(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】電空レギュレータ
(51)【国際特許分類】
G05D 16/20 20060101AFI20221031BHJP
F15B 5/00 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
G05D16/20 Z
F15B5/00 Z
(21)【出願番号】P 2019132584
(22)【出願日】2019-07-18
【審査請求日】2021-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鷲見 治彦
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 勢太
(72)【発明者】
【氏名】長崎 功
(72)【発明者】
【氏名】辻 哲樹
【審査官】山村 秀政
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-107820(JP,A)
【文献】特開2005-233394(JP,A)
【文献】特開2013-007474(JP,A)
【文献】特開2009-014184(JP,A)
【文献】特開2002-295403(JP,A)
【文献】特開平11-184535(JP,A)
【文献】SMC Corporation,「IO-Link Compatible Electro-Pneumatic Regulator ITV 10 0/20 0/30 0-X395」,カタログ,日本,2018年,PP.1-4,<URL: https://www.smcworld.com/upfiles/pgpdf/SP175X-006E-ITV.pdf>.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 16/20
F15B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主弁部を動作させる給気用制御弁および排気用制御弁と、前記給気用制御弁および前記排気用制御弁を制御する制御部と、を備える電空レギュレータであって、前記制御部は、制御装置から指示される目標圧力値に基づいて、前記給気用制御弁または前記排気用制御弁を制御し、前記主弁部を動作させることで、制御流体の出力圧力値を調整する電空レギュレータにおいて、
前記制御部は、前記出力圧力値と、前記目標圧力値と、の圧力差に基づき前記給気用制御弁および前記排気用制御弁の動作状態を監視すること、
前記圧力差は、前記出力圧力値から前記目標圧力値を減ずることで算出されること、
前記圧力差が、正の値であり、第1の所定範囲内にあるときに、前記制御部は、前記排気用制御弁が、開弁動作がオンとなる周期と開弁動作がオンとなっている時間との比であるDuty比が大きい高Duty比状態にあると判断すること、
前記圧力差が、負の値であり、第2の所定範囲内にあるときに、前記制御部は、前記給気用制御弁が、前記高Duty比状態にあると判断すること、
所定の時間以上、前記圧力差が第1の所定範囲内にあるとき、前記制御部は、前記排気用制御弁が、過剰動作状態にあると判断すること、
所定の時間以上、前記圧力差が第2の所定範囲内にあるとき、前記制御部は、前記給気用制御弁が、過剰動作状態にあると判断すること、
前記所定の時間は、電空レギュレータ
が前記目標圧力値に基づいて前記出力圧力値の調整を行うために避けることができない前記高Duty比状態が継続される時間である継続時間よりも長い時間であること、
前記第1の所定範囲および前記第2の所定範囲は、前記継続時間の開始時点における前記圧力差の値と、前記継続時間の終了時点における前記圧力差の値と、により定まること、
を特徴とする電空レギュレータ。
【請求項2】
請求項1に記載の電空レギュレータにおいて、
前記制御部は記憶部を備えること、
前記記憶部は、前記給気用制御弁および前記排気用制御弁が、前記高Duty比状態となった回数と、前記高Duty比状態であった時間の長さと、を少なくとも含む、前記給気用制御弁および前記排気用制御弁の動作状態を記憶すること、
を特徴とする電空レギュレータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電空レギュレータにおいて、
前記電空レギュレータは、マスタを介して前記制御装置と接続されていること、
複数の前記電空レギュレータが、単一の前記マスタを中心としたスター型接続により、前記マスタと接続され、フィールドネットワークを構成していること、
を特徴とする電空レギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主弁部を動作させる給気用制御弁および排気用制御弁と、給気用制御弁および排気用制御弁を制御する制御部と、を備える電空レギュレータであって、制御部は、制御装置から指示される目標圧力値に基づいて、給気用制御弁または排気用制御弁を制御し、主弁部を動作させることで、制御流体の出力圧力値を調整する電空レギュレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電空レギュレータは、入力ポートから入力される制御流体の、出力ポートにおける出力圧力値を、主弁部により調整する流体制御機器である。出力圧力値の調整は、電空レギュレータに接続される外部の制御装置から指示される目標圧力値に基づいて、電空レギュレータに内蔵される制御部が、給気用制御弁と排気用制御弁の開閉を制御し、主弁部を動作させることで行われる。制御部は、出力ポートにおける制御流体の出力圧力値を圧力センサで検出し、その出力圧力値と目標圧力値との圧力差に基づいて、給気用制御弁と排気用制御弁をパルス幅変調(Pulse Width Modulation(PWM))駆動により制御する。これにより、電空レギュレータは、制御流体の出力圧力値を目標圧力値に精度良く調整できる。
【0003】
