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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20221031BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20221031BHJP
   B60K 13/04 20060101ALI20221031BHJP
   B60K 11/06 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
E02F9/00 N
F01N3/08 B
B60K13/04 B
B60K11/06
E02F9/00 Q
E02F9/00 P
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020045658
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021147780
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 善大
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/103885(WO,A1)
【文献】特開平11-49206(JP,A)
【文献】特開2008-100749(JP,A)
【文献】特開2016-223242(JP,A)
【文献】国際公開第2013/137169(WO,A1)
【文献】特開平11-343639(JP,A)
【文献】特開2004-150029(JP,A)
【文献】特開2018-168847(JP,A)
【文献】特開2019-143504(JP,A)
【文献】特開2019-167681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
F01N 3/08
B60K 13/04
B60K 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、前記車体に設けられたエンジンと、前記エンジンから排出される排出ガスを処理する排ガス処理装置と、前記排ガス処理装置の内部に還元剤を噴射する還元剤噴射装置と、前記エンジンの冷却水を冷却するラジエータを含む少なくとも1つの熱交換器と、外気を吸い込んで冷却風を生成して前記熱交換器を冷却する冷却ファンと、前記還元剤を貯留する還元剤タンクと、を備え、前記エンジンと前記排ガス処理装置と前記還元剤噴射装置とを収容するエンジン室と、前記エンジン室の後方において隔壁により前記エンジン室と離隔され、前記熱交換器と前記冷却ファンとを収容する冷却室と、前記冷却室の側方に設けられ前記冷却室に連通する挿通孔を有し、前記還元剤タンクを収容するタンク収容室と、が設けられた作業車両において、
前記タンク収容室に回動可能に設けられた開閉カバーと、
前記還元剤タンクの給水口の外周を囲む筒形状の囲い部材と、を有し、
前記囲い部材は、
一端側が前記開閉カバーもしくは前記還元剤タンクに対して固定され、前記開閉カバーが押圧された状態で閉められたときに、他端側が前記還元剤タンクもしくは前記開閉カバーに対して密着する密着部材を備える
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
請求項1に記載の作業車両において、
前記還元剤噴射装置と前記還元剤タンクとの間で前記還元剤を給排するための一対の還元剤給排用配管と、
前記エンジンと前記還元剤タンクとの間で前記エンジンの冷却水を給排するための一対の冷却水給排用配管と、を有し、
前記タンク収容室には、
前記一対の還元剤給排用配管が挿通される第1挿通孔と、
前記第1挿通孔とは異なる挿通孔であって、前記一対の冷却水給排用配管が挿通される第2挿通孔と、がそれぞれ形成されている
