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特許7166918軸対称部品内に構造的勾配を有する微細構造を生成する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】軸対称部品内に構造的勾配を有する微細構造を生成する装置
(51)【国際特許分類】
   C21D 1/42 20060101AFI20221031BHJP
   C21D 9/00 20060101ALI20221031BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20221031BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20221031BHJP
   F01D 5/06 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
C21D1/42 J
C21D9/00 N
F01D25/00 X
F02C7/00 D
F01D5/06
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018522979
(86)(22)【出願日】2016-11-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-01-10
(86)【国際出願番号】 FR2016052859
(87)【国際公開番号】W WO2017077248
(87)【国際公開日】2017-05-11
【審査請求日】2019-10-09
(31)【優先権主張番号】1560653
(32)【優先日】2015-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】306047664
【氏名又は名称】サフラン
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フランシェ,ジャン-ミシェル・パトリック・モーリス
(72)【発明者】
【氏名】クラン,ジル・シャルル・カジミール
【審査官】櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0252151(US,A1)
【文献】特開2002-235112(JP,A)
【文献】特表2010-535940(JP,A)
【文献】特開2001-059118(JP,A)
【文献】国際公開第2005/073515(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102643958(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 9/00-9/44
C21D 1/02-1/84
F01D 1/00-15/12
F01D 23/00-25/36
F02C 1/00-9/58
F23R 3/00-7/00
H05B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空中心を有し且つ初期に微細粒子を有する均一構造を有する軸対称機械的部品(P)内に構造的勾配を有する微細構造を生成する装置(1)にして、機械的部品(P)を受けるための第1のシェルを画定し且つ機械的部品(P)の外周(E)をソルバス温度よりも高い第1の温度(T)に加熱するのに適した第1の加熱手段(2)を備える、装置(1)であって、第1のシェルの内部に配置された第2のシェルを画定し且つ前記機械的部品(P)の内周(I)をソルバス温度よりも低い第2の温度(T)に加熱するのに適した第2の加熱手段(3)を備え、第1のシェルと第2のシェルとの間の空間が中空中心を有する軸対称機械的部品(P)を受けるのに適したハウジング(L)を画定する装置(1)であって、
構造的勾配は、微細粒子構造と粗粒子構造との勾配であり、
装置(1)は、環状の機械的部品(P)の各底面(9)及び上面(10)に対してそれぞれ配置された2つの断熱材(7、8)を有し、機械的部品は、Inconel(登録商標)718(商標)タイプの合金、AD370(商標)もしくはRene65(商標)タイプの合金、またはN19(商標)タイプの合金でできていることを特徴とする、装置。
【請求項2】
第1の温度設定点を第1の加熱手段(2)に送達し、第2の温度設定点を第2の加熱手段(3)に送達するように構成された制御ユニット(4)であって、構造的勾配を有する微細構造の生成における加熱および/または冷却段階中に第1の加熱手段(2)および第2の加熱手段(3)が同時に動作するように、第1および第2の温度設定点の送達を調整するのに適した同期モジュール(6)を含む制御ユニット(4)を含む、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
