IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電子株式会社の特許一覧

特許7167037自動分析装置および検体分注機構の異常検出方法
<>
  • 特許-自動分析装置および検体分注機構の異常検出方法 図1
  • 特許-自動分析装置および検体分注機構の異常検出方法 図2
  • 特許-自動分析装置および検体分注機構の異常検出方法 図3
  • 特許-自動分析装置および検体分注機構の異常検出方法 図4
  • 特許-自動分析装置および検体分注機構の異常検出方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】自動分析装置および検体分注機構の異常検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20221031BHJP
   G01N 35/10 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
G01N35/00 F
G01N35/10 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019540944
(86)(22)【出願日】2018-09-03
(86)【国際出願番号】 JP2018032608
(87)【国際公開番号】W WO2019049825
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2017172571
(32)【優先日】2017-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 誠
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-271318(JP,A)
【文献】特開平9-15248(JP,A)
【文献】特開平6-174731(JP,A)
【文献】特開平8-210896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体が吸引または吐出される検体分注ノズルと、前記検体分注ノズルに検体を吸引または吐出させる検体分注ポンプと、前記検体分注ノズルと前記検体分注ポンプを接続する検体分注流路と、前記検体分注流路に設けられ、前記検体分注流路内の圧力を測定する圧力測定手段と、を有する検体分注機構と、
前記検体分注機構の動作を制御する制御部と、
を備える自動分析装置において、
前記検体分注機構が前記検体を1回分注する動作の中で、
前記制御部は、前記検体分注ポンプに、分析に使用されない余剰分の検体の量を吸引させる動作と、空気を吸引させる動作と、前記余剰分の検体と前記空気とを吸引した状態の前記検体分注ノズルに対して分析に使用される検体の量を吸引させる動作とを行わせ、
前記圧力測定手段に前記検体分注流路内の圧力を前記検体分注ポンプによる前記検体の吸引動作毎に測定させ、
前記圧力測定手段から出力された前記圧力と、予め設定された閾値とを比較することで前記検体分注機構の異常を判定ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記検体分注機構に異常があると判定された場合には、前記制御部は、予定されていた前記検体分注ポンプによる前記検体の残りの吸引動作を中止させることを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の自動分析装置において、
前記自動分析装置は出力部を備え、前記検体分注機構に異常があると判定された場合には、前記制御部は、前記検体分注機構の異常を知らせるアラームを前記出力部に出力させることを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
検体が吸引または吐出される検体分注ノズルと、前記検体分注ノズルに検体を吸引または吐出させる検体分注ポンプと、前記検体分注ノズルと前記検体分注ポンプを接続する検体分注流路と、前記検体分注流路に設けられ、前記検体分注流路内の圧力を測定する圧力測定手段と、を有する検体分注機構と、
前記検体分注機構の動作を制御する制御部と、を備える自動分析装置における、前記検体分注機構の異常検出方法であって、
前記検体分注機構が前記検体を1回分注する工程の中で、
分析に使用されない余剰分の検体の量を吸引する動作と、空気を吸引する動作と、前記余剰分の検体と前記空気とを吸引した状態の前記検体分注ノズルに対して分析に使用される検体の量を吸引する動作とを行う工程と、
