(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池用負極板
(51)【国際特許分類】
H01M 4/133 20100101AFI20221031BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20221031BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20221031BHJP
【FI】
H01M4/133
H01M4/62 Z
H01M4/587
(21)【出願番号】P 2020206542
(22)【出願日】2020-12-14
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】松田 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】中井 晴也
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/157417(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/124425(WO,A1)
【文献】特開2012-074297(JP,A)
【文献】特開2011-204576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極基材と負極活物質層とを含み、
前記負極活物質層は前記負極基材の表面に配置されており、
前記負極活物質層は負極活物質粒子とカルボキシメチルセルロースとを含み、
前記負極活物質粒子は黒鉛を含み、
前記負極活物質粒子の体積基準の粒度分布は式(I)および(II):
16μm≦D50≦20μm (I)
(D90-D10)/D50≦1 (II)
の関係を満たし、
前記カルボキシメチルセルロースは、
35万から37万の重量平均分子量を有し、
0.65から0.82のエーテル化度を有する、
非水電解質二次電池用負極板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、非水電解質二次電池用負極板に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2011-204576号公報(特許文献1)は、分子量20万以上かつエーテル化度0.8以下の水溶性高分子を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以下、本明細書においては、非水電解質二次電池用負極板が「負極板」と略記され得る。非水電解質二次電池が「電池」と略記され得る。
【0005】
負極板は負極基材と負極活物質層とを含む。一般に負極板は負極スラリーの塗布により製造されている。負極スラリーは、負極活物質粒子とカルボキシメチルセルロース(CMC)と分散媒(水)とが混合されることにより、調製され得る。負極スラリーにおいてCMCは増粘剤として機能する。すなわちCMCは、負極スラリーに粘性を付与し、負極活物質粒子の分散安定性を高める。
【0006】
負極スラリーが負極基材の表面に塗布されることにより、塗膜が形成される。塗膜が乾燥されることにより、負極活物質層が形成される。塗膜は、全面にわたって均一な目付(単位面積あたりの質量)を有することが求められる。しかし平面視において、塗膜の周縁部では、目付が変動しやすい傾向がある。
【0007】
図1は、目付の変動の第1例を示す断面概念図である。
塗膜2は負極基材21の表面に形成される。例えば、平面視において、塗膜2の周縁部の目付が局所的に多くなることがある。この時、断面視(
図1)においては、塗膜2の両端部が盛り上がっている。塗膜2の両端部が盛り上がっていることにより、その後のロールtоロールプロセス(巻き取り、圧延等)において、負極板20にたるみが発生しやすい傾向がある。たるみの発生により生産性が低下する可能性がある。
【0008】
図2は、目付の変動の第2例を示す断面概念図である。
例えば、平面視において、塗膜2の周縁部の目付が局所的に少なくなることもある。この時、断面視(
図2)においては、塗膜2の中央部が盛り上がっている。その結果、負極活物質層(乾燥後の塗膜2)の両端部において、正極板との容量バランスが崩れる可能性がある。容量バランスが崩れることにより、例えばサイクル特性が低下する可能性がある。
【0009】
本技術の目的は、目付の変動が小さい負極板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、本技術の構成および作用効果が説明される。ただし本技術の作用メカニズムは、推定を含んでいる。作用メカニズムの正否は、本技術の範囲を限定しない。
【0011】
非水電解質二次電池用負極板は、負極基材と負極活物質層とを含む。負極活物質層は負極基材の表面に配置されている。負極活物質層は負極活物質粒子とカルボキシメチルセルロースとを含む。負極活物質粒子は黒鉛を含む。負極活物質粒子の体積基準の粒度分布は下記式(I)および(II):
