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特許7166948チャージポンプ回路、半導体装置、半導体記憶装置及び電気機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】チャージポンプ回路、半導体装置、半導体記憶装置及び電気機器
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/07 20060101AFI20221031BHJP
【FI】
H02M3/07
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019015940
(22)【出願日】2019-01-31
(65)【公開番号】P2020124077
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 貴憲
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-129810(JP,A)
【文献】特開2010-124618(JP,A)
【文献】特開2008-220137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧入力端子と電圧出力端子との間に直列に挿入された複数の整流素子と、
前記複数の整流素子における互いに隣接する整流素子間の接続ノードに一端が接続され、他端が第1クロックライン及び第2クロックラインの何れか一方に接続される複数のコンデンサと、
第1レベル及び前記第1レベルよりも高電位の第2レベルを交互にとる所定の基準クロック信号に基づき、前記基準クロック信号と同相のクロック信号を第1クロック信号として前記第1クロックラインに出力するとともに前記基準クロック信号と逆相のクロック信号を第2クロック信号として前記第2クロックラインに出力するクロック出力動作を実行可能なクロックドライバと、
前記電圧出力端子に生じる出力電圧と所定の基準電圧との高低関係に応じたイネーブル信号を生成する電圧検出回路と、を備え、前記クロック出力動作により前記電圧入力端子における電圧よりも高い電圧を前記出力電圧として得るチャージポンプ回路であって、
前記クロックドライバは、所定の検査モードにおいて、前記出力電圧が前記基準電圧以上であることを前記イネーブル信号が示しているとき、前記基準クロック信号のレベルの前記第1レベルから前記第2レベルへの遷移に同期して前記クロック出力動作を停止させる第1停止制御と、前記基準クロック信号のレベルの前記第2レベルから前記第1レベルへの遷移に同期して前記クロック出力動作を停止させる第2停止制御と、を選択的に実行する
ことを特徴とするチャージポンプ回路。
【請求項2】
前記クロックドライバは、入力された選択信号に基づき前記基準クロック信号そのもの又は前記基準クロック信号の反転信号を選択的に出力するセレクタと、前記セレクタの出力信号のレベルの前記第1レベルから前記第2レベルへの遷移に同期して前記イネーブル信号をラッチするフリップフロップと、を有して、ラッチされた信号に基づき前記クロック出力動作を実行する又は非実行とし、
前記セレクタの状態により前記第1停止制御と前記第2停止制御が切り替えられる
ことを特徴とする請求項1に記載のチャージポンプ回路。
【請求項3】
前記クロックドライバは、入力された選択信号に基づき前記基準クロック信号そのもの又は前記基準クロック信号の反転信号を選択的に出力するセレクタと、前記セレクタの出力信号のレベルの前記第2レベルから前記第1レベルへの遷移に同期して前記イネーブル信号をラッチするフリップフロップと、を有して、ラッチされた信号に基づき前記クロック出力動作を実行する又は非実行とし、
前記セレクタの状態により前記第1停止制御と前記第2停止制御が切り替えられる
ことを特徴とする請求項1に記載のチャージポンプ回路。
【請求項4】
前記クロックドライバは、前記出力電圧が前記基準電圧以上であることを示す前記イネーブル信号が前記フリップフロップにてラッチされているとき、前記クロック出力動作を非実行とし、そうでないとき、前記クロック出力動作を実行する
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のチャージポンプ回路。
【請求項5】
前記クロックドライバは、前記検査モードと異なる通常モードにおいて、前記出力電圧が前記基準電圧以上であることを前記イネーブル信号が示しているとき、前記第1停止制御及び前記第2停止制御の内、予め定められた一方の停止制御により前記クロック出力動作を停止させる
ことを特徴とする請求項1~4の何れかに記載のチャージポンプ回路。
【請求項6】
前記複数のコンデンサは、前記第1クロックラインに接続される第1コンデンサ、及び、前記第2クロックラインに接続される第2コンデンサの何れかに分類され、
前記複数の整流素子における互いに隣接する整流素子間の接続ノードは複数あり、その複数の接続ノードに含まれる、互いに隣接する2つの接続ノードの内の一方は前記第1コンデンサの一端に接続され且つ他方は前記第2コンデンサの一端に接続される
ことを特徴とする請求項1~5の何れかに記載のチャージポンプ回路。
【請求項7】
各整流素子は、ダイオード接続されたMOSFETにより構成される、又は、ダイオードにより構成される
ことを特徴とする請求項1~6の何れかに記載のチャージポンプ回路。
【請求項8】
請求項1~7の何れかに記載のチャージポンプ回路を含む半導体集積回路を備えた
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項1~7の何れかの記載のチャージポンプ回路と、
データを記憶可能なメモリ部と、を備え、
前記チャージポンプ回路の出力電圧を用いて前記メモリ部に対しデータの書き込みを行う
ことを特徴とする半導体記憶装置。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体記憶装置と、
前記半導体記憶装置に接続され、前記半導体記憶装置に対してデータの書き込み又は読み出しを指示するコマンドを出力する信号処理装置と、を備えた
ことを特徴とする電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャージポンプ回路、並びに、チャージポンプ回路を利用した半導体装置、半導体記憶装置及び電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
図17に、チャージポンプ回路の一例としてディクソン型のチャージポンプ回路900を示す。チャージポンプ回路900は例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)などの半導体記憶装置に組み込まれる。
【0003】
チャージポンプ回路900は、入力電圧Viが加わる電圧入力端子951と出力電圧Voが加わる電圧出力端子952との間に直列に挿入された複数の整流素子(ここではダイオード接続されたMOSFET)と、複数の整流素子における互いに隣接する整流素子間に一端が接続され、他端がクロックライン961及び962の何れか一方に接続された複数のコンデンサと、基準クロック信号と同相のクロック信号CLK1をクロックライン961に出力すると共に基準クロック信号と逆相のクロック信号CLK2をクロックライン962に出力するクロックドライバ910と、出力電圧Voと所定の基準電圧との高低関係に応じたイネーブル信号ENを生成する電圧検出回路920と、を備える。
【0004】
チャージポンプ回路900内の素子又は出力電圧Voを受ける素子に定格を超える電圧が加わらないよう、出力電圧Voが出力電圧Voの目標電圧である基準電圧以上となると、電圧検出回路920は“0”の論理値を有するイネーブル信号ENをクロックドライバ910に出力し、これを受けてクロック信号CLK1及びCLK2の出力が停止される。その後、電圧出力端子952に接続される負荷での電力消費により出力電圧Voが基準電圧を下回ると、“1”の論理値を有するイネーブル信号ENの生成を通じ、クロック信号CLK1及びCLK2の出力が再開される。これらの動作の繰り返しにより、出力電圧Voが基準電圧近辺にて安定化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-131069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
イネーブル信号ENに基づきクロック信号CLK1及びCLK2の出力/非出力を制御する方法として、同期入力型のDフリップフロップを用意しておき、基準クロック信号のローレベルからハイレベルへの遷移に同期してイネーブル信号ENをラッチして、ラッチした信号に基づきクロック信号CLK1及びCLK2の出力/非出力を制御する方法MTDが考えられる。
【0007】
一方において、チャージポンプ回路900を含む装置(例えばEEPROM)の出荷検査工程では、出荷された装置がユーザの下で初期不良を呈する確率を低減すべく、電圧加速を利用したスクリーニング工程が実施される。電圧加速とは、実稼働動作において或る素子に対し加わることが想定される電圧の最大値よりも高い電圧を当該素子に加えることに相当し、前者の電圧(最大値)と後者の電圧との差が大きいほど電圧加速の幅が大きい。電圧加速の幅は適切であることが肝要である。電圧加速の幅が大きすぎると過剰品質を求めることになって好ましくないが、電圧加速の幅が小さすぎると定格に対してマージンの少ない装置が良品と判断されることになり、ユーザの下で初期不良が生じる確率が高まる。