前記検体の吸引動作毎に、前記検体分注流路内の圧力を測定する工程と、
測定された前記圧力と予め設けられた閾値とを比較することで前記検体分注機構の異常を判定する工程と、を含むことを特徴とする検体分注機構の異常検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液や尿等の検体を分注する検体分注機構を備える自動分析装置および検体分注機構の異常検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置では、血液や尿等の検体を検体容器から反応容器に分注し、試薬を試薬容器から反応容器に分注し、反応容器内の検体と試薬を反応させることで検体の分析が行われる。
【0003】
このような自動分析装置には、検体を検体容器から反応容器に分注する検体分注機構が備えられている。検体分注機構は、検体が吸引または吐出される検体分注ノズル、検体分注ノズルに検体を吸引または吐出させる検体分注ポンプ、および検体分注ノズルと検体分注ポンプを接続する検体分注流路を備える。検体分注機構が検体を分注する際には、検体分注ポンプが検体分注ノズル内の圧力を陰圧にすることで、検体は検体分注ノズルに吸引され、検体分注ポンプが検体分注ノズル内の圧力を陽圧にすることで、検体は検体分注ノズルから吐出される。
【0004】
ところで、上記のような自動分析装置においては、検体の中にフィブリン等の固形物が含まれていることがあり、検体分注機構が検体を分注する際に、固形物が検体分注ノズルに詰まる場合がある。また、検体分注機構が粘度の高い検体を分注する際にも、検体が検体分注ノズルに詰まる場合がある。このように、検体分注ノズルに詰まりが生じると、検体分注機構は正確な量の検体を吸引または吐出することができない。その結果、正確な量の検体が反応容器に吐出されず、誤った分析結果が出力される恐れがある。このような事態を避けるために、検体分注ノズルに詰まりが生じた場合には、速やかにユーザーに検体分注機構の異常が知らされる必要がある。
【0005】
検体分注ノズルに詰まりが生じると、検体が吸引される際の検体分注ノズル内および検体分注流路内の圧力変化が、正常時よりも大きくなる。このような現象を利用して、近年では、検体分注流路内の圧力を測定する圧力測定手段が検体分注流路に設けられた検体分注機構が用いられている。
【0006】
特開昭63-75565号公報(特許文献1)では、検体が吸引される1回の動作につき、検体分注流路内の圧力変化が最も大きくなる時の一時的な圧力値(最大変化圧力値)を測定し、前記最大変化圧力値が測定された段階で、前記最大変化圧力値が予め設けられた閾値を超えていないかを判定する検体分注機構が示されている。前記最大変化圧力値が閾値を超えていた場合は、検体分注ノズルに詰まりが生じていると判定され、検体分注ポンプの動作が即座に停止される。その結果、検体が吸引される1回の動作が終了する前に、検体分注ノズルの詰まりが検出され、早い段階でユーザーは検体分注機構の異常を知ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭63-75565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の検体分注機構では、検体分注ノズルに詰まりが生じていると判定された場合、検体分注流路内の圧力が前記最大変化圧力値に達するまでに吸引された検体は、廃棄されるため無駄となる。一般的に、検体分注機構において、検体が吸引される動作は、吸引される検体の量に関わらず一定の時間で行われる。そのため、吸引される検体の量が多いほど、検体分注流路内の圧力が最大圧力値に達するまでに吸引される検体の量は多くなり、検体分注ノズルに詰まりが生じた場合に無駄となる検体の量は多くなる。