(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】予防用品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/02 20060101AFI20221031BHJP
C08L 13/02 20060101ALI20221031BHJP
C08L 83/08 20060101ALI20221031BHJP
A41D 19/00 20060101ALI20221031BHJP
A41D 19/015 20060101ALI20221031BHJP
A41D 19/04 20060101ALI20221031BHJP
C08G 77/14 20060101ALN20221031BHJP
C08G 77/20 20060101ALN20221031BHJP
C08G 77/28 20060101ALN20221031BHJP
【FI】
C08J5/02 CEQ
C08L13/02
C08L83/08
A41D19/00 P
A41D19/015 210A
A41D19/04 B
C08G77/14
C08G77/20
C08G77/28
(21)【出願番号】P 2018546527
(86)(22)【出願日】2017-03-02
(86)【国際出願番号】 AT2017060053
(87)【国際公開番号】W WO2017147639
(87)【国際公開日】2017-09-08
【審査請求日】2020-01-10
(32)【優先日】2016-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】505437206
【氏名又は名称】センペリット アクチェンゲゼルシャフト ホールディング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】アルミン ホルツナー
(72)【発明者】
【氏名】ボルフガング ケルン
(72)【発明者】
【氏名】ヤーコプ コルネリウス マンハルト
(72)【発明者】
【氏名】メラハト サヒン
(72)【発明者】
【氏名】ライムント シャラー
(72)【発明者】
【氏名】サンドラ シュレーグル
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/013666(WO,A1)
【文献】特表2013-508528(JP,A)
【文献】特開2005-002259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02、5/12-5/22
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
A41D 19/00-19/04
C08G 77/00-77/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層のジエンのラテックス及び/又はカルボキシル化ジエンのラテックスがフォーマー上に適用され、前記ジエンのラテックス及び/又はカルボキシル化ジエンのラテックスが架橋剤により架橋される、ジエンゴム及び/又はカルボキシル化ジエンゴムから予防用品を製造する方法であって、
前記架橋剤として多官能性モノマー及び/又はポリマーが使用され、前記架橋剤が、ジエンのラテックス及び/又はカルボキシル化ジエンのラテックスに加えられ、前記ジエンのラテックス及び/又はカルボキシル化ジエンのラテックス中に溶解されるか、あるいは、前記ジエンのラテックス及び/又はカルボキシル化ジエンのラテックス中に乳化又は分散され
ること、
前記架橋剤が、多官能性エポキシド、多官能性シラン、多官能性シロキサン、多官能性ポリマーチオール、及びそれらの混合物からなる群から選択されること、及び/又はメルカプト官能性シロキサンポリマーが架橋剤として使用されること
、及び
170g/mol~4000g/molのモル質量を有する有機モノマー及び/又はポリマーが前記架橋剤として使用されること、
を特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記多官能性モノマー及び/又はポリマーのみが架橋剤として使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ジエンのラテックス及び/又はカルボキシル化ジエンのラテックスの分子の前記架橋が、熱的に、及び/又は、紫外線により光化学的に達成されることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ジエンのラテックス及び/又はカルボキシル化ジエンのラテックスのpHが9以上の値に調整されることを特徴とする、請求項1
~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記メルカプト官能性シロキサンポリマーがエマルションとして前記ジエンのラテックス及び/又はカルボキシル化ジエンのラテックスに加えられることを特徴とする、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記メルカプト官能性シロキサンポリマーを使用する実施形態では、メルカプト官能性シロキサンホモポリマー、又は、メルカプト官能性シロキサンホモポリマーとアクリルシロキサンとのコポリマーが、前記メルカプト官能性シロキサンポリマーとして使用されることを特徴とする、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
構造式:
【化1】
(式中、R1は、-CH
3、-OH、-C
2H
5、-C
3H
7及び芳香族基からなる第1の群から選択された第1の単位を表し、R2は、-CH
2、C
2H
4、C
3H
6、-(CH
2)
11-、芳香族基及び-CH
2-芳香族からなる第2の群から選択された第2の単位を表す。)
を有するメルカプト官能性シロキサンホモポリマーが使用されることを特徴とする、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
構造式:
【化2】
(式中、R1は、-CH
3、-OH、-C
2H
5、-C
3H
7及び芳香族基からなる第1の群から選択された第1の単位を表し、R2は、-CH
2、C
2H
4、C
3H
6、-(CH
2)
11-、芳香族基及び-CH
2-芳香族からなる第2の群から選択された第2の単位を表し、R3は、アルキル基、-CH
2-芳香族、芳香族基、アルケン基、メタクリロキシプロピル-、アクリロキシプロピル-、及びエポキシ基からなる第3の群から選択された第3の単位を表す。)
を有するメルカプト官能性シロキサンコポリマーが使用されることを特徴とする、請求項
6に記載の方法。
【請求項9】
構造式:
【化3】
(式中、R1は、-OH、-CH
3、-C
2H
5、-C
3H
7及び芳香族基からなる第1の群から選択された第1の単位を表し、R2は、-CH
2、C
2H
4、C
3H
6及び芳香族基からなる第2の群から選択された第2の単位を表し)
を有するアルコキシアクリルシランが使用されることを特徴とする、請求項
6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記メルカプト官能性シロキサンホモポリマーが、ポリ(メルカプトプロピル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルプロピル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルメチル)シロキサン、ポリ(メルカプトエチルメチル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルエチル)シロキサン、ポリ(メルカプトプロピルメチル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルベンジル)シロキサン、ポリ(メルカプトプロピルベンジル)シロキサン、及びポリ(メルカプトエチルベンジル)シロキサンからなる群から選択されること、及び/又は、前記メルカプト官能性シロキサンホモポリマーとアクリルシロキサンとのコポリマーが、ポリ(メルカプトプロピルメチル-co-アクリロキシプロピルメチル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルメチル-co-アクリロキシメチルプロピル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルメチル-co-アクリロキシプロピルメチル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルメチル-co-アクリロキシプロピルエチル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルメチル-co-アクリロキシエチルプロピル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルメチル-co-アクリロキシメチルメチル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルメチル-co-アクリロキシプロピル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルメチル-co-アクリロキシエチル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルメチル-co-アクリロキシメチル)シロキサン、及びポリ(メルカプトプロピルメチル-co-アクリロキシメチルプロピル)シロキサンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項
6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記メルカプト官能性シロキサンポリマーとアクリルシロキサンとのコポリマーにおけるメルカプト官能性シロキサンポリマーの割合が少なくとも20質量%であることを特徴とする、請求項
6~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記架橋剤が、前記ジエンのラテックス及び/又はカルボキシル化ジエンのラテックスの全組成に対して1phr~10phrの割合で前記ジエンのラテックス及び/又はカルボキシル化ジエンのラテックスに加えられることを特徴とする、請求項1~
