(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】マットレスカバー、マットレス、および換気装置付ベッド
(51)【国際特許分類】
A47C 31/02 20060101AFI20221031BHJP
A47C 21/04 20060101ALI20221031BHJP
A47C 27/00 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
A47C31/02 J
A47C21/04 A
A47C27/00 F
(21)【出願番号】P 2018240742
(22)【出願日】2018-12-25
【審査請求日】2021-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】505290531
【氏名又は名称】株式会社エアウィーヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100141092
【氏名又は名称】山本 英生
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 宏之
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-262358(JP,A)
【文献】国際公開第2015/041275(WO,A1)
【文献】特開2002-125809(JP,A)
【文献】特開2017-038763(JP,A)
【文献】特開2012-192547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 31/02
A47C 21/04
A47C 27/00-22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラメント3次元結合体で形成されたクッションと、
前記クッションの上面を覆う上面部
の通気度を、前記クッションの側面を覆う側面部の通気度よりも大きくしたマットレスカバーと、を備えたマットレスであって、
前記上面部は、保温性を有するわた状の繊維と、吸湿性を有するアクリレート系繊維とを含む保温層を設けた上面生地を有し、
前記わた状の繊維は、単糸繊度が0.4dtex~10dtexであり、
前記アクリレート系繊維は、温度20℃かつ湿度65%RHにおける水分率が30%以上かつ50%以下となる
繊維であり、
前記上面生地は、フラジール法により測定される通気度が1~100cm
3
/cm
2
・sとなる生地であることを特徴とするマットレス。
【請求項2】
前記わた状の繊維として、ポリエステル繊維である中空繊維が用いられたことを特徴とする請求項1に記載のマットレス。
【請求項3】
前記保温層に含まれる前記アクリレート系繊維の含有率が、10重量%以上かつ30重量%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマットレス。
【請求項4】
空気流を発生させる換気装置に接続可能である接続部を有し、前記換気装置を用いて前記マットレスカバーの内側を換気可能とした
請求項1から請求項3の何れかに記載のマットレスと、
前記換気装置と、
前記マットレスを支持する寝台と、を備えることを特徴とする換気装置付ベッド。
【請求項5】
前記クッションに所定方向へ伸びる通風路が設けられ、
前記通風路の一端は、前記接続部に繋がることを特徴とする請求項4に記載の
換気装置付ベッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マットレスカバー、マットレス、およびこれを用いた換気装置付ベッドに関する。
【背景技術】
【0002】
人の手足の皮膚温度(遠位皮膚温度)と胸付近の皮膚温度(近位皮膚温度)との温度差(遠位-近位皮膚温度勾配)は、日中は大きくなり(手足が冷たくなり)、夜は小さくなる(手足が暖かくなる)ことが知られている。更に近年の睡眠研究においては、この温度差が小さくなることで人は眠気を感じ、入眠後、深部体温が下がることによって睡眠深度が深くなることが知られている。
【0003】
人は遠位-近位皮膚温度勾配および深部体温を低下させるために、無意識のうちに手足の血流量を増加させるとともに、発汗により近位皮膚温度を下げている。入眠後の発汗量としては、入眠直後(最初のレム睡眠からノンレム睡眠への移行期)が最も多く、その後も睡眠サイクルに合わせてレム睡眠からノンレム睡眠への移行期に多くなると言われている。
【0004】
ところが、多量の発汗により寝具内の湿度が高まると汗が蒸発しにくくなることから、深部体温が十分に下がらずに、深い眠りにつくことができなくなったり、蒸し暑さで目が覚めることがある。そこで発汗による湿度上昇を抑えることのできるマットレス(敷き布団)として、特許文献1には、アクリレート系繊維を含有する吸湿発熱性綿層を設けた敷き布団が開示されている。
【0005】
アクリレート系繊維は、アクリル繊維に導入された極性の高いイオン結合によって、高湿環境下において水蒸気を速やかに吸着する機能を備える。マットレス(敷き布団)の保温材としてアクリレート系繊維を使用することにより、発汗により皮膚表面から蒸発した水蒸気が速やかにアクリレート系繊維表面に吸着されるので、保温性を損なうことなく、寝具内の湿度が過度に上昇することを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のアクリレート系繊維を用いた敷き布団においては、アクリレート系繊維は吸湿性に優れる反面、温度低下に寄与する水の気化熱(約2300J/g)と比べても無視できないレベルの吸着熱(約1000~2000J/g)が発生するため、敷き布団内に熱がこもりやすいといった課題がある。
