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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】セットアップ支援方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/02 20060101AFI20221031BHJP
【FI】
H05K13/02 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020079881
(22)【出願日】2020-04-29
(62)【分割の表示】P 2018550946の分割
【原出願日】2016-11-17
(65)【公開番号】P2020113804
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2020-04-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 英輝
(72)【発明者】
【氏名】羽根田 博之
(72)【発明者】
【氏名】清水 浩二
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-018968(JP,A)
【文献】特開2005-347352(JP,A)
【文献】特開2004-047571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00 - 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板の搬送方向に並設されて基板製品を生産する生産ラインを構成する複数の部品装着機のセットアップを支援するセットアップ支援方法であって、
複数の前記部品装着機のそれぞれは、複数のスロットにそれぞれセットされるフィーダを用いて種々の電子部品を供給する部品供給装置を備え、
複数の前記部品装着機による複数の生産ジョブの実行に用いられる複数の前記フィーダを積載した準備台車が前記生産ラインに沿って移動するステップと、
複数の前記部品装着機のうち特定の前記部品装着機の前記部品供給装置の識別情報を取得するステップと、
前記識別情報と、前記準備台車に積載された複数の前記フィーダを示す積載情報と、前記生産ラインにおける複数種類の前記基板製品の生産順序として複数の前記生産ジョブの実行順序を示す生産スケジュールとに基づいて、特定の前記部品装着機により前記生産ジョブを実行可能な状態とするために前記準備台車に積載された複数の前記フィーダのうち特定の前記部品装着機の前記部品供給装置にセットすることが必要な複数の前記フィーダを特定するステップと、
特定された複数の前記フィーダを前記部品供給装置にセットする準備として前記部品供給装置に支給するように、前記セットアップを行うオペレータに対して特定された複数の前記フィーダをまとめて前記準備台車が案内するステップと、
を備える、セットアップ支援方法。
【請求項2】
回路基板の搬送方向に並設されて基板製品を生産する生産ラインを構成する複数の部品装着機のセットアップを支援するセットアップ支援方法であって、
複数の前記部品装着機のそれぞれは、複数のスロットにそれぞれセットされるフィーダを用いて種々の電子部品を供給する部品供給装置を備え、
前記基板製品の種類に応じて前記部品装着機により実行される生産ジョブのセットアップにおいて前記部品装着機の前記部品供給装置にセットされる交換用の複数の前記フィーダを準備台車に積載するステップと、
複数の前記部品装着機のうち特定の前記部品装着機の前記部品供給装置の識別情報を取得するステップと、
前記識別情報と、前記準備台車に積載された複数の前記フィーダを示す積載情報と、前記生産ラインにおける複数種類の前記基板製品の生産順序として複数の前記生産ジョブの実行順序を示す生産スケジュールとに基づいて、特定の前記部品装着機により前記生産ジョブを実行可能な状態とするために前記準備台車に積載された複数の前記フィーダのうち特定の前記部品装着機の前記部品供給装置にセットすることが必要な複数の前記フィーダを特定するステップと、
特定された複数の前記フィーダを前記部品供給装置にセットする準備として前記部品供給装置に支給するように、前記セットアップを行うオペレータに対して特定された複数の前記フィーダをまとめて前記準備台車が案内するステップと、
を備える、セットアップ支援方法。
【請求項3】
前記部品供給装置の前記識別情報を取得するステップは、前記部品供給装置に設けられた識別コードを読み取って前記識別コードに記録された前記識別情報を取得する、請求項1または2に記載のセットアップ支援方法。
【請求項4】
前記部品供給装置の前記識別情報を取得するステップは、前記部品供給装置に前記準備台車が所定距離まで接近した場合に、前記識別コードを無線通信により読み取る、請求項3に記載のセットアップ支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セットアップ支援方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セットアップ支援方法は、電子部品を回路基板に装着して基板製品を生産する部品装着機のセットアップを支援する。部品装着機は、複数のフィーダを用いて種々の電子部品を供給する部品供給装置を備える。部品装着機のセットアップでは、部品供給装置における複数のスロットのそれぞれに、最適化処理などによって予め設定された部品種を供給可能なフィーダをセットすることが求められる。
【0003】
特許文献1には、複数のフィーダを積載した準備台車から部品供給装置に移載する際に、スロットと当該スロットにセットされるべきフィーダを示す表示器を点灯させる構成が開示されている。特許文献1によると、セットアップを行うオペレータに対して、スロットとフィーダを併せて案内することで、部品装着機のセットアップの効率化を図れるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-018968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような部品装着機のセットアップは、部品装着機の稼働率に影響することから、より効率的に且つ正確に行われることが求められる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、フィーダのセットの準備として部品供給装置へのフィーダの支給を案内することによって、部品装着機のセットアップの効率化を図ることができるセットアップ支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示する第一のセットアップ支援方法は、回路基板の搬送方向に並設されて基板製品を生産する生産ラインを構成する複数の部品装着機のセットアップを支援するセットアップ支援方法であって、複数の前記部品装着機のそれぞれは、複数のスロットにそれぞれセットされるフィーダを用いて種々の電子部品を供給する部品供給装置を備え、複数の前記部品装着機による複数の生産ジョブの実行に用いられる複数の前記フィーダを積載した準備台車が前記生産ラインに沿って移動するステップと、複数の前記部品装着機のうち特定の前記部品装着機の前記部品供給装置の識別情報を取得するステップと、前記識別情報と、前記準備台車に積載された複数の前記フィーダを示す積載情報と、前記生産ラインにおける複数種類の前記基板製品の生産順序として複数の前記生産ジョブの実行順序を示す生産スケジュールとに基づいて、特定の前記部品装着機により前記生産ジョブを実行可能な状態とするために前記準備台車に積載された複数の前記フィーダのうち特定の前記部品装着機の前記部品供給装置にセットすることが必要な複数の前記フィーダを特定するステップと、特定された複数の前記フィーダを前記部品供給装置にセットする準備として前記部品供給装置に支給するように、前記セットアップを行うオペレータに対して特定された複数の前記フィーダをまとめて案内するステップと、を備える。
