(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】消火システムの作動装置
(51)【国際特許分類】
A62C 37/46 20060101AFI20221031BHJP
【FI】
A62C37/46
(21)【出願番号】P 2020526443
(86)(22)【出願日】2018-11-07
(86)【国際出願番号】 EP2018080411
(87)【国際公開番号】W WO2019096639
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-05-25
(32)【優先日】2017-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】304033177
【氏名又は名称】ヘルビガー ウィーン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Hoerbiger Wien GmbH
【住所又は居所原語表記】Seestadtstrasse 25,AT-1220 Wien,Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ベアンハート シュピーグル
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ケアンビヒラー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス コアンフェルト
(72)【発明者】
【氏名】トーマス シュラーグル
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01025878(EP,A1)
【文献】独国特許発明第00284194(DE,C1)
【文献】特開昭53-096299(JP,A)
【文献】特開昭63-040072(JP,A)
【文献】特開昭61-238257(JP,A)
【文献】特開2016-019732(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0231432(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 37/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
爆発抑制のために迅速に作動する消火システム(11)用の作動装置(1)であって、該作動装置(1)が摺動ピン(2)を有しており、前記消火システム(11)の作動が、遮断位置から解放位置への前記摺動ピン(2)の運動により引き起こされ、前記摺動ピン(2)が、前記遮断位置において係止部(3)によりラチェットボディ(5)のラチェット側面(4)に対して押圧され、該ラチェット側面(4)により前記遮断位置に保持されている、作動装置において、
前記ラチェットボディ(5)が、前記係止部(3)と前記ラチェット側面(4)との係合を解除しかつ前記摺動ピン(2)を解放するために、前記ラチェットボディ(5)に直接に作用する少なくとも1つの電磁石(6)によって運動可能であることを特徴とする、作動装置(1)。
【請求項2】
前記ラチェットボディ(5)と前記電磁石(6)との間の空隙(30)が、楔状に先細りする横断面を有している、請求項1記載の作動装置(1)。
【請求項3】
前記ラチェットボディ(5)が、一体的なボディとして形成されている、請求項1または2記載の作動装置(1)。
【請求項4】
前記ラチェットボディ(5)には、戻しばね(9)によって前記係止部(3)と前記ラチェット側面(4)とが係合する方向に予荷重が加えられている、請求項1から3までのいずれか1項記載の作動装置(1)。
【請求項5】
前記ラチェットボディ(5)が、回転点(7)を中心として旋回可能に支承されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の作動装置(1)。
【請求項6】
前記回転点(7)が、前記係止部(3)と前記摺動ピン(2)の結合ヘッド(8)との間の領域において、前記摺動ピン(2)の隣に配置されており、前記回転点(7)が、好適には、ピン軸線から最大で15mmの間隔で特に鉛直方向に離間している、請求項5記載の作動装置(1)。
【請求項7】
前記回転点(7)は、前記摺動ピン(2)の仮想の延長部において、解放方向(24)で前記係止部(3)の背後に配置されており、前記回転点(7)が、好適にはピン軸線から最大で15mmの間隔で特に鉛直方向で離間しており、前記回転点(7)が、好適には前記ラチェットボディ(5)の、ケーシング(26)の内側エッジ(25)に支承された外側エッジ(27)により形成されている、請求項5記載の作動装置(1)。
