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特許7167080ロール金型及びその製造方法、並びに転写シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】ロール金型及びその製造方法、並びに転写シート
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/04 20060101AFI20221031BHJP
   B29C 33/38 20060101ALI20221031BHJP
   B29C 33/42 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
B29C59/04 C
B29C33/38
B29C33/42
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020070044
(22)【出願日】2020-04-08
(65)【公開番号】P2021167067
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-06-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【弁理士】
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】土井 克浩
(72)【発明者】
【氏名】野田 和彦
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-151704(JP,A)
【文献】特開2014-044912(JP,A)
【文献】特開2001-301029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 59/00-59/18
B29C 33/00-33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール軸方向又はロール軸方向に対して傾斜した方向に並んで延びるn本(但し、nは800以上である)の線状溝を外周面に備えるロール金型であって、
前記n本の線状溝は、異なる線状溝の間において溝深さが変化し、当該溝深さの漸減及び漸増が繰り返されて並んでいるとともに、溝深さが減少から増加に移行する箇所がm箇所以内(但し、mは2~8から選択される)である、ことを特徴とする、ロール金型。
【請求項2】
前記n本の線状溝のうち最も深い線状溝の溝深さをDmaxとし、最も浅い線状溝の溝深さをDminとしたときに、
少なくとも1組の隣接する2本の線状溝同士の溝深さの差が、(Dmax-Dmin)÷n×2m以下である、請求項1に記載のロール金型。
【請求項3】
全ての隣接する2本の線状溝同士の溝深さの差が、(Dmax-Dmin)÷n×2m以下である、請求項2に記載のロール金型。
【請求項4】
nは800以上100000以下である、請求項1~3のいずれかに記載のロール金型。
【請求項5】
ロール基材の外周面に対し、ロール軸方向又はロール軸方向に対して傾斜した方向に線状溝を形成する工程をn回(但し、nは800以上である)含む、請求項1~4のいずれかに記載のロール金型の製造方法であって、
1回目~m回目(但し、mは2~8から選択される)の切削工程では、ロール基材の外周面における任意の位置を0度として、0度の位置と、該0度から(360/m)度の倍数だけずれた各位置とに、1本目~m本目の計m本の線状溝をそれぞれ形成し、
(m+1)回目~(2m)回目の切削工程では、前記1本目~m本目の線状溝の位置から、(360/n)度だけ所定方向にずれた各位置に、(m+1)本目~(2m)本目の計m本の線状溝をそれぞれ形成し、
(2m+1)回目~(3m)回目の切削工程では、前記1本目~m本目の線状溝の位置から、(360/n)度だけ前記所定方向とは反対方向にずれた各位置に、(2m+1)本目~(3m)本目の計m本の線状溝をそれぞれ形成し、
(im+1)回目~{(i+1)m}回目(但し、iは3以上の奇数である)の切削工程では、{(i-2)m+1}本目~{(i-1)m}本目の線状溝の位置から、(360/n)度だけ前記所定方向にずれた各位置に、(im+1)本目~{(i+1)m}本目の計m本の線状溝をそれぞれ形成し、
(jm+1)回目~{(j+1)m}回目(但し、jは4以上の偶数である)の切削工程では、{(j-2)m+1}本目~{(j-1)m}本目の線状溝の位置から、(360/n)度だけ前記所定方向とは反対方向にずれた各位置に、(jm+1)本目~{(j+1)m}本目の計m本の線状溝をそれぞれ形成し、
n回目の切削工程を最終の切削工程とする、
ことを特徴とする、ロール金型の製造方法。
【請求項6】
nは800以上100000以下である、請求項5に記載のロール金型の製造方法。
【請求項7】
並んで延びる複数本の線状凸部を表面に備える転写シートであって、
前記複数本の線状凸部は、異なる線状凸部の間において凸部高さが変化し、当該凸部高さの漸減及び漸増が繰り返されて並んでおり
前記複数本の線状凸部のうち最も高い線状凸部の凸部高さをH max とし、最も低い線状凸部の凸部高さをH min としたときに、
