(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】薬剤ディスペンサー
(51)【国際特許分類】
A61J 7/02 20060101AFI20221031BHJP
A61J 3/00 20060101ALN20221031BHJP
【FI】
A61J7/02
A61J3/00 310E
A61J3/00 310K
(21)【出願番号】P 2019002760
(22)【出願日】2019-01-10
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137947
【氏名又は名称】石井 貴文
(72)【発明者】
【氏名】大島 佳祐
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-529095(JP,A)
【文献】特表2017-516721(JP,A)
【文献】特開昭63-294307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 7/02
A61J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排出すべき薬剤に関する薬剤情報を記憶する薬剤情報記憶部と、
複数の前記薬剤を収容する収容部と、
前記薬剤を外部から取得可能な状態に排出する排出口と、
前記薬剤を前記収容部から前記薬剤排出口に搬送する搬送路と、
前記搬送路で前記薬剤を一時的に保持するストッパと、
前記ストッパで保持された前記薬剤を撮像する撮像部と、
前記撮像部での撮像結果、及び前記薬剤情報に基づいて、適切な薬剤が排出されようとしている場合に前記ストッパで保持された前記薬剤を前記排出口に排出させるよう前記ストッパを制御するストッパ制御部と、を備える、
薬剤ディスペンサー。
【請求項2】
前記ストッパ制御部は、不適切な薬剤が排出されようとしている場合には、前記ストッパで保持された前記薬剤の排出を中止する、
請求項1に記載の薬剤ディスペンサー。
【請求項3】
前記搬送路は傾斜を有しており、
前記ストッパは、前記薬剤が前記傾斜に沿って前記排出口に向かって移動することを規制する、
請求項1または請求項2に記載の薬剤ディスペンサー。
【請求項4】
前記ストッパ制御部は、前記撮像部での撮像結果に基づく画像認識により、適切な薬剤が排出されようとしていることを判断する、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の薬剤ディスペンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、使用者に薬剤を搬出する薬剤ディスペンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
多数の薬剤を使用する必要のある患者は、使用する薬剤を、自身で、または介護者もしくは看護師などが確認して使用する場合がある。しかし、使用すべき薬剤を誤ってしまう可能性を完全に排除することは困難である。そこで、使用すべき薬剤を自動的に判断して提供する薬剤ディスペンサーが考えられている。特許文献1には、自動的に患者に投薬を行うインテリジェント薬剤ディスペンサーが開示されている。特許文献2には、患者のコンプライアンスを決定等するための有用性、投薬時期、及び容量を変更及び調整するのを助ける携帯型薬剤ディスペンサーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-56208号公報
【文献】特表2014-528780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2に記載されたような従来の構成の薬剤ディスペンサーでは、投与される薬剤の監視が十分でなく、ユーザに不適切な薬剤が提供されてしまうことを確実に防止することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために次のような手段を採る。なお、以下の説明において、発明の理解を容易にするために図面中の符号等を括弧書きで付記するが、本発明の各構成要素はこれらの付記したものに限定されるものではなく、当業者が技術的に理解しうる範囲にまで広く解釈されるべきものである。
【0006】
本発明の一の手段は、
排出すべき薬剤に関する薬剤情報を記憶する薬剤情報記憶部(208)と、
複数の前記薬剤を収容する収容部(201)と、
前記薬剤を外部から取得可能な状態に排出する排出口(205)と、
前記薬剤を前記収容部から前記薬剤排出口に搬送する搬送路(204)と、
前記搬送路で前記薬剤を一時的に保持するストッパ(206)と、
前記ストッパで保持された前記薬剤を撮像する撮像部(207)と、
前記撮像部での撮像結果、及び前記薬剤情報に基づいて、適切な薬剤が排出されようとしている場合に前記ストッパで保持された前記薬剤を前記排出口に排出させるよう前記ストッパを制御するストッパ制御部(209)と、を備える、
薬剤ディスペンサーである。
【0007】
上記構成の薬剤ディスペンサーによれば、誤った薬剤が排出されることを防止することができ、ユーザに不適切な薬剤が提供されてしまうことを確実に防止することができる。
