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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】廃水処理方法及び廃水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/13 20190101AFI20221031BHJP
   C02F 11/00 20060101ALI20221031BHJP
   C02F 11/04 20060101ALI20221031BHJP
   C02F 11/06 20060101ALI20221031BHJP
   C02F 11/08 20060101ALI20221031BHJP
   C02F 11/121 20190101ALI20221031BHJP
   C02F 1/20 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
C02F11/13 ZAB
C02F11/00 B
C02F11/04 Z
C02F11/06 Z
C02F11/08
C02F11/121
C02F1/20 B
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020105413
(22)【出願日】2020-06-18
(62)【分割の表示】P 2017516930の分割
【原出願日】2015-09-23
(65)【公開番号】P2020157299
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2020-06-29
(31)【優先権主張番号】102014013813.5
(32)【優先日】2014-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】520114395
【氏名又は名称】アワマ ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】awama GmbH
【住所又は居所原語表記】Alte Frankfurter Strasse 182, 38122 Braunschweig, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ズィーファース
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-534442(JP,A)
【文献】特開2010-179217(JP,A)
【文献】特表2011-516246(JP,A)
【文献】特開昭55-053619(JP,A)
【文献】国際公開第2012/014277(WO,A1)
【文献】特開2003-039036(JP,A)
【文献】特開2013-180243(JP,A)
【文献】特開2006-167522(JP,A)
【文献】特開2009-034569(JP,A)
【文献】国際公開第2007/086334(WO,A1)
【文献】特開平06-190382(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102009035062(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0014684(US,A1)
【文献】特開2008-149304(JP,A)
【文献】特表平10-506051(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0114570(US,A1)
【文献】特開2010-284589(JP,A)
【文献】特開2012-135705(JP,A)
【文献】特開昭56-021700(JP,A)
【文献】特開2009-148650(JP,A)
【文献】特開昭58-070896(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0111515(US,A1)
【文献】国際公開第2013/163998(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104030537(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102381820(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102531314(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00-11/20
B09B 3/00
F26B 1/00-25/22
C02F 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃水処理方法であって、
廃水(0)に含まれた下水汚泥の少なくとも一部分を、曝気(1)して前脱水に供した後に、加水分解(8)に供し、
前記加水分解(8)を熱加水分解として実施し、
前記加水分解(8)のステップの後に乾燥(19)を実施する、
廃水処理方法において、
前記乾燥(19)は、大気圧を超過する圧力下で実施される乾燥であり、
前記乾燥(19)時に発生した蒸気の少なくとも一部を、前記熱加水分解(8)における前記下水汚泥の前記一部分に供給(20)し、
廃水処理装置内に配置された熱電併給設備(23)の廃熱を前記乾燥(19)のエネルギに利用する、
ことを特徴とする廃水処理方法。
【請求項2】
前記乾燥(19)は、流動層乾燥であり、
前記乾燥(19)時に流動層乾燥によって発生した成分を、前記蒸気と共に前記熱加水分解(8)における前記下水汚泥の前記一部分に供給する、
請求項1記載の廃水処理方法。
【請求項3】
次いで、前記熱加水分解(8)に供された前記下水汚泥を前記乾燥(19)の前に消化(5,11)に供給する、
請求項1又は2記載の廃水処理方法。
【請求項4】
前記消化(5,11)のステップと、該消化(5,11)の後に行われる前記乾燥(19)との間に、前記消化に供された前記下水汚泥の機械的な脱水を実施する、
請求項3記載の廃水処理方法。
【請求項5】
消化(5,11)を実施しない廃水処理方法であって、
前記乾燥(19)によって乾燥された乾燥汚泥を燃焼に供給し、発生した高発熱量の炉ガスを、後焼却において電気エネルギと熱を発生させるために利用する、
請求項1又は2記載の廃水処理方法。
【請求項6】
前記乾燥(19)時に発生した蒸気の一部を、加水分解され消化された前記下水汚泥の分離された水からアンモニアを蒸気ストリッピングするために使用する、
請求項3または4記載の廃水処理方法。
【請求項7】
前記乾燥(19)時に発生した蒸気の一部を、マイクロタービン又は小型タービンの運転のために使用する、
請求項1から6のいずれか1項記載の廃水処理方法。