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、フィブリン等の固形物や高粘度の検体を分注する際に、検体分注ノズルの詰まりを早い段階で検出し、かつ検体の無駄な消費を低減することができる検体分注機構を備えた自動分析装置および検体分注機構の異常検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、検体が吸引または吐出される検体分注ノズルと、前記検体分注ノズルに検体を吸引または吐出させる検体分注ポンプと、前記検体分注ノズルと前記検体分注ポンプを接続する検体分注流路と、前記検体分注流路に設けられ、前記検体分注流路内の圧力を測定する圧力測定手段と、を有する検体分注機構と、前記検体分注機構の動作を制御する制御部と、を備える自動分析装置において、本発明の自動分析装置は、前記検体分注機構が前記検体を1回分注する動作の中で、前記制御部は、前記検体分注ポンプに前記検体の吸引動作を複数回行わせ、前記圧力測定手段に前記検体分注流路内の圧力を前記検体分注ポンプによる前記検体の吸引動作毎に測定させ、前記圧力測定手段から出力された前記圧力と、予め設定された閾値とを比較することで前記検体分注機構の異常を判定することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に関する自動分析装置の概略構成図である。
図2】本発明の実施形態に関する検体分注機構の概略構成図である。
図3】本発明の第1実施形態に関する、検体が希釈されて分析される場合における、検体分注機構が検体を検体容器から希釈容器に分注する際の、検体分注ノズル内の様子を示す図である。
図4】検体が検体分注ノズルに吸引される際の検体分注流路内の圧力値の時間変化を示す図である。
図5】本発明の第2実施形態に関する、検体が希釈されずに分析される場合における、検体分注機構が検体を検体容器から希釈容器に分注する際の、検体分注ノズル内の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1図5に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。本明細書および各図面において、実質的に同一の構成要素、機能を示すものについては共通の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
(自動分析装置の構成)
図1は、本発明の実施形態に関する自動分析装置1の概略構成図である。図1に示すように、自動分析装置1は、被検査者から採取された検体と試薬とを反応させることで検体中に含まれる特定成分の量を自動で測定する測定機構3と、測定機構3の各部の動作を制御する制御機構4に大きく分けられる。
【0014】
測定機構3は、検体と試薬からなる反応液が収容された反応容器5を移送する反応ターンテーブル6を中心にして、検体が収容された検体容器7を移送する検体ターンテーブル8、希釈された検体が収容された希釈容器9を移送する希釈ターンテーブル10、第1試薬が収容された第1試薬容器11を移送する第1試薬ターンテーブル12、および第2試薬が収容された第2試薬容器13を移送する第2試薬ターンテーブル50が反応ターンテーブル6の周囲にそれぞれ配置されて構成される。
【0015】
検体ターンテーブル8と希釈ターンテーブル10の間に配置されている検体分注機構14は、検体ターンテーブル8の回転と共に移送されてくる検体容器7から検体を吸引し、希釈ターンテーブル10上の希釈容器9内に吸引した検体と検体分注機構14自体が供給する希釈液を吐出する。このようにして、希釈容器9内では、検体が所定倍数の濃度に希釈され、希釈検体が調製される。
【0016】
検体分注機構14によって希釈検体が調製される間に、第1試薬ターンテーブル12と反応ターンテーブル6の間に配置されている第1試薬分注機構15は、第1試薬ターンテーブル12の回転と共に移送されてくる第1試薬容器11から第1試薬を吸引し、反応ターンテーブル6上の反応容器5に吸引した第1試薬を吐出する。
【0017】
希釈ターンテーブル10と反応ターンテーブル6の間に配置されている希釈検体分注機構16は、希釈ターンテーブル10の回転と共に移送されてくる希釈容器9から希釈検体を吸引し、反応ターンテーブル6上の既に第1試薬が分注された反応容器5に吸引した希釈検体を吐出する。
【0018】
反応容器5内で第1試薬と検体とが反応した後、第2試薬ターンテーブル50と反応ターンテーブル6の間に配置されている第2試薬分注機構17は、第2試薬ターンテーブル50の回転と共に移送されてくる第2試薬容器13から第2試薬を吸引し、反応ターンテーブル6上の第1試薬と検体との反応液が収容された反応容器5に吸引した第2試薬を吐出する。
【0019】
検体と試薬(第1試薬および第2試薬)との反応液が収容された反応容器5は、反応ターンテーブル6の回転によって、反応ターンテーブル6の周囲に配置された測光機構18を一定の周期で通過する。測光機構18は、反応容器5に光を照射する光源ランプ19と、光が照射された反応容器5の内部の吸光度を測定する多波長光度計20を備え、多波長光度計20は、一定の周期で通過する反応容器5の内部の吸光度を測定し、その吸光度を制御機構4に出力する。制御機構4は、測光機構18から入力された、検体と試薬との反応液の吸光度から、検体中に含まれる特定成分の量を算出する。