制御ユニット(4)が、機械的部品における微細粒子構造と粗粒子構造との間の中間領域(ZT)の位置に応じて第1の温度設定点の値および第2の温度設定点の値を決定するように第1の加熱手段(2)と第2の加熱手段(3)との間の加熱温度差を制御する制御モジュール(5)を含む、請求項2に記載の装置(1)。
【請求項4】
第1の加熱手段(2)が、第1の誘導コイルを備え、第2の加熱手段(3)が、第2の誘導コイルを備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項5】
制御ユニット(4)が、第1の誘導コイルおよび第2の誘導コイルにそれぞれ電力供給する電力の周波数を制御するモジュールを含む、請求項2に従属する請求項4または請求項3に従属する請求項4に記載の装置(1)。
【請求項6】
中空中心を有する軸対称機械的部品(P)内に構造的勾配を有する微細構造を生成する方法にして、初期に微細粒子を有する均一構造を有する機械的部品(P)に熱処理を施すことを備え、熱処理が、機械的部品(P)の外周(E)をソルバス温度よりも高い第1の温度(T)に加熱する第1の加熱動作を備える、方法であって、熱処理が、さらに、機械的部品(P)の内周(I)をソルバス温度よりも低い第2の温度(T)に加熱する第2の加熱動作を備える方法であって、
構造的勾配は、微細粒子構造と粗粒子構造との勾配であり、
方法はさらに、機械的部品(P)の外周(E)を加熱するために第1の温度設定点を送達することと、機械的部品(P)の内周(I)を加熱するために第2の温度設定点を送達することとを備え、第1および第2の加熱動作が、構造的勾配を有する微細構造の生成における加熱および/または冷却段階中に同時に行われるように、第1および第2の温度設定点の前記送達が同期されることを特徴とする、方法。
【請求項7】
第1および第2の加熱動作の間の温度差を制御することを含み、第1および第2の温度設定点の値が、部品内の粗粒子構造と微細粒子構造との間の中間領域(ZT)の位置に応じて決定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第1および第2の加熱動作が、それぞれ、別個の第1および第2の誘導コイル(2、3)に独立して電力供給することによって行われる、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
第1および第2の誘導コイル(2、3)に電力供給される各周波数を制御することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項6から9のいずれか一項に記載の方法によって生成された構造的勾配を有する微細構造を含むタービンディスクを製造する方法。
【請求項11】
請求項10に記載のタービンディスクを少なくとも1つ含むことを特徴とするタービンエンジンを製造する方法。
【請求項12】
請求項11に記載のタービンエンジンを少なくとも1つ含むことを特徴とする航空機を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的部品内に構造的勾配を有する微細構造を生成することに関し、より具体的には、中心が中空である軸対称部品を製造することに関する。
【背景技術】
【0002】
ACARE2020規格などの環境基準、また、航空機製造業者によって課される所有コスト、すなわち運転およびメンテナンスコストを削減するための要件は、性能が常に向上したターボジェット、具体的には規定の燃料消費率を大幅に削減したターボジェットを開発することをエンジン製造業者に要求している。
【0003】
この消費量の削減のための探索は、高温部品、具体的にはディスクの換気を低減することによってエンジンの効率を改善する必要性をもたらす。換気の低減の直接的な結果は、より良好な高温性能を有する材料の必要性である。
【0004】
材料の分野では、高耐熱性材料、粉末冶金技術など、高温性能を向上させるための多くの進歩が達成されている。
【0005】
それにもかかわらず、温度の改善は、非常に制限されており、材料の化学的組成は、それ自体が目標設定値を満足することができない。
【0006】
材料の制限を後退させる1つの方法は、部品の微細構造を、部品が受ける局所的な機械的応力に適合させることである。具体的には、部品において、考慮中の領域に依存して機械的応力が異なることがある。その結果、最適な微細構造は、考慮中の領域に応じて部品内で変化することがある。換言すれば、2つの微細構造を有するかまたは勾配を有する微細構造を有する単一部品を有することが望ましい。