少なくとも1組の隣接する2本の線状凸部同士の凸部高さの差が、(H max -H min )÷800×2×8以下である、ことを特徴とする、転写シート。
【請求項8】
全ての隣接する2本の線状凸部同士の凸部高さの差が、(Hmax-Hmin)÷800×2×8以下である、請求項に記載の転写シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール金型及びその製造方法、並びに転写シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、レンズフィルムや拡散フィルム等のディスプレイ用の光学フィルムは、所望の機能をもたせるために、表面に微細凹凸構造を有している。このような光学フィルムの製造方法として、円柱状又は円筒状のロール基材の外周面を加工して微細凹凸構造を形成し、かくして得られたロール金型を樹脂シートや樹脂フィルムに押し当て、ロール基材上の微細凹凸構造を転写するインプリント技術が知られている。また、上記インプリント技術として、具体的には、溶融押出成形法、UV転写法などが知られている。
【0003】
ロール金型の製造方法としては、レーザー光によるリソグラフィー及びドライエッチング等によって凹凸構造をロール基材の外周面に形成する技術が知られている。しかし、この技術では、高価なレーザー装置、或いは高精度なマスクが必要となるので、製造コストが大きくなる。更に、製造設備が大掛かりになるので、初期コストに加え、メンテナンスに要するコストの負担も大きい。
【0004】
そこで、代替のロール金型の製造方法として、切削工具を用いた切削加工により、凹凸構造をロール基材の外周面に形成する技術が挙げられる。通常、この技術では、先端にチップ(切削部)が形成された切削工具を用いるとともに、ロール基材の表面に施されたニッケルリン(Ni-P)めっき又は銅(Cu)めっき等からなるめっき層を切削することで、凹凸構造を形成することができる。また、必要に応じてロール基材を回転させつつ、切削工具をロール基材に対して相対移動させることで、ロール基材の外周面を切削することができ、その際、微細凹部形状に囲まれた部分が、微細凸部形状となる。この切削加工の技術では、超微細な凹凸構造を形成することは難しいが、比較的低コストでロール金型を作製可能であるというメリットがある。
【0005】
ここで、ロール基材表面の切削加工では、線状に切削して溝を形成することが一般的に行われ、これを繰り返すことで、一定方向に並ぶ複数の線状溝を形成することができる。また、線状溝を形成する方向も多岐に亘り、例えば、ロール基材の円周方向(ラジアル方向)、ロール基材の軸方向(スラスト方向)、ロール基材の軸方向に対して所定程度に傾斜した方向(斜めスラスト方向)が挙げられる。
【0006】
ロール基材表面に対してこれらの線状溝を高精度に加工する方法は、これまでいくつか報告されている。例えば、特許文献1は、ロール周方向の溝のみならず、軸方向の溝も高精度に加工することができるロール旋盤を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-301647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、ロール基材のスラスト方向又は斜めスラスト方向に複数の線状溝を形成する切削加工の手順としては、一般的には、1本の線状溝を形成した後、それに隣接する箇所に線状溝を形成し、かかる工程を適宜繰り返し、ロールの円周を一巡するようにして複数の線状溝を順次形成する。
【0009】
しかし、本発明者らが検討したところ、上述したような手順で作製されるロール金型においては、最初に形成した線状溝と、最後に形成した線状溝とが隣接することとなるところ、これらの線状溝の間で、光学的段差(例えば、反射特性の差)が生じることが確認された。また、かかるロール金型を用いて転写した樹脂シートや樹脂フィルムにおいても、上述した線状溝にそれぞれ由来する線状凸部の間で、光学特性の境目がはっきりと視認された。このような、転写シートや転写フィルムにおいて光学特性の境目が生じる問題は、「色違い」又は「繋ぎ目」とも呼ばれ、製品の品質にも直結することから、回避するための技術が望まれる。
【0010】
そこで、本発明は、従来における上記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、複数の線状溝が並んで外周面に形成されたロール金型において、隣接する線状溝の間の光学的段差が十分に小さいロール金型を提供することを目的とする。
また、本発明は、上述したロール金型を容易に作製することが可能な、ロール金型の製造方法を提供することを目的とする。
更に、本発明は、上述したロール金型を用いて作製することが可能な、光学特性の境目が全面に亘って視認され難い転写シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討を重ねたところ、線状溝の形成回数が増すにつれ、切削工具(バイト)が摩耗し、これに起因して、最初に形成した線状溝と最後に形成した線状溝とにおいて形状に差が生じること、及び、上述した光学的段差がかかる形状の差に起因することを突き止めた。
【0012】