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記予防用品が手袋であることを特徴とする、請求項1~
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記メルカプト官能性シロキサンポリマーが統計的配置の繰返し単位を有するメルカプト官能性シロキサンコポリマーであることを特徴とする、請求項
8に記載の方法。
【請求項15】
ジエンエラストマー及び/又はカルボキシル化ジエンエラストマーのジエンエラストマー及び/又はカルボキシル化ジエンエラストマー分子鎖が少なくとも1種のポリマーを介して共有結合的に架橋されたジエンエラストマー及び/又はカルボキシル化ジエンエラストマーの層を含む予防用品であって、前記少なくとも1種のポリマーが
170g/mol~4000g/molのモル質量を有するメルカプト官能性シロキサンポリマーである、予防用品。
【請求項16】
前記予防用品が手袋である、請求項
15に記載の予防用品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(カルボキシル化)ジエンゴムから予防用品、特に手袋を製造する方法に関し、当該方法によれば、少なくとも1層の(カルボキシル化)ジエンラテックスがフォーマー上に適用され、(カルボキシル化)ジエンラテックスは架橋剤により架橋される。
【0002】
さらに、本発明は、(カルボキシル化)ジエンエラストマーの(カルボキシル化)ジエンエラストマー分子鎖が少なくとも1種のポリマーを介して共有結合的に架橋されている(カルボキシル化)ジエンエラストマー層を含む予防用品、特に手袋に関する。
【0003】
さらに、本発明は、多官能性モノマー及び/又はポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0004】
予防用品、特に外科手術用及び検査用手袋などは、通常、手形の浸漬フォーマーの浸漬によってエラストマーラテックスから製造される。浸漬フォーマー上でフィルムが形成され、このフィルムから、引き続いて、ラテックスの加硫又は架橋によって、完成した使い捨て手袋が得られる。
【0005】
天然ラテックスの予防用品は、比較的高いアレルギー可能性を有する。この理由から、予防用品の製造には、合成ラテックスがますます使用されている。しかし、これらは、製造プロセスに由来するアレルゲン、例えば、スリップ能を改善するための粉末、又は、例えば架橋剤又は架橋促進剤などの化学物質など、依然としてアレルゲンを含んでいる可能性があるため、完全に低アレルギー性ではない。
【0006】
これらの問題に対処するために、アレルギーの可能性の低い予防用品の製造方法が先行技術において既に提案されている。
【0007】
例えば、国際公開第2011/068394 A1号には、メタクリル酸及びZnOがカルボキシル化ニトリルブタジエンに添加される方法が記載されている。これにより、自己架橋特性がこの混合物に付与され、硫黄架橋剤及び促進剤なしで済ますことが可能である。しかし、従来どおり、この組成物は依然として重金属Znを含有しており、そのため、ある種のアレルギーの可能性が残っている。
【0008】
これと同様に、米国特許出願公開第2010/0152365 A1号には、浸漬法による手袋の製造のためのカルボキシル化ニトリルブタジエンコポリマーの使用が記載されている。またもや、ZnOがイオン架橋のために使用される。
【0009】
天然ゴム手袋のアレルギーの可能性を低減するために、天然ゴム手袋の表面を改質することがさらに知られている。例えば本出願人による米国特許出願公開第2014/0096307 A1号には、少なくとも1種のチオールとの光化学反応によって少なくとも部分的に表面領域で飽和状態になる不飽和炭素-炭素結合によりエラストマーの表面を修飾する方法が記載されている。手袋の表面に共有結合する固体粒子を、飽和のために使用することができる。
【0010】
これと同様に、本出願人に帰属される米国特許出願公開第2014/0096308 A1号には、とりわけ、エポキシ基を介して天然ゴム手袋へのゼオライト粒子の結合が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の根底にある課題は、改善された予防用品を生み出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
序文に記載した方法では、多官能性モノマー及び/又はポリマーが架橋剤として使用され、多官能性モノマー及び/又はポリマーが(カルボキシル化)ジエンラテックスに加えられ、その中に溶解されるか、あるいは、その中に乳化又は分散されることによって上記課題が達成される。
【0013】
さらに、上記課題は、少なくとも1種のポリマーがメルカプト官能性シロキサンポリマーである序文に記載した予防用品によって達成される。
【0014】
本発明の課題は、(カルボキシル化)ジエンエラストマーを含む予防用品のモジュラスの調整のための、2~50のモノマー単位数(170g/mol~4000g/molのモル質量)を有する多官能性ポリマーの使用によっても達成される。
【0015】
さらに、本発明の課題は、予防用品の製造のために架橋剤として多官能性有機化合物を使用することによって達成される。ここで、当該多官能性有機化合物は、170g/mol~4000g/molのモル質量と、塩基触媒下でヒドロキシ基を形成する少なくとも2つの官能基とを有する。
【0016】
これに関連して、エラストマー分子との架橋剤の化学反応のために、架橋されるエラストマー中に架橋剤がより良好に組み込まれるという点で有利である。これにより、架橋剤をエラストマーから全く抽出することができないか、又は、エラストマーから抽出するのが困難であり、エラストマーから架橋剤は全く移行しない乃至は極めてゆっくりと移行する。これに関連して、「極めてゆっくり」は、移行時間が予防用品の使用期間よりも非常に長いことを意味する。このように、架橋剤がヒトの皮膚と接触することが防止され、それによって予防用品のアレルギーの可能性を著しく低下させることができる。予防用品の貯蔵の間でさえ、予防用品からの架橋剤の移行を、防止する又は著しく減少させることができる。さらに、それによって、非結合プロセス化学物質の除去のための浸出プロセスを、短縮するか、又は省略することさえも可能である。架橋剤は、多官能性モノマー及び/又はポリマー、あるいはそれらの混合物であってもよい。この方法によると、非常に良好な機械的特性並びに高い耐老化性及び耐ガンマ線性を有する予防用品を製造することが可能である。製造プロセス、特に浸漬プロセス中の、膜形成に及ぼす影響すら証明されていないので、その点でのさらなる対策は必要ない。この方法の更なる利点は、(カルボキシル化)ジエンラテックスの予備架橋が必要でなく、連続的な混合方法を使用することができ、プロセスワークフローを加速できるという事実に見いだされる。この方法によると、低アレルギーの予防用品の、特に手術及び検査用手袋のエネルギー効率の良い、持続可能で生産効率の高い製造が可能である。架橋剤の水溶性のために、乳化剤はラテックス混合物へのその導入のために必要でないか、又は必ずしも必要でない。多官能性モノマー及び/又はポリマーは、可溶性モノマー及び/又はポリマーを事前分散又はエマルションなしにラテックス中に混合することができるので、取り扱いが容易であるという利点を有する。しかし、油溶性モノマー及び/又は油溶性ポリマーの場合には、エマルションの形態での混合が可能である。さらに、予防用品のモジュラスを、より良好に調整することもできる。
【0017】
本方法の好ましい変形実施形態によれば、多官能性モノマー及び/又はポリマーのみを架橋剤として使用してもよい。このようにすると、上に挙げた効果をさらに改善することができ、重金属イオン、例えば、ZnOに由来するZn2+をなくすことによって、アレルギーの可能性をさらに低減することができる(一例として、亜鉛は、カルボン酸、例えば酢酸などによりエラストマーから抽出することができる)。さらに、先行技術において時々報告されたような、別の架橋系の影響は生じ得ない。
【0018】
(カルボキシル化)ジエンラテックス分子の架橋は、熱的に達成することができる。したがって、ラテックス分子の架橋は、浸漬フォーマー上に浸漬塗布されたラテックスフィルムの乾燥の間に既に起こっていることができ、それによって、当該方法の効率の増加が達成される。
【0019】
さらに、(カルボキシル化)ジエンラテックス分子の架橋をUV光(紫外線)によって光化学的に行うことも可能である。これにより、エラストマーの耐老化性を改善することができる。エラストマー製品は、高エネルギー放射線に関して改善された安定性も示す。これは、特に、ガンマ線を用いた医療機器の滅菌に関して重要である。さらに、この方法により、IV型アレルギー誘発物質の使用もより簡単に回避することができる。
【0020】
好ましくは、(カルボキシル化)ジエンラテックスのpHは9以上の値に調整される。9以上のpH値で反応速度の明確な改善が観察され、それによって、分子の架橋がより迅速に起こることができる。
【0021】
架橋剤は、多官能性エポキシド、多官能性シラン、多官能性シロキサン、及び多官能性チオールからなる群から選択することができる。これに関連して、これらが、(i)ゴム鎖の架橋のために1つより多くのエポキシ官能基を有する場合に、有利である。好ましくは、多官能性エポキシドは、例えば、ジグリシジル末端ポリエチレングリコール誘導体、エポキシ-ソルビトール誘導体、糖アルコールの誘導体などのような、その加水分解生成物が「成長」特性を有するような構造を有する。さらに、例えば、エポキシ官能基を有する単糖類及び多糖類を使用することが可能である。
【0022】
カルボキシル化ジエンラテックスでは、エポキシドによる架橋は、カルボキシル基を介して共有結合ネットワーク部位が形成され、それによって非常に高い引裂強度がもたらされるのに対し、ブタジエン単位のC=C二重結合による共有結合架橋はその強度をほとんど改善しない。
【0023】
エポキシドのさらなる利点は、カルボキシル基との高い反応性(追加の促進剤又は開始剤が必要でない)であり、乾燥ステップ中に効率的な架橋をもたらす。
【0024】
多官能性チオールは、それらが、(i)高いモル質量(200g/mol~400g/molのモル質量)を有し;(ii)高いメルカプト当量を有し(モノマー単位の少なくとも20%、特に少なくとも50%がSH-基を有するべきである);(iii)単純な合成戦略によってアクセス可能である場合に、有利である。高い分子量に基づいて、臭気の問題により効果的に対処することさえできる。