【0020】
検体分注機構14、希釈検体分注機構16、第1試薬分注機構15、および第2試薬分注機構17の近傍には、各分注機構に備えられるノズルを洗浄するノズル洗浄槽21が配置されている。ここで、図3の検体分注ノズル内の様子を示す図中の図3(f)および図3(g)に、一例として示されるように、ノズル洗浄槽21は、ノズルの外壁に洗浄液を吐出する洗浄液供給部21aと、洗浄液供給部21aによって吐出された洗浄液を廃棄する排出口21bを備える。検体2または試薬を分注し終えた各分注機構はノズル洗浄槽21の上方にノズルを移動し、ノズル洗浄槽21は各分注機構のノズルの外壁を洗浄する。その際、各分注機構は、各分注機構自体が供給する洗浄液をノズルからノズル洗浄槽21に吐出することでノズルの内部を洗浄する。
【0021】
再び図1に戻り、制御機構4は、測定機構3に接続されている制御部22、制御部22にそれぞれ接続されている、入力部23、分析部24、詰まり判定部25、記憶部26、および出力部27を備える。
【0022】
制御部22は、マイクロコンピューターなどの計算機によって構成されており、測定機構3および制御機構4の各部を含む自動分析装置1全体の制御を行う。計算機は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備える。このような制御部22が実施する制御は、ROMに保存されたプログラム、または外部装置からRAMにロードされて保存されたプログラムに基づいて実施される。これらのプログラムは、自動分析装置1を制御するためのコンピューター(すなわち制御部22)によって実行される自動分析プログラムである。
【0023】
入力部23は、検体の分析に必要な情報や、分析動作の指示情報を受け付け、それらの情報を制御部22に出力する。入力部23には、マウス、キーボード、タッチパネル等が用いられる。
【0024】
分析部24は、測光機構18から制御部22を経由して入力された、検体と試薬との反応液の吸光度の情報を基にして、検体中の特定成分の量を算出する。
【0025】
詰まり判定部25は、後述するように、検体分注機構14から制御部22を経由して入力された、検体分注機構14内の圧力情報を基にして、検体分注機構14で詰まりが生じているか否かを判定する。
【0026】
記憶部26は、ハードディスク等の大容量の記録装置によって構成されており、分析部24で算出された検体の分析結果、入力部23にて入力された情報、詰まり判定部25が検体分注機構14で詰まりが生じているか否かを判定するために使用する閾値等を記憶する。
【0027】
出力部27は、分析部24で算出された検体の分析結果を出力する。また、詰まり判定部25が検体分注機構14で詰まりが生じていると判定した場合、検体分注機構14に異常が生じたことを知らせるアラームを出力する。出力部27には、ディスプレイ、プリンタ、スピーカー等が用いられる。
【0028】
(検体分注機構の構成)
図2は、本発明の実施形態に関する検体分注機構14の概略構成図である。次に、図2に基づき、先の図1および図3を参照しつつ、検体分注機構14の構成を説明する。
【0029】
検体分注ノズル28は、検体分注機構14に備えられたノズルであって、ステンレス等によって棒管状に形成されており、その上端は検体分注アーム29に保持されている。検体分注アーム29は、検体分注連結軸30を介して検体分注アーム駆動部31と接続されている。検体分注アーム駆動部31は、検体分注アーム29を、検体分注連結軸30を中心にして水平方向に回転移動、または上下方向に移動させる。
【0030】
検体分注ノズル28は、検体分注流路32を介して検体分注ポンプ33と接続されている。検体分注ポンプ33は、シリンジポンプで構成されており、プランジャ34とプランジャ駆動部35を備える。制御部22は、プランジャ34の移動量を制御し、プランジャ34を往復移動させる。
【0031】
検体分注ノズル28および検体分注流路32内には、純水や生理食塩水等の圧力伝達媒体36が充填されている。そのため、プランジャ34の往復移動に伴う検体分注ポンプ33内の圧力変化が、圧力伝達媒体36を介して検体分注ノズル28に伝わり、検体分注ノズル28に検体2が吸引、または検体分注ノズル28から検体2が吐出される。圧力伝達媒体36は、検体分注ポンプ33内の圧力変化を検体分注ノズル28に伝達させる役割を果たすだけでなく、後述するように、検体分注ノズル28の内壁を洗浄する洗浄液、または検体2が希釈容器9に吐出される際に共に吐出される検体2の希釈液としても使用される。
