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特許7167040ガス分子の封止されたキャビティを形成するためにコーティング層に埋設された複数のガラススペーサーを有する断熱ガラス積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】ガス分子の封止されたキャビティを形成するためにコーティング層に埋設された複数のガラススペーサーを有する断熱ガラス積層体
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/06 20060101AFI20221031BHJP
   C03C 17/04 20060101ALI20221031BHJP
   C03C 17/22 20060101ALI20221031BHJP
   E06B 3/66 20060101ALI20221031BHJP
   E06B 3/673 20060101ALI20221031BHJP
   F16L 59/02 20060101ALI20221031BHJP
   F24C 15/02 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
C03C27/06 101H
C03C17/04 Z
C03C17/22 Z
C03C27/06 101J
E06B3/66 Z
E06B3/673
F16L59/02
F24C15/02 F
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019542425
(86)(22)【出願日】2018-02-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 US2018016885
(87)【国際公開番号】W WO2018145017
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2020-11-10
(31)【優先権主張番号】62/489,820
(32)【優先日】2017-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/425,694
(32)【優先日】2017-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519038507
【氏名又は名称】ショット ジェムトロン コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT Gemtron Corporation
【住所又は居所原語表記】615 Highway 68, Sweetwater, TN 37874, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アダム オライアン
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/123220(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C27/06-27/12
C03C17/00-17/44
E06B3/66-3/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面を有する第1のガラス基材と、
内面を有する第2のガラス基材と、
少なくとも1つの内面と化学結合を形成する低伝導性または非伝導性コーティング層であって、約0.010インチ以下の厚さを有するコーティング層と、
前記コーティング層に埋設された複数のガラススペーサーであって、前記コーティング層に埋設されていない側の前記ガラススペーサーが、前記第1のガラス基材もしくは前記第2のガラス基材に接触しているか、または前記第1のガラス基材もしくは前記第2のガラス基材上に配置されている層と接触しているガラススペーサー
を有し、かつ
前記第1のガラス基材と前記第2のガラス基材との間に、および前記コーティング層に埋設されていない前記ガラススペーサーの部分の周囲に、ガス分子用の少なくとも1つの封止されたキャビティを有する、断熱積層体。
【請求項2】
前記ガラススペーサーは、前記コーティング層の1平方ミリメートル当たり約100~約700個の、幅が約10~約50ミクロンであるスペーサーを含む、請求項1記載の断熱積層体。
【請求項3】
前記コーティング層の厚さは、約0.005インチ以下である、請求項1記載の断熱積層体。
