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特許7167189電気分解および使用によって少なくとも1つの製品ストリームを供給するための方法および装置
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  • 特許-電気分解および使用によって少なくとも1つの製品ストリームを供給するための方法および装置 図1
  • 特許-電気分解および使用によって少なくとも1つの製品ストリームを供給するための方法および装置 図2
  • 特許-電気分解および使用によって少なくとも1つの製品ストリームを供給するための方法および装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】電気分解および使用によって少なくとも1つの製品ストリームを供給するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   C25B 1/04 20210101AFI20221031BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20221031BHJP
   C25B 15/027 20210101ALI20221031BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20221031BHJP
   C25B 15/00 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B15/027
C25B15/08 302
C25B15/00 303
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020566208
(86)(22)【出願日】2019-05-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2019063722
(87)【国際公開番号】W WO2019229019
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-01-22
(31)【優先権主張番号】102018208624.9
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517357918
【氏名又は名称】ティッセンクルップ・ウーデ・クロリンエンジニアズ ゲー エム ベー ハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】クリンク,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ポリシン,グレゴール・ダミアン
(72)【発明者】
【氏名】バウムガルト,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】パウシュ,ヨルグ
(72)【発明者】
【氏名】ダールヒュス,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ベルグス,ドミニク
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-072119(JP,A)
【文献】特開2012-117140(JP,A)
【文献】特開2017-203218(JP,A)
【文献】特開2017-002344(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1135707(KR,B1)
【文献】特開2016-204698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/04
C25B 9/00
C25B 15/027
C25B 15/08
C25B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのフレームワーク(16)を形成するように組み合わされた複数の電解セル(16.1)を有する電解槽(13)による電気分解によって、少なくとも1つの製品ストリームを供給する方法であって、
電解液は前記複数の電解セル(16.1)から排出されて2つの相に分離され、前記電解液は、電解液を循環させるように適合されたポンプシステム(17)の上流で収集され、少なくとも排出(F1)、相分離(F2)および収集(F3)の機能が、多機能収集容器(15)において、前記複数の電解セル(16.1)に結合され且つバッファ付きポンプ供給としても使用可能である調節可能な充填レベルを備えた少なくとも1つの多機能収集容器によって、一体的かつ一緒に実行されることを特徴とし、前記多機能収集容器(15)は、統合された機能範囲を備えた多機能流出ヘッダーであり、前記収集(F3)は、事前定義可能な最小滞留時間中に前記電解液をバッファリング(F4)することと、最小容積をバッファ付きポンプ供給として使用できるようにするために、事前定義可能な最小容積または最小充填レベルで前記電解液を一時的に貯蔵(F5)することとの2つの機能を含む、方法。
【請求項2】
前記ポンプシステム(17)によって及び前記複数の電解セル(16.1)への再循環によって、前記電解液のポンピングが前記収集の下流で行われ、前記多機能収集容器から供給される全ての前記電解液は、その全体が前記多機能収集容器に再循環される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水素が、前記少なくとも1つの製品ストリームとして水の電気分解によって供給される、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記水素が、1000~4500Nm/hの範囲の容量を有する電解装置(10)によって供給される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の電解セル(16.1)を空にすること(F6)を含む少なくとも1つのさらなる機能が、前記多機能収集容器(15)において前記排出(F1)機能及び前記収集(F3)機能と一体的かつ一緒に実行されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの製品ストリームを提供するように適合された電解装置(10)であって、
少なくとも1つのフレームワーク(16)を形成するように組み合わされた複数の電解セル(16.1)を備え、陽極液側(13a)および陰極液側(13b)を有する電解槽(13)を有し、
前記電解装置(10)は、前記複数の電解セル(16.1)から電解液を排出し、且つ前記電解液を2つの相に相分離するように適合され、さらにまた、前記電解装置は、ポンプシステム(17)の上流で前記電解液を収集するように適合され、