16μm≦D50≦20μm (I)
(D90-D10)/D50≦1 (II)
の関係を満たす。
カルボキシメチルセルロースは、35万から37万の重量平均分子量を有する。カルボキシメチルセルロースは、0.65から0.82のエーテル化度を有する。
【0012】
目付の変動は、負極スラリーの構造粘性と相関していると考えられる。すなわち負極スラリーが十分な構造粘性を示さない場合、負極活物質粒子が沈降したり、スラリー粘度が低下したりする。その結果、塗膜の両端部が盛り上がると考えられる(
図1参照)。他方、負極スラリーが過剰な構造粘性を示すと、負極スラリーの流動性が低下する。その結果、塗膜の中央部が盛り上がると考えられる(
図2参照)。
【0013】
構造粘性は、負極活物質粒子とCMCとの絡み方により変化し得る。本技術の新知見によると、負極スラリーの構造粘性は、負極活物質粒子の粉体物性と、CMCの高分子物性とにより調整され得る。負極活物質粒子が上記式(I)および(II)の関係を満たし、かつCMCが特定の重量平均分子量とエーテル化度とを有する時、目付の変動が小さい傾向がある。好適な構造粘性が発現するためと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、目付の変動の第1例を示す断面概念図である。
【
図2】
図2は、目付の変動の第2例を示す断面概念図である。
【
図3】
図3は、本実施形態における非水電解質二次電池を示す概略図である。
【
図4】
図4は、本実施形態における電極体を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本技術の実施形態(以下「本実施形態」とも記される。)が説明される。ただし以下の説明は、本技術の範囲を限定しない。
【0016】
本明細書において、「含む、備える(comprise,include)」、「有する(have)」およびこれらの変形〔例えば「から構成される(be composed of)」、「包含する(emcopass,involve)」、「含有する(contain)」、「担持する(carry,support)」、「保持する(hold)」等〕の記載は、オープンエンド形式である。すなわち、ある構成を含むが、当該構成のみを含むことに限定されない。「からなる(consist of)」との記載はクローズド形式である。「実質的に・・・からなる(consist essentially of)」との記載はセミクローズド形式である。すなわち「実質的に・・・からなる」との記載は、本技術の目的を阻害しない範囲で、必須成分に加えて、追加の成分が含まれ得ることを示す。例えば、本技術の属する分野において通常想定される成分(例えば不可避不純物等)が、追加の成分として含まれていてもよい。
【0017】
本明細書において、単数形(「a」、「an」および「the」)は、特に断りの無い限り、複数形も含む。例えば「粒子」は「1つの粒子」のみならず、「粒子の集合体(粉体、粉末、粒子群)」も含み得る。
【0018】
本明細書の「平面視」は、負極板等(塗膜、負極活物質層)の厚さ方向と平行な視線で、負極板等を見ることを示す。本明細書の「断面視」は、負極板等の厚さ方向と直交する視線で、負極板等を見ることを示す。
【0019】
本明細書において、例えば「16μmから20μm」等の数値範囲は、特に断りのない限り、上限値および下限値を含む。例えば「16μmから20μm」は、「16μm以上20μm以下」の数値範囲を示す。また、数値範囲内から任意に選択された数値が、新たな上限値および下限値とされてもよい。例えば、数値範囲内の数値と、本明細書中の別の部分に記載された数値とが任意に組み合わされることにより、新たな数値範囲が設定されてもよい。
【0020】
各図中の寸法関係は、実際の寸法関係と一致しない場合がある。本技術の理解を助けるために、各図中の寸法関係(長さ、幅、厚さ等)が変更されている場合がある。さらに一部の構成が省略されている場合もある。
【0021】
<非水電解質二次電池>
図3は、本実施形態における非水電解質二次電池を示す概略図である。
電池100は、任意の用途で使用され得る。電池100は、例えば電動車両において、主電源または動力アシスト用電源として使用されてもよい。複数個の電池100が連結されることにより、電池モジュールまたは組電池が形成されてもよい。
【0022】
電池100は外装体90を含む。外装体90は角形(扁平直方体状)である。ただし角形は一例である。外装体90は任意の形態を有し得る。外装体90は、例えば円筒形であってもよいし、パウチ形であってもよい。外装体90は、例えばAl(アルミニウム)合金製であってもよい。外装体90は、電極体50と電解液(不図示)とを収納している。電解液は電極体50に含浸されている。電解液は、例えば非水系溶媒とリチウム塩とを含む。外装体90は、例えば封口板91と外装缶92とを含んでいてもよい。封口板91は、外装缶92の開口部を塞いでいる。例えばレーザ溶接等により、封口板91と外装缶92とが接合されていてもよい。
