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特許7167043収縮性補助材料をエンドエフェクタと嵌合するための方法及びシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】収縮性補助材料をエンドエフェクタと嵌合するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/072 20060101AFI20221031BHJP
【FI】
A61B17/072
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019544640
(86)(22)【出願日】2018-02-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 US2018017995
(87)【国際公開番号】W WO2018152105
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】15/435,891
(32)【優先日】2017-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517076008
【氏名又は名称】エシコン エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Ethicon LLC
【住所又は居所原語表記】#475 Street C, Suite 401, Los Frailes Industrial Park, Guaynabo, Puerto Rico 00969, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】シェルトン・ザ・フォース・フレデリック・イー
(72)【発明者】
【氏名】ブルホップ・プルーデンス
(72)【発明者】
【氏名】ハリス・ジェイソン・エル
(72)【発明者】
【氏名】ベンデリー・マイケル・ジェイ
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/153904(WO,A2)
【文献】国際公開第2008/057281(WO,A2)
【文献】国際公開第2016/153976(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/068 - 17/072
17/115
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術用器具のためのエンドエフェクタであって、
内部にステープルを着座させるように構成された複数のステープル空洞を有するカートリッジを有する第1のジョーであって、前記ステープル空洞は前記カートリッジの組織に面する表面上に開口している、第1のジョーと、
前記第1のジョーに対向し、かつ複数のステープル形成空洞がその組織に面する表面上に形成されているアンビルを有する第2のジョーであって、前記第1のジョー及び前記第2のジョーは、それらの間に組織をクランプするように構成されている、第2のジョーと、
前記第1のジョー及び前記第2のジョーのうちの少なくとも1つのジョーの組織に面する表面上に配設された少なくとも1つの第1及び第2の保持部材と、
前記少なくとも1つのジョーの上に解放可能に保持されるように構成された補助材料と、
熱の適用下で、元の非収縮構成から収縮構成に移行するように構成された収縮可能な取り付け機構と、を備えており、
前記収縮構成における前記取り付け機構と前記第1及び第2の保持部材との係合によって、前記取り付け機構と前記第1及び第2の保持部材は前記補助材料を前記少なくとも1つのジョーの上に保持し、
前記エンドエフェクタの切断要素の作動によって前記取り付け機構が切断されると、前記補助材料が前記少なくとも1つのジョーから解放される、
手術用器具のためのエンドエフェクタ。
【請求項2】
記第1の保持部材が、前記少なくとも1つのジョーの切断要素チャネルの一方の側に配設され、記第2の保持部材が、前記切断要素チャネルの他方の側に配設されている、請求項1に記載のエンドエフェクタ。
【請求項3】
前記取り付け機構が、前記補助材料の少なくとも一部の上に配設され、かつ前記第1の保持部材及び前記第2の保持部材の両方を包囲する少なくとも1つのループに配置されている収縮性のストランドを含み、前記収縮構成において、前記収縮性のストランドは、前記少なくとも1つのループが前記第1の保持部材及び前記第2の保持部材の周囲に係合され、それによって、前記補助材料を前記少なくとも1つのジョーの上に解放可能に保持するように収縮されている、請求項1に記載のエンドエフェクタ。
【請求項4】
収縮性のストランドが、前記補助材料の少なくとも1つの部分を通過する、請求項3に記載のエンドエフェクタ。
【請求項5】
前記取り付け機構は、少なくとも1本の第1のストランドが前記補助材料の長手方向軸線に沿って配設され、少なくとも1本の第2のストランドが前記長手方向軸線に実質的に垂直な軸線に沿って配設されるように、前記補助材料に織り合わされた、複数本のポリマーストランドを含む、請求項1に記載のエンドエフェクタ。
【請求項6】
前記補助材料が、複数の貫通開口部を含み、前記開口部は、少なくとも第1及び第2の開口部を含み、前記少なくとも第1及び第2の開口部は、前記複数本のポリマーストランドが前記収縮構成にあり、それによって前記補助材料内の前記少なくとも前記第1及び第2の開口部を前記第1及び第2の保持部材の周囲に締め付けるときに、前記第1及び第2の保持部材と嵌合するように構成されている、請求項5に記載のエンドエフェクタ。
【請求項7】
前記ポリマーストランドが、前記複数の貫通開口部のうちの少なくともいくつかに通されることによって前記補助材料に織り合わされている、請求項6に記載のエンドエフェクタ。
【請求項8】
手術用器具のためのエンドエフェクタを組み立てる方法であって、前記エンドエフェクタは、内部にステープルを着座させるように構成された複数のステープル空洞を有するカートリッジを有する第1のジョーであって、前記複数のステープル空洞は、前記カートリッジの組織に面する表面上に開口している、第1のジョーと、前記第1のジョーに対向し、かつ複数のステープル形成空洞がその組織に面する表面上に形成されているアンビルを有する第2のジョーと、を有し、前記方法は、
補助材料、熱の適用下で元の非収縮構成から収縮構成に移行するように構成された少なくとも1つの収縮可能な取り付け機構を、所定の位置に位置付けることと、
前記取り付け機構を収縮させて前記収縮構成に移行させるように、前記取り付け機構に熱を適用することと、
前記エンドエフェクタの切断要素の作動によって前記取り付け機構を切断することと、を含み、
前記収縮構成における前記取り付け機構と前記第1のジョー及び前記第2のジョーのうちの少なくとも1つのジョーの組織に面する表面上に配設された第1及び第2の保持部材との係合によって、前記取り付け機構と前記第1及び第2の保持部材は前記補助材料を前記少なくとも1つのジョーの上に保持し、
前記エンドエフェクタの前記切断要素の作動によって前記取り付け機構が切断されると、前記補助材料が前記少なくとも1つのジョーから解放される、
方法。
【請求項9】
前記取り付け機構は、前記切断要素チャネルを横切って配置されたストランドを含む、請求項2に記載のエンドエフェクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、手術用器具のエンドエフェクタと共に使用される補助材料に関する。
【背景技術】
【0002】
外科用ステープラは、外科的処置において、組織、血管、導管、シャント、又は特定の処置に関連する他の対象物若しくは身体部位の開口部を閉鎖するのに使用される。開口部は、血管内又は胃のような内臓内の通路のように天然に存在する場合もあれば、組織又は血管を穿刺してバイパス又は吻合を形成すること、又はステープル留め処置中に組織を切開することなどによって、外科的処置中に外科医によって形成される場合もある。
【0003】
ほとんどのステープラは、細長いシャフトを備えたハンドルを有し、シャフトはその端部に、それらの間でステープルを保持して成形するために形成される、一対の移動可能な対向するジョーを有する。ステープルは典型的にはステープルカートリッジに収められ、そのステープルカートリッジは、複数の列のステープルを収容することができ、多くの場合、手術部位へのステープルの放出のために、2つのジョーのうちの一方に配設される。使用中、ジョーは、ステープルされるべき対象物がジョーの間に配設されるように位置決めされ、ジョーが閉じられて装置が作動されると、ステープルが放出されて成形される。いくつかのステープラは、ステープルカートリッジ内のステープルの列の間を移動し、ステープルされた列の間で、ステープルされた組織を長手方向に切開及び/又は開口するように構成されたナイフを含む。
【0004】
外科用ステープラは何年にもわたって改良されてきたが、それ自体にはいまだに多くの問題が存在する。1つの共通問題は、ステープルが、それが配設される組織又は他の対象物を貫通すると、孔を形成するため、漏出が起こり得ることである。血液、空気、消化管液、及び他の液体は、ステープルが完全に成形された後でも、ステープルによって形成された開口部を通してしみ出ることがある。処置される組織は、ステープル留めによる外傷のために炎症を起こすこともある。更に、ステープル留めのような処置と共に植え込むことができるステープル並びに他の対象物及び材料は、一般に、それらが植え込まれる組織のいくつかの特性を欠いている。例えば、ステープル並びに他の対象物及び材料は、それらが植え込まれる組織の自然の柔軟性を欠く場合がある。当業者には、組織内にステープルが配設された後に組織がその自然の特性をできるだけ維持することがしばしば望ましいことが認識されるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、処置領域の自然特性を実質的に維持する一方で、漏出と炎症を最小限に抑えるように、組織、血管、導管、シャント、又は他の対象物若しくは身体部位のステープル留めのための改良された装置及び方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
手術用器具のためのエンドエフェクタであって、いくつかの実施形態では、内部にステープルを着座させるように構成された複数のステープル空洞を有するカートリッジを有する第1のジョーであって、ステープル空洞はカートリッジの組織に面する表面上に開口している、第1のジョーと、第1のジョーに対向し、かつ複数のステープル形成空洞がその組織に面する表面上に形成されているアンビルを有する第2のジョーと、を含む、手術用器具のためのエンドエフェクタが提供される。第1のジョー及び第2のジョーは、それらの間に組織をクランプするように構成されている。エンドエフェクタはまた、第1のジョー及び第2のジョーのうちの少なくとも一方のジョーの組織に面する表面上に配設された少なくとも1つの第1及び第2の保持部材を含む。エンドエフェクタは、少なくとも一方のジョーの上に解放可能に保持されるように構成された補助材料と、熱の適用下で、元の非収縮構成から収縮構成に移行するように構成された収縮可能な取り付け機構とを更に含む。取り付け機構は、補助材料と係合することができ、取り付け機構の収縮は、補助材料を第1及び第2の保持部材と結合させるのに有効である。
【0007】
エンドエフェクタは、様々な形で異なり得る。例えば、少なくとも1つの第1の保持部材は、少なくとも一方のジョーの組織に面する表面の一方の側に、少なくとも一方のジョーの組織に面する表面の一方の縁部に近接して配設されることができ、少なくとも1つの第2の保持部材は、組織に面する表面のもう一方の対向する側に、組織に面する表面のもう一方の対向する縁部に近接して配設されることができる。
【0008】
取り付け機構は、様々な構成を有することができる。例えば、取り付け機構は、補助材料の少なくとも一部分の上に配設されることができ、第1の保持部材及び第2の保持部材の両方を包囲する少なくとも1つのループに配置され得る収縮性ポリマーのストランドを含むことができる。収縮性ポリマーは、少なくとも1つのループが第1の保持部材及び第2の保持部材の周囲に係合され、それによって、補助材料を少なくとも一方のジョー上に解放可能に保持するように収縮されることができる。いくつかの実施形態では、収縮性ポリマーのストランドは、補助材料の少なくとも1つの部分を通過することができる。いくつかの実施形態では、取り付け機構は、少なくとも1本の第1のストランドが補助材料の長手方向軸線に沿って配設されることができ、少なくとも1本の第2のストランドが長手方向軸線に実質的に垂直な軸線に沿って配設されることができるように、補助材料に織り合わされた、複数本のポリマーストランドを含むことができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、補助材料は、複数の貫通開口部を含むことができ、開口部は、少なくとも第1及び第2の開口部を含み、少なくとも第1及び第2の開口部は、複数本のポリマーストランドが収縮構成にあり、それによって補助材料内の少なくとも第1及び第2の開口部を第1及び第2の保持部材の周囲に締め付けるときに、第1及び第2の保持部材と嵌合するように構成されている。いくつかの実施形態では、ポリマーストランドは、複数の貫通開口部のうちの少なくともいくつかに通されることによって補助材料に織り合わされることができる。
【0010】
別の態様では、手術用器具のためのエンドエフェクタを組み立てる方法が提供される。エンドエフェクタは、内部にステープルを着座させるように構成された複数のステープル空洞を有するカートリッジを有する第1のジョーであって、複数のステープル空洞は、カートリッジの組織に面する表面上に開口している、第1のジョーと、第1のジョーに対向し、かつ複数のステープル形成空洞がその組織に面する表面上に形成されているアンビルを有する第2のジョーと、を有する。方法は、補助材料を、熱の適用下で、元の非収縮構成から収縮構成に移行するように構成された少なくとも1つの収縮可能な取り付け機構と関連付けることと、補助材料に熱を適用して、少なくとも1つの収縮可能な取り付け機構を収縮させ、それによって、補助材料を、第1のジョー及び第2のジョーのうちの少なくとも一方のジョーの組織に面する表面上に配設された第1及び第2の保持部材と結合させることによって、少なくとも一方のジョーの上に補助材料を解放可能に保持させることと、を含む。
【0011】
方法は、様々な形で異なり得る。例えば、補助材料に熱を適用して、少なくとも1つの収縮可能な取り付け機構を収縮させ、それによって、少なくとも一方のジョーの上に補助材料を解放可能に保持させることは、少なくとも1つの収縮可能な取り付け機構を第1及び第2の保持部材と結合させることを更に含むことができる。
【0012】
別の態様では、手術用器具のためのエンドエフェクタであって、いくつかの実施形態では、内部にステープルを着座させるように構成された複数のステープル空洞を有するカートリッジを有する第1のジョーであって、ステープル空洞はカートリッジの組織に面する表面上に開口している、第1のジョーと、第1のジョーに対向し、かつ複数のステープル形成空洞がその組織に面する表面上に形成されているアンビルを有する第2のジョーとを含む、手術用器具のためのエンドエフェクタが提供される。第1のジョー及び第2のジョーは、それらの間に組織をクランプするように構成されている。エンドエフェクタはまた、第1のジョー及び第2のジョーのうちの少なくとも一方のジョーの組織に面する表面上に配設された少なくとも1つの第1及び第2の保持部材を含む。エンドエフェクタは、力を印加することで可逆的に伸張されるように構成されている少なくとも1つの第1の部分を含む補助材料を更に含み、その結果、力が取り除かれると、第1の部分は伸張構成から収縮構成に移行し、それによって、補助材料が第1及び第2の保持部材と係合される。
【0013】
