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  • 特許-吸引装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】吸引装置
(51)【国際特許分類】
   A47L 5/16 20060101AFI20221031BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
A47L5/16
B01D53/04 110
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019192552
(22)【出願日】2019-10-23
(65)【公開番号】P2021065402
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】503063168
【氏名又は名称】東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503257848
【氏名又は名称】芝浦エレテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安部 健
(72)【発明者】
【氏名】比留川 昇一
(72)【発明者】
【氏名】平川 治朗
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-360468(JP,A)
【文献】特開2012-217942(JP,A)
【文献】米国特許第04272259(US,A)
【文献】特開2005-080771(JP,A)
【文献】特開平07-008418(JP,A)
【文献】実開平02-075125(JP,U)
【文献】特開2003-042399(JP,A)
【文献】特開2010-172655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 5/00-9/08
A47L 9/20-9/32
B01D 53/02-53/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧容器と、
上記減圧容器内に充填されて、吸引対象物と異なる気体を吸着する吸着剤と、
吸引ノズルと、
上記吸引ノズルを開閉するバルブとを備え
上記吸着剤による上記吸引対象物と異なる気体の吸着能力が吸引対象物よりも高いことを特徴とする吸引装置。
【請求項2】
請求項1の吸引装置であって、
上記吸引ノズルと上記減圧容器との間に、液体、または固形物を捕捉する捕捉部が設けられていることを特徴とする吸引装置。
【請求項3】
請求項1から請求項2のうち何れか1項の吸引装置であって、
さらに、上記吸引ノズルを介して流れる気体の流量もしくは流速、または吸引ノズル内外の圧力差を制御する制御装置を備えたことを特徴とする吸引装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうち何れか1項の吸引装置であって、
さらに、上記減圧容器内の圧力を検出する圧力計を備えたことを特徴とする吸引装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうち何れか1項の吸引装置であって、
上記減圧容器は、交換可能、または複数の減圧容器が接続可能に構成されていることを特徴とする吸引装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうち何れか1項の吸引装置であって、
上記吸引対象物は気体であることを特徴とする吸引装置。
【請求項7】
請求項6の吸引装置であって、
さらに、上記吸引対象物の気体を検知して上記バルブを開く制御装置を備えたことを特徴とする吸引装置。
【請求項8】
請求項1から請求項5のうち何れか1項の吸引装置であって、
上記吸引対象物は固形物であることを特徴とする吸引装置。
【請求項9】
請求項8の吸引装置であって、
さらに、上記吸引ノズルに吸引対象物を粉砕する粉砕部が設けられていることを特徴とする吸引装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のうち何れか1項の吸引装置であって、
上記吸着剤は、上記吸引対象物よりも空気の吸着能力が高いことを特徴とする吸引装置。
【請求項11】
請求項10の吸引装置であって、
上記吸着剤は、窒素と酸素の吸着能力の比が、空気中の窒素と酸素の分圧の比に等しいことを特徴とする吸引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負圧によって吸引対象物を吸引する吸引装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
吸引に伴う排気が生じない掃除機として、予め真空排気され、内部が真空状態となった真空容器に、フレキシブルな吸引ホース等がアタッチメントとして取り付けられた真空掃除機が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-360468
