(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20221031BHJP
【FI】
E02F9/00 J
(21)【出願番号】P 2019171414
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2021-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒坂 尚生
【審査官】山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】特許第5301480(JP,B2)
【文献】特開平10-281224(JP,A)
【文献】特開昭61-116190(JP,A)
【文献】特開2013-204365(JP,A)
【文献】実開昭53-105918(JP,U)
【文献】実開昭49-007526(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に取り付けられた作業装置と、
前記作業装置を駆動する油圧シリンダと、
前記油圧シリンダに供給される作動油の流れを制御する制御弁装置と、
前記油圧シリンダと前記制御弁装置とを接続する油圧ホースと、
前記油圧ホースを前記制御弁装置から上方に向かって立ち上げた状態で前記車体に固定させる一対のクランプと、
を備える建設機械において、
前記一対のクランプのうち一方のクランプには、
他方のクランプ側に向かって突出する突起部が形成され、
前記他方のクランプには、
前記一方のクランプ側に開口して前記油圧ホースが嵌合されるホース嵌合凹部と、
前記ホース嵌合凹部の一側方において、前記一方のクランプ側に開口して前記突起部が嵌合される突起嵌合凹部と、
前記ホース嵌合凹部と前記突起嵌合凹部との間において、前記一方のクランプ側に向かって
真っ直ぐ延びて立設する凸部と、が形成され、
前記ホース嵌合凹部は、
開口位置から前記ホース嵌合凹部に嵌合された前記油圧ホースの中心軸を通る位置となる中央位置までの幅寸法が、前記油圧ホースの外径以上に設定され、
前記突起嵌合凹部は、
前記ホース嵌合凹部の前記中央位置よりも奥側まで延びて形成され、
前記突起部は、
前記突起嵌合凹部の長さに対応した長さに設定され、
前記凸部は、
前記突起部が前記突起嵌合凹部に嵌合された状態において、前記ホース嵌合凹部の側に向かって弾性変形する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
車体と、
前記車体に取り付けられた作業装置と、
前記作業装置を駆動する油圧シリンダと、
前記油圧シリンダに供給される作動油の流れを制御する制御弁装置と、
前記油圧シリンダと前記制御弁装置とを接続する油圧ホースと、
前記油圧ホースを前記制御弁装置から上方に向かって立ち上げた状態で前記車体に固定させる一対のクランプと、
を備える建設機械において、
前記一対のクランプのうち一方のクランプには、
他方のクランプ側に向かって突出する一対の突起部として第1の突起部および第2の突起部が形成され、
前記他方のクランプには、
前記一方のクランプ側に開口して前記油圧ホースが嵌合されるホース嵌合凹部と、
前記ホース嵌合凹部の一側方において、前記一方のクランプ側に開口して前記第1の突起部が嵌合される第1の突起嵌合凹部と、
前記ホース嵌合凹部の他側方において、前記一方のクランプ側に開口して前記第2の突起部が嵌合される第2の突起嵌合凹部と、
前記ホース嵌合凹部と前記第1の突起嵌合凹部との間において、前記一方のクランプ側に向かって立設する第1の凸部と、
前記ホース嵌合凹部と前記第2の突起嵌合凹部との間において、前記一方の気ランプ側に向かって立設する第2の凸部と、が形成され、
前記第1の突起部における前記第2の突起部との対向面は、前記油圧ホースの伸長方向
に沿った上端側が下端側よりも前記第2の突起部側に張り出して傾斜し、
前記第2の突起部における前記第1の突起部との対向面は、前記油圧ホースの伸長方向
に沿った下端側が上端側よりも前記第1の突起部側に張り出して傾斜し、
前記第1の凸部は、前記第1の突起部が前記第1の突起嵌合凹部に嵌合された状態にお
いて、前記油圧ホースの伸長方向に沿った上端側が下端側よりも前記ホース嵌合凹部の側
に向かって弾性変形し、
前記第2の凸部は、前記第2の突起部が前記第2の突起嵌合凹部に嵌合された状態にお
いて、前記油圧ホースの伸長方向に沿った下端側が上端側よりも前記ホース嵌合凹部の側
に向かって弾性変形する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の建設機械において、
前記突起部は、
基端側から先端側に向かって漸次細くなるくさび形状に形成されている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項1
または2に記載の建設機械において、
前記突起部は、
基端側から先端側に向かって漸次細く形成され、
前記突起嵌合凹部に嵌合された状態で前記凸部に接触する接触面が、弧状に湾曲している
ことを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項1
または2に記載の建設機械において、
前記一方のクランプは、
前記ホース嵌合凹部側に張り出して前記油圧ホースを前記ホース嵌合凹部内に押し付けるホース押付部を有する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項6】
請求項1
または2に記載の建設機械において、
前記一方のクランプには、複数の前記突起部が形成され、
前記他方のクランプには、複数の前記ホース嵌合凹部と、複数の前記突起嵌合凹部と、
複数の前記凸部と、が形成され、
前記一対のクランプは、複数の前記油圧ホースを固定する
ことを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧シリンダによって動作する作業装置を備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械の一例としての油圧ショベルは、自走可能な走行体と、走行体上に旋回可能に設けられた旋回体と、旋回体の前方に取り付けられた作業装置と、を備えている。作業装置は、油圧シリンダのロッドが伸縮することによって駆動されるブーム、アーム、およびバケットを有している。旋回体の旋回フレーム上には、エンジンと、エンジンにより駆動される油圧ポンプと、作動油の流れを制御する制御弁装置と、が搭載されている。油圧ポンプから吐出された作動油は、複数の流路および制御弁装置を介して作業装置の各油圧シリンダに供給される。
