(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】エネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルション及び感熱記録材料
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20221031BHJP
B41M 5/44 20060101ALI20221031BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
C08F290/06
B41M5/44 220
C09D5/02
(21)【出願番号】P 2020538010
(86)(22)【出願日】2018-10-17
(86)【国際出願番号】 JP2018038607
(87)【国際公開番号】W WO2020039601
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2018156227
(32)【優先日】2018-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮永 恭平
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-191529(JP,A)
【文献】特開2008-303258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/00-290/14
C08F 299/00-299/08
B41M 5/44
C09D 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内にエチレン性不飽和基を有する樹脂(A)と、式(1)または式(2)で表される反応性界面活性剤(B)と、平均粒子径0.01~0.5μmの顔料成分(C)とを含有する、エネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルション
であって、
前記反応性界面活性剤(B)として、式(1)で表される化合物またはTが水素原子である式(2)で表される化合物と、Tがアニオン性親水基である式(2)で表される化合物とを含み、
前記顔料成分(C)として、炭酸カルシウムを含む、
エネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルション。
【化1】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Aは炭素数2~4のアルキレン基を表し、mは2~80の範囲にある平均付加モル数を表す)
【化2】
(式中、n1は平均値で1~3の置換基数を表し、n2は10~100の範囲にある平均付加モル数を表し、Tは水素原子
を表すか、または-(CH
2)
a-SO
3M、-(CH
2)
b-COOM、-PO
3M
2、-CO-CH
2-CH-(SO
3M)-COOMから選ばれるアニオン性親水基を表す。これらの式中、a及びbはそれぞれ0~4の数を表し、Mはそれぞれ、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アンモニウム残基、又はアルカノールアミン残基を表す。)
【請求項2】
前記
Tがアニオン性親水基である式(2)で表される化合物が、T
が-SO
3NH
4である式(2)で表される化合物である、請求項1に記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルション。
【請求項3】
前記反応性界面活性剤(B)として、式(1)で表される化合物と、Tが-SO
3NH
4である式(2)で表される化合物とを含む、請求項1に記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルション。
【請求項4】
前記反応性界面活性剤(B)として、Tが水素原子である式(2)で表される化合物と、Tが-SO
3NH
4である式(2)で表される化合物とを含む、請求項1に記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルション。
【請求項5】
前記顔料成分(C)が無機顔料であり、その含有量がエネルギー線硬化型樹脂組成物の全固形分に対し0.5~50質量%である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルション。
【請求項6】
前記顔料成分(C)が、炭酸カルシウムである、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルション。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の水中油滴型エマルションから成るオーバーコート剤。
【請求項8】
支持体上に感熱記録層及びオーバーコート層を有する感熱記録材料において、オーバーコート層が請求項7に記載のオーバーコート剤の硬化膜層から成ることを特徴とする感熱記録材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルション、及び該エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化膜層をオーバーコート層として有する感熱記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
感熱記録材料は、一般にロイコ染料とフェノール性化合物等の顕色剤とをそれぞれ別個に微粒子状に分散化した後、両者を混合し、これに結合剤、増感剤、充填剤、滑剤等の添加剤を添加して得られた塗工液を、紙、フィルム、合成紙等に塗布したもので、加熱によりロイコ染料と顕色剤の一方又は両者が溶融、接触して起こる化学反応により発色記録を行うものである。このような感熱記録材料の発色のためには、サーマルヘッドを内蔵したサーマルプリンター等が用いられる。この感熱記録法は他の記録法に比較して、(1)記録時に騒音が出ない、(2)現像、定着の必要がない、(3)メンテナンスフリーである、(4)機械が比較的安価である等の特徴により、ファクシミリ分野、コンピューターのアウトプット、電卓などのプリンター分野、医療計測用のレコーダー分野、自動券売機分野、感熱記録型ラベル分野等に広く用いられている。
【0003】
近年、感熱記録材料の使用用途が拡大すると共に、記録装置の多様化、高性能化が進められ、感熱記録材料に対する要求も、より高度で多様なものとなってきている。基本的特性としては、例えば、筆記適性や印刷適性、ヘッドカス発生の防止等が挙げられる。また、熱、水、湿度、光などの自然環境や、手で扱う際の皮脂、油、アルコールなどの溶剤、及び塩ビフィルムなどのラップフィルムに含まれる可塑剤に対する発色記録部(印字、画像、パターン等を示す)の保存安定性が求められる。さらに、支持体としてポリエチレンテレフタレートフィルム等の合成樹脂フィルムを用いた透過型の感熱記録媒体の場合には、高い透明性や表面光沢が求められる。
【0004】
前記問題を改善する観点から、感熱記録層上には一般に保護層(オーバーコート層)が設けられる。例えば、特許文献1では、疎水性高分子化合物エマルション等を用いて形成された保護層が開示されている。また、特許文献2では、感熱記録層上に水溶性高分子化合物または疎水性高分子化合物のエマルションを用いて中間層が形成され、その上に疎水性高分子化合物を樹脂成分とする油性塗料により表面層が形成された感熱記録材料が開示されている。しかし、これらの感熱記録材料は発色記録部の保存安定性は改善されているものの、表面光沢についてはかなり低いものであった。
【0005】
他方、特許文献3~8では、感熱記録層上に、紫外線硬化性化合物に紫外線を照射して硬化された樹脂を含有するオーバーコート層を設けた種々の感熱記録材料が提案されている。また、特許文献9には、高速記録特性に優れ、かつ高光沢性で感熱記録自体及び発色画像の保存性に優れた感熱記録体を得ることを目的とし、エチレン性不飽和基を有する親水性樹脂を乳化剤として含有し、フィラーも含有する、感熱記録材料のオーバーコート層用に適したエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルションが開示されている。しかしながら、特許文献9において使用されている乳化剤は、ノニルフェノール構造を有している点で問題がある。というのも、ノニルフェノールはエストロゲン活性を有する環境ホルモン物質として、内分泌系器官に対する毒性を有することが報告されている(非特許文献1~2、欧州指令2003/53/EC及び76/769/EECの補遺INo.46)。日本においても、2001年8月に、内分泌攪乱化学物質問題検討会が、ノニルフェノールの内分泌攪乱作用を確認し、癌、奇形等を生ずる環境問題の原因物質であると指摘している。ノニルフェノールはまた、眼、皮膚、呼吸器系に対し強い刺激性があり(非特許文献3~4)、皮膚刺激性試験で暴露時間を延長すると、皮膚に対して腐食性を示すことも分かっている。このため、皮膚に直接接触する感熱記録材料のオーバーコート層では、ノニルフェノール構造を含まない乳化剤を使用することが強く要望されていた。
【0006】
特許文献10には、エチレン性不飽和基を有しかつノニルフェノール構造を有さない親水性樹脂を乳化剤として含む、感熱記録材料のオーバーコート層用に適したエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルションが開示されている。しかし、同文献において光沢度の高い感熱記録材料の例は、スティッキング評価および/またはヘッドカス付着評価において記録不良やヘッドカス付着を生じており、サーマルヘッド適性に必ずしも満足すべき結果が得られていない。
このように、これまで提案されてきた感熱記録材料は、高透明性、高光沢性、発色記録部の保存安定性、及びサーマルヘッド適性の要求をすべて満足できるものはなく、新たな改善が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭56-146794号公報
【文献】特開昭58-199189号公報
【文献】特開平2-192988号公報
【文献】特開平6-344664号公報
【文献】特開平7-40658号公報
【文献】特開平8-142508号公報
【文献】特開平9-156222号公報
【文献】特開平9-220855号公報
【文献】特開2000-160060号公報
【文献】特開2000-327952号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】Laws,S.C. et al.,Estrogenic activity of octylphenol,nonylphenol,bisphenol A and methoxychlor in rats.,Toxicol Sci.,54(1), 154-167(2000).
【文献】Lee,P.C.,Disruption of male reproductive tract development by administration of the xenoestrogen,nonylphenol, to male newborn rats.,Endocrine,9(1),105-111(1998).
【文献】U.S.Coast Guard,Department of Transportation.CHRIS Hazardous Chemical Data.U.S.Coast Guard.Washington D.C.(1985).
