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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】液体供給装置及び液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/17 20060101AFI20221031BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20221031BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
B41J2/17
B41J2/18
B41J2/175 121
B41J2/175 201
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019051160
(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公開番号】P2020151898
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】原 千弘
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-182725(JP,A)
【文献】特開2018-099858(JP,A)
【文献】特開2009-269360(JP,A)
【文献】米国特許第04875055(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する液体吐出ヘッドの一次側に接続される第1流路と、
前記液体吐出ヘッドの二次側に接続される第2流路と、
前記第1流路に設けられ、前記第1流路の流体を加熱する加熱部と、
前記第1流路の前記加熱部と前記液体吐出ヘッドの間に配されるフィルタと、
前記フィルタの一次側と前記液体吐出ヘッドの二次側の流路とを接続するバイパス流路と、
を備え
前記バイパス流路の径は、前記第1流路及び前記第2流路の径よりも小径に構成される、液体供給装置。
【請求項2】
前記第1流路の一次側及び前記第2流路の二次側に接続され、液体を貯留するとともに大気開放可能に構成されたタンクを備える、請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項3】
流入口と流出口とバイパス口とを有し、前記フィルタを収容するフィルタケースを備え、
前記フィルタは、前記フィルタケースの前記流入口と前記流出口との間に配され、
前記バイパス口は、前記フィルタケースにおける前記フィルタの一次側に設けられる、請求項1または請求項2に記載の液体供給装置。
【請求項4】
前記フィルタの前記バイパス口側の流路抵抗は前記流出口側の流路抵抗よりも大きい、請求項3に記載の液体供給装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の液体供給装置と、
液体を吐出する液体吐出ヘッドと、を備える、液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液体供給装置及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する液体吐出ヘッドを通る循環路において液体を循環させる液体循環装置を備える液体吐出装置が知られている。液体は温度が低いと粘度が大きくなる特性がある。液体の粘度が大きくなると、液体吐出ヘッドから液体が吐出されない、あるいは液滴の量が不安定になる、など、吐出性能に影響することがある。
【0003】
このような液体吐出装置において、液体を加熱し、液体の粘度をヘッドでの吐出が適正になる範囲に調整する為に、液体吐出ヘッドの一次側の循環路にヒータを設ける場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-269360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、安定した液体吐出性能が得られる液体供給装置及び液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る液体供給装置は、第1流路と、第2流路と、加熱部と、フィルタと、バイパス流路と、を備える。第1流路は、液体を吐出する液体吐出ヘッドの一次側に接続される。第2流路は、前記液体吐出ヘッドの二次側に接続される。加熱部は、前記第1流路に設けられ、前記第1流路の流体を加熱する。フィルタは前記第1流路の前記加熱部と前記液体吐出ヘッドの間に配される。バイパス流路は、前記フィルタの一次側と前記液体吐出ヘッドの二次側の流路と接続する。バイパス流路の径は、前記第1流路及び前記第2流路の径よりも小径に構成される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態にかかるインクジェット記録装置の構成を示す側面図。
図2】同実施形態にかかる液体吐出ヘッドの構成を示す説明図。
図3】同実施形態にかかる液体吐出装置の構成を示す説明図。
図4】同液体吐出装置の一部の構成を示す説明図。