このような電空レギュレータに用いられる給気用制御弁と排気用制御弁は、出力圧力値を平衡状態から目標圧力値へ調整する際に、給気用制御弁または排気用制御弁の開弁動作がオンとなる周期(パルスの周期)と、開弁動作がオンとなっている時間(パルス幅)と、の比であるDuty比が大きい状態(すなわち高Duty比状態)になるなど、非常に高頻度で動作が繰り返される。
【0004】
高頻度で動作が繰り返される給気用制御弁と排気用制御弁は、使用方法によっては、電空レギュレータの使用開始から短期間で異常が生じるおそれがある。例えば、給気用制御弁や排気用制御弁において、長時間に渡って高Duty比状態を継続されると(過剰動作状態)、給気用制御弁と排気用制御弁の寿命を低下させ、ひいては電空レギュレータの製品寿命を低下させることになるのである。給気用制御弁と排気用制御弁に異常が生じた場合、作業者は電空レギュレータを、新しいものと交換する必要がある。
【0005】
作業者が電空レギュレータに異常が生じたことを容易に知ることができる電空レギュレータとして、特許文献1に開示される電空レギュレータが知られている。
【0006】
特許文献1に開示される電空レギュレータは、2色の発光素子によって、電空レギュレータの動作状態を表示することができるものである。例えば、発光素子として、赤色のLEDと緑色のLEDを備えることで、電空レギュレータの動作が、安定状態である場合には緑色のLEDのみ発光させることで緑色の表示をし、不安定状態である場合には赤色と緑色のLEDを発光させてオレンジ色の表示をし、異常状態である場合には赤色のLEDのみを発光させて赤色の表示をすることができるため、作業者は、表示される色によって電空レギュレータの動作状態を容易に知ることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来技術には次のような問題があった。
上記の電空レギュレータは、2色の発光素子によって、稼働中の電空レギュレータが、安定状態にあるか、不安定状態にあるか、異常状態にあるか知ることができるものの、動作状態によっては短期間で異常が生じやすい給気用制御弁と排気用制御弁の動作状態を知ることができない。給気用制御弁と排気用制御弁の動作状態を知ることができないと、過剰動作状態が頻繁に繰り返されてしまうなど、作業者が給気用制御弁と排気用制御弁に短期間で異常を生じさせる原因に気付くことができないおそれがある。当該原因に作業者が気付くことができないと、電空レギュレータの寿命を縮める結果となり、高頻度で電空レギュレータの交換を行わなければならなくなる。高頻度で電空レギュレータの交換を行うこととなると、例えば電空レギュレータが半導体製造装置に取り付けられている場合には、電空レギュレータの交換を行うために半導体製造装置の稼働を停止させなければならず、電空レギュレータの交換を高頻度に行うこととなると、半導体の生産効率の低下を招くおそれがある。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、給気用制御弁および排気用制御弁の動作状態を容易に監視することができ、電空レギュレータの寿命の低減を防ぐことが可能な電空レギュレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の電空レギュレータは、次のような構成を有している。
【0011】
(1)主弁部を動作させる給気用制御弁および排気用制御弁と、給気用制御弁および排気用制御弁を制御する制御部と、を備える電空レギュレータであって、制御部は、制御装置から指示される目標圧力値に基づいて、給気用制御弁または排気用制御弁を制御し、主弁部を動作させることで、制御流体の出力圧力値を調整する電空レギュレータにおいて、制御部は、出力圧力値と、目標圧力値と、の圧力差に基づき給気用制御弁および排気用制御弁の動作状態を監視すること、圧力差は、出力圧力値から目標圧力値を減ずることで算出されること、圧力差が、正の値であり、第1の所定範囲内にあるときに、制御部は、排気用制御弁が、開弁動作がオンとなる周期と開弁動作がオンとなっている時間との比であるDuty比が大きい高Duty比状態にあると判断すること、圧力差が、負の値であり、第2の所定範囲内にあるときに、制御部は、給気用制御弁が、高Duty比状態にあると判断すること、所定の時間以上、圧力差が第1の所定範囲内にあるとき、制御部は、排気用制御弁が、過剰動作状態にあると判断すること、所定の時間以上、圧力差が第2の所定範囲内にあるとき、制御部は、給気用制御弁が、過剰動作状態にあると判断すること、所定の時間は、電空レギュレータが前記目標圧力値に基づいて前記出力圧力値の調整を行うために避けることができない高Duty比状態が継続される時間である継続時間よりも長い時間であること、第1の所定範囲および第2の所定範囲は、継続時間の開始時点における前記圧力差の値と、継続時間の終了時点における前記圧力差の値と、により定まること、を特徴とする。
【0012】
(3)(2)に記載の電空レギュレータにおいて、制御部は記憶部を備えること、記憶部は、給気用制御弁および排気用制御弁が、高Duty比状態となった回数と、高Duty比状態であった時間の長さと、を少なくとも含む、給気用制御弁および排気用制御弁の動作状態を記憶すること、を特徴とする。
【0013】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載の電空レギュレータにおいて、電空レギュレータは、マスタを介して制御装置と接続されていること、複数の電空レギュレータが、単一のマスタを中心としたスター型接続により、マスタと接続され、フィールドネットワークを構成していること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電空レギュレータは、上記構成を有することにより次のような作用・効果を有する。