【文献】Masayuki Ikeda et al.,Two cases of leucoderma,presumably due to nonyl- or octylphenol in synthetic detergents. Ind. Health 8(4),192-196(1970).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前述した従来技術の問題を解決すること、より具体的には、高透明性、高光沢性、発色記録部の保存安定性、及びサーマルヘッド適性に優れた感熱記録材料を形成するのに適し、人体及び環境に悪影響を及ぼすノニルフェノール構造を有する乳化剤を使用せずに調製されるエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルション及びそれを塗工して得られる感熱記録材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成させたものである。
【0011】
即ち本発明は、
[1]分子内にエチレン性不飽和基を有する樹脂(A)と、式(1)または式(2)で表される反応性界面活性剤(B)と、平均粒子径5μm以下の顔料成分(C)とを含有する、エネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルション
【0012】
【化1】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Aは炭素数2~4のアルキレン基を表し、mは2~80の範囲にある平均付加モル数を表す)
【0013】
【化2】
(式中、n1は平均値で1~3の置換基数を表し、n2は0~100の範囲にある平均付加モル数を表し、Tは水素原子または-(CH
2)
a-SO
3M、-(CH
2)
b-COOM、-PO
3M
2、及び-CO-CH
2-CH-(SO
3M)-COOMから選ばれるアニオン性親水基を表す。これらの式中、a及びbはそれぞれ0~4の数を表し、Mはそれぞれ、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アンモニウム残基、又はアルカノールアミン残基を表す。)、好ましくは、本発明の水中油滴型エマルションはノニルフェノール構造を有する化合物を含まない、
[2]前記反応性界面活性剤(B)の少なくとも1種が、式(2)においてTが水素原子または-SO
3NH
4で表される化合物である[1]に記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルション、
[3]前記反応性界面活性剤(B)として、式(1)で表される化合物と、Tが-SO
3NH
4である式(2)で表される化合物とを含む、[1]に記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルション、
[4]前記反応性界面活性剤(B)として、Tが水素原子である式(2)で表される化合物と、Tが-SO
3NH
4である式(2)で表される化合物とを含む、[1]に記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルション、
[5]前記顔料成分(C)が無機顔料であり、その含有量がエネルギー線硬化型樹脂組成物の全固形分に対し0.5~50質量%である[1]乃至[4]のいずれか一つに記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルション、
[6]前記顔料成分(C)が、炭酸カルシウムである[1]乃至[5]のいずれか一つに記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルション、
[7][1]乃至[6]のいずれか一つに記載の水中油滴型エマルションから成るオーバーコート剤、
[8]支持体上に感熱記録層及びオーバーコート層を有する感熱記録材料において、オーバーコート層が[7]に記載のオーバーコート剤の硬化膜層から成ることを特徴とする感熱記録材料、
に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、分子内にエチレン性不飽和基を有する樹脂(A)と、式(1)または式(2)で表される反応性界面活性剤(B)と、平均粒子径5μm以下の顔料成分(C)とを組み合わせることで、高透明性、高光沢性、発色記録部の保存安定性、及びサーマルヘッド適性に優れた感熱記録材料を形成するのに適し、人体及び環境に悪影響を及ぼすノニルフェノール構造を有する乳化剤を使用せずに調製されるエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルション及びそれを塗工して得られる感熱記録材料を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明を実施形態に基づき詳細に説明する。本発明は、以下で示す実施形態によって限定されるものでないことは、留意すべきである。
上述の通り、本発明は、分子内にエチレン性不飽和基を有する樹脂(A)と、式(1)または式(2)で表される反応性界面活性剤(B)と、平均粒子径5μm以下の顔料成分(C)とを含有するエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルション、これを用いたオーバーコート剤、及びそれを支持体に塗工して製造される感熱記録材料に関する。
【0016】
本発明の一の実施形態では、分子内にエチレン性不飽和基を有する樹脂(A)としては、常温で液状のものが好ましく、例えばスチレン、酢酸ビニル、N-ビニルピロリドンなどのビニルモノマー又はアクリレート類が挙げられるが、アクリレート類がより好ましい。その使用量は、成膜性や塗膜強度や光沢等の膜性能を考慮すると、エネルギー線硬化型樹脂組成物の全質量に対し、好ましくは2~80質量%、より好ましくは10~60質量%の範囲である。
【0017】
本発明の一の実施形態では、前記アクリレート類としては、(メタ)アクリロイル基を1つ有する単官能モノマー、(メタ)アクリロイル基を2つ有する2官能モノマー、(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマー、(メタ)アクリロイル基を3つまたは4つ以上有する多官能モノマーに大別されるが、高い被膜形成能や被膜硬度、高い耐熱性が必要なことから、3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーまたはオリゴマーを主成分とすることが望ましい。
【0018】
本発明の一の実施形態では、前記(メタ)アクリロイル基が2つ以下の場合には、架橋密度が十分ではないため、所望の耐熱性を得ることができず、主成分として使用することはできないが、被膜に柔軟性を与え、カール及びひび割れを防止する目的で、3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーまたはオリゴマー100質量部に対し、0~100質量部含有することが好ましく、20~80質量部含有することがより好ましく、30~70質量部含有することが特に好ましい。また、(メタ)アクリロイル基が多くなると架橋密度が上がり、耐熱性はさらに良くなるが、膜の柔軟性を損ない、カール及びひび割れを起こすため、3つ~8つが好ましく、3つ~6つがより好ましく、これらが50質量%以上の主成分として含まれているものが特に好ましい。これらの材料は単独で用いるよりは、耐熱性及び柔軟性、硬化性を踏まえて2種以上の樹脂を併用することが好ましい。
【0019】
本発明の一の実施形態では、前記単官能モノマーとしては、特に限定されるものでは無いが、N,N-ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
【0020】
本発明の一の実施形態では、前記2官能モノマーとしては、特に限定されるものでは無いが、エチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,14-テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,16-ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,20-エイコサンジオールジ(メタ)アクリレート、イソペンチルジオールジ(メタ)アクリレート、3-エチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
本発明の一の実施形態では、前記オリゴマーとしては、特に限定されるものでは無いが、エポキシ(メタ)アクリレート、飽和ポリエステル/スチレン、ポリエチレン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、シリコン(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、ポリエン/チオール、ポリスチリルエチル(メタ)アクリレート、ポリアミド(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
本発明の一の実施形態では、前記多官能モノマーとしては、特に限定されるものでは無いが、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールオクタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ポリメチロールプロパンポリエトキシポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアネート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリプロポキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性トリス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアネート等が挙げられる。
【0023】
本発明に用いられる式(1)または式(2)で表される反応性界面活性剤(B)の反応性とは、反応性二重結合を含有し、モノマーおよび反応性界面活性剤同士と重合反応することを意味する。すなわち反応性界面活性剤(B)は、分子内にエチレン性不飽和基を有する樹脂(A)の乳化剤として働くと共に、エネルギー線で硬化させる際に重合物の一部に共有結合して取り込まれる。そのため、遊離界面活性剤がほとんどなく、得られる膜の耐水性やサーマルヘッド適性が向上する。
【0024】
本発明に用いられる反応性界面活性剤(B)は、一般に、(重合性の)エチレン性不飽和二重結合および界面活性を示す基を有する化合物、特に、エチレン性不飽和二重結合と界面活性の性質を示す基がベンゼン環に直接結合している化合物であり、ノニルフェノール構造を含まない。
反応性界面活性剤(B)は、界面活性剤における置換可能な基または原子(例えば、水素原子)を、エチレン性不飽和二重結合を有する基(例えば、ビニル基、アリル基)によって置換した化合物であることが好ましい。界面活性剤とは、界面活性の性質を示す化合物(好ましくは、通常の界面活性剤)、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤を意味する。反応性界面活性剤(B)の分子量(数平均分子量)は、100~15000、好ましくは150~5000であってもよい。これらの中で、本発明で使用する反応性界面活性剤(B)としては、下記式(1)または式(2)で表されるものが好ましい。
【0025】
【化3】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Aは炭素数2~4のアルキレン基を表し、mは2~80の範囲にある平均付加モル数を表す)