図5】他の実施形態にかかる液体吐出装置の一部の構成を示す説明図。
図6】他の実施形態にかかる液体吐出装置の一部の構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、第1実施形態にかかる液体吐出装置10及び液体吐出装置10を備えるインクジェット記録装置1について、図1乃至図4を参照して説明する。インクジェット記録装置1の構成を示す側面図であり、図2は液体吐出ヘッド20の構成を示す説明図である。図3は液体吐出装置10の構成を示す説明図であり、図4はその一部の構成を示す説明図である。なお、各図において説明のため、適宜構成を拡大、縮小または省略して示している。
【0009】
図1に示すインクジェット記録装置1(インクジェット装置)は、複数の液体吐出装置10と、液体吐出装置10を移動可能に支持するヘッド支持機構11と、記録媒体Sを移動可能に支持する媒体支持機構12と、制御部13と、を備える。
【0010】
複数の液体吐出装置10は、所定の方向に並列して配置され、ヘッド支持機構11に支持される。液体吐出装置10は、液体吐出ヘッド20と、液体供給装置としての循環装置30と、を一体に備える。液体吐出装置10は、液体として例えばインクIを液体吐出ヘッド20から吐出することで、対向して配される記録媒体Sに所望の画像を形成する。
【0011】
複数の液体吐出装置10は、複数の色、例えばシアンインク、マゼンタインク、イエロインク、ブラックインク、ホワイトインクを、それぞれ吐出するが、使用するインクIの色あるいは特性は限定されない。たとえばホワイトインクに換えて、透明光沢インク、赤外線または紫外線を照射したときに発色する特殊インク等を吐出可能である。複数の液体吐出装置10は、それぞれ使用するインクが異なるものの同じ構成である。
【0012】
図2に示される液体吐出ヘッド20は、インクジェットヘッドであり、複数のノズル孔21aを有するノズルプレート21と、基板22と、基板22に接合されたマニフォルド23と、を備える。基板22は、ノズルプレート21に対向して接合され、ノズルプレート21との間に複数のインク圧力室25を含む所定の流路28を形成する所定形状に構成されている。基板22の、各インク圧力室25に面する部位には、アクチュエータ24が設けられている。基板22は、同じ列の複数のインク圧力室25の間に配される隔壁を備える。アクチュエータ24は、ノズル孔21aに対向配置されており、アクチュエータ24とノズル孔21aとの間にインク圧力室25が形成される。
【0013】
液体吐出ヘッド20は、ノズルプレート21と、基板22と、マニフォルド23とによって、内部にインク圧力室25を有する所定の流路28を構成する。液体吐出ヘッド20は流路28の一次側の端部である供給口20aと流路28の二次側の端部である回収口20bとを有している。供給口20aは循環装置30の第1流路31aに接続され、回収口20bは第2流路31bに接続されている。基板22の各インク圧力室25に面する部位には、電極24a、24bを備えるアクチュエータ24が設けられている。アクチュエータ24は駆動回路に接続される。液体吐出ヘッド20は、制御部13の制御によりアクチュエータ24が電圧に応じて変形することで、対向配置されたノズル孔21aからインクを吐出させる。
【0014】
液体吐出ヘッド20の流路28の一次側の端部である供給口20aには、流路内のインクIの温度を検出するインク温度センサ26aが設けられている。液体吐出ヘッド20の流路28の二次側の端部である回収口20bには、流路内のインクIの温度を検出するインク温度センサ26bが設けられている。インク温度センサ26a、26bは、例えば、温度変化に対して電気抵抗の変化の大きい抵抗体であるNTCサーミスタを利用して温度を電気信号に変換する。
【0015】
循環装置30は、金属製の連結部品により液体吐出ヘッド20の上部に一体に連結されている。循環装置30は、液体吐出ヘッド20を通りインクが循環可能に構成された所定の循環路31と、この循環路31に設けられたタンク32と、第1循環ポンプ33と、加熱部であるヒータ34と、フィルタ部35と、第2循環ポンプ36と、バイパス流路37と、を備える。
【0016】
循環路31は、金属または樹脂材料で構成されるパイプと、パイプの外面を覆うチューブ、例えばPTFEチューブと、を備える。循環路31は、タンク32と液体吐出ヘッド20の供給口20aとを接続する第1流路31aと、液体吐出ヘッド20の回収口20bとタンク32とを接続する第2流路31bと、を備える。循環路31は、タンク32から第1流路31aを通って液体吐出ヘッド20の供給口20aに至り、液体吐出ヘッド20の回収口20bから、第2流路31bを通ってタンク32に戻る流路である。
【0017】
第1流路31aには、第1ポンプである第1循環ポンプ33と、ヒータ34と、フィルタ部35とが順に設けられている。また、第1流路31aには、第1流路31a内の液体圧力を検出する第1の圧力検出器である第1圧力センサ39aが設けられている。
【0018】
第2流路31bには、第2ポンプである第2循環ポンプ36が設けられている。第2流路31bには、第2流路31b内の液体圧力を検出する第2の圧力検出器である第2圧力センサ39bが設けられている。