【0008】
また、人は一晩の睡眠において、レム睡眠とノンレム睡眠を何度も繰り返す際、レム睡眠とノンレム睡眠への移行期、すなわち睡眠深度が深くなるタイミングにおいて繰り返し発汗することが知られているが、長時間の使用によりアクリレート系繊維の吸湿効果が低減し、発汗時の湿度上昇抑制効果がなくなるといった課題がある。さらには、アクリレート系繊維は水蒸気の吸着力が強いために乾きにくく、長期間の使用により吸着水が多くなってジメジメ感が生じるといった課題がある。
【0009】
特に、冬場においては、マットレスに使用する保温材の量を多くして保温性を高める必要があるが、保温性を高くすればするほど、吸湿した敷布団は乾きにくくなり、敷き布団を定期的に干す必要があり、吸湿性を維持するために手間がかかるといった課題がある。本発明は上記課題に鑑み、保温性を損なうことなく、発汗時の湿度上昇抑制効果を長時間発揮することが可能となるマットレスカバー、マットレス、および当該マットレスを用いた換気装置付ベッドの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るマットレスカバーは、クッションを被覆してマットレスを形成するマットレスカバーであって、前記クッションの上面を覆う上面部に保温層が設けられ、前記保温層は、温度20℃かつ湿度65%RHにおける水分率が30%以上かつ50%以下となるアクリレート系繊維を含む構成とする。本構成によれば、保温性を損なうことなく、発汗時の湿度上昇抑制効果を長時間発揮することが可能となる。
【0011】
また上記構成としてより具体的には、前記上面部の通気度を、前記クッションの側面を覆う側面部の通気度よりも大きくした構成としてもよい。本構成によれば、使用者の身体を支持する上面部が換気装置によって優先的に換気されるので、換気装置の能力を過度に高めることなく、使用者の発汗により生じる高湿度の空気を効率的に換気することが可能となる。
【0012】
また上記構成としてより具体的には、前記上面部における使用者の上半身部を支持する領域の通気度を、前記上面部における使用者の下半身部を支持する領域の通気度よりも大きくした構成としてもよい。本構成によれば、換気装置によって生じる風の流れを、下半身部よりも発汗量が多くなる傾向にある上半身部へ優先的に向かうようにし、足元が冷え過ぎないようにしつつ高湿度の空気を効率的に換気することが可能となる。
【0013】
また本発明に係るマットレスは、上記構成のマットレスカバーと、前記マットレスカバーに被覆されたクッションと、を備えたマットレスであって、空気流を発生させる換気装置に接続可能である接続部を有し、前記換気装置を用いて前記マットレスカバーの内側を換気可能とした構成とする。本構成によれば、マットレスカバー3内の空気を安定的に換気することが可能であり、マットレス内部の水分や熱の滞留を抑えることができる。
【0014】
また上記構成としてより具体的には、前記クッションに所定方向へ伸びる通風路が設けられ、前記通風路の一端は、前記接続部に繋がる構成としてもよい。本構成によれば、保温層のアクリレート系繊維に吸着された水蒸気を、通風路を通すことによって更に効率良く拡散させることが可能となる。
【0015】
また上記構成としてより具体的には、前記クッションは、フィラメント3次元結合体で形成された構成としてもよい。本構成によれば、極めて風通しの良いクッションとすることができ、換気装置7を用いて、クッション内に容易に空気流を生じさせることが可能となる。なお本発明に係る換気装置付ベッドは、上記構成のマットレスと、前記換気装置と、前記マットレスを支持する寝台と、を備える構成とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るマットレスカバーによれば、保温性を損なうことなく、発汗時の湿度上昇抑制効果を長時間発揮することが可能となる。また本発明に係るマットレスおよび換気装置付ベッドによれば、本発明に係るマットレスカバーの利点を享受することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態に係る換気装置付ベッド10の斜視図である。
【
図2】換気装置付ベッド10に用いられるマットレス1の断面図である。
【
図3】第2実施形態に係るマットレス1Sの断面図である。
【
図4】第2実施形態に係るクッション2Sの斜視図である。
【
図5】フィラメント3次元結合体の製造装置100の概略的な構成図である。
【
図6】
図5に示す受け板130の概略的な斜視図である。
【
図7】他の形態の受け板230の概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について、第1実施形態および第2実施形態を例に挙げ、各図面を参照しながら以下に説明する。なお、換気装置付ベッド(およびその構成要素)に関する上下、左右、および前後の各方向(互いに直交する方向)は、
図1に示すとおりである。これらの各方向は、鉛直方向が上下方向となり、マットレスの長手方向(使用者の身長方向と同じ)が前後方向となるように、便宜的に定めたものに過ぎない。
【0019】
1.第1実施形態
まず、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態に係る換気装置付ベッド10の斜視図である。また