【0025】
多官能性シラン及びシロキサンは、それらが、(i)1つより多くの反応性基を有する場合に、有利である(例えば、CoatOSil(登録商標)MP200は、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランよりも高い引裂強度をもたらす)。これに関連して、これらは、高いモル質量(例えば、最高4000g/モルまで)であっても依然として液体であり、それによって、ラテックス混合物中により容易に導入することができるという利点がさらにある。さらに、柔軟性のある骨格のために、シロキサンによって、モジュラスの過度に大きな増加を回避することができる。
【0026】
予防用品のモジュラスのより良好な調整のために、170g/mol~4000g/molのモル質量を有する有機モノマー及び/又はポリマーを使用してもよい。このようにして、予防用品の使用者にとってより良好な着用の快適性を達成することができる。
【0027】
すでに述べたように、架橋剤をエマルションとして(カルボキシル化)ジエンラテックスに加える可能性も存在する。これは、メルカプト官能性シロキサンポリマーを架橋剤として使用する場合に特に有利である。エマルション中の架橋剤の微細分布のために、より均一な予防用品をより簡単に得ることができる。
【0028】
一変形実施形態によれば、メルカプト官能性シロキサンホモポリマー、又は、メルカプト官能性シロキサンホモポリマーとアクリルシロキサンとのコポリマーを、メルカプト官能性シロキサンポリマーとして使用することができる。実施した試験の過程で、これらのポリマーは、架橋された予防用品の機械的性質について、低濃度で、既にポジティブであることが判明した。
【0029】
特に好ましくは、この方法の一変形実施形態によれば、構造式:
【0030】
【0031】
を有するメルカプト官能性シロキサンホモポリマーが使用される。ここで、R1は、-CH3、-OH、-C2H5、-C3H7及び芳香族基からなる第1の群から選択された第1の単位を表し、R2は、-CH2、C2H4、C3H6、-(CH2)11-、芳香族基及び-CH2-芳香族からなる第2の群から選択された第2の単位を表す。同様に、本方法の別の実施形態によれば、特に好ましくは、構造式:
【0032】
【0033】
を有するメルカプト官能性シロキサンコポリマー、特に、統計的配置の繰返し単位を有するメルカプト官能性シロキサンコポリマーが使用される。ここで、R1は、-CH3、-OH、-C2H5、-C3H7及び芳香族基からなる第1の群から選択された第1の単位を表し、R2は、-CH2、C2H4、C3H6、-(CH2)11-、芳香族基及び-CH2-芳香族からなる第2の群から選択された第2の単位を表し、R3は、アルキル基(-CH3、-C2H5、-C3H7など)、-CH2-芳香族、芳香族基、アルケン基(-CH=CH2、-CH2CH=CH2など)、メタクリロキシプロピル-、アクリロキシプロピル-、及びエポキシ基(エポキシシクロヘキシルエチル、グリシドキシプロピル)からなる第3の群から選択された第3の単位を表す。上記の効果は、これらのポリマーによってさらに改善することができる。
【0034】
下記の二量体を、メルカプト官能性シロキサンとして使用することもできる。
【0035】
【0036】
本発明に関連する研究の過程で、メルカプト官能性シロキサンホモポリマーが、ポリ(メルカプトプロピル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルプロピル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルメチル)シロキサン、ポリ(メルカプトエチルメチル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルエチル)シロキサン、ポリ(メルカプトプロピルメチル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルベンジル)シロキサン、ポリ(メルカプトプロピルベンジル)シロキサン、及びポリ(メルカプトエチルベンジル)シロキサンからなる群から選択され、及び/又は、メルカプト官能性シロキサンホモポリマーとアクリルシロキサンとのコポリマーが、ポリ(メルカプトメチルプロピル-co-アクリロキシメチルプロピル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルメチル-co-アクリロキシメチルプロピル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルメチル-co-アクリロキシプロピルメチル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルメチル-co-アクリロキシプロピルエチル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルメチル-co-アクリロキシエチルプロピル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルメチル-co-アクリロキシメチルメチル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルメチル-co-アクリロキシプロピル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルメチル-co-アクリロキシエチル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルメチル-co-アクリロキシメチル)シロキサン、及びポリ(メルカプトプロピルメチル-co-アクリロキシメチルプロピル)シロキサンから選択された場合に有利であることが分かった。これに関連して、これらの化合物は、高いメルカプト当量を有し、それによって、架橋のための高い反応性を有する点で有利である。さらに、それらは液体であり、したがって、エマルションを介してシステムに簡単に導入することができる。さらに、それらは無臭であり、そして、高濃度であっても、フィルム形成に影響を及ぼさない。SH基の極性特性のために、エマルションは長期間にわたって安定でもある。
【0037】
アクリレート基のために、一方では、ジスルフィド形成(隣接するユニットを介する)がUV架橋の間に繰り返し起こることが防止され、一方、アクリレート基は、チオール-エン反応によって、ゴムと反応することもできる。
【0038】
本方法の別の変形実施形態によれば、メルカプト官能性シロキサンポリマーとアクリルシロキサンとのコポリマー中のメルカプト官能性シロキサンポリマーの割合が少なくとも20質量%であることができる。このようにして、上記の利点/効果をより良好に達成することができる。
【0039】
架橋剤は、(カルボキシル化)ジエンラテックスの全組成に対して1phr~10phrの割合で(カルボキシル化)ジエンラテックスに加えることができる。このようにして、50%モジュラスが高くなりすぎて予防用品の耐荷重能力が損なわれることを良好に防止することができる。しかし、同時に、この範囲の架橋剤の濃度で、例えば引裂強度又は最大伸び率などのエラストマーの良好な機械的なさらなる特性が得られる。好ましくは、0.5phr~5phrの割合で少なくとも1種の光開始剤も添加される。特に、α-ヒドロキシアルキルフェノン、α-アミノアルキルフェノン、アシルホスフィンオキシド、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、α-ジアルコキシアセトフェノンを光開始剤として使用することができる。
【0040】
本発明をより良く理解するために、以下の図面に基づいてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】
図1は、様々なDEPEG-500濃度での、架橋時間に対する架橋XNBRラテックスフィルムの膨潤度を示す。
【
図2】
図2は、様々なGE-100濃度での、架橋時間に対する架橋XNBRラテックスフィルムの膨潤度を示す。
【
図3】
図3は、様々なSPE濃度での、架橋時間に対する架橋XNBRラテックスフィルムの膨潤度を示す。
【
図4】
図4は、様々なDEPEG-500濃度での、架橋XNBRラテックスフィルムのモジュラス(50%伸び)を示す。
【
図5】
図5は、様々なモル質量のDEPEGタイプの場合の架橋XNBRラテックスフィルム(滅菌なし/エージングなし)のモジュラス(50%伸び)を示す。
【
図6】
図6は、様々なモル質量のDEPEGタイプの場合の架橋XNBRラテックスフィルム(滅菌なし/70℃で7日間エージング)のモジュラス(50%伸び)を示す。
【
図7】
図7は、様々なポリ(メルカプトプロピルメチル)シロキサン濃度(合成時間:3、6及び9時間)での、UV架橋NRラテックスフィルム(滅菌なし/エージングなし)の引裂強度を示す。
【
図8】
図8は、様々なポリ(メルカプトプロピルメチル)シロキサン濃度(合成時間:3、6及び9時間)での、UV架橋NRラテックスフィルム(滅菌なし/エージングなし)の破断点伸びを示す。
【
図9】
図9は、様々なポリ(メルカプトプロピルメチル)シロキサン濃度(合成時間:3、6及び9時間)での、UV架橋NRラテックスフィルム(滅菌なし/エージングなし)のモジュラス(50%伸び)を示す。
【
図10】
図10は、様々なポリ(メルカプトプロピルメチル)シロキサン濃度(モノマー濃度:9及び18%(w/v))での、UV架橋NRラテックスフィルム(滅菌なし/エージングなし)の引裂強度を示す。
【
図11】
図11は、様々なポリ(メルカプトプロピルメチル)シロキサン濃度(モノマー濃度:9及び18%(w/v))での、UV架橋NRラテックスフィルム(滅菌なし/エージングなし)の破断点伸びを示す。
【
図12】
図12は、様々なポリ(メルカプトプロピルメチル)シロキサン濃度(モノマー濃度:9及び18%(w/v))での、UV架橋NRラテックスフィルム(滅菌なし/エージングなし)のモジュラス(50%伸び))を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本明細書に引用される全ての標準規格は、特に示さない限り、本特許出願の出願日に実施されているバージョンを指す。
【0043】
本発明は、予防用品の製造方法に関する。
【0044】