【請求項8】
前記脱水時に取り出された汚泥水から、リン回収を実施する、
請求項1から7のいずれか1項記載の廃水処理方法。
【請求項9】
廃水処理装置であって、
曝気(1)して前脱水に供した後の下水汚泥を加水分解処理するための加水分解装置(8)と、
加水分解処理された下水汚泥を乾燥させるための乾燥機(19)と、
を有する廃水処理装置において、
前記乾燥機(19)は、大気圧を超過する圧力下で乾燥を実施する乾燥機であり、
廃熱を前記乾燥機(19)にエネルギとして供給する熱電併給設備(23)が廃水処理装置内に設けられており、
前記乾燥機(19)において発生した蒸気を前記加水分解装置(8)に供給するための供給装置(20)が設けられており、
前記加水分解装置(8)は、供給された前記蒸気を前記下水汚泥と共に混合するように構成されている、
ことを特徴とする廃水処理装置。
【請求項10】
前記乾燥機(19)は、流動層乾燥機であり、
前記乾燥(19)時に流動層乾燥によって発生した成分は、前記蒸気と共に前記熱加水分解(8)における前記下水汚泥の一部分に供給される、
請求項9記載の廃水処理装置。
【請求項11】
前記加水分解装置(8)に直接的に又は間接的に接続された少なくとも1つの消化槽(5,11)が設けられている、
請求項9又は10記載の廃水処理装置。
【請求項12】
1つの前記消化槽(5,11)に直接的に又は間接的に接続された後脱水アセンブリ(15)が設けられている、
請求項11記載の廃水処理装置。
【請求項13】
消化槽(5,11)を用いない廃水処理装置であって、
前記乾燥機(19)によって乾燥された乾燥汚泥は、焼却設備、又は廃棄物焼却設備に、若しくは、溶融ガラス固化設備に供給され、
発生した高発熱量の炉ガスは、後焼却において発電用の蒸気を発生させるために利用される、
請求項9又は10記載の廃水処理装置。
【請求項14】
前記乾燥機(19)に接続された、アンモニアのストリッピング設備(17)が設けられている、
請求項9から13のいずれか1項記載の廃水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃水に含まれた下水汚泥の少なくとも一部分を加水分解に供し、前記加水分解を熱加水分解として実施し、前記加水分解のステップの後に乾燥を実施する、廃水処理方法に関する。
【0002】
本発明はさらに、下水汚泥を加水分解処理するための加水分解装置と、下水汚泥を乾燥させるための乾燥機とを有する、廃水処理装置に関する。
【0003】
廃水処理時には、一般的に下水汚泥が発生する。下水汚泥は、処分しなければならない不利なだけの副産物では決してなく、むしろその有機成分のおかげで貴重なエネルギ担体となっており、かつ、その中に含まれているリン酸塩及び窒素のおかげで植物栄養素担体となっている。
【0004】
下水汚泥のエネルギ含有量は、一方では消化と、発生したメタン含有性の消化ガスの活用とによって利用することができるが、また他方では、乾燥汚泥の焼却と、発生した炉ガスの活用とによっても利用することができる。この場合には、消化と脱水とを1つの場所で組み合わせ、乾燥と焼却とを他の場所で実施することによって、非常に高い一次エネルギ利用率がもたらされる。乾燥を過圧によって蒸気領域で実施し、消化汚泥の脱水能力を前処理措置によって、とりわけ熱加水分解によって改善する場合には、4つのプロセス(消化、脱水、乾燥、焼却)を1つの共通の場所に設置することにより、一次エネルギ利用率を格段に増加させることができる。この組み合わせは、消化を省略することによって、かつ、同じ場所で単焼を使用することによって、さらに格段に改善させることができる。
【0005】
「加水分解」とは、水による化学結合の切断を意味すると理解される。熱加水分解によれば、消化汚泥の乾燥時に蒸発させるべき水を少なくすることができる。
【0006】
約60℃~320℃の温度と、約10分~2時間の処理時間とにおいて下水汚泥を熱加水分解処理することにより、下水汚泥の消化能力が改善され、これによって消化時に、下水汚泥の有機成分の分解がより多くなり、多成分ガス生産物が生産されることとなる。これにより、消化時のエネルギ収率が増加し、脱水すべき下水汚泥の質量流量が減少する。
【0007】
相応の廃水処理に関する先行技術からは、既に種々の提案が公知である。例えば、独国特許発明第4333468号明細書(DE 43 33 468 C2)には既に、生物起源の残留物を処理する方法、とりわけ下水汚泥も処理する方法が開示されている。ここでは、下水汚泥はまず始めに消化に供される。次いで、消化汚泥は、約300℃の温度での圧力下での熱加水分解によって処理され、その後、消化に戻される。加水分解に必要な熱は、熱交換器を介して間接的に供給され、この場合には、熱源として加水分解ガス自体、又は、バイオガスの焼却も提案される。
【0008】
独国特許発明第19858187号明細書(DE 198 58 187 C5)からは、下水汚泥を処理する方法が公知である。下水汚泥は、第1の嫌気性消化段階において処理された後、熱分解に供給される。次いで、熱分解から排出された汚泥は、第2の嫌気性消化段階において消化されるか、又は、第1の嫌気性消化段階に戻される。加水分解のための熱は、熱交換器を介して間接的に供給され、加水分解が完了した後、同様にして熱交換器を介して再び排出される。
【0009】
欧州特許第1230167号明細書(EP 1 230 167 B1)からは、食肉加工工場からの残留物を処理する方法が公知である。これらの残留物は、アルカリ性物質が添加された後、20℃~160℃の熱加水分解処理に供される。さらなる処理ステップでは、残留物の一部の乾燥も、とりわけ周囲圧力下で又は真空中においても実施され、このときの排蒸気は、周囲に排出される。熱加水分解のための熱供給は、加熱装置を介して間接的に実施される。
【0010】
欧州特許第1320388号明細書(EP 1 320 388 B1)には、有機材料を処理する方法が記載されている。有機材料は、まず始めに石灰、すなわちCaO及び/又はCa(OH)と共に、100℃~220℃の温度において圧力下で煮沸される。このために必要な熱は、間接的に供給される。煮沸された有機材料は、次いで、ストリッピング設備に供給され、そこで、圧力解放によりアンモニアがストリッピングされ、それと同時に、溶解したオルトリン酸塩が沈殿する。これに代えて、煮沸された材料を、ストリッピング設備に供給する前に、嫌気性条件下で部分的にバイオガスに変換してもよい。
【0011】
欧州特許第1527022号明細書(EP 1 527 022 B1)には、下水汚泥を処理する方法が記載されている。この場合、下水汚泥は、少なくとも1つの前処理ステップに供され、これに加えて、50℃~180℃の温度と2000hPa~40000hPaの間の圧力下で、熱加水分解も実施される。前処理された汚泥は、次いで、好気的又は嫌気的に消化される。これに代わる形態では、前処理後に汚泥中に残っている固形分が分離され、改めて熱加水分解に供給される。熱加水分解は、小規模のオートクレーブにおいて実施され、すなわち熱は、間接的に供給される。
