(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】分析するための分子の試料ウェル中へのローディング
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6869 20180101AFI20221031BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20221031BHJP
C12Q 1/6874 20180101ALI20221031BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
C12M1/00 A
C12Q1/6874 Z
(21)【出願番号】P 2019532979
(86)(22)【出願日】2017-12-19
(86)【国際出願番号】 US2017067421
(87)【国際公開番号】W WO2018118992
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-18
(32)【優先日】2016-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516144164
【氏名又は名称】クアンタム-エスアイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】QUANTUM-SI INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ロスバーグ、ジョナサン エム.
(72)【発明者】
【氏名】ボール、ジェームズ エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ラッキー、ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】リード、ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ゴリヤノフ、アレクサンダー
【審査官】野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/038954(WO,A1)
【文献】特開平08-103300(JP,A)
【文献】特開2015-180193(JP,A)
【文献】国際公開第2015/148218(WO,A2)
【文献】特表2009-538123(JP,A)
【文献】特表2007-532116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00- 3/00
C12M 1/00- 3/10
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的の分子を試料ウェル中にローディングする方法であって、
シークエンシング用鋳型を含む目的の分子を含む試料を、複数の試料ウェルを含む基材の表面に接触させる工程;および
クラウディング剤をふくむ組成物の層を前記基材の前記表面上の前記試料上に加える工程であって、
前記試料上に供給される前記クラウディング剤が、
前記目的の分子が前記試料のバルク体積から除外されて前記複数の試料ウェルの1つの試料ウェル中に押しやられるように、前記試料のバルク体積を縮小させるものである、工程を含む、方法。
【請求項2】
前記シークエンシング用鋳型が、少なくとも1種のハイブリダイズしたプライマー/重合酵素複合体を有する核酸分子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記クラウディング剤が多糖で
ある、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記多糖がセルロース化合物である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記セルロース化合物が、エチルセルロース、エチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロースからなる群から選択される、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記クラウディング剤がポリエーテル化合物である、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリエーテル化合物が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、パラホルムアルデヒド、ポリテトラメチレングリコール、およびポリフェニルエーテルからなる群から選択される、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記クラウディング剤がポリアミド化合物である、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項9】
ポリアミド化合物が、直鎖状ポリビニルピロリドンおよび環状ポリビニルピロリドンからなる群から選択される、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記クラウディング剤がフィルムとして提供さ
れる、請求項1乃至
9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記フィルムが、架橋したゲルまたは脱水された溶液から選択される材料である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記クラウディング剤が、溶液として提供される、請求項1乃至
9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記溶液中の前記クラウディング剤の濃度
が0.6重量%
、0.9重量%
、2.0重量%、また
は2.3重量%である、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記溶液中の前記クラウディング剤の濃度が
、0.1重量%から1.0重量%の間
、1.0重量%か
ら2.0重量%の間
、2.0重量%か
ら3.0重量%の間
、3.0重量%か
ら4.0重量%の間、また
は4.0重量%か
ら5.0重量%の間である、請求項
12に記載の方法。
【請求項15】
前記試料を、前記目的の分子の広がった体積を縮小するように構成された凝縮剤と接触させる工程をさらに含む、請求項1乃至
14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記凝縮剤が、前記試料中でポリカチオン性であるポリカチオンを含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリカチオンが、スペルミン、スペルミジン、ポリリシン、ポリアルギニン、ポリヒスチジン、ポリオルニチン、プトレシン、およびプロタミンから選択される、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
前記複数の試料ウェルの各試料ウェルが、前記基材の表面に対して遠位の底部表面を備え
る、請求項1乃至
17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記底部表面が、目的の分子と結合するように構成された少なくとも1つのカップリング基を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記試料をシール材と接触させる工程をさらに
含む、請求項1乃至
19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記シール材が、被酸化性物質および触媒を含む酸素除去シール材を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記被酸化性物質が、少なくとも1つのエチレン結合を含む有機化合物であり、前記触媒が、遷移金属および対イオンを含む、請求項
21に記載の方法。
【請求項23】
前記試料を次世代シークエンシング技法にかける工程をさらに含む、請求項1乃至
22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記試料ウェルが、底部表面に対して遠位の上部開口部を有する、請求項1乃至
23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
各試料ウェルが
、10
-21リットル
~10
-15リットルの体積を有する、請求項1
乃至24のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、概して、生物学的および/または化学的試料を分析するための調製方法および組成物を対象とする。
【背景技術】
【0002】
次世代のシークエンシング技術における進歩は、単一分子の分析を大量に並行して実施することを可能にした。これらの技法は、生命科学の研究の展望を、特にゲノム科学および医学的診断に関して根本的に変化させた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
生物学的試料に固有の複雑さにより、従来の単一分子技術を使用する手間のかかるおよび時間のかかる試料調製プロトコルが通常必要になる。その上、これらの反応が実施される試料ウェルの例外的に小さいサイズにより、分析され得る分子のサイズが制限され得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書で開示された技術の態様は、分析のために目的の分子を調製する方法に関する。いくつかの実施形態では、シークエンシング分析のための試料(例えば核酸試料)を調製するために有用な方法および組成物が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載された技法は、目的の分子を含む試料を試料ウェル中にローディングする方法に関する。いくつかの態様において、本開示は、試料を基材の表面に接触させることを伴う、目的の分子を含む試料を試料ウェル中にローディングする方法を提供する。いくつかの実施形態では、目的の分子はシークエンシング用鋳型を含む。いくつかの実施形態では、シークエンシング用鋳型は、少なくとも1つのハイブリダイズしたプライマー/重合酵素複合体を有する核酸分子を含む。いくつかの実施形態では、基材は、集積化デバイスである。いくつかの実施形態では、基材の表面は複数の試料ウェルを備える。いくつかの実施形態では、方法は、試料をクラウディング剤と接触させることをさらに伴う。いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、目的の分子を排除する。いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、目的の分子(例えば、シークエンシング用鋳型)を、溶媒分子(例えば、水)および/または他の反応成分(例えば、塩、緩衝液、ヌクレオチドなど)に対して選択的に排除する。いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、体積排除剤である。
【0005】
いくつかの実施形態では、クラウディング剤は多糖である。いくつかの実施形態では、多糖はセルロース化合物である。いくつかの実施形態では、セルロース化合物は、メチルセルロースである。いくつかの実施形態では、セルロース化合物は、エチルセルロース、エチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロースから選択される。いくつかの実施形態では、クラウディング剤はポリエーテル化合物である。いくつかの実施形態では、ポリエーテル化合物は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、パラホルムアルデヒド、ポリテトラメチレングリコール、およびポリフェニルエーテルから選択される。いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、ポリアミドである。いくつかの実施形態では、ポリアミドは、直鎖状ポリビニルピロリドンおよび環状ポリビニルピロリドンから選択される。
【0006】
いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、フィルムとして提供される。いくつかの実施形態では、前記フィルムは、架橋したゲルまたは脱水された溶液から選択される材料である。いくつかの実施形態では、フィルムは、ポリアクリルアミド、デキストラン、アガロース、またはそれらのいくつかの組合せまたはバリアントを含む。いくつかの実施形態では、フィルムは、スラリーとして提供される。いくつかの実施形態では、フィルムは粒子として提供される。
【0007】
いくつかの実施形態では、クラウディング剤(例えば、メチルセルロース)は、溶液として提供される。いくつかの実施形態では、溶液中におけるクラウディング剤の濃度は、約2.0重量%である。いくつかの実施形態では、溶液におけるクラウディング剤の濃度は、約2.3重量%である。いくつかの実施形態では、溶液中におけるクラウディング剤の濃度は、約0.1重量%から約1.0重量%の間、約1.0重量%から約2.0重量%の間、約2.0重量%から約3.0重量%の間、約3.0重量%から約4.0重量%、または約4.0重量%から約5.0重量%の間である。いくつかの実施形態では、溶液中におけるクラウディング剤の濃度は、約5.0重量%から約6.0重量%の間、約6.0重量%から約7.0重量%の間、約7.0重量%から約8.0重量%の間、約8.0重量%から約9.0重量%、または約9.0重量%から約10重量%の間である。いくつかの実施形態では、溶液中におけるクラウディング剤の濃度は、約10重量%から約11重量%の間、約11重量%から約12重量%の間、約12重量%から約13重量%の間、約13重量%から約14重量%の間、または約14重量%から約15重量%の間である。
【0008】
いくつかの実施形態では、クラウディング剤の溶解性は、温度、pH、塩、および/または他の要因に依存する。いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、懸濁液で(例えばコロイド状懸濁液)提供される。いくつかの実施形態では、懸濁液中におけるクラウディング剤の濃度は、クラウディング剤溶液について、およそ上で記載された任意の重量%または重量範囲である。
【0009】
いくつかの実施形態では、試料は、クラウディング剤と接触する前に表面に接触する。いくつかの実施形態では、試料は、表面に接触する前にクラウディング剤と接触する。いくつかの実施形態では、試料は、表面に接触してほぼ同時にクラウディング剤と接触する。いくつかの実施形態では、試料は、表面に接触したときにクラウディング剤と接触する。
【0010】
いくつかの実施形態では、目的の分子を含む試料を、集積化デバイス(例えば、複数の試料ウェルを備えるシークエンシングチップ)の表面に接触させて、クラウディング剤の層(例えば、クラウディング剤を含む溶液)を試料の上部表面に適用する。
【0011】
いくつかの実施形態では、目的の分子を含む第1の溶液を集積化デバイスの表面に接触させて、集積化デバイスの表面に第1の体積を形成させる。いくつかの実施形態では、クラウディング剤を含む第2の溶液を、第1の体積の表面に接触させて、第2の体積を第1の体積の表面に形成させる。いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、目的の分子を、第1の体積の溶媒分子に対して優先的に第2の体積から排除する。いくつかの実施形態では、第1の溶液は、1種または複数の試薬成分(例えば、緩衝液、塩、標識されたヌクレオチド)を含む。いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、目的の分子を、第1の体積の1種または複数の試薬成分に対して優先的に第2の体積から排除する。
【0012】
いくつかの実施形態では、複数の試料ウェルのそれぞれは、基材の表面に対して遠位の底部表面を含む。いくつかの実施形態では、底部表面は、目的の分子と結合するように構成されたカップリング基を含む。いくつかの実施形態では、底部表面は、シークエンシング用鋳型と結合するように構成されたカップリング基を含む(例えば、重合酵素と、またはシークエンシング用鋳型上で重合酵素により結合した核酸とカップリングすることにより)。いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、目的の分子を底部表面方向に向かわせて、それにより目的の分子は、少なくとも1つのカップリング基を通じて底部表面に結合する。いくつかの実施形態では、カップリング基は、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、レクチンタンパク質、またはSNAP-タグから選択される。いくつかの実施形態では、カップリング基は、反応性の化学基である。いくつかの実施形態では、反応性の化学基は、アミン基、アジド基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルキル基、またはスルフヒドリル基から選択される。
【0013】
いくつかの実施形態では、試料は、核酸鋳型、重合酵素、核酸鋳型に対して相補性のプライマー、およびシークエンシング反応のために適当な1種または複数の試薬成分を含む。いくつかの実施形態では、重合酵素およびプライマーは、核酸鋳型上に少なくとも1つのハイブリダイズした複合体を形成する。いくつかの実施形態では、試料は、1種または複数のヌクレオチド(例えば、標識されたヌクレオチド)、1種または複数の緩衝剤、1種または複数の塩、1種または複数の還元剤、および1種または複数の界面活性剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、試料は、金属カチオン(例えば、マグネシウムイオン)をさらに含む。いくつかの実施形態では、金属カチオンが試料に添加されてシークエンシング反応を開始させる。
【0014】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、約1kbから約5kbの間、約5kbから約10kbの間、約10kbから約15kbの間、約15kbから約20kb、または約20kbから約25kbの間である。いくつかの実施形態では、核酸分子は、約25kbから約50kbの間、約50kbから約100kbの間、約100kbから約250kbの間、約250kbから約500kbの間、または約500kbから約1000kbの間である。
【0015】
いくつかの実施形態では、重合酵素は、DNAポリメラーゼである。いくつかの実施形態では、DNAポリメラーゼは、T4DNAポリメラーゼである。いくつかの実施形態では、DNAポリメラーゼは、T7DNAポリメラーゼである。いくつかの実施形態では、DNAポリメラーゼは、ファイ29DNAポリメラーゼである。いくつかの実施形態では、DNAポリメラーゼは、M2YDNAポリメラーゼである。いくつかの実施形態では、DNAポリメラーゼは、ヒツジキンバエ(Lucilia cuprina)のDNAポリメラーゼである。いくつかの実施形態では、重合化剤はキメラおよび/または改変されたDNAポリメラーゼである。
【0016】
