(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】APOE4アレルを有する患者亜集団におけるアルツハイマー病の治療での使用のための5-HT6受容体アンタゴニストとアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の組み合わせ
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4045 20060101AFI20221031BHJP
A61K 31/445 20060101ALI20221031BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20221031BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
A61K31/4045 ZMD
A61K31/445
A61P25/28
A61P43/00 111
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2019564834
(86)(22)【出願日】2018-05-22
(86)【国際出願番号】 EP2018063402
(87)【国際公開番号】W WO2018215478
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-05-10
(32)【優先日】2017-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】591143065
【氏名又は名称】ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100141195
【氏名又は名称】西澤 恵美子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ウィンフェルド,クリスティアン
【審査官】藤井 美穂
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/165701(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/179569(WO,A1)
【文献】特表2005-534710(JP,A)
【文献】Pharmacological Reports, 2016, Vol.68, pp.127-138
【文献】JAMA, 2018.1, Vol.319, No.2, pp.130-142,<https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5833662/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00 - 45/08
A61K 31/00 - 31/80
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-(2-(6-フルオロ-1H-インドール-3-イル)-エチル)-3-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)-ベンジルアミン又はその薬学的に許容できる塩を含む、アルツハイマー病
を治療するための医薬組成物であって、前記医薬組成物が、ドネペジル又はその薬学的に許容できる塩から選択されるアセチルコリンエステラーゼ阻害剤
と組み合わせて投与され、
前記アルツハイマー病
の患者が1又は2つのApoE4アレルを有する
、医薬組成物。
【請求項2】
N-(2-(6-フルオロ-1H-インドール-3-イル)-エチル)-3-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)-ベンジルアミンの
薬学的に許容できる塩が塩酸塩である、請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項3】
前記アセチルコリンエステラーゼ阻害剤がドネペジルの塩酸塩である、請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項4】
N-(2-(6-フルオロ-1H-インドール-3-イル)-エチル)-3-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)-ベンジルアミンの
薬学的に許容できる塩が塩酸塩であり、前記アセチルコリンエステラーゼ阻害剤がドネペジルの塩酸塩である、請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項5】
N-(2-(6-フルオロ-1H-インドール-3-イル)-エチル)-3-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)-ベンジルアミン又はその薬学的に許容できる塩の投薬範囲が
N-(2-(6-フルオロ-1H-インドール-3-イル)-エチル)-3-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)-ベンジルアミン遊離塩基として60mg/日~120mg/日である、請求項
1~4のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項6】
前記アルツハイマー病患者がAPOE4ヘテロ接合体患者である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項7】
前記アルツハイマー病患者がAPOE4/4ホモ接合体患者である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項8】
前記アルツハイマー病患者が、軽度から中等度のアルツハイマー病と診断されたAPOE4/4ホモ接合体患者である、請求項
7に記載の
医薬組成物。
【請求項9】
前記アルツハイマー病患者が、軽度から中等度のアルツハイマー病と診断されたAPOE4ヘテロ接合体患者である、請求項
6に記載の
医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルツハイマー病患者が1又は2つのApoE4アレルを有する、アルツハイマー病の、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の使用をさらに含む治療での使用のための5-HT6受容体アンタゴニスト及びその薬学的に許容できる塩に関する。
【背景技術】
【0002】
