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特許7166984多孔質構造体、多孔質構造体の製造方法、及び、3D造形用データ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】多孔質構造体、多孔質構造体の製造方法、及び、3D造形用データ
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/00 20170101AFI20221031BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20221031BHJP
   A47C 27/14 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
B29C64/00
B33Y80/00
A47C27/14 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019096267
(22)【出願日】2019-05-22
(65)【公開番号】P2020189449
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】522345803
【氏名又は名称】株式会社アーケム
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】板橋 大一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 佳之
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-029064(JP,A)
【文献】特開2015-093549(JP,A)
【文献】特開2016-215992(JP,A)
【文献】国際公開第2015/156248(WO,A1)
【文献】特開2009-000847(JP,A)
【文献】特開2000-262359(JP,A)
【文献】特開2002-274238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
B33Y 10/00 - 99/00
A47C 27/00 - 27/22
A47C 31/00 - 31/12
F16S 1/00
F16S 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性のある樹脂又はゴムから構成された多孔質構造体であって、
前記多孔質構造体は、
複数のセル孔を区画する、骨格部と、
前記骨格部の仮想外輪郭面の少なくとも一部を覆うとともに、前記骨格部と一体に構成された、表皮部と、
を備えており、
前記表皮部は、
前記骨格部の前記仮想外輪郭面に沿って延在する複数の柱部と、
それぞれ前記複数の柱部の端部どうしを結合する、複数の柱結合部と、
前記複数の柱部どうしの間で区画される複数の表皮仮想面と、
を有しており、
前記表皮部は、1cm内の前記柱部及び前記柱結合部の総面積の割合である単位面積率が、不均一である、多孔質構造体。
【請求項2】
前記表皮部は、
大曲率半径部分と、
前記大曲率半径部分よりも小さな曲率半径を有する、小曲率半径部分と、
を有しており、
前記小曲率半径部分内の前記柱部及び前記柱結合部の総面積の割合である小部面積率は、前記大曲率半径部分内の前記柱部及び前記柱結合部の総面積の割合である大部面積率よりも、高い、請求項1に記載の多孔質構造体。
【請求項3】
前記多孔質構造体は、クッション材に用いられるものであり、
前記多孔質構造体は、
使用者からの荷重を受けるように構成された、荷重受け面と、
前記荷重受け面から連続する、側面と、
を有しており、
前記多孔質構造体の前記荷重受け面は、前記表皮部の前記大曲率半径部分によって構成されており、
前記多孔質構造体における前記荷重受け面と前記側面との間のエッジ部は、前記表皮部の前記小曲率半径部分によって構成されている、請求項2に記載の多孔質構造体。
【請求項4】
前記表皮部は、
低面積率部分と、
前記低面積率部分よりも前記単位面積率が高い、高面積率部分と、
を有しており、
前記高面積率部分における前記表皮仮想面の1個当たりの面積の平均値は、前記低面積率部分における前記表皮仮想面の1個当たりの面積の平均値よりも、小さい、請求項1~3のいずれか一項に記載の多孔質構造体。
【請求項5】
前記表皮部は、
低面積率部分と、
前記低面積率部分よりも前記単位面積率が高い、高面積率部分と、
を有しており、
前記高面積率部分における前記柱部の1本当たりの長さの平均値は、前記低面積率部分における前記柱部の1本当たりの長さの平均値よりも、短い、請求項1~4のいずれか一項に記載の多孔質構造体。
【請求項6】
前記表皮部は、
低面積率部分と、
前記低面積率部分よりも前記単位面積率が高い、高面積率部分と、
を有しており、
前記高面積率部分における前記柱部の幅の平均値は、前記低面積率部分における前記柱部の幅の平均値よりも、大きい、請求項1~5のいずれか一項に記載の多孔質構造体。
【請求項7】
前記表皮部は、
低面積率部分と、
前記低面積率部分よりも前記単位面積率が高い、高面積率部分と、
を有しており、
前記高面積率部分における1cm当たりの前記柱部の本数密度及び1cm当たりの前記柱結合部の個数密度は、それぞれ、前記低面積率部分における1cm当たりの前記柱部の本数密度及び1cm当たりの前記柱結合部の個数密度よりも、高い、請求項1~6のいずれか一項に記載の多孔質構造体。
【請求項8】
前記骨格部のうち、前記仮想外輪郭面上に位置する部分のそれぞれは、いずれか1つの前記柱結合部と連結されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の多孔質構造体。
【請求項9】
前記複数の柱部は、それぞれ、断面積を一定に維持しつつ延在している、請求項1~8のいずれか一項に記載の多孔質構造体。
【請求項10】
前記多孔質構造体は、シートパッドに用いられるものである、請求項1~9のいずれか一項に記載の多孔質構造体。
【請求項11】
前記骨格部は、
複数の骨部と、
それぞれ前記複数の骨部の端部どうしを結合する、複数の骨結合部と、
から構成されており、
前記骨格部は、前記セル孔を内部に区画するセル区画部を複数有しており、
前記セル区画部は、それぞれ環状に構成された複数の環状部を有している、請求項1~10のいずれか一項に記載の多孔質構造体。
【請求項12】
前記環状部は、当該環状部に隣接する一対の前記セル区画部によって共有されている、請求項11に記載の多孔質構造体。
【請求項13】
3Dプリンタを用いて、請求項1~12のいずれか一項に記載の多孔質構造体を製造する、多孔質構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質構造体、多孔質構造体の製造方法、及び、3D造形用データに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、クッション性のある多孔質構造体(例えば、ウレタンフォーム)は、例えば金型成形又はスラブ成形等において、化学反応により発泡させる工程を経て、製造されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-44292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような多孔質構造体は、多孔質構造体の骨格部が外部に露出していることから、人や物との干渉等により骨格部の外表面(仮想外輪郭面)の近傍部分が破損しやすいおそれがある。
【0005】
本発明は、耐久性を向上できる多孔質構造体、耐久性を向上できる多孔質構造体を得ることができる多孔質構造体の製造方法、及び、耐久性を向上できる多孔質構造体を得ることができる3D造形用データを、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
可撓性のある樹脂又はゴムから構成された多孔質構造体であって、
前記多孔質構造体は、
複数のセル孔を区画する、骨格部と、
前記骨格部の仮想外輪郭面の少なくとも一部を覆うとともに、前記骨格部と一体に構成された、表皮部と、
を備えており、
前記表皮部は、
前記骨格部の前記仮想外輪郭面に沿って延在する複数の柱部と、
それぞれ前記複数の柱部の端部どうしを結合する、複数の柱結合部と、
前記複数の柱部どうしの間で区画される複数の表皮仮想面と、
を有しており、
前記表皮部は、1cm内の前記柱部及び前記柱結合部の総面積の割合である単位面積率が、不均一である。
本発明の多孔質構造体により、耐久性を向上できる。
【0007】
本発明の多孔質構造体においては、
前記表皮部は、
大曲率半径部分と、
前記大曲率半径部分よりも小さな曲率半径を有する、小曲率半径部分と、
を有しており、
前記小曲率半径部分内の前記柱部及び前記柱結合部の総面積の割合である小部面積率は、前記大曲率半径部分内の前記柱部及び前記柱結合部の総面積の割合である大部面積率よりも、高いと、好適である。
これにより、良好なクッション性を得つつ、曲げ剛性やねじり剛性を向上できる。
【0008】
本発明の多孔質構造体においては、
前記多孔質構造体は、クッション材に用いられるものであり、
前記多孔質構造体は、
使用者からの荷重を受けるように構成された、荷重受け面と、
前記荷重受け面から連続する、側面と、
を有しており、
前記多孔質構造体の前記荷重受け面は、前記表皮部の前記大曲率半径部分によって構成されており、
前記多孔質構造体における前記荷重受け面と前記側面との間のエッジ部は、前記表皮部の前記小曲率半径部分によって構成されていると、好適である。
これにより、良好なクッション性を得つつ、曲げ剛性やねじり剛性を向上できる。
【0009】
本発明の多孔質構造体においては、
前記表皮部は、
低面積率部分と、
前記低面積率部分よりも前記単位面積率が高い、高面積率部分と、
を有しており、
前記高面積率部分における前記表皮仮想面の1個当たりの面積の平均値は、前記低面積率部分における前記表皮仮想面の1個当たりの面積の平均値よりも、小さいと、好適である。
これにより、耐久性を向上しつつ、多孔質構造体のクッション材としての特性を向上できる。
【0010】
本発明の多孔質構造体においては、
前記表皮部は、
低面積率部分と、
前記低面積率部分よりも前記単位面積率が高い、高面積率部分と、
を有しており、
前記高面積率部分における前記柱部の1本当たりの長さの平均値は、前記低面積率部分における前記柱部の1本当たりの長さの平均値よりも、短いと、好適である。
これにより、耐久性を向上しつつ、多孔質構造体のクッション材としての特性を向上できる。
【0011】
本発明の多孔質構造体においては、
前記表皮部は、
低面積率部分と、
前記低面積率部分よりも前記単位面積率が高い、高面積率部分と、
を有しており、
前記高面積率部分における前記柱部の幅の平均値は、前記低面積率部分における前記柱部の幅の平均値よりも、大きくてもよい。
【0012】
本発明の多孔質構造体においては、
前記表皮部は、
低面積率部分と、
前記低面積率部分よりも前記単位面積率が高い、高面積率部分と、
を有しており、
前記高面積率部分における1cm当たりの前記柱部の本数密度及び1cm当たりの前記柱結合部の個数密度は、それぞれ、前記低面積率部分における1cm当たりの前記柱部の本数密度及び1cm当たりの前記柱結合部の個数密度よりもと、好適である。
これにより、耐久性を向上しつつ、多孔質構造体のクッション材としての特性を向上できる。
【0013】
本発明の多孔質構造体においては、
前記骨格部のうち、前記仮想外輪郭面上に位置する部分のそれぞれは、いずれか1つの前記柱結合部と連結されていると、好適である。
これにより、耐久性をより向上できる。
【0014】
本発明の多孔質構造体においては、
前記複数の柱部は、それぞれ、断面積を一定に維持しつつ延在していると、好適である。
これにより、表皮部の構造をシンプルにすることができるので、3Dプリンタによる多孔質構造体の製造が容易となる。
【0015】
本発明の多孔質構造体においては、
前記多孔質構造体は、シートパッドに用いられるものであるとよい。
【0016】
本発明の多孔質構造体においては、
前記骨格部は、
複数の骨部と、
それぞれ前記複数の骨部の端部どうしを結合する、複数の骨結合部と、
から構成されており、
前記骨格部は、前記セル孔を内部に区画するセル区画部を複数有しており、
前記セル区画部は、それぞれ環状に構成された複数の環状部を有していると、好適である。
これにより、多孔質構造体のクッション材としての特性がより良好になる。
【0017】
本発明の多孔質構造体においては、
前記環状部は、当該環状部に隣接する一対の前記セル区画部によって共有されていると、好適である。
これにより、多孔質構造体のクッション材としての特性がより良好になる。
【0018】
本発明の多孔質構造体においては、
前記多孔質構造体は、3Dプリンタによって造形されたものであるとよい。
【0019】
本発明の多孔質構造体の製造方法は、
3Dプリンタを用いて、上述の多孔質構造体を製造するものである。
本発明の多孔質構造体の製造方法によれば、耐久性を向上できる多孔質構造体を得ることができる。
【0020】
本発明の3D造形用データは、
3Dプリンタの造形部が造形を行う際に前記3Dプリンタの制御部に読み込まれる3D造形用データであって、
前記制御部が、前記造形部に、上述の多孔質構造体を、造形させるように構成されている。
本発明の3D造形用データによれば、耐久性を向上できる多孔質構造体を得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、耐久性を向上できる多孔質構造体、耐久性を向上できる多孔質構造体を得ることができる多孔質構造体の製造方法、及び、耐久性を向上できる多孔質構造体を得ることができる3D造形用データを、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の任意の実施形態に係る多孔質構造体を備えることができるシートパッドを備えた車両用シートを、概略的に示す斜視図である。