【0012】
下水汚泥を処理するさらに別の方法は、独国特許出願公開第102011112780号明細書(DE 10 2011 112 780 A1)から公知である。汚泥は、まず始めに熱加水分解又は熱化学加水分解で処理される。次いで、溶解したオルトリン酸塩が汚泥から分離される。その後、残りの汚泥が、消化槽において嫌気的に消化される。この場合、熱加水分解のための熱供給は、熱交換器を介して間接的に実施することが可能である、及び/又は、蒸気噴射によって直接的に実施することが可能である。汚泥は、加水分解された後、リン酸塩が分離される前に、冷却装置によって冷却される。
【0013】
独国特許出願公開第102009014776号明細書(DE 10 2009 014 776 A1)からは、有機材料を熱加水分解する方法が公知である。熱加水分解のための熱は、熱交換器を介して、すなわち加熱要素及び冷却要素を介して、間接的に伝達又は除去される。この場合、媒体は、加熱要素と冷却要素との間で循環的に圧送される。この場合、加水分解に必要な熱は、間接的に媒体に伝達される。
【0014】
上述した全ての公知の方法では、熱加水分解時に追加的に熱エネルギが必要となる。この場合には、この熱エネルギを、消化による多成分ガス生産物の一部から、又は、内燃機関で焼却された消化ガスの廃熱から、すなわち最終的にはプロセス自体において発生する熱エネルギから引き出すことも、既にしばしば考慮されている。しかも、多くの場合、この熱エネルギをさらに別の異なる方法で利用することが可能であり、熱加水分解のために使用される追加的な熱エネルギを少なくとも効果的に使用することに相当な関心が向けられている。
【0015】
この場合、間接的な熱伝達は、上述した全ての提案において実施されてはいるが、実際にはあまり好ましくない。間接的な経路を介した熱伝達は、格段に不利であり、さほど効果的ではなく、さらには下水汚泥中の最大可能固形分濃度を著しく制限するという欠点を有している。間接的な熱伝達の場合に固形分濃度を高めに選択した場合、熱伝達はさらに悪化することとなりうる。なぜなら、固形分濃度が増加するにつれて汚泥の粘度が増加するからである。
【0016】
これらの欠点を回避するために、独国特許発明第102008013980号明細書(DE 10 2008 013 980 B3)では既に、下水汚泥を処理する方法において、加水分解に必要な熱を熱交換器によって間接的に供給すること、又は、水蒸気の蒸気噴射によって直接的に供給することも提案されている。上記の提案にはさらに、下水汚泥のいわゆる余剰汚泥だけを熱加水分解によって処理して、次いで、消化槽において嫌気的に消化するという着想が既に含まれている。すなわち、加水分解された余剰汚泥は、別個に消化するのである。
【0017】
欧州特許第0784504号明細書(EP 0 784 504 B1)から公知の、有機材料を加水分解する方法においても、例えば廃水汚泥のような有機材料が水蒸気によって熱加水分解される。熱交換器を介した有機材料の間接的な加熱の他に、圧力容器における直接的なプロセスも記載されており、この直接的なプロセスでは、水蒸気が圧力容器に底部から注入されて温度を上昇させる。
【0018】
欧州特許第1198424号明細書(EP 1 198 424 B1)においても、下水汚泥を処理する方法において、蒸気を直接的に加水分解反応器に供給することが提案される。この場合、有機材料をまず始めにほぼ100℃の温度まで加熱し、次いで、ミキサーにおいて絶対圧力1000hPa~4000hPaで蒸気と混合して予熱タンクへと運び、次いで、絶対圧力3000hPa~10000hPaまで加圧して、加水分解反応器へと運ぶ。加水分解が完了した後、圧力は、圧力緩和タンクにおいて1000hPa~4000hPaまで緩和される。この圧力下で蒸気と汚泥の分離が実施され、次いで、必要に応じて汚泥のさらなる冷却が実施される。この方法の場合、約100℃まで予熱するために、熱交換器を介して間接的に熱が供給され、さらに100℃より高い温度まで加熱するために、蒸気噴射によって直接的に熱が供給される。熱要求量又は蒸気要求量を低減するために、圧力緩和タンクから蒸気が分離され、そして、第1の熱交換器に戻される、及び/又は、ミキサーで汚泥と混合される。
【0019】
蒸気噴射によって動作する加水分解が設けられているこれらの提案は、蒸気を発生させるためにそれぞれ1つの蒸気ボイラを必要とする。これは、大きな欠点である。なぜなら、蒸発させるべき水は、蒸気ボイラにおける堆積及び蒸気ボイラの損傷を回避するために、高度な純度要件を満たしていなければならないからである。これらの純度要件を満たす水質は、通常、飲料水の追加的な水処理によってのみ、又は、工業用水の充分な処理によってのみ確保することができ、従って、追加的なコスト及びリスクを引き起こし、また当然のことながら、それでも例えば損傷が発生した場合には、蒸気ボイラの追加的な故障の問題も引き起こす。さらには、蒸発させるべき水は汚泥中に残留するので、蒸発させるべき水を連続的に供給しなければならない。
【0020】
従って、廃水処理時の熱加水分解のステップにおける直接的な蒸気噴射によって得られる利点にもかかわらず、これらの提案にはなお実用上の懸念があり、所期の程度まで実施が進んでいない。相変わらず、熱加水分解のために従来から実績のある間接的な熱エネルギ供給によって動作され、上に挙げた欠点が甘受されている。
【0021】
独国特許出願公開第102008045289号明細書(DE 10 2008 045 289 A1)から、廃棄物を同時にエネルギ的かつ材料的に利用する方法が公知である。ここでは、無機廃棄物及び/又は有機廃棄物を同時にエネルギ的かつ材料的に利用するための冶金学的方法は、1つの方法ステップにおいて、高エネルギのガスを生成し、それと同時に再利用可能材料を回収することによって適用される。約2000℃での単焼時に発生した、10.5%のHと19%のCOとを含む高発熱量の炉ガスを、後焼却によって高温乾燥用の蒸気を発生させるために利用することができる。
【0022】
実際問題として、廃水処理を改善するためのさらなる提案を提示して、より効果的な動作を可能にすること、及び/又は、さらなる使用分野を開拓することが望まれている。
【0023】
上記の課題は、本発明によれば、上位概念に記載の方法において、前記乾燥が、過圧によって蒸気領域で動作する乾燥であり、前記過圧によって蒸気領域で動作する前記乾燥時に発生した蒸気の少なくとも一部分を、前記熱加水分解における前記下水汚泥の前記一部分に供給することによって解決される。
【0024】
