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  • 特許-体温測定装置および体温管理システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】体温測定装置および体温管理システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/01 20060101AFI20221031BHJP
   G01J 5/48 20220101ALI20221031BHJP
【FI】
A61B5/01 350
G01J5/48 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020206732
(22)【出願日】2020-12-14
(65)【公開番号】P2022093972
(43)【公開日】2022-06-24
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】515290343
【氏名又は名称】医療法人社団皓有会
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】小山 和泉
【審査官】外山 未琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-337364(JP,A)
【文献】特開2014-135993(JP,A)
【文献】国際公開第2020/006243(WO,A1)
【文献】特開平8-54282(JP,A)
【文献】米国特許第4494881(US,A)
【文献】米国特許第1453006(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/01
G01J 5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに装着されてユーザの顔面を覆うとともに、視線の第1照準部が設けられるフェイスシールドと、
前記フェイスシールドに取り付けられた赤外線センサと、
前記フェイスシールドに取り付けられ、ユーザの視線方向における前記第1照準部の前方に配置された第2照準部と、を備え、
前記赤外線センサは、前記第1照準部および前記第2照準部により規定されるユーザの視線方向に位置する被測定者からの赤外線エネルギを検出するように設けられることを特徴とする体温測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の体温測定装置において、
前記フェイスシールドに取り付けられたカメラと、
前記フェイスシールドに取り付けられ、前記カメラおよび前記赤外線センサに接続されたコントローラと、をさらに備え、
前記コントローラは、
被測定者を顔認証するための認証情報を記憶する記憶部と、
前記カメラからの信号と前記記憶部に記憶された認証情報とに基づいて被測定者を顔認証する顔認証部と、
前記顔認証部により被測定者が顔認証されると、前記赤外線センサからの信号に基づいて、前記顔認証部により顔認証された被測定者の体温を決定する体温決定部と、
前記体温決定部により決定された体温の情報を前記顔認証部による認証結果に対応付けて出力する情報出力部と、を有することを特徴とする体温測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の体温測定装置において、
前記赤外線センサは、複数の受光素子を有する赤外線アレイセンサにより構成され、
体温決定部は、前記複数の受光素子ごとに検出された温度のうちの最高温度を被測定者の体温として決定することを特徴とする体温測定装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の体温測定装置において、
前記フェイスシールドは、
ユーザの頭部に装着される帯状のバンド部と、
前記バンド部の下端から下方に、ユーザの顔面を覆うように延在するシールド部と、を有することを特徴とする体温測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の体温測定装置において、
前記バンド部に取り付けられ、前記赤外線センサを収容する筐体と、
前記筐体の下端から下方に、前記シールド部に沿って延在する第1延在部と、
