(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】流体検査用カセット
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20221031BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20221031BHJP
G01N 35/08 20060101ALN20221031BHJP
【FI】
C12M1/00 A
G01N37/00 101
G01N35/08 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020140544
(22)【出願日】2020-08-24
(62)【分割の表示】P 2017555345の分割
【原出願日】2016-04-25
【審査請求日】2020-09-23
(32)【優先日】2015-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516014351
【氏名又は名称】メサ バイオテック,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】ノワコウスキ,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ワング,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】カリー,ロバート,ビー.
(72)【発明者】
【氏名】カイ,ホング
(72)【発明者】
【氏名】リンドバーグ,コンラッド
(72)【発明者】
【氏名】ボウリアン,マーチン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス,ドナルド,ジェイ.
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-515611(JP,A)
【文献】特表2014-507937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
G01N 33/00-37/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的核酸を検出するためのカセットであって、
複数のチャンバと、
前記チャンバに接続された複数のベントポケットと、
1つまたは複数の前記ベントポケットを密封するための熱不安定性材料と、
前記熱不安定性材料よりも高い溶融温度、及び/又は、前記熱不安定性材料よりも高いガラス転移温度を有する熱安定性材料と、
前記熱不安定性材料と前記熱安定性材料との間に配置されたガスケットと、
を備え、
前記ガスケットは前記複数のベントポケットを包含する開口部を含む、カセット。
【請求項2】
前記ガスケットは、圧力を平衡させると共に開いたベントポケット間の自由な空気移動を保証するのに十分な空気体積を提供するのに十分な厚さである、請求項1に記載のカセット。
【請求項3】
フレキシブル回路を更に備えており、前記フレキシブル回路は、パターン化された金属の電気部品を含む、請求項1に記載のカセット。
【請求項4】
前記フレキシブル回路が前記チャンバの少なくとも1つの中の流体と直接接触するように、前記ガスケットは、第2の開口部を含むか、または寸法が制限されている、請求項3に記載のカセット。
【請求項5】
前記電気部品は抵抗発熱体または導電トレースを含む、請求項3に記載のカセット。
【請求項6】
前記抵抗発熱体は前記ベントポケットと整列している、請求項5に記載のカセット。
【請求項7】
前記チャンバのうちの1つまたは複数の加熱温度、加熱時間および/または加熱速度を調節するための1つまたは複数の周囲温度センサを
更に備えてなる、請求項1に記載のカセット。
【請求項8】
前記熱不安定性材料は、ポリオレフィン、ポリスチレン、又は、ポリカーボネートを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のカセット。
【請求項9】
前記熱安定性材料は、ポリイミドを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のカセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、その明細書および特許請求の範囲が参照により本明細書に組み込まれるところの、2015年4月24日に出願された「Fluidic Test Cassette」と題された米国仮特許出願第62/152724号および2016年4月14日に出願された「Fluidic Test Casette」と題された米国仮特許出願第62/322738号の優先権および出願の利益を主張する。
【0002】
[発明の技術分野]
本発明の実施形態は、核酸を検出および同定するための統合装置および関連する方法に関する。装置は、完全に使い捨てであっても、使い捨て部分と再使用可能な部分を含んでもよい。
【背景技術】
【0003】
以下の議論がいくつかの刊行物および参考文献を参照し得ることに留意されたい。本明細書におけるこのような刊行物の議論は、科学的原則のより完全な背景について与えられており、このような刊行物が特許性判断のための先行技術であることの自認として解釈されるべきではない。
【0004】
感染性および新興の疾患、生物学的脅威薬剤(biothreat agent)、遺伝病および病原体の環境リザーバの公衆衛生への影響および意識が高まっているため、より有益で高感度で特異的な使用時点の迅速アッセイの必要性が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づくツールの需要を増加させている。PCRに基づく増幅のような方法による核酸に基づく分子検査は、極めて高感度で、特異的で、有益である。残念なことに、現在利用可能な核酸検査は、精巧で高価な器具類、特殊な実験材料および/またはユーザ介入に依存する複数の操作を必要とするため、現場には不適当であるか、または有用性が限定される。結果として、分子検査のためのほとんどの試料は、中央試験所に出荷され、必要な情報を得るために長い往復時間を要する。
【0005】
迅速な使用時点分子検査の必要性に対処するために、従来の努力は、使い捨てカートリッジおよび比較的高価な関連機器を使用する製品設計に集中してきた。流体の移動、増幅温度の制御および検出を達成するための外部器具類の使用は、分子検査に必要な複数の過程を統合することに固有の技術上の課題の多くを簡素化する。残念なことに、精巧な器具類への依存は、小規模な診療所、地方および州政府、ならびに法執行機関に多大な経済的障壁を課す。さらに、検査を実施するための少数の機器に依存すると、生物兵器剤の放出または新興伝染病の疑いがあるときに生じるように、必要性が増加している期間中に不必要な遅延が引き起こされるおそれがある。実際、爆発的流行がサージ容量およびスループット増加を要求すると、機器および使い捨て試薬カートリッジモデルが潜在的に有意なボトルネックとなる。さらに、器具類への依存は、ロジスティック制約がかさばる関連機器の輸送を妨げる、またはインフラストラクチャ要件(例えば信頼性の高い電源)が存在しない配置場所への検査装置の特別配布を複雑にする。
【0006】
重力が、既存の微小流体装置における流体移動の手段として記述されてきた。しかしながら、典型的な装置は、このような流体移動のプログラム可能なもしくは電子的な制御も、3つ以上の流体の混合も可能にしない。また、いくつかの装置は、垂直に配向すると、不活性または予備充填流体の落下によって生じる圧力降下を利用してわずかな真空を誘発し、反応物質を処理チャンバ内に引き入れ、これによって貯蔵および輸送複雑性が増して、予備充填流体の安定性が保証される。複数の個別的ステップで流体を移動させることを教示する既存の装置は、チャンバ間に壊れやすいシールまたはバルブを要求し、これが操作および製造を複雑にする。これらの装置は、各チャンバに対して離れた位置にある別個のベント(vent)の使用を教示していない。
【0007】
典型的な微小流体装置は、標準的な実験室手順で使用されるよりも小さな反応体積を利用する。PCRまたは他の核酸増幅反応、例えばループ介在増幅(LAMP)、核酸ベースの配列増幅(NASBA)ならびに他の等温および熱サイクル法は、典型的には、5~100μLの反応体積を用いて検査および研究実験室で実施される。これらの反応体積は、希釈標本中の希少なアッセイ標的の検出を確実にするのに十分な検査標本体積を収容する。伝統的な実験室分子検査で使用されているものに比べて反応体積を減少させる微小流体システムはまた、必然的に反応に添加することができる標本の体積を減少させる。より小さい反応体積の結果として、希釈標本中の標的の検出可能な量の存在を確実にするために、またはアッセイ標的が不足している場合に十分な標本体積を収容する能力が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【0009】
本発明は、複数のチャンバと、これらチャンバに接続された複数のベントポケットと、1つまたは複数のベントポケットを密封するための熱不安定性材料(易熱性材料、heat labile material)とを含む、標的核酸を検出するためのカセットであって、少なくとも1つのベントポケットは突起を含むカセットである。突起は、好ましくはディンプルまたは凹凸を含み、好ましくは熱不安定材料が破裂した後に、ベントポケットの再封を防止するために、溶融した熱不安定性材料が熱不安定性材料に隣接して配置された熱安定性材料に付着するのを十分に防ぐ。
【0010】
本発明はまた、複数のチャンバと、これらチャンバに接続された複数のベントポケットと、1つまたは複数のベントポケットを密封するための熱不安定性材料と、熱安定性材料と、熱不安定性材料と熱安定性材料との間に配置されたガスケットとを含む、標的核酸を検出するためのカセットであって、ガスケットは複数のベントポケットを包含する開口部を含むカセットである。ガスケットは、好ましくは、圧力を平衡させ、開いたベントポケット間の自由な空気移動を保証するのに十分な空気体積を提供するのに十分な厚さである。カセットは、好ましくはフレキシブル回路を含み、フレキシブル回路は熱安定性材料上に配置されたパターン化された金属電気部品を含む。ガスケットは、好ましくはフレキシブル回路がチャンバの少なくとも1つの中の流体と直接接触するように、第2の開口部を含む、または寸法が制限されている。電気部品は、好ましくは、抵抗発熱体または導電トレースを含む。抵抗発熱体は、好ましくはベントポケットおよびチャンバと整列される。カセットは、好ましくは1つまたは複数のチャンバの加熱温度、加熱時間および/または加熱速度を調節するための1つまたは複数の周囲温度センサを含む。
【0011】
本発明はまた、垂直に配向された検出チャンバと、検出ストリップの試料受容端が検出ストリップの下端部となるように配向された検出チャンバ内に配置された側方流検出ストリップと、増幅された標的核酸を含む流体を受容するための側方流検出ストリップの下の検出チャンバ内の空間とを含む、標的核酸を検出するためのカセットであって、空間は流体があふれることも検出ストリップの領域を迂回することもなく毛管作用によって検出ストリップまで流れることを可能にする高さの流体の全体積を収容するのに十分な容量を含むカセットである。この空間は、好ましくは、染料ポリスチレンミクロスフェア、ラテックス、コロイド金、コロイドセルロース、ナノ金または半導体ナノ結晶などの検出粒子を含む。検出粒子は、好ましくは増幅された標的核酸の配列に相補的なオリゴヌクレオチドまたは増幅された標的核酸に結合することができるリガンド、例えばビオチン、ストレプトアビジン、ハプテンまたは抗体を含む。検出粒子は、好ましくは乾燥され、凍結乾燥され、または多糖、洗剤もしくはタンパク質などの担体中の検出粒子の乾燥混合物として内部表面の少なくとも一部上に存在して検出粒子の再懸濁を促進する。流体の毛管プールが、好ましくは空間内に形成され、検出粒子の混合および分散を改善して、検出粒子と増幅された標的核酸の混じり合いを促進する。カセットは、場合により約200μL未満、好ましくは約60μL未満の体積を有するアッセイを実施する。
【0012】
本発明はまた、少なくとも1つの凍結乾燥または乾燥試薬を含有するための1つまたは複数の凹部を含む、標的核酸を検出するためのカセットであって、少なくとも1つの凹部は少なくとも1つの乾燥または凍結乾燥試薬の再水和を促進するために流体を導くための1つまたは複数の構造を含み、凹部はチャンバに接続された1つもしくは複数のチャネルまたは1つもしくは複数のチャネル内に配置されるカセットである。この構造は、好ましくは、隆起部、溝、ディンプルまたはこれらの組み合わせを含む。
【0013】
本発明はまた、チャンバの頂部に垂直に入る流体がチャンバの出口に直接流入するのを防止する特徴を含む少なくとも1つのチャンバを含む、標的核酸を検出するためのカセットである。この特徴は、好ましくは流体を出口の反対側のチャンバの側に偏向する。結果として生じる流体の流路は、好ましくは水平成分を含み、それによって流路の有効長を十分に増加させ、流体の流速を十分に低下させて出口から出る流体の量を制限する。この特徴は、好ましくはチャンバ内の流体の旋回を生じさせ、それによって流体内の試薬の混合を増加させる。この特徴は、好ましくは三角形または台形の形状である。出口は、場合により先細になっている(テーパー形状化されている)。出口の下流に位置するチャネルは、場合によりチャネルの有効長を増加させるためのターン(方向転換部)を含む。この特徴は、好ましくは、チャンバの近くまたはその底部またはチャンバの中央付近に位置する。
【0014】
本発明はまた、内のチャンバを通る流体の垂直流を制御する方法であって、チャンバの頂部に入る流体流を偏向し、それによって流体がチャンバの出口に直接流入するのを防止する方法である。この方法は、好ましくは流体の流速を低下させ、それによって流体が停止する前に流体が出口に接続されたチャネルに流下する距離を減少させるステップを含む。この方法は、好ましくはチャンバへの流体流を、チャンバの壁に接触して上を向く第1の流体流と、出口に入る第2の流体流とに分けるステップを含む。第1の流体流は、好ましくはチャンバ内を旋回し、それによって流体内の試薬の混合を増加させる。第2の流体流は、好ましくはメニスカスを形成し、出口に接続されたチャネルを通って進み、メニスカスは、圧力がチャネル内の流体流を停止するまで、流体の下流のチャネルの閉鎖空間内の圧力を増加させる。出口は、場合により先細になっており(テーパー形状化されており)、それによって出口への入口での圧縮可能な空気体積を増加させる。この方法は、場合により出口に接続されたチャネルのターン(方向転換部)を提供し、それによってチャネルの有効経路長を増加させ、チャネル内の流体の流速を低下させるステップを含む。
【0015】
本発明の目的、利点および新規な特徴、並びにさらなる適用範囲は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明に部分的に示され、一部は以下の調査で当業者に明らかになる、又は本発明の実施によって習得され得る。本発明の目的および利点は、添付の特許請求の範囲において具体的に指摘される手段および組み合わせによって実現および達成され得る。
【0016】
本明細書に組み込まれ、その一部を形成し、本発明の実施形態を例示する添付の図面は、説明と共に本発明の原理を説明する役割を果たす。図面は、本発明の一定の実施形態を例示するためのものに過ぎず、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】本発明の検査カセットの一実施形態を例示する図である。
【
図1B】摺動シール、試料ポート、試料カップおよび膨張チャンバの内部領域を明らかにする検査カセットの一実施形態の分解図である。
【
図2A】本発明の検査カセットの一実施形態における流体ネットワークの図である。
【
図2B】どのように熱誘因ベントを使用して膨張チャンバに通気して気密密封された検査カセットの文脈で流体流制御を達成することができるかについての、ベント開口前の概略図である。
【
図2C】どのように熱誘因ベントを使用して膨張チャンバに通気して気密密封された検査カセットの文脈で流体流制御を達成することができるかについての、ベント開口後の概略図である。
【
図2D】抵抗発熱体および温度センサを含むプリント回路アセンブリ(PCA)の配置を示す使い捨て検査カセットの一実施形態を示す図である。
【
図2E】
図2Aに記載される特徴を含む射出成形プラスチック検査カセットの写真である。
【
図3A】膨張チャンバの一実施形態の作動原理を示す図である。
【
図3B】検査カセット内のガス膨張前のピストンに基づく膨張チャンバの断面図である。
【
図3C】検査カセット内のガス膨張後のピストンに基づく膨張チャンバの断面図である。
【
図4A】膨張可能な空気袋(ブラダ、bladder)を使用して膨張内部体積を提供する膨張チャンバを形成する手法の図である。
【
図4B】検査カセット内のガス膨張前の空気袋に基づく膨張チャンバの断面図である。
【
図4C】検査カセット内のガス膨張後の空気袋に基づく膨張チャンバの断面図である。
【
図5A】膨張可能な蛇腹(ベローズ)を使用して膨張内部体積を提供する膨張チャンバを形成する手法の図である。
【
図5B】検査カセット内のガス膨張前の蛇腹に基づく膨張チャンバの断面図である。
【
図5C】検査カセット内のガス膨張後の蛇腹に基づく膨張チャンバの断面図である。
【
図6A】細菌、ウイルスまたは大型分子(DNAもしくはRNAなど)などの粒子を装置内に保持しながら、ガスが自由に通過することを可能にする半透過性のバリア、膜または材料の使用を示す図である。
【
図6B】内力を周囲圧力と等しくするため、または内力を低下させるために膨張チャンバの代わりに使用される半透過性バリアの断面図である。
【
図7】膨張チャンバが二軸延伸ポリスチレン(BOPS)フィルムの層の間のスペーサによって形成されている検査カセット設計の分解図である。
【
図8A】2つの流体チャンバ用の抵抗発熱体と、検出ストリップチャンバと、3つのベントおよび電気接触パッドとを含むフレキシブル回路の実施形態の図である。
【
図8B】2つの流体チャンバ用の抵抗発熱体と、検出ストリップチャンバと、抵抗発熱体にエネルギーを与えるための3つのベントおよび電気接触パッドとを含むフレキシブル回路の実施形態の図である。
【
図8C】検査カセットの一実施形態の分解図である。
【
図9】ストリップの試料受容端部に毛管プールを有するおよび有さない装置からの側方流ストリップを示す図である。毛管プールが存在する場合、検出粒子のより均一な分布およびストリップにわたるより均一なシグナルが観察される。
【
図11】各検査の流体流路を示す多重化および試料細分化のための多チャネル流体ネットワークを示す図である。追加の流体経路またはチャネルをネットワークに組み込んで、単一使い捨て検査カセットで同時に実施することができる並列検査の数をさらに増加させることができる。
【
図12】試料が、試料ポートを介して試料カップに導入された後に分割されて、同じ入力試料に対して平行した独立した検査が可能となる、本発明の検査カセットの一実施形態における流体ネットワークを示す図である。試料カップからのニ分岐流体経路により、試料溶液を検査カセットの2つの別個の流体チャネルまたは通路に分割して、分割試料に対して並行して同時検査を行うことができる。
【
図13A】内部部品配置を示す、組み立てられた試料調製サブシステムを示す図である。
【
図13B】検査カセットと統合するように構成された核酸精製装置の部品を示す試料調製サブシステムの分解図である。
【
図14】試料を処理する過程で生じる部品の動きを示す試料調製サブシステムの断面図である。
【
図15】気密密封部品、射出成形流体サブシステム、対応するカセット裏打ちおよびPCAを有する試料調製サブシステムを示す分解図である。
【
図16】統合試料調製サブシステムを有する検査カセットの実施形態の写真である。
【
図17A】気密密封部品および射出成形流体サブシステム設計を有する試料調製サブシステムを示す分解図である。
【
図17B】PCAにインターフェース接続されて示された統合試料調製サブシステムを有する検査カセットの実施形態を示す図である。
【
図17C】流体経路、インターフェース接続された電子機器および試料調製部品を示す検査カセットの実施形態の破断図である。
【
図18A】蓋が開位置にあり、検査カセットが挿入されて示されている本発明のドッキングユニットの一実施形態を示す図である。
【
図18B】蓋が閉位置にあって示されているドッキングユニットを示す図である。
【
図19】蓋が開位置にあり、検査カセットが挿入されて示されているドッキングユニットの一実施形態の写真である。LCDディスプレイは、インフルエンザA/B検査カセットの挿入の検出を示す。