【請求項4】
前記コーティング層の厚さは、約0.001インチ以下である、請求項1記載の断熱積層体。
【請求項5】
前記ガラススペーサーが埋設されているのは、前記コーティング層の表面積の30%以下である、請求項1記載の断熱積層体。
【請求項6】
前記ガラススペーサーを有するコーティング組成物を、前記第1のガラス基材に適用する工程と、
前記コーティング組成物を加熱して、前記コーティング組成物を、前記第1のガラス基材に接着させる工程と、
前記第2のガラス基材を、前記ガラススペーサーの上端と接するように適用する工程と、
加熱された前記コーティング組成物を焼成して化学結合を形成する工程と
を含む、請求項1記載の断熱積層体を形成する方法。
【請求項7】
前記ガラススペーサーを有するコーティング組成物を、前記第1のガラス基材に適用する工程と、
前記第2のガラス基材を、前記ガラススペーサーの上端と接するように適用する工程と、
前記コーティング組成物を焼成して化学結合を形成する工程と
を含む、請求項1記載の断熱積層体を形成する方法。
【請求項8】
前記コーティング層は、セラミック化合物、ガラス化合物、またはそれらの組合せを含むエナメルまたはフリットである、請求項1記載の断熱積層体。
【請求項9】
前記コーティング層は、透明である、請求項1記載の断熱積層体。
【請求項10】
前記コーティング層は、前記第1のガラス基材および第2のガラス基材の伝導率よりも低い伝導率を有する、請求項1記載の断熱積層体。
【請求項11】
前記キャビティ内に真空が存在しない、請求項1記載の断熱積層体。
【請求項12】
約175℃を超える温度で作動する、請求項1記載の断熱積層体を含むオーブン。
【請求項13】
前記オーブンの窓または覗き窓は、前記断熱積層体を含む、請求項12記載のオーブン。
【請求項14】
光拡散体と、
オーブン内またはオーブン付近の機能性要素と
を含むオーブンであって、
前記光拡散体は機能性要素を断熱し、可視光を透過させ、中波長および長波長の赤外光の透過を最小限に抑制し、
前記光拡散体は、請求項1記載の断熱積層体を含む、オーブン。
【請求項15】
前記機能性要素は、LED、カメラ、照明アセンブリ、配線、センサー、半導体部品、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される機能性要素である、請求項14記載のオーブン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の背景
1.開示の分野
本開示は、断熱ガラス積層体に関する。
【0002】
2.関連技術の説明
ガラス積層体は、加熱されたキャビティを見る目的で窓および覗き窓(sight glasses)としての高温用途に使用されている。キャビティからの熱損失を最小限に抑えるために、積層体は、キャビティから外側パネルへの直接的な熱伝達を防ぐためにパネル間にギャップを有する複数のガラスパネルを有するが、パネル間のギャップに空気が通る対流熱伝達ゆえに外側パネルの温度は依然として上昇し、周囲環境に放出される。熱損失を防ぐために断熱コーティングが使用されているが、多くのコーティングは不適切である。
【0003】
光拡散体は、可視光を透過させるが、中波長および長波長の赤外光の透過は最小限に抑える要素である。ほとんどの光拡散体は、LED、カメラ、照明アセンブリ、配線、センサーおよび半導体部品などの機能性部品を住宅および商業用オーブンならびに他の加熱されたキャビティ内の高温から断熱するのに必ずしも適切ではない。これは、高温に耐えるように設計されていないLEDなどの機能性部品にとって特に問題となる。オーブン内の高温から照明アセンブリを断熱するための1つの手法は、対流によって照明アセンブリを冷却するエアギャップを設けることである。別の手法は、ヒートシンクの使用である。さらに別の手法は、低放射率コーティングでコーティングされたレンズで照明アセンブリを遮閉することである。しかしながら、そのような手法は、機能性要素を高温から必ずしも十分に絶縁するわけではない。
【0004】
開示の概要
本開示は、加熱されたキャビティから熱が放出されるのを防止する断熱ガラス積層体を提供する。いくつかの実施形態では、断熱ガラス積層体は、基材の少なくとも1つの内面と化学結合を形成する低伝導性または非伝導性コーティング層を含み、ここで、コーティング層は、約0.010インチ以下の厚さを有することができ、かつ複数のガラススペーサーがコーティング層に埋設されている。この配置により、基材間および少量のガス分子を内部に有するガラススペーサーの周囲に存在するガス分子の少なくとも1つの封止された三次元キャビティが作り出される。キャビティ内には少量のガス分子が存在するので、基材間の対流熱伝達が最小限に抑えられ、それによって、積層体を通じた、周囲環境への熱損失が最小限に抑えられる。