【0019】
第2流路31bには、流路内のインクIの温度を検出するインク温度センサ26cが設けられている。インク温度センサ26cは、例えば、温度変化に対して電気抵抗の変化の大きい抵抗体であるNTCサーミスタを利用して温度を電気信号に変換する。
【0020】
タンク32は、循環路31によって液体吐出ヘッド20に接続され、インクを貯留可能に構成されている。タンク32には、第1流路31aの一次側及び第2流路31bの二次側が接続されている。タンク32にはタンク32内の空気室を大気開放可能に構成された開閉バルブ32aが設けられている。
【0021】
開閉バルブ32aは、例えば電源が入った時に開き、電源が切れたら閉じる、ノーマルクローズのソレノイド開閉バルブである。開閉バルブ32aは制御部13の制御により開閉されることで、タンク32の空気室を大気に対して開閉可能に構成される。
【0022】
第1循環ポンプ33は、循環路31の第1流路31aにおいて、液体吐出ヘッド20とタンク32との間に設けられる。第1循環ポンプ33は例えば圧電ポンプで構成され、配線により制御部13の駆動回路に接続されている。第1循環ポンプ33は、制御部13の制御によって制御可能に構成され、制御に応じた送液能力で、二次側に配される液体吐出ヘッド20に向けてインクを送る。
【0023】
ヒータ34は、循環路31の第1流路31aの第1循環ポンプ33の二次側であって、フィルタ部35の一次側に設けられている。ヒータ34は、例えばステンレス箔やニクロム線等で形成された抵抗体である熱源34aを備える。熱源34aは、例えば電気抵抗の値が数Ω(オーム)~数千Ωの抵抗を有する。ヒータ34の熱源34aは、ヒータ34内を流れる第1流路31aの管路の外面に接して配置されている。制御部13の制御により、ヒータ34の熱源34aに電流が流れると、ジュール熱が発生し、熱源34aが加熱される。熱源34aが加熱されるとヒータ34を流れる第1流路31aのインクの温度が上昇する。なお、ヒータ34内を流れる流路31aのインクの温度を均一にする為に、ヒータ34内の流路31aはアルミ等の金属で覆って熱容量を大きくしても良い。ヒータ34には、ヒータ34の温度を検出する温度センサ38が設けられている。
【0024】
温度センサ38は、例えば、温度変化に対して電気抵抗の変化の大きい抵抗体であるNTCサーミスタを利用して温度を電気信号に変換する。
【0025】
フィルタ部35は、第1流路31aに設けられたフィルタケース35aと、フィルタケース35a内に収容されたフィルタ35bと、を備える。
【0026】
フィルタケース35aは、例えばPPS材から、筺状に構成される。フィルタケース35aは、第1流路31a中に設けられている。フィルタケース35aは、上面に開口するとともに一次側であるタンク32側の第1流路31aに連通する流入口35cと、下面に開口するとともに二次側である液体吐出ヘッド20側の第1流路31aに連通する流出口35dと、上面に開口するとともにバイパス流路37に連通するバイパス口35eと、を有する。
【0027】
フィルタケース35a内にはフィルタ35bが配され、流入口35cから入る流体は流出口35dから排出される前にフィルタ35bを通る。すなわち、フィルタケース35aの内部はフィルタ35bによって上下に仕切られ、フィルタ35b上方側の一次室と、フィルタ35bの下方側の二次室とが形成される。
【0028】
流入口35cは第1流路31aを介してタンク32に接続され、流出口35dは第1流路31aを介して液体吐出ヘッド20に接続される。バイパス口35eはバイパス流路37を介して第2流路31bに接続される。
【0029】
フィルタ35bは、例えば、直径10μmの孔部であるフィルタ孔が多数設けられた薄膜状の金属フィルタである。フィルタ35bは、例えば上下方向に直交する第1の面方向に沿って配置され、その外周縁がフィルタケース35aの内壁に接して配され、フィルタケース35aの内部を上下2つに仕切る。なお、フィルタ35bは金属メッシュ、樹脂製のメンブレンフィルタであっても良い。
【0030】
フィルタ35bは、フィルタ35bの一次側の圧力P1とフィルタ35bの二次側の圧力P2の差がフィルタ孔でのインクの表面張力hにより決まるバブルポイント圧力Pbよりも小さくなるように構成されている。
【0031】
すなわち、気泡がフィルタ孔を通過するためには、フィルタ35bの一次側の圧力P1とフィルタ二次側の圧力P2の差が、フィルタ孔でのインクの表面張力hにより決まるバブルポイント圧力Pbを上回る必要がある。つまり、フィルタ35bの一次側の圧力P1とフィルタ35bの二次側の圧力P2の差がフィルタ孔でのインクの表面張力hにより決まるバブルポイント圧力Pbよりも小さくなる条件に設定すれば、気泡を確実に捕捉でき、気泡が二次側に流れることを防止することができる。
【0032】
本実施形態のフィルタ35bにおいて、通常、フィルタ35bの一次側の圧力P1とフィルタ二次側の圧力P2の差はおよそ1kPa以下である。一方、フィルタ孔における一般的なインク(たとえば油性インク、UVインク、ソルベントインク)の表面張力hにより決まるバブルポイント圧力Pbはおよそ10kPaであることが実験および理論計算から求められる。