【0007】
例えば、最大温度および機械的応力にさらされるターボジェットにおける部品の1つであるタービンディスクの場合、材料の性能は、最適化された均一な微細構造により、大抵の場合に矛盾する様々に異なる要求機械的性質間の最良の譲歩を達成する能力にある。
【0008】
タービンディスクを製造するための2つの微細構造または1つの微細構造的勾配の使用は、その譲歩を回避するのを可能とする。中温度における牽引および疲労特性のためにディスクのボア内に微細粒子構造を、ならびに高温クリープおよび亀裂に関する良好な性質を有するために同じディスクのリムに粗粒子構造を有することが必要である。
【0009】
用語「微細粒子」構造は、粒子がγ’またはδ相によってブロックされた構造を意味するために使用される一方で、用語「粗粒子」構造は、粒子がそれらの相によってブロックされていない構造を意味するために使用される。
【0010】
一般に、構造における粒子のサイズは、ASTM規格にしたがって与えられ、1ASTMは、225マイクロメートル(μm)の粒子サイズ、すなわち粗粒子に相当し、10ASTMは、10μmの粒子サイズ、すなわち微細粒子に相当する。
【0011】
一般に、いかなる種類の合金についても、そのサイズが9ASTMよりも大きい場合には、粒子のサイズは「微細」粒子に相当すると考えられる。
【0012】
合金の種類に応じて、粒子が粗いとみなすことができる粒子のサイズは変わる可能性がある。一般に、粒子サイズは、7ASTMよりも小さくすべきである。これは、特に粉末冶金(N18、N19)によって調製された合金に適用される。AD730、R65、およびU720タイプの従来の合金の場合、そのサイズが4ASTMよりも小さい場合には、粗粒子とみなされ、Inco718については、到達温度に応じて、そのサイズが3ASTMから6ASTMの範囲内にある場合には、粒子は粗いとみなされる。
【0013】
ディスクタイプの部品において構造的勾配を達成するために知られている1つの手段は、それ自体が勾配を呈する熱処理を行うことである。
【0014】
温度勾配によるそのような熱処理の目的は、以下のような部品内の段階的な温度において固溶化処理を行うことである:
最高温度領域において、温度は、粒子境界をブロックする相の溶解温度よりも高く、ソルバス温度とも称される;
最低温度領域において、温度は、そのソルバス温度よりも低い。
【0015】
粒子境界は、多結晶構造内の同種の結晶間の界面に対応する。ニッケル基合金の場合、問題となる相は、γ’またはδ相である。それゆえに、熱処理中の温度がγ’またはδ相のソルバス温度を超える領域においては、粒子は、クリープおよび亀裂特性にとって好ましい構造を形成するように成長するのに対して、温度が熱処理中にソルバス温度以下にとどまる領域においては、構造は、一般に比較的微細で牽引および疲労特性にとって好ましい鍛造から生じるその粒子サイズを保持する。
【0016】
その種の熱処理を行うために、2種類の熱処理方法が知られている。
【0017】
第1の方法において、ディスク全体がオーブンに入れられ、粒子を成長させるのに十分高い温度にされる。微細粒子構造を保持することが望まれる領域、すなわちソルバス温度以下の温度に維持されるべき領域は、文献、米国特許第5527020号明細書および米国特許第5312497号明細書に説明されているように空気を使用した局所冷却システムによってまたは文献、米国特許第6660110号明細書に説明されているように断熱材によって冷却される。これらのシステムは、セットアップするのが困難であり、部品の形状の機能として柔軟性がないという欠点を呈する。
【0018】
より具体的には、文献、米国特許第5312497号明細書において、ディスクの外側部分は、水冷誘導コイルによってそれ自体加熱された黒鉛サセプタによって加熱され、ディスクの内側部分は、圧縮空冷コイルによって冷却される。そのシステムは、カーボンサセプタが燃焼しないのを確実にするために真空中で動作する必要があるというさらなる欠点を呈する。
【0019】
第2の方法は、部品の外周領域における誘導によって局所的に加熱を行うことにある。文献、米国特許第4785147号明細書および米国特許第3741821号明細書に説明されているように、その方法は、熱処理によってギア歯を局所的に補強するために従来から使用されている。ターボジェットディスクに適用した場合、それは、誘導によって部品の外側を局所的に加熱する。高周波電磁場が部品を加熱するように部品に結合されるように、高周波電流が部品を囲む誘導コイルに印加される。そして、誘導によって加熱された外側と外気内の中央との間の部品に温度勾配が設定される。
【0020】