上記の課題は、本発明によれば、上位概念に記載の装置において、前記乾燥機が、過圧によって蒸気領域で動作する乾燥機であり、前記過圧によって蒸気領域で動作する前記乾燥機において発生した蒸気を前記加水分解装置に供給するための供給装置が設けられており、前記加水分解装置は、供給された前記蒸気を前記下水汚泥と共に混合するように構成されていることによって解決される。
【0025】
本発明によれば、従来の方法でも既に一般的に実施されている乾燥ステップを、蒸気乾燥によって実施することが提案される。この蒸気乾燥時に発生した排蒸気は、その後、加水分解段階に運ばれる。この場合、下水汚泥を排蒸気によって加熱して、加水分解することが可能である。排蒸気の少なくとも一部が凝縮され、これによって下水汚泥は、所期の加水分解温度まで直接的に加熱される。
【0026】
蒸気乾燥によれば、汚泥成分も排蒸気に到達する。従って、蒸気乾燥からの凝縮水は、加水分解に影響を与える追加的な成分を含んでいる。この影響は、本発明に係る蒸気乾燥を実施しない、従来の方法において実施される乾燥ステップでのように、熱加水分解を実施するためにこのような成分を含んでいない水蒸気が使用される場合とは、明らかに異なっている。
【0027】
本発明によって生じるこのまったく新しい影響によれば、蒸気乾燥によって抽出されたこの成分のおかげで、加水分解の効率が格段に改善される。従来通りに加水分解された汚泥の消化と比較して、より迅速な又はより高いガス収率又はメタン収率が達成される。実験では、この改善が7日間の消化期間において確かに約15%になりうることが既に判明している。
【0028】
さらには、乾燥から排出された蒸気、すなわちこの場合に具体的には、上述した追加的な成分を含む排蒸気は、有利には、熱加水分解における蒸気噴射に必要な圧力まで圧縮することが可能である。これに代わる形態では、蒸気乾燥を比較的高圧力で実施して、追加的な圧縮なしに直接的な蒸気噴射を実施するという選択肢も提供される。
【0029】
特に好ましくは、上記の課題は、本発明によれば、前記過圧によって前記蒸気領域で動作する前記乾燥が、流動層乾燥であることによって解決される。
【0030】
この好ましい実施形態では、熱加水分解と流動層蒸気乾燥との新しい形の組み合わせが生まれる。流動層蒸気乾燥から排出された蒸気は、加水分解反応器に運ばれる。圧力レベル及び温度レベル並びに蒸気量は、必要に応じて追加条件によって、加水分解のその時々の実際の条件にさらに追加的に適合させることができる。
【0031】
従来の水蒸気とは異なる組成の排蒸気による加水分解の上述した改善は、消化ガス収率に関して約15%であり、又は、消化槽の所要容積に関して約50%の低減である。従って、使用することが好ましい、閉じられた流動層蒸気乾燥機からの排蒸気を、相応の乾燥条件下において利用することが特に有利である。
【0032】
乾燥プロセスが閉じられた蒸気循環において、かつ過圧下において実施される場合に実現されうる、蒸気状の排蒸気の組成は、驚くべきことにこれらの利点を示す。流動層蒸気乾燥機内の温度は約150℃であり、これによって、乾燥中に蒸発した水の成分の加水分解が追加的に実施される。このことは、大気圧で動作する又は過圧によって動作しない蒸気乾燥機であって、かつこのような加水分解が実施されない蒸気乾燥機と比較して、顕著な変化である。
【0033】
流動層蒸気乾燥は、蒸気の組成の所期の変化をもたらし、このことは、エネルギ収率を高めるための改善された熱加水分解を可能にし、従来の方法とは比べものにならないものである。
【0034】
水蒸気は、上述したように熱加水分解に直接的に運ばれるのではなく、まず始めに流動層蒸気乾燥に運ばれ、その後、次いで、下水汚泥から抽出された成分と共に熱加水分解に供給される。従って、本発明による方法には、水蒸気を2重に利用することも含まれており、その利点は、流動層蒸気乾燥をこのような形態で利用することで初めて実現することが可能となる。
【0035】
特に有利には、蒸気ボイラがもはや不要となる。これは、装置に関する相当のコストの削減を意味する。さらには、蒸気を発生させるための精製水処理ももはや不要となる。これは、廃水処理設備の操作員が、もはや精製水処理に関する高度な前提要件に悩まされなくてもよくなることを意味する。また、このような精製水処理を用意しなくてよくなるだけでなく、何らかの形で整備や修理に基づいて発生しうるダウンタイムを事前に考慮する必要もなくなる。
【0036】
さらに別の利点は、工程水がもはや何ら消費されなくなるということにある。これによりコストが削減され、これに対応する容積の確保や管理も不要となる。
【0037】
また、従来の設備であれば通常は使用する必要があった、排出された蒸気を凝縮するための熱交換器を、代替なしに省略することも可能となる。
【0038】
同様にして、予熱交換器も冷却熱交換器ももはや不要となる。全体としてこれによって動作がより簡単になり、機械設備がより少なくなる。
【0039】
これらの利点は、他の種類の蒸気乾燥機でも得られるが、流動層蒸気乾燥機が特に実証されており、さらなる利点を提供する。適合可能な形態の流動層蒸気乾燥は、例えば欧州特許出願公開第2457649号明細書(EP 2 457 649 A1)から公知である。この流動層蒸気乾燥は、とりわけ砂糖工場における糖粒子の流動化に関連して記載されているが、パラメータを適切に適合すれば、下水汚泥の乾燥のために使用することも可能である。このことは、既にパイロットスケールで試験され、非常に良好に機能している。非常に良好な機能は、熱加水分解と組み合わせることによって得られる。
【0040】
流動層乾燥を、ここでは湿った可燃物のガス化に関連して組み合わせるためのさらに別の方法は、独国特許出願公開第102009049181号明細書(DE 10 2009 049 181 A1)に記載されている。この場合、湿った可燃物として、セルロース含有量が比較的多い廃棄物及び残留物、並びに一次及び二次起源のバイオマスの処理からの特定の留分が記載されている。流動層乾燥機を使用できるようにするためには、液状の可燃物を予め熱交換器を介して間接的に予熱しておかなければならない。なぜなら、凝縮水の直接的な接触は、可燃物の含水量の望ましくない増加を引き起こしうるからである。廃水からの下水汚泥の後処理において流動層乾燥機を使用することは、このような公知の方法では構想されておらず、また可能でもなかった。
【0041】
本発明の特に有利な実施形態では、加水分解すべき下水汚泥の、熱交換器による間接的な予熱を完全に省略することが可能である。このことはとりわけ、充分な量の蒸気が利用可能であって、かつこの蒸気が他に必要とされない場合に当てはまる。そうすると、熱交換器、パイプライン、ポンプのような全ての補助装置を省略することが可能となる。これにより、投資コスト及び運用コストが大幅に削減される。
【0042】