前記第1延在部の下端から前方に延在する第2延在部と、をさらに備え、
前記第2照準部は、前記第2延在部の前端部に設けられることを特徴とする体温測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の体温測定装置において、
前記第1延在部および前記第2延在部は、線状部材により構成されることを特徴とする体温測定装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の体温測定装置において、
前記筐体は、前記バンド部に着脱可能に設けられることを特徴とする体温測定装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の体温測定装置と、
前記体温測定装置により測定される被測定者の体温を管理する体温管理装置と、を備えることを特徴とする体温管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体温を測定する体温測定装置および体温測定装置により測定された体温を管理する体温管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、病院などの施設において非接触で体温を測定するようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1の装置は、被測定者の近傍に設置された赤外線センサを有する機器により被測定者から発せられた赤外線を検出し、これにより被測定者の体温を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-135993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の装置では、被測定者の近傍に設置された機器により体温を測定するため、予め機器と被測定者との位置関係を設定する必要があり、精度よく体温を測定することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様である体温測定装置は、ユーザに装着されてユーザの顔面を覆うとともに、視線の第1照準部が設けられるフェイスシールドと、フェイスシールドに取り付けられた赤外線センサと、フェイスシールドに取り付けられ、ユーザの視線方向における第1照準部の前方に配置された第2照準部と、を備える。赤外線センサは、第1照準部および第2照準部により規定されるユーザの視線方向に位置する被測定者からの赤外線エネルギを検出するように設けられる。
【0006】
本発明の他の態様である体温管理システムは、体温測定装置と、体温測定装置により測定される被測定者の体温を管理する体温管理装置と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡易に精度よく体温を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る体温測定装置の適用例を概略的に示す図。
図2】本発明の実施形態に係る体温測定装置の一例を概略的に示す斜視図。
図3図2の第2照準部付近を拡大して示す側面図。
図4A】視線の照準が被測定者に定まった状態での、図2のフェイスシールドを装着したユーザの視界について説明するための図。
図4B】視線の照準が被測定者に定まらない状態での、図2のフェイスシールドを装着したユーザの視界について説明するための図。
図5図2のフェイスシールドを装着したユーザの視線方向と、カメラの撮影方向および赤外線センサの検出方向との関係を説明するための側面図。
図6図2の赤外線センサの検出範囲について説明するための図。
図7A】カバー部側における図2の筐体の内部構成の一例を概略的に示す正面図。
図7B】ベース部側における図2の筐体の内部構成の一例を概略的に示す正面図。
図8】本発明の実施形態に係る体温測定装置を有する体温管理システムの全体構成を概略的に示すブロック図。
図9】本発明の実施形態に係る体温測定装置により実行される処理の一例を示すフローチャート。
図10図8の管理サーバで管理される体温の情報の一例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1図10を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態に係る体温測定装置は、ユーザP1が対面する被測定者P2の体温Tを測定する。以下では、特に、介護施設の介護スタッフが対面する入居者の体温Tを測定する例を説明する。