エンドエフェクタは、様々な形で異なり得る。例えば、いくつかの実施形態では、補助材料の第1の部分は、補助材料が少なくとも1つのジョーに適用されるまで、補助材料を上に解放可能に保持するように構成された取り外し可能なローダ部材を使用して可逆的に伸張されるように構成され得る。別の実施例として、第1及び第2の保持部材は、補助材料内のそれぞれの第1及び第2の開口部内に受容され得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、補助材料は、少なくとも1つの第2の実質的に非伸縮性の部分を含むことができる。少なくとも1つの第2の部分は、補助材料の好適な位置に配設され得る。例えば、少なくとも1つの第2の部分は、ステープルがステープル空洞から放出される際にステープルによって貫通されるように構成された補助材の領域に配設されてもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第2の部分は補助材料の一部であってもよく、少なくとも1つの第2の部分は、補助材料の他の部分の少なくとも1つの特性とは異なる少なくとも1つの特性を有することができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第2の部分は、補助材料と結合された、別個の実質的に非伸縮性の材料の少なくとも一部分であるか、又は当該別個の実質的に非伸縮性の材料を含む。少なくとも1つの第2の部分は、補助材料の上に配設された少なくとも1つのシート積層体とすることができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、補助材料は第1の補助材料であり、エンドエフェクタは、第1の補助材料に結合され、かつ第1の補助材料の上に配設された、実質的に非伸縮性の第2の補助材料を含む。第2の補助材料は、患者の治療部位を補強及び/又は治療するように構成され得、第1の補助材料は、第1及び第2の補助材料と第1及び第2の保持部材とを係合するように構成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本開示は、以下の詳細な説明を添付図面と併せ読むことで、より完全に理解されよう。
図1】外科用ステープラの一実施形態の斜視図である。
図2図1の外科用ステープラの遠位部分の分解図である。
図3図1の外科用ステープラの発射バーの斜視図である。
図4】外科用ステープラの別の実施形態の斜視図である。
図5】外科用ステープラの更に別の実施形態の斜視図である。
図6】エンドエフェクタに解放可能に固定された補助材料を有するエンドエフェクタのジョーの斜視図である。
図7A】補助材がジョーに結合される前の、エンドエフェクタのジョーの上に配設された収縮可能な取り付け機構を有する補助材の斜視図である。
図7B】熱を加えることによってジョーに結合された補助材を示す、図7Aの補助材の斜視図である。
図8A】補助材がジョーに結合される前の、エンドエフェクタのジョーの上に配設された収縮可能な取り付け機構を有する補助材の別の斜視図である。
図8B】熱を加えることによってジョーに結合された補助材を示す、図8Aの補助材の斜視図である。
図9A】ローダの一実施形態の上面図である。
図9B図9Aのローダの断面図である。
図10A】ジョー、及びジョーに解放可能に結合されるように構成された補助材の斜視図である。
図10B】ジョーに解放可能に連結された補助材を示す、図10Aのジョーの斜視図である。
図11】エンドエフェクタのジョー、及びジョーに解放可能に結合されるように構成された少なくとも部分的に伸縮性の補助材料の分解図である。
図12】非伸縮性部分を有するように構成された補助材料の領域を示す、図11の補助材料の概略図である。
図13A】エンドエフェクタのジョー、及びジョーに解放可能に結合された少なくとも部分的に伸縮性の補助材料の断面図である。
図13B】ジョーに解放可能に結合された補助材料を示す、図13Aのジョーの断面図である。
図14A】補助材がジョーに解放可能に結合される前のエンドエフェクタのジョー及びローダの断面図である。
図14B】補助材がローダからジョーに移されている間のジョー及びローダを示す、図14Aのジョー及びローダの断面図である。
図14C】補助材がローダからジョーに移されて、ジョーに解放可能に結合された後のジョー及びローダを示す、図14Aのジョー及びローダの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本明細書で開示する装置及び方法の構造、機能、製造、及び使用の原理の全体的な理解が得られるように、特定の例示的な実施形態を説明する。これらの実施形態のうちの1つ又は2つ以上の実施例が、添付の図面に示されている。当業者であれば、本明細書で詳細に説明し、添付の図面に示される装置、システム、及び方法は、非限定的な例示的実施形態であり、本発明の範囲は、特許請求の範囲のみによって定義されることが理解されるであろう。1つの典型的な実施形態に関連して例示又は説明される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。このような改変及び変形は、本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0019】
更に、本開示においては、実施形態の同様の参照符合を付した構成要素は概して同様の特徴を有するものであり、したがって、特定の実施形態において、同様の参照符合を付した各構成要素の各特徴については必ずしも完全に詳しく述べることはしない。加えて、開示されるシステム、装置及び方法の説明で直線寸法又は円寸法が使用される範囲において、かかる寸法は、かかるシステム、装置及び方法と組み合わせて使用することができる形状の種類を限定しようとするものではない。当業者には、任意の幾何学的形状についてかかる直線寸法及び円寸法に相当する寸法を容易に決定することができる点が認識されるであろう。システム及び装置、並びにその構成要素のサイズ及び形状は、少なくとも、システム及び装置が用いられる被験者の解剖学的構造、システム及び装置がそれらと共に用いられる構成要素のサイズ及び形状、並びにシステム及び装置が用いられる方法及び手順によって決まり得る。
【0020】
「近位」及び「遠位」という用語は、本明細書では、臨床医などのユーザが器具のハンドルを握ることについて使用されることが認識されるであろう。「前方」及び「後方」といった他の空間的用語は、同様に、遠位及び近位にそれぞれ対応する。便宜上、また説明を明確にするため、本明細書では、「垂直」及び「水平」といった空間的用語が、図面に対して使用されている点も更に理解されるであろう。しかしながら、手術用器具は、多くの配向及び位置で使用されるものであり、これらの空間的用語は、限定的かつ絶対的なものであることを意図するものではない。
【0021】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される装置及び方法は、切開外科的処置のためのものであり、他の実施形態では、装置及び方法は、腹腔鏡下、内視鏡的、及び他の低侵襲外科的処置のためのものである。これらの装置は、人間のユーザによって直接、又はロボット若しくは類似の操作ツールの直接制御下でリモート発射されてよい。しかしながら、当業者は、本明細書に開示される様々な方法及び装置が、多数の外科的処置及び用途で用いられ得ることを理解するであろう。本明細書で開示される様々な器具が、例えば、天然の開口部を通して、組織に形成された切開又は穿刺孔を通して、又はトロカールカニューレなどのアクセス装置を使用してなど、任意の方法で体内に挿入され得ることを当業者は更に認識するであろう。例えば、これらの器具の作動部分、すなわちエンドエフェクタ部分は、患者の体内に直接に挿入できる、又は、手術用器具のエンドエフェクタ及び細長いシャフトを通過させることが可能な作業用チャンネルを有するアクセス装置を介して挿入され得る。
【0022】
1つ又は2つ以上の本明細書で集合的に「補助材」と呼ぶ生体材料及び/又は合成材料を、手術用器具と共に使用して、外科的処置の改善を支援することは望ましいことであり得る。種々の異なる手術用エンドエフェクタが、補助材の使用によって利益を得ることがあり、いくつかの例示的実施形態では、エンドエフェクタは、外科用ステープラであり得る。外科用ステープラと共に使用されるときには、補助材は、ステープラのジョーの間及び/又はその上に配設されても、ジョーに配設されたステープルカートリッジに組み込まれても、又はそうでなければ、ステープルの近位に置かれてもよい。ステープルが配備されると、補助材は、ステープルと共に治療部位に残ってもよく、その結果、多くの利益を提供することができる。例えば、補助材は、治療部位における組織を増強して、治療部位において、ステープルによって裂かれる又は引き裂かれるのを防止することができる。組織増強は、組織が病変している、放射線治療など別の処置、化学療法など薬物治療、又は他の組織特性を変更する状況から治癒している場合に、ステープルが組織を裂かないように保つために必要なことがある。いくつかの場合において、補助材は、ステープル留め後に生じる組織変形(例えば、肺膨張、消化管膨張など)から生じ得る、ステープル穿刺部位及びその付近における組織の移動を最小化してよい。
【0023】
当業者は、ステープル穿刺部位が応力集中部となることがあり、ステープルによって形成された孔の寸法が、その付近の組織が張力下に置かれると、増大することを認識するであろう。これらの穿刺部位付近での組織の移動を制限することにより、張力を受けたときの孔の寸法の増大を最小化することができる。いくつかの場合において、補助材は、例えば、シーラント、血液、接着剤など、更に治癒を促進する有益な流体を吸い上げる(wick)、又は吸収するように構成され得る。また、いくつかの場合において、補助材は、分解して、例えば、シーラントなど、更に治癒を促進するゲルを形成するように構成され得る。いくつかの場合において、補助材が、組織、血管、及び種々の他の対象物又は身体部位に植え込みされるときに、ステープルによって形成される孔の封止の支援に使用されてもよい。また、補助材は、補助材に関連付けられた任意のファイバ又はストランドの間隔、配置、及び/又は配向により、組織成長に影響を及ぼしてもよい。更に、いくつかの状況では、補助材は、ステープルによって加えられる圧力を分散させ、それによって、ステープルが組織(組織はもろい場合がある)を切り開き、意図したように組織を締結することに失敗する(いわゆる「チーズワイヤリング(cheese wiring)」)可能性を低減するのに有用であり得る。加えて、補助材は、少なくとも部分的に伸縮性であり得、したがって、組織の少なくとも部分的な自然運動(例えば、呼吸中の肺組織の膨張及び収縮)を可能にすることができる。いくつかの実施形態では、ステープル線は、例えば、米国特許出願公開第2016/0089142号(発明の名称「Method for Creating a Flexible Staple Line」、2014年9月26日付けで出願)(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように可撓性であり得る。
【0024】
手術用ステープル留め器具
様々な手術用器具が、本明細書で開示された補助材及び/又は薬剤と共に使用され得る。「補助材」は、本明細書において、「補助材料」とも呼ばれる。手術用器具は、外科用ステープラを含み得る。様々な外科用ステープラ、例えば、線状外科用ステープラ及び円形ステープラを使用することができる。概して、線状ステープラは、長手方向ステープルラインを形成するように構成され得、細長いジョーを含むことができる。この細長いジョーは、それに連結され、長手方向ステープル列を収容しているカートリッジを有する。細長いジョーは、ジョー内に保持された組織に沿って、ステープル列間に切断部を形成することができるナイフ又は他の切断要素を含み得る。概して、円形ステープラは、環状ステープルラインを形成するように構成され得、輪状ジョーを含むことができる。この輪状ジョーは、環状ステープル列を収容しているカートリッジを有する。輪状ジョーは、ジョー内に保持された組織を通る開口部を画定するためにステープル列の内側に切開部を形成することができるナイフ又は他の切断要素を含み得る。ステープラは、様々な組織上で、様々な異なる外科的処置において、例えば胸部手術又は胃部手術において使用され得る。
【0025】
図1は、1つ又は2つ以上の補助材及び/又は薬剤と共に使用するに適した線状外科用ステープラ10の一実施例を示す。ステープラ10は、一般に、ハンドルアセンブリ12と、ハンドルアセンブリ12の遠位端12dから遠位方向に延在するシャフト14と、シャフト14の遠位端14dにあるエンドエフェクタ30と、を含む。エンドエフェクタ30は、対向する下部及び上部ジョー32、34を有するが、他の種類のエンドエフェクタを、シャフト14、ハンドルアセンブリ12、及びそれらに付随する構成要素と共に使用することができる。図2に示すように、下部ジョー32は、ステープルカートリッジ40を支持するように構成されたステープルチャネル56(図2を参照されたい)を有する。上部ジョー34はアンビル面33を有し、アンビル面33は、下部ジョー32に面し、かつステープルカートリッジ40のステープル(ステープルは、図1及び図2において隠れている)を配備するのを支援するためのアンビルとして動作するように構成されている。少なくとも1つの対向する下部ジョー32及び上部ジョー34は、それらの間に配設された組織及び/又は他の物体をクランプするために、他方の下部ジョー32及び上部ジョー34に対して移動可能である。いくつかの実装形態では、対向する下部ジョー32及び上部ジョー34のうちの一方が、固定されるか、又は別の方法で移動不能であってよい。いくつかの実装形態では、対向する下部ジョー32及び上部ジョー34の両方が、移動可能であってよい。発射システムの構成要素は、クランプされた組織内にステープルを放出するために、エンドエフェクタ30の少なくとも一部を通過するように構成され得る。様々な実装形態において、ナイフブレード36(図3を参照されたい)又は他の切断要素は、発射システムに接続されて、ステープル留め処置中に組織を切開することができる。切断要素は、ステープルが発射されるのと少なくとも部分的に同時に組織を切開するように構成され得る。状況によっては、ステープルが発射され、組織が固定された後に、組織が切開されるのが有利であり得る。したがって、外科的処置が、ジョーの間に捕捉された組織が切断されることを必要とする場合、ステープルがステープルカートリッジ40から射出された後に、ナイフブレード36が前進してジョーの間に把持された組織を切断する。
【0026】
エンドエフェクタ30の動作は、ハンドルアセンブリ12での、例えば、臨床医、外科医などのユーザからの入力によって開始され得る。ハンドルアセンブリ12は、それに連結されるエンドエフェクタ30を操作して動作させるように設計された多くの異なる構成を有してもよい。図示の実施例では、ハンドルアセンブリ12は、その中に配設される様々な機械的及び/又は電気的構成要素を伴うピストルグリップ型のハウジング18を有し、器具10の多様な機能を操作する。例えば、ハンドルアセンブリ12は、シャフト14及び/又はエンドエフェクタ30がシャフト14の長手方向軸線Lの周りでハンドルアセンブリ12に対して回転するのを促進することができる、ハンドルアセンブリ12の遠位端12dに隣接して取り付けられた回転ノブ26を含んでもよい。ハンドルアセンブリ12は、クランプトリガ22によって作動されるクランプシステムの一部としてのクランプ構成要素と、発射トリガ24によって作動される発射システムの一部としての発射構成要素と、を更に含み得る。クランプ及び発射トリガ22、24は、例えば、トーションばねによって、静止ハンドル20に対して開放位置に付勢され得る。静止ハンドル20に向けたクランプトリガ22の移動は、以下に記載のクランプシステムを作動させることができ、これにより、ジョー32、34を互いに向かって倒し、それによって、それらの間に組織をクランプすることができる。発射トリガ24の移動は、以下に記載の発射システムを作動させることができ、これにより、中に配設されたステープルカートリッジ40からステープルを放出させることができ、及び/又は、ナイフブレード36を前進させて、ジョー32と34との間に捕捉された組織を切断することができる。当業者であれば、機械、油圧、空気圧、電気機械、ロボット、又はその他の発射システムの構成要素の様々な構成が、ステープルの放出及び/又は組織の切開に使用され得ることを認識するであろう。
【0027】
図2に示すように、図示した実装形態のエンドエフェクタ30は、カートリッジアセンブリ又はキャリアとして機能する下部ジョー32と、アンビルとして機能する、対向する上部ジョー34とを有する。内部に複数のステープルを有するステープルカートリッジ40は、ステープルトレイ37内に支持され、次に、ステープルトレイ37は、下部ジョー32のカートリッジチャネル内に支持される。上部ジョー34は、複数のステープル成形ポケット(図示せず)を有し、各ポケットは、ステープルカートリッジ40内に収容される複数のステープルからの対応するステープルの上に位置付けられる。図示した実装形態では、上部ジョー34は、シャフト14との係合部のすぐ遠位の、ステープルチャネル56の近位端56p内で枢動可能に受け入れられる近位枢動端部34pを有するが、上部ジョー34は、様々な方法で下部ジョー32に接続され得る。上部ジョー34が下向きに枢動すると、上部ジョー34は、アンビル面33を移動させ、その上に形成されたステープル成形ポケットは、対向するステープルカートリッジ40に向かって移動する。