ことを特徴とする作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排出ガスを処理する排ガス処理装置を備えた作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ホイールローダなどの作業車両においても、エンジンから排出される排出ガスに含まれるNOx量を低減するために、例えば、還元剤に尿素水を用いた選択触媒還元(SCR;Selective Catalytic Reduction)技術が採用された排ガス処理が行われている。なお、尿素水は、アンモニア(NH)が発生する温度以下であっても高温になると品質が劣化しやすいため、尿素水を貯留するタンクを冷却してできる限り低温状態にしておく必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されたホイールローダでは、還元剤を貯留する還元剤タンクが設けられ、その還元剤タンクを収納するタンク収納部に外気を導入する導入部が備えられている。そして、ラジエータファンが動作することにより発生する吸込み圧によって導入部から外気がタンク収納部内に取り込まれ、還元剤タンクが、取り込まれた外気と直接に熱交換が行われて冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/103885号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、作業車両が用いられる作業現場は塵埃が多いため、特許文献1に記載のホイールローダの場合には、導入部から外気と一緒に塵埃もタンク収納部内に取り込まれる。塵埃がタンク収納部内に取り込まれると、塵埃が還元剤タンクの給水口を塞いでいるキャップやその周囲に堆積する。キャップの周囲に堆積した塵埃は給水の際に還元剤タンク内に取り込まれることがあり、それが原因となって制御不良が発生して排ガス処理が滞ってしまったり、各種機器が故障してしまったりする可能性がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、還元剤タンクを効率良く冷却しながらも、還元剤タンク内への塵埃の侵入を抑制することが可能な作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、車体と、前記車体に設けられたエンジンと、前記エンジンから排出される排出ガスを処理する排ガス処理装置と、前記排ガス処理装置の内部に還元剤を噴射する還元剤噴射装置と、前記エンジンの冷却水を冷却するラジエータを含む少なくとも1つの熱交換器と、外気を吸い込んで冷却風を生成して前記熱交換器を冷却する冷却ファンと、前記還元剤を貯留する還元剤タンクと、を備え、前記エンジンと前記排ガス処理装置と前記還元剤噴射装置とを収容するエンジン室と、前記エンジン室の後方において隔壁により前記エンジン室と離隔され、前記熱交換器と前記冷却ファンとを収容する冷却室と、前記冷却室の側方に設けられ前記冷却室に連通する挿通孔を有し、前記還元剤タンクを収容するタンク収容室と、が設けられた作業車両において、前記タンク収容室に回動可能に設けられた開閉カバーと、前記還元剤タンクの給水口の外周を囲む筒形状の囲い部材と、を有し、前記囲い部材は、一端側が前記開閉カバーもしくは前記還元剤タンクに対して固定され、前記開閉カバーが押圧された状態で閉められたときに、他端側が前記還元剤タンクもしくは前記開閉カバーに対して密着する密着部材を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、還元剤タンクを効率良く冷却しながらも、還元剤タンク内への塵埃の侵入を抑制することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るホイールローダの一構成例を示す外観側面図である。
図2】ホイールローダの車体後部を左斜め後方から見た斜視図である。
図3】ホイールローダの車体後部の構成を説明する模式図である。
図4】開閉カバーが開けられた状態のタンク収容室を示す斜視図である。
図5】開閉カバーが開けられた状態のタンク収容室の内部を示す図である。
図6】開閉カバーが閉じられた状態のタンク収容室の内部を示す図である。
図7】変形例に係るホイールローダにおいて、開閉カバーが開けられた状態のタンク収容室を示す斜視図である。
図8】変形例に係るホイールローダにおいて、開閉カバーが開けられた状態のタンク収容室の内部を示す図である。
図9】変形例に係るホイールローダにおいて、開閉カバーが閉じられた状態のタンク収容室の内部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る作業車両の一態様として、例えば土砂や鉱物を掘削してダンプトラックなどへ積み込む荷役作業を行うホイールローダについて説明する。
【0011】
<ホイールローダ1の全体構成>
