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特許7166952気泡シールド工法用起泡材及びそれを用いた気泡シールド工法
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  • 特許-気泡シールド工法用起泡材及びそれを用いた気泡シールド工法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】気泡シールド工法用起泡材及びそれを用いた気泡シールド工法
(51)【国際特許分類】
   C09K 8/035 20060101AFI20221031BHJP
   C09K 8/506 20060101ALI20221031BHJP
   E21D 9/06 20060101ALI20221031BHJP
   C09K 23/46 20220101ALI20221031BHJP
   C09K 23/42 20220101ALI20221031BHJP
【FI】
C09K8/035
C09K8/506
E21D9/06 301M
E21D9/06 301L
C09K23/46
C09K23/42
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019023492
(22)【出願日】2019-02-13
(65)【公開番号】P2020132672
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】390029458
【氏名又は名称】ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】木村 志照
(72)【発明者】
【氏名】三浦 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】服部 鋭啓
(72)【発明者】
【氏名】大島 典子
(72)【発明者】
【氏名】石井 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】篠原 明
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-234484(JP,A)
【文献】特開2003-342560(JP,A)
【文献】特開2005-133075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 8/02
E21D 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カチオン性界面活性剤、
(B)アニオン性芳香族化合物、そして
(C)下記の一般式(1)~(3)で表される化合物の群から選択される、少なくともひとつの化合物:
【化1】
(式中、Rは炭素数1~20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、または炭素数1~20の直鎖もしくは分岐鎖のアルケニル基を表し、RO、ROは炭素数2~5のオキシアルキレン基を表し、mとnはそれぞれRO、ROの平均繰り返し数を表す0~20の数であり、m+n=1~20である。);
【化2】
(式中、Rは炭素数1~20の直鎖または分岐鎖のアルキル基もしくは水素、Rは炭素数1~20の直鎖または分岐鎖のアルキル基を表し、lは0または1であり、RCH(CHの炭素数の合計は3~22であり、ROは炭素数2~5のオキシアルキレン基を表し、kはROの平均繰り返し数を表す1~20の数である。Xは水素またはアニオン性基である。);
【化3】
(式中、RO、RO、ROは炭素数2~5のオキシアルキレン基を表し、p、q、rはROと ROとROの平均繰り返し数を表す1~20の数である。但し、R、R、Rは全部が同じになることはない。)、
を含有する、気泡シールド工法用起泡材。
【請求項2】
請求項1に記載の気泡シールド工法用起泡材を発泡させて気泡を生成し、前記気泡を切羽或いはチャンバー内、またはその両方に注入しながら掘進することを特徴とする気泡シールド工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡シールド工法用起泡材及びそれを用いた気泡シールド工法に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法は、切羽およびチャンバー内に加泥材を注入することで掘削土砂(混合土)が塑性流動性を有し、この混合土がチャンバー内を充填することで、土圧と水圧に対し平衡を維持しつつ、マシン外へスムーズに土砂を排出する工法である。この工法のうち、加泥材として気泡を注入するものが、気泡シールド工法と呼ばれる。
【0003】