【0007】
本明細書で開示する第二のセットアップ支援装置は、回路基板の搬送方向に並設されて基板製品を生産する生産ラインを構成する複数の部品装着機のセットアップを支援するセットアップ支援方法であって、複数の前記部品装着機のそれぞれは、複数のスロットにそれぞれセットされるフィーダを用いて種々の電子部品を供給する部品供給装置を備え、前記基板製品の種類に応じて前記部品装着機により実行される生産ジョブのセットアップにおいて前記部品装着機の前記部品供給装置にセットされる交換用の複数の前記フィーダを準備台車に積載するステップと、複数の前記部品装着機のうち特定の前記部品装着機の前記部品供給装置の識別情報を取得するステップと、前記識別情報と、前記準備台車に積載された複数の前記フィーダを示す積載情報と、前記生産ラインにおける複数種類の前記基板製品の生産順序として複数の前記生産ジョブの実行順序を示す生産スケジュールとに基づいて、特定の前記部品装着機により前記生産ジョブを実行可能な状態とするために前記準備台車に積載された複数の前記フィーダのうち特定の前記部品装着機の前記部品供給装置にセットすることが必要な複数の前記フィーダを特定するステップと、特定された複数の前記フィーダを前記部品供給装置にセットする準備として前記部品供給装置に支給するように、前記セットアップを行うオペレータに対して特定された複数の前記フィーダをまとめて案内するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
第一のセットアップ支援方法および第二のセットアップ支援方法は、オペレータは、案内によって準備台車に積載された複数のフィーダのうち部品供給装置に支給するフィーダを容易に認識できる。これにより、オペレータは、スロットへのセットの準備として部品供給装置に支給することができる。また、セットアップは、複数のフィーダをまとめて支給する工程と、これら複数のフィーダを正確にセットする工程とに分割される。結果として各工程をまとめて効率的に行えることから、全体として部品装着機のセットアップを効率的に且つ正確に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態におけるセットアップ支援装置が適用される生産ラインの構成を示す模式図である。
図2】部品装着機を示す模式図である。
図3】セットアップ支援装置の構成を示すブロック図である。
図4】生産スケジュールを含む各種データを示す図である。
図5】フィーダデータ、積載情報、およびジョブ指定情報を示す図である。
図6】セットアップの案内により表示灯の点灯状態を示す図である。
図7】セットアップの案内処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、セットアップ支援方法を具体化した実施形態について図面を参照して説明する。セットアップ支援方法は、部品装着機による所定の生産ジョブの実行を可能とするセットアップを支援する。部品装着機は、吸着ノズルやチャック装置などの保持部材により電子部品を採取し、回路基板上の所定の座標位置に電子部品を移載する装置である。部品装着機は、例えば回路基板の搬送方向に複数並設され、基板製品を生産する生産ラインを構成する。
【0011】
<実施形態>
(生産ラインの構成)
生産ラインは、複数の部品装着機1が回路基板90の搬送方向(図1の左右方向)に並設されて構成される。生産ラインには、例えばスクリーン印刷機や装着検査機、リフロー炉などが含まれ得る。複数の部品装着機1は、ネットワークを介してホストコンピュータ60およびセットアップ支援装置70と通信可能に接続されている。
【0012】
(部品装着機1の構成)
部品装着機1は、図2に示すように、基板搬送装置10と、部品供給装置20と、部品移載装置30と、部品カメラ41と、基板カメラ42と、制御装置50とを備える。以下の説明において、部品装着機1の水平幅方向(図1および図2の左右方向)をX軸方向とし、部品装着機1の水平奥行き方向(図1および図2の上下方向)をY軸方向とし、X軸およびY軸に垂直な鉛直方向(図1および図2の前後方向)をZ軸方向とする。
【0013】
基板搬送装置10は、ベルトコンベアなどにより構成され、回路基板90を搬送方向(本実施形態においてはX軸方向)へと順次搬送する。基板搬送装置10は、部品装着機1の機内における所定の位置に回路基板90を位置決めする。そして、基板搬送装置10は、部品装着機1による装着処理が実行された後に、回路基板90を部品装着機1の機外に搬出する。
【0014】
部品供給装置20は、部品装着機1の前部側(図2の下側)に設けられている。部品供給装置20は、回路基板90に装着される電子部品を供給する。部品供給装置20は、X軸方向に並んで配置された複数のスロット21を有する。複数のスロット21には、生産ジョブの実行前に当該生産ジョブのセットアップにおいてフィーダ23が交換可能にそれぞれセットされる。フィーダ23は、多数の電子部品を収納するキャリアテープが巻回されたリールを交換可能に装填される。フィーダ23は、キャリアテープを送り移動させて、フィーダ23の先端側に位置する供給位置において電子部品を採取可能に供給する。
【0015】
また、フィーダ23は、本実施形態において、スロット21にセットされた状態においてオペレータが視認可能な上部に表示灯23aが設けられている。表示灯23aは、スロット21にフィーダ23がセットされて給電可能な状態になると、図示しないフィーダ23の制御装置によって各種の情報をオペレータに示すために点灯、点滅、および消灯の状態を制御される。
【0016】
また、部品供給装置20には、識別コードが設けられている。識別コードには、部品供給装置20の固有の識別情報である識別符号(ID)が記録されている。識別コードとしては、バーコードや二次元コードなどを適用し得る。本実施形態において、識別コードは、後述する準備台車80と無線通信を行うタグ24に記録され、無線通信により準備台車80に転送される。タグ24は、部品供給装置20の前面において、部品装着機1が設置された床面から所定の高さの位置に設けられている。
【0017】
部品移載装置30は、X軸方向およびY軸方向に移動可能に構成される。部品移載装置30は、ヘッド駆動装置31、移動台32、および装着ヘッド33を備える。ヘッド駆動装置31は、直動機構により移動台32をXY軸方向に移動可能に構成されている。装着ヘッド33は、部品供給装置20により供給される電子部品を採取して回路基板90に移載する作業に用いられる。装着ヘッド33は、図示しないクランプにより移動台32に固定される。
【0018】