(1)に記載の電空レギュレータによれば、給気用制御弁および排気用制御弁を制御する制御部が、出力圧力値と、目標圧力値と、の圧力差に基づき給気用制御弁および排気用制御弁の動作状態を監視することが可能であるため、給気用制御弁および排気用制御弁において、過剰動作状態となっていたとしても、作業者はそれに気付くことができ、過剰動作状態が頻繁に繰り返されてしまうことを防ぐことができる。過剰動作が頻繁に繰り返されてしまうことを防ぐことができれば、電空レギュレータの寿命の低減を防ぐことが可能であるため、電空レギュレータの交換が高頻度となることを防ぐことにつながる。電空レギュレータの交換が高頻度となることを防ぐことができれば、電空レギュレータが取り付けられている装置(例えば半導体製造装置)を、電空レギュレータの交換のために稼働を停止させる頻度を抑えることができ、生産効率(例えば半導体の生産効率)の低下を防ぐことができる。
【0015】
さらに、(1)に記載の電空レギュレータによれば、給気用制御弁と排気用制御弁のどちらかが過剰動作状態になった場合に、圧力差の値によって、給気用制御弁と排気用制御弁のどちらが過剰動作状態にあるのか監視が容易となり、電空レギュレータの寿命の低減を防ぐことが可能となる。
【0016】
例えば、給気用制御弁が不必要な過剰動作状態になると想定されるのは、電空レギュレータの入力ポートに制御流体を供給していないにも関わらず、電空レギュレータが動作している場合などが考えられる。入力ポートに制御流体が供給されていないため、出力ポートにおける出力圧力値が目標圧力値に達することがないにも関わらず、給気用制御弁が出力圧力値を目標圧力値に近づけようと長時間に渡り高Duty比状態で動作し続けてしまう。そのため、給気用制御弁が過剰動作状態となってしまうのである。一方で、排気用制御弁が過剰動作状態になると想定されるのは、電空レギュレータの出力ポート側で背圧がかかり続ける場合である。この場合、出力圧力値を低減させようとして、排気用制御弁が長時間に渡り高Duty比状態で動作し続けてしまうため、排気用制御弁が過剰動作状態となってしまうのである。給気用制御弁と排気用制御弁のどちらが過剰動作状態にあるのか監視が容易となれば、作業者は、上記のような過剰動作状態の原因に対して対策を立てることが容易となり、電空レギュレータの寿命の低減を防ぐことが可能となる。
【0017】
なお、過剰動作状態としては、電空レギュレータの使い方を誤り、不必要に高Duty比状態となってしまう場合と、電空レギュレータの使い方に無理があり、高Duty比状態となってしまう場合とが考えられる。
【0018】
電空レギュレータの使い方を誤り、不必要に高Duty比状態となってしまう場合とは、上記のように、電空レギュレータの入力ポートに制御流体を供給していないにも関わらず、電空レギュレータが動作している場合や、電空レギュレータの出力ポート側で背圧がかかり続ける場合のことである。
【0019】
一方で、電空レギュレータの使い方に無理があり、高Duty比状態となってしまう場合とは、例えば、電空レギュレータが、塗装作業に用いられる塗料のエアブロー機器に用いられた場合であって、吹き付ける塗料の流量を無理に増大させた場合などが考えられる。
図5は、エアブロー機器における電空レギュレータの、塗料の出力圧力値P2と、流量の関係を表したグラフである。出力圧力値P2は、指示される目標圧力値Pt2となるよう電空レギュレータにより調整される。しかし、作業者が、塗料の供給源の絞りを大きくするなどし、塗料の流量を増大させていったとき、流量がある流量F1を超えると、出力圧力値P2は、圧力を保てなくなり、目標圧力値Pt2に対して低下していく。出力圧力値P2が低下すると、給気用制御弁が、出力圧力値P2を目標圧力値Pt2まで上昇させようと長時間に渡り高Duty比状態で動作し続けてしまうため、作業者の望む流量を得ることができたとしても、給気用制御弁が過剰動作状態となってしまうのであり、電空レギュレータが無理に使用されている状態であると言える。そこで、本発明の電空レギュレータにより、給気用制御弁と排気用制御弁のどちらが過剰動作状態にあるのか監視が容易となれば、作業者は、電空レギュレータを無理に使用していることに気づくことができ、電空レギュレータの寿命の低減を防ぐよう対策を立てることができるようになる。
【0020】
(3)に記載の電空レギュレータによれば、記憶部に、高Duty比状態となった回数と、高Duty比状態であった時間の長さを少なくとも含む、給気用制御弁と排気用制御弁の動作状態が記憶されているため、当該動作状態に関する情報を蓄積することでビッグデータとすることが可能であり、当該ビッグデータにより、どの程度高Duty比状態が繰り返されれば電空レギュレータの寿命となるのか、ある程度予測することが可能となる。寿命の予測が可能となれば、電空レギュレータの寿命による予期せぬ異常発生を防止することができる。電空レギュレータの寿命による予期せぬ異常発生を防止することができれば、電空レギュレータが取り付けられている装置(例えば半導体製造装置)の稼働を、電空レギュレータの交換のために予期せず停止させてしまうおそれを防止でき、生産効率(例えば半導体の生産効率)の低下を防ぐことが可能である。
【0021】
また、従来は、電空レギュレータの寿命による予期せぬ異常発生によって電空レギュレータが取り付けられている装置を停止させてしまうことを防ぐために、電空レギュレータが寿命を迎える前に余裕を持って新しいものと交換していたため、交換頻度が多くなっていた。しかし、上記のように寿命を予測することができれば、寿命が近くなるまで電空レギュレータを使用することができ、交換頻度を抑えることができるため、コストの低減が可能である。
【0022】
(4)に記載の電空レギュレータによれば、複数の電空レギュレータの給気用制御弁および排気用制御弁の動作状態を容易に監視することができ、電空レギュレータの寿命の低減を防ぐことが可能である。
【0023】