【0010】
介護施設では、入居者の健康状態を管理するため、介護スタッフによる入居者の検温(体温測定)が行われる。体温計を用いて検温を行う場合、他の作業を中断したり、検温結果を記録したりする必要があるため、介護スタッフにとって負担となる。そこで、本発明の実施形態では、介護スタッフが装着するフェイスシールドに取り付けられた赤外線センサを用いて簡易に精度よく検温を行い、介護スタッフの負担を軽減できるよう、以下のように体温測定装置を構成する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る体温測定装置(装置)1の適用例を概略的に示す図である。図1に示すように、介護スタッフ(ユーザ)P1は、入居者(被測定者)P2に対面して食事や歩行の介助などの介護を行う。介護を行うときのユーザP1と被測定者P2との間の平均的な距離D1は、例えば容易に手が届く範囲内の距離(例えば、1m弱)となる。ユーザP1は、被測定者P2の口や鼻からの飛沫を防ぐため、自身の顔面を覆うフェイスシールド2を装着して介護を行う。
【0012】
図2は、装置1の一例を概略的に示す斜視図であり、ユーザP1に装着された状態の装置1を示す。以下では、フェイスシールド2のシールド面に沿って、図示のようにユーザP1から見た上下方向、左右方向、および前後方向を定義する。
【0013】
図2に示すように、装置1は、フェイスシールド2を有する。フェイスシールド2は、例えば市販の使い捨てのフェイスシールドにより構成され、ユーザP1の頭部に鉢巻状に巻いて装着される帯状のバンド部3と、バンド部3の下端から下方に、ユーザP1の顔面を覆うように延在するシールド部4とを有する。バンド部3は、平ゴムなどにより構成され、ユーザP1の額に当たる部分に、例えばウレタン樹脂などの肉厚(例えば、数センチ程度)のクッション部3aを有する。クッション部3aによりユーザP1の顔面とシールド部4との間の空間が確保される。
【0014】
シールド部4は、非結晶性PET樹脂(A-PET)などにより構成され、透過性および可撓性を有する。シールド部4には、ユーザP1が正面を向いたときの視線方向L1に対応する位置に第1照準部5が設けられる。第1照準部5は、シールド部4の左右方向の中心線CL上、かつ、シールド部4の上端から所定距離D2下方に設けられ、例えば四角形状の枠線として、シールド部4の片面(例えば、前面)にインクで印される。第1照準部5は、例えばゴム印や筆記具により印すことができる。フェイスシールド2に対する第1照準部5の位置を規定する治具を用いることで、使い捨てのフェイスシールド2を交換して使用する場合でも正確な位置に第1照準部5を設ける(印す)ことができる。
【0015】
第1照準部5の上方のバンド部3の中央には、赤外線センサなどを収容するための筐体6が、例えば両面テープなどを介して着脱可能に取り付けられる。筐体6は、可撓性を有する樹脂などの軽量な部材により構成され、バンド部3に取り付けられるベース部6aと、ベース部6aに対して開閉可能または着脱可能に取り付けられるカバー部6bとを有する。
【0016】
フェイスシールド2に対する筐体6の取り付け位置を規定する治具を用いることで、使い捨てのフェイスシールド2を交換して使用する場合でも正確な位置に筐体6を取り付けることができる。また、フェイスシールド2に対する第1照準部5および筐体6の位置を規定する治具を用いることで、フェイスシールド2上における第1照準部5と筐体6との相対的な位置関係を正確に規定することができる。
【0017】
筐体6の下方には、ユーザP1が正面を向いたときの視線方向L1における第1照準部5の前方に第2照準部7が設けられる。図3は、第2照準部7付近を拡大して示す側面図である。図3に示すように、第2照準部7は、シールド部4に沿って筐体6の下端から下方に延在する第1延在部7aと、第1延在部7aの下端から前方に延在する第2延在部7bとを介して、筐体6に対して相対移動不能に取り付けられる。
【0018】