また、装着ヘッド33は、着脱可能に設けられる複数の吸着ノズル34を有する。装着ヘッド33は、Z軸と平行なR軸回りに回転可能に、且つ昇降可能に各吸着ノズル34を支持する。吸着ノズル34は、装着ヘッド33に対する昇降位置や角度、負圧の供給状態を制御される。吸着ノズル34は、負圧を供給されることにより、部品供給装置20のフィーダ23により供給される電子部品を吸着する。上記の装着ヘッド33および吸着ノズル34は、生産ジョブのセットアップにおいて当該生産ジョブに応じて交換または専用の載置台に自動交換可能に載置される。
【0019】
部品カメラ41および基板カメラ42は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を有するデジタル式の撮像装置である。部品カメラ41および基板カメラ42は、通信可能に接続された制御装置50による制御信号に基づいてカメラ視野に収まる範囲の撮像を行い、当該撮像により取得した画像データを制御装置50に送出する。
【0020】
部品カメラ41は、光軸が鉛直方向(Z軸方向)の上向きとなるように部品装着機1の基台に固定されている。部品カメラ41は、部品移載装置30の下方から装着ヘッド33の吸着ノズル34に保持された電子部品を撮像可能に構成されている。基板カメラ42は、光軸が鉛直方向(Z軸方向)の下向きとなるように部品移載装置30の移動台32に設けられる。基板カメラ42は、回路基板90を撮像可能に構成されている。また、本実施形態において、基板カメラ42は、上記の載置台に載置された装着ヘッド33や吸着ノズル34に付された識別コードの読み取りに利用可能に構成されている。
【0021】
制御装置50は、主として、CPUや各種メモリ、制御回路により構成される。制御装置50は、回路基板90に電子部品を装着する装着処理を含む生産ジョブを制御する。上記の装着処理は、制御プログラムに基づいて実行され、部品供給装置20により供給される電子部品を採取し、電子部品を回路基板90における所定位置に移載するピックアンドプレースサイクルを複数回に亘って繰り返す処理である。生産ジョブの実行により生産される基板製品の種類である製品種は、実行される生産ジョブの種類によって定まる。
【0022】
また、制御装置50は、装着ヘッド33の位置や吸着機構の動作を制御する。詳細には、制御装置50は、装着処理において、部品装着機1に複数設けられた各種センサから出力される情報、画像処理などによる認識処理の結果を入力する。そして、装着制御部51は、制御プログラム、各種センサによる情報、各種の認識処理の結果に基づいて、部品移載装置30へと制御信号を送出する。これにより、装着ヘッド33に支持された吸着ノズル34の位置および回転角度が制御される。
【0023】
(ホストコンピュータ60および各種データ)
ホストコンピュータ60は、生産ラインの動作状況を監視し、複数の部品装着機1を含む生産ラインの構成機器の制御を行う。また、ホストコンピュータ60は、部品装着機1による生産の進行の度合いなどを集計する。ホストコンピュータ60には、生産ラインを構成する複数の部品装着機1の制御に用いられる各種データが記憶されている。また、ホストコンピュータ60は、後述するセットアップ支援装置70の制御に用いられる生産スケジュールおよびセットアップリストを生成する。
【0024】
生産スケジュールは、図4の表3に示すように、複数種類の基板製品の生産順序として生産ジョブ(JobA,JobB,JobC,・・・)の実行順序を示す。生産スケジュールは、生産計画(図4の表1を参照)、および製品データ(図4の表2を参照)に基づいて生成される。本実施形態において、生産スケジュールが示す複数の生産ジョブ(JobA,JobB,JobC,・・・)の実行順序は、生産ジョブの種類数に対してセットアップの回数が少なくなるように最適化する最適化処理により予め設定されている。
【0025】
上記の最適化処理は、例えば異なる製品種間で必要な電子部品の部品種の一部が共通する場合に、これらの製品種に対応する複数種類の生産ジョブを連続で実行するように順序を設定する。これにより、共通する部品種を供給するフィーダ23については生産ジョブ間でのセットアップが不要となる。また、異なる製品種間で必要な電子部品の部品種の総数が部品供給装置20のスロット21の数以下であれば、それぞれのスロット21に異なる部品種を供給可能なフィーダ23をセットすることでセットアップの回数を低減できる。
【0026】
具体的には、製品種(U1,U2,U3)に対応する複数種類の生産ジョブ(JobA,JobB,JobC)をグループ(Gr01)化する。これにより、当該グループ(Gr01)については1回のセットアップ(Set1)で複数の生産ジョブ(Gr01に属するJobA~JobC)が実行可能となる。また、生産ジョブの実行順序は、製品種ごとの生産の優先度等に基づいて最適化される。そのため、上記のようなグループ化がなされずに生産ジョブ(JobF)の前後でセットアップ(Set3,Set4)が実行される場合がある。
【0027】
上記の生産計画は、図4の表1に示すように、基板製品の製品種(U1,U2,U3,・・・)ごとの目標生産数(T1,T2,T3,・・・)を示す。製品データは、図4の表2に示すように、基板製品の生産に必要とされる電子部品の部品種(Pa,Pb,Pc,Pd,・・・)および部品数が製品種(U1,U2,U3,・・・)ごとに記録されたデータである。換言すると、製品データは、所定の製品種の基板製品を1枚生産する場合に消費する部品数を部品種ごとに示す。
【0028】
セットアップリストは、図4の表4に示すように、生産スケジュールに含まれる複数の生産ジョブ(JobA,JobB,JobC,・・・)のうち部品装着機1において生産ジョブを実行可能な状態にするセットアップの対象として選択された1または複数の生産ジョブを示す。セットアップリストは、例えば、セットアップの対象として複数の生産ジョブ(JobA~JobE)が選択された場合、またはこれらの生産ジョブ(JobA~JobE)に対応するグループ(Gr01,Gr02)が選択された場合に、必要なセットアップ(Set1,Set2)に複数の生産ジョブ(JobA~JobE)を対応させて示す。
【0029】
(セットアップ支援装置70)
セットアップ支援方法の実施に用いられるセットアップ支援装置70は、回路基板90に電子部品を装着する種々の生産ジョブ(JobA,JobB,JobC,・・・)を実行して複数種類の基板製品(U1,U2,U3,・・・)を生産する部品装着機1に適用される。セットアップ支援装置70は、生産ラインを構成する複数の部品装着機1およびホストコンピュータ60と通信可能に接続されている。セットアップ支援装置70は、図3に示すように、記憶部71と、フィーダ特定部72と、案内部73と、準備台車80とを備える。
【0030】
本実施形態において、上記の記憶部71、フィーダ特定部72、および案内部73は、準備台車80に設けられた制御装置84に組み込まれている。準備台車80は、図1に示すように、生産ラインにおける回路基板90の搬送方向に沿って移動可能に構成されている。準備台車80は、生産ジョブのセットアップにより部品供給装置20のスロット21にセットされる交換用のフィーダ23を積載する。準備台車80は、図3に示すように、複数のスロット81と、表示装置82と、リーダー装置83と、制御装置84とを有する。
【0031】