複数の電空レギュレータが、単一のマスタを中心としたスター型接続により、マスタと接続され、フィールドネットワークを構成しているため、複数の電空レギュレータにおいて制御部が監視する給気用制御弁および排気用制御弁の動作状態に関する情報をマスタで集約して、制御装置に伝達可能である。よって、複数の電空レギュレータの給気用制御弁および排気用制御弁の動作状態を、容易に、一括して管理することができる。作業者は、複数の電空レギュレータにおける給気用制御弁および排気用制御弁が、高Duty比状態となっているか否か、容易に一括して知ることができ、複数の電空レギュレータにおいて不必要な高Duty比状態が頻繁に繰り返されてしまうことを防ぐことができる。これにより、複数の電空レギュレータの寿命の低減を防ぐことが可能である。
【0024】
ここで、フィールドネットワークとは、例えばIO-Link(登録商標)のことを指す。従来の制御装置と電空レギュレータの接続においては、制御装置から電空レギュレータへ信号を伝達するケーブルと、電空レギュレータから制御装置へ信号を伝達するケーブルとを別々に接続する必要があったが、IO-Linkにおいては、マスタと電空レギュレータの間の接続は、3本線または4本線の非シールドケーブルが用いられるため、1本のケーブルで、マスタと電空レギュレータとの間の信号の授受を相互に行うことが可能となる。単一のマスタと、複数の電空レギュレータの制御部との間は、それぞれ1本ずつのケーブルを接続すれば足りるため、工場レイアウトを単純化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】電空レギュレータを用いて構成されたフィールドネットワークを示す図である。
【
図3】PWM駆動と、出力圧力値と、目標圧力値との関係を表したグラフである。
【
図4】出力圧力値と目標圧力値との圧力差と、時間との関係を表したグラフである。
【
図5】塗料のエアブロー機器に電空レギュレータを用いた場合の出力圧力値と流量の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る電空レギュレータ1A,1B,1Cを用いて構成されたフィールドネットワークを示す図である。
フィールドネットワークとは、例えばIO-Linkであり、制御装置としてのネットワークコントローラ2に、マスタ3を介して電空レギュレータ1A,1B,1Cが接続され、電空レギュレータ1A,1B,1Cは単一のマスタ3を中心としたスター型接続がなされている。なお、電空レギュレータ1A,1B,1Cの台数は、
図1に示す3台に限定されるものでない。また、マスタ3も1台である必要はなく、ネットワークコントローラ2に複数のマスタ3を接続し、マスタ3を中心としたスター型接続を複数設けることができる。
【0027】
ネットワークコントローラ2と、マスタ3と、電空レギュレータ1A,1B,1Cとの接続には、3本線または4本線を有する非シールドケーブルが用いられ、ネットワークコントローラ2と電空レギュレータ1A,1B,1Cとの間においては相互に信号の授受が可能となっている。よって、ネットワークコントローラ2から、電空レギュレータ1A,1B,1Cに対して目標圧力値の指示を出すことが可能であるほか、電空レギュレータ1A,1B,1Cが、自身の異常を検知した場合には、ネットワークコントローラ2に異常が発生していることを通知したり、その通知に対して、ネットワークコントローラ2が、電空レギュレータ1A,1B,1Cに記憶されている動作状態(例えば、電空レギュレータ1A,1B,1Cに備えられた給気用制御弁12と排気用制御弁13の動作状態を指す。詳細は後述する。)の問い合わせをしたりすることが可能である。
【0028】
従来のネットワークコントローラと電空レギュレータの接続においては、ネットワークコントローラから電空レギュレータへ信号を伝達するケーブルと、電空レギュレータからネットワークコントローラへ信号を伝達するケーブルとを別々に接続する必要があったが、IO-Linkにおいては、上記のように3本線または4本線の非シールドケーブルが用いられるため、1本のケーブルで、ネットワークコントローラ2と、電空レギュレータ1Aまたは電空レギュレータ1Bまたは電空レギュレータ1Cと、の間の信号の授受を相互に行うことが可能となる。よって、工場レイアウトを単純化することが可能となる。
【0029】
ネットワークコントローラ2は、図示しないCPU、ROM、RAMを有しており、CPUは、ROMに記憶された電空レギュレータ1A,1B,1Cの制御を行うためのプログラムに従って、RAMに一時的にデータを記憶させながら、電空レギュレータ1A,1B,1Cの制御を行う。ネットワークコントローラ2が行う電空レギュレータ1A,1B,1Cの制御とは、電空レギュレータ1A,1B,1Cに対して目標圧力値の指示を行うなど、電空レギュレータ1A,1B,1Cにおける圧力制御を実行することや、電空レギュレータ1A,1B,1Cにおいて異常が検知された際に、電空レギュレータ1A,1B,1Cに記憶されている動作状態の問い合わせを行うことなどを指す。
【0030】
マスタ3は、信号を入出力するユニットであり、マスタ3により、ネットワークコントローラ2と複数の電空レギュレータ1A,1B,1Cとは、個別にケーブル接続することなく、相互に信号を授受することができるため、ネットワークコントローラ2と電空レギュレータ1A,1B,1Cとの距離が離れていても、配線コストを削減することが可能である。
【0031】
ここで、電空レギュレータ1A,1B,1Cは、全て同一の電空レギュレータであり、以後、単に電空レギュレータ1とする。
電空レギュレータ1は、例えば、半導体製造装置のウエハに薬液を吐出するディスペンサ装置に使用される流体制御機器であり、
図2に示すように、制御回路18(制御部の一例)と、制御回路18により制御される給気用制御弁12および排気用制御弁13と、給気用制御弁12および排気用制御弁13により動作される主弁部14と、制御流体を入力する入力ポート11と、制御流体を出力する出力ポート17と、からなる。
【0032】