認知症は、正常な加齢により説明できない多くの分野の認知の不足、機能の顕著な低下、及びせん妄の欠如を特徴とする臨床症候群である。さらに、多くの場合、神経精神症状は最初の診断時に既に存在し、次いで疾患が進行するにつれて時間と共に数及び強度が増加する。アポリポタンパク質E遺伝子(APOE4)のε4アレルが、アルツハイマー病(AD)の最も重要な遺伝的危険因子の1つであることが知られている(Roses A.Apolipoprotein E alleles as risk factors in Alzheimer’s disease.Ann Rev Med.1996;47;387-400)。リスクの増大は、Aβペプチドのクリアランスの減少を示しその凝集を促進するAPOE4アイソフォームと関連していると考えられている(Holzman DM et al.Apolipoprotein E and apolipoprotein E receptors:normal biology and roles in Alzheimer disease.Cold Spring Harb Perspect Med.2012;2:a006312)。
【0003】
GABA受容体調節因子であるトラミプロセートを疾患修飾剤としてADの治療において使用する第III相プログラムは、そのプライマリーエンドポイントを満たさないと報告されたが、事前指定された亜群分析は、アポリポタンパク質E4キャリアにおける潜在的な有効性を示唆した(Abushakra,S.Clinical Benefits of Tramiprosate in Alzheimer’s disease Are Associated with Higher Number of APOE4 Alleles:The“APOE4 Gene-Dose Effect.J Prev Alz Dis 2016;3(4):219-228)。
【0004】
認知機能不全を治療するための選択的5-HT6受容体アンタゴニストの使用が示唆されており、いくつかの論拠に基づいている。例えば、選択的5-HT6受容体アンタゴニストは、コリン作動性及びグルタミン酸作動性神経機能を調節することが示された。
【0005】
N-(2-(6-フルオロ-1H-インドール-3-イル)-エチル)-3-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)-ベンジルアミン、INN名イダロピルジンは、現在臨床開発されている強力で選択的な5-HT6受容体アンタゴニストである。N-(2-(6-フルオロ-1H-インドール-3-イル)-エチル)-3-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)-ベンジルアミンは、Lu AE58054としても開示されてきた。
【0006】
N-(2-(6-フルオロ-1H-インドール-3-イル)-エチル)-3-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)-ベンジルアミンは、国際公開第02/078693号パンフレットに最初に開示され、N-(2-(6-フルオロ-1H-インドール-3-イル)-エチル)-3-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)-ベンジルアミンの投与量範囲は、国際公開第2014/037532号パンフレットに提案された。
【0007】
無作為化二重盲検プラセボ対照第II相試験は、Lancet Neurol 2014;13:141-49に報告されている(2014年10月6日にオンラインで公表;以下、LADDER試験と称される)。LADDER試験は、中等度のAD(MMSE 12~19)を有する患者で、安定したドネペジルに加えられるイダロピルジン90mg/日(30mg TID)を使用して実施された。LADDER試験は、ドネペジル単独療法と比べて認知能力に著しい改善を生み出した。
【0008】
軽度から中等度のアルツハイマー病(MMSE 12~22)を有する患者でのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤に対する固定投与量のイダロピルジン(10、30、及び60mg QD)による追加治療としてのイダロピルジンの3つの24週試験からなるその後の第III相プログラム(ClinicalTrials.gov Identifier:NCT01956151;NCT02006641;NCT02006654)は、第II相の有効性結果を再現しなかった。
【0009】
Avineuro Pharmaceuticalsは、認知症状の可能性のある治療のために、並びにアルツハイマー病のために、経口小分子5-HT6受容体アンタゴニスト、AVN-211(CD-008-0173)を開発している。AVN-211は3-スルホニル-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン誘導体であり、国際公開第2009/093206号パンフレットに3-ベンゼンスルホニル-5,7-ジメチル-2-メチルスルファニル-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジンとして開示されている。
【0010】
Axovant Sciences Ltdは、アルツハイマー病の可能性のある治療のために、経口小分子5-HT6受容体アンタゴニスト、インテピルジン(interpirdine)(RVT-101/SB-742457、CAS登録番号607742-69-8)を開発している。RVT-101は、8-ピペラジン-1-イルキノリン誘導体であり、国際公開第2009/074607号パンフレットに3-フェニルスルホニル-8-ピペラジン-1-イル-キノリンとして開示されている。
【0011】
現在、認知症の進行を遅らせるか、又は停止する治癒法も治療法もない。アルツハイマー病の症状を患っている患者の生活の質を改善する改善された薬物治療が必要である。
【発明の概要】
【0012】
現在は、アルツハイマー病患者亜集団群におけるアセチルコリンエステラーゼ阻害剤への追加療法としての5-HT6受容体アンタゴニストによるアルツハイマー病の治療であって、患者が1つのAPOE4アレル(ヘテロ接合型)又は2つのAPOE4アレル(ホモ接合型)を有し、前記療法が有効投与量の5-HT6受容体アンタゴニストを投与して、特に認知能力に対するアセチルコリンエステラーゼ阻害剤による治療の効果を改善するか、又は増大させることを含む治療を提供する。
【0013】
発明の詳細な説明
本発明の発明者らは、驚くべきことに、軽度から中等度のアルツハイマー病を有する患者におけるアセチルコリンエステラーゼ阻害剤に対する追加治療としてのイダロピルジンが、ドネペジル単独療法と比較して認知能力の有意な改善を全く生み出さなかったが、ドネペジル単独療法と比較した認知能力の有意な改善が、軽度から中等度のアルツハイマー病(MMSE 12~22)を有するAPOE4ホモ接合体患者及びAPOE4ヘテロ接合体患者においてドネペジルに対する追加治療としてのイダロピルジンにより達成されたことを見いだした。
【0014】