【0028】
ジョー32、34の開閉をもたらして、これらの間に組織を選択的にクランプするために、様々なクランプ構成要素が使用され得る。図示したように、上部ジョー34の枢動端部34pは、ステープルチャネル56との枢動取り付け部より遠位に閉鎖機構34cを含む。したがって、遠位端部が、閉鎖機構34cと係合する馬蹄形開口部46aを含む閉鎖管46は、クランプトリガ22に応答して、閉鎖管46の近位長手方向運動中に上部ジョー34に対して開放運動、及び、閉鎖管46の遠位長手方向運動中に上部ジョー34に対して閉鎖運動を選択的に加える。上記されたように、様々な実装形態において、エンドエフェクタ30の開閉は、上部ジョー34に対する下部ジョー32の相対運動、下部ジョー32に対する上部ジョー34の相対運動、又は互いに対する両方のジョー32、34の運動によってもたらされてよい。
【0029】
図示した実装形態の発射構成要素は、図3に示すように、その遠位端にEビーム38を有する発射バー35を含む。発射バー35は、シャフト14内、例えば、シャフト14の長手方向発射バースロット14s内に包含され、ハンドル12からの発射運動によって誘導される。発射トリガ24の作動は、エンドエフェクタ30の少なくとも一部を通るEビーム38の遠位運動に影響し、それによって、ステープルカートリッジ40内に収容されたステープルを発射させ得る。図示したように、Eビーム38の遠位端から突出するガイド39は、図2に示したウェッジスレッド47と係合し得る。次に、ウェッジスレッド47は、ステープルカートリッジ40内に形成されたステープル空洞41を通ってステープルドライバ48を押し上げ得る。ステープルドライバ48の上方移動は、カートリッジ40内の複数のステープルのそれぞれに上向きの力を加え、それによって、上部ジョー34のアンビル面33に押し付けてステープルを押し上げ、成形されたステープルを形成する。
【0030】
ステープルを発射させることに加えて、Eビーム38は、ジョー32、34の閉鎖、ステープルカートリッジ40からの上部ジョー34の引き離し、及び/又は、ジョー32と34との間に捕捉された組織の切断を促進するように構成され得る。具体的には、一対の頂部ピン及び一対の底部ピンは、上部ジョー32及び下部ジョー34のうちの一方又は両方と係合して、発射バー35がエンドエフェクタ30を通って前進するときに、ジョー32、34を互いに向かって圧迫し得る。同時に、頂部ピンと底部ピンとの間に延在するナイフ36は、ジョー32と34との間で捕捉された組織を切断するように構成され得る。
【0031】
使用中、外科用ステープラ10は、カニューレ又はポート内に配設され、手術部位に配設され得る。切開されてステープル留めされる組織は、外科用ステープラ10のジョー32と34との間に置かれてもよい。ステープラ10の機構はユーザによって望み通りに操作され、手術部位におけるジョー32、34及びジョー32、34に対する組織の所望の位置を達成し得る。適切な位置決めを達成した後に、クランプトリガ22を静止ハンドル20に向かって引いて、クランプシステムを作動させ得る。クランプトリガ22は、閉鎖管46がシャフト14の少なくとも一部を通って遠位方向に進み、ジョー32、34のうちの少なくとも一方を他方に向かって倒し、これらの間に配設された組織をクランプするように、クランプシステムの構成要素を動作させ得る。その後、発射トリガ24を静止ハンドル20に向けて引いて、発射バー35及び/又はEビーム38がエンドエフェクタ30の少なくとも一部を通って遠位方向に進んでステープルを発射させ、任意追加的に、ジョー32と34との間に捕捉された組織を切断するように、発射システムの構成要素を動作させることができる。
【0032】
線状外科用ステープラ50の形態の手術用器具の別の実施例を図4に図示する。ステープラ50は、概して、図1のステープラ10と同様に構成され、使用され得る。図1の手術用器具10と同様に、手術用器具50は、シャフト54を備えるハンドルアセンブリ52を含み、シャフト54は、ハンドルアセンブリ52から遠位方向に延在し、その遠位端には、組織を治療するためのエンドエフェクタ60を有している。エンドエフェクタ60の上部及び下部ジョー64、62は、これらの間に組織を捕捉し、下部ジョー62に配設されたカートリッジ66からステープルを発射することによって組織をステープル留めし、及び/又は、組織に切開部を形成するように構成され得る。この実装形態において、シャフト54の近位端にある取り付け部67は、シャフト54及びエンドエフェクタ60をハンドルアセンブリ52に取り外し可能に取り付け可能にするように構成され得る。具体的には、取り付け部67の嵌合機構68は、ハンドルアセンブリ52の補助嵌合機構71と嵌合できる。シャフト54をハンドルアセンブリ52に取り外し可能に結合するために、任意の数の補助嵌合機構及び任意の種類の結合を使用できるが、嵌合機構68、71は、例えば、スナップフィット結合、バヨネット式結合などによって互いに結合するように構成され得る。図示した実装形態のシャフト54の全体は、ハンドルアセンブリ52から分離可能に構成されているが、いくつかの実装形態において、取り付け部67は、シャフト54の遠位部分のみを分離することができるように構成され得る。シャフト54及び/又はエンドエフェクタ60の分離可能な結合は、特定の処置のための所望のエンドエフェクタ60の選択的な取り付け、及び/又は、多数の異なる処置のためのハンドルアセンブリ52の再利用を可能にし得る。
【0033】
ハンドルアセンブリ52は、その上に、エンドエフェクタ60を操作して動作させるための1つ又は2つ以上の機構を有していてもよい。非限定例として、ハンドルアセンブリ52の遠位端に取り付けられた回転ノブ72は、ハンドルアセンブリ52に対するシャフト54及び/又はエンドエフェクタ60の回転を促進し得る。ハンドルアセンブリ52は、移動可能なトリガ74によって作動されるクランプシステムの一部としてのクランプ構成要素と、これもトリガ74によって作動され得る発射システムの一部としての発射構成要素と、を含み得る。したがって、いくつかの実装形態において、第1の運動範囲を通る、静止ハンドル70に向かったトリガ74の移動は、クランプ構成要素を作動させて、対向するジョー62、64を互いに向かって閉鎖位置に接近させ得る。いくつかの実装形態では、対向するジョー62、24のうちの一方のみが移動して、ジョー62、64を閉鎖位置に移動させることができる。第2の運動範囲を通る、静止ハンドル70に向かったトリガ74の更なる移動は、発射構成要素を作動させて、ステープルカートリッジ66からステープルを放出させることができ、及び/又は、ナイフ又は他の切断要素(図示せず)を前進させて、ジョー62と64との間に捕捉された組織を切断させることができる。
【0034】
円形外科用ステープラ80の形態の手術用器具の一実施例を図5に示す。ステープラ80は、概して、図1及び図4の線形ステープラ10、50と同様に構成され、使用され得るが、いくつかの機構は、円形ステープラとしてのその機能に対応している。手術用器具10、50と同様に、手術用器具80は、遠位に延在し、組織を処置するために遠位端にエンドエフェクタ90を有するシャフト84を備えるハンドルアセンブリ82を含む。エンドエフェクタ90は、カートリッジアセンブリ92及びアンビル94を含むことができ、それぞれが、ほぼ円形の形状を有する、組織に接触する表面を有する。カートリッジアセンブリ92及びアンビル94は、アンビル94から延在するシャフト98によってステープラ80のハンドルアセンブリ82に結合されことができ、ハンドルアセンブリ82上のアクチュエータ85を操作すると、シャフト98を後退及び前進させて、カートリッジアセンブリ92に対してアンビル94を移動させることができる。アンビル94及びカートリッジアセンブリ92は、様々な機能を行うことができ、それらの間に組織を捕捉したり、カートリッジアセンブリ92のカートリッジ96からステープルを発射することにより組織をステープル留めしたりするように構成され得、かつ/又は、組織に切開部を形成することができる。一般的に、カートリッジアセンブリ92は、ステープルを収容しているカートリッジを収容することができ、ステープルをアンビル94に対して配備することにより、円形のステープルパターンを形成し、例えば、管状体内臓器の外周の周りをステープル留めすることができる。
【0035】
一実装形態において、シャフト98は、アンビル94をカートリッジアセンブリ92から分離することができるように解放可能に互いに連結されるように構成された第1及び第2の部分(図示せず)で構成することができ、これにより、アンビル94及びカートリッジアセンブリ92を、患者の体内に配置するのに、より高い柔軟性を与えることができる。例えば、シャフト98の第1の部分は、カートリッジアセンブリ92の内部に配設され、カートリッジアセンブリ92の外部へと遠位方向に延在して、遠位嵌合機構において終端することができる。シャフト98の第2の部分は、アンビル94の内部に配設され、カートリッジアセンブリ92の外部へと近位方向に延在して、近位嵌合機構において終端することができる。使用中、近位嵌合機構と遠位嵌合機構とを互いに連結することにより、アンビル94とカートリッジアセンブリ92とを互いに対して動かすことができる。
【0036】
ステープラ80のハンドルアセンブリ82には、ステープラの移動を制御することができる、様々なアクチュエータを配設することができる。例えば、ハンドルアセンブリ82には、回転によってエンドエフェクタ90の配置を容易にする回転ノブ86、及び/又は、エンドエフェクタ90を作動させるためのトリガ85を配設することができる。第1の運動範囲によるトリガ85の静止ハンドル87に向かう移動によって、クランプシステムの構成要素をジョーに近づける(すなわち、カートリッジアセンブリ92に向かってアンビル94を動かす)ように作動させることができる。第2の運動範囲によるトリガ85の静止ハンドル87に向かう移動によって、発射システムの構成要素を作動させて、ステープルをステープルカートリッジアセンブリ92から配備させ、かつ/又は、カートリッジアセンブリ92とアンビル94との間に捕捉された組織を切断するためにナイフを前進させることができる。
【0037】
手術用ステープル留め器具10、50、及び80の図示の実施例は、本明細書で提供される本開示と共に使用することができる多くの異なる構成のうちのごく一部の実施例、及び関連する使用方法を提供する。図示の実施例は、全て低侵襲処置で使用するように構成されているが、切開外科的処置で使用するように構成されている器具、例えば、米国特許第8,317,070号(発明の名称「Surgical Stapling Devices That Produce Formed Staples Having Different Lengths」、2007年2月28日付けで出願)に記載されているようにオープン線状ステープラを本明細書で提供される開示と共に使用できることが理解されるであろう。図示の実施例の更なる詳細並びに、外科用ステープラ、その構成要素、及びその関連する使用方法の更なる例は、米国特許出願公開第2015/0277471号(発明の名称「Systems And Methods For Controlling A Segmented Circuit」、2014年3月26日付けで出願)、米国特許出願公開第2013/0256377号(発明の名称「Layer Comprising Deployable Attachment Members」、2013年2月8日付けで出願)、米国特許第8,393,514号(発明の名称「Selectively Orientable Implantable Fastener Cartridge」、2010年9月30日付けで出願)、同第8,317,070号(発明の名称「Surgical Stapling Devices That Produce Formed Staples Having Different Lengths」、2007年2月28日付けで出願)、同第7,143,925号(発明の名称「Surgical Instrument Incorporating EAP Blocking Lockout Mechanism」、2005年6月21日付けで出願)、米国特許出願公開第2015/0134077号(発明の名称「Sealing Materials For Use In Surgical Stapling」、2013年11月8日付けで出願、発明の名称「Sealing Materials for Use in Surgical Procedures」、2013年11月8日付けで出願)、同第2015/0134076号(発明の名称「Hybrid Adjunct Materials for Use in Surgical Stapling」、2013年11月8日付けで出願)、同第2015/0133996号(発明の名称「Positively Charged Implantable Materials and Method of Forming the Same」、2013年11月8日付けで出願)、同第2015/0129634号(発明の名称「Tissue Ingrowth Materials and Method of Using the Same」、2013年11月8日付けで出願)、同第2015/0133995号(発明の名称「Hybrid Adjunct Materials for Use in Surgical Stapling」、2013年11月8日付けで出願)、同第2015/0272575号(発明の名称「Surgical Instrument Comprising a Sensor System」、2014年3月26日付けで出願)、同第2015/0351758号(発明の名称「Adjunct Materials and Methods of Using Same in Surgical Methods for Tissue Sealing」、2014年6月10日付けで出願)に提供されており、これらの文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
植え込み可能な補助材
上記されたように、様々な植え込み可能な補助材が、手術用ステープル留め器具と共に使用するのに提供される。補助材は、様々な構成を有することができ、様々な材料から形成されることができる。一般的に、補助材は、1つ又は2つ以上のフィルム、発泡体、射出成形熱可塑性材料、真空熱成形材料、繊維性構造体、及びそれらのハイブリッドから形成され得る。また、補助材は、1つ又は2つ以上の生物由来材料及び1つ又は2つ以上の薬物も含み得る。これらの材料はそれぞれ、以下により詳細に検討される。
【0039】
補助材は、発泡体、例えば、独立気泡発泡体、連続気泡発泡体、又はスポンジから形成され得る。このような補助材を製造することができる例は、動物由来コラーゲン、例えば、ブタの腱からのものであり、次いで、これが処理され、発泡構造に凍結乾燥され得る。また、ゼラチンを使用し、発泡体に加工することもできる。様々な発泡補助材の例は、先で言及された米国特許第8,393,514号(発明の名称「Selectively Orientable Implantable Fastener Cartridge」、2010年9月30日付けで出願)に更に記載されている。
【0040】
また、補助材は、以下で検討される任意の好適な材料又は材料の組み合わせから形成されたフィルムから形成されてもよい。フィルムは、1つ又は2つ以上の層を含むことができ、各層は、異なる分解速度を有することができる。更に、フィルムは、内部に形成された様々な領域、例えば、多くの異なる形態において、1つ又は2つ以上の薬剤を内部に放出可能に保持することができるリザーバを有することができる。内部に配設された少なくとも1つ又は2つ以上の薬剤を有するリザーバは、吸収性又は非吸収性ポリマーを含み得る、1つ又は2つ以上の異なるコーティング層を使用して封止され得る。フィルムは様々な方法で形成されることができる。例えば、フィルムは、押出成形フィルム又は圧縮成形フィルムであってよい。また、薬剤をフィルム上に吸着させてもよく、又は水素結合などの非共有相互作用を介して薬剤をフィルムに結合させてもよい。
【0041】