図2図1のシートパッドを構成することができる、本発明の一実施形態に係る多孔質構造体を示す、斜視図である。
図3図2の多孔質構造体のB部を拡大して示す、斜視図である。
図4図2の多孔質構造体を、図2とは反対側から観た様子を示す、斜視図である。
図5図2の多孔質構造体を、図2のA-A線に沿った断面により示す、A-A断面図である。
図6図5の多孔質構造体のD部を拡大して示す、断面図である。
図7図6に示す多孔質構造体の部分を斜めから観た様子を示す、斜視図である。
図8図6の骨格部と同様のセル構造を有する骨格部の一部を示す、斜視図である。
図9図8の骨格部を、図8のG矢印の方向から観たときの様子を示す、G矢視図である。
図10図8の骨格部を、図8のH矢印の方向から観たときの様子を示す、H矢視図である。
図11図8の骨格部のセル区画部を示す、斜視図である。
図12図11に対応する図面であり、骨格部の第1変形例を説明するための図面である。
図13】骨格部の第2変形例を説明するための図面である。
図14図14(a)は、外力が加わっていない状態における図13の骨格部の骨部を示す斜視図であり、図14(b)は、外力が加わっている状態における図14(a)の骨部を示す斜視図である。
図15】本発明の一実施形態に係る、多孔質構造体の製造方法を説明するための図面である。
図16】本発明の一変形例に係る、多孔質構造体の製造方法を説明するための図面である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の多孔質構造体、及び、本発明の多孔質構造体の製造方法又は3D造形用データを用いて製造される多孔質構造体は、クッション材に用いられるのが好適であり、着座用のクッション材(シートパッド等)に用いられるのがより好適であり、車両用シートパッドに用いられるのがさらに好適である。
【0024】
以下、本発明に係る多孔質構造体、多孔質構造体の製造方法、及び、3D造形用データの実施形態について、図面を参照しながら例示説明する。
各図において共通する構成要素には同一の符号を付している。
【0025】
まず、図1を参照しつつ、本発明の任意の実施形態に係る多孔質構造体1の好適な使用例を説明する。
図1の例において、多孔質構造体1は、クッション材に用いられるように構成されており、具体的には、シートパッド(より具体的には、車両用シートパッド)302に用いられるように構成されている。図1は、本発明の任意の実施形態に係る多孔質構造体1を備えることができるシートパッド(より具体的には、車両用シートパッド)302を備えた、車両用シート300の一例を示している。後述するように、多孔質構造体1は、内部に複数のセル孔C(図6及び図7)を区画しており、また、3Dプリンタによって造形されたものである。
【0026】
本明細書におけるシートパッド302の説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」とは、シートパッド302に着座した使用者(着座者)から観たときの「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」をそれぞれ指す。図1では、シートパッド302に着座した着座者から観たときの「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」の各方向を、表記している。
【0027】
図1の例において、車両用シート300は、フレーム301と、フレーム301に取り付けられたシートパッド302と、を備えている。フレーム301は、例えば、金属又は樹脂から構成されると好適である。シートパッド302は、着座者が着座するためのクッションパッド部310と、着座者の背中を支持するためのバックパッド部320と、着座者の頭部を支持するためのヘッドレスト部340と、を備えている。
【0028】
クッションパッド部310は、着座者の臀部及び大腿部を下から支持するように構成されたメインパッド部311と、メインパッド部311の左右両側に位置し、着座者の臀部及び大腿部を左右両側から支持するように構成された、一対のサイドパッド部312と、を有している。メインパッド部311は、着座者の臀部を下から支持するように構成された尻下部311hと、着座者の大腿部を下から支持するように構成された腿下部311tと、を有している。図1の例において、メインパッド部311とサイドパッド部312とは、互いに別体に構成されており、それぞれ別々の多孔質構造体1から構成されている。ただし、メインパッド部311の任意の一部又は全部とサイドパッド部312の任意の一部又は全部とは、互いに一体でもよい。また、図1の例において、尻下部311hと腿下部311tとは、互いに別体に構成されており、それぞれ別々の(別体の)多孔質構造体1から構成されている。ただし、尻下部311hの一部又は全部と腿下部311tの一部又は全部とは、互いに一体でもよい。また、図1の例において、腿下部311tは、左右方向に2分割されており、言い換えれば、左右一対の腿下部311tが設けられており、これら一対の腿下部311tは、それぞれ別々の多孔質構造体1から構成されている。ただし、腿下部311tは、その全体が一体に構成されていてもよい。
【0029】
バックパッド部320は、着座者の背中を後から支持するように構成されたメインパッド部321と、メインパッド部321の左右両側に位置し、着座者の背中を左右両側から支持するように構成された、一対のサイドパッド部322と、を有している。図1の例において、メインパッド部321とサイドパッド部322とは、互いに別体に構成されており、それぞれ別々の多孔質構造体1から構成されている。ただし、メインパッド部321の任意の一部又は全部とサイドパッド部322の任意の一部又は全部とは、互いに一体に構成されていてもよい。また、図1の例において、メインパッド部321は、上下方向に2分割されており、言い換えれば、上下一対のメインパッド部321が設けられており、これら一対のメインパッド部321は、それぞれ別々の多孔質構造体1から構成されている。ただし、メインパッド部321は、その全体が一体に構成されていてもよい。また、バックパッド部320は、図1の例において、クッションパッド部310とは別体に構成されているが、バックパッド部320の任意の一部又は全部は、クッションパッド部310の任意の一部又は全部と、一体に構成されていてもよい。
【0030】
ヘッドレスト部340は、着座者の頭部を後から支持するように構成されたメインパッド部341と、メインパッド部341の左右両側に位置し、着座者の頭部を左右両側から支持するように構成された、一対のサイドパッド部342と、を有している。図1の例において、メインパッド部341とサイドパッド部342とは、互いに別体に構成されており、具体的には、それぞれ別々の多孔質構造体1から構成されている。ただし、メインパッド部341の任意の一部又は全部とサイドパッド部342の任意の一部又は全部とは、互いに一体でもよい。また、ヘッドレスト部340は、サイドパッド部342を有していなくてもよい。また、図1の例において、ヘッドレスト部340のメインパッド部341は、バックパッド部320のメインパッド部321の一部(具体的には、上下一対のメインパッド部321のうち、上側のメインパッド部321)と一体に構成されている。ただし、ヘッドレスト部340の任意の一部又は全部は、バックパッド部320の任意の一部又は全部と一体に構成されていてもよいし、あるいは、バックパッド部320とは別体に構成されていてもよい。また、シートパッド302は、ヘッドレスト部340を備えていなくてもよい。
【0031】
以上のように、図1のシートパッド302は、互いから別体に構成された複数の部品から構成されており、それぞれの部品が、別々の多孔質構造体1から構成されている。ただし、シートパッド302は、その全体が一体に構成されることで1つの部品から構成されていてもよく、ひいては、その全体が1つの多孔質構造体1から構成されていてもよい。
なお、以下では、説明の便宜のため、シートパッド302を構成する部品を、単に「シートパッド302」と呼ぶ場合がある。
【0032】
図1の例のように、多孔質構造体1がクッション材に用いられる場合、多孔質構造体1は、使用者(着座者)からの荷重を受けるように構成された、荷重受け面FSと、荷重受け面FSから連続する側面SSと、側面SSから連続するとともに荷重受け面FSとは反対側を向く裏面BSと、を有していると、好適である。より具体的に、多孔質構造体1がシートパッド(特に車両用シートパッド)302に用いられる場合、図1の例のように、多孔質構造体1の荷重受け面FS、側面SS、及び裏面BSは、それぞれ、シートパッド302の荷重受け面FS、側面SS、及び裏面BSを構成すると、好適である。シートパッド302(ひいては多孔質構造体1)の荷重受け面FSは、シートパッド302に着座した使用者(着座者)側を向くように構成された面(着座者側の面)である。
【0033】
図1の例において、シートパッド302(ひいては多孔質構造体1)の裏面BSは、フレーム301に固定されている。シートパッド302(ひいては多孔質構造体1)の裏面BSは、面ファスナ等を介して、フレーム301に取り外し可能に固定されてもよい。あるいは、シートパッド302(ひいては多孔質構造体1)の裏面BSは、接着剤等を介して、フレーム301に取り外しできないように固定されてもよい。
【0034】
図1の例において、車両用シート300は、シートパッド302(ひいては多孔質構造体1)を覆う表皮を備えていない。そのため、シートパッド302(ひいては多孔質構造体1)の荷重受け面FS及び側面SSが、外部に露出しており、言い換えれば、車両用シート300の外表面(具体的には、荷重受け面FS及び側面SS)を構成している。後述するように、多孔質構造体1は、表皮部6(図2)を備えていることから、多孔質構造体1の上に別体の表皮を被せる必要は無いようにされている。
ただし、車両用シート300は、シートパッド302(ひいては多孔質構造体1)を覆う表皮を備えていてもよい。
【0035】
なお、図1の例において、シートパッド302を構成する複数の部品は、それぞれの全体が、多孔質構造体1から構成されている。
ただし、シートパッド302を構成する1つ又は複数の部品は、それぞれ、それぞれの部品の任意の一部のみが、多孔質構造体1から構成されていてもよい。その場合、シートパッド302を構成する当該部品のうち残りの部分は、金型成形等において化学反応により発泡させる工程を経て製造されるとよい。
また、シートパッド302を構成する複数の部品のうち一部の部品のみが、それぞれの一部又は全部において多硬質構造体1から構成されていてもよい。その場合、シートパッド302を構成する複数の部品のうち残り部品は、金型成形等において化学反応により発泡させる工程を経て製造されるとよい。
【0036】
なお、多孔質構造体1は、図1を参照しつつ上述したシートパッド302とは異なる構成のシートパッドに用いられてもよい。また、多孔質構造体1は、シートパッド以外の任意のクッション材に用いられてもよい。
【0037】
〔多孔質構造体〕
つぎに、図2図14を参照しつつ、本発明の様々な実施形態に係る多孔質構造体1について説明する。
図2図7は、本発明の一実施形態に係る多孔質構造体1を示している。なお、図2図7に示す多孔質構造体1は、図1の例のシートパッド302におけるヘッドレスト部340のサイドパッド部342に用いられるように構成されている。ただし、本明細書で説明する各例の多孔質構造体1の構成は、図1の例のシートパッド302やその他の任意のシートパッド、並びに、他の種類のクッション材にも、好適に用いることができる。
図2は、本発明の一実施形態に係る多孔質構造体1を、荷重受け面FS側から観た様子を示す、斜視図である。図3は、図2の多孔質構造体のB部を拡大して示している。図4は、図2の多孔質構造体1を、図2とは反対側(裏面BS側)から観た様子を示す、斜視図である。図5は、図2の多孔質構造体1を、図2のA-A線に沿った断面により示す、A-A断面図である。図6は、図5の多孔質構造体1のD部を拡大して示している。図7は、図6に示す多孔質構造体1の部分を斜めから観た様子を示す、斜視図である。
【0038】
図5図7に示すように、本明細書で説明する各例の多孔質構造体1は、複数のセル孔Cを区画する、骨格部2と、骨格部2の仮想外輪郭面VCの少なくとも一部を覆うとともに、骨格部2と一体に構成された、表皮部6と、を備えている。多孔質構造体1は、その全体が一体に構成されている。
ここで、骨格部2の「仮想外輪郭面(VC)」とは、図5及び図6において破線で示すように、骨格部2の外輪郭をなす仮想外表面であり、骨格部2のうち最も外側に位置する部分(肉部分)どうしを滑らかに繋げてなる仮想面である。
骨格部2と表皮部6の構成については、後に詳しく説明する。
【0039】
本明細書で説明する各例の多孔質構造体1は、3Dプリンタによって造形されたものである。3Dプリンタを用いて多孔質構造体1を製造することにより、従来のように化学反応により発泡させる工程を経る場合に比べ、製造が簡単になり、かつ、所期したとおりの構成が得られる。また、多孔質構造体1の設計自由度を大幅に広げることができるので、より幅広い要求特性に対応することも可能になる。また、今後の3Dプリンタの技術進歩により、将来的に、3Dプリンタによる製造を、より短時間かつ低コストで、実現できるようになることが期待できる。
また、3Dプリンタを用いて多孔質構造体1を製造することにより、骨格部2に一体に構成された表皮部6を備えた多孔質構造体1を、一工程で、簡単かつ所期したとおりに、得ることができる。なお、従来のように化学反応により発泡させる工程を経る場合、骨格部2に一体に構成された表皮部6を備えた多孔質構造体1を得ることはできない。
【0040】