【0005】
いくつかの最新の断熱ガラス積層体は、ガスキャビティが約15ミリメートルの厚さを有する場合に最適な絶縁体となり、ここで、より薄いキャビティは、さらに高い伝導損失を有し、より厚いキャビティは、さらに高い対流損失を有する。この知識は、キャビティの厚さを減少させると伝導損失が高くなることを示唆するが、伝導損失は本開示では高められない。
【0006】
本開示の断熱ガラス積層体は、非限定的な例として、住宅用および商業用オーブン内の窓および覗き窓などの高温用途ならびに低熱損失および低温の出口窓温度が望まれる加熱されたキャビティを有する用途に使用することができる。いくつかの実施形態では、高温用途は約175℃を超える。
【0007】
1つの実施形態では、本開示は、内面を有する第1のガラス基材と、内面を有する第2のガラス基材と、少なくとも1つの内面と化学結合を形成する低伝導性または非伝導性コーティング層とを含む断熱積層体を提供する。コーティング層は、約0.010インチ以下の厚さを有する。複数のガラススペーサーがコーティング層に埋設されている。ガス分子の少なくとも1つの封止されたキャビティが、基材間およびコーティング層に埋設されていないガラススペーサーの部分の周囲に作り出される。
【0008】
本開示はまた、加熱されたキャビティ内またはその付近で、LED、カメラ、照明アセンブリ、配線、センサーおよび半導体部品などの機能性部品を断熱する光拡散体に関する。いくつかの実施形態では、光拡散体は、本明細書に記載される断熱ガラス積層体を含む。光拡散体は、オーブンキャビティと機能性要素との間に配置された断熱ガラス積層体を有することができ、その結果、積層体は、機能性要素をキャビティ内の温度から部分的に、または完全に絶縁する。いくつかの実施形態では、追加の断熱を提供するために、熱反射コーティングが積層体の1つ以上の構成要素上に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】コーティング層に埋設された複数のガラス球の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
図2】本開示の積層体の概略図を示す。
図3】本開示の積層体を用いて機能性部品を遮蔽するオーブンの概略図を示す。
【0010】
開示の詳細な説明
本開示は、加熱されたキャビティから熱が放出されるのを防止する断熱ガラス積層体を提供する。いくつかの実施形態では、断熱ガラス積層体は、内面を有する第1のガラス基材と、内面を有する第2のガラス基材と、少なくとも1つの内面と化学結合を形成する低伝導性または非伝導性コーティング層とを含み、ここで、コーティング層は、約0.010インチ以下の厚さを有し、複数のガラススペーサーがコーティング層に埋設されており、かつガス分子の少なくとも1つの封止されたキャビティが、基材間およびガラススペーサーの周囲に作り出される。
【0011】
ガラススペーサーは、コーティング層1平方ミリメートル当たり、約100~約700個、または約400個のスペーサーを含み得るが、これらに限定されない。スペーサーは、約10~約50ミクロンの幅を有し得る。ガラススペーサーは、基材が接触するのを防止すべきである。ガラススペーサーは、ガラススペーサーを通しての伝導性熱伝達を最小限に抑えるために基材と接触することなくコーティング層に埋設されるべきであるが、ガラススペーサーが基材の1つ以上と接触する場合、ガラススペーサーは、ガラススペーサーの接点でのみ基材と接触すべきである。「埋設」という用語は、ガラススペーサーをコーティング層に結合する目的で、ガラススペーサーの高さの一部、例えば非限定的な例として約1/3以下がコーティング層内にまたはコーティング層と接触して埋め込まれており、ガラススペーサーの高さの残りの部分、例えば非限定的な例として残りの約2/3以上が、他の基材または該基材間の層と接触するようにコーティング層の上に突き出ている。封止されたキャビティは、基材間およびコーティング層に埋設されていないガラススペーサーの部分の「周囲」に作り出される。すなわち、キャビティは、基材の内面と、スペーサーと、コーティング層とによって画成され、その中にスペーサーの一部が埋設されている。
【0012】