図2は、換気装置付ベッド10に用いられるマットレス1の断面図である。なお
図2は、二つのうちの一方の換気口32の中心を通るとともに左右方向に直交する平面で切断した場合の断面図であり、使用形態を理解容易とするため、使用者および枕8を破線で示している。
【0020】
換気装置付ベッド10は、マットレス1、マットレス1を支持する寝台6、およびマットレス1内の空気を換気する換気装置7を備える。マットレス1は、フィラメント3次元結合体で形成された直方体のクッション2、および、クッション2を収容するマットレスカバー3を用いて形成されている。クッション2は板状体と見ることもでき、フィラメント3次元結合体で形成されているため、空隙率が90%を超える極めて風通しの良いクッションとなっている。なお、クッション2に用いるフィラメント3次元結合体の製造方法については、後ほど説明する。
【0021】
換気装置7は、図示しないファンが収容される筐体に、マットレスカバー3の換気口32と接続可能な送風管7aを設けた構成となっている。換気装置7の筐体には、風の通る開口部7bが設けられている。換気装置7のファンが駆動することにより空気流が発生し、マットレスカバー3の内部の空気を開口部7bから外部へ排気することが可能である。
【0022】
なお、換気装置7は、マットレス1内の空気を換気する換気装置として機能すればよく、そのための具体的手法は特に問わない。例えば換気装置7は、マットレス1内の空気を換気装置7側へ吸引して排気する手法以外に、換気装置7からマットレス1内へ空気を送る手法によりマットレス1内の空気を外部へ排気させ、マットレス1内の空気が換気されるようにしてもよい。また、ファンの駆動等によって音が生じる場合は、使用者の睡眠を極力妨げないように、本実施形態のように寝台6の後側(使用者の足元側)に換気装置7を設置することが好ましい。
【0023】
マットレスカバー3は、クッション2の外周部を覆う袋状の生地に、保温層31および換気口32を設けた構成となっている。換気口32は、マットレスカバー3の内部と外部を連通させる開口部32aを有し、換気装置7に着脱自在に接続可能である。左右に並ぶ二つの換気口32の間隔は、左右に並ぶ送風管7aの間隔と同じであり、換気口32と送風管7aを容易に接続することができる。クッション2は、前後方向を長手方向とし上下方向を厚み方向とした直方体の形状であり、
図2に示す使用形態を想定して、前後方向の寸法は人の身長よりもやや長めに設定されている。
【0024】
マットレスカバー3の生地は、上面生地3a、下面生地3b、および側面生地3cを有する。下面生地3bはクッション2の下面全体を覆い、側面生地3cはクッション2の前後左右の側面全体を覆う。上面生地3aには保温層31が設けられており、これらはクッション2の上面全体を覆う上面部として機能する。なお、後側の側面生地3cには、左右に並ぶように二つの換気口32が設けられている。
【0025】
保温層31は、表地と裏地の間に保温性を有するわた状の繊維を入れて重ねた状態で刺縫いしたキルトであり、保温性を有するわた状の繊維と、吸湿性を有するアクリレート系繊維を含む。保温層31はクッション2の上面全体を覆うように、上面生地3aの内側に固定されている。本発明において、アクリレート系繊維とは、吸湿性を高めるためにアクリル繊維を原料にした高分子に極性の高いイオン性基(カルボン酸塩)を導入することによって得られる、温度20℃かつ湿度65%RHにおける水分率が30%以上かつ50%以下となる吸湿性繊維のことを指す。アクリレート系繊維は、例えば以下の方法により製造可能である。
【0026】
アクリロニトリルとアクリル酸メチルからなるアクリロニトリル系重合体をロダンソーダ水溶液に溶解した紡糸原液を、湿式紡糸、水洗、延伸、捲縮、および熱処理をして原料繊維を得た後、この原料繊維に水加ヒドラジン水溶液を加えて架橋処理する。得られた架橋繊維を水洗し、水酸化ナトリウム水溶液でニトリル基をカルボン酸基に加水分解し、硝酸水溶液でカルボン酸基を酸型に変換して水洗する。その後、繊維を水酸化ナトリウム水溶液で処理することにより、酸型カルボン酸基の一部をカルボン酸塩(ナトリウム塩)に変換する。このようにしてアクリレート系繊維が製造される。
【0027】
また、市販されているアクリレート系繊維としては、例えば、東洋紡社製エクス(商品名)が挙げられる。極性の高いイオン性基を有するアクリレート系繊維は、水蒸気を吸着(吸湿)する際に大きな吸着熱を生成することから、水蒸気はエネルギー的に安定化した状態でアクリレート系繊維表面に吸着水として保持される。エネルギー的に見れば、水の蒸発熱が2442kJ/kgであるのに対して、吸着熱は約1200kJ/kgとなるので、水蒸気をトラップする能力が高い。
【0028】
その結果、アクリレート系繊維は高い吸湿性を有し、湿度の高い状態においてはマットレス内の水蒸気を吸着水として素早く吸着して、マットレス内の湿度を下げることができる。アクリレート系繊維の20℃かつ65%RH(相対湿度65%)環境下における水分率が30%未満であると、マットレス内の湿度を低減する効果は十分に得られにくく、逆に水分率が50%を超えると乾燥させにくくなる。そのため、本発明に係るアクリレート系繊維の温度20℃かつ湿度65%における水分率は、30%以上かつ50%以下であることが好ましい。
【0029】