いくつかの実施形態では、凝縮剤を目的の分子(例えば、シークエンシング用鋳型)と接触させる。いくつかの実施形態では、凝縮剤を、クラウディング剤の添加前に、目的の分子と接触させる。いくつかの実施形態では、シークエンシング用鋳型を集積化デバイスの表面に接触させる前に、凝縮剤をシークエンシング用鋳型に添加する。いくつかの実施形態では、凝縮剤およびシークエンシング剤を、集積化デバイスの表面に、ほぼ同時に接触させる。いくつかの実施形態では、集積化デバイスの表面は、シークエンシング用鋳型が集積化デバイスの表面に接触する前に、凝縮剤を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、試料をシール材と接触させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、シール材は、鉱物油を含む。いくつかの実施形態では、シール材は、被酸化性物質および触媒を含む酸素除去シール材を含む。いくつかの実施形態では、被酸化性物質は、少なくとも1つのエチレン結合を含む有機化合物である。いくつかの実施形態では、有機化合物はアスコルビル基を含む。いくつかの実施形態では、有機化合物は、アスコルビル酸エステルである。いくつかの実施形態では、有機化合物は、アスコルビン酸の脂肪酸エステルである。いくつかの実施形態では、有機化合物は、トコフェロール化合物である。いくつかの実施形態では、触媒は、遷移金属および対イオンを含む。いくつかの実施形態では、遷移金属は、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、およびルテチウムから選択される。いくつかの実施形態では、遷移金属は銅である。いくつかの実施形態では、対イオンは、ハロゲン化物イオン(例えば、F、Cl、Br、I)、硫酸イオン、亜硫酸イオン、硫化物イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、酢酸イオン、アセチルアセトンイオン、過塩素酸イオン、水酸化物イオン、メトキシドイオン、およびエトキシドイオンから選択される。いくつかの実施形態では、対イオンは、ラウリン酸イオン、ミリスチン酸イオン、パルミチン酸イオン、ステアリン酸イオン、オレイン酸イオンおよびリノール酸イオンから選択される。
【0018】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、目的の分子(例えば、シークエンシング用鋳型)を次世代シークエンシング技法にかけることをさらに含む。
当業者は、本明細書に記載される図は、例示目的に限定されるものと理解する。いくつかの事例に、本発明の様々な態様が、本発明の理解を容易にするために、誇張されるかまたは拡張されて示されることもあることが理解されるべきである。図面では、似通った参照記号は、様々な図を通して、似通った特色、機能的に類似のおよび/または構造的に類似の要素を一般的に指す。図面は、必ずしも一定縮尺ではなくて、むしろ教示の原理を例示することに強調を置いている。図面は、本発明の教示の範囲を、いかなる意味でも限定することを意図されない。
【0019】
図面と共に検討すれば、本発明の特色および長所は、下記の詳細な説明からより明らかになるであろう。
図面を参照して実施形態を説明する際に、方向の参照(「上」、「下」、「上部」、「下部」、「左」、「右」、「水平」、「垂直」、等)が使用され得る。そのような参照は、読者が正しい配向で図面を認識するのに役立つように意図されているに過ぎない。これらの方向の参照は、具体的なデバイスの好ましいまたは唯一の配向を記載することを意図していない。デバイスは、他の配向で具体化することもできる。
【0020】
詳細な説明から明らかなように、図(例えば、
図1~10)に描かれた例および本出願全体にわたる例示の目的のためのさらなる記載は、非限定的実施形態について記載しており、いくつかの場合には、例示をより明確にする目的で、あるプロセスを簡易化するかまたは特色もしくは工程を省略していることもある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】複数の試料ウェルを有する集積化デバイスの断面図。
【
図3A】クラウディング剤の非存在下において複数の試料ウェルを有する集積化デバイス上に試料を導入した後における、試料ウェル中にローディングされた目的の分子を含む試料を示す断面図。
【
図3B】クラウディング剤の存在下において複数の試料ウェルを有する集積化デバイス上に試料の導入した後における、試料ウェル中にローディングされた目的の分子を含む試料を示す断面図。
【
図4】目的の分子を有する試料中におけるクラウディング剤の効果の例を示す図。
【
図5】目的の分子を有する試料中における凝縮剤の効果の例を示す図。
【
図6A】目的の分子を含む試料が、試料を集積化デバイス中に導入することにより、試料ウェル中にローディングされるプロセスを示す図。
【
図6B】目的の分子を含む試料が、クラウディング剤を試料中に添加することにより、試料ウェル中にローディングされるプロセスを示す図。
【
図6C】目的の分子を含む試料が、クラウディング剤が目的の分子を、集積化デバイスの試料ウェル中に押しやることを可能にすることにより、試料ウェル中にローディングされるプロセスを示す図。
【
図6D】クラウディング剤を含む過剰体積の除去後に、集積化デバイスの試料ウェル中にローディングされた目的の分子を示す断面図。
【
図6F】酸素除去シール材の添加後の
図6Eの集積化デバイスを示す図。
【
図7A】クラウディング剤を使用してローディングされた試料を使用して実施されるリアルタイムのシークエンシング反応の読取りを示す図。
【
図7B】クラウディング剤を使用してローディングされた試料を使用して実施されるリアルタイムのシークエンシング反応の結果を示す図。
【
図8】試料ウェル中に拡散によりローディングされた核酸試料(上部)、および試料ウェル中にクラウディング剤の存在下でローディングされた核酸試料(下部)のDNA蛍光染色の画像表示を示す図。
【
図9】試料ウェル中に拡散によりローディングされた核酸試料(左)および試料ウェル中にクラウディング剤の存在下でローディングされた核酸試料(右)のDNA蛍光撮像を示す図。
【
図10】固体状態のクラウディング剤のための概念実証を証明した実験の仕組みを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
他の態様の中で、本開示は、目的の分子を試料ウェル中にローディングする方法および組成物を提供する。いくつかの態様において、本明細書に記載された技法は、目的の分子を含む試料を、(例えば、集積化デバイスの表面に対して遠位の底部表面を有する試料ウェルを備える集積化デバイス中の)試料ウェルを備える固体の支持体の表面に接触させることを伴う。いくつかの実施形態では、試料は、目的の分子を、試料ウェルの底部表面の方に向かわせるクラウディング剤と接触させることができる。いくつかの実施形態では、試料ウェルの底部表面は、目的の分子と結合するように構成されたカップリング基を含む。このようにして、目的の分子は、カップリング基を通じて試料ウェルの底表面に結合することができる。いくつかの実施形態では、試料は、目的の分子に、凝縮剤の非存在におけるその構造に対して凝縮された構造をとらせる凝縮剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、目的の分子は、シークエンシング用鋳型を含む。
【0023】
いくつかの態様において、本明細書に記載された方法および組成物は、試料中における個々の分子または粒子の検出を可能にする技法において有用であり得る。個々の分子は、例として、アミノ酸、ポリペプチド、ヌクレオチド、および/または核酸であることもあるが、これらに限定されない。例えば、いくつかの実施形態では、本開示で提供される方法および組成物は、単一分子の核酸シークエンシング技術と合わせて使用することができる。単一分子の核酸シークエンシングは、鋳型核酸に対して相補性の核酸分子の伸長を、リアルタイムでモニタリングすることにより、単一鋳型の核酸分子の配列の決定を可能にする。
【0024】
ある技法では、単一分子の核酸シークエンシングは、複数の試料ウェルのそれぞれの中の単一のシークエンシング用鋳型を単離することにより実施される。しかしながら、多くの用途において、試料体積の合計に対するこれらの試料ウェルの体積の合計は、かなり小さい。それに加えて、単一の試料ウェル中における複数の鋳型を最小化するために要する試料中シークエンシング用鋳型の濃度がしばしば非常に低いので、シークエンシング用鋳型を試料ウェル中にローディングする速度が、首尾よくローディングされて十分に活性のある複合体の量を厳しく制限し得る。本発明者らは、これらのおよび他の制限が、シークエンシング用鋳型のローディングプロセスの一部として特定の試薬を利用することにより克服され得ることを認識して認めた。
【0025】
したがって、シークエンシング用鋳型の調製およびシークエンシング用鋳型のローディングの実行を改善する必要性を認識して、本発明者らは、シークエンシング用鋳型がバルク体積(bulk volume)から除外されて試料ウェル中に押しやられるように、試料のバルク体積を効果的に縮小させるためにクラウディング剤を使用する技法を開発した。本発明者らは、本明細書に記載されたクラウディング剤が、シークエンシング用鋳型サイズに関して前に言及した考察を超える長所を提供することをさらに認識して認めた。
【0026】
いくつかの実施形態では、本開示は、目的の分子を有する試料を集積化デバイスの表面に接触させることにより、目的の分子を試料ウェル中にローディングする方法を提供する。いくつかの実施形態では、集積化デバイスは、試料ウェルを備える。例えば、
図1は、本出願のいくつかの非限定的実施形態による集積化デバイス100が備える試料ウェル108の断面図である。試料ウェル108は、集積化デバイスの試料ウェル108の底部表面112に対して遠位の表面110に小さい体積または領域を備えることもできる。試料ウェル108は、目的の分子を含む試料191を受け入れるように構成することができて、目的の分子は試料ウェル108の底部表面112に保持され得る。試料ウェル108の底部表面112は、持続時間の間少なくとも一時的に目的の分子191に結合する1つまたは複数のカップリング基を含む。試料ウェル108の底部表面112は、目的の分子191が、試料ウェル108の側壁190よりもむしろ底部表面に付着する選択性を提供する1種または複数の材料を有することができる。いくつかの実施形態では、試料ウェル108の底部表面112および側壁190は、本明細書に記載された技法または当技術分野において知られた方法を使用して調製(例えば、不動態化、官能化など)することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、目的の分子191を、試料ウェル108の底部表面112に対して遠位の上部開口を通じて試料ウェル108内に配置させることができる。上部開口は、周囲光または迷光が試料ウェル108内の目的の分子191を照らすのを低減するように構成されていてもよい。上部開口は、集積化デバイスの表面110で測定するとWAの幅を有することができて、それは、50nmおよび300nmの範囲、またはその範囲内の任意の値または値の範囲である。試料ウェル108は、底部表面112と、上部被覆金属板118および金属層122の間の界面127との間の深さdWを有することができる。深さdWは、底部表面112に位置する目的の分子と金属層122との間に適当な距離を提供することができる。深さdWは、目的の分子191と結合したマーカーの光子放出事象のタイミング(例えば寿命)に強く影響し得る。したがって、深さdWは、試料ウェル108中の異なるマーカーの間を、異なるマーカーの個々の寿命と関連するタイミング特性に基づいて識別することを可能にする。いくつかの実施形態では、試料ウェル108の深さdWは、受ける励起エネルギーの量に対して強く影響し得る。深さdWは、50nmから350nmの範囲内、またはその範囲内の任意の値または値の範囲にあることができる。いくつかの実施形態では、深さdWは、95nmから150nmの間である。いくつかの実施形態では、深さdWは、150nmから350nmの間である。いくつかの実施形態では、深さdWは、200nmから325nmの間である。いくつかの実施形態では、深さdWは、250nmから300nmの間である。いくつかの実施形態では、深さdWはほぼ270nmである。
【0028】
様々な実施形態において、試料ウェル108は、導波管116から励起エネルギーを受けるように配置され得る。導波管116は、導波管から一過性に減衰する光学モードを提供するように構成され得る。いくつかの実施形態では、このモードのエバネセント場の範囲が、試料ウェル108と少なくとも部分的に重なり合うこともある。このようにして、試料ウェル108内の目的の分子191は、光学モードのエバネセント場を通じて励起エネルギーを受ける。
【0029】
集積化デバイス100は、上部被覆金属板118の上に金属層122を含むことができる。金属層122は、試料ウェル中の試料により放出される放出エネルギーに対する反射器として作用することができて、放出エネルギーを、集積化デバイスのセンサーに向けて反射することにより放出エネルギーの検出を改善することができる。金属層122は、試料ウェル内で生ずるものでない光子に基づく背景シグナルを低下させるように作用し得る。金属層122は、1層または複数の副層を含むこともできる。金属層の層として使用されるために適当な材料の例は、アルミニウム、銅、チタン、および窒化チタンを含むことができる。
図1に示したように、金属層122は、第1の副層124、第2の副層126、および第3の副層128を含む。第1の副層の厚さは、30nmから165nmの範囲内、またはその範囲内の任意の値または値の範囲であることができる。第2の副層の厚さは、5nmから100nmの範囲内、またはその範囲内の任意の値または値の範囲であることができる。いくつかの実施形態では、第2の副層の厚さはほぼ10nmであることができる。第3の副層は、5nmから100nmの範囲内の厚さ、またはその範囲内の任意の値または値の範囲を有することができる。いくつかの実施形態では、第3の副層はほぼ30nmの厚さを有することができる。
【0030】
試料ウェル108は、側壁190の側壁スペーサーで少なくとも部分的に覆われた1つまたは複数の側壁を有してもよい。側壁スペーサーの組成は、側壁190が、目的の分子191とのある型の相互作用を可能にするように構成されるようなものであってもよい。いくつかの実施形態では、側壁スペーサーは、試料ウェル108の側壁を不動態化して、側壁190に付着する目的の分子191の量を低下させるように構成された組成を有することができる。試料ウェルの側壁のみをスペーサーでコーティングすることにより、試料ウェル108の異なるエリアで目的の分子191との異なる型の相互作用を提供することができる。側壁スペーサーは、3nmから30nmの範囲内、またはその範囲内の任意の値もしくは値の範囲内の厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、側壁スペーサーは、ほぼ10nmの厚さを有することができる。側壁スペーサーを形成するために使用される適当な材料の例は、TiO2、TiN、TiON、TaN、Ta2O5、Zr2O5、およびHfO2を含む。いくつかの実施形態では、試料ウェルの構造は、側壁にスペーサー材料のない導波管116に直近の底部表面112を有することができる。底部表面と側壁スペーサーの間の距離は、20nmから50nmの範囲内、またはその範囲内の任意の値または値の範囲であることができる。このようにして、試料ウェルの底部表面112は、導波管116により近く、したがって、励起エネルギーのカップリングを改善して、励起エネルギーの光学損失に対する金属の積重ねの強い影響を低下させる。
【0031】
いくつかの実施形態により、集積化デバイスは、試料ウェルを備えることができる。いくつかの実施形態では、集積化デバイスは、複数の試料ウェル、または試料ウェルの「アレイ」を備える。例えば、
図2は、複数の試料ウェルを備える集積化デバイス200の断面図を描く。示されるように、集積化デバイス200は、導波管216と金属層222の間に上部被覆金属板218を備えており、そこで上部被覆金属板218が、導波管216と金属層222とを最大距離h
cだけ離す。上部被覆金属板218は、h
c未満の寸法を有する1つまたは複数の領域を有し、1つまたは複数の試料ウェルを備えることができる。そのような領域は、集積化デバイスの1つまたは複数の試料ウェルを備える適当なサイズおよび形状のアレイと考えることもできる。集積化デバイス200は、アレイ220を備え、そこで上部被覆金属板218が導波管216と金属層222とをh
c未満の距離だけ離す。アレイ220は、
図2で示した図に垂直な面に、任意の適当なサイズ、および所望の数の試料ウェルを含む形状のエリアを有することができる。いくつかの実施形態では、アレイ220は、方形の形状(例えば、正方形)を有することができる。アレイ220は、208
1、208
2、208
3、208
4、208
5、および208
6を含む複数の試料ウェルを有することができる。
図2は6個の試料ウェルを描いているが、適用はこの箇所に限定されず、任意の適当な数の試料ウェルが、アレイに形成され得る。アレイは、任意の適当なサイズまたは形状を有することができる。いくつかの実施形態では、アレイは、トレンチ領域にある。
【0032】
本明細書に記載された技法の態様は、試料を集積化デバイスの表面に接触させることを伴う。
図2に示したように、集積化デバイス200は、凹んだ集積化デバイスの表面210
1に形成され得るアレイ220内の複数の試料ウェルを含有する。したがって、いくつかの実施形態では、試料を、集積化デバイスのアレイにおける集積化デバイスの凹んだ表面210
1に接触させることができる。さらなる他の実施形態では、試料を、集積化デバイスの凹んだ領域でない(例えば、トレンチ領域でない)表面に接触させることができる。例えば、
図2に描かれたように、試料を、集積化デバイスの表面210
2に接触させることもできる。
図2は集積化デバイスの凹んだ領域(例えば、浴槽)に複数の試料ウェルを描いているが、集積化デバイスは、さらに凹んだ領域を含まない複数の試料ウェルも備えることができることが認められるべきである。
【0033】
集積化デバイス200は、上部被覆金属板218の上に金属層222を含むことができる。金属層222は、試料ウェル中の試料により放出された放出エネルギーに対する反射器として作用することができて、放出エネルギーを、集積化デバイスのセンサーに向けて反射することにより、放出エネルギーの検出を改善することができる。金属層222は、試料ウェル内で生じたものでない光子に基づく背景シグナルを低下させるように作用することができる。金属層222は、1つまたは複数の副層を備えることができる。金属層として使用される適当な材料の例は、アルミニウム、チタン、および窒化チタンを含む。金属層222は、上部被覆金属板218のエッチングされた部分に対応する1つまたは複数の不連続性を有して試料ウェル2081、2082、2083、2084、2085、および2086を形成することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載された型の複数の凹んだ領域(例えば、トレンチ領域)は、集積化デバイス中に形成されて、例えば、導波管216および金属層222に伝わる光学モードの相互作用に基づく光学損失を低減することができる。いくつかの実施形態では、集積化デバイスは、単一試料ウェルのための凹んだ領域を含むことができる。集積化デバイスは、上部被覆金属板中に複数の凹んだ領域を有することができて、そこで、凹んだ各領域は1つの試料ウェルに対応する。
【0034】
ある技法では、単一の試料ウェルが、単一の目的の分子(例えば、単一のシークエンシング用鋳型)を含むことが好ましい。したがって、いくつかの実施形態では、試料ウェルのアレイを含む集積化デバイス中に、試料を導入することにより、例えば、シークエンシング用鋳型を含む試料を試料ウェル中にローディングする場合、集積化デバイスが高濃度のシークエンシング用鋳型で過飽和状態になることを避けるように、注意を払うべきである。そのような実施形態では、シークエンシング用鋳型の希薄な濃度を有する試料を使用して試料ウェルにローディングすることがしばしば得策である。
【0035】