また、補助材は、射出成形熱可塑性材料又は真空熱成形材料からも形成され得る。様々な成形補助材の例は、米国特許出願公開第2013/0221065号(発明の名称「Fastener Cartridge Comprising A Releasably Attached Tissue Thickness Compensator」、2013年2月8日付けで出願)に更に記載されている。同文献は、その全体が参照により組み込まれる。また、補助材は、ファイバベース格子であることもできる。この格子は、織布、編地、又は、メルトブロー、ニードルパンチ、若しくは熱構成ルーズ織布などの不織布であることができる。補助材は、多くの異なる方法で共に補助材を形成し得る、同じ種類の格子又は異なる種類の格子から形成され得る、複数の領域を有し得る。例えば、ファイバは、規則的又は不規則な構造を形成するために、織られ、編み組まれ、編まれ、又は他の方法で相互に結び付けられ得る。ファイバは、得られた補助材が比較的緩くなるように、相互に結び付けられ得る。あるいは、補助材は、密に相互に結び付けられたファイバを含み得る。補助材は、シート、チューブ、螺旋、又は、柔らかい部分及び/若しくはより硬い補強部分を含み得る任意の他の構造の形態であり得る。補助材は、その特定の領域がより密なファイバを有することができ、一方で、他の領域がより密でないファイバを有するように構成され得る。ファイバ密度は、補助材の1つ又は2つ以上の次元に沿って、補助材の意図した用途に基づいて、異なる方向で変わり得る。
【0042】
補助材は、織られた、編まれた、ないしは別の方法で相互に結び付けられた繊維から形成することができ、そうすることで補助材を伸縮させることが可能となる。例えば、補助材は、その長手方向軸線に沿った方向、及び/又は長手方向軸線に垂直な横方向に伸縮するように構成され得る。補助材は、少なくとも2つの寸法(例えば、X及びY方向)に伸縮可能である一方で、その厚さ(例えば、Z方向)に沿って補強を提供することができ、これにより、補助材は、伸縮するが、ステープルによるやぶれ及び引き裂かれに抵抗するようになっている。組織と共に伸縮することができるように植え込まれるように構成された補助材の非限定的な例は、上述の米国特許出願公開第2016/0089142号(発明の名称「Method for Creating a Flexible Staple Line」、2014年9月26日付けで出願)(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0043】
また、補助材は、積層複合材又はメルトロック相互結合ファイバなどのハイブリッド構造であってもよい。様々なハイブリッド構造の補助材の例は、米国特許第9,282,962号(発明の名称「Adhesive Film Laminate」、2013年2月8日付けで出願)、及び同第7,601,118号(発明の名称「Minimally Invasive Medical Implant And Insertion Device And Method For Using The Same」、2007年9月12日付けで出願)に更に記載されており、これらの文献の全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0044】
記載された技術に基づく補助材は、様々な材料から形成され得る。材料は、異なる目的での様々な実施形態に使用され得る。材料は、組織内方成長を促進するために、組織に提供されるべき所望の治療に従って選択され得る。材料は、ホモポリマー及びコポリマーを含めた、生体吸収性及び生体適合性ポリマーを含み得る。生体吸収性ポリマーは、吸収性、再吸収性、生体吸収性、又は生分解性ポリマーであり得る。また、補助材は、活性剤、例えば、活性な細胞培養物(例えば、ダイス状の自家組織、幹細胞療法に使用される作用剤(例えば、Biosutures及びCellerix S.L.)、止血剤、及び組織治癒剤も含み得る。
【0045】
補助材は、内部に、多数の異なる薬剤から選択され得る少なくとも1つの薬剤を放出可能に保持することができる。薬剤としては、所望の機能を有する、補助材内に含まれ、又は補助材に関連付けられた薬物又は他の作用剤が挙げられるが、これらに限定されない。薬剤としては、例えば、抗菌剤、例えば、抗細菌剤及び抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗炎症剤、成長因子、鎮痛薬、麻酔剤、組織マトリックス変性阻害剤、抗ガン剤、止血剤、及び生物学的応答を引き起こす他の作用剤が挙げられるが、これらに限定されない。補助材はまた、例えば、音波発生材料又は放射線不透過性材料などの、撮像中の可視性を向上させる薬剤から作製されてもよく、又はそれを含んでもよい。
【0046】
様々な補助材及び補助材から薬剤を放出するための様々な技術の例は、米国特許出願第14/840,613号(発明の名称「Medicant Eluting Adjuncts and Methods of Using Medicant Eluting Adjuncts」、2015年8月31日付けで出願)(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に更に記載されている。
【0047】
実装形態
手術用器具のエンドエフェクタの一方又は両方のジョーの上に補助材料を解放可能に保持するための様々な例示的な装置、システム、及び方法が、本明細書に記載される。対向するジョーの一方又は両方の上部には、補助材料と嵌合するように構成された保持部材が形成され得る。
【0048】
いくつかの実装形態では、補助材料は、補助材料がジョーから早期に滑り落ちる可能性が減少する又は排除されるように、エンドエフェクタのジョーの上に固定された状態で解放可能に保持され得る。このようにして、外科医が外科的処置中にエンドエフェクタを操作する間、補助材はジョーにしっかりと結合される。補助材は、例えば、ステープルが配備されるとき及び/又は切断要素の移動が補助材をジョーから分離させるときに、ジョーから分離されて患者内の治療部位に運ばれるまで、ジョーに結合されたままである。このような実装形態では、補助材料は、1つ又は2つ以上の収縮可能な取り付け機構を使用してエンドエフェクタのジョーに結合されることができる。補助材料を保持部材又はジョーの他の機構と結合するように構成された収縮可能な取り付け機構は、補助材料とは別個に形成された機構であってもよい。追加的に又は代替的に、収縮可能な取り付け機構は、補助材料に織り合わされるか、ないしは別の方法で結合されていてもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、収縮可能な取り付け機構は、収縮性ポリマーの1本又は2本以上のストランドの形態であってもよい。ストランドは、補助材料上に配設されてもよく、及び/又は1つ又は2つ以上の位置で補助材料に通されてもよい。更に、いくつかの実施形態では、取り付け機構は、補助材料に織り合わされた複数本のポリマーストランドの形態であってもよい。取り付け機構は、任意の適切な材料(複数可)で形成することができる。例えば、いくつかの実装態様では、取り付け機構は、ポリジオキサノン(PDO)から、又は補助材料の融解温度より低い融解温度を有する他の材料から形成することができる。
【0050】
収縮可能な取り付け機構の特定の構成及びそれらが形成される材料にかかわらず、各取り付け機構は、熱の適用下で、元の非収縮構成から収縮構成に移行するように構成され得る。取り付け機構は、補助材料と係合することができ、取り付け機構の収縮は、補助材料をジョーの上に形成された保持部材と結合させるのに有効である。補助材料は、本明細書に記載される収縮可能な取り付け機構を使用して、手術用器具のエンドエフェクタの一方又は両方のジョーに解放可能に結合され得る。
【0051】
図6は、収縮可能な取り付け機構を使用して解放可能に固定された補助材料を有するエンドエフェクタのジョーの実施例を示す。図6は、手術用器具(図示せず)の細長いシャフトの遠位端に結合されるように構成された手術用器具のエンドエフェクタ100の一部分を示す。エンドエフェクタ100は、概して、図1図4に関連して説明したものと同様の構成要素を含むことができ、また、補助材をエンドエフェクタ100に解放可能に取り付けることができる機構及び/又は構成要素を含むことができる。したがって、外科用ステープラ10(図1)及び50(図4)と同様に、エンドエフェクタ100は、アンビルを有する上部ジョーと、カートリッジ本体(図示せず)を有する下部ジョーとを含み、上部ジョー102のみが図6に示されている。下部ジョーは、概して、内部にステープルを着座させるように構成された複数のステープル保持空洞を有するステープルカートリッジを含むことができ、ステープル保持空洞は、カートリッジの組織に面する表面上に開口している。
【0052】
図6に示すように、アンビル104を有する上部ジョー102は、以下でより詳細に説明するように、1つ又は2つ以上の収縮可能な取り付け機構128を使用してアンビル104の組織に面する表面118上に解放可能に保持された補助材料124(部分的に透明に示されている)を有することができる。図6に概略的に示されるように、アンビル104は、その組織に面する表面118上に形成されたステープル形成空洞116を有する。同様に示されるように、組織に面する表面118は、切断要素(例えば、ナイフ)が内部を通って遠位方向に移動する際にその切断要素を受容するように構成されたナイフチャネル108を有する。
【0053】
図示される実施例では、アンビル104は、アダプタ110を介してアンビル104に解放可能に取り付けられたアンビルプレート106を含むモジュール式ジョーの形態で示されている。アンビルプレート106は、実質的に剛性の表面であり、ステープルはこの表面に接触して形成され得る。図示の実施例では、アダプタ110は嵌合機構112を含み得、この嵌合機構112は、対向するジョーに面するアンビル104の側に沿って形成された対応するアンビル機構114と嵌合し、それによって、アンビルプレート106とアンビル104のカートリッジに面する表面との間の整列を確実にするように構成されている。アダプタ110は、例えば、エラストマー又は他の柔軟部材であってもよく、アンビルプレートにオーバーモールドされるか、接着されるか、ないしは別の方法で結合されることができる。アダプタ110を使用して、様々な方法でアンビルプレート106をアンビル104に解放可能に結合することができる。例えば、アダプタ110はジョー102にスナップ嵌めすることができる。モジュール構成により、異なるステープル形成機構を有するアンビルプレートを同じジョーで互換的に使用することが可能になり得る。記載された技術は、モジュール式ジョーを有する様々なエンドエフェクタと共に使用することができる。例えば、このようなエンドエフェクタは、米国特許出願第[END8096USNP,47364-244F01US](発明の名称「Surgical end effector adjunct attachment」、[本出願と同日付]で出願)、及び米国特許出願第15/385,953号(発明の名称「Methods of Stapling Tissue」、2016年12月21日付けで出願)に記載されており、これらの文献の内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0054】
図6の実施例では、組織に面する表面118は、アンビルプレート106の、補助材料124に面する表面の形態である。しかしながら、アンビルプレート106を有するモジュール式アンビル104はほんの一例として示されており、記載された技術を使用して、組織に面する表面が取り外し不可能に結合されているジョーを含む任意のタイプのジョーに、補助材料を解放可能に結合することができることを理解されたい。
【0055】
その特定の構成にかかわらず、アンビル104の組織に面する表面118は、補助材料124をアンビル104に結合するように構成された少なくとも第1及び第2の保持部材122a、122bを有する。第1の保持部材122aは、組織に面する表面118の一方の側に、組織に面する表面118の一方の縁部109aに近接して配設され、第2の保持部材122bは、組織に面する表面118のもう一方の対向する側に、組織に面する表面118のもう一方の対向する縁部109bに近接して配設される。このようにして、第1及び第2の保持部材122a、122bは、ナイフチャネル108の両側に配設される。
【0056】
保持部材122a、122bは、様々な異なる構成を有することができる。図示される実施例では、保持部材は、組織に面する表面118から延出する概ね円筒形のポストの形態である。しかしながら、保持部材122a、122bは、説明された実装形態がこの点において限定されないため、他の形状を有することができる。例えば、保持部材は、砂時計の形状、球根状若しくは拡幅された端部領域、又は任意の他の形状を有することができる。追加的に又は代替的に、保持部材は、任意の好適な様式で湾曲していても及び/又は角度付けされていてもよい。例えば、図6に示されるように、保持部材122a、122bは、組織に面する表面118のそれぞれの縁部109a、109bに向かって互いから離れる方向にわずかに角度付けされていてもよい。このような構成は、以下に説明するように、1つ又は2つ以上の取り付け機構128を保持部材122a、122bと係合させるのを支援することができる。保持部材は、任意の他の方法で構成することができ、保持部材における取り付け機構128の保持を容易にすることができる、例えば、1つ又は2つ以上の歯、ノッチ、溝、アンダーカット、粗さ領域などの任意の他の保持機構を有することができる。
【0057】
図6には2つの保持部材122a、122bが示されているが、組織に面する表面118は、補助材と結合するように構成された任意の他の数の保持部材(例えば、1つ又は2つ超)を有することができる。更に、保持部材は、アンビル104の組織に面する表面118上の様々な位置に形成されることができる。例えば、いくつかの実施形態では、組織に面する表面118の各縁部109a、109bに沿って2つ又は3つ以上の保持部材を形成することができる。保持部材は、補助材料をジョーの組織に面する表面上にしっかりと保持することを可能にする、互いからの任意の適当な距離で形成され得る。加えて、保持部材は、ナイフチャネル108又は組織に面する表面118の他の機構に対して対称に配設されてもよく、又は様々な他の方法で表面118上に形成されてもよい。
【0058】
図6に示されるように、図示される実施例では、保持部材122a、122bのそれぞれは、組織に面する表面118の、ステープル形成空洞116を有する領域の外側に形成されている。しかしながら、いくつかの実装形態では、保持部材の1つ又は2つ以上は、ステープル形成空洞116を有する領域内に形成されてもよい。
【0059】
上述のように、補助材料124は、以下でより詳細に論じられるように、熱の適用下で、元の非収縮構成から収縮構成へと移行するように構成された少なくとも1つの収縮可能な取り付け機構128を使用して、アンビル104と解放可能に結合するように構成されている。補助材料124は、安全な方法でアンビル104と結合することができ、これは、エンドエフェクタ100が外科的処置を使用して所望通りに操作されている間、補助材124がアンビル104に結合されたままであることを確実にするのに役立つ。補助材124は、ステープルをそのカートリッジから放出させるためのエンドエフェクタ100の起動及び/又は切断要素の起動などの動作がとられてアンビル104から補助材124が分離されるまで、アンビル104と係合した状態で保持される。
【0060】
加熱の結果として生じる少なくとも1つの収縮可能な取り付け機構128の収縮に対応するために、補助材料124は、補助材料124をジョー102に結合させるように加熱が生じた時点で適切な形状及び大きさとなるように構成され得る。例えば、補助材料124は、加熱前にアンビル104の組織に面する表面118の周辺部を越えて延在し、加熱が生じた時点で適切なサイズとなるように寸法決めされることができる。
【0061】
第1及び第2の保持部材122a、122bは、補助材料124の対応する嵌合機構と嵌合するように構成される。具体的には、記載された実装形態において、補助材料124は、保持部材122a、122bをそれぞれ受容するように構成された開口部126a、126bを含む。この実施例では、補助材124内の貫通開口部126a、126bは概ね円形であるが、開口部126a、126bは、任意の他の好適な形状を有することができることを理解されたい。
【0062】