そして、本発明者らは更に検討を重ね、ロール基材のスラスト方向又は斜めスラスト方向に複数の線状溝を形成するに当たり、ロール円周を一巡するようにして順次形成するのではなく、ロール円周上における各線状溝の形成順序を適正化することで、容易に、隣接する線状溝の間の光学的段差が低減されたロール金型が得られることを見出し、本発明をするに至った。
【0013】
前記目的を達成するための手段としては以下の通りである。
【0014】
<1>ロール軸方向又はロール軸方向に対して傾斜した方向に並んで延びるn本(但し、nは800以上である)の線状溝を外周面に備えるロール金型であって、
前記n本の線状溝は、溝深さの漸減及び漸増が繰り返されて並んでいるとともに、溝深さが減少から増加に移行する箇所がm箇所以内(但し、mは2~8から選択される)である、ことを特徴とする、ロール金型。
【0015】
<2>前記n本の線状溝のうち最も深い線状溝の溝深さをDmaxとし、最も浅い線状溝の溝深さをDminとしたときに、
少なくとも1組の隣接する2本の線状溝同士の溝深さの差が、(Dmax-Dmin)÷n×2m以下である、<1>に記載のロール金型。
【0016】
<3>全ての隣接する2本の線状溝同士の溝深さの差が、(Dmax-Dmin)÷n×2m以下である、<2>に記載のロール金型。
【0017】
<4>nは800以上100000以下である、<1>~<3>のいずれかに記載のロール金型。
【0018】
<5>ロール基材の外周面に対し、ロール軸方向又はロール軸方向に対して傾斜した方向に線状溝を形成する工程をn回(但し、nは800以上である)含む、<1>~<4>のいずれかに記載のロール金型の製造方法であって、
1回目~m回目(但し、mは2~8から選択される)の切削工程では、ロール基材の外周面における任意の位置を0度として、0度の位置と、該0度から(360/m)度の倍数だけずれた各位置とに、1本目~m本目の計m本の線状溝をそれぞれ形成し、
(m+1)回目~(2m)回目の切削工程では、前記1本目~m本目の線状溝の位置から、(360/n)度だけ所定方向にずれた各位置に、(m+1)本目~(2m)本目の計m本の線状溝をそれぞれ形成し、
(2m+1)回目~(3m)回目の切削工程では、前記1本目~m本目の線状溝の位置から、(360/n)度だけ前記所定方向とは反対方向にずれた各位置に、(2m+1)本目~(3m)本目の計m本の線状溝をそれぞれ形成し、
(im+1)回目~{(i+1)m}回目(但し、iは3以上の奇数である)の切削工程では、{(i-2)m+1}本目~{(i-1)m}本目の線状溝の位置から、(360/n)度だけ前記所定方向にずれた各位置に、(im+1)本目~{(i+1)m}本目の計m本の線状溝をそれぞれ形成し、
(jm+1)回目~{(j+1)m}回目(但し、jは4以上の偶数である)の切削工程では、{(j-2)m+1}本目~{(j-1)m}本目の線状溝の位置から、(360/n)度だけ前記所定方向とは反対方向にずれた各位置に、(jm+1)本目~{(j+1)m}本目の計m本の線状溝をそれぞれ形成し、
n回目の切削工程を最終の切削工程とする、
ことを特徴とする、ロール金型の製造方法。
【0019】
<6>nは800以上100000以下である、<5>に記載のロール金型の製造方法。
【0020】
<7>並んで延びる複数本の線状凸部を表面に備える転写シートであって、
前記複数本の線状凸部は、凸部高さの漸減及び漸増が繰り返されて並んでいる、ことを特徴とする、転写シート。
【0021】
<8>前記複数本の線状凸部のうち最も高い線状凸部の凸部高さをHmaxとし、最も低い線状凸部の凸部高さをHminとしたときに、
少なくとも1組の隣接する2本の線状凸部同士の凸部高さの差が、(Hmax-Hmin)÷800×2×8以下である、<7>に記載の転写シート。
【0022】
<9>全ての隣接する2本の線状凸部同士の凸部高さの差が、(Hmax-Hmin)÷800×2×8以下である、<8>に記載の転写シート。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、複数の線状溝が並んで外周面に形成されたロール金型において、隣接する線状溝の間の光学的段差が十分に小さいロール金型を提供することができる。
また、本発明によれば、上述したロール金型を容易に作製することが可能な、ロール金型の製造方法を提供することができる。
更に、本発明によれば、上述したロール金型を用いて作製することが可能な、光学特性の境目が全面に亘って視認され難い転写シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】溝形成の通算回数と切削工具の摩耗量との関係を模式的に示す図である。
図2】複数の線状溝を外周面に備える従来型の一例のロール金型における、各位置における線状溝の形成順序を示す図である。
図3A】本発明の第1の実施形態のロール金型の製造方法における、各位置における線状溝の形成順序を示す図である。
図3B】本発明の第1の実施形態のロール金型の製造方法における、線状溝の形成位置と形成順序との関係をプロットした図である。
図3C】本発明の第1の実施形態のロール金型の製造方法における、線状溝の形成位置と溝深さの相対値との関係を模式的にプロットした図である。
図4A】本発明の第2の実施形態のロール金型の製造方法における、各位置における線状溝の形成順序を示す図である。