理論に束縛されることは望まないが、試料ウェルのアレイにわたるシークエンシング用鋳型の希薄な濃度の試料分布は、ポアッソン分布により最もよくモデル化されると仮定する。この離散的確率分布は、アレイ中の試料ウェルのほぼ37%が1分子のシークエンシング用鋳型を含有して、残りのウェルは、ゼロかまたは複数のシークエンシング用鋳型のいずれかを含有することを予測する。実際には、試料ウェルのアレイにわたって37%の単一の占有を達成することは、任意の数の化学的および/または機械的変数により複雑にされ得る。本発明者らは、本明細書に記載された技法、例えば、クラウディング剤を用いるローディングは、試料ウェルのアレイにわたって単一占有のパーセンテージを有利に増大させることを認識して認めた。
【0036】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載された方法および組成物は、ポアッソン統計により予測される量に匹敵してほぼ同じかまたはそれを超える、試料ウェルのアレイ中における目的の分子の単一占有を達成することができる。したがって、理論に束縛されることは望まないが、本出願の方法および組成物は、非ランダム機構により進行するローディング技法で使用することができて、それはランダム分布を非対称にしてポアッソン分布を超える単一のローディングされた試料ウェルのパーセンテージを生ずる。例えば、いくつかの実施形態では、本開示の方法および組成物は、アレイの試料ウェルのほぼ20%、ほぼ25%、ほぼ30%、ほぼ35%、ほぼ37%、ほぼ40%、ほぼ45%、ほぼ50%、ほぼ60%、ほぼ70%、ほぼ80%、ほぼ90%、ほぼ95%、ほぼ99%、またはほぼ100%における目的の分子の単一占有を達成することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、本開示の方法および組成物は、目的の分子がポアッソン統計により予測される分布(例えば、単一占有の)で試料ウェルのアレイを占有する率を増大させるために有用である。
【0037】
他の態様の中で、本明細書に記載された技法は、目的の分子を試料ウェル中にローディングするためのクラウディング剤の使用に関する。本明細書に記載されたように、クラウディング剤は、目的の分子(例えば、シークエンシング用鋳型)を試料のバルク溶媒から効果的に排除することができる。この効果の例は、
図3Aおよび3Bに描かれているが、これらに限定されない。
図3Aに示したように、複数の試料ウェルを備えるアレイ320を有する集積化デバイス300
1を、目的の分子390
1を有する試料340
1と接触させることができる。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、目的の分子を極端に小さい体積の試料ウェル中にローディングするために有用である。例えば、いくつかの実施形態では、集積化デバイスおよびその中の全ての試料ウェル中におけるアレイの容量(例えば、トレンチ領域における)は約20×10
-6Lであり、各試料ウェルは約3×10
-18Lの体積を有する。いくつかの実施形態では、集積化デバイスにおけるアレイ(例えば、トレンチ領域における)は、512,000個の試料ウェルを含有する。したがって、いくつかの実施形態では、1つのアレイ中の全ての試料ウェルの体積の合計は、試料の容量のほぼ0.00000768%を占める。
図3Aに描かれたように、クラウディング剤の非存在下でローディングされた目的の分子390
1を有し、試料340
1のバルク体積342
1中において目的の分子390
1の理論的に均一な分布を有する試料340
1は、ほんの一部の試料ウェルにおいて首尾よくローディングされる目的の分子391
1を受け入れることができるであろう。
【0038】
図3Bは、首尾よくローディングされる試料に関するクラウディング剤の効果を示す。複数の試料ウェルを備えるアレイを有する集積化デバイス300
2は、目的の分子390
2を有する試料340
2と接触させることができる。試料340
2は、クラウディング剤350をさらに含むことができる。示されるように、クラウディング剤350が含まれると、目的の分子390
2を試料340
2のバルク体積342
2から排除する体積排除効果を生ずることができて、それは目的の分子390
2を試料ウェル中に押しやる。結果として、試料ウェルのはるかに大きいパーセンテージが、首尾よくローディングされる目的の分子391
2を受け入れることができる。したがって、いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、集積化デバイスの表面における目的の分子の濃度を効果的に増大させる熱力学的推進力を生ずることができる。いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、目的の分子の試料ウェル中への移動を加速する速度効果を有することによりローディング時間を短縮することができる。
【0039】
本発明者らは、本明細書に記載されたクラウディング剤は、目的の分子、例えば、シークエンシング用鋳型が、単一分子のシークエンシングで使用される従来の試料ウェルよりも深い試料ウェル中に(例えば、150nmを超える、200nmを超える、250nmを超えるなど)ローディングされることを可能にすることをさらに認識して認めた。例えば、いくつかの実施形態では、目的の分子は、試料ウェルの底部表面で試料ウェルと結合する。いくつかの実施形態では、底部表面は、試料ウェルを備える集積化デバイスの表面に対して遠位にあり、底部表面と集積化デバイスの表面との間の距離は、試料ウェルの深さに近い。いくつかの実施形態では、より深い試料ウェルは、光学成分を利用する技法と有利に組み合わせることができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、単一分子シークエンシングは、光学システムおよびセンサーの使用を含む。例えば、いくつかの実施形態では、シークエンシング反応は、集積化デバイス上で光を試料ウェル中に向かわせて、試料ウェルから放出された光を検出することにより、リアルタイムでモニターされる。いくつかの実施形態では、光を試料ウェル中に向かわせる光源は、試料ウェルの底にまたはその下に位置して、光検出器は、試料ウェルからの放出(例えば、シークエンシング反応と関連する1種または複数の成分または事象と関係する放出)を検出するために使用される。そのような実施形態では、光は、集積化デバイスの表面でまたはその近くで1つまたは複数の機構と相互作用して、シークエンシング反応をモニターする能力に不利に影響し得る。いくつかの実施形態では、これらの障害(例えば、背景ノイズ、光学損失)は、試料ウェルの深さを増大させることにより低減または排除され得る。
【0041】
しかしながら、試料ウェルの深さが増大するにつれて、試料ウェルの底部表面と集積化デバイスの表面との間の増大した距離は、目的の分子が底部表面に達する(例えば、その結果として底部表面に結合する)ために拡散しなければならない、より遠い距離を必然的に創り出す。したがって、増大した試料ウェルの深さにより提供される長所は、ローディングの有効度(例えば、試料ウェルのアレイにわたって高い単一占有を達成する)に関して、いくらかの制限を必然的に伴い得る。本発明者らは、本明細書に記載された技法、例えば、クラウディング剤を用いるローディングは、増強されていない拡散のみによるローディングと比較して、深い試料ウェル中への目的の分子(例えば、シークエンシング用鋳型)のローディングのために優れていることを認識して認めた。
【0042】
クラウディング剤
本明細書で使用する「クラウディング剤」は、分子のクラウディングを増強する、または容易にすることを可能にする化合物または分子である。いかなる特定の機構によっても束縛されることは望まないが、クラウディング剤は、他の高分子のために利用され得る溶媒の体積を低減することが示唆される。この排除体積効果が、クラウディング剤との立体的反発などの非特異的相互作用の結果として高分子に接近可能な体積を制限する。したがって、いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、「体積排除因子」または「体積排除剤」と称されることがある。いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、同じ溶液中の他の成分に関して不活性である。例えば、いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、全試料体積の一部分から溶液中の他の成分を上記部分から排除することなく、または溶液中の他の成分を上記部分に保持して、目的の分子を選択的に排除する。いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、親水性化合物である。いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、同じ溶液中で起こる反応に干渉しない。クラウディング剤は、本明細書に記載された方法および組成物で様々な仕方により、例えば、
図4に示されたように機能すると考えられる。
【0043】
図4は、試料中におけるクラウディング剤の目的の分子に対する効果の例を一般的に示す。パネル400
1および400
2は、それぞれ目的の分子491および作用物質450を有する試料を描いている。示されるように、パネル400
1における作用物質450
1は
、パネル400
2における作用物質450
2と比較して、試料全体にわたって比較的分散している。したがって、パネル400
1は、目的の分子491が、作用物質450
1によってまだ占有されていないバルク体積442
1に自由に接近することができる試料の簡略化された例を示す。比較すると、パネル400
2中の作用物質450
2は、間隙体積444(陰影をつけた領域)が形成されるように関連していることが示されている。示されるように、目的の分子491のサイズが間隙体積444を超える場合には、この領域は、目的の分子491にとって接近不能になる。結果として、パネル400
2の試料中における接近可能なバルク体積442
2の量は、パネル400
2の試料中における接近可能なバルク体積442
1の量未満である。目的の分子491の試料中の体積からの排除に関係するこの効果は、体積排除と称することができる。しかしながら、体積排除効果は、分子のクラウディング効果を向上させることができて、逆も真であることが認められるべきである。
【0044】
図4は、試料ウェルに関して排除体積効果の例をさらに示す。パネル401
1および401
2は、目的の分子491と結合するように構成されたカップリング基493を含む底部表面を有する試料ウェルを、それぞれ描いている。さらに、パネル401
1および401
2のそれぞれは、目的の分子を含む試料491と接触した試料ウェルを描いている。パネル401
2で示された試料は、クラウディング剤450をさらに含む。示されるように、クラウディング剤450は、目的の分子491に接近し得るバルク体積442の量を減少させる。目的の分子491に接近不能のクラウディング剤450の間隙体積444の結果として、目的の分子は、試料ウェルの上部開口の方向に熱力学的に押しやられる。いくつかの実施形態では、パネル401
2に示されるように、クラウディング剤450は、試料の一部分を拘束して、目的の分子491に接近可能なバルク体積442を減少させる絡まった構造を形成するポリマー分子を含むことができる。理論に束縛されることは望まないが、試料中のクラウディング剤450により形成される構造は、クラウディング剤450が試料ウェルに進入し得る程度を制限すると仮定される。その結果として、間隙体積444は、試料ウェル外の領域を占有して、底部表面に対して遠位の試料ウェルの上部開口における目的の分子の濃度を効果的に増大させる。試料ウェルの上部開口で増大した目的の分子491の局所濃度は、目的の分子491が、カップリング基493を通じて底部表面に結合するより大きい確率を生ずることができる。
【0045】
したがって、いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、目的の分子を、溶媒分子および/または溶液中の他の成分に対して選択的に排除する。いくつかの実施形態では、目的の分子を含む溶液を、集積化デバイスの表面に接触させて、その結果、目的の分子が、集積化デバイスの表面で第1の体積を占有する。いくつかの実施形態では、クラウディング剤を含む溶液を、第1の体積の表面に接触させて、その結果、クラウディング剤が第1の体積の表面で第2の体積を占有する。クラウディング剤が、目的の分子を、溶媒分子および/または他の成分に対して選択的に排除する場合、目的の分子は、第2の体積から排除されるが、第1の体積の溶媒および/または他の成分は排除されない。結果として、この選択的排除は、第2の体積における増大と同時に第1の体積を減少させる。いくつかの実施形態では、第1の体積中の他の成分(例えば、塩、緩衝液など)は、クラウディング剤により占有されている第2の体積が接近可能である程度で変化することができることが認められるべきである。例えば、クラウディング剤の相対サイズ、電荷、および他の化学的および物理的性質および成分は、成分がクラウディング剤により選択的に排除され得るかまたは優先的に保持され得る程度に影響し得る。目的の分子は、反応成分(例えば、シークエンシング用鋳型)を含み得るので、目的の分子を安定化するために必要であり得る溶液中の他の成分をクラウディング剤が優先的に保持しないことは重要である(例えば、緩衝剤、還元剤など)。
【0046】
いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、水を引きつけて水以外の分子を凝集させる。いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、溶液中の水に結合および/または拘束して溶液中の高分子を排除する。いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、目的の分子を排除する。いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、シークエンシング用鋳型を排除する。いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、試料ウェル中の利用可能な体積を限定する。いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、試料ウェル中の目的の分子の単一保有を助長する。いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、シークエンシング用鋳型などの目的の分子を圧縮して、より大きいシークエンシング用鋳型が試料ウェル中にローディングされることを可能にする。いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、相分離を助長する。いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、ランダムにコイル化したポリマーを含む。いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、汚染物質(例えば、細胞残渣)を排除して、目的の分子をローディングする前に必要な試料精製を制限または不要化する。例えば、いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、不純な試料の希薄な成分(例えば、血、尿、溶解した細胞など)がクラウディング剤の非存在下でローディングされた不純な試料よりも効果的にローディングされることを可能にする。いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、浸透圧を働かせる。いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、目的の分子の深い試料ウェル中へのローディングを容易にする。いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、試料ウェルのより速いローディングを助長する。例えば、いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、試料ウェルを備える集積化デバイス上で試料をインキュベートするために必要な時間を減少させる。
【0047】
クラウディング剤は当技術分野において知られており、インビトロで細胞内の高分子のクラウディングの効果をシミュレートするために以前より使用されている(例えば、トクリら(Tokuriki、N.、et al.)(2004) Protein Sci.13(1):125-133;クズネツオーヴァ、I.M.ら(Kuznetsova、I.M.、et al.)(2014) Int.J.Mol.Sci.15:23090-23140;フィリップ、Y.ら(Phillip、Y.、et al.)(2009) Biophys.J.97(3):875-885;バト、R.ら(Bhat、R.、et al.)(1992) Protein Sci.1:1133-1143;クリスチャンセン、A.ら(Christiansen、A.、et al.)(2013) Biophys.Rev.5(2):137-145;オーミラー、W.M.ら(Aumiller、W.M.、et al.)(2014) J.Phys.Chem.B118(36):10624-10632を参照されたい;これらのそれぞれの内容は、参照により本明細書に援用する)。
【0048】
いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、それが、試料ウェル中に移動することと反対に、試料の貯蔵所に(例えば、優先的に)とどまるように選択される。いくつかの実施形態では、このことは、試料成分(例えば、DNA-ポリメラーゼ複合体)の試料ウェル中へのローディングを推進する熱力学的推進力を助長する。いくつかの実施形態では、Ficollまたは直鎖状ポリビニルピロリドンなどのより低い粘度のクラウディング剤は、より高い粘性剤と比較して高い移動性および劣った局在化を有して、より高い粘性剤ほど効果的ではない。しかしながら、より低い増粘剤は、いくつかの状況で有用なこともある。
【0049】
いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、1mPa・s以上(例えば、約1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0mPa・s、以上または中間範囲の粘度)の粘度を有するクラウディング剤溶液を使用して適用される。いくつかの実施形態で、63,000Daのメチルセルロースの2.7%の組成物は、ほぼ6.9mPa・sの粘度を有する。いくつかの実施形態では、クラウディング剤をピペットで移すために有用な粘度は、1,000mPa・sから15,000mPa・sの間であり得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、作用物質の粘度の上方の範囲は、実用的なピペット操作の考慮により制限され得る。例えば、約12,000mPa・s以上の粘度を有する溶液は、ピペット操作が困難であり得、いくつかの実施形態では、クラウディング剤溶液は、12,000mPa・s以下の粘度を有する濃度で添加される。
【0050】
いくつかの実施形態では、より低い粘度を有するより小さい(例えば、より短い)作用物質は、ローディング組成物において同様の粘度を達成するために、より大きい(例えば、より長い)作用物質よりも高い濃度で適用され得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、より短い分子は、効率的でないクラウディング剤であり、試料貯蔵所から試料ウェル中により容易に移動することもできる。
【0051】
いくつかの実施形態では、クラウディング剤の調製物の粘度は、mPa・s=(%×0.747+1)8(例えば、ダウ社(Dow)のメトセル(Methocel)、セルロースエーテルについて)などの粘度-濃度方程式に基づいて計算することができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、クラウディング剤の形状およびサイズは、その効力に強く影響し得る。いくつかの実施形態では、DNA/ポリメラーゼ複合体の排除は、類似のサイズのクラウディング剤(例えば、2から3倍小さい~2から3倍大きい範囲のクラウディング剤)を使用すると特に効果的である。いくつかの実施形態では、絡まりを助長する形状、より高い粘度を有するクラウディング剤溶液が有用である。