この提案された方法はさらに、よりロバストでもあり、かつ操作技術の点でより簡単に取り扱いが可能である。このことはとりわけ、蒸気噴射によって注入された蒸気を直接的に凝縮することにより、例えばバイオファウリング、スケーリング、漏出のような従来から発生している問題、並びに、熱交換器の表面の清掃のような追加作業が回避されることに基づく。
【0043】
本発明に係る方法が新鮮水を必要としないことも、特に有利である。すなわち上述したように、蒸気ボイラ又は他の蒸気発生装置をそもそも別個に用意して維持する必要性がなくなるだけでなく、その他の点では、水を節約することによって資源が節約されるという運用上の利点も得られる。
【0044】
さらに別の利点は、下水汚泥の所期の加水分解の他に、排蒸気の少なくとも一部の凝縮も実施されることである。この凝縮により、蒸発エンタルピーが解放され、蒸気乾燥時に予め消費された熱エネルギの大部分が回収される。このようにしてさらには、さらなるエネルギ節減、又は、これと同等のCO節減が実施される。
【0045】
発生した凝縮された排蒸気は、その後、有利には嫌気性消化においてもそのまま残留し、従って、一体的に引き続き処理される。この場合、凝縮された排蒸気の有機成分も少なくとも部分的に消化され、追加的なエネルギに変換される。
【0046】
一連の実施形態では、次いで、前記熱加水分解に供された、前記下水汚泥の前記一部分によって消化が実施される。
【0047】
このために、とりわけ消化槽を設けることが可能である。消化槽及び消化段階もまた、冒頭に記載されているように先行技術から公知であり、本発明の変形形態においてもこのような消化を実施することが好ましい。しかしながら、本発明の実施形態を、熱加水分解に後続する消化槽及び消化なしで実施することも可能である。
【0048】
さらに別の好ましい実施形態では、前記脱水時に供給された下水汚泥から、リン回収が実施される。
【0049】
この措置は、下水汚泥中に含まれている植物栄養素を供給して、有利にかつ有効に利用するという利点も有する。これらの植物栄養素は、下水汚泥の水からリン酸塩を沈殿させて窒素を分離することによって回収することができるが、下水汚泥から、すなわち下水汚泥の焼却残渣から回収するやり方でも回収することができる。さらには、高温の単焼(燃焼)において得られたリン酸塩含有性のスラグを肥料として利用することも可能である。
【0050】
独国特許発明第102012014357号明細書(DE 10 2012 014 357 B3)からは、冶金高炉での溶融ガス化によってリン含有性の下水汚泥を材料的及び/又はエネルギ的に利用することを企図した実施形態が公知である。この場合、気相に到達したリン化合物が分離され、冶金的かつ材料的なリサイクルによって利用可能にされる。
【0051】
さらに別の実施形態では、圧力下にある排蒸気の放熱を、水処理のため、すなわち工程水の蒸気ストリッピングのため、機械的な脱水のため、マイクロタービンの運転のため、及び、塩含有性の水の蒸留濃縮のために使用するという意味で、フレキシブルに利用することが可能である。
【0052】
さらなる実施形態では、1つの下水処理場内でのエネルギの流れ、及び、複数の下水処理場間でのエネルギの流れを、乾燥汚泥の形態で貯蔵可能かつ輸送可能な貯蔵媒体が生産されるという意味で、フレキシブルにすることが可能である。この場合、乾燥汚泥は、比較的小規模の下水処理場から経済的に輸送して、比較的大規模の下水処理場の場所において一緒に焼却することが可能である。
【0053】
本発明の1つの実施形態は、消化槽が設けられていない廃水処理装置にある。この場合、乾燥汚泥は、焼却設備、とりわけ単焼設備又は廃棄物焼却設備に、若しくは、溶融ガラス固化設備に供給することが可能である。発生した高発熱量の炉ガスは、後焼却において高温乾燥用及び/又は発電用の蒸気を発生させるために利用することができる。また、セメント工場又は石炭火力発電所又はその他の設備での利用も可能である。乾燥と焼却とを組み合わせる場合に、経済性にとって特に決め手となる生産物は電力である。この実施形態により、最終的に電力収量が増加されるように方法が調整される。
【0054】
さらに別の実施形態では、本発明に係る原理が、下水汚泥だけでなく水肥及び調理廃棄物にも適用される。
【0055】
本発明のさらなる利点は、従属請求項並びに以下の図面の説明に記載される。
【0056】
以下では、本発明のいくつかの実施例を図面に基づいてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】本発明の1つの好ましい実施形態のプロセスシーケンスに関するフローチャートである。
図2】本発明に係る廃水処理装置の第1の実施形態の構造に関する概要図である。
図3】本発明に係る廃水処理装置の第2の実施形態の構造に関する概要図である。
図4】本発明に係る廃水処理装置の第3の実施形態の構造に関する概要図である。
図5】本発明に係る廃水処理装置の第4の実施形態の構造に関する概要図である。
図6】本発明に係る廃水処理装置の第5の実施形態の構造に関する概略図である。
図7】本発明に係る廃水処理装置の第6の実施形態の構造に関する概要図である。
図8】本発明に係る廃水処理装置の第7の実施形態の構造に関する概要図である。
図9】水道水からの蒸気による加水分解の過程を示す線図である。
図10】蒸発乾燥からの排蒸気による加水分解の過程を示す、図9と同様の線図である。
【0058】
図1には、本発明を説明するために、プロセスシーケンスが概略的かつ特に簡略的に図示されている。これは1つの実施形態であるが、シーケンスの概要を特に簡単に説明できるようにするために、この実施形態には既に、いくつかの必ずしも必須ではない方法ステップも含めてある。
【0059】
第1のステップでは、下水汚泥が供給される。この下水汚泥は、廃水から獲得され、予め例えば前処理0に、場合によっては曝気にも、そして後処理に供しておくことが可能である。
【0060】
これは一般廃水とすることもできるが、例えば砂糖工場のような工業設備からの廃水とすることもできる。
【0061】
前処理0からの、場合によってはさらに別の段階からの下水汚泥は、その後、余剰汚泥又は生汚泥の形態で加水分解8へと供給される。この場合、加水分解反応器において熱加水分解が実施される。
【0062】
熱加水分解は、例えば廃水中に含まれている下水汚泥のための実績のある処理方法であり、下水汚泥の消化及び脱水を改善するものである。この場合、加水分解温度は、約100℃から約200℃に変化する。この加水分解温度を達成するために必要な熱エネルギは、熱交換器を介して間接的に伝達されるか、又は、本発明の実施形態のように蒸気によって直接的に伝達される。熱エネルギを節約するために、加水分解の前に下水汚泥を濃縮することができる。この図示された本発明の実施形態によっても、直接的な熱伝達と比較した、熱交換器による間接的な熱伝達の欠点が回避される。この欠点は、間接的な熱伝達の場合には、粘度の増加が原因で、下水汚泥の濃縮率が最大で約6%~7%の乾燥物質に制限されてしまうことにある。直接的な熱伝達によれば、この制限はなくなる。なぜなら、直接的な熱伝達により、下水汚泥の濃縮率を約10%~15%の乾燥物質にすることが可能となるからである。