複数のスロット81は、部品供給装置20における複数のスロット21と同様に構成され、交換用のフィーダ23を支持する。本実施形態において、準備台車80は、水平方向に配置された複数のスロット81の列を、上下方向に2段となるように構成されている(図示しない)。また、複数のスロット81のそれぞれにセットされた交換用のフィーダ23は、準備台車80と電気的に接続され、給電されて外部から制御可能な状態となる。表示装置82は、必要に応じて各種の情報をオペレータに表示する。本実施形態において、表示装置82は、タッチパネルにより構成され、オペレータによる種々の操作を受け付ける入力デバイスとして機能する。
【0032】
リーダー装置83は、部品供給装置20の識別情報を取得する識別装置を構成する。本実施形態において、リーダー装置83は、準備台車80の部品装着機1の前面に対向する側面において、部品供給装置20のタグ24と同程度の高さに設けられ、タグ24と無線通信を行う通信装置83aを有する。リーダー装置83の通信装置83aは、部品供給装置20のタグ24に準備台車80が所定距離まで接近した場合に、接近した部品供給装置20に設けられた識別コードを無線通信により読み取り可能に構成されている。
【0033】
具体的には、リーダー装置83は、例えば準備台車80が生産ラインに沿って移動されて、図1に示すように、複数の部品供給装置20のタグ24ごとの通信可能範囲(Rc1,Rc2,Rc3,・・・)の何れかの内部に進入した場合に、当該タグ24との無線通信を開始して、タグ24に記録された識別コードを読み取る。リーダー装置83は、複数のタグ24と通信可能な場合には、例えばそれぞれのタグ24との無線通信における信号強度が高いタグ24との無線通信を有効なものとしてもよい。このように、リーダー装置83は、特定の部品供給装置20に準備台車80が所定距離まで接近した場合に、上記のような無線通信を確立する構成となっている。
【0034】
準備台車80の制御装置84は、主として、CPUや各種メモリ、制御回路により構成される。制御装置84は、部品供給装置20の認識処理、スロット81にセットされた交換用のフィーダ23の認識処理などを実行し、生産ジョブのセットアップの案内を制御する。上記の部品供給装置20の認識処理は、リーダー装置83により読み取られた部品供給装置20の識別コードに記録された識別情報を取得して、生産ラインにおいて最も接近している部品供給装置20を認識する処理である。このように、リーダー装置83および制御装置84は、部品供給装置20の識別情報を取得する識別装置を構成する。
【0035】
ここで、準備台車80に積載される交換用のフィーダ23は、それぞれに所定の部品種のリールを装填される際に、当該フィーダ23に部品種を関連付ける処理を予め実行されている。これにより、フィーダ23の固有の識別情報であるフィーダIDに、リールIDおよび部品種が関連付けられたフィーダデータ(図5の表1を参照)が生成される。フィーダデータは、ホストコンピュータ60およびセットアップ支援装置70に共有される。
【0036】
そして、準備台車80のスロット81に交換用のフィーダ23がセットされると、制御装置84は、セットされたフィーダ23のフィーダIDを読み込み、フィーダ23を認識する。制御装置84は、準備台車80に積載された交換用の複数のフィーダ23を示す積載情報(図5の表2)を生成する。上記の積載情報は、準備台車80のスロット81(スロットID)に、交換用のフィーダ23(フィーダID)、装填されたリール(リールID)、および部品種(Pa,Pb,Pc,・・・)が関連付けられた情報である。また、制御装置84は、準備台車80のスロット81に対してフィーダ23が抜き挿しされる度に、上記の積載情報を更新する。
【0037】
また、準備台車80の制御装置84は、上記のように、記憶部71と、フィーダ特定部72と、案内部73とを有する。記憶部71は、ハードディスク装置などの光学ドライブ装置、またはフラッシュメモリなどにより構成される。この記憶部71には、セットアップ支援装置70によるセットアップの案内等を制御するための各種データが記憶されている。記憶部71は、ホストコンピュータ60にて生成された生産スケジュール(図4の表3)と、セットアップリスト(図4の表4)とをホストコンピュータ60から転送されて記憶する。また、制御装置84により生成または更新された交換用のフィーダ23の積載情報、および後述するジョブ指定情報を記憶する。
【0038】
フィーダ特定部72は、取得された所定の部品供給装置20の識別情報と、準備台車80に積載された複数のフィーダ23を示す積載情報と、複数種類の基板製品の生産順序として生産ジョブの実行順序を示す生産スケジュールとに基づいて、準備台車80に積載された複数のフィーダ23のうち部品供給装置20にセットする複数のフィーダ23を特定する。具体的には、フィーダ特定部72は、先ず取得された識別情報に対応する生産スケジュールを取得する。次に、フィーダ特定部72は、準備台車80に積載された交換用の複数のフィーダ23のうち、生産スケジュールに含まれる複数の生産ジョブの実行に必要なフィーダ23を、部品供給装置20にセットすべきフィーダ23として、現在の積載情報に基づいて特定する。
【0039】
ここで、本実施形態において、生産スケジュールに含まれる複数の生産ジョブの一部がセットアップの対象として既に選択され、セットアップリストに選択された1または複数の生産ジョブが含まれている。このような場合に、フィーダ特定部72は、生産スケジュールに基づいて生成されたセットアップリストを用いて、当該セットアップリストに含まれる1または生産ジョブのセットアップに必要な交換用のフィーダ23を特定するようにしてもよい。
【0040】
上記のような交換用のフィーダ23の特定処理において、生産スケジュールまたはセットアップリストに複数の生産ジョブが含まれており、準備台車80にも多数の生産ジョブのセットアップに必要な交換用のフィーダ23が積載されていることがある。このような場合に、該当する全てのフィーダ23を部品供給装置20にセットするべきフィーダ23として特定すると、部品供給装置20への移載作業に時間を要し、セットアップの効率が却って低下するおそれがある。これに対して、フィーダ特定部72は、ジョブ指定情報に基づいて、生産スケジュールまたはセットアップリストに含まれる複数の生産ジョブの一部のみを案内可能としている。
【0041】
具体的には、ジョブ指定情報は、図5の表3に示すように、生産スケジュールに含まれる複数の生産ジョブの一部または全部をセットアップの対象として示す情報である。ジョブ指定情報は、次回生産モードおよびグループ生産モードを含む複数の指定モードから選択された一つに対応した生産ジョブを示す(図5の表3は、指定モードとしてグループ生産モードが選択された状態を示す)。上記の「次回生産モード」は、生産スケジュールに含まれる複数の生産ジョブのうち次回実行される生産ジョブのみをセットアップの対象に指定する指定モードである。
【0042】
また、上記の「グループ生産モード」は、生産スケジュールに含まれる複数の生産ジョブのうち次回以降に実行される複数の生産ジョブをセットアップの対象に指定する指定モードである。本実施形態において、グループ生産モードにより指定される複数の生産ジョブは、最適化処理において1回のセットアップにより実行可能となるようにグループ化された複数の生産ジョブである。この他に、グループ生産モードにより指定される複数の生産ジョブは、単に次回以降に実行される一定数の生産ジョブとしてもよいし、所定の時間帯に実行されるものを一つとしてグループ化された生産ジョブとしてもよい。