【0026】
【化4】
(式中、n1は平均値で1~3の置換基数を表し、n2は0~100の範囲にある平均付加モル数を表し、Tは、水素原子または-(CH
2)
a-SO
3M、-(CH
2)
b-COOM、及び-CO-CH
2-CH-(SO
3M)-COOMから選ばれるアニオン性親水基を表す。これらの式中、a及びbはそれぞれ0~4の数を表し、Mはそれぞれ、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アンモニウム残基、又はアルカノールアミン残基を表す)
【0027】
一般式(1)におけるRは水素原子またはメチル基であり、メチル基であることが好ましい。
【0028】
一般式(1)における(AO)m鎖部分は、炭素数2~4のアルキレンオキサイドとして、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドの1種または2種以上の付加重合体であり、重合形態は特に制限されず、1種類のアルキレンオキサイドの単独重合体、2種類以上のアルキレンオキサイドのランダム共重合体、またはそれらランダム付加体とブロック共重合体の組み合わせのいずれであってもよい。
【0029】
上記アルキレンオキサイドとしてはオキシエチレン基が特に好ましい。2種類以上のアルキレンオキサイドを選択する場合には、その1種類はエチレンオキサイドを選択することが好ましく、(AO)m鎖部分は、好ましくはオキシエチレン基を50~100モル%、より好ましくは60~100モル%含有する(ポリ)オキシアルキレン鎖である。
【0030】
上記一般式(1)で表される反応性界面活性剤(B)は、従来公知の方法で得ることができ、特に限定されるものではない。また、市販品より容易に入手することができ、例えば、花王株式会社製のラテムルPD-420、PD-430、PD-450等を挙げることができる。
【0031】
一般式(2)におけるn1は平均値で1~3の範囲にあることが好ましく、1~2の範囲にあることがより好ましい。
【0032】
一般式(2)における(C2H4O)n2鎖部分は、エチレンオキサイドの付加重合体であり、重合度n2は、エチレンオキサイドの付加モル数を表し、平均値で0~100の範囲の数であり、平均付加モル数の好ましい範囲は、通常は、下限は0.1以上であり、1以上が好ましく、3以上がより好ましく、10以上が特に好ましい。また、上限は90以下が好ましく、80以下がより好ましく、50以下が特に好ましい。より詳細には、一般式(2)におけるTが水素原子の場合には、重合度n2は30以上50以下の範囲の数であることが好ましい。また、Tがイオン性親水性基の場合には、重合度n2は好ましくは0以上50以下の範囲の数であり、より好ましくは10以上30以下の範囲の数である。
【0033】
一般式(2)で表される界面活性剤においては、(C2H4O)n2鎖中のエチレンオキサイド基の含有量及び重合度n2は、界面活性剤の親水性または疎水性の程度を可変とするが、使用する分子内にエチレン性不飽和基を有する樹脂(A)の種類に応じて(C2H4O)n2鎖部分の組成を適切に設計するのが好ましい。
【0034】
一般式(2)におけるTは、水素原子または-(CH2)a-SO3M、-(CH2)b-COOM、-CO-CH2-CH-(SO3M)-COOMから選ばれるアニオン性親水基を表し、これらの式中、a及びbはそれぞれ0~4の数を表す。Mは水素原子、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属原子、またはアンモニウム、アルカノールアミン残基を表す。アンモニウムとしては、例えば、アンモニアのアンモニウム、又はモノメチルアミン、ジプロピルアミン等のアルキルアミンのアンモニウム等が挙げられ、アルカノールアミン残基としては、例えば、モノエタノールアミン残基、ジエタノールアミン残基、トリエタノールアミン残基等が挙げられる。これらのアニオン性親水基の中でも、-SO3Mで表される基が好ましい。これらは1種単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0035】
上記一般式(2)で表される反応性界面活性剤(B)は、従来公知の方法で得ることができ、特に限定されるものではない。また、市販品より容易に入手することができ、例えば、第一工業製薬株式会社製のアクアロンAR-10、AR-20、AR-1025、AR-2020、AN-5065等を挙げることができる。
【0036】
本発明に用いられる前記反応性界面活性剤(B)としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等、特に限定されず用いることができる。前記界面活性剤(B)は、それ単独で用いても乳化は良好に完了し得るが、本発明の所望の効果を損なわない限りにおいては、アニオン性界面活性剤またはカチオン性界面活性剤または/及びノニオン性界面活性剤を併用しても良く、2種類以上の界面活性剤を選択する場合には、その1種類はノニオン性界面活性剤であることが好ましい。
【0037】
一般式(1)および式(2)で表される反応性界面活性剤(B)の総量は、エマルションの安定性や耐水性、耐熱性等の膜物性を考慮すると、エネルギー線硬化型樹脂組成物の全質量に対し、通常2~40質量%、より好ましくは4~20質量%、さらに好ましくは4~15質量%の範囲である。
【0038】
一般式(2)におけるTがイオン性親水性基の場合には、反応性界面活性剤(B)はアニオン性乳化剤の一種であるが、得られる膜の耐水性やサーマルヘッド適性を考慮すると、Tが-SO3Mで表される基が好ましく、Tがスルホン酸アンモニウム塩基(-SO3NH4)であることがより好ましい。
【0039】
本発明では、平均粒子径5μm以下の顔料成分(C)を含有する。その粒子径は、オーバーコート層の膜厚より小さいものが好ましく、より好ましくは平均粒子径として0.01~5μm程度である。また、その使用量は、エマルションの安定性や塗膜の光沢を考慮すると、エネルギー線硬化型樹脂組成物の全質量に対し、好ましくは0.5~50質量%、より好ましくは3~20質量%、さらに好ましくは4~10質量%である。
【0040】
本発明の一の実施形態では、顔料成分(C)として、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、ホワイトカーボン、カオリン、焼成カオリン、リトポン、タルク、クレイ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、珪藻土、酸性白土、ベントナイト、合成珪酸アルミニウム、表面処理された炭酸カルシウムやシリカ等の無機顔料;尿素-ホルマリン樹脂、シリコーン樹脂、スチレン-メタクリル酸共重合樹脂、ポリスチレン樹脂、生澱粉粒子等の有機顔料等が挙げられ、無機顔料が好ましく、微細化しやすさと光沢性の観点から、シリカ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、焼成カオリンがより好ましく、炭酸カルシウムが特に好ましい。これらは単独あるいは2種類以上併用で使用される。
【0041】
本発明の一の実施形態では、リン酸塩を分散剤として用い、予め顔料成分(C)の分散液を調製して使用することができる。前記リン酸塩としては、特に限定されるものではないが、その具体例としては、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第三リン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、酸性ヘキサメタリン酸ナトリウム、またはこれらのカリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等が挙げられ、その含有割合は、顔料成分(C)に対して好ましくは0.01~20質量%、より好ましくは0.1~15質量%の範囲である。
【0042】
本発明の一の実施形態では、エネルギー線硬化型樹脂組成物中にワックス(D)を含有させることができる。ワックス(D)としては、例えばモンタンワックス、パラフィンワックス、カルナバワックス、ライスワックス等の各種天然ワックス類、ポリエチレンワックス等の各種合成ワックス類等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。その含有割合は、エネルギー線硬化型樹脂組成物の全質量に対し、それぞれ好ましくは0~10質量%、より好ましくは0.01~5質量%、さらに好ましくは0.05~1質量%の範囲である。
【0043】
本発明の一の実施形態では、感熱記録材料の滑性をより向上させる目的で、本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物中に、四フッ化樹脂、ステアリン酸変性シリコーンオイル、アスパラギン酸エステル誘導体や、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸の金属塩、ステアリン酸アマイド、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンソルビットステアリン酸エステル等の高級脂肪酸エステル、流動パラフィン、植物油、動物油、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有させることができる。これらの中でも、滑性機能、及び離型効果が高く、スティッキング防止品質、カス付着防止効果が高い点で、高級脂肪酸の金属塩が好ましく、ステアリン酸亜鉛が特に好ましい。また、滑性に加えて塗液のレベリング性を向上させる目的で、アクリル共重合体、シリコーンオイル、アルキル基、アミノ基、エポキシ基、フッ素基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、メルカプト基、アクリル基、メタクリル基で変性したシリコーンオイル、フッ素系界面活性剤等を添加することができる。また、乳化力を向上させる目的で、乳化・分散剤を少量添加することもできる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。これらの成分の含有割合は、組成物の全質量に対して、それぞれ好ましくは0.01~20質量%、より好ましくは0.05~10質量%の範囲である。
【0044】
本発明で使用するエネルギー線硬化型樹脂組成物には、電子線で硬化させる場合はなくてもよいが、紫外線で硬化させる場合は光重合開始剤を、また必要に応じ、光重合促進剤を含むことが好ましい。
【0045】
本発明の一の実施形態では、光重合開始剤として、α-ヒドロキシケトン系重合開始剤、α-アミノケトン系重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤、オキシム系重合開始剤、スルフォニウム塩系重合開始剤、ヨードニウム塩系重合開始剤、ジアゾニウム塩系重合開始剤、フェロセニウム塩系重合開始剤等が挙げられ、硬化性と黄変、臭気の点で、α-ヒドロキシケトン系重合開始剤が好ましい。
【0046】
本発明の一の実施形態では、光重合促進剤として、N-メチルジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジエチル-p-アミノベンゾニトリル等のアミン系化合物や、トリ-n-ブチルホスフィン等のリン化合物、ヘキサクロロエタン等の塩素化合物、ミヒラーケトン等を、単独あるいは2種以上組み合わせることもできる。
【0047】
これらの光重合開始剤および光重合促進剤の配合割合は、組成物の全質量に対して、それぞれ好ましくは0.1~15質量%、より好ましくは0.5~10質量%である。
【0048】