【0063】
しかも、この記載された実施形態によれば、これまで直接的な熱伝達の妨げになっていた追加的な構成要素や工程材料、例えば蒸気発生器や、蒸気発生器を障害なく動作させるための適切に処理された水を、使用する必要がなくなる。これはつまり、蒸気ボイラの運転に関する厳しい安全規制も、これまではこれのせいで蒸気ボイラの使用があまり有利であるように思われてこなかったのだが、単純に蒸気ボイラを完全に省略することでもはや重要ではなくなるということを意味している。
【0064】
下水汚泥の熱加水分解における蒸気加熱のプロセス工学的利点を活用することが可能となり、それと同時に、追加的な構成要素及び工程材料の既存の欠点を回避することも可能となる。
【0065】
加水分解された汚泥は、消化5又は11に供給され、そこで消化される。このときに発生した消化汚泥は、その後、脱水段階15に供給される。消化汚泥は、そこで例えば機械的に脱水される。このようにして機械的に脱水された汚泥は、コンディショニング段階32においてペレット化されるか、又は、他の方法で単離され、ペレット又は顆粒の形態でライン16を介して蒸気乾燥機19に供給される。蒸気乾燥機19での蒸気乾燥時には乾燥汚泥が発生し、この乾燥汚泥は、例えば下水汚泥単焼設備においてエネルギ的かつ材料的に利用することができる。これに代えて、乾燥汚泥をブリケットに加工して、このブリケットを例えば溶解炉においてエネルギ的かつ材料的に利用することも可能である。
【0066】
これに代えて、コンディショニング段階32を蒸気乾燥機19の内部に配置することも可能である(図示せず)。これにより、蒸気乾燥機19への有利な装荷を実現することが可能となり、また、閉じられた工程管理のおかげで臭気の発生を回避又は低減することが可能となる。
【0067】
とりわけ、蒸気乾燥機19での蒸気乾燥時に排蒸気が発生し、この排蒸気は、本発明によれば供給ライン20を介して加水分解反応器8に供給される。
【0068】
排蒸気以外の他の成分は、搬送システム25によって排出される。
【0069】
図2には、本発明の第1の実施形態の概要が図示されている。この場合における中心的な態様は、図1でも既に図示された方法ステップ又は装置要素である。廃水は、まず始めに前処理0、その後に曝気1、次いで後処理2に供される。ポンプ3と、ここでは依然として設けられている加熱用の熱交換器4とを介して、前処理された廃水の一部が第1の消化槽5に供給され、消化が完了した後、初沈汚泥のための脱水アセンブリ6に送られる。第1の消化塔5において発生したメタンは、熱電併給設備23に供給される。
【0070】
しかしながら、より興味深いのは、ここでは後処理2の後に下水汚泥を受け取る第2の経路である。これは、前脱水アセンブリ7に供給され、そこから加水分解反応器8へと移される余剰汚泥である。この加水分解反応器8は、本発明の中心的な要素の1つである。
【0071】
さらにもう1つの経路0が示されており、この経路0は、戻される過剰分又は余剰分のためにあり、前脱水アセンブリ7に供給されない余剰汚泥の一部を曝気1へと戻す。
【0072】
とりわけ、加水分解反応器8へと延びている破線の供給ライン20が見て取れるが、これについては後でより詳細に説明する。
【0073】
下水汚泥は、加水分解反応器8から、冷却用の熱交換器9を通過した後、第2の消化塔11に供給される。この第2の消化塔11において、加水分解された下水汚泥が消化される。発生したメタンは、破線で図示されたさらに別のライン13を介して、同様にして熱電併給設備23に供給される。
【0074】
消化塔11からの消化汚泥は、その後さらにMAP設備12(リン酸塩マグネシウムアンモニウム設備)へと進み、そこからライン14を介して余剰汚泥のための後脱水アセンブリ15へと進む。
【0075】
加水分解された余剰汚泥の遠心分離液は、後脱水アセンブリ15からラインを介してストリッピング設備17に運ばれ、そこでさらに処理される。後脱水アセンブリ15からの脱水汚泥は、ライン16を介して乾燥機19に供給される。この時点では既に、約30%の乾燥物質を含む乾燥汚泥となっている。
【0076】
乾燥機19は、蒸気乾燥機又は蒸発乾燥機、とりわけ流動層乾燥機である。
【0077】
乾燥機19において発生した蒸気は、取り出されて、とりわけ上述したように加水分解反応器8に、ひいてはその中に存在する下水汚泥に、直接的に供給するために利用される。供給ライン20内の蒸気、いわゆる排蒸気は、この場合には圧力下にあるか又は相応に圧縮されており、かつ高温を有しており、この高温を、加水分解反応器8での熱加水分解のために直接的に利用することが可能である。この場合、供給ライン20からの蒸気は、加水分解反応器8において凝縮し、この蒸気中に含まれている物質は、例えば消化塔11での消化のような後続のステップにおいて一緒に使用することが可能である。すなわち、利用できない廃棄物はほとんど残らない。
【0078】
供給ライン20内の蒸気又は排蒸気の一部を、例えば熱交換器4又は熱交換器9に供給することによって他の目的に利用することも可能であり、そこで、この蒸気又は排蒸気の一部は、その中に含まれているエネルギを伝達するためにも利用される。
【0079】
排蒸気の一部を、ストリッパ17に供給することも可能である。ストリッパ17はさらに、後脱水アセンブリ15からのアンモニア含有性の成分を含み、ストリッピング後にアンモニアを放出する。このアンモニアは、再利用可能材料として回収することができる。
【0080】
初沈汚泥のための第1の脱水アセンブリ6からの機械的に脱水された汚泥も、蒸気乾燥機19に供給することができ、このことは、ここではさらに別のライン18によって図示されている。
【0081】
熱電併給設備23の廃熱は、ライン21を介して、蒸気乾燥機19に必要なエネルギの一部を供給するために利用することができる。蒸気乾燥機19は逆に、そこで発生した余剰量の熱媒油又は加熱蒸気を、ライン22を介して熱電併給設備23に供給することができる。これに加えて又はこれに代えて、蒸気乾燥機19は、排蒸気の一部を発電用のマイクロタービン又は小型タービン30に出力することができる。出力されたこのエネルギ又は電力Pは、プロセスから回収されるか、又は、別の箇所でも適切に再び回収されて利用することができる。
【0082】
2つの消化槽5及び11からの消化ガスは、ライン13を介して熱電併給設備23に供給される。
【0083】
熱電併給設備23はさらに、プロセスの他の箇所で引き続き使用するために、又は、プロセスの外で利用するためにも、追加的な廃熱26を排出する。このことは、参照符号Hで示されている。さらには、ライン28を介して電力Pが出力される。