【0008】
チャージポンプ回路900を含む装置(例えばEEPROM)に対しては、スクリーニング工程において、チャージポンプ回路900へ入力される電源電圧を実稼働時での最大電圧よりも高めることで、また上記基準電圧を実稼働時のそれよりも高めることで、電圧加速が得られる。
【0009】
しかしながら、上記の方法MTDを用いて構成されたチャージポンプ回路900では、スクリーニング工程において局所的に電圧加速が不十分となる箇所が発生しうる(この現象については後に詳説される)。つまり、電圧加速用の適正な電圧を回路全体に対して加えることが難しい。電圧加速が不十分となる箇所が存在していると、ユーザの下での初期不良の発生確率が高まる。
【0010】
本発明は、適正な電圧(特に例えば電圧加速用の適正な電圧)を回路全体に対して加えることを可能とするチャージポンプ回路、並びに、そのチャージポンプ回路を利用した半導体装置、半導体記憶装置及び電気機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るチャージポンプ回路は、電圧入力端子と電圧出力端子との間に直列に挿入された複数の整流素子と、前記複数の整流素子における互いに隣接する整流素子間の接続ノードに一端が接続され、他端が第1クロックライン及び第2クロックラインの何れか一方に接続される複数のコンデンサと、第1レベル及び前記第1レベルよりも高電位の第2レベルを交互にとる所定の基準クロック信号に基づき、前記基準クロック信号と同相のクロック信号を第1クロック信号として前記第1クロックラインに出力するとともに前記基準クロック信号と逆相のクロック信号を第2クロック信号として前記第2クロックラインに出力するクロック出力動作を実行可能なクロックドライバと、前記電圧出力端子に生じる出力電圧と所定の基準電圧との高低関係に応じたイネーブル信号を生成する電圧検出回路と、を備え、前記クロック出力動作により前記電圧入力端子における電圧よりも高い電圧を前記出力電圧として得るチャージポンプ回路であって、前記クロックドライバは、所定の検査モードにおいて、前記出力電圧が前記基準電圧以上であることを前記イネーブル信号が示しているとき、前記基準クロック信号のレベルの前記第1レベルから前記第2レベルへの遷移に同期して前記クロック出力動作を停止させる第1停止制御と、前記基準クロック信号のレベルの前記第2レベルから前記第1レベルへの遷移に同期して前記クロック出力動作を停止させる第2停止制御と、を選択的に実行することを特徴とする。
【0012】
具体的には例えば、前記チャージポンプ回路において、前記クロックドライバは、入力された選択信号に基づき前記基準クロック信号そのもの又は前記基準クロック信号の反転信号を選択的に出力するセレクタと、前記セレクタの出力信号のレベルの前記第1レベルから前記第2レベルへの遷移に同期して前記イネーブル信号をラッチするフリップフロップと、を有して、ラッチされた信号に基づき前記クロック出力動作を実行する又は非実行とし、前記セレクタの状態により前記第1停止制御と前記第2停止制御が切り替えられると良い。
【0013】
或いは例えば、前記チャージポンプ回路において、前記クロックドライバは、入力された選択信号に基づき前記基準クロック信号そのもの又は前記基準クロック信号の反転信号を選択的に出力するセレクタと、前記セレクタの出力信号のレベルの前記第2レベルから前記第1レベルへの遷移に同期して前記イネーブル信号をラッチするフリップフロップと、を有して、ラッチされた信号に基づき前記クロック出力動作を実行する又は非実行とし、前記セレクタの状態により前記第1停止制御と前記第2停止制御が切り替えられても良い。
【0014】
また例えば、前記チャージポンプ回路において、前記クロックドライバは、前記出力電圧が前記基準電圧以上であることを示す前記イネーブル信号が前記フリップフロップにてラッチされているとき、前記クロック出力動作を非実行とし、そうでないとき、前記クロック出力動作を実行すると良い。
【0015】
また例えば、前記チャージポンプ回路において、前記クロックドライバは、前記検査モードと異なる通常モードにおいて、前記出力電圧が前記基準電圧以上であることを前記イネーブル信号が示しているとき、前記第1停止制御及び前記第2停止制御の内、予め定められた一方の停止制御により前記クロック出力動作を停止させると良い。
【0016】
また例えば、前記チャージポンプ回路において、前記複数のコンデンサは、前記第1クロックラインに接続される第1コンデンサ、及び、前記第2クロックラインに接続される第2コンデンサの何れかに分類され、前記複数の整流素子における互いに隣接する整流素子間の接続ノードは複数あり、その複数の接続ノードに含まれる、互いに隣接する2つの接続ノードの内の一方は前記第1コンデンサの一端に接続され且つ他方は前記第2コンデンサの一端に接続されると良い。
【0017】
また例えば、前記チャージポンプ回路において、各整流素子は、ダイオード接続されたMOSFETにより構成されていて良いし、或いは、ダイオードにより構成されていても良い。
【0018】
本発明に係る半導体装置は、前記チャージポンプ回路を含む半導体集積回路を備えたことを特徴とする。
【0019】
本発明に係る半導体記憶装置は、前記チャージポンプ回路と、データを記憶可能なメモリ部と、を備え、前記チャージポンプ回路の出力電圧を用いて前記メモリ部に対しデータの書き込みを行うことを特徴とする。
【0020】
本発明に係る電気機器は、前記半導体記憶装置と、前記半導体記憶装置に接続され、前記半導体記憶装置に対してデータの書き込み又は読み出しを指示するコマンドを出力する信号処理装置と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、適正な電圧(特に例えば電圧加速用の適正な電圧)を回路全体に対して加えることを可能とするチャージポンプ回路、並びに、そのチャージポンプ回路を利用した半導体装置、半導体記憶装置及び電気機器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態に係るEEPROMの概略的な全体構成をMPUと共に示す図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の外観斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るチャージポンプ回路の内部構成図である。
図4図3のセレクタにおける2つ選択状態を示す図である。
図5】本発明の第1実施形態に係り、チャージポンプ回路の出力電圧と基準電圧との関係を示す図である。
図6】本発明の第1実施形態に係り、図3の電圧検出回路の内部構成例を示す図である。
図7】本発明の第1実施形態に係り、図3の電圧入力回路の内部構成例を示す図である。
図8】本発明の第1実施形態に係り、EEPROMの出荷検査工程からユーザでの実稼働動作に至るまでの流れを示すフローチャートである。
図9】本発明の第1実施形態に係り、特定の条件下において、チャージポンプ回路の各出力段に生じる電圧のピーク値を示すグラフである。
図10】本発明の第1実施形態に係り、3つの条件下において、チャージポンプ回路の各出力段に生じる電圧のピーク値を示すグラフである。
図11】本発明の第1実施形態に係り、3つの条件下において、チャージポンプ回路の各出力段に生じる電圧のピーク値を示すグラフである。
図12図8のスクリーニング工程のフローチャートである。
図13】本発明の第1実施形態の構成との対比に供される参考構成を示す図である。
図14】本発明の第2実施形態に係るクロックドライバの構成を示す図である。
図15】本発明の第3実施形態に係る車両の外観図である。
図16】本発明の第3実施形態に係るエアバックシステムのブロック図である。
図17】本発明の関連技術に係るチャージポンプ回路の内部構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、素子又は部材等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、素子又は部材等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の“PCLK”によって参照される基準クロック信号は(図3参照)、基準クロック信号PCLKと表記されることもあるし、クロック信号PCLKと略記されることもあり得るが、それらは全て同じものを指す。
【0024】
まず、本実施形態の記述にて用いられる幾つかの用語について説明を設ける。グランドとは、0V(ゼロボルト)の基準電位を有する導電部を指す又は基準電位そのものを指す。各実施形態において、特に基準を設けずに示される電圧は、グランドから見た電位を表す。ラインは配線と同義である。レベルとは電位のレベルを指し、任意の信号又は電圧についてハイレベルはローレベルよりも高い電位を有する。
【0025】
任意の信号又は電圧において、ローレベルからハイレベルへの切り替わりをアップエッジと称し、ローレベルからハイレベルへの切り替わりのタイミングをアップエッジタイミングと称する。同様に、任意の信号又は電圧において、ハイレベルからローレベルへの切り替わりをダウンエッジと称し、ハイレベルからローレベルへの切り替わりのタイミングをダウンエッジタイミングと称する。