【0003】
制御弁装置と作業装置の各油圧シリンダとの間の流路には、作業装置が旋回体に対して俯仰動することを考慮して、可撓性を有する長めの油圧ホースが用いられている。各油圧ホースは、制御弁装置から立ち上がって延び、作業装置に沿って対応する油圧シリンダまで延びている。また、各油圧ホースは、作業装置が動作することにより揺れて周囲の機器等に干渉しないよう、ホース固定具によって互いに束ねられた状態で固定されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、複数の油圧ホースを2列に並べた状態で径方向に挟む第1~第3クランプと、旋回フレームに設けられた取付板との間で第1~第3クランプを挟んで固定するねじ部材と、を備えるホース固定具が開示されている。第1クランプおよび第2クランプにはそれぞれ、油圧ホースが嵌合されるホース嵌合凹部が複数設けられ、第2クランプおよび第3クランプにはそれぞれ、ホース嵌合凹部との間で油圧ホースを保持するホース保持凸部が複数設けられている。これらホース嵌合凹部の大きさやホース保持凸部の突出長さを適宜に設定することで、第1~第3クランプが油圧ホースを保持するホース保持力を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のホース固定具は、例えば、ホース嵌合凹部の幅を油圧ホースの外径よりも小さく設定した場合に、第1~第3クランプのホース保持力は向上するが、油圧ホースをホース嵌合凹部に嵌め込む際により大きな力が必要となり作業性が低下しやすい。また、ホース保持凸部の突出長さを長めに設定した場合においても、油圧ホースをその外径よりも小さい領域内で保持することで第1~第3クランプのホース保持力は向上するが、ねじ部材で固定する際に第1~第3クランプを取付板に向かって押し付ける力がより必要となり作業性を損なうことがある。このように、特許文献1に記載のホース固定具では、第1~第3クランプのホース保持力の向上と、ホース固定具への油圧ホースの組み付け性の向上とが、二律背反となってしまっている。
【0007】
さらに、特許文献1に記載のホース固定具には複数の油圧ホースが固定されるため、油圧ホースを1本、2本、3本・・・と、順にホース嵌合凹部に嵌め込んでいくと、油圧ホースの嵌合に伴って該当するホース嵌合凹部の幅が広くなり、他方で油圧ホースが嵌合されていないホース嵌合凹部の幅が徐々に狭くなり、1本目の油圧ホースよりも2本目の油圧ホースが、2本目の油圧ホースよりも3本目の油圧ホースが、ホース嵌合凹部に嵌め込みづらくなってしまう。
【0008】
そこで、本発明の目的は、ホースクランプのホース保持力を維持しながらも、ホースクランプへの油圧ホースの組み付け性を向上させることが可能な建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、車体と、前記車体に取り付けられた作業装置と、前記作業装置を駆動する油圧シリンダと、前記油圧シリンダに供給される作動油の流れを制御する制御弁装置と、前記油圧シリンダと前記制御弁装置とを接続する油圧ホースと、前記油圧ホースを前記制御弁装置から上方に向かって立ち上げた状態で前記車体に固定させる一対のクランプと、を備える建設機械において、前記一対のクランプのうち一方のクランプには、他方のクランプ側に向かって突出する突起部が形成され、前記他方のクランプには、前記一方のクランプ側に開口して前記油圧ホースが嵌合されるホース嵌合凹部と、前記ホース嵌合凹部の一側方において、前記一方のクランプ側に開口して前記突起部が嵌合される突起嵌合凹部と、前記ホース嵌合凹部と前記突起嵌合凹部との間において、前記一方のクランプ側に向かって真っ直ぐ延びて立設する凸部と、が形成され、前記ホース嵌合凹部は、開口位置から前記ホース嵌合凹部に嵌合された前記油圧ホースの中心軸を通る位置となる中央位置までの幅寸法が、前記油圧ホースの外径以上に設定され、前記突起嵌合凹部は、前記ホース嵌合凹部の前記中央位置よりも奥側まで延びて形成され、前記突起部は、前記突起嵌合凹部の長さに対応した長さに設定され、前記凸部は、前記突起部が前記突起嵌合凹部に嵌合された状態において、前記ホース嵌合凹部の側に向かって弾性変形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ホースクランプのホース保持力を維持しながらも、ホースクランプへの油圧ホースの組み付け性を向上させることができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の各実施形態に係る油圧ショベルの外観を示す側面図である。
【
図2】制御弁装置から2本のアーム用油圧ホース、2本のバケット用油圧ホース、および2本の予備用油圧ホースが立ち上がっている様子を示す図である。
【
図3】第1実施形態に係るホース固定具の上面図であり、ホース固定具が被取付部材に固定される前の状態を示している。
【
図4】第1実施形態に係るホース固定具の上面図であり、第1クランプと第2クランプとが嵌合した状態を示している。
【
図5】第1実施形態に係るホース固定具の上面図であり、ホース固定具が被取付部材に固定された後の状態を示している。
【
図6】第2クランプにおける第1クランプに対向する側の構成を示す斜視図である。
【
図7】第1クランプおよび第2クランプにおける嵌合前後の変化について説明する図であり、(a)は第2突起部および第3突起部が第2突起嵌合凹部および第3突起嵌合凹部にそれぞれ嵌合される前の状態を示し、(b)は第2突起部および第3突起部が第2突起嵌合凹部および第3突起嵌合凹部にそれぞれ嵌合された後の状態を示している。
【
図8】第1実施形態の変形例につき、第1クランプおよび第2クランプにおける嵌合前後の変化について説明する図であり、(a)は第2突起部および第3突起部が第2突起嵌合凹部および第3突起嵌合凹部にそれぞれ嵌合される前の状態を示し、(b)は第2突起部および第3突起部が第2突起嵌合凹部および第3突起嵌合凹部にそれぞれ嵌合された後の状態を示している。