【0053】
いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、水溶性の高分子材料である。いくつかの実施形態では、生体適合性の天然または合成ポリマーを広く含む適当な高分子の材料は、混合物中で他の試薬と特異的に相互作用することがない。いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、不活性ポリペプチドまたは不活性核酸などの不活性高分子である。いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、直鎖状ポリマーである。
【0054】
いくつかの実施形態では、クラウディング剤は多糖である。いくつかの実施形態では、クラウディング剤はセルロース分子である。いくつかの実施形態では、クラウディング剤はメチルセルロースである。いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、エチルセルロース、エチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ならびにそれらの誘導体および組合せからなる群から選択されるセルロース分子である。いくつかの実施形態では、クラウディング剤はFicollポリマーである。
【0055】
いくつかの実施形態では、クラウディング剤、例えばセルロースのクラウディング剤(例えば、63,000のMethocel MC)は、50,000から500,000Da(例えば、約50から100kDa、100から200kDa、200から300kDa、300から400kDa、400から500kDaまたはそれより高い)の平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、本明細書において使用する「平均分子量」は、溶液中のクラウディング剤の数平均分子量(Mn)を指す。いくつかの実施形態では、セルロースクラウディング剤は、50,000から500,000Daの数平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、セルロースクラウディング剤の数平均分子量はほぼ63kDaである。いくつかの実施形態では、セルロースクラウディング剤の数平均分子量は、約20kDaから120kDaの間、約26kDaから110kDaの間、約41kDaから86kDaの間、約50kDaから75kDaの間、または約60kDaから70kDaの間である。
【0056】
平均分子量は、いくつかの実施形態では、メーカーのスペックにより決定することができる。いくつかの実施形態では、セルロースのクラウディング剤の平均分子量は、見かけの粘度と特定のセルロース化合物の分子量または鎖長との間の比例関係に基づいて計算または概算することができる。この比例性を考慮して、既知の参照値は、既知の濃度のセルロースの水溶液の見かけの粘度を既知の温度で測定することにより、平均分子量を決定することに使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、Methocelセルロース組成物の平均分子量は、セルロースの2%(w/v)溶液について20℃で粘度値を測定して(例えば、ASTMモノグラフD1347およびD2363で発布された測定方法を使用して)、その測定値を、メーカーにより提供された既知の値(例えば、メトセル セルロースエーテル テクニカルハンドブック(METHOCEL Cellulose Ethers Technical Handbook)(ダウ・ケミカル社(The DOW Chemical Company));方式(Form) No.192-01062-0902 AMS、2002年9月発行に記載されている)と比較することにより得ることができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、クラウディング剤はポリエーテル化合物である。いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、ポリエチレングリコール(例えば、PEG20,000以上を含むPEG200以上)、ポリプロピレングリコール、パラホルムアルデヒド、ポリテトラメチレングリコール、ポリフェニルエーテル、およびそれらの誘導体および組合せからなる群から選択されるポリエーテル化合物である。いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、ウシ血漿アルブミン、グリコーゲン、デキストラン、およびそれらの誘導体および組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、クラウディング剤はポリアミドである。いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、環状ポリアミド(例えば、ポリビニルピロリドン)である。
【0058】
いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、溶液として提供される。いくつかの実施形態では、溶液中のクラウディング剤の濃度は約0.6重量%である。いくつかの実施形態では、溶液中のクラウディング剤の濃度は約0.9重量%である。いくつかの実施形態では、溶液中に添加されるクラウディング剤の濃度は約1.8重量%である。いくつかの実施形態では、溶液中のクラウディング剤の濃度は約2.0重量%である。いくつかの実施形態では、溶液中のクラウディング剤の濃度は約2.3重量%である。いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、溶液中に、約0.1重量%から約1.0重量%の間、約1.0重量%から約2.0重量%の間、約2.0重量%から約3.0重量%の間、約3.0重量%から約4.0重量%の間、約4.0重量%から約5.0重量%の間、約5.0重量%から約6.0重量%の間、約6.0重量%から約7.0重量%の間、約7.0重量%から約8.0重量%の間、約8.0重量%から約9.0重量%の間、約9.0重量%から約10.0重量%の間、約10.0重量%から約15.0重量%の間、約10重量%から約11重量%の間、約11重量%から約12重量%の間、約12重量%から約13重量%の間、約13重量%から約14重量%の間、または約14重量%から約15重量%の間、約15.0重量%から約20.0重量%の間で、またはそれを超えて存在する。
【0059】
いくつかの実施形態では、クラウディング剤の溶液は、試料溶液の体積と同じオーダーの大きさ(例えば、1から3倍小さい~1から3倍大きい)の体積で添加される(例えば、ローディング緩衝液中で)。いくつかの実施形態では、クラウディング剤(例えば、Methocel MC)の2.7%の溶液が、ローディング緩衝液中でほぼ等しい体積の試料にピペットで添加される。いくつかの実施形態では、クラウディング剤の1.8%の溶液が、ローディング緩衝液中でほぼ等しい体積の試料にピペットで添加される。いくつかの実施形態では、クラウディング剤の1.2%の溶液が、ローディング緩衝液中でほぼ等しい体積の試料にピペットで添加される。いくつかの実施形態では、クラウディング剤の0.9%の溶液が、ローディング緩衝液中でほぼ等しい体積の試料にピペットで添加される。いくつかの実施形態では、クラウディング剤の0.6%の溶液が、ローディング緩衝液中でほぼ等しい体積の試料にピペットで添加される。
【0060】
いくつかの実施形態では、クラウディング剤溶液は、混合せずに試料溶液に入れられる。しかしながら、その溶液も、いくつかの実施形態では混合され得る。
いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、(例えば、試料貯蔵所に)試料溶液と直接接触して入れることができるゲルの形態(例えば、親水性ゲル)で提供される。ゲルは、ピペット操作の考慮により限定されずに適用することができて(例えば、ゲルのプラグの形態で)、より高い濃度および粘度のクラウディング剤がゲルの形態で使用され得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、固体状態で提供される。例えば、いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、フィルムとして提供される。いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、繊維状の材料、膜状の材料、接着性材料、複合体材料、ラミネート材料、またはそれらのいくつかの組合せとして提供されることもある。いくつかの実施形態では、フィルムは、本明細書に記載された方法および組成物で使用されるために適当な合成および/または天然材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、フィルムは、架橋したゲルまたは脱水された溶液から選択される材料である。いくつかの実施形態では、ポリアクリルアミド、デキストラン、アガロース、またはそれらのいくつかの組合せもしくはバリアントを含むフィルムである。いくつかの実施形態では、固体状態のクラウディング剤(例えば、フィルム)は、目的の分子(例えば、シークエンシング用鋳型)を優先的に排除しながら、試料のバルク体積中の水を有利に取り込む。したがって、本明細書で提供される方法で、任意のそのような適当な作用物質が、固体状態クラウディング剤として使用され得ることが認められるべきである。
【0062】
凝縮剤
本明細書において使用する、「凝縮剤」とは、目的の分子と組み合わされると、目的の分子に、凝縮剤の非存在下におけるその構造に対して凝縮された構造をとらせる任意の天然または合成化合物を指す。例えば、所定の試料において、目的の分子は、凝縮剤の存在下で、凝縮剤を欠く同じ試料よりも小さい体積を占める。したがって、いくつかの実施形態では、凝縮剤は、試料中における目的の分子の占有体積を減少させる。いくつかの実施形態では、凝縮剤は目的の分子と相互作用して、その結果、該分子は試料中でより小さい分率の全体積を占有する圧縮された構造をとる。いくつかの実施形態では、凝縮剤は、目的の分子と相互作用して、該分子の広がった体積を縮小させる。凝縮剤を導入することにより、該分子は、凝縮剤が非存在の場合よりも小さい広がりの体積を有することができて、該分子は、そのより小さい広がりの体積のゆえに、試料をより容易にウェル中にローディングすることができる。いくつかの実施形態では、凝縮剤は、同じ溶液中の他の成分に対して不活性である。いくつかの実施形態では、凝縮剤は、同じ溶液中で起こる反応に干渉しない。
【0063】
図5は、目的の分子を有する試料中における凝縮剤の効果の例を一般的に示す。例えば、スキーム500は、目的の分子591が凝縮剤530と接触するプロセスを描いている。目的の分子591
1は、半径r
1の球によって近似される初期体積V
1を占有するものとして示されている。凝縮剤530と接触した後、凝縮された目的の分子591
2は、半径r
2の球によって近似される凝縮された体積V
2を占有するものとして示されている。いくつかの実施形態では、初期体積V
1および凝縮された体積V
2は、目的の分子591
1および凝縮された目的の分子591
2の体積の広がりを、それぞれ指す。したがって、いくつかの実施形態では、凝縮剤530は、目的の分子591が溶液中で占有する、分子の広がった体積と考えることができる体積を縮小させるように構成されている。凝縮剤を導入することにより、目的の分子は、凝縮剤が非存在の場合よりも小さい体積の広がりを有することができて、該分子は、そのより小さい体積の広がりのゆえに、試料ウェル中により容易にローディングされ得る。
【0064】
図5は、目的の分子を試料ウェル中にローディングすることに関して、凝縮剤の使用の例をさらに示す。パネル501
1および501
2は、それぞれ目的の分子591と結合するように構成されたカップリング基593を含む底部表面を有する試料ウェルを描いている。さらに、パネル501
1および501
2は、目的の分子を含む試料591と接触した試料ウェルをそれぞれ描いている。パネル501
1に描かれた試料は、凝縮剤と接触しなかった目的の分子591
1を含むが、パネル501
2に描かれた試料は、凝縮剤と接触して凝縮された目的の分子591
2を含む。示されるように、凝縮された目的の分子591
2は、パネル501
1に示された目的の分子591
1と比較して凝縮された体積を占有する。したがって、凝縮された目的の分子591
2により占有される減少した体積は、目的の分子591がカップリング基593を通じて底部表面に結合する確率の増大を生じ得る。いくつかの実施形態では、凝縮剤は、比較的小さい体積(例えば、単一分子の占有のために適当な体積、例えば、単一分子シークエンシングのために使用されるアレイの試料ウェルなど)の容量を有する試料ウェル中で比較的大きい体積を占有する目的の分子591をローディングすることが望ましい場合に、有利に利用することができる。いくつかの実施形態では、凝縮剤は、本明細書に記載されたクラウディング剤との組合せでさらに利用することができる。そのような実施において、試料の接近可能なバルク体積を減少させるクラウディング剤の正味の効果、および各目的の分子により占有される体積を減少させるクラウディング剤は、ポアッソン統計により予測される値に近似しているかまたはそれを超える試料ウェルの単一占有を生ずる。
【0065】
いくつかの実施形態では、凝縮剤は核酸凝縮剤である。核酸凝縮剤は、体積排除および電荷スクリーニングを含むが、これらに限定されない様々な機構により核酸を圧縮することができる。核酸を凝縮する作用物質の能力を評価するアッセイは、例えば、WO/1996/021036に記載されているように、当技術分野において既知であり、関係のあるその内容は、その全体で参照により本明細書に援用される。いくつかの実施形態では、核酸凝縮剤は、核酸と静電的電荷-電荷相互作用を通じて相互作用して核酸構造の折りたたみ(例えば、核酸凝縮)を誘発する。いくつかの実施形態では、凝縮剤は、以下の1つまたは複数の結果として核酸を凝縮させることができる:らせん構造のセグメントを一緒にする浸透圧を働かせる(例えば、分子のクラウディング効果);核酸セグメント間の反発する相互作用を減少させる(例えば、ホスフェートの電荷を中和することにより);および核酸セグメント間の引きつける相互作用を増大させる。いくつかの実施形態では、DNAセグメント間の引きつける相互作用が、多価カチオン性に荷電した凝縮剤により誘発され得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、凝縮剤はポリカチオンを含む。本明細書において使用する、ポリカチオンは、複数の正に荷電した部位を有する化合物を一般的に指す。いくつかの実施形態では、ポリカチオンは、目的の分子を含む試料中に存在するときにはポリカチオン性である。例えば、いくつかの実施形態では、目的の分子を含む試料における条件(例えば、pH、緩衝能力、イオン強度)は、凝縮剤が試料中でポリカチオン性であるようなものである。いくつかの実施形態では、ポリカチオンは、生理学的pH(例えば、pH≒7.4)でポリカチオン性である。いくつかの実施形態では、ポリカチオンは、正に荷電したモノマーユニットのポリマーであるが、いくつかの正に荷電していないユニットが、ポリマー中に存在することもある。ポリカチオンの例には、いくつかの実施形態では、スペルミン、スペルミジン、およびプトレシンなどのポリアミンが含まれる。いくつかの実施形態では、ポリカチオンは、ポリヒスチジン、ポリリシン、ポリアルギニン、およびポリオルニチンなどのポリアミノ酸を含む。他の塩基性ペプチドおよび小さい塩基性タンパク質は、ポリカチオン性凝縮剤(例えば、ヒストン、プロタミン)としての使用をさらに考慮される。アミノ酸で構成されるポリカチオンとして、L-またはD-型のいずれも使用され得る。塩基性アミノ酸は、リシン、アルギニン、アミノ酸類似体、例えばオルニチンおよびカナリン、改変された塩基性アミノ酸、例えばホモアルギニン、および陽性電荷を担持するように改変された他の改変されたアミノ酸、例えばグアジニノバリネート、およびアミノエチルシステインを含む。ポリカチオンの追加の例として、ポリアンモニウム(例えば、ポリブレン(臭化ヘキサジメトリン))、脂質(例えば、DOTAP、DC-Chol/DOPE、DOGS/DOPE、およびDOTMA/DOPE)が含まれる。
【0067】
酸素除去シール材
さらなる他の態様で、本開示は、酸素に感受性のあるシステムを保護するために、および試料の完全性を維持するために有用な方法および組成物を提供する。生物学的反応および/または化学反応は、外環境との相互作用にしばしば感受性があり得て、例えば、蒸発しやすく、外環境における酸素および/または他の分子に感受性がある。シール材は、外環境との有害な相互作用から感受性のある反応を保護するために、以前から使用されてきた。例えば、鉱物油は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による増幅中に試料を覆うためにしばしば使用される。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載されたローディングおよびシークエンシングの方法は、シークエンシング反応をシール材(例えば、鉱物油)で覆うことをさらに含む。本発明者らは、本明細書に記載されたシークエンシング反応のための追加の保護効果を与えるために、従来のシール材に替えてまたはそれに加えて、ある組成物が使用され得ることを認識して認めた。例えば、いくつかの実施形態では、酸素除去シール材を試料と接触させることができる。
【0068】
本開示の態様は、単一分子のシークエンシング技術に関する。いくつかの実施形態では、単一分子のシークエンシングは、光学システムの使用を含む。そのような実施形態では、光学システムは、シークエンシング反応の1種または複数の成分に対して直接または間接的に分解性であり得る励起エネルギーの使用を伴うことができる。例えば、いくつかの実施形態では、励起エネルギーは、シークエンシング反応における重合酵素の活性を損ない得る反応性酸素種を発生し得る。本発明者らは、酸素除去シール材が、反応性酸素種の存在を最小化して、一方で従来のシール材(例えば、鉱物油)と同じ多くの長所を提供することを認識して認めた。
【0069】
いくつかの実施形態では、酸素除去シール材は、被酸化性物質および触媒を含む。本明細書において使用する「被酸化性物質」は、酸化され得る任意の作用物質である。いくつかの実施形態では、被酸化性物質の酸化は、触媒により媒介されおよび/または加速される。したがって、いくつかの実施形態では、酸素除去は、触媒により触媒される反応または反応のシリーズにおける被酸化性物質の酸化を通じて進行する。いくつかの実施形態では、酸素除去シール材は、好ましくは、シークエンシング反応に関して非阻害(例えば、不活性)である。シークエンシング反応および試薬は、酸素除去成分から相分離により保護される(例えば、除去剤は油相に隔離されてとどまり、水性のシークエンシング試薬から分離されて安全に保たれる)。
【0070】
いくつかの実施形態では、被酸化性物質は有機化合物である。いくつかの実施形態では、被酸化性物質は、少なくとも1つのエチレン結合を備える。本明細書において使用する「エチレン結合」は、炭素-炭素二重結合である。いくつかの実施形態では、エチレン結合は、置換されていてもよくまたは非置換でもよい。いくつかの実施形態では、エチレン結合は、末端の結合であることもまたは内部の結合であることもある。いくつかの実施形態では、エチレン結合は、環構造内に含有される。例えば、いくつかの実施形態では、エチレン結合が、5員環または6員環(例えば、ペントース環またはヘキソース環)により含まれていることもある。いくつかの実施形態では、上記有機化合物は、酸素含有部分を含むこともできる。例えば、酸素含有部分は、エステル、カルボン酸、アルデヒド、エーテル、ケトン、アルコール、過酸化物、および/またはヒドロペルオキシドを含むことができるが、これらに限定されない。