図4B】本発明の第2の実施形態のロール金型の製造方法における、線状溝の形成位置と形成順序との関係をプロットした図である。
図4C】本発明の第2の実施形態のロール金型の製造方法における、線状溝の形成位置と溝深さの相対値との関係を模式的にプロットした図である。
図5】本発明のロール金型の製造方法に用いることができる、一実施形態の微細加工装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を、実施形態に基づき詳細に説明する。
【0026】
(ロール金型の製造方法)
本発明の一実施形態のロール金型の製造方法(以下、「本実施形態の製造方法」と称することがある。)は、
ロール基材の外周面に対し、ロール軸方向(スラスト方向)又はロール軸方向に対して傾斜した方向(斜めスラスト方向)に線状溝を形成する工程をn回(但し、nは800以上である)含み、
1回目~m回目(但し、mは2~8から選択される)の切削工程では、ロール基材の外周面における任意の位置を0度(=360度)として、0度の位置と、該0度から(360/m)度の倍数だけずれた各位置とに、1本目~m本目の計m本の線状溝をそれぞれ形成し、
(m+1)回目~(2m)回目の切削工程では、前記1本目~m本目の線状溝の位置から、(360/n)度だけ所定方向にずれた各位置に、(m+1)本目~(2m)本目の計m本の線状溝をそれぞれ形成し、
(2m+1)回目~(3m)回目の切削工程では、前記1本目~m本目の線状溝の位置から、(360/n)度だけ前記所定方向とは反対方向にずれた各位置に、(2m+1)本目~(3m)本目の計m本の線状溝をそれぞれ形成し、
(im+1)回目~{(i+1)m}回目(但し、iは3以上の奇数である)の切削工程では、{(i-2)m+1}本目~{(i-1)m}本目の線状溝の位置から、(360/n)度だけ前記所定方向にずれた各位置に、(im+1)本目~{(i+1)m}本目の計m本の線状溝をそれぞれ形成し、
(jm+1)回目~{(j+1)m}回目(但し、jは4以上の偶数である)の切削工程では、{(j-2)m+1}本目~{(j-1)m}本目の線状溝の位置から、(360/n)度だけ前記所定方向とは反対方向にずれた各位置に、(jm+1)本目~{(j+1)m}本目の計m本の線状溝をそれぞれ形成し、
n回目の切削工程を最終の切削工程とする、ことを特徴とする。
かかる本実施形態の製造方法によれば、隣接する線状溝の間の光学的段差が十分に小さいロール金型、特には後述するロール金型を、容易に製造することができる。
【0027】
本発明は、一つの切削工具(バイト)を用いて同じ形状の溝の形成を繰り返した場合に、当該切削工具の摩耗量が溝の形成回数に概ね比例する、という技術的思想に基づくものである。即ち、同じ形状の線状溝を複数形成する場合、切削工具の摩耗量は、図1に示すように、線状溝の形成の通算回数に対して概ね比例的に増加する傾向にあるものと考えられる。
【0028】
例えば、説明の便宜の観点から、ロール基材の外周面に48本の線状溝(即ち、n=48)を形成することを想定する。従来のように、ロール円周を一巡するようにして複数の線状溝を順次形成する場合、各位置における線状溝の形成順序は、図2に示す通りとなる。この場合に得られるロール金型100においては、図2に示すように、1回目に形成した線状溝110と48回目に形成した線状溝110とが隣接することとなる。これら2本の線状溝110は、上述した技術的思想に基づけば、使用する切削工具の摩耗量が相違する(図1を参照した場合には、2μmだけ相違する)。その結果、そのような切削工具を用いて形成したこれら2本の線状溝110の溝深さも相当分だけ相違することとなり、かかる相違が、光学的段差をもたらしていた。
【0029】
一方、本発明においては、上述した比例関係に関する技術的思想を踏まえ、光学的段差が効果的に低減されるように、ロール基材の外周面への各線状溝の形成順序を適正化した。以下、本実施形態の製造方法を具体的に説明する。
【0030】
なお、本実施形態の製造方法は、線状溝の形成本数nを800以上とするものであるが、以下の説明では、説明の便宜の観点から、線状溝の形成本数nを48とする。但し、以下の説明が、800≦nの場合にも適用されることは、本明細書全体を通して当業者にとって明らかである。
【0031】
本実施形態の製造方法において、mは、「起点の数」とも称されるものであり、2~8から選択される整数である。
以下、m=2の場合を例に挙げて、図3A図3B及び図3Cを用いて説明する。なお、以下の説明では、説明の便宜の観点から、m回分の切削工程ごとに、「1ターン」と総称することとする。
【0032】
1回目~2回目の切削工程(1ターン目)では、ロール基材の外周面における任意の位置を0度(=360度)として、0度の位置と、該0度から180(=360/2)度だけずれた位置、即ち、円の中心を基準として0度から対向する位置とに、1本目~2本目の計2本の線状溝110を形成する。
【0033】
次いで、3回目~4回目の切削工程(2ターン目)では、上記1本目~2本目の線状溝110の位置から、7.5(=360/48)度だけ所定方向(例えば、図3Aにおいて断面を示す円の時計回りの方向)にずれた各位置、即ち、7.5度の位置及び187.5度の位置に、3本目~4本目の計2本の線状溝110を形成する。
【0034】