図2および図3に示すように、第2照準部7および第1、第2延在部7a,7bは、例えば金属製のワイヤなどの軽量な線状部材により一体的に構成される。例えば、1本のワイヤ(線状部材)の両端部を第1延在部7aの上端部として折り曲げることで、第2照準部7および第1、第2延在部7a,7bを一体的に構成することができる。第2照準部7は、線状部材の中央部を例えば四角形の枠状に形成して構成することができる。
【0019】
図4Aおよび図4Bは、フェイスシールド2を装着して被測定者P2に対面するときのユーザP1の視界について説明するための図であり、ユーザP1の視界において第1、第2照準部5,7により規定される照準範囲AR1について説明する。ユーザP1が図2に示すようにバンド部3を水平にシールド部4と顔の中心とが一致するようにフェイスシールド2をまっすぐ装着し、被測定者P2に視線を合わせると、図4Aに示すように、ユーザP1の視線の先に位置する被測定者P2が照準範囲AR1に入る。すなわち、ユーザP1の視線の照準が被測定者P2に定まる。
【0020】
一方、ユーザP1がフェイスシールド2をまっすぐ装着していない場合や被測定者P2に視線を合わせていない場合は、図4Bに示すように、第1、第2照準部5,7により照準範囲AR1が規定されず、被測定者P2が照準範囲AR1に入らない。すなわち、ユーザP1の視線の照準が被測定者P2に定まらない。装置1は、図4Aに示すようにユーザP1の視線の照準が被測定者P2に定まった状態で被測定者P2の体温Tを測定するように構成される。
【0021】
図2および図3に示すように、筐体6には、第1、第2照準部5,7により規定されるユーザP1の視線の先に位置する被測定者P2を撮影するように、カメラ8が取り付けられる。また、ユーザP1の視線の先に位置する被測定者P2からの赤外線エネルギを検出するように、赤外線センサ9が取り付けられる。赤外線センサ9は、受光部9aが複数(例えば、8×8=64個)の受光素子を有する赤外線アレイセンサとして構成される。カメラ8および赤外線センサ9は、カメラ8の前面のレンズ部8aおよび赤外線センサ9の前面の受光部9aが筐体6の外部に露出するように、筐体6の内部に部分的に収容される。
【0022】
図5は、フェイスシールド2を装着したユーザP1の視線方向L1と、カメラ8の撮影方向L2および赤外線センサ9の検出方向L3との関係を説明するための側面図である。図5に示すように、ユーザP1と被測定者P2とが、互いの視線が一致するように対面するとき、ユーザP1の視線方向L1の前方には被測定者P2の視線に相当する顔面の中央付近が位置する。第1、第2照準部5,7は、ユーザP1と被測定者P2とが平均的な距離D1で対面するときに、ユーザP1の視界において被測定者P2の顔面が照準範囲AR1に入るように設定される。
【0023】
このようにユーザP1と被測定者P2とが対面するとき、カメラ8の撮影方向L2および赤外線センサ9の前方には被測定者P2の額付近が位置する。このとき、カメラ8の撮影範囲AR2および赤外線センサ9の検出範囲AR3には、少なくとも被測定者P2の額や両目を含む、被測定者P2の顔面上部が入る。なお、図5ではカメラ8の撮影範囲AR2と赤外線センサ9の検出範囲AR3とを一致させて示すが、カメラ8の撮影範囲AR2および赤外線センサ9の検出範囲AR3は、カメラ8および赤外線センサ9の仕様により異なり、必ずしも一致しない。
【0024】
図6は、赤外線センサ9の検出範囲AR3について説明するための図であり、赤外線センサ9の受光素子ごとの複数(図では64個)の受光範囲C1~C64を示す。赤外線センサ9は、各受光素子により受光範囲C1~C64ごとの赤外線エネルギを検出し、受光範囲C1~C64ごとに検出された赤外線エネルギに対応するデータ信号を出力する。
【0025】
図7Aは、カバー部6b側における筐体6の内部構成の一例を概略的に示す正面図であり、カメラ8および赤外線センサ9の背面図を示す。図7Aに示すように、カバー部6bには、カメラ8のレンズ部8aに対応する貫通孔6b1と、赤外線センサ9の受光部9aに対応する貫通孔6b2とが設けられる。
【0026】
カメラ8は、基板8bにレンズ部8aおよび入出力部8cなどが実装されたカメラユニットとして構成され、基板8bに設けられた複数(図では4つ)の貫通孔8dを介してカバー部6bに取り付けられる。より具体的には、カメラ8は、レンズ部8aが貫通孔6b1を介して筐体6の外部に露出するように、筐体6の内側からカバー部6bに取り付けられる。入出力部8cは、例えば、フラットケーブルを接続可能なフラットケーブルコネクタとして構成される。
