(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】様々なサイズのアーチワイヤスロットを有する歯列矯正システム
(51)【国際特許分類】
A61C 7/14 20060101AFI20221031BHJP
【FI】
A61C7/14
(21)【出願番号】P 2019564534
(86)(22)【出願日】2018-04-20
(86)【国際出願番号】 US2018028680
(87)【国際公開番号】W WO2018217353
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-03-24
(32)【優先日】2017-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508328833
【氏名又は名称】ワールド クラス テクノロジー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ピッツ
(72)【発明者】
【氏名】アルバート ルイズ-ヴェラ
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0244774(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第19618364(DE,A1)
【文献】欧州特許出願公開第0502227(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 7/12 - 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前歯
のための第1のデンタルブラケットであって、
前記第1のデンタルブラケットは、該第1のデンタルブラケットの上面から第1のフロアへと下方に延びる第1のアーチワイヤスロットを有し、
該第1のアーチワイヤスロットは、前記上面から唇-舌方向に前記第1のフロアまでで測定される第1の深さを有
し、
第1の結紮部材をさらに含み、該第1の結紮部材は、開位置から閉位置までスライド可能であり、かつ、閉位置にあるときに第1のアーチワイヤスロット上に延在する、第1のデンタルブラケットと、
前記
前歯に隣り合う外側の歯
のための第2のデンタルブラケットであって、
前記第2のデンタルブラケットは、該第2のデンタルブラケットの上面から第2のフロアへと下方に延びる第2のアーチワイヤスロットを有し、
該第2のアーチワイヤスロットは、前記上面から唇-舌方向に前記第2のフロアまでで測定される第2の深さを有し、
該第2の深さは、前記第1のアーチワイヤスロットの前記第1の深さ
と同じであ
り、
第2の結紮部材をさらに含み、該第2の結紮部材は、開位置から閉位置までスライド可能であり、かつ、閉位置にあるときに第2のアーチワイヤスロット上に延在する、第2のデンタルブラケットと、
犬歯
のための第3のデンタルブラケットであって、
前記第3のデンタルブラケットは、該第3のデンタルブラケットの上面から第3のフロアへと下方に延びる第3のアーチワイヤスロットを有し、
該第3のアーチワイヤスロットは、前記上面から唇-舌方向に前記第3のフロアまでで測定される第3の深さを有し、
前記第3のアーチワイヤスロットの前記第3の深さは、前記第1および第2のアーチワイヤスロットの前記第1および第2の深さのそれぞれ
と同じであり、
第3の結紮部材をさらに含み、該第3の結紮部材は、開位置から閉位置までスライド可能であり、かつ、閉位置にあるときに第3のアーチワイヤスロット上に延在する、第3のデンタルブラケットと、
第1の小臼歯のための第4のデンタルブラケットであって、
前記第4のデンタルブラケットは、該第4のデンタルブラケットの上面から第4のフロアへと下方に延びる第4のアーチワイヤスロットを有し、
該第4のアーチワイヤスロットは、前記上面から唇-舌方向に前記第4のフロアまでで測定される第4の深さを有し、
前記第4のアーチワイヤスロットの前記第4の深さは、前記第1、第2および第3のアーチワイヤスロットの前記第1、第2および第3の深さのそれぞれよりも深く、
第4の結紮部材をさらに含み、該第4の結紮部材は、開位置から閉位置までスライド可能であり、かつ、閉位置にあるときに第4のアーチワイヤスロット上に延在する、第4のデンタルブラケットと、
第2の小臼歯のための第5のデンタルブラケットであって、
前記第5のデンタルブラケットは、該第5のデンタルブラケットの上面から第5のフロアへと下方に延びる第5のアーチワイヤスロットを有し、
該第5のアーチワイヤスロットは、前記上面から唇-舌方向に前記第5のフロアまでで測定される第5の深さを有し、
前記第5のアーチワイヤスロットの前記第5の深さは、前記第4のアーチワイヤスロットの前記第4の深さと同じであり、
第5の結紮部材をさらに含み、該第5の結紮部材は、開位置から閉位置までスライド可能であり、かつ、閉位置にあるときに第5のアーチワイヤスロット上に延在する、第5のデンタルブラケットと、
前記第1、第2、
第3、第4、および第
5のアーチワイヤスロットを通って延
びるためのアーチワイ
ヤと、
を備える、歯列矯正治療システム。
【請求項2】
第
1の
臼歯
のための第
6のデンタルブラケットであって、
前記第
6のデンタルブラケットは、該第
6のデンタルブラケットの上面から第
6のフロアへと下方に延びる第
6のアーチワイヤスロットを有し、