【0026】
FET(電界効果トランジスタ)として構成された任意のトランジスタについて、オン状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が導通状態となっていることを指し、オフ状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が非導通状態(遮断状態)となっていることを指す。以下、オン状態、オフ状態を、単に、オン、オフと表現することもある。
【0027】
<<第1実施形態>>
本発明の第1実施形態を説明する。図1に、本発明の第1実施形態に係るEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)1の概略的な全体ブロック図を示す。図1にはEEPROM1に接続される信号処理装置の例であるMPU(Micro Processing Unit)2も示されている。EEPROM1は、チャージポンプ回路10と、電圧選択部20と、メモリ部30と、制御部40と、を備える。チャージポンプ回路10、電圧選択部20及びメモリ部30及び制御部40を含む、EEPROM1を形成する各回路が半導体にて集積化されて半導体集積回路が構成される。
【0028】
図2にEEPROM1を含む半導体装置IC1の外観斜視図を示す。半導体装置IC1は、EEPROM1を構成する各素子を含んだ半導体集積回路を、樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで形成された電子部品である。半導体装置IC1の筐体に複数の外部端子が露出して設けられており、その複数の外部端子には、図1に示される電源入力端子VCC、グランド端子GND及び通信用端子COMを含む。これら以外の端子も、上記複数の外部端子に含まれうる。通信用端子COMに対してMPU2が接続される。通信用端子COMは2以上の外部端子から構成されていて良い。MPU2は通信用端子COMを介して様々なコマンドをEEPROM1に与えることができる。コマンドは制御部40に対して与えられるものであると解しても良い。尚、図2に示される半導体装置IC1の外部端子の数及び半導体装置IC1の外観は例示に過ぎず、半導体装置IC1において外部端子の数及び筐体の種類は任意である。以下に述べるEEPROM1に対する説明は半導体装置IC1に対する説明でもある。
【0029】
チャージポンプ回路10は、電源電圧Vccを昇圧することで電源電圧Vccよりも高い電圧を出力電圧Vppとして生成する。電源入力端子VCCに対し、EEPROM1の外部から正の直流電圧である電源電圧Vccが入力される。例えば1.6V以上且つ5.5以下の範囲内の電圧が電源電圧Vccとして入力される。これに対し、出力電圧Vppの目標となる基準電圧Vtgは例えば15V~20V程度に設定される。グランド端子GNDはグランドに接続される。
【0030】
電圧選択部20は、制御部40による制御の下、電源電圧Vcc及びチャージポンプ回路10の出力電圧Vppの内、何れか一方をメモリ駆動電圧Vmとしてメモリ部30に供給する。
【0031】
メモリ部30は、マトリクス状に配置される複数のメモリセルから構成されたメモリアレイを含む。各メモリセルにて1ビット分のデータが記憶される。メモリ部30は、電源入力端子VCCに対する電源電圧Vccの供給が途絶えても、各メモリセルでの記憶内容を保持できる不揮発性メモリである。メモリ部30において多数のアドレスから成るアドレス空間が定義され、各アドレスに8ビット分のデータを記憶することができる。
【0032】
制御部40は、制御ロジック、アドレスレジスタ、アドレスデコーダ及びデータレジスタなどを含み、MPU2から受信したコマンドに基づき、チャージポンプ回路10及び電圧選択部20の動作を制御すると共にメモリ部30に対するデータの読み書きを実行する。
【0033】
MPU2がEEPROM1に対して送信するコマンドには、EEPROM1に対してデータの書き込みを指示するライトコマンド、及び、EEPROM1に対してデータの読み出しを指示するリードコマンドが含まれる。MPU2がEEPROM1に対して送信するコマンドに、ライトコマンド及びリードコマンド以外のコマンドが更に含まれ得る。
【0034】
EEPROM1にてリードコマンドが受信されたとき、制御部40は、以下のリード処理を実行する。リード処理において、制御部40は、メモリ駆動電圧Vmとして電源電圧Vccがメモリ部30に供給されるよう電圧選択部20を制御した状態で、リードコマンドにて指定されるアドレス内のデータをメモリ部30から読み出し、読み出したデータを通信用端子COMを介してMPU2に送信する。
【0035】
EEPROM1にてライトコマンドを受信したとき、制御部40は、以下のライト処理を実行する。ライト処理において、制御部40は、メモリ駆動電圧Vmとして出力電圧Vppがメモリ部30に供給されるよう電圧選択部20を制御した状態で、ライトコマンドにて指定されるメモリ部30内のアドレスに対しライトコマンドにて指定されるデータを書き込む。EEPROM1においてメモリ部30内のデータを消去するイレース処理も実行可能であるが、イレース処理は規定の値(例えば“0”の値)をメモリ部30に書き込むことに相当するため、以下ではイレース処理もライト処理の一種であると考える。
【0036】
チャージポンプ回路10が行う動作であって、且つ、電源電圧Vccを昇圧することで電源電圧Vccよりも高い電圧を出力電圧Vppとして生成する動作を昇圧動作と称する。昇圧動作の実行時において、出力電圧Vppは、出力電圧Vppに対して予め設定された目標電圧である基準電圧Vtgにて安定化される。ここにおける安定化とは、出力電圧Vppが概ね基準電圧Vtg近辺に保たれることを意味し、一時的に出力電圧Vppが基準電圧Vtgを多少上回ることもあるし、基準電圧Vtgを多少下回ることもある。
【0037】
制御部40は、チャージポンプ回路10による昇圧動作の実行、非実行を制御する機能を備える。具体的には、制御部40は、ライト処理が行われる区間においてチャージポンプ回路10に昇圧動作を実行させ、それ以外の区間においてチャージポンプ回路10による昇圧動作を停止させる。相対的に高い電圧(Vpp)はデータの書き込みの際にのみ必要となるからである。従って、リード処理が行われる区間を含め、ライト処理が行われない区間では昇圧動作は停止せしめられる。尚、昇圧動作を開始してから或る程度時間が経過しないと出力電圧Vppが基準電圧Vtgに達さないが、メモリ部30における実際のデータの書き込みは、昇圧動作の開始後、出力電圧Vppが基準電圧Vtgに達してから実行される。
【0038】
図3にチャージポンプ回路10の内部構成を示す。チャージポンプ回路10は所謂ディクソン型のチャージポンプ回路である。チャージポンプ回路10は、n個の整流素子D[1]~D[n]と、n個のコンデンサC[1]~C[n]と、クロックドライバ110と、電圧検出回路120と、電圧入力回路130と、オシレータ140と、を備える。尚、オシレータ140は、EEPROM1内であって且つチャージポンプ回路10外に設けられる回路であると考えても良い。nは2以上の任意の整数であり、例えば“n=34”である。以下では、特に記述無き限り“n=34”であると考える。ラインLL1及びLL2はチャージポンプ回路10に設けられたクロックラインを表している。
【0039】
オシレータ140は基準クロック信号PCLKを生成及び出力する。オシレータ140は必要なときにのみ基準クロック信号PCLKの生成を行う回路である。即ち、オシレータ140は、EEPROM1にてライトコマンドが受信されたことに応答して基準クロック信号PCLKの生成及び出力を開始し、ライト処理の完了に応答して基準クロック信号PCLKの生成を停止する。リード処理が行われる区間を含め、ライト処理が行われない区間では基準クロック信号PCLKの生成は停止される。但し、オシレータ140にて基準クロック信号PCLKが常時生成されるようにしても構わない。基準クロック信号PCLKを含む本実施形態で述べる全てのクロック信号は所定の周波数を有する矩形波信号であり、故に、ハイレベル、ローレベルの信号レベルを周期的に且つ交互にとる。
【0040】
整流素子D[1]~D[n]は電圧入力端子151と電圧出力端子152との間に直列に挿入される。ここでは、各整流素子は、ダイオード接続されたNチャネル型のMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)にて構成されているものとする。各整流素子としてのMOSFETを含む任意のMOSFETは、特に記述無き限りエンハンスメント型のMOSFETであるとする。電圧出力端子152にチャージポンプ回路10の出力電圧Vppが生じる。
【0041】
具体的には、整流素子D[i]としてのMOSFETにおいてドレイン及びゲートが互いに共通接続される。“i”は任意の整数を表す。つまり例えば、整流素子D[1]としてのMOSFETにおいてドレイン及びゲートが互いに共通接続され、整流素子D[2]としてのMOSFETにおいてドレイン及びゲートが互いに共通接続される。整流素子D[3]~D[n]についても同様である。そして、電圧入力端子151から電圧出力端子152に向け、整流素子D[1]、D[2]、D[3]、・・・、D[n-1]、D[n]の順番で、整流素子D[1]~D[n]が直列接続される。各整流素子は電荷転送素子として機能する。各整流素子としてのMOSFETにおいて、ドレインが電荷の入力側に対応し、ソースが電荷の出力側に対応する。