【請求項8】
前記回転点(7)が、前記電磁石(6)に対して10mm~50mmの間隔で位置決めされている、請求項6または7記載の作動装置(1)。
【請求項9】
前記ラチェットボディ(5)の位置を監視するためのラチェットセンサ(10)が設けられている、請求項1から8までのいずれか1項記載の作動装置(1)。
【請求項10】
消火剤容器(12)を備えた、爆発抑制のための消火システム(11)であって、前記消火剤容器(12)が、閉鎖機構(13)を介して圧力密に閉鎖可能であり、前記閉鎖機構(13)が、少なくとも1つのロックエレメント(14)を用いて閉鎖位置においてロック可能である、消火システム(11)において、
前記消火システム(11)が、請求項1から9までのいずれか1項記載の作動装置(1)を有しており、該作動装置(1)が、前記ロックエレメント(14)に作用することを特徴とする、消火システム(11)。
【請求項11】
前記ロックエレメント(14)が、電子機械的なアクチュエータ(15)を用いて、前記閉鎖機構(13)をロックする位置においてブロック可能である、請求項10記載の消火システム(11)。
【請求項12】
前記アクチュエータ(15)の位置を監視するためのアクチュエータセンサ(16)が設けられている、請求項11記載の消火システム(11)。
【請求項13】
請求項
9記載の作動装置(1)を備えた
、請求項12記載の消火システム(11)であって、
少なくとも前記アクチュエータセンサ(16)、前記ラチェットセンサ(10)、前記アクチュエータ(15)および前記電磁石(6)が、制御システム(17)に接続されている
、消火システム(11)。
【請求項14】
請求項13記載の消火システム(11)を用いてテスト作動を実施する方法であって、該方法が以下の方法ステップ、すなわち、
アクチュエータ(15)により、閉鎖機構(13)をロックする位置においてロックエレメント(14)をブロックするステップと、
アクチュエータセンサ(16)によりブロックを検査するステップと、
電磁石(6)によるラチェットボディ(5)の解除によって、摺動ピン(2)を解放するステップと、
ラチェットセンサ(10)によって、行われたテスト作動を検査するステップと、
前記ラチェットボディ(5)を戻すステップと、
前記ラチェットボディ(5)の位置を検査するステップと、
前記アクチュエータ(15)によって、前記ロックエレメントをロック解除するステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、爆発抑制のために迅速に作動する消火システム用の作動装置であって、作動装置が摺動ピンを有しており、消火システムの作動が、遮断位置から解放位置への摺動ピンの運動によって引き起こされ、摺動ピンが、遮断位置において係止部によりラチェットボディのラチェット側面に対して押圧され、このラチェット側面によって遮断位置に保持されている、作動装置に関する。
【0002】
さらに本発明は、消火剤容器を備えた、爆発抑制のための消火システムであって、消火剤容器が閉鎖機構を介して圧力密に閉鎖可能であり、閉鎖機構が少なくとも1つのロックエレメントによって閉鎖位置においてロック可能である、消火システムに関する。
【0003】
別の態様では、本発明は、消火システムを用いてテスト作動を実施するための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
爆発抑制のために、迅速に作動する消火システムが使用される。特に重曹粉末および窒素を含む粉末消火器が約60バールのシステム圧で使用される。圧力センサが、開始した爆発を検知するやいなや、消火器の閉鎖システムが開放される。その際に、必要となる短い反応時間に基づいて閉鎖システムは一般に火薬によって跳ね開けられる。作動時には、極めて高いダイナミクスが重要であり、10ms未満の作動時間を達成しなければならない。
【0005】
火薬は、多様な観点から問題となる。特に、費用、取扱い、貯蔵、搬送、交換部品発送、在庫管理、様々な国への輸入、使用期限または点検性が、それぞれ固有の問題領域を形成する。
【0006】
この火薬を機械的な手段に置き換えようとする試みは、多くの技術的な障害を呈する。特に、関連する技術分野、たとえば従来の火災消火システムからの作動システムでは、爆発抑制に必要となる短い作動時間は達成不能である。
【0007】