【0032】
検体分注ノズル28と検体分注ポンプ33を接続する検体分注流路32には、圧力センサ37(圧力測定手段の一例)が設けられている。圧力センサ37は、検体分注流路32内の圧力を測定し、制御部22を経由させて測定した圧力値を詰まり判定部25に出力する。詰まり判定部25は、入力された検体分注流路32内の圧力値と予め記憶部26に記憶された閾値とを比較する。検体分注流路32内の圧力値が閾値の範囲外であった場合、詰まり判定部25は検体分注ノズル28内に詰まりが生じていると判定する。その場合には、制御部22はプランジャ駆動部35の動作を停止させる。
【0033】
検体分注ポンプ33は、圧力伝達媒体流路38を介して圧力伝達媒体36が収容された圧力伝達媒体タンク39に接続されている。圧力伝達媒体流路38には2つの電磁弁40と圧力伝達媒体ポンプ41が設けられており、圧力伝達媒体ポンプ41は2つの電磁弁40に挟まれるように配置されている。
【0034】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態として、検体2が希釈されて分析される場合の検体分注機構14の分注動作について説明する。本第1実施形態では、分析に使用される検体2の吸引量として、例えば24μL(2a)が入力部23から制御部22に入力された際に、制御部22は、検体分注機構14に対して、検体2の吸引量24μL(2a)を一度に吸引させるのではなく、4μL(2a1)と20μL(2a2)の2回に分けて吸引させるように制御する。
【0035】
図3は、検体2が希釈されて分析される場合における、検体分注機構14が検体2を検体容器7から希釈容器9に分注する際の、検体分注ノズル28内の様子を示す図である。以下においては、図3に示す順に、先の図1および図2を参照しつつ、検体2が希釈されて分析される場合の検体分注機構14の分注動作を説明する。なお、以下に説明する検体分注機構14の分注動作は、制御部22による各部の制御によって実施される。
【0036】
まず、図3(a)に示すように、検体分注アーム駆動部31が、検体分注アーム29を回転させ、検体分注ノズル28を検体2が収容された検体容器7の上方に移動させる。この時、検体分注ノズル28内には、圧力伝達媒体36が満たされている。
【0037】
次に、空気層42を形成するための吸引が行われる。すなわち、図3(b)に示すように、プランジャ駆動部35が、プランジャ34を例えば2μL分引くことで空気を吸引し、検体分注ノズル28内に空気層42を形成させる。このようにすることで、後に検体分注機構14が検体容器7から検体2を吸引する際に、検体分注ノズル28の開口部から圧力伝達媒体36が検体容器7内の検体2に拡散し、検体容器7内の検体2の濃度が薄まることを防ぐ。ただし、検体2が吸引される時間が非常に短い等、検体容器7内の検体2への圧力伝達媒体36の拡散の影響が小さい場合には、本動作は行われなくてもよい。
【0038】
次に、検体2の吸引が4μL(2a1)と20μL(2a2)の2回に分けて行われる。すなわち、図3(c)に示すように、検体分注アーム駆動部31は、検体分注ノズル28の先端が検体容器7内の検体2に浸漬するまで検体分注アーム29を下降させた後、プランジャ駆動部35は、プランジャ34を4μL(2a1)分引いたところで一旦動作を休止する。そして、図3(d)に示すように、プランジャ駆動部35は、プランジャ34を20μL(2a2)分引くことで、検体分注ノズル28内に検体2の吸引量24μL(2a)を吸引させる。
【0039】
最後に、吸引された検体2の吸引量24μL(2a)の希釈容器9への吐出が行われる。すなわち、図3(e)に示すように、検体分注アーム駆動部31は、検体分注アーム29を上昇させ、検体分注ノズル28を希釈容器9の上方に移動させた後、検体分注機構14は検体分注ノズル28内の検体2の吸引量24μL(2a)および所定量の圧力伝達媒体36を希釈容器9に吐出する。ここで吐出される圧力伝達媒体36は、分析に使用される検体2を所定倍数の濃度に希釈する希釈液として使用される。
【0040】