【0042】
電圧入力端子151から電圧出力端子152までにおいて、電圧入力端子151に対して近い方が前段に対応し、電圧出力端子152に対して近い方が後段に対応する。故に、整流素子D[i]から見て、整流素子D[i-1]は前段側に位置し、整流素子D[i+1]は後段側に位置する(ここにおける“i”は2以上且つ(n-1)以下の整数)。整流素子D[1]を除く各整流素子のドレインは前段側に隣接する整流素子のソースに接続され、且つ、整流素子D[n]を除く各整流素子のソースは後段側に隣接する整流素子のドレインに接続される。即ち、2以上且つ(n-1)以下の整数である変数“i”を用いて表現すると、整流素子D[i]のドレインは整流素子D[i-1]のソースに接続され、整流素子D[i]のソースは整流素子D[i+1]のドレインに接続される。そして、最も前段側に配置される整流素子D[1](即ち初段に配置される整流素子D[1])のドレインは電圧入力端子151に接続され、最も後段側に配置される整流素子D[n](即ち最終段に配置される整流素子D[n])のソースは電圧出力端子152に接続される。
【0043】
互いに隣接する2つの整流素子D[i-1]及びD[i]間の接続ノード(より具体的には、整流素子D[i-1]のソースと整流素子D[i]のドレインとが互いに接続されるノード)を、符号“ND[i]”にて表す。また、便宜上、整流素子D[1]のドレインが接続される電圧入力端子151を接続ノードND[1]と表現し、整流素子D[n]のソースが接続される電圧出力端子152を接続ノード[n+1]と表現することがある。コンデンサC[i]の一端はノードND[i]に接続される(ここおける“i”は1以上n以下の任意の整数)。コンデンサC[1]~C[n]の内、奇数番目のコンデンサの他端は第1クロックラインLL1に接続され、偶数番目のコンデンサの他端は第2クロックラインLL2に接続される。即ち、コンデンサC[2・m-1]の他端は第1クロックラインLL1に接続され、コンデンサC[2・m]の他端は第2クロックラインLL2に接続される。ここにおける“m”は、1以上n/2以下の整数である。尚、コンデンサC[i]の一端、他端は、夫々、第1端、第2端に相当する。コンデンサC[i]の第1端は整流素子接続端に相当し、コンデンサC[i]の第2端はクロックライン接続端に相当する。
【0044】
第1クロックラインLL1は第1クロック信号CLKが伝搬されるべき配線であり、第2クロックラインLL2は第2クロック信号CLKBが伝搬されるべき配線である。コンデンサC[1]~C[n]は、第1クロックラインLL1に接続される第1コンデンサ及び第2クロックラインLL2に接続される第2コンデンサの何れかに分類される、と言える。互いに隣接する2つの接続ノードND[i]及びND[i+1]の内、一方のノードは第1コンデンサの一端に接続され且つ他方のノードは第2コンデンサの一端に接続されることになる。
【0045】
クロックドライバ110について説明する。クロックドライバ110は、クロックラインLL1、LL2に対して、夫々、クロック信号CLK、CLKBを供給するための回路である。図3のクロックドライバ110は、AND回路111と、インバータ回路112と、フロップフロップ113(以下FF113と称することがある)と、インバータ回路114と、セレクタ115と、を備える。オシレータ140からの基準クロック信号PCLKがクロックドライバ110に供給される。
【0046】
インバータ回路114は、基準クロック信号PCLKの反転信号である反転基準クロック信号PCLKBを生成及び出力する。セレクタ115は、基準クロック信号PCLKを受ける第1入力端子と、反転基準クロック信号PCLKBを受ける第2入力端子と、選択信号SELを受ける選択制御端子とを備え、選択信号SELに応じて基準クロック信号PCLK及び反転基準クロック信号PCLKBの何れか一方を選択的に出力する。制御部40から選択信号SELが供給されて良い。クロック信号PCLK及びPCLKBの何れかである、セレクタ115から出力されるクロック信号を選択クロック信号SCLKと称する。
【0047】
図4(a)、(b)示す如く、セレクタ115での選択状態は第1選択状態及び第2選択状態の何れかとなる。第1選択状態では基準クロック信号PCLKが選択クロック信号SCLKとなり、第2選択状態では反転基準クロック信号PCLKBが選択クロック信号SCLKとなる。
【0048】
FF113は、ポジティブエッジトリガ型のDフリップフロップであり、D入力端子、クロック入力端子及びQ出力端子を有する。FF113のクロック入力端子に対してセレクタ115からの選択クロック信号SCLKが入力され、FF113のD入力端子に対して電圧検出回路120からのイネーブル信号CPENが入力される。イネーブル信号CPENは“0”又は“1”の論理値を持つ二値化信号であり、ここでは、ローレベルのイネーブル信号CPENが“0”の論理値を持ち且つハイレベルのイネーブル信号CPENが“1”の論理値を持つものとする。
【0049】
FF113は、選択クロック信号SCLKのアップエッジ(即ちローレベルからハイレベルへの遷移)に同期してイネーブル信号CPENをラッチし、ラッチした信号をQ出力端子から出力する。故に、選択クロック信号SCLKのアップエッジタイミングでのイネーブル信号CPENのレベルがローレベルである場合、ローレベルのイネーブル信号CPENがラッチされることで(換言すればイネーブル信号CPENにて示される“0”の論理値がラッチされることで)、選択クロック信号SCLKの次回のアップエッジタイミングまでFF113の出力信号のレベルはローレベルに保持される。逆に、選択クロック信号SCLKのアップエッジタイミングでのイネーブル信号CPENのレベルがハイレベルである場合、ハイレベルのイネーブル信号CPENがラッチされることで(換言すればイネーブル信号CPENにて示される“1”の論理値がラッチされることで)、選択クロック信号SCLKの次回のアップエッジタイミングまでFF113の出力信号のレベルはハイレベルに保持される。
【0050】
AND回路111は、基準クロック信号PCLKとFF113の出力信号との論理積信号を出力する。インバータ回路112はAND回路111の出力信号の反転信号を出力する。AND回路111の出力信号が加わるAND回路111の出力端子は第1クロックラインLL1に接続され、インバータ回路112の出力信号が加わるインバータ回路112の出力端子は第2クロックラインLL2に接続される。
【0051】
故に、FF113の出力信号がハイレベルである場合、基準クロック信号PCLKがそのままAND回路111を通じ第1クロック信号CLKとして第1クロックラインLL1に出力されると共に、基準クロック信号PCLKを反転させたクロック信号がAND回路111及びインバータ回路112を通じ第2クロック信号CLKBとして第2クロックラインLL2に出力される。FF113の出力信号がローレベルである場合、AND回路111の出力信号のレベル(故に第1クロックラインLL1の信号レベル)はローレベルに維持され、且つ、インバータ回路112の出力信号のレベル(故に第2クロックラインLL2の信号レベル)はハイレベルに維持される。
【0052】
このように、クロックドライバ110は、FF113の出力信号がハイレベルである場合、基準クロック信号PCLKと同相のクロック信号を第1クロック信号CLKとして第1クロックラインLL1に出力すると共に基準クロック信号PCLKと逆相のクロック信号を第2クロック信号CLKBとして第2クロックラインLL2に出力する動作(以下、クロック出力動作と称する)を実行する。クロック出力動作にて上述の昇圧動作が実現される。FF113の出力信号がローレベルである場合にはクロック出力動作は非実行となる(換言すればクロック出力動作は停止される)。
【0053】
図5に、昇圧動作の開始後における出力電圧Vppの変化の様子を示す。昇圧動作の開始はクロック出力動作の開始に相当する。クロック出力動作の実行中には、各整流素子の導通/非導通及び各コンデンサでの電荷の蓄積が繰り返されることで出力電圧Vppが上昇してゆく。そして、出力電圧Vppが基準電圧Vtgに達すると後述の電圧検出回路120の機能によりクロック出力動作が停止される。クロック出力動作の停止区間では、電圧入力端子151から電圧出力端子152に向けた電荷の供給が途絶えるので、少なくとも出力電圧Vppの上昇は停止し、電圧出力端子152に接続される負荷(メモリ部30を含む)の電力消費を通じ出力電圧Vppが低下してゆく。そして、出力電圧Vppが基準電圧Vtgを下回るとクロック出力動作が再開される。これらのシーケンスが繰り返される。図5において区間300は、出力電圧Vppが一旦基準電圧Vtgに達した後、出力電圧Vppが基準電圧Vtg近辺に保たれる定常出力区間を表す。
【0054】
電圧検出回路120について説明する。電圧検出回路120は、電圧出力端子152に接続され、チャージポンプ回路10の出力電圧Vppに応じ、ローレベル又はハイレベルのイネーブル信号CPENを出力する。具体的には、電圧検出回路120は、電圧出力端子152に生じる出力電圧Vppと所定の基準電圧Vtgとの高低関係を検出し、その高低関係に応じたイネーブル信号CPENを生成及び出力する。
【0055】