該第
6のアーチワイヤスロットは、前記上面から唇-舌方向に前記第
6のフロアまでで測定される第
6の深さを有し、
前記第
6のアーチワイヤスロットの前記第
6の深さは、前記第
5のアーチワイヤスロットの前記第
5の深
さよりも深く、
第6の結紮部材をさらに含み、該第6の結紮部材は、開位置から閉位置までスライド可能であり、かつ、閉位置にあるときに第6のアーチワイヤスロット上に延在する、第
6のデンタルブラケット、
をさらに備える、請求項
1に記載の歯列矯正治療システム。
【請求項3】
第2の臼歯のための第7のデンタルブラケットであって、
前記第7のデンタルブラケットは、該第7のデンタルブラケットの上面から第7のフロアへと下方に延びる第7のアーチワイヤスロットを有し、
該第7のアーチワイヤスロットは、前記上面から唇-舌方向に前記第7のフロアまでで測定される第7の深さを有し、
前記第7のアーチワイヤスロットの前記第7の深さは、前記第6のアーチワイヤスロットの前記第6の深さと同じであり、
第7の結紮部材をさらに含み、該第7の結紮部材は、開位置から閉位置までスライド可能であり、かつ、閉位置にあるときに第7のアーチワイヤスロット上に延在する、第7のデンタルブラケットをさらに備える、請求項
2に記載の歯列矯正治療システム。
【請求項4】
前記第1
、第2、および第3のアーチワイヤスロットの唇-舌方向における前記第1
、第2、および第3の深さ
のそれぞれは、対応する前
記アーチワイヤの唇-舌方向寸法の102%~110%の間の範囲であり、
前記第
4および第5のアーチワイヤスロットの唇-舌方向における前記第
4および第5の深さ
のそれぞれは、対応する前
記アーチワイヤの唇-舌方向寸法の110%~
125%の間の範囲である、請求項
1に記載の歯列矯正治療システム。
【請求項5】
前記第1
、第2、および第3のアーチワイヤスロットの唇-舌方向における前記第1
、第2、および第3の深さ
のそれぞれは、対応する前
記アーチワイヤの唇-舌方向寸法の102%~110%の間の範囲であり、
前記第
4および第5のアーチワイヤスロットの唇-舌方向における前記第
4および第5の深さは、対応する前
記アーチワイヤの唇-舌方向寸法の110%~125%の間の範囲であり、
前記第
6のアーチワイヤスロットの唇-舌方向における前記第
6の深さは、対応する前
記アーチワイヤの唇-舌方向寸法の120%~140%の間の範囲である、請求項
2に記載の歯列矯正治療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の分野は、一般に、歯列矯正ブラケットに関し、特に、患者の歯のずれを修正するために使用されるそのようなブラケットに関する。一般にブレースと呼ばれるこのような器具は、歯の位置を合わせてまっすぐにし、患者の口の外観を改善するだけでなく、ヒトのかみ合わせに対して歯を配置するために使用される。このような器具は、歯のアンダーバイト、オーバーバイト、不正咬合、およびその他のさまざまな歯のずれを矯正するために使用できる。
【背景技術】
【0002】
歯列矯正器具は、患者の歯を揃えて真っ直ぐにし、歯と顎に関連する他のさまざまな傷を矯正するために一般的に使用される歯科矯正装置である。通常、歯科ブレースには歯列矯正ブラケットのセットが含まれ、各ブラケットは結合材料またはその他の接着剤で個々の歯に接着されている。ブラケットが歯の所定の位置に配置されると、各ブラケットに形成されたスロットにアーチワイヤが挿入される。この構成では、アーチワイヤを締めるとブラケットに圧力がかかり、歯の動きが望ましい位置と向きになる。従来のブレースでは、弾性結紮またはOリングを使用して、アーチワイヤを所定の位置に保持し、アーチワイヤがブラケットスロットから外れないようにする。最近の設計では、自己結紮ブレースは、弾性結紮糸の代わりにスライド式またはヒンジ式のドア機構を使用して、アーチワイヤをブラケットスロット内に固定する。
【発明の概要】
【0003】
歯の問題を修正するためにブレースを使用して患者の歯を治療するには、通常、進行状況を監視し、治療の進行に合わせてブレースを調整するためにいくつかの予約が必要である。したがって、本発明者らは、患者の歯をより効率的に位置合わせすることにより治療の長さを短縮するために治療プロセスを合理化する改善されたシステムの必要性を特定した。追加の態様および利点は、添付の図面を参照して進める以下の好ましい実施形態の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】
図1は、アーチワイヤを使用して歯科器具が取り付けられた歯列を示す図である。
【
図3】
図3A、
図3B、
図3Cは、異なる形状のアーチワイヤを
図1の歯科用器具に徐々に適用して、患者の歯を所望の位置に向かって徐々に移動させる従来の治療プログラムの時間経過の例をまとめて示す。
【
図4】
図4は、開示された実施形態に従って歯科器具が取り付けられた歯列を示す図である。
図4Aおよび4Bは、本明細書に開示される新規の歯科矯正システムを使用した、
図4の線A-AおよびB-Bに沿った断面をそれぞれ示す。
【
図5】
図5Aおよび5Bは、
図4Aおよび4Bの歯列矯正システムを使用した改善されたトルク制御の例を示す。
図5Cは、
図3A、3B、および3Cの従来の歯科矯正システムを使用して予想される典型的なトルク制御を示す。
【
図6】
図6Aは、