入力ポート11と、出力ポート17とは、主弁部14に連通している。入力ポート11は、制御流体の供給源に接続されており、制御流体(例えばエア)の供給がされる。主弁部14は図示しない弁体と弁座を備えており、該弁体と該弁座が当接離間することで制御流体の出力圧力値を調整する。そして、出力ポート17は、例えばディスペンサ装置のシリンジに接続され、出力圧力値に制御された制御流体をシリンジに出力する。出力圧力値とは、ネットワークコントローラ2から指示される目標圧力値に基づいて制御される値である。
【0033】
給気用制御弁12は、入力流路21を介して入力ポート11に接続され、流路24を介して主弁部14のパイロット室(図示せず)に接続されている。給気用制御弁12は、パイロット室へ給気を行うことで、主弁部14を動作させ、入力ポート11に入力される制御流体の、出力ポート17における出力圧力値を制御する。出力流路22には、圧力センサ16が配設されており、圧力センサ16により出力ポート17における制御流体の出力圧力値を検出する。
【0034】
排気流路23は、給気用制御弁12と主弁部14との間で流路24から分岐し、大気に開放された排気ポート15に接続されている。排気流路23には、排気用制御弁13が配設されている。また、排気用制御弁13には、排気ポート15が連通しており、排気用制御弁13は、主弁部14のパイロット室から流路24を介して排気ポート15に排気する制御流体を制御する。
【0035】
制御回路18は、給気用制御弁12と排気用制御弁13と圧力センサ16とに、それぞれ電気的に接続されている。制御回路18は、ネットワークコントローラ2にマスタ3を介して接続されており、ネットワークコントローラ2から、出力圧力値の目標値である目標圧力値の指示を受ける。制御回路18は、ネットワークコントローラ2から指示された目標圧力値に基づいて、給気用制御弁12または排気用制御弁13の開閉を制御し、主弁部14を動作させることで、入力ポート11に入力される制御流体の、出力ポート17における出力圧力値を調整する。
【0036】
また、制御回路18は、給気用制御弁12と排気用制御弁13の動作状態を監視する監視プログラムを記憶しており、給気用制御弁12と排気用制御弁13が、長時間に渡って高Duty比状態となる過剰動作状態になった場合や、異常が生じた場合に、それらを検知し、ネットワークコントローラ2に通知を行うことができる。高Duty比状態と、過剰動作状態についての詳細は後述する。
【0037】
さらにまた、制御回路18は記憶部181を備えており、給気用制御弁12と排気用制御弁13の動作状態を記憶する。そして、ネットワークコントローラ2の求めに応じて、記憶されている給気用制御弁12と排気用制御弁13の動作状態を、ネットワークコントローラ2に伝達する。ここで、記憶される動作状態とは、給気用制御弁12および排気用制御弁13が、高Duty比状態となった回数と、高Duty比状態であった時間の長さを指す。
【0038】
このような構成を有する電空レギュレータ1は、次のように動作する。
電空レギュレータ1は、ネットワークコントローラ2から目標圧力値を入力されると、制御回路18が、圧力センサ16が検出した出力圧力値を検出して目標圧力値と比較する。そして、制御回路18は、出力圧力値と目標圧力値との圧力差に基づいて給気用制御弁12と排気用制御弁13の開閉を制御する。給気用制御弁12と排気用制御弁13の開閉制御により、主弁部14のパイロット室に圧力変動が生じ、主弁部14の弁体を動作させる。これにより、電空レギュレータ1は、入力ポート11に入力された制御流体の出力ポート17における出力圧力値を、目標圧力値に達するよう調整し、出力ポート17から図示しないシリンジへ制御流体を供給する。
【0039】
制御回路18が行う、給気用制御弁12と排気用制御弁13の開閉の制御は、PWM駆動により行われる。PWM駆動とは、給気用制御弁12または排気用制御弁13の開弁動作がオンとなる周期T(
図3参照)を一定とし、開弁動作がオンとなっている時間(パルス幅Pw1,Pw2,Pw3,Pw4,Pw5,Pw6(
図3参照))を変化させる方式であり、周期Tとパルス幅Pw1,Pw2,Pw3,Pw4,Pw5,Pw6の比であるDuty比を制御することで、給気用制御弁12と排気用制御弁13の開閉の制御を行う。
【0040】
図3に示すグラフは、目標圧力値を0からP1まで変動させた場合の、PWM駆動と、出力圧力値Pと、目標圧力値Ptとの関係を表したものである。
図3上段のグラフは、出力圧力値の変動および目標圧力値の変動を表すグラフであり、波形Pが出力圧力値を表し、波形Ptが目標圧力値を表す。そして、
図3中段のグラフは、給気用制御弁12(図中では便宜上、給気弁と表記している)のPWM駆動の状態を表しており、
図3下段のグラフは、排気用制御弁13(図中では便宜上、排気弁と表記している)のPWM駆動の状態を表している。
【0041】
時点t0から時点t1においては、目標圧力値(波形Pt)が0であり、出力圧力値(波形P)も0で平衡状態にある。このとき、給気用制御弁12と排気用制御弁13は動作していない。
【0042】
このような状態の電空レギュレータ1に対し、時点t1において、目標圧力値(波形Pt)がP1に上昇している通り、出力圧力値(波形P)をP1とするよう目標圧力値(波形Pt)が制御回路18に入力される。すると、給気用制御弁12の開弁動作がオンとなり、まず全開状態となる。これにより、主弁部14が動作され、出力圧力値(波形P)が上昇を始める。この段階では、給気用制御弁12は動作がオンの状態が続いているため、動作状態としては安定しており、給気用制御弁12に対する負荷が大きくない。
【0043】
時点t1からある一定の時間が経過し、時点t2からは出力圧力値(波形P)をP1に向けて微妙な調整が必要となるため、給気用制御弁12の開弁動作のオンとオフが繰り返されるようになる。給気用制御弁12の開弁動作がオンとなる周期Tに対して、オンとなっている時間(パルス幅Pw1,Pw2)が比較的長い状態、即ちDuty比が大きい状態であるため、給気用制御弁12の動作状態は、高Duty比状態にあるといえる。このような動作により、出力圧力値(波形P)は徐々にP1に近づいている。
【0044】