図6に電圧検出回路120の一構成例を示す。図6の電圧検出回路120は、ツェナーダイオード121と、トランジスタ122~124と、定電流回路125と、バッファ回路126と、を備える。トランジスタ122はPチャネル型のMOSFETとして構成され、トランジスタ123及び124はNチャネル型のMOSFETとして構成される。
【0056】
ツェナーダイオード121のカソードは電圧出力端子152に接続され、ツェナーダイオード121のアノードはトランジスタ122のソースに接続される。ツェナーダイオード121は複数のツェナーダイオードを直列接続したものであって良いし、単一のツェナーダイオードであっても良い。トランジスタ122のドレインと、トランジスタ123のドレイン及びゲートと、トランジスタ124のゲートとは、互いに共通接続される。トランジスタ123及び124の各ソースはグランドに接続される。トランジスタ123及び124によりカレントミラー回路が形成される。トランジスタ124のドレインは、定電流回路125に接続されると共にバッファ回路126の入力端子に接続される。定電流回路125は、電源電圧Vccに基づき定電流をトランジスタ124のドレインに向けて流すよう動作する。バッファ回路126は、トランジスタ124のドレインでの電圧が所定の閾電圧未満であれば、ローレベルのイネーブル信号CPENを出力し、トランジスタ124のドレインでの電圧が所定の閾電圧以上であれば、ハイレベルのイネーブル信号CPENを出力する。バッファ回路126は2つのインバータ回路を直列接続して構成されるものであって良い。
【0057】
図6の電圧検出回路120は以下のように動作する。出力電圧Vppが所定の基準電圧Vtgよりも低いときには、ツェナーダイオード121が非導通となってトランジスタ122及び123に電流が流れず、故にトランジスタ124に電流が流れないので、トランジスタ124のドレイン電圧が閾電圧よりも高くなってイネーブル信号CPENがハイレベルとなる。一方、出力電圧Vppが所定の基準電圧Vtg以上であるときには、ツェナーダイオード121が導通してトランジスタ122及び123に電流が流れ、故にトランジスタ124にも電流が流れるので、トランジスタ124のドレイン電圧が閾電圧未満となってイネーブル信号CPENがローレベルとなる。
【0058】
トランジスタ122のゲートには所定の調整電圧Vgが印加される。調整電圧Vgは例えば0V又は所定の正の直流電圧とされる。ツェナーダイオード121に電流が流れるときのトランジスタ122のソース電圧は、調整電圧Vgの増減に伴って増減する。故に、上述の基準電圧Vtgは調整電圧Vgの増減に伴って増減することになる。制御部40(図1参照)の制御の下で調整電圧Vgが可変設定されることになるが、調整電圧Vgの可変設定の利用方法については後述される。
【0059】
尚、実際には、出力電圧Vppが基準電圧Vtg近辺にあるときにおけるツェナーダイオード121の導通/非導通の境界は幅を有した概念であると考えることができる。イネーブル信号CPENがローレベルとなる程度にツェナーダイオード121に電流が流れる状態がツェナーダイオード121の導通状態に相当し、それ以外でのツェナーダイオード121の状態はツェナーダイオード121の非導通状態に相当する、と考えることもできる。
【0060】
何れにせよ図6に示した回路構成は例に過ぎず、出力電圧Vppが所定の基準電圧Vtg以上であるときローレベルのイネーブル信号CPENを出力する一方で出力電圧Vppが基準電圧Vtg未満であるときハイレベルのイネーブル信号CPENを出力する機能を有し、且つ、基準電圧Vtgの可変設定機能を有している限り、電圧検出回路120の内部構成は任意である。ローレベルのイネーブル信号CPENは、出力電圧Vppが所定の基準電圧Vtg以上となっていることを示す信号として機能する。これに対し、ハイレベルのイネーブル信号CPENは、出力電圧Vppが所定の基準電圧Vtg未満であることを示す信号として機能する。
【0061】
次に、電圧入力回路130(図3参照)について説明する。電圧入力回路130は、電圧入力端子151に対して電源電圧Vccに基づく電圧を入力する回路である。
【0062】
図7に電圧入力回路130の一構成例を示す。図7の電圧入力回路130は、Pチャネル型のMOSFETとして構成されたトランジスタ131と、Nチャネル型のMOSFETとして構成されたトランジスタ132及び133と、コンデンサ134と、を備える。トランジスタ131のソースには電源電圧Vccが印加される。トランジスタ131のゲートはグランドに接続される。トランジスタ131のドレインと、トランジスタ132のドレインと、トランジスタ133のドレイン及びゲートは、互いに共通接続される。トランジスタ132のソースは電圧入力端子151に接続される。コンデンサ134の一端はトランジスタ132のゲート及びトランジスタ133のソースに共通接続され、コンデンサ134の他端は第2クロックラインLL2に接続される。
【0063】
このような電圧入力回路130を用いることで、クロック出力動作が行われている区間においては、電源電圧Vccよりも高い電圧を電圧入力端子151に生じさせることができ、電圧入力端子151での電圧を整流素子D[1]~D[n]及びコンデンサC[1]~C[n]にて更に高めて出力電圧Vppを得ることができる。
【0064】
尚、電源電圧Vccそのものが電圧入力端子151に加わるようにチャージポンプ回路10を構成しておいても良い。この場合、電圧入力回路130は不要であり、コンデンサC[1]も省略可能である。
【0065】
[スクリーニング工程と実稼働動作]
図8は、EEPROM1(換言すれば半導体装置IC1)の出荷検査工程からユーザでの実稼働動作に至るまでの流れを示すフローチャートである。出荷検査工程はステップS1のスクリーニング工程を含み、スクリーニング工程を経て、ステップS2においてEEPROM1が良品であるか否かを判定する良/不良判定工程が行われる。良/不良判定工程にて良品と判定されたEEPROM1のみが、EEPROM1のユーザに対して出荷される。良品と判定されたEEPROM1は、ユーザの元で任意のシステム(例えば図1のEEPROM1及びMPU2を備えた電気機器)に組み込まれ、ステップS3の実稼働動作に供される。実稼働動作とは、ユーザに対して出荷された後のEEPROM1の動作を指す。詳細は後述されるが、スクリーニング工程ではセレクタ115の状態が第1及び第2選択状態間で切り替えられるのに対し(図4(a)及び(b)参照)、実稼働動作ではセレクタ115の状態が第1選択状態で固定される。
【0066】
EEPROM1は、検査モード及び通常モードを含む複数の動作モードの何れかにて動作可能である。制御部40は、外部から供給されるコマンドなどに応じて動作モードを設定することができる。ここでは以下のような動作モードの設定方法を考える。EEPROM1に電源電圧Vccが供給開始されることでEEPROM1が起動すると、制御部40は常に動作モードを通常モードに設定する。その後、所定の検査モード移行コマンドがEEPROM1に対して与えられたときに限り、制御部40は動作モードを検査モードに設定する。検査モード移行コマンドは通信用端子COMを通じてEEPROM1に与えられて良い。動作モードが検査モードに設定された後、EEPROM1への電源電圧Vccの供給の遮断を経て、EEPROM1に再度電源電圧Vccが供給され、これによってEEPROM1が再起動すると制御部40は動作モードを通常モードに設定する。
【0067】
ステップS1のスクリーニング工程は検査モードにて実行される。例えば、通信用端子COMに対して出荷検査機器(不図示)が接続され、出荷検査機器が所定の検査モード移行コマンドをEEPROM1に与えることで、EEPROM1の動作モードが検査モードに設定される。そして、EEPROM1の動作モードが検査モードに設定された状態で、ステップS1のスクリーニング工程が実行される。これに対し、ステップS3の実稼働動作は通常モードにて実行される。ステップS3の段階で、検査モード移行コマンドがEEPROM1に与えられることは想定されていない。通常モードではセレクタ115の状態が第1選択状態で固定される。
【0068】
上述の動作モードの設定方法は例示に過ぎない。ステップS1のスクリーニング工程が検査モードにて実行され且つステップS3の実稼働動作が通常モードにて実行される限り、動作モードの設定方法は任意である。
【0069】
ところで、EEPROM1において、出力電圧Vppが基準電圧Vtgに達したときに、仮にクロック出力動作を停止しなかったならば、電源電圧Vccにもよるが出力電圧Vppが基準電圧Vtgを大きく超えて上昇し、チャージポンプ回路10内の素子又は出力電圧Vppを受ける素子に定格を超える電圧が加わるおそれがある。このため、チャージポンプ回路10において出力電圧Vppが基準電圧Vtgに達すると上述の如くクロック出力動作が停止される。
【0070】
スクリーニング工程においては、長時間の実稼働動作を経てもEEPROM1の正常動作が確保されるように、電圧加速が施される。電圧加速とは、実稼働動作において或る素子に対し加わることが想定される電圧の最大値よりも高い電圧を当該素子に加えることに相当し、前者の電圧(最大値)と後者の電圧との差が大きいほど電圧加速の幅が大きい。電圧加速の幅は適切であることが肝要である。電圧加速の幅が大きすぎると過剰品質を求めることになって好ましくないが、電圧加速の幅が小さすぎると定格に対してマージンの少ないEEPROM1が良品と判断されることになり、ユーザの下で初期不良が生じる確率が高まる。