【
図20】本発明のカセット密封機構の一実施形態を示す図である。
【
図21A】シールが開位置にある挿入されたカセットを有するドッキングユニット内のカセットシールセンサ配置を示す図である。
【
図21B】シールが開位置にある挿入されたカセットを有するドッキングユニット内のカセットシールセンサ配置を示す破断図である。
【
図21C】シールが閉位置にある挿入されたカセットを有するドッキングユニット内のカセットシールセンサ配置を示す図である。
【
図21D】シールが閉位置にある挿入されたカセットを有するドッキングユニット内のカセットシールセンサ配置を示す破断図である。
【
図22】回転バルブを用いて密封クロージャを媒介すべく駆動ギアを使用したカセット密封機構の一実施形態を示す図である。
【
図23A】蓋が、Oリングシールと膨張チャンバとして働く空の空気体積とを含むヒンジ蓋である検査カセットの一実施形態を示す図である。この図では、蓋は開位置にある。
【
図23B】Oリングが試料ポートの縁と気密密封を形成する、閉位置の蓋を示す図である。
【
図24A】検査カセット受容サブアセンブリを形成するドッキングユニットのヒータボードおよび検査カセットホルダ部品の分解図である。
【
図24B】ドッキングユニットの検査カセット受容サブアセンブリの一実施形態を示す図である。
【
図25】係合位置および非係合位置の検査カセットホルダおよびヒータボード装着システムのスライド図である。
【
図26】第1および第2の加熱された流体チャンバの温度を監視するためのドッキングユニットの一実施形態における赤外線温度センサの配置を示す図である。
【
図27A】検査カセットの底部近くに位置するバーコードの読み取りを可能にするドッキングユニットの一実施形態内の光学センサの配置を示す図である。
【
図28A】検査カセットが2つのヒータボードアセンブリの間に挟まれている二重ヒータボード構成の分解図である。
【
図28B】検査カセットが2つのヒータボードアセンブリの間に挟まれている二重ヒータボード構成の組立図である。
【
図29A】旋回ドアが検査カセットを受け入れるために使用されているドッキングユニットの実施形態の実線図である。
【
図29B】旋回ドアが検査カセットを受け入れるために使用されているドッキングユニットの実施形態の透視図である。旋回ドアの閉鎖により、検査カセットの後部がドッキングユニット内に取り付けられたヒータボードと接触する。
【
図30A】試料調製を作動させるためのサーボモータおよび検査結果収集のための光学システムを含むドッキングユニットの内部部品の正面破断図である。
【
図30B】試料調製を作動させるためのサーボモータおよび検査結果収集のための光学システムを含むドッキングユニットの内部部品の側面破断図である。
【
図31】A(左)は、検査リーダを組み込んだドッキングユニットの一実施形態の光学サブシステムの正面図写真、B(右)は、その側面図写真である。
【
図32A】旋回検査カセット受容ドアが開位置にあるドッキングユニットの実施形態の写真である。
【
図32B】旋回検査カセット受容ドアが閉位置にあるドッキングユニットの実施形態の写真である。
【
図33】本発明のドッキングユニット用の再使用可能なサブアセンブリを示す図である。
【
図34】本明細書に記載される実施例1で得られた検査結果を示す図である。
【
図35】本明細書に記載される実施例2で得られた検査結果を示す図である。
【
図36】本明細書に記載される実施例3で得られた検査結果を示す図である。
【
図37A】3つのチャンバを含むカセットの透視図である。
【
図39】三角形の突出流れ特徴および先細りになっている出口を含む本発明のチャンバの一実施形態を示す図である。
【
図40】三角形の突出流れ特徴および平行な出口を含む本発明のチャンバの一実施形態を示す図である。
【
図41】台形の突出流れ特徴および平行な出口を含む本発明のチャンバの一実施形態を示す図である。
【
図42】積み重ねられた三角形流れ特徴および平行な出口を含む本発明のチャンバの一実施形態を示す図である。
【
図43】チャンバのほぼ中央に突出流れ特徴を含む本発明のチャンバの一実施形態を示す図である。
【
図44】流体流を導くための内部特徴を含む試薬凹部を示す図である。
【
図45】ディンプル構造を含む本発明のベントポケットの一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態は、好ましくは、標的核酸を含む試料を受容するための試料チャンバと、第1のチャネル(channel、導管、経路の類)を介して試料チャンバに接続され、第2のチャネルを介して第1のベントポケットに接続された増幅チャンバと、第3のチャネルを介して増幅チャンバに接続され、第4のチャネルを介して第2のベントポケットに接続された標識チャンバと、第5のチャネルを介して標識チャンバに接続され、第6のチャネルを介して第3のベントポケットに接続された検出サブシステムと、複数の抵抗発熱体と、1つまたは複数の温度測定装置とを含む、標的核酸を検出するための密封可能な使い捨てプラットホームであって、ベントポケットはそれぞれ、1つまたは複数の抵抗発熱体の近くに位置する膜、フィルムまたはプラスチックシートなどの適当な形態の熱不安定性材料によって空気チャンバとの連通から密封されている使い捨てプラットホームである。使い捨てプラットホームは、場合により検出アッセイの開始前にプラットホームを密封するシールを含む。使い捨てプラットホームは、好ましくは使い捨てプラットホーム内への乾燥または凍結乾燥試薬の組み込みに適合するためのチャンバ間のチャネルに沿った凹部を含む。これらの凹部は、場合により好ましくは乾燥試薬の再水和を促進するために封入された乾燥試薬に対する毛管効果または表面張力効果を用いる、流体を導くのを助けるための試薬(複数可)に面する1つまたは複数の表面上の構造を含み得る。このような特徴は、
図44の隆起部(または畝部)7001などの隆起部、溝、ディンプルまたは流体が凹部を通過する際に流体を凹部の内部空間に導く、もしくは流体流動中の凹部の内部空間への流体流を助けるための他の構造を含み得る。あるいは、凹部が1つ(または複数)のチャンバの中に直接配置されてもよい。
【0019】
使い捨てプラットホームは、場合により試料チャンバの入力口と直接流体接続した出力口を含む試料調製ステージをさらに含む。増幅チャンバの実質的に平坦な面の寸法は、好ましくは増幅チャンバと熱的に接触した抵抗発熱体の実質的に平坦な面の寸法とほぼ同じである。増幅チャンバは、場合により増幅溶液を含有し、試料チャンバから増幅チャンバへのチャネルの凹部は、場合により凍結乾燥増幅試薬混合物を含み、好ましくは増幅チャンバから乾燥または凍結乾燥検出粒子を含む標識チャンバへのチャネル中に凹部が存在する。増幅チャンバおよび標識チャンバは、好ましくは抵抗発熱体を用いて加熱可能である。検出サブシステムは、好ましくは検出粒子を含む側方流ストリップを含む。チャンバ、チャネルおよびベントポケットは、好ましくは流体アセンブリ層上に位置し、装置の電子素子は、好ましくはプリント回路基板を含む別個の層上に位置し、別個の層は、流体アセンブリ層と結合している、またはドッキングユニットによって流体アセンブリ層と接触している。検出サブシステムは、好ましくは流体アセンブリ層上に、または場合により第2の流体アセンブリ層上に位置している。チャンバの少なくとも1つの体積は、好ましくは約1μL~約150μLである。使い捨てプラットホームは、好ましくは使い捨てプラットホームを垂直または傾斜配向で維持すると共に場合により電気接点、部品および/または電源を提供するところのドッキングユニットと、使い捨てプラットホームのドッキングのためのコネクタをさらに含む。
【0020】
本発明の一実施形態は、1つまたは複数の標的核酸を検出する方法であって、好ましくは、使い捨てプラットホームの試料チャンバ内に標的核酸を含む試料を分配するステップと;使い捨てプラットホームを垂直にまたは傾斜して配向するステップと;増幅チャンバに接続された第1のベントポケットを密封空気体積に開放し、それによって試料が増幅チャンバに流入できるようにするステップと、試料を試料チャンバと増幅チャンバとの間のチャネルの凹部に位置する事前凍結乾燥増幅試薬混合物と反応させるステップと、増幅チャンバ内の標的核酸を増幅するステップと、標識チャンバに接続された第2のベントポケットを閉じた空気体積に開放し、それによって増幅された標的核酸が標識チャンバに流入できるようにするステップと、増幅された標的核酸を、増幅チャンバと標識チャンバとの間のチャネルの凹部中の検出粒子を用いて標識するステップと、検出サブシステムに接続された第3のベントポケットを閉じた空気体積に開放し、それによって標識された標的核酸が検出サブシステムに流入できるようにするステップと、増幅された標的核酸を検出するステップとを含む方法である。増幅するステップは、好ましくは増幅チャンバの近くの使い捨てプラットホーム内に位置する抵抗発熱体を用いて標的核酸を増幅するステップを含む。この方法は、好ましくは増幅チャンバを受動的に冷却するステップをさらに含む。この方法は、好ましくは標識チャンバの近くの使い捨てプラットホーム内に位置する抵抗発熱体を用いて標識するステップ中に標識チャンバを加熱するステップをさらに含む。この方法は、好ましくは外部機器ではないドッキングユニットを使用することによって使い捨てプラットホームの作動を制御するステップをさらに含む。
【0021】
本発明の実施形態は、核酸分子アッセイの全ての必須ステップを実施する外部機器に依存しない手段を統合し、より有益で高感度の分析を提供する次世代の核酸検査により現在のイムノラテラルフロー(immuno-lateral flow、免疫側方流動)迅速アッセイを補完する使い捨てプラットホームを含む。本発明の実施形態は、伝染病疾患、生物学的脅威薬剤、農業および環境試験が最も大きな影響を及ぼす可能性のある小規模な診療所および簡素なまたは遠隔の状況において、迅速な核酸検査のより広範な使用を促進する。本発明のある種の実施形態は、完全に自己完結型で使い捨てであり、外部機器に課せられたボトルネックなしで並列検査を実行することを可能にすることによって、需要が増加した時に「サージ容量」を可能にする。さらに、安価な電池式またはACアダプタ式のドッキングユニットと結合した低コストの使い捨てカートリッジが好ましい適用領域では、簡単なドッキングユニットが使用される本発明の実施形態が、再使用可能であるが安価なベースに再使用可能な部品を配置することによって検査コストをさらに減少させる。本明細書に開示されるプラットホーム技術は、実験室の核酸増幅ベースの方法と同様の感度、最小限のユーザ介入および訓練要件、増幅と検出の両方によって与えられる配列特異性、多重能、安定な試薬、低コスト大規模製造との適合性、簡素な設定での使用を可能にする電池式または太陽電池式作動、および装置設計なしに追加のまたは代替のバイオマーカの組み込みを可能にするフレキシブルなプラットホーム技術を提供する。
【0022】
本発明の実施形態は、検査が通常行われる実験室環境から離れた場所で分析を行うのに適した、低コストな使用時点の核酸の検出および同定のためのシステムおよび方法を提供する。有利なことには、核酸増幅反応体積は、伝統的な実験室検査で一般的に使用されるのと同じ体積範囲(例えば、5~150μL)にあり得る。よって、本発明の実施形態で行われる反応は、受け入れられる実験室アッセイと直接比較でき、伝統的な分子検査で典型的に使用されるのと同じ標本体積の収容を可能にする。さらに、核酸の増幅は、好ましくは、増幅の開始前に好ましくは永久的に密封された気密密封検査カセット中で行われる。密封システム内で増幅された核酸を保持することによって、検査環境および周囲領域が増幅産物で汚染されることが防がれるので、その後の検査が誤った陽性結果を生じる可能性が低下する。密封システムを検査カセットに組み込むことによって、ドッキングユニット内の対応するシール係合システムを使用して、アッセイ開始時にシールの形成を強制することが可能になる。本発明の一実施形態では、ラックピニオン機構を使用して検査カセット統合シール機構を所定位置にスライドさせて、増幅前のシールクロージャ(密封閉鎖状態)を確保する。ドッキングユニット内に配置されたセンサは、検査反応を開始する前にシールが形成されたことを確認するために検査カセットへ問い合わせる。
【0023】
本発明の実施形態は、高スループット製造および低コスト使い捨て部品を達成するために、射出成形方法および超音波溶接を使用して製造することができる。いくつかの実施形態では、それぞれ乾燥試薬ペレットを収容するために、流体部品に1つまたは複数の凹部が設けられる。凹部は、溶接中にシステムに導入されるエネルギーによってペレットを破壊することなく、超音波溶接を使用することができる最終組立中に、流体部品中に存在する凍結乾燥または他の方法で乾燥した材料を使用することを可能にする。
【0024】
本発明の実施形態を使用して試料中の標的核酸配列(複数可)の存在を検出することができる。標的配列は、染色体DNAもしくは染色体外DNA(例えば、ミトコンドリアDNA、葉緑体DNA、プラスミドDNA等)などのDNAまたはRNA(例えば、rRNA、mRNA、小型RNAもしくはウイルスRNA)であり得る。同様に、本発明の実施形態を使用して一塩基多型、欠失、挿入、逆位および配列重複を含む核酸多型を同定することができる。さらに、本発明の実施形態を使用して転写レベルでの遺伝子上方制御および下方制御などの遺伝子調節イベントを検出することができる。よって、本発明の実施形態を、以下のような用途に使用することができる:1)農業、臨床、食品、環境および獣医試料における病原体核酸の検出および同定;2)疾患の遺伝子バイオマーカの検出;および3)病原体、毒素、他の病因因子、環境刺激または代謝状態の存在に応答して生じる遺伝子調節イベント(mRNA上方または下方制御、あるいは小RNAまたは疾患もしくは代謝状態中に発生もしくは抑制される他の核酸分子の誘導)などの疾患または代謝状態の関連バイオマーカの検出を通した疾患または代謝状態の存在の診断。
【0025】
本発明の実施形態は、流体制御、温度制御および試薬混合の全ての態様を含む、核酸試料の添加時の標的核酸試料調製、増幅および検出の手段を含む。本発明のいくつかの実施形態では、装置が、電池などの携帯用電源を使用して核酸検査を行う手段を提供し、完全に使い捨てである。本発明の他の実施形態では、使い捨て核酸検査カートリッジが、典型的に核酸検査に要求される外部機器などの実験室器具類の機能の全てを、このような実験室器具類も外部機器も使用することを必要としないで行うことができる単純な再使用可能な電子部品と合わせて働く。
【0026】
本発明の実施形態は、それだけに限らないが、ハウジング、回路基板および流体または微小流体部品を含む核酸増幅および検出装置を提供する。一定の実施形態では、回路基板が、抵抗器、サーミスタ、発光ダイオード(LED)、フォトダイオードおよびマイクロコントローラなどの種々の表面実装部品を含有することができる。一定の(ある種の)実施形態では、回路基板がポリイミドなどの熱安定性基板を含むフレキシブル回路基板を含むことができる。フレキシブル回路は、いくつかの実施形態では、熱安定性基板上に堆積されたまたは熱安定性基板に結合した銅もしくは他の導電性コーティングまたは層を含むことができる。これらのコーティングを、生化学反応温度制御および/または導電性トレースに使用される抵抗発熱体を含むようにエッチングまたはパターン形成して、このような発熱体および/または表面実装部品(抵抗器、サーミスタ、発光ダイオード(LED)、フォトダイオードおよびマイクロコントローラなど)を収容することができる。流体または微小流体部品は、水性試料を受容し、含有し、移動させる装置部分であり、種々のプラスチックから、ならびに超音波溶接、接着、融合またはラミネーション、レーザ切断、水ジェット切断および/または射出成形を含む種々の製造技術によって製造され得る。流体と回路基板部品は、可逆的または不可逆的に一緒に保持され、それらの熱結合は、熱伝導材料または化合物によって強化され得る。ハウジングは、好ましくは、一部は美容的および保護的シースとして働き、微小流体および回路基板層の繊細な部品を隠し、試料入力、緩衝液放出、核酸溶出、シール形成および装置機能性に必要な工程の開始を促進するのにも役立ち得る。例えば、ハウジングは、試料入力ポート、シールの形成または係合のための機械的システム、ボタン、またはユーザ起動、緩衝液放出、試料流の開始、核酸溶出および電子部品と流体部品との間の熱もしくは他の物理的インターフェース形成を可能にする同様の機械的特徴を組み込むことができる。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態では、流体または微小流体部品は、チャンバが場合により温度制御される制御流体連通の一連のチャンバを含み、それによってそこに含有される流体をプログラム可能な温度レジメンに供する。本発明のいくつかの実施形態では、流体または微小流体部品が、好ましくは、膨張チャンバ、試料入力チャンバ、逆転写チャンバ、増幅チャンバおよび検出チャンバを含む5つのチャンバを含む。試料入力チャンバは、好ましくは、膨張チャンバへの導管と、核酸含有試料を添加することができる試料入力オリフィスと、乾燥材料を製造中に入力試料と混合するために配置することができる第1の凹部と、乾燥材料を製造中に配置することができる第2の凹部に至る出口導管と、そこから逆転写チャンバに至る導管とを含む。他の実施形態では、チャンバの2つ以上の機能が単一のチャンバに統合され、より少ないチャンバの使用が可能になる。
【0028】
第1および第2の凹部はまた、例えば、適切な緩衝液、塩、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチドプライマーおよび酵素(DNAポリメラーゼおよび逆転写酵素など)を含み得る凍結乾燥試薬を含み得る。このような凍結乾燥試薬は、好ましくは、核酸試料が凹部に入ると可溶化される。本発明のいくつかの実施形態では、第1の凹部が、生物学的試料の溶解および/または入力試料中に存在する核酸の安定化に有用な塩、化学物質および緩衝液を含む。本発明のいくつかの実施形態では、試料中に存在する細胞またはウイルスの溶解を達成するために、入力試料が試料入力チャンバ内で加熱される。本発明のいくつかの実施形態では、第2の凹部が、凍結乾燥試薬と、RNAからのcDNAの合成に有用な逆転写酵素などの酵素とを含む。本発明の一実施形態では、第2の凹部が、試料入力チャンバから十分に隔離され、加熱中に第2の凹部内の材料が試料入力チャンバの温度よりも低い温度を維持することを可能にする。本発明のいくつかの実施形態では、逆転写チャンバが、核酸の増幅のための凍結乾燥試薬を含む第3の凹部を含む導管を含む。試料入力チャンバ、逆転写チャンバ、増幅チャンバおよび検出チャンバは、好ましくは、ヒータ回路基板上の発熱体と整合してまたは十分近接して配置され、直接あるいはドッキングユニットへの流体もしくは微小流体部品またはカセットの挿入を通してヒータボードに装着されると熱伝導を提供する。同様に、ヒータ回路基板上に存在する電子部品は、好ましくは、流体部品内のベントポケットに物理的に接触または近接して配置され、ベントの開放による電子制御を可能にする。溶解、逆転写、増幅、ハイブリダイゼーションおよび/または流体流制御のためのヒータ回路基板の抵抗発熱体が、それらが相互作用する流体部品の要素との熱インターフェースを形成するように配置されるように、ヒータ回路基板の物理的レイアウトを流体または微小流体部品の要素との整合を提供するよう設計する。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態では、流体または微小流体部品が、好ましくは試料入力チャンバ、溶解チャンバ、逆転写チャンバ、増幅チャンバおよび検出チャンバを含む5つのチャンバと、各チャンバ間にチャネルに沿って位置する乾燥または凍結乾燥試薬用の凹部とを含む。この実施形態では、RNAのcDNAへの逆転写およびcDNAの増幅は、別々のチャンバ内で起こる。この実施形態では、試料入力カップから溶解チャンバに至る導管に沿って位置する第1の凹部が、生物学的物質の溶解および/または入力試料中に存在する核酸の安定化に有用な塩、化学物質(例えば、ジチオトレイトール)および緩衝液(例えば、pHを安定化、増加または低下させる)を含む。本発明のいくつかの実施形態では、入力試料が、最初に試料入力カップから第1の凹部を通って流れた熱溶解チャンバで加熱され、ここで試料が場合により第1の凹部を構成する物質と混じり合う。本発明の他の実施形態では、溶解が、試料と第1の凹部内の化学物質の混じり合い、および溶解チャンバ内でのこれらの化学物質の存在下での試料のインキュベーションから生じる化学処理によって達成される。
【0030】