その技術は、ターボジェットディスクにおいて温度勾配を生成するために、それゆえにディスクのリムとボアとの間に異なる構造を生成するためにはるかに適している。
【0021】
それにもかかわらず、外周誘導コイルを用いたその方法において、勾配管理は困難であり、ほとんど制御を受けることができない。さらにまた、大きな温度勾配のために、その方法は、ディスク内に高レベルの熱機械的応力を発生させ、それは材料を破壊するのに十分に大きい可能性がある。
【0022】
さらにまた、誘導による局所加熱の技術は、加熱が停止されたときに表面において非常に速い冷却をもたらす。あいにく、急冷亀裂に敏感な特定の合金では、材料の亀裂をもたらす可能性がある。
【0023】
さらにまた、構造的勾配を有する微細構造を生成する際の他の主要な困難さは、温度、特に微細構造中の粒子成長をもたらすのに十分に高いが、大きすぎるサイズの粒子を有するのを回避するために、さらにはその後に材料の不可逆的劣化をもたらす材料の焼成温度に到達するのを回避するために高すぎない必要がある最高温度を管理することにある。
【0024】
したがって、ソルバス温度と焼成温度との差が小さい材料は、上述した公知の技術を使用して処理するのが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【文献】米国特許第5527020号明細書
【文献】米国特許第5312497号明細書
【文献】米国特許第6660110号明細書
【文献】米国特許第4785147号明細書
【文献】米国特許第3741821号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明は、空洞中心を有する軸対称機械的部品内に構造的勾配を有する微細構造を生成する装置を提案することにより、上述した欠点を軽減することを目的としており、その方法は、熱機械的応力を低減する処理のために機械的部品の領域における温度を調整するのを可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
この目的を達成するために、機械的部品を受けるための第1のシェルを画定し且つ機械的部品の外周をソルバス温度よりも高い第1の温度に加熱するのに適した第1の加熱手段を備える、中空中心を有し且つ初期に微細粒子を有する均一構造を有する軸対称機械的部品内に構造的勾配を有する微細構造を生成する装置が提供される。
【0028】
本発明の一般的な特徴によれば、装置は、第1のシェルの内部に配置された第2のシェルを画定し且つ前記機械的部品の内周をソルバス温度よりも低い第2の温度に加熱するのに適した第2の加熱手段を備え、第1のシェルと第2のシェルとの間の空間が中空中心を有する軸対称機械的部品を受けるのに適したハウジングを画定する。
【0029】
処理のために環状部品の内周に面して取り付けられた第2の加熱手段の存在は、処理のために機械部分の外周に取り付けられた第1の加熱手段と協働して、2つの別個の加熱手段を使用することによってディスクの外部および内部の双方を同時に加熱するのを可能とする。この機械的部品の2つの端部、具体的には環状である部品の2つの円形端部からの同時加熱は、第2の加熱手段によって内部から供給される熱エネルギを使用することによって熱流束を制御するのを可能とする。
【0030】
2つの加熱手段を有するこの構成は、必要に応じて、熱流束を逆転させるのをさらに可能とすることができる。
【0031】
この方式は、エンジンの中心軸を通過するための中空ボアを有し且つ2つのヒータ装置間に設けられたハウジング内に配置されることができるターボジェットディスクに特に適している。
【0032】
装置は、処理中、とりわけ前記温度を維持しながら、ディスクの領域間の制御された温度差を保証するのを可能とする。それは、部品の様々な領域において温度が調整され、とりわけ温度が維持されながら平衡状態を設定するのを可能とする。また、粗粒子構造と微細粒子構造との間の遷移領域の位置を制御するのも可能とする。そのような制御は、主として、2つの加熱手段に与えられる温度設定点の関数として、および処理される機械的部品の形状に応じて行われる。
【0033】
例えば、処理のために機械的部品の外部に配置された第1の加熱手段は、粒子が成長するのに十分高い温度、すなわちソルバス温度よりも高い温度にディスクの外部を局所的に加熱するのに役立つことができ、内部に配置された第2の加熱手段は、材料において粒子が成長するための温度よりも低い温度にディスクの内部を局所的に加熱するのに役立つことができる。2つの加熱手段を制御することは、微細構造的勾配をもたらす部品内の温度勾配を設定するのを可能とする。
【0034】