【0043】
また、セットアップ支援装置70は、オペレータの要求に応じて指定モードを次回生産モードまたはグループ生産モードに変更する。具体的には、セットアップ支援装置70は、表示装置82各種の指定モードを表示するとともに、入力デバイスとして機能する表示装置を介してオペレータの要求を受け付ける。そして、セットアップ支援装置70は、受け付けた要求に応じて指定モードを変更する。
【0044】
さらに、セットアップ支援装置70は、生産スケジュールの進行の度合いを含む部品装着機による生産状態に基づいて、指定モードを次回生産モードまたはグループ生産モードに変更する。セットアップ支援装置70は、例えば次回実行する生産ジョブの開始予定時間が迫っているなどの生産状態に応じて、次回生産モードに指定モードを変更することにより、優先すべきセットアップの早期化を図っている。フィーダ特定部72は、変更された指定モードに対応した生産ジョブを示すジョブ指定情報に基づいて、複数のフィーダ23を特定する。
【0045】
案内部73は、フィーダ特定部72により特定された複数のフィーダ23を部品供給装置20にセットする準備として部品供給装置20に支給するように、セットアップを行うオペレータに対して特定された複数のフィーダ23をまとめて案内する。具体的には、案内部73は、図6に示すように、フィーダ23に設けられた表示灯23aを点灯または点滅させることによって、複数のフィーダ23をまとめて案内する。このとき、特定された複数のフィーダ23の表示灯23aのそれぞれは、点灯または同一パターンで点滅する。その他のフィーダ23の表示灯23aのそれぞれは、消灯の状態を維持される。上記の他に、案内部73は、例えば準備台車80においてフィーダ23を保持するスロットごとに設けられた表示灯を点灯または点滅させることによって、複数のフィーダ23をまとめて案内するようにしてもよい。
【0046】
ここで、生産ジョブを実行可能な状態とするセットアップとしては、特定のフィーダ23を部品供給装置20における特定のスロット21にセットすることが必要となる。つまり、オペレータは、一般のセットアップにおいては、準備台車80に積載されたフィーダ23を特定のスロット21にセットする作業をフィーダ23の数だけ行い、さらに生産ラインにおける他の部品供給装置20の近くまで移動して上記と同様のセットアップを繰り返していた。
【0047】
これに対して、案内部73は、特定された複数のフィーダ23をスロット21へのセットの準備(前段階)として、部品供給装置20側に支給するようにまとめて案内する。これにより、オペレータは、準備台車80に積載された複数のフィーダ23のうち、準備台車80が最も接近している部品供給装置20に対して支給すべき複数のフィーダ23をまとめて認識することができる。部品供給装置20への支給方法としては、スロット21に交換用のフィーダ23を仮挿しの状態(仮セット)としてもよいし、部品供給装置20に専用の仮置き台がある場合には当該仮置き台に交換用のフィーダ23を移載した状態としてもよい。
【0048】
これにより、オペレータは、セットアップにおいて、部品装着機1に対して、交換用の複数のフィーダ23をまとめて部品供給装置20に支給する工程と、これらの複数のフィーダ23を特定のスロット21にそれぞれセットする工程とを分けて実行することになる。これにより、一つ一つ正確に特定のスロット21にセットするセットアップと比較して、セットアップの効率化を図ることができ、またオペレータが複数の場合に作業を分担しやすくなる。
【0049】
さらに、上記のように複数の部品供給装置20に交換用の複数のフィーダ23をそれぞれ支給する工程を繰り返すことで、例えば従来のように生産ラインの上流側から順にセットアップを完了と準備台車80の移動とを繰り返す方法と比較して、各工程における作業がまとめて効率的に行うことができる。これにより、セットアップ支援装置70は、セットアップ全体の効率化を図っている。
【0050】
(セットアップの案内処理)
セットアップ支援装置70による生産ジョブのセットアップの案内処理について、図4図7を参照して説明する。ここで、上記のセットアップは、部品装着機1に交換可能にセットされるフィーダ23の補給処理であるものとする。また、準備台車80には、生産スケジュールのうち複数の生産ジョブ(JobA~JobG)の実行に用いられる交換用のフィーダ23が積載されているものとする。
【0051】
上記の交換用のフィーダ23のそれぞれには、装填されたリールに応じた部品種が予め関連付けられている。ホストコンピュータ60およびセットアップ支援装置70は、上記の関連付けに基づいて生成されたフィーダデータ(図5の表1)、および準備台車80に積載された複数のフィーダ23を示す積載情報(図5の表2)を共有している。なお、上記の生産スケジュールは、図4に示すように、生産計画および製品データに基づいて、生産ラインを構成する複数の部品装着機1ごとに生成され、セットアップ支援装置70の記憶部71に記憶されている。
【0052】
また、本実施形態において、複数の生産ジョブの実行に要する時間の短縮を目的として、複数の生産ジョブにおける装着処理が最適化されている。その結果、装着処理における装着ヘッド33の移動距離を短縮すべく、部品供給装置20における複数のスロット21のそれぞれで供給する部品種が予め設定される。換言すると、リールの装填によって部品種を関連付けられたフィーダ23は、部品供給装置20における何れのスロット21にセットされるかが予め設定されている。
【0053】
また、ホストコンピュータ60は、生産スケジュールのうちセットアップの対象として選択されている2つのグループ(Gr01,Gr02)に基づいて、セットアップリストLsを生成し、セットアップ支援装置70の記憶部71に記憶する。このセットアップリストLsには、図4の表4に示すように、2つのグループ(Gr01,Gr02)に属する複数の生産ジョブ(JobA~JobE)が含まれている。生成されたセットアップリストLsは、ネットワークを介してセットアップ支援装置70に転送され、記憶部71に記憶される。
【0054】
セットアップ支援装置70は、例えば表示装置82を介してオペレータからセットアップの案内を要求された場合に、図7に示すように、セットアップの案内処理を開始する。セットアップ支援装置70は、準備台車80のリーダー装置83が何れかの部品供給装置20のタグ24と通信可能か否かを判定する(ステップ11(以下、「ステップ」を「S」と表記する))。リーダー装置83とタグ24の通信不能である場合には(S11:No)、セットアップ支援装置70は、定期的に通信可能か否かの判定(S11)を実行する。
【0055】
その後に、例えばオペレータにより準備台車80が移動されて、リーダー装置83が何れかの部品供給装置20のタグ24の通信可能範囲の内部に進入する。そうすると、リーダー装置83がタグ24と通信可能であると判定され(S11:Yes)、セットアップ支援装置70は、部品供給装置20の認識処理を実行する(S12)。ここでは、準備台車80が第一の部品装着機1の前部側に移動され、リーダー装置83がタグ24の通信可能範囲(Rc1)の内部に進入したものとする。