【
図9】第2実施形態に係るホース固定具の第2クランプの構成を示す斜視図である。
【
図10】第2実施形態に係るホース固定具の第2クランプを斜め上方から見た図である。
【
図11】第2実施形態に係るホース固定具の第1クランプおよび第2クランプにおける嵌合前後の変化について説明する図であり、(a)は第2突起部および第3突起部が第2突起嵌合凹部および第3突起嵌合凹部にそれぞれ嵌合される前の状態を示し、(b)は第2突起部および第3突起部が第2突起嵌合凹部および第3突起嵌合凹部にそれぞれ嵌合された後の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る建設機械の一態様として、クローラ式の油圧ショベルについて説明する。
【0013】
<油圧ショベル1の構成>
まず、油圧ショベル1の構成について、
図1および
図2を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の各実施形態に係る油圧ショベル1の外観を示す側面図である。
図2は、制御弁装置5から2本のアーム用油圧ホース45、2本のバケット用油圧ホース46、および2本の予備用油圧ホース47が立ち上がっている様子を示す図である。
【0015】
油圧ショベル1は、走行体2と、走行体2の上方に旋回装置30を介して旋回可能に設けられた旋回体3と、旋回体3の前方に取り付けられて掘削作業等を行うフロント作業装置4と、を備えている。なお、油圧ショベル1の車体は走行体2および旋回体3によって構成され、フロント作業装置4は車体に取り付けられた作業装置の一態様である。
【0016】
走行体2は、クローラ21と、クローラ21を回転駆動させるための走行モータ22と、を有しており、走行モータ22の駆動力によりクローラ21を地面に接触させた状態で回転させて車体を移動させる。なお、走行体2は、
図1ではクローラ式であるが、これに限らず、ホイール式であってもよい。また、クローラ21および走行モータ22はいずれも、走行体2の左右両側にそれぞれ配置されているが、
図1では、左右一側のクローラ21および走行モータ22のみを示している。
【0017】
旋回体3は、旋回フレーム31と、オペレータが搭乗する運転室32と、車体が傾倒しないようにフロント作業装置4とのバランスを保つためのカウンタウェイト33と、エンジンや油圧ポンプ等の各種機器類を内部に収容する機械室34と、を備えている。
【0018】
旋回フレーム31において、運転室32は前部に、カウンタウェイト33は後部に、それぞれ配置されている。油圧ショベル1では、旋回フレーム31の前部において、左右方向の中央部分にフロント作業装置4が配置されており、運転室32はフロント作業装置4の一側に配置されている。また、機械室34は、旋回フレーム31において、フロント作業装置4を挟んで運転室32の逆側からカウンタウェイト33の前側の領域に亘って配置されている。
【0019】
フロント作業装置4は、基端部が旋回フレーム31に回動可能に取り付けられたブーム41と、ブーム41の先端部に回動可能に取り付けられたアーム42と、アーム42の先端部に回動可能に取り付けられたバケット43と、を備えている。
【0020】
また、
図1および
図2に示すように、フロント作業装置4は、旋回フレーム31とブーム41とを連結する一対のブームシリンダ41Aと、ブーム41とアーム42とを連結するアームシリンダ42Aと、アーム42とバケット43とを連結するバケットシリンダ43Aと、を備えている。一対のブームシリンダ41A、アームシリンダ42A、およびバケットシリンダ43Aはそれぞれ、フロント作業装置4を駆動する油圧シリンダの一態様であり、以下の説明では、まとめて「各油圧シリンダ41A,42A,43A」とする場合がある。
【0021】
各油圧シリンダ41A,42A,43Aは、エンジンによって駆動される油圧ポンプから作動油が供給されることにより駆動し、ロッドを伸縮させる。油圧ポンプと各油圧シリンダ41A,42A,43Aとの間には制御弁装置5が設けられており、この制御弁装置5は、油圧ポンプから各油圧シリンダ41A,42A,43Aに供給される作動油の流れ(方向および流量)を制御する。
【0022】
エンジン、油圧ポンプ、および制御弁装置5はいずれも機械室34に搭載されており、機械室内34内において、エンジンおよび油圧ポンプは後側(運転室32とカウンタウェイト33との間の領域)に、制御弁装置5は前側(フロント作業装置4を挟んで運転室32の逆側の領域)に、それぞれ配置されている。なお、
図2では、機械室34を覆うカバー部材を取り外した状態を示している。
【0023】
一対のブームシリンダ41Aはロッドを伸縮させることによりブーム41を旋回体3に対して上下方向に回動(俯仰)させ、アームシリンダ42Aはロッドを伸縮させることによりアーム42をブーム41に対して前後方向に回動させ、バケットシリンダ43Aはロッドを伸縮させることによりバケット43をアーム42に対して前後方向に回動させる。
【0024】
バケット43は、土砂等の荷を掬い上げて所定の位置に荷を下ろすものである。このバケット43は、例えば、木材や岩石、廃棄物等を掴むグラップルや、岩盤を掘削するブレーカ等のアタッチメントに変更することが可能である。これにより、油圧ショベル1は、作業内容に適したアタッチメントを用いて、掘削や破砕等を含む様々な作業を行うことができる。
【0025】
図2に示すように、油圧ポンプから吐出された作動油は、複数の流路を通って各油圧シリンダ41A,42A,43Aに導かれる。なお、複数の流路のうち、制御弁装置5と各油圧シリンダ41A,42A,43Aとの間では、フロント作業装置4が旋回体3に対して俯仰動することを考慮して、可撓性を有する長めの油圧ホースが用いられている。
【0026】
具体的には、制御弁装置5と一対のブームシリンダ41Aとの間は4本のブーム用油圧ホース44により、制御弁装置5とアームシリンダ42Aとの間は2本のアーム用油圧ホース45A,45Bにより、制御弁装置5とバケットシリンダ43Aとの間は2本のバケット用油圧ホース46A,46Bにより、それぞれ接続されている。なお、