イダロピルジンは、高い特異性を有し、他の薬理学的受容体への結合が事実上全くない5-HT6受容体アンタゴニストであるので、観察される活性増大が、その5-HT6受容体アンタゴニスト活性によるものであり、したがって5-HT6受容体アンタゴニストの一般的性質によると推測するのは妥当である。したがって、AVN-211及びRVT-101などの5-HT6受容体アンタゴニストも、軽度から中等度のアルツハイマー病を有するAPOE4/4ホモ接合体患者及びAPOE4ヘテロ接合体患者におけるアルツハイマー病の増大した治療応答を起こすと期待される。
【0015】
本発明の一態様は、アルツハイマー病患者が1又は2つのApoE4アレルを有するアルツハイマー病の、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の使用をさらに含む治療での使用のための5-HT6受容体アンタゴニスト又はその薬学的に許容できる塩を対象とする。
【0016】
発明の実施形態
下記において、本発明の実施形態が開示される。第1の実施形態はE1と表され、第2の実施形態はE2と表されるなどである。
【0017】
E1 アルツハイマー病患者が1又は2つのApoE4アレルを有する、アルツハイマー病を、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤による治療の効果を改善又は増大させることにより治療することでの使用のための5-HT6受容体アンタゴニスト、又はその薬学的に許容できる塩。
【0018】
E2 E1の一実施形態において、5-HT6受容体アンタゴニストは、イダロピルジン、AVN-211、及びRVT-101、又は前記5-HT6受容体アンタゴニストの薬学的に許容できる塩からなる群から選択される。
【0019】
E3 E1又はE2の一実施形態において、5-HT6受容体アンタゴニストは、イダロピルジン又はその薬学的に許容できる塩である。
【0020】
E4 E1又はE3の一実施形態において、5-HT6受容体アンタゴニストは、イダロピルジンの塩酸塩である。
【0021】
E5 E1又はE2の一実施形態において、5-HT6受容体アンタゴニストは、AVN-211又はその薬学的に許容できる塩である。
【0022】
E6 E1又はE2の一実施形態において、5-HT6受容体アンタゴニストは、RVT-101又はその薬学的に許容できる塩である。
【0023】
E7 E1の一実施形態において、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤は、ドネペジル、リバスチグミン、及びガランタミン、又は前記アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の薬学的に許容できる塩からなる群から選択される。
【0024】
E8 E1又はE7の一実施形態において、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤は、ドネペジル又はその薬学的に許容できる塩である。
【0025】
E9 E1又はE8の一実施形態において、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤は、ドネペジルの塩酸塩である。
【0026】
E10 E1又はE7の一実施形態において、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤は、リバスチグミン又はその薬学的に許容できる塩である。
【0027】
E11 E1又はE10の一実施形態において、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤は、リバスチグミンの塩酸塩又は酒石酸塩である。
【0028】
E12 E1又はE7の一実施形態において、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤は、ガランタミン又はその薬学的に許容できる塩である。
【0029】
E13 E1又はE12の一実施形態において、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤は、ガランタミンの臭化水素酸塩である。
【0030】
E14 E1、E3又はE8の一実施形態において、5-HT6受容体アンタゴニストはイダロピルジンであり、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤はドネペジルである。
【0031】
E15 E1又はE14の一実施形態において、5-HT6受容体アンタゴニストはイダロピルジンの塩酸塩であり、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤はドネペジルの塩酸塩である。
【0032】
E16 E1、E14、又はE15の一実施形態において、イダロピルジンの用量範囲は、60mg/日~120mg/日である。
【0033】
E17 E1、E3、E4、E14、又はE15の一実施形態において、イダロピルジンの用量範囲は、60mg/日~90mg/日である。
【0034】
E18 E17の一実施形態において、イダロピルジンの用量は60mg/日である。
【0035】
E19 E17の一実施形態において、イダロピルジンの用量は90mg/日である。
【0036】
E20 E1、E8、E9、E14、又はE15の一実施形態において、ドネペジルの用量範囲は、2mg/日~25mg/日、好ましくは5mg/日~23mg/日である。
【0037】
E22 先の実施形態のいずれかの一実施形態において、5-HT6受容体アンタゴニストは、1日1回(QD)又は1日2回(BID)投与されて、所望の1日量が得られる。
【0038】
E23 E1、E16、E17、E18、又はE19のいずれかの一実施形態において、イダロピルジンはBIDで投与される。
【0039】
E21 イダロピルジン、RVT-101、及びAVN-211、又は前記5-HT6受容体アンタゴニストの薬学的に許容できる塩からなる群から選択される5-HT6受容体アンタゴニスト、並びにドネペジル、リバスチグミン、及びガランタミン、又はその薬学的に許容できる塩からなる群から選択されるアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を含む医薬組成物であって、アルツハイマー病患者が1又は2つのApoE4アレルを有する、アルツハイマー病の治療のための医薬組成物。
【0040】
E22 アルツハイマー病患者が1又は2つのApoE4アレルを有する、アルツハイマー病の治療のための医薬品の製造のための、イダロピルジン、RVT-101、及びAVN-211、又はその薬学的に許容できる塩からなる群から選択される5-HT6受容体アンタゴニストの使用。
【0041】