【0084】
最後に、蒸気乾燥機19において乾燥された物質は、90%の乾燥物質を含む乾燥汚泥として、搬送システム25によって蒸気乾燥機19から排出される。
【0085】
図3に図示された第2の実施形態では、第1の実施形態にいくつかの変更が加えられる。つまり図3では、余剰汚泥と初沈汚泥との共通の消化が実施され、従って、第2の消化塔11とストリッピング17とが省略される。しかしながら、このために、余剰汚泥のための別個の加水分解8とMAP沈殿12とが設けられている。
【0086】
この実施形態においても、蒸気乾燥機19として流動層乾燥機が設けられている。これによって排蒸気を、供給ライン20を介して加水分解8において利用することが可能となる。
【0087】
この実施形態の利点として、第1の実施形態と同様に、追加的な化石燃料エネルギを使用せずに、従来の30%に代えて90%の乾燥物質含有量を有する下水汚泥の形態の褐炭代替燃料が生産されること、並びに、熱電併給設備23の排熱が熱媒油22を介して乾燥機19で利用されることが挙げられる。
【0088】
図4には、第3の実施形態が図示されている。図4では、再びストリッピング17が併設されている。これにより、流動層乾燥機又は蒸気乾燥機19からの排蒸気を、供給ライン20を介して追加的にストリッピング17において利用することが可能となる。
【0089】
実施されるストリッピング17は、脱水段階からの汚泥水が処理される工程水処理であるのみならず、それと同時に、排蒸気の凝縮水の処理でもある。これによって、追加的な凝縮水の処理が必要とされる他の乾燥方法と比較した利点が得られる。
【0090】
このことは、アンモニウムの大部分が排蒸気中に含まれているということも考慮している。このことは、以下の又は上述の他の実施形態にも当てはまる。
【0091】
第2の実施形態に加えて、乾燥機19のためのさらに別のヒートシンクと、アンモニア水NHの形態のさらに別の再利用可能材料の生産とが設けられている。
【0092】
図5には、第4の実施形態が図示されている。図5では、第2の実施形態とは異なり、1つの共通の前脱水7、加水分解8、MAP沈殿12、消化5、後脱水15、及び、後脱水15からの排出物のストリッピング17が実施される。
【0093】
図6には、第5の実施形態が図示されている。第4の実施形態に加えて、供給ライン20によって供給される、乾燥19からの余剰の排蒸気によって、初沈汚泥又は生汚泥の加熱が実施される。
【0094】
その利点として、とりわけ脱水能力の顕著な改善と質量流量の低減とが挙げられる。
【0095】
図7では、本発明の第6の実施形態が見て取れる。この実施形態では、工程数が格段に低減されており、従って低コストであるが、中央にさらに別の追加的な工程が設けられている。この場合、MAP沈殿12は、脱水15の前又は後に実施することができる。この実施形態では、消化槽5,11と、バイオガス又は焼却ガスの生産とが、対応するライン24も含めて完全に省略される。
【0096】
これに代わる形態では、さらに別の再利用可能材料29として高リンスラグ(16.4%のP)を生産するために、冶金高炉での2000℃での溶融ガス化による単焼(燃焼)27が実施される。このようにして、重金属及びウランを含まない生物学的に利用可能なリン肥料Pを得ることができる。電気エネルギと熱を発生させるために、高発熱量の炉ガスの後焼却が実施される。これは、図2~6の実施形態と比較した利点でもある。なぜなら、将来的に予期される立法措置でも目標とされるような、さらに別の価値のある再利用可能材料を、回収することが可能となるからである。
【0097】
下水汚泥が生産されるのではなく、その代わりにエネルギと熱が得られ、これによって搬送コストが低減される。下水汚泥は、廃水処理設備の場所で焼却され、従って、乾燥及び廃水処理工程全体のための熱及びエネルギ源として使用される。下水汚泥はさらに、電気エネルギ及び熱エネルギを消費する外部負荷のための熱源及びエネルギ源として利用することも可能である。焼却では、廃水設備で消費されうるエネルギよりも多くのエネルギが生産される。
【0098】
地域熱供給、蒸発、又は、暖房のための追加的な熱が生産され、例えばポリマーのような沈殿補助剤の使用が節減された、大幅に単純化された工程管理が得られる。
【0099】
消化槽が省略されるので、追加的な可能性にもかかわらず投資コストが削減される。
【0100】
廃水中に含まれている炭素は、焼却により、消化において事前にCOを生産することなく完全に利用することができる。
【0101】
最後に図8には、第7の実施形態が図示されており、この実施形態は、別個の脱水6が省略されている点で第6の実施形態とは異なっている。
【0102】
追加的に生産された熱は、蒸留水処理設備供給される。処理された水、そこで排出される。
【0103】
図9には、実験結果が概略的に図示されている。横軸には時間tが日dで目盛付けされており、縦軸にはガス発生量Gが、有機乾燥残渣1キログラム当たりの標準リットル(NL/kg oTRと略記)で目盛付けされている。水道水からの蒸気によって加水分解した場合、すなわち本発明に係る手順に即していない場合における、加水分解された汚泥のガス発生量Gの時間的な過程が図示されている。3つの曲線がプロットされており、すなわち、上側の曲線としてバイオガス発生量が、中央の曲線としてメタン発生量が、下側の曲線として二酸化炭素発生量が、それぞれ同じパラメータでプロットされている。
【0104】
比較のために図10には、蒸気乾燥からの排蒸気によって加水分解した場合、すなわち本発明に係る手順に即した場合における、加水分解された汚泥のガス発生量の時間的な過程が同様の形態で図示されている。
【0105】
ここでも、横軸には時間tが日dで目盛付けされており、縦軸にはガス発生量Gが、有機乾燥残渣1キログラム当たりの標準リットル(NL/kg oTRと略記)で目盛付けされている。最も上側の曲線としてバイオガス発生量が、中央の曲線としてメタン発生量が、下側の曲線として二酸化炭素発生量が図示されている。
【0106】
図9及び図10の相異なる曲線は、一般下水処理場からの余剰汚泥との比較実験に関連する。これらの比較実験では、全ての工程条件、とりわけ温度、加水分解期間、汚泥サンプル特性、凝縮水量、又は、水蒸気量が、同じになるように選択された。加水分解のために、汚泥サンプルの一部分に蒸気乾燥からの凝縮水/排蒸気を加え、汚泥サンプルの別の一部分に清浄な水道水又は蒸気を加えた。加水分解された汚泥サンプルの各部分に対してそれぞれ、3回繰り返し判定による関連指針に即したバッチ消化試験において標準化された消化が実施された。
【0107】