【0008】
上記薬剤ディスペンサーにおいて、好ましくは、
前記ストッパ制御部は、不適切な薬剤が排出されようとしている場合には、前記ストッパで保持された前記薬剤の排出を中止する。
【0009】
上記構成の薬剤ディスペンサーによれば、不適切な薬剤が排出されることをストッパで確実に防止することが可能となる。
【0010】
上記薬剤ディスペンサーにおいて、好ましくは、
前記搬送路は傾斜を有しており、
前記ストッパは、前記薬剤が前記傾斜に沿って前記排出口に向かって移動することを規制する。
【0011】
上記構成の薬剤ディスペンサーによれば、比較的簡易な構成で、適切な薬剤のみが排出される構成にすることができる。
【0012】
上記薬剤ディスペンサーにおいて、好ましくは、
前記ストッパ制御部は、前記撮像部での撮像結果に基づく画像認識により、適切な薬剤が排出されようとしていることを判断する。
【0013】
上記構成の薬剤ディスペンサーによれば、薬剤に特別な色または識別用の形状等を設けることなく、パターンマッチング等によって適切な薬剤か否かの判別を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、薬剤ディスペンサーを正面から見た平面図である。
【
図2】
図2は、薬剤ディスペンサーを側面から見た平面図である。
【
図3】
図3は、薬剤ディスペンサーを上面から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の薬剤ディスペンサーは、収容された薬剤が排出口に向かって搬出される傾斜面である搬送路にストッパが設けられ、ストッパで保持された薬剤を撮像する撮像部(カメラ)を設けた構成としている。さらに、本発明の薬剤ディスペンサーでは、排出しようとする薬剤が適切かどうかを撮像部の撮像結果に基づいて判定し、適切な薬剤のみを排出口に排出するよう作動する構成としている点を特徴のひとつとしている。
【0016】
本発明に係る実施形態について、以下の構成に従って図面を参照しながら具体的に説明する。ただし、以下で説明する実施形態はあくまで本発明の一例にすぎず、本発明の技術的範囲を限定的に解釈させるものではない。なお、各図面において、同一の構成要素には同一の符号を付しており、その説明を省略する場合がある。
1.実施形態
2.本発明の特徴
3.補足事項
【0017】
<1.実施形態>
本実施形態の薬剤ディスペンサーについて、
図1~
図3を参照しながら説明する。
図1~
図3は、本実施形態の薬剤ディスペンサーをそれぞれ異なる方向から見た平面図である。
図1~
図3に示されるように、本実施形態の薬剤ディスペンサーは、収容部201、リール巻取部202及び203、搬送路204、排出トレイ205、ストッパ206、撮像部207、薬剤情報記憶部208、及びストッパ制御部209を含んで構成される。
【0018】
<収容部201>
収容部201は、リール状に巻回された複数個の薬剤を保持する薬剤リールを収容する。つまり、収容部201は薬剤を収容する。薬剤リールは、2枚の帯状のリール部材によって薬剤を保持しており、リール部材を引き剥がすことで薬剤が取り出される。本実施形態の薬剤ディスペンサーは、2つの収容部201を備えている。収容部201は、薬剤収容部とも呼ばれる。
【0019】
<リール巻取部202及び203>
リール巻取部202及び203は、2つの収容部201に対してそれぞれ設けられ、回動することで薬剤リールの2枚のリール部材のどちらかを巻回して収容する。リール巻取部202及び203の作動は同期しており、リール巻取部202及び203が回動すると、収容部201の薬剤リールが回動しながら引き出され、リール部材が引き剥がされて薬剤201a(図面参照)が搬送路204に落下する。
【0020】
<搬送路204>
搬送路204は、収容部201から取り出された薬剤201aを排出トレイ205に向かって搬送する傾斜面である。搬送路204は、薬剤201aが排出トレイ205に向かって適切に転がる程度の斜面を有している。
【0021】
<排出トレイ205>
排出トレイ205は、搬送路204を転がってきた薬剤201aを、ユーザが外部から取得できる状態にして排出する(薬剤201b参照)。排出トレイ205は、薬剤ディスペンサーから排出される複数の薬剤を保持可能な大きさのトレイとして構成される。排出トレイ205は、本発明の「排出口」の一例である。
【0022】
<ストッパ206>
ストッパ206は、薬剤201aが収容部201から落下する位置と、排出トレイ205との間の位置の、搬送路204上に配置される。ストッパ206は、搬送路204を排出トレイ205に向かって転がる薬剤201aの移動を規制して、薬剤201aを一時的に保持する。
【0023】
<撮像部207>
撮像部207は、ストッパ206で保持された薬剤201aを撮像し、撮像結果をストッパ制御部209に出力する。本実施形態の撮像部207は、薬剤201aの撮像結果を、色彩情報を持つカラー画像として取得する。つまり、撮像部207の撮像結果には、薬剤201aの形状及び色彩に関する情報が含まれる。
【0024】