まず、本発明の実施形態に係るホイールローダ1の全体構成について、図1~3を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係るホイールローダ1の一構成例を示す外観側面図である。図2は、ホイールローダ1の車体後部を左斜め後方から見た斜視図である。図3は、ホイールローダ1の車体後部の構成を説明する模式図である。
【0013】
ホイールローダ1は、車体が中心付近で中折れすることにより操舵されるアーティキュレート式の作業車両である。具体的には、図1に示すように、車体の前部となる前フレーム1Aと車体の後部となる後フレーム1Bとが、センタジョイント10によって左右方向に回動自在に連結されており、前フレーム1Aが後フレーム1Bに対して左右方向に屈曲する。なお、以下の説明において、車体の左右方向のうち、進行方向の前側を向いた状態での左手側を「左方向」とし、その反対となる右手側を「右方向」とする。
【0014】
車体には4つの車輪11が設けられており、2つの車輪11が前輪11Aとして前フレーム1Aの左右両側に、残り2つの車輪11が後輪11Bとして後フレーム1Bの左右両側に、それぞれ設けられている。なお、図1では、左右一対の前輪11Aおよび後輪11Bのうち、左側の前輪11Aおよび後輪11Bのみを示している。
【0015】
前フレーム1Aの前部には、荷役作業に用いる油圧駆動式の荷役作業装置2が取り付けられている。荷役作業装置2は、前フレーム1Aに基端部が取り付けられたリフトアーム21と、ロッドが伸縮することによりリフトアーム21を駆動する2つのリフトアームシリンダ(不図示)と、リフトアーム21の先端部に取り付けられたバケット22と、ロッド220Aが伸縮することによりバケット22を駆動するバケットシリンダ22Aと、リフトアーム21に回動可能に連結されてバケット22とバケットシリンダ22Aとのリンク機構を構成するベルクランク23と、を有している。
【0016】
リフトアーム21は、油圧ポンプから吐出された作動油が2つのリフトアームシリンダのそれぞれに供給されて、各ロッドが伸びることにより前フレーム1Aに対して上方向に回動し、各ロッドが縮むことにより前フレーム1Aに対して下方向に回動する。
【0017】
バケット22は、土砂などを掬って放土したり、地面を均したりするための作業具であり、油圧ポンプから吐出された作動油がバケットシリンダ22Aに供給されて、ロッド220Aが伸びることによりリフトアーム21に対して上方向に回動(チルト)し、ロッド220Aが縮むことによりリフトアーム21に対して下方向に回動(ダンプ)する。なお、バケット22は、例えばブレード等の各種アタッチメントに交換することが可能であり、ホイールローダ1は、バケット22を用いた掘削作業や押土作業の他に、除雪作業などの作業を行うこともできる。
【0018】
後フレーム1Bには、オペレータが搭乗する運転室12と、運転室12の後方に配置されたエンジン室13と、エンジン室13のさらに後方に配置された冷却室14と、後フレーム1Bの後端部において車体が傾倒しないように荷役作業装置2とのバランスを保つカウンタウェイト15と、が設けられている。
【0019】
エンジン室13および冷却室14はいずれも、後フレーム1Bを上方からカバー101で覆うことによって内部に形成された空間である。カバー101は、図2に示すように、上カバー部101Aと、左カバー部101Bと、右カバー部101Cと、を含み、後端は開放されてリアグリル16が取り付けられている。
【0020】
図3に示すように、エンジン室13と冷却室14との間には、両室を隔離するための隔壁102が左カバー部101B側から右カバー部101C側に亘って設けられており、エンジン室13で発生した熱が冷却室14に伝達されにくい構造となっている。
【0021】
エンジン室13には、エンジン31と、エンジン31から排出される排出ガスを処理する排ガス処理装置32と、排ガス処理装置32の内部に還元剤を噴射する還元剤噴射装置33と、が収容されている。なお、図3に示す模式図では、排ガス処理装置32と還元剤噴射装置33とが別々の装置としてエンジン室13内に設けられているが、これに限らず、排ガス処理装置32内に還元剤噴射装置33が組み込まれていてもよい。
【0022】
還元剤は、例えば、水にアンモニアを溶解させた尿素水が用いられ、還元剤タンク70に貯留されている。還元剤タンク70は、冷却室14の左側方において後フレーム1Bにより冷却室14と隔離されて設けられたタンク収容室17に収容されている。なお、本実施形態では、タンク収容室17は、冷却室14の左側方に設けられているが、これに限らず、ホイールローダ1の仕様によっては冷却室14の右側方に設けられていてもよい。