【0027】
赤外線センサ9は、基板9bに受光部9aおよび入出力部9c(9c1~9c5)などが実装されたセンサユニットとして構成され、基板9bに設けられた複数(図では2つ)の貫通孔9dを介してカバー部6bに取り付けられる。より具体的には、赤外線センサ9は、受光部9aが貫通孔6b2を介して筐体6の外部に露出するように、筐体6の内側からカバー部6bに取り付けられる。
【0028】
図7Bは、ベース部6a側における筐体6の内部構成の一例を概略的に示す正面図であり、カメラ8および赤外線センサ9に接続されたコントローラ10の正面図を示す。図7Bに示すように、コントローラ10は、単一の基板11に、カメラ8および赤外線センサ9からの信号を処理する処理部12などが実装されたラズベリーパイ(Rasberry Pi)などのシングルボードコンピュータにより構成される。なお、以下では、コントローラ10としてラズベリーパイゼロW(長さ:約65mm;幅:約30mm)を用いる例を説明する。
【0029】
基板11には、処理部12に加え、カメラ入力ポート13と、マイクロUSB給電ポート14と、マイクロUSBポート15と、プリントアンテナ16と、ミニHDMI(登録商標)出力ポート17とが実装される。また、マイクロSDカードスロット18と、汎用入出力ポート19とが実装される。基板11は、複数(図では4つ)の角部に設けられた貫通孔11aを介してベース部6aに取り付けられる。
【0030】
カメラ入力ポート13は、フラットケーブル13aを介してカメラ8の入出力部8cに接続される。これにより、フラットケーブル13aを介して、コントローラ10からカメラ8に電源が供給されるとともに、カメラ8からの画像信号がコントローラ10に入力される。
【0031】
マイクロUSB給電ポート14には、例えばL字型のマイクロUSBケーブル14aが接続され、マイクロUSBケーブル14aを介して外部のバッテリ20(図1)からコントローラ10に電源が供給される。バッテリ20としては、例えばユーザP1の衣服のポケットなどに収容可能なモバイルバッテリを用いることができる。コントローラ10の稼働中の消費電力は、例えば300mA/h程度であるため、例えば容量が6700mAh程度のバッテリ20を用いることで、バッテリ20を充電、交換することなく終日、連続的にコントローラ10を稼働させることができる。
【0032】
プリントアンテナ16は、基板11上のプリントパターンとして構成され、無線通信により外部との信号の送受信を行う。すなわち、プリントアンテナ16は、コントローラ10から外部に各種の情報を出力する情報出力部として機能する。
【0033】
マイクロSDカードスロット18には、マイクロSDカード18aが挿入される。マイクロSDカード18aには、コントローラ10のオペレーティングシステム(OS)などのプログラムが予め記憶される。すなわち、マイクロSDカード18aは、各種の情報を記憶する記憶部として機能する。
【0034】
汎用入出力ポート19は、複数(図では40個)の端子により構成され、一部の端子が赤外線センサ9の入出力部9cに接続される。例えば、3.3V出力端子19_1、シリアルデータ入出力端子19_3、シリアルクロック入力端子19_5、接地端子19_9が、それぞれ赤外線センサ9の入出力部9c1,9c4,9c5,9c2に接続される。これにより、コントローラ10から赤外線センサ9に電源が供給されるとともに、赤外線センサ9からのデータ信号がコントローラ10に入力される。より具体的には、赤外線センサ9の複数の受光範囲C1~C64(図6)ごとに検出された赤外線エネルギに対応するデータ信号がコントローラ10に入力される。
【0035】
処理部12は、単一の半導体チップ上にCPUコア、GPU、メモリ、その他の周辺回路が集積されたSoC(System-on-a-chip)として構成される。処理部12は、予め記憶部(マイクロSDカード)18aに記憶されたプログラムに従い、カメラ8および赤外線センサ9からの信号を処理する。処理部12による処理結果は、情報出力部(プリントアンテナ)16を介してコントローラ10の外部に出力される。
【0036】
図8は、装置1を有する体温管理システム100の全体構成を概略的に示すブロック図である。図8に示すように、体温管理システム100は、介護施設の入居者(被測定者P2)の体温Tを測定する装置1と、装置1により測定された被測定者P2ごとの体温Tを管理する管理サーバ30とを有する。図8では装置1を1つのみ示すが、体温管理システム100を構成する装置1は、例えば介護施設の介護スタッフ(ユーザ)P1の人数に対応して複数設けられる。