ガラススペーサーは中実または中空とすることができ、ガラス球、ガラスカラム、ガラスフィラメント、他の任意のガラス形状、およびそれらの任意の組合せを含み得るが、これらに限定されない。ガラススペーサーの目的の1つは、基材間およびガラススペーサーの周囲、またはコーティング層と、反対側の基材もしくは該基材間の層との間およびガラススペーサーの周囲に作り出された少なくとも1つの封止されたキャビティ内でガス分子を捕捉するために基材間にギャップを設けることである。ガラススペーサーは少なくとも1つの基材と接触する可能性があるので、ガラススペーサーは、低伝導性または非伝導性の材料を含むべきである。いくつかの実施形態におけるガラススペーサーは、コーティング層の厚さよりも大きい高さを有することで、ガラススペーサーがコーティング層から突き出てガラススペーサーの周囲および基材間または該基材間の層間にガス分子の少なくとも1つの封止されたキャビティを形成するのを補助する。いくつかの実施形態では、ガラススペーサーは、基材または該基材間の層の1つ以上と接触する。いくつかの実施形態では、ガラススペーサーの高さは、コーティング層の厚さの少なくとも2倍である。
【0013】
いくつかの実施形態におけるガラススペーサーは、コーティング層の表面積の約30%以下、コーティング層の表面積の約20%以下、コーティング層の表面積の約10%以下、またはコーティング層の表面積の約5%以下に埋設されている。言い換えれば、ガラススペーサーがその中に埋設されているコーティング層は、コーティング層全体にわたりガラススペーサーが均一または不均一なパターンで基材に適用され、ここで、コーティング層の表面積の約30%以下、約20%以下、約10%以下、または約5%以下は、その中に埋設されたガラススペーサーを有する(すなわち、1つ以上のキャビティは、基材の内面の1つ以上の約70%以上、約80%以上、約90%以上、または約95%以上と接触する)。
【0014】
図1は、コーティング層40に埋設された複数のガラススペーサー45を示す。ガス分子用の、少なくとも1つの封止されたキャビティが、コーティング層、ガラススペーサー、下部基材、上部基材(図示せず)とコーティング層の周縁部(図示せず)との間の空隙に作り出された。すべての実施形態では、基材間およびガラススペーサーの周囲のスペースにガスを含む1つの大きな封止されたキャビティまたは複数のより小さな封止されたキャビティがあってもよい。さらに、ガラススペーサーが中空である場合、各ガラススペーサー自体の内部にも封止されたキャビティが存在することになるが、この封止されたキャビティは、基材間およびガラススペーサーの周囲に作り出された封止されたキャビティとは異なる。
【0015】
図2は、本開示の積層体10の概略図を示す。積層体10は、第1のガラス基材20、第2のガラス基材30、およびコーティング40を有する。コーティング40は、上述のように、その中に埋め込まれたガラススペーサー45を有する。前述のとおり、スペーサー45の周囲、および基材20と30との間にはキャビティが形成されている。図示された実施形態では、スペーサー45は基材20に接触するが、上記のとおり、本開示は、スペーサー45が基材20または30のいずれにも接触しないことを企図する。
【0016】
いくつかの実施形態では、コーティング層および/またはガラススペーサーの伝導率は、約5W/(m・K)以下、または約3.5W/(m・K)以下である。いくつかの実施形態では、コーティング層および/またはガラススペーサーの伝導率は、コーティング組成物と接触する基材の伝導率よりも低い。本開示の目的のために、「低伝導性」コーティング層および/またはガラススペーサーは、約5W/(m・K)以下の伝導率を有し、「非伝導性」コーティング層および/またはガラススペーサーは、0または約0W/(m・K)の伝導率を有する。
【0017】
ガラススペーサーが埋設されたコーティング層は、対流(convective currents)を最小限に抑え、基材間の熱伝達を減少させるために基材間に絶縁層を作り出すのを補助する。いくつかの実施形態では、コーティング層は、非限定的な例として、セラミック化合物、ガラス化合物またはそれらの組合せを、任意に他の化合物(それらのうちのいくつかは、コーティング組成物を硬化させてコーティング層を形成するときに蒸発する可能性がある)と一緒に含むエナメル、フリット、またはそれらの組合せなどのコーティング組成物から形成された低伝導性または非伝導性コーティング層である。特定の実施形態では、コーティング層におけるセラミックおよびガラス化合物は、コーティング層と接触する基材と比較して、類似の組成および熱膨張特性を有する。
【0018】