【0071】
いくつかの実施形態では、本発明で提供される酸素除去シール材の被酸化性物質は、アスコルビン酸およびイソアスコルビン酸(遊離酸、塩および誘導体として)、亜硫酸のアルカリ金属塩、アルカリ性土類金属塩、またはアンモニウム塩またはそれらの混合物を含むと考えられる。いくつかの実施形態では、被酸化性物質は、水に不溶性のアスコルビン酸である。いくつかの実施形態では、被酸化性物質は、アスコルビン酸およびイソアスコルビン酸を、有機酸のアルカリ金属塩、アルカリ性土類金属塩などのイオン性金属塩、エステル、または他の誘導体化されたアスコルビン酸として、シール材に導入することにより形成される。いくつかの実施形態では、酸素除去剤のアスコルビン酸および/またはイソアスコルビン酸成分は、他の既知の還元剤、例えば、第2のアスコルビン酸またはイソアスコルビン酸、タンニン、亜硫酸塩等で補完されてもよい。いくつかの実施形態で、アスコルビン酸は、C10~C22脂肪酸エステルと共に炭化水素鎖中で完全飽和したまたは不飽和を含有してもよいC6~C22脂肪酸エステルまたはジエステルの形態であることができる。いくつかの実施形態で、アスコルビン酸エステルは、例えば、ラウリル酸アスコルビル、ミリスチン酸アスコルビル、パルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビル等であることができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、除去剤はあまり可溶性ではない。いくつかの実施形態では、除去剤は、油で提供される(例えば、飽和と50%の飽和の間の油で)。いくつかの実施形態では、除去剤(例えば、油で)は、シークエンシングまたは他の反応に干渉し得る程度に下層の水性相中に分配されることを避けるために、その溶解性に基づいて選択される(および/または適当な濃度で提供される)。
【0073】
本明細書に記載されたように、いくつかの実施形態では、酸素除去シール材は触媒を含む。広範囲の触媒は、本明細書に記載された技法で作用すると考えられる。適当な触媒は金属イオンを含み、それは少なくとも2つの酸化状態の間で容易に相互交換することができる。いくつかの実施形態では、触媒は遷移金属である。例えば、いくつかの実施形態では、遷移金属は、周期表の第1の、第2の、または第3の遷移系列から選択することができる。適当な金属は、マンガンIIまたはIII、鉄IIまたはIII、コバルトIIまたはIII、ニッケルIIまたはIII、銅IまたはII、ロジウムII、IIIまたはIV、およびルテニウムを含むが、これらに限定されない。金属の酸化状態は、導入時には必ずしも活性形態のものであるとは限らないことが認められるべきである。いくつかの実施形態では、遷移金属は、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、および亜鉛から選択される。例えば、いくつかの実施形態では、触媒は銅を含む。いくつかの実施形態では、遷移金属は、ランタニド金属(例えば、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、またはルテチウム)である。
【0074】
いくつかの実施形態では、触媒は、塩の形態にある金属、例えば、金属イオンおよび対イオンを含む。金属イオンと錯体化し得る任意の適当な荷電化合物は、本明細書に記載された酸素除去シール材において使用され得ると考えられる。いくつかの実施形態で、対イオンは、ハロゲン化物イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、硫化物イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、酢酸イオン、アセチルアセトンイオン、過塩素酸イオン、水酸化物イオン、メトキシドイオン、およびエトキシドイオンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、対イオンは、ラウリン酸イオン、ミリスチン酸イオン、パルミチン酸イオン、ステアリン酸イオン、オレイン酸イオン、およびリノール酸イオンからなる群から選択される。
【0075】
いくつかの実施形態では、本発明で提供される酸素除去シール材の触媒は、水溶解性が限定されるかまたは水溶解性がない酸化触媒を含むと考えられる。いくつかの実施形態では、触媒は、実質的に水不溶性の有機または無機遷移金属化合物の形態で提供される。いくつかの実施形態では、触媒は、遷移金属がイオン結合または共有結合によって他の元素または基と結合している塩または化合物の形態であることができる。いくつかの実施形態では、触媒は、キレート剤、錯体、または有機カルボキシル脂肪酸塩の形態であってもよい。いくつかの実施形態では、遷移金属化合物は、その最高の酸化状態で遷移金属を有する化合物である。いくつかの実施形態では、酸素除去シール材は、銅錯体およびアスコルビル脂肪酸エステルを含む。
【0076】
試料のローディング
いくつかの態様で、本開示は、目的の分子(例えば、シークエンシング用鋳型)を試料ウェル中にローディングするために有用な方法および組成物に関する。例えば、いくつかの実施形態で、本開示は、試料を、試料ウェルを備える集積化デバイスの表面に導入することにより、目的の分子を含む試料を試料ウェル中にローディングするために有用な方法および組成物を提供する。試料を集積化デバイスの表面に接触させることによる試料のローディングは、任意の数の適当な方法により実施することができる。いくつかの実施形態では、目的の分子を含む試料は、実施者によって、例えば、ピペット、ディスペンサー、または任意の適当な流体移送デバイス/システムによる、デバイスへの試料の添加によりローディングされる。いくつかの実施形態では、目的の分子を含む試料は、自動化された手段(例えば、ロボットのデバイス/システム)によるデバイスへの試料の添加によりローディングされる。いくつかの実施形態では、目的の分子を含む試料は、1つまたは複数の微小流体チャンネルを通じて、試料をデバイスに添加することによりローディングされる。
【0077】
いくつかの実施形態では、目的の分子は、分子を集積化デバイスに送達するために一般的に使用される方法により、集積化デバイス(例えば、試料ウェル、アレイを備える集積化デバイス)に送達することができる。例えば、送達方法は、目的の分子を流体中に懸濁して、得られた懸濁液を集積化デバイスの試料ウェル中に流し入れることを含むことができる。この方法は、関係のある懸濁液を集積化デバイスの1つまたは複数の領域に単にピペットで移す方法、または、電気信号または圧力に基づく流体の流動などのより活性な流動方法を含むことができる。いくつかの実施形態では、目的の分子を含む試料が、集積化デバイスの選択される領域中に、例えば、特定の目的の分子が集積化デバイスの特定の領域で分析されることになる領域中に流し込まれる。これは、遮蔽技法(直接流体の流動に対して遮蔽を適用する)により、またはインクジェット印刷方法を含む電気信号もしくは圧に基づく流体の流動などの活性流動方法により達成することができる。インクジェットおよび核酸および関係する試薬をアレイに送達する他の送達方法は、例えば、キンメルおよびオリバー(Kimmel and Oliver)(編)(2006) DNAマイクロアレイ、パートA:アレイプラットホームおよび湿潤-ベンチプロトコル(DNA Microarrays Part A:Array Platforms & Wet-Bench Protocols)、Volume 410(Methods in Enzymology)、ISBN-10:0121828158;リー(Lee)(2002) マイクロドロップジェネレーション(Microdrop Generation)ナノおよびマイクロサイエンス、エンジニアリング、技術および医学(Nano-and Microscience, Engineering, Technology and Medicine)CRC Press ISBN-10:084931559X;およびヘラー(Heller)(2002)「DNAマイクロアレイ技術:デバイス、システム、および応用」(DNA MICROARRAY TECHNOLOGY: Devices、 Systems、 and Applications) Annual Review of Biomedical Engineering 4:129-153に見出される。いくつかの実施形態では、微小流体の流動は、目的の分子送達のために使用することができる。集積化デバイスの領域は、関係のある懸濁液を集積化デバイスの正しい領域中に単にピペットで移すことによる送達の選択的標的であることもできる。
【0078】
いくつかの実施形態では、試料を、試料ウェルを備える集積化デバイスに導入することにより、目的の分子を含む試料を試料ウェル中にローディングする方法は、1回または複数の洗浄工程を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、集積化デバイスは、試料を集積化デバイスに導入する前またはその後で(例えば、目的の分子を含む試料を集積化デバイスの試料ウェル中にローディングする前および/または後)1回または複数回洗浄することができる。いくつかの実施形態では、集積化デバイスは、ローディングされるべき試料中の目的の分子を懸濁するために使用された同じ溶液または緩衝液で洗浄される。いくつかの実施形態では、集積化デバイスは、ノニオン界面活性剤(例えばツイーン20)で洗浄される。いくつかの実施形態では、洗浄工程は、洗浄溶液を集積化デバイス上でインキュベートすることを可能にするインキュベーション期間を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されたローディング方法は、洗浄工程を実施することなく実行することもできる。
【0079】
いくつかの態様において、本開示は、目的の分子を集積化デバイスの表面に接触させる工程、および目的の分子をクラウディング剤および/または凝縮剤と接触させる工程を含む、目的の分子(例えば、シークエンシング用鋳型)を試料ウェル中にローディングする方法を提供する。いくつかの実施形態では、接触させる工程は、任意の適当な順序で実行され得ることが認められるべきである。例えば、いくつかの実施形態では、目的の分子を、クラウディング剤および/または凝縮剤と接触させる前に、表面に接触させる。いくつかの実施形態では、クラウディング剤および/または凝縮剤と接触させる前に、目的の分子を、集積化デバイスと接触させ(例えば、ローディングして)続いてインキュベーション期間を設ける。いくつかの実施形態では、凝縮剤は、そのようなインキュベーション期間の間、試料中に存在する。いくつかの実施形態では、目的の分子を集積化デバイスと接触させた(例えば、ローディングした)後、直ちにまたはほぼ間もなく、クラウディング剤および/または凝縮剤を、集積化デバイスと接触させる(例えば、ローディングする)。いくつかの実施形態では、集積化デバイスと接触する前に、試料はクラウディング剤および/または凝縮剤を含む。
【0080】
試料を集積化デバイスの表面に接触させる実施形態の一例が、
図6A~6Cに描かれている。
図6Aで示されるように、目的の分子690を含む試料640を、複数の試料ウェルを有する集積化デバイスと接触させる。
図6Bは、試料640に添加されたクラウディング剤650を含む層660を描いている。いくつかの実施形態では、層660は、本明細書に記載された期間、試料640とインキュベートされる。いくつかの実施形態では、インキュベーション期間に、クラウディング剤650が、試料640中のバルク体積(例えば、水)を取り込んで目的の分子690を排除することを可能になる。
図6Cは、インキュベーション期間に続いて起こるこの体積排除効果を示しており、この期間中に、目的の分子690が試料ウェル中に押しやられて、それにより試料ウェルは、首尾よくローディングされた目的の分子691を受け入れる、より高い確率を有する。
【0081】
さらなる他の実施形態では、目的の分子を表面に接触させる前にクラウディング剤と接触させる。例えば、いくつかの実施形態では、目的の分子およびクラウディング剤を、集積化デバイスと接触させる(例えば、ローディングする)前に混合してもよい。そのような実施形態では、目的の分子およびクラウディング剤を混合して、ある期間平衡化させることができる。いくつかの実施形態では、目的の分子およびクラウディング剤を、集積化デバイスと接触させる(例えば、ローディングする)直前またはほぼ直前に混合する。さらなる他の実施形態で、目的の分子を、表面に接触させて、ほぼ同時にクラウディング剤と接触させる。例えば、いくつかの実施形態では、目的の分子およびクラウディング剤を、ほぼ同時に集積化デバイスと接触させ(例えば、ローディングする)、その結果、該2成分が集積化デバイスの表面で混合される。さらなる他の実施形態では、目的の分子は、表面に接触したときにクラウディング剤と接触する。例えば、いくつかの実施形態では、クラウディング剤を、目的の分子の前に、集積化デバイスと接触させる(例えば、ローディングする)。そのような実施形態では、(例えば、目的の分子を集積化デバイス上へ導入することによる)目的の分子のローディングの前に、クラウディング剤を、集積化デバイスと接触させ(例えば、ローディングして)続いてインキュベーション期間を設けることができる。
【0082】
本明細書に記載されたように、クラウディング剤は、目的の分子の試料ウェル中へのローディングを一般的に容易にする。いくつかの実施形態では、クラウディング剤は、目的の分子の試料ウェルの底部表面への連結を助長する。したがって、いくつかの実施形態では、シークエンシング反応の開始前に、集積化デバイス上で目的の分子-クラウディング剤混合物をインキュベートすることが望ましいこともある。いくつかの実施形態では、目的の分子-クラウディング剤混合物は、シークエンシング反応の開始の前にほぼ1分からほぼ5分間、ほぼ5分からほぼ10分間、ほぼ10分からほぼ20分間、ほぼ20分からほぼ30分間、ほぼ30分からほぼ40分間、ほぼ40分からほぼ50分間、ほぼ50分からほぼ60分間、またはほぼ60分からほぼ90分間、集積化デバイス上でインキュベートされる。
【0083】
インキュベーション期間に続いて、いくつかの実施形態では、過剰体積が、集積化デバイスから除去され得る。いくつかの実施形態では、過剰体積は、クラウディング剤および/または試料ウェルに連結されなかった任意の目的の分子を含む。例えば、
図6Cに描かれた目的の分子のローディングの成功に続いて、
図6Dは、クラウディング剤および試料ウェル中へのローディングに成功しなかった目的の分子を含む過剰体積の除去後の集積化デバイスを描いている。
【0084】
いくつかの実施形態では、集積化デバイスの表面は、過剰体積の除去に続いて1回または複数回洗浄される。本明細書に記載されたように、いくつかの実施形態では、目的の分子は、本開示に記載された任意の適当な技法により開始され得る反応(例えば、シークエンシング反応)に関与することができる。例えば、
図6Dに描かれた過剰体積の除去に続いて、
図6Eは、活性な目的の分子692を生ずる反応を開始する要素652を含む調製物670の添加を描いている。いくつかの実施形態では、集積化デバイスの表面は、反応の開始に先立って1回または複数回洗浄される。いくつかの実施形態では、集積化デバイスの表面は、目的の分子を懸濁するために使用された溶液で1回または複数回洗浄される。いくつかの実施形態では、集積化デバイスの表面は、反応を開始させるために使用された溶液で1回または複数回洗浄される。いくつかの実施形態では、シークエンシング反応は、任意選択の除去および/または洗浄工程に続いて、本明細書の他の箇所で記載された開始の任意の適当な手段により開始される。例えば、いくつかの実施形態では、目的の分子は、シークエンシング反応に関与するシークエンシング用鋳型を含む。そのような実施形態では、シークエンシング用鋳型は、シークエンシング反応のために有利に「下準備」され得る。いくつかの実施形態では、シークエンシング用鋳型を含む試料は、シークエンシング反応を開始させるために必要な大部分のまたは1種を除く全ての成分を有する。したがって、シークエンシング反応は、適当な時に、試料への必要な成分の添加により開始することができる。いくつかの実施形態では、シークエンシング反応は、試料へのdNTPの添加により開始される。いくつかの実施形態では、シークエンシング反応は、試料への金属カチオン(例えば、マグネシウムイオン)の添加により開始される。いくつかの実施形態では、試料中における阻害剤の存在は、シークエンシング反応の開始を妨げる。そのような実施形態では、反応は、阻害剤の除去により、例えば、阻害剤を希釈して除去することにより(例えば、緩衝液の交換により)開始することができる。したがって、試料を、シークエンシング反応の開始の前に、集積化デバイスの表面に接触させる(例えば、ローディングする)ことが好ましいこともある。
【0085】
いくつかの実施形態では、開始された反応を覆うために、シール材が試料に添加される。いくつかの実施形態では、シール材は、酸素除去シール材である。例えば、
図6Eで示されるように反応の開始に続いて、
図6Fは、試料に添加された酸素除去シール材654を含む層680を描いている。適当な酸素除去シール材の性質、説明、および例は本明細書に記載されている。
【0086】
試料調製
いくつかの態様において、本開示は、分析のための試料を得ることと試料を分析することとの間の工程およびプロセスにおける改善に一般的に関する。例えば、いくつかの実施形態では、本開示は、シークエンシングのための試料を得ることと試料からシークエンシングの情報を得ることとの間の工程およびプロセスにおける改善に関する。いくつかの実施形態では、試料は核酸の試料を含む。いくつかの態様において、シークエンシングのための試料を調製する工程は、試料をシークエンシング分析にかける前に、1種または複数の物理的および/または化学的改変を、試料(例えば、生物学的試料、化学的試料、核酸試料、タンパク質試料)に行う工程を一般的に伴う。いくつかの実施形態では、シークエンシングのための試料を調製する工程は、シークエンシング用鋳型の生成を伴う。
【0087】
本明細書において使用する、「シークエンシング用鋳型」とは、分析(例えば、シークエンシング分析)の対象である分子である。いくつかの実施形態では、シークエンシング用鋳型は、核酸分子を含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、「標的」または「鋳型」核酸と称される。いくつかの実施形態では、核酸分子は、少なくとも1種のハイブリダイズしたプライマー/重合酵素複合体を含む。例えば、いくつかの実施形態では、核酸分子を、核酸分子の一部と相補性であるシークエンシングプライマーと、シークエンシングプライマーが核酸分子にアニーリングするように接触させる。このプライミングの位置が、重合酵素(例えば、DNAまたはRNAポリメラーゼ)が、核酸分子とカップリングしてハイブリダイズしたプライマー/重合酵素複合体を形成することができる部位を生じさせる。したがって、いくつかの実施形態では、少なくとも1つのハイブリダイズしたプライマー/重合酵素を含むシークエンシング用鋳型は、「シークエンシング用鋳型複合体」と称することができる。
【0088】
本明細書において使用する用語「核酸」は、1つまたは複数の核酸サブユニットを含む分子を一般的に指す。核酸は、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、およびウラシル(U)、またはそれらのバリアントから選択される1種または複数のサブユニットを含むことができる。いくつかの例において、核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)、またはそれらの誘導体である。核酸は、一本鎖または二本鎖であることができる。核酸は、環状であってもよい。いくつかの実施形態では、核酸は、ヌクレオチドの任意のポリマーを一般的に指す。
【0089】