次いで、5回目~6回目の切削工程(3ターン目)では、上記1本目~2本目の線状溝110の位置から、7.5(=360/48)度だけ上記所定方向とは反対方向(例えば、図3Aにおいて断面を示す円の反時計回りの方向)にずれた各位置、即ち、352.5度及び172.5度の位置に、5本目~6本目の計2本の線状溝110を形成する。
【0035】
次いで、7回目~8回目の切削工程(4ターン目)では、上記3本目~4本目の線状溝110の位置から、7.5(=360/48)度だけ所定方向にずれた各位置、即ち、15度及び195度の位置に、7本目~8本目の計2本の線状溝110を形成する。
【0036】
次いで、9回目~10回目の切削工程(5ターン目)では、上記5本目~6本目の線状溝110の位置から、7.5(=360/48)度だけ上記所定方向とは反対方向にずれた各位置、即ち、345度及び165度の位置に、9本目~10本目の計2本の線状溝110を形成する。
【0037】
そして、以降のターンでは、それよりも2ターン前と同様の要領で、切削工程を繰り返す。より具体的に、11回目~12回目の切削工程(6ターン目)、15回目~16回目の切削工程(8ターン目)、19回目~20回目の切削工程(10ターン目)・・・では、それぞれ、2ターン前に形成した線状溝110の位置から、7.5(=360/48)度だけ所定方向にずれた各位置に、計2本の線状溝110を形成する。また、13回目~14回目の切削工程(7ターン目)、17回目~18回目の切削工程(9ターン目)、21回目~22回目の切削工程(11ターン目)・・・では、それぞれ、2ターン前に形成した線状溝110の位置から、7.5(=360/48)度だけ所定方向とは反対方向にずれた各位置に、計2本の線状溝110を形成する。
【0038】
そして、48回目の切削工程を行った後、切削を終了する。
【0039】
このようにして得られるロール金型100について、図3Aに、各位置における線状溝110の形成順序を示し、図3Bに、線状溝110の形成位置と形成順序との関係をプロットした図を示す。図3A及び図3Bに示すように、上記のロール金型100においては、隣接する2本の線状溝110同士の形成順序の差を、6(=3m)回未満、特には4(=2m)回以下に抑えることができる。また、溝の形成回数と切削工具の摩耗量とが比例関係にあるという上記技術的思想に基づいて、図3Cに、線状溝110の形成位置と溝深さの相対値との関係を模式的にプロットした図を示す。なお、図3Cでは、最も深い線状溝110の溝深さをDmaxとし、最も浅い線状溝110の溝深さをDminとしている。図3Cに示すように、上記のロール金型100においては、48(=n)本の線状溝が、溝深さの漸減及び漸増が繰り返されて並んでおり、また、溝深さが減少から増加に移行する箇所の数(増加から減少に移行する箇所の数に同じ。)が、2(=m)箇所となっている。このような特徴により、得られるロール金型100においては、隣接する線状溝の間の光学的段差が十分に低減されている。
【0040】
次に、m=4の場合を例に挙げて、図4A図4B及び図4Cを用いて説明する。
【0041】
1回目~4回目の切削工程(1ターン目)では、ロール基材の外周面における任意の位置を0度(=360度)として、0度の位置と、該0度から90(=360/4)度の倍数だけずれた各位置、即ち、90度、180度及び270度だけずれた各位置とに、1本目~4本目の計4本の線状溝110を形成する。
【0042】
なお、特に限定はされないが、1回目~4回目の切削工程(1ターン目)では、例えば、1回目で0度の位置、2回目で180度の位置、3回目で90度の位置、4回目で270度の位置に、それぞれ線状溝110を形成してもよい。或いは、1回目で0度の位置、2回目で90度の位置、3回目で180度の位置、4回目で270度の位置に、それぞれ線状溝110を形成してもよい。
【0043】
次いで、5回目~8回目の切削工程(2ターン目)では、上記1本目~4本目の線状溝110の位置から、7.5(=360/48)度だけ所定方向(例えば、図4Aにおいて断面を示す円の時計回りの方向)にずれた各位置、即ち、7.5度、97.5度、187.5度及び277.5度の各位置に、5本目~8本目の計4本の線状溝110を形成する。
【0044】
次いで、9回目~12回目の切削工程(3ターン目)では、上記1本目~4本目の線状溝110の位置から、7.5(=360/48)度だけ上記所定方向とは反対方向(例えば、図4Aにおいて断面を示す円の反時計回りの方向)にずれた各位置、即ち、352.5度の位置、82.5度の位置、172.5度及び262.5度の位置に、9本目~12本目の計4本の線状溝110を形成する。
【0045】
次いで、13回目~16回目の切削工程(4ターン目)では、上記5本目~8本目の線状溝110の位置から、7.5(=360/48)度だけ所定方向にずれた各位置、即ち、15度の位置、105度、195度及び285度の位置に、13本目~16本目の計4本の線状溝110を形成する。
【0046】
次いで、17回目~20回目の切削工程(5ターン目)では、上記9本目~12本目の線状溝110の位置から、7.5(=360/48)度だけ上記所定方向とは反対方向にずれた各位置、即ち、345度、75度、165度及び255度の位置に、17本目~20本目の計4本の線状溝110を形成する。
【0047】