本明細書で説明する各例の多孔質構造体1は、可撓性のある樹脂又はゴムから構成されている。すなわち、多孔質構造体1の骨格部2や表皮部6の肉部分は、可撓性のある樹脂又はゴムから構成されており、骨格部2によって区画されるセル孔Cや、表皮部6によって区画される、後述の貫通穴66は、空隙である。
ここで、「可撓性のある樹脂」とは、外力が加わると変形することができる樹脂を指しており、例えば、エラストマー系の樹脂が好適であり、ポリウレタンがより好適である。ゴムとしては、天然ゴム又は合成ゴムが挙げられる。多孔質構造体1は、可撓性のある樹脂又はゴムから構成されているので、外力の付加・解除に応じた圧縮・復元変形が可能であり、クッション性を有することができる。
なお、3Dプリンタによる製造のし易さの観点からは、多孔質構造体1は、可撓性のある樹脂から構成されている場合のほうが、ゴムから構成されている場合よりも、好適である。
多孔質構造体1を構成する材料(可撓性のある樹脂又はゴム)の組成は、多孔質構造体1の全体にわたって同一でもよいし、あるいは、多孔質構造体1の部分ごとに異なっていてもよい。3Dプリンタによる製造のし易さの観点からは、多孔質構造体1を構成する材料の組成は、多孔質構造体1の全体にわたって同一であると好適である。
【0041】
<表皮部>
以下、図2図7を参照しつつ、本発明の様々な実施形態に係る多孔質構造体1の表皮部6について、さらに詳しく説明する。
表皮部6は、骨格部2の仮想外輪郭面VCの少なくとも一部を覆うとともに、骨格部2と一体に構成されている。図2図7の例において、表皮部6は、骨格部2の仮想外輪郭面VCの全部を覆っているが、表皮部6は、骨格部2の仮想外輪郭面VCの任意の一部のみを覆っていてもよい。表皮部6は、多孔質構造体1における最も外側に位置する部分である。したがって、多孔質構造体1のうち、表皮部6が設けられた領域において、表皮部6は、多孔質構造体1の外表面を構成する。
表皮部6は、その全体が、骨格部2の仮想外輪郭面VCに沿って延在している。
図3及び図6に拡大して示すように、表皮部6は、複数の柱部6Cと、複数の柱結合部6Jと、複数の表皮仮想面V6と、を有している。各柱部6Cは、それぞれ、柱状に構成されており、骨格部2の仮想外輪郭面VCに沿って延在している。各柱結合部6Jは、それぞれ、互いに異なる方向に延在する複数の柱部6Cの延在方向の端部6Ceどうしが互いに隣接する箇所で、これらの柱部6Cの端部6Ceどうしを結合している。表皮部6の柱部6C及び柱結合部6Jは、骨格部2の仮想外輪郭面VCよりも外側(骨格部2とは反対側)に位置しているとともに骨格部2の仮想外輪郭面VCに接触しており、骨格部2の内部には位置していない。各表皮仮想面V6は、それぞれ、上記複数の柱部6Cどうしの間で区画されている。より具体的に、各表皮仮想面V6の外縁は、環状をなすように互いに柱結合部6Jを介して結合された3本以上(図3の例では3本)の柱部6Cの内周側縁部によって、区画されている。各表皮仮想面V6には、それぞれ、表皮部6をその厚み方向に貫通する貫通穴66が設けられていてもよいし、あるいは、表皮仮想面V6を覆う表皮膜65が設けられていてもよい。表皮膜65は、当該表皮膜65の周囲を囲む柱部6C及び柱結合部6Jと一体であり、柱部6Cよりも薄く構成されるものである。多孔質構造体1の通気性向上の観点から、図3の例のように、表皮部6が有する複数の表皮仮想面V6のうち少なくとも一部(好適には全部)の表皮仮想面V6には、それぞれ、貫通穴66が設けられていると好適である。表皮部6が貫通穴66を有することにより、表皮部6の貫通穴66を介した、骨格部2の内外への通気が、可能になる。ただし、表皮部6が骨格部2の仮想外輪郭面VCのうちの一部のみを覆っている場合、骨格部2の内外への通気は、骨格部2の仮想外輪郭面VCのうち表皮部6が設けられていない部分を介して確保することが可能であるので、表皮部6は、貫通穴66を有していなくてもよく、すなわち、表皮部6の各表皮仮想面V6が表皮膜65によって覆われていてもよい。
【0042】
上述のように、本実施形態の多孔質構造体1は、複数のセル孔Cを区画する骨格部2に加えて、骨格部2の仮想外輪郭面VCの少なくとも一部を覆う表皮部6を、備えており、表皮部6は、骨格部2の仮想外輪郭面VCに沿って延在する複数の柱部6Cと、それぞれ複数の柱部6Cの端部6Ceどうしを結合する、複数の柱結合部6Jと、複数の柱部6Cどうしの間で区画される複数の表皮仮想面V6と、を有している。これにより、骨格部2が多孔質構造体1の外部に露出するのを、表皮部6によって抑制できる。表皮部6の外表面は、骨格部2の外表面よりも凹凸が遥かに少ないため、表皮部6は、骨格部2に比べ、人や物等との干渉に対し損傷しにくい。表皮部6により、人や物等が直接骨格部2に干渉することを抑制できるので、人や物等が直接骨格部2に干渉する場合に生じ得る骨格部2の仮想外輪郭面VCの近傍部分の破損を、抑制することができる。よって、多孔質構造体1の耐久性を向上できる。
また、本実施形態の多孔質構造体1は、骨格部2よりも凹凸が少ない表皮部6を備えていることから、使用者が多孔質構造体1に対して荷重を掛けるときに使用者が感じる違和感を低減できる。このことは、特に、多孔質構造体1がクッション材(例えばシートパッド、特には車両用シートパッド)に用いられる場合に好適である。
また、本実施形態の多孔質構造体1は、骨格部2よりも凹凸が少ない表皮部6を備えていることから、図1の例のように多孔質構造体1がクッション材(例えばシートパッド、特には車両用シートパッド)に用いられる場合に、多孔質構造体1とは別体の表皮を多孔質構造体1に被せる必要性を低減できる。よって、当該クッション材を用いた製品(図1の例では車両用シート300)の部品点数の低減や製造の簡単化が可能になる。このような観点からは、多孔質構造体1は、クッション材に用いられるものであるとともに、荷重受け面FS及び側面SSを有している場合、図2の例のように、表皮部6が、多孔質構造体1の外表面のうち、荷重受け面FSの一部又は全部を構成していると好適であり、表皮部6が、多孔質構造体1の外表面のうち、荷重受け面FSの一部又は全部と側面SSの一部又は全部とを構成しているとより好適である。
また、本実施形態の多孔質構造体1は、骨格部2よりも凹凸が少ない表皮部6を備えていることから、図1及び図2の例のように多孔質構造体1のうち表皮部6が設けられた面(図1の例では裏面BS)が別部材(図1の例ではフレーム301)に固定される場合に、仮に多孔質構造体1の骨格部2が直接別部材に固定される場合に比べて、多孔質構造体1の当該別部材への接触面積を増大することが可能であり、ひいては、多孔質構造体1を、面ファスナや接着材等を介して、より確実に、当該別部材に固定することが可能になる。このような観点からは、多孔質構造体1は、図1及び図2の例のように、表皮部6が、多孔質構造体1の外表面のうち、別部材への固定面の一部又は全部を構成していると好適である。同様の観点からは、多孔質構造体1は、クッション材に用いられるものであるとともに、荷重受け面FS、側面SS、及び裏面BSを有している場合、図1及び図2の例のように、表皮部6が、多孔質構造体1の外表面のうち、別部材への固定面となり得る、裏面BSの一部若しくは全部、かつ/又は、側面SSの一部若しくは全部を構成していると、好適である。
また、本実施形態の多孔質構造体1は、表皮部6が、複数の柱部6Cと、複数の柱結合部6Jと、複数の表皮仮想面V6と、を有しており、ひいては、網目状に構成されている。これにより、仮に表皮部6が厚さ一定のシート状に構成されている場合に比べて、表皮部6を設けることによる多孔質構造体1のクッション性の低減を抑制できる。
【0043】
本実施形態の多孔質構造体1において、表皮部6は、図1及び図2に示すように、1cm内の柱部6C及び柱結合部6Jの総面積UTAの割合である単位面積率UAR(以下、単に「単位面積率UAR」という。)が、不均一である。ここで、単位面積率UARを算出するにあたっては、まず、表皮部6を平面上に展開した上で、表皮部6を平面視した状態で、表皮部6をメッシュ状に1cmの正方形の単位領域UA毎に区分し、単位領域UA毎に単位面積率UARを算出する。図2及び図3には、一部の単位領域UAを破線で示している。単位面積率UARは、
UAR[%]=UTA[cm]×100/(1[cm])
によって算出される。
本明細書において、表皮部6について、「単位面積率(UAR)が不均一である」とは、表皮部6の単位面積率(UAR)が表皮部6の全体にわたって均一(一定)である場合を除く、全ての単位面積率分布を指しており、言い換えれば、表皮部6が、少なくとも1箇所で、単位面積率(UAR)が他の部分とは異なることを指している。したがって、各単位領域UAの単位面積率UARが同一(略同一も含む)であれば、表皮部6の単位面積率UARは均一であることとなる。一方、少なくとも2つの単位領域UAの単位面積率UARどうしが異なれば、表皮部6の単位面積率UARは不均一であることとなる。
多孔質構造体1の曲げ剛性やねじり剛性は、表皮部6の単位面積率UARに依存する。表皮部6の単位面積率UARが高い部分では多孔質構造体1の曲げ剛性やねじり剛性が高くなり、表皮部6の単位面積率UARが低い部分では多孔質構造体1の曲げ剛性やねじり剛性が低くなり多孔質構造体1のクッション性が高くなる。したがって、表皮部6の単位面積率UARの分布を調整することにより、多孔質構造体1の曲げ剛性やねじり剛性の分布を調整できる。
このような構成を有する多孔質構造体1を、3Dプリンタによって造形することにより、従来実現できなかった、単位面積率(UAR)が不均一な表皮部6を有する多孔質構造体1を、簡単かつ精度良く、所期したとおりに実現できる。また、設計自由度を格段に高くすることができるので、従来では対応できなかったような様々な要求特性に対応した多孔質構造体1の構成を、自由に設計し、簡単かつ所期したとおりに実現できる。また、表皮部6の単位面積率UARを不均一にするために、複数の異なる組成の材料を使う必要はなく、1つの同じ組成の材料を使うだけで済む。
なお、本明細書で説明する各例の多孔質構造体1において、表皮部6は、単位面積率UARが、不均一であるものとする。
【0044】
図2図4の例において、表皮部6は、大曲率半径部分61と、大曲率半径部分61よりも小さな曲率半径を有する、小曲率半径部分62と、を有している。言い換えれば、大曲率半径部分61は、小曲率半径部分62に比べ、よりフラットな部分である。図2図4では、見易さのため、大曲率半径部分61及び小曲率半径部分62の範囲を、(厳密ではなく)大まかに、それぞれ破線及び2点鎖線により示している。
大曲率半径部分61と小曲率半径部分62とは、それぞれ、曲率半径が不均一であってもよいし、あるいは、曲率半径が均一であってもよい。ただし、小曲率半径部分62の曲率半径の最大値(小曲率半径部分62のうち最も曲率半径が大きい箇所における曲率半径)は、大曲率半径部分61の曲率半径の最小値(大曲率半径部分61のうち最も曲率半径が小さい箇所における曲率半径)よりも小さい。大曲率半径部分61は、その全体が曲面状に湾曲していてもよいし、あるいは、その一部が平坦であって残りの部分が曲面状に湾曲していてもよいし、あるいは、その全体が平坦であってもよい。小曲率半径部分62は、その全体が曲面状に湾曲している。表皮部6の「曲率半径」は、表皮部6のうち各表皮仮想面V6の部分をそれぞれの周囲の柱部6Cと同じ厚さにすることで表皮部6の外表面を滑らかに連続させたときにおける、表皮部6の外表面の曲率半径を指す。このとき、表皮部6における、ある部分の曲率半径を測定するにあたっては、測定方向によって曲率半径が異なる場合、そのうち最小の曲率半径を、当該部分の曲率半径とするものとする。
図2図4の例のように、表皮部6が大曲率半径部分61と小曲率半径部分62とを有している場合、小曲率半径部分62内の柱部6C及び柱結合部6Jの総面積STAの割合である小部面積率SARは、大曲率半径部分61内の柱部6C及び柱結合部6Jの総面積LTAの割合である大部面積率LARよりも、高いと、好適である。
ここで、小部面積率SARは、小曲率半径部分62の全体面積をSEAとしたとき、
SAR[%]=STA[cm]×100/(SEA[cm])
によって算出される。小曲率半径部分62の全体面積SEAは、小曲率半径部分62の外縁によって囲まれる領域の面積を指しており、小曲率半径部分62内の表皮仮想面V6の面積を含む。
また、大部面積率LARは、大曲率半径部分61の全体面積をLEAとしたとき、
LAR[%]=LTA[cm]×100/(LEA[cm])
によって算出される。大曲率半径部分61の全体面積LEAは、大曲率半径部分61の外縁によって囲まれる領域の面積を指しており、大曲率半径部分61内の表皮仮想面V6の面積を含む。
なお、小部面積率SAR及び大部面積率LARは、表皮部6を平面上に展開した上で、表皮部6を平面視した状態で、測定される。また、互いから離間した複数の小曲率半径部分62が存在する場合、小部面積率SARは、個々の小曲率半径部分62毎に測定される。同様に、互いから離間した複数の大曲率半径部分61が存在する場合、大部面積率LARは、個々の大曲率半径部分61毎に測定される。
表皮部6のうち比較的フラットな大曲率半径部分61の大部面積率LARを低くすることにより、大曲率半径部分61に対して荷重が掛かったときに、多孔質構造体1は、優れたクッション性を発揮することができる。また、表皮部6のうち小曲率半径部分62の小部面積率SARを高くすることにより、多孔質構造体1の曲げ剛性やねじり剛性を効果的に向上できる。よって、良好なクッション性を得つつ、曲げ剛性やねじり剛性を向上できる。
ただし、小曲率半径部分62の小部面積率SARは、大曲率半径部分61の大部面積率LARと同じ又はそれよりも低くてもよい。
【0045】