図2では、4本のブーム用油圧ホース44のうち、2本のブーム用油圧ホース44のみを示している。
【0027】
また、油圧ショベル1は、バケット43に代えて他のアタッチメントを装着する場合があることから、4本のブーム用油圧ホース44、2本のアーム用油圧ホース45A,45B、および2本のバケット用油圧ホース46A,46Bに加えて、2本の予備用油圧ホース47A,47Bが予め備えられている。
【0028】
4本のブーム用油圧ホース44は、旋回フレーム31の底板に沿うように延び、他方で、2本のアーム用油圧ホース45A,45B、2本のバケット用油圧ホース46A,46B、および2本の予備用油圧ホース47A,47Bはそれぞれ、ブーム41に沿って延びており、制御弁装置5から上方に向かって立ち上がった直線部481と、直線部481から延びて車体後方に向かって円弧を描くように弛ませた湾曲部482と、を含んで構成されている。
【0029】
そして、2本のアーム用油圧ホース45A,45B、2本のバケット用油圧ホース46A,46B、および2本の予備用油圧ホース47A,47Bは、車体の走行時やフロント作業装置4の動作時に揺れて周囲の機器類に干渉しないよう、旋回フレーム31に設けられた被取付部材6にホース固定具7により固定されている。なお、以下の説明において、「2本のアーム用油圧ホース45A,45B、2本のバケット用油圧ホース46A,46B、および2本の予備用油圧ホース47A,47B」を、単に「アーム用油圧ホース45A,45B、バケット用油圧ホース46A,46B、および予備用油圧ホース47A,47B」とする。
【0030】
被取付部材6は、例えば金属板を折り曲げ加工して成され、ブーム41と制御弁装置5との間に立設する立設部61と、立設部61の上端側から制御弁装置5側に向かって延在する天井部62と、を有している。本実施形態では、天井部62は、車体の前方に配置された側が後方に配置された側よりも下方に位置するように、旋回フレーム31の底板に対して傾斜している。
【0031】
ホース固定具7は、アーム用油圧ホース45A,45B、バケット用油圧ホース46A,46B、および予備用油圧ホース47A,47Bそれぞれにおける直線部481の上端部を固定することで、アーム用油圧ホース45A,45B、バケット用油圧ホース46A,46B、および予備用油圧ホース47A,47Bのそれぞれを制御弁装置5から上方に向かって立ち上げた状態で被取付部材6の天井部62に固定する。
【0032】
換言すれば、ブーム41に沿って延びるアーム用油圧ホース45A,45B、バケット用油圧ホース46A,46B、および予備用油圧ホース47A,47Bの計6本の油圧ホースは、ホース固定具7によって互いに束ねられた状態で被取付部材6の天井部62に固定されている。以下、ホース固定具7の具体的な構成について、実施形態ごとに説明する。
【0033】
なお、
図2では、アーム用油圧ホース45A,45B、バケット用油圧ホース46A,46B、および予備用油圧ホース47A,47Bは、車体の前方から後方に向かって、バケット用油圧ホース46A,46B、アーム用油圧ホース45A,45B、予備用油圧ホース47A,47Bの順にそれぞれ配置されているが、これに限らず、油圧ショベル1の仕様に応じて配置箇所を適宜変更することが可能である。
【0034】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係るホース固定具7について、
図3~7を参照して説明する。
【0035】
図3~5はいずれも第1実施形態に係るホース固定具7の上面図であり、
図3はホース固定具7が被取付部材6に固定される前の状態、
図4は第1クランプ71と第2クランプ72とが嵌合した状態、
図5はホース固定具7が被取付部材6に固定された後の状態をそれぞれ示している。
図6は、第2クランプ72における第1クランプ71に対向する側の構成を示す斜視図である。
【0036】
ホース固定具7は、被取付部材6の天井部62に設けられた一対の案内ロッド70A,70Bと、アーム用油圧ホース45A,45B、バケット用油圧ホース46A,46B、および予備用油圧ホース47A,47Bを径方向に挟む第1~第3クランプ71,72,73と、天井部62との間で第1~第3クランプ71,72,73を挟んで固定する固定部材74と、を有する。
【0037】
一対の案内ロッド70A,70Bは、アーム用油圧ホース45A,45B、バケット用油圧ホース46A,46B、および予備用油圧ホース47A,47Bそれぞれにおける直線部481の延伸方向と交差する方向に延びて車体の前後方向に間隔を空けて並んで配置されており、第1~第3クランプ71,72,73が車体の上下方向および前後方向に対して正確に位置するように案内する。また、一対の案内ロッド70A,70Bは、内部がボルト挿通孔となる中空のパイプ状に形成されている。
【0038】
第1~第3クランプ71,72,73はそれぞれ、例えばエチレンプロピレンゴム(EPDM)等の弾性、耐熱性、および耐候性を有するゴムや樹脂によってブロック状に形成されている。第1~第3クランプ71,72,73は、長辺方向が車体の前後方向に沿うように一対の案内ロッド70A,70Bに案内され、奥側となる天井部62側から第1クランプ71、第2クランプ72、第3クランプ73の順に配置される。なお、第1~第3クランプ71,72,73それぞれにおける長辺方向の両端部には、一対の案内ロッド70A,70Bが挿通されるロッド挿通孔が形成されている。
【0039】
第1クランプ71には、第2クランプ72側に開口する第1~第3ホース嵌合凹部711A,711B,711Cが、長辺方向(車体の前後方向)に間隔を空けて並んで形成されている。具体的には、第1ホース嵌合凹部711Aは車体の前側方に、第2ホース嵌合凹部711Bは中央に、第3ホース嵌合凹部711Cは車体の後側方に、それぞれ配置されている。
【0040】
本実施形態では、第1ホース嵌合凹部711Aには一方のバケット用油圧ホース46Aが、第2ホース嵌合凹部711Bには一方のアーム用油圧ホース45Aが、第3ホース嵌合凹部711Cには一方の予備用油圧ホース47Aが、それぞれ嵌合される。
【0041】
また、第1クランプ71には、第2クランプ72側に開口して後述する第1~第3突起部721A,721B,721Cが嵌合される第1~第3突起嵌合凹部712A,712B,712Cが、長辺方向に間隔を空けて並んで形成されている。