欧州特許出願公開第1025878号明細書は、爆発抑制のための粉末消火器用の機械的な作動機構を開示している。この作動機構では、遮断ラチェットの開放が、介在する複数のローラボディを備えた回転アクチュエータを介して行われる。これは、システム摩擦を減らすが、これは動作信頼性のある迅速な開放のために重要である。回転アクチュエータは、トルクモータを介して駆動される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
さらに、構造が単純であり、廉価に製造することができ、かつ動作信頼性が高くメンテナンスの手間が少ない、爆発抑制のために迅速に作動する消火システム用の作動装置に対する需要が生じている。本発明の課題は、そのようなシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題および別の課題は、本発明によれば、冒頭で述べた形式の作動装置において、ラチェットボディが、係止部とラチェット側面との係合を解除しかつ摺動ピンを解放するために、ラチェットボディに直接に作用する少なくとも1つの電磁石によって運動可能である、作動装置によって解決される。これは、作動装置の必要となる可動部材の個数を減らす。
【0010】
電磁石のサイズ、幾何学形状および巻線は、高いダイナミクスおよび小さなエネルギ使用のために最適化することができる。その際に、作動のために必要となるエネルギが消火システムに蓄えられなければならず、安全性の理由からコンデンサ内で特定のエネルギ量を上回ってはならないことを考慮しなければならない。電磁石がラチェットボディに直接に作用することにより、システム摩擦を最小限にすることができる。
【0011】
有利な実施形態では、ラチェットボディが一体的な、つまりワンピースのボディとして形成されていてよく、これにより可動部材の個数が最小限にされる。
【0012】
有利な形式では、ラチェットボディには、戻しばねによって係止部とラチェット側面とが係合する方向に予荷重が加えられていてよい。戻しばねは、テスト作動後の戻しのためだけではなく、振動および衝撃に対する安全性のために役立ち、したがって、起こり得る最高の加速時にも自動的な作動に対する十分な安全性が生じるように、寸法設計される。
【0013】
本発明の有利な実施形態では、ラチェットボディと電磁石との間の空隙が、楔状に先細りする横断面を有していてよい。これは、ラチェットボディへの電磁石のより高い力作用を可能にする一方で、同時に、ラチェットによる係止部の解放のために必要となる運動を可能にする。
【0014】
本発明の別の有利な実施形態では、ラチェットボディが、回転点を中心として旋回可能に支承されていてよい。回転点およびラチェット側面に対する間隔の最適化された配置により、高いダイナミクスで信頼性のよい作動を可能にすることができる。ラチェットボディの配置および形状ならびにラチェット側面の角度の適合により、作動特性をさらに最適化することができ、摺動ピンに作用する力から独立させることができる。
【0015】
有利な実施形態では、回転点が、係止部と摺動ピンの結合ヘッドとの間の領域において、摺動ピンの隣に配置されており、回転点が、好適には、ピン軸線から最大で15mmの間隔で特に鉛直方向に離間している。これにより、作動のために必要となる力と、構造サイズとが最小化される。回転点は、旋回支承部として形成されていてよい。
【0016】
回転点は、別の有利な実施形態では、摺動ピンの仮想の延長部において、解放方向で係止部の背後に配置されており、回転点が、好適にはピン軸線から最大で15mmの間隔で特に鉛直方向で離間している。
【0017】
回転点は、たとえば、ラチェットボディの、ケーシングの内側エッジで支承された外側エッジにより形成されていてよい。これは、一方ではシステム摩擦を減らし、他方では機構の複雑性および故障しやすさが最小化される。
【0018】
有利な形式では、回転点は、電磁石に対して10mm~50mmの間隔で位置決めされていてよい。
【0019】
別の有利な実施形態では、ラチェットボディの位置を監視するためのラチェットセンサが設けられていてよい。これは、作動装置の遮断状態を遠隔から監視することを可能にする。
【0020】
本発明は、さらに冒頭で述べた形式の消火システムを含む。消火システムは、本発明に係る作動装置を有しており、作動装置は、消火システムのロックエレメントに作用する。
【0021】
有利な形式では、ロックエレメントは、電子機械的なアクチュエータを用いて、閉鎖機構をロックする位置においてブロック可能である。ロックエレメントのブロックは、消火システムの作動が安全性の理由から阻止されなければならない場合に、特に保守目的で必要である。電子機械的なアクチュエータにより、直接に中央制御システムを介してロックを行うことができる。ロック信号は、バスケーブルを介して該当する消火器に送信することができ、ロックは電子機械的なアクチュエータにより行われる。