溶解チャンバでの処理の実質的な完了後、試料溶液を、ベントを非機械的に破裂させるヒータの電子制御によって放出させ、試料溶液が第2の凹部を通って逆転写チャンバ内に流れることを可能にする。前記第2の凹部は、場合により適切な緩衝液、塩、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチドプライマーおよび酵素(DNAポリメラーゼおよび/または試料中のRNAのcDNAへの逆転写を達成するために要求される逆転写酵素など)を含み得る凍結乾燥試薬を含み得る。逆転写反応が実質的に完了した後、第2のベントを開けて、試料溶液を放出させて、核酸増幅に必要な試薬、例えば適切な緩衝液、塩、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチドプライマーおよび酵素(DNAポリメラーゼなど)を含み得る凍結乾燥試薬で構成されるチャネルおよび第3の凹部を通して増幅チャンバに流す。
【0031】
増幅チャンバ内での核酸増幅が実質的に完了した後、第3のベントを開いて、検出チャンバに通じるチャネルに試料溶液を放出する。前記チャネルは、場合によるが好ましくは、検出チャンバ内の核酸の検出に有用な化学物質および/または検出粒子コンジュゲートなどの、乾燥または凍結乾燥検出試薬を含む第4の凹部を含む。検出チャンバは、好ましくは、毛管プール、増幅された核酸を検出するための試薬、および側方流検出ストリップを含む。毛管プールは、好ましくは検出ストリップまでの正しい毛管移動のために流体を受け入れるよう設計された、流体があふれることも検出ストリップの領域を迂回することもなく毛管作用によって検出ストリップまで流れることを可能にする高さの検出チャンバ内の流体の全体積を収容するのに十分な容量の空間を提供する。本発明のいくつかの実施形態では、検出試薬が凍結乾燥試薬である。本発明のいくつかの実施形態では、検出試薬が、染色ポリスチレンミクロスフェア、コロイド金、半導体ナノ結晶またはセルロースナノ粒子を含む。試料溶液は、検出チャンバ内の検出試薬と混じり合い、毛管作用によって検出ストリップまで流れる。検出チャンバと整合したマイクロヒータを場合により使用して、溶液が検出ストリップまで移動する際に、溶液の温度を制御することができる。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態では、増幅反応が、反応における各プライマー対の一方のプライマーが所与の対の他方のプライマーと異なる濃度で存在する非対称増幅反応である。非対称反応は、ハイブリダイゼーションによる検出を容易にするための一本鎖核酸の作成に有用であり得る。非対称反応は、試料中の標的レベルの定量的または半定量的分析を可能にする線形増幅反応においてアンプリコンを生成するためにも有用となり得る。
【0033】
本発明の他の実施形態は、試料調製装置と統合された核酸逆転写、増幅および検出装置を含む。試料調製装置を含む実施形態は、試料調製サブシステムの出力ポートまたはバルブと、装置の流体または微小流体部品の入力ポート(複数可)との間の流体の伝達手段を提供する。
【0034】
本発明の他の実施形態は、入力試料を流体または微小流体部品内の2つ以上の流体経路に分割する手段を含む。入力試料を分割する手段は、入力流体を、複数の流体経路にわたって流体を分割するように設計された体積の計量チャンバに運ぶための分岐導管を含む。各計量チャンバは、ベントポケットへのチャネル導管と、流体経路内の次のチャンバ、例えば溶解チャンバまたは逆転写チャンバまたは増幅チャンバへのチャネル導管とを含む。
【0035】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語、表記法および他の科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有することが意図される。本明細書中に記載または参照される技術および手順は、一般的によく理解されており、例えばSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual 第3版(2001)Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.およびCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausbelら、編者、John Wiley&Sons,Inc.2001)に記載されている広く利用されている分子クローニング方法論などの当業者による従来の方法論を用いて一般的に使用される。必要に応じて、市販のキットおよび試薬の使用を含む手順は、特記しない限り、一般に、製造者が定義したプロトコルおよび/またはパラメータに従って実施される。
【0036】
明細書および特許請求の範囲を通して使用される場合、「標的核酸」または「鋳型核酸」という用語は、検出されることが意図された一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAの断片または配列を意味する。
【0037】
明細書および特許請求の範囲を通して使用される場合、「微粒子」または「検出粒子」という用語は、二本鎖核酸に特異的な蛍光色素、蛍光修飾オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドコンジュゲート量子ドット、または固相要素、例えばポリスチレン、ラテックス、セルロースまたは常磁性粒子またはミクロスフェアを含む、増幅反応中に生成された核酸産物を標識するために使用される任意の化合物を意味する。
【0038】
明細書および特許請求の範囲を通して使用される場合、「チャンバ」という用語は、流体がある期間にわたって存在する流体区画を意味する。例えば、チャンバは、試料チャンバ、増幅チャンバ、標識チャンバまたは検出チャンバであり得る。
【0039】
明細書および特許請求の範囲を通して使用される場合、「カセット」という用語は、アッセイまたは他の化学的もしくは生化学的分析を行う際に使用される使い捨てまたは消耗型のカセット、ハウジング、部品またはカートリッジとして定義される。カセットは単回使用でも複数回使用でもよい。
【0040】
明細書および特許請求の範囲を通して使用される場合、「ポケット」という用語は、通気機構として働く区画を意味する。ポケットは、好ましくは、ポケットを開くための抵抗器または他の機構に隣接するまたは重ね合わされる。例えば、上記の流体チャンバとは異なり、カセットの流体部品内に形成されたポケットは、PCA上の抵抗器と整列する1つの開放面を有することができる。この開放面は、好ましくは、薄膜、フィルムまたは他の材料によって覆われて、下にある抵抗器にエネルギーを与えることによって容易に破裂する密封された空洞を形成する。
【0041】
明細書および特許請求の範囲を通して使用される場合、「チャネル」という用語は、典型的には、例えば、入口、出口またはベントチャネルを含む、2つ以上のチャンバおよび/またはポケットあるいはこれらの組み合わせを接続する流体アセンブリ内の狭い導管を意味する。入口または出口チャネルの場合、流体試料がチャネルを通って移動する。ベントチャネルの場合、導管が、好ましくは、流体から離れており、流体チャンバをベントポケットに接続する。
【0042】
明細書および特許請求の範囲を通して使用される場合、「外部機器」という用語は、1つまたは複数の以下の特徴を有する再使用可能な機器を意味する:それだけに限らないが、緩衝液パケットに穴を開けるおよび/またはポンピングするもしくは流体用の輸送力を積極的に提供することを含む、カセットを密封する以外の使い捨てアッセイまたはカセットに対する機械的作用を行う、カセットまたは使い捨てアッセイ中の流体流制御のためのバルブおよび他の部品を制御するための可動部品を含む、アッセイの選択的加熱以外で流体流を制御する、あるいは周期的較正を要する。
【0043】
明細書および特許請求の範囲を通して使用される場合、「ドッキングユニット」という用語は、アッセイを制御するが、外部機器について上に列挙される特性のいずれも有さない再使用可能な装置を意味する。
【0044】
本発明の実施形態は、検査が通常行われる実験室環境から離れた場所で分析を行うのに適した、低コストな使用時点の核酸検査のための装置である。ある種の装置は、場合により保護ハウジングによって包まれた流体および電子部品または層を含む。本発明の実施形態では、流体部品がプラスチックで構成され、チャンバが作動中に互いに垂直に配向された狭いチャネルによって接続された一連のチャンバおよびポケットを含む。流体部品は、好ましくは、既製の表面実装装置(SMD)を含有するプリント回路基板、および/または抵抗発熱体を形成するためのエッチングされた導電性材料を含み、場合によりSMDを含有するフレキシブル回路などの、マイクロコントローラを介して制御される電子部品で覆われるまたはこれらと物理的に接触して配置される。装置のいくつかの実施形態では、アセンブリ全体が使い捨てである。他の実施形態では、流体および物理的に結合された電子層が使い捨てであり、小型で安価な制御ユニットが再使用可能である。別の実施形態では、流体部品が使い捨てであり、小型の制御ドッキングユニットまたはドッキングユニットが再使用可能である。全ての実施形態について、本発明を、「Highly Simplified Lateral Flow-Based Nucleic Acid Sample Preparation and Passive Fluid Flow Control」と題された国際公開第2009/137059号パンフレット(参照により本明細書に組み込まれる)および/またはその中に記載されている使用方法に記載されているような核酸試料調製装置と一体化することができる。
【0045】
本発明の実施形態は、確立された製造方法で安価に製造することができる統合核酸検査装置を含む。本発明は、広く容認された携帯型イムノアッセイのエンドユーザの観点から簡潔性を保ち、装置内の流体温度を調節する課題を克服し、連続ステップである試薬添加、試薬混合、核酸検出で小さな試料体積を輸送しながら、分子検査データを提供する。本発明のいくつかの実施形態では、アッセイ結果を収集、解釈、報告および/または伝達するためのサブシステムが本発明に組み込まれる。本発明の実施形態は、標準的な組み立て技術によって構成することができ、可動部品を全くまたはほとんど要求しない既製の電子素子を利用するよう独自に適合される。さらに、流体層設計は、容易に入手可能なプラスチックおよび製造技術の使用を可能にする。その結果として、専用の実験室インフラストラクチャを必要とせずに、核酸の単離、増幅および検出が可能な、安価で使い捨ての信頼性の高い装置となる。
【0046】
既存の核酸検査装置は、一般的に、著しいコストを追加する、および/または特殊な製造方法を要する堆積フィルムヒータおよびペルチェ装置などの洗練された発熱体を使用する。本発明の実施形態では、反応溶液の加熱が、好ましくは、数ペニー以下で購入することができ、共通の製造基準によって組み立てられ、試験される単純な抵抗表面実装装置の使用によって達成される。これらの抵抗要素および関連するセンサ要素の上に流体チャンバを積層することによって、反応溶液の流体温度を好都合に調節することができる。エレクトロニクス産業におけるSMD抵抗器およびフレキシブル回路の幅広い使用は、本発明が十分に確立された品質管理方法を施すことができることを保証する。本発明の他の実施形態では、フレキシブル回路基板の導電層に組み立てられたパターンによって形成された発熱体を用いて抵抗加熱が実現される。PCRなどの多くの核酸増幅技術は、反応溶液の急速加熱を必要とするだけでなく、急速冷却も必要とする。本発明の反応チャンバは、好ましくは一方の側で加熱され、反対側の面を横切る周囲温度が流体温度を低下させるのを助けるために使用される。さらに、装置の実施形態の垂直配向は、装置が水平に配向された場合よりも、受動対流によるより急速な冷却を可能にするので、ペルチェ装置などの高価な装置を使用することなく熱サイクル期間を短縮する。本発明のいくつかの実施形態では、ファンを使用して冷却を促進する。
【0047】
流体制御は、低コストの核酸検査装置設計に関連した別の課題である。当該技術分野で公知の装置は、一般的に、装置作動中に流体を操作するために、電気機械、動電または圧電ポンプ機構を使用する。これらのポンピング要素は、装置の複雑さとコストの両方を増加させる。同様に、精巧なマイクロメカニカル設計または可動部品を使用するバルブは、可動部品の故障または生物付着などの複雑さのために製作コストを増加させ、信頼性を低下させる可能性がある。前記の核酸検査装置とは異なり、本発明の実施形態は、毛管力および表面張力と共にマイクロコントローラ制御下の静水圧を利用して流体体積を操作する。本発明のいくつかの実施形態の垂直配向は、反応溶液がマイクロコントローラ制御下でチャンバからチャンバへカスケードされ、アッセイの必要な操作に適応することを可能にする。流体は、チャネルの大きさ、静水圧および表面張力の釣り合いによって個々の反応チャンバ内に保持され得、表面張力および静水圧が気体置換によって流体前進を妨げる。試料は、好ましくは、マイクロコントローラの制御下で単純な通気機構が起動した後でのみ、下方チャンバに進む。いったん開くと、ベントは、流体が進入するときに、移動した空気が第2のチャンバから逃げるための通路を提供することによって、流体が第1のチャンバから第2のチャンバに移動することを可能にする。流体部品内の各チャンバ(またはチャンバ間の各チャネル)は、好ましくは狭いベントチャネルを通して密封されたベントポケットに接続する。ベントポケットは、好ましくは膜またはシートの下、その近くまたはそれに隣接した小型表面実装抵抗器を加熱することによって容易に破裂する薄い熱不安定性プラスチックの膜またはシートで、一方の面が密封される。いったん下方チャンバのベントが開放されると、低静水圧下でさえ流体進行が進行する。
【0048】
以下でより具体的に説明されるように、本発明のいくつかの実施形態で使用される流体または微小流体ベント機構は、好ましくは、熱不安定シールと熱および(任意選択の)物理的接触した発熱体を使用して、低い仰角のチャンバを通気して高い仰角のチャンバからの流体が下方チャンバに流入することを可能にすることによって流体移動の電子制御を可能にする。一実施形態では、抵抗器が、広く使用され、十分に確立された電子機器製造方法を使用してプリント回路基板上に取り付けられ、熱不安定材料を含むチャネルシールと物理的に接触する。エネルギーを与えられると、表面実装抵抗器は、シールを破裂させるのに十分な熱を発生し、通気の前に流体が存在する領域またはチャンバと流体が移動している領域またはチャンバにおける圧力の平衡を可能にするようチャンバの通気をもたらす。チャンバ間の圧力の平衡は、高い仰角のチャンバから低い仰角のチャンバへの流体の移動を可能にする。高い仰角チャンバと低い仰角チャンバとの間の直接シールは、好ましくは使用されない。チャネルおよびベントシールは、流体チャンバから離れて位置してもよいので、製造に効率的な構成の流体装置レイアウトが容易になる。シール材は、ベントチャネルを密封し、記載される加熱から破裂することができる任意の材料、例えば薄いプラスチックシートを含むことができる。装置内の流体移動制御に対するこの手法は、低い材料コスト、確立された製造技術を使用した製造に対する適合性から利益を得る一方、マイクロプロセッサまたはマイクロコントローラなどの電子制御回路の制御下で流体を一連のチャンバを通して移動させる能力を提供する。ベント、ベントを密封する(かつ流体チャンバも流体マイクロチャネル自体も密封しない)熱不安定性材料、および熱によって前記シールを破壊する電子手段の使用によって、装置を通る流体流を制御して、所定の時または特定のイベント(例えば、温度の到達、温度変化もしくは一連の温度変化、またはインキュベーション時間(複数可)の完了、または他のイベント)の完了後の流体の移動を可能にする手段を提供する。いくつかの実施形態では、気相の水を前記チャネルによって接続されたチャンバから隔離しなければならない場合、閉塞をチャンバ間のチャネルに導入してもよい。閉塞は、ベント開放後に液体水と接触すると溶解する可溶性材料であってもよいし、閉塞部位に熱を導入することによって除去することができるパラフィンなどの容易に溶融する材料であってもよい。
【0049】
さらに、ベント手法は、流体チャンバ自体を密封することに対するいくつかの利点を有する。ベントポケットは、流体工学レイアウトのどこに位置してもよく、ベントチャネルを介して調節するチャンバと簡単に連通することができる。製造上の観点から、好ましくは、接着剤、熱ラミネーション、超音波、レーザ溶接等などの十分に確立された方法によって、全ベントポケット(ベントポケットマニホールドを含み得る)について単一密封膜のみが流体部品にはり付けられるように、ベントポケットを局在化させることができる。対照的に、流体チャンバを直接密封することは、シール材を各チャンバ位置に対応する異なる位置に配置することを要し、これは製造がより困難である。これは、単一膜によって密封された単一ベントポケットマニホールドと比較して、製造中のより困難なシナリオを提示する。さらに、チャンバを直接密封する場合、溶融したシーリング材料がチャンバ間のチャネル内に留まり、流れを閉塞し得る。密封材料の粘度は、小型化された重力駆動装置で得られるよりも流体カラム内でより多くの圧力を要求し得る。
【0050】
本発明の実施形態では、試薬混合が、他のシステムよりも複雑さを必要としない。緩衝液、塩、デオキシリボヌクレオチド、オリゴヌクレオチドプライマーおよび酵素などの核酸増幅に必要な試薬は、好ましくは、凍結乾燥ペレットまたはケークの使用によって安定に組み込まれる。これらの凍結乾燥試薬は、流体チャンバ、流体チャンバの凹部またはチャネルの凹部に密封され、水溶液と接触すると容易に可溶化され得る。追加の混合が必要とされる場合、本発明の実施形態の垂直配向が、溶液を混合する新規な方法の機会を提供する。流体チャンバの下にあるヒータを利用することによって、気体が加熱され、溶液が感熱性成分を含有する場合には、チャンバ内の反応溶液に泡が伝達される。あるいは、溶液が感熱性成分を含有しない場合には、ヒータを使用して、沸騰が生じる点まで溶液を直接加熱することができる。気泡は流体チャンバおよびチャネル内に蓄積し、反応溶液に取って代わるまたは装置内の流体移動を妨げるので、気泡の発生は以前開示された流体および微小流体装置においては通常望ましくない。本明細書に提示される本発明の実施形態の垂直設計は、気泡が流体表面に浮上することを可能にし、ごく最小の一過的な流体変位しかもたらさず、流体または微小流体系に対する泡の不都合な影響を有効に改善する。プロセス中に置換された流体が発熱体をオフにした後に重力によって元の流体チャンバに単純に戻るので、沸騰による混合は、この垂直設計でも便利である。
【0051】
本発明の実施形態では、比色検出ストリップを使用して増幅された核酸を検出する。その使用の容易さ、信頼性および低コストのために、側方流アッセイが免疫アッセイ検査に一般的に使用される。先行技術は、多孔質材料を、同様に多孔質材料で構成される標識ゾーンまたはその近くにあり、側方流アッセイ装置の一端またはその近くに配置される試料受容ゾーンとして使用する、核酸を検出するための側方流ストリップの使用の記載を含んでいる。これらの以前の発明では、標識部分が標識ゾーンにある。試料受容ゾーンおよび標識ゾーンとしての多孔質材料の使用は、多孔質材料中のいくつかの試料溶液ならびに検出粒子の保持をもたらす。本発明の実施形態では、検出に必要な可逆的に固定化された部分を有する多孔質材料を含む標識ゾーンを使用することができるが、本発明の実施形態は、好ましくは、側方流ストリップの試料受容ゾーンとは異なり、低い流体保持特性を有する非多孔質材料を含む装置の領域に保持される検出粒子または部分を利用する。この手法により、核酸標的含有試料を、装置の側方流部品の試料受容端の多孔質部品に導入する前に標識することが可能になり、それによって多孔質標識ゾーン中の試料物質および検出粒子の保持および/または損失が排除される。この方法はさらに、高温での処理などの、検出部分の存在下での試料の種々の処理の使用を可能にし、二本鎖標的または一本鎖標的内の二次構造の変性を、多孔質試料受容もしくは標識ゾーン材料または側方流検出ストリップ材料に対する温度の影響についての懸念なしに達成する。さらに、試料受容ゾーンと側方流接触しないが、ベントなどの流体部品の制御を受ける標識ゾーンを使用することにより、標的と標識を流体流制御システムによって制御される時間にわたって接触したままにすることができる。したがって、本発明の実施形態は、試料および検出粒子の相互作用時間および条件が材料の毛管輸送特性によって決定される伝統的な側方流検査ストリップとは異なり得る。検出粒子を温度調節チャンバに組み込むことによって、効率的なハイブリッド形成に基づく検出を可能にする二重鎖核酸の変性が可能である。代替実施形態では、蛍光を使用して、LED、フォトダイオードおよび光学フィルタの組み合わせを用いて核酸増幅を検出する。これらの光学検出システムを使用して、増幅中のリアルタイム核酸検出および定量、ならびに増幅後のエンドポイント検出を行うことができる。