さらにまた、特に上述した米国特許第4785147号明細書および米国特許第3374821号明細書に使用される第2の方法に説明された原理とは異なり、2つの加熱手段を有する本発明の上述に規定された装置は、処理の開始時のように、ボアとリムとの間の温度差を調整することによって熱機械的応力を制限するのを可能とする。
【0035】
これは、亀裂発生のいかなる危険性も排除するという効果を有する。これは、冷却段階にも同様にあてはまる。具体的には、冷却中の温度勾配も同様に制御することによって急冷亀裂を回避するように、処理のために機械的部品の内部に配置された第2の加熱手段についての活性状態を維持することによって外面の冷却に対するより良好な制御を提供することができる。
【0036】
処理のための部品の第1の例は、Inco718またはAD730またはRene65タイプの従来の方法で調製されたまたはN18もしくはN19タイプの粉末冶金によって調製されたニッケル基合金からなる、約500ミリメートル(mm)の外径および約100mmから150mmの内径を有するタービンディスクに対応することができる。
【0037】
処理のための部品の第2の例は、800mmの外径および約650mmの内径を有し、Inco718タイプまたはWaspaloy、AD730、もしくはRene65タイプのニッケル基合金からなるラビリンスリングに対応することができる。
【0038】
構造的勾配を有する微細構造を生成する装置の第1の態様において、装置は、第1の温度設定点を第1の加熱手段に送達し、第2の温度設定点を第2の加熱手段に送達するように構成され、構造的勾配を有する微細構造の生成における加熱および/または冷却段階中に第1の加熱手段および第2の加熱手段が同時に動作するように、第1および第2の温度設定点の送達を調整するのに適した同期モジュールを含む制御ユニットを備える。
【0039】
加熱手段を同時に制御することは、処理のために機械的部品に課される熱機械的応力を連続的に制御するのを可能とし、特に処理のための部品の領域に加えられるいかなる過剰な温度も回避するのを可能とする。
【0040】
構造的勾配を有する微細構造を生成する装置の第2の態様において、制御ユニットは、機械的部品における微細粒子構造と粗粒子構造との間の中間領域にとって望ましい位置に応じて第1の温度設定点の値および第2の温度設定点の値を決定するように第1の加熱手段と第2の加熱手段との間の加熱温度差を制御する制御モジュールを含む。
【0041】
それゆえに、装置は、温度設定値を規定することによってではなく、単に粗粒子領域と微細粒子領域との間の中間領域についての正確な位置を規定することによって制御されることができ、制御ユニットは、中間領域を配置するためのこの設定点に基づいて、第1および第2の加熱手段に送達するための温度設定点を決定するのを可能とするマップを含む。
【0042】
構造的勾配を有する微細構造を生成する装置の第3の態様において、第1および第2の加熱手段は、それぞれ、第1および第2の別個の誘導コイルを備える。
【0043】
第1および第2の加熱手段としての第1および第2の誘導コイルの使用は、従来技術における主装置とは異なり、装置が外気中で動作するのを可能とする。
【0044】
さらに、加熱手段として誘導コイルを使用することは、電力に基づいて制御が簡素化されるのを可能とし、それらの設定点が第1および第2の誘導コイルに送られる前に、制御ユニットによって決定された温度設定値は、誘導コイルについての電力設定点に制御ユニットによって変換される。
【0045】
構造的勾配を有する微細構造を生成する装置の第4の態様において、制御ユニットは、第1の誘導コイルおよび第2の誘導コイルにそれぞれ電力供給する電力の周波数を制御するモジュールを含む。
【0046】
第1および第2の誘導コイルに対する電力の周波数を制御することは、機械的部品内の遷移領域を制御するのに役立つ。
【0047】
この種の用途において、使用される誘導周波数は、大きな表皮厚さによって誘導ループ状態にするために、5キロヘルツ(kHz)から30kHzの範囲内にある。誘導ループについての「大きな表皮厚さ」は、その体積内で溶融または加熱を行うために、加熱のために部品のコアに貫入する誘導ループを意味する。この意味において、小さな表皮厚さの誘導ループは、部品の表面に向けられた誘導ループに対応し、エンボス加工、浮上、成形、加熱中に推奨される。
【0048】
この周波数範囲は、表面よりもむしろ深さ方向において好ましい方法で部品を加熱するという効果を有する。
【0049】
適応周波数平衡は、5kHから30kHzの範囲で動作するように確立されるが、特定の周波数は、部品の形状と組み合わせて、その直径および巻数に関する誘導コイルの整合ユニットの結果である。整合ユニットおよび誘導コイルから構成された所定のアセンブリに配置された異なる形状の2つの部品は、異なる周波数平衡を提供するが、5kHzから30kHzの範囲内にある。