本明細書で説明する各例において、多孔質構造体1は、クッション材に用いられるものであり、使用者からの荷重を受けるように構成された荷重受け面FSと、荷重受け面FSから連続する1つ又は複数(図2図4の例では4つ)の側面SSと、を有している場合、図2図4の例のように、多孔質構造体1の荷重受け面FSは、表皮部6の大曲率半径部分61の外表面によって構成されており、多孔質構造体1における荷重受け面FSと側面SSとの間の1つ又は複数(図2図4の例では4つ)のエッジ部Eが、表皮部6の小曲率半径部分62の外表面によって構成されており、エッジ部Eを構成する小曲率半径部分62の小部面積率SARが、荷重受け面FSを構成する大曲率半径部分61の大部面積率LARよりも高いと、好適である。この場合、多孔質構造体1における荷重受け面FSと側面SSとの間のエッジ部Eは、曲面状に湾曲している(すなわち、曲面状に面取りされている)。図2図4の例において、エッジ部Eは、荷重受け面FSの外縁を囲むように環状をなしている。
多孔質構造体1の荷重受け面FSを、表皮部6のうち比較的フラットでかつ面積率(大部面積率LAR)の低い大曲率半径部分61によって構成することにより、荷重受け面FSに対して荷重が掛かったときに、多孔質構造体1は、優れたクッション性を発揮することができる。また、一般的に、多孔質構造体1の曲げ剛性やねじり剛性は、荷重受け面FSの外縁に相当する、荷重受け面FSと側面SSとの間のエッジ部Eの寄与度が極めて高い。よって、多孔質構造体1のエッジ部Eを、表皮部6のうち比較的湾曲しかつ面積率(小部面積率SAR)の高い小曲率半径部分62によって構成することにより、多孔質構造体1の曲げ剛性やねじり剛性を効果的に向上できる。よって、良好なクッション性を得つつ、曲げ剛性やねじり剛性を向上できる。
ただし、多孔質構造体1のエッジ部Eを構成する小曲率半径部分62の小部面積率SARは、多孔質構造体1の荷重受け面FSを構成する大曲率半径部分61の大部面積率LARと同じ又はそれよりも低くてもよい。
なお、多孔質構造体1の側面SSは、図2図4の例のように、表皮部6の大曲率半径部分61の外表面によって構成されており、エッジ部Eを構成する小曲率半径部分62の小部面積率SARが、側面SSを構成する大曲率半径部分61の大部面積率LARよりも高いと、好適である。これにより、良好なクッション性を得つつ、曲げ剛性やねじり剛性を向上できる。ただし、多孔質構造体1のエッジ部Eを構成する小曲率半径部分62の小部面積率SARは、多孔質構造体1の側面SSを構成する大曲率半径部分61の大部面積率LARと同じ又はそれよりも低くてもよい。
また、多孔質構造体1の裏面BSは、図2図4の例のように、表皮部6の大曲率半径部分61の外表面によって構成されており、エッジ部Eを構成する小曲率半径部分62の小部面積率SARが、裏面BSを構成する大曲率半径部分61の大部面積率LARよりも高いと、好適である。ただし、多孔質構造体1のエッジ部Eを構成する小曲率半径部分62の小部面積率SARは、多孔質構造体1の裏面BSを構成する大曲率半径部分61の大部面積率LARと同じ又はそれよりも低くてもよい。
【0046】
本明細書で説明する各例において、多孔質構造体1は、クッション材に用いられるものであり、使用者からの荷重を受けるように構成された荷重受け面FSと、荷重受け面FSから連続する1つ又は複数(図2図4の例では4つ)の側面SSと、を有している場合、図2図4の例のように、多孔質構造体1の荷重受け面FSは、表皮部6の大曲率半径部分61の外表面によって構成されており、多孔質構造体1における荷重受け面FSと側面SSとの間の1つ又は複数(図2図4の例では4つ)のエッジ部Eが、曲面状に湾曲して(すなわち、曲面状に面取りされて)いるとともに、表皮部6の小曲率半径部分62の外表面によって構成されていると、好適である。これにより、仮に多孔質構造体1における荷重受け面FSと側面SSとの間のエッジ部Eが、曲面状に湾曲しておらずに角張っている(面取りされていない)場合に比べて、使用者が多孔質構造体1に対して荷重を掛けるときに使用者が感じる違和感を低減できる。なお、この場合、多孔質構造体1の側面SSは、図2図4の例のように、表皮部6の大曲率半径部分61の外表面によって構成されていると、好適である。また、多孔質構造体1の裏面BSは、図2図4の例のように、表皮部6の大曲率半径部分61の外表面によって構成されていると好適である。
【0047】
本明細書で説明する各例において、表皮部6は、上述のように、単位面積率UARが不均一である。そのため、表皮部6は、低面積率部分63と、低面積率部分63よりも単位面積率UARが高い、高面積率部分64と、を有している。図2図4では、見易さのため、低面積率部分63及び高面積率部分64の範囲を、(厳密ではなく)大まかに、それぞれ破線及び2点鎖線により示している。なお、低面積率部分63及び高面積率部分64の範囲と、大曲率半径部分61及び小曲率半径部分62の範囲とは、それぞれ異なり得るが、図2図4では、見易さのため、共通の破線及び2点鎖線によりこれらを示している。
低面積率部分63と高面積率部分64とは、それぞれ、単位面積率UARが不均一であってもよいし、あるいは、単位面積率UARが均一であってもよい。ただし、高面積率部分64の単位面積率UARの最小値(高面積率部分64内の単位面積率UARのうち最も値の小さな単位面積率UAR)は、低面積率部分63の単位面積率UARの最大値(小面積率部分63内の単位面積率UARのうち最も値の大きな単位面積率UAR)よりも高い。ここで、低面積率部分63と高面積率部分64とを特定するにあたっては、まず、表皮部6を平面上に展開した上で、表皮部6を平面視した状態で、表皮部6をメッシュ状に1cmの正方形の単位領域UA毎に区分し、単位領域UA毎に単位面積率UARを算出する。そして、表皮部6内の複数の単位領域UAのうち、単位面積率UARが所定値以上である単位領域UAを、高面積率部分64として特定し、表皮部6内の複数の単位領域UAのうち、単位面積率UARが当該所定値未満である単位領域UAを、低面積率部分63として特定する。
本明細書で説明する各例において、良好なクッション性を得つつ、曲げ剛性やねじり剛性を向上させる観点からは、表皮部6の小曲率半径部分62の大部分又は全部が、表皮部6の高面積率部分64によって構成されていると好適である。言い換えれば、表皮部6の平面視において、表皮部6の小曲率半径部分62のうち、表皮部6の高面積率部分64によって構成される部分の総面積が、表皮部6の小曲率半径部分62のうち、表皮部6の低面積率部分63によって構成される部分の総面積よりも大きいと、好適である。また、本明細書で説明する各例において、同様の観点からは、表皮部6の大曲率半径部分61の大部分又は全部が、表皮部6の低面積率部分63によって構成されていると好適である。言い換えれば、表皮部6の平面視において、表皮部6の大曲率半径部分61のうち、表皮部6の低面積率部分63によって構成される部分の総面積が、表皮部6の大曲率半径部分61のうち、表皮部6の高面積率部分64によって構成される部分の総面積よりも大きいと、好適である。
ただし、表皮部6の小曲率半径部分62の半分以上が、表皮部6の低面積率部分63によって構成されていてもよい。言い換えれば、表皮部6の平面視において、表皮部6の小曲率半径部分62のうち、表皮部6の低面積率部分63によって構成される部分の総面積が、表皮部6の小曲率半径部分62のうち、表皮部6の高面積率部分64によって構成される部分の総面積と同じ又はそれよりも大きくてもよい。また、同様の観点から、表皮部6の大曲率半径部分61の半分以上が、表皮部6の高面積率部分64によって構成されていてもよい。言い換えれば、表皮部6の平面視において、表皮部6の大曲率半径部分61のうち、表皮部6の高面積率部分64によって構成される部分の総面積が、表皮部6の大曲率半径部分61のうち、表皮部6の低面積率部分63によって構成される部分の総面積と同じ又はそれよりも大きくてもよい。
【0048】
本明細書で説明する各例においては、図2図4の例のように、表皮部6の高面積率部分64における表皮仮想面V6の1個当たりの面積の平均値は、表皮部6の低面積率部分63における表皮仮想面V6の1個当たりの面積の平均値よりも、小さいと、好適である。
これにより、多孔質構造体1の耐久性を向上しつつ、多孔質構造体1のクッション材としての特性を向上できる。
同様の観点から、本明細書で説明する各例においては、図2図4の例のように、表皮部6の小曲率半径部分62における表皮仮想面V6の1個当たりの面積の平均値は、表皮部6の大曲率半径部分61における表皮仮想面V6の1個当たりの面積の平均値よりも、小さいと、好適である。
【0049】
本明細書で説明する各例においては、図2図4の例のように、表皮部6の高面積率部分64における柱部6Cの1本当たりの長さの平均値は、表皮部6の低面積率部分63における柱部6Cの1本当たりの長さの平均値よりも、短いと、好適である。
これにより、多孔質構造体1の耐久性を向上しつつ、多孔質構造体のクッション材としての特性を向上できる。
ここで、柱部6Cの長さは、柱部6Cの延在方向に沿って測るものとする。
同様の観点から、本明細書で説明する各例においては、図2図4の例のように、表皮部6の小曲率半径部分62における柱部6Cの1本当たりの長さの平均値は、表皮部6の大曲率半径部分61における柱部6Cの1本当たりの長さの平均値よりも、短いと、好適である。
【0050】
本明細書で説明する各例においては、図2図4の例のように、表皮部6を構成する複数の柱部6Cのそれぞれの幅W6C(図3)が同一であると、好適である。これにより、表皮部の構造をシンプルにすることができるので、3Dプリンタによる多孔質構造体の製造が容易となる。
ただし、本明細書で説明する各例においては、表皮部6を構成する各柱部6Cの幅W6Cは、柱部6Cどうしで異なっていてもよい。
例えば、表皮部6の高面積率部分64における柱部6Cの幅W6Cの平均値は、低面積率部分における柱部の幅の平均値よりも、大きくてもよい。これにより、多孔質構造体1の耐久性を向上しつつ、多孔質構造体のクッション材としての特性を向上できる。
なお、柱部6Cの幅W6Cは、柱部6Cの延在方向に垂直な断面に沿って測ったときの、当該断面における最大幅を指す。
【0051】
本明細書で説明する各例においては、表皮部6を構成する各柱部6Cの幅W6C(図3)は、図2図4の例のように柱部6Cの延在方向に沿って均一でもよいし、あるいは、柱部6Cの延在方向に沿って不均一でもよい。
本明細書で説明する各例において、表皮部6を構成する各柱部6Cの幅W6Cの最大値は、多孔質構造体1のクッション性を確保する観点から、3.0mm以下であると好適であり、2.5mm以下であるとより好適であり、2.0mm以下であるとさらに好適である。表皮部6を構成する各柱部6Cの幅W6Cの最小値は、表皮部6の耐久性の観点から、0.05mm以上であると好適であり、0.10mm以上であるとより好適であり、0.20mm以上であるとさらに好適である。これらの数値範囲は、多孔質構造体1がクッション材に用いられる場合に好適であり、多孔質構造体1がシートパッドに用いられる場合により好適である。
【0052】
本明細書で説明する各例において、表皮部6の厚さT6(図6)は、表皮部6の全体にわたって均一でもよいし不均一でもよい。
なお、表皮部6の厚さT6は、表皮部6のうち柱部6C又は柱結合部6Jの厚さを指すものとし、表皮部6の表皮仮想面V6における厚さは無視するものとする。表皮部6の厚さT6は、表皮部6の外表面に対し垂直な方向に沿って測定される。
表皮部6の厚さT6の最大値は、多孔質構造体1のクッション性を確保する観点から、3.0mm以下であると好適であり、2.5mm以下であるとより好適であり、2.0mm以下であるとさらに好適である。表皮部6の厚さT6の最小値は、表皮部6の耐久性の観点から、0.05mm以上であると好適であり、0.10mm以上であるとより好適であり、0.20mm以上であるとさらに好適である。これらの数値範囲は、多孔質構造体1がクッション材に用いられる場合に好適であり、多孔質構造体1がシートパッドに用いられる場合により好適である。
【0053】
本明細書で説明する各例においては、図2図4の例のように、表皮部6の複数の柱部6Cは、それぞれ、断面積を一定に維持しつつ延在していると、好適であり、言い換えれば、断面積が延在方向に沿って均一であると好適である。
これにより、表皮部6の構造をシンプルにすることができるので、3Dプリンタによる多孔質構造体1の製造が容易となる。
ただし、表皮部6の複数の柱部6Cは、それぞれ、断面積を変化させつつ延在していてもよく、すなわち、断面積が延在方向に沿って不均一であってもよい。
【0054】
本明細書で説明する各例においては、図2図4の例のように、表皮部6の高面積率部分64における1cm当たりの柱部6Cの本数密度は、表皮部6の低面積率部分63における1cm当たりの柱部6Cの本数密度よりも高いと、好適である。これにより、耐久性を向上しつつ、多孔質構造体のクッション材としての特性を向上できる。
なお、表皮部6の高面積率部分64又は低面積率部分63における1cm当たりの柱部6Cの本数密度は、それぞれ、高面積率部分64又は低面積率部分63における各単位領域UA内の柱部6Cの本数の平均値を指す。
また、本明細書で説明する各例においては、図2図4の例のように、表皮部6の高面積率部分64における1cm当たりの柱結合部6Jの個数密度は、表皮部6の低面積率部分63における1cm当たりの柱結合部6Jの個数密度よりも高いと、好適である。これにより、耐久性を向上しつつ、多孔質構造体のクッション材としての特性を向上できる。
なお、表皮部6の高面積率部分64又は低面積率部分63における1cm当たりの柱結合部6Jの個数密度は、それぞれ、高面積率部分64又は低面積率部分63における各単位領域UA内の柱結合部6Jの個数の平均値を指す。
【0055】
本明細書で説明する各例においては、図6図7の例のように、骨格部2のうち、骨格部2の仮想外輪郭面VC上に位置する部分(具体的には、後述の骨部2B又は骨結合部2J)のそれぞれが、表皮部6の柱結合部6J又は柱部6Cと連結されていると、好適である。これにより、骨格部2が外部に露出するのを、表皮部6によって効果的に抑制できるので、多孔質構造体1の耐久性をより向上できる。