予防用品は、好ましくは手袋、特に外科用手袋(手術用手袋)又は検査用手袋である。しかし、予防用品は、例えば、指サック、カテーテル、コンドーム、(医療用)バルーン、乳首などであってもよい。一般的に、予防用品は、好ましくは、浸漬品、すなわち、浸漬法により製造された製品である。
【0045】
以下では、手袋としての予防用品の形成のみをさらに議論する。それにもかかわらず、この点についての説明は、他のエラストマー物品、特に浸漬法によって製造される浸漬品にも適用することができる。
【0046】
手袋は、ジエンエラストマー(ジエンゴム)、特にカルボキシル化ジエンエラストマーを含むか、又はそれらからなる。
【0047】
エラストマー層のエラストマーは、天然ラテックスと合成ラテックスの両方に基づくことができる。これらは、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンラテックス(IR)、ニトリルブタジエンゴムラテックス(NBR)、カルボキシル化ニトリルブタジエンゴムラテックス(XNBR)、カルボキシル化ブタジエンラテックス(XBR)、クロロプレンラテックス(CR)、スチレン-ブタジエンラテックス(SBR)、ポリマーブレンドから調製されたカルボキシル化ラテックス及びそれらの混合物から選択することができる。
【0048】
特に、カルボキシル化ニトリルブタジエンゴムラテックスもしくはポリイソプレンラテックス又は天然ゴムがエラストマー層の製造に使用される。ニトリルブタジエンゴムラテックスは、アクリロニトリルの割合が15質量%~40質量%、特に20質量%~35質量%であることが好ましい。
【0049】
予防用品又はエラストマー手袋は、好ましくは浸漬法により製造される。このような浸漬法は基本的に先行技術から知られているので、この点に関する詳細については関連する先行技術を参照すべきである。
【0050】
この方法では、基本的に、浸漬フォーマー(連続製造では、通常、いくつかの浸漬フォーマーが使用される)を浸漬浴中に浸漬する。この浸漬フォーマーは、完成品の形状、すなわち、例えば手の形状を有する。
【0051】
浸漬フォーマー上に浸漬塗布されるべき各エラストマーラテックスは、浸漬浴に予め導入される。
【0052】
しかしながら、原則として、特に、エラストマー層が浸漬法により製造されない場合には、任意の他の適切な形状を、本明細書に提示される方法で使用することができる。エラストマー層は、エラストマーラテックスをフォーマーにブラッシング又はスプレーすることによっても作製することができる。同様に、フォーマーにラテックスを適用する他の適切な方法も適用可能である。
【0053】
本明細書において、エラストマーラテックスという用語は、当該技術分野における慣用に従う方法で使用される。したがって、エラストマーラテックスは、エラストマーの製造のために、架橋されていないか、もしくは予備架橋されているか、又は架橋されているポリマー分子の分散液である。従って、本発明の範囲内において、予備架橋エラストマーラテックスは、処理されたものであってもよく、ここで予備架橋は、特に、多官能性モノマー及び/又はポリマーである本明細書で引用した架橋剤によって達成することができ、当該多官能性モノマー及び/又はポリマーは、(カルボキシル化)ジエンラテックスに加えられ、その中に溶解されるか、あるいは、その中に乳化又は分散される。
【0054】
しかしながら、エラストマーラテックスを、フォーマー上への適用後にのみ架橋させること、すなわち適用されたエラストマーマトリックスを架橋させることが、さらに可能である。
【0055】
凝固剤浸漬法の慣用的なプロセス経路は、例えば以下の方法ステップを含むことができる:
- 浸漬フォーマーを洗浄し、有機溶剤により脱脂するステップ;
- 浸漬フォーマーを予熱するステップ;
- 凝固剤を含有する第1の浸漬浴中に浸漬フォーマーを浸漬するステップ;
- 第1の浸漬塗布層を乾燥させるステップ;
- エラストマー層の形成のためのさらなる浸漬浴中に浸漬フォーマーを浸漬するステップ;
- 乾燥/加硫(架橋)ステップ。
- 浸漬品をフォーマーから引抜くステップ。
【0056】
以下でより詳しく説明するように、エラストマー分子の熱架橋の代わりに、必要であれば光開始剤の添加後に、UV光による光化学的架橋が行われてもよい。光開始剤は、市販の光開始剤であってもよく、通常の濃度で添加してよい。この点に関して、序文で引用した米国特許第2014/0096307 A1号及び米国特許第2014/0096308 A1号が参照され、光開始剤の範囲及びラテックス中のそれらの濃度は主題に属する。
【0057】
エラストマー手袋が多層様式で形成される場合、第1のエラストマーラテックスもしくは別のエラストマーラテックス又は別のポリマーのさらなる層を、浸漬塗布すること又は一般的に塗布することができる。例えば、ポリマー層は、最後の層として浸漬塗布することができ、このプロセスで行われる浸漬フォーマーからのグローブの引抜き後、手袋を裏返しにした後、手袋の内側に位置することになる。かかるポリマー層は、エラストマー手袋を引抜く能力を向上させるために、例えば滑り層として形成することができる。
【0058】
したがって、エラストマー手袋は、単層又は多層で形成することができ、個々の層は、互いに異なる材料又は同じ材料からなることができる。エラストマー手袋の2つ以上の層が同じ材料からなり、1つ以上の層が異なる材料からなることも可能である。
【0059】
これはすべて知られているため、これ以上の議論はしない。
【0060】
本明細書において、材料は、エラストマー及びポリマーとして理解されるが、エラストマー手袋は、エラストマーの少なくとも1つの層を有する。
【0061】
加硫及び架橋という用語は、本明細書において同義語として使用される。
【0062】
(カルボキシル化)ジエンエラストマーラテックスの架橋のために、架橋剤が、それに、すなわち、特に、(カルボキシル化)ジエンエラストマーの少なくとも1つの層の作製のための浸漬浴に加えられる。さらに、ジエンエラストマーラテックス又は浸漬浴は、少なくとも1種のさらなる添加剤、例えば、浸漬品の製造についてもともと知られている少なくとも1種の乳化剤、少なくとも1種の酸化防止剤、少なくとも1種の染料、少なくとも1種のオゾン亀裂防止剤などを含んでもよい。これらの添加剤の全割合は、ジエンエラストマーラテックス又は浸漬浴の全組成に対して0.1phr~10phrであることができる。
【0063】
モノマー及び/又はポリマーベースの架橋剤が(カルボキシル化)ジエンエラストマーラテックスに加えられ、当該(カルボキシル化)ジエンエラストマーラテックス中に溶解される。架橋剤の濃度は、1phr~15phr、特に1phr~7.5phrであることができる。
【0064】
本方法の好ましい実施形態において、さらなる架橋剤は使用されない。すなわち、(カルボキシル化)ジエンエラストマーラテックスに可溶なモノマー及び/又はポリマーのみが架橋剤として使用される。しかし、前述したように、少なくとも1種の光開始剤を添加してもよい。
【0065】
これに関連して、本明細書において用語「ポリマー」は、一般的に、2つ以上のモノマー単位を有する分子、すなわち二量体以上の分子を含む。多官能性モノマー及び/又はポリマーは、好ましくは、多官能性エポキシド、多官能性シラン、多官能性シロキサン、多官能性チオール及びそれらの混合物を含む又はからなる群から選択される。
【0066】
これらの例は、短鎖:ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ジグリシジル1,2-シクロヘキサンジカルボキシレート;長鎖:ジエポキシ末端ポリエチレングリコール、ジエポキシ末端ポリプロピレングリコール、ポリグリシジルメタクリレート(エチレングリコール単位、エチレン単位などを有するホモポリマー及びコポリマー)、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリシドキシプロピルトリメトキシシランである。
【0067】
短鎖化合物は、単量体多官能性化合物、特に、少なくとも170g/molのモル質量を有するそのような化合物である。長鎖化合物は、少なくとも2つ以上の反復単位を有する(二量体及び多量体)。
【0068】
本発明の範囲内では、用語「ポリマー」は一般的にオリゴマーも含む。
【0069】
本方法の別の実施形態によれば、メルカプト官能性シロキサンホモポリマー、又は、メルカプト官能性シロキサンホモポリマーとアクリルシロキサンとのコポリマーを、メルカプト官能性シロキサンポリマーとして使用することができる。特に、構造式:
【0070】
【0071】
(式中、R1は、-CH3、-OH、-C2H5、-C3H7及び芳香族基からなる第1の群から選択された第1の単位を表し、R2は、-CH2、C2H4、C3H6、-(CH2)11-、芳香族基及び-CH2-芳香族基からなる第2の群から選択された第2の単位を表す。)
を有するメルカプト官能性シロキサンホモポリマーが使用され、及び/又は、構造式:
【0072】
【0073】
(式中、R1は、-OH、-CH3、-C2H5、-C3H7及び芳香族基からなる第1の群から選択された第1の単位を表し、R2は、-CH2、C2H4、C3H6及び芳香族基からなる第2の群から選択された第2の単位を表す。)
を有するアクリルシロキサンが使用される。
【0074】
下記の二量体をメルカプト官能性シロキサンとして使用することもできる。
【0075】
【0076】