繊維の水分率は以下の方法により求められる。水分率測定用サンプルとして約1gの繊維を温度20℃かつ湿度65%RHの環境条件下で12時間放置して調湿し、調湿後の繊維の重さを測定し、この測定値を吸湿繊維質量Wa(g)とする。次に、調湿後の繊維を105℃の熱風乾燥機中で12時間放置して乾燥させ、乾燥後の繊維の重さを測定し、この測定値を乾燥繊維質量Wb(g)とする。そして下記(1)式を用いて水分率Wr(%)を算出し、この算出値を繊維の水分率とする。
Wr=(Wa-Wb)/Wa×100 ・・・(1)
【0030】
保温層31に含まれるアクリレート系繊維の含有率としては、10重量%未満では十分な吸湿性が得られにくく、30%を超えると乾燥させにくくなることから、10重量%以上かつ30重量%以下であることが好ましい。アクリレート系繊維の太さとしては特に制限はないが、1dtex未満では強度が低下し易くなる一方、4dtexを超えると表面積が小さくなり、十分な吸湿性が得られ難くなる傾向がある。そのため保温層31に含まれるアクリレート系繊維の太さとしては、単糸繊度が1dtex~4dtex(繊維直径に換算すると約10μm~20μm)であることが好ましい。
【0031】
保温層31の素材として、アクリレート系繊維とともに使用されるわた状の繊維としては、例えば単糸繊度が0.4dtex~10dtex(繊維直径に換算すると約6μm~30μm)のポリエステル繊維などが使用できる。わた状の繊維(ポリエステル繊維)の太さとしては、単糸繊度が0.4dtex未満であると空気の流れが小さくなりすぎて水蒸気の拡散性が損なわれやすくなり、単糸繊度が10dtexを超えると繊維の表面積が少なくなり、保温性(デッドエア効果による暖かい空気を保持する機能)が損なわれる。そのため、水蒸気の拡散性と保温性向上効果を高めるという観点においては、上記わた状の繊維の太さとしては、単糸繊度が0.4dtex~10dtexであることが好ましい。
【0032】
また、わた状の繊維(ポリエステル繊維)として中空繊維を用いてもよい。特に単糸繊度が4dtex~10dtex(繊維直径に換算すると約20μm~30μm)の螺旋状の3孔中空構造を有するポリエステル繊維螺旋状は、保温性とともに圧縮に対して優れた弾性を有する点でさらに好ましい。
【0033】
図1に示すように、マットレスカバー3の上面生地3aは、使用者(就寝者)の上半身部を支持する第1エリア3aaと、使用者の下半身部を支持する第2エリア3abと、それ以外の第3エリア3acのそれぞれにおいて、通気度(空気の通り易さ)の異なる生地が使用されている。なお、ここでの上半身部は、腰より上側の部分(本実施形態では、概ね背中の部分)であり、下半身部は腰より下側の部分(本実施形態では、概ね脚と足の部分)である。
【0034】
上記の各エリアについては、第2エリア3abの通気度は第3エリア3acの通気度よりも高く、第1エリア3aaの通気度は第2エリア3abの通気度よりも高くなっており、第1エリア3aaの通気度が最も高くなっている。なお、保温層31は上面生地3aの全てのエリアに満遍なく概ね均一に配されており、マットレスカバー3の上面部(上面生地3aと保温層31を含む部分)の通気度は、第1エリア3aaに対応する領域において最も高く、第2エリアabに対応する領域ではその次に高く、第3エリアacに対応する領域では最も低い。なお、底面生地3bおよび側面生地3cの通気度は、第3エリア3acの通気度よりも小さくなっており、上面部の何れの領域の通気度よりも小さい。
【0035】
第1エリア3aa、第2エリア3ab、および第3エリア3acの生地としては、フラジール法により測定される通気度が1~100cm3/cm2・sとなる生地が適する。生地の通気度が1cm3/cm2・s未満であると透湿性が損なわれやすくなり、生地の通気度が100cm3/cm2・sを超えると保温性が損なわれ易くなる。どの程度の通気度の生地を採用するかは、透湿性と保温性を考慮して適切に決定すればよい。
【0036】
なお、フラジール法で測定される通気度測定方法はJIS L 1096の一般織物試験方法等で規定されており、通気度は次の方法により求められる。試験片となる生地を取り付けた後、加減抵抗器によって傾斜形気圧計が125Paの圧力を示すように空気の吸い込みファンを調整し、試験片の表裏両面の圧力差を一定に保った時の垂直形気圧計が示す圧力と使用した空気孔の種類とから試験片を通過する空気量(cm3/cm2・s)を求め、その値を通気度とする。
【0037】
以上に説明したとおり本実施形態に係るマットレス1は、マットレスカバー3と、マットレスカバー3に被覆されたクッション2とを備え、空気流を発生させる換気装置7に接続可能である換気口32(接続部)を有し、換気装置7を用いてマットレスカバー3の内側を換気可能としている。
【0038】
これにより、マットレスカバー3内の空気を安定的に換気することが可能であり、マットレス内部の水分や熱の滞留を抑えることができる。なお、クッション2は極めて風通しの良いフィラメント3次元結合体で形成されているため、換気装置7を用いて、クッション2内に容易に空気流を生じさせることが可能である。
【0039】
またマットレスカバー3は、クッション2を被覆してマットレス1を形成するものであって、クッション2の上面を覆う上面部に保温層31が設けられている。更に保温層31は、温度20℃かつ湿度65%RHにおける水分率が30%以上かつ50%以下となるアクリレート系繊維を含む。そのため保温性を損なうことなく、発汗時の湿度上昇抑制効果を長時間発揮することが可能となっている。
【0040】