本発明で使用するエネルギー線硬化型樹脂組成物には、必要に応じて上記以外の種々の添加剤を、種類、使用量を適宜選択して含有することができ、例えばポリマー、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、重合禁止剤、帯電防止剤、蛍光染料、等が挙げられる。
【0049】
本発明のエマルションを製造するには、例えば次のようにすればよい。すなわち、式(1)または式(2)で表される反応性界面活性剤(B)を水に溶解または分散させる。次に必要に応じ光重合開始剤、光重合促進剤、その他の添加剤を添加した分子内にエチレン性不飽和基を有する樹脂(A)の液に、該液を撹拌しながら、式(1)または式(2)で表される反応性界面活性剤(B)の溶解または分散液を徐々に添加し、ホモジナイザー、ホモミキサー、サンドミル等の高速撹拌機またはマイクロフルイダイザ―を用いて乳化・分散させることにより本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルションが得られる。
【0050】
本発明で使用する平均粒子径5μm以下の顔料成分(C)は、予め分子内にエチレン性不飽和基を有する樹脂(A)に添加するか、予め分散剤と共に水中に分散させて水分散液を調製し、分子内にエチレン性不飽和基を有する樹脂(A)に添加するか、または顔料成分(C)の懸濁液をエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルションに添加すればよい。
【0051】
予め分子内にエチレン性不飽和基を有する樹脂(A)に添加する場合、分子内にエチレン性不飽和基を有する樹脂(A)中にボールミル、ロールミル、サンドミル、ディゾルバー等の分散機により分散させ、必要に応じ光重合開始剤、光重合促進剤、その他の添加剤を添加する。顔料成分(C)の分散剤として、ポリカルボン酸系の分散剤やシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、変性シリコーンオイル等のシリコーン系分散剤や有機共重合体系の分散剤などを併用することも可能である。これらの配合割合は、組成物の全質量に対して0.01~10質量%、好ましくは0.05~5質量%使用することができる。こうして得られた顔料成分(C)を含有する分子内にエチレン性不飽和基を有する樹脂(A)と式(1)または式(2)で表される反応性界面活性剤(B)の溶解または分散液とを先に述べた方法で混合、乳化、分散し、本発明の水中油滴型エマルションが得られる。
【0052】
ワックス(D)を使用する場合、予め、分子内にエチレン性不飽和基を有する樹脂(A)に添加するか、またはワックス(D)の懸濁液をエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルションに添加すればよい。
【0053】
このようにして得られたエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルション中の固形分は20~80質量%、より好ましくは30~70質量%である。このエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルションは経時的に安定であり、また塗工に際し必要に応じて水で希釈したエマルションも安定である。
【0054】
このエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルションの硬化膜を形成させる方法としては、特に制限はないが、本発明の一の実施形態によれば、バーコーター塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷などにより、それ自体公知の方法で、紙、合成紙、フィルム上に塗工、乾燥し、次いで紫外線や電子線等のエネルギー線を照射して塗膜を硬化させる。その際、電子線により硬化させる場合、100~500eVのエネルギーを有する電子線加速装置が好ましい。一方、紫外線により硬化させる場合、光源としてキセノンランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、UV-LEDランプ等を有する紫外線照射装置が使用され、これらの中でも、ランプの種類は光重合開始剤の吸収波長に応じた発光特性を有するものが好ましい。照射条件は、ランプの種類、分子内にエチレン性不飽和基を有する樹脂(A)の種類、添加量、基材温度、酸素濃度等によって光量、光源の配置などが変わるが、例えば、高圧水銀灯を用いる場合、80~200W/cmの光量を有したランプにより、搬送速度5~60m/分、1~4回照射して硬化させるのが好ましい。
【0055】
本発明の感熱記録材料は、支持体の片面上に、少なくとも発色性化合物と顕色性化合物とを含有する感熱記録層、及び上記のエネルギー線硬化型樹脂組成物をオーバーコート剤として塗工したオーバーコート層を、この順に有するものである。
【0056】
<支持体について>
本発明に用いられる支持体としては、その形状、構造、大きさ、材質等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば、平板状、シート状等が挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては、前記感熱記録材料の大きさ等に応じて適宜選択することができる。
【0057】
前記支持体としては、例えば、紙、合成紙、フィルム等が挙げられ、透過型の感熱記録媒体の場合には、透明支持体を用いることが好ましく、そのような具体例としては、例えば、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリスチレンフィルム、塩化ビニルフィルム等が挙げられる。これらの中でも、強度や加工のし易さの点から、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
【0058】
前記支持体の平均的厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20μm~250μmが好ましく、50μm~200μmがより好ましい。
【0059】
前記透明支持体は、コロナ放電処理や導電剤による導電処理を施したものであってもよい。
【0060】
<感熱記録層について>
前記感熱記録層は、通常無色ないし淡色の発色性化合物と、顕色性化合物、また必要に応じて増感剤、保存性向上剤、さらには以下に記載の結合剤及び充填剤、その他の添加物等を含有して成る。
【0061】
本発明に用いられる発色性化合物は、一般に感圧記録紙や感熱記録紙に用いられるものであればよく、特に制限されない。本発明の一の実施形態において、発色性化合物として、例えばフルオラン系化合物、トリアリールメタン系化合物、スピロ系化合物、ジフェニルメタン系化合物、チアジン系化合物、ラクタム系化合物、フルオレン系化合物、ビニルフタリド系化合物が挙げられ、フルオラン系化合物が好ましい。
【0062】
フルオラン系化合物は、特に限定されるものでは無いが、その具体例としては、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-メチル-N-シクロヘキシルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-イソペンチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-イソブチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-[N-エチル-N-(3-エトキシプロピル)アミノ]-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-ヘキシルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジペンチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-メチル-N-プロピルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-テトラヒドロフリルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(p-フルオロアニリノ)フルオラン、3-[N-エチル-N-(p-トリル)アミノ]-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(p-トルイジノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(o-フルオロアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-7-(o-フルオロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(3,4-ジクロロアニリノ)フルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-エトキシエチルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-オクチルフルオラン、3-[N-エチル-N-(p-トリル)アミノ]-6-メチル-7-フェネチルフルオラン、2-メチル-6-(N-p-トリル-N-エチルアミノ)フルオラン(RED520)、9-(N-エチル-N-イソペンチルアミノ)スピロ[ベンゾ[a]キサンテン-12,3’-フタリド](RED500)、2’-アニリノ-6’-(N-エチル-N-イソペンチルアミノ)-3’-メチルスピロ[フタリド-3,9’-キサンテン](S-205)、2’-アニリノ-6’-(N,N-ジペンタン-1-イルアミノ)-3’-メチル-3H-スピロ[イソベンゾフラン-1,9’-キサンテン]-3-オン(Black305)、2’-アニリノ-6’-(ジブチルアミノ)-3’-メチルスピロ[フタリド-3,9’-キサンテン](Black400)、2’-アニリノ-6’-[N-エチル-N-(4-トリル)アミノ]-3’-メチル-3H-スピロ[イソベンゾフラン-1,9’-キサンテン]-3-オン(ETAC)、6-(ジエチルアミノ)-2-[(3-トリフルオロメチル)アニリノ]キサンテン-9-スピロ-3’-フタリド(Black100)、1-エチル-8-[N-エチル-N-(4-メチルフェニル)アミノ]-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロスピロ[11H-クロメノ[2,3、-g]キノリン-11,3’-フタリド](H-1046)、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-ブロモフルオラン、3-[4-(ジエチルアミノ)フェニル]-3-(1-エチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン(Blue502)等が挙げられ、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオランが好ましい。
【0063】