開口部126a、126bは、様々なサイズ及び構成を有することができ、補助材124の様々な位置に配設することができる。例えば、開口部126a、126bは、アンビルプレート106上に形成された保持部材122a、122bの位置に対応する補助材料124の位置に形成され得る。
【0063】
上述したように、記載された実装形態では、保持部材122a、122bは、熱の適用下で元の非収縮構成から収縮構成に移行するように構成された1つ又は2つ以上の収縮可能な取り付け機構128と係合することによって、補助材124をアンビル104に結合する。収縮可能な取り付け機構128は、収縮性ポリマーの1本又は2本以上のストランドの形態であってもよく、このストランドは、1つ又は2つ以上の位置において補助材料124に結合されてもよい。補助材料124及び少なくとも1つの収縮可能な取り付け機構128は、様々な材料から作製することができる。例えば、少なくともいくつかの実施形態において、補助材124は、VICRYL(登録商標)(ポリグラクチン910)材料から作製することができ、一方、収縮可能な取り付け機構128は、生体吸収性及び/又は生分解性であり得る1本又は2本以上のPDOストランドの形態であってもよい。任意の他の材料が、追加的に又は代替的に使用されてもよい。ストランドのうちの1本又は2本以上は、補助材料124に結合(例えば、取り外し可能に)されることができる。PDOは比較的低い融解温度を有し、このことは、補助材及び取り付け機構と共に使用するのに有利である。例えば、PDOは105℃の融解温度を有する。熱は、例えば、30秒~数分にわたって適用されて、取り付け機構128を収縮構成に移行させることができる。
【0064】
図6を参照すると、収縮可能な取り付け機構128は、補助材料と係合することができ、収縮可能な取り付け機構128の収縮は、補助材料124を保持部材122a、122bと結合させるのに有効である。例えば、補助材料124は、補助材の開口部126a、126bが保持部材122a、122bを受容するように、ジョー102の組織に面する表面118の上に配設され得る。いくつかの実施形態では、補助材料124は、以下に記載されるように、ローダ部材を使用してジョーに適用され得る。更に、補助材料124は、取り付け機構128が保持部材122a、122bと係合するように、補助材料124の上に配設され得る少なくとも1つの収縮可能な取り付け機構128と関連付けられている。取り付け機構128は補助材料124に結合させることができる。例えば、取り付け機構128は、収縮性ポリマーの1本又は2本以上のストランドの形態であってもよく、そのうちの1本又は2本以上は、補助材124の少なくとも1つの部分を通過する。熱は、取り付け機構128の少なくとも一部分を収縮させ、それによって、取り付け機構128を使用して補助材料124を保持部材122a、122bに結合させることができる。具体的には、取り付け機構128を収縮構成において保持部材122a、122bに結合させるように、取り付け機構128を元の非収縮構成から収縮構成へと移行させることができ、それによって、補助材料124と保持部材122a、122bとの、更にはアンビル104との(解放可能であったとしても)しっかりとした係合状態を維持する。
【0065】
補助材料は、様々な他のアプローチを使用してエンドエフェクタに取り付けられてもよいことを理解されたい。例えば、米国特許出願第14/871,078号(発明の名称「Tubular Absorbable Constructs」、2015年9月30日付けで出願)(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、別のアプローチを記載している。
【0066】
図7A及び図7Bは、アンビル(例えば、図6のアンビル104)を有するジョーなどのジョー(図示せず)の組織に面する表面上に配設され得る補助材料又は補助材224の一実施形態を示す。ジョーはまた、カートリッジを有するジョーであってもよいことを理解されたい。この実施例では、補助材224は、関連付けられた複数の取り付け機構228を有している。
【0067】
取り付け機構228は、2つ又は3つ以上の取り付け機構の形態であり得る。取り付け機構228は、例えば、1つ又は2つ以上の点において補助材料の少なくとも1つの部分を通過することができる、PDOストランドなどの収縮性ポリマーのストランドであり得る。例えば、PDOストランドは、補助材224に織り込まれる、編み込まれる、編組される、ないしは別の方法で補助材224に関連付けられることができる。例として示されるように、取り付け機構228のうちの1つ又は2つ以上は、点229a、229bで補助材224に結合され得るが、補助材224の任意の位置の任意の数の点で取り付け機構228を補助材224に結合することができることを理解されたい。場合によっては、取り付け機構228が製造プロセス中に作製されることによって補助材224の一部となるように、補助材224を製造してもよい。しかしながら、他の実施形態では、取り付け機構228の一部又は全部は、補助材224に結合された別個のねじ山であり得る。
【0068】
使用中、補助材224は、ジョーの上に形成されて補助材224内の開口部226a、226bと嵌合する保持部材222a、222bを介して、ジョーと嵌合することができる。図7Aに示すように、補助材224がジョーにしっかりとかつ解放可能に結合される前、取り付け機構228は非収縮構成にあるので、取り付け機構228は保持部材222a、222bの両方を包囲する1つ又は2つ以上のループを形成する。図示のように、ループは、保持部材222a、222bの周りに比較的緩く配設され得る。上述のように、取り付け機構228は、様々な方法で補助材と関連付けることができる。例えば、取り付け機構228を補助材224の1つ又は2つ以上の部分に通過させることができる。追加的に又は代替的に、取り付け機構は、例えば、接着剤を使用して補助材の上に配設され、補助材に結合されてもよい。
【0069】
図7Bに概略的に示されるように、補助材224は、取り付け機構228の一部分を包囲する領域230に熱を加えることによって、ジョーに固定され得る。熱の適用下で、取り付け機構228は、非収縮構成(図7Aに示す)から、図7Bに示されるような収縮構成に移行する。収縮構成では、取り付け機構228は、1つ又は2つ以上のループが保持部材222a、222bの周囲に係合され、それによって、補助材料224をジョーの上に解放可能に保持するように配置され得る。このようにして、収縮構成において、取り付け機構228のループは、非収縮構成の場合よりも、保持部材222a、222bの周囲によりきつく張力保持される。また、上述したように、保持部材222a、222bは、取り付け機構228との係合を容易にする保持機構を有するように構成されている。
【0070】
図7Bに示される実施例では、取り付け機構228の一部分を包囲する領域に熱が加えられると、その領域内の取り付け機構228の部分が収縮する。熱は、以下でより詳細に説明するように、様々な方法で取り付け機構228に適用することができる。収縮により、取り付け機構228及び貫通開口部226a、226bは、保持部材222a、222bの周囲で張力をかけられ、それによって補助材224をジョーの上に解放可能に保持する。したがって、図7A及び図7Bは、補助材224の面積が、熱が加えられた後にある程度低減するところを示している。図7A及び図7Bはまた、補助材224が収縮構成にあるときに、補助材224に形成された開口部226a、226bの形状が変化することを示す。具体的には、取り付け機構228の収縮に起因して、補助材224を形成する材料が補助材224の中央に向かって引っ張られると(これは図7Bの矢印223a、223bによっても示されている)、開口部226a、226bはより大きな程度に伸縮する。ステープルが発射され、切断要素(例えば、ナイフ)が作動されると、取り付け機構228が切断されるので、補助材224をジョーから分離することが可能になる。
【0071】
図7A及び図7Bの実装形態は単なる例として示されていることを理解されたい。したがって、取り付け機構228は、多くの様々な方法で保持部材の周囲に巻き付けることができる。例えば、図示される実施例と同様に、取り付け機構228は、実質的に楕円形のパターンで1つ又は2つ以上のループを形成することができる。別の実施例として、取り付け機構は、保持部材の周りに8の字パターンに配置されてもよく、あるいは、1つ又は2つ以上の部分が補助材上に1つ又は2つ以上の十字パターンを形成するように配置されてもよい。また、取り付け機構(複数可)は、実質的にランダムな方法で保持部材の周囲に配置することができる。上述のように、1つ又は2つ以上の取り付け機構は、1つ又は2つ以上の位置において補助材に結合される(例えば、織り込まれる)ことができる。更に、いくつかの実装形態では、取り付け機構のうちの1つ又は2つ以上は、互いに結合されるか又は相互連結され得る。
【0072】
更に、いくつかの実施形態では、取り付け機構は保持部材と係合されない。例えば、補助材は、その周辺部の周囲に形成された開口部を有することができ、これらの開口部の一部又は全部は、ジョーの保持部材と係合され得る(例えば、内部を通って受容され得る)。任意の好適な方法(例えば、補助材を1回又は2回以上通過させる、接着剤を使用して取り付けるなど)で補助材に結合することができる収縮可能な取り付け機構は、補助材が熱に曝されたときに収縮し、補助材の2つの側部が一緒に引っ張られるように、例えば補助材の中央を横切って一定の方法で配設されることができる。補助材及び取り付け機構の構成に応じて、補助材は、好適な方法での熱の適用の結果として収縮又は変形する。
【0073】
図7A及び図7Bに示される例では、補助材224は、複数の取り付け機構228を使用して、ジョーの組織に面する表面に固定されている。しかしながら、いくつかの実施形態では、単一の連続的な取り付け機構を使用して、補助材をエンドエフェクタのジョーに固定することができる。このような実施形態は、例えば、補助材と取り付け機構との間の制限された相互接続が望まれる場合に使用することができる。換言すれば、取り付け機構は、2つ又は3つ以上の取り付け機構を使用する実装形態と比較して、より少ない位置で補助材に結合され得る。
【0074】
図8A及び図8Bは、アンビル(例えば、図6のアンビル104)を有するジョー又はカートリッジを有するジョーなどのジョー(図示せず)に補助材料又は補助材324を連結するために、連続的な取り付け機構328が使用される実施形態を示す。この実施例では、取り付け機構328は、図8Aに示されるように、補助材324の一部の上に配設された比較的長い連続した機構である。
【0075】
図示のように、補助材324は、ジョーの上に形成された保持部材322a、322bが補助材324の貫通開口部326a、326bと嵌合するように、ジョーの上に配設される。同様に示されるように、取り付け機構328は、保持部材322a、322bを包囲する1つ又は2つ以上のループを形成することができる。例として示されるように、取り付け機構328は、点329で補助材324に結合され得るが、補助材324の任意の位置にて任意の数の点で取り付け機構328を補助材324に結合することができることを理解されたい。取り付け機構328は、補助材324に織り込まれるか、編み込まれるか、縫い合わされるか、ないしは別の方法で結合されてもよい。加えて、いくつかの実施形態では、取り付け機構328の1つ又は2つ以上の部分は、例えば、接着剤を使用して互いに結合することができる。追加的に又は代替的に、その部分のうちのいくつかは、結ばれる、撚り合わされる、互いに結合されるなどしてもよい。
【0076】
図示される実施例では、図8Bに示されるように、取り付け機構328の一部分を包囲する領域330に熱が加えられると、取り付け機構328の1つ又は2つ以上の部分が収縮する。収縮が生じると、取り付け機構328は、取り付け機構328の材料が保持部材322a、322bの周囲によりきつく係合するように保持部材322a、322bに向かって接近し、それによって、補助材324をジョーの上に解放可能に保持する。換言すれば、取り付け機構328は、保持部材322a、322bの周囲に張力保持される。ステープルが発射され、切断要素(例えば、ナイフ)が作動されると、取り付け機構328は切断されるので、補助材324がジョーから分離することが可能になる。
【0077】
このようにして、図7A図7B図8A、及び図8Bは、外科的処置中にジョーを所望通りに操作することを可能にする方法で、補助材224、324がジョーにしっかりと結合され得ることを示している。補助材がジョーから滑り落ちる、ないしは別の方法で意図せず、時期尚早にジョーから分離されるリスクが、低減又は排除される。
【0078】
図7A図7B図8A、及び図8Bの実施例では、取り付け機構は、任意の好適な材料から形成することができる。例えば、取り付け機構は1本又は2本以上のPDOストランドの形態であってもよい。PDOストランドの密度は、取り付け機構全体にわたって、したがって取り付け機構が取り付けられる補助材全体にわたって変化してもよい。そのため、取り付け機構(複数可)の収縮度は、補助材の異なる部分によって変化する。場合によっては、より均一な補助材の収縮が達成され得るように、細長いPDOストランドは、補助材全体にわたって織り合わされてもよい。PDOストランドはまた、保持部材の周囲に巻き付けられて、熱が適用されて収縮が生じたときに、それらが保持部材と効果的に係合することを確実にすることができる。別の実施例として、取り付け機構は、補助材と別個であってもよい。そのような場合、加熱すると、取り付け機構は収縮し、保持部材間に張力によって固定され、それによって、補助材を定位置に保持するが、取り付け機構の収縮が補助材の構成に影響を与えることはない場合がある。あるいは、上述したように、取り付け機構は、特定の取り付け点で補助材に取り付けられてもよく、これは、補助材の所望の構成及び収縮量に基づいていてもよい。
【0079】
説明される実施形態では、1つ又は2つ以上の取り付け機構を使用して、補助材を、熱を使用してエンドエフェクタのジョーと解放可能に係合することができる。熱は、様々な方法で提供され得る。例えば、いくつかの実施形態では、熱は、補助材をジョーに適用するように構成されたローダを使用して適用され得る。図9A及び図9Bは、ジョーの組織に面する表面に補助材を適用するように構成されたローダ400の一実施例を示す。図9Aは、ローダ400の上面図を示し、図9Bは、ローダ400の断面図を示す。
【0080】
図示の実施例と同様に、ローダ400は、エンドエフェクタ(図示せず)の一方又は両方のジョーに1つ又は2つ以上の補助材を解放可能に結合するように構成された、略矩形の枠状ホルダの形態である。図示の実施例では、ローダ400は、例えば、図9Bに示されるような連結部406を介して互いに結合された第1(例えば、上部)及び第2(例えば、底部)の略矩形のハウジング402、404の形態である。この実施例では、ローダ400は、単一の補助材をジョーに適用するために使用され得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、ローダ400又は同様のローダのようなローダを使用して、エンドエフェクタの各ジョーにそれぞれの補助材を適用することができることを理解されたい。
【0081】
ローダ400は、以下に記載されるように、取り付け機構に熱を加えるように作動されるように構成された少なくとも1つの加熱構成要素408を含む。加熱構成要素408は、様々な構成を有し得る。例えば、図9A及び図9Bに示されるように、加熱構成要素408は、ワイヤの形態の抵抗加熱要素414を含む。加熱要素414は電源416に接続されている。図示の実施例では、加熱要素414は、その長さに沿って高抵抗部分418を含む。高抵抗部分418の位置は、熱が適用されることが望まれる補助材上の領域、例えば、領域230(図7B)又は領域330(図8B)に対応し得る。したがって、加熱要素414に電力を印加して、高抵抗部分418付近で局所加熱を生じさせることができる。いくつかの実施形態では、加熱要素は、回路を閉鎖し、電流が加熱要素を通って流れることを可能にするスイッチ420を含むことができる。スイッチ420は、ローダ400上の好適なトリガ(例えば、ボタン)を使用して動作させることができるが、加熱要素414は他の好適な方法で起動されてもよい。高抵抗部分418によって生成された熱は、補助材と係合している取り付け機構を収縮させ、補助材をジョーの保持部材と効果的に結合させ、それによって、ジョーの組織に面する表面上に補助材を解放可能に保持する。
【0082】