【0023】
図3に示すように、還元剤噴射装置33と還元剤タンク70とは、一対の還元剤給排用配管701A,701Bによって接続されており、これら一対の還元剤給排用配管701A,701Bを介して、還元剤噴射装置33と還元剤タンク70との間で還元剤が給排される。なお、図3では、一対の還元剤給排用配管701A,701Bを1本の線で模式的に示している。
【0024】
具体的には、還元剤タンク70に貯留された還元剤は、一方の還元剤給排用配管701Aを通って還元剤噴射装置33に供給され、還元剤噴射装置33から排出された還元剤は、他方の還元剤給排用配管701Bを通って還元剤タンク70に戻される。なお、図3では図示を省略しているが、一方の還元剤給排用配管701A上には還元剤ポンプが設けられており、還元剤タンク70に貯留された還元剤は、還元剤ポンプによって吸い上げられて還元剤噴射装置33に供給される。
【0025】
本実施形態では、一対の還元剤給排用配管701A,701Bは、タンク収容室17の右側部17Rに形成された第1挿通孔171、および後フレーム1Bの左側面部(冷却室14の左下側を覆う部分)に形成されたフレーム孔103を介して冷却室14内に導かれ、さらに、還元剤ポンプを経由して隔壁102に形成された壁孔102Aを介してエンジン室13内に導かれている。
【0026】
タンク収容室17は、第1挿通孔171の位置がフレーム孔103の位置に合うように後フレーム1Bに取り付けられており、これら第1挿通孔171およびフレーム孔103によって冷却室14の内部とタンク収容室17の内部とがつながっている。
【0027】
また、エンジン31と還元剤タンク70とは、一対の冷却水給排用配管702A,702Bによって接続されており、これら一対の冷却水給排用配管702A,702Bを介して、エンジン31と還元剤タンク70との間でエンジン冷却水が給排される。還元剤である尿素水は、高温になると品質が劣化しやすい一方で、例えば寒冷地などの低温環境下では凍結しやすい。そのため、エンジン31を冷却した後の比較的高温のエンジン冷却水を還元剤タンク70に導いて尿素水に熱を供給することで、尿素水の凍結を防止している。なお、図3では、一対の冷却水給排用配管702A,702Bを1本の線で模式的に示している。
【0028】
冷却室14には、エンジン31の冷却水を冷却するラジエータ41と、外気を吸い込んで冷却風を生成してラジエータ41を冷却する冷却ファン42と、が収容されている。なお、図3では、冷却室14には、熱交換器としてラジエータ41のみが図示されているが、これに限らず、ラジエータ41以外の熱交換器が収容されている場合もある。すなわち、冷却室14には、ラジエータ41を含む少なくとも1つの熱交換器が収容される。
【0029】
冷却ファン42は、作動することによって冷却室14内にホイールローダ1の周辺の大気圧よりも低い圧力(吸込み圧)を発生させ、後フレーム1Bやカバー101、タンク収容室17に形成された孔やスリットなどから外気を冷却室14内に取り込んで冷却風を生成する。
【0030】
このとき、タンク収容室17内にも外気が取り込まれるため、還元剤タンク70は、取り込まれた外気と直接に熱交換が行われ、貯留された尿素水が高温になり過ぎないように効率的に冷却される。他方で、ホイールローダ1が用いられる作業現場は塵埃が多いため、冷却ファン42の作動により、外気と一緒に塵埃も車体の内部に取り込まれる。
【0031】
<タンク収容室17の内部構成>
次に、タンク収容室17の内部の構成について、図4~6を参照して説明する。
【0032】
図4は、開閉カバー170が開けられた状態のタンク収容室17を示す斜視図である。図5は、開閉カバー170が開けられた状態のタンク収容室17の内部を示す図である。図6は、開閉カバー170が閉じられた状態のタンク収容室17の内部を示す図である。
【0033】
タンク収容室17は、天井となる上部17Uと、底となる下部17Dと、後フレーム1Bに対向する右側部17Rと、右側部17Rに対向する左側部17Lと、カウンタウェイト15に対向する後部17Bと、後部17Bに対向する前部17Fと、によって囲まれた箱体である。なお、本実施形態では、上部17Uは、前側が下方に向かって傾斜する傾斜部17Sを含んでいる。
【0034】