コーティング組成物は、溶融した材料の複雑な組合せを超急冷し、こうして作製された化学物質をガラス質固体フレークまたは顆粒の非移動性成分として閉じ込めることによって製造された無機化学物質の混合物であるフリットを含み得る。フリットは、非限定的な例として、以下に特定される化学物質のすべてを、それらがフリットの製造において意図的に作製されている場合に含む。主な要素は、以下に列挙される元素のいくつか、またはすべての酸化物を含むが、これらに限定されず、ここで、これらの元素のフッ化物も含まれ得る:アルミニウム、アンチモン、ヒ素、バリウム、ビスマス、ホウ素、カドミウム、カルシウム、セリウム、クロム、コバルト、銅、金、鉄、ランタン、鉛、リチウム、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ネオジム、ニッケル、ニオブ、リン、カリウム、ケイ素、銀、ナトリウム、ストロンチウム、スズ、チタン、タングステン、バナジウム、亜鉛、ジルコニウム、およびそれらの組合せ。最も一般的なフリットは、ビスマスおよび亜鉛をベースとするフリットである。フリットは、着色目的のために少量の割合で添加された顔料を含み得る。
【0019】
適切なコーティング組成物の非限定的な例は、以下の通りである:
結晶性シリカ:11~15%
ホウ酸塩:19~22%
酸化亜鉛:25~29%
二酸化チタン:32~36%
マンガン化合物:0~2%
酸化鉄:0~2%
クロム化合物:0~2%
コバルト化合物:0~3%
アルミナ:3~6%
【0020】
適切なコーティング組成物の別の非限定的な例は、以下の通りである:
結晶性シリカ:34~38%
ホウ酸塩:8~12%
酸化亜鉛:16~20%
二酸化チタン:5~9%
マンガン化合物:0~3%
酸化鉄:0~3%
クロム化合物:11~15%
銅化合物:8~12%
【0021】
ガラススペーサーは、コーティング組成物を基材に適用する前にコーティング組成物に埋設されていてもよい。ガラススペーサーがその中に埋設されているコーティング層は、シルクスクリーン印刷または他の任意の適切な技術によって基材に適用されてもよい。例えばシルクスクリーン印刷の場合、ガラススペーサーを有するコーティング組成物は、ガラススペーサーがコーティング層内に埋設されるように、スクリーンを通して注入され、基材に適用される。この配置は、ガラススペーサーの周囲および基材間または該基材間の層間にガス分子の少なくとも1つの封止されたキャビティを生成するのを補助する。コーティング層は透明でも着色されていてもよい。必要に応じて、中間層、追加の基材および追加のコーティング層が存在していてもよい。
【0022】
積層体は、当業者に知られている任意の方法でコーティング層を基材の1つ以上に化学的に結合することによって形成することができる。非限定的な例として、積層体は、ガラススペーサーを有するコーティング組成物を第1のガラス基材に適用すること、コーティング組成物を加熱してコーティング組成物を基材に接着すること、第2のガラス基材を加熱されたコーティング組成物に適用すること、および加熱されたコーティング組成物を焼成してコーティング層と基材の1つ以上との間に化学結合を形成することを含む工程によって形成することができる。他の実施形態では、積層体は、ガラススペーサーを有するコーティング組成物を第1のガラス基材に適用すること、第2のガラス基材をコーティング組成物に適用すること、次いでコーティング組成物を焼成してコーティング層と基材の1つ以上との間に化学結合を形成することを含む工程によって形成される。すべての実施形態では、コーティング層の1つ以上、第1のガラス基材、第2のガラス基材およびガラススペーサーは、他の1つ以上と化学結合を形成することができる。
【0023】
本開示のコーティング層、少なくとも基材に接触するコーティング層は、酸素原子を共有してSi-O-X鎖の一部になることによってコーティング層が基材に化学的に結合しているために熱分解性である。熱分解性コーティングは、「硬い」コーティングであり、基材に機械的に接着されている塗料のような「柔らかい」コーティングとは異なる。接着コーティングと比較して熱分解性コーティングは優れた耐摩耗性を有し、容易に剥がれ落ちず、典型的には保護トップコートを必要としない。本開示の熱分解性コーティングは、当業者に公知の任意の方法で、例えば高温プラズマプロセスまたはシルクスクリーンを使用した堆積によって適用することができる。
【0024】