【0071】
ここでは具体的な数値例として、EEPROM1の仕様において、実稼働動作時における電源電圧Vccは、1.6V以上5.5V以下であるとする。即ち、実稼働動作時において、電源電圧Vccとして入力されることが期待される電圧の最小値、最大値は、夫々、1.6V、5.5Vであるとする。スクリーニング工程では、電圧加速を得るべく、その最大値(5.5V)よりも高いスクリーニング電圧値を有する電源電圧VccをEEPROM1に入力する。ここでは、スクリーニング電圧値は7.0Vであるとする。
【0072】
また、実稼働動作時において調整電圧Vg(図6参照)は所定の第1調整電圧VgL(例えば0V)に設定されるものとし、結果、実稼働動作時において基準電圧Vtgは所定の第1基準電圧VtgL(例えば17V)に設定されるものとする。これに対し、スクリーニング工程において調整電圧Vgは第1基準電圧VtgLよりも高い第2調整電圧VgH(例えば2V)に設定されるものとし、結果、スクリーニング工程において基準電圧Vtgは第1基準電圧VtgLよりも高い第2基準電圧VtgH(例えば19V)に設定されるものとする。これを実現すべく、制御部40は、通常モードにおいて調整電圧Vgを第1調整電圧VgLに設定することを通じて基準電圧Vtgを第1基準電圧VtgLに設定し、検査モードにおいて調整電圧Vgを第2調整電圧VgHに設定することを通じて基準電圧Vtgを第2基準電圧VtgHに設定する。
【0073】
図9において、実線の折れ線310は、第1スクリーニング状態α[7.0]においてチャージポンプ回路10の各出力段に生じる電圧のピーク値を表す。“n=34”である場合、出力段として第1~第34番目の出力段がある。第i番目の出力段は整流素子D[i]及びコンデンサC[i]から成る。また、便宜上、電圧出力端子152(ノードND[n+1])は第35番目の出力段であると考えても良い。第1スクリーニング状態α[7.0]は、検査モードにて実現される状態の1つである。具体的には、第1スクリーニング状態α[7.0]は、セレクタ115が第1選択状態とされ、且つ、電源電圧Vccの値がスクリーニング電圧値(7.0V)とされ、且つ、調整電圧Vgが第2調整電圧VgHとされ、且つ、“Vg=VgH”であるが故に出力電圧Vppが第2基準電圧VtgH近辺に安定化されている状態を指す。
【0074】
図9のグラフにおいて、横軸はチャージポンプ回路10の出力段数を表し、縦軸は電圧値を表す(後述の図10及び図11のグラフにおいても同様)。“1≦i≦34”を満たす整数iに関して、チャージポンプ回路10の出力段数“i”における電圧は電圧V[i]を指す。チャージポンプ回路10の出力段数“35”における電圧は出力電圧Vppを指す。故に例えば、図9の折れ線310上のプロットの内、プロットVa[32]、Va[33]、Va[34]、Va[35]での電圧値は、夫々、第1スクリーニング状態α[7.0]における電圧V[32](=V[n-2])、V[33](=V[n-1])、V[34](=V[n])、Vppのピーク値を表す。
【0075】
図10に、実線の折れ線310と共に破線の折れ線320及び実線の折れ線330を示す。但し、折れ線330は実質的に曲線であるとも言える。実線の折れ線310は図9及び図10間で同じである。破線の折れ線320は、実稼働状態α[5.5]においてチャージポンプ回路10の各出力段に生じる電圧のピーク値を表す。実線の折れ線330は、実稼働状態α[1.6]においてチャージポンプ回路10の各出力段に生じる電圧のピーク値を表す。
【0076】
実稼働状態α[5.5]及びα[1.6]は、通常モードにおいて実現される状態の例である。具体的には、実稼働状態α[5.5]は、セレクタ115が第1選択状態とされ、且つ、電源電圧Vccの値が電源電圧Vccの仕様の最大値(5.5V)とされ、且つ、調整電圧Vgが第1調整電圧VgLとされ、且つ、“Vg=VgL”であるが故に出力電圧Vppが第1基準電圧VtgL近辺に安定化されている状態を指す。実稼働状態α[1.6]は、セレクタ115が第1選択状態とされ、且つ、電源電圧Vccの値が電源電圧Vccの仕様の最小値(1.6V)とされ、且つ、調整電圧Vgが第1調整電圧VgLとされ、且つ、“Vg=VgL”であるが故に出力電圧Vppが第1基準電圧VtgL近辺に安定化された状態を指す。
【0077】
尚、第1スクリーニング状態α[7.0]並びに実稼働状態α[5.5]及びα[1.6]の何れにおいても、出力電圧Vppに基づきメモリ部30においてライト処理が実行されており、故に、出力電圧Vppが基準電圧Vtg以上となることでクロック出力動作が停止されたならば、メモリ部30の電力消費に基づき出力電圧Vppが低下してゆく。
【0078】
第1選択状態において、出力電圧Vppが基準電圧Vtg以上となることでイネーブル信号CPENがローレベルになることを通じクロック出力動作が停止された後、出力電圧Vppが再度基準電圧Vtg未満となることでイネーブル信号CPENがハイレベルになった状況を考える。この状況において、電源電圧Vccが相対的に高いときには、チャージ能力が高いため1回の単位ポンプ動作で出力電圧Vppが再び基準電圧Vtgに達することが期待される。
【0079】
チャージ能力とは、前段側から後段側に電荷を供給する能力を指す。単位ポンプ動作とは、クロック信号CLK及びCLKBの何れか一方において、信号レベルがローレベルからハイレベルに1回切り替わることを指す。出力電圧Vppが0Vである状態を起点にして考えると、単位ポンプ動作の多数の繰り返しを経て出力電圧Vppが基準電圧Vtgに達することになるが、出力電圧Vppが一旦基準電圧Vtgに達した後は、クロック出力動作の停止を経て出力電圧Vppが基準電圧Vtg未満に低下したとしても、少数回の単位ポンプ動作で出力電圧Vppが再び基準電圧Vtgに達することが期待される。そして、電源電圧Vccが相対的に高いときには(例えば第1スクリーニング状態α[7.0]又は実稼働状態α[5.5]では)、上述の如く、チャージ能力が高いため1回の単位ポンプ動作で出力電圧Vppが再び基準電圧Vtgに達することが期待される。
【0080】
第1選択状態に対応する第1スクリーニング状態α[7.0]及び実稼働状態α[5.5]では、図10の折れ線310及び320に見られるように、奇数番目の出力段での電圧のピーク値が、それに隣接する偶数番目の出力段での電圧のピーク値よりも相対的に高くなっている。第1スクリーニング状態α[7.0]に対応する折れ線310に関していえば、例えば、第33番目の出力段での電圧のピーク値Va[33]が、それに隣接する第32番目及び第34番目の出力段での電圧のピーク値Va[32]及びVa[34]よりも相対的に高くなっている。これは、出力電圧Vppが基準電圧Vtg近辺に保たれる定常出力区間300(図5参照)において、イネーブル信号CPENがローレベルとなったときに第1クロック信号CLKのアップエッジに対応して出力クロック動作が停止されること、及び、第1スクリーニング状態α[7.0]及び実稼働状態α[5.5]でのチャージ能力が高いことに起因している。
【0081】
これに対し、実稼働状態α[1.6]では、チャージ能力が低いが故に、定常出力区間300(図5参照)において基準電圧Vtg未満となった出力電圧Vppを基準電圧Vtgにまで戻すために複数回の単位ポンプ動作が必要となる。また、実稼働状態α[1.6]では、チャージ能力が低いが故に、接続ノードND[i]及びND[i+1]の電圧のピーク値の差も小さくなる。このため、図10に示されるような波形330が得られる。即ち、実稼働状態α[1.6]では、出力段数の増加につれて、対応する接続ノードの電圧のピーク値がなめらかに単調増加する傾向がみられる。
【0082】
スクリーニング工程においては、全出力段に対し、もれなく必要な電圧加速を与えることが重要であり、電圧加速が不十分な出力段が1つでもあると、実稼働動作時での不良発生確率の増大を招く。但し、第1選択状態でのみスクリーニング工程を行った場合、局所的に電圧加速の幅が小さくなる出力段が発生する。例えば、初段に近い出力段や 奇数番目の出力段(例えばVa[33]に対応)に対しては十分な電圧加速の幅が得られるものの、最終段に近い偶数番目の出力段(例えばVa[32]及びVa[34]に対応)に対しては局所的に電圧加速の幅が小さくなるという傾向がある。
【0083】
これを考慮し、本実施形態では、セレクタ115を利用し、第1選択状態でスクリーニング工程を行うだけでなく、第2選択状態でもスクリーニング工程を行うようにしている。
【0084】
図11において、実線の折れ線340は、第2スクリーニング状態β[7.0]においてチャージポンプ回路10の各出力段に生じる電圧のピーク値を表す。第2スクリーニング状態β[7.0]は、検査モードにて実現される状態の1つである。具体的には、第2スクリーニング状態β[7.0]は、セレクタ115が第2選択状態とされ、且つ、電源電圧Vccの値がスクリーニング電圧値(7.0V)とされ、且つ、調整電圧Vgが第2調整電圧VgHとされ、且つ、“Vg=VgH”であるが故に出力電圧Vppが第2基準電圧VtgH近辺に安定化されている状態を指す。図11に示される破線の折れ線320及び実線の折れ線330は、図10に示されるそれらと同じものである。図11の折れ線340上のプロットの内、プロットVb[32]、Vb[33]、Vb[34]、Vb[35]での電圧値は、夫々、第2スクリーニング状態β[7.0]における電圧V[32](=V[n-2])、V[33](=V[n-1])、V[34](=V[n])、Vppのピーク値を表す。