E23 アルツハイマー病患者が1又は2つのApoE4アレルを有する、アルツハイマー病の治療のための医薬品の製造のための、イダロピルジン、RVT-101、及びAVN-211、又は薬学的に許容できる塩5-HT6受容体アンタゴニストからなる群から選択される5-HT6受容体アンタゴニスト並びにドネペジル、リバスチグミン、及びガランタミン、又はアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の薬学的に許容できる塩からなる群から選択されるアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の使用。
【0042】
E24 先の実施形態のいずれかの一実施形態において、アルツハイマー病は、軽度から中等度の段階である。
【0043】
E25 先の実施形態のいずれかの一実施形態において、アルツハイマー病は、中等度から重度の段階である。
【0044】
E26 アルツハイマー病患者が1又は2つのApoE4アレルを有し、患者がアセチルコリンエステラーゼ阻害剤により治療されているアルツハイマー病を治療する方法であって、さらなる投与5-HT6受容体アンタゴニスト又はその薬学的に許容できる塩を含む方法。
【0045】
E27 5-HT6受容体アンタゴニストとアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の追加使用を含む、1又は2つのApoE4アレルを有するアルツハイマー病患者の亜群集団におけるアルツハイマー病の対症療法のための投与計画。
【0046】
E28 アセチルコリンエステラーゼ阻害剤による治療も受けており、1又は2つのApoE4アレルを有する患者のアルツハイマー病の治療での使用のための5-HT6受容体アンタゴニスト、又はその薬学的に許容できる塩。
【0047】
定義
本明細書全体で、用語「5-HT6受容体アンタゴニスト」並びにイダロピルジン、AVN-211、又はRVT-101などのあらゆる特異的な5-HT6受容体アンタゴニストは、特記されない限り、遊離塩基及び薬学的に許容できる塩など、その化合物のあらゆる形態を含むものとする。遊離塩基及び薬学的に許容できる塩は、無水の形態及び水和物などの溶媒和された形態を含む。無水の形態は非晶形及び結晶形を含み、溶媒和物は結晶形を含む。さらに、特記されない限り、用語「5-HT6受容体アンタゴニスト」はヒト5-HT6受容体アンタゴニスト(「h5-HT6受容体アンタゴニスト」とも示され得る)を含む。
【0048】
同様に、用語「アセチルコリンエステラーゼ阻害剤」(「AChEI」と略記される)並びに「ドネペジル」などのあらゆる特異的なアセチルコリンエステラーゼ阻害剤は、遊離塩基及び薬学的に許容できる塩など、その化合物のあらゆる形態を含むものとする。
【0049】
用語「アセチルコリンエステラーゼ阻害剤」(AChEI)は当業者に公知であり、ドネペジル((RS)-2-[(1-ベンジル-4-ピペリジル)メチル]-5,6-ジメトキシ-2,3-ジヒドロインデン-1-オン)、リバスチグミン((S)-3-[1-(ジメチルアミノ)エチル]フェニルN-エチル-N-メチルカルバマート)、及びガランタミン((4aS,6R,8aS)-5,6,9,10,11,12-ヘキサヒドロ-3-メトキシ-11-メチル-4aH-[1]ベンゾフロ[3a,3,2-ef][2]ベンザゼピン-6-オール)、及びタクリン(1,2,3,4-テトラヒドロアクリジン-9-アミン)からなる群から選択される化合物を含む。AchEIは、下記のとおり略記されることがある:ドネペジルDON、リバスチグミンRIV、及びガランタミンGAL。
【0050】
用語「医薬品有効成分」及び「有効成分」は、5-HT6受容体アンタゴニスト及びAChEIに及ぶ。
【0051】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤のFDA認可用量は、本発明により包含される。例えば、ドネペジルの用量は、軽度から中等度のアルツハイマー病の治療の対照をおいた臨床試験において有効であることが示されるは、1日1回経口投与される5mg又は10mgである。23mgの経口の1回1日量のドネペジルも、中等度から重度のADの治療用に認可されている。
【0052】
本文脈において、イダロピルジン(IDLと略記されることがある)、AVN-211、若しくはRVT-101などの5-HT6受容体アンタゴニスト又は他の5-HT6受容体アンタゴニストが、ドネペジル、リバスチグミン、タクリン、又はガランタミンなどのAChEIと組み合わせて使用される場合、これは、一実施形態において、前記の2種の化合物が、同時に、例えば両化合物を含む医薬組成物で投与できることを示す。別の実施形態において、5-HT6受容体アンタゴニストがAChEIと組み合わせて使用される場合、これは、前記2種の化合物が、好適な個別の医薬組成物で別々に投与されることを示す。これらの個別の組成物は、同時に、例えば、規則的な間隔で、1日1回朝又は夕方に投与してよく、或いは、それらは、独立に、例えば、一方の化合物を規則的な間隔で1日1回朝に、他方の化合物を規則的な間隔で1日1回夕方に投与してもよい。
【0053】
5-HT6受容体アンタゴニストの「治療上有効な投与量」は、ADAS-cog(Rosen WG et al.A new scale for Alzheimer’s disease.Am J Psychiatry 1984;141:1356-64)により測定されるベースラインの臨床的に観察されるアルツハイマー病の徴候及び症状と比較した観察可能な治療効果を与えるのに充分な量である。
【0054】
ADCS-ADLは、Galasko et al.An inventory to assess activities of daily living for clinical trials in Alzheimer’s disease.The Alzheimer’s Disease Cooperative Study.Alzheimer Dis Assoc Disord.1997;11 Suppl 2:S33-9に従って測定される。
【0055】
用語「軽度から中等度のアルツハイマー病」は、精神状態短時間検査(MMSE)スケールの12~22(両端を含む)のスコアを意味するものとする。
【0056】
神経精神目録(NPI)は、Cummings,J.L.,Mega,M.,Gray,K.,Rosenberg-Thompson,S.,Carusi,D.A.,& Gornbein,J.The Neuropsychiatric Inventory:comprehensive assessment of psychopathology in dementia.Neurology 1994;44:2308-2314に従って測定される。
【0057】
精神状態短時間検査(MMSE)は、Folstein,M.F.,Folstein,S.E.,& McHugh,P.R.“Mini-mental state”:a practical method for grading the cognitive state of patients for the clinician.Journal of psychiatric research 1975 12(3):189-198に従って測定される。