タンク収容室17内に載置された還元剤タンク70の天井部70Aには、還元剤を給水するための給水口71が設けられている。なお、給水口71は、必ずしも還元剤タンク70の天井部70Aに設けられている必要はない。図4に示すように、タンク収容室17には、傾斜部17Sを含む上部17Uの前側部分から左側部17Lの上側部分に亘って切り欠かれた切り欠き部17Nが形成されている。これにより、作業員は、この切り欠き部17Nから給水口71にアクセスしたり、還元剤タンク70内の尿素水の貯留量を確認したりすることができる。
【0035】
切り欠き部17Nには、切り欠き部17Nを塞いで給水口71を覆う開閉カバー170が取り付けられている。開閉カバー170は、前部17Fにヒンジ170Aを介して回動可能に固定されており、ヒンジ170Aを中心として前方に回動させることにより開き、ヒンジ170Aを中心として後方に回動させることにより閉じる。さらに、開閉カバー170は、ストッパ部材170Bによってヒンジ170Aを中心とした前方への回動が規制されている。なお、開閉カバー170は、少なくともタンク収容室17に回動可能に取り付けられていればよく、取付場所については特に制限はない。
【0036】
タンク収容室17内には、給水口71の外周を囲む筒形状(本実施形態では、四隅が丸みを帯びた角筒形状)の囲い部材8が設けられている。この囲い部材8は、図4および図5に示すように、上端が開閉カバー170に固定されて一体となっており、下端には密着部材としての環状のパッキン80が備えられている。図6に示すように、囲い部材8は、開閉カバー170が押圧された状態で閉められたとき、パッキン80が還元剤タンク70の天井部70Aに密着する。
【0037】
したがって、開閉カバー170が押圧された状態で閉められたとき、囲い部材8は、上端が開閉カバー170のうちタンク収容室17の上部17Uに位置する部分に、下端が還元剤タンク70の天井部70Aに、それぞれ接触する。これにより、給水口71は密閉された空間内に配置された状態となるため、冷却ファン42の作動に伴ってタンク収容室17内に外気と共に塵埃が取り込まれてしまった場合であっても、給水口71からの還元剤タンク70内への塵埃の侵入を抑制することができる。
【0038】
なお、囲い部材8は、上端が開閉カバー170に対して固定されていることにより、囲い部材8の上端と開閉カバー170との間に隙間が形成されないため、還元剤タンク70内への塵埃の侵入をより抑制している。また、還元剤タンク70に尿素水を給水する際において、作業員が開閉カバー170を開けると、開閉カバー170と一緒に囲い部材8も移動することから、給水口71にアクセスしやすい。
【0039】
図4に示すように、タンク収容室17の上部17Uには、第1挿通孔171(図5および図6参照)とは異なる挿通孔であって、一対の冷却水給排用配管702A,702Bが挿通される第2挿通孔172が形成されている。この第2挿通孔172は、タンク収容室17の上部17Uに形成された挿通孔と、冷却室14の左側方を覆う左カバー部101Bと後フレーム1Bとの間に形成された隙間と、によって形成されている。したがって、一対の冷却水給排用配管702A,702Bはそれぞれ、タンク収容室17から上方に向かって立ち上がった後に冷却室14内に導かれる。
【0040】
なお、第1挿通孔171の位置および第2挿通孔172の位置については、これに限らず、一対の還元剤給排用配管701A,701Bや一対の冷却水給排用配管702A,702Bの配索がしやすい位置であれば特に制限はない。
【0041】
このように、タンク収容室17において、一対の還元剤給排用配管701A,701Bが挿通される第1挿通孔711と、一対の冷却水給排用配管702A,702Bが挿通される第2挿通孔712と、を異なる位置に形成することにより、一対の還元剤給排用配管701A,701Bおよび一対の冷却水給排用配管702A,702Bの全てが1つの挿通孔に挿通されるよりも個々の挿通孔のサイズを小さくすることができ、タンク収容室17内への塵埃の侵入を減らし、かつ分散させることが可能となる。
【0042】
<変形例>
次に、本発明の変形例に係るホイールローダ1について、図7~9を参照して説明する。なお、図7~9において、実施形態に係るホイールローダ1について説明したものと共通する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0043】