加熱構成要素408は、任意の好適な種類のものであってもよい。例えば、加熱構成要素408は、弾性材料又は柔軟材料でコーティングされた硬質材料、例えば、セラミックで作製することができる。いくつかの実施形態では、加熱構成要素408は、例えば、シリコーンが抵抗素子の周囲で硬化されるように、シリコーンに埋め込まれた抵抗素子の形態であってもよい。抵抗素子は、加熱をもたらすように構成されている一方、シリコーンは、ステープラをローダにクランプするときにある程度の伸展性を可能にする。図9Bに示されるように、加熱構成要素408は、接続機構410(例えば、ブラケット)を介してハウジング402、404に結合され得る。
【0083】
ローダ400及び加熱構成要素408は、概して、図9Bに示されるように、補助材(図示せず)を表面、例えば、加熱構成要素の上向き表面412上に配置することができ、エンドエフェクタのジョーを加熱構成要素及び補助材の上にクランプすることができるように構成され得る。図示されていないが、ローダ400及び/又は加熱構成要素408は、補助材がエンドエフェクタの両方のジョーに同時に固定され得るように、表面412及び413に補助材を解放可能に固定することができる保持機構を含むことができる。例えば、加熱構成要素408は、補助材を表面412、413に解放可能に固定するために補助材を把持することができる小さなポスト又はフックを有することができる。一実施形態では、加熱構成要素408は使い捨てであり、表面412、413に固定された補助材に結合される。このような実施形態では、ローダ400は、補助材が取り付けられた加熱構成要素408を受容するように構成される。外科医は、加熱構成要素408を補助材と共にローダ400に装填し、補助材をエンドエフェクタのジョーに取り付けることができる。
【0084】
更に、いくつかの実施形態では、加熱構成要素408(又は別の構成を有する加熱構成要素)は、取り外し可能なローダ内に配設された2つの加熱構成要素の形態であってもよく、これにより、加熱構成要素のそれぞれは、それと関連付けられ得る異なる補助材に(例えば、ローダを介して又は手動で)熱を加えるように構成される。このような実装形態では、図9Bを参照すると、例えば、第1及び第2の補助材は、表面412、413上にそれぞれ配置され、表面412、413に関連付けられたそれぞれの加熱構成要素を使用して熱を補助材に加えることができる。
【0085】
加熱構成要素408がローダ400に関連付けられる特定の方法にかかわらず、ローダ400は、補助材をジョーに送達するために(補助材がローダからジョーに移動するように)、また補助材に熱を適用するために使用することができる。使用中、ローダは、開放構成にあるエンドエフェクタのジョーの間に配置され得る。次に、ジョーは、例えば、図7A及び8Aに示されるように、補助材がジョーの上に移動し、かつジョーの上の保持部材が補助材上の貫通開口部に入るように、ローダ400の上にクランプされ、それによって加熱構成要素408及び補助材をクランプすることができる。少なくとも1つの取り付け機構は、例えば、図7A及び図8Aの取り付け機構228、328及び補助材224、324に関してそれぞれ示されるように、補助材と係合され得る。加熱要素414は、加熱要素414から少なくとも1つの取り付け機構に加えられた熱が取り付け機構を収縮させることができ、これによって補助材料が第1及び第2の保持部材と結合するように、任意の好適な方法で起動させることができる。
【0086】
いくつかの実施形態では、ジョーを加熱構成要素上にクランプする行為は、スイッチ420を閉じ、それによって、電流が加熱要素を通って流れることを可能にする。補助材が所望に応じてジョーに固定されると、ジョーを開いて加熱構成要素からジョーを取り外すことができ、これによりスイッチ420が開き、それによって、加熱要素414内の電流の流れを停止することができる。
【0087】
他の実装形態では、補助材は、ローダ400などのローダと関連付けられなくてもよく、ローダは、補助材(したがって、少なくとも1つの取り付け機構)に熱を適用するためにのみ使用することができる。このような実装形態では、補助材は、ジョーの組織に面する表面上に配置され、補助材と係合されるか又は補助材の上に配設された取り付け機構は、補助材をエンドエフェクタに緩く固定するために、所望に応じてジョーの保持部材の周囲にループ状にされる。次いで、エンドエフェクタは、ローダ400の加熱構成要素408、及び加熱要素414が通電された状態でローダの上にクランプされ、それによって、加熱要素414の高抵抗部分418付近で局所加熱が生じる。これらの部分418からの熱は、補助材と係合している取り付け機構を収縮させ、補助材を保持部材と効果的に結合させ、それによって、補助材がジョーの組織に面する表面上に解放可能に保持される。
【0088】
ローダ400は、単なる例として示されていることを理解されたい。いくつかの実施形態では、ローダは、化学反応を用いて取り付け機構に熱を供給することができる。例えば、ローダは、概して、ローダ400と同様であり得るが、ローダは、抵抗加熱要素を含む加熱構成要素を使用するのではなく、1つ又は2つ以上の流体又は結晶構造を含む加熱構成要素を使用することができる。一例として、加熱要素は、互いに接触したときに熱を放出することができる多数の流体又は結晶構造を含むことができる。いくつかの実装形態では、エンドエフェクタのジョーを加熱構成要素上にクランプすることにより、流体又は結晶構造を収容している内部ポケットに亀裂を生じさせ、それによって、内部物質が混合することを可能にし得る。物質が混合されると、混合物は、熱を放出する発熱化学反応を起こす。加熱構成要素は、化学加熱要素が所望の場所にあり、加熱要素の亀裂は内部障壁を破壊するだけで、加熱構成要素から物質を漏出させないように構成することができる。
【0089】
更に、いくつかの実施形態では、ローダとは異なる装置を使用して、上部に少なくとも1つの取り付け機構が予め装填されている補助材に熱を加えることができる。例えば、補助材は、エンドエフェクタのジョーの上に配設されてもよく、熱は、赤外線ヒータ、UVヒータ、ヒートガン、又は熱を提供するように構成された任意の他の装置を使用してそこに加えることができる。場合によっては、加熱は、上部に補助材が配設されたエンドエフェクタを、好適なオーブン、加熱されたチャンバ、又は熱を加えるように構成された他のエンクロージャに入れることによって行うことができる。別個の加熱装置は、エンドエフェクタの製造中に補助材がエンドエフェクタのジョーに予め適用される実施形態で使用することができる。ローダ400などのローダ、又は類似のアプリケータ(例えば、小型加熱チャンバ)は、補助材が、外科的処置の最中又は前に外科医又は他の人によって手術室の中で適用されるように構成されている実施形態で使用することができる。
【0090】
熱が補助材に適用される方法にかかわらず、熱の温度及びその適用の持続時間は、少なくとも1つの取り付け機構を収縮させ、したがって補助材をジョーに取り付けるように選択される。例えば、熱は約100~約130℃の温度を有することができ、例えば、約20秒~約3分適用されて、取り付け機構を収縮構成に移行させることができる。しかしながら、他の範囲内の温度が任意の好適な期間にわたって適用され得ることを理解されたい。
【0091】
いくつかの用途では、補助材は、複数の収縮可能な取り付け機構が補助材の長手方向軸線に沿って、かつ補助材の長手方向軸線に対して実質的に垂直な軸線に沿って補助材に織り合わされるように形成されてもよい。10A及び図10Bは、そのような補助材の一実施例を示す。詳細には、図10A及び図10Bは、ジョーの組織に面する表面518に結合された補助材524を有するように構成されたエンドエフェクタ500の一部分を示し、補助材524は、長手方向軸線Aに沿って、かつ長手方向軸線Aに実質的に垂直な横方向軸線Bに沿って補助材524と織り合わされた収縮可能な取り付け機構528を有する。
【0092】
エンドエフェクタ500は、概して、エンドエフェクタ100(図6)に関して記載されたものと同様の構成要素を含むことができる。したがって、エンドエフェクタ100と同様に、エンドエフェクタ500は、アンビルを有する上部ジョー(図示せず)と、カートリッジ本体504を有する下部ジョーとを含むことができる。下部ジョーは、内部にステープルを着座させるように構成された複数のステープル保持空洞516を有するステープルカートリッジ504を含み、ステープル保持空洞504は、カートリッジ504の組織に面する表面518上に開口している。ステープル空洞は、アンビル内に形成されたステープル形成空洞のパターンに対応する特定のパターンを、カートリッジ504の組織に面する表面518上に形成することができる。カートリッジ504は、組織に面する表面518の対向する縁部に隣接して位置する第1及び第2の保持部材522a、522bと、カートリッジ504の遠位端と近位端との間に延在するナイフチャネル508とを含む。
【0093】
カートリッジ504の組織に面する表面518上に配設された保持部材522a、522bは、補助材料524をカートリッジ504に解放可能に結合するように構成されている。第1の保持部材522aは、組織に面する表面518の一方の側に、組織に面する表面518の一方の縁部509aに近接して配設され、第2の保持部材522bは、組織に面する表面518のもう一方の対向する側に、組織に面する表面518のもう一方の対向する縁部509bに近接して配設される。このようにして、第1及び第2の保持部材522a、522bは、ナイフチャネル508の両側に配設される。
【0094】
保持部材522a、522bは、様々な異なる構成を有することができる。図示される実施例では、保持部材522a、522bは、組織に面する表面518から延出する概ね円筒形のポストの形態である。しかしながら、保持部材522a、522bは、説明される実装形態がこの点において限定されないため、他の形状を有することができる。例えば、保持部材522a、522bは湾曲していても、砂時計形状を有しても、球根状又は拡幅された端部領域を有しても、ノッチを有しても、組織に面する表面の縁部に向かって角度付けされていても、粗さ特徴部などを有していてもよい。保持部材は、ジョーの上に補助材を保持するのを補助するのに好適な任意の方法で構成することができる。また、図10Aには2つの保持部材522a、522bが示されているが、組織に面する表面518は、補助材と結合するように構成された任意の他の数の保持部材(例えば、1つ又は2つ超)を有することができる。更に、保持部材は、カートリッジ504の組織に面する表面518上の様々な位置に形成されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、組織に面する表面518の各縁部509a、509bに沿って2つ又は3つ以上の保持部材が形成されてもよい。保持部材は、補助材料をジョーの組織に面する表面上にしっかりと保持することを可能にする、互いからの任意の適当な距離で形成され得る。加えて、図示された実施形態では、保持部材は、組織に面する表面の表面の上方に突出するが、いくつかの実施形態では、保持部材は、ジョーの組織に面する表面の下に少なくとも部分的に配設された凹部又は他の特徴部の形態であってもよい。これは、再装填が逆ドライバを含む実装形態において実施することができる。
【0095】
図10A示すように、図示される実施例では、保持部材522a、522bのそれぞれは、組織に面する表面518の、ステープル空洞516を有する領域の外側に形成される。しかしながら、いくつかの実装形態では、保持部材のうちの1つ又は2つ以上は、ステープル空洞516を有する領域内に形成されてもよい。
【0096】
補助材料524は、以下でより詳細に説明するように、熱の適用下で元の非収縮構成から収縮構成へと移行するように構成された複数の取り付け機構528を使用して、カートリッジ504と解放可能に結合するように構成されている。補助材料524は、安全な方法でカートリッジ504と結合し、この結合は、エンドエフェクタ500が外科的処置を使用して所望に応じて操作されている間、補助材524がカートリッジ504に結合されたままであることを確実にするのに役立つ。補助材524は、ステープルをそのカートリッジから放出させるためのエンドエフェクタ500の起動及び/又は切断要素の起動などの動作がとられてカートリッジ504から補助材524が分離されるまで、カートリッジ504と係合した状態で保持される。
【0097】
加熱の結果として生じる少なくとも1つの取り付け機構528の収縮に適応するために、補助材料524は、補助材料524をカートリッジ504に結合させるように加熱が生じた時点で適切な形状及び大きさとなるように構成され得る。例えば、補助材料524は、加熱前にはカートリッジ504の組織に面する表面518の周辺部を越えて延在し、加熱が生じた時点で適切なサイズとなるように寸法決めされることができる。
【0098】
第1及び第2の保持部材522a、522bは、補助材料524の対応する嵌合機構と嵌合するように構成される。具体的には、記載された実装形態では、補助材料524は複数の貫通開口部526を含み、開口部526のうちの少なくとも第1及び第2の開口部526a、526bは、保持部材522a、522bと嵌合するように構成されている。保持部材の数に応じて、開口部526のうちの2つ超が、対応の保持部材と嵌合することができることを理解されたい。
【0099】
補助材524内の開口部526は、異なるサイズ及び形状を含む、任意の好適なサイズ及び形状を有することができる。この実施例では、開口部526は概ね正方形であるが、開口部526は、任意の他の好適な形状を有することができることを理解されたい。図示の実施例では、取り付け機構528は、図10A及び10Bに示されるように、開口部526を通して織られることができる。また、開口部526はまた、熱が加えられ、取り付け機構が収縮するときに補助材の構成及び補助材に加わる内部応力を制御するように配置及び寸法決めすることができる。開口部は、特定の開口部(例えば、開口部526a、526b)が対応する保持部材を受容するように構成されるように、補助材内に形成することができる。あるいは、場合によっては、補助材がジョーの上に配設されるときに、補助材内の開口部は嵌合する保持部材を「見出す」ことができ、したがって、保持部材の位置に特異的に対応する開口部を作製する必要はない場合がある。
【0100】
収縮可能な取り付け機構528は、収縮性ポリマーの1本又は2本以上のストランドの形態であってもよく、このストランドは、1つ又は2つ以上の位置において補助材料524に結合されてもよい。補助材524は、少なくとも1つの取り付け機構が長手方向軸線Aに沿って配設され、かつ少なくとも1つの取り付け機構が横方向軸線Bに沿って配設されるように、補助材524内に織り合わされた任意の好適な数の取り付け機構を有することができる。図10Aの実施例では、収縮性ポリマーの4本のストランドが補助材524の長手方向軸線Aに沿って(長辺のそれぞれに沿って2本)配設され、収縮性ポリマーの2本のストランドが補助材524の横方向軸線Bに沿って(ジョー504の遠位端近くに)配設されている。しかしながら、取り付け機構528は、任意の所望の方法で補助材524に結合され得る任意の好適な数のストランドの形態であり得ることを理解されたい。例えば、一実施形態では、1本又は2本以上のスタンドは、補助材524に対して斜めに配設されるように、補助材524に結合されてもよい。ストランドは、補助材の1つ又は2つ以上の部分が所望の形状及びサイズに移行するように補助材が収縮できるように、補助材に結合されることができる。例えば、ストランドは、補助材内の開口部のいくつかを保持部材と収縮可能に係合させることができなければならない。場合によっては、同じストランドが、長手方向軸線Aに沿って及び横方向軸線Bに沿って補助材に織り合わされてもよい。
【0101】
補助材料524及び少なくとも1つの収縮可能な取り付け機構528は、様々な材料から作製することができる。例えば、少なくともいくつかの実施形態において、補助材524は、VICRYL(登録商標)(ポリグラクチン910)材料から作製することができ、収縮可能な取り付け機構128は、1本又は2本以上のPDOストランドの形態であってもよい。任意の他の材料が、追加的に又は代替的に使用されてもよい。
【0102】