【0037】
管理サーバ30は、CPU,ROM,RAM,HDD、その他の周辺回路を有するコンピュータを含んで構成され、Wi-Fi(登録商標)などの介護施設内の無線LANネットワークを介して各ユーザP1の装置1(コントローラ10)に接続される。管理サーバ30は、例えば入居者IDに対応付けて、入居者ごとの検温結果を含む介護記録などの情報を蓄積し、管理する。
【0038】
介護施設の入居者の健康状態を管理する介護スタッフや医師などは、パソコンやタブレット端末などのユーザ端末を介して管理サーバ30にアクセスすることで、必要に応じて入居者ごとの介護記録などの情報を表示、編集することができる。例えば、特定の入居者についての日々の体温Tの変化をグラフ形式で表示することができる。
【0039】
装置1のコントローラ10には、被測定者P2を顔認証するための認証情報が予め登録され、記憶部(マイクロSDカード)18aに記憶される。例えば、入居者IDに対応付けて、入居者ごとの顔の画像データが認証情報として記憶される。このような認証情報としては、マスクを装着せず顔面全体が露出した状態の画像データとともに、マスクを装着して額や両目を含む顔面上部のみが露出した状態の画像データが登録される。これにより、被測定者P2がマスクを装着しているか否かにかかわらず、精度よく顔認証することができる。
【0040】
コントローラ10の処理部12は、機能的構成として、被測定者P2を顔認証する顔認証部12aと、顔認証された被測定者P2の体温Tを決定する体温決定部12bとを有する。換言すると、処理部12が、顔認証部12aおよび体温決定部12bとしての機能を担う。
【0041】
顔認証部12aは、カメラ入力ポート13を介して入力されるカメラ8からの画像信号と、記憶部(マイクロSDカード)18aに予め記憶された認証情報とに基づいて、被測定者P2を顔認証する。より具体的には、図5に示すように、フェイスシールド2を装着したユーザP1と被測定者P2とが対面し、カメラ8の撮影範囲AR2に少なくとも額や両目を含む被測定者P2の顔面上部が入ると、被測定者P2が顔認証されて入居者IDが特定される。
【0042】
体温決定部12bは、顔認証部12aにより被測定者P2が顔認証されて入居者IDが特定されると、汎用入出力ポート19を介して入力される赤外線センサ9からのデータ信号に基づいて、被測定者P2の体温Tを決定する。より具体的には、赤外線センサ9の複数の受光範囲C1~C64(図6)ごとに検出された赤外線エネルギに対応するデータ信号に基づいて、複数の受光範囲C1~C64ごとの温度T1~T64を算出し、その中の最高温度を被測定者P2の体温Tとして決定する。例えば、被測定者P2の額付近に対応する受光範囲C36,C37(図6)の温度T36,T37が、被測定者P2の体温Tとして決定される。
【0043】
体温決定部12bにより決定された被測定者P2の体温Tの情報は、顔認証部12aにより特定された被測定者P2の入居者IDに対応付けて、情報出力部(プリントアンテナ)16を介して管理サーバ30に送信される。
【0044】
図9は、装置1のコントローラ10により実行される処理の一例を示すフローチャートであり、予め記憶部(マイクロSDカード)18aに記憶されたプログラムに従い処理部12で実行される処理を示す。このフローチャートに示す処理は、例えば、バッテリ20からコントローラ10に電源が供給されると開始され、所定時間(例えば、10秒間)ごとに繰り返される。
【0045】
図9に示すように、先ずステップS1で、被測定者P2が顔認証されたか否かを判定する。ステップS1は肯定されるまで繰り返される。ステップS1で肯定されるとステップS2に進み、被測定者P2の体温Tを決定する。次いでステップS3に進み、ステップS3で決定された体温Tの情報を、ステップS1で特定された入居者IDに対応付けて、管理サーバ30に送信する。すなわち、ユーザP1の視線の照準が被測定者P2に定まり(図4A)、カメラ8の撮影範囲AR2および赤外線センサ9の検出範囲AR3に被測定者P2が入ると(図6)、被測定者P2が顔認証されて自動的に体温Tが測定される(ステップS1→S2)。これにより、ユーザP1の視線の照準が被測定者P2に定まる度に、入居者IDの特定、検温、および検温結果の記録が自動的に行われるため、ユーザP1の操作によらず簡易かつ頻繁に、精度よく被測定者P2の検温を行うことができる。