以上のように、24μLの検体2が2回に分けて吸引されるが、その際、検体2が吸引される毎に、検体分注ノズル28に詰まりが生じているか否かが判定される。上述した動作は、検体2が吸引される毎に検体分注ノズル28に詰まりは生じていないと判定された場合の動作である。
【0041】
すなわち、図3(c)、図3(d)に示すように、4μL(2a1)分の検体2および20μL(2a2)分の検体2がそれぞれ吸引される間、圧力センサ37は、検体分注流路32内の圧力を測定し、制御部22を経由させて測定した圧力値を詰まり判定部25に出力する。詰まり判定部25は、4μL(2a1)分の検体2および20μL(2a2)分の検体2がそれぞれ吸引される間の検体分注流路32内の圧力値と、予め記憶部26に記憶された閾値とを比較する。
【0042】
図4は、検体2が検体分注ノズル28に吸引される際の検体分注流路32内の圧力値の時間変化を示す図であり、図4(a)は測定された圧力値が閾値の範囲内であった場合を示す図、図4(b)は測定された圧力値が閾値の範囲外であった場合を示す図である。なお、図面においては、閾値として上限閾値および下限閾値の両方を設定したが、設定される閾値は、何れか一方のみ、たとえば下限閾値のみでもよい。
【0043】
図4(a)に示すように、4μL(2a1)分の検体2、20μL(2a2)分の検体2がそれぞれ吸引される間の検体分注流路32内の圧力値が閾値の範囲内であった場合、詰まり判定部25は検体分注ノズル28内に詰まりは生じていないと判定し、先述したように、20μL(2a2)分の検体2の吸引(図3(d))、検体2の吸引量24μL(2a)の希釈容器9への吐出(図3(e))がそれぞれ行われる。
【0044】
一方、図4(b)に示すように、4μL(2a1)分の検体2、20μL(2a2)分の検体2がそれぞれ吸引される間の検体分注流路32内の圧力値が閾値の範囲外であった場合、詰まり判定部25は検体分注ノズル28内に詰まりが生じていると判定し、制御部22はその検体2に対する、検体分注機構14による以降の分注動作を中止させると共に、分析を中止する。
【0045】
したがって、4μL(2a1)分の検体2が吸引される間(図3(c))に、検体分注ノズル28に詰まりが生じていると判定された場合は、図3(d)に示す20μL(2a2)分の検体2の吸引、およびその検体2の分析に使用される第1試薬と第2試薬の反応容器5への分注が中止され、検体2および試薬の無駄な消費が抑えられる。
【0046】
20μL(2a2)分の検体2が吸引される間(図3(d))に、検体分注ノズル28に詰まりが生じていると判定された場合は、図3(e)に示す検体2の吸引量24μL(2a)と所定量の圧力伝達媒体36の希釈容器9への吐出、およびその検体2の分析に使用される第1試薬と第2試薬の反応容器5への分注が中止され、試薬の無駄な消費が抑えられる。
【0047】
そして、検体分注ノズル28に詰まりが生じていると判定された場合は、吸引された検体2の破棄および検体分注ノズル28内の詰まりを解させるための洗浄が行われる。すなわち、図3(f)、図3(g)に示すように、検体分注アーム駆動部31は、検体分注アーム29を上昇させ、検体分注ノズル28をノズル洗浄槽21の上方に移動させた後、検体分注機構14は検体分注ノズル28内の検体2および圧力伝達媒体36をノズル洗浄槽21に吐出する。
【0048】
ここで吐出される圧力伝達媒体36は、検体分注ノズル28内の詰まりを解消させ、検体分注ノズル28の内壁を洗浄する洗浄液として使用される。この時、制御部22は、ユーザーに検体分注機構14に異常が生じたことを知らせるアラームを出力部27に出力させる。
【0049】
なお、検体分注ノズル28に詰まりが生じているか否かが判定される際に用いられる閾値について、4μL(2a1)分の検体2が吸引される間の検体分注流路32内の圧力値と比較される閾値と、20μL(2a2)分の検体2が吸引される間の検体分注流路32内の圧力値と比較される閾値は、必ずしも同じである必要はない。
【0050】
以上の本第1実施形態によれば、分析対象の検体2が検体分注ノズル28を詰らせるような検体2であっても、検体2の吸引量が全て吸引される前に詰まりが検出され、早い段階でユーザーは検体分注機構14に異常が生じたことを知ることができる。さらに、検体2の吸引量が多い場合に、検体分注ノズル28に詰まりが生じても、従来に比べて、検体2の無駄な消費が低減される。