【0052】
本発明の実施形態は、核酸サンプルを選択的に増幅および検出することができる低コストな使用時点システムを含む。さらなる実施形態は、「Highly Simplified Lateral Flow-Based Nucleic Acid Sample Preparation and Passive Fluid Flow Control」と題された国際公開第2009/137059号パンフレットに記載されているような核酸試料調製装置との統合を含む。装置の実施形態は、好ましくはプラスチック流体部品とプリント回路アセンブリ(PCA)および/またはフレキシブル回路の両方を含み、場合により能動部品を保護するハウジングに収容される。温度調節、流体および試薬混合は、好ましくは、マイクロコントローラによって協調される。反応カセットは、好ましくは、重力、静水圧、毛管力および表面張力が、マイクロコントローラによって誘因されるベントと合わせて、装置内の流体移動を制御するように、垂直に配向され、垂直に走る。
【0053】
本発明の実施形態では、調製された試料流体または粗試料流体が試料ポートに入り、試料カップを満たすまたは部分的に満たす。試料は、乾燥または凍結乾燥試薬が試料と混合することができる試料カップ中で、種々の時間にわたって保持され得る。陽性対照試薬、対照鋳型または検査の実施に有益な化学試薬などの試薬を、試料カップ中に乾燥、液体または凍結乾燥形態で含めることによって試料溶液に導入することができる。細菌またはウイルス分析物の制御された温度のインキュベーションまたは熱溶解などの他の処理を場合により、温度制御電子機器とインターフェース接続された下にあるマイクロヒータおよび温度センサシステムによって試料カップ中で達成することができる。流体ネットワークは、試料がユーザによって手動でまたは自動化されたシステムを介してカセットに導入される試料ポート、例えばドッキングユニットまたは試料処理サブシステムに必須のサブシステム;試料を、試料が導入されている間の蓄積を促進し、試薬を添加するために保持する試料カップ、試料の流体ネットワークの下流部分へのさらなる移動の前に要求される処理(例えば、細菌細胞またはウイルスの溶解を行うための熱処理)を行うための部品;流体チャネルおよび/またはチャンバの空気、ガスまたは溶液圧力とカセットの膨張チャンバの圧力の平衡化のための再循環ベント通路;乾燥/乾燥または凍結乾燥または半乾燥状態の試薬ビーズ(例えば、材料、試薬、化学物質、生物学的物質、タンパク質、酵素もしくは他の物質またはこれらの物質の混合物のビーズまたはペレット)を、試料溶液または試料の添加前にカセットに導入される緩衝液により再水和して、中に含有されるビーズまたはペレットを再水和し、よって中の材料と試料溶液を混じり合わせることができるビーズ凹部;カセット内の流体移動を制御するために開くことができる1つまたは複数のベントのセット;試料を温度レジメンに供することができる第1のチャンバ;液体および/または気体の第2のチャンバへの早すぎる侵入を防止するため、あるいは溶液または気体の第2のチャンバへの移動を一時的に制御するための、第1のチャンバを第2のチャンバと接続する流体チャネル内の任意のバリア;場合により第1のチャンバと第2のチャンバとの間に位置する任意選択の試薬ビーズ凹部から試薬を場合により添加した後、試料溶液をさらなる温度レジメンに供することができる第2のチャンバ;分析物またはレポータ分子または分析物の存在を示す他の物質を検出するために試験ストリップが装着されたチャンバを形成する検査ストリップ凹部を含む。いくつかの実施形態では、カセットが、カセットの密封、溶出、検出およびデータ伝達の機能を行うドッキングユニットに挿入される。好ましくは、いったんカセットがドッキングユニットに挿入され、試料が充填され、蓋が閉じられると、ユーザ介入は必要ない。
【0054】
図1~
図2のカセット2500の代表的な図面を参照すると、核酸試料が、試料ポート20を通って流体部品5中の試料カップ10に添加される。摺動シール91は、アッセイ開始時にドッキングユニット蓋を閉じることによって閉鎖位置に移動する。カバー25は、膨張チャンバ52を密封するために、スライド91を定位置に保持する。核酸試料は、オンライン(すなわち、統合核酸調製サブシステム)、別個の核酸調製プロセス(例えば、多くの商業的に入手可能な方法の1つ、例えばスピンカラム)、引き続くピペットによる精製核酸の装置への添加、または未処理の核酸含有試料に由来し得る。試料カップ内、好ましくは試料カップ内または試料カップに隣接する凹部13内に既に存在するのは試薬混合物16であり、これは液体形態であっても乾燥形態であってもよく、細胞およびウイルスの溶解を促進する、ならびに/あるいは遊離核酸を安定化するのに有用な成分を含有する。例えば、ジチオトレイトールおよび/またはpH緩衝試薬を使用して核酸を安定化させ、RNアーゼを阻害することができる。同様に、酸または塩基媒介溶解を達成するための試薬を使用してもよい。いくつかの実施形態では、試薬混合物を凍結乾燥して凍結乾燥試薬を形成する。いくつかの実施形態では、ウイルス、細菌または核酸などの陽性対照が試薬混合物中に存在する。試料の試料カップへの導入によって、試薬が試料に作用するように試薬と試料が混じり合わされる。試料を試薬とさらに混合する、または試薬を再懸濁させるための任意選択の気泡混合ステップを場合により行うことができる。次いで、流体を場合により試料カップ10内で加熱して、細胞およびウイルス粒子を溶解する。次いで、流体を、好ましくはチャネル40を通して、装置が垂直配向にあるときに試料カップの下に存在する第1のチャンバ30に導く。試薬凹部15を、好ましくは、流体が凹部を通過して、第1のチャンバ30に入る前に、その中に含有される乾燥または凍結乾燥試薬と混じり合うように、入口チャネルに沿って配置する。第1のチャンバが逆転写チャンバである実施形態では、好ましくは、試薬凹部15に存在するのが、乾燥または凍結乾燥形態の緩衝試薬、dNTP、オリゴヌクレオチドプライマーおよび/または酵素(例えば、逆転写酵素)などの逆転写反応に必要な全ての成分である。逆転写チャンバは、好ましくは、発熱体と接触して、RNAのcDNAへの逆転写を支持するのに必要な温度調節のための手段を提供する。チャネル35は、チャンバ30を試薬凹部37に接続する。チャンバ30内でのcDNA合成後、ベント50を開いて、逆転写反応物をチャネル35を介して試薬凹部37に流すことを可能にする。試薬凹部37中に存在する乾燥または凍結乾燥試薬は、試薬が、好ましくは増幅チャンバである第2のチャンバ内の試料に作用するように、流体が入口39を介して凹部を通過して第2のチャンバ90に行く際に流体と混じり合う。好ましくは、試薬凹部37には、緩衝剤、塩、dNTP、rNTP、オリゴヌクレオチドプライマーおよび/または酵素などの増幅反応に必要な全ての成分が存在する。いくつかの実施形態では、試薬混合物を凍結乾燥して凍結乾燥試薬を形成する。複数のアンプリコンを生成する多重化検査を容易にするために、多重増幅を、増幅チャンバ(複数可)内、好ましくは前記増幅チャンバ(複数可)の上流の試薬凹部内に複数のプライマーセットを堆積させることによって達成することができる。さらに、複数の増幅および検出チャンバが装置に組み込まれた回路基板および流体設計は、シングルプレックス(single-plex)反応であっても多重反応であってもよい複数の並列増幅反応を支持する。この手法は、同じ反応で複数のプライマー対を使用する多重増幅から生じる、当業者に知られている複雑さを低減または排除する。さらに、複数の増幅反応チャンバの使用により、異なる温度レジメン下での同時増幅が、異なる標的および/またはプライマー配列について要求される異なる融解またはアニーリング温度などの最適な増幅のための要件に適応することを可能にする。
【0055】
核酸増幅後、ベントポケット150を開けて、増幅反応産物がチャネル135を介してチャンバ230に流れるのを可能にする。チャンバ230内に位置する検出ストリップ235は、検出ストリップ235の領域上または場合により毛管プール93内に位置する検出粒子によって標識された標的核酸の検出を可能にする。
【0056】
チャンバ30が開口部51を介して膨張チャンバ52に通気されるので、試料カップ10から第1のチャンバ30への流体移動が生じる。装置の第1のチャンバから第2のチャンバへの流体移動は、好ましくは、第2のチャンバに接続されたベントの開口によって達成される。流体が第1のチャンバ30に入ると、下流チャンバに接続されたベントポケット50が密封され、したがって流体は2つのチャンバを接続するチャネル35を通過しない。ここで
図2Aを参照すると、チャンバ30からチャンバ90への流体の移動は、ベントポケット50を覆うシールを破裂させることによって、チャンバ90内の空気を膨張チャンバ52内の空気と連通させることによって達成することができる。ベントポケット50におけるシールの破裂は、ベントチャネル60を介してチャンバ90内の空気とベントポケット54に開口部51を介して接続された膨張チャンバ52内の空気の連通を可能にする。
図2Bに示されるように、ベントポケット54におけるシールは、好ましくは開いている、または予め破裂させた。
図2Cに示されるように、ベントポケット50のシールの破裂は、ベントポケット50(したがって、チャンバ90)がベントポケット54(したがって、膨張チャンバ52)と連通することを可能にする。この流体移動方法は、好ましくは、検査カセット内に生物災害試料および増幅された核酸を含有するよう、気密密封空間内で具体化される。気密密封カセットを可能にするために、選択的耐熱性および熱不安定性材料を、
図2B~
図2Cの断面図に概略的に表される様式で積層する。ここで
図2B~
図2Cを参照すると、好ましくはプリント回路基板またはPCA75上に抵抗器を含む熱源70が、ベントポケット50、54と整合して、熱不安定性ベントポケットシール材80と近接して配置される。ベントポケットシールは、ポリオレフィンまたはポリスチレンなどの熱不安定性材料を含むことができる。熱安定性材料(ポリイミドなど)72を好ましくは熱源70と熱不安定性ベントポケットシール材80との間に配置して気密バリアを形成する。いくつかの実施形態では、ベントポケットの間またはベントポケットを囲む密封空間55が、好ましくは開いたベントおよび/または任意選択の膨張チャンバの間の空気の連通のためのエアギャップも提供しながら、熱安定性材料72を熱不安定性材料80および/または流体部品5に結合し、1つまたは複数のベントを開いた後のベントの領域の検査カセットの気密シールを維持する接着層を含む任意選択のガスケットまたはスペーサ56を含めることによって増大される。この実施形態では、熱が熱源70から熱安定性材料72および密封空間55を通して熱不安定性ベントポケットシール材80に伝達され、それを破裂させてベントポケット50を開く。マイクロコントローラは、好ましくは、熱源70に電流を送る役割を果たす。ベントポケット50は、好ましくは検査カセット内のガスが検査カセットの外部の環境に対して密封されたままであるように、閉鎖空間に開く。密閉空間は、場合により膨張チャンバなどのガス膨張を可能にするための空の空気チャンバを含んで、検査カセット内に空気を含むことができる。
図2Cに示されるように、ベントポケット54は熱源71によって予め破裂されており、ベントポケット54は膨張チャンバとガス連通状態にあるので、ベントポケット50を開くと、通気された流体チャンバ内のガスと膨張チャンバのガスの連通がもたらされる。通気された流体チャンバ内で結果として生じる減圧は、流体が重力によって、上方に位置するチャンバから通気されたチャンバ内に流れることを可能にする。ベントポケットの他の実施形態は、感熱膜以外のシールを含むことができ、穿孔、破裂または溶解などのシールを破壊する他の方法を利用することができる。このようなカセットの写真を
図2Eに示す。
【0057】
ベントポケットの開口面の反対側の面は、場合により
図45のディンプル7004などのディンプル、突起、凹凸または他の同様の構造を含んで、ベントシール材の破裂中に開口部の形成を容易にすることができる。このような構造はまた、好ましくは、シールの破裂後にベントの再封を防止する。これは、表面実装部品を有する回路基板を含む実施形態で起こり得る。このような実施形態では、表面実装抵抗器が、ポリイミドフィルムを引き伸ばして、これをガスケット内の開口部および熱不安定性材料に対して押し付けることができる。いったんシールが破裂すると、溶融したシール材がそのポリイミドと二次シールを形成し、それによってベントを閉じることができる。発熱体を形成する金属トレースを含むフレキシブル回路の実施形態では、ヒータが、ポリイミドフレキシブル回路を局所的に変形させ、しばしばガスケットの開口内に延びる突起(しばしばヒータ材料を含む)を形成し、おそらく溶融したシール材によりベント開口を閉塞させ得る。ディンプル7004は、これらの発生を防止するのに役立ち得る。
【0058】
密封空間55は、場合により他のベント、ベントポケットまたはチャンバ(膨張チャンバ52など)への導管を提供する。ベント開口後、流体部品5は外部環境59から密封されたままである。膨張チャンバ52は、好ましくは、温度変化によるガス膨張が系の圧力に有意に影響しないように十分に大きな体積を提供することによって、またはピストン(
図3)、可撓性空気袋(
図4)、蛇腹(ベローズ)(
図5)もしくはガスがバリアを横切って自由に通過するのを許すが、巨大分子は許さない疎水性バリア(
図6)の変位によってガス膨張を収容することによって、空気/水蒸気体積を緩衝することにより、加熱中のガス膨張を収容する。
図3では、膨張チャンバが、密封流体系内の圧力を増加させることによって変位するピストンを利用する。膨張チャンバは、密封系内の圧力の蓄積を低減または排除するのに役立つ。ピストンの変位は、気密密封検査カセット内の圧力上昇に応答して起こり、加熱中のガス膨張などの過程から生じる検査カセット内の内圧を低下させる。
図4では、気密密封検査カセット内の圧力上昇に応答して空気袋の偏向が生じる。空気袋の変位は、加熱中のガス膨張などの過程から生じる検査カセット内の内圧を低下させる。
図5では、気密密封検査カセット内の圧力上昇に応答して蛇腹の伸張が生じる。蛇腹の伸張は、加熱中のガス膨張などの過程から生じる検査カセット内の内圧を低下させる。
【0059】
膨張チャンバは、
図1に示される検査カセットの上部の膨張チャンバ52に示される含まれた体積の如き、空の空気体積として組み込むことができる。
図7に示されるように、最小限の厚さのカセットの製作を容易にするために、熱不安定性材料410および熱安定性材料430に密封する場合、膨張チャンバを適切に設計されたガスケット420によって形成されたエアギャップ440に組み込んで、流体部品400の裏打ちを形成することができる。検査カセットの物理的寸法の最小化は、輸送コストを削減し、熱質量を減少させ、審美的に快適で簡便な設計を提供するために望ましい。ガス膨張のための空気体積を形成することに加えて、ガスケット420は、熱安定性材料430と熱不安定性材料410との間に空間を生成して、密封系を維持して環境への暴露を防止しながら、開いたベントを通した空気の自由な移動を促進する。ガスケット420は、好ましくは、開いたベント間の圧力を平衡化するのに十分なエアギャップを提供するのに十分な厚さであるが、ヒータと対応するベントポケットとの間の界面または熱安定性材料によるカセットの密封に実質的に影響を及ぼさないほど十分に薄い。フレキシブル回路を含む本発明の実施形態では、フレキシブル回路が、ポリイミドなどの熱安定性材料を含むことができ、この場合、例えば
図8Cに示されるように、熱安定性材料430の別個のシートは不要である。密封検査カセット内の圧力を低減または平衡化するために膨張チャンバを使用することにより、圧力不平衡が検査カセット内の好ましくない溶液移動も早すぎる溶液移動ももたらさないこと、および圧力蓄積がチャンバ間またはチャネルを通した移動などの所望の流体移動に悪影響を及ぼさないことが保証される。この圧力制御、すなわち装置全体にわたって指定された圧力分布の確立は、系が大気圧にかかわらず設計どおりに作動することを可能にする。そのため、膨張チャンバは、使用される系内の安定した圧力に依存する制御された流体移動を可能にし、気密密封検査カセットの使用も可能にし、それによって検査カセットを大気に通気するという欠点、例えば大気中へのアンプリコン(amplicon)の潜在的な放出が回避される。さらに、ベントを膨張チャンバに開くなどにより、流体の下流の圧力を低下させることによって流体流を可能にする方法は、ポンプ、例えば流体の上流に正の圧力を生成するもの、または可動部品を用いる他の装置の必要性を排除する。同様の利点は、下流領域と実質的に同じ圧力で、流体の下流の領域を比較的大きなリザーバ(膨張チャンバなど)に通気することによって可能であり、それによって、流体が重力の下で流れることが可能になる(装置が適当な配向にある限り)。膨張チャンバの大きさは、好ましくは、流体の流動に必要な毛管力または重力を克服する点まで系の圧力を上昇させることなく、アッセイ中に生成される反応蒸気を収容するのに十分に大きい。
【0060】
第2のチャンバが増幅チャンバである実施形態では、チャンバが、好ましくは、発熱体と接触して、核酸増幅を支持するために必要な温度調節のための手段を提供する。本発明のいくつかの実施形態では、増幅チャンバが、内部表面の少なくとも一部にオリゴヌクレオチドを含有することができる。
図2Dに示されるように、チャンバ30の壁95と1つまたは複数の発熱体100との間の界面では、熱伝導グリースまたは化合物などの熱伝導性材料を配置することが有利となり得る。マイクロコントローラは、好ましくは、単純なオン/オフもしくは比例積分微分(PID)温度制御方法または当業者に公知の他のアルゴリズム温度制御を用いて、PCA75上の温度センサ110から収集されたデータに基づいて、好ましくは金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)によって、抵抗発熱体(複数可)への電流を調節する。
【0061】
発熱体、およびいくつかの実施形態では対応する温度センサ(複数可)を使い捨て部品に配置することにより、温度制御サブシステムとそれらがインターフェース接続する増幅および検出チャンバとの間の再現性の高い熱結合の製造が可能になる。この手法は、製造中に熱伝導界面を形成することによって、流体サブシステムと電子熱制御サブシステムを結合する信頼性の高い手段を可能にする。結果として得られた電子温度制御部品と流体サブシステムとの間の優れた熱接触は、迅速な温度平衡、したがって迅速アッセイをもたらす。直接または介在ガスケットを用いて流体部品裏打ちの後部に融着された使い捨て抵抗発熱体を提供するためのフレキシブル回路の使用は、優れた熱接触、急速温度サイクルおよび再現性のある製造を達成する低コスト手段を可能にする。逆転写、増幅および流体流ベント制御のための抵抗発熱体は、フレキシブル回路の導電層をエッチングして必要な抵抗を示す幾何学を形成することによって、フレキシブル回路上に直接形成することができる。この手法は、追加の電子部品の必要性を排除し、コストを削減しながら製造を単純化する。
【0062】
本発明の一実施形態では、抵抗加熱およびベント開口のためのフレキシブル回路799が
図8に示されている。使い捨てカセットの部品として可撓性ヒータを使用することにより、加熱された流体チャンバ内の流体が可撓性ヒータ回路を含む材料と直接接触できるようにカセット裏打ちを構成することが可能になる。例えば、
図8Cに示されるように、カセットの後部を形成する熱不安定性材料807(好ましくはBOPSを含む)の窓806を流体チャンバ上に配置して、流体をフレキシブル回路799と直接接触させることができる。フレキシブル回路層と、フレキシブル回路上のヒータによって温度制御される流体との間の直接接触は、急速な温度変化が可能な低熱質量系を提供する。温度調節に使用するための温度データの収集を可能にするために、温度センサを場合によりフレキシブル回路に組み込むことができる、および/または赤外線センサなどの温度監視の非接触手段を使用することができる。フレキシブル回路内の発熱体800などの抵抗発熱体は、ベントポケットと整合して配置すると、ベント破裂に利用することができる。電気パッド812は、発熱体800に電流を供給する。同様に、フレキシブル回路(複数可)は、流体チャンバを加熱するための抵抗発熱体802および803と、検出ストリップの温度を調節するための任意の抵抗発熱体804とを含むことができる。
【0063】