【0058】
ε4アポリポタンパク質E遺伝子に1つの突然変異を有するアルツハイマー病患者は、時として「APOE4ヘテロ接合体患者」と称されることがある;ε4アポリポタンパク質E遺伝子に2つの突然変異を有するアルツハイマー病患者は、時として「APOE4ホモ接合体患者」又は「APOE4/4ホモ接合体患者」と称されることがある。
【0059】
用語「毎日」は、所与の連続的な24時間の期間を意味する。
【0060】
用語「投与量」は、治療されている患者への1つの剤形での5-HT6受容体アンタゴニスト又はアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の投与を意味するように本明細書で使用される。いくつかの実施形態において、投与量は、単一経口製剤である。いくつかの実施形態において、投与量は、患者に投与される錠剤、カプセル剤、丸剤、又はパッチ剤として製剤されている。
【0061】
本文脈において、「単位剤形」は、医薬組成物の製剤単位、例えば、錠剤又はカプセル剤を指す。
【0062】
用語「有効1日量」は、療法を必要とする患者に連続的な24時間の期間に投与される5-HT6受容体アンタゴニスト又はAChEIの総量を意味する。用語の意味を説明するためのみに本明細書で使用される非限定的な例として、90mgの有効1日量は、24時間の期間での90mgの単回投与の投与、24時間の期間内のそれぞれ45mgの2つの投与量の投与、及び24時間の期間でのそれぞれ30mgの3つの投与量の投与などを意味し、含むものとする。5-HT6受容体アンタゴニストを、そのように、すなわち24時間の期間に2回以上投与する場合、そのような投与は、24時間の期間にわたり均等に分散させることができ、又は同時に若しくはほぼ同時に投与することすらできる。
【0063】
本明細書での用語「投与量範囲」は、明示される薬剤の量の許容できる変動の上限及び下限を指す。典型的には、明示される範囲内の任意の量の薬剤の投与量が、治療を受けている患者に投与され得る。
【0064】
用語「治療する」は、対象の疾患の少なくとも1つの症状を、和らげるか、減少させるか、又は緩和することを意味するように本明細書で使用される。例えば、認知症に関連して、用語「治療する」は、認知機能障害(記憶及び/又は見当識の障害など)若しくは全般的機能(global functioning)(日常生活活動を含む総合的な機能)の障害を和らげるか、若しくは緩和すること、且つ/又は全般的若しくは認知機能の障害の進行性の低下を減速させるか、若しくは逆転することを意味し得る。
【0065】
薬学的に許容できる塩
本発明は、5-HT6受容体アンタゴニストの塩、典型的には薬学的に許容できる塩も含む。そのような塩には薬学的に許容できる酸付加塩がある。酸付加塩は、無機酸並びに有機酸の塩を含む。
【0066】
好適な無機酸の代表例には、塩化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硫酸、スルファミン酸、硝酸などがある。好適な有機酸の代表例には、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、安息香酸、ケイ皮酸、クエン酸、フマル酸、グリコール酸、イタコン酸、乳酸、メタンスルホン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、シュウ酸、ピクリン酸、ピルビン酸、サリチル酸、コハク酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、酒石酸、アスコルビン酸、パモ酸、ビスメチレンサリチル酸、エタンジスルホン酸、グルコン酸、シトラコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、EDTA、グリコール酸、p-アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、テオフィリン酢酸、並びに8-ハロテオフィリン、例えば8-ブロモテオフィリンなどがある。薬学的に許容できる無機又は有機酸付加塩のさらなる例には、内容が参照により本明細書に組み込まれているBerge,S.M.et al.,J.Pharm.Sci.1977,66,2に列記される薬学的に許容できる塩がある。
【0067】
さらに、本発明の化合物は、溶媒和されていない形態並びに水、エタノールなどの薬学的に許容できる溶媒と溶媒和された形態で存在し得る。一般に、溶媒和された形態は、本発明の目的には溶媒和されていない形態と等しいと考えられる。
【0068】
本発明の特定の実施形態において、5-HT6受容体アンタゴニストは、イダロピルジンの塩酸塩の形態である。
【0069】
医薬組成物
本発明は、治療上有効な量の5-HT6受容体アンタゴニスト及び薬学的に許容できる担体又は希釈剤を含む医薬組成物をさらに提供する。本発明は、治療上有効な量の1種の5-HT6受容体アンタゴニスト及び薬学的に許容できる担体又は希釈剤を含む医薬組成物も提供する。
【0070】
5-HT6受容体アンタゴニストは、単独でも、薬学的に許容できる担体、希釈剤、又は賦形剤と組み合わせても、単回投与又は反復投与で投与できる。本明細書による医薬組成物は、薬学的に許容できる担体又は希釈剤並びに任意の他の公知の補助剤及び賦形剤と共に、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22nd Edition,Gennaro,Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA,2013に開示されているものなどの従来の技法に従って製剤できる。
【0071】
医薬組成物は、経口、直腸、鼻腔内、肺、局所(頬側及び舌下を含む)、経皮及び非経口(皮下、筋肉内、及び静脈内を含む)経路などの任意の好適な経路による投与のために具体的に製剤され得る。経路が、治療される対象の全身状態及び年齢、治療される病態の性質、並びに有効成分に依存することが認識されるであろう。
【0072】
経口投与用の医薬組成物には、カプセル剤、錠剤、糖衣錠剤、丸剤、ロゼンジ剤、散剤、及び顆粒剤などの固体剤形がある。適切な場合、組成物は、腸溶性コーティングなどのコーティングと共に調製されることがあり、或いは、それらは、持続放出又は長期放出など、有効成分の制御放出を与えるように、当技術分野に周知である方法により製剤されることがある。経口投与用の液体剤形には、液剤、乳剤、懸濁剤、シロップ剤、及びエリキシル剤がある。
【0073】