【0051】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態として、検体2が希釈されずに分析される場合の検体分注機構14の分注動作について説明する。本第2実施形態では、分析に使用される検体2の吸引量として、例えば24μL(2a)が入力部23から制御部22に入力された際に、制御部22は、検体分注機構14に対して、検体2の吸引量24μL(2a)のみを吸引させるのではなく、分析には使用されない余剰分の検体2の吸引量として、例えば3μL(2b)と、検体2の吸引量24μL(2a)の2回に分けて吸引させるように制御する。
【0052】
一般的に、検体2が希釈されずに分析される場合は、検体2の吸引量が吸引された後に、検体分注ノズル28の内部において、圧力伝達媒体36の拡散によって検体2が薄まるのを防ぐために、圧力伝達媒体36と検体2との間に空気層42や余剰分の検体2の層が形成される。本第2実施形態においては、検体分注機構14が、空気、余剰分の検体2の吸引量3μL(2b)、空気、検体2の吸引量24μL(2a)を順に吸引する場合を説明する。
【0053】
図5は、検体2が希釈されずに分析される場合における、検体分注機構14が検体2を検体容器7から希釈容器9に分注する際の、検体分注ノズル28内の様子を示す図である。第1実施形態の、検体2が吸引される際に、検体分注ノズル28内の圧力伝達媒体36が検体容器7内の検体2に拡散するのを防ぐために、検体分注機構14が検体2を吸引する前に検体分注ノズル28内に空気層42を形成させる動作(図3(a)、(b))までは第2実施形態も同様である。そのため、第2実施形態の第1実施形態と共通の動作(図5(a)、(b))に関する説明は省略する。
【0054】
検体分注ノズル28内に空気層42が形成された後、余剰分の検体2の吸引量3μL(2b)の吸引が行われる。すなわち、図5(c)に示すように、検体分注アーム駆動部31は、検体分注ノズル28の先端が検体容器7内の検体2に浸漬するまで検体分注アーム29を下降させた後、プランジャ駆動部35は、プランジャ34を3μL(2b)分引いたところで一旦動作を休止する。
【0055】
次に、空気層42を形成するための吸引が行われる。すなわち、図5(d)に示すように、検体分注アーム駆動部31は、検体分注アーム29を上昇させた後、プランジャ駆動部35は、プランジャ34を2μL分引くことで空気を吸引し、検体分注ノズル28内に空気層42を形成させる。
【0056】
次に、検体2の吸引量24μL(2a)の吸引が行われる。すなわち、図5(e)に示すように、検体分注アーム駆動部31は、検体分注ノズル28の先端が検体容器7内の検体2に浸漬するまで検体分注アーム29を下降させた後、プランジャ駆動部35は、プランジャ34を24μL(2a)分引くことで、検体分注ノズル28内に検体2の吸引量24μL(2a)を吸引させる。
【0057】
最後に、吸引された検体2の吸引量24μL(2a)の希釈容器9への吐出が行われる。すなわち、図5(f)に示すように、検体分注アーム駆動部31は、検体分注アーム29を上昇させ、検体分注ノズル28を希釈容器9の上方に移動させた後、検体分注機構14は検体分注ノズル28内の検体2の吸引量24μL(2a)を希釈容器9に吐出する。
【0058】
以上のように、合計27μLの検体2が2回に分けて吸引されるが、その際、検体2が吸引される毎に、検体分注ノズル28に詰まりが生じているか否かが判定される。上述した動作は、検体2が吸引される毎に検体分注ノズル28に詰まりは生じていないと判定された場合の動作である。
【0059】
すなわち、図5(c)、図5(e)に示すように、余剰分の検体2の吸引量3μL(2b)および検体2の吸引量24μL(2a)がそれぞれ吸引される間、圧力センサ37は、検体分注流路32内の圧力を測定し、制御部22を経由させて測定した圧力値を詰まり判定部25に出力する。詰まり判定部25は、余剰分の検体2の吸引量3μL(2b)および検体2の吸引量24μL(2a)がそれぞれ吸引される間の検体分注流路32内の圧力値と、予め記憶部26に記憶された閾値とを比較する。
【0060】
図4(a)に示すように、余剰分の検体2の吸引量3μL(2b)、検体2の吸引量24μL(2a)がそれぞれ吸引される間の検体分注流路32内の圧力値が閾値の範囲内であった場合、詰まり判定部25は検体分注ノズル28内に詰まりは生じていないと判定し、先述したように、2μL分の空気の吸引(図5(d))、検体2の吸引量24μL(2a)の希釈容器9への吐出(図3(e))がそれぞれ行われる。
【0061】