また、本明細書で説明する各例においては、図6図7の例のように、骨格部2のうち、骨格部2の仮想外輪郭面VC上に位置する部分(具体的には、後述の骨部2B又は骨結合部2J)のそれぞれが、表皮部6におけるいずれか1つの柱結合部6Jと連結されていると、好適である。これにより、仮に骨格部2のうち、骨格部2の仮想外輪郭面VC上に位置する部分のそれぞれが、表皮部6における柱部6Cと連結されている場合に比べて、多孔質構造体1の耐久性をより向上できるとともに、多孔質構造体1のクッション性をより向上できる。
【0056】
本明細書で説明する各例においては、図6図7の例のように、多孔質構造体1が、骨格部2と表皮部6との間を連結する柱状の追加連結部7を、1本又は複数本備えていてもよい。この場合、各追加連結部7は、図6図7の例のように、それぞれ、表皮部6の柱結合部6J又は柱部6Cと連結されていると、好適であり、それぞれ、表皮部6の柱結合部6Jと連結されていると、さらに好適である。これにより、骨格部2と表皮部6との連結を補強し、多孔質構造体1の耐久性を向上することができる。
ただし、多孔質構造体1は、追加連結部7を備えていなくてもよい。
【0057】
本明細書で説明する各例においては、表皮部6の各柱結合部6Jは、それぞれ、互いに異なる方向に延在する2本以上の任意の本数の柱部6Cの端部6Ceどうしを結合してよい。図3の例において、表皮部6の各柱結合部6Jは、それぞれ、互いに異なる方向に延在する5~8本の柱部6Cの端部6Ceどうしを結合している。耐久性の観点から、表皮部6の各柱結合部6Jが結合する、互いに異なる方向に延在する柱部6Cの本数は、3本以上が好適である。また、クッション性の観点から、表皮部6の各柱結合部6Jが結合する、互いに異なる方向に延在する柱部6Cの本数は、10本以下が好適であり、6本以下がさらに好適である。
【0058】
図2図4の例においては、表皮部6の平面視(表皮部6の外表面に対し垂直に対向する方向から観た表面視)において、表皮部6の各柱部6Cは、それぞれ、略直線状に延在している。ただし、本明細書で説明する各例においては、表皮部6の平面視において、各柱部6Cは、それぞれ、湾曲状に(湾曲形状に沿って)延在していてもよい。
【0059】
図2図4の例においては、表皮部6の平面視(表皮部6の外表面に対し垂直に対向する方向から観た表面視)において、各表皮仮想面V6は、互いに異なる方向に延在する3本の柱部6Cによって区画されており、それにより、三角形をなしている。ただし、本明細書で説明する各例においては、表皮部6の平面視において、各表皮仮想面V6は、互いに異なる方向に延在する4本以上の柱部6Cによって区画され、それにより、4つ以上の頂点を有する多角形(4角形、5角形等)をなしていてもよい。なお、各表皮仮想面V6は、図2図4の例のように互いに同じ種類の多角形をなしていてもよいし、あるいは、互いに異なる種類の多角形をなしていてもよい。
【0060】
図6図7の例において、表皮部6を構成する各柱部6Cは、それぞれの断面形状が、円形(真円形)である。これにより、表皮部6の構造がシンプルになり、3Dプリンタによる多孔質構造体1の造形がしやすくなるとともに、多孔質構造体1の外側に向かって尖った部分が無くなるので、多孔質構造体1の触り心地を向上できる。なお、各柱部6Cの断面形状は、それぞれの延在方向に垂直な断面における形状である。
ただし、本明細書で説明する各例において、表皮部6を構成する各柱部6Cのうち全部又は一部の柱部6Cは、それぞれの断面形状が、多角形(正三角形、正三角形以外の三角形、四角形等)でもよいし、あるいは、真円形以外の円形(楕円形等)でもよい。また、各骨部2Bは、それぞれの断面形状が、その延在方向に沿って均一でもよいし、あるいは、その延在方向に沿って非均一でもよい。また、各柱部6Cどうしで、断面形状が互いに異なっていてもよい。
【0061】
本明細書で説明する各例においては、表皮部6が貫通穴66(図3)を有する場合、表皮部6の各貫通穴66の直径の最大値(最も大きな直径を有する貫通穴66の直径)は、骨格部2のセル孔Cの直径の平均値以下であると好適であり、骨格部2のセル孔Cの直径の平均値未満であるとより好適である。これにより、骨格部2の破損を抑制し、多孔質構造体1の耐久性を向上できる。
なお、図3の例のように表皮部6を平面視したときの貫通穴66の形状が非円形である場合、貫通穴66の「直径」は、表皮部6を平面視したときの貫通穴66の外接円の直径を指すものとする。
【0062】
本明細書で説明する各例においては、表皮部6が貫通穴66(図3)を有する場合、通気性向上の観点から、表皮部6における貫通穴66の面積率は、50%以上が好適であり、70%以上がより好適である。また、表皮部6の耐久性向上の観点から、表皮部6における貫通穴66の面積率は、99%以下が好適であり、95%以下がより好適である。なお、「表皮部6における貫通穴66の面積率」は、表皮部6の全体面積A3に対する、表皮部6に設けられた全ての貫通穴66の総面積A4の割合(A4×100/A3 [%])を指す。「表皮部6の全体面積A3」は、表皮部6の外縁によって囲まれる部分の面積を指しており、貫通穴66が占める面積も含む。なお、「表皮部6における貫通穴66の面積率」は、表皮部6を平面上に展開した上で、表皮部6を平面視した状態で測定されるものとする。
【0063】
<骨格部>
以下、図8図14を参照しつつ、本発明の様々な実施形態に係る多孔質構造体1の骨格部2について、さらに詳しく説明する。
図8図11は、骨格部2の一例を示している。図8は、図6の骨格部2と同様のセル構造を有する骨格部2の一部を示す、斜視図である。図9は、図8の骨格部2を、図8のG矢印の方向から観たときの様子を示す、G矢視図である。図10は、図8の骨格部2を、図8のH矢印の方向から観たときの様子を示す、H矢視図である。図11は、図8の骨格部2のセル区画部21を示す、斜視図である。
また、図8図13では、多孔質構造体1の向きを理解しやすくするために、それぞれの例の多孔質構造体1に固定されたXYZ直交座標系の向きを表示している。
【0064】
図8図10に示すように、多孔質構造体1の骨格部2は、複数の骨部2Bと、複数の骨結合部2Jと、から構成されており、骨格部2の全体が一体に構成されている。本例において、各骨部2Bは、それぞれ柱状に構成されており、また、本例では、それぞれ直線状に延在している。各骨結合部2Jは、それぞれ、互いに異なる方向に延在する複数(例えば、4つ)の骨部2Bの延在方向の端部2Beどうしが互いに隣接する箇所で、これらの端部2Beどうしを結合している。
図8図10には、多孔質構造体1の一部分に、骨格部2の骨格線Oを1点鎖線により示している。骨格部2の骨格線Oは、各骨部2Bの骨格線Oと、各骨結合部2Jの骨格線Oと、からなる。骨部2Bの骨格線Oは、骨部2Bの中心軸線である。骨結合部2Jの骨格線Oは、当該骨結合部2Jに結合された各骨部2Bの中心軸線をそれぞれ当該骨結合部2J内へ滑らかに延長させて互いに連結させてなる、延長線部分である。
骨部2Bの延在方向は、骨部2Bの骨格線O(骨格線Oのうち、骨部2Bに対応する部分。以下同じ。)の延在方向である。
多孔質構造体1は、そのほぼ全体にわたって骨格部2を備えているので、通気性を確保しつつ、外力の付加・解除に応じた圧縮・復元変形が可能であるので、クッション材(例えばシートパッド)としての特性が良好になる。また、多孔質構造体1の構造がシンプルになり、3Dプリンタによる造形がしやすくなる。
なお、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち、一部又は全部の骨部2Bが、湾曲しながら延在してもよい。この場合、一部又は全部の骨部2Bが湾曲していることで、荷重の入力時において、骨部2Bひいては多孔質構造体1の急激な形状変化を防ぎ、局所的な座屈を抑制することができる。
【0065】
本例では、骨格部2を構成する各骨部2Bが、それぞれほぼ同じ形状及び長さを有している。ただし、本例に限らず、骨格部2を構成する各骨部2Bの形状及び/又は長さは、それぞれ同じでなくてもよく、例えば、一部の骨部2Bの形状及び/又は長さが他の骨部2Bとは異なっていてもよい。この場合、骨格部2のうちの特定の部分の骨部2Bの形状及び/又は長さを他の部分とは異ならせることで、意図的に異なる機械特性を得ることができる。
【0066】
本例において、各骨部2Bの幅W0(図8)及び断面積は、骨部2Bの全長にわたって一定である(すなわち、骨部2Bの延在方向に沿って均一である)。
ここで、骨部2Bの断面積は、骨部2Bの骨格線Oに垂直な断面の断面積を指す。また、骨部2Bの幅W0(図8)は、骨部2Bの骨格線Oに垂直な断面に沿って測ったときの、当該断面における最大幅を指す。
ただし、本明細書で説明する各例において、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部又は全部の骨部2Bは、それぞれ、骨部2Bの幅W0及び/又は断面積が、骨部2Bの延在方向に沿って不均一でもよい。例えば、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部又は全部の骨部2Bは、それぞれ、骨部2Bの延在方向の両側の端部2Beを含む部分において、骨部2Bの幅W0が、骨部2Bの延在方向の両端に向かうにつれて徐々に増大又は減少していてもよい。また、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部又は全部の骨部2Bは、それぞれ、骨部2Bの延在方向の両側の端部2Beを含む部分において、骨部2Bの断面積が、骨部2Bの延在方向の両端に向かうにつれて徐々に増大又は減少していてもよい。
【0067】
本明細書で説明する各例において、骨格部2の構造の簡単化、ひいては、3Dプリンタによる多孔質構造体1の製造のし易さの観点からは、骨部2Bの幅W0(図8)は、0.05mm以上であると好適であり、0.10mm以上であるとより好適である。幅W0が0.05mm以上の場合、高性能な3Dプリンタの解像度で造形可能であり、0.10mm以上の場合、高性能な3Dプリンタだけでなく汎用の3Dプリンタの解像度でも造形可能である。
一方、骨格部2の外縁(外輪郭)形状の精度を向上させる観点や、セル孔C間の隙間(間隔)を小さくする観点や、クッション材としての特性を良好にする観点からは、骨部2Bの幅W0は、2.0mm以下であると好適である。
なお、骨格部2を構成する各骨部2Bがこの構成を満たしていると好適であるが、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
【0068】
本例において、骨格部2を構成する各骨部2Bは、それぞれ柱状であるとともに、それぞれの断面形状が、円形(真円形)である。
これにより、骨格部2の構造がシンプルになり、3Dプリンタによる造形がしやすくなる。また、化学反応によって発泡させる工程を経て製造された一般的なポリウレタンフォームでの機械特性を再現しやすい。よって、多孔質構造体1のクッション材としての特性を向上できる。また、このように骨部2Bを柱状に構成することにより、仮に骨部2Bを薄い膜状の部分に置き換えた場合に比べて、骨格部2の耐久性を向上できる。
なお、各骨部2Bの断面形状は、それぞれ、骨部2Bの中心軸線(骨格線O)に垂直な断面における形状である。
なお、本例に限らず、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
例えば、本明細書で説明する各例において、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち全部又は一部の骨部2Bは、それぞれの断面形状が、多角形(正三角形、正三角形以外の三角形、四角形等)でもよいし、あるいは、真円形以外の円形(楕円形等)でもよく、その場合でも、本例と同様の効果が得られる。また、各骨部2Bは、それぞれの断面形状が、その延在方向に沿って均一でもよいし、あるいは、その延在方向に沿って非均一でもよい。また、各骨部2Bどうしで、断面形状が互いに異なっていてもよい。
【0069】
本明細書で説明する各例において、骨格部2の見かけの体積VSのうち、骨格部2の占める体積VBの割合(VB×100/VS [%])は、3~10%であると、好適である。この構成により、骨格部2に外力が付加されたときに骨格部2に生じる反力、ひいては、骨格部2の硬さ(ひいては多孔質構造体1の硬さ)を、クッション材として、特にはシートパッドとして、さらに特には車両用のシートパッドとして、良好なものにすることができる。
ここで、「骨格部2の見かけの体積VS」とは、骨格部2の仮想外輪郭面VCによって囲まれた内部空間の全体(骨格部2の占める体積と、後述のセル膜3(図12)が設けられる場合はセル膜3の占める体積と、空隙の占める体積との合計)の体積を指している。
骨格部2を構成する材料を同じとして考えたとき、骨格部2の見かけの体積VSのうち、骨格部2の占める体積VBの割合が高いほど、骨格部2(ひいては多孔質構造体1)は硬くなる。また、骨格部2の見かけの体積VSのうち、骨格部2の占める体積の割合VBが低いほど、骨格部2(ひいては多孔質構造体1)は柔らかくなる。
骨格部2に外力が付加されたときに骨格部2に生じる反力、ひいては、骨格部2(ひいては多孔質構造体1)の硬さを、クッション材として、特にはシートパッドとして、さらに特には車両用のシートパッドとして、良好なものにする観点からは、骨格部2の見かけの体積VSのうち、骨格部2の占める体積VBの割合が、4~8%であると、より好適である。
なお、骨格部2の見かけの体積VSのうち、骨格部2の占める体積VBの割合を調整する方法としては、任意の方法を用いてよいが、例えば、骨格部2を構成する一部又は全部の骨部2Bの太さ(断面積)、及び/又は、骨格部2を構成する一部又は全部の骨結合部Jの大きさ(断面積)を、調整する方法が挙げられる。
【0070】