図4Aおよび4Bの歯列矯正システムを使用した改善された先端制御の例を示す。
図6Bは、
図3A、3B、および3Cの従来の歯科矯正システムを使用して予想される典型的な先端制御を示す。
【
図7】
図7Aおよび7Bは、
図4Aおよび4Bの歯列矯正システムを使用した改善された回転制御の例を示す。
図7Cは、
図3A、3B、および3Cの従来の歯科矯正システムを使用して予想される典型的な回転制御を示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
図面を参照して、このセクションでは、さまざまな歯列矯正ブラケットの特定の実施形態、およびそれらの詳細な構造と動作について説明する。本明細書を通して、「一実施形態」、「実施形態」、または「いくつかの実施形態」への言及は、特定の記載された特徴、構造、または特性が歯列矯正ブラケットの少なくとも1つの実施形態に含まれ得ることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な場所における「一実施形態では」、「実施形態では」、または「いくつかの実施形態では」という語句の出現は、必ずしもすべて同じ実施形態を指すものではない。さらに、説明される特徴、構造、および特性は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。本明細書の開示を考慮して、当業者は、1つ以上の特定の詳細なしで、または他の方法、構成要素、材料などを用いて様々な実施形態を実施できることを認識するであろう。
【0006】
以下の説明では、歯列矯正ブラケットの特定の構成要素を詳細に説明する。いくつかの例では、実施形態のより適切な態様を曖昧にすることを避けるために、よく知られている構造、材料、または動作は詳細に図示および/または説明されていないことを理解されたい。加えて、実施形態は特定の歯列矯正ブラケットの設計を例示および参照してもよいが、他の実施形態は、記載された実施形態よりも追加または少ないコンポーネントを含んでもよい。
【0007】
図面を一般的に参照すると、以下の開示は、歯列矯正治療を改善するために設計された歯列矯正システムに関する。以下に詳細に説明する歯科矯正システムは、デンタルブラケットのアーチワイヤスロットの寸法に対するアーチワイヤの寸法の関係を使用して、治療プロセス中に歯に加えられる力の精度と制御を高める。簡潔に述べると、歯列矯正ブラケットは患者の歯に対して配置され、ブラケットのそれぞれのアーチワイヤスロットの深さは一般に前歯から後歯に向かって増加する。いくつかの実施形態では、アーチワイヤスロットの深さは、前歯から始まる各歯の後続のブラケットごとに必ずしも増加しない場合がある。例えば、いくつかの実施形態では、中央歯、外側歯、および犬歯はそれぞれ、第1アーチワイヤスロットを備えた第1ブラケットを有してもよく、小臼歯はそれぞれ、第1ブラケットの第1アーチワイヤスロットより深いアーチワイヤスロットを持つ第2ブラケットを有してもよく、臼歯はそれぞれ、第2ブラケットのアーチワイヤスロットより深いアーチワイヤスロットを持つ第3ブラケットを有してもよい。
【0008】
どちらの実施形態でも、アーチワイヤが治療開始時の円形断面から進行し、その後、治療中にさまざまな円形および正方形の断面を通過するにつれて、アーチワイヤがアーチワイヤスロット内のブラケットを押すときに発生する力により、すべての歯が動かされる。アーチワイヤスロットの寸法は前歯で最小、後歯で最大であるため、治療により前歯の制御が向上し、より正確になり、すべての歯が適切に動いて落ち着くように十分な動きの自由度が得られる。以下でさらに詳しく説明するように、前歯から後歯へのアーチワイヤスロットサイズの漸進的な進行は、従来の治療と比較してプロセスの早い段階で歯の詳細な調整プロセスを開始し、それによって全体的な治療時間を短縮するように特に設計されている。歯列矯正治療システムおよび関連する治療方法に特に関連する追加の詳細を、図面を参照して以下でさらに詳細に説明する。
【0009】
書面による説明に移る前に、以下は本開示で使用される用語のリストである。これらの用語は、当業者によって理解される意味に従って使用されるが、本明細書では、一貫性を確保し、当業者による仕様の理解を容易にするために提供される。
【0010】
前方:頭の正面、または唇の方向。「後方」の反対。
【0011】
前歯:1本の犬歯からもう1本の犬歯までにわたる、下顎または上顎のいずれかの歯。
【0012】
頬方向:頬に向かう方向。通常は臼歯(後歯)に関連して使用される。「舌方向」の反対。
【0013】
頬-舌側方向:患者の頬と患者の舌の間に広がる特定の臼歯を通る方向またはそれに沿った方向。
【0014】
遠位方向:歯の正中線から離れた特定の歯の側面の方向。近位方向の反対。
【0015】
歯列弓:下顎または上顎のいずれかにある歯の列。
【0016】
歯の正中線:患者の口を2つの半分に分割し、患者の2つの中央前歯を通って口の後ろ側に伸びる想像線。
【0017】
歯肉方向:特定の歯の下の歯茎に向かう方向。
【0018】
切歯方向:特定の前歯の咬合面に向かう方向。
【0019】
切歯-歯肉方向:咬合面からその歯の下の歯茎まで伸びている特定の前歯を通る、またはそれに沿った方向。
【0020】
唇方向:唇に向かう方向。通常は前歯に関連して使用される。舌方向の反対。
【0021】