本明細書において使用する用語「ヌクレオチド」は、核酸サブユニットを一般的に指し、それはA、C、G、T、またはU、またはそれらのバリアントもしくは類似体を含むことができる。ヌクレオチドは、成長する核酸鎖中に組み込まれ得る任意のサブユニットを含むことができる。そのようなサブユニットは、A、C、G、TもしくはU、または、1種もしくは複数の相補性A、C、G、TもしくはUに特異的な、またはプリン(例えば、AもしくはG、またはそれらのバリアントもしくは類似体)もしくはピリミジン(例えば、C、T、もしくはU、またはそれらのバリアントもしくは類似体)に相補性の、任意の他のサブユニットであることができる。サブユニットは、個々の核酸塩基または塩基の群(例えば、AA、TA、AT、GC、CG、CT、TC、GT、TG、AC、CA、またはウラシル-それらの相方)が解読されることを可能にすることができる。ヌクレオチドは、1つまたは複数のホスフェート基を含むことができる。ヌクレオチドは、メチル化された核酸塩基を含むことができる。例えば、メチル化されたヌクレオチドは、核酸塩基と連結した1つまたは複数のメチル基(例えば、核酸塩基の環と直接連結している、核酸塩基の環の置換基と連結している)を含むヌクレオチドであることができる。典型的なメチル化された核酸塩基は、1-メチルチミン、1-メチルウラシル、3-メチルウラシル、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、1-メチルアデニン、2-メチルアデニン、7-メチルアデニン、N6-メチルアデニン、N6,N6-ジメチルアデニン、1-メチルグアニン、7-メチルグアニン、N2-メチルグアニン、およびN2,N2-ジメチルグアニンを含む。
【0090】
本明細書において使用する用語「プライマー」は、核酸分子(例えば、オリゴヌクレオチド)を一般的に指し、それらはA、C、G、T、および/またはU、またはそれらのバリアントもしくは類似体を含む配列を含むことができる。プライマーは、DNA、RNA、PNA、またはそれらのバリアントもしくは類似体を含む合成オリゴヌクレオチドであることができる。プライマーは、そのヌクレオチド配列が、標的または鋳型核酸と相補性であるように設計されることが可能であり、またはプライマーはランダムなヌクレオチド配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、プライマーは、尾部(例えば、ポリA尾部、インデックスアダプター、分子バーコードなど)を含むことができる。いくつかの実施形態では、プライマーは、5から15塩基、10から20塩基、15から25塩基、20から30塩基、25から35塩基、30から40塩基、35から45塩基、40から50塩基、45から55塩基、50から60塩基、55から65塩基、60から70塩基、65から75塩基、70から80塩基、75から85塩基、80から90塩基、85から95塩基、90から100塩基、95から105塩基、100から150塩基、125から175塩基、150から200塩基、または200を超える塩基を含むことができる。
【0091】
いくつかの実施形態では、標的核酸を含む試料は、対象(例えば、ヒトまたは他の対象)から得られた生物学的試料から抽出することができる。いくつかの実施形態では、対象は患者であってもよい。いくつかの実施形態では、標的核酸は、診断の、予後の、および/または治療の目的のために検出および/またはシークエンシングすることもできる。いくつかの実施形態では、シークエンシングアッセイについての情報は、疾患または状態の診断、予後、および/または処置を助けるために有用であり得る。いくつかの実施形態では、対象は、疾患(例えば癌)などの健康状態を有すると疑われていることもある。いくつかの実施形態では、対象は、疾患のための処置を受けていてもよい。
【0092】
いくつかの実施形態では、生物学的試料は、対象の体液または組織、例えば、呼気、唾液、尿、血液(例えば、全血または血漿)、糞便、または他の体液または生検試料などから抽出することができる。いくつかの例では、1種または複数の核酸分子が、対象の体液または組織から抽出される。1種または複数の核酸は、対象の組織の一部などの対象から得られた、または全血などの対象の細胞を含まない体液から得られた1種または複数の細胞から抽出され得る。
【0093】
生物学的試料は、検出のための調製で処理することができる(例えば、シークエンシング)。そのような処理は、生物学的試料からの生体分子(例えば、核酸分子)の単離および/または精製、および生体分子のより多くのコピーの生成を含むことができる。いくつかの例で、1種または複数の核酸分子が、対象の体液または組織から単離されおよび精製されて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの核酸増幅により増幅される。次に、1種または複数の核酸分子またはそれらのサブユニットを、シークエンシングなどで識別することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、核酸試料は、増幅を必要とせずに評価することができる(例えば、シークエンシングされる)。
【0094】
本出願に記載されたように、シークエンシングは、鋳型に相補性または似通った別の生体分子を合成して、例えば鋳型核酸分子と相補性の核酸分子を合成して、ヌクレオチドの組込みを時間とともに識別することによる鋳型の生体分子(例えば、核酸分子)の個々のサブユニットの決定(例えば、合成によるシークエンシング(sequencing by synthesis)を含む。代替として、シークエンシングは、生体分子の個々のサブユニットの直接識別を含むことができる。
【0095】
シークエンシングの間に、生体分子の個々のサブユニットを示すシグナルは、メモリーに捕集されてリアルタイムでまたはより後の時点で処理されて、生体分子の配列を決定することができる。そのような処理は、そのシグナルと個々のサブユニットの識別を可能にする参照シグナルとの比較を含むことができて、いくつかの場合に読み取りを生ずる。読み取りは、より大きい配列または領域を識別するために使用することができる十分な長さの配列(例えば、少なくとも約30、50、100塩基対(bp)またはそれを超える)であることもできて、例えば、染色体またはゲノム領域または遺伝子上の位置にアラインすることができる。
【0096】
配列の読み取りは、対象のゲノムのより長い領域を再構築するために使用することができる(例えば、アライメントにより)。読み取りは、染色体の領域、染色体全体、またはゲノム全体を再構築するために使用することができる。配列の読み取りまたはそのような読み取りから生成されたより大きい配列は、対象のゲノムを分析するために、例えばバリアントまたは多型を識別するために使用することができる。バリアントの例は、タンデムSNPを含む一塩基多型(SNP)、インデルまたは欠失挿入多型(DIP)とも称される小規模の多塩基欠失または挿入、多塩基多型(MNP)、ショートタンデムリピート(STR)、微小欠失を含む欠失、微小挿入を含む挿入、遺伝子重複、逆位、転座、増殖(multiplication)、複合多部位バリアント、コピー数多型(CNV)を含む構造変異を含むが、これらに限定されない。ゲノム配列は、バリアントの組合せを含むことができる。例えば、ゲノム配列は、1つまたは複数のSNPおよび1つまたは複数のCNVの組合せを包括することができる。
【0097】
用語「ゲノム」は、生物体の遺伝情報の全体を一般的に指す。ゲノムは、DNAまたはRNAのいずれかでコードされ得る。ゲノムは、タンパク質をコードするコード領域ならびに非コード領域を含むことができる。ゲノムは、生物体中で全ての染色体の配列を一緒に含むことができる。例えば、ヒトゲノムは、合計で46個の染色体を有する。これらの全ての配列は、一緒になってヒトゲノムを構成する。いくつかの実施形態では、全ゲノムの配列が決定される。しかしながら、いくつかの実施形態では、ゲノムのサブセット(例えば、1個または2から3個の染色体、またはそれらの領域)または1個または2から3個の遺伝子(またはそれらの断片)についての配列情報が、診断の、予後の、および/または治療的適用のために十分である。
【0098】
いくつかの実施形態は、検体中の単一分子を検出することによる診断のための試験を対象とすることもできるが、本発明者らは、本開示の方法および組成物が、ポリペプチド(例えば、タンパク質)のシークエンシングまたは1種もしくは複数の核酸セグメント、例えば、遺伝子の核酸(例えば、DNA、RNA)のシークエンシングを実施するために使用され得ることも認識した。
【0099】
シークエンシング
いくつかの実施形態では、本出願の態様は、生体試料のアッセイ法と関連する方法で使用可能である。典型的な実施形態では、本願明細書で提供される方法は、試料中の1つもしくは複数の核酸もしくはポリペプチドの配列を決定し、および/または試料中の1つもしくは複数の核酸もしくはポリペプチドバリアント(例えば、目的とする遺伝子内の1つまたは複数の突然変異)の有無を決定するのに使用される技法において有用である。いくつかの実施形態では、核酸配列情報を提供するため、または診断上、予後上、および/または治療上の目的で、目的とする1つまたは複数の核酸の有無を決定するために、患者試料(例えば、ヒト患者試料)上でテストが実施可能である。いくつかの例では、診断テストには、例えば対象の生体試料中の無細胞DNA分子および/または発現産物(例えば、RNA)をシークエンシングすることにより、対象の生体試料中の核酸分子をシークエンシングすることが含まれ得る。例えば、本開示は、それぞれの内容を本願明細書に援用する同時係属中の米国特許出願第14/543,865号、同第14/543,867号、同第14/543,888号、同第14/821,656号、同第14/821,686号、同第14/821,688号、同第15/161,067号、同第15/161,088号、同第15/161,125号、同第15/255,245号、同第15/255,303号、同第15/255,624号、同第15/261,697号、同第15/261,724号、同第62/289,019号、同第62/296,546号、同第62/310,398号、同第62/339,790号、同第62/343,997号、同第62/344,123号、および同第62/426,144号に記載されている技術において有利に利用され得る方法および組成物を提供する。
【0100】
本出願のいくつかの態様は、生物学的ポリマー、例えば核酸およびタンパク質等をシークエンシングする能力を有する技法において有用である。いくつかの実施形態では、本出願に記載されている方法および組成物は、核酸またはタンパク質中に組み込まれる一連のヌクレオチドまたはアミノ酸モノマーを識別する技術(例えば、一連の標識されたヌクレオチドまたはアミノ酸モノマーの組み込みについて、そのタイムコースを検出することによる)において使用可能である。いくつかの実施形態では、本出願に記載されている方法および組成物は、重合酵素により合成される鋳型依存性核酸シークエンシング反応生成物に組み込まれる一連のヌクレオチドを識別する技法に組込み可能である。
【0101】
シークエンシング期間中に、重合酵素は、標的核酸分子(例えば、シークエンシング用鋳型の核酸分子)のプライミング位置にカップリングする(例えば、連結する)ことができる。プライミング位置は、標的核酸分子の一部分に対して相補的なプライマーを含み得る。代替案として、プライミング位置は、標的核酸分子の二本鎖セグメント内に提供されるギャップまたはニックである。ギャップまたはニックは、長さが0から少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、または40個のヌクレオチドであり得る。ニックは、二本鎖配列の一方の鎖に切れ目を設けることができ、この切れ目は重合酵素、例えば鎖置換型ポリメラーゼ酵素等に対してプライミング位置を提供し得る。
【0102】
場合によっては、シークエンシングプライマーが、固体支持体に対して固定化されても、またされなくてもよい標的核酸分子に対してアニーリングされ得る。固体支持体は、例えば、核酸のシークエンシングで使用される集積化デバイス上の試料ウェルを含み得る。いくつかの実施形態では、シークエンシングプライマーは、固体支持体に固定化可能であり、また標的核酸分子のハイブリダイゼーションも標的核酸分子を固体支持体に固定化する。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは固体支持体に固定化され、そして可溶性プライマーおよび標的核酸がポリメラーゼと接触する。ただし、いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ、標的核酸、およびプライマーを含む複合体が溶液中で形成され、そして該複合体は固体支持体に固定化される(例えば、ポリメラーゼ、プライマー、および/または標的核酸の固定化により)。いくつかの実施形態では、試料ウェル中の成分のいずれも、固体支持体に固定化されない。例えば、いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ、標的核酸、およびプライマーを含む複合体が溶液中で形成され、そして該複合体は固体支持体に固定化されない。
【0103】
適切な条件下では、アニーリングされたプライマー/標的核酸と接触しているポリメラーゼ酵素が、1つまたは複数のヌクレオチドをプライマー上に付加するまたは組み込むことができ、そしてヌクレオチドは、5’→3’方向、鋳型依存的にプライマーに付加され得る。プライマー上へのそのようなヌクレオチドの組み込み(例えば、ポリメラーゼの作用による)は、プライマー伸長反応と一般的に呼ばれる場合がある。各ヌクレオチドは、核酸伸長反応期間中に検出および識別可能であり(例えば、その発光寿命および/またはその他の特性に基づき)、ならびに伸長したプライマー、したがって新規合成された核酸分子の配列に組み込まれた各ヌクレオチドを決定するのに使用可能である検出可能なタグと関連付けることができる。新規合成された核酸分子の配列相補性により、標的核酸分子の配列も決定可能である。場合によっては、標的核酸分子に対するシークエンシングプライマーのアニーリング、およびシークエンシングプライマーへのヌクレオチドの組み込みは、類似した反応条件(例えば、同一のまたは類似した反応温度)、または異なる反応条件(例えば、異なる反応温度)において生じ得る。いくつかの実施形態では、合成法によるシークエンシングには、標的核酸分子の集団(例えば、標的核酸のコピー)の存在、および/または標的核酸の集団を実現するために標的核酸を増幅させる工程が含まれ得る。ただし、いくつかの実施形態では、合成によるシークエンシングが、評価対象となる各反応内の単一分子の配列を決定するのに使用される(および核酸増幅法は、シークエンシング用の標的鋳型を調製することを必要としない)。いくつかの実施形態では、本出願の態様に基づき、複数の単一分子シークエンシング反応が並行して実施される(例えば、単一の集積化デバイス上で)。例えば、いくつかの実施形態では、複数の単一分子シークエンシング反応が、集積化デバイス上の別個の反応チャンバー内でそれぞれ実施される。
【0104】
複数の実施形態で、約10塩基対(bp)、50bp、100bp、200bp、300bp、400bp、500bp、1000bp、10,000bp、20,000bp、30,000bp、40,000bp、50,000bp、または100,000bpと等しいかまたはそれを超える長さを有する核酸分子を含むシークエンシング用鋳型をローディングすることができる。いくつかの実施形態では、単一分子のシークエンシングで使用される標的核酸分子は、試料ウェルの底または側壁などの固体の支持体に固定化されたまたは取り付けられたシークエンシング反応の少なくとも1つの追加の成分(例えば、DNAポリメラーゼなどの重合酵素、およびシークエンシングプライマー)を含有する試料ウェルに添加または固定化された一本鎖の標的核酸鋳型である。標的核酸分子またはポリメラーゼは、試料ウェルの底部表面または側壁などの試料壁に直接またはリンカーを通じて取り付けることができる。試料ウェルは、例えば、適当な緩衝液、共同因子、酵素(例えば、ポリメラーゼ)およびデオキシリボヌクレオシドポリリン酸、例えば、検出可能な部分(例えば、発光性タグ)を任意選択で含んでいてもよい、デオキシアデノシントリホスフェート(dATP)、デオキシシチジントリホスフェート(dCTP)、デオキシグアノシントリホスフェート(dGTP)、デオキシウリジントリホスフェート(dUTP)およびデオキシチミジントリホスフェート(dTTP)dNTPを含むデオキシリボヌクレオシドトリホスフェートなどのプライマー伸長反応による核酸合成のために必要とされる任意の他の試薬を含有することもできる。
【0105】
いくつかの実施形態では、一本鎖の標的核酸鋳型を、シークエンシングプライマー、dNTP、ポリメラーゼ、および核酸合成のために必要な他の試薬と接触させることができる。いくつかの実施形態では、全ての適当なdNTPを、一本鎖の標的核酸鋳型と同時と接触させることができて(例えば、全てのdNTPが同時に存在する)、その結果dNTPの組込みが連続的に起こり得る。他の実施形態では、dNTPを、一本鎖の標的核酸鋳型と順次接触させることができて、その場合、一本鎖の標的核酸鋳型がそれぞれ適当なdNTPと別々に接触し、一本鎖の標的核酸鋳型の異なるdNTPとの接触の間に洗浄工程がある。一本鎖の標的核酸鋳型を、各dNTPと別々と接触させた後洗浄する、そのようなサイクルを、識別されるべき一本鎖の標的核酸鋳型の各逐次的な塩基位置のために繰り返すことができる。いくつかの実施形態では、シークエンシングプライマーが一本鎖の標的核酸鋳型にアニーリングして、ポリメラーゼが引き続いてdNTP(または他のデオキシリボヌクレオシドポリホスフェート)を、一本鎖の標的核酸鋳型に基づいてプライマーに組み込む。
【0106】
ポリメラーゼ
本明細書において使用する用語「ポリメラーゼ」および「重合酵素」は、重合反応を触媒することができる任意の酵素を一般的に指す。ポリメラーゼの例は核酸ポリメラーゼ、トランスクリプターゼまたはリガーゼを含むが、これらに限定されない。ポリメラーゼは重合酵素であることができる。
【0107】
単一分子の核酸伸長を対象とする(例えば、核酸シークエンシングのため)実施形態では、標的核酸分子と相補性の核酸を合成することができる任意のポリメラーゼを使用することができる。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、および/またはそれらの突然変異体または1種または複数の変化した形態であってもよい。
【0108】
ポリメラーゼの例には、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、熱安定性ポリメラーゼ、野生型ポリメラーゼ、改変されたポリメラーゼ、大腸菌(E.coli)のDNAポリメラーゼI、T7DNAのポリメラーゼ、バクテリオファージT4のDNAポリメラーゼ、φ29(ファイ29)のDNAポリメラーゼ、Taqポリメラーゼ、Tthポリメラーゼ、Tliポリメラーゼ、Pfuポリメラーゼ、Pwoポリメラーゼ、Vent(登録商標)ポリメラーゼ、Deep Vent(商標)ポリメラーゼ、Ex Taq(商標)ポリメラーゼ、LA Taq(商標)ポリメラーゼ、Ssoポリメラーゼ、Pocポリメラーゼ、Pabポリメラーゼ、Mthポリメラーゼ、ES4ポリメラーゼ、Truポリメラーゼ、Tacポリメラーゼ、Tneポリメラーゼ、Tmaポリメラーゼ、Tcaポリメラーゼ、Tihポリメラーゼ、Tfiポリメラーゼ、Platinum(登録商標)Taqポリメラーゼ、Tbrポリメラーゼ、Tflポリメラーゼ、Tthポリメラーゼ、Pfuturbo(登録商標)ポリメラーゼ、Pyrobest(商標)ポリメラーゼ、Pwoポリメラーゼ、KODポリメラーゼ、Bstポリメラーゼ、Sacポリメラーゼ、Klenow断片、3’から5’のエキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ、およびそれらのバリアント、改変された生成物および誘導体が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、単一サブユニットのポリメラーゼである。ポリメラーゼの追加の例には、M2Yポリメラーゼ、ヒツジキンバ(Lucilia cuprina)のポリメラーゼ、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)のポリメラーゼ、桿菌ファージ(Bacillus phage)VMY22のポリメラーゼ、桿菌ファージGA-1のポリメラーゼ、放線菌ファージ(Actinomyces phage)AV-1のポリメラーゼ、カンジダタス・モランバクテリア(Candidatus Moranbacteria)のポリメラーゼ、桿菌ファージMG-B1のポリメラーゼ、エガセラ属種(Eggerthella sp.)のポリメラーゼ、ストレプトコッカス・ファージ(Streptococcus phage)CP-7のポリメラーゼ、バクテロイデス属種(Bacteroides sp.)のポリメラーゼ、およびトラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)のポリメラーゼが含まれる。DNAポリメラーゼおよびそれらの性質の例は、就中、DNA Replication 2nd edition,コーンバーグ(Kornberg)およびベイカー(Baker)、W.H.Freeman、New York、N.Y.(1991)に詳細に記載されているが、これらに限定されない。