【0056】
部品供給装置20の認識処理(S12)において、先ずリーダー装置83は、タグ24と無線通信を行い、タグ24に記録された識別コードを読み取る。次に準備台車80の制御装置84は、リーダー装置83により読み取られた識別コードを取得し、当該識別コードに記録された識別情報を取得する。これにより、セットアップ支援装置70は、部品供給装置20を認識する。上記のような構成によると、オペレータは、準備台車80を移動させることによって、生産ラインを構成する複数の部品装着機1のうち何れの部品装着機1の部品供給装置20に対してセットアップを行うのかを自動で認識させる。
【0057】
次に、フィーダ特定部72は、準備台車80に積載された複数のフィーダ23のうち部品供給装置20にセットする複数のフィーダ23を特定する(S21)。フィーダ特定部72は、S12にて取得された識別情報に基づいて、第一の部品装着機1に対応する生産スケジュールまたはセットアップリストLsを取得する。ここでは、生産スケジュールに基づいて予めセットアップリストLsが生成されているので、フィーダ特定部72は、セットアプリストLsを取得する。
【0058】
フィーダ特定部72は、セットアップリストLsに含まれる複数の生産ジョブ(JobA~JobE)と、記憶部71に記憶されている積載情報に基づいて、部品供給装置20における複数のスロット21にセットする複数のフィーダ23を特定する。本実施形態において、フィーダ特定部72は、複数のスロット21のそれぞれに何れのフィーダ23をセットするかを示す最適化情報に基づいて、複数の生産ジョブ(JobA~JobE)のセットアップに必要なフィーダ23のフィーダIDを割り出す。そして、フィーダ特定部72は、積載情報にフィーダIDを照会することにより複数のフィーダ23を特定する。
【0059】
続いて、案内部73は、S21にて特定された複数のフィーダ23を部品供給装置20に支給するようにオペレータに対して複数のフィーダ23をまとめて案内する(S22)。具体的には、特定された複数のフィーダ23の表示灯23aを点灯または点滅させる。これにより、オペレータは、準備台車80が最も接近している部品供給装置20に対して支給すべき複数のフィーダ23をまとめて認識することができる。交換用のフィーダ23の表示灯23aは、オペレータにより準備台車80のスロット81からフィーダ23が抜かれて消灯する。
【0060】
上記のように、案内部73によるセットアップの案内がなされている状態において、セットアップ支援装置70は、オペレータによる指定モードの変更の要求があるか否かを判定する(S31)。セットアップ支援装置70は、例えば表示装置82に対するオペレータの操作によって指定モードの変更の要求があった場合には(S31:Yes)、オペレータの要求に応じて指定モードを次回生産モードまたはグループ生産モードに変更する(S32)。そして、セットアップ支援装置70は、変更された指定モードに応じてジョブ指定情報を編集する(S33)。
【0061】
具体的には、例えば指定モードが初期のグループ生産モードから次回生産モードに変更された場合には、セットアップリストに含まれる複数の生産ジョブ(JobA~JobE)のうち次回実行される生産ジョブ(JobA)のみをセットアップの対象に指定するようにジョブ指定情報を編集する。これにより、ジョブ指定情報は、図5の表3の右欄から左欄へと編集される。また、指定モードが次回生産モードからグループ生産モードに変更された場合、または指定モードを解除して1または複数の生産ジョブを個々に指定するように要求があった場合には、セットアップ支援装置70は、当該要求に応じてジョブ指定情報を編集する。
【0062】
また、オペレータによる指定モードの変更の要求がない場合には(S31:No)、セットアップ支援装置70は、生産スケジュールの進行の度合いを含む部品装着機による生産状態に基づいて、指定モードを次回生産モードまたはグループ生産モードに変更する必要があるか否かを判定する(S34)。セットアップ支援装置70は、以下のような場合であって、且つ現在の指定モードと変更すべき指定モードが相違する場合に、指定モードの変更が必要であると判定する(S34:Yes)。
【0063】
セットアップ支援装置70は、例えば次回実行する生産ジョブの開始予定時間が迫っているなどの生産状態の場合には、当該生産ジョブのセットアップを優先すべく指定モードを次回生産モードに変更する(S35)。また、セットアップ支援装置70は、例えば準備台車80に交換用のフィーダ23が追加して積載されて、グループ化された複数の生産ジョブのセットアップが可能となった場合には、部品供給装置20に交換用のフィーダ23を支給する工程の効率化を図るべく指定モードをグループ生産モードに変更する(S35)。その後に、セットアップ支援装置70は、変更された指定モードに応じてジョブ指定情報を編集する(S33)。
【0064】
上記のように、ジョブ指定情報が編集された場合(S33)には、フィーダ特定部72は、変更された指定モードに対応した生産ジョブを示すジョブ指定情報に基づいて、複数のフィーダ23を再度特定する(S21)。そして、案内部73は、再度のS21にて特定された複数のフィーダ23を部品供給装置20に支給するようにオペレータに対して複数のフィーダ23をまとめて案内する(S22)。これにより、案内により表示灯23aを点灯または点滅するフィーダ23が増減される。
【0065】
また、セットアップ支援装置70が指定モードの変更が必要であるとは判定されなかった場合には(S34:No)、セットアップ支援装置70は、オペレータによる指定モードの変更の要求があるか否かの判定(S31)、および変動する生産状態に基づいて指定モードを次回生産モードまたはグループ生産モードに変更する必要があるか否かの判定(S34)を繰り返す。セットアップ支援装置70は、案内した交換用の全てのフィーダ23が部品供給装置20に支給されたり、準備台車80が移動されてリーダー装置83が別のタグ24と通信可能な状態となったりした場合に、第一の部品装着機1の部品供給装置20を対象としたセットアップの案内処理を終了する。
【0066】
(実施形態の構成による効果)
セットアップ支援装置70は、部品装着機1のセットアップを支援する。部品装着機1は、部品供給装置20にセットされた複数のフィーダ23により供給される電子部品を採取して回路基板90に電子部品を装着する種々の生産ジョブを実行することにより複数種類の基板製品を生産する。セットアップ支援装置70は、複数の生産ジョブの実行に用いられる複数のフィーダ23を積載する準備台車80と、部品供給装置20の識別情報を取得する識別装置(リーダー装置83、制御装置84)と、識別情報と、準備台車80に積載された複数のフィーダ23を示す積載情報と、複数種類の基板製品の生産順序として生産ジョブの実行順序を示す生産スケジュールとに基づいて、準備台車80に積載された複数のフィーダ23のうち部品供給装置20にセットする複数のフィーダ23を特定するフィーダ特定部72と、を備える。準備台車80は、特定された複数のフィーダ23を部品供給装置20にセットする準備として部品供給装置20に支給するように、セットアップを行うオペレータに対して特定された複数のフィーダ23をまとめて案内する案内部73を有する。
【0067】