【0023】
封口板91に、正極端子81と負極端子82とが設けられている。封口板91に、注入口と、ガス排出弁とがさらに設けられていてもよい。注入口から外装体90の内部に電解液が注入され得る。電極体50は、正極集電部材71によって正極端子81に接続されている。正極集電部材71は、例えばAl板等であってもよい。電極体50は、負極集電部材72によって負極端子82に接続されている。負極集電部材72は、例えばCu(銅)板等であってもよい。
【0024】
図4は、本実施形態における電極体を示す概略図である。
電極体50は巻回型である。電極体50は、正極板10、セパレータ30および負極板20を含む。すなわち電池100は、正極板10と負極板20と電解液とを含む。正極板10、セパレータ30および負極板20は、いずれも帯状のシートである。正極板10は、正極活物質〔例えばLi(NiCoMn)O
2等〕を含む。セパレータ30は多孔質シートである。セパレータ30は、例えばポリオレフィン系樹脂からなっていてもよい。電極体50は複数枚のセパレータ30を含んでいてもよい。電極体50は、正極板10、セパレータ30および負極板20がこの順に積層され、渦巻状に巻回されることにより形成されている。正極板10または負極板20の一方がセパレータ30に挟まれていてもよい。正極板10および負極板20の両方がセパレータ30に挟まれていてもよい。電極体50は、巻回後に扁平状に成形されている。なお巻回型は一例である。電極体50は、例えば積層(スタック)型であってもよい。
【0025】
<負極板>
負極板20は負極基材21と負極活物質層22とを含む。負極基材21は、例えばCu箔等であってもよい。負極基材21は、例えば5μmから30μmの厚さを有していてもよい。負極活物質層22は、負極基材21の表面に配置されている。負極基材21の片面のみに負極活物質層22が形成されていてもよい。負極基材21の表裏両面に負極活物質層22が形成されていてもよい。負極活物質層22は、例えば10μmから200μmの厚さを有していてもよい。負極活物質層22は、負極スラリーの塗布により形成され得る。例えばスロットダイ方式により負極スラリーが塗布され得る。目付の変動は、例えば塗布方向(ワークの搬送方向)と直交する方向(
図1、2のX軸方向)において発生する傾向がある。
【0026】
負極活物質層22は、負極活物質粒子とCMCとを含む。負極活物質層22は、実質的に負極活物質粒子とCMCとからなっていてもよい。負極活物質層22は、負極活物質粒子およびCMCに加えて、例えば導電材、ゴム系バインダ等をさらに含んでいてもよい。
【0027】
(負極活物質粒子)
負極活物質粒子は黒鉛を含む。負極活物質粒子は、実質的に黒鉛からなっていてもよい。黒鉛は人造黒鉛であってもよいし、天然黒鉛であってもよい。負極活物質粒子は、黒鉛に加えて、追加の成分をさらに含んでいてもよい。負極活物質粒子は、例えばピッチ系炭素材料等をさらに含んでいてもよい。例えば、黒鉛粒子の表面がピッチ系炭素材料により被覆されていてもよい。例えば負極活物質粒子に球形化処理が施されていてもよい。負極活物質粒子は、例えば0.8から1.0の平均円形度を有していてもよい。
【0028】
(負極活物質粒子の粒度分布)
負極活物質粒子の粒度分布は、レーザ回折法により測定される。すなわちレーザ回折式粒度分布測定装置の測定部(フローセル)に懸濁液(測定試料)が導入されることにより、粒度分布が測定される。測定試料は、分散媒(イオン交換水)に負極活物質粒子と分散剤とが分散されることにより調製される。分散剤は「TRITON(登録商標) X-100」である。同分散剤と同質の材料が使用されてもよい。
【0029】
本実施形態の粒度分布は体積基準である。「D10」は、粒度分布において小粒径側からの累積体積が全体の10%になる粒子径と定義される。「D50」は、粒度分布において小粒径側からの累積体積が全体の50%になる粒子径と定義される。「D90」は、粒度分布において小粒径側からの累積体積が全体の90%になる粒子径と定義される。
【0030】
負極活物質粒子のD50は、負極スラリーの構造粘性に影響を及ぼす。本実施形態のD50は、16μmから20μmである。D50は、例えば17.1μm以上であってもよい。D50は、例えば18.1μm以下であってもよい。
【0031】
上記式(II)の左辺「(D90-D10)/D50」はスパンとも称されている。スパンが小さい程、粒度分布の幅が狭いことを示す。負極活物質粒子のスパンは、負極スラリーの構造粘性に影響を及ぼす。本実施形態のスパンは1以下である。スパンは、例えば0.87以上であってもよい。
【0032】
(カルボキシメチルセルロース)