唇-舌方向:患者の唇から患者の舌までの間に広がる特定の前歯を通る、またはそれに沿った方向。
【0022】
下顎(Mandibular):下顎(lower jaw)に関連する。
【0023】
上顎(Maxillary):上顎(upper jaw)に関連する。
【0024】
近位(近心):歯の正中線に向かう特定の歯の側面の方向。遠位(遠心)の反対。
【0025】
近位-遠位方向:歯の近位側から歯の遠位側へ延びる特定の歯を通る方向。歯に対する近位-遠位方向は、本質的に、関連する上または下の歯列を通る曲線に沿っている。
【0026】
咬合方向:特定の臼歯の咬合面に向かう方向。
【0027】
咬合-歯肉方向:咬合面からその歯の下の歯茎まで伸びる任意の特定の臼歯を通る、またはそれに沿った方向。
【0028】
後方:頭の後ろに向かう方向。前方の反対。
【0029】
臼歯(後歯):犬歯の後方の下顎または上顎のいずれかの歯。
【0030】
回転:歯肉方向に方向づけられた垂直軸周りの、治療の過程における歯の角度回転。
【0031】
傾斜(Tip):頬-舌方向に方向づけられた水平軸周りの、治療の過程における歯の角度回転。
【0032】
トルク:近位-遠位方向に方向づけられた水平軸周りの、治療の過程における歯の角度回転。
【0033】
図1および
図2を一般的に参照して、以下は、従来のプロセスによる治療システム1を簡単に説明する。図を参照すると、治療システム1は、患者の歯3の列に適用される複数のブラケット2を備える。ブラケット2は、アーチワイヤスロット6を介するなどの適切な手段、およびアーチワイヤ4をアーチワイヤスロット6に保持するためのカバー5などの結紮構造を通して、アーチワイヤ4によって一緒に接続される。前述したように、ブレースを使用した患者の治療では、通常、アーチワイヤ4を繰り返し調整して、アーチワイヤ4の張力がブラケット2を介して歯3に加えられると、歯3が所望の最終位置に移動する。
【0034】
図3A、3B、および3Cは、異なる形状のアーチワイヤを
図1の歯科用器具に徐々に適用して、患者の歯を所望の位置に向かって徐々に移動させる従来の治療プログラムの時間経過の例をまとめて示している。
図3Aを参照すると、それぞれのブラケット2に形成されたアーチワイヤスロット6は、結紮構造5によってブラケット2の上端に沿って閉じられた細長い長方形の開口として形成されてもよい。結紮構造5は、アーチワイヤスロット6上に延在するスライドドアまたはヒンジドアであってもよく、弾性バンド、または他の任意の適切な構造であってもよい。患者の歯のそれぞれにブレースのセットが最初に適用されるとき、円形断面のアーチワイヤ4Aが使用される。通常、円形アーチワイヤ4Aは、長方形のスロット6に取り付けられた円形断面アーチワイヤ4Aと組み合わせて、比較的柔軟なニッケルチタン材料で作られ、アーチワイヤ4Aは患者の歯3に比較的低い力を加え、ブラケット2は、歯3がより整列した状態に向かって移動するときに互いに対して移動する大きな遊びを持っている。円形アーチワイヤ4Aが治療プロセスで使用される場合、アーチワイヤ4Aをねじるとブラケット2に回転力が加わらないため、歯3のトルク制御はない。
【0035】
最終的に、
図3Bに示される治療の第2段階では、円形断面のアーチワイヤ4Aは、長方形断面のアーチワイヤ4Bに置き換えられる。患者の歯に必要な矯正の程度に応じて、アーチワイヤ4Bは、ニッケルチタン(丸いアーチワイヤ4Aと同様)で作られてもよく、より大きな程度の矯正が必要な場合、ベータチタン合金などのより硬い材料で作られてもよい。
図3Bに示すように、アーチワイヤ4Bは、アーチワイヤスロット6よりも全体寸法がわずかに小さいが、治療の第1段階で使用する丸いアーチワイヤ4Aよりも全体断面が大きい。したがって、アーチワイヤ4Bは、歯3に増大した力および制御を加えることができ、ブラケット2は、治療の第1段階に存在したよりもアーチワイヤ4Aに対する遊びが少ない。
【0036】
治療の最終段階では、アーチワイヤ4Bは、
図3Cに示されるように、より大きな断面の別の長方形アーチワイヤ4Cに置き換えられる。アーチワイヤ4Cは、典型的には、それが置き換えるアーチワイヤ4Bよりもはるかに硬く、ステンレス鋼または他の同様に硬い材料で作ることができる。この第3の治療段階は、前の治療段階と比較して、アーチワイヤ4Cおよびブラケット2を介して歯3に加えられる力および制御を再び増加させる。アーチワイヤスロット6におけるアーチワイヤ4Cのより緊密な係合(勘合)により、ブラケット2は、治療の第1段階および第2段階のいずれかに存在するよりも互いに対する遊びがほとんどない。
【0037】
前述したように、本発明者らは、すべての歯が同時に同じ量の力を受ける必要があるわけではない、および/またはすべての歯が治療中に同じ量の遊びを必要とするわけではないという認識に基づいて、
図3A~3Cで説明した従来のシステムよりも改善されたより効率的な治療システムおよび方法を適用できると判断した。言い換えれば、すべての歯に均一な力のプロファイルは必要ない。反対に、必要に応じて異なる歯(例えば前歯と後歯)で変化する力プロファイルは、全体の治療時間を短縮するだけでなく、必要に応じて歯の動きをより高度に制御する。
【0038】