【0042】
具体的には、第1突起嵌合凹部712Aは第1ホース嵌合凹部711Aと第2ホース嵌合凹部711Bとの間に、第2突起嵌合凹部712Bは第2ホース嵌合凹部711Bと第3ホース嵌合凹部711Cとの間に、第3突起嵌合凹部712Cは第3ホース嵌合凹部711Cの後側方に、それぞれ配置されている。
【0043】
第1クランプ71では、第1~第3ホース嵌合凹部711A,711B,711Cと第1~第3突起嵌合凹部712A,712B,712Cとが長辺方向に交互に配置されていることにより、それぞれの間には、第2クランプ72側に向かって立設する第1~第5凸部713A,713B,713C,713D,713Eそれぞれが形成されている。
【0044】
具体的には、第1凸部713Aは第1ホース嵌合凹部711Aと第1突起嵌合凹部712Aとの間に、第2凸部713Bは第1突起嵌合凹部712Aと第2ホース嵌合凹部711Bとの間に、第3凸部713Cは第2ホース嵌合凹部711Bと第2突起嵌合凹部712Bとの間に、第4凸部713Dは第2突起嵌合凹部712Bと第3ホース嵌合凹部711Cとの間に、第5凸部713Eは第3ホース嵌合凹部711Cと第3突起嵌合凹部712Cとの間に、それぞれ配置されている。
【0045】
第2クランプ72は、第1クランプ71に対向する側に、第1クランプ71側に向かって突出する第1~第3突起部721A,721B,721Cが、長辺方向に間隔を空けて並んで形成されている。具体的には、第1突起部721Aは車体の前側方に、第2突起部721Bは中央に、第3突起部721Cは車体の後側方に、それぞれ配置されている。
【0046】
図6に示すように、本実施形態では、第1~第3突起部721A,721B,721Cは、第2クランプ72の上下方向に亘って、基端側から先端側に向かって漸次細くなるくさび形状に形成されているが、これに限らず、基端側から先端側まで同一の幅寸法で形成されていてもよい。
【0047】
図4および
図5に示すように、第1クランプ71と第2クランプ72とが嵌合すると、第1突起部721Aは第1突起嵌合凹部712Aに、第2突起部721Bは第2突起嵌合凹部712Bに、第3突起部721Cは第3突起嵌合凹部712Cに、それぞれ嵌合された状態となる。
【0048】
本実施形態では、第2クランプ72は、第1クランプ71に対向する側に、第1ホース嵌合凹部711A側に張り出してバケット用油圧ホース46Aを第1ホース嵌合凹部711A内に押し付ける第1ホース押付部722Aと、第2ホース嵌合凹部711B側に張り出してアーム用油圧ホース45Aを第2ホース嵌合凹部711B内に押し付ける第2ホース押付部722Bと、第3ホース嵌合凹部711C側に張り出して予備用油圧ホース47Aを第3ホース嵌合凹部711C内に押し付ける第3ホース押付部722Cと、を有している。
【0049】
第2クランプ72では、第1~第3突起部721A,721B,721Cと第1~第3ホース押付部722A,722B,722Cとが長辺方向に交互に配置されていることにより、それぞれの間には、第1クランプ71とは反対側(第3クランプ73側)に向かって窪む第1~第5溝部723A,723B,723C,723D,723Eそれぞれが形成されている。
【0050】
具体的には、第1溝部723Aは第1ホース押付部722Aと第1突起部721Aとの間に、第2溝部723Bは第1突起部721Aと第2ホース押付部722Bとの間に、第3溝部723Cは第2ホース押付部722Bと第2突起部721Bとの間に、第4溝部723Dは第2突起部721Bと第3ホース押付部722Cとの間に、第5溝部723Eは第3ホース押付部722Cと第3突起部721Cとの間に、それぞれ配置されている。
【0051】
また、第2クランプ72は、第3クランプ73に対向する側に、第3クランプ73側に開口する第4~第6ホース嵌合凹部724A,724B,724Cが、長辺方向に間隔を空けて並んで形成されている。具体的には、第4ホース嵌合凹部724Aは車体の前側方に、第5ホース嵌合凹部724Bは中央に、第6ホース嵌合凹部724Cは車体の後側方に、それぞれ配置されている。
【0052】
本実施形態では、第4ホース嵌合凹部724Aには他方のバケット用油圧ホース46Bが、第5ホース嵌合凹部724Bには他方のアーム用油圧ホース45Bが、第6ホース嵌合凹部724Cには他方の予備用油圧ホース47Bが、それぞれ嵌合される。
【0053】
そして、第2クランプ72の第3クランプ73に対向する側には、第3クランプ73側に開口して後述する第4~第6突起部731A,731B,731Cが嵌合される第4~第6突起嵌合凹部725A,725B,725Cが、長辺方向に間隔を空けて並んで形成されている。
【0054】
具体的には、第4突起嵌合凹部725Aは第4ホース嵌合凹部724Aと第5ホース嵌合凹部724Bとの間に、第5突起嵌合凹部725Bは第5ホース嵌合凹部724Bと第6ホース嵌合凹部724Cとの間に、第36突起嵌合凹部725Cは第6ホース嵌合凹部724Cの後側方に、それぞれ配置されている。
【0055】
第2クランプ72においても第1クランプ71と同様に、第4~第6ホース嵌合凹部724A,724B,724Cと第4~第6突起嵌合凹部725A,725B,725Cとが長辺方向に交互に配置されていることにより、それぞれの間には、第3クランプ73側に向かって立設する第4~第8凸部726A,726B,726C,726D,726Eそれぞれが形成されている。
【0056】
具体的には、第4凸部726Aは第4ホース嵌合凹部724Aと第4突起嵌合凹部725Aとの間に、第5凸部726Bは第4突起嵌合凹部725Aと第2ホース嵌合凹部724Bとの間に、第6凸部726Cは第2ホース嵌合凹部724Bと第2突起嵌合凹部725Bとの間に、第7凸部726Dは第2突起嵌合凹部725Bと第3ホース嵌合凹部724Cとの間に、第8凸部726Eは第3ホース嵌合凹部724Cと第3突起嵌合凹部725Cとの間に、それぞれ配置されている。
【0057】
第3クランプ73には、第2クランプ72側に向かって突出する第4~第6突起部731A,731B,731Cが、長辺方向に間隔を空けて並んで形成されている。具体的には、第4突起部731Aは車体の前側方に、第5突起部731Bは中央に、第6突起部731Cは車体の後側方に、それぞれ配置されている。