本実施形態のCMCは、ナトリウム塩(CMC-Na)である。CMCは、例えばリチウム塩(CMC-Li)、アンモニウム塩(CMC-NH4)等であってもよい。CMC中、実質的に全部のカルボキシメチル基がNa塩(-COONa)を含んでいてもよい。CMC中、一部のカルボキシメチル基がカルボン酸(-COOH)を含んでいてもよい。CMCは、負極スラリーにおいて増粘剤として機能する。CMCは、負極活物質層22においてバインダとして機能する。CMCの配合量は、100質量部の負極活物質粒子に対して、例えば0.1質量部から2質量部であってもよいし、0.5質量部から1質量部であってもよい。
【0033】
(CMCの重量平均分子量)
CMCの重量平均分子量は、負極スラリーの構造粘性に影響を及ぼす。負極活物質粒子の粉体物性に応じて、適切な重量平均分子量の範囲があると考えられる。本実施形態のCMCは35万から37万の重量平均分子量を有する。CMCは、例えば35.5万以上の重量平均分子量を有していてもよい。CMCは、例えば36.5万以下の重量平均分子量を有していてもよい。
【0034】
CMCの重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定される。例えば、東ソー社製の高速GPC装置「HLC-8320GPC」等が使用されてもよい。同装置と同等の機能を有するGPC装置が使用されてもよい。0.2%(質量濃度)のCMC水溶液が調製される。CMC水溶液には純水が使用される。CMC水溶液が溶離液で希釈されることにより、希釈液が調製される。溶離液はNaCl水溶液(モル濃度 0.1mol/L)である。希釈倍数は8倍である。希釈液が十分振とうされる。振とう後、希釈液がセルロースアセテートカートリッジフィルター(孔径 0.45μm)で濾過される。濾液が測定試料とされる。カラムは、1本の「TSKguardcolumn PWXL(6.0mmI.D×4cm)」(東ソー社製)と、2本の「TSKgel GMPWXL(7.8mmI.D×30cm)」(東ソー社製)とが直列に接続されることにより構成される。検出器はRI(refractive index detector)である。測定温度は40℃である。流速は1mL/minである。標準物質はプルランである。
【0035】
(CMCのエーテル化度)
CMCの骨格は、多数のグルコースが直鎖状に重合することに形成されている。個々のグルコース単位は、3個の水酸基(-OH)を有する。エーテル化度は、3個の水酸基のうち、平均で何個の水酸基にカルボキシメチル基がエーテル結合しているかを示す。エーテル化度は、置換度(degree of substitution,DS)とも称される。CMCのエーテル化度は、負極スラリーの構造粘性に影響を及ぼす。負極活物質粒子の粉体物性に応じて、適切なエーテル化度の範囲があると考えられる。本実施形態のCMCは0.65から0.82のエーテル化度を有する。CMCは、例えば0.75以上のエーテル化度を有していてもよい。CMCは、例えば0.78以下のエーテル化度を有していてもよい。
【0036】
CMCのエーテル化度は次の手順で測定される。1Lの無水メタノールに、100mLの特級濃HNO3が混合されることにより、硝酸メタノールが調製される。2gのCMC(粉末)が秤量される。2gのCMCと、100mLの硝酸メタノールとが共栓三角フラスコ(容量 300ml)に投入される。共栓三角フラスコが2時間振とうされる。これにより、CMC中のカルボキシメチル基の末端がNa塩(-COONa)からカルボン酸(-COOH)に変換される。変換後、共栓三角フラスコ内の混合物が、ガラスフィルターにより吸引濾過される。メタノール水溶液(濃度 80%)により、残渣(CMC)が洗浄される。洗浄後、50mLの無水メタノールが追加され、再度、吸引濾過が行われる。残渣(CMC)が105℃で2時間乾燥される。乾燥後のCMCが1gから1.5g秤量される。CMC(乾燥質量 1gから1.5g)が共栓三角フラスコ(容量 300ml)に投入される。15mLのメタノール水溶液(濃度 80%)が共栓三角フラスコに投入されることにより、CMCが湿潤状態となる。さらに、50mLのNaOH水溶液(規定度 0.1N)が投入される。NaOH水溶液の投入後、室温において、共栓三角フラスコが2時間振とうされる。振とう後、H2SO4(規定度 0.1N)により、過剰量のNaOHが逆滴定される。指示薬はフェノールフタレインである。
【0037】
滴定結果に基づき、下記式によりエーテル化度(DS)が算出される。
A=0.1×(50×F’-H2SO4量(mL)×F)/(CMCの乾燥質量(g))
DS(mоl/C6)=0.162A/(1-0.058A)
式中「F」は0.1NのH2SO4のファクターを示し、「F’」は0.1NのNaOH水溶液のファクターを示す。
【0038】
(その他の成分)
負極活物質層22は、例えば導電材をさらに含んでいてもよい。導電材は任意の成分を含み得る。導電材は、例えばカーボンブラック、カーボンナノチューブ等を含んでいてもよい。導電材の配合量は、100質量部の負極活物質粒子に対して、例えば0.1質量部から10質量部であってもよい。負極活物質層22は、例えばゴム系バインダをさらに含んでいてもよい。ゴム系バインダは任意の成分を含み得る。ゴム系バインダは、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)等を含んでいてもよい。ゴム系バインダの配合量は、100質量部の負極活物質粒子に対して、例えば0.1質量部から2質量部であってもよいし、0.5質量部から1質量部であってもよい。