トリアリールメタン系化合物は、特に限定されるものでは無いが、その具体例としては、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド(別名:クリスタルバイオレットラクトン又はCVL)、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)フタリド、3-(p-ジメチルアミノフェニル)-3-(1,2-ジメチルアミノインドール-3-イル)フタリド、3-(p-ジメチルアミノフェニル)-3-(2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3-(p-ジメチルアミノフェニル)-3-(2-フェニルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(1,2-ジメチルインドール-3-イル)-5-ジメチルアミノフタリド、3,3-ビス(1,2-ジメチルインドール-3-イル)-6-ジメチルアミノフタリド、3,3-ビス(9-エチルカルバゾール-3-イル)-5-ジメチルアミノフタリド、3,3-(2-フェニルインドール-3-イル)-5-ジメチルアミノフタリド、3-p-ジメチルアミノフェニル-3-(1-メチルピロール-2-イル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド(Blue200)、3-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヘキシルオキシフェニル]-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド(Blue203)、3-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)-3-(1-エチル2-メチル-1H-インドール-3-イル)-4-アザフタリド(Blue220)、7-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-7-(1-エチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)フロ[3,4-b]ピリジン-5(7H)-オン(Blue63)等が挙げられる。
【0064】
スピロ系化合物は、特に限定されるものでは無いが、その具体例としては、3-メチルスピロジナフトピラン、3-エチルスピロジナフトピラン、3,3’-ジクロロスピロジナフトピラン、3-ベンジルスピロジナフトピラン、3-プロピルスピロベンゾピラン、3-メチルナフト-(3-メトキシベンゾ)スピロピラン、1,3,3-トリメチル-6-ニトロ-8’-メトキシスピロ(インドリン-2,2’-ベンゾピラン)等;ジフェニルメタン系化合物は、特に限定されるものでは無いが、その具体例としては、N-ハロフェニル-ロイコオーラミン、4,4-ビス-ジメチルアミノフェニルベンズヒドリルベンジルエーテル、N-2,4,5-トリクロロフェニルロイコオーラミン等;チアジン系化合物は、特に限定されるものでは無いが、その具体例としては、ベンゾイルロイコメチレンブルー、p-ニトロベンゾイルロイコメチレンブルー等;ラクタム系化合物は、特に限定されるものでは無いが、その具体例としては、ローダミンBアニリノラクタム、ローダミンB-p-クロロアニリノラクタム等;フルオレン系化合物は、特に限定されるものでは無いが、その具体例としては、3,6-ビス(ジメチルアミノ)フルオレンスピロ(9,3’)-6’-ジメチルアミノフタリド、3,6-ビス(ジメチルアミノ)フルオレンスピロ(9,3’)-6’-ピロリジノフタリド、3-ジメチルアミノ-6-ジエチルアミノフルオレンスピロ(9,3’)-6’-ピロリジノフタリド等;ビニルフタリド系化合物は、特に限定されるものでは無いが、その具体例としては、3-[2,2-ビス(4-ジエチルアミノフェニル)ビニル]-6-ジメチルアミノフタリド(H-3035)、3,3-ビス[2-(4-ジメチルアミノフェニル)-2-(4-メトキシフェニル)ビニル]-4,5,6,7-テトラクロロフタリド(NIR Black78)、等が挙げられる。これらの発色性化合物は単独もしくは混合して用いることができる。
【0065】
本発明に用いられる顕色性化合物も、一般に感圧記録紙や感熱記録紙に用いられるものであればよく、特に制限されない。本発明の一の実施形態において、顕色性化合物として、例えばフェノール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、サッカリン誘導体、スルホンアミド誘導体、マロンアミド誘導体、チオ尿素誘導体、スルホニルウレア誘導体、アミノ基で置換されたジフェニルスルホン誘導体、芳香族カルボン酸誘導体、ジフェニル尿素誘導体等が挙げられる。
【0066】
フェノール誘導体は、分子内にベンゼン環に直接結合したヒドロキシ基を有する化合物のことを意味し、それ自身が公知のものを使用することができる。その具体例としては、α-ナフトール、β-ナフトール、p-オクチルフェノール、4-tert-オクチルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-フェニルフェノール、1,1-ビス(p-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(p-ヒドロキシフェニル)プロパン(別名:ビスフェノールA又はBPA)、2,2-ビス(p-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(p-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’-チオビスフェノール、4,4’-シクロ-ヘキシリデンジフェノール、2,2’-ビス(2,5-ジブロム-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’-イソプロピリデンビス(2-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-クロロフェノール)、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-メトキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-エトキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-n-プロポキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-ビニルオキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-ブトキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-ベンジルオキシジフェニルスルホン、2,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’-ジアリル-4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-アリルオキシジフェニルスルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)酢酸ベンジル、2,4-ジヒドロキシ-2’-メトキシベンズアニリド等が挙げられる。
【0067】
ベンゾトリアゾール誘導体としては、特に限定されるものでは無いが、その具体例としては、ベンゾトリアゾール、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、4-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、フェニル-6ベンゾトリアゾール、フェニル-5ベンゾトリアゾール、クロロ-5ベンゾトリアゾール、クロロ-5メチルベンゾトリアゾール、クロロ-5イソプロピル-7メチル-4ベンゾトリアゾール、ブロモ-5ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0068】
サッカリン誘導体としては、特に限定されるものでは無いが、その具体例としては、サッカリン、1-ブロモサッカリン、1-ニトロサッカリン、1-アミノサッカリン等が挙げられる。
【0069】
スルホンアミド誘導体としては、特に限定されるものでは無いが、その具体例としては、メタニルアニリド、N-フェニル-4-アミノベンゼンスルホンアミド、ネオウリロン、N-フェニル-3-ニトロベンゼンスルホンアミド、N-(4-メチル-2-ニトロフェニル)ベンゼンスルホンアミド、N-(2-メトキシフェニル)-p-トルエンスルホンアミド、N-(4-メトキシフェニル)-p-トルエンスルホンアミド、N-(2-クロロフェニル)-p-トルエンスルホンアミド、N-(4-メチルフェニル)-4-メチルベンゼンスルホンアミド、N-(2-メチルフェニル)-p-トルエンスルホンアミド、N-フェニルベンゼンスルホンアミド、4-ブロモ-4’-メチルベンゼンスルホンアニリド、N-(4-ブロモフェニル)ベンゼンスルホンアミド、N-(3-ニトロフェニル)ベンゼンスルホンアミド、N-(4-ニトロフェニル)-4-メチルベンゼンスルホンアミド、N-(4-メチルフェニル)ベンゼンスルホンアミド、N-フェニル-p-トルエンスルホンアミド、N-フェニルベンゼンスルホンアミド等が挙げられる。
【0070】
マロンアミド誘導体としては、特に限定されるものでは無いが、その具体例としては、N,N’-ビス(2-ヒドロキシ-5-フェニル)フェニル-マロンアミド、N,N’-ジフェニルマロンアミド、N,N’-ビス(2,4,6-トリブロモフェニル)マロンアミド、N,N’-ビス(2-アミノフェニル)マロンアミド、N,N’-ビス(m-トリフルオロメチルフェニル)マロンアミド、N,N’-ビス(m-トリフルオロメチルフェニル)α、α-ジクロロマロンアミド、ジエチルマロンジアニリド等が挙げられる。
【0071】
チオ尿素誘導体としては、特に限定されるものでは無いが、その具体例としては、1,3-ビス(4-メチルフェニル)チオ尿素、1,3-ビスフェニルチオ尿素、1,3-ビス(4-クロロフェニル)チオ尿素、1,3-ビス(4-メトキシフェニル)チオ尿素、N,N′-ビス(3-クロロフェニル)チオ尿素、1,3-ビス(3‐メトキシフェニル)チオ尿素、1,3-ビス(3-メチルフェニル)チオ尿素、1,3-ビス(4-ベンジルフェニル)チオ尿素、1,3-ビス(4‐ブロモフェニル)チオ尿素、1-フェニル-3-ブチルチオ尿素、1-フェニル-3-エチルチオ尿素等が挙げられる。
【0072】
スルホニルウレア誘導体としては、特に限定されるものでは無いが、その具体例としては、N-(p-トルエンスルホニル)-N’-(3-n-ブチルアミノスルホニルフェニル)尿素、N-(p-トルエンスルホニル)-N’-(4-トリメチルアセトフェニル)尿素、N-(ベンゼンスルホニル)-N’-(3-p-トルエンスルホニルオキシフェニル)尿素、N-(p-トルエンスルホニル)-N’-(3-p-トルエンスルホニルフェニル)尿素、N-(p-トルエンスルホニル)-N’-(3-フェニルスルホニルオキシフェニル)尿素、トルブタミド、クロルプロパミド等が挙げられる。
【0073】
アミノ基で置換されたジフェニルスルホン誘導体としては、特に限定されるものでは無いが、その具体例としては、2-アミノジフェニルスルホン、2,2’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0074】
芳香族カルボン酸誘導体としては、特に限定されるものでは無いが、その具体例としては、p-ヒドロキシ安息香酸ベンジル、p-ヒドロキシ安息香酸エチル、4-ヒドロキシフタル酸ジベンジル、4-ヒドロキシフタル酸ジメチル、5-ヒドロキシイソフタル酸エチル、3,5-ジ-tert-ブチルサリチル酸、3,5-ジ-α-メチルベンジルサリチル酸、芳香族カルボン酸又はその多価金属塩等が挙げられる。
【0075】