本明細書で説明する各例において、多孔質構造体1の25%硬度は、60~500Nが好適であり、100~450Nがより好適である。ここで、多孔質構造体1の25%硬度(N)は、インストロン型圧縮試験機を用いて、23℃、相対湿度50%の環境にて、多孔質構造体を25%圧縮するのに要する荷重(N)を測定して得られる測定値であるものとする。これにより、多孔質構造体1から構成されるクッション材の硬さを、良好なものとすることができる。
【0071】
図8図10に示すように、本例において、骨格部2は、セル孔Cを内部に区画するセル区画部21を複数(セル孔Cの数だけ)有している。
図11は、1つのセル区画部21を単独で示している。本例の骨格部2は、多数のセル区画部21がX、Y、Zの各方向に連なった構造を有している。
図8図11に示すように、各セル区画部21は、それぞれ、複数(本例では、14つ)の環状部211を有している。各環状部211は、それぞれ、環状に構成されており、それぞれの環状の内周側縁部2111によって、平坦なセル仮想面V1を区画している。セル区画部21を構成する複数の環状部211は、それぞれの内周側縁部2111によって区画するセル仮想面V1どうしが交差しないように互いに連結されている。
セル孔Cは、セル区画部21を構成する複数の環状部211と、これら複数の環状部211がそれぞれ区画する複数のセル仮想面V1とによって、区画されている。概略的に言えば、環状部211は、セル孔Cのなす立体形状の辺を区画する部分であり、セル仮想面V1は、セル孔Cのなす立体形状の構成面を区画する部分である。
各環状部211は、それぞれ、複数の骨部2Bと、これらの複数の骨部2Bの端部2Beどうしを結合する複数の骨結合部2Jと、から構成されている。
互いに連結された一対の環状部211どうしの連結部分は、これら一対の環状部211に共有される、1つの骨部2Bと、その両側の一対の骨結合部2Jと、から構成されている。すなわち、各骨部2B及び各骨結合部2Jは、それぞれに隣接する複数の環状部211によって共有されている。
【0072】
図8図10の例において、環状部211は、当該環状部211に隣接する一対のセル区画部21(すなわち、当該環状部211を間に挟んだ一対のセル区画部21)によって共有されている。言い換えれば、環状部211は、当該環状部211に隣接する一対のセル区画部21のそれぞれの一部を構成している。
これにより、仮に、環状部211が、当該環状部211に隣接する一対のセル区画部21(すなわち、当該環状部211を間に挟んだ一対のセル区画部21)によって共有されておらず、すなわち、当該一対のセル区画部21が互いから独立して構成されており、それぞれの環状部211が互いに隣接又は互いから離間して形成されている場合や、それぞれの環状部211の間にリブ等が介在している場合に比べて、セル孔C1どうしの間の隙間(間隔)(ひいては、セル孔C1どうしの間の骨格部2の肉部分)を小さくすることができるので、多孔質構造体1のクッション材(特にはシートパッド、さらに特には車両用シートパッド)としての特性を向上できる。よって、3Dプリンタによって、クッション性のある多孔質構造体1を容易に製造することができる。
なお、骨格部2を構成する各環状部211がこの構成を満たしていると好適であるが、骨格部2を構成する各環状部211のうち一部の環状部211のみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
同様の観点から、本明細書で説明する各例において、互いに隣接する一対のセル区画部21の骨格線Oどうしは、当該一対のセル区画部21によって共有される環状部211において、一致していると、好適である。
【0073】
各セル仮想面V1は、それぞれ、セル仮想面V1の一方側の面(セル仮想面V1の表面)によって、ある1つのセル孔Cの一部を区画しているとともに、当該セル仮想面V1の他方側の面(セル仮想面V1の裏面)によって、別のセル孔Cの一部を区画している。言い換えれば、各セル仮想面V1は、それぞれ、その表裏両側の面によって別々のセル孔Cの一部を区画している。さらに言い換えれば、各セル仮想面V1は、当該セル仮想面V1に隣接する一対のセル孔C(すなわち、当該セル仮想面V1を間に挟んだ一対のセル孔C)によって共有されている。
これにより、仮に、セル仮想面V1が、当該セル仮想面V1に隣接する一対のセル孔C1(すなわち、当該セル仮想面V1を間に挟んだ一対のセル孔C1)によって共有されておらず、すなわち、当該一対のセル孔C1のセル仮想面V1が互いから離間した位置にある場合に比べて、セル孔C1どうしの間の隙間(間隔)を小さくすることができるので、多孔質構造体1のクッション材としての特性を向上できる。
なお、骨格部2を構成する各セル仮想面V1がこの構成を満たしていると好適であるが、骨格部2を構成する各セル仮想面V1のうち一部のセル仮想面V1のみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
【0074】
本明細書で説明する各例においては、各図の例のように、互いに隣接する一対のセル区画部21によって共有される環状部211の骨格線Oは、当該一対のセル区画部21のうち前記共有される環状部211に隣接する部分の骨格線Oのそれぞれと、連続している(図8参照)と、好適である。
これにより、多孔質構造体1のクッション材としての特性がより良好になる。
同様の観点から、本明細書で説明する各例においては、各図の例のように、互いに隣接する一対のセル区画部21の骨格線Oどうしは、当該一対のセル区画部21によって共有される環状部211において、一致していると、好適である。
また、同様の観点から、本明細書で説明する各例においては、各図の例のように、互いに隣接する一対のセル区画部21によって共有される環状部211を構成する骨部2Bの断面積(例えば、骨一定部2B1の断面積)が、当該一対のセル区画部21のうち前記共有される環状部211に隣接する部分を構成する骨部2Bの断面積(例えば、骨一定部2B1の断面積)のそれぞれと、同じであると、好適である。
なお、骨格部2において互いに隣接する一対のセル区画部21によって共有される環状部211の全てがこの構成を満たしていると好適であるが、骨格部2において互いに隣接する一対のセル区画部21によって共有される環状部211のうち一部の環状部211のみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
【0075】
本明細書で説明する各例においては、各図の例のように、互いに連結された一対の環状部211どうしの連結部分の骨格線Oは、当該一対の環状部211のうち前記連結部分に隣接する部分の骨格線Oのそれぞれと、連続していると、好適である(図8図11図13参照)。
これにより、多孔質構造体のクッション材としての特性がより良好になる。
同様の観点から、本明細書で説明する各例においては、各図の例のように、互いに連結された一対の環状部211の骨格線Oどうしは、当該一対の環状部211どうしの連結部分において、一致していると、好適である。
また、同様の観点から、本明細書で説明する各例においては、各図の例のように、互いに隣互いに連結された一対の環状部211どうしの連結部分を構成する骨部2Bの断面積(例えば、骨一定部2B1の断面積)が、当該一対の環状部211のうち前記連結部分に隣接する部分を構成する骨部2Bの断面積(例えば、骨一定部2B1の断面積)のそれぞれと、同じであると、好適である。
なお、骨格部2において互いに連結された一対の環状部211どうしの連結部分の全てがこの構成を満たしていると好適であるが、骨格部2において互いに連結された一対の環状部211どうしの連結部分のうち一部の連結部分のみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
【0076】
また、各環状部211は、それぞれ、当該環状部211に隣接する一対のセル区画部21(すなわち、当該環状部211を間に挟んだ一対のセル区画部21)によって共有されている。言い換えれば、各環状部211は、それぞれ、互いに隣接する一対のセル区画部21のそれぞれの一部を構成している。
【0077】
本例において、各セル仮想面V1は、後述のセル膜3(図12)によって覆われておらず、開放されており、すなわち、開口を構成している。このため、セル仮想面V1を通じて、セル孔Cどうしが連通され、セル孔C間の通気が、可能にされている。これにより、骨格部2の通気性を向上できるとともに、外力の付加・解除に応じた骨格部2の圧縮・復元変形がし易くなる。
【0078】
図11に示すように、本例において、各セル区画部21の骨格線Oは、多面体の形状をなしており、それにより、各セル孔Cが、略多面体の形状をなしている。より具体的に、図8図11の例において、各セル区画部21の骨格線Oは、ケルビン14面体(切頂8面体)の形状をなしており、それにより、各セル孔Cが、略ケルビン14面体(切頂8面体)の形状をなしている。ケルビン14面体(切頂8面体)は、6つの正4角形の構成面と8つの正6角形の構成面とから構成される、多面体である。骨格部2を構成するセル孔Cは、概略的に言えば、骨格部2の外縁(外輪郭)により囲まれた内部空間を空間充填するように(すなわち、各セル孔Cが無駄な隙間無く敷き詰められるように、さらに言い換えれば、セル孔C間の隙間(間隔)を小さくするように)、規則性をもって配列されている。
本例のように、骨格部2の一部または全部(本例では、全部)のセル区画部21の骨格線Oの形状(ひいては、骨格部2の一部または全部(本例では、全部)のセル孔Cの形状)を多面体とすることにより、骨格部2を構成するセル孔C間の隙間(間隔)をより小さくすることが可能になり、より多くのセル孔Cを骨格部2の内部に形成することができる。また、これにより、外力の付加・解除に応じた骨格部2(ひいては、多孔質構造体1)の圧縮・復元変形の挙動が、クッション材として、特にはシートパッドとして、さらに特には車両用のシートパッドとして、より良好になる。
セル区画部21の骨格線Oのなす多面体形状(ひいては、セル孔Cのなす多面体形状)としては、本例に限らず、任意のものが可能である。例えば、セル区画部21の骨格線Oの形状(ひいては、セル孔Cのなす形状)を略4面体、略8面体又は略12面体とした場合も、セル孔C間の隙間(間隔)を小さくする観点から好適である。また、骨格部2の一部または全部のセル区画部21の骨格線Oの形状(ひいては、骨格部2の一部または全部のセル孔Cのなす形状)は、略多面体以外の立体形状(例えば、球、楕円体、円柱等)でもよい。また、骨格部2は、セル区画部21として、骨格線Oの形状が同じである1種類のセル区画部21のみを有していてもよいし、あるいは、骨格線Oの形状が異なる複数種類のセル区画部21を有していてもよい。同様に、骨格部2は、セル孔Cとして、同じ形状からなる1種類のセル孔Cのみを有していてもよいし、あるいは、形状の異なる複数種類のセル孔Cを有していてもよい。なお、本例のように、セル区画部21の骨格線Oの形状(ひいては、セル孔Cの形状)を略ケルビン14面体(切頂8面体)とした場合は、他の形状に比べて、化学反応によって発泡させる工程を経て製造された一般的なポリウレタンフォームと同等のクッション材の特性を、最も再現し易い。
【0079】
図8図11に示すように、本例において、セル区画部21を構成する複数(本例では、14つ)の環状部211は、それぞれ、1つ又は複数(本例では、6つ)の小環状部211Sと、1つ又は複数(本例では、8つ)の大環状部211Lと、を含んでいる。各小環状部211Sは、それぞれ、その環状の内周側縁部2111によって、セル小仮想面V1Sを区画している。各大環状部211Lは、それぞれ、その環状の内周側縁部2111によって、セル小仮想面V1Sよりも面積の大きなセル大仮想面V1Lを区画している。
図11から判るように、本例において、大環状部211Lは、その骨格線Oが正6角形をなしており、それに伴い、セル大仮想面V1Lも、略正6角形をなしている。また、本例において、小環状部211Sは、その骨格線Oが正4角形をなしており、それに伴い、セル小仮想面V1Sも、略正4角形をなしている。このように、本例において、セル小仮想面V1Sとセル大仮想面V1Lとは、面積だけでなく、形状も異なる。
各大環状部211Lは、それぞれ、複数(本例では、6つ)の骨部2Bと、これらの複数の骨部2Bの端部2Beどうしを結合する複数(本例では、6つ)の骨結合部2Jと、から構成されている。各小環状部211Sは、それぞれ、複数(本例では、4つ)の骨部2Bと、これらの複数の骨部2Bの端部2Beどうしを結合する複数(本例では、4つ)の骨結合部2Jと、から構成されている。
セル区画部21を構成する複数の環状部211が、大きさの異なる小環状部211Sと大環状部211Lとを含むことにより、骨格部2を構成するセル孔C間の隙間(間隔)をより小さくすることが可能になる。また、本例のように、小環状部211Sと大環状部211Lとの形状が異なる場合、骨格部2を構成するセル孔C間の隙間(間隔)をさらに小さくすることが可能になる。
ただし、セル区画部21を構成する複数の環状部211は、それぞれ、大きさ及び/又は形状が互いに同じでもよい。セル区画部21を構成する各環状部211の大きさ及び形状が同じである場合、X、Y、Zのそれぞれの方向に等しい機械特性を得ることができる。
【0080】
本例のように、セル区画部21を構成する各環状部211のうち、一部又は全部(本例では全部)の環状部211の骨格線O(ひいては、セル区画部21を構成する各セル仮想面V1のうち、一部又は全部(本例では全部)のセル仮想面V1)が、略多角形状をなすことにより、骨格部2を構成するセル孔Cどうしの間隔をより小さくすることが可能になる。また、外力の付加・解除に応じた骨格部2の圧縮・復元変形の挙動が、クッション材として、特にはシートパッドとして、さらに特には車両用のシートパッドとして、より良好になる。また、環状部211の形状(ひいてはセル仮想面V1の形状)がシンプルになるので、製造性や特性の調整のし易さを向上できる。なお、骨格部2を構成する各環状部211のうち、少なくとも1つの環状部211(ひいては、骨格部2を構成する各セル仮想面V1のうち、少なくとも1つのセル仮想面V1)が、この構成を満たしている場合は、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