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような掃除機の吸引能力は、真空容器の容積に応じて定まる。そのため、吸引能力を大きくするためには持ち運びや操作の容易さなどを損ないがちである。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、持ち運びや操作の容易さなどを損なうことなく吸引能力を大きくすることが容易にできるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、
吸引装置であって、
減圧容器と、
上記減圧容器内に充填されて、吸引対象物と異なる気体を吸着する吸着剤と、
吸引ノズルと、
上記吸引ノズルを開閉するバルブとを備えたことを特徴とする。
【0007】
これにより、吸引対象物と異なる気体の気流によって、吸引対象物が減圧容器内に吸引されるとともに、上記吸引対象物と異なる気体は減圧容器内で吸着剤に吸着されて、減圧容器内の圧力上昇は抑制されるので、吸引対象物の吸引能力を容易に高めることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、操作や持ち運びの容易さなどを損なうことなく吸引能力を大きくすることが容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】吸引装置の概略構成を示す模式図である。
図2】吸引装置をクリーンルーム内で用いる例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態として、大気中の主に窒素と酸素を含む空気(吸引対象物と異なる気体)を吸引して、他の吸引対象物である塵埃、粒状物、粉状物等の固形物や他の気体などを吸引する吸引装置の例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
吸引装置100は、図1に示すように、減圧容器110と、トラップ120と、吸引ノズル130とが、それぞれ容器側ホース117(連通部材)またはノズル側ホース121(連通部材)で接続されて構成されている。
【0012】
上記減圧容器110は、例えば金属製または樹脂製の容器111内に例えば大気中の空気(窒素と酸素)を吸着する吸着剤113が充填され、蓋112で密閉されている。容器111には、また、容器側ホース117に接続される吸引バルブ114が設けられるとともに、排気バルブ115、および圧力計116が設けられている。上記減圧容器110は、複数、並列または直列に接続されてもよい。
【0013】
上記吸着剤113は、吸引ノズル130の周囲に存在する空気である窒素と酸素を吸着可能なものが用いられる。吸引ノズル130から吸引される気流の量や速さを増大させることが容易にできるようになっている。これにより、上記気流に伴って、他の気体や液体、固形物などの吸引対象物を吸引することが容易にできる。すなわち、吸着剤113が、吸引対象物の周囲に存在する、吸引対象物とは異なる気体を吸着することによって、減圧容器110内の圧力上昇を抑制することができるので、吸引対象物の吸引能力を容易に高めることができる。また、そのような窒素や酸素等の貯蔵効率の高い吸着剤113を用いることによって、減圧容器110を小型化することが容易になる。吸着剤113としては、例えば、多孔質構造を有して表面積が大きく、上記のように酸素および/または窒素等を吸着する能力に優れた材料が好ましい。また、吸着剤113の充填量については、充填(充満)する量を調整することで吸引能力を可変することができ、吸引した物質を容器内に留めることができるスペースを維持できる量である。
【0014】
より詳しくは、上記のように吸引対象物と異なる気体が空気である場合には、吸着剤113による空気(窒素と酸素)の吸着能力が吸引対象物よりも高いことが好ましく、また、窒素と酸素の吸着能力の比が空気中の窒素と酸素の分圧の比に等しいことが好ましい。なお、必ずしもこのような吸着能力に限るものではなく、また、他の気体の吸着能力を有していてもよい。ここで、吸引対象物が固形物である場合には、吸着剤113による空気の吸着能力は必ず吸引対象物より高いことになる。
【0015】
具体的な吸着材料としては、例えば、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、粘土鉱物、金属酸化物、多孔質ガラス等が挙げられる。なお、吸着特性に応じて種々の吸着剤が混合されてもよい。吸着剤113は、脱着再生処理、または活性化処理が施され、ガスが吸着し易い状態とされている。またその処理の際、容器111の内部は、減圧状態とされる。また、吸着したガスを後に脱着させることで、減圧容器110は再利用することができる。ここで、脱着とは、吸着と逆の現象、つまり吸着材料に吸着しているガスが吸着材料から離脱させることをいう。
【0016】
容器側ホース117とノズル側ホース121との間に設けられるトラップ120は、必須ではないが、これを設けることにより、減圧容器110内が汚損しにくいようにすることが容易にできる。また、吸引対象物が液体や固形物である危険物や汚物などの場合には、吸引される気体と分離して回収することなども容易にできる。このトラップ120の構成は特に限定されず、吸引対象物や使用条件などに応じて、例えばスクラバ方式や、湿式または乾式のフィルタなど、種々適用することができる。