ジフェニル尿素誘導体としては、特に制限されるものではないが、その具体例としては、1,3-ジフェニル尿素、1-フェニル-3-(o-トリル)尿素、1-フェニル-3-(m-トリル)尿素、1-フェニル-3-(p-トリル)尿素、1-(2-メトキシフェニル)-3-フェニル尿素、1-(3-メトキシフェニル)-3-フェニル尿素、1-(4-メトキシフェニル)-3-フェニル尿素、2-(3-フェニルウレイド)フェニルアセテート、3-(3-フェニルウレイド)フェニルアセテート、4-(3-フェニルウレイド)フェニルアセテート、2-(3-フェニルウレイド)フェニルベンゾエート、3-(3-フェニルウレイド)フェニルベンゾエート、4-(3-フェニルウレイド)フェニルベンゾエート、2-(3-フェニルウレイド)フェニルアクリレート、3-(3-フェニルウレイド)フェニルアクリレート、4-(3-フェニルウレイド)フェニルアクリレート、N-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]アセトアミド、N-[3-(3-フェニルウレイド)フェニル]アセトアミド、N-[4-(3-フェニルウレイド)フェニル]アセトアミド、N-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンズアミド、N-[3-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンズアミド、N-[4-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンズアミド、N-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミド、N-[3-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミド、N-[4-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミド、[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]=4-メチルベンゼンスルホナート、[3-(3-フェニルウレイド)フェニル]=4-メチルベンゼンスルホナート、[4-(3-フェニルウレイド)フェニル]=4-メチルベンゼンスルホナート等が挙げられる。
【0076】
本発明の一の実施形態においては、増感剤(熱可融性化合物)を含んでもよく、増感剤(熱可融性化合物)の具体例としては、動植物性ワックス、合成ワックス等のワックス類や、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸アニリド、ナフタレン誘導体、芳香族エーテル、芳香族カルボン酸誘導体、芳香族スルホン酸エステル誘導体、炭酸またはシュウ酸ジエステル誘導体、ビフェニル誘導体、ターフェニル誘導体、スルホン誘導体、芳香族ケトン誘導体、芳香族炭化水素化合物等が挙げられる。
【0077】
ワックス類は、特に限定されるものでは無いが、その具体例としては、木ろう、カルナウバろう、シェラック、パラフィン、モンタンろう、酸化パラフィン、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレン等が挙げられ、高級脂肪酸は、特に限定されるものでは無いが、その具体例としては、ステアリン酸、ベヘン酸等が挙げられ、高級脂肪酸アミドは、特に限定されるものでは無いが、その具体例としては、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、N-メチルステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、メチロールベヘン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等が挙げられ、高級脂肪酸アニリドは、特に限定されるものでは無いが、その具体例としては、ステアリン酸アニリド、リノール酸アニリド等が挙げられ、ナフタレン誘導体は、特に限定されるものでは無いが、その具体例としては、1-ベンジルオキシナフタレン、2-ベンジルオキシナフタレン、1-ヒドロキシナフトエ酸フェニルエステル、2,6-ジイソプロピルナフタレン等が挙げられ、芳香族エーテルは、特に限定されるものでは無いが、その具体例としては、1,2-ジフェノキシエタン、1,4-ジフェノキシブタン、1,2-ビス(3-メチルフェノキシ)エタン、1,2-ビス(4-メトキシフェノキシ)エタン、1,2-ビス(3,4-ジメチルフェニル)エタン、1-フェノキシ-2-(4-クロロフェノキシ)エタン、1-フェノキシ-2-(4-メトキシフェノキシ)エタン、1,2-ジフェノキシメチルベンゼン、ジフェニルグリコール等が挙げられ、芳香族カルボン酸誘導体は、特に限定されるものでは無いが、その具体例としては、p-ヒドロキシ安息香酸ベンジルエステル、p-ベンジルオキシ安息香酸ベンジルエステル、テレフタル酸ジベンジルエステル等が挙げられ、芳香族スルホン酸エステル誘導体は、特に限定されるものでは無いが、その具体例としては、p-トルエンスルホン酸フェニルエステル、フェニルメシチレンスルホナート、4-メチルフェニルメシチレンスルホナート、4-トリルメシチレンスルホナート等が挙げられ、炭酸またはシュウ酸ジエステル誘導体は、特に限定されるものでは無いが、その具体例としては、炭酸ジフェニル、シュウ酸ジベンジルエステル、シュウ酸ジ(4-クロロベンジル)エステル、シュウ酸ジ(4-メチルベンジル)エステル類等が挙げられ、ビフェニル誘導体は、特に限定されるものでは無いが、その具体例としては、p-ベンジルビフェニル、p-アリルオキシビフェニル等が挙げられ、ターフェニル誘導体は、特に限定されるものでは無いが、その具体例としては、m-ターフェニル等が挙げられ、スルホン誘導体は、特に限定されるものでは無いが、その具体例としては、p-トルエンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアニリド、p-トルエンスルホンアニリド、ジフェニルスルホン等が挙げられ、芳香族ケトン誘導体は、特に限定されるものでは無いが、その具体例としては、4,4’-ジメチルベンゾフェノン、ジベンゾイルメタン等が挙げられ、芳香族炭化水素化合物は、特に限定されるものでは無いが、その具体例としては、p-アセトトルイジン等が挙げられる。
【0078】
本発明の一の実施形態においては、保存性向上剤を含んでもよく、保存性向上剤の具体例としては、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(2-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、1-〔α-メチル-α-(4’-ヒドロキシフェニル)エチル〕-4-〔α’,α’-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、トリス(2,6-ジメチル-4-tert-ブチル-3-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’-チオビス(3-メチルフェノール)、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’,5,5’-テトラブロモジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’,5,5’-テトラメチルジフェニルスルホン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン等のヒンダードフェノール化合物、1,4-ジグリシジルオキシベンゼン、4,4’-ジグリシジルオキシジフェニルスルホン、4-ベンジルオキシ-4’-(2-メチルグリシジルオキシ)ジフェニルスルホン、テレフタル酸ジグリシジル、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のエポキシ化合物、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェイトのナトリウム又は多価金属塩、ビス(4-エチレンイミノカルボニルアミノフェニル)メタン等が挙げられる。例えば2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(2-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、1-〔α-メチル-α-(4’-ヒドロキシフェニル)エチル〕-4-〔α’,α’-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、トリス(2,6-ジメチル-4-tert-ブチル-3-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’-チオビス(3-メチルフェノール)、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’,5,5’-テトラブロモジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’,5,5’-テトラメチルジフェニルスルホン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン等のヒンダードフェノール化合物、1,4-ジグリシジルオキシベンゼン、4,4’-ジグリシジルオキシジフェニルスルホン、4-ベンジルオキシ-4’-(2-メチルグリシジルオキシ)ジフェニルスルホン、テレフタル酸ジグリシジル、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のエポキシ化合物、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェイトのナトリウム又は多価金属塩、ビス(4-エチレンイミノカルボニルアミノフェニル)メタン、ウレアウレタン化合物(ケミプロ化成株式会社製顕色性化合物UU等)、及び下記式(3)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物もしくはそれらの混合物等が挙げられる。
【0079】
【0080】
本発明の一の実施形態においては、結合剤を含んでもよく、結合剤の具体例としては、メチルセルロース、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、セルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール等の各種のけん化度、重合度のポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ソーダ、デンプン及びその誘導体、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等のスルホコハク酸エステル類、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルのナトリウム塩、脂肪酸塩、カゼイン、ゼラチン、水溶性イソプレンゴム、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、イソ(又はジイソ)ブチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩等の水溶性のもの或は(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、スチレン/ブタジエン(SB)共重合体、カルボキシル化スチレン/ブタジエン(SB)共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル酸系共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン(NB)共重合体、カルボキシル化アクリロニトリル/ブタジエン(NB)共重合体、コロイダルシリカと(メタ)アクリル樹脂の複合体粒子等の疎水性高分子エマルジョン等が挙げられる。
【0081】