給気用制御弁12の高Duty比状態は、出力圧力値(波形P)がP1に近づく時点t3まで続けられる。その後、出力圧力値(波形P)がP1に達すると(時点t4)、出力圧力値(波形P)は平衡状態となる。時点t3以降は、給気用制御弁12の動作は、オンとなる周期Tが一定なのに対して、パルス幅Pw3が小さくなるため、Duty比が小さくなり、給気用制御弁12に対する負荷が小さくなる。
【0045】
次に、時点t5において、目標圧力値(波形Pt)が0となっている通り、出力圧力値(波形P)を0とするよう目標圧力値(波形Pt)が入力される。すると、排気用制御弁13の開弁動作がオンとなり、まず全開状態となる。これにより、主弁部14が動作され、出力圧力値(波形P)が下降を始める。この段階では、排気用制御弁13は動作がオンの状態が続いているため、動作状態としては安定しており、排気用制御弁13に対する負荷が大きくない。
【0046】
時点t5からある一定の時間が経過し、時点t6からは出力圧力値(波形P)を0に向けて微妙な調整が必要となるため、排気用制御弁13の開弁動作のオンとオフが繰り返されるようになる。排気用制御弁13の開弁動作がオンとなる周期Tに対して、オンとなっている時間(パルス幅Pw4,Pw5)が比較的長い状態、即ちDuty比が大きい状態であるため、排気用制御弁13の動作状態は、高Duty比状態にあるといえる。このような動作により、出力圧力値(波形P)は徐々に0に近づいている。
【0047】
排気用制御弁13の高Duty比状態は、出力圧力値(波形P)が0に近づく時点t7まで続けられる。その後、出力圧力値(波形P)が0となると、出力圧力値(波形P)は平衡状態となる。時点t7以降は、排気用制御弁13の動作は、オンとなる周期Tが一定なのに対して、パルス幅Pw6が小さくなるため、Duty比が小さくなり、排気用制御弁13に対する負荷が小さくなる。
【0048】
以上のように、電空レギュレータ1が制御流体の圧力制御を行うにおいて、給気用制御弁12および排気用制御弁13が高Duty比状態となることは避けられないが、高Duty比状態は、給気用制御弁12および排気用制御弁13に対する負担が大きいため、長時間に渡って高Duty比状態が行われる過剰動作状態が繰り返されると、電空レギュレータ1の使用開始から短期間で、給気用制御弁12や排気用制御弁13に、異常が生じるおそれがある。
【0049】
例えば、給気用制御弁12が不必要な過剰動作状態になると想定されるのは、電空レギュレータ1の入力ポート11に制御流体を供給していないにも関わらず、電空レギュレータ1が動作している場合などが考えられる。この場合、入力ポート11に制御流体が供給されていないために、出力ポート17における出力圧力値が目標圧力値に達することはないにも関わらず、給気用制御弁12が出力圧力値を目標圧力値に近づけようと長時間に渡り高Duty比状態で動作し続けてしまう。そのため、給気用制御弁12が過剰動作状態となってしまうのである。一方で、排気用制御弁13が過剰動作状態になると想定されるのは、電空レギュレータ1の出力ポート17側で背圧がかかり続ける場合である。この場合、出力圧力値を低減させようとして、排気用制御弁13が長時間に渡り高Duty比状態で動作し続けてしまうため、排気用制御弁13が過剰動作状態となってしまうのである。
【0050】
したがって、短期間で給気用制御弁12や排気用制御弁13に異常が生じることを防止するため、給気用制御弁12や排気用制御弁13が過剰動作状態となっているかどうか、監視が必要である。そのような中、出願人は、給気用制御弁12および排気用制御弁13の動作状態と、出力圧力値と目標圧力値との圧力差と、の間に一定の関係性を見出した。そこで、本実施形態に係る電空レギュレータ1の制御回路18は、給気用制御弁12および排気用制御弁13の動作状態を監視する監視プログラムにより、出力圧力値と、目標圧力値との圧力差に基づき給気用制御弁12および排気用制御弁13の動作状態を監視するものとしている。
【0051】
どのようにして動作状態を監視するのか、以下に具体的に説明する。
図3に示す出力圧力値(波形P)から目標圧力値(波形Pt)を減ずることで圧力差を求めた場合、当該圧力差の時間経過に伴う変動を表したのが
図4のグラフ中の波形Pdである。
【0052】
図3において、時点t1から時点t4までは、出力圧力値(波形P)が目標圧力値(波形Pt)よりも小さく、時点t4から時点t5の間では、出力圧力値(波形P)と目標圧力値(波形Pt)が略同一となっているため、給気用制御弁12が稼働している間(時点t1から時点t5まで)の圧力差(波形Pd)は、
図4に示すように0以下となっている。
【0053】
そして、給気用制御弁12が稼働している時点t1から時点t5までの間において、時点t1から時点t2における給気用制御弁12は、上述の通り安定状態となっており、この間の圧力差(波形Pd)は、Pd5~Pd6の範囲A3内にあることが分かる。
【0054】
また、時点t2から時点t3における給気用制御弁12は、上述の通り、Duty比が大きい高Duty比状態となっており、この間の圧力差(波形Pd)は、Pd4~Pd5の範囲A2内にあることが分かる。
【0055】
さらにまた、時点t3から時点t5における給気用制御弁12は、上述の通り、Duty比が小さい負荷の小さい状態となっており、この間の圧力差(波形Pd)は、0~Pd4の範囲A1内にあることが分かる。
【0056】
したがって、圧力差(波形Pd)の値が範囲A2内にあるときは、給気用制御弁12が高Duty比状態にあることを示すことになる。
【0057】
一方、
図3において、時点t5から時点t8までは、出力圧力値(波形P)が目標圧力値(波形Pt)よりも大きく、時点t8以降は、出力圧力値(波形P)と目標圧力値(波形Pt)が略同一となっているため、排気用制御弁13が稼働している間(時点t5以降)は、圧力差(波形Pd)は、
図4に示すように0以上となっている。
【0058】