【0033】
例えば、バブルポイント圧力をPb、フィルタ孔の孔径をd、インクの表面張力をhとした場合、Pbとd、hの間には、
Pb=k4hcosθ/d (kは補正係数、θはインクとフィルタとの接触角)
の関係が成り立つ。
【0034】
したがって、設計時に設定したとおりのフィルタの圧力損失が発生している限り、フィルタ35bは気泡を完全に捕捉できる。なお、フィルタ35bは、気泡のみでなくインク中のゴミ等の異物も捕捉する。
【0035】
第2循環ポンプ36は、循環路31の第2流路31bにおいて、液体吐出ヘッド20の二次側とタンク32との間に配される。第2循環ポンプ36は例えば圧電ポンプで構成されている。第2循環ポンプ36は、制御部13の制御に接続され、制御部13の制御に応じた送液能力で、二次側に配されるタンク32に向けてインクを送る。
【0036】
バイパス流路37は、金属または樹脂材料で構成されるパイプと、パイプの外面を覆うチューブ、例えばPTFEチューブと、を備える。
【0037】
バイパス流路37は、フィルタケース35aの一次室と、第2流路31bの第2循環ポンプ36よりも一次側であってかつ第2圧力センサ39bの二次側の流路とを、液体吐出ヘッド20を通らずに短絡的に接続する流路である。
【0038】
本実施形態において、バイパス流路37や循環路31は、例えばバイパス流路37側の流路抵抗が、液体吐出ヘッド20側の流路抵抗よりも大きくなるように構成されている。一例として、例えばバイパス流路37側の流路抵抗が、液体吐出ヘッド20側の流路抵抗の2~5倍と条件を満たすように構成されている。具体的には、バイパス流路37は、循環路31の第1流路31a及び第2流路31bの径よりも小径に構成されている。循環路31の内径がバイパス流路37の内径の2倍~6倍程度に設定され、バイパス流路37の流路径φ1は0.7mm以下であり、循環路31の流路径φ2は4.0mm程度である。また、バイパス流路37は長さL1が20mm程度に構成されている。なお、管路の長さ及び管径の他、管路を曲げる、あるいは流路中に抵抗となる構造を設ける等により、流路抵抗を設定してもよい。
【0039】
第1圧力センサ39a及び第2圧力センサ39bは、例えば半導体ピエゾ抵抗圧力センサを利用して圧力を電気信号として出力する。半導体ピエゾ抵抗圧力センサは、外部からの圧力を受けるダイヤフラムと、このダイヤフラムの表面に形成された半導体歪ゲージとを備える。半導体ピエゾ抵抗圧力センサは、外部からの圧力によるダイヤフラムの変形に伴い歪ゲージに生じるピエゾ抵抗効果による電気抵抗の変化を電気信号に変換して圧力を検出する。
【0040】
制御部13は、プロセッサ13aと、各要素を駆動する駆動回路と、各種データを記憶する記憶部13bと、外部通信用の通信インターフェース13cと、を備える。プロセッサ13a、記憶部13b、及び通信インターフェース13cは、循環装置30に一体に搭載された制御基板13d上に搭載されている。
【0041】
プロセッサ13aは、制御部13の中枢部分に相当する。プロセッサ13aは、オペレーティングシステムやアプリケーションプログラムに従って、液体吐出装置10の各種の機能を実現するべく、各部を制御する。
【0042】
プロセッサ13aには、循環装置30の各種ポンプ33、36、ヒータ34及び開閉バルブ32aの駆動回路や各種センサ26a、26b、26c、38、39a、39b、液体吐出ヘッド20の駆動回路が接続されている。
【0043】
例えばプロセッサ13aは、循環ポンプ33、36の動作を制御することで、インクを循環させる循環手段としての機能を有する。
【0044】
また、プロセッサ13aは、第1圧力センサ39a、第2圧力センサ39bにて検知した情報に基づき、第1循環ポンプ33及び第2循環ポンプ36の送液能力を制御することで、ノズル孔21aのインク圧力を調整する圧力調整手段としての機能を有する。
【0045】
また、プロセッサ13aは、インク温度センサ26a、26b、26c、及び温度センサ38にて検知した情報に基づき、ヒータ34の駆動回路を制御することで、ヒータの温度を調整する温度調整手段としての機能を有する。なお、複数の温度センサ26a、26b、26c、38のうち一部のみを用いてもよいし、全ての温度センサ26a、26b、26c、38を用いてもよい。
【0046】
また、プロセッサ13aは、開閉バルブ32aの開閉を制御することで、タンク32の空気室を大気に対して開閉可する機能を有する。
【0047】
記憶部13bは、例えばプログラムメモリやRAMを備える。記憶部13bには、アプリケーションプログラムや各種の設定値が記憶されている。記憶部13bには、例えば圧力制御に用いられる制御データとして、ノズル孔21aのインク圧力を算出する算出式や、目標圧力範囲、各ポンプの調整最大値などの各種設定値が記憶されている。
【0048】
通信インターフェース13cは、例えばユーザの入力操作や外部からの指示を、制御部13に送信する。
【0049】
以下本実施形態にかかる液体吐出装置10は、例えば外部からの入力指示や指令により印刷開始の指示を検知すると、印字動作として、記録媒体Sの搬送方向に対して直交する方向に液体吐出装置10を往復移動させながら、インク吐出動作を行うことにより記録媒体Sに画像を形成する。