本発明の一の実施形態においては、充填剤を含んでもよく、充填剤の具体例としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、ホワイトカーボン、カオリン、焼成カオリン、リトポン、タルク、クレイ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、珪藻土、酸性白土、ベントナイト、合成珪酸アルミニウム、表面処理された炭酸カルシウムやシリカ等の無機顔料;尿素-ホルマリン樹脂、シリコーン樹脂、スチレン-メタクリル酸共重合樹脂、ポリスチレン樹脂、生澱粉粒子等の有機顔料等が挙げられる。
【0082】
本発明の一の実施形態においては、上記以外の種々の添加剤を含むことができ、例えばサーマルヘッド磨耗防止、スティッキング防止等の目的でのステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸の金属塩、酸化防止あるいは老化防止効果を付与する為のフェノール誘導体、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物等の紫外線吸収剤、各種の架橋剤、界面活性剤、消泡剤、等が挙げられる。
【0083】
本発明では、感熱記録層の各成分の組成比について特に制限はないが、本発明の一の実施形態によれば、感熱記録層は、発色性化合物を通常1~50質量%、好ましくは5~30質量%;顕色性化合物を通常1~70質量%、好ましくは10~50質量%;増感剤を通常1~80質量%、保存性向上剤を通常0~30質量%、結合剤を通常1~90質量%、充填剤を通常0~80質量%、その他の滑剤、紫外線吸収剤、架橋剤、界面活性剤、消泡剤は各々任意の割合で、例えば通常各々0~30質量%含むことができる(質量%は感熱記録層中に占める各成分の固形分換算質量比)。
【0084】
前記材料を用いて例えば次のような方法によって本発明における感熱記録層が調製される。本発明の一の実施形態によれば、例えば、水を分散媒体とし、発色性化合物、顕色性化合物を、必要に応じて、結合剤およびその他の添加剤等と共に、ボールミル、アトライター、サンドミル、高圧ジェットミル等の分散機にて粉砕、分散した分散液、必要に応じて、結合剤、充填剤、その他の添加物を混合・攪拌することにより調製された感熱記録層用塗液を、前記支持体の片面上に通常乾燥質量で1~20g/m2になるように塗布、乾燥して、感熱記録層を有した支持体を得る。
【0085】
支持体上に前記の各塗液を塗布する方法としては、特に制限はないが、本発明の一の実施形態によれば、バーコーティング、エアナイフコーティング、バリバーブレードコーティング、ピュアブレードコーティング、ロッドブレードコーティング、ショートドウェルコーティング、カーテンコーティング、ダイコーティング等の既知の塗布方法のいずれを利用しても良い。また、各塗液は、1層ずつ塗布及び乾燥して各層を形成しても良く、同一の塗液を2層以上に分けて塗布しても良い。さらに、2つ以上の層を同時に塗布する同時多層塗布を行っても良い。
【0086】
<中間層について>
前記感熱記録材料においては、各層の混合防止や未発色部(地肌)及び発色記録部の保存安定性に対して有害なガス(酸素、オゾン等)や保護層に含まれる成分の遮断のため、あるいは光沢性向上のために、支持体の感熱記録層を有する発色面側に、中間層を設けてもよい。
【0087】
該中間層は、2つの層の間に設けられる層であって、感熱記録層を含まない。具体的には、前記支持体の感熱記録層を有する発色面側に、異なる2種以上の感熱記録層を有する場合はその感熱記録層間、さらに、感熱記録層(複数の感熱記録層を有する場合は、支持体から最も遠い感熱記録層をいう。)とオーバーコート層の間等に、適宜設けることができるが、感熱記録層とオーバーコート層の中間に形成される形態が好ましい。
【0088】
前記中間層は、水溶性樹脂または水分散性樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂の他、目的及び必要に応じて、充填剤、及びその他の添加物等を含有して成る。
【0089】
上記中間層中に含有される水溶性樹脂としては、バリアー性を発揮し、感熱記録特性及び光沢性を阻害しないものであれば何でも使用することができる。具体的には、重合度が200~2500の完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アマイド変性ポリビニルアルコール、スルホン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、ブチラール変性ポリビニルアルコールなどの変性ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アセチルセルロースなどのセルロース誘導体等の水溶性高分子物質、(メタ)アクリル酸エステル、アクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステルとスチレン及び/または酢酸ビニルからなる共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル/メタアクリル酸三元共重合体、コロイダルシリカ複合アクリル酸エステル共重合体、コロイダルシリカ複合スチレン/アクリル酸エステル共重合体等のアクリル酸エステル系樹脂を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0090】
上記中間層中に含有される水分散性樹脂としては、バリアー性を発揮し、感熱記録特性及び光沢性を阻害しないものであれば何でも使用することができる。具体的には、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリオレフィン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-ブタジエン-アクリル系共重合体等の水不溶性重合体等が挙げられる。尚、水不溶性重合体はラテックスの状態で用いればよい。
【0091】
分散粒子の粒度分布については、特に制限はなく、広い粒度分布を持つものでも、単分散の粒度分布を持つものでもよい。
【0092】
尚、単独では中間層にバリアー性を与えることができないものでも、架橋剤等を添加することにより、バリアー性が高まり、上記中間層に使用することができる。そのような架橋剤としては、感熱記録特性及び光沢性を低下させないものであれば何でもよく、具体的にはグリオキザール、ポリアルデヒドなどのジアルデヒド系、ポリエチルアミン等のポリアミン系、エポキシ系、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、グリセリンジグリシジルエーテル等のジグリシジル系ジメチロールウレア等のほか、過硫酸アンモニウムや塩化第二鉄、塩化マグネシウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、ヒドラジン系化合物、ポリアミド-エピクロルヒドリン系化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。架橋剤の添加量は、所望の性能に応じて適宜調整すればよく、例えば樹脂成分1部に対して0.05~0.35部程度である。
【0093】
前記充填剤の具体例としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、ホワイトカーボン、カオリン、焼成カオリン、リトポン、タルク、クレイ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、珪藻土、酸性白土、ベントナイト、合成珪酸アルミニウム、表面処理された炭酸カルシウムやシリカ等の無機顔料;尿素-ホルマリン樹脂、シリコーン樹脂、スチレン-メタクリル酸共重合樹脂、ポリスチレン樹脂、生澱粉粒子等の有機顔料等が挙げられる。
【0094】
更に、上記中間層においては、上記以外の種々の添加剤を使用することができ、例えばサーマルヘッド磨耗防止、スティッキング防止等の目的でのステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩、パラフィンワックス、カルナバワックス、ポリエチレンワックス等のワックス類、酸化防止あるいは老化防止効果を付与する為のフェノール誘導体、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物等の紫外線吸収剤、各種の界面活性剤、消泡剤等が挙げられる。
【0095】
上記中間層を形成するにあたり、水溶性樹脂または水分散性樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂、必要に応じて顔料及びその他の添加物を併用して中間層用塗液とし、前記感熱記録層上に固形分質量が0.5~5g/m2となるように塗布、乾燥して、感熱記録層、中間層を有した支持体を得る。
【0096】
上記中間層を形成するにあたり、樹脂は50~100質量%、充填剤は通常0~50質量%、その他の滑剤、ワックス類、紫外線吸収剤、界面活性剤、消泡剤は各々任意の割合で、例えば通常各々0~30質量%使用される(質量%は中間層中に占める各成分の質量比)。また、本発明の感熱記録材料においては、前記成分以外のそれ自身が公知の樹脂、充填剤、及びその他の添加物を併用しても構わない。
【0097】
感熱記録層上に前記の各中間層用塗液を塗布する方法としては、特に制限はないが、本発明の一の実施形態によれば、バーコーティング、エアナイフコーティング、バリバーブレードコーティング、ピュアブレードコーティング、ロッドブレードコーティング、ショートドウェルコーティング、カーテンコーティング、ダイコーティング等の既知の塗布方法のいずれを利用しても良い。また、各塗液は、1層ずつ塗布及び乾燥して各層を形成しても良く、同一の塗液を2層以上に分けて塗布しても良い。さらに、2つ以上の層を同時に塗布する同時多層塗布を行っても良い。
【0098】
本発明の感熱記録材料は、上記の方法により得られる感熱記録層または中間層上に、本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルションを、オーバーコート層塗液として、バーコーター塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷などにより、それ自体公知の方法で、塗工、乾燥し、次いで紫外線や電子線等のエネルギー線を照射して塗膜を硬化させ、オーバーコート層を形成させることにより得られる。オーバーコート層塗液の塗布量は特に限定されるものではないが、塗布量が少なすぎると本発明の目的を達成できず、また多すぎると感熱記録層の発色感度が低下するおそれや塗膜の割れの問題があるので、通常は0.5~10g/m2が好ましく、1~5g/m2がより好ましい。塗膜を電子線により硬化させる場合、100~500eVのエネルギーを有する電子線加速装置が好ましい。一方、紫外線により硬化させる場合、光源としてキセノンランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、UV-LEDランプ等を有する紫外線照射装置が使用され、必要に応じて光量、光源の配置などが決定されるが、高圧水銀灯を用いる場合、80~200W/cmの光量を有したランプにより、搬送速度5~60m/分、1~4回照射して硬化させるのが好ましい。
【実施例】
【0099】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。実施例中「部」は質量部、溶液の説明における「%」は質量%である。
【0100】
[実施例1] 感熱記録材料の作製
(感熱記録層の形成)
下記組成の混合物を、サンドグラインダーにより、レーザー回析/散乱式粒子径分布測定装置LA-950(堀場製作所株式会社製)によるメディアン粒子径が0.5μmになるように粉砕、分散化して顕色性化合物の分散液[A]を調製した。
【0101】
【0102】
下記組成の混合物を、サンドグラインダーにより、レーザー回析/散乱式粒子径分布測定装置LA-950によるメディアン粒子径が0.5μmになるように粉砕、分散化して発色性化合物の分散液[B]を調製した。