注入する気泡は、対象土の粒度によって使用する剤を使い分けている(特許文献1)。一般的に細粒分が一定量ある場合は、陰イオン界面活性剤を主成分とするAタイプ気泡、細粒分が少ない、砂質~砂礫質土については、カルボキシメチルセルロース(CMC)に代表される粉体の増粘剤を溶解させた液に、Aタイプで使用される起泡材原液を混合し、発泡させることで粘性の高い気泡を生成し、粘性により細粒分不足を補うBタイプ気泡、粗粒な礫質土に対しては、増粘剤に対して、ゲル化作用のある薬剤を発泡時に散布することで、固く非常に強い気泡を作成し、礫を強固にまとめることができるCタイプ気泡の大きく3種類に分類される。なお、Bタイプ及びCタイプ気泡については、起泡材溶液を調製する際、Aタイプで必要となる設備に加え、粉体を溶解する設備が別途必要となる。なお、Aタイプ気泡では任意に発泡倍率を変えることができるのに対し、増粘剤を含むBタイプ気泡(Cタイプ気泡も同様)では起泡材溶液の粘性が高いため、発泡しづらく概ね6倍発泡が限度であり、Aタイプ気泡に比べて、多量の起泡材溶液を使用する。また発泡性を確保するため、別途添加材を必要とする場合がある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-092018号公報
【文献】特開2014-234484号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】気泡シールド工法 技術資料 シールド工法技術協会 (http://shield-method.gr.jp/wp/wp-content/uploads/doc_tec_rf.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シールド掘進時に、当初の地質調査によって想定していなかった砂礫互層により、地山中の細粒分が急激に減少した場合や、礫分が多い場合、Aタイプ気泡からBタイプ気泡への変更が必要となる場合がある。かかる場合、2剤での調製が必要なため、新たにBタイプ気泡の設備(希釈水タンク、溶解槽等の混合希釈設備、増粘剤貯蔵タンク並びに供給設備など)が必要になる。しかしながら、シールド工法の多くが、都市部の狭隘な場所で施工することが多いことから、設備のためのスペース確保が難しい。また設備を導入できる場合においても、設備の確保、設置等に大幅な時間が必要となり、その間施工は停止する必要がある。そこで、新たな設備を必要としない、1剤で起泡と増粘の効果を持つ剤が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは鋭意研究の結果、カチオン性界面活性剤と、アニオン性芳香族化合物と、所定の化合物を含む起泡材は、1剤で起泡と増粘の効果を持つことを新たに見出した。
【0008】
従って、本願発明は以下の[1]~[2]である。
[1](A)カチオン性界面活性剤と、
(B)アニオン性芳香族化合物と、
(C)下記の一般式(1)~(3)で表される化合物の群から選択される、少なくともひとつの化合物:
【化1】
(式中、Rは炭素数1~20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、または炭素数1~20の直鎖もしくは分岐鎖のアルケニル基を表し、RO、ROは炭素数2~5のオキシアルキレン基を表し、mとnはそれぞれRO、ROの平均繰り返し数を表す0~20の数であり、m+n=1~20である。);
【化2】
(式中、Rは炭素数1~20の直鎖または分岐鎖のアルキル基もしくは水素、Rは炭素数1~20の直鎖または分岐鎖のアルキル基を表し、lは0または1であり、RCH(CHの炭素数の合計は3~22であり、ROは炭素数2~5のオキシアルキレン基を表し、kはROの平均繰り返し数を表す1~20の数である。Xは水素またはアニオン性基である。);
【化3】
(式中、RO、RO、ROは炭素数2~5のオキシアルキレン基を表し、p、q、rはROと ROとROの平均繰り返し数を表す1~20の数である。但し、R、R、Rは全部が同じになることはない。);
を含有する、気泡シールド工法用起泡材。
【0009】
[2][1]に記載の気泡シールド工法用起泡材を発泡させて気泡を生成し、前記気泡を切羽或いはチャンバー内、またはその両方に注入しながら掘進することを特徴とする気泡シールド工法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、1剤で増粘作用の付与が可能な気泡シールド工法用起泡材が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】シールドマシンの概略図
図2A】起泡材の評価(比較例1~7)
図2B】起泡材の評価(実施例例1~10)
図2C】起泡材の評価(実施例例11~20)
図3A】試料土の評価
図3B】気泡混合土の評価
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、添付図面を用いて詳細に説明するが、必ずしもこれに限定するわけではない。なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【0013】
まず、気泡シールド工法に用いられるシールドマシンの概略について説明する。
図1に示すように、本工法に用いられるシールドマシン1は、スキンプレート2と、隔壁3と、カッター4と、カッターモーター5と、気泡注入管6と、スクリューコンベア7と、土圧センサ8を備えている。
【0014】