この実施形態では、フレキシブル回路799が、好ましくは、上述の熱安定性材料72と同様に、気密密封カセットを維持するための熱安定性シールとしても機能する。場合により、追加の熱安定性層(例えば、ポリイミドを含む)をフレキシブル回路799と後部ハウジングまたはパネル805との間に配置することができる。スペーサまたはガスケット808を好ましくは熱不安定性材料807とフレキシブル回路799との間のベント抵抗器800の周りに配置して、密封カセットを維持しながら、開いたベントを通した自由な空気移動を保証する。後部ハウジングまたはパネル805は、好ましくは薄いプラスチックを含み、好ましくは取り扱い中にフレキシブル回路を保護するためにその露出面上に配置される。後部ハウジングまたはパネル805は、冷却および温度監視を容易にするために、フレキシブル回路799上の発熱体上に窓を含むことができる。ドッキングユニット(下記)の制御電子機器との電気接触は、場合により、好ましくはエッジコネクタまたはコネクタピン(ばね付きピンなど)を含む一組の電気パッド810によって提供されてもよい。
【0064】
検査カセットチャンバの実施形態は、好ましくは、約30℃~約110℃の範囲の温度までの繰り返しの加熱および冷却に耐えることができる材料を含む。さらにより好ましくは、チャンバは、約10℃~約50℃/秒の温度変化速度の約30℃~約110℃の範囲の温度までの繰り返しの加熱および冷却に耐えることができる材料を含む。チャンバは、好ましくは、熱媒介溶解および生化学反応、例えば好ましくはマイクロコントローラのプログラミングによって制御される逆転写、熱サイクルまたは等温増幅プロトコルに適した温度でその中の溶液を維持することができる。いくつかの核酸増幅用途では、高温、例えば、約37℃~約110℃の温度で1秒~5分間の初期インキュベーションを提供して、標的核酸を変性するおよび/またはホットスタートポリメラーゼを活性化することが望ましい。その後、反応溶液を、等温増幅のために増幅チャンバ内の増幅温度に保持する、または熱サイクリングに基づく増幅のために、それだけに限らないが、核酸二重鎖変性をもたらす温度ならびに標的とのハイブリダイゼーションによるプライマーアニーリングおよびポリメラーゼ触媒核酸重合を通したプライマーの伸長に適した温度を含む少なくとも2つの温度間の温度で変化させる。熱サイクリングレジメン(熱サイクル計画)における各必要な温度でのインキュベーションの持続時間は、標的核酸の配列組成および反応混合物の組成によって変化し得るが、好ましくは約0.1秒~約20秒である。繰り返しの加熱および冷却は、典型的には約20サイクル~約50サイクル行われる。等温増幅法を含む実施形態では、反応溶液の温度を、使用される増幅技術に応じて、約3分~約90分の間、一定温度(ある場合には、高温での初期インキュベーション後)で維持する。いったん増幅反応が完了すると、増幅反応溶液を、増幅のために使用されるチャンバの下のチャンバと連通するベントを下方チャンバに開放することによって輸送して、増幅された核酸のさらなる操作を達成する。本発明のいくつかの実施形態では、操作が、増幅された核酸の変性および検出粒子とコンジュゲートした検出オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションを含む。本発明のいくつかの実施形態では、増幅された核酸を、検出粒子とコンジュゲートした検出オリゴヌクレオチドおよび検出ストリップ上に固定された捕捉プローブとハイブリダイズする。
【0065】
いくつかの実施形態では、追加の生化学反応を、増幅反応の前、間または後に増幅チャンバ内で行うことができる。このような過程には、それだけに限らないが、RNAをcDNAに転写する逆転写、複数のプライマー対が複数の標的核酸を同時に増幅する多重化、および増幅反応プロセス中に増幅産物を検出するリアルタイム増幅が含まれ得る。後者の場合、増幅チャンバは、バルブも出口チャネルも含まなくてもよく、増幅チャンバは、好ましくは、光学窓を含む、または増幅反応プロセス中のアンプリコン濃度の問い合わせを可能にするよう構成されるだろう。1つのリアルタイム増幅の実施形態では、標的核酸に相補的な蛍光標識オリゴヌクレオチドまたは二重鎖DNAに特異的な蛍光色素のいずれかを、LEDまたはダイオードレーザ(複数可)などの励起光源およびフォトダイオードなどの検出器、およびそれだけに限らないが光学フィルタを含む適当な光学部品によって蛍光強度について監視する。
【0066】
<検出>
検出チャンバ230の実施形態は、好ましくは、増幅チャンバ内で生成される増幅された標的核酸の特異的標識を提供する。
図2Aに示されるように、検出チャンバ230は、好ましくは、毛管プールまたは空間93および検出ストリップ235を含む。染料ポリスチレンミクロスフェア、ラテックス、コロイド金、コロイドセルロース、ナノ金、または半導体ナノ結晶を含む検出粒子は、好ましくは毛管プール93中に存在する。前記検出粒子は、標的分析物に相補的なオリゴヌクレオチドを含むことができる、またはビオチン、ストレプトアビジン、ハプテンもしくは標的増幅核酸上に存在するハプテンなどの標識に対する抗体などの、増幅された標的核酸に結合することができるリガンドを含むことができる。検出チャンバ230は、乾燥され、凍結乾燥され、または多糖、洗剤、タンパク質もしくは当業者に公知の他の化合物などの担体中の検出粒子の乾燥混合物として内部表面の少なくとも一部上に存在して検出粒子の再懸濁を促進する検出粒子を含有してもよい。いくつかの実施形態では、側方流検出ストリップが検出粒子を含むことができる。他の実施形態では、検出チャンバmyに通じる試薬凹部チャネル135が検出粒子を含むことができる。検出チャンバは、加熱および/または冷却することができる。
【0067】
適切な検出粒子には、それだけに限らないが、二重鎖核酸に特異的な蛍光色素、蛍光修飾オリゴヌクレオチド、またはオリゴヌクレオチドコンジュゲート染色微粒子または金コロイドまたはコロイドセルロースが含まれる。アンプリコンの検出は、検出されるべきアンプリコンに相補的であるか、さもなければ特異的に結合することができる「検出オリゴヌクレオチド」または他の「検出プローブ」を伴う。検出オリゴヌクレオチドと微粒子のコンジュゲーションは、ストレプトアビジンコーティング粒子およびビオチン化オリゴヌクレオチドの使用により、またはカルボキシル化粒子がカルボジイミドの存在下で活性化され、検出オリゴヌクレオチド上に存在する一級アミンと特異的に反応するカルボジイミド化学によって起こり得る。検出オリゴヌクレオチドと検出可能な部分のコンジュゲーションは、内部でまたは5’末端もしくは3’末端で起こり得る。検出オリゴヌクレオチドを、微粒子に直接、より好ましくは、エチレングリコールまたはポリヌクレオチドなどのスペーサ部分を通して結合することができる。本発明のいくつかの実施形態では、検出粒子が、多重増幅などのプロセスから生じる増幅された核酸の複数の種に結合し得る。これらの実施形態では、増幅された核酸の各種の特異的検出を、検出される各種に特異的な方法を用いて、検出ストリップ上で検出することによって実現することができる。このような実施形態では、増幅中に標的核酸に導入されたタグを使用して、存在する全ての増幅種を標識することができる一方で、標識核酸と検出ストリップ上に固定された種特異的捕捉プローブのその後のハイブリダイゼーションを使用して、増幅DNAのどの特異的種が存在するかを決定する。
【0068】
二重鎖DNA増幅産物の場合、検出チャンバへの導入後に反応溶液を加熱することによって、検出を容易にすることができる。二重鎖DNAを融解する、または一本鎖DNAの二次構造を変性させ、次いで検出オリゴヌクレオチドの存在下で冷却すると、増幅された標的核酸の配列特異的標識が生じる。検出チャンバの下にある発熱体を使用して、約1~約120秒間、流体体積を加熱して、二本鎖DNA融解または一本鎖DNA二次構造の変性を開始させることができる。溶液を室温に冷却するにつれて、増幅された標的核酸が検出微粒子に特異的にハイブリダイズし得る。次いで、反応体積を、好ましくは、検出チャンバのベントを開くことによって、標識チャンバの下の検出チャンバの領域に向ける。
【0069】
効率的な標識を行うためには、可溶化した検出粒子を好ましくは反応溶液とよく混合する。本発明の実施形態では、検出粒子を、チャネル135の出口の毛管プール93に局在化させて、チャンバ230に入る際の溶液との混合を容易にすることができる。毛管プール93内の検出粒子は、場合により凍結乾燥検出粒子であってもよい。毛管プールは、粒子の混合および分散を改善して、検出粒子と検出粒子が結合する核酸の混合を促進する。毛管プールはまた、
図9に示されるように、検出ストリップ上の粒子移動の均一性を増加させる。毛管プールは、200μL未満、より具体的には約100μL未満、さらにより具体的には約60μL未満、さらにより具体的には約40μL未満の体積のものなどの低体積アッセイに特に有利である。
【0070】
本発明の検出チャンバの実施形態は、増幅された標的核酸の特異的検出を提供する。本発明の一定の実施形態では、ライン、ドット、マイクロアレイまたは標識アンプリコンに直接もしくは間接的に特異的に結合することができる結合部分を含む他の視覚的に識別可能な要素でパターン化された多孔質材料(セルロース、ニトロセルロース、ポリエーテルスルホン、ポリビニリジンフルオリド、ナイロン、電荷修飾ナイロンまたはポリテトラフルオロエチレンなど)で構成された吸収ストリップを通した標識アンプリコンを含有する溶液の毛管ウィッキング(capillary wicking、毛管吸上げまたは毛管現象)によって達成される。いくつかの実施形態では、装置の吸収ストリップ部品が、物理接触した最大3つの多孔質基質を含む:ウィッキングを増強するための両親媒性試薬を含む界面活性剤パッド、標識アンプリコンに選択的に結合することができる少なくとも1つの結合部分が固定化された多孔質材料(セルロース、ニトロセルロース、ポリエーテルスルホン、ポリビニリジンフルオリド、ナイロン、電荷修飾ナイロンまたはポリテトラフルオロエチレンなど)を含む検出ゾーン、および/または追加の吸収能力を提供するための吸収パッド。検出粒子を、場合により検出チャンバ内の側方流多孔質材料内に組み込むことができるが、以前記載された側方流検出装置とは異なり、好ましくは代わりに検出粒子を毛管プールの上流に保持し、そこでアンプリコンと検出粒子との間の結合複合体の実質的に増強された形成を、結果として生じた標識核酸を装置の多孔質部品に導入する前にまたはそれと同時に行うことができる。
【0071】
「捕捉オリゴヌクレオチド」または「捕捉プローブ」を、好ましくはUV照射などの当業者に公知の種々の手段のいずれかによって装置の検出ストリップ要素に固定する。捕捉プローブは、標識された核酸を含有する溶液が捕捉ゾーンを通過する際に標識された核酸を捕捉して、捕捉プローブ固定部位で標識の濃度を増加させ、よって、標識された核酸アンプリコン(複数可)の存在を示す検出可能なシグナルを生成する。単一検出ストリップを、1つまたは複数の捕捉プローブでパターン化して、複数のアンプリコンの多重検出、アンプリコン配列の決定、検出シグナルの直線性を延長することによるアンプリコンの定量、およびアッセイの品質管理(陽性対照および陰性対照)を可能にすることができる。
【0072】
<流体部品>
流体部品の実施形態は、好ましくは、プラスチック、例えばアクリル、ポリカーボネート、PETG、ポリスチレン、ポリエステル、ポリプロピレンおよび/または他の同様の材料を含む。これらの材料は容易に入手可能であり、標準的な方法で製造することができる。流体部品は、チャンバとチャネルの両方を含む。流体チャンバは、壁、2つの面を含み、入口、出口、凹部またはベントなどの1つまたは複数のチャネルに接続する。チャネルは、2つの流体チャンバまたは流体チャンバと凹部を接続することができ、壁および2つの面を含む。流体チャンバ設計は、好ましくは加熱および冷却を容易にするために表面積対体積比を最大化する。チャンバの内部体積は、好ましくは約1μL~約200μLである。溶液と接触するチャンバ面の領域は、好ましくは加熱中に均一な流体温度を保証するために発熱体がインターフェース接続される領域と一致する。流体チャンバの形状は、発熱体とかみ合うように、ならびに溶液の進入および放出のための好ましい幾何学を提供するように選択され得る。いくつかの実施形態では、装置作動中に現れる気泡のための空間を提供するために、チャンバの体積が流体体積よりも大きくてもよい。流体チャンバは、流体が毛管作用によってチャネル上に侵入しないことを保証するため、または通気機構を遮断するために、ベントチャネルに通じる拡大した膨張を有することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、溶液放出の前にチャンバへの液相又は気相の水の浸入を低減または排除することが望ましい場合がある。いくつかの実施形態のプロセスで使用される高温は、水分のチャネル、チャンバまたは凹部への早すぎる侵入をもたらし得る蒸気(例えば、気相水)を生成する。例えば、チャンバまたは凹部に存在する乾燥試薬または凍結乾燥試薬の乾燥状態を保持するために、液相または気相侵入の低減が望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、チャネルを、熱、水分および/または圧力などの外力によって除去され得る材料で、完全にまたは部分的に一時的に遮断することができる。チャネルの一時的遮断に適した材料には、それだけに限らないが、ラテックス、セルロース、ポリスチレン、熱接着剤、パラフィン、ワックスおよび油が含まれる。
【0074】
いくつかの実施形態では、検査カセットが、好ましくは、試料カップ、チャンバ、チャネル、ベントポケットおよびエネルギー誘導器を含む好ましくは射出成形流体部品を含む。射出成形検査カセット流体部品は、好ましくは、同様の組成の裏打ちプラスチックに超音波溶接するのに適したプラスチックで構成される。本発明の一実施形態では、検査カセット流体部品が、裏打ち材料に超音波溶接された単一射出成形部品を含む。エネルギー誘導器は、超音波エネルギーを流体部品に結合することを意図した熱不安定層の領域のみに導く流体部品の任意の特徴である。射出成形流体構成部品は、場合によりハウジング内に収容されてもよい。
図7は、好ましくは、射出成形流体部品400(好ましくは、耐衝撃ポリスチレン(HIPS)、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはNAS30、スチレンアクリルコポリマーなどのポリマーを含む)、熱不安定性材料410(例えば、変性中の高温に耐えるのに十分な約239℃という比較的低い溶融温度および約100℃のガラス転移温度を有するBOPSまたは265℃の溶融温度および150℃のガラス転移温度を有するポリカーボネート)、接着性のスペーサ420(例えば、好ましくは担体を組み込まないシリコーン転写接着剤、ポリエステル担体を含むアクリル接着剤または装置の高温に耐えることができる任意の接着剤を含む)および耐熱層430を含むカセットを例示している。熱不安定性材料410は、熱を介して破裂し、これは、好ましくは、上にある耐熱層430(例えば、ポリイミドまたは耐熱性の高い他のポリマーを含む)を通して伝達される。カセットのベント特徴上の熱不安定性材料の融解は、ベントおよびベントチャネルを膨張チャンバに開き、それによってカセット内の圧力均等化を可能にする。上にある耐熱層430は、好ましくは無傷のままであり、それによって、カセットがベント開口後に気密シールを維持することを可能にする。
【0075】
いくつかの実施形態では、接着性スペーサが、密封カセットの内圧を低下させるために加熱中のガスの膨張を緩衝するための膨張チャンバとして機能し得る空の領域440を含む。熱不安定性層410を、超音波溶接または接着剤を使用するなどの結合方法またはプロセスによって流体部品400と結合する。次いで、得られた部分をスペーサおよび耐熱層と結合する。いくつかの実施形態では、耐熱層を、加熱されたチャンバ上に存在しないように構成する。他の実施形態では、耐熱層がヒータチャンバ上に存在する。さらに他の実施形態では、接着性スペーサおよび耐熱層が、流体部品のベントポケット特徴と整合する領域上にのみ存在する。この実施形態では、耐熱層を、場合により加熱されたチャンバと整合した領域の熱不安定性材料の直ぐ上に配置することができる。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態では、流体チャンバおよびチャネル壁の厚さが、約0.025mm~約1mmの範囲、好ましくは約0.1mm~約0.5mmの範囲にある。この厚さは、好ましくは、流体部品の構造的完全性の両要件を満たし、高温および関連する圧力下での密閉チャンバの密封を支持する。チャネル壁、特にベントチャネル壁の厚さは、好ましくは、チャンバの厚さよりも小さく、約0.025mm~約0.25mmの範囲にある。入口および出口チャネルの幅は、好ましくは、毛管現象を高めるように選択される。浅いベントチャネルは、通気に悪影響を及ぼすことなく、流体部品に改善された剛性を付与する。流体部品のプラスチック成形面は、好ましくは、熱伝達を最大化するために壁を形成する面よりも薄い。任意選択の断熱層が流体部品のいくつかの部品を切り開き、増幅チャンバおよび検出チャンバを囲み、温度制御チャンバの熱隔離に寄与する。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態では、流体部品400を熱不安定性裏打ち材料410に結合する前に、凍結乾燥試薬16、検出ストリップアセンブリ230および検出粒子などの検査カセットの追加の部品を組み込むことができる。いくつかの実施形態では、良好な接着を確保するために圧力を印加することによって部品を積層することができる。いくつかの実施形態では、部品を感圧接着剤および超音波溶接などの方法の組み合わせによって結合することができる。核酸増幅反応の性能に悪影響を与えることが知られているまたは分かった接着剤は、回避しなければならない。アクリル系またはシリコーン系接着剤は、本発明においてうまく使用されている。1つの好ましい接着フィルムは、Advanced Adhesives Researchによって供給されるSI7876である。他の接着剤は、装置作動中に遭遇する温度にわたって強固な密封を提供しながら、使用される緩衝液、プラスチックおよび反応化学物質と化学的に適合していることが分かったら使用することができる。
【0078】
図2および
図7を参照すると、ベントポケットは、好ましくは、その構成において他のチャンバと区別される。上記の流体部品の構成後、ベントポケットは、直接的にまたはいくつかの実施形態では介在するエアギャップ440もしくはベントポケット54および耐熱性材料430を介して間接的にPCA75と出会う流体部品の側面に開口面を有する。ベントポケットを形成するために、好ましくはPCAのベント抵抗器70に隣接した薄い熱不安定性膜410を含む、追加のプラスチック部品を結合してチャンバを密封する。フィルム410は、ポリスチレンなどの射出成形流体部品に超音波溶接するのに適した材料を含むが、他の類似の材料を使用することもできる。このフィルムは、ベントポケットを密封すると同時に、容易な穿孔を可能にするのに適しており、よって、電流がベント抵抗器を通過して急速な温度上昇を生じる場合に、より低い圧力のチャンバに通気する。好ましくは、材料が熱溶解、逆転写および核酸増幅などの検査カセットの他の操作に使用される温度に耐えることができるように、フィルムが加熱された場合に十分安定である。変性、標識、逆転写、核酸増幅および検出に使用される温度範囲において安定性を有するが、抵抗器70によって容易に達成される融解温度を有する材料の使用により、射出成形流体部品400の裏打ちに使用される単一材料が、チャンバの面とベントポケットの面の両方として働くことが可能になる。いくつかの実施形態では、温度制御されたチャンバの領域における追加の温度安定性を、ポリイミドなどの耐熱材料の上層膜によって実現することができる。本発明の他の実施形態では、熱不安定フィルム内の窓が、温度制御されたチャンバと整合しており、チャンバ内の流体と検査カセットの後部に融着されたフレキシブル回路の基板との直接接触を可能にする。
【0079】
<流体部品の追加部品>