一方、図4(b)に示すように、余剰分の検体2の吸引量3μL(2b)、検体2の吸引量24μL(2a)がそれぞれ吸引される間の検体分注流路32内の圧力値が閾値の範囲外であった場合、詰まり判定部25は検体分注ノズル28内に詰まりが生じていると判定し、制御部22はその検体2に対する、検体分注機構14による以降の分注動作を中止させると共に、分析を中止する。
【0062】
したがって、余剰分の検体2の吸引量3μL(2b)が吸引される際(図5(c))に、検体分注ノズル28に詰まりが生じていると判定された場合は、図5(e)に示す検体2の吸引量24μL(2a)の吸引、およびその検体2の分析に使用される第1試薬と第2試薬の反応容器5への分注が中止され、検体2および試薬の無駄な消費が抑えられる。
【0063】
検体2の吸引量24μL(2a)が吸引される際(図5(e))に、検体分注ノズル28に詰まりが生じていると判定された場合は、図5(f)に示す検体2の吸引量24μL(2a)と所定量の圧力伝達媒体36の希釈容器9への吐出、およびその検体2の分析に使用される第1試薬と第2試薬の反応容器5への分注が中止され、試薬の無駄な消費が抑えられる。
【0064】
そして、検体分注ノズル28に詰まりが生じていると判定された場合は、吸引された検体2の破棄および検体分注ノズル28内の詰まりを解させるための洗浄が行われる。すなわち、図5(g)、図5(h)に示すように、検体分注アーム駆動部31は、検体分注アーム29を上昇させ、検体分注ノズル28をノズル洗浄槽21の上方に移動させた後、検体分注機構14は検体分注ノズル28内の検体2および圧力伝達媒体36をノズル洗浄槽21に吐出する。
【0065】
ここで吐出される圧力伝達媒体36は、検体分注ノズル28内の詰まりを解消させ、検体分注ノズル28の内壁を洗浄する洗浄液として使用される。この時、制御部22は、ユーザーに検体分注機構14に異常が生じたことを知らせるアラームを出力部27に出力させる。
【0066】
なお、検体分注ノズル28に詰まりが生じているか否かが判定される際に用いられる閾値について、余剰分の検体2の吸引量3μL(2b)が吸引される間の検体分注流路32内の圧力値と比較される閾値と、検体2の吸引量24μL(2a)が吸引される間の検体分注流路32内の圧力値と比較される閾値は、必ずしも同じである必要はない。
【0067】
以上の本第2実施形態によれば、分析対象の検体2が検体分注ノズル28を詰らせるような検体2であっても、検体2の吸引量が吸引される前に詰まりが検出され、早い段階でユーザーは検体分注機構14に異常が生じたことを知ることができる。さらに、検体2の吸引量が多い場合に、検体分注ノズル28に詰まりが生じても、従来に比べて、無駄になる検体2の量が低減される。
【0068】
なお、本発明の第1実施形態および第2実施形態においては、検体分注機構14が検体2を希釈容器9に分注する場合について説明したが、検体分注機構14が検体2を分注する先として希釈容器9に限定されるものではない。
【0069】
例えば、検体分注機構14が検体2を反応容器5に分注する場合にも本発明を適用できる。この場合は、第1実施形態における第1吸引検体2a1または第2実施形態における薄まり防止用検体2bが吸引される際に判定される、検体分注ノズル28に詰まりが生じているか否かの判定結果を引き金として、制御部22は、さらに第1試薬分注機構15に対して第1試薬を反応容器5に分注させるか否かを制御する。このようにすることで、第1吸引検体2a1または薄まり防止用検体2bが吸引される際に検体分注ノズル28に詰まりが生じても、反応容器5に第1試薬は分注されず、検体2および試薬の無駄な消費が抑えられる。
【0070】
また、測定機構3に、検体2中の電解質(Naイオン、Kイオン、Clイオン等)の濃度を分析する電解質測定機構が備えられ、検体分注機構14が検体容器7から電解質測定機構に検体2を分注する場合にも、本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0071】
1:自動分析装置、2:検体、3:測定機構、4:制御機構、6:反応ターンテーブル、7:検体容器、8:検体ターンテーブル、9:希釈容器、10:希釈ターンテーブル、12:第1試薬ターンテーブル、14:検体分注機構、21:ノズル洗浄槽、22:制御部、23:入力部、24:分析部、25:詰まり判定部、26:記憶部、27:出力部、28:検体分注ノズル、32:検体分注流路、33:検体分注ポンプ、36:圧力伝達媒体、37:圧力センサ、42:空気層、2a:分析に使用される検体、2a1:第1吸引検体、2a2:第2吸引検体、2b:薄まり防止用検体
図1
図2
図3
図4
図5