとも通信装置20B側がこの旨を速やかに認識することは困難である。あるいは、上記のように通信部25を介さない他の通信手段によってこの旨が伝達された場合には、通信装置20B側でユーザーが操作部22を操作するための作業が必要となる。
【0021】
これに対して、本発明の実施の形態に係る通信システムにおいては、上記のような通信装置20A、20B間の通信は不要であり、上記のような情報が、端末10B、あるいは機能が制限された端末10A自身によって中継される。このため、この情報は、端末10A、10Bのいずれかが領域Yに入った場合に通信装置20Bに送信される。この場合においては、上記のような通信装置20A、20B間の通信は不要となる。
【0022】
図4は、このような動作の例(第1の例)が行われる構成を示す図である。ここでは、領域X内に端末10A、10Bがあり、このうち端末10Aの動作を制限する制御が通信装置20Aから行われる。その後、端末10Aの動作が制限されると共に、その旨が端末10Bにも伝わった後に端末10Bを介して通信装置20Bに伝わる。図5は、本発明の実施の形態に係る通信システムにおけるこのような動作の例(第1の動作)を示すシーケンス図である。
【0023】
図5において、ユーザー等による操作により、通信装置20A(図における通信装置A)で、端末10A(図における端末A)の機能を制限するための情報(機能制限指令)を発する操作が行われる(S100)。これによって、機能制限指令が通信部25を介して発せられる(S101)。機能制限指令には、対象となる端末(ここでは端末10A)の識別情報と、具体的な機能の制限の内容を特定する情報とが含まれる。この機能制限指令は、後述するように端末10Aの機能が所望のとおりに制限する設定が行われた旨を通信装置20Aが確認できるまで繰り返し発せられる。この機能制限指令は、図4において領域X内にある端末10A、端末10Bが共に受信する。端末10Aがこれを受信すると、その制御部11は、機能制限指令に含まれる識別情報より、この機能制限指令が自身に対するものであることを認識し、自身の機能を制限するように設定し(S102)、このような設定が行われた旨を自身の記憶部14に記憶させる(S103)。
【0024】
その後、端末10Aの制御部11は、このように機能を制限する設定が完了した旨を通信装置20A側に送信し(S104)、通信装置20Aがこれを受信することによって、通信装置20Aの制御部21は、要求通りに端末10Aの機能が制限された旨を認識し(S105)、その旨を自身の記憶部24に記憶させる。これにより、端末10Aの制御部21は、機能制限指令を発する動作を停止させる(S106)。
【0025】
一方、機能制限の対象ではない端末10B(図における端末B)も領域Xにあるため、上記の機能制限指令を端末10Aと同様に受信するが、端末10Bの制御部11は、機能制限指令中の識別情報よりこの機能制限指令が自身に対するものではないことを認識するため、この制御部11は自身の機能を制限する設定を行わず、このような指令があった旨をその記憶部14に記憶させる(S107)。その後、機能制限指令が停止したこと(S106)を制御部11が認識した場合には、その旨を記憶部14に記憶させる(S108)。このため、端末10Bにおける制御部11は、通信装置20Aから機能制限指令が発せられた(S107)後で、この機能制限指令が停止したことを確認したこと(S108)によって、端末10Aの機能が指令通りに制限されたことを認識し、この旨を自身の記憶部14に記憶させる(S109)。
【0026】
その後、端末10Bが領域Yに移動した際(S110)には、その制御部11は、このように端末10Aの機能が制限された旨を通信装置20B(図における通信装置B)に送信し(S111)、これによって通信装置20Bの制御部21はこの旨を認識し、これを自身の記憶部24に記憶させる(S112)。これにより、その後に端末10Aが領域Yに移動した際には、通信装置20Bは、端末10Aの機能が制限されているものとして扱うことができる。
【0027】
端末10Bが領域Yに移動した際に端末10Aの機能が制限された旨を通信装置20Bに送信するタイミング(S111)は、適宜設定が可能である。例えば、端末10Bが位置情報認識部16により自身が領域Yに侵入したことを認識した直後にこの送信を行わせることができる。また、端末10Bが領域Yに侵入し、通信装置20Bから端末10Bへ、又は端末10Bから通信装置20Bに最初に送信が行われた際に、上記の送信(S111)を行ってもよい。
【0028】
図5の動作においては、領域Xにある端末10Aの機能を制限する旨の指令は通信装置20Aから発せられ、これによって端末10Aの機能が制限された旨を、この指令を端末10Aと同時に受信した端末10Bが中継することによって、通信装置20Bも認識することができる。これによって、この旨を端末10A、10B,通信装置20A、20Bの全てで共通して認識することができる。なお、図5における端末10Bの領域Yへの移動(S110)よりも先に端末10Aが領域Yに移動した場合には、端末10Aの機能が制限された旨の通信装置20Bへの送信は、端末10Aにより行わせてもよい。
【0029】
一方、図6は、他の動作の例(第2の動作)が行われる構成の例を示す図である。ここでは、端末10Aの動作を制限する旨の指令が通信装置20Aから発せられることは前記と同様であるが、この時点では領域X内には端末10Bのみがあり、機能制限指令の対象となる端末10Aは領域Yにあるため、端末10Aは通信装置20Aと通信ができない。その代わりに、このような制御が行われる旨は端末10Bを介して通信装置20Bが認識し、通信装置20Bが端末10Aに対してこの機能制限指令を発する。その後、最終的に、このような制御が行われた旨は、通信装置20Aも認識する。図7は、このような動作の例(第2の動作)を示すシーケンス図である。