本明細書で使用される「ガラス」という用語は、ソーダ石灰、ホウケイ酸塩、リチウムアルミノケイ酸塩、およびそれらの組合せを含むがこれらに限定されないガラスおよびガラスセラミックを含む。「基材」という用語は、本明細書に記載されるコーティングおよび他の要素を適用することができるプラットフォームを意味する。基材は形状が限定されない。基材は、平坦、湾曲、凹状または凸状であってもよく、かつ長方形、正方形または他の寸法を有していてもよい。いくつかの実施形態では、基材はガラス材料を含み、約1~約10mmまたは約2~約5mmの厚さを有する。
【0025】
いくつかの実施形態では、コーティング層は、約0.010インチ以下、約0.005インチ以下、または約0.001インチ以下の厚さを有する。この厚さは、コーティング層自体を指し、コーティング層の上部から突き出ることがある任意のガラススペーサーまたはその部分は含まない。そのような、厚さの薄いコーティング層を形成し、伝導性の熱伝達を最小限に抑えるために低伝導性または非伝導性コーティング組成物を使用することが望ましい。ガラススペーサーと組み合わせられたこれらの厚さの小さいコーティング層は、それぞれが内部に少量のガス分子を伴う非常に小さな容積を有する1つ以上の封止された三次元キャビティを生成するのを補助する。非限定的な例として、高温エポキシ、シリコンまたは接着剤を使用することによって、コーティング層の周縁部の厚さを増やして封止されたキャビティの形成を補助することができ、これらはそれぞれ化学結合の代わりに基材と機械的結合を形成することができる。各キャビティ内には少量のガス分子が存在するので、基材間の対流熱伝達は最小限に抑えられ、それによって積層体を通しての周囲環境への熱損失が最小限に抑えられる。キャビティは本質的に断熱材として作用する。ガスは空気または不活性ガスであり得る。いくつかの実施形態では、キャビティ内に部分的または完全な真空が存在する。他の実施形態では、真空は存在しない。
【0026】
本開示はまた、加熱されたキャビティ内またはその付近で、LED、カメラ、照明アセンブリ、配線、センサーおよび半導体部品などの機能性部品を断熱する光拡散体に関する。いくつかの実施形態では、光拡散体は、本明細書に記載される断熱ガラス積層体を含む。光拡散体は、オーブンキャビティと機能性要素との間に配置された断熱ガラス積層体を有することができ、その結果、積層体は、機能性要素をキャビティ内の温度から部分的または完全に絶縁する。いくつかの実施形態では、追加の断熱を提供するために、熱反射コーティングが積層体の1つ以上の構成要素上に提供される。
【0027】
低放射率コーティングを有するか、または有していないレンズとは異なり、本明細書に開示される断熱積層体は、それらが積層体の背後の要素の像を大きく歪めることがないので、窓または覗き窓と同様に視覚的に透明である。結果として、積層体は、例えばオーブン内またはオーブン付近の機能性要素を断熱するための光拡散体として使用することができ、同時にカメラまたは他の機能性要素が積層体を通してキャビティの内容物を見ることを可能にする可視光の十分な透過も提供する。
【0028】
光拡散体および機能性要素は、例えば背面、側面または上面など、加熱されたキャビティ内のどこにでも配置することができる。いくつかの実施形態では、光拡散体は、オーブンの正面扉のオーブン窓と同様に、オーブンキャビティの6つの側面のうちの1つと、例えばそのような側面の周囲内で平行であり、その結果、オーブンキャビティの中心と機能性要素との間に配置されている。
【0029】
図3は、機能性部品50を遮蔽する積層体10を含むオーブン内部100の概略図を示す。図示された実施形態では、積層体10は、内部100の側面のうちの1つと平行に隣接し、部品50を熱から遮蔽する。前述のように、積層体10および部品50の他の位置は本開示によって企図される。
【0030】
本開示を1つ以上の特定の実施形態を参照して説明してきたが、当業者であれば、その範囲から逸脱することなく様々な変更を加えて、均等物をその要素に置き換えることができることを理解するであろう。さらに、本開示の範囲から逸脱することなく、特定の状況または材料を本開示の教示に適合させるために多くの修正を加えることができる。したがって、本開示は、この開示を実施するために企図された最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されないことを意図している。本明細書に開示された範囲は、それらの間のすべての部分的な範囲を含む。
【符号の説明】
【0031】
10 積層体、 20 第1のガラス基材、 30 第2のガラス基材、 40 コーティング、 45 ガラススペーサー、 50 機能性部品、 100 内部
図1
図2
図3