非経口投与用の医薬組成物には、滅菌された水性及び非水性の注射用液剤、分散剤、懸濁剤、又は乳剤、並びに使用前に滅菌された注射用液剤又は分散剤中で再構成される滅菌された散剤がある。他の好適な投与形態には、坐剤、スプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、吸入剤、皮膚パッチ剤、及びインプラントがあるが、これらに限定されない。
【0074】
典型的な経口用量は、1日あたり約0.05~約10mg/kg体重の範囲である。経口用量は、通常、1つ以上の用量で、典型的には1日あたり1~3つの用量で投与される。正確な用量は、投与の頻度及び様式、治療される対象の性別、年齢、体重、及び全身状態、治療される病態の性質及び重症度、並びにあらゆる治療すべき併存疾患、並びに当業者に明らかである他の因子に依存するだろう。
【0075】
製剤は、当業者に公知である方法により単位剤形にも提示され得る。説明のために、経口投与用の典型的な単位剤形は、約60mg~約200mgなど約10mg~約200mgの医薬品有効成分又はその薬学的に許容できる塩の総量を含み得る。
【0076】
本発明の5-HT6受容体アンタゴニストは、一般的に、遊離の物質としても、その薬学的に許容できる塩としても利用される。一例は、遊離塩基と同じ有用性を有する5-HT6受容体アンタゴニストの酸付加塩である。5-HT6受容体アンタゴニストが遊離塩基を含む場合、そのような塩は、5-HT6受容体アンタゴニストの遊離塩基の溶液又は懸濁液を薬学的に許容できる酸により処理することにより、従来の方法で調製される。好適な有機及び無機酸の代表例は上記で記載されている。
【0077】
非経口投与には、滅菌された水溶液、プロピレングリコール水溶液、又はゴマ油若しくは落花生油中の5-HT6受容体アンタゴニストの溶液が利用され得る。そのような水溶液は、好適には、必要な場合緩衝されていなければならず、液体の希釈剤は最初に充分な塩水又はグルコースにより等張性にされなければならない。水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、及び腹腔内投与に特に好適である。5-HT6受容体アンタゴニストは、当業者に公知である標準的な技法を利用して、公知の滅菌された水性媒体に容易に組み込むことができる。
【0078】
好適な医薬担体には、不活性な固形希釈剤又は充填剤、滅菌された水溶液、及び種々の有機溶媒がある。固形担体の例には、ラクトース、白土、スクロース、シクロデキストリン、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、及びセルロースの低級アルキルエーテルがある。液体担体の例には、シロップ、落花生油、オリーブ油、リン脂質、脂肪酸、脂肪酸アミン、ポリオキシエチレン、及び水があるが、これらに限定されない。同様に、担体又は希釈剤は、単独又は蝋と混合されたステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルなど、当技術分野に公知である任意の徐放性物質を含み得る。次いで、5-HT6受容体アンタゴニストと薬学的に許容できる担体を組み合わせて形成された医薬組成物は、開示された投与経路に好適な種々の剤形で容易に投与される。製剤は、簡便には、調剤の技術分野に公知である方法により、単位剤形で提示され得る。
【0079】
経口投与に好適な本発明の製剤は、それぞれ所定量の有効成分及び任意選択で好適な賦形剤を含むカプセル剤又は錠剤などの別個の単位として提示され得る。さらに、経口で使用できる製剤は、散剤若しくは顆粒剤、水性若しくは非水性液体中の液剤若しくは懸濁剤、又は水中油型若しくは油中水型の液体エマルションの形態でもよい。
【0080】
固形担体が経口投与に使用される場合、製剤は、ハードゼラチンカプセル中に粉末又はペレット形態で配置されて錠剤状にされることがあり、或いは、それは、口内錠又はトローチの形態のこともある。固形担体の量は幅広く変わるだろうが、用量単位あたり約25mg~約1gの範囲だろう。液体担体が使用される場合、製剤は、シロップ、乳剤、ソフトゼラチンカプセル、又は水性若しくは非水性の液体懸濁剤若しくは液剤などの滅菌された注射用液体の形態でよい。
【0081】
本発明の医薬組成物は、当技術分野の従来の方法により調製できる。例えば、錠剤は、有効成分を通常の補助剤及び/又は希釈剤と混合し、その後に混合物を従来の打錠機調製錠剤中で圧縮することにより、調製できる。補助剤又は希釈剤の例は、コーンスターチ、ポテトスターチ、滑石、ステアリン酸マグネシウム、ゼラチン、ラクトース、ゴムなどを含む。着色剤、香料、保存剤など、そのような目的に通常使用される任意の他の補助剤又は添加剤は、それらが有効成分と適合性があるならば利用できる。
【0082】
5-HT6受容体アンタゴニストは、一般的に、遊離の物質として、又はその薬学的に許容できる塩として使用される。好適な有機及び無機酸の例は上記で記載されている。
【0083】
投与レジメン
5-HT6アンタゴニストの投与レジメンはアンタゴニストの実際の薬物動態プロファイルによるだろうが、一般的に投与量範囲は1日1回又は2回投与される5~200mg/日だろう。イダロピルジンでは、好ましい投与量範囲は、1日1回又は2回、好ましくは1日1回投与される10~120mg/日である。イダロピルジンの好ましい投与量範囲は、BID又はQD投与される60~120mg/日である。
【0084】
AChEIの投与レジメンは阻害剤の実際の薬物動態プロファイルによるだろうが、一般的に投与量範囲は1日1回又は2回投与される5~200mg/日だろう。ガランタミンは、典型的には8mg/日~24mg/日で投与され、リバスチグミンは、典型的には3mg/日~12mg/日で投与され、ドネペジルは、典型的には5mg/日~23mg/日で投与される。
【0085】
本発明のこの態様の一実施形態において、治療は、60~90mg/日のイダロピルジン又はその薬学的に許容できる塩及び5~23mg/日のドネペジル又はその薬学的に許容できる塩の使用を含む。5-HT6アンタゴニストは、AChEIと同時に投与することができ、或いは、5-HT6アンタゴニストとAChEIは、互いに独立に投与することができる。
【0086】