すなわち、使用者の発汗により発生した水蒸気が速やかにアクリレート系繊維によって吸着された後、アクリレート系繊維(保温層)に溜まる吸着水や吸着熱が徐々にマットレス外部に排出される。そのため保温性を犠牲にすることなく、多量の発汗時においても保温層31およびマットレス内の湿度が急激に上昇するのを抑制し、長時間の使用においてもマットレス内部に水分や熱が滞留することを抑制できる。また、吸湿性を維持するために定期的に干すなどの手間が不要となり、長期間の使用においてもジメジメ感が生じにくい。なお、アクリレート系繊維が発汗による水蒸気を吸着した際に生じる吸着熱は、アクリレート系繊維から水蒸気となって離脱する際に離脱熱(吸着熱と同じ熱量)として消費されるので、差し引きとして熱のこもりは解消される。
【0041】
またマットレスカバー3は、上面部の通気度を、クッションの側面を覆う側面生地3c(側面部)の通気度よりも大きくしている。そのため、使用者の身体を支持する上面部が換気装置7によって優先的に換気されるので、換気装置7の能力を過度に高めることなく、使用者の発汗により生じる高湿度の空気を効率的に換気することが可能である。
【0042】
また更にマットレスカバー3は、上面部における使用者の上半身部を支持する領域(第1エリア3aaに対応する領域)の通気度を、上面部における使用者の下半身部を支持する領域(第2エリア3abに対応する領域)の通気度よりも大きくしている。そのため、換気装置7によって生じる風の流れを、下半身部よりも発汗量が多くなる傾向にある上半身部へ優先的に向かうようにし、足元が冷え過ぎないようにしつつ高湿度の空気を効率的に換気することが可能である。
【0043】
2.第2実施形態
次に本発明の第2実施形態について説明する。なお第2実施形態は、クッションに通風路を設けた点およびこれに関する点を除き、基本的に第1実施形態と同様である。以下の説明では、第1実施形態と異なる点の説明に重点をおき、第1実施形態と共通する点については説明を省略することがある。
【0044】
図3は、第2実施形態に係るマットレス1Sの断面図(
図2と同等の視点の図)である。また
図4は、
図3に示すクッション2Sの斜視図である。マットレス1Sは、フィラメント3次元結合体により形成された略直方体のクッション2Sとマットレスカバー3を含む。
【0045】
クッション2Sは、上面2aと底面2bを有する板状体であり、上面2aは平面となっているが、底面2bは、平面に2本の通風路21(断面がV字状であるV字溝)が前後方向へ伸びるように形成された形態となっている。クッション2Sは平面視矩形状に形成されており、略直方体の形状であるとも言える。2本の通風路21は、前端から後端に至るまで伸びており、前後の何れにも開口している。
【0046】
なお、2本の通風路21は、クッション2S(フィラメント3次元結合体)の製造時において、後述するV字突起233(
図7を参照)によって形成されている。通風路21の形状、寸法、および位置は、V字突起233の形状、寸法、および位置によって決まることになる。
【0047】
また、クッション2Sにおいて、通風路21(V字溝)に面する壁(V字溝との境界部分)の近傍のフィラメント密度は、通風路21が形成されていない厚み方向中央部のフィラメント密度より大きくなっており、その分、強度が高くなっている。クッション2Sに形成された通風路21は、溝の伸びる方向に見た形状が「V」の字となっており、更に、壁の近傍の強度が比較的高くなっていることから、クッション2Sの上面2aに下向きの荷重が加わった場合でも、通風路21の過度な変形は極力抑えられる。また本実施形態では、通風路21は断面形状がV字状であるV字溝となっているが、断面形状をU字状にするなど、通風路21の断面形状を自由に設計してもよい。
【0048】
2本の通風路21は、所定の間隔で左右へ並ぶように設けられている。この通風路21同士の間隔は、マットレスカバー3に設けられた左右二つの換気口32の間隔と同じである。そのため、マットレスカバー3にクッション2Sが収容されると、左側の通風路21の後端は左側の換気口32へ自然に繋がり、右側の通風路21の後端は右側の換気口32へ自然に繋がる。これにより換気装置7のファンを駆動させて、通風路21に特に強い空気流を発生させることができる。
【0049】
以上に説明したとおり本実施形態に係るマットレス1Sは、クッション2Sに前後方向へ伸びる通風路21が設けられており、更に通風路21の一端は、換気口32(接続部)に繋がるようになっている。そのため、保温層31のアクリレート系繊維に吸着された水蒸気を、通風路21を通すことによって更に効率良く拡散させることが可能である。特に通風路21が前後方向(使用者の身長方向)へ伸びることにより、使用者の上半身部の汗による水蒸気(マットレスの前側寄りで吸着される水蒸気)を後方へ効率良く移動させることが可能である。
【0050】
3.フィラメント3次元結合体の製造装置
先述したとおり、本発明の各実施形態に係るクッションとして、フィラメント3次元結合体が用いられている。以下、フィラメント3次元結合体を製造するための製造装置の一例について説明する。なお、フィラメント3次元結合体の製造装置に関する上下、左右、および前後の各方向(互いに直交する方向)は、
図5や
図6に示すとおりである。これらの各方向は、鉛直方向が上下方向となり、一対の受け板130同士の対向する向きが前後方向となるように、便宜的に定めたものに過ぎない。
【0051】
図5は、第1実施形態に係るクッション2に使用できるフィラメント3次元結合体の製造装置100の概略的な構成図である。また
図6は、
図5に示す受け板130の概略的な斜視図である。
【0052】