【0022】
有利な構成では、アクチュエータの位置を監視するためのアクチュエータセンサが設けられていてよい。これにより、ロック位置への到達を遠隔から監視することができる。ロック位置への到達後にようやく、対応する信号が制御システムに送信される。特に、たとえば高いサイロのような危険にさらされた装置部分では、このような形式で監視可能な遠隔ロックが大きな付加利益となる。
【0023】
有利な形式では、本発明によれば少なくともアクチュエータセンサ、ラチェットセンサ、アクチュエータおよび電磁石が制御システムに接続されていてよい。これは、全自動または部分的に自動のテスト作動を中央で制御して実施することを可能にし、これは、装置の保守および検査のための手間を最小化する。
【0024】
本発明によれば、消火システムによるテスト作動の実施は、以下の方法ステップを含む方法によって行うことができる。すなわち、この方法は、アクチュエータによって、閉鎖機構をロックする位置においてロックエレメントをブロックするステップと、アクチュエータセンサによりブロックを検査するステップと、電磁石によるラチェットボディの解除によって、摺動ピンを解放するステップと、ラチェットセンサによって、行われたテスト作動を検査するステップと、ラチェットボディを戻すステップと、ラチェットボディの位置を検査するステップと、アクチュエータによって、ロックエレメントをロック解除するステップと、を含んでいる。これらのステップは、制御システムの下で全自動で実施することができ、消火システムへの手動の介入は不要である。
【0025】
本発明を以下に、本発明の有利な構成を概略的かつ制限することなしに例示的に示す
図1~
図3を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明に係る消火システムを示す断面図である。
【
図2】第1の実施形態による本発明に係る作動装置を示す断面図である。
【
図3】第2の実施形態による本発明の作動装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明に係る消火システム11を横断面で示している。公知の形式で、消火剤容器12が、フラップとして形成された閉鎖機構13により閉鎖されている。消火剤容器12は、圧力を加えられて消火剤を充填されている。消火剤として、たとえば重曹粉末を含む粉末を使用することができ、消火剤容器は窒素により約60バールのシステム圧力にされる。閉鎖機構13は、レバー状に形成されたロックエレメント14によりロックされる。ロックエレメント14は、ロック面19で閉鎖機構13の押圧面20を押圧している。
【0028】
ロック面19と押圧面20との間の接触平面、閉鎖機構13の旋回軸受21の回転中心およびロックエレメント14のレバー軸受22の回転中心の寸法および相対配置、ならびに閉鎖機構13およびロックエレメント14の寸法は、一方では閉鎖機構13による消火剤容器12の確実かつ圧力密なロックを確保し、他方では消火システム11の作動時にロックエレメント13の十分に迅速なロック解除および閉鎖機構13の開放を保証するために、最適化することができる。
【0029】
ロックは、ロックエレメント14の、レバー軸受22から離間した操作端部23を解放方向24に運動させることにより、解除される。このために、ロックエレメント14は、操作端部23において、摺動ピン2の結合ヘッド8によって作動装置1に結合されている。作動装置1は、以下で詳細に説明する。場合によっては、ロックエレメント14の操作端部は、(結合ヘッド8なしに)直接に摺動ピン2に作用することもできる。閉鎖機構13のロック解除を引き起こすために必要となる操作端部23の運動が短ければ短いほど、消火システム11の作動をより迅速に行うことができる。他方では、運動は任意に最小にすることはできない。なぜならば、消火剤容器12の確実な閉鎖を保証しなければならないからである。
【0030】
付加的な緊締エレメントが不要であるので、好適には、消火剤容器12内に占めるシステム圧のみに基づいて、操作端部23に解放方向24へと予荷重が加えられるように、閉鎖機構13およびロックエレメント14の寸法および配置を選択することができる。システム圧は、閉鎖機構13に作用し、閉鎖機構13は、同様に解放方向24への予荷重を引き起こす力を、押圧面20を介してロックエレメント14のロック面19に作用させる。
【0031】