【0109】
標的核酸と相補性dNTPの核酸塩基間の塩基対が形成されると、ポリメラーゼが、dNTPを、新しく合成された鎖の3’ヒドロキシル末端とdNTPのαホスフェートの間にリン酸ジエステル結合を形成することにより、新しく合成される核酸鎖中に組込む。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、処理能力が高いポリメラーゼである。しかしながら、いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、処理能力が低下したポリメラーゼである。ポリメラーゼの処理能力とは、核酸鋳型を放さずにdNTPを核酸鋳型に引き続いて組み込むポリメラーゼの能力を一般的に指す。
【0110】
いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、5’-3’エキソヌクレアーゼ活性および/または3’-5’エキソヌクレアーゼ活性の低いポリメラーゼである。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、改変されて(例えば、アミノ酸置換により)対応する野生型ポリメラーゼと比較して、5’-3’エキソヌクレアーゼ活性および/または3’-5’活性が低下している。DNAポリメラーゼのさらなる例には、9°Nm(商標)DNAポリメラーゼ(ニューイングランドバイオラブ(New England Biolabs))、およびKlenowエキソポリメラーゼのP680G突然変異体(タスケら(Tuske et al.)(2000)JBC275(31):23759-23768)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、処理能力が低下したポリメラーゼは、ヌクレオチドリピート(例えば、2個以上の連続する同じ種類の塩基)の1つまたは複数のストレッチを含有するシークエンシング用鋳型に対して向上した正確さを提供する。
【0111】
RNAの単一分子の伸長を対象とする(例えば、RNAシークエンシングのため)実施形態では、RNA鋳型から相補性DNA(cDNA)を合成することができる任意の逆転写酵素を使用することができる。そのような実施形態では、逆転写酵素は、cDNAが、RNA鋳型にアニーリングされた逆転写プライマーにdNTPを組み込むことにより、RNA鋳型から合成することができることにおいて、ポリメラーゼと類似の様式で機能することができる。次に、cDNAは、シークエンシング反応およびその決定された配列に関与することができる。次にcDNAの決定配列は、配列相補性により、元のRNA鋳型の配列を決定するために使用することができる。逆転写酵素の例には、モロニーマウスの白血病ウイルスの逆転写酵素(M-MLV)、トリ骨髄芽球症ウイルス(AMV)の逆転写酵素、ヒト免疫不全ウイルスの逆転写酵素(HIV-1)およびテロメラーゼ逆転写酵素が含まれる。
【0112】
異なる型の核酸に対する処理能力、エキソヌクレアーゼ活性、相対親和性、または核酸ポリメラーゼの他の性質は、対応する野生型ポリメラーゼに対する突然変異または他の改変によって当業者により向上または低下させることができる。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼを含む試料は、試料を本明細書に記載された集積化デバイスの表面に接触させることにより、試料ウェル中にローディングすることができる。
【0113】
試料ウェル
いくつかの態様において、本開示は、集積化デバイスにより備えられた試料ウェル中に試料をローディングする方法を提供する。本明細書において使用する「集積化デバイス」とは、ベース機器とインターフェイスで接続することができるデバイスである。いくつかの実施形態では、集積化デバイスは、1つまたは複数の試料ウェルおよび/またはセンサーを備えることができる。いくつかの実施形態では、集積化デバイスは、光を発するかまたは検出するベース機器とインターフェイスで接続できてもよい。そのような実施形態では、集積化デバイスは、1つまたは複数の試料ウェルを備えることができて、そのそれぞれは導波管を含む。
【0114】
本明細書に記載された型の集積化デバイスは、目的の分子をその中に受け入れるように構成された1つまたは複数の試料ウェルを備えることができる。いくつかの実施形態では、試料ウェルは、底の表面などの試料ウェルの表面に配置され得る目的の分子を受け入れる。いくつかの実施形態では、試料ウェルは、集積化デバイス内に形成されて、そこで、試料ウェルの底部表面は、それが形成された集積化デバイスの表面に対して遠位にある。いくつかの実施形態では、目的の分子が配置されるべき底部表面は、目的の分子を所望のレベルの励起エネルギーで励起するように構成された導波管から距離を有していてもよい。いくつかの実施形態では、試料ウェルは、導波管に関して、導波管に沿って伝播する光学モードのエバネセント場が目的の分子と重なるように、位置することができる。
【0115】
試料ウェルは、集積化デバイスの表面に上部開口を有することができて、目的の分子は、そこを通って試料ウェル中に入れられる。上部開口のサイズは、ローディングされる試料中の目的の分子(例えば、シークエンシング用鋳型)のサイズなどの様々な要因に依存し得る。いくつかの実施形態では、上部開口のサイズは、試料ウェルを備える集積化デバイスが利用される機器または装置に依存することもある。例えば、試料ウェルの内部からの光を検出するデバイスでは、背景シグナルが迷光から生じ得る。目的の分子が試料ウェル中に配置されて励起エネルギーで励起されたときに、背景シグナルは放出エネルギーにおける望ましくない変動の原因となり、したがって測定のノイズとなり得る。そのような変動を制限するために、上部開口のサイズは、背景シグナルの少なくとも一部を遮断するように構成することができる。
【0116】
試料ウェルの体積は、いくつかの実施において約10-21リットルから約10-15リットルの間であることができる。試料ウェルが小さい体積を有するので、検査対象の検体内において目的の分子が天然の環境で見出される濃度と類似の濃度に濃縮されているとしても、単一試料事象(例えば、単一分子事象)の検出は可能であり得る。例えば、マイクロモル濃度の目的の分子が、集積化デバイスと接触して配置される検体中に存在し得るが、任意の所定時には、ピクセルレベルで約1個のみの目的の分子(または単一分子事象)が試料ウェル内にあり得る。
【0117】
統計的に、いくつかの試料ウェルが、目的の分子を含有しないこともあり、いくつかは2個以上の目的の分子を含有することもある。しかしながら、かなりの数の試料ウェルが単一の目的の分子を含有することができて(例えば、一部の実施形態では少なくとも30%)、その結果、単一分子の分析を多数の試料ウェルについて並行して実施することができる。単一分子または単一試料事象が各試料ウェルで分析され得るので、集積化デバイスは、そうでなければアンサンブル平均では気づかれずに終わる個々の事象を検出することを可能にする。
【0118】
試料ウェルの官能化
ある実施形態で、本明細書に記載された技法は、分子を試料ウェル中にローディングすることに関するもので、その場合、分子は試料ウェルの標的体積(例えば、反応体積)に閉じ込められる。いくつかの実施形態では、標的体積は試料ウェル内の領域である。ある実施形態では、試料ウェルは、第1の材料および複数の金属または金属酸化物層によって形成された側壁を含む底部表面を備える。いくつかの実施形態では、第1の材料は、透明な材料またはガラスである。いくつかの実施形態では、底部表面は平坦である。いくつかの実施形態では、底部表面が、湾曲したウェルである。いくつかの実施形態では、底部表面は、複数の金属または金属酸化物層により形成された側壁より下の側壁の部分を含む。いくつかの実施形態では、第1の材料は溶融シリカまたは二酸化ケイ素である。いくつかの実施形態では、複数の層は、金属(例えば、Al、Ti)または金属酸化物(例えば、Al2O3、TiO2、TiN)をそれぞれ含む。
【0119】
1個または複数の分子または複合体(例えば、シークエンシング用鋳型)が底部表面に固定化されている実施形態では、底部表面を官能化して1個または複数の分子または複合体の連結を可能にすることが望ましいこともある。ある実施形態では、底部表面は透明なガラスを備える。ある実施形態では、底部表面は融合シリカまたは二酸化ケイ素を備える。いくつかの実施形態では、底部表面は、シランで官能化されている。いくつかの実施形態では、底部表面は、イオンで荷電したポリマーで官能化されている。いくつかの実施形態では、イオンで荷電したポリマーは、ポリ(リシン)を含む。いくつかの実施形態では、底部表面は、ポリ(リシン)-グラフト-ポリ(エチレングリコール)で官能化されている。いくつかの実施形態では、底部表面は、ビオチン化ウシ血清アルブミン(BSA)で官能化されている。
【0120】
ある実施形態では、底部表面は、ニトロドーパ基を含むコーティングで官能化されている。ある実施形態では、コーティングは式:
【0121】
【化1】
(式中、R
Nは、任意選択で置換されていてもよいアルキル鎖であり、および
【0122】
【化2】
は、水素または表面に対する連結点である)の基を含む。いくつかの実施形態では、R
Nは、ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、R
Nはポリ(リシン)またはポリ(エチレングリコール)を含む。いくつかの実施形態では、R
Nは、ビオチン化ポリ(エチレングリコール)を含む。いくつかの実施形態では、コーティングは、リシンモノマーを含むポリ(リシン)のコポリマーを含み、その場合リシンモノマーは、PEG、ビオチン化PEG、ニトロドーパ基、ホスホネート基、またはシランを独立に含む。ある実施形態では、コーティングは、式:
【0123】
【化3】
のポリマー(P)を含む。
いくつかの実施形態では、Xは、-OMe、ビオチン基、ホスホネート、またはシランである。いくつかの実施形態では、i、j、k、およびlのそれぞれは、独立に0から100の間に含まれる整数である。
【0124】
いくつかの実施形態では、底部表面は、アルキル鎖を含むシランで官能化されている。いくつかの実施形態では、底部表面は、任意選択で置換されていてもよいアルキル鎖を含むシランで官能化されている。いくつかの実施形態では、底部表面は、ポリ(エチレングリコール)鎖を含むシランで官能化されている。いくつかの実施形態では、底部表面は、カップリング基を含むシランで官能化されている。例えばカップリング基は、アミン基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基、金属、キレート剤などの化学部分を含むことができる。あるいは、それらは、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、レクチン、SNAP-tag(商標)または基質、それ故、会合性または結合性ペプチドまたはタンパク質、抗体または抗体断片、核酸または核酸類似物などの特定の結合要素を含むことができる。それに加えて、またはあるいは、カップリング基は、目的の分子とカップリングまたは結合するために使用される追加の基をカップリングするために使用することができて、追加の基は、いくつかの場合に、化学官能基および特定の結合要素の両方を含むことができる。例として、カップリング基、例えばビオチンは、基材表面上に積層されることが可能で、所定のエリアで選択的に活性化され得る。次に、中間結合剤、例えばストレプトアビジンが、第1のカップリング基とカップリングされ得る。この特定の例ではビオチン化されているであろう目的の分子が、次にストレプトアビジンとカップリングされる。
【0125】
いくつかの実施形態では、底部表面はビオチンを含むシランまたはそれらの類似物で官能化されている。いくつかの実施形態では、底部表面は、ビオチンを含むポリ(エチレン)グリコール鎖を含むシランで官能化されている。ある実施形態では、底部表面は、シランの混合物で官能化されており、その場合少なくとも1つの型のシランはビオチン含み、少なくとも1つの型のシランはビオチンを含まない。いくつかの実施形態では、上記混合物は、ビオチンを含まないシランよりも約10倍少ない、約25倍少ない、約50倍少ない、約100倍少ない、約250倍少ない、約500倍少ない、または約1000倍少ないビオチン化シランを含む。
【0126】
ポリメラーゼ複合体は、該複合体を、官能化された表面に結合混合物中で露出することにより、底部表面に固定化することができる。いくつかの実施形態では、結合混合物は、1種または複数の塩を含む。いくつかの実施形態では、塩は酢酸カリウムを含む。いくつかの実施形態では、塩は、塩化カルシウムを含む。いくつかの実施形態では、塩は、約1mMと約10mMの間の濃度で存在する。いくつかの実施形態では、塩は、約10mMから約50mMの間の濃度で存在する。いくつかの実施形態では、塩は、約50mMから約100mMの間の濃度で存在する。いくつかの実施形態では、塩は、約100mMから約250mMの間の濃度で存在する。いくつかの実施形態では、酢酸カリウムの濃度は約75mMである。いくつかの実施形態では、塩化カルシウムの濃度は約10mMである。いくつかの実施形態では、結合混合物は還元剤を含む。いくつかの実施形態では、還元剤は、ジチオスレイトール(DTT)を含む。いくつかの実施形態では、還元剤は、約1mMから約20mMの間の濃度で存在する。いくつかの実施形態では、ジチオスレイトールの濃度は約5mMである。いくつかの実施形態では、結合混合物は緩衝液を含む。いくつかの実施形態では、緩衝液はMOPSを含む。いくつかの実施形態では、緩衝液は、約10mMから約100mMの間の濃度で存在する。いくつかの実施形態では、MOPSの濃度は約50mMである。いくつかの実施形態では、緩衝液は約5.5から約6.5の間のpHで存在する。いくつかの実施形態では、緩衝液は、約6.5から約7.5の間のpHで存在する。いくつかの実施形態では、緩衝液は、約7.5から約8.5の間のpHで存在する。いくつかの実施形態では、結合混合物は、デオキシヌクレオチドトリホスフェート(dNTP)を含む。いくつかの実施形態では、デオキシヌクレオチドトリホスフェートは、250nMから10μMの間の濃度で存在する。いくつかの実施形態では、dNTPの濃度は約2μMである。いくつかの実施形態では、結合混合物は界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤はツイーン界面活性剤(例えばツイーン20)である。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、約0.01%から約0.1%の間の体積パーセントで存在する。いくつかの実施形態では、ツイーンの体積パーセントは約0.03%である。
【0127】
実施例1:メチルセルロース試料のローディング
2重量%のMETHOCEL溶液を、標準溶解プロトコル(メチルセルロース、Sigma M0387、2%および20℃で約1,500mPa・s、約63,000Da)に従って、脱イオン水中で作製した。シークエンシング用鋳型複合体(ポリメラーゼ/プライマー/鋳型複合体)のローディング中に使用するために、2%のMETHOCEL溶液を、結合緩衝液(500mM MOPS pH7.5、750mM酢酸カリウム、100mM DTT、20mM酢酸カルシウム、20μM NTP(各)、0.1%w/wツイーン20)の10×溶液と9:1で混合した。その結果生じた緩衝液中1.8%のポリマー溶液は、1×結合緩衝液(50mM MOPS pH7.5、75mM酢酸カリウム、10mM DTT、2mM酢酸カルシウム、2μM NTP(各)、0.01%w/wツイーン20)中のシークエンシング用鋳型複合体のローディング溶液と同じイオン性組成物を含有する。
【0128】
ツイーン20(0.1%)の溶液を、深さ270nmの試料ウェルを有するシークエンシングチップ(例えば、集積化デバイス)に添加して、10分間インキュベートした。ツイーン20を除去したら、シークエンシングチップを1×結合緩衝液で洗浄した後、30μLの結合緩衝液を集積化デバイスに添加した。シークエンシング用鋳型複合体を含有する溶液を、集積化デバイスに添加して、最終の濃度を250~1000pMにしてよく混合した。混合された溶液を、結合緩衝液中1.8%のメチルセルロース溶液で重層した。その後シークエンシングチップを30~60分間室温でインキュベートした。このインキュベーション期間は、シークエンシング用鋳型複合体のポリメラーゼ-ストレプトアビジン融合体がシークエンシングチップのビオチンでコートされた試料ウェルに固定化されることをおそらく可能にする。
【0129】
インキュベーション期間の後、溶液をシークエンシングチップから除去した。シークエンシングチップを結合緩衝液で3回洗浄した後、反応緩衝液(65mM MOPS pH7.7、120mM酢酸カリウム、20mM酢酸マグネシウム、10mM DTT、8mMプロトカテク酸、6mM 4-ニトロベンジルアルコール、1×プロトカテクエート3,4-ジオキシゲナーゼ)で1回洗浄した。最終的に、ある量の反応緩衝液をシークエンシングチップに添加して等体積の鉱物油で覆った。シークエンシング反応を、係属中の米国特許出願第14/821,656号、第15/261,697号、第15/261,724号および第15/161,125号に記載されている方法を使用して、リアルタイムでモニターした。代表的シークエンシング反応は、強度および時間トレースにより描いて
図7Aに示した。この反応で、9.1kbの二重らせんDNA鋳型を、1.2kbを超える読取り長さにわたってシークエンシングした(
図7B)。
【0130】
大きい鋳型のローディングに対するメチルセルロースの効果を評価するために、2つのシークエンシングチップに同じ9.1kbの鋳型DNAをそれぞれローディングして、1つは2%メチルセルロースの重層を使用し(上に記載したように)、1つは重層をしなかった。両方のチップに鋳型を660pMで1時間ローディングした。複数の組込みの形跡をメチルセルロースがローディングされたチップから検出したが、一方、重層のない集積化デバイスでは、シークエンシング活性は検出されなかった。次に、SYBR Gold、蛍光性DNA結合色素を、シークエンシングチップのそれぞれに添加した。撮像結果を
図8に描いてあり、それはDNA染色における劇的な差を示す。メチルセルロースがローディングされたチップ上の試料ウェルのほぼ30%は鮮やかに染色されて、DNA鋳型の存在を示したが、それに対して、メチルセルロース重層のない集積化デバイスでは染色は観察されなかった。
【0131】