このような構成によると、オペレータは、案内によって準備台車80に積載された交換用の複数のフィーダ23のうち部品供給装置20に支給するフィーダ23を容易に認識できる。これにより、オペレータは、スロットへのセットの準備として部品供給装置20に支給することができる。また、セットアップは、複数のフィーダ23をまとめて支給する工程と、これら複数のフィーダ23を正確にセットする工程とに分割される。結果として、工程ごとに作業を効率的に行えることから、全体として部品装着機1のセットアップを効率的に且つ正確に行うことが可能となる。
【0068】
また、フィーダ特定部72は、生産スケジュールに含まれる複数の生産ジョブの一部または全部をセットアップの対象として示すジョブ指定情報に基づいて、複数のフィーダ23を特定する。
【0069】
このような構成によると、準備台車80にはセットアップを行うために複数種類の生産ジョブに用いられる複数のフィーダ23を積載していたとしても、ジョブ指定情報によって示される生産ジョブにのみ用いられる複数のフィーダ23が対象として支給の案内がなされる。そして、残りのフィーダ23は、ジョブ指定情報が更新された後に、部品供給装置20に支給される。このように、準備台車80に積載された全てのフィーダ23を対象とするのではなく、必要に応じて一部を支給するように案内することによって、複数のフィーダ23をまとめて支給する工程の効率化を図ることができる。
【0070】
また、ジョブ指定情報は、生産スケジュールに含まれる複数の生産ジョブのうち次回実行される生産ジョブのみをセットアップの対象に指定する次回生産モード、および生産スケジュールに含まれる複数の生産ジョブのうち次回以降に実行される複数の生産ジョブをセットアップの対象に指定するグループ生産モードを含む複数の指定モードから選択された一つに対応した生産ジョブを示す。
【0071】
このような構成によると、ジョブ指定情報が次回生産モードである場合には、セットアップ支援装置70は、差しあたって次回実行される生産ジョブに必要な分のフィーダ23を部品供給装置20に支給するように案内する。これにより、その後に実行予定の生産ジョブに用いられるフィーダ23の支給が後回しにされ、次回の生産ジョブを実行可能とするためにセットアップを必要最小限で行うことができるので、セットアップに要する時間を短縮できる。
また、ジョブ指定情報がグループ生産モードである場合には、セットアップ支援装置70は、幾つかの生産ジョブを実行可能な分のフィーダ23をまとめて部品供給装置20に支給するように案内する。これにより、準備台車80には積載されているが生産ジョブに用いられるまで時間的な余裕のあるフィーダ23の支給が後回しにされ、オペレータ等によって要求された幾つかの生産ジョブを実行可能とするためにセットアップを行うことができるので、セットアップの効率化を図ることができる。
【0072】
また、生産スケジュールが示す複数の生産ジョブの実行順序は、生産ジョブの種類数に対してセットアップの回数が少なくなるように最適化する最適化処理により予め設定される。グループ生産モードにより指定される複数の生産ジョブは、最適化処理において1回のセットアップにより実行可能となるようにグループ化された複数の生産ジョブである。
【0073】
生産スケジュールが示す複数の生産ジョブは、各生産ジョブに要するセットアップに要する時間も含めて全体の生産が早期に終了するように最適化される。この最適化処理では、各生産ジョブに用いられる部品種や部品数などを勘案して、セットアップの一部の共通化が試行される。結果として、生産ジョブの種類数に対してセットアップの回数が少なくなるように最適化がなされ、生産ジョブの実行順序が予め設定される。そして、セットアップ支援装置70は、最適化処理において1回のセットアップにより実行可能となるようにグループ化された複数の生産ジョブを、グループ生産モードに示される複数の生産ジョブとする。これにより、オペレータ等は、ジョブ指定情報において最適化処理の結果を反映させて、セットアップの対象とする生産ジョブをまとめて指定することができる。
【0074】
このような構成によると、セットアップ支援装置70は、オペレータによるモード切り換えを受け付けて、ジョブ指定情報を変更する。これにより、従来のように生産ジョブの実行順序が設定されるとともに固定されたセットアップの対象をオペレータに案内する構成と比較して、オペレータの都合に応じてセットアップの対象を変動させることができる。これにより、例えば次回の生産ジョブには不要なセットアップを後回しにでき、オペレータ等の人的資源を有効に配分することが可能となる。
【0075】
また、セットアップ支援装置70は、生産スケジュールの進行の度合いを含む部品装着機による生産状態に基づいて、指定モードを次回生産モードまたはグループ生産モードに変更する。フィーダ特定部72は、変更された指定モードに対応した生産ジョブを示すジョブ指定情報に基づいて、複数のフィーダを特定する。
【0076】
このような構成によると、セットアップ支援装置70は、生産スケジュールの進行の度合いを含む部品装着機1の生産状態に基づいて、ジョブ指定情報を自動変更する。これにより、従来のように生産ジョブの実行順序が設定されるとともに固定されたセットアップの対象をオペレータに案内する構成と比較して、次回実行する生産ジョブの開始時間が迫っているなどの生産状態に応じてセットアップの対象を変動させることができる。これにより、例えば次回の生産ジョブには不要なセットアップを後回しにでき、優先すべきセットアップを行うようにオペレータ等の人的資源を有効に配分することが可能となる。
【0077】
セットアップ支援装置70は、基板製品を生産する生産ラインを構成する複数の部品装着機1のセットアップを支援する。部品装着機1は、基板製品の生産において、部品供給装置20にセットされた複数のフィーダ23により供給される電子部品を採取して回路基板90に電子部品を装着する生産ジョブを実行する。セットアップ支援装置70は、複数の部品装着機1のそれぞれで実行される生産ジョブに用いられる複数のフィーダ23を積載する準備台車80と、複数の部品装着機1における部品供給装置20の識別情報を取得する識別装置(リーダー装置83、制御装置84)と、識別情報と、準備台車80に積載された複数のフィーダ23を示す積載情報とに基づいて、準備台車80に積載された複数のフィーダ23のうち部品供給装置20にセットする複数のフィーダ23を特定するフィーダ特定部72と、を備える。準備台車80は、特定された複数のフィーダ23を部品供給装置20にセットする準備として部品供給装置20に支給するように、セットアップを行うオペレータに対して特定された複数のフィーダ23をまとめて案内する案内部73を有する。
【0078】
このような構成によると、オペレータは、案内によって準備台車80に積載された交換用の複数のフィーダ23のうち部品供給装置20に支給するフィーダ23を容易に認識できる。これにより、オペレータは、スロットへのセットの準備として部品供給装置20に支給することができる。また、セットアップは、複数のフィーダ23をまとめて支給する工程と、これら複数のフィーダ23を正確にセットする工程とに分割される。結果として、工程ごとに作業を効率的に行えることから、全体として部品装着機1のセットアップを効率的に且つ正確に行うことが可能となる。
【0079】