フィラメント3次元結合体の製造装置100は、直径が0.5mm~3mmの複数の溶融フィラメントからなる溶融フィラメント群MFを鉛直方向下向きへ排出する溶融フィラメント供給部110と、溶融フィラメント群MFを3次元的に絡め合わせて接触点を融着結合させた後、冷却固化させてフィラメント3次元結合体3DFを形成する融着結合形成部120を備える。
【0053】
溶融フィラメント供給部110は、加圧溶融部111(押出機)とフィラメント排出部112(ダイ)を含む。加圧溶融部111は、材料投入部113(ホッパー)、スクリュー114、スクリュー114を駆動するスクリューモーター115、スクリューヒータ116、および不図示の複数の温度センサを含む。加圧溶融部111の内部には、材料投入部113から供給された熱可塑性樹脂をスクリューヒータ116により加熱溶融しながら搬送するためのシリンダー111aが形成されている。
【0054】
シリンダー111a内には、スクリュー114が回転可能に収容されている。シリンダー111aの下流側端部には、熱可塑性樹脂をフィラメント排出部112に向けて排出するためのシリンダー排出口111bが形成されている。スクリューヒータ116の加熱温度は、例えば溶融フィラメント供給部110に設けた温度センサの検知信号に基づいて制御される。
【0055】
フィラメント排出部112は、ノズル部117、ダイヒータ118、および図示しない複数の温度センサを含み、内部にはシリンダー排出口111bから排出された溶融熱可塑性樹脂をノズル部117に導く導流路112aが形成されている。ノズル部117は、複数の開口部が形成された略直方体の金属製の厚板であり、導流路112aの最下流部にあたるフィラメント排出部112の下部に設けられている。ダイヒータ118は、フィラメント排出部112を加熱する。ダイヒータ118の加熱温度は、例えばフィラメント排出部112に設けた温度センサの検知信号に基づいて制御される。
【0056】
フィラメント3次元結合体の材料として用いることのできる熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン66などのポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂およびポリスチレン樹脂等や、スチレン系エラストマー、塩ビ系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ニトリル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、フッ素系エラストマー等の熱可塑性エラストマーなどを用いることができる。
【0057】
材料投入部113から供給された熱可塑性樹脂は、シリンダー111a内で加熱溶融され、例えばスクリュー114により押し出されるようにして、溶融熱可塑性樹脂としてシリンダー排出口111bからフィラメント排出部112の導流路112aに供給される。その後、ノズル部117の複数のノズルそれぞれから下方へ並進するように、複数の溶融フィラメントからなる溶融フィラメント群MFが排出される。
【0058】
融着結合形成部120は、冷却水槽123、前後一対のコンベア124、複数の搬送ローラ125a~125h、および、前後一対の受け板130を含む。前後一対の受け板130は、
図6に示すように第1平面形成用受け板131および第2平面形成用受け板132からなる。一対の受け板130は、ノズル部117の下方において、前後方向に所定の間隙を開けて設置されており、フィラメント3次元結合体3DFの厚みを規制すると同時に、表面を平滑にする役割を果たす。なお、受け板130には冷却水供給装置が設けられるが、ここでの説明を容易とするため、冷却水供給装置の図示を省略している。
【0059】
第1平面形成用受け板131は、後方に向けて下り傾斜となる平板状の傾斜面131aと、当該傾斜面131aの下端から鉛直方向下向きに延びる平板状の鉛直面131bを含む屈曲部を有する金属板である。第2平面形成用受け板132は、前方に向けて下り傾斜となる平板状の傾斜面132aと、当該傾斜面132aの下端から鉛直方向下向きに延びる平板状の鉛直面132bを含む屈曲部を有する金属板である。これらの鉛直面131b,132bは互いに平行であり、前後方向に対向している。
【0060】
受け板130は、前後二つの傾斜面131a,132aによって溶融フィラメント群MFの厚み方向の端部を中央部側へ導くことにより、溶融フィラメント群MFの前後方向寸法を前後二つの鉛直面131b,132bの間隔にまで縮小させると同時に、平滑な表面を形成する。
【0061】
冷却水槽123は、冷却水Wを溜めておくための水槽である。冷却水槽123の内部には、前後一対のコンベア124と、複数の搬送ローラ125a~125hが配設されている。一対のコンベア124および複数の搬送ローラ125a~125hは、不図示の駆動モーターにより駆動される。受け板130によって平滑な表面が形成された溶融フィラメント群MFは、一対のコンベア124および複数の搬送ローラ125a~125hにより下流側へ搬送されながら、冷却水槽123の内部で冷却固化され、フィラメント3次元結合体3DFとなって冷却水槽123から排出される。
【0062】
得られたフィラメント3次元結合体3DFを乾燥させた後、疑似結晶化処理を行った後、所望のサイズに切断することにより、直径が0.5mm~3mmの複数のフィラメントからなるクッションが得られる。フィラメント3次元結合体3DFからなるクッションについて、空隙率が98%を超えると反発力が低くなり過ぎる傾向があり、逆に90%未満では通風性が低くなり過ぎる傾向があるので、空隙率としては90%以上かつ98%以下であることが好ましい。