そして、以降のターンでは、それよりも2ターン前と同様の要領で、切削工程を繰り返す。より具体的に、21回目~24回目の切削工程(6ターン目)、29回目~32回目の切削工程(8ターン目)、37回目~40回目の切削工程(10ターン目)・・・では、それぞれ、2ターン前に形成した線状溝110の位置から、7.5(=360/48)度だけ所定方向にずれた各位置に、計4本の線状溝110を形成する。また、25回目~28回目の切削工程(7ターン目)、33回目~36回目の切削工程(9ターン目)、41回目~44回目の切削工程(11ターン目)・・・では、それぞれ、2ターン前に形成した線状溝110の位置から、7.5(=360/48)度だけ所定方向とは反対方向にずれた各位置に、計4本の線状溝110を形成する。
【0048】
そして、48回目の切削工程を行った後、切削を終了する。
【0049】
このようにして得られるロール金型100について、図4Aに、各位置における線状溝110の形成順序を示し、図4Bに、線状溝110の形成位置と形成順序との関係をプロットした図を示す。図4A及び図4Bに示すように、上記のロール金型100においては、隣接する2本の線状溝110同士の形成順序の差を、12(=3m)回未満、特には8(=2m)回以下に抑えることができる。また、溝の形成回数と切削工具の摩耗量とが比例関係にあるという上記技術的思想に基づいて、図4Cに、線状溝110の形成位置と溝深さの相対値との関係を模式的にプロットした図を示す。なお、図4Cでは、最も深い線状溝110の溝深さをDmaxとし、最も浅い線状溝110の溝深さをDminとしている。図4Cに示すように、上記のロール金型100においては、48(=n)本の線状溝が、溝深さの漸減及び漸増が繰り返されて並んでおり、また、溝深さが減少から増加に移行する箇所の数(増加から減少に移行する箇所の数に同じ。)が、4(=m)箇所となっている。このような特徴により、得られるロール金型100においては、隣接する線状溝の間の光学的段差が十分に低減されている。
【0050】
以下、更に検討すると、上述の通り、線状溝の形成回数及び切削工具の摩耗量が比例関係にあると想定した場合には、線状溝の形成回数及び溝深さも、相応して比例関係にあると考えることができる。この場合、n本の線状溝における、最も深い線状溝の溝深さDmax、及び最も浅い線状溝の溝深さDminを用いると、1回の溝形成を経るごとに、溝深さは、(Dmax-Dmin)÷nだけ浅くなると考えることができる。そして、上述の通り、隣接する2本の線状溝同士の形成順序の差が3m回未満、特には2m回以下であるということは、隣接する2本の線状溝同士の溝深さの差は、(Dmax-Dmin)÷n×3m未満、特には(Dmax-Dmin)÷n×2m以下と見積もることができる。
【0051】
本実施形態の製造方法においては、特に限定されないが、各ターン内で、m本の線状溝の形成順序を、それぞれの線状溝の基準となる1ターン目における1本目~m本目の線状溝の形成順序に合わせることが好ましい。例えば、m=2の場合では、各ターン内で、1本目に由来する線状溝(3本目、5本目、7本目等)を形成し、次いで、2本目に由来する線状溝(4本目、6本目、8本目等)を形成することが好ましい。また、例えば、m=4の場合では、各ターン内で、1本目に由来する線状溝(5本目、9本目、13本目等)を形成し、次いで、2本目に由来する線状溝(6本目、10本目、14本目等)を形成し、次いで、3本目に由来する線状溝(7本目、11本目、15本目等)を形成し、次いで、4本目に由来する線状溝(8本目、12本目、16本目)を形成することが好ましい。
【0052】
本実施形態の製造方法において、mは、2~8から選択される整数である。即ち、mは、2、3、4、5、6、7又は8である。特に、mは、ロール金型における光学的段差をより容易に且つ効果的に低減する観点から、2、3又は4であることが好ましく、2又は4であることがより好ましい。
【0053】
本実施形態の製造方法において、nは、800以上である。特に、nは、ロール金型における光学的段差をより効果的に低減する観点から、800以上100000以下であることが好ましい。
【0054】
また、特に限定されないが、mは、nを割り切ることができる整数であることが好ましい。換言すると、nは、mの倍数であることが好ましい。
【0055】
なお、図3A及び図4Aでは、線状溝110をロール軸方向(スラスト方向)に形成しているが、本発明はこれに限定されず、線状溝110をロール軸方向に対して所定の角度だけ傾斜した方向(斜めスラスト方向)に形成してもよい。
【0056】
また、本実施形態の製造方法においては、n本の線状溝を所定のピッチで等間隔に形成することが好ましいが、ある程度のピッチの誤差も許容されるものとする。
【0057】
そして、本実施形態の製造方法は、特に限定されないが、例えば、図5に示すような装置を用いて行うことができる。図5に示す微細加工装置1は、ロール基材100’の表面を切削することで、ロール基材100’の外周面に複数の線状溝110を形成する装置であり、これにより、ロール金型100を製造することができる。
【0058】
ロール基材100’は、円柱状又は円筒状である。ロール基材100’の材質としては、S45C、SUS304等の鉄系素材が一般的に用いられる。また、ロール基材100’は、当該ロール基材100’を冷却するための回路を内部に備えていてもよい。