【0030】
図7において、ユーザー等による操作により、通信装置20A(図における通信装置A)で、端末10A(図における端末A)の機能を制限するための操作が行われ(S200)、前記と同様に機能制限指令が通信部25を介して繰り返し発せられる(S201)。この機能制限指令は、領域X内にある端末10Bのみが受信し、領域Yにある端末10Aはこれを受信することができない。端末10Bがこれを受信すると、その制御部11は、その識別情報より、この機能制限指令が自身に対するものではないことを認識し、このような機能制限指令があった旨を記憶部24に記憶する(S202)。一方、領域Yにある端末10Aはこの機能制限指令を受信しないため、これに関わる操作は端末10Aにおいては一切行われない。
【0031】
その後、端末10Bが領域Yに移動したら(S203)、端末10Bが通信装置20Bと通信可能となる。このため、端末10Bの制御部11は、上記のような機能制限指令が通信装置20Aから発せられた旨を、通信装置20Bに送信する(S204)。これを受信した通信装置20Bの制御部21は、その旨を自身の記憶部24に記憶させる(S205)。その後、この制御部21は、この機能制限指令を通信装置20Bから発信させる(S206)。この際、通信装置10Aが機能制限指令を発する場合(S201)と同様に、機能制限指令は繰り返し発せられる。端末10A、10Bはこの機能制限指令を受信する。ただし、端末10Bの制御部11は、その識別情報によって、この機能制限指令が自身に対するものでないことを認識するため、端末10Bにおいては機能を制限する動作は行われない。
【0032】
一方、この機能制限指令を受信した端末10Aの制御部11は、これが自身に対するものであることを認識し、自身の機能を制限するように設定し(S207)、その旨を自身の記憶部14に記憶させる(S208)。その後、この制御部11は、このような設定が完了した旨を通信装置20Bに送信する(S209)。
【0033】
これを受信した通信装置20Bの制御部21は、この旨を記憶部24に記憶させる(S210)。これによって、この制御部21は、このような設定が端末10Aで行われたことを認識し、機能制限指令を発する動作を停止する(S211)。その後、端末10Aでこのような設定が行われた旨が通信装置20Bから発せられ(S212)、これを受信した端末10Bの制御部11は、これによって端末10Aでこのような設定が行われた旨を認識し、この旨を自身の記憶部14に記憶させる(S213)。
【0034】
その後、端末10Bが領域Xに移動した後(S214)においては、端末10Bは通信装置20Aと通信が可能となる。このため、端末10Bの制御部11は、端末10Aでこのような設定が行われた旨を通信装置20Aに送信する(S215)。これを受信した通信装置20Aの制御部21は端末10Aでこのような設定が行われた旨を認識し(S216)、通信装置20Aから機能制限指令を発する動作を停止する(S217)。
【0035】
この動作によっても、端末10Aの機能が制限される制御が行われ、この制御が行われた後に、通信装置20A、20B、端末10Bがその旨を認識する。なお、この場合においても、端末10Bが領域Xに移動する(S214)前に、端末10Aが領域Xに移動した場合には、端末10Aにおいて機能が制限された旨の通信装置20Aへの送信(S215)は、端末10A自身が行ってもよい。また、領域の移動後に行われる送信(S204、S215)のタイミングについては、図5の動作における場合と同様に、適宜設定が可能である。
【0036】
このように、上記の通信システムにおいては、移動局(端末10A,10B)が、基地局間(通信装置20A、20B間)における情報を中継し、特に、このように中継される情報には、基地局が移動局を制御するための情報も含まれる。この際。このように移動局が制御された旨を全ての基地局、移動局の間で速やかに共通して認識することができる。ただし、このように基地局間で伝達され共有される情報として、移動局を制御するための情報以外のものも用いることができる。
【0037】
また、上記の例では、基地局(通信装置)、移動局(端末)が2つずつ設けられたが、これらが各々3つ以上ある場合においても、同様の動作を行わせることができる。この場合には、例えば、複数の移動局が同じ情報を受信し、この中で最も早くこの情報を送信可能な状態となった(領域を移動した)移動局が送信を行う設定とすることができる。このため、上記の構成、動作は、移動局の数が多い場合に特に有効である。また、上記のように通信可能な領域が限定された基地局の数が多い場合には、直接の通信が不可能となる基地局の数が多くなるために、やはり上記の構成、動作が特に有効となる。
【0038】
また、移動局を移動させる移動体が列車以外の場合であっても、基地局間の直接の通信が制限される場合においては、上記の構成、動作は同様に有効である。
【0039】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0040】
10、10A、10B 端末(移動局)
11、21 制御部
12、22 操作部
13、23 表示部
14、24 記憶部
15、25 通信部
16 位置情報認識部
20、20A、20B 通信装置(基地局)
M、MA、MB 移動体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7