上記のように、いくつかの追加の部品は、好ましくは、最終結合の前に本発明の流体部品内に組み込まれる。緩衝液、塩、dNTP、NTP、オリゴヌクレオチドプライマーおよび酵素(DNAポリメラーゼおよび逆転写酵素など)含む試薬を、装置組み立て前に、ペレット、球またはケークに凍結乾燥またはフリーズドライすることができる。試薬の凍結乾燥は当技術分野で周知であり、印加された真空下での昇華による凍結試薬アリコートの脱水を含む。凍結前に試薬に糖(二糖および多糖)およびポリアルコールなどの凍結乾燥保護剤(lyoprotectant)の特異的配合物を添加することによって、酵素の活性を保護し、再水和の速度を増加させることができる。凍結乾燥試薬ペレット、球またはケークは、標準的な方法によって製造され、いったん形成されると、合理的に耐久性があり、最終面を積層する前に流体部品の特定のチャンバ内に容易に配置することができる。より好ましくは、流体部品を裏打ち材料と結合する前に、凹部を流体ネットワークに組み込んで、凍結乾燥試薬のペレット、球またはケークを流体部品に入れることを可能にする。流体ネットワークの幾何学ならびに凹部の位置および順序を選択することによって、試料が所望の時間に所望の凍結乾燥試薬と反応して性能を最適化することができる。例えば、凍結乾燥(または乾燥)逆転写(RT)および増幅試薬球をRT反応チャンバおよび増幅チャンバの流路内の2つの別個の凹部に堆積させることによって、増幅酵素の干渉なしに最適な逆転写反応が可能になる。さらに、後の増幅反応に対するRT酵素の干渉を最小限に抑えるために、RT反応で提示されるRT反応後のRT酵素を、増幅試薬への導入前に熱失活させて、増幅への干渉を最小限に抑えることができるだろう。場合により、他の塩、界面活性剤および他の増強化学物質を異なる凹部に添加して、アッセイの性能を調節することができるだろう。さらに、これらの凹部は、凍結乾燥試薬が凹部を通過する際に凍結乾燥試薬が液体と混じり合うのを促進し、超音波溶接中に凍結乾燥材料を超音波エネルギーから隔離し、可溶化前の検査の加熱ステップ中に凍結乾燥試薬を極高低温から隔離するのにも役立つ。さらに、凹部は、凍結乾燥されたペレットが製造中に圧縮も粉砕もされないことを保証し、ペレットが多孔質のままになり再水和時間を最小化にすることを可能にする。
【0080】
本発明のいくつかの実施形態では、検出微粒子が、流体部品の別の追加部品である。いくつかの実施形態では、これらの微粒子を、上記反応試薬について記載されるように凍結乾燥することができる。他の実施形態では、液体緩衝液中の微粒子を流体チャンバの内面に直接塗布し、検査カセットの最終組立前に乾燥させることができる。微粒子を含有する液体緩衝液はまた、好ましくは、再水和を助ける糖またはポリアルコールを含む。乾燥前に水性緩衝液中の微粒子を流体部品に直接組み込むことによって、最終的な製造コストを単純化および低減することができ、凍結乾燥粒子と反応溶液の完全な混じり合い、および二本鎖核酸または核酸の二本鎖領域の一本鎖核酸への変性を加熱または核沸騰によって促進することができる。いくつかの実施形態では、凍結乾燥検出粒子を、流体ネットワーク内の凹部に配置する。他の実施形態では、凍結乾燥または乾燥検出粒子を、検出ストリップの直下の空間93に配置する。他の実施形態では、検出粒子を、検出ストリップと毛管連通した吸収性基質中で乾燥または凍結乾燥させる、あるいは検出ストリップ上で直接乾燥または凍結乾燥させる。毛管連通は、前記吸湿性基材と検出ストリップとの直接的な物理的接触であってもよいし、間接的(毛管連通が、検出粒子を搭載した吸収性基質から検出ストリップまで流体を輸送するために毛管輸送が達成されるチャネルまたはチャンバ領域で構成される介在距離にわたる)であってもよい。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態では、側方流検出ストリップアセンブリも、流体部品に組み込む。検出ストリップは、好ましくは、少なくとも1つの多孔質部品で構成される膜アセンブリを含み、場合により吸収パッド、検出膜、界面活性剤パッドおよび裏打ちフィルムを含み得る。検出膜は、好ましくは、ニトロセルロース、セルロース、ポリエーテルスルホン、ポリビニリジンフルオリド、ナイロン、電荷修飾ナイロンまたはポリテトラフルオロエチレン製であり、プラスチックフィルムで裏打ちされ得る。上記のように、捕捉プローブを、ライン、スポット、マイクロアレイまたは肉眼もしくは画像化システムなどの自動検出システムで可視化できる任意のパターンで検出膜上に堆積し、不可逆的に固定してもよい。堆積したオリゴヌクレオチドを、捕捉プローブ堆積後に検出膜のUV照射によって永久的に固定化してもよい。界面活性剤パッドは、好ましくは、核酸産物および検出微粒子の妨害されない移動を可能にする、最小の核酸結合および流体保持特性を有する多孔質基質を含み得る。界面活性剤パッドは、ガラス繊維、セルロースまたはポリエステルなどの材料を含むことができる。本発明の実施形態では、少なくとも1つの両親媒性試薬を含む配合物を界面活性剤パッド上で乾燥させて、検出膜を通る試料の均一な移動を可能にする。吸収パッドは、任意の吸収材料を含むことができ、検出膜アセンブリを通した試料ウィッキングを誘導するのに役立つ。基材としての両面接着フィルムなどの接着剤裏打ちフィルムを使用して、最初に検出膜を配置し、引き続いて任意の吸収パッドおよび/または界面活性剤パッドを約1mm~約2mm重複して検出膜と物理的に接触させることによって、検出膜部品を組み立てる。本発明のいくつかの実施形態では、検出膜が、界面活性剤パッドと間接的に毛管連通していてもよく、界面活性剤パッドと検出パッドとの間に物理的な分離があり、介在空間が毛管空間で構成されており、流体が毛管作用によって空間を横切ることができる。いくつかの実施形態では、界面活性剤パッドまたは界面活性剤パッドの領域が、検出粒子、乾燥検出粒子または凍結乾燥検出粒子を含むことができる。
【0082】
<スリーチャンバカセット>
本発明のいくつかの実施形態では、乾燥または凍結乾燥試薬のための追加の反応チャンバおよび/または追加の凹部を組み込むことができる。いくつかの実施形態では、このような設計が、逆転写および増幅の前に最初の別個の溶解反応を提供することが望ましい検査を容易にする。
図37A、
図37Bおよび
図38に示されるように、カセット5000は、膨張チャンバ5021を密封するカバー5020、好ましくは流体部品5023と密接に接触して配置されるフレキシブルヒータ回路5022、およびユーザからの回路網を隠す後部カバー5024を含む。核酸を含有する試料を、試料ポート5001を通して試料カップ5002に導入する。試料は凹部5003に自由に流入し、ここでチャネル5005を下って第1の反応チャンバ5006に流入する前に、好ましくは溶解試薬を含む第1の凍結乾燥ビーズ5004を再構成する。この自由流は、試料カップ5002の頂部と接続するベントチャネル5007によって促進される。ベントチャネル5007は、空孔5008を介して膨張チャンバ5021とさらに接続することができる。第1の反応チャンバ5006の下の密封された空気空間は、流体流によってわずかに加圧され、流れを第1の反応チャンバ5006の直下で停止させる。次いで、第1の反応チャンバ5006を、好ましくは、溶解試薬との適切な反応を促進する温度に加熱して、試料中の生物学的粒子および/または細胞を溶解し、その中に存在する核酸を露出させる。
【0083】
次いで、第2の反応チャンバ5011の頂部に接続されたベントバルブ5009を開くと、第2の凹部への試料流が促進され、ここで好ましくは逆転写のための試薬を含む第2の凍結乾燥ビーズ5010が再構成される。次いで、流体が、第2の反応チャンバ5011に進入し、そこで流れが、流れの下の閉鎖空気体積内の空気圧増加の結果として停止する。次いで、その後、第2の反応チャンバ5011を、好ましくは適当な温度に加熱して逆転写プロセスを促進する。
【0084】
第3の反応チャンバ5013の頂部に接続された次のベントバルブ5009を開くと、第2の反応チャンバ5011から第3の凹部を通した試料流が開始され、ここで好ましくは凍結乾燥PCR増幅試薬を含む凍結乾燥ビーズ5012が再構成される。次いで、試料が、第3の反応チャンバ5013に流入し、ここで熱サイクルを受けて、試料中に存在する標的分析物を増幅する。
【0085】
その後、側方流ストリップ5014の遠端に接続された最後のベントバルブ5009を開くと、ここで増幅された分析物を含有する試料が、前記のように分析物の検出のために側方流ストリップ5014に流れることが可能になる。
【0086】
<流れ制御特徴>
流体部品の設計は、場合により反応チャンバ内または反応チャンバの出口において流れ制御特徴を含むことができる。これらの特徴は、流れが出口に進入する前に、チャンバに入る流れを出口の反対側のチャンバの側に偏向させる。結果として、流れはより遅い速度で出口チャネルに入り、流体流が停止する前にチャネルに流下する距離を減少させる。さらに、流路の水平部品は、チャンバ間の垂直間隔を付加することなくチャネルに長さを加え、流路の有効長を増加させるので、低下した流速に基づいて所望の位置で流れを停止させるのに十分である。これにより、要求される垂直チャネルが少なくて済むので、カセットのチャンバ間の垂直間隔をより狭くすることができる。さらに、反応チャンバを横切る流れの方向転換は、チャンバ内の流れに旋回作用を生じさせ、試薬と試料流体との混合を改善する。流れ制御特徴は、任意の形状を含むことができる。
【0087】
図39に示される実施形態では、流体が、入口チャネル4002から反応チャンバ4003に流入し、反応チャンバの底部に流れる、ここで三角形流れ制御特徴4001によって入口チャネル4002への開口部とは反対側の反応チャンバ4003の側に方向転換される。流れが反対角(反対コーナー)4004に進むにつれて、流れが分かれ、いくらかは出口4005に進入するが、残りは壁に接触し、上方に向けられ、混合を改善する旋回効果を生み出す。出口への流れは、好ましくはメニスカス(訳注:液面の三日月状屈曲)を形成し、出口チャネル4006を通って次の反応チャンバまたは凍結乾燥ビーズ凹部に向かって移動する。出口チャネル4006は反応チャンバ4003の下で密封されているので、流体が出口チャネル4006に沿って移動するにつれて、流体圧力ヘッドとの平衡に達するまで流れの下のチャネル内の空気圧が上昇するので、流れが停止する。この実施形態では、出口4005が、流れの下流の閉鎖空間内の圧力を後に増加させ得るメニスカスを有効に形成するために、反応チャンバ4003から出口チャネル4006に向かって先細に(テーパーに)なる。出口チャネルへのこのより大きな開口部は、メニスカスがより広い開口部で確実に形成されるように、好ましくは圧縮可能な空気体積を増加させる。
【0088】
図40に示される実施形態では、流体が、入口チャネル4102から反応チャンバ4103に流入し、反応チャンバの底部に流れる、ここで三角形流れ制御特徴4101によって入口チャネル4102への開口部とは反対側の反応チャンバ4103の側に方向転換される。流れが反対角(反対コーナー)4104に進むにつれて、流れが分かれ、いくらかは出口4105に進入するが、残りは壁に接触し、上方に向けられ、混合を改善する旋回効果を生み出す。出口への流れは、好ましくはメニスカスを形成し、出口チャネル4106を通って次の反応チャンバまたは凍結乾燥ビーズ凹部に向かって移動する。出口チャネル4106は反応チャンバ4103の下で密封されているので、流体が出口チャネル4106に沿って移動するにつれて、流体圧力ヘッドとの平衡に達するまで流れの下のチャネル内の空気圧が上昇するので、流れが停止する。この実施形態では、出口4105および出口チャネル4106が均一な幅を有する。この実施形態では、反応チャンバでのメニスカスの形成が、より狭いチャネルの結果として幾分より信頼性があり得る。その後、メニスカスは、流れの下流の閉鎖空間内の圧力を上昇させる。
【0089】
図41に示される実施形態では、流体が、入口チャネル4202から反応チャンバ4203に流入し、反応チャンバの底部に流れる、ここで台形流れ制御特徴4201によって入口チャネル4202への開口部とは反対側の反応チャンバ4203の側に方向転換される。流れが反対角(反対コーナー)4204に進むにつれて、流れが分かれ、いくらかは出口4205に進入するが、残りは壁に接触し、上方に向けられ、混合を改善する旋回効果を生み出す。この実施形態では、出口4205が実質的に垂直に配向される。出口への流れは、好ましくはメニスカスを形成し、出口チャネル4206を通って次の反応チャンバまたは凍結乾燥ビーズ凹部に向かって移動する。出口チャネル4206は反応チャンバ4203の下で密封されているので、流体が出口チャネル4206に沿って移動するにつれて、流体圧力ヘッドとの平衡に達するまで流れの下のチャネル内の空気圧が上昇するので、流れが停止する。この実施形態では、出口4205および出口チャネル4206が均一な幅を有する。この実施形態では、反応チャンバでのメニスカスの形成が、より狭いチャネルの結果として幾分より信頼性があり得る。その後、メニスカスは、流れの下流の閉鎖空間内の圧力を上昇させる。
【0090】
図42に示される実施形態では、流体が、入口チャネル4304から反応チャンバ4305に流入し、反応チャンバの底部に流れる、ここで三角形流れ制御特徴4303によって入口チャネル4304への開口部とは反対側の反応チャンバ4305の側に方向転換される。流れが反対角(反対コーナー)4306に進むにつれて、流れが分かれ、いくらかは出口4307に進入するが、残りは壁に接触し、上方に向けられ、混合を改善する旋回効果を生み出す。出口への流れは、好ましくはメニスカスを形成し、出口チャネル4306を通って次の反応チャンバまたは凍結乾燥ビーズ凹部に向かって移動する。この実施形態では、出口チャネル4306が、小さい垂直空間内で増加した出口チャネル長を提供する、流体が流れるための蛇行経路を提供する積み重ねられた連続的流れ制御特徴4303、4302および4301を通って進む。
【0091】
図43に示される実施形態では、流体が、入口チャネル4402から反応チャンバ4403に流入し、好ましくは反応チャンバ4403の長さに沿ってほぼ中間の、反応チャンバの底部の上方に配置された流れ制御特徴4401によって、入口チャネル4402とは反対側の反応チャンバ4403の側に方向転換される。前の実施形態とは対照的に、流れ制御特徴4401は、反応チャンバ4403の出口を形成しない。流れ制御特徴4401は、流れを出口チャネル4405から離れて反対角(反対コーナー)4404に偏向させ、それによってチャンバを出る前に流速を低下させる。前の実施形態と同様に、流体の方向転換は、乱流および試薬の混合を促進する。
【0092】
<アッセイの多重化>
本発明のいくつかの実施形態では、入力流体試料を、装置を通る2つ以上の平行な流体経路に分割することを可能にする流体設計を使用することによって、複数の独立したアッセイを並列に実施することができる。
図10は、例えば80μLの流体体積を、2つの連続したステップで最初に2つの別々の40μL容積に、その後4つの20μL容積に分割する略図である。例示されるスキームは、生化学反応などの独立した別個の操作を分割体積に対して行うことを可能にするのに有用である。このような構成は、多重化された核酸の逆転写および/または増幅反応で核酸配列などの複数の標的の多重検出を容易にすることによって、単一の装置で検出することができる分析物の数を増やすのに有用である。同様に、独立した流体経路の末端での複数の検出ストリップの使用は、複数の標的の検出または核酸分析物における配列差異もしくは突然変異の識別のためのストリップの読みやすさを高めることができる。さらに、複数の増幅反応産物の独立した照合のための追加の検出ストリップを提供することで、検査の検出ステップ中のクロスハイブリダイゼーションなどの偽交差反応の可能性を低減することによって特異性を増強することができる。
図11は、単一の検査カセット内に2つの流体経路を含む検査カセットを示す。各流体経路は、タイミング、反応の種類等に関して独立して制御することができる。ここで
図12を参照すると、試料カップ1000に導入された試料が、ほぼ等しい容積に分割され、体積分割チャンバ1001および1002に流入し、その中への流れはベントバルブ1003および1004によって調節される。分割チャンバ1001および1002は、各チャンバ内の試料の量を受動的に平衡化することによって、各検査経路内の試料の体積を制御する。体積分割後、溶液は、ベント1005および1006の開放によって試薬凹部1007および1008を通って流れることが可能となる。凍結乾燥試薬などの試薬は、凹部1007、1008内に配置され、試料が凹部を通って好ましくは温度制御されたチャンバ1009および1010の第1のセットに流入するとき、試料と混じり合う。熱溶解、逆転写および/または核酸増幅などの反応は、試薬凹部1007、1008内に提供される試薬によって促進される加熱チャンバの第1のセットのそれぞれで行われる。このような試薬には、それだけに限らないが、凍結乾燥陽性対照薬剤(例えば、核酸、ウイルス、細菌細胞等)、凍結乾燥逆転写酵素およびRNAからDNAへの逆転写に必要な関連する付属試薬(ヌクレオチド、緩衝液、DTT、塩等)、ならびに/あるいは凍結乾燥DNAポリメラーゼまたは熱安定性凍結乾燥DNAポリメラーゼを使用したDNA増幅および必要な付属試薬(ヌクレオチド、緩衝液および塩など)が含まれる。
【0093】
チャンバの第1のセットでの逆転写、核酸増幅または付随する逆転写および核酸増幅(例えば、単管逆転写-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)または一段階RT-PCRまたは一段階RT-Oscar)などの生化学反応の完了後、ベントポケット1011および1012のシールが破裂して流体がチャンバの第1のセットから、試薬凹部1013および1014の第2のセットを通って、好ましくは温度制御されたチャンバ1015および1016の第2のセットに流入することが可能になる。凍結乾燥試薬などの試薬は、流体がチャンバ1009および1010からチャンバ1015および1016に流れるにつれて試料溶液と混じり合うように、凹部1013および1014内に配置され得る。核酸増幅用の凍結乾燥試薬または乾燥もしくは凍結乾燥検出粒子(プローブコンジュゲート染色ポリスチレンミクロスフェアまたはプローブコンジュゲートコロイド金など)などの試薬は、場合により試薬凹部1013および/または1014に配置され得る。加熱されたチャンバ内のプローブコンジュゲート検出粒子への結合またはハイブリダイゼーションなどの反応または他の操作の完了後、溶液は、ベントバルブ1019および1020を開くことによって検出ストリップチャンバ1017および1018に流入することができる。いくつかの実施形態では、検出粒子、塩および/または界面活性剤ならびにハイブリダイゼーションまたは他の検出様式を容易にするのに有用な他の物質を含む検出試薬などの追加の試薬をストリップチャンバ1017および1018に流入する溶液と混じり合わせることができるように、試薬凹部の第3のセットをチャンバ1015および1016からの流体経路に配置することができる。検出ストリップチャンバ1017および1018は加熱されてもよく、好ましくは、増幅された核酸などの分析物の検出のための側方流ストリップなどの検出ストリップを含み得る。検出ストリップは、検出粒子(例えば、染色ミクロスフェアコンジュゲートおよび/またはコロイド金コンジュゲート)などの乾燥または凍結乾燥検出試薬、分析物を捕捉するための捕捉プローブ(配列特異的ハイブリダイゼーションにより核酸分析物を捕捉するためのハイブリダイゼーション捕捉オリゴヌクレオチドなど)、リガンド(適当に修飾された分析物を捕捉するためのビオチンまたはストレプトアビジンなど)、および毛管作用またはウィッキングのような手段によって検出ストリップを通した同じ溶液体積の完全な移動を確保するのに十分な吸収能力を提供する吸収材料をドープされたまたはパターン化された一連の吸収材料を含み得る。
【0094】
<試料調製>
本発明のいくつかの実施形態では、試料調製システムをカセットに組み込むことが望ましい場合がある。核酸精製システムなどの試料調製システムは、試料調製および精製分子(精製DNA、RNAまたはタンパク質など)の検査カセットへの溶出を達成するためのカプセル化溶液を含むことができる。