スキンプレート2は、シールドマシン1の外殻部となる鋼製の筒状部材である。隔壁3は、スキンプレート2に設けられており、スキンプレート2の前側部分にチャンバー9を区画する。カッター4は、回転によって地中を掘削する部分であり、スキンプレート2よりも前方に配設されている。カッターモーター5は、カッター4を回転させるための駆動源であり、隔壁3の後側に設けられている。カッターモーター5の駆動力は支持アーム10を介してカッター4に伝達される。
【0015】
気泡注入管6は、起泡材溶液が発泡装置(図示せず)で発泡されることで得られたシェービングクリーム状の微細気泡を案内する部材である。気泡注入管6の先端はカッター4の前方に位置しているため、案内された微細気泡はカッター4に向けて注入される。カッター4で掘削された掘削土は、このカッター4の回転によって気泡と混合されることで流動性が高められ、チャンバー9に流入する。そして、チャンバー9では、気泡の存在によって壁面への掘削土の付着が抑制される。また、土粒子同士の間に気泡が入り込むので、止水性も高められる。
なお、前記微細気泡は、チャンバー9内に直接注入されてもよく、又はカッター4及びチャンバー9の両方に注入されてもよい。
【0016】
次に本願発明に係る(A)カチオン性界面活性剤と;(B)アニオン性芳香族化合物と;(C)一般式(1)~(3)で表される化合物で表される化合物の群から選択される、少なくともひとつの化合物を含む気泡シールド用起泡材について説明する。
【0017】
(A)成分の「カチオン性界面活性剤」は、4級塩型カチオン性化合物であることが好ましく、4級塩型のカチオン性界面活性剤としては、構造中に、10から26個の炭素原子を含む飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖アルキル基(以下、「アルキル(炭素数10~26)」と記載する場合がある)を、少なくとも1つ有しているものが好ましい。例えば、アルキル(炭素数10~26)トリメチルアンモニウム塩、アルキル(炭素数10~26)ピリジニウム塩、アルキル(炭素数10~26)イミダゾリニウム塩、アルキル(炭素数10~26)ジメチルベンジルアンモニウム塩等が挙げられ、具体的には、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、タロートリメチルアンモニウムクロライド、タロートリメチルアンモニウムブロマイド、水素化タロートリメチルアンモニウムクロライド、水素化タロートリメチルアンモニウムブロマイド、ヘキサデシルエチルジメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルエチルジメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルプロピルジメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルピリジニウムクロライド、1,1-ジメチル-2-ヘキサデシルイミダゾリニウムクロライド、ヘキサデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等が挙げられ、これらを2種以上併用してもよい。水溶性と増粘効果の観点から、具体的には、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルピリジニウムクロライド等が好ましい。また、増粘効果の温度安定性の観点および希釈液の均一性の観点から、(A)成分として、上記のアルキル基の炭素数の異なる「カチオン性界面活性剤」を2種類以上併用することが好ましい。
(A)成分は、気泡シールド工法用起泡材中に1~30質量%であることが好ましく、15~25重量%がより好ましい。(A)成分は、起泡材希釈液中に0.01~2重量%であることが好ましく、0.1~1.5重量%がより好ましい。
【0018】
(B)成分の「アニオン性芳香族化合物」は、芳香環を有するカルボン酸及びその塩、芳香環を有するホスホン酸及びその塩、芳香環を有するスルホン酸及びその塩が挙げられ、具体的には、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸、スルホサリチル酸、安息香酸、m-スルホ安息香酸、p-スルホ安息香酸、4-スルホフタル酸、5-スルホイソフタル酸、p-フェノールスルホン酸、m-キシレン-4-スルホン酸、クメンスルホン酸、メチルサリチル酸、スチレンスルホン酸、クロロ安息香酸等であり、これらは塩を形成していていも良く、これらを2種以上併用してもよい。
塩を形成するための対イオンとしては、アルカリ金属イオン、アンモニウム、プロトン化したアミン等が挙げられる。特に、アルカリ金属イオンが好ましい。
前記対イオンとなり得るアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
前記対イオンになり得るアミンとしては、第一級~第三級アミン(モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミンなど)、アルカノールアミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなど)が挙げられる。
(B)成分は、気泡シールド工法用起泡材中に0.5~60重量%が好ましく、5~20重量%がより好ましい。
(B)成分は、起泡材希釈液中に0.005~4重量%が好ましく、0.1~2重量%がより好ましい。