【0063】
また、第2実施形態に係るクッション2Sに使用できるフィラメント3次元結合体は、上述した製造装置100において受け板の形態を変えたものを用いて製造され得る。以下、当該フィラメント3次元結合体(通風路21に相当するV字溝を設けたもの)を製造する際に用いられる受け板230について説明する。
【0064】
図7は、当該受け板230の概略的な斜視図である。第2実施形態のクッション2Sに使用できるフィラメント3次元結合体は、上述した受け板130の代わりに受け板230を適用した製造装置100を用いて製造され得る。なお、受け板230には冷却水供給装置が設けられるが、ここでの説明を容易とするため、冷却水供給装置の図示を省略している。
【0065】
受け板230は、平面形成用受け板231とV字溝形成用受け板232で構成される。平面形成用受け板231とV字溝形成用受け板232は前後一対の受け板230として設けられており、フィラメント3次元結合体3DFの厚みを規制すると同時に、これにV字溝を形成する役割を果たす。
【0066】
前後一対の受け板230は、ノズル部117の下方において、前後方向に所定の間隙を開けて設置されている。本実施形態では、平面形成用受け板231がV字溝形成用受け板232の前側に設けられているが、平面形成用受け板231をV字溝形成用受け板232の後側に設ける(すなわち、V字溝が形成される側を前後で逆にする)ようにしてもよい。
【0067】
平面形成用受け板231は、後方に向けて下り傾斜となる平板状の傾斜面231aと、当該傾斜面231aの下端から鉛直方向下向きに延びる平板状の鉛直面231bを含む屈曲部を有する金属板である。V字溝形成用受け板232は、前方に向けて下り傾斜となる平板状の傾斜面232aと、当該傾斜面232aの下端から鉛直方向下向きに延びる平板状の鉛直面232bを含む屈曲部を有する金属板である。これらの鉛直面231b,232bは互いに平行であり、前後方向に対向している。
【0068】
V字溝形成用受け板232の鉛直面232bには、左右方向に所定の間隔を開けて、二つのV字突起233が設けられている。V字突起233は、ノズル部117から排出された溶融フィラメント群MFの経路に介在し、当該溶融フィラメント群を幅方向へ離間させることにより、溶融フィラメントMFの進む方向に伸びたV字溝がフィラメント3次元結合体3DFに形成されるようにする。
【0069】
本実施形態では、左右のV字突起233それぞれは形状および寸法が同等であり、いずれも上方視による外縁はV字形状(第1構成部233aの断面形状と同等)となっている。なお、V字突起233の形状は、下向きの底面を有するとともに一側面が鉛直面232bと共通である三角柱状の第1構成部233aの上側に、一辺が稜線233b1である四面体状の第2構成部233bが連接した形状となっている。
【0070】
稜線233b1は、第1構成部233aの上面の頂点から斜め後上方へ伸びて鉛直面232bまで至る線分であり、上方視によりV字突起233を左右に二等分するように設けられている。第2構成部233bは、稜線233b1から第1構成部233aの左側側面の上辺へ繋がる平面と、稜線233b1から第1構成部233aの右側側面の上辺へ繋がる平面を有している。
【0071】
受け板230は、前後二つの傾斜面231a,232aによって溶融フィラメント群MFの厚み方向の端部を中央部側へ導くことにより、溶融フィラメント群MFの前後方向寸法を前後二つの鉛直面231b,232bの間隔にまで縮小させる。またこれと同時に、受け板230は、二つのV字突起233によって溶融フィラメント群MFの一方の面(後側の面)にV字溝を形成する。
【0072】
より詳しく説明すると、二つのV字突起233はノズル部117から排出されて鉛直下方へ進む溶融フィラメント群MFの経路に介在するため、溶融フィラメント群MFにおけるV字突起233と干渉する箇所にはV字突起233の上方視形状に応じた溝、すなわち、V字溝が形成されることになる。なお、V字突起233は稜線233b1を有するため、上側からV字突起233へ向けて進む溶融フィラメントMFを、稜線233b1で分断して左右方向(溶融フィラメントMFの幅方向)へ円滑に離間させることができる。このようにして形成されたV字溝は、先述した通風路21として利用可能である。
【0073】
5.性能評価
本発明の実施例として実施例1~3それぞれのマットレスを得た上で、これらの実施例に係るマットレスについて、比較例との比較による性能評価を実施した。以下、各実施例と比較例の形態、および評価方法と評価結果についてより詳細に説明する。
【0074】
(1)実施例1の形態
クッション原料として、密度0.91g/cm2、融点が100℃のポリエチレン材料を使用し、
図5および
図6に示すフィラメント3次元結合体の製造装置100を用いて、長手方向長さ200cm、幅方向長さ100cm、厚さ12cm、および空隙率95%のフィラメント3次元結合体からなるクッションA1(クッション2の一例)を製造した。また、マットレスカバー3の袋状生地として、上面生地3aの通気度が20cm
3/cm
2・sであり、底面生地3bおよび側面生地bcの通気度が0.5cm
3/cm
2・sである袋状生地B1を作成した。
【0075】
なお、袋状生地B1の上面生地と側面生地の境目にファスナーを設け、上面生地と側面生地を接合している。また、マットレスカバー3の長手方向一端の側面生地3cに、換気装置7と接続可能な換気口32を2か所設けた。