なお、骨格部2を構成する各環状部211のうち、少なくとも1つの環状部211の骨格線O(ひいては、骨格部2を構成する各セル仮想面V1のうち、少なくとも1つのセル仮想面V1)が、本例のような略正6角形、略正4角形以外の任意の略多角形状、あるいは、略多角形状以外の平面形状(例えば、円(真円、楕円等))をなしてもよい。環状部211の骨格線Oの形状(ひいてはセル仮想面V1の形状)が円(真円、楕円等)である場合は、環状部211の形状(ひいてはセル仮想面V1の形状)がシンプルになるので、製造性や特性の調整のし易さを向上できるとともに、より均質な機械特性が得られる。例えば、環状部211の骨格線Oの形状(ひいてはセル仮想面V1の形状)が、荷重が掛かる方向に対して略垂直な方向に長い楕円(横長の楕円)である場合は、荷重が掛かる方向に略平行な方向に長い楕円(縦長の楕円)である場合に比べて、環状部211が、ひいては、骨格部2(ひいては多孔質構造体1)が、荷重の入力に対して変形し易くなる(柔らかくなる)。
【0081】
本例において、骨格部2は、直径が5mm以上のセル孔Cを少なくとも1つ有すると、好適である。これにより、3Dプリンタを用いた多孔質構造体1の製造が実現し易くなる。骨格部2の各セル孔Cの直径が5mm未満であると、骨格部2の構造が複雑になりすぎる結果、多孔質構造体1の3次元形状を表す3次元形状データ(CADデータ等)、あるいは、その3次元形状データに基づき生成される3D造形用データを、コンピュータ上で生成するのが難しくなるおそれがある。
なお、従来のシートパッドを構成する多孔質構造体は、化学反応によって発泡させる工程を経て製造されていたため、直径が5mm以上のセル孔Cを形成することはできなかった。
また、骨格部2が直径5mm以上のセル孔Cを有することにより、骨格部2の通気性や変形し易さを向上しやすくなる。
このような観点から、骨格部2を構成する全てのセル孔Cの直径が、それぞれ、5mm以上であると、好適である。
セル孔Cの直径が大きくなるほど、3Dプリンタを用いた多孔質構造体1の製造が実現し易くなり、また、通気性や変形し易さを向上しやすくなる。このような観点から、骨格部2は、少なくとも1つ(好適には全部)のセル孔Cの直径が、より好適には8mm以上、さらに好適には10mm以上であるとよい。
一方、骨格部2のセル孔Cが大きすぎると、骨格部2(ひいては多孔質構造体1)の外縁(外輪郭)形状をきれいに(滑らかに)形成するのが難しくなり、クッション材(特にはシートパッド)の形状精度が低下し外観が悪化するおそれがある。また、クッション材(特にはシートパッド)としての特性も、十分に良好でなくなるおそれがある。よって、外観やクッション材としての特性を向上させる観点から、骨格部2の各セル孔Cの直径は、好適には30mm未満、より好適には25mm以下、さらに好適には20mm以下であるとよい。
なお、セル孔Cの直径は、本例のようにセル孔Cが厳密な球形状とは異なる形状をなす場合、セル孔Cの外接球の直径を指す。
【0082】
骨格部2のセル孔Cが小さすぎると、骨格部2の構造が複雑になりすぎる結果、多孔質構造体1の3次元形状を表す3次元形状データ(CADデータ等)、あるいは、その3次元形状データに基づき生成される3D造形用データを、コンピュータ上で生成するのが難しくなるおそれがあるため、3Dプリンタを用いた多孔質構造体1の製造がしにくくなる。3Dプリンタを用いた多孔質構造体1の製造を容易にする観点から、骨格部2を構成する各セル孔Cのうち、最小の直径を有するセル孔Cの直径が、0.05mm以上であると好適であり、0.10mm以上であるとより好適である。最小の直径を有するセル孔Cの直径が、0.05mm以上の場合、高性能な3Dプリンタの解像度で造形可能であり、0.10mm以上の場合、高性能な3Dプリンタだけでなく汎用の3Dプリンタの解像度でも造形可能である。
【0083】
図12は、多孔質構造体1のセル区画部21の一変形例を説明するための図面であり、図11に対応する図面である。本明細書で説明する各例において、多孔質構造体1は、図12に示す変形例のように、骨格部2に加えて、1つ又は複数のセル膜3を備えていてもよい。
セル膜3は、環状部211の環状の内周側縁部2111によって区画されたセル仮想面V1上を延在しており、それにより、当該環状部211によって区画されたセル仮想面V1を覆っている。図12の例の多孔質構造体1においては、骨格部2を構成する各セル仮想面V1のうちの少なくとも1つが、セル膜3で覆われている。セル膜3は、骨格部2と同じ材料からなり、骨格部2と一体に構成されている。図12の例において、セル膜3は、平坦に構成されている。ただし、セル膜3は、非平坦(例えば、湾曲状(曲面状))に構成されてもよい。
セル膜3は、骨部2Bの幅W0(図8)よりも小さな厚さを有すると、好適である。
セル膜3によって、セル仮想面V1を間に挟んだ2つのセル孔Cどうしが、セル仮想面V1を通じた連通がなくなり、セル仮想面V1を介した通気ができなくなるため、ひいては、多孔質構造体1の全体としての通気性が低下する。多孔質構造体1を構成する各セル仮想面V1のうち、セル膜3で覆われたものの数を調整することにより、多孔質構造体1の全体としての通気性を調整でき、要求に応じて様々な通気性レベルを実現可能である。例えば、多孔質構造体1が車両用シートパッドに利用される場合、多孔質構造体1の通気性を調整することにより、車内のエアコンの効きを高めたり、耐ムレ性を高めたり、乗り心地を高めることができる。多孔質構造体1が車両用シートパッドに利用される場合、車内のエアコンの効き及び耐ムレ性を高めるとともに、乗り心地を高める観点からは、多孔質構造体1を構成する各セル仮想面V1の全てがセル膜3で覆われているのは好ましくなく、言い換えれば、多孔質構造体1を構成する各セル仮想面V1のうち少なくとも1つがセル膜3で覆われておらず開放されていることが好ましい。
なお、従来の多孔質構造体は、上述のとおり、化学反応によって発泡させる工程を経て製造されていたため、各セルどうしを連通する連通孔における膜を、所期したとおりの位置及び個数で形成することは難しかった。本例のように、多孔質構造体1を3Dプリンタで製造する場合は、3Dプリンタに読み込まれる3D造形用データに、予めセル膜3の情報も含めることで、確実に、所期したとおりの位置及び個数でセル膜3を形成することが可能である。
同様の観点から、骨格部2を構成する各セル小仮想面V1Sのうちの少なくとも1つが、セル膜3で覆われていてもよい。かつ/又は、骨格部2を構成する各セル大仮想面V1Lのうちの少なくとも1つが、セル膜3で覆われていてもよい。
【0084】
本明細書で説明する各例において、多孔質構造体1が車両用シートパッドに利用される場合、車内のエアコンの効き及び耐ムレ性を高めたり、乗り心地を高める観点からは、多孔質構造体1の通気性は、100~700cc/cm/secが好適であり、150~650cc/cm/secがより好適であり、200~600cc/cm/secがさらに好適である。ここで、多孔質構造体1の通気性(cc/cm/sec)は、JIS K 6400-7に準拠して測定されるものとする。また、多孔質構造体1が車両用シートパッドに利用される場合、多孔質構造体1の共振倍率は、3倍以上8倍未満が好適であり、3倍以上5倍以下がより好適である。
【0085】
図13図14は、骨格部2の第2変形例を説明するための図面である。図13は、骨格部2の第2変形例の一部を示す、平面図であり、図9に対応する図面である。図14は、本例の骨部2Bを、単独で示している。図14(a)は骨部2Bに外力が加わっていない自然状態を示しており、図14(b)は骨部2Bに外力が加わった状態を示している。図13及び図14には、骨部2Bの中心軸線(骨格線O)を示している。
図13及び図14(a)に示すように、骨格部2の各骨部2Bは、それぞれ、断面積を一定に保ちつつ延在する、骨一定部2B1と、骨一定部2B1の延在方向の両側において、断面積を徐々に変化させつつ、骨一定部2B1から骨結合部2Jまで延在する、一対の骨変化部2B2と、から構成されている。本例において、各骨変化部2B2は、断面積を徐々に増大させつつ、骨一定部2B1から骨結合部2Jまで延在している。なお、本例に限らず、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていても、同様の効果が得られる。また、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部又は全部の骨部2Bは、それぞれ、骨一定部2B1の一方側の端部のみに骨変化部2B2を有し、骨一定部2B1の他方側の端部が直接骨結合部2Jに結合されていてもよく、その場合も、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
ここで、骨一定部2B1及び骨変化部2B2の断面積は、それぞれ、骨一定部2B1及び骨変化部2B2の骨格線Oに垂直な断面の断面積を指す。
本例では、多孔質構造体1を構成する各骨部2Bが、骨一定部2B1と骨変化部2B2とからなり、骨変化部2B2が、骨一定部2B1から骨結合部2Jに向かうにつれて断面積が徐々に増大するので、骨部2Bが、骨一定部2B1と骨変化部2B2との境界の近傍部分で、骨一定部2B1に向かって細くなるようにくびれた形状をなしている。そのため、外力が加わる際に、骨部2Bが、そのくびれた部分や骨一定部2B1の中間部分で座屈変形しやすくなり、ひいては、多孔質構造体1が圧縮変形しやすくなる。これにより、化学反応によって発泡させる工程を経て製造された一般的なポリウレタンフォームと同等の挙動及び特性が得られる。また、これにより、多孔質構造体1の表面のタッチ感がより柔らかくなる。よって、例えば、多孔質構造体1がシートパッドに用いられる場合、着座する際の、特に着座し始めのタイミングで、着座者に、より柔らかい感触を与えるようになる。このような柔らかい感触は、一般的に、広く好まれるものであり、また、高級車のシートパッドの着座者(例えば運転手付きで後部座席に人を乗せる場合、後部座席に座る着座者)に好まれるものである。
【0086】
本例のように、骨部2Bが、その少なくとも一部分において骨一定部2B1を有している場合、骨部2Bのいずれか一方側(好ましくは両側)の端2B21の断面積A1(図14(a))に対する、骨一定部2B1の断面積A0(図14(a))の比A0/A1は、
0.15≦A0/A1≦2.0
を満たしていると、好適である。これにより、多孔質構造体1の表面のタッチ感を、シートパッドの特性として、柔らかすぎず、硬すぎず、ほどよい硬さにすることができる。よって、例えば、多孔質構造体1がシートパッドに用いられる場合、着座する際の、特に着座し始めのタイミングで、着座者に、ほどよい硬さの感触を与えるようになる。比A0/A1が小さいほど、多孔質構造体1の表面のタッチ感が、より柔らかくなる。比A0/A1が0.15未満である場合は、多孔質構造体1の表面のタッチ感が柔らかくなりすぎて、クッション材(特にはシートパッド)の特性として好ましくなくなるおそれがあり、また、3Dプリンタによる製造がしにくくなるため、製造性の面で好ましくない。比A0/A1が2.0超である場合は、多孔質構造体1の表面のタッチ感が硬くなりすぎて、クッション材(特にはシートパッド)の特性として好ましくなくなるおそれがある。
なお、比A0/A1は、0.5以上であると、より好適である。
より具体的に、本例では、骨部2Bが骨一定部2B1とその両側に連続する一対の骨変化部2B2とを有しており、各骨変化部2B2が、それぞれ、断面積を徐々に増大させつつ、骨一定部2B1から骨結合部2Jまで延在しており、比A0/A1が1.0未満である。これにより、多孔質構造体1の表面のタッチ感を、クッション材(特にはシートパッド)の特性として、比較的柔らかくすることができる。このような柔らかい感触は、一般的に、広く好まれるものであり、また、高級車のシートパッドの着座者(例えば運転手付きで後部座席に人を乗せる場合、後部座席に座る着座者)に好まれるものである。
なお、骨格部2を構成する各骨部2Bがこの構成を満たしていてもよいし、あるいは、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていてもよく、いずれの場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
【0087】
なお、本例に代えて、骨変化部2B2は、断面積を徐々に減少させつつ、骨一定部2B1から骨結合部2Jまで延在していてもよい。この場合、骨一定部2B1は、骨変化部2B2よりも、断面積が大きく(太く)なる。これにより、外力が加わる際に、骨一定部2B1が変形しにくくなり、代わりに、比較的座屈しやすい箇所が骨変化部2B2(特に、骨結合部2J側の部分)となり、ひいては、多孔質構造体1が圧縮変形しにくくなる。これにより、多孔質構造体1の表面のタッチ感がより硬くなり、また、高硬度の機械特性が得られる。よって、例えば、多孔質構造体1がシートパッドに用いられる場合、着座する際の、特に着座し始めのタイミングで、着座者に、より硬い感触を与えるようになる。このような挙動は、化学反応によって発泡させる工程を経て製造された一般的なポリウレタンフォームでは得ることができない。このような構成により、硬めの感触を好むユーザに対応できる。このような硬い感触は、例えば、素早い加減速や斜線変更を行うようなスポーツ車のシートパッドにおける、着座者に好まれるものである。
そして、骨変化部2B2が、断面積を徐々に減少させつつ、骨一定部2B1から骨結合部2Jまで延在している場合、比A0/A1は、1.0超となる。