<薬剤情報記憶部208>
薬剤情報記憶部208は、不揮発性のメモリ装置などであって、排出すべき薬剤の種類及び個数などの情報を記憶している。薬剤情報記憶部208に記憶される情報は、予めユーザにより与えられる。薬剤情報記憶部208はさらに、収容部201に収容されているそれぞれの薬剤の色彩、形状、及び刻印などの情報を記憶している。薬剤情報記憶部208は、排出しようとする薬剤の判定の際に、これらの薬剤情報をストッパ制御部209に出力する。本明細書では、これらの排出すべき薬剤に関する情報、及び個々の薬剤の色彩等に関する情報を、薬剤情報と呼ぶ。
【0025】
<ストッパ制御部209>
ストッパ制御部209は、撮像部207での撮像結果と、薬剤情報記憶部208から受け取った薬剤情報とに基づいて、排出されようとしている薬剤201aが、排出されるべき適切な薬剤かどうかを判定し、判定結果に基づいてストッパ206の作動を制御する。ストッパ制御部209は、例えばパターンマッチングなどの周知の画像認識手段を用いて、ストッパ206で保持されている薬剤201aが、排出されるべき適切な薬剤かどうかを判断する。
【0026】
ストッパ206で保持されている薬剤201aが排出されるべき適切な薬剤である場合には、ストッパ制御部209はストッパ206による薬剤201aの移動規制を解除し、薬剤201aを排出トレイ205に向かって移動させる。一方、ストッパ206で保持されている薬剤201aが排出されるべき適切な薬剤でない場合には、ストッパ制御部209は、ストッパ206に保持されている薬剤201aを回収する。その後、ストッパ制御部209は、不適切な薬剤が排出されそうになったことを、音声出力または画像出力などの通知手段を用いてユーザに通知する。
【0027】
<2.本発明の特徴>
上記実施形態の薬剤ディスペンサーは、上記のような構成を採ることで、例えば以下のような特徴を有する。なお、以下で説明する実施形態の各構成は、本発明の構成の一例に過ぎず、本発明はこれらの具体的な構成に限定されるものではない。
【0028】
実施形態の薬剤ディスペンサーは、薬剤情報記憶部208、収容部201、排出トレイ205、搬送路204、ストッパ206、撮像部207、及びストッパ制御部209を含んだ構成としており、ストッパ制御部209は、撮像部207での撮像結果と薬剤情報とに基づいてストッパ206を制御している。このとき、ストッパ制御部209は、適切な薬剤が排出されようとしている場合には、保持している薬剤を排出トレイ205に移動させるようストッパ206を制御する。一方、ストッパ制御部209は、不適切な薬剤が排出されようとしている場合には、保持している薬剤が排出トレイ205に排出されないよう、回収することで排出を中止している。このように作動可能な構成とすることで、誤った薬剤が排出されることを防止することができ、ユーザに不適切な薬剤が提供されてしまうことを確実に防止することができる。
【0029】
また、実施形態の薬剤ディスペンサーは、搬送路204が傾斜を有しており、ストッパ206は、薬剤が排出トレイ205に向かって搬送路204を転がり移動することを規制する構成としている。この構成により、比較的簡易な構成で、適切な薬剤のみが排出される構成にすることができる。
【0030】
また、実施形態の薬剤ディスペンサーでは、ストッパ制御部209は、撮像部207での撮像結果に基づくパターンマッチングなどの画像認識手段を用いることで、排出されようとする薬剤が適切であるか否かを判断する構成としている。この構成により、薬剤に特別な色または識別用の形状等を設けることなく、パターンマッチング等によって適切な薬剤か否かの判別を行うことが可能となる。つまり、既存の薬剤の形状を薬剤ディスペンサー用に加工することなく利用することが可能となる。
【0031】
<3.補足事項>
以上、本発明の実施形態についての具体的な説明を行った。上記説明は、あくまで一具体例としての説明であって、本発明の範囲はこの実施形態に留まらず、当業者が把握可能な範囲にまで広く解釈されるものである。
【0032】
例えば、実施形態では排出トレイ205を設ける構成について説明したが、排出トレイ205は必須の構成ではない。つまり、搬送路204の先に皿状またはボウル状のものを配置して薬剤201bを受けるような構成としてもよい。
【0033】
また、実施形態では、撮像部207は、薬剤201aの形状のみでなく色彩情報を取得する構成としていたが、撮像部207は、薬剤201aの形状のみをモノクロ画像として取得するよう構成されてもよい。この場合、薬剤201aは形状のみで判定可能なものを用いる。
【0034】
また、実施形態では、薬剤が薬剤リールとして収容される構成を例示して説明したが、薬剤は別の周知の態様で収容されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、介護施設または自宅などにおいて利用される薬剤ディスペンサーなどとして好適に適用される。
【符号の説明】
【0036】
201…収容部
201a、201b…薬剤
202、203…リール巻取部
204…搬送路
205…排出トレイ
206…ストッパ
207…撮像部
208…薬剤情報記憶部
209…ストッパ制御部