【0017】
吸引ノズル130は、例えば、ノズル側ホース121の先端部にノズルバルブ131を介してノズル口132が設けられて構成されている。ノズルバルブ131は、ユーザが手元で吸引の有無などの操作をできるようになっている。このノズルバルブ131としては、単に吸引のオン/オフを切り替え得るようにしたものでもよいし、吸引力、流速などを連続的、または段階的に可変にしたものでもよい。なお、上記ノズルバルブ131と、減圧容器110に設けられる吸引バルブ114とは、何れか一方だけが設けられるようにしてもよいが、吸引ノズル130側のノズルバルブ131を設けることによって、上記のように手元での操作を容易にできる一方、減圧容器110側の吸引バルブ114を設けることによって、減圧容器110の交換等を容易にすることができる。ノズル口132は、吸引対象物や使用条件などに応じて開口部の形状や大きさなどを種々に設定したり、交換可能にしたりしてもよい。また、固形物を吸引しやすくするために吸引対象物を圧壊や打撃などによって粉砕する粉砕部を設けたりしてもよい。なお、上記吸引ノズル130や気体の流路に、流れる気体の流量や流速、または吸引ノズル内外の圧力差を制御するガバナ等の制御装置を設けて、安定した吸引が行われやすくするようにしてもよい。
【0018】
以下、上記のような吸引装置で塵埃などの固形物や空気以外の気体が吸引される動作の例を説明する。まず、減圧容器110が高真空にされ、充填された吸着剤113が脱着された状態で、吸引バルブ114、およびノズルバルブ131が開かれると、ノズル口132の内外の圧力差によってノズル口132から周囲の空気や他の気体が吸い込まれる。また、その気流によって、塵埃なども吸い込まれ、トラップ120に捕捉される。吸い込まれた空気(窒素および酸素)は、吸着剤113に吸着され(吸着剤113の種類と上記他の気体の種類によっては、上記他の気体も吸着剤113に吸着剤113に吸着され)、減圧容器110の内部の負圧状態、すなわち上記のような吸引が可能な状態は維持される。
【0019】
そして、吸着剤113による窒素や酸素の吸着が飽和し、または吸着剤113に吸着されない上記他の気体が容器111内に充満して容器111内が大気圧になるまで、上記吸引が可能になる。すなわち、容器111の容積は小さく持ち運び等が容易であっても、多量の、または長時間の吸引を可能にすることが、容易にできる。しかも、例えば吸引ファンとフィルタとを有する掃除機などのように、フィルタをすり抜けた固形物が再度外部に放出されたりすることもない。また、上記のような吸引には、モータのような動力等を必要としないので、騒音を低減することも容易にできる。さらに、停電などの場合でも常時吸引可能にすることができる。
【0020】
(実施形態2)
次に、吸引装置が、例えばクリーンルームにおいて密閉作業室210の内部でのみ使用されるべきガスがリークした場合に、そのようなガスを吸引する、いわゆる除害装置等として用いられる例を説明する。
【0021】
例えば図2に示すように、屋内のクリーンルームには密閉作業室210を有するクリーンルーム装置200が設けられている。上記密閉作業室210には、屋外に設けられたボンベ231・232からホース233・234を介して、有害なガス等が供給されるようになっている。より詳しくは、密閉作業室210の外面には、配管接続箱220が設けられ、内部に開閉バルブ221、圧力計222、開閉バルブ223、およびマスフローコントローラ224が配置されている。上記開閉バルブ221等を介して、ボンベ231・232から供給されるガスが密閉作業室210の内部に導入されるようになっている。上記配管接続箱220は、必ずしも密閉可能に設けられるのに限らないが、開閉バルブ221等が破損するなどしてガスがリークした場合に、そのリークガスをある程度、配管接続箱220内に留められ得るようになっている。
【0022】
配管接続箱220の内部には、また、吸引装置100における吸引ノズル130のノズル口132が臨むように設けられている。これによって、ボンベ231・232から供給されるガスがリークした場合に、ノズルバルブ131を開くことによってリークガスを吸引して配管接続箱220から外部に流出しにくいようにすることができる。すなわち、例えばリークガスの分圧が低い場合でも、吸着剤113に吸着される窒素や酸素がノズル口132から吸引されるのに伴って、リークガスを吸引することなどが容易にできる。なお、上記のようなリークガスの吸引をする場合、リークを検知してノズルバルブ131等を開く制御装置を設け、自動的に吸引が行われるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0023】
100 吸引装置
110 減圧容器
111 容器
112 蓋
113 吸着剤
114 吸引バルブ
115 排気バルブ
116 圧力計
117 容器側ホース
120 トラップ
121 ノズル側ホース
130 吸引ノズル
131 ノズルバルブ
132 ノズル口
200 クリーンルーム装置
210 密閉作業室
220 配管接続箱
221 開閉バルブ
222 圧力計
223 開閉バルブ
224 マスフローコントローラ
231・232 ボンベ
233・234 ホース
図1
図2