本方法の特に好ましい実施形態によれば、メルカプト官能性シロキサンホモポリマーは、ポリ(メルカプトメチルプロピル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルプロピル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルメチル)シロキサン、ポリ(メルカプトエチルメチル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルエチル)シロキサン、ポリ(メルカプトプロピルメチル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルベンジル)シロキサン、ポリ(メルカプトプロピルベンジル)シロキサン、及びポリ(メルカプトエチルベンジル)シロキサンからなる群から選択され、及び/又は、メルカプト官能性シロキサンホモポリマーとアクリルシロキサンとのコポリマーは、ポリ(メルカプトメチルプロピル-co-アクリロキシメチルプロピル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルメチル-co-アクリロキシメチルプロピル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルメチル-co-アクリロキシプロピルメチル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルメチル-co-アクリロキシプロピルエチル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルメチル-co-アクリロキシエチルプロピル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルメチル-co-アクリロキシメチルメチル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルメチル-co-アクリロキシプロピル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルメチル-co-アクリロキシエチル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルメチル-co-アクリロキシメチル)シロキサン、及びポリ(メルカプトプロピルメチル-co-アクリロキシメチルプロピル)シロキサンからなる群から選択される。
【0077】
メルカプト官能性シロキサンポリマーとアクリルシロキサンとのコポリマーにおけるメルカプト官能性シロキサンポリマーの割合は、20質量%~99質量%の範囲、特に20質量%~80質量%の範囲から選択することができる。
【0078】
エラストマー層の層厚は、30μm~500μmであることができる。
【0079】
一般的に、(カルボキシル化)ジエンエラストマーラテックスは、10drc(乾燥ゴム含有量)~60drcの(カルボキシル化)ジエンエラストマーの固形分を有することができる。
【0080】
(カルボキシル化)ジエンエラストマーラテックスのpHが9以上の値に調整される場合、さらに有利である。一例として、この目的のために、KOH水溶液(1質量%~5質量%)が使用される。一般的には、この目的のために、適切な塩基性物質、例えば、灰汁を使用することができる。
【0081】
この方法の好ましい変形実施形態では、(カルボキシル化)ジエンエラストマー分子の架橋は、特に(カルボキシル化)ジエンエラストマーラテックスの(浸漬塗布)層の乾燥中に熱的に行われる。この方法において、温度は90℃~140℃であることができる。架橋は、5分間~20分間の時間で行うことができる。
【0082】
170g/mol~4000g/mol、特に170g/mol~1700g/molのモル質量を有する架橋剤を使用することが可能である(DIN 55672-3:2007-08(GPC)に従う高分子水溶性化合物)、又は、DIN 51 562-1に従う液体ポリマーの粘度による)。例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル(モル質量170g/mol)又はジエチレングリコールジグリシジルエーテル(モル質量218g/モル)を使用することが可能である。このようにして、エラストマー手袋の(50%)モジュラスを所望の値に調整することも可能である。エラストマー手袋のモジュラスは、架橋剤の鎖長により調整することができる。
【0083】
本方法によって、(カルボキシル化)ジエンエラストマーの(カルボキシル化)ジエンエラストマー分子鎖が有機分子を介して共有結合的に架橋された(カルボキシル化)ジエンエラストマーの層を含む予防用品、特に手袋を製造することができる。
【0084】
本方法に従って製造されたエラストマー手袋は、良好な皮膚許容性を示す。実施した調査に基づくと、皮膚刺激性及び感作能は観察されなかった。
【0085】
架橋方法の試験の過程で、以下の実験を行った。全ての実験の再現は本明細書の範囲を超えるため、これらは単に選択された例に過ぎない。
【実施例】
【0086】
以下では、多官能性モノマー及び/又はポリマーを架橋剤として使用する方法の実施についての実験結果を示す。この目的のために使用した試薬を表1にまとめた。
【0087】
【0088】
ラテックス混合物の調製、浸漬及び架橋
水溶性架橋剤をラテックス混合物(pH=10、約25drc)に様々な濃度(0.5~1.5phr)で加えた。次に、混合物に酸化防止剤(0.5phr~2phrのRalox)をドープし、室温で約15分間撹拌した。次に、上記の凝固剤浸漬法によってフィルムを作製し、フィルムを100℃で15分間乾燥させた。予備的な架橋又はラテックスの熟成は必要ではなかった。100℃でフィルムを乾燥させる間に架橋が起こった。
【0089】
ラテックス混合物は、浸漬プロセスの間、マグネチックスターラーによって穏やかに撹拌することができる。これは、一般的に、本明細書に提示される方法に適用される。
【0090】
以下の反応は、モノマー及び/又はポリマーエポキシ架橋剤による熱架橋の基礎を構成する。反応が高pH値で触媒されるため、例えば1質量%のKOHによるpH=10への事前のラテックス混合物のpHの調整は有利である。
【0091】
カルボキシル化エラストマーとエポキシドとの反応:
【0092】
【0093】
エポキシドの酸触媒及び塩基触媒開環:
【0094】
【0095】
選択された水溶性ポリマー架橋剤の添加によるXNBRラテックスの成功した架橋は、クロロホルム中での平衡膨潤により実証された((1)Macromolecules 2008, 41, 4717-4729、(2)J. Appl. Polym. Sci. 129(5), 2735-2743、及び(3)Zaborski, M.; Kosmalska, A.; Gulinski, J. Kautsch, Gummi Kunstst, 2005, 58, 354に従って決定)。結果を
図1及び2にプロットした。この点について、横軸に分単位で架橋時間、及び縦軸に膨潤度をとってプロットした。この場合、架橋密度は、架橋時間及び架橋剤濃度の増加につれて高くなり、架橋剤の反応性は、DEPEG-500<SPE<GE100の順に増加する。
【0096】
平衡膨潤の他に、選択された水溶性ポリマー架橋剤の添加によるXNBRラテックスの架橋も引張試験により実証された。
【0097】
DEPEG-500の使用中に、5phr以上の濃度で22±2MPaの範囲内の機械的強度が観察された。より低い濃度(0.5~3phr)では、低い架橋密度が達成され、引裂強度は10MPa未満である。7.5phrへの架橋剤濃度の増加は、最高35±2MPaまでの強度のさらなる増加をもたらした。したがって、5phr~7.5phrの濃度が好ましい。
【0098】
DEPEG-200については、3phr~7.5phrの濃度範囲(滅菌なし/エージングなし:26MPa~40MPa;滅菌なし/エージングあり:37MPa~26MPa;滅菌あり/エージングなし:28MPa~24MPa;滅菌あり/エージングあり:25MPa~35MPa)で、非常に良好な機械的強度及び耐老化性及び耐ガンマ線性が観察された。
【0099】
同様の結果が他の多官能性モノマー及びポリマー架橋剤でも達成されたため、ラテックス中の多官能性モノマー及び/又はポリマー架橋剤の濃度は1phr~7.5phrの濃度が一般的に好ましい。
【0100】
さらに、優れた耐熱空気老化性(70℃で7日間貯蔵)及び耐ガンマ線性(25kGy)が観察された。
【0101】
一般的に、予防用品の試験の過程で、Co-60源及び25kGyの照射線量によるガンマ線照射によって滅菌を行うことができることを指摘しなければならない。エージングは、一般的に、循環空気オーブン中、70℃で7日間の熱空気エージングによって行うことができる。
【0102】
さらに、50%伸び時の応力値は、高引裂強度の場合であっても1.2~1.4MPaの範囲内にあり、特に5phrの架橋剤の使用中に熱空気エージング及びガンマ線滅菌後でもほとんど増加しなかった。50%伸びでの低い応力値が快適な着用の快適さの基準であるため、これは、とりわけ、手術用手袋の製造の場合に有利である。50%伸びの測定結果を
図4にプロットした。ここでは、棒は5つのグループに分けられており、5つのグループのそれぞれにおいて、棒はDEPEG-500の濃度を表し、左側から右側に向かって、0.5phr、1.0phr、3.0phr、5.0phr及び7.5phrである。左側から右側に向かって、5つのグループ自体は、滅菌なし及びエージングなし、滅菌なし及びエージングあり、滅菌あり及びエージングなし、並びに滅菌あり及びエージングありのサンプルを表す。50%モジュラスは、MPa単位で縦軸に示されている。
【0103】
DEPEG-500による架橋と同様に、非常に良好な機械的特性(ガンマ線滅菌後でも)が、より高濃度(7.5phr)でのSPE(ソルビトールポリグリシジルエーテル)の使用についても実証された。7.5phrのSPEの濃度で、機械的特性について12MPa~32MPaの値が測定された(滅菌なし/エージングなし:30MPa~32MPa;滅菌なし/エージングあり:12MPa~14MPa;滅菌あり/エージングなし:30MPa~32MPa;滅菌あり/エージングあり:13MPa~15MPa)。対照的に、0.5phr~1.0phrのDEPEG-500の濃度では、最高で約5MPaの値のみが測定された。したがって、DEPEG-500は、5phr~7.5phrの量で使用されることが好ましい。
【0104】
水溶性ポリマー架橋剤としてのSPEの使用中に、エラストマー手袋の着用快適性に有害である、50%伸び時の応力値の顕著な増加がさらに観察された。7.5phrのSPEでは、1.6~1.8MPaの範囲内の値が得られた。したがって、SPEは、0.5phr~5phrの濃度で使用されることが好ましい。
【0105】
架橋剤としてのGE100の使用中に、20~27MPaの範囲内にある非常に良好な機械的強度が、低濃度(1及び3phr)で既に得られた。より高い架橋剤濃度(7.5phr)では、引裂強度のさらなる増加が観察された(37±2MPa)。5phrの濃度では、22MPa~40MPaの値が得られた(滅菌なし/エージングなし:35MPa~40MPa;滅菌なし/エージングあり:32MPa~35MPa;滅菌あり/エージングなし:36MPa~38MPa;滅菌あり/エージングあり:22MPa-23MPa)。架橋XNBRラテックスフィルムは、非常に良好な耐ガンマ線性により特徴付けられる。
【0106】