本発明者らは、ブレースによる歯科治療の主な目的の一つは、所望の審美的外観を達成するための前歯の正確な位置決めであり、後歯の位置決めはそれほど正確である必要はないことを理解する。したがって、改善された治療システムは、下顎または上顎の歯列弓に沿って配置するためのブラケットのセットを使用することが好ましく、アーチワイヤスロットの断面は、必要に応じて前歯と後歯に目標とする力プロファイルをもたらすために、歯の正中線から弓の遠位方向に変化する(すなわち、前部ブラケットから後部ブラケット)。このシステムは、従来のシステムと比較して次の利点を提供する:(1)歯列弓の前部の歯の制御が向上するため、治療の質が向上する;(2)治療中の歯の動きを早期に制御し、現在のシステムと比較して治療時間を短縮すると同時に、適切な動きの自由度を提供し、歯が望ましい位置に効率的に移動できる;(3)アーチワイヤの寸法を適切にサイジングすることにより、力が低く効率的であるため、患者の体感が向上する。改善された歯列矯正治療の方法およびシステムの追加の詳細を以下に示す。
【0039】
特に
図4、4A、および4Bを参照して、以下の説明は、本明細書で開示される改善された治療方法の概要を提供する。残りの図は、従来の歯列矯正治療と比較して、開示された治療システムおよび方法が、歯を所望のアライメントに促すためのより良いトルク、回転、および先端制御を提供する方法の例に関する追加の詳細を示す。
【0040】
図4は、複数のブラケット100、102、104を有する患者の歯50の例示的な列を示し、単一のブラケットが、後歯150(小臼歯および臼歯)を介して前歯120(たとえば、中央、外側、および犬歯)のそれぞれに取り付けられる。ブラケット100、102、104はそれぞれ、アーチワイヤ110を受け入れるためのサイズと寸法である、アーチワイヤスロット105、115(それぞれ、ブラケット104の断面は
図4A、4Bには示されていない)を含み、アーチワイヤ110は、すべてのブラケット100、102、104を一緒に接続し、ブラケット100、102、104のそれぞれに対して力を提供して、歯を所望の整列に促す。
【0041】
好ましくは、アーチワイヤスロット105、115の咬合-歯肉寸法(すなわち、アーチワイヤスロットの幅)は、セット内のすべてのブラケット100、102、104について同じか(例えば、製造公差内で)実質的に同じである。アーチワイヤスロットの幅をすべてのブラケットにわたって等しく(または実質的に等しく)維持すると、以下でさらに詳しく説明するように、上顎および下顎の歯列弓のすべての歯のトルクおよび先端の位置決めの精度が向上する。しかしながら、アーチワイヤスロット105、115の唇-舌側寸法(すなわち、ブラケット本体の上面からアーチワイヤ床まで測定されたアーチワイヤスロットの深さ)は、前歯120に配置されたブラケット100から後歯150に配置されたブラケット102へと漸進的に増加する。
【0042】
この構成では、前歯120上のブラケット100のセットはすべて同一であることが好ましく、それぞれが最小の深さのアーチワイヤスロット105を持っており(つまり、これらのブラケットは断面サイズが最小のアーチワイヤスロットを持っている)、ブラケット100、102のアーチワイヤスロット105、115のそれぞれの深さの間のどこかにある深さを有する小臼歯の後部ブラケット104上のアーチワイヤスロット(図示せず)を有するとともに、後歯150(主に臼歯)のブラケット102は、最大深さのアーチワイヤスロット115を有する(すなわち、これらのブラケットは、最大断面サイズのアーチワイヤスロットを有する)。いくつかの実施形態では、前方ブラケット100のアーチワイヤスロット105は、ほぼ正方形の断面を有してもよく、一方、小臼歯ブラケット上のアーチワイヤスロット(図示せず)はほぼ長方形の断面を有し、後部ブラケット102のアーチワイヤスロット115はより細長い長方形の断面を有する。
【0043】
アーチワイヤのスロットの深さが徐々に増加するブラケットのセットの配置は、前歯120の十分な精度とより厳密な制御を提供し、所望の審美的外観を実現しやすくし、小臼歯と大臼歯の動きの自由度を高め、治療が完了したときにすべての歯が適切に揃うようにする。次のセクションでは、歯列矯正ブラケットの配置例を参照しながら、これらの実施形態の追加の詳細を提供する。
【0044】
広範囲のさまざまなサイズのブラケットに適用できる標準の参照フレームを提供するために、次の例は、アーチワイヤの唇-舌方向寸法に対するアーチワイヤスロットの唇-舌方向寸法(深さなど)の関係を示している。本明細書に記載の比率は、現在利用可能な標準ブラケットサイズおよび将来開発される可能性のある他のブラケットサイズを含む、あらゆるサイズの歯列矯正ブラケットに適用できることを理解されたい。
【0045】
上記のように、ブラケットのアーチワイヤスロットの唇-舌側の寸法は、前部ブラケットから後部ブラケットに向かって徐々に大きくなり、前歯、小臼歯、および大臼歯は、それぞれの歯の動きを最適に制御するために特に目標とするさまざまな力のプロファイルを受ける。以下の表1は、上顎および下顎の両方の歯列弓の中心歯から臼歯までのアーチワイヤの唇-舌寸法の割合として提示される、アーチワイヤスロットの深さの一実施形態による例示的な構成を示す。
【0046】
【0047】