【実施例】
【0039】
以下、本技術の実施例(以下「本実施例」とも記される。)が説明される。ただし以下の説明は、本技術の範囲を限定しない。
【0040】
<負極板の製造>
以下のように、No.1からNo.11に係る負極板が製造された。
【0041】
《No.1》
下記材料が準備された。
負極活物質粒子:黒鉛粉末(D50 17.1μm、スパン 1)
CMC:CMC-Na(重量平均分子量 35.5万、エーテル化度 0.78)
ゴム系バインダ:SBR
分散媒:水
負極基材:Cu箔
【0042】
黒鉛粉末とCMC-NaとSBRと水とが混合されることにより、負極スラリーが調製された。固形分の配合比は「黒鉛粉末/CMC-Na/SBR=100/0.5/1(質量比)」であった。負極スラリーが負極基材の表面に塗布されることにより、塗膜が形成された。塗膜が乾燥されることにより、負極活物質層が形成された。負極活物質層は、負極基材の表裏両面に形成された。以上より負極板が製造された。
【0043】
《No.2からNo.11》
下記表1の粉体物性を有する黒鉛粉末と、下記表1の高分子物性を有するCMC-Naとが組み合わされることを除いては、No.1と同様に、負極板が製造された。
【0044】
<評価>
平面視において、負極活物質層の中央部から所定面積の試料片が切り出された。試料片の目付と厚さとが測定された。厚さは、ニコン社製の「デジマイクロ」により測定された。試料片の目付と厚さとから、負極活物質層の密度が算出された。負極活物質層の両端部から3mmまでの範囲において、負極活物質層の厚さが測定された。負極活物質層の密度と、両端部の厚さとから、両端部の平均目付が算出された。
【0045】
下記式により目付変動指数が算出された。
目付変動指数={(中央部の目付)/(両端部の平均目付)}×100
本実施例においては、目付変動指数が95から105である時、目付の変動が小さいとみなされる。
【0046】
【0047】
<結果>
上記表1において下記条件が全て満たされる時、目付の変動が小さい傾向がみられる。
・負極活物質粒子のD50が16μmから20μmである。
・負極活物質粒子のスパンが1以下である。
・CMCの重量平均分子量が35万から37万である。
・CMCのエーテル化度が0.65から0.82である。
【0048】
<付記>
・負極活物質粒子のD50は17.1μmから18.1μmであってもよい。
・負極活物質粒子のスパンは0.87から1であってもよい。
・CMCの重量平均分子量は35万から36.5万であってもよい。
【0049】
本技術は、負極板の製造方法にも関する。
負極板の製造方法は下記(A)から(C)を含む。
(A)負極活物質粒子とカルボキシメチルセルロースと分散媒とを混合することにより、負極スラリーを調製する。
(B)負極スラリーを負極基材の表面に塗布することにより、塗膜を形成する。
(C)塗膜を乾燥することにより、負極活物質層を形成する。
負極活物質粒子は黒鉛を含む。負極活物質粒子の体積基準の粒度分布は下記式(I)および(II):
16μm≦D50≦20μm (I)
(D90-D10)/D50≦1 (II)
の関係を満たす。
カルボキシメチルセルロースは、35万から37万の重量平均分子量を有し、かつ0.65から0.82のエーテル化度を有する。
【0050】
負極スラリーは構造粘性を示す。構造粘性は、せん断応力とせん断速度との比として定義される見かけ粘度が、せん断速度の増加に伴って減少することを示す。
見かけ粘度は、下記式(III):
η=τ/γ (III)
により定義される。
上記式(III)中、「η」は見かけ粘度を示す。「τ」はせん断応力を示す。「γ」はせん断速度を示す。
【0051】
本実施形態および本実施例は全ての点で例示である。本実施形態および本実施例は制限的ではない。本技術の範囲は、特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内における全ての変更を包含する。例えば、本実施形態および本実施例から、任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも、当初から予定されている。本実施形態および本実施例に複数の作用効果が記載されている場合、本技術の範囲は、全ての作用効果を奏する範囲に限定されない。
【符号の説明】
【0052】
2 塗膜、10 正極板、20 負極板、21 負極基材、22 負極活物質層、30 セパレータ、50 電極体、71 正極集電部材、72 負極集電部材、81 正極端子、82 負極端子、90 外装体、91 封口板、92 外装缶、100 電池(非水電解質二次電池)。