【表2】
【0103】
次いで、[A]液、[B]液及び48%変性スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスを下記の組成で混合して感熱記録層塗液を調製した。支持体として透明フィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、東洋紡株式会社製コスモシャイン A4100、厚み50μm)を用い、この片面上に得られた塗液を乾燥時の質量が7g/m
2となるように塗布、乾燥して本発明の感熱記録材料を作製した。
【表3】
【0104】
(中間層の形成)
次に、下記の組成からなる中間層塗液を前記感熱記録層上に乾燥時の質量が2g/m
2となるように塗布、乾燥して中間層付きの感熱記録材料を作製した。
【表4】
【0105】
(オーバーコート層の形成)
まず、炭酸カルシウムをジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとEO変性ビスフェノールA・ジアクリレートの混合液中に分散させ、次いで光重合開始剤を添加混合する。次に、ラテムルPD-450とアクアロンAR-20を溶解した水溶液を徐々に添加し、乳化分散して、以下の組成から成る本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルションを作製、実施例1のオーバーコート層塗液を得た。このオーバーコート層塗液を、前記中間層付きの感熱記録材料上に、乾燥時の質量が3g/m
2となるようにバーコーターを用いて塗布、乾燥後、この塗布面に大気雰囲気下で80W/cmの高圧水銀灯を有する紫外線照射装置によりコンベアー速度20m/分で1回照射し、エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化させ、実施例1の感熱記録材料を得た。
【表5】
【0106】
[実施例2]
上記実施例1のオーバーコート層塗液において、以下の組成に変更した以外は実施例1と同様にして実施例2の水中油滴型エマルションおよび感熱記録材料を得た。
【表6】
【0107】
[比較例1]
上記実施例1のオーバーコート層塗液において、以下の組成に変更した以外は実施例1と同様にして比較例1の水中油滴型エマルションおよび感熱記録材料を得た。
【表7】
【0108】
[比較例2]
上記実施例1のオーバーコート層塗液において、まず、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、EO変性ビスフェノールA・ジアクリレート、光重合開始剤を混合したところに、ラテムルPD-450とアクアロンAR-20を溶解した水溶液を徐々に添加、乳化分散した後、コロイダルシリカ分散液を添加することで、以下の組成から成るエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルションを作製、比較例2のオーバーコート層塗液を得た以外は、実施例1と同様にして比較例2の水中油滴型エマルションおよび感熱記録材料を得た。
【表8】
【0109】
[比較例3]
上記比較例2において、カルナバワックスエマルション(中京油脂株式会社製セロゾール524、濃度30%)1.0部を併用した以外は比較例2と同様にして比較例3の水中油滴型エマルションおよび感熱記録材料を得た。
【0110】
[比較例4]
まず、水酸化アルミニウム4.0部、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.04部、水51.7部から成る組成物を混合撹拌して作製した水酸化アルミニウムの水分散液にラテムルPD-450とアクアロンAR-20を溶解した液を、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、EO変性ビスフェノールA・ジアクリレート、光重合開始剤の混合液中に徐々に添加、乳化分散して、以下の組成から成るエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルションを作製、比較例4のオーバーコート層塗液を得た以外は、実施例1と同様にして比較例4の水中油滴型エマルションおよび感熱記録材料を得た。
【表9】
【0111】
[比較例5]
上記実施例1のオーバーコート層塗液において、炭酸カルシウムの代わりに焼成カオリン(BASF社製Ansilex 93、平均粒子径2μm以下)4.0部を用いた以外は実施例1と同様にして比較例5の水中油滴型エマルションおよび感熱記録材料を得た。
【0112】
【0113】
[ノニルフェノール構造を有する界面活性剤の有無]
上記の表10は、実施例1及び2、比較例1~5に用いた成分を纏めたものであるが、反応性界面活性剤(B)に関する記載は、関連する商品カタログ及びSDS(安全データシート)の記載内容に基づくものである。
【0114】
[エマルションの状態評価]
得られた水中油滴型エマルションを常温にて放置し、離水状態やオイル浮きの目視観察により下記の基準で安定性を評価した。結果を下表2に示す。
○:離水やオイル浮きが全くなく安定なエマルションである。
△:若干の離水またはオイル浮きが見られるが、再分散性は良好である。
×:油相と水相の分離が顕著に見られ、乳化破壊状態である。
【0115】
[サーマルヘッド適性の評価]
株式会社イシダ製サーマルプリンター(ハイクオリティラベルプリンタ BP-4000)を用いて、市松パターン(印字部の印加エネルギーは169μJ/dot)で印字した際の、サーマルヘッド適性を下記の基準で評価した。結果を下表2に示す。尚、感熱記録材料の保護層がプリンターのヘッドに粘着して、部分的に印字できないことを「白跳び」といい、感熱記録材料の保護層がプリンターのヘッドに粘着することにより引き起こされるプリンターの騒音を「騒音」という。
○:白跳びの発生がなく、騒音もほとんどない。
△:極僅かに白跳びが見られる、あるいは騒音が生じるが、実用上問題のない程度である。
×:白跳びが頻発し、騒音も大きい。
【0116】
[保存安定性試験(耐可塑剤性試験)]
ガラス板に塩化ビニルラップフィルム(可塑剤が含まれているもの)を2重に巻き付け、その上に株式会社イシダ製サーマルプリンター(ハイクオリティラベルプリンタ BP-4000)を用いて、市松パターン(印字部の印加エネルギーは169μJ/dot)で印字した上記の実施例1及び2、比較例1~5で得られた感熱記録材料を塗布し、さらにこの上に同塩化ビニルラップフィルムを2重に巻き付けた状態で、40℃で24時間放置した。試験前後の感熱記録材料の発色記録部の濃度をコニカミノルタ株式会社製蛍光分光濃度計FD-7を用いて測定した。測色は、いずれも観察光源にイルミナントC、濃度照明条件に標準イルミナントA、濃度ステータスにISO Status A、視野角2度の条件で行った。結果を下表2に示す。尚、結果については、計算式(I)で算出される残存率を基に、以下の基準で評価した。
残存率(%)=(試験後の感熱記録材料の発色記録部の濃度)/(試験前の感熱記録材料の発色記録部のマクベス反射濃度)×100 (I)
○:残存率が95%以上であり、耐可塑剤性は非常に良好
△:残存率が80%以上95%未満であるが、耐可塑剤性は実用上問題ない。
×:残存率が80%未満であり、耐可塑剤性に問題あり。
【0117】
[保存安定性試験(耐油性試験)]
株式会社イシダ製サーマルプリンター(ハイクオリティラベルプリンタ BP-4000)を用いて、市松パターン(印字部の印加エネルギーは169μJ/dot)で印字した上記実施例1及び2、比較例1~5で得られた感熱記録材料の発色記録部上に、サラダ油を3滴垂らして40℃で24時間放置した。試験前後の感熱記録材料の発色記録部の濃度をコニカミノルタ株式会社製蛍光分光濃度計FD-7を用いて測定した。測色は、いずれも観察光源にイルミナントC、濃度照明条件に標準イルミナントA、濃度ステータスにISO Status A、視野角2度の条件で行った。結果を下表2に示す。尚、結果については、計算式(I)で算出される残存率を基に、以下の基準で評価した。
残存率(%)=(試験後の感熱記録材料の発色記録部の濃度)/(試験前の感熱記録材料の発色記録部のマクベス反射濃度)×100 (I)
○:残存率が95%以上であり、耐油性は非常に良好。
△:残存率が80%以上95%未満であるが、耐油性は実用上問題ない。
×:残存率が80%未満であり、耐油性に問題あり。
【0118】
[透明性の評価]
上記の実施例1及び2、比較例1~5で得られた感熱記録材料のHAZE値を、東京電色株式会社製のヘーズメーター(製品名:オートマチックヘーズメーター TG-HIIIDPK)で測定した。結果を下表11に示す。尚、HAZE値が小さい程、透明性が高く良好である。
【0119】
【0120】
[実施例3]
上記実施例1における支持体を、透明ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製コスモシャイン A4100、厚み50μm)の代わりに白色ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製ルミラーE22 #188、厚み188μm)を用い、感熱記録層、中間層なしで支持体上に実施例1に記載の水中油滴型エマルションを直接塗布した以外は実施例1と同様にして、実施例3の試験フィルムを得た。
【0121】
[実施例4]
上記実施例3における水中油滴型エマルションの代わりに、実施例2に記載の水中油滴型エマルションを使用した以外は実施例3と同様にして、実施例4の試験フィルムを得た。
【0122】
[比較例6~10]
上記実施例3における水中油滴型エマルションの代わりに、比較例1~5に記載の水中油滴型エマルションをそれぞれ使用した以外は実施例3と同様にして、比較例6~10の試験フィルムを得た。
【0123】
[光沢度の評価]
各試験フィルムの60°光沢度Gs(60°)(JIS Z 8741)を日本電色株式会社製の光沢度計(商品名 ハンディー光沢計PG-II)で測定した。結果を表12に示す。尚、値の大きい方が光沢度が高く良好である。
【0124】
【0125】
表10及び表11の結果から、式(1)または式(2)で表される反応性界面活性剤(B)を用いた本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルションは、ノニルフェノール構造を有する界面活性剤を含有しておらず、特許文献9に記載の従来公知の水中油滴型エマルションを用いた比較例1と比べ遜色ないエマルション安定性を示している。また、該エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化膜層をオーバーコート層として有する本発明の感熱記録材料は、サーマルヘッド適性および発色記録部の保存安定性、ならびに高透明性を兼ね備えており、比較例1、2、4、5よりも優れていることが分かる。実施例1と同じ反応性界面活性剤(B)を、顔料成分(C)としてコロイダルシリカと併用した比較例2及び3は、比較例1に比べ透明性に優れるものの、上記の表12の結果から、該エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化膜層をオーバーコート層として有する本発明の感熱記録材料は、比較例6~10に比べて60°光沢度に優れていることから、人体及び環境に悪影響を及ぼすノニルフェノール構造を有する乳化剤を含まない本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルションは、ノニルフェノール構造を有する乳化剤を含む従来公知の組成物に比べ、人体及び環境に優しく、加えて高透明性、高光沢性、発色記録部の保存安定性、及びサーマルヘッド適性に優れた感熱記録材料を形成するのにより適していることが分かる。