図4および表1をまとめて参照すると、例示的な歯列矯正治療方法の間、ブラケット100は、患者の前歯120(中央歯、側歯、および犬歯)に取り付けられる。前述し、表1に示すように、すべてのブラケット100は、すべての前歯120がそれぞれ互いに同一の寸法のブラケットを有するように同一であることが好ましい。表1に示すように、アーチワイヤスロット105の唇-舌側の寸法は、アーチワイヤ110の対応する寸法の102%~110%の範囲にある。次に、ブラケット104が患者の第1および第2小臼歯に取り付けられ、これらのブラケットのアーチワイヤスロットの唇-舌側寸法は110%~125%の範囲である。最後に、ブラケット102は、患者の後歯150(例えば、第1および第2の臼歯、存在する場合、第3の臼歯を含み得る)に取り付けられる。表1に示されるように、ブラケット102のアーチワイヤスロット115の唇-舌側寸法は、アーチワイヤ110の対応する寸法の120%~140%の範囲である。前述のように、アーチワイヤスロットの咬合-歯肉方向の寸法は、すべてのブラケットで一定のままである。したがって、一実施形態では、アーチワイヤの咬合-歯肉方向寸法のパーセンテージとしてのアーチワイヤスロットの咬合-歯肉方向寸法は、102%~110%の範囲であり得る。
【0048】
以下の表2は、0.020インチ×0.020インチの正方形のアーチワイヤを使用したブラケットのアーチワイヤスロットの寸法範囲の例を示す。そのような実施形態では、0.020インチ×0.020インチの正方形の最終アーチワイヤを使用するシステムのブラケット内のアーチワイヤスロットの咬合-歯肉寸法は、0.0204インチから0.022インチの範囲で、そのような実施形態では0.021インチである。
【0049】
【0050】
表2は、0.020”×0.020”の正方形のアーチワイヤの寸法範囲の例を示し、他の実施形態では、最終的なアーチワイヤの唇-舌および咬合-歯肉の寸法は、0.017”×0.017”平方から0.021”×0.021”平方の範囲であり得る。さらに他の実施形態では、アーチワイヤの寸法は、提供される範囲より大きくても小さくてもよい。
【0051】
上述の実施形態では、ブラケットのサイズは、それらが取り付けられる特定の歯に基づいて本質的にグループ化される。例えば、すべての前歯120は、アーチワイヤスロットと同じ寸法のそれぞれのブラケットを有し、すべての後歯150は、アーチワイヤスロットと同じ寸法のそれぞれのブラケットを有する。他の実施形態では、ブラケットのサイズと寸法は異なってグループ化されてもよく、または、中央歯から始まり第2(または第3)臼歯で終わる連続したブラケットごとに、スロットの唇-舌方向寸法が単純に徐々に深くなる場合があることを理解されたい。ただし、ブラケットをグループに配置して、さまざまな歯のグループが必要に応じて制御されるように(つまり、前歯がより細かく制御されるように)治療時間を短縮し、患者に良い結果をもたらすことが好ましい。以下の
図4Aおよび
図4Bは、改善された歯列矯正治療方法およびシステムの例示的な実施形態を示し、例示的な治療段階中に前部ブラケット100および後部ブラケット102のそれぞれのアーチワイヤスロット内にアーチワイヤがどのように位置するかを示す。
【0052】
図4Aは、前歯120の1つに取り付けられた改良されたデンタルブラケット100を示している。ブラケット100は、唇-舌方向の上面から第1のフロアまで測定された深さが咬合-歯肉方向に延びる幅に実質的に等しい正方形のアーチワイヤスロット105を含み、アーチワイヤ110は、治療の最終段階中にアーチワイヤスロット105内にぴったりと適合するようになっている。これらの前部ブラケット100の正方形のアーチワイヤスロット105は、後歯のブラケットと比較して最小の深さを有し、スロット105内のアーチワイヤ110の適合は、
図5A~
図7Cを参照して以下でさらに詳細に説明されるように、前歯120の位置決めにおいて最も正確になるようにする。前述のように、下顎および上顎の両方の歯列弓の中央歯、側歯、および犬歯に使用されるブラケットは、
図4Aの正方形のアーチワイヤスロット105と同一のアーチワイヤスロットを有する。
【0053】
図4Bは、後歯150の1つに取り付けられた改良されたデンタルブラケット102を示している。
図4Bを参照すると、デンタルブラケット102は、アーチワイヤスロット105の対応する深さよりも深い深さまで延びるアーチワイヤスロット115を有する。いくつかの実施形態では、アーチワイヤスロット115は、前歯120上のブラケット100の概して正方形の形状と比較して、概して長方形の形状を有してもよい。したがって、アーチワイヤ110は、アーチワイヤスロット115内に比較的緩く嵌合し、前歯120と比較して、後歯150により多くの運動の自由度を提供する。後歯150はより自由に動くことができるが、アーチワイヤ110のアーチワイヤスロット115への比較的ゆるいフィットはまた、前歯120と比較して、後歯150の歯の動きのより少ない程度の微調整をもたらす。しかしながら、歯列矯正治療は、歯列弓のすべての歯が全体として十分な動きの自由度を持ち、アーチワイヤとブラケットが歯を所望のアライメントに動かすのに十分な制御を提供するように設計されている。
【0054】
図4Aおよび4Bは、治療の最終段階の例示的な構成を示すことを意図していることを理解されたい。当業者は、治療の初期段階および中間段階が、必要に応じてアーチワイヤに異なるサイズおよび形状を使用し得ることを理解する。例えば、いくつかの実施形態では、アーチワイヤの断面は、治療の開始時の丸いアーチワイヤから、治療の過程でさまざまな円形および正方形の断面を通って、