要約すると、調査した3種の架橋剤の全てにおいて、高い引裂強度(30±2MPa)及び耐ガンマ線性(γ線滅菌後:30±2MPa)が得られたと結論づけることができる。耐熱空気老化性又は50%伸びでの低いモジュラスに関して、DEPEG-500はGE-100及びSPEと比較して明らかな利点を示す。
【0107】
これらの結果に基づき、架橋XNBRラテックスフィルムのモジュラス値を、エポキシ末端ポリエチレングリコール誘導体(DEPEG)のモル質量によって、さらなる検討において選択的に調整した。低モル質量では、非常に高い強度(最高40MPaまで)が得られる一方、モジュラスは増加する。これは、高い強度が主な関心事であり、モジュラス(層の厚さに基づく)が従属的な役割を果たすだけである、検査用手袋の製造にとって特に重要である。DEPEG-500(平均モル質量)により架橋されたXNBRフィルムの場合、幾分低い強度が実際に得られるが、モジュラス値は実質的に低い。この変形例は、主に低モジュラスに焦点を当てた検査用手袋の製造に適している。
【0108】
しかし、架橋剤のモル質量が1,000g/molの範囲内にある場合、50%モジュラス値は実際には1MPa未満になることができるが、対応する引裂強度も15MPa未満になる。したがって、結果は、架橋剤の鎖長により引裂強度とモジュラスとの間のバランスを調整できることを示している。したがって、前述のポリマー架橋剤の鎖長が好ましい。
【0109】
この調査の測定結果を
図5及び
図6にプロットした。これらの図では、架橋剤の濃度をphr単位で横軸に、50%伸びで測定された応力をMPa単位で縦軸にとって、プロットされている。
【0110】
さらなる調査では、さらに別のラテックスタイプとしてPolyLac(登録商標)582Nを、様々なpH値で、5phrのDEPEG-200により架橋させた。この結果は、PolyLac(登録商標)582Nの架橋が可能であることを明確に示す。
【0111】
以下では、エラストマーラテックスの光化学的架橋の選択された例を提示する。この目的のために使用した試薬を表2にまとめた。
【0112】
【0113】
【0114】
ポリマーシロキサン架橋剤の調製は、以下のようにして行うことができる。
予め0.1MのHCl(水性)及びエタノールを受け器に導入し、N2の連続流を通しながら50℃に加熱する。次に、対応するシロキサンモノマー(表2参照)を、5%(w/v)及び40%(w/v)の選択濃度で加える。50℃で3~9時間後、冷却により反応を停止させ、そして、油状生成物を脱イオン水で洗浄し、クロロホルムで抽出する。次に、溶媒を真空下で除去し、生成物をN2雰囲気下で貯蔵する。
【0115】
合成されたホモポリマー及びコポリマーの反応メカニズムを以下に示す。
【0116】
ポリ(メルカプトプロピル)シロキサンの合成:
【0117】
【0118】
ポリ(メルカプトメチルメチル)シロキサンの合成:
【0119】
【0120】
ポリ(メルカプトプロピルメチル)シロキサンの合成:
【0121】
【0122】
ポリ(メルカプトプロピルメチル-co-アクリロキシプロピルメチル)シロキサンの合成:
【0123】
【0124】
シロキサンのモル質量分布は、ゲル浸透クロマトグラフィー(ポリスチレン標準による万能校正)により測定した。以下の結果が得られた:
-ポリ(メルカプトプロピルメチル)シロキサン(3時間の反応時間)
モル質量:200g/mol~700g/mol(2~5単位)
-ポリ(メルカプトプロピルメチル)シロキサン(9時間の反応時間)
モル質量:200g/mol~1400g/mol(2~10単位)
-ポリ(メルカプトプロピルメチル-co-アクリロキシプロピルメチル)シロキサン(3時間の反応時間)
モル質量:200g/mol~1300g/mol
【0125】
ラテックスフィルムの作製及びポリマーシロキサン架橋剤によるUV-架橋
合成したポリマー架橋剤を、Tween(登録商標)20(0.1phr)を含む脱イオン水中にLucirin(登録商標)TPO-L(1phr)とともに様々な濃度(1~4phr)で乳化させ、次に、NRラテックス(40drc)に加える。ラテックス混合物に酸化防止剤(0.5phrのIonol(登録商標)LC)を加え、室温で2時間撹拌する。次に、以下の凝固剤浸漬法によってフィルムが作製される:
- セラミックフォーマーの洗浄及びアセトンによる脱脂、
- 乾燥オーブン中、120℃で少なくとも10分間のセラミックフォーマーの予熱、
- 70℃の凝固浴への30秒間のフォーマーの浸漬、
- 乾燥オーブン中、120℃で少なくとも1分間のフォーマーの乾燥、
- NRラテックス混合物中へのフォーマーの20秒間の浸漬、
- 乾燥オーブン中、120℃で20分間の乾燥、
- フィルムの引抜き。
【0126】
Fusion UV Systems Inc.のUV源を用いて、NRラテックスフィルムのUV架橋を、乾燥フィルムのUV暴露(後硬化)中に実施した。UV暴露は、空気下、60%のランプ出力及び3.5m/分のベルト速度で、GaドープHg光源を用いて行った。3パスの場合、放射線量は15.6J/cm2に相当する。
【0127】
示したパラメーターは、限定的ではなく、例えば実験室規模で予防用品をいかにして製造するかを示すものとして理解されるべきであることを指摘しなければならない。大規模な産業用途では、わずかに異なるパラメーターが必要であるかもしれないが、いくつかの実験に基づいて見つけることができる。
【0128】
以下の反応機構は、ポリマーシロキサン架橋剤による光化学的架橋の基礎を構成する。
【0129】
【0130】
一般的に、以下のパラメーターをUV架橋の場合に使用することができる:
IRラテックス - 流下薄膜式反応器におけるUV予備架橋のためのパラメーター:800W~1000Wの光源出力(800Wは約500mW/cm2の平均放射線束を生じる)、2回の露光回数、1.1リットル/分~1.5リットル/分のコンベヤー速度(ラテックス混合物)、40%drcの固形分(ラテックス)、0.5phr~2phrの光開始剤濃度、0.5phr~2phrのチオール濃度。
【0131】
NRラテックス - 流下薄膜式反応器におけるUV予備架橋のためのパラメーター:2000W~3500W(3000Wは約1690mW/cm2の平均放射線束を生じる)、2回の露光回数、1.1リットル/分~1.5リットル/分のコンベヤー速度(ラテックス混合物)、40%drcの固形分(ラテックス)、0.5phr~2phrの光開始剤濃度、及び1phr~5phrのチオール濃度。
【0132】
UV後架橋のための一般的なパラメーター:フィルムの残留含水量は好ましくは20%未満である。5phr~5phrの光開始剤及び1phr~7.5phrのチオールの後投与、1J/cm2~25J/cm2(波長領域240nm~420nm)の照射線量。
【0133】
露光は、GaドープHg光源を使用して空気下で行うことが好ましい。
【0134】
FT-IR分光分析法により及び熱質量分析(TGA)によりポリマー架橋剤の構造を決定した。メルカプト官能性シロキサンホモポリマーであるポリ(メルカプトプロピル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルプロピル)シロキサン及びポリ(メルカプトメチルメチル)シロキサンのFT-IRスペクトルでは、約2830cm-1のSi-O-CH3バンドのかなりの減少と、シロキサンモノマー(アルコキシシランモノマー)の成功した縮合反応に帰属させることができるOH基(約3370cm-1)の形成を観測することができる。さらに、約1060cm-1におけるSi-Oバンドのブロードニングは、ポリマー化合物の形成を示唆している。特徴的なSHバンド(約2558cm-1)は、チオール基の赤外バンドが一般的に非常に低い強度を有するため、弱くしか現れない。共重合体であるポリ(メルカプトプロピルメチル-co-アクリロキシメチルプロピル)シロキサンのFT-IRスペクトルでは、アクリレート基の特徴的なIRバンド(1727cm-1のC=Oバンド及び1637及び1622cm-1のC=C-バンド)がさらに検出可能である。
【0135】
TGA調査の過程で、ホモポリマー及びコポリマーは、構造に依存して、240℃~270℃の温度範囲まで安定であり、次に、多段階分解を示すことが分かった。
【0136】
ポリマー架橋剤の反応性を求めるために、クロロホルム中のポリイソプレン標準の2質量%溶液を調製し、1phrのLucirin(登録商標)TPO-L及び5phrの対応するチオールをドープした。混合物をCaF2プレート上にこすり付け、溶媒を蒸発させ、次に、薄層をUVランプ(OmniCure Series 1000;高圧ランプ、全出力:100WのEXFO)で露光した。様々な露光時間の後、IRスペクトルを記録し、露光時間にわたる規格化C=Cバンド(835cm-1)の減少を記録した。市販の高分子量チオールであるジペンタエリトリトールヘキサ(3-メルカプトプロピオネート)(THIOCURE(登録商標)Di-PETMP、Bruno Bock Thiochemicals)と比較して、シロキサンポリマーは架橋中に実質的により高い反応性を示す。Thiocure(登録商標)Di-PETMPの使用の際、150秒間の露光時間後に、C=Cバンドの相対的減少が約5%であったのに対し、ポリ(メルカプトプロピルメチル)シロキサンの使用の際には、12%の範囲の減少を達成することができた。
【0137】
UV開始チオール-エン反応におけるポリマー架橋剤の反応性を、さらなる実験において確認した。この目的のために、架橋剤(1phr)を、ポリイソプレン標準溶液(クロロホルム中2wt%)中の光開始剤(1phrのLucirin(登録商標)TPO-L)と一緒に混合し、次に、薄膜(40μm)をこすり付け、乾燥させ、構造的に露光し、クロロホルム中で現像した。ネガ型レジストの場合と同様に、層の露光領域はチオール-エン反応によって架橋され、その後のクロロホルム中での現像の間、非露光領域のみが溶解され除去された。この実験は、光開始剤ラジカルによるポリマー鎖の直接C-C結合形成の影響をできるだけ小さく保つために、非常に低い露光量(約20mW/cm2、80秒間)でマスクアライナーを用いて行った。この結果は、低濃度(1phr)のポリマー架橋剤が、ポリイソプレン標準の非常に高い局所的に開始された架橋を得るのに既に十分であることを示した。従って、これらの結果から、チオール-エン反応における合成ポリマー架橋剤の高い反応性及び効率が確認された。
【0138】
その化学構造(遊離Si-OH基の高い濃度)に基づいて、ポリ(メルカプトプロピル)シロキサンは、保存中(不活性雰囲気下であっても)に縮合反応によって架橋することができる。従って、ポリマー化合物は、ごく限られた耐貯蔵性(約1週間)を有する。1及び2phrの架橋剤を含有するUV架橋NRラテックスフィルム(エージング及びガンマ線滅菌前)は、12MPa~15MPaの引裂強度を有する。