【0019】
(C)成分の[化1]に示される「一般式(1)で表される化合物」は、Rは炭素数1~20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、または炭素数1~20の直鎖または分岐鎖のアルケニル基を表しており、特に直鎖のアルキル基が好ましい。RO、ROは炭素数2~5のオキシアルキレン基を表し、mとnはそれぞれRO、ROの平均繰り返し数を表す0~20の数であり、m+n=1~20である。ROとROは、オキシエチレン基(以下、EOともいう。)またはオキシプロピレン基(以下、POともいう。)が好ましい。m、nが2以上であるとき、オキシアルキレン鎖は、EOのみからなるEO鎖、またはEOとPOとからなるブロック鎖もしくはランダム鎖が好ましい。
のアルキル基またはアルケニル基の炭素数としては、8~22が好ましく、12~20がより好ましく、14~18が更に好ましい。
【0020】
(C)成分の[化2]に示される「一般式(2)で表される化合物」は、Rは炭素数1~20の直鎖または分岐鎖のアルキル基もしくは水素、Rは炭素数1~20の直鎖または分岐鎖のアルキル基を表し、lは0または1であり、
CH(CHの炭素数の合計は3~22であり、l=0の時、RCH(CHの炭素数の合計は、好ましくは3~18である。l=1の時、RCH(CHの炭素数の合計は、好ましくは10~18、より好ましくは10~14である。
Oは炭素数2~5のオキシアルキレン基を表し、kはROの平均繰り返し数を表す1~20の数である。ROは、オキシエチレン基(以下、EOともいう。)またはオキシプロピレン基(以下、POともいう。)が好ましい。kが2以上であるとき、オキシアルキレン鎖は、EOのみからなるEO鎖、またはEOとPOとからなるブロック鎖もしくはランダム鎖が好ましい。
kは2~16が好ましく、3~12がより好ましい。
Xは水素またはアニオン性基である。
Xがアニオン性基である場合、-SOM又は-COOMであることが好ましい。ここで、Mは、有機又は無機の陽イオンを示す。Mの陽イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、炭素数3以上、15以下、更に炭素数7以上、15以下のアルキルアンモニウムイオン、モノエタノールアンモニウムイオン、ジエタノールアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン等が挙げられ、アルカリ金属イオンが好ましい。
が水素である場合は、例えばエチレングリコールエーテル(n-プロピルグリコール、n-ブチルグリコール、イソブチルグリコール、ペンチルグリコール、ヘキシルグリコール)、ジエチレングリコールエーテル(ジエチレングリコールモノプロピルエーテル及びブチルジグリコール等)、オキシエチレン基の平均繰り返し数が3~10のポリオキシエチレン低級アルキルモノエーテル(ポリオキシエチレン(3モル)モノプロピルエーテル等)等のグリコールエーテルが挙げられる。
特に気泡シールド工法用起泡材の液安定性の点で、エチレングリコールエーテル、ジエチレングリコールエーテルが好ましく、ヘキシルグリコールやブチルジグリコールがより好ましい。
なお、グリコールエーテルは、グリコールエーテル以外の(C)成分と併用すると、液安定性の点で好ましい。
【0021】
(C)成分の[化3]に示される「一般式(3)で表される化合物」は、RO、RO、ROは炭素数2~5のオキシアルキレン基を表し、p、q、rはROとROとROの平均繰り返し数を表す1~20の数である。但し、R、R、Rは全部が同じになることはない。ROとROとROは、オキシエチレン基(以下、EOともいう。)またはオキシプロピレン基(以下、POともいう。)が好ましい。p、q、rが2以上であるとき、ROとROとROのオキシアルキレン鎖の組み合わせは、EOとPOとからなるブロック鎖が特に好ましい。
【0022】
(C)成分は、気泡シールド工法用起泡材中に0.01~15重量%が好ましく、0.5~10重量%がより好ましい。(C)成分は、起泡材希釈液中に0.0001~1%が好ましく、0.01~0.5重量%がより好ましい。
また、(A)/(B)=0.3~2.5が好ましく、(A)/(C)=1~36が好ましい。
【0023】
本願発明の一態様として、気泡シールド工法用起泡材は、(A)成分として、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、とりわけ塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを含むことが好ましく、(B)成分としてp-トルエンスルホン酸ナトリウムを含むことが好ましく、(C)成分としてビス(2-ヒドロキシエチル)アルキルアミンとグリコールエーテルを含むことが好ましい。
【0024】
<溶剤(C成分に該当するものを除く)>
起泡材は、溶剤を含有してもよい。溶剤は起泡性を阻害しないものであって水に溶解しやすい有機溶剤であれば制限なく使用できる。
例えばエチレングリコールエーテル(フェニルグリコール等)、分子量が500以下のジオール(エチレングリコール、ジエチレングリコール及びポリエチレングリコール等)等のグリコール系溶剤が挙げられる。