図13は、検査カセットと統合するように設計された核酸試料調製サブシステム1300を示す。試料調製サブシステムは、サブシステムの部品を収容するための主ハウジング1302およびハウジング蓋1301を含む。溶液区画化部品1303は、好ましくは上面で開いているが下側シール1305によって下で密封されている粗試料リザーバ1312を含む。溶液区画化部品1303はまた、好ましくは、第1の洗浄緩衝液を含有するリザーバ1314と、第2の洗浄緩衝液を含有するリザーバ1315とを含み、これらの両方が好ましくは、上側シール1304および下側シール1305によって密封される。核酸結合マトリックス1306は、吸収材料1307および1308によって提供される溶液毛管流路内に配置される。核酸結合特性およびウィッキング特性を示すガラス繊維またはシリカゲルが、結合マトリックス1306としての使用に適した材料の例である。十分な毛管現象およびサブシステムによって精製される分子との最小結合を提供する限り、ポリエステル、ガラス繊維、ニトロセルロース、ポリスルホン、セルロース、綿またはこれらの組み合わせならびに他のウィッキング材料を含む広範囲の吸収材料が吸収材料1307および1308を構成し得る。溶液区画化部品1303に密封され、カプセル化溶液と化学的に適合し得る任意の容易に破裂するまたは壊れやすい材料が、シール材1304および1305としての使用に適している。シール材1305は、試料または試料溶解液と接触し、さらに、試料または試料溶解液と化学的に適合しなければならない。適切なシール材の例は、ヒートシール性金属フィルムおよびプラスチックフィルムである。シール材1305は、シール1305がハウジング1302内に存在する構造1311によって穿孔されるように、溶液区画化部品1303の変位によって使用時に破裂させる。粗試料またはカオトロピック剤で構成される緩衝液などの溶解緩衝液と混合された粗試料が、使用時に、蓋1301の試料ポート1309を介して試料リザーバ1312に導入される。いくつかの実施形態では、リザーバ1312の上部オリフィスを覆うようにシール1304を伸長することによって、溶解緩衝液を場合によりリザーバ1312内にカプセル化することができる。このような実施形態では、粗試料がリザーバ1312内に含有される溶解緩衝液と混じり合うまたは混合することができるように、リザーバ1312を覆うシール1304の領域を部分的に除去して、粗試料のリザーバ1312への添加を可能にするタブまたは他の手段を含むことが望ましいだろう。試料溶液または試料材料を含有する溶解液は、試料添加ポート1309に導入され、試料調製プロセスの開始まで緩衝液リザーバ1303の試料リザーバ1312に保持される。
【0095】
試料調製開始時に、溶液区画化部品1303がシール穿孔構造1311上に押し込まれ、リザーバ1312内の試料溶液または溶解液と、リザーバ1314および1315内の第1および第2の洗浄緩衝液のそれぞれの同時放出をもたらす。部品1303の機械的変位は、手動で、または使用時に使い捨て検査カセットが配置される再使用可能な機器内に存在するアクチュエータ(複数可)の使用によって達成することができる。リザーバ1303へのアクチュエータアクセスまたは手動変位機構アクセスは、好ましくは、ハウジング蓋1301のアクセスポート1310を通して提供される。試料または溶解液ならびに第1および第2の洗浄緩衝液は、毛管作用によって材料1307、1306および1308を通って移動する。リザーバの物理的配置および吸収材料1307の幾何学的構成は、粗溶解液、第1の洗浄緩衝液および第2の洗浄緩衝液の結合マトリックス1306を通した連続的な流れを保証する。ウィック1308と接触して配置された吸収パッド1313によって、システムを通る全ての溶液体積の継続的な毛管輸送を保証する追加の吸収能力が提供される。吸収材料を通る溶液輸送の完了時に、使用済み溶液が吸収パッド1313に止まる。システムを通る全ての溶液の毛管輸送の枯渇後、精製された核酸は、
図15に示されるように、核酸が統合検査カセットの試料カップ1402に溶出され得る結合マトリックス1306(1406)に結合する。
【0096】
試料調製プロセスの間に生じる試料調製サブシステム部品の動きが
図14に示されており、
図14は、試料調製サブシステムの実施形態を試料処理前後の断面で示している。溶出の前に、関連する再使用可能な検査機器内のアクチュエータの作用によって、毛管流路から出て、シール部品1316を通る結合マトリックス1306の変位がある。シール部品1316は、溶出緩衝液導管1318の一部とシールを形成して、試料調製サブシステムの毛管流路への溶液損失なしに、溶出緩衝液を結合マトリックス1306を通して試料カップ1402に注入できるようにする。導管1318は、溶出緩衝液リザーバ1317およびプランジャ1319で構成される溶出緩衝液インジェクタ部品に取り付けられる、又はその一部である。プランジャ1319は、場合によりリザーバ1317内の溶出緩衝液の密封を促進するために、Oリングを含むことができる。精製された核酸の溶出中、アクチュエータは、取り付けられた導管1318がシール部品1316とシールを形成し、結合マトリックス1306をチャンバ1321内に移動させるように、溶出リザーバ部品1317を移動させる。溶出リザーバ1317を押し下げるための機械的アクセスは、アクチュエータアクセスポート1320を通して提供される。結合マトリックス1306が試料調製サブシステムの主毛管溶液流路から外れた後、結合マトリックス1306は溶出チャンバ1321内に存在する。精製された核酸の試料カップ1402への溶出は、シリンジ様作用で、アクチュエータポート1322を通して作用するアクチュエータによって溶出緩衝液リザーバ1317からの溶出緩衝液を、リザーバ1317を通してプランジャ1319に移動させることによって達成される。溶出緩衝液は、導管1318を介して結合マトリックス1306を通って進行し、溶出された精製核酸を含有する溶出緩衝液を試料カップ1402に注入する。
【0097】
ここで
図15を参照すると、試料調製サブシステム1300は、好ましくは、超音波溶接などの広く使用される製造方法によってカセット1500の流体部品1403に結合され、統合された単回使用の試料対結果検査カセットを形成する。いくつかの実施形態では、増幅された核酸がカセットから逃げる可能性を低減するために、精製された核酸を含有する溶出液の導入後に検査カセット流体を気密密封することが望ましい。摺動シール1404は、場合によるが好ましくは、試料調製サブシステムと検査カセット流体ハウジング1403との間に配置されて、カセットを試料カップ1402の入口で密封することができる。摺動シール1404は、アクチュエータの作用によって密封位置に移動して、Oリング1405を含む気密シールを形成する。カセット裏打ち1406は、乾燥試薬および試験ストリップの導入後に流体ハウジングに結合される。他の検査カセットの実施形態の裏打ちについて上記のように、裏打ち1406は、ベント機能性、気密シール維持、熱インターフェース、膨張チャンバ(複数可)のための材料を含み、場合により流体を担持するプリント回路基板またはフレキシブル回路層および温度制御電子部品を含み得る。電子部品は、場合により再使用可能なドッキングユニットに収容されてもよい。電子部品を含むPCA1501は、好ましくは、低熱質量材料および表面実装電子部品から構成される。表面実装抵抗器および近位に配置された温度センサのアレイは、検査カセット内のチャンバ温度を調節する1つの手段を提供する。PCA1501の表面実装抵抗器および温度センサアレイは、検査カセットをドッキングユニットに装填したときに検査カセットと整合するように配置される。試料対結果統合カセットを
図16に示す。
図17は、伝統的なプリント回路基板および表面実装部品に基づく下にある電子機器層を有する統合カセットを示す。いくつかの実施形態では、フレキシブル回路を検査カセットの後部に結合することができる。
【0098】
<電子機器>
いくつかの実施形態では、ヒータ、センサおよび他の電子機器が、これらがインターフェース接続しなければならない使い捨て検査カセットの上にある要素と電子機器の好ましい熱インターフェースおよび正確な整合を確立することができる手段によって使い捨て検査カセットにインターフェース接続されるように、電子部品を再使用可能な部品に配置することが望ましい。他の実施形態では、温度制御のために再使用可能な部品と使い捨て部品の組み合わせを使用することが望ましい。例えば、スタンドオフ温度モニタリングは、最使用可能なドッキングユニットに配置された赤外線センサによって達成され得るが、温度制御および流体制御のための抵抗発熱体は、使い捨て検査カセットに組み込まれたフレキシブル回路に配置される。
【0099】
いくつかの実施形態では、プリント回路基板(PCB)が、標準0.062インチ厚のFR4銅クラッドラミネート材料を含むが、他の標準的な基板材料および厚さを使用することもできる。抵抗器、サーミスタ、LEDおよびマイクロコントローラなどの電子部品は、好ましくは既製の表面実装装置(SMD)を含み、業界標準の方法論に従って配置される。
【0100】
別の実施形態では、PCAがカセット壁と一体化することができ、フレキシブルプラスチック回路を含むことができるだろう。
図8に示されるように、PETおよびポリイミドなどのフレキシブル回路材料を使用することができる。フレキシブルプラスチック回路の使用は当技術分野において周知である。別の実施形態では、発熱体および温度センサが、Soligie,Inc.などの会社によって開発された技術を用いて、プラスチック流体部品上にスクリーン印刷され得る。
【0101】
本発明のいくつかの実施形態では、抵抗発熱体を囲む領域内のPCBの厚さならびに銅の量および配置が、流体部品内の反応溶液の熱管理のために適合される。これは既に述べた標準的な製造技術の使用によって達成することができる。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態では、抵抗器はthick film 2512 package(厚膜2512パッケージ)であるが、他の抵抗器を使用することもできる。流体部品内の加熱チャンバは、好ましくは、チャンバ全体の均一な加熱を確保するために抵抗器の寸法と同様の寸法である。この大きさの単一抵抗器は、0.5mmの流体部品の厚さを仮定して、約15μLの溶液を加熱するのに十分である。
図2Dの図面は、0.5mmの流体部品の厚さを仮定して、約30μLの溶液を加熱するのに十分なヒータを形成する2つの抵抗器100を示す。この場合、抵抗器は、好ましくは、それぞれ40Ωであり、並列構成で配置される。
【0103】
本発明のいくつかの実施形態では、温度センサ110が、好ましくは、0402NTC装置などのサーミスタ、またはAtmel AT30TS750などの温度センサを含み、これらの各々は2512抵抗器パッケージの高さに類似する高さを有する。サーミスタは、好ましくは、1つの抵抗器または2つの抵抗器構成の場合には、それぞれ抵抗発熱体に隣接してまたはその間に並べられる。これらの電子素子を密接に並べることによって、これらの間に極めて薄いエアギャップしか生じない。さらに、流体層を電子層と組み立てる前に熱化合物を適用することにより、流体部品、抵抗器およびサーミスタの間の良好な熱接触が保証される。
【0104】
本発明のいくつかの実施形態では、ベント抵抗器70、71がthick film 0805 package(厚膜0805パッケージ)を含むが、同様の抵抗器も使用することができる。抵抗器の代わりに、40ゲージのニクロム線などの小さなゲージのニクロム線発熱体を使用してもよい。
【0105】
本発明のいくつかの実施形態では、マイクロコントローラは、Microchip Technologies PIC16F1789である。マイクロコントローラを、好ましくは流体システムの複雑さに適合させる。例えば、多重化の場合、個々のベントおよびヒータの数が、マイクロコントローラのI/Oラインの数と釣り合っている。プログラムサイズに適合するようメモリサイズを選択することができる。
【0106】
本発明の一定の実施形態では、オン-オフモードで作動するSOT-23パッケージ内のNチャネルMOSFETを使用して、ベントおよびヒータ抵抗器に対する電流負荷を変調する。変調信号は、マイクロコントローラを介して送信する。代替実施形態では、パルス幅変調スキームおよび/または他の制御アルゴリズムを、流体工学のより高度な熱管理に使用することができるだろう。これは、典型的には、マイクロコントローラによって扱われ、当業者に公知の追加のハードウェアおよび/またはソフトウェア機能を必要とすることがある。
【0107】
用途に応じて、いくつかの実施形態は、小型制御ドッキングユニットまたはドッキングユニットが、検査カセットと呼ばれる生物学的材料と接触する流体システムを含むより小さな使い捨てユニットを操作するところの装置を含む。このような実施形態の1つでは、ドッキングユニットが電子部品を含む。使い捨て検査カセットからの電気部品の排除は、コストを削減し、場合によっては環境への影響を低減する。別の実施形態では、ある電子部品をドッキングユニットと検査カセットの両方に含める。この特定の実施形態では、検査カセットが、適当なインターフェースを通してドッキングユニットによってエネルギーを与えられる、制御されるおよび/または調べられる温度制御、流体流制御および温度感知などのいくつかの電気的機能を提供するために好ましくは低コストPCAまたは好ましくはフレキシブル回路を含む。上記のように、このような装置の電子機能は、好ましくは2つの別個のサブアセンブリに分割される。使い捨てカセット2500は、好ましくは、ドッキングユニットの抵抗加熱および検知要素とインターフェース接続するように設計された裏面を含む。検査カセットの裏面を構成する材料は、好ましくは、ベント破裂を介した流体流制御を可能にしながら、適切な熱伝導率および安定性を提供するように選択される。いくつかの実施形態では、検査カセットの裏面またはその一部が、ポリイミドなどの基板上に製造されたフレキシブル回路を含む。フレキシブル回路を使用して、熱質量が低い低コストの抵抗発熱体を提供することができる。フレキシブル回路基板を、好ましくは検査カセットの流体ネットワーク中に存在する溶液と直接接触して配置して、非常に効率的かつ迅速な加熱および冷却を可能にすることができる。
図8に示されるコネクタ810は、好ましくは、任意選択のサーミスタ(複数可)への電力および信号線とともに抵抗ヒータに電流を供給する。
【0108】
フレキシブル回路799を使用する場合、ドッキングユニット中に位置する1つまたは複数のIRセンサは、裏打ち805の窓を通してまたはフレキシブル回路799の後部から直接、信号を読み取ることによって、加熱されたチャンバ(例えば、増幅チャンバまたは検出チャンバ)の温度を監視することができる。場合により、PCAまたはフレキシブル回路799上のサーミスタを使用して温度を監視することができる。場合によりIRセンサおよびサーミスタの出力の加重平均を実行することにより、読み取り値とカセット内の流体温度との間の相関が改善される。さらに、センサは周囲温度を検出することもでき、試料流体が所望の温度に迅速に平衡化することを保証するために、システムが周囲温度を補正することを可能にする。
【0109】
ここで
図33を参照すると、ドッキングユニットは、好ましくはマイクロコントローラ、MOSFET、スイッチ、電源またはパワージャックおよび/またはバッテリ、任意選択の冷却ファン903、任意選択のユーザインターフェース、赤外線温度センサ901、902ならびにカセット2500のコネクタ810と適合性のコネクタ900を含む再使用可能な部品サブアセンブリ3980を含む。サブアセンブリがコネクタ810および900を介して嵌合される場合、ドッキングユニットは、好ましくは、使い捨てカセット2500を実質的に垂直またはほぼ垂直の配向で支持する。実質的に垂直な配向が本明細書に記載されるいくつかの実施形態では好ましいが、装置を傾斜して作動させる場合、特に使用される溶液の濡れ角を減少させるために一定の経路をコーティングする場合にも同様の結果を得ることができる。
【0110】
使い捨て部品上に位置する全ての電子回路を除去することによりシステムの消耗部品のコストを低減することによって、操作コストを最小限に抑えるために、装置の別の実施形態を使用してもよい。マイクロコントローラ、ヒータ、センサ、電源および他の全ての回路網は、複数のPCA上に位置し、高導体数の業界標準リボンケーブルを介して相互に電気的に接続される。ユーザが装置を作動するのを助けるためにディスプレイを追加してもよい。ユーザが検査パラメータの変更をアップロードし、任意の検査の進捗状況を監視できるようにするために、任意選択のシリアル制御ポートを利用することもできる。この実施形態の1つのバージョンは、5つの異なるPCAを含む。メインボードPCAは、制御回路、シリアルポート、電源およびシステム内の他のボードと接続するためのコネクタを含有する。ヒータボードPCAは、発熱抵抗体、温度センサおよびベントバーン発熱体を含有する。このヒータボードと使い捨て流体カセットとの間の熱インターフェースを容易にするために、このボードを、流体カセットと接触するまで、蓋の閉鎖動作によって流体カセットの背面に向かって移動するばね付きキャリアに装着する。薄い熱伝導性加熱パッドをチャンバヒータ抵抗器および温度センサの上部に取り付けて、ヒータボードと流体カセットとの間の熱伝達を改善する。耐久性のあるベント燃焼発熱体は、小型セラミックキャリアの周りに巻かれたニクロム線を使用して実現することができる。IRセンサボードPCAを、カセットの反対側から少し離れて装着し、加熱チャンバの温度を監視するために使用する。これにより、加熱および冷却プロセスの閉ループ温度制御が可能になり、周囲温度変化に適応する。また、IRセンサボードには、カセットの存在の検知を可能にする複数の反射型検知光カプラを取り付け、これをカセット上に位置する設定可能な反射パターンによって示されるカセットの種類を識別するために使用してもよい。ディスプレイボードPCAを、ユーザが装置の正面からディスプレイを見ることができるように、IRボードのほぼ後ろに配置することができる。最後のPCAであるシャッターボードは、カセットの上端から横に配置され、カセットが既に使用されているかどうかを感知するために使用されるスイッチおよび反射光カプラを含有し、蓋が閉じると、カセットを検査のために所定位置に固定する。
【0111】
システムの冷却は、場合により、検査の冷却段階の間にのみマイクロコントローラによってオンにされるマフィン(muffin)風のファンなどのファンを使用して増強される。ベントのシステムは、好ましくは、より冷たい外気を加熱チャンバに向けて、それを装置の側面から排出するように使用される。
【0112】
完全な試料対結果分子検査を提供するために、本発明の上記の実施形態のいずれかを、試料チャンバ1402への出力として核酸を提供する試料調製システム1300にインターフェース接続することができる。これは、「Highly Simplified Lateral Flow-Based Nucleic Acid Sample Preparation and Passive Fluid Flow Control」と題された国際公開第2009/137059号パンフレットに記載されている試料調製技術を用いて実証されている。結果として得られる統合装置の一実施形態を
図15および
図16に例示する。
【0113】
<ドッキングユニット>
再使用可能なドッキングユニットは、検査カセット機能を達成するために必要な電子部品を含む。種々のドッキングユニット実施形態が、検査カセット設計における対応するバリエーションとインターフェース接続するように発明されている。一実施形態では、
図18および
図19に示されるドッキングユニットが、検査を実行するために必要な全ての電子部品を含み、検査カセット内の電子部品の必要性を排除する。ここで
図18を参照すると、試料を添加する前に、カセット2500をドッキングユニット2501に挿入する。ドッキングユニット2501は、検査プロトコルおよび検査状態などの情報をユーザに伝達するためのLCDディスプレイ2502などのディスプレイを含む。カセットをドッキングユニット2501に挿入した後、試料をカセット2500の試料ポート20に導入し、ドッキングユニット蓋2503を閉じて検査を開始する。挿入された検査カセットを有するドッキングユニットを
図19に示し、蓋が閉位置にあるドッキングユニット2501を
図18Bに例示する。
【0114】
ドッキングユニットのいくつかの実施形態では、蓋2503のヒンジに機構が組み込まれ、検査カセットの摺動シール91を閉位置に動かす。密封された検査カセットは、増幅された核酸が検査カセット内に含有されたままであることを保証するのに役立つ。ここで
図20を参照すると、カセットを密閉するためにバルブを試料ポート上にスライドさせるために、手動または自動のいずれかの方法が用いられ得る。いくつかの実施形態では、スライドが、Oリングと係合することによって試料ポートを密封する。膨張チャンバカバーは、バルブスライドを試料ポートのOリングの上の定位置に保つ。シールは、サーボモータによって、または再使用可能なドッキングユニット蓋を閉めるなどの手動の動作によって所定の位置に移動され、今度はこれがカセットシールを閉じる機構を作動させる。図示された実施形態では、ラックピニオン機構2504がスライドシールアクチュエータ3979を使用してスライドシール91を閉位置に移動させる。ラックピニオン機構2504は電動化または、蓋ヒンジへの機械的結合を通したドッキングユニット蓋2503の閉鎖動作によって移動させることができる。場合により、