なお、骨格部2を構成する各骨部2Bがこの構成を満たしていてもよいし、あるいは、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていてもよく、いずれの場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
【0088】
なお、上述した図8図12の各例において、骨部2Bは、骨変化部2B2を有さずに、骨一定部2B1のみからなるものである。この場合、骨部2Bの断面積は、その全長にわたって一定になる。そして、外力が加わる際における多孔質構造体1の表面のタッチ感は、中程度の硬さになる。このような構成により、中程度の硬さの感触を好むユーザに対応できる。また、高級車やスポーツ車など、あらゆる車種のシートパッドに好適に適用できる。
この場合、比A0/A1は、1.0となる。
なお、骨格部2を構成する各骨部2Bがこの構成を満たしていてもよいし、あるいは、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていてもよく、いずれの場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
【0089】
図13図14の例に戻り、本例において、骨格部2を構成する各骨部2Bは、骨一定部2B1が、骨変化部2B2及び骨結合部2Jよりも、断面積が小さい。より具体的には、骨一定部2B1の断面積は、骨変化部2B2及び骨結合部2Jのそれぞれのどの部分(ただし、骨一定部2B1と骨変化部2B2との境界部分を除く)の断面積よりも、小さい。すなわち、骨一定部2B1は、骨格部2の中で最も断面積が小さい(細い)部分である。これにより、上述したことと同様に、外力が加わる際に、骨一定部2B1が変形しやすくなり、ひいては、多孔質構造体1が圧縮変形しやすくなる。これにより、多孔質構造体1の表面のタッチ感がより柔らかくなる。
なお、骨結合部2Jの断面積は、骨結合部2Jの骨格線Oに垂直な断面の断面積を指す。
なお、本例に限らず、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
【0090】
同様に、本例において、骨格部2を構成する各骨部2Bは、骨一定部2B1が、骨変化部2B2及び骨結合部2Jよりも、幅が小さい。より具体的には、骨一定部2B1の幅は、骨変化部2B2及び骨結合部2Jのそれぞれのどの部分(ただし、骨一定部2B1と骨変化部2B2との境界部分を除く)の幅よりも、小さい。すなわち、骨一定部2B1は、骨格部2の中で最も幅が小さい(細い)部分である。これによっても、外力が加わる際に骨一定部2B1が変形しやすくなり、それにより、多孔質構造体1の表面のタッチ感がより柔らかくなる。
なお、骨一定部2B1、骨変化部2B2、骨結合部2Jの幅は、それぞれ、骨一定部2B1、骨変化部2B2、骨結合部2Jの骨格線Oに垂直な断面に沿って測ったときの、当該断面における最大幅を指す。骨結合部2Jの骨格線Oは、骨格線Oのうち、骨結合部2Jに対応する部分である。図14(a)には、参考のため、骨一定部2B1の幅W0と、骨変化部2B2の幅W1とを、示している。
なお、本例に限らず、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
【0091】
上述した各例において、多孔質構造体1の構造の簡単化、ひいては、3Dプリンタの製造のし易さの観点からは、骨一定部2B1の幅W0(図14)は、0.05mm以上であると好適であり、0.10mm以上であるとより好適である。幅W0が0.05mm以上の場合、高性能な3Dプリンタの解像度で造形可能であり、0.10mm以上の場合、高性能な3Dプリンタだけでなく汎用の3Dプリンタの解像度でも造形可能である。
一方、多孔質構造体1の外縁(外輪郭)形状の精度を向上させる観点や、セル孔C間の隙間(間隔)を小さくする観点や、クッション材としての特性を良好にする観点からは、骨一定部2B1の幅W0(図14)は、0.05mm以上2.0mm以下であると好適である。
なお、骨格部2を構成する各骨部2Bがこの構成を満たしていると好適であるが、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
【0092】
図14に示すように、本例において、骨格部2を構成する各骨部2Bは、骨変化部2B2が、その側面に、1又は複数(本例では、3つ)の傾斜面2B23を有しており、この傾斜面2B23は、骨変化部2B2の延在方向に対して傾斜(90°未満で傾斜)しているとともに、骨一定部2B1から骨結合部2Jに向かうにつれて、幅W2が徐々に増大している。
これによっても、外力が加わる際に、骨部2Bが、骨一定部2B1と骨変化部2B2との境界近傍におけるくびれた部分で、座屈変形しやすくなり、ひいては、多孔質構造体1が圧縮変形しやすくなる。これにより、多孔質構造体1の表面のタッチ感がより柔らかくなる。
ここで、骨変化部2B2の延在方向は、骨変化部2B2の中心軸線(骨格線O)の延在方向である。また、骨変化部2B2の傾斜面2B23の幅W2は、骨変化部2B2の骨格線Oに垂直な断面に沿って測ったときの、傾斜面2B23の幅を指す。
なお、本例に限らず、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
【0093】
本例において、骨格部2を構成する各骨部2Bにおいて、それぞれ柱状であるとともに、骨一定部2B1と骨変化部2B2は、それぞれの断面形状が、正三角形である。
これにより、多孔質構造体1の構造がシンプルになり、3Dプリンタによる造形がしやすくなる。また、化学反応によって発泡させる工程を経て製造された一般的なポリウレタンフォームでの機械特性を再現しやすい。よって、多孔質構造体1のクッション材としての特性を向上できる。また、このように骨部2Bを柱状に構成することにより、仮に骨部2Bを薄い膜状の部分に置き換えた場合に比べて、多孔質構造体1の耐久性を向上できる。
なお、骨一定部2B1、骨変化部2B2の断面形状は、それぞれ、骨一定部2B1、骨変化部2B2の中心軸線(骨格線O)に垂直な断面における形状である。
なお、本例に限らず、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
また、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち全部又は一部の骨部2Bにおいて、骨一定部2B1と骨変化部2B2は、それぞれの断面形状が、正三角形以外の多角形(正三角形以外の三角形、四角形等)でもよいし、あるいは、円形(真円形、楕円形等)でもよく、その場合でも、本例と同様の効果が得られる。また、骨一定部2B1と骨変化部2B2は、それぞれの断面形状が互いに異なるものでもよい。また、各骨部2Bは、それぞれの断面形状が、その延在方向に沿って均一でもよいし、あるいは、その延在方向に沿って非均一でもよい。また、各骨部2Bどうしで、断面形状が互いに異なっていてもよい。
【0094】
〔多孔質構造体の製造方法、及び、3D造形用データ〕
つぎに、図15及び図16を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る、多孔質構造体の製造方法を説明する。
図15では、図2の例の多孔質構造体1を、3Dプリンタにより製造する様子を一例として示している。ただし、以下に説明する多孔質構造体の製造方法は、本明細書で上述した任意の例の多孔質構造体1を製造するために好適に使用できる。
まず、事前に、コンピュータを用いて、多孔質構造体1の3次元形状を表す3次元形状データ(例えば、3次元CADデータ)を作成する。
つぎに、コンピュータを用いて、上記3次元形状データを、3D造形用データ500に変換する。3D造形用データ500は、3Dプリンタ400の造形部420が造形を行う際に3Dプリンタ400の制御部410に読み込まれるものであり、制御部410が、造形部420に、多孔質構造体1を、造形させるように構成されている。3D造形用データ500は、例えば、多孔質構造体1の各層の2次元形状を表すスライスデータを含む。
つぎに、3Dプリンタ400によって多孔質構造体1の造形を行う。3Dプリンタ400は、例えば、光造形方式、粉末焼結積層方式、熱溶融積層方式(FDM方式)、インクジェット方式等、任意の造形方式を用いて造形を行ってよい。図15では、熱溶融積層方式(FDM方式)によって造形を行う様子を示している。
3Dプリンタ400は、例えば、CPU等によって構成された制御部410と、制御部410による制御に従って造形を行う造形部420と、造形される造形物(すなわち、多孔質構造体1)を載せるための支持台430と、支持台430及び造形物が収容される収容体440と、を備える。造形部420は、本例のように熱溶融積層方式(FDM方式)を用いる場合、最終的に造形物(すなわち、多孔質構造体1)を構成するメイン材MMを吐出するように構成されたメイン材ノズル421と、造形中にメイン材MMを支持するサポート材SMを吐出するように構成されたサポート材ノズル422と、を有している。メイン材MMとしては、可撓性のある樹脂又はゴムを用いるのがよいが、特に、可撓性のある樹脂を用いるのが好適である。
このように構成された3Dプリンタ400は、まず、制御部410が、3D造形用データ500を読み込み、読み込んだ3D造形用データ500に含まれる3次元形状に基づいて、造形部420にメイン材MM、サポート材SMを吐出させるよう制御しながら、各層を順次造形していく。このとき、多孔質構造体1のうち、空隙以外の部分(すなわち、骨格部2や表皮部6)を、メイン材MMによって造形し、多孔質構造体1の空隙部分を、サポート材SMによって形成する。
3Dプリンタ400による造形が完了した後は、造形物からサポート材SMを除去する。それにより、最終的に、造形物として、多孔質構造体1が得られる。
【0095】
ここで、図16を参照しつつ、熱溶融積層方式(FDM方式)ではなく、光造形方式によって造形を行う場合について、説明する。図16は、光造形方式によって造形を行う様子を示している。
この場合、3Dプリンタ400は、例えば、CPU等によって構成された制御部410と、制御部410による制御に従って造形を行う造形部420と、造形される造形物(すなわち、多孔質構造体1)を載せるための支持台430と、液体樹脂LR、支持台430及び造形物が収容される収容体440と、を備える。造形部420は、本例のように光造形方式を用いる場合、紫外線レーザ光LLを照射するように構成されたレーザ照射器423を有する。収容体440には、液体樹脂LRが充填されている。液体樹脂LRは、レーザ照射器423から照射される紫外線レーザ光LLが当たると、硬化し、可撓性のある樹脂となる。
このように構成された3Dプリンタ400は、まず、制御部410が、3D造形用データ500を読み込み、読み込んだ3D造形用データ500に含まれる3次元形状に基づいて、造形部420に紫外線レーザ光LLを照射するよう制御しながら、各層を順次造形していく。
3Dプリンタ400による造形が完了した後は、造形物を収容体440から取り出す。それにより、最終的に、造形物として、多孔質構造体1が得られる。
【0096】
なお、多孔質構造体1を樹脂で構成する場合、3Dプリンタ400による造形が完了した後に、造形物としての多孔質構造体1を、オーブンの中で加熱してもよい。その場合、多孔質構造体1を構成する各層どうしの結合を強化し、それにより多孔質構造体1の異方性を低減できるので、多孔質構造体1のクッション材としての特性をさらに向上できる。
また、多孔質構造体1をゴムで構成する場合、3Dプリンタ400による造形が完了した後に、造形物としての多孔質構造体1を加硫してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の多孔質構造体、及び、本発明の多孔質構造体の製造方法又は3D造形用データを用いて製造される多孔質構造体は、クッション材に用いられるのが好適であり、着座用のクッション材(シートパッド等)に用いられるのがより好適であり、車両用シートパッドに用いられるのがさらに好適である。
【符号の説明】
【0098】
1:多孔質構造体、
2:骨格部、 2B:骨部、 2Be:骨部の端部、 2B1:骨一定部、 2B2:骨変化部、 2B21:骨変化部の骨結合部側の端、 2B22:骨変化部の骨一定部側の端、 2B23:骨変化部の傾斜面、 2J:骨結合部、 21:セル区画部、 211:環状部、 211L:大環状部、 211S:小環状部、 2111:環状部の内周側縁部、
C:セル孔、 O:骨格線、 V1:セル仮想面、 V1L:セル大仮想面、 V1S:セル小仮想面、 VC:骨格部の仮想外輪郭面、
3:セル膜、
6:表皮部、 6C:柱部、 6Ce:柱部の端部、 6J:柱結合部、 61:大曲率半径部分、 62:小曲率半径部分、 63:低面積率部分、 64:高面積率部分、 65:表皮膜、 66:貫通穴、
UA:単位領域、 V6:表皮仮想面、
7:追加連結部、
FS:荷重受け面、 SS:側面、 E:荷重受け面と側面との間のエッジ部、 BS:裏面、
300:車両用シート、
301:フレーム、
302:シートパッド(車両用シートパッド)、 310:クッションパッド部、 311:メインパッド部(着座部)、 311t:腿下部、 311h:尻下部、 312:サイドパッド部、 320:バックパッド部、 321:メインパッド部、 322:サイドパッド部、 340:ヘッドレスト部、 341:メインパッド部、 342:サイドパッド部、
TD:厚さ方向、
400:3Dプリンタ、 410:制御部、 420:造形部、 421:メイン材ノズル、 422:サポート材ノズル、 423:レーザ照射器、 430:支持台、 440:収容体、 MM:メイン材、 SM:サポート材、 LL:紫外線レーザ光、 LR:液体樹脂、 500:3D造形用データ

図1
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図5
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図16