また、準備台車80の案内部73は、準備台車80においてフィーダ23を保持するスロットごとに設けられた表示灯23a、またはフィーダ23に設けられた表示灯23aを点灯または点滅させることによって、複数のフィーダ23をまとめて案内する。
【0080】
このような構成によると、表示灯23aを用いた案内により複数のフィーダ23をまとめて部品供給装置20に支給するようにオペレータに促すことができる。表示灯23aがフィーダ23に設けられたものである場合には、フィーダ23の表示灯23aをセットアップに兼用することにより、新たに準備台車80に表示部を設けることなく、または他の表示手段と併せてセットアップの対象として部品供給装置20に支給することを確実に案内することができる。
【0081】
また、識別装置(リーダー装置83、制御装置84)は、部品供給装置20に設けられた識別コードを読み取って識別コードに記録された識別情報を取得するリーダー装置83を有する。
このような構成によると、セットアップ支援装置70は、リーダー装置83によって部品供給装置20の識別コードを読み取って識別情報を取得する。このような構成によると、オペレータの読み取り作業によりや、準備台車80の接近に伴うリーダー装置83による自動読み取りによって認識処理が実行される。これにより、オペレータは、セットアップ支援装置70に対して、セットアップを行う予定の部品供給装置20を確実に特定させることができる。
【0082】
また、リーダー装置83は、部品供給装置20に準備台車80が所定距離まで接近した場合に、識別コードを無線通信により読み取り可能な通信装置83aを有する。
このような構成によると、識別装置を構成するリーダー装置83は、部品供給装置20に準備台車80が所定距離まで接近した場合に、識別コードを無線通信により読み取る。これにより、セットアップ支援装置70は、オペレータによる識別コードの読み取り作業を要することなく、準備台車80が接近した部品供給装置20の識別情報を(自動で)取得できる。よって、セットアップにおける作業が簡略化され、セットアップに要する時間を短縮できる。
【0083】
<実施形態の変形態様>
(生産ラインの構成とセットアップの案内)
実施形態において、セットアップ支援装置70は、生産ラインを構成する複数の部品装着機1の部品供給装置20のそれぞれに対するセットアップをオペレータに順次案内する態様とした。これに対して、セットアップ支援装置70は、生産ラインが1台の部品装着機1と他のスクリーン印刷機や装着検査機、リフロー炉とにより構成される場合にも適用することができる。
【0084】
つまり、セットアップ支援装置70は、1台の部品装着機1において実行される複数の生産ジョブに用いられる複数のフィーダ23が準備台車80に積載されている場合に、フィーダ特定部72により特定された1また複数の生産ジョブに用いられる複数のフィーダ23をまとめて案内するようにしてもよい。このような構成においても実施形態と同様の効果を奏する。
【0085】
また、生産ラインが複数の部品装着機1により構成されている場合には、セットアップ支援装置70は、個々の部品装着機1が1種類の生産ジョブのみを実行する態様としてもよい。つまり、セットアップ支援装置70は、複数の部品装着機1のそれぞれで実行される生産ジョブに用いられる複数のフィーダ23が積載されている準備台車80が所定の部品供給装置20の近くまで移動された場合に、例えば実施形態にて例示したように自動で部品供給装置20を認識し、部品供給装置20が設けられた部品装着機1にて実行される生産ジョブに対応した複数のフィーダ23をまとめて案内する。このような構成においても実施形態と同様の効果を奏する。
【0086】
(フィーダの特定処理)
実施形態において、フィーダ特定部72は、1または複数の生産ジョブをセットアップの対象として指定する指定モードに基づいて複数のフィーダ23を特定する構成とした。また、上記の指定モードは、次回生産モードまたはグループ生産モードであるものとした。これに対して、指定モードには、種々の指定方法が含まれるようにしてもよい。具体的には、フィーダ特定部72は、一定数の生産ジョブを指定する指定モードや、部品供給装置20に支給する交換用のフィーダ23が一定数以下となるように生産ジョブを指定する指定モードなどに基づいて、複数のフィーダ23を特定する構成としてもよい。
【0087】
また、実施形態において、フィーダ特定部72は、複数の指定モードから選択された一つに対応した1または複数の前記生産ジョブを示すジョブ指定情報に基づいて、複数のフィーダ23を特定するものとした。これに対して、フィーダ特定部72は、ジョブ指定情報によらず複数のフィーダ23を特定する構成としてもよい。具体的には、フィーダ特定部72は、例えば識別された部品供給装置20が設けられた部品装着機1により実行される生産ジョブに用いられる複数のフィーダ23のうち準備台車80に積載されているもの全てをまとめて案内してもよい。
【0088】
また、実施形態において、セットアップ支援装置70は、オペレータの要求や生産状態に応じて指定モードを切り換える構成とした。これに対して、セットアップ支援装置70は、オペレータの要求や生産状態に応じた指定モードの切り換えに一定の制約を設ける構成としてもよい。これは、例えば次回実行される生産ジョブのセットアップを優先するよりも、当初の生産スケジュールの通りに複数の生産ジョブのセットアップを優先した方が全体としての生産性が向上する場合が想定されるからである。
【0089】
(識別装置)
実施形態において、識別装置は、リーダー装置83および制御装置84により構成されるものとした。これに対して、識別装置は、部品供給装置20の識別情報を取得可能であれば種々の態様を採用し得る。具体的には、部品供給装置20に識別コードが設けられている場合には、当該識別コードを読み取り可能なリーダー装置としてハンドスキャナや画像データを取得するカメラを備え、制御装置84または制御装置84と別の装置において識別コードに記録された識別情報を取得してもよい。その他に、識別装置は、オペレータによる識別情報の直接入力を受け付ける入力デバイスとしてもよい。
【0090】
(セットアップ支援装置の適用)
実施形態において、セットアップ支援装置70の各部(記憶部71、フィーダ特定部72、および案内部73)は、準備台車80の制御装置84に組み込まれた構成とした。これに対して、セットアップ支援装置70の各部は、一部または全部を部品装着機1やホストコンピュータ60に組み込まれる構成としてもよい。このような構成においても実施形態と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0091】
1:部品装着機
10:基板搬送装置
20:部品供給装置
21:スロット、 23:フィーダ、 24:タグ
30:部品移載装置
31:ヘッド駆動装置、 32:移動台
33:装着ヘッド、 34:吸着ノズル
41:部品カメラ、 42:基板カメラ
50:制御装置
60:ホストコンピュータ
70:セットアップ支援装置
71:記憶部、 72:フィーダ特定部、 73:案内部
80:準備台車
81:スロット、 82:表示装置
83:リーダー装置(識別装置)、 83a:通信装置
84:制御装置(識別装置)
90:回路基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7