【0050】
具体的には、プロセッサ13aは、ヘッド支持機構11に設けられたキャリッジ11a(図1)を記録媒体Sの方向に搬送し、矢印A方向に往復移動する。また、プロセッサ13aは、画像データに応じた画像信号を液体吐出ヘッド20の駆動回路に送り、液体吐出ヘッド20のアクチュエータ24を選択的に駆動して、ノズル孔21aから記録媒体Sにインク滴を吐出する。
【0051】
印字動作として、プロセッサ13aは、第1循環ポンプ33及び第2循環ポンプ36を駆動し、インク循環動作を開始する。ここで、第1流路31aのインクIは、フィルタ35bおよび液体吐出ヘッド20を流れる流路抵抗と、バイパス流路37の流路抵抗に応じた配分で、フィルタ35bおよび液体吐出ヘッド20に流れるインクと、バイパス流路37に流れるインクとに、分配される。
【0052】
インクIの一部は、タンク32から、第1流路31a、フィルタ35bを通って液体吐出ヘッド20に至り、第2流路31bを通って再びタンク32に流入するように循環する。
【0053】
この循環動作によりインクIに含まれる不純物は循環路31に設けられたフィルタ35bによって除去され液体吐出ヘッド20に至ることはない。
【0054】
また、インクIの残りの一部は、第1流路31aからバイパス流路37を通って、液体吐出ヘッド20を通らずに、第2流路31bに送られ、タンク32に流入する。
【0055】
循環路31におけるインクの圧力は、フィルタ35bと液体吐出ヘッド20の流路抵抗による圧力損失および、バイパス流路37の流路抵抗による圧力損失により、バイパス流路37の一次側すなわち流入側が、バイパス流路37の二次側すなわち流出側よりも、高い圧力になっている。したがって、液体吐出ヘッド20を通る循環路31及びバイパス流路37において、インクは、圧力の高い一次側から圧力の低い二次側へ向かって流れることになる。
【0056】
プロセッサ13aは、所定のタイミングで、タンク32の開閉バルブ32aを開け、大気開放する。タンク32は大気開放され、常に一定圧力となるため、液体吐出ヘッド20のインク消費による循環路31内の圧力低下が防止される。ここで、開閉バルブ32aを長時間開くことで開閉バルブ32aの温度上昇が懸念される場合は、定期的に短時間開閉バルブ32aを開くのみでも良い。
【0057】
循環路31が過度に圧力低下しなければ、開閉バルブ32aを閉じていてもノズル孔21aのインク圧力を一定に保つことが可能である。なお、ソレノイド式の開閉バルブ32aはノーマルクローズである。このため、開閉バルブ32aは、停電などにより急に装置への給電が停止しても、瞬時に閉じることでタンク32を大気圧から遮断し、循環路31を密閉することができる。したがって、液体吐出ヘッド20のノズル孔21aからインクIが垂れることを抑制できる。
【0058】
印字動作においてプロセッサ13aは、温度調整を行う。具体的には、温度センサ38、及びインク温度センサ26a、26b、26cから送信されるデータに基づいて、ヒータ34及びインクIの温度を検出し、温度センサ38、及びインク温度センサ26a、26b、26cの検知結果に基づき、ヒータ34の駆動回路を駆動することで、ヒータ34を加熱し、ヒータ34の温度を適正範囲に調整する。なお、温度調整は、複数の温度センサ26a、26b、26c、38の全てを用いてもよいし、一部のセンサのみを用いてもよい。
【0059】
制御部13は、例えばヒータ34の温度が予め決められたヒータ目標温度より低い時はヒータ34の駆動回路をオンにする。ヒータ34の加熱によりヒータ34の温度がヒータ目標温度よりも高くなったらヒータ34の駆動回路をオフにする。
【0060】
制御部13は、例えば、液体吐出ヘッド20の流路28の一次側の端部である供給口20a、液体吐出ヘッド20の流路28の二次側の端部である回収口20b、第2流路31bの位置で検出されるインク温度に基づいて、インクIがヒータ34通過したときには脱気に適した脱気目標温度となり、かつ、ヒータ34の通過後にインクIが自然放熱により冷却され、ノズル孔21aの近傍を通過するときには印字に適した印字目標温度となるように、ヒータ34の熱源34aの温度を制御する。また、熱源34aの温度は、インクを劣化させない条件を満たす温度(例えば110℃)を上限として設定される。なお、例えば脱気目標温度は、印字目標温度よりも高く、上限温度よりも低い値である。
【0061】
一例として、制御部13は、インクIが冷えている時、すなわち液体吐出ヘッド20の流路28の一次側の端部である供給口20a、液体吐出ヘッド20の流路28の二次側の端部である回収口20b、第2流路31bで検出されるインク温度が、印字目標温度(例えば40℃)よりも低い所定の基準温度(例えば35℃)以下である場合には、熱源34aの温度を熱源設定温度の上限に近い温度となるように制御し、インクIを急速に加熱する。
【0062】