【0076】
マットレスカバー3の保温層31として、2枚のポリエステル生地(表地と裏地)の間に、アクリレート系繊維(単糸繊度が3.6dtex、20℃かつ湿度65%RHにおける水分率が41%)300gと、ポリエステル繊維(単糸繊度が4dtex)700gを混合させた混合わた繊維1000gを挟み込んだ状態で刺縫いすることにより、長手方向長さ200cmかつ幅方向長さ100cmのキルトC1を作成し、キルトC1の外縁部を袋状生地B1の上面生地の内側に縫い合わせることによって、マットレスカバーD1(マットレスカバー3の一例)を作成した。
【0077】
得られたマットレスカバーD1においては、上面部における通気度が18cm3/cm2・sであり、底面部および側面部における通気度が0.5cm3/cm2・sであった。マットレスカバーD1内にクッションA1を封入し、実施例1のマットレスE1を得た。
【0078】
(2)実施例2の形態
マットレスカバー3の袋状生地として、上面生地3aの第1エリアの通気度が50cm3/cm2・sであり、第2エリアおよび第3エリアの通気度が20cm3/cm2・sであり、底面生地3bおよび側面生地3cの通気度が0.5cm3/cm2・sである袋状生地B2を用いた点を除いて、実施例1と同じ方法で実施例2のマットレスE2を作成した。
【0079】
得られたマットレスカバー3においては、上面部の第1エリアに対応する領域の通気度が40cm3/cm2・sであり、上面部の第2エリアおよび第3エリアに対応する領域の通気度が18cm3/cm2・sであり、底面部および側面部における通気度が0.5cm3/cm2・sであった。
【0080】
(3)実施例3の形態
マットレスカバーの袋状生地として、上面生地3aの第1エリアの通気度が50cm3/cm2・sであり、第2エリアの通気度が30cm3/cm2・sであり、第3エリアの通気度が2cm3/cm2・sであり、底面生地3bおよび側面生地3cの通気度が0.5cm3/cm2・sである袋状生地B3を用いた点を除いて、実施例1と同じ方法で実施例3のマットレスE3を作成した。
【0081】
得られたマットレスカバー3においては、上面部の第1エリアに対応する領域の通気度が40cm3/cm2・sであり、上面部の第2エリアに対応する領域の通気度が26cm3/cm2・sであり、上面部の第3エリアに対応する領域の通気度が1.8cm3/cm2・sであり、底面部および側面部における通気度が0.5cm3/cm2・sであった。
【0082】
(4)比較例の形態
クッションA1の代わりに、長手方向長さが200cmであり、幅方向長さが100cmであり、厚さが12cmであるウレタンクッションを用いた点を除いて、実施例1と同じ方法で比較例のマットレスE4を作成した。
【0083】
(5)評価方法
実施例1~3および比較例の各マットレスを用いて、入眠後30分と5時間後のマットレス内の温湿度を測定した。測定時の睡眠環境として、マットレスカバー3の側面生地に設けた2か所の換気口32に換気装置7を接続し、風量100ml/sで、マットレス内の空気を換気装置7で吸引した。また掛布団として、前後方向長さが2m、左右方向長さが1mの袋状のポリエステル生地内部に、保温材としてポリエステル繊維わた1kgを封入したものを使用した。
【0084】
なお、比較例のマットレスE4においては、換気装置7を接続してもマットレス内の空気の換気ができなかったため、当該換気を行わずにマットレス内の温湿度を測定した。マットレス内の温湿度の測定は、マットレス上で仰臥位をとる使用者の背中の位置に対応するマットレスカバーの保温層31内に、10cm間隔で5個の温湿度センサを貼り付けて入眠後の温湿度を測定した。また、これらの温湿度センサにより測定された温湿度データの中で最も高い値のものを、測定値として採用した。なお今回の評価は、室温23℃かつ湿度45%RHの環境下で行った。
【0085】
またジメジメ感(人が感じる湿気の度合)の判定は、入眠から8時間後の起床時にマットレスを触った際、湿気を感じるか否かで判定した。湿気を感じなかった場合を「良い」、湿気を若干感じた場合を「やや良い」、湿気を感じた場合を「悪い」とした。
【0086】
(6)評価結果
以上の評価方法によって性能評価を行った結果を、下記の表1に示す。
【表1】
表1に示すように、比較例のマットレスにおいては湿度が過度に高まってしまい、ジメジメ感により使い心地が悪いという結果が得られた。一方、各実施例(実施例1~3)のマットレスにおいては湿度が過度に高まるのを防ぐことができ、マットレスのジメジメ感が抑えられて使い心地が良いという結果が得られた。なお各実施例どうしで比較すると、実施例1に比べて実施例2の方が湿度は低くなり、更に実施例2に比べて実施例3の方が湿度は低くなるという結果が得られた。
【0087】
6.その他
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の構成は上記実施形態に限られず、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、マットレスカバー、マットレス、およびこれを用いた換気装置付ベッドに利用可能である。
【符号の説明】
【0089】
1、1S マットレス
2、2S クッション
2a 上面
2b 底面
21 通風路
3 マットレスカバー
3a 上面生地
3b 下面生地
3c 側面生地
31 保温層
32 換気口
32a 開口部
6 寝台
7 換気装置
7a 送風管
7b 開口部
8 枕
10 換気装置付ベッド
100 フィラメント3次元結合体の製造装置