また、溶剤と(A)成分は併用することが好ましい。起泡材または発泡液における溶剤の含有量は、溶剤/(A)の質量比が0~3.0の範囲が好ましく、1~2.0がより好ましく、1.2~1.5がさらに好ましい。
溶剤の含有量が上記範囲の下限値以上であると、起泡材の液安定の向上効果に優れる。上記範囲の上限値以下であるとコスト抑制の点で好ましい。
【実施例
【0025】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。なお、図2A~C中の配合量の単位は「質量%」であり、いずれの成分も有効成分換算量を示す。
【0026】
1.起泡材の製造及び評価
1)製造方法
図2A~Cに記載の所定の割合で、水と(C)成分を混合し(工程1)、(B)成分を添加混合し(工程2)、そして(A)成分を添加混合すること(工程3)により、作製した。
【0027】
2)評価方法
2-1)1剤評価
希釈前の原液が1剤であり、25℃で分離せず安定しているか否かを目視で評価した。1剤であり安定している場合は、○と評価し、1剤でない、あるいは分離している場合は、×と評価した。
【0028】
2-2)20倍希釈粘度(60rpm)
起泡材を20倍希釈して作成した希釈液を回転粘度計(ブルックフィールド)を用いて、回転数60rpm・ローターNo.2で回転させ、1分後の値を測定した。粘度が100mPa・s以上ある場合、○と評価し、粘度が100mPa・s未満である場合、×と評価した。
【0029】
2-3)30倍希釈粘度(60rpm)
起泡材を30倍希釈して作成した希釈液を回転粘度計(ブルックフィールド)を用いて、回転数60rpm・ローターNo.2で回転させ、1分後の値を測定した。粘度が50mPa・s以上ある場合、○と評価し、粘度が50mPa・s未満である場合、×と評価した。
【0030】
2-4)液の均一性
希釈液が均一であるか否か目視で評価した。
希釈液が均一で、ゼリー状の塊が無い場合、○と評価し、希釈液が均一でなく、ゼリー状の塊がある場合、×と評価した。
【0031】
2-5)発泡性
コンプレッサーにて圧縮した空気と、その空気と同じ圧力の起泡材希釈液を、セラミックボールが充填された筒内で二流体混合することで発泡させ気泡を得る。得られた気泡の重量Agと、体積Bmlを測定し、(a)式で発泡倍率を算出する。
発泡倍率(倍)=(気泡の体積Bml)/(気泡の重量Ag)・・・(a)式
最大発泡倍率が6倍以上である場合、○と評価し、最大発泡倍率が6倍未満である場合、×と評価した。
【0032】
3)結果
(A)成分と(B)成分だけだと、ゲル化して1剤とするのが不可能であるが、(C)成分を添加すると、1剤とすることが可能であり、評価基準を満たす起泡材を作製することができた(図2A~C)。
【0033】
2.気泡混合土試験
従来用いられているBタイプ気泡用起泡剤(起泡剤A)と実施例5の起泡剤(起泡剤B)を比較した。起泡剤Aは希釈せずそのまま、そして起泡剤Bは水で3%(v/v)に希釈し、コンプレッサーにて圧縮した空気と、その空気と同じ圧力の起泡剤希釈液を、セラミックボールが充填された筒内で二流体混合することで発泡させた。
1)試料土の調製
図3Aに試料土Aと試料土Bの分類を示す。
従来の起泡シールド工法における土質と特殊起泡材の選定基準(非特許文献1)を参照した場合、試料土Aは砂分が多い礫質砂であり、II:Aタイプ気泡又はBタイプ気泡を用いることが適しており、試料土Bは礫分が多い砂質礫であり、III:Bタイプ気泡又はIV:Cタイプ気泡を用いることが適していると判定される土質である。
【0034】
2)スランプ試験
スランプ試験では、最初に必要量の試料土を電子天秤によって量り取った。そして、量り取った試料土に対し、水を加え、加水後の体積比で20%分の気泡を添加した。気泡の添加量は、各気泡の発泡倍率に応じて、気泡体積を発泡倍率で除した重さで管理した。
気泡を添加後、ヘラを用いて気泡と試料土を全体が均等になるように混ぜ合わせ、気泡混合土を作製した。JIS A1171に規定されるスランプコーン(上端内径100±2mm,下端内径200±2mm,高さ300±2mm)をスランプ板の上に載置し、作成後15分間静置した気泡混合土をスランプコーンに投入した。そして、投入した気泡混合土を突き棒で適度に突いた。気泡混合土は3回に分けて投入し、全量を投入した後に開口面の気泡混合土を均した。その後、気泡混合土を詰めたスランプコーンを鉛直上方に引き抜いた。そして、スランプ値を0.1cm単位で読み取った。
評価基準としては、スランプ値が3.0cm以上で、混合土のまとまりが良好である場合、評価を○とし、そうでない場合を×とした(図3B)。
【0035】
3)結果
従来の起泡剤Aは礫分が多い試料土Bには適用できないのに対して、本願発明に係る起泡剤Bは、試料土A及び試料土Bともに適用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1…シールドマシン,2…スキンプレート,3…隔壁,4…カッター,5…カッターモーター,6…気泡注入管,7…スクリューコンベア,8…土圧センサ,9…チャンバー,10…支持アーム
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B