また、制御部13は、液体吐出ヘッド20の流路28の一次側の端部である供給口20a、液体吐出ヘッド20の流路28の二次側の端部である回収口20b、第2流路31bで検出されるインク温度が、印字目標温度(例えば40℃)よりも低い所定の基準温度(例えば35℃)以上である場合は、徐々に熱源34aの熱源設定温度を変更し、液体吐出ヘッド20の流路28の一次側の端部である供給口20a、液体吐出ヘッド20の流路28の二次側の端部である回収口20b、第2流路31bで検出されるインク温度が印字目標温度(例えば40℃)に安定するように制御する。なお、このとき、3つのインク温度センサ26a、26b、26cを全て用いてもよく、一部のセンサのみを用いてもよい。
【0063】
結果として、ヒータ34を通過する際にインクIの温度は脱気目標温度となる程度の熱源設定温度、例えば印字目標温度より所定値(10℃から20℃)高い温度で安定する。
【0064】
このような温度制御により、ヒータ34通過直後のインクIが脱気目標温度に近い温度に加熱されることで脱気を促進でき、かつ、加熱しすぎないことにより、自然冷却によってノズル孔21a通過時には印字に適した印字目標温度に近い温度にすることができる。すなわち、インクIの温度に基づいて熱源34aの温度を調整することで、インクIの温度を安定させることができるとともに、インクIがノズル孔21a近傍を通過する際には最適な温度となる温度制御が実現可能となる。また熱源34aの温度の上限を設定したことにより、インクIの劣化を防止できる。
【0065】
ヒータ34の通過直後の位置で印字目標温度より高い脱気目標温度だったインクIは、液体吐出ヘッド20に至るまでに、自然冷却されることで印字目標温度に近いところまで冷却される。第1流路31aはそのような自然放熱条件を満たすような流路に設計されている。具体的には、例えば、流路の長さ、流路の内径、流路を構成する材料(金属または樹脂材料で構成されるパイプと、パイプの外面を覆うチューブ、例えばPTFEチューブ)が、ヒータ34の通過直後の位置で脱気目標温度のインクIが、液体吐出ヘッド20に至るまでに、印字目標温度に近いところまで自然冷却される条件に、最適化されている。
【0066】
また、プロセッサ13aは、圧力調整処理として、第1圧力センサ39a、第2圧力センサ39bから送信される圧力データを検出し、圧力センサ39a、39bから送信される一次側及び二次側の圧力データに基づいて、所定の演算式を用いて、ノズル孔21aのインク圧力を算出する。そして、算出されるノズル孔21aのインク圧力Pnに基づき、駆動電圧を算出し、ノズル孔21aのインク圧力Pnを適正値になるように、第1循環ポンプ33及び第2循環ポンプ36を駆動することで、液体吐出ヘッド20のノズル孔21aからインクIが漏れず、且つノズル孔21aから気泡を吸引しない程度の負圧を維持し、メニスカスMeを維持する。
【0067】
以降、プロセッサ13aは、循環終了指令を検出するまで、圧力のフィードバック制御を行う。そして、プロセッサ13aは循環終了の指示を検出すると、タンク32の開閉バルブ32aを閉じ、タンク32を密閉するとともに、第1循環ポンプ33及び第2循環ポンプ36を停止し、循環処理を終了する。
【0068】
本実施形態にかかるインクジェット装置、液体吐出装置によれば、液体吐出ヘッド20の一次側において、ヒータ34が設けられるとともに、ヒータ34の二次側にフィルタ35bが設けられているため、ヒータ34で発生した気泡をフィルタ35bにて捕捉することで、フィルタ35bの二次側に配される液体吐出ヘッド20に気泡が流れることを抑制できる。
【0069】
ここで、循環路31における気泡発生と、その気泡を除去する方法、および、インクが脱気される原理について説明する。ヒータ34内を流れるインクIは、ヒータ34により加熱され温度が上昇する。インクIの温度が上昇すると、気体の溶解度が小さくなる。そして、インクIに溶解できなくなった気体(主に酸素、窒素、二酸化炭素)が気泡として現れ、インクIと共に流れる。
【0070】
例えば、フィルタ35bの一次側と液体吐出ヘッド20の二次側の流路とを接続するバイパス流路37がない場合、フィルタ35bが捕捉した気泡は、フィルタ35bの一次側に気体のかたまりとして溜まり続ける。フィルタ35bの一次側に気体が溜まると、インクとフィルタ35bの接触面積が小さくなり、フィルタ35bを通過する単位面積当たりのインク流量が増大しフィルタ35bの圧力損失が大きくなることから、インクの総流量が低下し、安定吐出に必要な量のインクが液体吐出ヘッド20に供給されず吐出が不安定になる。さらには、フィルタ35bの一次側に溜まる気体の量が多くなり、フィルタ35bの圧力損失が増大し続けると、フィルタ35bの一次側の圧力P1とフィルタ35bの二次側の圧力P2の差が、フィルタ孔でのインクの表面張力hにより決まるバブルポイント圧力Pbを超えてしまい、フィルタ35bの一次側の気体がフィルタ孔を通過してしまう。フィルタ孔を通過した気体は気泡としてインクと一緒に流れ続け、液体吐出ヘッド20のノズル孔21a近傍を通過するときインクの吐出が不安定になる原因となりうる。
【0071】