5-HT6アンタゴニストがAChEIと同時に投与される場合、2種の化合物は、同じ単位剤形(例えば、5-HT6受容体アンタゴニストとAChEIの両方を含む単一の錠剤)中にも、別な単位剤形(例えば、それぞれ5-HT6受容体アンタゴニスト及びAChEIを含む2つの錠剤)中にも含まれ得る。したがって、本発明の一態様は、60、65、70、75、80、85、又は90mgのイダロピルジン又はその薬学的に許容できる塩及び5、7.5、10、15、20、又は23mgのドネペジル又はその薬学的に許容できる塩を含むなど、60~90mgのイダロピルジン又はその薬学的に許容できる塩及び5~23mgのドネペジル又はその薬学的に許容できる塩を含む医薬組成物を対象とする。或いは、30、25、40、45、又は50mgのイダロピルジン又はその薬学的に許容できる塩を含み、2、2.5、3、5、10、12、又は15mgのドネペジル又はその薬学的に許容できる塩を含むなど、30~50mgのイダロピルジン又はその薬学的に許容できる塩及び2~15mgのドネペジル又はその薬学的に許容できる塩を含む医薬組成物。本発明の別の態様は、60、65、70、75、80、85、又は90mgのイダロピルジン又はその薬学的に許容できる塩及び8、9、10、15、20、又は24mgのガランタミン又はその薬学的に許容できる塩を含むなど、60~90mgのイダロピルジン又はその薬学的に許容できる塩及び8~24mgのガランタミン又はその薬学的に許容できる塩を含む医薬組成物を対象とする。本発明のさらに別の態様は、60、65、70、75、80、85、又は90mgのイダロピルジン又はその薬学的に許容できる塩及び3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12mgのリバスチグミン又はその薬学的に許容できる塩を含むなど、60~90mgのイダロピルジン又はその薬学的に許容できる塩及び3~12mgのリバスチグミン又はその薬学的に許容できる塩を含む医薬組成物を対象とする。
【0087】
特記されない限り、投与量は、医薬品有効成分の遊離塩基に基づいて計算される。
【0088】
本明細書に引用される公報、特許出願、及び特許を含む全参照文献は、参照により全体として、各参照文献が、参照により組み込まれると個別且つ具体的に示され、その全体として述べられるのと同程度に(法律により許される最大の限度に)、本明細書に組み込まれている。
【0089】
見出し及び小見出しは、便宜のみを目的として本明細書で使用されており、本発明を限定すると決して解釈されるべきではない。
【0090】
本明細書でのありとあらゆる例又は例示的な言葉(「例えば(for instance)」、「例えば(for example)」、「例えば(e.g.)」、及び「それ自体(as such)」)の使用は、本発明をよりよく説明することのみが意図され、特記されない限り本発明の範囲に限定を設けない。
【0091】
本発明を説明する文脈での(特に以下の請求項の文脈での)用語「1つの(a)」及び「1つの(an)」及び「前記(the)」の使用は、本明細書に特記されない限り又は文脈により明らかに矛盾しない限り、単数と複数の両方を網羅すると解釈されるものとする。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含む(containing)」は、他に記載がない限り、開放型の用語であると解釈されるものとする(すなわち「を含むが、これらに限定されない」を意味する)。本明細書での値の範囲の詳述は、本明細書で特記されない限り、その範囲内にある別々な各値に個別に言及する簡略した表現の方法として機能することのみが意図され、別々な各値は、それが個別に本明細書で詳述されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0092】
本明細書での特許文書の引用及び組み込みは、便宜のみを目的として実施され、そのような特許文書の正当性、特許性、及び/又は実施可能性の見解をなんら反映しない。
【0093】
本発明は、適用法により許可されるとおり、添付される請求項に詳述される内容の改変及び等価物を全て含む。
【実施例】
【0094】
実験
実施例1:イダロピルジンの結合親和性、アッセイ及び結果
以前に、イダロピルジンの5-HT結合親和性は、Arnt J,et al.Lu AE58054,a 5-HT6 receptor antagonist,reverses cognitive impairment induced by subchronic phencyclidine in a novel object recognition test in rats.Int J Neuropsychopharmacol 2010;13:1021-1033に記載のとおり決定された。報告された結果は、N-(2-(6-フルオロ-1H-インドール-3-イル)-エチル)-3-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)-ベンジルアミンが、ヒト5-HT6受容体及び他のヒト5-HT受容体サブタイプに対して以下の親和性を有する強力で選択的なヒト5-HT6受容体アンタゴニストであることを示す。
【0095】
【0096】
実施例2:第III相試験
第III相プログラムは、H.Lundbeck A/S(HLu)により資金調達され、軽度から中等度のAD(スクリーニング時にMMSE 12~22)を有する50才以上の患者におけるAChEIに対する追加治療としてのイダロピルジンの3つの24週二重盲検並行群プラセボ対照固定用量(10、30、及び60mg QD)試験からなっていた。
【0097】
【0098】
プライマリーエンドポイントは、アルツハイマー病評価スケールの認知サブスケール(Alzheimer’s disease Assessment Scale-cognitive subscale)(ADAS-cog)のベースラインから24週への変化であった。このエンドポイントは、試験の第一の目的を扱い、それは、軽度から中等度のADを有する患者の対処療法のためのドネペジルに対する追加療法としてのイダロピルジンの有効性を証明することであった。
【0099】
重要なセカンダリーエンドポイントは、アルツハイマー病共同研究の日常生活動作の評価(Alzheimer’s disease Cooperative Study-Activities of Daily Living Inventory)(ADCS-ADL)トータルスコアのベースラインから24週への変化を含んでいた。
【0100】
精神状態短時間検査(MMSE)を、第一の目的を支持するセカンダリーエンドポイントとして含めた。
【0101】
神経精神目録(NPI)を、第二の目的を支持するエンドポイントとして含めた。
【0102】
実施例3:APOE4ヘテロ接合型又はホモ接合型AD患者におけるADAS-cog、ADCS-ADL、MMSE、及びNPIに対するイダロピルジンの治療効果
以下の表において、ADAS-cog及びNPIの負の効果値は良好な治療効果を反映する一方で、ADL及びMMSEでは正の効果値が良好な治療効果を反映する。
【0103】
【0104】
表3に表される結果は、14861A試験における、ApoE4アレルを持たないAD患者と比べた1又は2つのApoE4アレルを有するAD患者における、ADAS-cogとADCS-ADLの両方並びにMMSE及びNPIに関する、イダロピルジンに対する追加治療としての60mg QDのより良好な効果を示す。ApoE4キャリア状態と60mgイダロピルジンによる治療の間の相互作用効果は、1又は2つのアレルを有するものでの効果を0であるものと比べると、ADAS-cogに関して有意である(p=0.0275)。
【0105】
【0106】