そして、排気用制御弁13が稼働している時点t5以降において、時点t5から時点t6における排気用制御弁13は、上述の通り安定状態となっており、この間の圧力差(波形Pd)は、Pd2~Pd3の範囲A6内にあることが分かる。
【0059】
また、時点t6から時点t7における排気用制御弁13は、上述の通り、Duty比が大きい高Duty比状態となっており、この間の圧力差(波形Pd)は、Pd1~Pd2の範囲A5内にあることが分かる。
【0060】
さらにまた、時点t8以降における排気用制御弁13は、上述の通り、Duty比が小さい負荷の小さい状態となっており、この間の圧力差(波形Pd)は、0~Pd1の範囲A4内にあることが分かる。
【0061】
したがって、圧力差(波形Pd)の値が範囲A5内にあるときは、排気用制御弁13が高Duty比状態にあることを示すことになる。
【0062】
以上のように、圧力差(波形Pd)と、給気用制御弁12および排気用制御弁13の動作状態の間に一定の関係性を見出すことができるため、本実施形態に係る電空レギュレータ1の制御回路18は、出力圧力値(波形P)から目標圧力値(波形Pt)を減ずることで算出される圧力差(波形Pd)が、正の値であり、範囲A5にあるときに、排気用制御弁13が、高Duty比状態にあると判断し、圧力差が、負の値であり、範囲A2内にあるときに、給気用制御弁12が高Duty比状態にあると判断するものとしている。
【0063】
そして、給気用制御弁12または排気用制御弁13が高Duty比状態にあると判断したとき、その高Duty比状態が継続される時間を監視し、所定の時間を超えて高Duty比状態にある場合に、給気用制御弁12または排気用制御弁13が過剰動作状態にあると判断するものとしている。なお、所定の時間とは、
図3中の、時点t2から時点t3の間と、時点t6から時点t7の間のように、電空レギュレータ1を動作させるにおいて避けることができない高Duty比状態が継続される時間よりも長い時間であり、電空レギュレータ1の仕様により適宜設定されるものである。
【0064】
また、制御回路18が備える記憶部181は、給気用制御弁12および排気用制御弁13が、高Duty比状態となった回数と、高Duty比状態であった時間の長さを含む動作状態を記憶する。よって、電空レギュレータ1は、電空レギュレータ1に異常が起きたことを通知するだけでなく、記憶された動作状態をネットワークコントローラ2に通知することが可能である。例えば、異常が起きたことの通知を受けたネットワークコントローラ2が、具体的な動作状態の問い合わせを制御回路18にし、その回答として、記憶部181に記憶された動作状態をネットワークコントローラ2に伝達することができる。
【0065】
伝達された動作状態を保管しておけば、異常が生じた電空レギュレータ1の、高Duty比状態となった回数と、高Duty比状態であった時間の長さをビッグデータとすることが可能であり、高Duty比状態となった回数と高Duty比状態であった時間の長さによって、電空レギュレータ1の寿命をある程度予測することが可能となる。寿命予測が可能となれば、電空レギュレータ1の寿命による予期せぬ異常発生を防止することができる。電空レギュレータ1が取り付けられている半導体製造装置の稼働を、電空レギュレータ1の交換のために予期せず停止させてしまうおそれを防止でき、半導体の生産効率の低下を防ぐことが可能である。
【0066】
また、上記のように寿命を予測することができれば、寿命が近くなるまで電空レギュレータ1を使用することができ、交換頻度を抑えることができるため、コストの低減が可能である。
【0067】
以上説明したように、本実施形態の電空レギュレータ1によれば、
(1)主弁部14を動作させる給気用制御弁12および排気用制御弁13と、給気用制御弁12および排気用制御弁13を制御する制御部(制御回路18)と、を備える電空レギュレータ1であって、制御部(制御回路18)は、制御装置(ネットワークコントローラ2)から指示される目標圧力値に基づいて、給気用制御弁12または排気用制御弁13を制御し、主弁部14を動作させることで、制御流体の出力圧力値を調整する電空レギュレータ1において、制御部(制御回路18)は、出力圧力値と、目標圧力値と、の圧力差に基づき給気用制御弁12および排気用制御弁13の動作状態を監視すること、を特徴とするので、給気用制御弁12および排気用制御弁13を制御する制御部(制御回路18)が、出力圧力値と、目標圧力値と、の圧力差に基づき給気用制御弁12および排気用制御弁13の動作状態を監視することが可能であるため、給気用制御弁12および排気用制御弁13において、不必要な高Duty比が行われていたとしても、作業者はそれに気付くことができ、不必要な高Duty比が頻繁に繰り返されてしまうことを防ぐことができる。不必要な高Duty比が頻繁に繰り返されてしまうことを防ぐことができれば、電空レギュレータ1の寿命の低減を防ぐことが可能であるため、電空レギュレータ1の交換が高頻度となることを防ぐことにつながる。電空レギュレータ1の交換が高頻度となることを防ぐことができれば、電空レギュレータ1が取り付けられている装置(例えば半導体製造装置)を、電空レギュレータ1の交換のために稼働を停止させる頻度を抑えることができ、生産効率(例えば半導体の生産効率)の低下を防ぐことができる。
【0068】
(2)(1)に記載の電空レギュレータ1において、圧力差は、出力圧力値から目標圧力値を減ずることで算出されること、圧力差が、正の値であり、第1の所定範囲内A2にあるときに、制御部(制御回路18)は、排気用制御弁13が、開弁動作がオンとなる周期と開弁動作がオンとなっている時間との比であるDuty比が大きい高Duty比状態にあると判断すること、圧力差が、負の値であり、第2の所定範囲内A4にあるときに、制御部(制御回路18)は、給気用制御弁12が、高Duty比状態にあると判断すること、所定の時間以上、排気用制御弁13が高Duty比状態であるとき、制御部(制御回路18)は、排気用制御弁13が、過剰動作状態にあると判断すること、所定の時間以上、給気用制御弁12が高Duty比状態であるとき、制御部(制御回路18)は、給気用制御弁12が、過剰動作状態にあると判断すること、を特徴とするので、給気用制御弁12と排気用制御弁13のどちらかが高Duty比状態になった場合に、圧力差の値によって、給気用制御弁12と排気用制御弁13のどちらが高Duty比状態にあるのか監視が容易となる。