予荷重により、操作端部23は、解放方向24で圧力を作動装置1の摺動ピン2に作用させる。摺動ピン2は、結合ヘッド8から解放方向24で離間した位置に係止部3を有している。係止部3は、ラチェットボディ5のラチェット側面4により、予荷重に抗して保持される。消火システムを作動させるために、ラチェットボディ5の運動により、係止部3が解放されるので、摺動ピン2が解放方向24で解放位置へと運動する。つまり、結合ヘッド8に、または直接に摺動ピン2に作用する予荷重は、作動装置1内のシステム摩擦を克服し、摺動ピン2を高いダイナミクスで(つまり、爆発抑制の望ましい目的にとって十分に迅速に)解放位置へと運動させるために、十分な大きさでなければならない。
【0032】
図2を参照しながら、作動装置1の本発明による例示的な実施形態を詳細に説明する。ラチェットボディ5は、実質的にフックのような形状を有していて、回転点7において旋回可能に支承されている。回転点7は、結合ヘッド8と係止部3との間の領域において、摺動ピン2の上方で隣に配置されている。ラチェットボディ5の形状、回転点7および係止部3(またはラチェット側面4)の位置は、係止部3とラチェット側面4との間で小さな摩擦力しか作用しないように、互いに適合されている。これは特に、回転点7がピン軸線の近傍に、好適にはピン軸線から最大で15mmの距離に配置されることによって、達成することができる。
【0033】
回転点7(またはラチェットボディ5)は、好適には鉛直方向で摺動ピン2の上方または下方に、あるいは側方に、または摺動ピン2に対して別の角度で配置されていてよい。しかし、鉛直方向で上方または下方の配置が、ラチェットボディ5に作用する重力の考慮を容易にする。
【0034】
ラチェットボディ5は、付加的に、戻しばね9によって遮断位置に保持される。戻しばね9は、テスト作動後の戻しのためだけではなく、振動および衝撃に対する安全性のために役立ち、したがって、起こりうる最高の加速時にも自動的な作動に対する十分な安全性が生じるように、寸法設計される。
【0035】
ラチェットボディ5の、摺動ピン2とは反対の側に、ラチェットボディ5に対して小さな間隔で電磁石6が配置されている。ラチェットボディは、アーマチュア材料(つまり、電磁石6によって励磁される電磁場で引付け力を作用させる材料)を有しているので、作動した電磁石6によって戻しばね9の戻し力に抗してラチェットボディを引っ張り、電磁石6の方向に運動させることができる。有利な形式では、ラチェットボディ5全体がアーマチュア材料から成っていてよい。ラチェットボディ5と電磁石6との間の間隔は、できるだけ薄い空隙を形成し、この空隙は、電磁石6が作動した場合に、ラチェット側面4を係止部3との係合から解除するために、まさに十分な大きさである。
【0036】
回転点7を中心としたラチェットボディ5の旋回運動によって、回転点7の近傍におけるラチェットボディ5と電磁石6との間の距離を、ラチェット側面4の、係止部3を解放するためにラチェットボディ5の最大の変位が必要とされる範囲における距離よりも、小さく形成することができる。したがって、空隙は、回転点7に向かって先細りする楔状の延在形状を有していてよい。これにより、空隙は、回転点7の近傍にある電磁石6の巻線の領域において、極めて狭く、これは、ラチェットボディ5への電磁石6の作用を最大化する。
【0037】
ラチェットボディ5の位置は、ラチェットセンサ10を介して電子的に監視することができる。
【0038】
高いダイナミクスの磁石として形成された電磁石6を、回転点7の有利な選択および寸法と組み合わせることにより、高いダイナミクスで信頼性のよい作動を可能にすることができる。ラチェットボディ5の寸法および特にラチェット側面4の角度の適合により、作動特性をさらに最適化することができ、摺動ピン2に作用する予荷重から十分に独立させることができる。
【0039】
図3には、本発明による作動装置1の別の有利な実施形態が図示されている。
図3に示した実施形態のラチェットボディ5は、実質的に単純な「プレート」として形成されており、ラチェット側面4は、ラチェットボディ5の1つのエッジに配置されている。ラチェットボディ5の、ラチェット側面4とは解放方向で反対側に位置するエッジは、回転点7を形成する。この回転点7は、ラチェットボディ5の、ケーシング26の内側エッジ25内で支承された外側エッジ27により形成されている。実質的に点状の支承により、摩擦は最小限にされ、支承のための付加的な構成部材も不要である。特に、摺動ピン2からラチェットボディ5に作用する力を、回転点7において著しい摩擦モーメントなしに受けられ、これにより作動力には、加えられている予荷重からほとんど影響が与えられない。
【0040】
この実施形態の別の利点は、ラチェットボディ5と電磁石6との間の空隙が、
図2に示された実施形態に対して、さらに最小化されていることにある。空隙は、片側では極めて小さいので、電磁石を用いて高い力およびダイナミクスを達成することができる。