表4は、この試験のみでは相互作用が統計的に有意でないものの、1又は2つのApoE4アレルを有するAD患者におけるイダロピルジンに対する追加治療としての60mg QDのより良好な効果に向かう傾向が14863A試験でも明らかであることを示す。
【0107】
【0108】
試験14861A及び14863Aに基づく統合推定値(pooled estimates)(表5)は、ApoE4アレルの数の増加に伴うイダロピルジン60mgの有効性の増加を示唆する。
【0109】
ADAS-cogに対する効果は2つのアレルで有意であり(p=0.0277)、2つのアレルを持つものとアレルを持たないものを対比させる相互作用は有意性が境界領域である(p=0.052)。
【0110】
ADCS-ADLの評価は、ADAS-cogで見られたパターンと一致して、ApoE4アレルの増加に伴う機能面の改善を有するが、効果は統計的に有意ではない。
【0111】
MMSEに対するイダロピルジンの効果は、1つのApoE4アレルと2つのApoE4アレルの両方で有意である。
【0112】
NPIに対する効果は、2つのApoE4アレルで有意性が境界領域であり(p=0.0550)、同様に、2つのApoE4アレルを有するものとアレルを持たないものを対比させる相互作用は有意性が境界領域である(p=0.0594)。
本発明は以下の態様を含み得る。
[1]
アルツハイマー病の、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の使用をさらに含む治療での使用のための5-HT
6
受容体アンタゴニスト又はその薬学的に許容できる塩であって、アルツハイマー病患者が1又は2つのApoE4アレルを有する使用のための5-HT
6
受容体アンタゴニスト又はその薬学的に許容できる塩。
[2]
前記5-HT
6
受容体アンタゴニストが、N-(2-(6-フルオロ-1H-インドール-3-イル)-エチル)-3-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)-ベンジル-アミン、3-ベンゼンスルホニル-5,7-ジメチル-2-メチルスルファニル-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン及び3-フェニルスルホニル-8-ピペラジン-1-イル-キノリン又はその薬学的に許容できる塩からなる群から選択される、請求項1に記載の使用のための5-HT
6
受容体アンタゴニスト又はその薬学的に許容できる塩。
[3]
前記5-HT
6
受容体アンタゴニストが、N-(2-(6-フルオロ-1H-インドール-3-イル)-エチル)-3-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)-ベンジルアミンの薬学的に許容できる塩である、請求項1に記載の使用のための5-HT
6
受容体アンタゴニスト又はその薬学的に許容できる塩。
[4]
前記5-HT
6
受容体アンタゴニストが、N-(2-(6-フルオロ-1H-インドール-3-イル)-エチル)-3-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)-ベンジルアミンの塩酸塩である、請求項1に記載の使用のための5-HT
6
受容体アンタゴニスト又はその薬学的に許容できる塩。
[5]
前記アセチルコリンエステラーゼ阻害剤が、ドネペジル、リバスチグミン及びガランタミン又はその薬学的に許容できる塩からなる群から選択される、請求項1に記載の使用のためのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤。
[6]
前記アセチルコリンエステラーゼ阻害剤がドネペジルの塩酸塩である、請求項1に記載の使用のためのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤。
[7]
前記5-HT
6
受容体アンタゴニストがN-(2-(6-フルオロ-1H-インドール-3-イル)-エチル)-3-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)-ベンジルアミンの塩酸塩であり、前記アセチルコリンエステラーゼ阻害剤がドネペジルの塩酸塩である、請求項1に記載の使用のための5-HT
6
受容体アンタゴニスト及びアセチルコリンエステラーゼ阻害剤。
[8]
投薬範囲が60mg/日~120mg/日である、請求項3~7のいずれか一項に記載の使用のための5-HT
6
受容体アンタゴニスト。
[9]
前記アルツハイマー病患者がAPOE4ヘテロ接合体患者である、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための5-HT
6
受容体アンタゴニスト。
[10]
前記アルツハイマー病患者がAPOE4/4ホモ接合体患者である、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための5-HT
6
受容体アンタゴニスト。
[11]
前記アルツハイマー病患者が、軽度から中等度のアルツハイマー病と診断されたAPOE4/4ホモ接合体患者である、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための5-HT
6
受容体アンタゴニスト。
[12]
前記アルツハイマー病患者が、軽度から中等度のアルツハイマー病と診断されたAPOE4ヘテロ接合体患者である、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための5-HT
6
受容体アンタゴニスト。
[13]
5-HT
6
受容体アンタゴニスト又はその薬学的に許容できる塩及びアセチルコリンエステラーゼ阻害剤又はその薬学的に許容できる塩を含む医薬組成物。
[14]
前記5-HT
6
受容体アンタゴニストがN-(2-(6-フルオロ-1H-インドール-3-イル)-エチル)-3-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)-ベンジルアミン又はその薬学的に許容できる塩であり、前記アセチルコリンエステラーゼ阻害剤がドネペジル又はその薬学的に許容できる塩である、請求項13に記載の医薬組成物。
[15]
前記5-HT
6
受容体アンタゴニストがN-(2-(6-フルオロ-1H-インドール-3-イル)-エチル)-3-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)-ベンジルアミンの塩酸塩であり、前記アセチルコリンエステラーゼ阻害剤がドネペジルの塩酸塩である、請求項13に記載の医薬組成物。
[16]
アルツハイマー病を治療する方法であって、アルツハイマー病患者が1又は2つのApoE4アレルを有し、前記患者がアセチルコリンエステラーゼ阻害剤で治療されており、前記方法がさらなる投与5-HT
6
受容体アンタゴニスト又はその薬学的に許容できる塩を含む方法。