【0058】
図5に示すように、第2クランプ72と第3クランプ73とが嵌合すると、第4突起部731Aは第4突起嵌合凹部725Aに、第5突起部731Bは第5突起嵌合凹部725Bに、第6突起部731Cは第6突起嵌合凹部725Cに、それぞれ嵌合された状態となる。
【0059】
本実施形態では、第3クランプ73は、第2クランプ72と同様に、第4ホース嵌合凹部724A側に張り出してバケット用油圧ホース46Bを第4ホース嵌合凹部724A内に押し付ける第4ホース押付部732Aと、第5ホース嵌合凹部724B側に張り出してアーム用油圧ホース45Bを第5ホース嵌合凹部724B内に押し付ける第5ホース押付部732Bと、第6ホース嵌合凹部724C側に張り出して予備用油圧ホース47Bを第6ホース嵌合凹部724C内に押し付ける第6ホース押付部732Cと、を有している。
【0060】
また、第3クランプ73においても、第4~第6突起部731A,731B,731Cと第4~第6ホース押付部732A,732B,732Cとが長辺方向に交互に配置されていることにより、それぞれの間には、第2クランプ72とは反対側に向かって窪む第6~第10溝部733A,733B,733C,733D,733Eそれぞれが形成されている。
【0061】
具体的には、第6溝部733Aは第4ホース押付部732Aと第4突起部731Aとの間に、第7溝部733Bは第4突起部731Aと第5ホース押付部732Bとの間に、第8溝部733Cは第5ホース押付部732Bと第5突起部731Bとの間に、第9溝部733Dは第5突起部731Bと第6ホース押付部732Cとの間に、第10溝部733Eは第6ホース押付部732Cと第6突起部731Cとの間に、それぞれ配置されている。
【0062】
固定部材74は、一対の固定ボルト74A,74Bと、挟持用ブラケット74Cと、を有する。挟持用ブラケット74Cは、長辺方向が車体の前後方向に沿うように第3クランプ73に対向して配置され、被取付部材6の天井部62との間で第1~第3クランプ71,72,73を挟む。この挟持用ブラケット74Cは、一対の固定ボルト74A,74Bを締め付ける際に、第1~第3クランプ71,72,73の全体を均等に押圧する。挟持用ブラケット74Cには、一対の固定ボルト74A,74Bが貫通する一対の貫通孔が長辺方向の両端部に形成されている。
【0063】
一対の固定ボルト74A,74Bは、挟持用ブラケット74Cに形成された一対の貫通孔および一対の案内ロッド70A,70B内に形成されたボルト挿通孔に挿通された上で、天井部62に取り付けられたナットに締結される。
【0064】
アーム用油圧ホース45A,45B、バケット用油圧ホース46A,46B、および予備用油圧ホース47A,47Bをホース固定具7に組み付ける際には、まず、第1クランプ71に対して、バケット用油圧ホース46Aを第1ホース嵌合凹部711Aに、アーム用油圧ホース45Aを第2ホース嵌合凹部711Bに、予備用油圧ホース47Aを第3ホース嵌合凹部711Cに、それぞれ嵌合させた上で、第2クランプ72を第1クランプ71に嵌合させる(ホース固定具7は、
図3に示す状態から
図4に示す状態となる)。
【0065】
次に、第1クランプ71に嵌合された状態の第2クランプ72に対して、バケット用油圧ホース46Bを第4ホース嵌合凹部724Aに、アーム用油圧ホース45Bを第5ホース嵌合凹部724Bに、予備用油圧ホース47Bを第6ホース嵌合凹部724Cに、それぞれ嵌合させた上で、第3クランプ73を第2クランプ72に嵌合させる。続いて、第3クランプ73に挟持用ブラケット74Cを押し付けながら一対の固定ボルト74A,74Bを締め付ける(ホース固定具7は、
図4に示す状態から
図5に示す状態となる)。
【0066】
これにより、一方のアーム用油圧ホース45A、バケット用油圧ホース46A、および予備用油圧ホース47Aは第1クランプ71と第2クランプ72とに挟まれることにより、他方のアーム用油圧ホース45B、バケット用油圧ホース46B、および予備用油圧ホース47Bは第2クランプ72と第3クランプ73とに挟まれることにより、それぞれ制御弁装置5から上方に向かって立ち上がった状態で被取付部材6(車体)に固定される。
【0067】
次に、第1~第3クランプ71,72,73における嵌合前後の変化によるアーム用油圧ホース45A,45B、バケット用油圧ホース46A,46B、および予備用油圧ホース47A,47Bの保持構造ついて、
図7を参照して説明する。
【0068】
なお、以下では、第1クランプ71および第2クランプ72における嵌合前後の変化と、第2クランプ72および第3クランプ73における嵌合前後の変化とは、同様であるため、第1クランプ71および第2クランプ72における嵌合前後の変化を例に挙げ、さらに、アーム用油圧ホース45A、バケット用油圧ホース46A、および予備用油圧ホース47Aの保持構造はいずれも同様であるため、予備用油圧ホース47Aの保持構造を例に挙げて説明する。後述する第1実施形態の変形例および第2実施形態においても同様とする。
【0069】
図7(a)および
図7(b)は、第1クランプ71および第2クランプ72における嵌合前後の変化について説明する図であり、
図7(a)は第2突起部721Bおよび第3突起部721Cが第2突起嵌合凹部712Bおよび第3突起嵌合凹部712Cにそれぞれ嵌合される前の状態を示し、
図7(b)は第2突起部721Bおよび第3突起部721Cが第2突起嵌合凹部712Bおよび第3突起嵌合凹部712Cにそれぞれ嵌合された後の状態を示している。
【0070】
第1クランプ71と第2クランプ72とが嵌合すると、
図7(b)に示すように、第2突起部721Bが第2突起嵌合凹部712Bに、第3突起部721Cが第3突起嵌合凹部712Cに、それぞれ嵌合され、この状態において第4凸部713Dおよび第5凸部713Eが第3ホース嵌合凹部711C側に向かって弾性変形する。このとき、本実施形態では、第4凸部713Dの先端部が第4溝部723Dに、第5凸部713Eの先端部が第5溝部723Eに、それぞれ嵌合する。
【0071】