【0059】
また、ロール基材100’は、表面にめっき層を備えていてもよい。この場合には、めっき層に線状溝110が形成される。めっき層の材料としては、例えば、ニッケルリン(Ni-P)、銅(Cu)等が挙げられる。
【0060】
微細加工装置1において、ロール基材100’は、中心軸を回転軸としてC軸方向に回転できるように回転装置10に取り付けられている。この回転装置10は、ロール基材100’の回転角度や回転速度を制御する。
【0061】
また、微細加工装置1は、切削装置20を備える。切削装置20は、加工ステージ30(工具移動部)と、加工ステージ30に設けられた工具設置部40と、工具設置部40に設けられた切削工具50とを備える。加工ステージ30は、回転装置10の回転軸(言い換えれば、ロール基材100’の軸方向)に平行であるZ軸方向に移動可能となっている。また、加工ステージ30は、ロール基材100’の径方向に平行であるX軸方向にも移動可能となっている。従って、切削工具50は、加工ステージ30によってZ軸方向及びX軸方向に移動できるので、適切に移動させることで、ロール基材100’の表面を切削することができる。
【0062】
切削工具50の材質としては、例えば、ダイヤモンド、超硬合金、ハイスピード工具鋼、立方晶窒化ホウ素(CBN)等が挙げられ、切削工具50は、これらの材料を研磨することで作製できる。また、レーザー照射、イオンミリング等によっても作製可能である。
【0063】
切削工具50の先端は、テーパ形状とすることができる。切削工具50の先端がロール基材100’に押し当てられて、ロール基材100’の表面を切削する。そして、ロール基材100’に形成される線状溝110の形状は、切削工具50の先端の形状に対応することとなる。
【0064】
ここで、例えば、線状溝110をロール基材100’の軸方向(スラスト方向)に形成する場合には、回転装置10によるロール基材100’の回転を停止させた状態で、切削工具50を当接させてZ軸方向に移動させる。また、例えば、線状溝110をロール基材100’の軸方向に対して傾斜した方向(斜めスラスト方向)に形成する場合には、回転装置10によりロール基材100’を回転させながら、切削工具50を当接させてZ軸方向に移動させる。
【0065】
そして、各回の切削工程では、本実施形態の製造方法に従い、ロール基材100’がそれぞれ所定の位置で切削工具に当接するように回転させてから、切削を開始する。
【0066】
なお、微細加工装置1は、上述した本実施形態の製造方法が行われるように、回転装置10の回転角度、回転速度、加工ステージ30(切削工具50)の移動パターン等を複合的に制御する制御部を適宜備えることができる。
【0067】
(ロール金型)
本発明の一実施形態のロール金型(以下、「本実施形態のロール金型」と称することがある。)は、ロール軸方向又はロール軸方向に対して傾斜した方向に並んで延びるn本(但し、nは800以上である)の線状溝を外周面に備えるロール金型であって、
前記n本の線状溝は、溝深さの漸減及び漸増が繰り返されて並んでいるとともに、溝深さが減少から増加に移行する箇所がm箇所以内(但し、mは2~8から選択される)である、ことを特徴とする。
本実施形態のロール金型は、上述した構成を有するため、隣接する線状溝の間の光学的段差が十分に小さい。そのため、本実施形態のロール金型を用いることで、光学特性の境目が全面に亘って視認され難い転写シートを得ることができる。また、本実施形態のロール金型は、一つの切削工具(バイト)を用いて作製できるというメリットも有する。
【0068】
本実施形態のロール金型は、例えば、上述した本実施形態の製造方法により製造することができる。但し、本実施形態のロール金型は、上述した本実施形態の製造方法以外の方法、特には、上述した本実施形態の製造方法において、形成順序を適宜入れ替えたとしても、製造することができる。例えば、上述した図3A(m=2、n=48)に示される線状溝の形成順序において、「8回目」及び「10回目」を入れ替えた場合であっても、本実施形態のロール金型を得ることができる。また、例えば、上述した図3A(m=2、n=48)に示される線状溝の形成順序において、「7回目」、「8回目」、「9回目」及び「10回目」をランダムに入れ替えた場合であっても、本実施形態のロール金型を得ることができる。
【0069】
本実施形態のロール金型においては、最も深い線状溝の溝深さをDmaxとし、最も浅い線状溝の溝深さをDminとしたときに、少なくとも1組の隣接する2本の線状溝同士の溝深さの差が、(Dmax-Dmin)÷n×2m以下であることが好ましい。この場合、ロール金型における光学的段差がより一層低減される。同様の観点から、本実施形態のロール金型においては、全ての隣接する2本の線状溝同士の溝深さの差が、(Dmax-Dmin)÷n×2m以下であることがより好ましい。
ここで、「(Dmax-Dmin)÷n×2m以下」との条件は、ロール金型の製造方法に関して既述した検討結果に基づくものである。
【0070】
本実施形態のロール金型は、n本の線状溝が所定のピッチで等間隔に並んでいることが好ましいが、ある程度のピッチの誤差も許容されるものとする。
【0071】