【0069】
例えば、給気用制御弁12が過剰動作状態になると想定されるのは、電空レギュレータ1の入力ポート11に制御流体を供給していないにも関わらず、電空レギュレータ1が動作している場合などが考えられる。入力ポート11に制御流体が供給されていないため、出力ポート17における出力圧力値が目標圧力値に達することがないにも関わらず、給気用制御弁12が出力圧力値を目標圧力値に近づけようと長時間に渡り高Duty比状態で動作し続けてしまう。そのため、給気用制御弁12が過剰動作状態となってしまうのである。一方で、排気用制御弁13が過剰動作状態になると想定されるのは、電空レギュレータ1の出力ポート17側で背圧がかかり続ける場合である。この場合、出力圧力値を低減させようとして、排気用制御弁13が長時間に渡り高Duty比状態で動作し続けてしまうため、排気用制御弁13が過剰動作状態となってしまうのである。給気用制御弁12と排気用制御弁13のどちらが過剰動作状態にあるのか監視が容易となれば、作業者は、上記のような過剰動作状態の原因に対して対策を立てるのが容易となる。よって、電空レギュレータ1の寿命の低減を防ぐことが可能となる。
【0070】
(3)(2)に記載の電空レギュレータ1において、制御部(制御回路18)は記憶部181を備えること、記憶部181は、給気用制御弁12および排気用制御弁13が、高Duty比状態となった回数と、高Duty比状態であった時間の長さと、を少なくとも含む、給気用制御弁12および排気用制御弁13の動作状態を記憶すること、を特徴とするので、記憶部181に、高Duty比状態となった回数と、高Duty比状態であった時間の長さを少なくとも含む、給気用制御弁12と排気用制御弁13の動作状態が記憶されているため、当該動作状態に関する情報を蓄積することでビッグデータとすることが可能であり、当該ビッグデータにより、どの程度高Duty比状態が繰り返されれば電空レギュレータ1の寿命となるのか、ある程度予測することが可能となる。寿命の予測が可能となれば、電空レギュレータ1の寿命による予期せぬ異常発生を防止することができる。電空レギュレータ1の寿命による予期せぬ異常発生を防止することができれば、電空レギュレータ1が取り付けられている装置(例えば半導体製造装置)の稼働を、電空レギュレータ1の交換のために予期せず停止させてしまうおそれを防止でき、生産効率(例えば半導体の生産効率)の低下を防ぐことが可能である。
【0071】
また、上記のように寿命を予測することができれば、寿命が近くなるまで電空レギュレータ1を使用することができ、交換頻度を抑えることができるため、コストの低減が可能である。
【0072】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載の電空レギュレータ1において、電空レギュレータ1は、マスタ3を介して制御装置(ネットワークコントローラ2)と接続されていること、複数の電空レギュレータ1が、単一のマスタ3を中心としたスター型接続により、マスタ3と接続され、フィールドネットワークを構成していること、を特徴とするので、複数の電空レギュレータ1の給気用制御弁12および排気用制御弁13の動作状態を容易に監視することができ、電空レギュレータ1の寿命の低減を防ぐことが可能である。
【0073】
複数の電空レギュレータ1が、単一のマスタ3を中心としたスター型接続により、マスタ3と接続され、フィールドネットワークを構成しているため、複数の電空レギュレータ1において制御部(制御回路18)が監視する給気用制御弁12および排気用制御弁13の動作状態に関する情報をマスタ3で集約して、制御装置(ネットワークコントローラ2)に伝達可能である。よって、複数の電空レギュレータ1の給気用制御弁12および排気用制御弁13の動作状態を、容易に、一括して管理することができる。作業者は、複数の電空レギュレータ1における給気用制御弁12および排気用制御弁13が、高Duty比状態となっているか否か、容易に一括して知ることができ、複数の電空レギュレータ1において不必要な高Duty比状態が頻繁に繰り返されてしまうことを防ぐことができる。これにより、複数の電空レギュレータ1の寿命の低減を防ぐことが可能である。
【0074】
ここで、フィールドネットワークとは、例えばIO-Link(登録商標)のことを指す。従来の制御装置と電空レギュレータの接続においては、制御装置から電空レギュレータへ信号を伝達するケーブルと、電空レギュレータから制御装置へ信号を伝達するケーブルとを別々に接続する必要があったが、IO-Linkにおいては、マスタ3と電空レギュレータ1の間の接続は、3本線または4本線の非シールドケーブルが用いられるため、1本のケーブルで、マスタ3と電空レギュレータ1との間の信号の授受を相互に行うことが可能となる。単一のマスタ3と、複数の電空レギュレータ1の制御部(制御回路18)との間は、それぞれ1本ずつのケーブルを接続すれば足りるため、工場レイアウトを単純化することが可能となる。
【0075】
なお、上記の実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。
例えば、上記実施形態においては、電空レギュレータ1を半導体製造装置のディスペンサ装置に使用される流体制御機器であることとしているが、これに限定されるものでなく、その他の空気圧制御機器に使用することが可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 電空レギュレータ
2 ネットワークコントローラ(制御装置の一例)
11 入力ポート
12 給気用制御弁
13 排気用制御弁
14 主弁部
17 出力ポート
18 制御回路(制御部の一例)