図4Aおよび4Bに示すように正方形の断面を持つ最終的なアーチワイヤに進むことができる。最終的な正方形の断面のアーチワイヤは、患者にやさしく、歯の動きに効果的な力を生み出す。さらに、最終的なアーチワイヤの正方形の断面は、歯の位置の優れた制御を提供する。
【0055】
当業者はまた、開示されたシステムおよび方法の他の実施形態が、今説明したもの以外の他の断面形状を使用し得ることを認識するであろう。例えば、いくつかの実施形態では、デンタルブラケット100は、断面が長方形であるが、デンタルブラケット102よりも小さいアーチワイヤスロットを有していてもよい。同様に、いくつかの実施形態では、デンタルブラケット102は、デンタルブラケット100よりも大きい正方形断面のアーチワイヤスロットを有してもよい。
【0056】
表1および2に示されている寸法に従って、正方形の最終アーチワイヤと結合された前部ブラケットと後部ブラケットのアーチワイヤスロット寸法の組み合わせは、治療時間を短縮するためにすべての歯の効率的な制御を維持しながら、前歯と後歯の正確な位置決めをもたらす改善された歯科矯正治療システムと方法を提供する。
図5A~
図7Cを集合的に参照して、以下のパラグラフは、従来の治療方法と比較して改善された治療方法が歯の動きのより効率的な制御を提供する方法に関する追加の詳細を説明する。
【0057】
図5A、
図5B、および
図5Cをまとめて参照すると、以下は、既存のシステムよりもアーチワイヤスロット105、115の様々な寸法が、治療の早い段階で歯の位置決めをより細かく制御する方法を示す。
図5Aおよび5Bは、治療の仕上げ段階中に
図4Aおよび4Bに示されるブラケットを使用して前歯(
図5A)および後歯(
図5B)に提供されるトルクの制御(例えば、近位-遠位方向に向けられた水平軸を中心とした治療中の歯の角回転)を示す。ブラケット100、102を接続するアーチワイヤ110は、それぞれアーチワイヤスロット105、115、ねじれ角160(
図5A)および165(
図5B)のアーチワイヤスロットの側面の正方形のアーチワイヤ110の角部でねじられるため、それにより、ブラケットが取り付けられている歯に力を伝達し、その結果、近位-遠位方向に向けられた軸の周りに歯を回転させる。
【0058】
図5Aに示すように、前部ブラケット100のアーチワイヤ110の一部は、アーチワイヤスロット105のフロアに着座して接触し、アーチワイヤ110の別の部分は、アーチワイヤスロット105上に延びる結紮構造に接触する。アーチワイヤ110がアーチワイヤスロット105内でねじられると、アーチワイヤスロット105の側壁およびフロアに対する、および結紮構造に対する接触により、歯が所望のように回転するように促される。
図5Bでは、後部ブラケット102のアーチワイヤ110は、同様にアーチワイヤスロット115の側壁およびフロアに接触するが、アーチワイヤスロット105と比較してアーチワイヤスロット115の深さが大きいため、アーチワイヤ110は結紮構造から離れている。他の実施形態(図示せず)では、代わりに、アーチワイヤ110は結紮構造に接触し、アーチワイヤスロットの床から離間していてもよい。
【0059】
図5Aでは、アーチワイヤスロット105は、アーチワイヤ110よりも全体寸法がわずかに大きいだけであるため、回転角160は比較的小さい。
図5Bでは、アーチワイヤスロット115は、アーチワイヤスロット105と比較して、より大きな長方形の形状を有するが、咬合-歯肉の寸法(すなわち、幅)は両方のブラケットで同じであるため、回転角165も比較的小さく、回転角160と等しい(または実質的に等しい)場合がある。いくつかの実施形態では、回転角160、165は、治療の最終段階中に一般的であり得るような、正方形の0.020”×0.020”アーチワイヤを使用する場合、3°から6°の範囲であり得る。治療の初期段階で一般的であるような、より小さな正方形の0.018”×0.018”アーチワイヤを使用する場合、回転角160、165は13°から16°の範囲であり得る。
【0060】
図5Cは、長方形のアーチワイヤスロット6を有するブラケット2と共に長方形の0.018”×0.025”のアーチワイヤ4を使用する一実施形態による従来の治療方法を示す。この構成において、回転角170は、アーチワイヤスロット2内のアーチワイヤ4のより緩い適合のために、改善されたシステムのそれぞれの回転角160、165よりも実質的に大きいことは容易に明らかである。いくつかの実施形態では、回転角170は、治療の最終段階中に10°から15°の範囲であり得る。治療の初期段階でより一般的な、より小さな長方形の0.014”×0.025”アーチワイヤを使用する場合、回転角170は25°から30°の範囲になる。特に、治療の初期段階と最終段階の両方の回転角160、165は、従来のシステムの対応する回転角170よりも実質的に小さく、つまり、
図5Aおよび5Bのシステムは、
図5Cの従来のシステムよりも正確なトルク制御を提供する。
【0061】
図6Aおよび
図6Bにおいて、以下は、先端制御に関して同じ現象を示しており、頬-舌方向に向いた水平軸を中心とした治療中の歯の角回転である。
図6Aは、アーチワイヤスロット105を備えた前部ブラケット100を示しており、アーチワイヤスロット105を介して、ブラケットに取り付けられた歯を位置決めするために使用される。