これに対して、本実施形態にかかる液体吐出装置10は、第1流路31aのヒータ34よりも二次側で、且つ、フィルタ35bよりも一次側の空間と、第2流路31bの第2循環ポンプ36よりも一次側とを、液体吐出ヘッド20を通らずに短絡的にバイパス流路37で接続することで、液体吐出ヘッド20の吐出性能を安定させることが可能である。つまり、ヒータ34で発生した気泡は、フィルタ35bで捕捉された後、液体吐出ヘッド20を通らずに速やかに、液体とともにバイパス流路37を通って第2流路31bに送られ、タンク32に流入する。つまり、フィルタ35bの一次側に気体が溜まることがないことから、インクとフィルタ35bの接触面積が確保され、フィルタ35bの圧力損失が大きくなることが抑制できる。よって、フィルタ35bを通過できるインクの総流量を確保でき、安定した量のインクを供給できる。さらに、フィルタ35b一次側の気体がフィルタ孔を通過することも防止できるため、気泡が液体吐出ヘッド20に流入することがなく、インクの吐出を安定させられる。
【0072】
さらに、上記実施形態にかかる液体吐出装置10において、タンク32に到達した気泡は浮力により上昇し、タンク32の空気層と混ざり消滅する。よって、ヒータ34で気泡となったインク中に溶解していた気体(主に酸素、窒素、二酸化炭素)が再びインク中に溶解することが抑制できるため、液体吐出装置10を流れるインクは、徐々に気体溶解量が小さくなり、脱気される。
【0073】
インクが脱気されると、吐出時に液体吐出ヘッド20のアクチュエータ24の動きによるキャビテーションが発生しにくくなり、液体吐出性能を安定させられる。すなわち、液体吐出装置10によれば、ヒータ34で発生した気泡を除去すると同時に、脱気装置として作用し、液体吐出ヘッド20のノズル孔21aにおけるキャビテーションの発生を防止する効果もある。
【0074】
なお、一般的に、フィルタで捕捉した気泡を処理する方法として、例えば、フィルタに溜まった気泡がフィルタを通過できる程度に、インク流量・フィルタ圧損を増大させ、フィルタ下流に流れた気泡を液体吐出ヘッドのノズル孔から排出するパージ処理があるが、パージ処理は印刷を中断して液体吐出ヘッドをメンテナンスポジションに移動する必要があるため、連続印刷が困難となる。また、パージ処理は大量のインクを捨てることになるため、経済的及び環境的に好ましくない。さらに、パージ処理の後にノズル面を綺麗にするために、ワイプまたはサクションをする必要があるため、処理効率の低下やコストアップの原因となる。本実施形態にかかる液体吐出装置10は、フィルタ部35で捕捉した気泡を液体吐出ヘッド20に流さずにタンク32に送り、タンク32から排出することとしたため、例えばパージ処理によってノズル孔から排出する方法と比較して、処理効率の向上及びコストの低減が可能であり、インクの有効利用が可能である。
【0075】
また、液体吐出装置10は、バイパス流路37の流路抵抗を適切に設定することで、液体吐出ヘッド20を通るインクとバイパス流路37を流れるインクの流量を適切に保つことが可能となる。
【0076】
上述した実施形態によれば、安定した液体吐出性能が得られる。
【0077】
なお、本発明は上記実施形態の構成に限定されるものではない。
【0078】
例えば上記実施形態に係る液体吐出装置10は、フィルタケース35aに繋がるバイパス流路37の流路方向が上方を向き、バイパス口35eがフィルタケース35aの上面に開口し、バイパス流路37が上方に向けて延びる構成を例示したが、これに限られるものではない。例えば他の実施形態として図5に示すフィルタ部135のようにフィルタ部135の気泡排出側のバイパス口135eからの流路方向とフィルタ135bの面方向との傾斜角度が90度未満に構成されていてもよい。
【0079】
図5に示すフィルタ部135は、第1流路31aに設けられたフィルタケース135aと、フィルタケース135a内に収容されたフィルタ135bと、を備える。フィルタケース135aは、上面に開口するとともに一次側であるタンク32側の第1流路31aに連通する流入口135cと、下面に開口するとともに二次側である液体吐出ヘッド20側の第1流路31aに連通する流出口135dと、フィルタケース135aの側壁部に開口するとともにバイパス流路37に連通するバイパス口135eと、を有する。フィルタ部135は、流路方向が側方、すなわちフィルタ135bの面方向に沿っている。すなわち、フィルタ部135は、バイパス口135eがフィルタケース135aの側壁部であってフィルタ135bに近い位置に設けられており、バイパス流路37がフィルタ135bと平行に延出する。この場合、フィルタ135bの表面を流れた気泡がそのままバイパス流路37に流れ込みやすく、気泡を流出側に案内しやすいため、気泡の排出を促すことが可能となる。
【0080】
また、例えば上記実施形態に係る液体吐出装置10において、フィルタ部35の一次側の第1流路31aからフィルタケース35a内に下方に向けて流体が流れ込む構成を例示したがこれに限られるものではない。例えば他の実施形態として図6に示すフィルタ部235のように、フィルタ部235の流入口235cに向かう第1流路31aの流路方向とフィルタ235bの面方向との傾斜角度が90度未満に構成されていてもよい。
【0081】