図7(a)に示すように、第3ホース嵌合凹部711Cは、その幅寸法を予備用油圧ホース47Aの外径以上となるR1に設定してあり、これにより、予備用油圧ホース47Aを第3ホース嵌合凹部711Cに嵌合させやすくしている。ここで、「第3ホース嵌合凹部711Cの幅寸法」とは、第3ホース嵌合凹部711Cにおける第1クランプ71の長辺方向に沿った幅寸法のうち、第3ホース嵌合凹部711Cに嵌合された予備用油圧ホース47Aの中心軸を通る位置での幅寸法である。
【0072】
したがって、予備用油圧ホース47Aを第3ホース嵌合凹部711Cに嵌合させる際に、第4凸部713Dおよび第5凸部713Eを押し広げながら予備用油圧ホース47Aを第3ホース嵌合凹部711C内に押し込む必要がないため、隣りに配置された第2ホース嵌合凹部711Bの幅が狭くなりにくい。これにより、例えば、第1クランプ71に予備用油圧ホース47A、アーム用油圧ホース45A、バケット用油圧ホース46Aと、順に組み付けていった場合において、アーム用油圧ホース45Aやバケット用油圧ホース46Aが組み付けづらくなるといった事態を解消することができる。
【0073】
第1クランプ71と第2クランプ72とが嵌合すると、第4凸部713Dおよび第5凸部713Eが第3ホース嵌合凹部711C側に向かって弾性変形するため、第3ホース嵌合凹部711Cの幅寸法は、
図7(b)に示すように、R1よりも小さいR2となる。これにより、第3ホース嵌合凹部711C内の予備用油圧ホース47Aは、第4凸部713Dおよび第5凸部713Eからの締付力を受けて、第3ホース嵌合凹部711C内で保持される。
【0074】
このように、第2突起部721Bを第2突起嵌合凹部712Bに、第3突起部721Cを第3突起嵌合凹部712Cに、それぞれ嵌合させて第4凸部713Dおよび第5凸部713Eを第3ホース嵌合凹部711C側に向かって弾性変形させることにより予備用油圧ホース47Aを保持するため、第1クランプ71および第2クランプ72におけるホース保持力を維持しながらも、第1クランプ71への予備用油圧ホース47Aの組み付け性を向上させることができる。
【0075】
本実施形態では、第2突起部721Bおよび第3突起部721Cはそれぞれ、基端側から先端側に向かって漸次細くなっているため(基端側の幅W1>先端側の幅W2)、第4凸部713Dおよび第5凸部713Eはそれぞれ、基端部よりも先端部の方が第3ホース嵌合凹部711C側に向かってより弾性変形しやすくなり、予備用油圧ホース47Aを保持する力が向上する。
【0076】
なお、第2突起部721Bと第2突起嵌合凹部712Bとの間における幅の大小関係、および第3突起部721Cと第3突起嵌合凹部712Cとの間における幅の大小関係については、少なくとも嵌合によって第4凸部713Dおよび第5凸部713Eを第3ホース嵌合凹部711C側に向かって弾性変形させることが可能な幅にそれぞれ設定されている必要がある。
【0077】
また、本実施形態では、第2クランプ72に形成された第3ホース押付部722Cにより、第3ホース嵌合凹部711C内において予備用油圧ホース47Aが嵌合方向にも押し付けられるため、幅方向におけるホース保持力に嵌合方向におけるホース保持力が加わり、第1クランプ71および第2クランプ72におけるホース保持力がさらに向上する。
【0078】
ここで、弾性変形した第4凸部713Dおよび第5凸部713Eは第4溝部723Dおよび第5溝部723Eにそれぞれ嵌合されることから、第3ホース押付部722Cにおける第2クランプ72の長辺方向に沿った幅Dは、
図7(a)に示すように、第4溝部723Dおよび第5溝部723Eが確保されるよう、第3ホース嵌合凹部711Cの幅寸法R1よりも小さく設定されている(D<R1)。
【0079】
なお、幅方向におけるホース保持力のみで予備用油圧ホース47Aを十分に保持することが可能である場合には、第2クランプ72に第3ホース押付部722Cが形成されていなくともよい。
【0080】
(変形例)
次に、第1実施形態の変形例に係るホース固定具7について、
図8を参照して説明する。なお、
図8において、第1実施形態に係るホース固定具7について説明したものと共通する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。後述する第2実施形態においても同様とする。
【0081】
図8(a)および
図8(b)は、第1実施形態の変形例につき、第1クランプ71および第2クランプ75における嵌合前後の変化について説明する図であり、
図8(a)は第2突起部751Bおよび第3突起部751Cが第2突起嵌合凹部712Bおよび第3突起嵌合凹部712Cにそれぞれ嵌合される前の状態を示し、
図8(b)は第2突起部751Bおよび第3突起部751Cが第2突起嵌合凹部712Bおよび第3突起嵌合凹部712Cにそれぞれ嵌合された後の状態を示している。
【0082】
本変形例に係る第2クランプ75は、第2突起部751Bおよび第3突起部751Cの形状が第1実施形態に係る第2クランプ75の第2突起部721Bおよび第3突起部721Cの形状と異なる。
【0083】
具体的には、
図8(a)に示すように、第2突起部751Bは、基端側から先端側に向かって漸次細く形成され、第3突起部751Cに対向する対向面752B、すなわち第2突起部751Bが第2突起嵌合凹部712Bに嵌合された状態で第4凸部713Dに接触する接触面が、弧状に湾曲して形成されている。
【0084】
同様に、第3突起部751Cは、基端側から先端側に向かって漸次細く形成され、第2突起部751Bに対向する対向面752C、すなわち第3突起部751Cが第3突起嵌合凹部712Cに嵌合された状態で第5凸部713Eに接触する接触面が、弧状に湾曲して形成されている。
【0085】
なお、第2突起部751Bの対向面752Bおよび第3突起部751Cの対向面752Cは第3ホース押付部753Cから連続して形成されていることから、本変形例に係る第2クランプ75は、第1実施形態に係る第2クランプ72と異なり、溝部を有していない。
【0086】
図8(b)に示すように、第1クランプ71と第2クランプ75とが嵌合すると、第4凸部713Dは第2突起部751Bの対向面752Bに沿いながら、第5凸部713Eは第3突起部751Cの対向面752Cに沿いながら、それぞれ第3ホース嵌合凹部711C側に向かって円弧状に弾性変形する。
【0087】