【0046】
図10は、管理サーバ30で管理される体温Tの情報の一例を説明するための図である。図10に示すように、体温Tの情報は、入居者ごとに、時刻tの情報が付された時系列の情報として管理サーバ30に蓄積される。各入居者の体温Tは、各入居者が被測定者P2として介護スタッフ(ユーザ)P1に対面する度に装置1により測定され、時刻の情報とともに管理サーバ30に送信されて蓄積される。図10の例では、時刻t1に入居者Aの体温TA、時刻t2に入居者Bの体温TB、時刻t3に入居者Cの体温TCが装置1によりそれぞれ測定され、管理サーバ30に記録されている。このように、介護施設の複数の介護スタッフが入居者に対面する度に各入居者の体温Tが自動的に測定されて記録されるため、介護スタッフの負担なく頻繁に入居者の検温および検温結果の記録を行うことができる。
【0047】
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)体温測定装置1は、ユーザP1に装着されてユーザP1の顔面を覆うとともに、視線の第1照準部5が設けられるフェイスシールド2と、フェイスシールド2に取り付けられた赤外線センサ9と、フェイスシールド2に取り付けられ、ユーザP1の視線方向L1における第1照準部5の前方に配置された第2照準部7とを備える(図2)。赤外線センサ9は、第1、第2照準部5,7により規定されるユーザP1の視線方向L1に位置する被測定者P2からの赤外線エネルギを検出するように設けられる(図5)。
【0048】
これにより、フェイスシールド2を装着したユーザP1が対面する被測定者P2の体温Tを自動的に測定することができるため、例えば、介護施設の介護スタッフによる入居者の検温や、検温結果の記録による作業負担を軽減することができる。また、ユーザP1の視線方向L1に応じて赤外線センサ9の検出方向L3が設定されるため、ユーザP1が対面する被測定者P2の顔からの赤外線エネルギを検出し、精度よく体温Tを測定することができる。
【0049】
(2)装置1は、フェイスシールド2に取り付けられたカメラ8と、フェイスシールド2に取り付けられ、カメラ8および赤外線センサ9に接続されたコントローラ10とをさらに備える(図2図7A図7B図8)。コントローラ10は、被測定者P2を顔認証するための認証情報を記憶する記憶部(マイクロSDカード)18aと、カメラ8からの信号と記憶部(マイクロSDカード)18aに記憶された認証情報とに基づいて被測定者P2を顔認証する顔認証部12aと、顔認証部12aにより被測定者P2が顔認証されると、赤外線センサ9からの信号に基づいて、顔認証部12aにより顔認証された被測定者P2の体温Tを決定する体温決定部12bと、体温決定部12bにより決定された体温Tの情報を顔認証部12aによる認証結果に対応付けて出力する情報出力部(プリントアンテナ)16とを有する(図7B図8)。
【0050】
これにより、例えば、介護施設の各介護スタッフ(ユーザ)P1の装置1側で、介護施設の入居者の認証情報に基づいて入居者(被測定者)P2の顔認証を行い、入居者ごとの体温Tの情報を介護施設の管理サーバ30などに送信して管理することができる。すなわち、入居者ごとの時系列の体温情報として蓄積、管理することができる。
【0051】
(3)赤外線センサ9は、複数の受光素子を有する赤外線アレイセンサにより構成される。体温決定部12bは、複数の受光素子ごとに検出された複数の温度のうちの最高温度を被測定者P2の体温Tとして決定する。すなわち、ユーザP1が対面する被測定者P2の顔の中でも高温の額付近の表面温度を体温Tとして決定するため、より精度よく体温Tを測定することができる。
【0052】
(4)フェイスシールド2は、ユーザP1の頭部に装着される帯状のバンド部3と、バンド部3の下端から下方に、ユーザP1の顔面を覆うように延在するシールド部4とを有する(図2図5)。これにより、赤外線センサ9が取り付けられるフェイスシールド2とユーザP1の視線方向L1との相対的な位置関係が固定されるため、一層精度よく体温Tを測定することができる。
【0053】