図6に示すフィルタ部235は、第1流路31aに設けられたフィルタケース235aと、フィルタケース235a内に収容されたフィルタ235bと、を備える。フィルタケース235aは、フィルタ235b近傍の側壁に開口するとともに一次側であるタンク32側の第1流路31aに連通する流入口235cと、下面に開口するとともに二次側である液体吐出ヘッド20側の第1流路31aに連通する流出口235dと、フィルタケース235aの側壁部に開口するとともにバイパス流路37に連通するバイパス口235eと、を有する。フィルタ部235において、流入口235cがフィルタケース235aのフィルタ235b近傍の側壁に配され、第1流路31aは横方向に延びている。このような構成によって、フィルタケース235a内において、一方の側方から他方の側方に向けてフィルタ235bの面方向に沿う流体の流れができ、フィルタ235bの面上に捕捉された気泡がバイパス流路37側に案内されやすく、気泡の排出を促すことが可能となる。
【0082】
また、フィルタ35bで捕捉した気泡がタンク32の空気層と混ざり消滅する前に、気泡がインクに再溶解するのを防止する為に、例えば第2流路31bにおけるバイパス流路37との合流点とタンク32との間などの所定箇所に、ヒータを追加して設けても良い。
【0083】
また、上記実施形態においては、バイパス流路37の流路径が本流となる循環路31の流路径よりも小さく、バイパス流路37側の流路抵抗が高くなる構成を例示したがこれに限られるものではない。例えば流量を確保できる場合には、バイパス流路37の径を循環路31の径よりも大きくしてバイパス流路37側の流路抵抗を減らすことも可能である。バイパス流路37側の流路抵抗を減らすことで、バイパス流路37のインク流量が大きくなり、気泡の排出を促すことが可能となる。
【0084】
また、吐出する液体はインクに限られるものではなく、例えばプリント配線基板の配線パターンを形成するための導電性粒子を含む液体等、各種の液体を適用することが可能である。
【0085】
液体吐出ヘッド20は、上記の他、例えば静電気で振動板を変形してインク滴を吐出する構造、あるいはヒータ等の熱エネルギーを利用してノズル孔からインク滴を吐出する構造等でもよい。
【0086】
また、上記実施形態においては液体吐出装置10はインクジェット記録装置1に用いられる例を示したが、これに限られるものではなく、例えば3Dプリンタ、産業用の製造機械、医療用途にも用いることが可能であり、小型軽量化及び低コスト化が可能である。
【0087】
また、上記実施形態にかかる液体吐出装置10は液体吐出ヘッド20の一次側と二次側にそれぞれ循環ポンプ33、36を設ける構成を例示したが、これに限られるものではなく、循環ポンプを1つとしてもよい。この場合にあっても、流体を押し引きすることで循環路の正負の圧力状態を調整することにより、上記実施形態と同様の機能を果たすことが可能である。
【0088】
以上述べた少なくとも一つの実施形態によれば、安定した液体吐出性能が得られる。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明と同等の記載を付記する。
[1]
液体を吐出する液体吐出ヘッドの一次側に接続される第1流路と、
前記液体吐出ヘッドの二次側に接続される第2流路と、
前記第1流路に設けられ、前記第1流路の流体を加熱する加熱部と、
前記第1流路の前記加熱部と前記液体吐出ヘッドの間に配されるフィルタと、
前記フィルタの一次側と前記液体吐出ヘッドの二次側の流路とを接続するバイパス流路と、
を備える、液体供給装置。
[2]
前記第1流路の一次側及び前記第2流路の二次側に接続され、液体を貯留するとともに大気開放可能に構成されたタンクを備える、[1]に記載の液体供給装置。
[3]
流入口と流出口とバイパス口とを有し、前記フィルタを収容するフィルタケースを備え、
前記フィルタは、前記フィルタケースの前記流入口と前記流出口との間に配され、
前記バイパス口は、前記フィルタケースにおける前記フィルタの一次側に設けられる、[1]または[2]に記載の液体供給装置。
[4]
前記フィルタの前記バイパス口側の流路抵抗は前記流出口側の流路抵抗よりも大きい、[3]に記載の液体供給装置。
[5]
[1]乃至[4]のいずれかに記載の液体供給装置と、
液体を吐出する液体吐出ヘッドと、を備える、液体吐出装置。
【符号の説明】
【0090】
1…インクジェット記録装置、10…液体吐出装置、11…ヘッド支持機構、11a…キャリッジ、12…媒体支持機構、13…制御部、13a…プロセッサ、13b…記憶部、13c…通信インターフェース、13d…制御基板、20…液体吐出ヘッド、20a…供給口、20b…回収口、21…ノズルプレート、21a…ノズル孔、22…基板、23…マニフォルド、24…アクチュエータ、24a…電極、24b…電極、25…インク圧力室、28…流路、30…循環装置(液体供給装置)、31…循環路、31a…第1流路、31b…第2流路、32…タンク、32a…開閉バルブ、33…第1循環ポンプ、34…ヒータ(加熱部)、34a…熱源、35、135、235…フィルタ部、35a、135a、235a…フィルタケース、35b、135b、235b…フィルタ、35c、135c、235c…流入口、35d、135d、235d…流出口、35e、135e、235e…バイパス口、36…第2循環ポンプ、37…バイパス流路、38…温度センサ、39a…第1圧力センサ、39b…第2圧力センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6