【0050】
本発明はまた、初期に微細粒子を有する均一構造を有する機械的部品に熱処理を施すことを備え、熱処理が、機械的部品の外周をソルバス温度よりも高い第1の温度に加熱する第1の加熱動作を備える、中空中心を有する軸対称機械的部品内に構造的勾配を有する微細構造を生成する方法を提供する。
【0051】
本発明の一般的な特徴によれば、熱処理は、さらに、機械的部品の内周をソルバス温度よりも低い第2の温度に加熱する第2の加熱動作を備える。
【0052】
構造的勾配を有する微細構造を生成する方法の第1の態様において、方法は、機械的部品の外周を加熱するために第1の温度設定点を送達することと、機械的部品の内周を加熱するために第2の温度設定点を送達することとを備え、第1および第2の加熱動作が、構造的勾配を有する微細構造の生成における加熱および/または冷却段階中に同時に行われるように、第1および第2の設定点の前記送達が同期される。
【0053】
構造的勾配を有する微細構造を生成する方法の第2の態様において、方法は、第1および第2の加熱動作の間の温度差を制御することを含み、第1および第2の温度設定点の値が、部品内の粗粒子構造と微細粒子構造との間の中間領域にとって望ましい位置に応じて決定される。
【0054】
構造的勾配を有する微細構造を生成する方法の第3の態様において、第1および第2の加熱動作は、それぞれ、別個の第1および第2の誘導コイルに独立して電力供給することによって行われる。
【0055】
構造的勾配を有する微細構造を生成する方法の第4の態様において、方法は、第1および第2の誘導コイルに電力供給される各周波数を制御することを含む。
【0056】
本発明はまた、上述に規定された方法によって生成された構造的勾配を有する微細構造の少なくとも一部を含むタービンディスクを提供する。
【0057】
本発明はまた、上述に規定された少なくとも1つのタービンディスクを含むタービンエンジンを提供する。
【0058】
本発明はまた、上述に規定された少なくとも1つのタービンエンジンを含む航空機を提供する。
【0059】
本発明は、非限定的な表示によって与えられる以下の詳細な説明を読むことによって且つ添付図面を参照してより良好に理解されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1図1は、構造的勾配を有する微細構造を生成する本発明の装置の斜視図である。
図2図2は、図1の装置の概略断面図である。
図3図3は、図1の装置に配置される機械的部品内の温度分布のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1および図2は、それぞれ、構造的勾配を有する微細構造を生成する本発明の装置の斜視図および断面図である。
【0062】
双方の図は、構造的勾配を有する微細構造を生成する装置1内に配置された環状機械的部品P、例えばタービンディスクを示している。装置1による任意の熱処理の前に、機械的部品Pは、微細粒子を有する均一な構造を有する。
【0063】
装置1は、第1のヒータ誘導コイル2と、第2のヒータ誘導コイル3とを有する。より良好に視覚的に理解するために、機械的部品Pならびに第1および第2のヒータ誘導コイル2および3は、図1において部分的にのみ示されている。
【0064】
図1および図2に示される実施形態において、第1のヒータ誘導コイル2は、環状機械的部品Pの外径よりも大きい半径の4つの巻き21、22、23および24を有する。第1のヒータ誘導コイル2は、機械的部品Pの外周Eをソルバス温度よりも高い、すなわち結晶粒子境界をブロックする相の溶解温度よりも高い第1の温度Tに加熱するように構成されている。
【0065】
第2のヒータ誘導コイル3は、環状機械的部品Pの内径よりも小さい半径の2つの巻き31および32から構成されている。第2のヒータ誘導コイル3は、前記機械的部品Pの内周Iをソルバス温度よりも低い第2の温度Tに加熱するように構成されている。
【0066】
本明細書を通して、用語「内側」および「外側」は、機械的部品Pならびに第1および第2の誘導コイル2および3の巻き21乃至24ならびに31および32の対称軸Xに対して使用される。
【0067】
第1のヒータ誘導コイル2は、その中に第2のヒータ誘導コイル3によって形成される第2の閉じたシェルが配置された第1の閉じたシェルを形成する。それゆえに、2つのヒータ誘導コイル2および3によって形成される2つのシェルは、2つのシェルの間に延在する環状ハウジングLを画定する。ハウジングLは、環状機械的部品Pを受けるように成形されている。
【0068】
ヒータ誘導コイルを使用することにより、装置1は、外気中で動作することができ、機械的部品Pが配置される必要がある真空構造内に配置される必要はない。