(5)装置1は、バンド部3に取り付けられ、赤外線センサ9を収容する筐体6と、筐体6の下端から下方に、シールド部4に沿って延在する第1延在部7aと、第1延在部7aの下端から前方に延在する第2延在部7bとをさらに備える(図2図3)。第2照準部7は、第2延在部7bの前端部に設けられる(図3)。このように第1照準部5と第2照準部7とが離間して設けられることで、図5に示すようにユーザの視線方向L1を精度よく規定することができ、より一層精度よく体温Tを測定することができる。
【0054】
(6)第1延在部7aおよび第2延在部7bは、線状部材により構成される(図2図3)。これにより、装置1全体を軽量に構成できるとともに、ユーザP1の視界を遮りにくい構成とすることができる。
【0055】
(7)筐体6は、バンド部3に着脱可能に設けられる(図2)。これにより、フェイスシールド2を交換しながら装置1を繰り返し使用することができる。
【0056】
(8)体温管理システム100は、装置1と、装置1により測定される被測定者P2の体温Tを管理する管理サーバ30とを備える(図8)。これにより、例えば、介護施設の複数の介護スタッフ(ユーザ)P1が対面する複数の入居者(被測定者)P2ごとの時系列の体温情報を単一の管理サーバ30で管理することができる。
【0057】
なお、上記実施形態では、装置1のユーザP1を介護施設の介護スタッフ、装置1により体温Tを測定される被測定者P2を介護施設の入居者として説明したが、体温測定装置のユーザおよび被測定者は、これらに限定されない。例えば、医師や看護師をユーザ、入院患者を被測定者としてもよく、保育士をユーザ、園児を被測定者としてもよい。
【0058】
上記実施形態では、図1などでユーザP1と被測定者P2との間の平均的な距離D1を容易に手が届く範囲内の距離として例示したが、ユーザと被測定者との間の距離は、このようなものに限らない。
【0059】
上記実施形態では、図2などで具体的なフェイスシールド2の形状を例示したが、ユーザに装着されてユーザの顔面を覆うフェイスシールドは、このようなものに限らない。例えば、頸部に装着して顔面を下方から覆うものや、耳にかけて装着する眼鏡やマスクにシールド部が取り付けられたもの、帽子にシールド部が取り付けられたものでもよい。
【0060】
上記実施形態では、図5などで赤外線センサ9の検出方向L3がユーザP1の視線方向L1と平行になるようにしたが、赤外線センサはユーザの視線方向に位置する被測定者からの赤外線エネルギを検出すれば、どのように設けられてもよい。すなわち、赤外線センサ9の取り付け方向は、フェイスシールド2の形状やユーザP1と被測定者P2との間の平均的な距離D1などに応じて、適宜調整することができる。
【0061】
上記実施形態では、図2などで具体的な第1、第2照準部5,7の形状を例示したが、第1、第2照準部は、このようなものに限らない。例えば、円形などの四角形以外の枠線としてもよく、任意の形状のポインタとしてもよい。この場合、例えばポインタを被測定者P2の額付近に合わせることで、ユーザP1の視線の照準を定めることができる。
【0062】
上記実施形態では、図8などで被測定者P2の体温Tを測定し、管理する装置1および管理サーバ30を例示したが、体温測定装置および体温管理装置は、このようなものに限らず、体温以外の生体情報をさらに取得し、管理するものであってもよい。例えば、カメラ8および赤外線センサ9からの信号に基づいて、さらに被測定者P2の血圧などを測定し、管理してもよい。さらに、体温や血圧などが入居者ごとの正常範囲を逸脱した場合や、所定期間内に測定が一度も行われなかった場合に報知を行うように構成してもよい。
【0063】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 体温測定装置(装置)、2 フェイスシールド、3 バンド部、4 シールド部、5 第1照準部、6 筐体、7 第2照準部、7a 第1延在部、7b 第2延在部、8 カメラ、9 赤外線センサ、10 コントローラ、11 基板、12 処理部、12a 顔認証部、12b 体温決定部、13 カメラ入力ポート、14 マイクロUSB給電ポート、16 プリントアンテナ、18 マイクロSDカードスロット、18a マイクロSDカード、19 汎用入出力ポート、20 バッテリ、30 管理サーバ、100 体温管理システム
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10