図7は、変形例に係るホイールローダ1において、開閉カバー170が開けられた状態のタンク収容室17Aを示す斜視図である。図8は、変形例に係るホイールローダ1において、開閉カバー170が開けられた状態のタンク収容室17Aの内部を示す図である。図9は、変形例に係るホイールローダ1において、開閉カバー170が閉じられた状態のタンク収容室17Aの内部を示す図である。
【0044】
本変形例では、囲い部材8Aの構成が、実施形態における囲い部材8の構成と異なる。具体的には、図7および図8に示すように、囲い部材8Aは、下端が還元剤タンク70の天井部70Aに固定されて一体となっており、上端に環状のパッキン80Aが取り付けられている。
【0045】
図9に示すように、開閉カバー170が閉じられた状態では、上端が開閉カバー170のうちタンク収容室17の上部17Uに位置する部分に密着するため、実施形態と同様に、給水口71は密閉された空間内に配置された状態となり、還元剤タンク70内への塵埃の侵入を抑制することが可能である。
【0046】
本変形例では、囲い部材8Aは還元剤タンク70側に固定されて一体となっているため、還元剤タンク70に尿素水を給水する際において、作業員が開閉カバー170を開けると、囲い部材8Aで外周を囲われた状態の給水口71が現れる。この状態で作業員は給水口71から尿素水の給水を行うことになることから、囲い部材8Aは、作業員が給水口71にアクセス可能な程度の大きさに設定されており、実施形態における囲い部材8よりも大きく形成されている。
【0047】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明した。なお、本発明は上記した実施形態や変形例に限定されるものではなく、様々な他の変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態及び変形例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、本実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、本実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。またさらに、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0048】
例えば、上記実施形態では囲い部材8の下端にパッキン80が、上記変形例では囲い部材8Aの上端にパッキン80Aが、それぞれ取り付けられていたが、必ずしも囲い部材8,8Aにパッキン80,80Aが取り付けられている必要はなく、囲い部材8,8Aは、少なくとも上端がタンク収容室17,17Aの上部17Uに、下端が還元剤タンク70の天井部70Aに、それぞれ接触していればよい。
【0049】
また、上記実施形態および変形例では、タンク収容室17,17Aは、上部17Uに対して上下方向に回動可能に取り付けられ、給水口71を覆う開閉カバー170を有していたが、開閉カバー170の構成については、給水口71にアクセス可能であれば特に制限はない。
【0050】
また、上記実施形態および変形例では、タンク収容室17,17Aには、一対の還元剤給排用配管701A,701Bが挿通される第1挿通孔171、および一対の冷却水給排用配管702A,702Bが挿通される第2挿通孔172の2つの挿通孔が形成されていたが、これに限らず、一対の還元剤給排用配管701A,701Bおよび一対の冷却水給排用配管702A,702Bを一括して挿通可能な1つの挿通孔が形成されていてもよい。
【0051】
また、上記実施形態および変形例では、作業車両の一態様としてホイールローダを例に挙げて説明したが、これに限らず、タンク収容室17,17Aが冷却室14の側方に設けられた作業車両であれば、例えば油圧ショベルなどの他の作業車両であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1:ホイールローダ(作業車両)
1B:後フレーム(車体フレーム)
8:囲い部材
13:エンジン室
14:冷却室
17:タンク収容室
31:エンジン
32:排ガス処理装置
33:還元剤噴射装置
41:ラジエータ(熱交換器)
42:冷却ファン
70:還元剤タンク
71:給水口
80,80A:パッキン(密着部材)
102:隔壁
170:開閉カバー
171:第1挿通孔
172:第2挿通孔
701A,701B:一対の還元剤給排用配管
702A,702B:一対の冷却水給排用配管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9