【0085】
図10の折れ線310に対応する第1スクリーニング状態α[7.0]と図11の折れ線340に対応する第2スクリーニング状態β[7.0]との間で、クロック出力動作を停止するタイミングが180°(基準クロック信号PCLKの位相における180°)だけずれている。このため、各出力段の電圧の加わり方が折れ線310及び340間で逆となる。つまり、図11の折れ線340に見られるように、第2スクリーニング状態β[7.0]では、第1スクリーニング状態α[7.0]とは異なり、偶数番目の出力段での電圧のピーク値が、それに隣接する奇数番目の出力段での電圧のピーク値よりも相対的に高くなっている。
【0086】
これは、第1及び第2選択状態の夫々でスクリーング工程を行えば、電圧加速が不足となる部分を両工程間で相互補完できることを示している。
【0087】
図12は、これを考慮したスクリーニング工程のフローチャートである。図8のステップS1におけるスクリーニング工程は、ステップS11の第1スクリーニング工程と、ステップS12の第2スクリーニング工程と、から成る。図12では、第1スクリーニング工程の後に第2スクリーニング工程が実行されているが、それらの実行順序は逆であっても良い。第1及び第2スクリーニング工程は共に検査モードにて実行される。
【0088】
第1スクリーニング工程は、セレクタ115を第1選択状態とした上でのスクリーニング工程である。具体的には、第1スクリーニング工程では、検査モードにおいてEEPROM1の状態を上述の第1スクリーニング状態α[7.0]とし、第1スクリーニング状態α[7.0]にて出力電圧Vppに基づきメモリ部30にライト処理を所定回数(例えば数千回)繰り返し実行させる。第2スクリーニング工程は、セレクタ115を第2選択状態とした上でのスクリーニング工程である。具体的には、第2スクリーニング工程では、検査モードにおいてEEPROM1の状態を上述の第2スクリーニング状態β[7.0]とし、第2スクリーニング状態β[7.0]にて出力電圧Vppに基づきメモリ部30にライト処理を所定回数(例えば数千回)繰り返し実行させる。第1及び第2スクリーニング工程の後の良/不良判定工程(図8のステップS2)では、例えば、第1及び第2スクリーニング工程においてメモリ部30に書き込まれるべきデータが全て正しくメモリ部30に書き込まれているかを判断し、その判断が“肯定”である場合にのみ、検査対象のEEPROM1が良品であると判定すれば良い。
【0089】
上述の説明から理解されるよう、EEPROM1(特にクロックドライバ110)は以下のように構成されている。即ち、クロックドライバ110は、所定の検査モードにおいて、出力電圧Vppが基準電圧Vtg以上となっていることをイネーブル信号CPENが示しているとき(イネーブル信号CPENがローレベルであるとき)、基準クロック信号PCLKのレベルのローレベルからハイレベルへの遷移に同期してクロック出力動作を停止させる第1停止制御と、基準クロック信号PCLKのレベルのハイレベルからローレベルへの遷移に同期してクロック出力動作を停止させる第2停止制御と、を選択的に実行する。第1スクリーニング工程では第1停止制御が実行され、第2スクリーニング工程では第2停止制御が実行されることになる。
【0090】
クロックドライバ110は、FF113にてラッチされた信号に基づき(即ちFF113のQ出力端子からの出力信号に基づき)、クロック出力動作を実行する又は非実行とする。クロック出力動作を停止させるための停止制御は第1停止制御及び第2停止制御の何れかとなるが、セレクタ115の状態により第1停止制御と第2停止制御が切り替えられる。第1停止制御はセレクタ115の状態を第1選択状態(図4(a)参照)とすることで実現され、第2停止制御はセレクタ115の状態を第2選択状態(図4(b)参照)とすることで実現される。第1及び第2停止制御の何れを実行するかは選択信号SELに基づいて選択される。
【0091】
クロックドライバ110は、出力電圧Vppが基準電圧Vtg以上となっていることを示すイネーブル信号CPENがFF113にてラッチされることでFF113の出力信号がローレベルとなっているときには、クロック出力動作を非実行とし、そうでないときには(即ちFF113の出力信号がハイレベルとなっているときには)クロック出力動作を実行する。
【0092】
実稼働動作が実行される通常モードにおいては、クロックドライバ110は、出力電圧Vppが基準電圧Vtg以上となっていることをイネーブル信号CPENが示しているとき(イネーブル信号CPENがローレベルであるとき)、第1停止制御及び第2停止制御の内、予め定められた一方の停止制御によりクロック出力動作を停止させる。ここにおいて、予め定められた一方の停止制御は第1選択状態に対応する第1停止制御である。但し、予め定められた一方の停止制御は第2選択状態に対応する第2停止制御であっても良く、この場合、通常モードにおいてセレクタ115の状態は第2選択状態に固定される。
【0093】
本実施形態によれば、電圧加速が不足する出力段が無くなるため、ユーザの下での初期不良の発生確率を低減することが可能となる。図13の参考構成の如く、FF113のクロック入力端子に基準クロック信号PCLKが直接入力する構成では、電圧加速が不足する出力段が生じて、ユーザの下で相応の確率で初期不良が発生することが懸念される。
【0094】
尚、図9図11のグラフは、本実施形態の検証で用いたEEPROM1の挙動の一例を示したものに過ぎず、EEPROM1にて実際に使用する素子の特性に応じて、その挙動は様々となる。重要なのは、図13の参考構成では電圧加速の幅が局所的に小さくなる出力段が生じる点である。本実施形態の構成では、セレクタ115を用いて第1選択状態での第1スクリーニング工程と第2選択状態での第2スクリーニング工程が併用されるので、全出力段に対し、もれなく必要な電圧加速を与えることが可能である。
【0095】
<<第2実施形態>>
本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態並びに後述の第3及び第4実施形態は第1実施形態を基礎とする実施形態であり、第2~第4実施形態において特に述べない事項に関しては、矛盾の無い限り、第1実施形態の記載が第2~第4実施形態にも適用される。第2実施形態の記載を解釈するにあたり、第1及び第2実施形態間で矛盾する事項については第2実施形態の記載が優先されて良い(後述の第3及び第4実施形態についても同様)。矛盾の無い限り、第1~第4実施形態の内、任意の複数の実施形態を組み合わせても良い。
【0096】
第2実施形態では、クロックドライバ110(図3参照)において、フロップフロップ113の代わりに、図14に示す如くネガティブエッジトリガ型のDフリップフロップであるフロップフロップ113a(以下FF113aと称することがある)を用いる。これによっても第1実施形態と同様の作用及び効果が得られる。FF113をFF113aに置換する点を除き、第2実施形態は第1実施形態と同様である。FF113とFF113aとは、ラッチのタイミングが異なるだけであるが、FF113aに関わる説明を以下に設けておく。
【0097】
FF113aは、D入力端子、クロック入力端子及びQ出力端子を有する。FF113aのクロック入力端子に対してセレクタ115からの選択クロック信号SCLKが入力され、FF113aのD入力端子に対して電圧検出回路120からのイネーブル信号CPENが入力される。イネーブル信号CPENは“0”又は“1”の論理値を持つ二値化信号であり、ここでは、ローレベルのイネーブル信号CPENが“0”の論理値を持ち且つハイレベルのイネーブル信号CPENが“1”の論理値を持つものとする。
【0098】
FF113aは、選択クロック信号SCLKのダウンエッジ(即ちハイレベルからローレベルへの遷移)に同期してイネーブル信号CPENをラッチし、ラッチした信号をQ出力端子から出力する。故に、選択クロック信号SCLKのダウンエッジタイミングでのイネーブル信号CPENのレベルがローレベルである場合、ローレベルのイネーブル信号CPENがラッチされることで(換言すればイネーブル信号CPENにて示される“0”の論理値がラッチされることで)、選択クロック信号SCLKの次回のダウンエッジタイミングまでFF113aの出力信号のレベルはローレベルに保持される。逆に、選択クロック信号SCLKのダウンエッジタイミングでのイネーブル信号CPENのレベルがハイレベルである場合、ハイレベルのイネーブル信号CPENがラッチされることで(換言すればイネーブル信号CPENにて示される“1”の論理値がラッチされることで)、選択クロック信号SCLKの次回のダウンエッジタイミングまでFF113aの出力信号のレベルはハイレベルに保持される。
【0099】
第2実施形態では、FF113がFF113aに置換されることに伴い、AND回路111に対し、FF113の出力信号ではなくFF113aの出力信号が入力される。故に、AND回路111は、基準クロック信号PCLKとFF113aの出力信号との論理積信号を出力する。FF113aの出力信号がハイレベルである場合、基準クロック信号PCLKがそのままAND回路111を通じ第1クロック信号CLKとして第1クロックラインLL1に出力されると共に、基準クロック信号PCLKを反転させたクロック信号がAND回路111及びインバータ回路112を通じ第2クロック信号CLKBとして第2クロックラインLL2に出力される。FF113aの出力信号がローレベルである場合、AND回路111の出力信号のレベル(故に第1クロックラインLL1の信号レベル)はローレベルに維持され、且つ、インバータ回路112の出力信号のレベル(故に第2クロックラインLL2の信号レベル)はハイレベルに維持される。