【0069】
装置1はまた、第1のヒータ誘導コイル2および第2のヒータ誘導コイル3が電気的に接続された制御ユニット4を有する。制御ユニット4は、必要に応じて2つの別個の温度設定点が2つのヒータ誘導コイル3および4のために入力されるのを可能とするかまたは実際に中間領域の位置を入力する入力手段(図示しない)を有する。中間領域の位置は、装置1による処理後に機械的部品P内の微細粒子と粗粒子との間の遷移領域の位置を規定するのに役立つ。
【0070】
制御ユニット4は、入力手段を使用して入力された情報に応答し、第1のヒータ誘導コイル2についての第1の温度設定点および第2のヒータ誘導コイル3についての第2の温度設定点を送出するように構成されている。
【0071】
機械的部品P内の温度分布のグラフ表示である図3に示すように、第1の温度設定点および第2の温度設定点は、ニッケル基合金からなる機械的部品Pについて、機械的部品の外側部分Eが、温度T、例えば、Inco718タイプの合金については約1040℃から1060℃、AD730またはRene65タイプの合金については約1120℃から1140℃、または粉末冶金製のN19合金については約1160℃から1180℃の温度であるように選択され、ニッケル基合金からなる機械的部品Pについて、機械的部品Pの内側部分Iが、第2の温度T、例えば、Inco718合金については約980℃から1000℃、またはAD730もしくはRene65タイプの合金については約1060℃から1080℃、または粉末冶金製のN19タイプの合金については約1110℃から1130℃であるように選択される。微細粒子領域と粗粒子領域との間の中間領域ZTは、5mmから50mmの範囲内の長さからなることができる
【0072】
制御ユニット4は、第1のヒータ誘導コイルと第2のヒータ誘導コイルとの間の加熱温度差を制御する制御モジュール5を有し、このモジュールは、粗粒子構造と微細粒子構造との間の中間領域について機械的部品において望ましい位置に応じて第1の温度設定値および第2の温度設定値についての値を決定するように構成されている。
【0073】
制御ユニット4はまた、第1のヒータ誘導コイル2および第2のヒータ誘導コイル3が構造的勾配を有する微細構造を生成する際の加熱および/または冷却段階中に同時に動作するように、制御ユニット4によって決定された第1および第2の温度設定点の送達を調整するように構成された同期モジュール6を有する。
【0074】
制御ユニット4の同期手段6によって2つのヒータ誘導コイル2および3を調整することは、ディスクの外側および内側の双方を同時に加熱するのを可能としつつ、機械的部品Pの様々な領域が加熱される温度を常に制御する。さらにまた、外側および内側の双方から部品を加熱することにより、2つの誘導コイル2および3によって機械的部品Pに加えられる温度は、機械的部品Pによって許容可能な最高温度よりも低く維持することができ、それにより、機械的部品の内側領域もまた、第2のヒータ誘導コイル3からの熱エネルギを受けることから、部品Pが燃焼するいかなる危険性も回避する。
【0075】
それゆえに、処理中、とりわけ温度を維持しながら、ヒータ誘導コイル2および3は、機械的部品Pの領域間において制御された温度差を維持する。
【0076】
具体的には、冷却段階中において、制御ユニット4は、同じ温度差を常に維持するように第1および第2の誘導コイル2および3に加えられる温度設定値を調整することによって温度降下を制御する。
【0077】
装置1を使用する処理方法は、15分(min)から2時間(h)の範囲の持続時間を占めることができる。
【0078】
さらに、図1および図2に示される実施形態において、装置1は、環状機械的部品Pの各底面9または上面10に対してそれぞれ配置された2つの断熱材7および8を有する。第1の断熱材7は、外周Eから内周Iおよび第2の誘導コイル3まで延在する機械的部品Pの底面9の全体を被覆するように、機械的部品Pの底面9に配置されている。逆に、第2の断熱材8は、内周Iから外周Eおよび第2の誘導コイル3まで延在する機械的部品Pの上面10の全体を被覆するように、機械的部品Pの上面10に配置されている。
【0079】
これらの断熱材は、部品に沿った熱損失が2つの誘導コイル2および3による加熱の有効性を低下させる可能性があるほどに、第1および第2の誘導コイル2および3の間の距離が非常に大きい非常に大きな寸法の機械的部品Pにとって特に有用である。
【0080】
それゆえに、本発明は、処理のための機械的部品の領域において温度が調整されるのを可能とするとともに部品が受ける熱機械的応力も低減する、中空中心を有する軸対称機械的部品内に構造的勾配を有する微細構造を生成する装置を提供する。
図1
図2
図3