図6Aに示されるように、アーチワイヤスロット105内のアーチワイヤ110の相対的な適合は、回転角度175に対するより厳密な制御を提供する。正方形の0.020”×0.020”アーチワイヤを使用する場合、回転角175は1°未満で、0.4°から0.6°の範囲であることとしてもよい。当業者は、
図6Aの図が後部ブラケット105によって提供される先端制御も表すことを理解するであろう。
【0062】
図6Bは、アーチワイヤ4がブラケット2に取り付けられた歯を位置決めするために使用されるアーチワイヤスロット6を備えた従来のブラケット2を示している。
図6Bに示されるように、スロット6内のアーチワイヤ4の比較的緩い結果、大きな回転角180が生じる。いくつかの実施形態では、長方形のアーチワイヤ0.018”×0.025”のアーチワイヤを使用して、角度180は1.5°から2.0°の範囲であり得る。再び、角度175は、
図6Bの先行技術システムによって達成される角度180よりも著しく小さく、それにより、改善された治療方法およびシステムがより微細な先端制御を提供することを示している。
【0063】
図7A、7B、および7Cを参照すると、以下は回転制御に関して同じ現象を示し、これは切歯-歯肉方向に向けられた垂直軸の周りの治療過程中の歯の角回転である。
図7Aは、アーチワイヤスロット105を有する前部ブラケット100を示しており、アーチワイヤスロット105を介して、ブラケットに取り付けられた歯を位置決めするためにアーチワイヤ110が使用される。
図7Aに示されるように、アーチワイヤスロット105内のアーチワイヤ110の相対的な適合は、前歯120上のブラケット100によって与えられる回転角度185に対するより厳密な制御を提供する。正方形の0.020”×0.020”アーチワイヤを使用する場合、回転角185は1°未満で、0.4°から0.7°の範囲であることとしてもよい。治療の初期段階で一般的であるような、より小さな正方形の0.018”×0.018”アーチワイヤを使用する場合、回転角185は1.5°から2.2°の範囲であり得る。
【0064】
同様に、
図7Bは、アーチワイヤスロット115を備えた後部ブラケット102を示しており、アーチワイヤスロット115を介して、ブラケットに取り付けられた歯を位置決めするためにアーチワイヤ110が使用される。正方形の.020”×0.020”アーチワイヤを使用する場合、回転角度190は1.7°から2.2°の範囲であり得る。治療の初期段階で一般的であるような、より小さな正方形の0.018”×0.018”アーチワイヤを使用する場合、回転角190は3.0°から3.3°の間の範囲であり得る。
【0065】
図7Cは、アーチワイヤ4がブラケット2に取り付けられた歯を位置決めするために使用されるアーチワイヤスロット6を有する従来のブラケット2を示す。
図7Cに示されるように、従来のシステムは、長方形のアーチワイヤ0.018”×0.025”のアーチワイヤを使用して、1.5°~2.0°の範囲であり得る回転制御角度195をもたらす。回転制御角度195は、回転角度190と同様であってもよいが、回転角度185よりもかなり大きい。したがって、改善された治療方法およびシステムは、従来の治療システムと比較して、前歯のより細かい回転制御と、後歯のわずかに改善された制御を提供する。
【0066】
図5A~
図7Cは主に治療の仕上げ段階に焦点を当てて、従来の治療方法に対するトルク、先端、および回転の改善を示すが、以下の表と説明は、改善された治療システムが治療のすべての段階でどのように大きな利点を提供するかを示している。実例として治療の初期段階を使用して、ここで説明する改善されたシステムは、表2に示す測定値を持つアーチワイヤスロットに0.014直径のアーチワイヤを使用する。次の表3と4は、従来のシステムに対するトルク、先端、回転の制御の改善をまとめたものである。
【0067】
治療の初期段階では、丸いアーチワイヤを使用することが好ましく、これは、丸いアーチワイヤにはねじれたときにアーチワイヤスロットに引っかかるエッジがないため、トルク制御を提供しないが、4.46度の回転制御と3.83度の先端制御を実現する。しかしながら、初期治療段階の従来技術のシステムは、同様にトルクの制御を提供しないが、8.47度の回転制御と4.29度の先端制御しか提供できない。トルクの制御と同様に、表3は、開示されたシステムが治療のあらゆる段階で歯の動きをより強力に制御することを示している。
【0068】
【0069】
【0070】
図面および関連する書面による説明は、特定の寸法を有するブラケットの例示的な実施形態を示しているが、開示された主題の原理から逸脱することなく他の構成が可能であり得ることを理解されたい。さらに、上記の説明は多くの特異性を含むが、これらの詳細は本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではなく、単に本発明のいくつかの実施形態の例示を提供するものとして解釈される。本明細書の一部に開示される主題は、そのような組み合わせが相互に排他的または動作不能でない限り、本明細書の他の部分の1つまたは複数の主題と組み合わせることができることを理解されたい。
【0071】
上記で使用されている用語と説明は、説明のみを目的として記載されており、制限を意味するものではない。本発明の基礎となる原理から逸脱することなく、上述の実施形態の詳細に多くの変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。