記載された実装形態では、保持部材522a、522bは、2つの対応する開口部526a、526bと嵌合することによって、補助材524をカートリッジ504に結合する。熱が適用されると、取り付け機構は非収縮構成から収縮構成へと移行し、それによって、図10Bに概略的に示されるように、少なくとも開口部526a、526bを保持部材522a、522bの周囲に締め付ける。したがって、収縮構成では、取り付け機構528は、保持部材522a、522bに結合されるか、又は補助材524を保持部材522a、522bに結合させる。このようにして、補助材料524は、図10Bに示されるように、保持部材522a、522b、したがってカートリッジ504と確実かつ解放可能に係合した状態に保持される。上述のように、様々な技術を使用して、取り付け機構528を有する補助材524に熱を加えることができる。例えば、ローダ400(図9A及び9B)、又は熱を提供するように構成された任意の他の装置を使用することができる。
【0103】
上記の実施例では、補助材は、製造中に、又は外科的処置の前若しくは外科的処置中に外科医によって、カートリッジ及び/又はアンビルに取り付けることができる。補助材は、熱の適用下でそれらの構成を変化させることができる1つ又は2つ以上の収縮可能な取り付け機構を使用して、エンドエフェクタに固定することができる。しかしながら、他の実施形態では、補助材は、熱の適用を必要としない他のアプローチを用いて、ジョーに解放可能に結合されてもよい。
【0104】
したがって、いくつかの実施形態では、補助材料又は補助材の少なくとも1つの第1の部分は、力の印加によって可逆的に伸縮されるように構成される。力が取り除かれると、第1の部分は、伸縮構成から収縮構成に移行し、それによって、補助材料をエンドエフェクタのジョーに係合させる。ジョーは、補助材の対応する機構と嵌合するように構成された1つ又は2つ以上の保持機構を有することができる。例えば、ジョーの上に形成された第1及び第2の保持機構は、補助材の嵌合機構(例えば、開口部)と嵌合することができる。したがって、少なくとも部分的に伸縮性の補助材料(又はその一部分(複数可))を伸張させ、次いで収縮させることができ、これによって補助材の嵌合機構がジョーの保持機構と係合される。いくつかの実施形態では、補助材は、実質的に非伸縮性である1つ又は2つ以上の部分を有することができる。
【0105】
図11は、熱の適用に依存しないアプローチを使用して補助材料が解放可能に固定されている手術用器具のエンドエフェクタ600のジョー602の一実施例の分解図を示す。エンドエフェクタ600は、概して、図1図4に関連して説明されるものと同様の構成要素を含むことができ、また、補助材を解放可能に取り付けることを可能にする機構及び/又は構成要素を含むことができる。したがって、外科用ステープラ10(図1)及び50(図4)と同様に、エンドエフェクタ600は、アンビルを有する上部ジョーと、カートリッジ本体(図示せず)を有する下部ジョーとを含み、上部ジョー602のみが図11に示されている。下部ジョーは、概して、内部にステープルを着座させるように構成された複数のステープル保持空洞を有するステープルカートリッジを含むことができ、ステープル保持空洞は、カートリッジの組織に面する表面上に開口している。
【0106】
図11に示すように、アンビル604を有する上部ジョー602は、以下により詳細に記載されるように、その組織に面する表面618上に解放可能に保持された補助材料624を有する。アンビル604は、組織に面する表面618上に形成されたステープル形成空洞616を有する。同様に示されるように、組織に面する表面618は、切断要素(例えば、ナイフ)を受容するように構成されたナイフチャネル608を有している。
【0107】
図11に示されるすように、アンビル604の組織に面する表面618は、少なくとも第1及び第2の保持部材、例えば保持部材622a、622bを有し、保持部材622cによって示されるように、1つ又は2つ以上の保持部材を更に含むことができる。保持部材は、補助材料624をアンビル604に結合するように構成されている。図示される実施例では、保持部材は、以下に説明するように、開口部626a~626dなどの、補助材料624内に形成された開口部と係合することができる。
【0108】
図11に示されるように、保持部材622a、622cは、組織に面する表面618の一方の側に、組織に面する表面618の一方の縁部609aに近接して配設され、保持部材622bは、組織に面する表面618のもう一方の対向する側に、組織に面する表面618のもう一方の対向する縁部609bに近接して配設される。組織に面する表面618は、保持部材622cと対向する第4の保持部材(図11のジョー604は部分図であることから示されていない)を有することができることを理解されたい。保持部材622a、622bは、ナイフチャネル608の両側に配設される。
【0109】
保持部材は、様々な異なる構成を有することができる。図示される実施例では、保持部材は、組織に面する表面618からそれぞれの縁部609a、609bに向かって外向きに延在する湾曲ポスト、つまりフックの形態である。例えば、保持部材622aは縁部609aに向かって湾曲しており、保持部材622bは縁部609bに向かって湾曲している。しかしながら、保持部材は、説明される実装形態がこの点において限定されないため、他の形状を有することができる。例えば、保持部材は、少なくとも部分的に直線状であっても、砂時計形状を有しても、球根状又は拡幅された端部領域を有しても、1つ又は2つ以上のノッチを有しても、組織に面する表面の縁部に向かって角度付けされていても、粗さ特徴部などを有していてもよい。保持部材は、ジョーの上に補助材を保持するのを補助するのに適した任意の好適な方法で構成することができる。また、図11には3つの保持部材622a、622b及び622cが示されているが、組織に面する表面618は、補助材と結合するように構成された任意の他の数の保持部材(例えば、1つ、2つ、又は3つ超)を有することができる。更に、保持部材は、アンビル604の組織に面する表面618上の様々な位置に形成されることができる。例えば、いくつかの実施形態では、組織に面する表面618の各縁部609a、609bに沿って2つ又は3つ以上の保持部材が形成されてもよい。保持部材は、補助材料をジョーの組織に面する表面上にしっかりと保持することを可能にする、互いからの任意の適当な距離で形成され得る。加えて、保持部材は、ナイフチャネル608又は組織に面する表面618の他の機構に対して対称に配設されてもよく、又は様々な他の方法で表面618上に形成されてもよい。
【0110】
保持部材622a、622b、622c(及び図11に示されていない任意の保持部材)は、補助材料624の対応する嵌合機構と嵌合するように構成されている。具体的には、上述のように、補助材料624は、保持部材622a、622b、622cをそれぞれ受容するように構成された貫通開口部626a、626b、626cを含む。第4の開口部626dは、図11に示されていない第4の保持部材と係合するように構成されている。補助材624内の貫通開口部626a~626dは、それぞれの保持部材を中に受容するようにサイズ決めされる。この実施例では、開口部は概ね円形であるが、開口部は、任意の他の好適な形状を有することができることを理解されたい。
【0111】
図11に示される実施形態では、補助材料624は、少なくとも部分的に伸縮性である。例えば、補助材624は、実質的にその領域全体が少なくとも部分的に伸縮性であるように形成される。補助材624は、任意の好適な材料、例えば、1つ又は2つ以上の好適な吸収性ポリマーから形成することができる。補助材料が非脆性ポリマーから作製される実施形態では、補助材の変形は、幾何学的変化によって(例えば、負荷下で伸縮性になるまで補助材の厚さを低減することなどによって)達成され得る。追加的に又は代替的に、補助材料は、1つ又は2つ以上の様々な特徴を有することによって、少なくとも部分的に伸縮性であってもよい。例えば、補助材は、その形状に起因して弾性を有する編まれたシートの形態であってもよい。補助材は、例えば、米国特許出願第14/926194号(発明の名称「Extensible Buttress Assembly for Surgical Stapler」、2015年10月29日付けで出願)(その全体が参照により本明細書に組み込まれている)に記載されているように実施することができる。
【0112】
いくつかの実施形態では、図示される実施例と同様に、補助材料624は、少なくとも1つの第2の実質的に非伸縮性の部分を含む。1つ又は2つ以上の実質的に非伸縮性の部分は、様々な構成(部分間で異なる構成を含む)を有することができ、それらは、補助材の実質的に伸縮可能な部分と関連させて任意の好適な様式で配設され得る。図11は、補助材624がジョー602の上に配置されたときにステープル形成空洞616の上に配設される補助材料624の領域に関連付けることができる第1及び第2の非伸縮性部分628a、628bを、補助材624が含むことを示している。したがって、ステープルによって貫通されるように構成された補助材624の1つ又は2つ以上の領域は、実質的に非伸縮性にされることによって強化され得る。図示される実装形態において、部分628a、628bは、部分628a、628bが組織に面する表面618と補助材624との間に配設され、したがって組織に面する表面618の上に着座するように構成されるように、補助材料624に結合される。
【0113】
いくつかの実施形態では、補助材624の、ステープル形成空洞616の上に配設された部分が伸張するのを防止するように、非伸縮性部分628a、628bを補助材624に取り付けることが有益であり得る。具体的には、補助材624の、ステープル空洞616の上に配設された部分が伸張される場合、補助材624が組織にステープル留めされてジョー602から解放されると、補助材624は、ステープルが形成される領域において張力を解放する際にステープルを引っ張ることによって組織を損傷させる可能性がある。このようにして、非伸縮性部分は、ステープルを安定化させ、ステープル留めされている組織を保護するのに役立つことができる。
【0114】
非伸縮性部分628a、628bは、任意の好適な方法で形成することができる。例えば、部分628a、628bは、補助材624に結合された別個の部分であってもよい。少なくとも1つの実施形態において、部分628a、628bは、PDOから形成され、伸縮性補助材624に結合される(例えば、積層される)。一実施例として、部分628a、628bは、補助材624に熱圧着されるか、ないしは別の方法で補助材624に取り付けられて、伸張に抵抗性を有する部分を形成する、シート積層体の形態であってもよい。しかしながら、説明される技術は、少なくとも部分的に伸縮性の補助材の1つ又は2つ以上の部分を実質的に非伸縮性にする任意の特定の方法に限定されないため、部分628a、628bは、様々な他の方法で補助材624に結合されることができる。図12は、一例として、第1の少なくとも部分的に伸縮性の部分623を有する補助材624を示す。また、図12に概略的に示されるように、補助材624の部分623の第1及び第2の領域629a、629b(この実施例では、補助材全体)は、これら領域に結合されたシート積層体の形態の部分628a、628bを有するように構成されている。
【0115】
2つの別個の非伸縮性部分628a、628bは、単なる例として図11に示されていることを理解されたい。いくつかの実施形態では、1つ又は2つを超える実質的に非伸縮性の部分は、補助材料と関連付けることができ、そのような部分は、補助材の伸縮性部分(複数可)に対して様々な方法で配設され得る。
【0116】
更に、少なくとも1つの実施形態において、第2の部分は、補助材料に結合され、かつ任意の好適なサイズを有する実質的に非伸縮性の第2の補助材料の形態であってもよい(例えば、それは、「第1の」伸縮性補助材料よりも小さい面積を有することができる)。第2の補助材料は、患者の治療部位を補強及び/又は治療するように構成され、一方、第1の伸縮性補助材料は、第1及び第2の補助材料をジョーの上に形成された保持部材と係合するように構成されている。いくつかの実施形態では、第2の補助材は、治療部位に送達されることを意図した薬物又は他の治療剤を含み得る。第2の補助材料の形態の非伸縮性部分(複数可)は、第2の補助材料が図11の非伸縮性部分628a、628bと同様にジョーの組織に面する表面上に配設されるように、第1の補助材料に結合することができる。しかしながら、いくつかの実装形態では、第2の補助材料は、伸縮性補助材料がジョーの上に直接配設されるように、第1の補助材料の上に配設されてもよい。
【0117】
補助材の少なくとも1つの実質的に非伸縮性の部分は、他の様々な方法で形成され得ることが更に理解されるべきである。例えば、非伸縮性部分(複数可)は、補助材料の一部であってもよい。特に、補助材料の他の部分の少なくとも1つの特性とは異なる少なくとも1つの特性を有する少なくとも1つの第2の部分の形態であってもよい。一実施例として、補助材の1つ又は2つ以上の部分(例えば、ステープル形成又はステープル保持空洞の上に配設される部分)は、補助材の残りの部分よりも、より緊密に織られ、編まれ、編組されるか、ないしは別の方法で非伸縮性にされるか、又は伸縮性が低くてもよい。
【0118】
使用中、補助材料624は、補助材の少なくとも第1の部分(例えば、少なくとも部分的に伸縮性の部分)を、力を印加することで可逆的に伸張させることによってアンビル604と解放可能に結合されるように構成されており、その結果、力が取り除かれると、第1の部分は、伸張構成から収縮構成に移行し、それによって補助材料を保持部材と係合させる。補助材料624は、安全な方法でアンビル604と結合することができ、これは、エンドエフェクタ100が外科的処置を使用して所望通りに操作されている間、補助材624がアンビル604に結合されたままであることを確実にするのに役立つ。補助材624は、ステープルをそのカートリッジから放出させるためのエンドエフェクタ600の起動及び/又は切断要素の起動などの動作がとられてアンビル604から補助材624が分離されるまで、アンビル604と係合した状態で保持される。
【0119】
図13A及び図13Bは、補助材料624をジョー602と結合する方法の一実施例を示す。図13Aは、補助材624がジョー602に結合される前のジョー602及び補助材624を示す。図13Aに概略的に示されるように、補助材624は、補助材624内の開口部626a、626bが、ジョー602上に形成された保持部材622a、622bを越えて延在するように伸張される。
【0120】
補助材料624は、力を印加することで可逆的に伸張されるように構成された少なくとも1つの部分を有する。図13Aは、組織に面する表面618に隣接して上部ジョー602に結合される前に補助材624が伸張されている、上部ジョー602の断面図を示す。両端矢印によって示されるように、補助材624は、上部ジョー602の組織に面する表面608にわたって横方向に伸張される。この実施例では、非伸縮性部分628a、628bは、補助材624と上部ジョー602の組織に面する表面618との間で補助材624に取り付けられており、それにより、補助材624に結合された部分628a、628bを有する補助材624の領域は、実質的に伸張しない。図13Aでは、部分628a、628bが結合されていない補助材624の部分、例えば、部分625及び他の残りの補助材部分は、開口部626a、626bが保持部材622a、622bを越えて延在するように、伸張されて示されている。
【0121】
部分625などの補助材料624の少なくとも1つの部分は、以下により詳細に記載されるように、力を印加することで伸張させることができる。力が取り除かれると、伸張部分は、伸張構成から非収縮構成に移行し、それによって、補助材料624が第1及び第2の保持部材622a、622bと係合される。したがって、図13Bは、補助材が保持部材622a、622bを介してその組織に面する表面618に結合されている上部ジョー602を示す。具体的には、保持部材622a、622bは、補助材がジョーの上に保持されるように、開口部626a、626b内に受容される。したがって、補助材料624は、開口部626a、626bと係合された保持部材626a、626bによって張力を保持されるので、補助材料624がジョーから早期に滑り落ちる可能性が減少する又は排除される。外科的処置中、補助材料624が結合されたジョー602が操作され、所望のように位置付けられた後、ステープル及び/又は切断要素の発射は、補助材料624が保持部材626a、626bから滑り落ち、ジョー602から分離されるように、張力を解放する。
【0122】