なお、線状溝の溝深さは、転写によって当該線状溝に対応する線状凸部を樹脂に形成し、かかる線状凸部の断面を、レーザー顕微鏡等の光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)等の電子顕微鏡などで観察することにより、測定することができる。また、本実施形態のロール金型における「線状溝の溝深さ」は、当該線状溝の一方の端部と、他方の端部と、これらの中間部とにおける3つの溝深さの平均値とする。
【0072】
本実施形態のロール金型において、mは、2~8から選択される整数である。即ち、mは、2、3、4、5、6、7又は8である。特に、mは、ロール金型における光学的段差をより容易に且つ効果的に低減する観点から、2、3又は4であることが好ましく、2又は4であることがより好ましい。
【0073】
本実施形態のロール金型において、nは、800以上である。特に、nは、ロール金型における光学的段差をより効果的に低減する観点から、800以上100000以下であることが好ましい。
【0074】
本実施形態のロール金型の直径としては、特に限定されないが、例えば、130mm以上1000mm以下とすることができる。また、本実施形態のロール金型における線状溝のピッチとしては、特に限定されないが、例えば、30μm以上500μm以下とすることができる。
【0075】
(転写シート)
本発明の一実施形態の転写シート(以下、「本実施形態の転写シート」と称することがある。)は、並んで延びる複数本の線状凸部を表面に備える転写シートであって、
前記複数本の線状凸部は、凸部高さの漸減及び漸増が繰り返されて並んでいる、ことを特徴とする。
本実施形態の転写シートは、上述した構成を有するため、光学特性の境目が全面に亘って視認され難い。そのため、かかる転写シートを連続成形により得た場合であっても、位置を選ぶことなく、大型ディスプレイ向けの光学フィルム製品などとして抜き出すことができる。
【0076】
本実施形態の転写シートにおいては、最も高い線状凸部の凸部高さをHmaxとし、最も低い線状凸部の凸部高さをHminとしたときに、少なくとも1組の隣接する2本の線状凸部同士の凸部高さの差が、(Hmax-Hmin)÷800×2×8以下であることが好ましい。この場合、転写シートにおける光学特性の境目が一層視認され難い。同様の観点から、本実施形態の転写シートにおいては、全ての隣接する2本の線状凸部同士の凸部高さの差が、(Hmax-Hmin)÷800×2×8以下であることがより好ましい。
【0077】
ここで、「(Hmax-Hmin)÷800×2×8以下」との条件は、ロール金型の製造方法に関して既述した検討結果に基づくものである。特に、「800」は、nの最小値に由来し、「8」は、mの最大値に由来する。また、本実施形態の転写シートにおいては、全ての隣接する2本の線状凸部同士の凸部高さの差が、(Hmax-Hmin)÷5000×2×8以下であることが更に好ましく、(Hmax-Hmin)÷10000×2×8以下であることが一層好ましく、(Hmax-Hmin)÷30000×2×8以下であることが特に好ましい。
【0078】
なお、線状凸部の凸部高さは、その断面を、レーザー顕微鏡等の光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)等の電子顕微鏡などで観察することにより、測定することができる。また、本実施形態の転写シートにおける「線状凸部の凸部高さ」は、当該線状凸部の一方の端部と、他方の端部と、その中間にある端部とにおける3つの凸部高さの平均値とする。
【0079】
本実施形態の転写シートにおける複数本の線状凸部のピッチとしては、特に限定されないが、例えば、30μm以上500μm以下とすることができる。
【0080】
本実施形態の転写シートは、好ましくは樹脂製のシート(樹脂シート)である。また、本実施形態の転写シートは、特に限定されないが、例えば、上述した本実施形態のロール金型を用い、その表面形状を樹脂に転写することで製造することができる(形状転写法)。
【0081】
樹脂としては、アクリル系樹脂等の紫外線硬化性樹脂が挙げられる。また、樹脂には、必要に応じて、フィラー、機能性添加剤、無機材料、顔料、帯電防止剤、増感色素等を適宜配合してもよい。
【0082】
本実施形態の転写シートは、例えば、レンズフィルムや拡散フィルム等のディスプレイ用の光学フィルムとして好適に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によれば、複数の線状溝が並んで外周面に形成されたロール金型において、隣接する線状溝の間の光学的段差が十分に小さいロール金型を提供することができる。
また、本発明によれば、上述したロール金型を容易に作製することが可能な、ロール金型の製造方法を提供することができる。
更に、本発明によれば、上述したロール金型を用いて作製することが可能な、光学特性の境目が全面に亘って視認され難い転写シートを提供することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 微細加工装置
10 回転装置
20 切削装置
30 加工ステージ
40 工具設置部
50 切削工具
100’ ロール基材
100 ロール金型
110 線状溝

図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5