【0041】
ラチェットボディ5は、戻しばね9を用いて電磁石6から離され、ラチェット側面4と係止部3とが係合するように押圧される。戻しばね9は、ラチェットボディ5内に設けられた孔28内に挿入されていてよく、これは、単純な組立てを可能にし、必要となる組付けエレメントの個数を最小限にする。
【0042】
摺動ピン2の係止部3は、摺動ピン2の周囲に環状に延びる面として形成されていてよく、これにより摺動ピン2を、簡単に製造することができ、任意の回転された半径方向位置で組み込むことができる回転体として形成することができる。これは、組立てを簡略化する。ラチェット側面4と係止部3との間の最適な当付け(Anlagerung)を保証するために、ラチェットボディ5にたとえば溝状の切欠き29が設けられていてよく、摺動ピン2が作動後に解放方向24へと運動した場合に、この切欠き29内に摺動ピン2が嵌合するように収容される。
【0043】
したがって、ラチェットボディ5は、単純な、実質的にブロックまたは直方体状のボディとして形成されていてよく、このボディ内には、専ら孔28および切欠き29が加工形成されている。場合によっては、個別の縁部面、たとえば外側エッジ27に接続する短い背面が、直方体形状から逸脱して斜めに形成されていてよい。
【0044】
この実施形態でも、ラチェットボディ5の位置は、ラチェットセンサ10を介して電子的に監視することができる。
【0045】
ピン戻しばね18が、摺動ピン2を解放方向24とは反対に押圧することができるので、たとえば充填前に消火剤容器12内でまだ圧力が形成されていない場合でさえも、ロックエレメント14は、閉鎖機構13をロックする位置へと押圧される。
【0046】
再び
図1を参照して、以下に本発明に係る消火システム11の別の安全性特徴を説明する。
【0047】
ロックエレメント14に隣接して、電子機械的に操作可能なアクチュエータ15が配置されている。たとえば、このアクチュエータは、実質的に運動可能なピン(またはカム)として形成されていてよく、ピンは、ロックエレメント14に対して走出した位置において、閉鎖機構13をロックする位置でロックエレメント14をブロックしかつ固定し、かつ戻された位置において、ロックエレメント14がロック解除運動を行うことを可能にし、したがってロックエレメント14を「ロック解除」する。アクチュエータは、電子機械的に、伝動装置を用いて、または伝動装置なしで駆動されていてよい。アクチュエータセンサ16を介して、アクチュエータ15の位置は遠隔からも監視することができる。
【0048】
アクチュエータ15によるロックエレメント14のブロックは、搬送中に、または保護すべき容器において保守作業を実施すべき場合に利用することができる。
【0049】
アクチュエータ15の作動ユニット(図示せず)も、アクチュエータセンサ16、ラチェットセンサ10、電磁石6ならびに場合によっては別のセンサおよび作動ユニットも、中央制御システム17に接続されていてよい。これにより、ブロックまたは固定を中央で直接に制御システム17を介して行うことができる。1つの装置内の複数の消火システム11が、同一の制御システム17に接続されていてよい。好適には、バス接続部を介して、制御信号を該当する消火器に送信し、かつセンサ信号を受信することができる。
【0050】
したがって、アクチュエータ15によるロックエレメント14のブロックは、制御システム17により作動させることができ、ブロック位置への到達は、アクチュエータセンサにより監視される。
【0051】
ブロックされた位置において、作動装置の規定通りの機能をテスト作動により検査することが可能である。センサを介して、機能状態の他にダイナミクスも検出し、保存された値と比較することができる。作動のこの検査性は、火薬が装填されたシステムに対する別の大きな差異を成し、リスク評価時の著しく改善されたSIL段階を可能にする。
【0052】
文書化を伴う規定された間隔での自動的なテスト手続きを装置において実施することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 作動装置
2 摺動ピン
3 係止部
4 ラチェット側面
5 ラチェットボディ
6 電磁石
7 回転点
8 結合ヘッド
9 戻しばね
10 ラチェットセンサ
11 消火システム
12 消火剤容器
13 閉鎖機構
14 ロックエレメント
15 アクチュエータ
16 アクチュエータセンサ
17 制御システム
18 ピン戻しばね
19 ロック面
20 押圧面
21 旋回軸受
22 レバー軸受
23 操作端部
24 解放方向
25 内側エッジ
26 ケーシング
27 外側エッジ
28 孔
29 切欠き
30 空隙