【0139】
ポリマー架橋剤の貯蔵中に後反応(主に架橋)をできるだけ少なく保つために、ジシロキサンモノマーをさらなる合成バッチで使用した。遊離Si-OH基のより低い濃度のために、ポリマー化合物は実質的により高い耐貯蔵性により特徴付けられ、1ヶ月間の貯蔵(不活性雰囲気下)でも粘度の変化は観察されなかった。合成時の種々のパラメーター(反応時間、モノマー含有量を含む)がNRラテックスフィルムの対応する機械的強度及び耐老化性に及ぼす影響をさらに調査した。
【0140】
最初のステップでは、様々な反応時間(3、6及び9時間)の後、反応混合物中の一定のモノマー濃度(9%(w/v))でのポリ(メルカプトプロピルメチル)シロキサンの合成を停止し、ポリマー生成物を詳しく調査し、対応する架橋実験を行った。
【0141】
1phrの架橋剤濃度では、より短い反応時間(3時間)のポリマーは、より良好な機械的強度(20±2MPa)を示す。しかし、より高い濃度(2phr)のポリマー架橋剤では、機械的強度で僅かな差しか観察されず、その値は22~24MPaの範囲にある。結果を
図7~9にプロットした。
【0142】
さらなる調査で、合成中のモノマー濃度を3時間の一定の反応時間で変化させた(9及び18%(w/v))。低いほうのモノマー濃度(9%(w/v))では、ラテックス混合物中の架橋剤濃度の増加(1phrから3phrまで)につれて、引裂強度の増加(20から26±2MPaまで)が観察されたのに対し、高いほうのモノマー濃度(18%(w/v))では、ラテックス混合物中、2phrの架橋剤で、最適(27±2MPa)が達成された。この調査の結果を
図10~12にプロットした。
【0143】
さらに、NRラテックスフィルムを、高いポリマー架橋剤濃度で作製し、UVに暴露し、機械的特性に及ぼす架橋剤濃度の影響を調べた。ポリ(メルカプトプロピルメチル)シロキサン(モノマー濃度:18%(w/v);反応時間:3時間)をポリマー架橋剤として選択した。この結果は、架橋剤濃度を3phrから4phrにさらに増加させても引裂強度の有意な改善をもたらさないという結論を可能にする。高い架橋度を示唆する50%伸び時の応力値の増加を実際に達成できたが、引裂強度は25MPaの範囲にとどまる。
【0144】
さらなるステップにおいて、より短い中間基(チオール基とポリマー主鎖との間)を有するポリマーチオール架橋剤を合成した。プロピル基の代わりに、メチル基を選択した。合成中のモノマー濃度は9%(w/v)であり、反応時間は3時間であった。このポリマー化合物も貯蔵安定性があり、1ヶ月の貯蔵期間にわたって粘度変化を観察できなかった。
【0145】
架橋剤としてポリ(メルカプトメチルメチル)シロキサンを用いることによって、同じ架橋剤濃度(1phr又は2phr)でポリ(メルカプトプロピルメチル)シロキサンと比較してより高い傾向がある機械的強度をNRラテックスのUV架橋で達成することができた。滅菌なし及びエージングなしのフィルムの場合、引裂強度は、1phrのポリ(メルカプトプロピルメチル)シロキサン濃度では約23MPaになり、2phrでは約26MPaになった。滅菌なし及びエージングなしのフィルムの場合、50%モジュラスは、1phrのポリ(メルカプトプロピルメチル)シロキサン濃度で約0.45MPaになり、2phrでは約0.5MPaになった。
【0146】
メルカプト官能性ホモポリマーの他に、アクリロキシプロピルメチル単位を有するコポリマーを合成し、NRラテックスのUV架橋において架橋剤として使用した。第2のモノマー単位としてのアクリレート基のために、一方では、ジスルフィドの形成(チオール-エン反応の副反応として)が抑制されるべきであり、他方では、反応性基(アクリレート)がゴム状鎖へのポリマー架橋剤の結合に利用可能であるべきである。合成中の両モノマーの濃度は合計で9%(w/v)であり、反応時間は3時間であった。このポリマー化合物も貯蔵安定性があり、1ヶ月の貯蔵期間にわたって粘度変化を観察できなかった。共重合体を用いると、ラテックス混合物中で同じ架橋剤濃度で、対応するホモポリマー(ポリ(メルカプトプロピルメチル)シロキサン)と比較して、著しく高い引裂強度(最高30MPaまで)を達成することができる。
【0147】
さらなる調査で、機械的特性に及ぼすコモノマー組成物の影響を調べた。この目的のために、3-アクリロキシプロピルメチルシロキサンの濃度は、8.4から16.8%(mol/総モル数)に倍増した。引張試験の結果は、2phrのP(MPMS-co-APMS)を用いた場合に、ポリマー鎖中のアクリレート単位の増加は、機械的特性の約8%のわずかな低下と関連することを示した。
【0148】
参考として、アクリレートホモポリマーも合成し(前述の架橋剤の合成と同様に)、架橋剤として使用した。アクリレート基の高い反応性に基づいて、イソプレン単位による直接C-C結合形成を介した光化学的架橋が達成された。架橋剤としてのポリ(アクリロキシプロピルメチル)シロキサンを含むポリイソプレンフィルムの成功した構造化露光は、実際に、UV架橋における十分に高い反応性を示唆することができるが、対応するNRラテックスフィルム(1phr及び2phrの架橋剤を含有)の機械的特性は、メルカプト官能性ホモポリマー及びコポリマーと比較してかなり低い(14~17MPa)。さらに、フィルムは、不十分な耐老化性(70℃で7日間の熱空気エージング)(<3MPa及び強い黄変)により特徴付けられる。
【0149】
さらなる実験において、ポリマー架橋剤としてポリ(メルカプトメチルメチル)シロキサンを含むNRラテックス及びIRラテックスの架橋に及ぼす予備及び後架橋の影響を調べた。
【0150】
予備架橋:
合成したポリマー架橋剤(0.5phr)を、Tween(登録商標)20(0.1phr)を含む脱イオン水中にLucirin(登録商標)TPO-L(0.5phr)とともに乳化させ、次に、NRラテックス(40drc)又はIRラテックス(40drc、Kraton)に加えた。ラテックス混合物を室温で2時間撹拌した。次に、それぞれのラテックス混合物をペトリ皿に流し込み(約1mmの層厚)、Fusion UV Systems Inc.のUV源により露光した。NRラテックス混合物を、空気下、GaドープHg光源により、60%のランプ出力及び3.5m/分のベルト速度で、4パスで露光した(20.8J/cm2の放射線量に相当)。IRラテックス混合物を、空気下、GaドープHg光源により、60%のランプ出力及び3.5m/分のベルト速度で、2パスで露光した(10.4J/cm2の放射線量に相当)。
【0151】
予備架橋フィルムの作製の際(その後の後架橋なし)、予備架橋後にラテックス混合物に酸化防止剤(0.5phrのIonol(登録商標)LC)をドープし、室温で2時間撹拌した。次に、ラテックスフィルムの浸漬を凝固剤浸漬法により行った。このプロセスでは、以下の作業ステップを行った:
- セラミックフォーマーの洗浄及びアセトンによる脱脂、
- 乾燥オーブン中、120℃で少なくとも10分間のセラミックフォーマーの予熱、
- 70℃の凝固浴への30秒間のフォーマーの浸漬、
- 乾燥オーブン中、120℃で少なくとも1分間のフォーマーの乾燥、
- NRラテックス混合物中へのフォーマーの20秒間の浸漬、
- 乾燥オーブン中、120℃で20分間の乾燥、
- 引抜き。
【0152】
後架橋:
必要に応じて、後架橋も行った。この場合、それぞれのラテックス混合物(予備架橋又は予備架橋していない)に、合成ポリマー架橋剤(2phr)、Lucirin(登録商標)TPO-L(1phr)、脱イオン水(2phr)及びTween(登録商標)20(0.1phr)からなるエマルションをドープした。次に、ラテックス混合物に酸化防止剤(0.5phrのIonol(登録商標)LC)をドープし、室温で2時間撹拌した。
対応するフィルムを凝固剤浸漬法によって作製し、後架橋を、Fusion UV Systems Inc.のUV源による乾燥フィルムのUV暴露中に行った(後硬化)。NRラテックスフィルム及びIRラテックスフィルムの両方を、空気下、GaドープHg光源により60%のランプ出力及び3.5m/分のベルト速度で3パス(放射線量15.6J/cm2に相当)で露光した。
【0153】
NRラテックスの光化学的架橋の際に、最も高い機械的強度が後架橋によって達成できることが見出された。NRラテックスフィルム(滅菌なし、エージングなし)の引裂強度は、予備架橋サンプルの場合には約22.5MPaであり、予備架橋及び後架橋されたサンプルの場合には約18MPaであり、後架橋だけされたサンプルの場合には約25MPaであった。この結果は、予備架橋及び後架橋されたサンプルが最低引裂強度を示したため、驚くべきことである。
【0154】
IRラテックスのUV予備架橋の際にも同様の傾向が観察された。この場合、予備架橋したIRラテックスフィルムの引裂強度は3.5MPaの範囲である。しかしながら、NRラテックスフィルムとは対照的に、16MPaまでの引裂強度の明らかな増加は、予備架橋及び後架橋の架橋によって可能である。
【0155】
ポリマー架橋剤のさらなる評価のために、さらなるメルカプトポリマーを合成した。この目的のために、制御された重合(より低い多分散指数を有するポリマーの調製)のために、停止剤として2phr又は3phrのメトキシトリメチルシランの存在下で、ポリ(メルカプトメチルメチル)シロキサン及びポリ(メルカプトプロピルメチル-co-アクリロキシプロピルメチル)シロキサンの調製を行った。この合成は、上記の合成と同様に行ったが、2phr又は3phrのメトキシトリメチルシラン(Sigma-Aldrich)を反応混合物にさらに添加した。
【0156】
UV後架橋NRラテックスフィルム(滅菌なし、エージングなし)の引裂強度は、一貫して25~27MPaである。
【0157】
抽出可能な架橋剤の濃度の決定のために、後架橋NRラテックスフィルムをソックスレー抽出(10時間/トルエン)の過程で抽出した。溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、抽出物を35℃及び100mbarで真空乾燥オーブン中で恒量になるまで乾燥させた。
【0158】
C/H/N/Sにより、抽出可能なS化合物(NRラテックスのチオール類及びタンパク質)を三重反復測定で求めた。
【0159】
元素分析の結果から、低分子チオール(例えば、トリメチロールプロパントリメルカプトプロピオネート、TMPMPなど)と比較して、架橋剤の抽出性がかなり低いこと(75%)が判明した。