図21に示されるように、光センサ2505などのセンサを、アッセイ開始前に適切なシール配置を保証するために摺動シール91の位置を調べるために配置することができる。光センサは、カセット試料ポートシールの状態(すなわち、位置)を検出する。光センサにより、ドッキングユニットを、以前に使用された検査カセットの偶発的挿入を検出し、検査カセットシールの閉鎖が成功したことを検出するようにプログラムすることが可能になる。シールの誤動作を示すエラーメッセージをディスプレイ2502に表示することができ、センサ2505がシール閉鎖の検出に失敗した場合に検査プログラムが中止される。検査カセットおよびドッキングユニットの他の実施形態では、密封機構が、
図22に示される回転バルブなどのチャンバを機械的に密封する他の手段を含むことができる。さらに別の実施形態では、検査カセットシールを、カセット蓋を最初に閉じて、シールを着座させることなしには、ドッキングユニットへの挿入が不可能となるように配置されたヒンジ付きカセット蓋に配置することができる。この実施形態では、試料を、ドッキングユニットに挿入する前に検査カセットに追加する。シール付きヒンジ付き蓋を含む試験カセットを
図23に示す。一般に、カセットをドッキングユニットに挿入し、試料をカセットに装填した後、ドッキングユニットの蓋を閉じることによって、好ましくはサーボモータも他の機械的装置も使用することなく、カセットが自動的に密封されると同時に、アッセイが開始されることが好ましい。
【0115】
いくつかのドッキングユニットの実施形態では、検査カセットとインターフェース接続しなければならない電子部品がカセット挿入を物理的に妨げないが、検査中に信頼性の高い熱インターフェースを形成することを保証しながら、部品のセットが好ましくは適切な検査カセット挿入を容易にする。これらの部品は、蓋2503を閉じるまでPCA75をカセット挿入路から離して保持する機構を形成する。ここで
図24を参照すると、ドッキングユニット内でヒータボードがPCAホルダ2506上に装着され、好ましくは低熱質量足場として機能する一方で、検査カセットが低熱質量カセットホルダ2507に装填され、レール2509は、カセットをドッキングユニットに導き、これをPCAホルダ2506に取り付けられたPCA75とインターフェース接続するために、ヒータボード表面に平行であるなどの正しい位置に保持する。蓋開放位置では、カセットホルダ2507の突出部2508がPCAホルダ2506と干渉し、カセット挿入用のレール2509に沿った開放経路を維持する。好ましくは、斜面が突出部2508と部品2507の下部隆起との間の距離に及び、蓋2503の閉鎖時に突出部2508のPCAホルダ2506上の窪み2511への円滑な移動を促進する。ドッキングユニットの蓋が閉じられると、突出部2508が窪み2511と係合し、それによって、ヒータボードのマウントが検査カセット2500の後面に近づく。蓋2503の閉鎖はカセットホルダ2507に下向きの力を及ぼし、それによってカセットホルダ2507は、突出部2508が窪み2511で止まる位置に移動し、カセット2500の後部にPCA75が押し付けられるようにPCAホルダ2506が移動する。好ましくは、PCAホルダ2506が、蓋を閉じた後にPCA75によってカセットの後部に対して再現可能な圧力を及ぼすことを可能にするために、ばね力などの一定の力の下にある。カセット2500の後部に対するPCA75の配置は、PCA上の抵抗発熱体から検査カセットの温度制御されたチャンバおよびベントに熱を伝導する熱インターフェースを形成する。好ましくは、部品2506および2507が、最小の熱質量をシステムに提供し、ファンなどの冷却装置用の検査カセット表面および赤外線センサなどのセンサによる温度監視へのアクセスを提供するように構成される。よって、蓋閉鎖後、ヒータボードは、好ましくは、検査カセットの後部に対してしっかりと押し付けられ、好ましくはマイクロコントローラまたはマイクロプロセッサ制御によって、ヒータボード上のマイクロヒータが検査カセットの流体チャンバ内の溶液を加熱し、検査カセットの熱不安定性ベントフィルムを溶融させることを可能にする熱インターフェースを形成する。
図25は、非係合(蓋開放)位置と係合(蓋閉鎖)位置の両方の断面のカセット-PCAインターフェース機構を示す。
【0116】
いくつかの実施形態では、ドッキングユニットが、温度感知、検査カセットの存在または除去の検出、検査パラメータの自動選択を可能にする特定の検査カセットの検出のような用途のための追加のセンサを含む。ここで
図26を参照すると、赤外線センサ2600は、チャンバ30および90などの温度制御されたチャンバを覆う領域内の検査カセットの温度を検出する。センサは、センサ110などのPCA75局所温度センサによって収集された温度データに加えて、またはその代わりに温度データの収集を可能にする。場合によるが好ましくは光センサを使用して特定の検査カセットを検出して、特定の疾患または状態についてカセットを同定し、特定の検査に適した温度プロファイルの自動選択を可能にすることができる。ここで
図27Aおよび
図27Bを参照すると、光センサまたは光センサアレイ2601などの光センサアレイを検査カセット上のバーコードまたはバーコード様特徴2602と合わせて使用して、検査カセットの種類を決定する、ならびに検査カセットの完全な挿入および正しい着座を確認することができる。センサ2505と共同してセンサアレイ2602を使用して、蓋を閉じる前に密閉シールを検出することによって、以前に使用した検査カセットの挿入を検出することができる。ドッキングユニットは、ドッキングユニットに挿入された検査カセットの種類を検出する、ならびに/あるいはドッキングユニット内のカセットの正しい挿入、位置決めおよび整列を確認するためのセンサを含んでもよい。インフルエンザA/B検査カセットの検出を、
図19に示されるドッキングユニットおよび検査カセットシステムに例示する。ドッキングユニットは、好ましくは、各カセット上のバーコードまたは他の記号を読み取り、種々のアッセイのために保存されたプログラムに従ってプログラミングを変更することができる。
【0117】
本発明のいくつかの実施形態では、検査カセットの両面を加熱することが望ましい。検査カセットが2つのヒータPCAの間に挿入されたデュアルヒータPCA構成が
図28Aおよび
図28Bに描かれている。
【0118】
別の実施形態では、ドッキングユニットが、サーボアクチュエータ、自動結果読み出しのための光学サブシステム、無線データ通信サブシステム、タッチスクリーンユーザインターフェース、充電式電池電源および統合型試料調製サブシステムを構成する検査カセットを受け入れる検査カセットレシーバを含む。
図29A、
図29Bおよび
図30を参照すると、ドッキングユニット2700が検査カセット1500を受け入れ、検査カセットの温度制御および流体流制御を可能にするために検査カセットをPCA1501と熱接触させる。検査カセット1500は、旋回ドッキングユニットドア2702のカセットレシーバスロット3605に挿入される。粗試料または溶解液を検査カセットに添加した後、ドッキングユニットドアを閉じることにより、検査カセットの後部がPCA1501と整合および接触してならびにサーボアクチュエータと整列して配置される。サーボアクチュエータ3602は、カセット1500のアクチュエータポート1310を通って溶液区画化部品1303にアクセスし、密封材1305を破裂させるのに必要な機械的力を提供するように配置される。機械的シール1305の破裂は、粗溶解液および洗浄緩衝液を放出して、上記の試料調製サブシステムの試料調製毛管材料を通って流す。毛管流体輸送の完了後、カセット1500のアクチュエータポート1320を通して溶出リザーバ1317にアクセスするよう配置されたサーボアクチュエータ3601は、取り付けられた導管1318がシール1316とシールを形成し、結合マトリックス1306を溶出コンパートメント1321に移動させるように、機械的力を提供して部品1317を移動させる。次いで、カセット1500のアクチュエータポート1322を通して溶出プランジャ1319にアクセスするよう配置されたサーボアクチュエータ3604が、プランジャ1319に機械的力を与えて、溶出緩衝液を溶出リザーバ1317から結合マトリックス1306を通して排出し、カセット1500の試料カップ1402への核酸の溶出をもたらす。サーボアクチュエータ3603は、上記のように溶出後にカセットを密封する。アクチュエータ制御は、好ましくは、ファームウェアまたはソフトウェアの命令に従って、制御電子機器PCA3606上のマイクロコントローラまたはマイクロプロセッサによって提供される。同様に、検査カセット内の温度および流体流制御は、マイクロコントローラまたはマイクロプロセッサのメモリに保存されたファームウェアまたはソフトウェアルーチンで提供される命令に従う。
図31に示されるLED光源3608およびCMOSセンサ3609を含む光学サブシステム3607は、検出ストリップ信号データをデジタル化する。収集された検出ストリップ画像は、ドッキングユニット内のメモリに保存され、オンボードプロセッサを使用して結果の解釈が達成され、LCDディスプレイ2701に報告され得る。LEDのリングは、CMOSベースのデジタルカメラによる画像収集中に均一な照明を提供する。郵便切手サイズの装置で収集された画像は、比色分析による側方流信号分析に適した高解像度データ(5メガピクセル、10ビット)を提供することができる。短い作動距離の光学系と共に、好ましくは低背化(約1cm)が、システムを薄い装置ハウジングに組み込むことを可能にする。
【0119】
場合により、デジタル化された結果を、標準的WiFiまたはセルラ通信ネットワークのいずれかを使用するドッキングユニットに組み込まれた無線通信システムを介して、オフライン分析、保存および/または可視化のために送信することができる。このドッキングユニットの実施形態の写真を
図32Aおよび
図32Bに示す。
【実施例】
【0120】
<実施例1: 精製されたウイルスRNA(infA/B)および内部陽性対照ウイルスの多重増幅および検出の方法>
インフルエンザAおよびB検査カセットをドッキングユニットに入れた。試料溶液40μLを試料ポートに添加した。試料溶液は、5000TCID50/mLに等しい濃度の精製A/プエルトリコインフルエンザRNA、500TCID50/mLに等しい濃度の精製B/ブリスベンインフルエンザRNA、または分子等級水(鋳型対照なし試料)のいずれかを含んでいた。試料ポートに入ると、試料40μLが試験カセットの第1のチャンバに流れる際に凍結乾燥ビーズと混じり合う。凍結乾燥ビーズは、陽性内部対照としてのMS2ファージウイルス粒子およびDTTから構成されていた。カセットの第1のチャンバで、試料を1分間90℃に加熱してウイルス溶解を促進し、次いで、第2のチャンバに接続されたベントを開く前に50℃に冷却した。第2のチャンバに接続されたベントを開くことにより、第2のチャンバ内の空気の膨張チャンバへの移動を可能にすることによって、試料が第2のチャンバに流れることが可能になる。試料が第2のチャンバに移動する際、これが、第1のチャンバと第2のチャンバとの間の流路の凹部中に凍結乾燥ペレットとして存在するところの、インフルエンザA、インフルエンザBおよびMS2ファージに対するオリゴヌクレオチド増幅プライマー、ならびに、逆転写および核酸増幅の試薬および酵素と混じり合った。
【0121】
増幅チャンバを6分間47℃に加熱し、その間にRNA鋳型をcDNAに逆転写した。逆転写が完了した後、第2のチャンバで40サイクルの熱サイクル増幅を行った。熱サイクルが完了した後、第3のチャンバに接続されたベントを開けて、反応溶液が第3のチャンバに流入するのを可能にした。第3のチャンバは、検出粒子として使用される3つの青色に染色されたポリスチレンミクロスフェアコンジュゲートを含む試験ストリップおよび凍結乾燥ビーズを含んでいた。コンジュゲートは、インフルエンザAまたはインフルエンザBまたはMS2ファージの増幅配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブと共有結合した300nmポリスチレンミクロスフェアで構成されていた。この溶液は、第3のチャンバに流入するときに凍結乾燥検出粒子を再構成した。3つの捕捉ラインが側方流膜上に固定された、装置の底部からそれらは、任意のアッセイ標的に相補的ではない陰性対照オリゴヌクレオチド;インフルエンザBの増幅産物に相補的な捕捉プローブ;インフルエンザAの増幅産物に相補的な捕捉プローブ;およびMS2ファージの増幅産物に相補的なオリゴヌクレオチドであった。側方流ストリップを、結果の視覚的解釈の前に6分間展開させた。側方流ストリップが展開すると、
図34に示されるように、インフルエンザA陽性試料はインフルエンザAおよびMS2ファージの位置に青色検査線の形成を示し、インフルエンザB陽性試料はインフルエンザBおよびMS2ファージの位置に青色検査線の形成を示し、陰性試料はMS2ファージの位置にのみ青色検査線の形成を示した。
【0122】
<実施例2: 緩衝液および内部陽性対照ウイルスにおけるウイルス溶解物の多重増幅および検出の方法>
インフルエンザAおよびB検査カセットをドッキングユニットに入れた。試料溶液40μLを試料ポートに添加した。試料溶液は、5000TCID50/mLに等しい濃度のA/プエルトリコインフルエンザウイルス、500TCID50/mLに等しい濃度のB/ブリスベンインフルエンザウイルス、または分子等級水(鋳型対照なし試料)のいずれかを含んでいた。試料ポートに入ると、試料40μLが検査カセットの第1のチャンバに流れる際に凍結乾燥ビーズと混じり合う。凍結乾燥ビーズは、陽性内部対照としてのMS2ファージウイルス粒子およびDTTから構成されていた。カセットの第1のチャンバで、試料を1分間90℃に加熱してウイルス溶解を促進し、次いで、第2のチャンバに接続されたベントを開く前に50℃に冷却した。第2のチャンバに接続されたベントを開くことにより、第2のチャンバ内の空気の膨張チャンバへの移動を可能にすることによって、試料が第2のチャンバに流れることが可能になる。試料が第2のチャンバに移動する際、これが、第1のチャンバと第2のチャンバとの間の流路の凹部中に凍結乾燥ペレットとして存在するところの、インフルエンザA、インフルエンザBおよびMS2ファージに対するオリゴヌクレオチド増幅プライマー、ならびに、逆転写および核酸増幅の試薬および酵素と混じり合った。
【0123】
増幅チャンバを6分間47℃に加熱し、その間にRNA鋳型をcDNAに逆転写した。逆転写が完了した後、第2のチャンバで40サイクルの熱サイクル増幅を行った。熱サイクルが完了した後、第3のチャンバに接続されたベントを開けて、反応溶液が第3のチャンバに流入するのを可能にした。第3のチャンバは、検出粒子として使用される3つの青色に染色されたポリスチレンミクロスフェアコンジュゲートを含む試験ストリップおよび凍結乾燥ビーズを含んでいた。コンジュゲートは、インフルエンザAまたはインフルエンザBまたはMS2ファージの増幅配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブと共有結合した300nmポリスチレンミクロスフェアで構成されていた。この溶液は、第3のチャンバに流入するときに凍結乾燥検出粒子を再構成した。3つの捕捉ラインが側方流膜上に固定された、装置の底部からそれらは、任意のアッセイ標的に相補的ではない陰性対照オリゴヌクレオチド;インフルエンザBの増幅産物に相補的な捕捉プローブ;インフルエンザAの増幅産物に相補的な捕捉プローブ;およびMS2ファージの増幅産物に相補的なオリゴヌクレオチドであった。側方流ストリップを、結果の視覚的解釈の前に6分間展開させた。側方流ストリップが展開すると、
図35に示されるように、インフルエンザA陽性試料はインフルエンザAおよびMS2ファージの位置に青色検査線の形成を示し、インフルエンザB陽性試料はインフルエンザBおよびMS2ファージの位置に青色検査線の形成を示し、陰性試料はMS2ファージの位置にのみ青色検査線の形成を示した。
【0124】
<実施例3: 陰性臨床的鼻腔試料にスパイクされたインフルエンザウイルス(精製)および内部陽性対照ウイルスの多重増幅および検出の方法>
ヒト対象から収集した鼻腔拭い試料を、0.025%Triton X-100、10mM Tris、pH 8.3溶液3mLに入れ、FDAに承認されたリアルタイムRT-PCR試験を用いてインフルエンザAおよびインフルエンザBの存在について検査した。この検査に使用する前に、試料がインフルエンザAおよびインフルエンザBについて陰性であることを確認した。確認されたインフルエンザ陰性鼻腔試料に5000TCID50/mLに等しい濃度のA/プエルトリコインフルエンザウイルスをスパイクした、または確認されたインフルエンザ陰性鼻腔試料を陰性対照としてウイルスの添加なしに使用した。得られたスパイクまたは陰性対照試料40μLを、インフルエンザAおよびB検査カセットの試料ポートに添加した。試料ポートに入ると、試料40μLが検査カセットの第1のチャンバに流れる際に凍結乾燥ビーズと混じり合う。凍結乾燥ビーズは、陽性内部対照としてのMS2ファージウイルス粒子およびDTTから構成されていた。カセットの第1のチャンバで、試料を1分間90℃に加熱してウイルス溶解を促進し、次いで、第2のチャンバに接続されたベントを開く前に50℃に冷却した。第2のチャンバに接続されたベントを開くことにより、第2のチャンバ内の空気の膨張チャンバへの移動を可能にすることによって、試料が第2のチャンバに流れることが可能になる。試料が第2のチャンバに移動する際、これが、第1のチャンバと第2のチャンバとの間の流路の凹部中に凍結乾燥ペレットとして存在するところの、インフルエンザA、インフルエンザBおよびMS2ファージに対するオリゴヌクレオチド増幅プライマー、ならびに、逆転写および核酸増幅の試薬および酵素と混じり合った。
【0125】
増幅チャンバを6分間47℃に加熱し、その間にRNA鋳型をcDNAに逆転写した。逆転写が完了した後、第2のチャンバで40サイクルの熱サイクル増幅を行った。熱サイクルが完了した後、第3のチャンバに接続されたベントを開けて、反応溶液が第3のチャンバに流入するのを可能にした。第3のチャンバは、検出粒子として使用される3つの青色に染色されたポリスチレンミクロスフェアコンジュゲートを含む試験ストリップおよび凍結乾燥ビーズを含んでいた。コンジュゲートは、インフルエンザAまたはインフルエンザBまたはMS2ファージの増幅配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブと共有結合した300nmポリスチレンミクロスフェアで構成されていた。この溶液は、第3のチャンバに流入するときに凍結乾燥検出粒子を再構成した。3つの捕捉ラインが側方流膜上に固定された、装置の底部からそれらは、任意のアッセイ標的に相補的ではない陰性対照オリゴヌクレオチド;インフルエンザBの増幅産物に相補的な捕捉プローブ;インフルエンザAの増幅産物に相補的な捕捉プローブ;およびMS2ファージの増幅産物に相補的なオリゴヌクレオチドであった。側方流ストリップを、結果の視覚的解釈の前に6分間展開させた。側方流ストリップが展開すると、
図36に示されるように、インフルエンザA陽性試料はインフルエンザAおよびMS2ファージの位置に青色検査線の形成を示し、陰性対照試料はMS2ファージの位置にのみ青色検査線の形成を示した。
【0126】
本発明を、開示された実施形態を特に参照して詳細に説明したが、他の実施形態も同じ結果を達成することができる。本発明の変形および変更は当業者に自明であり、このような変更および均等物の全てを網羅することが意図されている。上に引用される全ての特許および刊行物の全開示は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【符号の説明】
【0127】
図21Aの「OPEN」は「開いている」の意味。
図21Cの「CLOSED」は「閉じている」の意味。
[
図1,2関連]
15,37 凹部
30,90 チャンバ
35,40 チャネル
50,54 ベントポケット
72 熱安定性材料
75 プリント回路基板またはPCA
80 熱不安定性ベントポケットシール材(熱不安定性材料)
7004(
図45) ディンプル(突起)
230 検出チャンバ
235 検出ストリップ
93 検出チャンバにおける毛管プールまたは空間
[
図7,
図8関連]
400 流体部品
410 熱不安定性材料
420 ガスケット
430 熱安定性材料
440 エアギャップ
799 フレキシブル回路
[
図44関連]
7001 隆起部(または畝部)(流体を導くのを助けるための構造)
[
図39~
図43関連]
4001 三角形流れ制御特徴
4003 反応チャンバ
4005 先細り形状の出口
4101 三角形流れ制御特徴
4103 反応チャンバ
4201 台形流れ制御特徴
4203 反応チャンバ
4303 三角形流れ制御特徴
4305 反応チャンバ
4306 出口チャネル
4401 流れ制御特徴
4403 反応チャンバ