少なくとも部分的に伸縮性の補助材は、いくつかの様々な方法でエンドエフェクタの一方又は両方のジョーに取り付けられることができる。例えば、いくつかの実施形態では、補助材料が少なくとも1つのジョーに適用されるまで、補助材料を上部に解放可能に保持するように構成された取り外し可能なローダ部材を使用して、1つ又は2つ以上の補助材をエンドエフェクタのジョーに取り付けることができる。図14A図14Cは、1つ又は2つ以上の補助材料又は補助材をエンドエフェクタ800に取り付けるために、部材又はローダ700と共に使用され得るエンドエフェクタ700の一実施例を示す。
【0123】
エンドエフェクタ700は、概して、エンドエフェクタ600に関して説明したものと同様の構成要素を含むことができ、また、補助材を取り付けるためのローダ、例えば、ローダ800を使用して1つ又は2つ以上の補助材を解放可能に取り付けることを容易にする機構及び/又は構成要素を含むことができる。したがって、エンドエフェクタ700は、アンビル704を有する第1の(図14A図14Cでは上部の)ジョー702と、カートリッジ本体を有する第2の(図14A図14Cでは下部の)ジョー752とを有する。この実施例では、ローダ800は、第1及び第2の補助材724、774を第1及び第2のジョー702、752にそれぞれ適用するように構成されている。
【0124】
図14Aは、エンドエフェクタ700の断面図を示し、図中、エンドエフェクタ700のジョー702、752は、補助材724、774がジョー702、752に結合される前にローダ800に被せて配設されている。図14Aに示されるように、この実施例では、アンビル704は、表面718、719から形成されたマルチレベル(例えば、2面又は2段)の組織に面する表面を含み、表面718は、カートリッジ752に近い平面内に延在し、表面719は、カートリッジ752から更に離れた平面内に配設された階段状にずれた表面である。組織に面する表面718、719の少なくとも一部は、その上に形成されたステープル形成空洞716を有する。しかしながら、いくつかの実施形態では、段差の付いた表面719は、ステープル形成空洞を有しなくてもよい。組織に面する表面718は、切断要素(例えば、ナイフ)を受容するように構成されたナイフチャネル708を有している。アンビル704は、実質的に1つの平面に形成された組織に面する表面、又は、いくつかの実装形態では、2つを超える平面で形成された組織に面する表面を有することができるので、アンビル704は、ほんの一例として2段の組織に面する表面を有するように示されていることを理解されたい。
【0125】
図14Aに示されるように、アンビル704の組織に面する表面719は、その上に形成された少なくとも第1及び第2の保持部材722a、722bを有している。組織に面する表面719は、エンドエフェクタ600に関して上述したものと同様の他の保持部材を更に含むことができる。例えば、組織に面する表面719の遠位端及び近位端のそれぞれは、2つの保持部材を有することができる。しかしながら、他の数及び位置の保持部材を、追加的に又は代替的に実施することができる。保持部材は、補助材料724をアンビル704に結合するように構成されている。図示される実施例では、保持部材は、以下に説明するように、補助材料内に形成された開口部と係合することができる。
【0126】
カートリッジ752は、内部にステープルを着座させるように構成された複数のステープル保持空洞766を有し、ステープル保持空洞766は、カートリッジ752の組織に面する表面768上に開口している。ステープル空洞は、アンビル704内に形成されたステープル形成空洞716のパターンに対応する特定のパターンを、組織に面する表面768上に形成することができる。カートリッジは、組織に面する表面768に隣接する傾斜表面769上に位置する第1及び第2の保持部材772a、772bを含む。傾斜表面769上に配設された保持部材772a、772bは、補助材料774をカートリッジジョー752に解放可能に結合するように構成されている。同様に示されるように、組織に面する表面768は、切断要素(例えば、ナイフ)を受容するように構成されたナイフチャネル758を有している。カートリッジ752は、他の実装形態ではそのような表面を有しない場合があるか、又は他の好適な構成を有し得るため、カートリッジ752は、ほんの一例として傾斜表面769を有するように示されていることを理解されたい。
【0127】
ローダ800は、任意の好適な構成を有し得る。図示される実施例では、ローダ800は、エンドエフェクタの一方又は両方のジョーに1つ又は2つ以上の補助材を解放可能に結合するように構成された略矩形の枠状ホルダの形態であり得る。図14A図14Cに示されるように、ローダ800は、接触面Aに沿って互いに結合された第1の(例えば、上部)及び第2の(例えば、底部)の略矩形のハウジング802及び804の形態であることができる。ローダ800のジョーに面する表面806、808は、上部に取り付けられた圧縮可能な(例えば、弾性の、又は柔軟な)部材又は本体810、812を有し得る。圧縮可能な本体810、812は、例えば、シリコーン、又は圧縮されるのに好適な任意の他の圧縮可能かつ少なくとも部分的に弾力性のある材料で作製することができる。弾性部材810、812は、ジョーに面する表面818、820からそれぞれ延在する把持部材814a、814b、816a、816bを含むことができる。
【0128】
図14Aに示されるように、補助材724、774は、ローダ800の弾性部材810、812に結合されることができ、この結合は、ローダ800の組み立て中に、又は任意の他の時間に行われ得る。補助材724、774は、補助材624(図13A及び図13B)と実質的に同様であり得、また、補助材724、774は、弾性部材810、812に補助材を解放可能に固定するために、把持部材814a、814b及び816a、816bと嵌合することが可能な開口部を含むことができる。補助材624と同様に、補助材724、774は、それぞれ、第1及び第2の非伸縮性部分728a、728b、778a、778bを含む。
【0129】
補助材724、774をジョー702、752に適用するために、ジョー702、752は、図14Bに示されるように、補助材724、774に結合された弾性部材810、812を有するローダ800の上にクランプされ得る。図14Bに示すように、クランプ動作により、ジョー702、752は弾性部材810、812に力を印加し、その結果、弾性部材810、812は横方向に圧縮及び伸張し、それによって補助材もまた伸張させる。同様に示されるように、弾性部材810、812は、実質的に均一に伸張するように元の非圧縮構成から圧縮構成へと移動するように構成されており、これにより、補助材724、774の1つ又は2つ以上の部分もまた、実質的に均質に伸張され得るようになっている。図示の実施例では、組織に面する表面718、768は、保持部材722a、722b、772a、772bの前に補助材と係合するように構成されており、これにより、補助材は、保持部材722a、722b、772a、772bに引っ掛かることなく拡張することができる。
【0130】
ジョー702、752が開放され、ジョー702、752によって印加されるクランプ力が取り除かれると、図14Cに示されるように、補助材724、774は、弾性部材810、812との係合から解放され、弾性部材810、812は、同様に示されるように、その元の非圧縮構成に少なくとも部分的に戻る。これにより、補助材724、774を少なくとも部分的に収縮させる。十分な収縮が生じたとき、補助材724、774はローダ800から分離される。例えば、補助材724、774内の開口部は、保持部材722a、722b、772a、772bと嵌合することができ、このためこれまでこれら開口部と係合していた把持部材814a、814b、816a、816bを保持部材722a、722b、772a、772bが押しのける。追加的に又は代替的に、いくつかの実施形態では、ジョー702、752上に形成された保持部材722a、722b、772a、772bは、補助材724、774の、開口部以外の部分と係合してもよい。例えば、補助材の1つ又は2つ以上の部分が(図14Bに示すように)伸張され、次いで、少なくとも部分的に収縮されて、保持部材722a、722b、772a、772bと係合されてもよい。
【0131】
保持部材722a、722b、772a、772bが補助材724、774と嵌合することができる特定の方法にかかわらず、補助材724、754は、把持部材814a、814bから解放され、図14Cに示されるようにジョー702、752に結合される。補助材724、754は、少なくとも部分的に伸張構成でジョー702、752の上に保持され得る。この実施例では、補助材724、754の実質的に非伸縮性の部分728a、728b、778a、778bは、ステープルが発射されるときにステープルによって貫通されるように、ジョーの上に配設され得る。次にローダ800を取り外すことができる。使用中、エンドエフェクタ700が外科的処置中に所望通りに操作された後、ステープル及び/又は切断要素を発射して補助材724、754をジョーから分離させる。
【0132】
図14A図14Cでは、ローダ800は、補助材724、774をジョー702、752の両方に送達するように構成されているが、いくつかの実施形態では、ローダ800は、補助材のうちの1つをジョーの一方に適用するために使用され得ることを理解されたい。また、任意の他の好適な構成を有するローダを使用して、少なくとも部分的に伸縮性の補助材をエンドエフェクタのジョーの一方又は両方に適用することができるので、ローダ800は単なる例として示されていることも理解されたい。
【0133】
上記の実施形態では、補助材料は、エンドエフェクタの製造中、又は外科的処置中に、エンドエフェクタのジョーに解放可能に結合され得る。更に、実施形態は、異なる変形例を有することができる。例えば、カートリッジを有するエンドエフェクタのジョーは、取り外し可能かつ交換可能なカートリッジを着座させることができ、又はカートリッジを備えるジョー全体を取り外し可能かつ交換可能とすることができる。ジョーはまた、手術用器具のシャフトに遠位方向に結合されるように構成された使い捨て装填ユニットの一部であってもよい。別の実施例として、エンドエフェクタのジョーの上に補助材料を解放可能に保持するためのシステム及び方法は、様々な構成の線形ステープラに関連して説明されているが、説明される技術は、円形外科用ステープラ、例えば、図5に示される円形外科用ステープラ80に関連して実施され得ることを理解されたい。
【0134】
当業者であれば、記載された主題には、従来の低侵襲性手術器具、及び開放手術器具、並びにロボット支援手術における用途があることを認識するであろう。
【0135】
本明細書に開示される装置は、1回の使用後に廃棄されるように設計することができ、又は複数回使用されるように設計することができる。しかしながら、いずれの場合も、装置は、少なくとも1回の使用後に再使用のために再調整することができる。再調整には、装置の分解工程、それに続く洗浄工程又は特定の部品の交換工程、及びその後の再組み立て工程の任意の組み合わせを含むことができる。特に、装置は分解することができ、装置の任意の数の特定の部品又は部分を、任意の組み合わせで選択的に交換するか又は取り外すことができる。特定の部分を洗浄及び/又は交換した後、装置を後の使用のために、再調整施設で、又は外科的処置の直前に外科チームによってのいずれかで再組み立てることができる。当業者であれば、装置の再調整が、分解、洗浄/交換、及び再組み立てのための様々な技術を利用できることを理解するであろう。かかる技術の使用、及び結果として得られる再調整された装置は、全て本発明の範囲内にある。
【0136】
当業者には、上述の実施形態に基づいて本発明の更なる特徴及び利点が認識されよう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によって示される場合を除き、具体的に示され説明される内容により限定されるものではない。本明細書に引用される全ての刊行物及び参照文献はそれらの全容が参照によって本明細書に明示的に組み込まれる。
【0137】
〔実施の態様〕
(1) 手術用器具のためのエンドエフェクタであって、
内部にステープルを着座させるように構成された複数のステープル空洞を有するカートリッジを有する第1のジョーであって、前記ステープル空洞は前記カートリッジの組織に面する表面上に開口している、第1のジョーと、
前記第1のジョーに対向し、かつ複数のステープル形成空洞がその組織に面する表面上に形成されているアンビルを有する第2のジョーであって、前記第1のジョー及び前記第2のジョーは、それらの間に組織をクランプするように構成されている、第2のジョーと、
前記第1のジョー及び前記第2のジョーのうちの少なくとも一方のジョーの組織に面する表面上に配設された少なくとも1つの第1及び第2の保持部材と、
前記少なくとも一方のジョーの上に解放可能に保持されるように構成された補助材料と、
熱の適用下で、元の非収縮構成から収縮構成に移行するように構成された収縮可能な取り付け機構であって、前記補助材料と係合し、前記取り付け機構の収縮が、前記補助材料を前記第1及び第2の保持部材と結合させるのに有効である、収縮可能な取り付け機構と、を備える、手術用器具のためのエンドエフェクタ。
(2) 前記少なくとも1つの第1の保持部材が、前記少なくとも一方のジョーの組織に面する表面の一方の側に、前記少なくとも一方のジョーの前記組織に面する表面の一方の縁部に近接して配設され、前記少なくとも1つの第2の保持部材が、前記組織に面する表面のもう一方の対向する側に、前記組織に面する表面のもう一方の対向する縁部に近接して配設されている、実施態様1に記載のエンドエフェクタ。
(3) 前記取り付け機構が、前記補助材料の少なくとも一部の上に配設され、かつ前記第1の保持部材及び前記第2の保持部材の両方を包囲する少なくとも1つのループに配置されている収縮性ポリマーのストランドを含み、前記収縮性ポリマーは、前記少なくとも1つのループが前記第1の保持部材及び前記第2の保持部材の周囲に係合され、それによって、前記補助材料を前記少なくとも一方のジョーの上に解放可能に保持するように収縮されている、実施態様1に記載のエンドエフェクタ。
(4) 前記収縮性ポリマーの前記ストランドが、前記補助材料の少なくとも1つの部分を通過する、実施態様3に記載のエンドエフェクタ。
(5) 前記取り付け機構は、少なくとも1本の第1のストランドが前記補助材料の長手方向軸線に沿って配設され、少なくとも1本の第2のストランドが前記長手方向軸線に実質的に垂直な軸線に沿って配設されるように、前記補助材料に織り合わされた、複数本のポリマーストランドを含む、実施態様1に記載のエンドエフェクタ。
【0138】
(6) 前記補助材料が、複数の貫通開口部を含み、前記開口部は、少なくとも第1及び第2の開口部を含み、前記少なくとも第1及び第2の開口部は、前記複数本のポリマーストランドが前記収縮構成にあり、それによって前記補助材料内の前記少なくとも前記第1及び第2の開口部を前記第1及び第2の保持部材の周囲に締め付けるときに、前記第1及び第2の保持部材と嵌合するように構成されている、実施態様5に記載のエンドエフェクタ。
(7) 前記ポリマーストランドが、前記複数の貫通開口部のうちの少なくともいくつかに通されることによって前記補助材料に織り合わされている、実施態様6に記載のエンドエフェクタ。
(8) 手術用器具のためのエンドエフェクタを組み立てる方法であって、前記エンドエフェクタは、内部にステープルを着座させるように構成された複数のステープル空洞を有するカートリッジを有する第1のジョーであって、前記複数のステープル空洞は、前記カートリッジの組織に面する表面上に開口している、第1のジョーと、前記第1のジョーに対向し、かつ複数のステープル形成空洞がその組織に面する表面上に形成されているアンビルを有する第2のジョーと、を有し、前記方法は、
補助材料を、熱の適用下で、元の非収縮構成から収縮構成に移行するように構成された少なくとも1つの収縮可能な取り付け機構と関連付けることと、
前記補助材料に熱を適用して、前記少なくとも1つの収縮可能な取り付け機構を収縮させ、それによって、前記補助材料を、前記第1のジョー及び前記第2のジョーのうちの少なくとも一方のジョーの組織に面する表面上に配設された第1及び第2の保持部材と結合させることによって、前記少なくとも一方のジョーの上に前記補助材料を解放可能に保持させることと、を含む、方法。
(9) 前記補助材料に前記熱を適用して、前記少なくとも1つの収縮可能な取り付け機構を収縮させ、それによって、前記少なくとも一方のジョーの上に前記補助材料を解放可能に保持させることが、前記少なくとも1つの収縮可能な取り付け機構を第1及び第2の保持部材と結合させることを更に含む、実施態様8に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C