類似の実験で、2つのさらなるシークエンシングチップに、同じ5.4kbの鋳型DNAをそれぞれローディングして、1つは2.7%メチルセルロースの重層を使用して、1つは拡散のみによりローディングした。両方のチップに、2.5nMのDNA鋳型を1.5時間ローディングした。次にSYBR GOLDをシークエンシングチップのそれぞれに添加した。撮像結果を
図9に描いてあり、それはDNA染色における劇的な差を示す。ほぼ25個の試料ウェルに、メチルセルロースチップ中の単一鋳型をローディングして拡散のみによりローディングされたほぼ13個の試料ウェルと比較した。
【0132】
実施例2:固体状態のクラウディング剤
図10は、固体状態のクラウディング剤としてアガロースの可能性を評価するために使用した実験のセットアップを描いた図である。示されるように、スクリューのナットの上の約4mm部分が、集積化デバイスのバルク試料ウェル(例えば、アレイの例えば凹んだ領域、または、ローディングされる試料のバルク体積を保持する他の容器)に挿入され得るボディを表す。3つの状態が、アガロースがクラウディング剤として作用するプロセスを示すために描かれている。「アガロースなし」のスクリューはいかなるクラウディング剤も含まないボディである。「乾燥アガロース」のスクリューは、乾燥したアガロースでコートされたボディを示す。
図10で見ることができるように、乾燥したアガロースはスクリューのネジ溝をほぼ満たす。「水和したアガロース」のスクリューは、試料がローディングされた集積化デバイスのバルク試料ウェル中に挿入された後における、乾燥したアガロースのボディを表す。ボディ上のアガロースコーティングの膨潤がバルク試料ウェル中における水によるアガロースの再水和を示し、その効果はバルク溶液中におけるシークエンシング用鋳型の増大した濃度を生ずるであろう。
【0133】
同等物および範囲
いくつかの発明的実施形態を、本願明細書に記載および例示してきたが、当業者は、機能を実施するための、ならびに/あるいは本願明細書に記載する結果および/または1つもしくは複数の長所を取得するための様々なその他の手段および/または構造について容易に思いつくであろうが、そのような変更および/または改変のそれぞれは、本願明細書に記載する発明的実施形態の範囲内にあるとみなされる。より一般的には、当業者は、本願明細書に記載するすべてのパラメーター、寸法、材料、および構成は典型的なものとして意図されており、実際のパラメーター、寸法、材料、および/または構成は特定の用途または発明の教示が使用される用途に依存することを容易に認めるであろう。当業者は、ルーチン的な実験を超える実験を用いなくても、本願明細書に記載する具体的な発明的実施形態と同等の多くの実施形態を認識し、または確認することができるであろう。したがって、上記実施形態は例示目的に限定して提示されており、また別途、特別に記載および特許請求されない限り、添付の特許請求の範囲およびその同等物の範囲内で、発明的実施形態は実践可能であるものと理解されるべきである。本開示の発明的実施形態は、本願明細書に記載する個々の特色、システム、物品、材料、キット、および/または方法それぞれを対象とする。さらに、2つ以上のそのような特性、システム、物品、材料、キット、および/または方法の任意の組み合わせは、そのような特性、システム、物品、材料、キット、および/または方法が相互に矛盾しなければ、本開示の発明の範囲内に含まれる。
【0134】
すべての定義は、本願明細書で定義されおよび使用される通りであり、辞書の定義、援用する文書の定義、および/または定義された用語の通常の意味に対して制御上優先するものと理解すべきである。
【0135】
本願明細書に開示するすべての参考資料、特許、および特許出願は、そのそれぞれについて引用された主題に関して援用され、場合によっては文書全体を包含し得る。
不定冠詞「a」および「an」は、本願明細書および特許請求の範囲において使用する場合、明確に反示されない限り、「少なくとも1つ」を意味するものと理解すべきである。
【0136】
慣用句「および/または」は、本願明細書および特許請求の範囲において使用する場合、そのように結びつけられた複数の要素の「いずれかまたは両方」、すなわち、ある場合には結合的に存在し、またその他の場合には非結合的に存在する要素を意味するものと理解されるべきである。「および/または」を用いてリスト化される複数の要素は、同様に、すなわちそのように結びつけられた複数の要素の「1つまたは複数」として解釈すべきである。「および/または」の句より特に識別される要素以外のその他の要素が、特に識別された要素と関連するまたは関連しないに関わらず任意選択で存在する可能性がある。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」との記載は、非制限的言語、例えば「を含む(comprising)」等と連携して使用される場合、1つの実施形態ではAのみ(任意選択でB以外の要素を含む);別の実施形態ではBのみ(任意選択でA以外の要素を含む);なおも別の実施形態ではAとBの両方(任意選択でその他の要素を含む)等を意味し得る。
【0137】
本願明細書および特許請求の範囲において使用する場合、「または(or)」は、上記で定義したような「および/または(and/or)」と同一の意味を有するものと理解すべきである。例えば、リスト内で品目を分離する際に、「または」あるいは「および/または」は包括的である、すなわちいくつかの要素または要素のリストの少なくとも1つ(ただし2つ以上も含む)、および任意選択で追加のリスト化されない品目の包括であると解釈されるものとする。明確に反示される用語に限り、例えば「~のうちの1つのみ(only one of)」または「~のうちのまさに1つ(exactly one of)」等、あるいは特許請求の範囲で使用される際の「~からなる(consist of)」は、いくつかの要素または要素のリストのうちのまさに1つの要素の包括を指す。一般的に、用語「または(or)」は、本願明細書で使用する場合、排他性の用語、例えば「いずれか(either)」、「~のうちの1つ(one of)」、「~のうちの1つのみ(only one of)」、または「~のうちのまさに1つ(exactly one of)」等が先行する場合に限り、排他的な代替的用語(すなわち、「一方または他方、ただし両方ではない(one or the other but not both)」)を示すと解釈するものとする。「~から本質的になる(Consisting essentially of)」は、特許請求の範囲で使用されるとき、特許法の分野で使用されるその通常の意味を有するものとする。
【0138】
本願明細書および特許請求の範囲において使用する場合、1つまたは複数の要素のリストを参照する際の慣用句「少なくとも1つ」とは、要素のリスト内の任意の1つまたは複数の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味するものと理解すべきであるが、しかし要素のリスト内に特にリスト化されているあらゆる要素それぞれの少なくとも1つを必ずしも含む必要はなく、また要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを排除するものでもない。この定義は、慣用句「少なくとも1つ」が指す要素のリスト内で特に識別された要素以外の要素が、そのような特に識別された要素に関連する、しないに関わらず任意選択で存在し得ることも可能にする。したがって、非限定的な例として、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」(または同じく「AまたはBのうちの少なくとも1つ」、または同じく「Aおよび/またはBのうちの少なくとも1つ」)とは、1つの実施形態では、Aは少なくとも1つであり、任意選択で2つ以上を含み、Bは存在しない(任意選択でB以外の要素を含む)こと;別の実施形態では、Bは少なくとも1つであり、任意選択で2つ以上を含み、Aは存在しない(任意選択でA以外の要素を含む)こと;さらに別の実施形態では、Aは少なくとも1つであり、任意選択で2つ以上を含み、Bは少なくとも1つであり、任意選択で2つ以上を含む(任意選択でその他の要素を含む)こと等を指す。
【0139】
明確に反示されない限り、2つ以上の工程または行為が含まれる本願で特許請求された任意の方法において、方法の工程または行為の順序は、該方法の工程または行為が列挙された順序に必ずしも限定されないものと、やはり理解されるべきである。
【0140】
特許請求の範囲、ならびに上記明細書において、すべての移行句、例えば「~を含む(comprising)」、「~を含む(including)」、「~を担持する(carrying)」、「~を有する(having)」、「~を含有する(containing)」、「~を伴う(involving)」、「~を保持する(holding)」、「~から構成される(composed of)」等は非制限的である、すなわち、~を含むが、これらに限定されない、を意味するものと理解される。移行句「~からなる(consisting of)」および「~から本質的になる(consisting essentially of)」に限り、特許審査手順の米国特許オフィスマニュアル(United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures)、セクション2111.03に規定するように、それぞれ限定的または半限定的な移行句であるものとする。非制限的な移行句(例えば、「~を含む(comprising)」)を使用する本文書に記載されている実施形態も、代替的実施形態においては、非制限的移行句により記載される特色「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」ものとやはりみなされるものと認められるべきである。例えば、開示が「AおよびBを含む組成物」と記載する場合、該開示は、代替的実施形態、「AおよびBからなる組成物」および「AおよびBから本質的になる組成物」についても検討の対象とする。
(付記)
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
[項目1]
目的の分子を試料ウェル中にローディングする方法であって、
目的の分子を含む試料を、複数の試料ウェルを含む基材の表面に接触させる工程;および
前記試料を、前記試料中において前記目的の分子を他の成分に対して排除するクラウディング剤と接触させる工程を含む、方法。
[項目2]
前記目的の分子がシークエンシング用鋳型を含む、項目1に記載の方法。
[項目3]
前記シークエンシング用鋳型が、少なくとも1種のハイブリダイズしたプライマー/重合酵素複合体を有する核酸分子を含む、項目2に記載の方法。
[項目4]
前記クラウディング剤が多糖である、項目1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
[項目5]
前記多糖がセルロース化合物である、項目4に記載の方法。
[項目6]
前記セルロース化合物がメチルセルロースである、項目5に記載の方法。
[項目7]
前記セルロース化合物が、エチルセルロース、エチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロースからなる群から選択される、項目5に記載の方法。
[項目8]
前記クラウディング剤がポリエーテル化合物である、項目1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
[項目9]
前記ポリエーテル化合物が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、パラホルムアルデヒド、ポリテトラメチレングリコール、およびポリフェニルエーテルからなる群から選択される、項目8に記載の方法。
[項目10]
前記クラウディング剤がポリアミド化合物である、項目1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
[項目11]
ポリアミド化合物が、直鎖状ポリビニルピロリドンおよび環状ポリビニルピロリドンからなる群から選択される、項目8に記載の方法。
[項目12]
前記クラウディング剤がフィルムとして提供される、項目1乃至11のいずれか1項に記載の方法。
[項目13]
前記フィルムが、架橋したゲルまたは脱水された溶液から選択される材料である、項目12に記載の方法。
[項目14]
前記クラウディング剤が、溶液として提供される、項目1乃至11のいずれか1項に記載の方法。
[項目15]
前記溶液中の前記クラウディング剤の濃度が約0.6重量%である、項目14に記載の方法。
[項目16]
前記溶液中の前記クラウディング剤の濃度が約0.9重量%である、項目14に記載の方法。
[項目17]
前記溶液中の前記クラウディング剤の濃度が約2.0重量%である、項目14に記載の方法。
[項目18]
前記溶液中の前記クラウディング剤の濃度が約2.3重量%である、項目14に記載の方法。
[項目19]
前記溶液中の前記クラウディング剤の濃度が、約0.1重量%から約1.0重量%の間、約1.0重量%から約2.0重量%の間、約2.0重量%から約3.0重量%の間、約3.0重量%から約4.0重量%の間、または約4.0重量%から約5.0重量%の間である、項目14に記載の方法。
[項目20]
前記溶液中の前記クラウディング剤の濃度が、約5.0重量%から約6.0重量%の間、約6.0重量%から約7.0重量%の間、約7.0重量%から約8.0重量%の間、約8.0重量%から約9.0重量%の間、または約9.0重量%から約10重量%の間である、項目14に記載の方法。
[項目21]
前記溶液中の前記クラウディング剤の濃度が、約10重量%から約11重量%の間、約11重量%から約12重量%の間、約12重量%から約13重量%の間、約13重量%から約14重量%の間、または約14重量%から約15重量%の間である、項目14に記載の方法。
[項目22]
前記試料を、前記クラウディング剤と接触させる前に、前記表面に接触させる、前記、項目1乃至21のいずれか1項に記載の方法。
[項目23]
前記試料を、前記表面に接触させる前に、前記クラウディング剤と接触させる、項目1乃至21のいずれか1項に記載の方法。
[項目24]
前記試料を、前記表面に接触させ、ほぼ同時に前記クラウディング剤と接触させる、項目1乃至21のいずれか1項に記載の方法。
[項目25]
前記試料が、前記表面に接触したときに前記クラウディング剤と接触する、項目1乃至21のいずれか1項に記載の方法。
[項目26]
前記試料を、前記目的の分子の広がった体積を縮小するように構成された凝縮剤と接触させる工程をさらに含む、項目1乃至25のいずれか1項に記載の方法。
[項目27]
前記凝縮剤が、前記試料中でポリカチオン性であるポリカチオンを含む、項目26に記載の方法。
[項目28]
前記ポリカチオンが、スペルミン、スペルミジン、ポリリシン、ポリアルギニン、ポリヒスチジン、ポリオルニチン、プトレシン、およびプロタミンから選択される、項目27に記載の方法。
[項目29]
前記試料を、前記凝縮剤と接触させる前に、前記表面に接触させる凝縮剤、項目26乃至28のいずれか1項に記載の方法。
[項目30]
前記試料を、前記表面に接触させる前に、凝縮剤と接触させる、項目1乃至21のいずれか1項に記載の方法。
[項目31]
前記試料を、前記表面に接触させ、ほぼ同時に凝縮剤と接触させる、項目1乃至21のいずれか1項に記載の方法。
[項目32]
前記試料が、前記表面に接触したときに、凝縮剤と接触する、項目1乃至21のいずれか1項に記載の方法。
[項目33]
前記複数の試料ウェルの各試料ウェルが、前記基材の表面に対して遠位の底部表面を備える、項目1乃至32のいずれか1項に記載の方法。
[項目34]
前記底部表面が、目的の分子と結合するように構成された少なくとも1つのカップリング基を含む、項目33に記載の方法。
[項目35]
前記少なくとも1種のカップリング基が、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、レクチンタンパク質、またはSNAP-タグからなる群から選択される、項目34に記載の方法。
[項目36]
前記少なくとも1種のカップリング基が反応性の化学基である、項目34に記載の方法。
[項目37]
前記反応性の化学基が、アミン基、アジド基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルキル基、またはスルフヒドリル基からなる群から選択される、項目36に記載の方法。
[項目38]
前記核酸分子が、約1kbから約5kbの間、約5kbから約10kbの間、約10kbから約15kbの間、約15kbから約20kbの間、または約20kbから約25kbの間である、項目1乃至37のいずれか1項に記載の方法。
[項目39]
前記核酸分子が、約25kbから約50kbの間、約50kbから約100kbの間、約100kbから約250kbの間、約250kbから約500kb、または約500kbから約1000kbの間である、項目1乃至37のいずれか1項に記載の方法。
[項目40]
重合酵素がDNAポリメラーゼである、項目1乃至39のいずれか1項に記載の方法。
[項目41]
前記基材が、一体化されたデバイスである、項目1乃至40のいずれか1項に記載の方法。
[項目42]
前記試料をシール材と接触させる工程をさらに含む、項目1乃至41のいずれか1項に記載の方法。
[項目43]
前記シール材が鉱物油を含む、項目42に記載の方法。
[項目44]
前記シール材が、被酸化性物質および触媒を含む酸素除去シール材を含む、項目42に記載の方法。
[項目45]
前記被酸化性物質が、少なくとも1つのエチレン結合を含む有機化合物である、項目44に記載の方法。
[項目46]
前記有機化合物がアスコルビル基を含む、項目45に記載の方法。
[項目47]
前記有機化合物がアスコルビン酸の脂肪酸エステルである、項目45に記載の方法。
[項目48]
前記有機化合物がトコフェロール化合物である、項目45に記載の方法。
[項目49]
前記触媒が、遷移金属および対イオンを含む、項目44に記載の方法。
[項目50]
前記遷移金属が、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ランタン、およびセリウムからなる群から選択される、項目49に記載の方法。
[項目51]
前記遷移金属が銅である、項目49に記載の方法。
[項目52]
前記対イオンが、ハロゲン化物イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、硫化物イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、酢酸イオン、アセチルアセトンイオン、過塩素酸イオン、水酸化物イオン、メトキシドイオン、およびエトキシドイオンからなる群から選択される、項目49に記載の方法。
[項目53]
前記対イオンが、ラウリン酸イオン、ミリスチン酸イオン、パルミチン酸イオン、ステアリン酸イオン、オレイン酸イオン、およびリノール酸イオンからなる群から選択される、項目49に記載の方法。
[項目54]
前記試料を次世代シークエンシング技法にかける工程をさらに含む、項目1乃至53のいずれか1項に記載の方法。
[項目55]
前記試料ウェルが、約95nmから約150nmの間、約150nmから約350nmの間、約200nmから約325nmの間、約250nmから約300nmの間の深さを有する、項目1乃至54のいずれか1項に記載の方法。
[項目56]
前記試料ウェルが、約270nmの深さを有する、項目1乃至55のいずれか1項に記載の方法。
[項目57]
前記試料ウェルが、約95nmから約150nmの間、約150nmから約350nmの間、約200nmから約325nmの間、約250nmから約300nmの間の深さを有する、項目1乃至56のいずれか1項に記載の方法。
[項目58]
前記試料ウェルが、底部表面に対して遠位の上部開口部を有する、項目1乃至57のいずれか1項に記載の方法。
[項目59]
前記上部開口部が、約50nmから約150nmの間、約100nmから約150nmの間、約100nmから約200nmの間、約150nmから約250nmの間の直径を有する、項目58に記載の方法。
[項目60]
前記上部開口部が約120nmの直径を有する、項目59に記載の方法。