図8(b)では、第4凸部713Dの先端および第5凸部713Eの先端がそれぞれ、第3ホース押付部753Cに接触しているが、これに限らず、例えば第2クランプ75が第3ホース押付部753Cを有していない場合には、第4凸部713Dの先端と第5凸部713Eの先端との間に隙間が形成されていてもよい。
【0088】
本変形例においても、第1実施形態における作用および効果と同様の作用および効果が得られる。さらに、第4凸部713Dおよび第5凸部713Eが予備用油圧ホース47Aの外周に沿って円弧状に弾性変形するため、予備用油圧ホース47Aを保持する力をより向上させることができる。
【0089】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係るホース固定具7について、
図9~11を参照して説明する。
【0090】
図9は、第2実施形態に係るホース固定具7の第2クランプ76の構成を示す斜視図である。
図10は、第2実施形態に係るホース固定具7の第2クランプ76を斜め上方から見た図である。
図11は、第2実施形態に係るホース固定具7の第1クランプ71および第2クランプ76における嵌合前後の変化について説明する図であり、
図11(a)は第2突起部761Bおよび第3突起部761Cが第2突起嵌合凹部712Bおよび第3突起嵌合凹部712Cにそれぞれ嵌合される前の状態を示し、
図11(b)は第2突起部761Bおよび第3突起部761Cが第2突起嵌合凹部712Bおよび第3突起嵌合凹部712Cにそれぞれ嵌合された後の状態を示している。
【0091】
本実施形態に係る第2クランプ76は、第2突起部761Bおよび第3突起部761Cの形状が、第1実施形態に係る第2突起部721Bおよび第3突起部721C、ならびに変形例に係る第2突起部751Bおよび第3突起部751Cの形状と異なる。
【0092】
具体的には、
図9および
図11(a)に示すように、第2突起部761B(第1の突起部に相当)における第3突起部761Cとの対向面762Bは、上端側が下端側よりも第3突起部761C側に張り出して傾斜している。他方で、
図10および
図11(a)に示すように、第3突起部761C(第2の突起部に相当)における第2突起部761Bとの対向面762Cは、下端側が上端側よりも第2突起部761B側に張り出して傾斜している。
【0093】
第2突起部761Bの対向面762Bの傾斜に伴い、第3ホース押付部763Cにおける第2突起部761Bとの対向面は、下端側が上端側よりも第2突起部761B側に張り出して傾斜している。また、第3突起部761Cの対向面762Cの傾斜に伴い、第3ホース押付部763Cにおける第3突起部761Cとの対向面は、上端側が下端側よりも第3突起部761C側に張り出して傾斜している。
【0094】
図11(b)に示すように、第1クランプ71と第2クランプ76とが嵌合すると、第4凸部713D(第1の凸部に相当)は、第2突起部761Bが第2突起嵌合凹部712B(第1の突起嵌合凹部に相当)に嵌合された状態において、上端側が下端側よりも第3ホース嵌合凹部711C側に向かって弾性変形する。また、第5凸部713E(第2の凸部に相当)は、第3突起部761Cが第3突起嵌合凹部712C(第2の突起嵌合凹部に相当)に嵌合された状態において、下端側が上端側よりも第3ホース嵌合凹部711C側に向かって弾性変形する。
【0095】
例えば、油圧ショベル1の車体レイアウトや油圧ホースの仕様等により、ホース固定具7に対して油圧ホースを斜めに組み付ける場合がある。そのような場合であっても、本実施形態によれば、第1クランプ71と第2クランプ76との嵌合によって予備用油圧ホース47Aを傾斜させることができるため、作業員は、予備用油圧ホース47Aを斜めに押さえながら第1クランプ71に組み付ける必要がなく、予備用油圧ホース47Aを容易に組み付けることが可能である。
【0096】
また、本実施形態によっても、第1実施形態における作用および効果と同様の作用および効果が得られる。
【0097】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、本実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、本実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。またさらに、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0098】
例えば、上記実施形態では、第2ホース嵌合凹部711B、第3ホース嵌合凹部711C、第5ホース嵌合凹部724B、および第6ホース嵌合凹部724Cは、両側方に突起嵌合凹部が形成されていたが、これに限らず、第1ホース嵌合凹部711Aや第4ホース嵌合凹部724Aのように少なくとも一側方に突起嵌合凹部が形成されていればよい。
【0099】
また、上記実施形態では、建設機械の一態様として油圧ショベル1について説明したが、これに限らず、例えばホイールローダやダンプトラック等の他の建設機械についても本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0100】
1:油圧ショベル(建設機械)
2:走行体(車体)
3:旋回体(車体)
4:フロント作業装置(作業装置)
5:制御弁装置
45A,45B:アーム用油圧ホース(油圧ホース)
46A,46B:バケット用油圧ホース(油圧ホース)
47A,47B:予備用油圧ホース(油圧ホース)
71:第1クランプ
72,75,76:第2クランプ
73:第3クランプ
711A~711C,724A~724C:第1~第6ホース嵌合凹部
712A:第1突起嵌合凹部
712B:第2突起嵌合凹部(第1の突起嵌合凹部)
712C:第3突起嵌合凹部(第2の突起嵌合凹部)
713A:第1凸部
713B:第2凸部
713C:第3凸部
713D:第4凸部(第1の凸部)
713E:第5凸部(第2の凸部)
721A:第1突起部
721B,751B,761B:第2突起部(第1の突起部)
721C,761C,761C:第3突起部(第2の突起部)
722A:第1ホース押付部
722B:第2ホース押付部
722C,753C,763C:第3ホース押付部
725A~725C:第4~第6突起嵌合凹部
726A~726E:第6~第10凸部
731A~731C:第4~第6突起部
752B,752C,762B,762C:対向面(接触面)