図9及び図10の結果を比較すると、測定された特定のガス生産量及びメタン生産量に基づいて、図10における排蒸気によって加水分解された汚泥サンプルの方が、より多くのガス又はメタンを格段により迅速に供給することが分かる。約7日間の消化期間において、例えば約15%多いガス及びメタンが発生する。水道水からの水蒸気によって加水分解された従来の汚泥サンプルは、同じガス量を得るために約5~7日長く必要とする。すなわち、本実施例では、排蒸気によって加水分解された汚泥を消化するために、消化槽を約40~50%小さく設計することが可能となる。これは、当業者を驚かせる格別の経済的利点である。
【0108】
上記の結果は、溶解した有機化合物の放出に関するさらなる分析によって正しいことが確認される。従って、例えば、各加水分解物サンプルに基づいて、排蒸気による加水分解の方が約9%高い消化率をもたらすことが示される。
【0109】
以下は、親出願(特願2017-516930)の出願当初請求項である。
[請求項1]
廃水処理方法であって、
廃水(0)に含まれた下水汚泥の少なくとも一部分を加水分解(8)に供し、
前記加水分解(8)を熱加水分解として実施し、
前記加水分解(8)のステップの後に乾燥(19)を実施する、
廃水処理方法において、
前記乾燥(19)は、過圧によって蒸気領域で動作する乾燥であり、
前記過圧によって蒸気領域で動作する前記乾燥(19)時に発生した蒸気の少なくとも一部を、前記熱加水分解(8)における前記下水汚泥の前記一部分に供給(20)する、
ことを特徴とする廃水処理方法。
[請求項2]
前記過圧によって前記蒸気領域で動作する前記乾燥(19)は、流動層乾燥であり、
前記乾燥(19)時に流動層乾燥によって発生した成分を、前記蒸気と共に前記熱加水分解(8)における前記下水汚泥の前記一部分に供給する、
請求項1記載の廃水処理方法。
[請求項3]
次いで、前記熱加水分解(8)に供された、前記下水汚泥の前記一部分によって消化(5,11)を実施する、
請求項1又は2記載の廃水処理方法。
[請求項4]
前記消化(5,11)のステップと、前記乾燥(19)との間に、前記消化に供された前記下水汚泥の機械的な脱水を実施する、
請求項3記載の廃水処理方法。
[請求項5]
一方では余剰汚泥と、他方では初沈汚泥とで、それぞれ別個の消化(5,11)を実施する、
請求項3又は4記載の廃水処理方法。
[請求項6]
消化(5,11)を実施しない廃水処理が設けられており、
乾燥汚泥を単焼に供給し、発生した高発熱量の炉ガスを、後焼却において高温乾燥用の蒸気を発生させるために利用する、
請求項1又は2記載の廃水処理方法。
[請求項7]
前記乾燥(19)時に発生した蒸気の一部を、加水分解され消化された前記下水汚泥の分離された水からアンモニアを蒸気ストリッピングするために使用する、
請求項1から6のいずれか1項記載の廃水処理方法。
[請求項8]
前記乾燥(19)時に発生した蒸気の一部を、前記下水汚泥の機械的な脱水のため、及び/又は、マイクロタービン又は小型タービンの運転のため、及び/又は、塩含有性の水の濃縮のために使用する、
請求項1から7のいずれか1項記載の廃水処理方法。
[請求項9]
前記脱水時に取り出された汚泥水から、又は、前記脱水に供給された下水汚泥から、リン回収を実施する、
請求項1から8のいずれか1項記載の廃水処理方法。
[請求項10]
廃水処理装置であって、
下水汚泥を加水分解処理するための加水分解装置(8)と、
下水汚泥を乾燥させるための乾燥機(19)と、
を有する廃水処理装置において、
前記乾燥機(19)は、過圧によって蒸気領域で動作する乾燥機であり、
前記過圧によって蒸気領域で動作する前記乾燥機(19)において発生した蒸気を前記加水分解装置(8)に供給するための供給装置(20)が設けられており、
前記加水分解装置(8)は、供給された前記蒸気を前記下水汚泥と共に混合するように構成されている、
ことを特徴とする廃水処理装置。
[請求項11]
前記乾燥機(19)は、流動層乾燥機であり、
前記乾燥(19)時に流動層乾燥によって発生した成分は、前記蒸気と共に前記熱加水分解(8)における前記下水汚泥の一部分に供給される、
請求項10記載の廃水処理装置。
[請求項12]
前記加水分解装置(8)に直接的に又は間接的に接続された少なくとも1つの消化槽(5,11)、例えば消化塔が設けられている、
請求項10又は11記載の廃水処理装置。
[請求項13]
1つ又は複数の前記消化槽(5,11)に直接的に又は間接的に接続された脱水段階が設けられている、
請求項12記載の廃水処理装置。
[請求項14]
少なくとも2つの消化槽(5,11)が設けられており、前記少なくとも2つの消化槽の一方は余剰汚泥のために設けられており、他方は初沈汚泥のために設けられている、
請求項12又は13記載の廃水処理装置。
[請求項15]
消化槽(5,11)を用いない廃水処理が設けられており、
乾燥汚泥は、焼却設備、とりわけ単焼設備又は廃棄物焼却設備に、若しくは、溶融ガラス固化設備に供給され、
発生した高発熱量の炉ガスは、後焼却において高温乾燥用及び/又は発電用の蒸気を発生させるために利用される、
請求項10又は11記載の廃水処理装置。
[請求項16]
前記乾燥機(19)に接続された、アンモニアのストリッピング(17)が設けられている、
請求項10から15のいずれか1項記載の廃水処理装置。
[請求項17]
リン回収段階が設けられている、
請求項10から16のいずれか1項記載の廃水処理装置。
【符号の説明】
【0110】
0 前処理
1 曝気
2 後処理
3 ポンプ
4 加熱用の熱交換器
5 消化槽
6 初沈汚泥のための脱水アセンブリ
7 余剰汚泥のための前脱水アセンブリ
8 加水分解反応器
9 冷却用の熱交換器
10 ライン(有機廃水処理の戻り装荷)
11 消化槽
12 MAP設備
13 ライン(消化ガスCH
14 ライン(加水分解された消化汚泥又は生汚泥)
15 脱水段階
16 ライン(加水分解された余剰汚泥の遠心分離液)
17 ストリッピング
18 ライン(初沈汚泥の遠心分離液)
19 蒸気乾燥機
20 供給ライン
21 ライン(熱電併給設備からの廃熱)
22 ライン(熱媒油/加熱蒸気)
23 熱電併給設備(CHP)
24 ライン(焼却ガス)
25 搬送システム(KS90)
26 熱電併給設備からの追加的な廃熱
27 単焼(燃焼)
28 電力
29 搬送システム(リンスラグ)
30 マイクロタービン又は小型タービン
31 蒸留水処理設備
32 コンディショニング段階
O 余剰
H 廃熱
P 出力、特に電力(発電)
W 水
G 有機乾燥残渣1キログラム当たりの標準リットル(NL/kg o TRとも)でのガス発生量
d 日
t 時間
KS30=約30%の乾燥物質含有量を有する乾燥汚泥
KS90=約90%の乾燥物質含有量を有する乾燥汚泥
=リン肥料
CO,H=焼却ガス
CH=メタン
NH=アンモニア
□ バイオガス発生量
● メタン発生量
△ 二酸化炭素発生量
図1
図2
図3
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図7
図8
図9
図10