【0160】
【0161】
以下の例示的な実施形態において、XNBRラテックスフィルムの熱架橋は、極性の水溶性エポキシ架橋剤だけでなく、非極性エポキシ誘導体によっても可能であることが示される。
【0162】
実施例A - ビスフェノールAジグリシジルエーテルによる架橋
0.3phrのTween(登録商標)20を含む6phrの脱イオン水中に3phrのビスフェノールAジグリシジルエーテル(Huntsman)を乳化させた。次に、エマルションをラテックス混合物に加え(pH=10.2;約25drc)、ラテックス混合物を室温60分間撹拌した。上記手順と同様にしてフィルムを作製し、空気循環オーブン中でフィルムの乾燥中に熱架橋を行った。
【0163】
【0164】
実施例B - 水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテルによる架橋
調製は、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの代わりに、それぞれ3phr及び5phrの水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル(それぞれ、CVC Thermoset SpecialtiesのEPALLOY(登録商標)5000及びEPALLOY(登録商標)5001)を使用した以外は実施例Aと同様に行った。
【0165】
【0166】
実施例C-ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエーテル
調製は、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの代わりに、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエーテル(3phr及び5phrの、CVC Thermoset SpecialtiesのEPALLOY(登録商標)5200)を使用した以外は、実施例Aと同様に行った。
【0167】
【0168】
実施例D 1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル
この調製は、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの代わりに、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(3phr及び5phrの、CVC Thermoset SpecialtiesのERISYS(商標)GE 22)を使用した以外は、実施例Aと同様に行った。
【0169】
【0170】
実施例A~Dに従って架橋されたXNBRラテックスの測定された機械的特性を表4にまとめた。
【0171】
【0172】
例示的な実施形態は、本方法の可能な実施形態の変形を説明する。個々の実施形態の変形形態を互いに組み合わせることも可能である。
本発明に関連する発明の実施態様の一部を以下に示す。
[態様1]
少なくとも1層の(カルボキシル化)ジエンラテックスがフォーマー上に適用され、前記(カルボキシル化)ジエンラテックスが架橋剤により架橋される、(カルボキシル化)ジエンゴムから予防用品、特に手袋を製造する方法であって、前記架橋剤として多官能性モノマー及び/又はポリマーが使用され、前記架橋剤が、(カルボキシル化)ジエンラテックスに加えられ、前記(カルボキシル化)ジエンラテックス中に溶解されるか、あるいは、前記(カルボキシル化)ジエンラテックス中に乳化又は分散されること、及び/又は、メルカプト官能性シロキサンポリマーが架橋剤として使用されることを特徴とする、前記方法。
[態様2]
前記多官能性モノマー及び/又はポリマーのみが架橋剤として使用されることを特徴とする、態様1に記載の方法。
[態様3]
前記(カルボキシル化)ジエンラテックスの分子の前記架橋が、熱的に、及び/又は、紫外線により光化学的に達成されることを特徴とする、態様1又は2に記載の方法。
[態様4]
前記(カルボキシル化)ジエンラテックスのpHが9以上の値に調整されることを特徴とする、態様1~3のいずれか一つに記載の方法。
[態様5]
前記架橋剤が、多官能性エポキシド、多官能性シラン、多官能性シロキサン、多官能性チオール、及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、態様1~4のいずれか一つに記載の方法。
[態様6]
170g/mol~4000g/molのモル質量を有する有機モノマー及び/又はポリマーが使用されることを特徴とする、態様1~5のいずれか一つに記載の方法。
[態様7]
前記メルカプト官能性シロキサンポリマーがエマルションとして前記(カルボキシル化)ジエンラテックスに加えられることを特徴とする、態様1~6のいずれか一つに記載の方法。
[態様8]
メルカプト官能性シロキサンホモポリマー、又は、メルカプト官能性シロキサンホモポリマーとアクリルシロキサンとのコポリマーが、前記メルカプト官能性シロキサンポリマーとして使用されることを特徴とする、態様1~7のいずれか一つに記載の方法。
[態様9]
構造式:
【化1】
(式中、R1は、-CH
3
、-OH、-C
2
H
5
、-C
3
H
7
及び芳香族基からなる第1の群から選択された第1の単位を表し、R2は、-CH
2
、C
2
H
4
、C
3
H
6
、-(CH
2
)
11
-、芳香族基及び-CH
2
-芳香族からなる第2の群から選択された第2の単位を表す。)
を有するメルカプト官能性シロキサンホモポリマーが使用されることを特徴とする、態様8に記載の方法。
[態様10]
構造式:
【化2】
(式中、R1は、-CH
3
、-OH、-C
2
H
5
、-C
3
H
7
及び芳香族基からなる第1の群から選択された第1の単位を表し、R2は、-CH
2
、C
2
H
4
、C
3
H
6
、-(CH
2
)
11
-、芳香族基及び-CH
2
-芳香族からなる第2の群から選択された第2の単位を表し、R3は、アルキル基、-CH
2
-芳香族、芳香族基、アルケン基、メタクリロキシプロピル-、アクリロキシプロピル-、及びエポキシ基からなる第3の群から選択された第3の単位を表す。)
を有するメルカプト官能性シロキサンコポリマー、特に、統計的配置の繰返し単位を有するメルカプト官能性シロキサンコポリマーが使用されることを特徴とする、態様8に記載の方法。
[態様11]
構造式:
【化3】
(式中、R1は、-OH、-CH
3
、-C
2
H
5
、-C
3
H
7
及び芳香族基からなる第1の群から選択された第1の単位を表し、R2は、-CH
2
、C
2
H
4
、C
3
H
6
及び芳香族基からなる第2の群から選択された第2の単位を表し)
を有するアルコキシアクリルシランが使用されることを特徴とする、態様8~10のいずれか一つに記載の方法。
[態様12]
前記メルカプト官能性シロキサンホモポリマーが、ポリ(メルカプトプロピルメチル)シロキサン、ポリ(メルカプトプロピルメチル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルメチル)シロキサン、ポリ(メルカプトエチルメチル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルエチル)シロキサン、ポリ(メルカプトプロピルメチル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルベンジル)シロキサン、ポリ(メルカプトプロピルベンジル)シロキサン、及びポリ(メルカプトエチルベンジル)シロキサンからなる群から選択されること、及び/又は、前記メルカプト官能性シロキサンホモポリマーとアクリルシロキサンとのコポリマーが、ポリ(メルカプトプロピルメチル-co-アクリロキシプロピルメチル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルメチル-co-アクリロキシメチルプロピル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルメチル-co-アクリロキシプロピルメチル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルメチル-co-アクリロキシプロピルエチル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルメチル-co-アクリロキシエチルプロピル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルメチル-co-アクリロキシメチルメチル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルメチル-co-アクリロキシプロピル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルメチル-co-アクリロキシエチル)シロキサン、ポリ(メルカプトメチルメチル-co-アクリロキシメチル)シロキサン、及びポリ(メルカプトプロピルメチル-co-アクリロキシメチルプロピル)シロキサンからなる群から選択されることを特徴とする、態様8~10のいずれか一つに記載の方法。
[態様13]
前記メルカプト官能性シロキサンポリマーとアクリルシロキサンとのコポリマーにおけるメルカプト官能性シロキサンポリマーの割合が少なくとも20質量%であることを特徴とする、態様8~11のいずれか一つに記載の方法。
[態様14]
前記架橋剤が、前記(カルボキシル化)ジエンラテックスの全組成に対して1phr~10phrの割合で前記(カルボキシル化)ジエンラテックスに加えられることを特徴とする、態様1~12のいずれか一つに記載の方法。
[態様15]
(カルボキシル化)ジエンエラストマーの(カルボキシル化)ジエンエラストマー分子鎖が少なくとも1種のポリマーを介して共有結合的に架橋された(カルボキシル化)ジエンエラストマーの層を含む予防用品、特に手袋であって、前記少なくとも1種のポリマーがメルカプト官能性シロキサンポリマーである、予防用品、特に手袋。
[態様16]
(カルボキシル化)ジエンエラストマーを含む予防用品のモジュラスの調整のための、2~50のモノマー単位数を有する多官能性ポリマーの使用。
[態様17]
予防用品の製造のための架橋剤としての、170g/mol~4000g/molのモル質量と、塩基触媒下でヒドロキシ基を形成する少なくとも2つの官能基とを有する多官能性有機化合物の使用。