【0100】
第2実施形態において、クロックドライバ110は、FF113aにてラッチされた信号に基づき(即ちFF113aのQ出力端子からの出力信号に基づき)、クロック出力動作を実行する又は非実行とする。クロック出力動作を停止させるための停止制御は第1停止制御及び第2停止制御の何れかとなるが、セレクタ115の状態により第1停止制御と第2停止制御が切り替えられる。第2実施形態では、FF113aがネガティブエッジトリガ型であるが故に、第1停止制御はセレクタ115の状態を第2選択状態(図4(b)参照)とすることで実現され、第2停止制御はセレクタ115の状態を第1選択状態(図4(b)参照)とすることで実現される。第1及び第2停止制御の何れを実行するかは選択信号SELに基づいて選択される。
【0101】
<<第3実施形態>>
本発明の第3実施形態を説明する。EEPROM1は任意の電気機器に搭載される、或いは、EEPROM1及びMPU2は任意の電気機器に搭載される。電気機器は一般に電子機器に分類される機器を含み、以下の説明における電気機器を電子機器と読み替えても良い。EEPROM1が搭載される又はEEPROM1及びMPU2が搭載される電気機器は、例えば、情報端末、携帯電話機(スマートホンに分類される携帯電話機を含む)、パーソナルコンピュータ、テレビ受信機、洗濯機、空調機を含む他、車載用の電気機器であっても良い。
【0102】
図15に自動車である車両CRの外観図の例を示す。車両CRは、図示されないバッテリと、バッテリの出力電圧に基づく駆動電圧の供給を受けて動作する電気機器E11~E18と、を搭載している。尚、図15に示される電気機器E11~E18の搭載位置は例に過ぎず、それらの搭載位置は様々に変更され得る。EEPROM1及びMPU2を電気機器E11~E18の何れに対しても組み込むことが可能である。
【0103】
電気機器E11は、車両CRのエンジンに関連する制御(インジェクション制御、電子スロットル制御、アイドリング制御、酸素センサヒータ制御及びオートクルーズ制御など)を行うエンジンコントロールユニットである。電気機器E12は、車両CRに設けられたHID(high intensity discharged lamp)及びDRL(daytime running lamp)などの点灯制御及び消灯制御を行うランプコントロールユニットである。電気機器E13は、車両CRのトランスミッションに関連する制御を行うトランスミッションコントロールユニットである。電気機器E14は、車両CRの運動に関連する制御、例えば、ABS(anti-lock brake system)制御、EPS(electric power steering)制御及び電子サスペンション制御などを行うボディコントロールユニットである。
【0104】
電気機器E15は、車両CRのドアロックや防犯アラームなどの駆動制御を行うセキュリティコントロールユニットである。電気機器E16は、ワイパー、電動ドアミラー、パワーウィンドウ、ダンパー(ショックアブソーバー)、電動サンルーフ及び電動シートなど、標準装備品やメーカーオプション品として、車両CRの工場出荷段階で車両CRに組み込まれる電気機器である。電気機器E17は、車載A/V(audio/visual)機器、カーナビゲーションシステム及びETC(electronic toll collection system)用機器など、ユーザオプション品として任意で車両CRに装着される電気機器である。電気機器E18は、車両CRにおけるブロア、オイルポンプ、ウォーターポンプ、バッテリ冷却ファンなど、高耐圧系モータを備えた電気機器である。
【0105】
図16に、車両CRに搭載可能なエアバッグシステム400の例を示す。図16に示すエアバッグシステム400は、ECU(Electronic Control Unit)410、衝突検知センサ420、着火装置(スクイブ)430及びエアバッグ440を備えている。ECU410は、MPU411、点火回路412及びEEPROM413を含んで構成される。EEPROM413として第1又は第2実施形態に係るEEPROM1を用いることができ、MPU411は図1のMPU2として機能する。
【0106】
衝突検知センサ420は、車両CRの前方及び側方からの衝撃を検出する。MPU411は、衝突検知センサ420の検知結果に基づいて衝撃評価値を演算し、演算された衝撃評価値が所定の衝突判定値を超える場合に点火回路412を作動させる。これにより、着火装置430に電流が流れてエアバッグ440が展開される。EEPROM413にはエアバッグシステム400の動作状況についてのデータを格納できる。当該データは、故障診断により故障が検知された場合などにEEPROM413に書き込まれて良い。書き込まれたデータは故障原因の解析等に有益となる。
【0107】
<<第4実施形態>>
本発明の第4実施形態を説明する。第4実施形態では、上述の第1~第3実施形態に対して適用可能な変形技術等を説明する。
【0108】
整流素子D[1]~D[n]の夫々は、ダイオード接続されたMOSFETではなく、PN接合により構成されたダイオード(半導体ダイオード)であっても良い。
【0109】
上述の説明では、整流素子D[1]~D[n]の個数が“34”であることを主として想定しているが、整流素子D[1]~D[n]の個数は“34”に限定されず、整流素子D[1]~D[n]の個数は奇数個(但し3以上)であっても良い。整流素子D[1]~D[n]の個数が奇数個である場合には、最終段のコンデンサC[n]はノードND[n]と第2クロックラインLL2との間に設けられることになる。
【0110】
実稼働動作では(換言すれば通常モードでは)、セレクタ115の状態が第1選択状態及び第2選択状態の何れかで固定されると述べたが、電源電圧Vccを所定電圧と比較する回路をチャージポンプ回路10又はEEPROM1に設けておき、実稼働動作において(換言すれば通常モードにおいて)、その比較結果に応じてセレクタ115の状態を第1選択状態及び第2選択状態間で切り替えるようにしても良い。
【0111】
EEPROM1は不揮発性メモリとしての半導体記憶装置の例である。本発明に係る半導体記憶装置は、EEPROM1に限定されず、チャージポンプ回路10の出力電圧Vppを用いて駆動する記憶装置(特に例えばチャージポンプ回路10の出力電圧Vppを用いてライト処理を行う記憶装置)であれば任意である。例えば、半導体記憶装置はフラッシュメモリであっても良い。
【0112】
EEPROM1等の半導体記憶装置において、チャージポンプ回路10は、半導体記憶装置の外部に設けられるものであっても良い。即ち、図1の構成を例にして説明すると、図1に示されるEEPROM1からチャージポンプ回路10を削除したEEPROMを半導体記憶装置として形成し、その半導体記憶装置に対しチャージポンプ回路10を外付け接続するようにしても良い。
【0113】
チャージポンプ回路10の適用先は半導体記憶装置に限定されない。即ち例えば、チャージポンプ回路10を用いて昇圧型電源装置を構成するようにしても良い。チャージポンプ回路10そのものが昇圧型電源装置であると解することもできる。チャージポンプ回路10を半導体集積回路にて構成すれば、その昇圧型電源装置は半導体装置の一種に相当する。
【0114】
上述の主旨を損なわない形で、任意の信号又は電圧に関して、それらのハイレベルとローレベルの関係を逆にしても良い。また、上述の主旨を損なわない形で、FETのチャネル型を任意に変更可能である。
【0115】
上述の各トランジスタは、任意の種類のトランジスタであって良い。例えば、MOSFETとして上述されたトランジスタを、接合型FET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はバイポーラトランジスタに置き換えることも可能である。任意のトランジスタは第1電極、第2電極及び制御電極を有する。FETにおいては、第1及び第2電極の内の一方がドレインで他方がソースであり且つ制御電極がゲートである。IGBTにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がゲートである。IGBTに属さないバイポーラトランジスタにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がベースである。
【0116】
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【符号の説明】
【0117】
1 EEPROM
10 チャージポンプ回路
20 電圧選択部
30 メモリ部
40 制御部
110 クロックドライバ
113 フリップフロップ
115 セレクタ
120 電圧検出回路
130 電圧入力回路
140 オシレータ
151 電圧入力端子
152 電圧出力端子
D[i] 整流素子
C[i] コンデンサ
Nd[i] 接続ノード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17