前記電解装置(10)は、前記複数の電解セル(16.1)及び前記ポンプシステム(17)に結合し、それによって多機能収集容器(15)に統合された少なくとも3つの機能、即ち、前記多機能収集容器による排出(F1)、相分離(F2)および収集(F3)する機能、事前定義可能な最小滞留時間中に前記電解液をバッファリングする機能(F4)、ならびに最小容積をバッファ付きポンプ供給として使用できるようにするために、事前定義可能な最小容積または最小充填レベルで前記電解液を一時的に貯蔵する機能(F5)を、一体的に提供するように適合された少なくとも1つの多機能収集容器(15)を備え、前記多機能収集容器(15)は、統合された機能範囲を備えた多機能流出ヘッダーである、ことを特徴とする、電解装置(10)。
【請求項7】
前記電解装置(10)は、水素の少なくとも一つの製品ストリームを提供するように適合されている、請求項6に記載の電解装置。
【請求項8】
前記電解装置(10)はさらにまた、前記多機能収集容器(15)に統合され、前記多機能収集容器によって前記複数の電解セル(16.1)を空にする(F6)機能も一体的に提供するように適合されている、請求項6または7に記載の電解装置。
【請求項9】
前記多機能収集容器(15)は、前記電解槽(13)の下において配置され、および/または、前記多機能収集容器は、前記電解槽に対して中央に配置され、および/または、前記多機能収集容器は、前記複数の電解セル(16.1)に対して、より低い高さ位置に配置されている、請求項6~8のいずれか一項に記載の電解装置。
【請求項10】
前記多機能収集容器(15)は、少なくとも1つの統合された測定センサユニット(18)、すなわち、電解液用の少なくとも1つの充填レベルセンサ(18.1)、および/または、少なくとも1つの温度センサ(18.2)を含む、請求項6~9のいずれか一項に記載の電解装置。
【請求項11】
前記電解装置は、極液および陰極液用の前記電解槽(13)の前記それぞれの側に配置され且つ前記複数の電解セル(16.1)に結合する2つの多機能収集容器(15a、15b)を備え、前記多機能収集容器は、互いに対して横方向にオフセットして配置されている、請求項6~10のいずれか一項に記載の電解装置。
【請求項12】
前記電解装置は、平衡化ラインによって互いに接続されている、および/または充填レベルに依存する流量調節および/またはバイパス調節によって互いに結合されている前記複数の電解セル(16.1)に結合するつの多機能収集容器を備える、請求項6~11のいずれか一項に記載の電解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解槽による電気分解によって、少なくとも1つの製品ストリーム、特に、水素を供給するための装置および方法に関する。本発明はさらに、特に、電解装置における少なくとも1つの多機能収集容器の使用に、および多機能収集容器があることで実行することができる方法ステップに関する。特に、本発明は、それぞれの独立請求項または従属請求項の特徴に従った装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気分解プラントは、従来、電解槽、複合電解液システム、および、ガスシステムで構成されている。電解槽は、1つまたは複数のフレームワークで組み合わされた多数の電気化学セルを備えている。それぞれのフレームワークでは、セルはフレームワークのフレーム内で、例えば、ファイルフォルダをぶら下げるように吊り下げられているため、保守や修理のためにセルを上向きに取り外すことができる(建屋ホールの建設高さはセルの高さの少なくとも2倍である)。例えば、約3~5個のフレームワークが設けられており、それぞれのフレームワークを個別にまたは一緒に供給することができる。
【0003】
全てのセルまたは全てのフレームワークからの電解液の流出は、単一の収集ライン(いわゆるヘッダー)にまとめられることが好ましい。この目的のために、好ましくは1つ、しかし省略可能であるが複数の(自由レベルの)流出ライン(いわゆる流出ヘッダー)が、各電極側(陽極と陰極)の電解槽のすぐ近く(通常、電解槽の下または横方向)に設けられていてもよい。そこで、ガス(水の電気分解の場合、特に、それぞれ陽極液と酸素、または陰極液と水素)を得るために電気分解中に生成された二相混合物がセルから収集され、分離される。この場合、「ヘッダー」という用語は、一般に外部の収集ラインとして理解でき、セル内で使用されるマニホールド(収集ライン)とは対照的に、ヘッダーはセルの外側に配置される。ヘッダーは、多数のセル(例えば、260セル)から、特に、1つまたは複数のフレームワーク、またはプラント全体でさえ、全てのセルからの流出をまとめることができる。気相は上向きに排出され、液相または電解液(陽極液および陰極液)は、それぞれいわゆる陽極液容器または陰極液容器へ下向きに運ばれ、電解液が収集される。したがって、これらは、セルから運び出される電解液用の空の容器として、および電解液回路を形成するためのポンプシステム用の一種のバッファとして使用される。
【0004】
電解液プラントは、複合運転モード(特に、「クロス運転」)で運転されていてもよく、その場合、陽極液側と陰極液側とは組み合わせて一緒に運転してもよいことに言及すべきである。省略可能であるが、運転モードはまた、別個の運転モード(特に、「並行運転」)であってもよく、各側は、個別に、そして他方側から切り離して運転される。
【0005】
セルからの自由な流出を確保するために、電解槽と流出ラインを陽極液容器および陰極液容器の上方に設置する必要がある。これにより、電解プラントの最小必要建設高さが必要となり、多くの場合、設置場所によっては、最大許容建設高さ、または最大望ましい建設高さを超えざるを得なくなり、その結果、かなりの建設費用および設備費用につながる。したがって、優れた機能を備えた可能な限りコンパクトな電解プラントに長い間関心が寄せられてきた。
【0006】
以前に知られている電気分解装置および電気分解方法は、例えば、米国特許第6,338,786号、米国特許第8,137,513号、欧州特許第2905 359号に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第6,338,786号明細書
【文献】米国特許第8,137,513号明細書
【文献】欧州特許第2,905,359号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、特に、水の電気分解による水素の電気化学的生成のための電気分解プラント(装置)を提供し、ならびに前述に記載された特徴を有する方法を提供することであり、そのため、電気分解またはそれに必要なプラント技術をさらに最適化することができ、特に、コスト効率が高く、省スペースな構成、および/または運転信頼性の観点からも最適化することができる。本目的はまた、一般に、電気分解のための魅力的で総合的な方法およびプラント概念を提供することであると見なしてもよく、可能な限り多くの以前に使用された電気分解プロセスタイプとも互換性があることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、本発明によれば、少なくとも1つの製品ストリーム、特に水素を供給するように適合された電解装置、特に水の電気分解によって、特に以下により詳細に記載される方法に従って製品ストリームを供給するように適合された電解装置によって達成される。ここで、当該電解装置は、電気分解によって電解液または二相混合物を供給するために、少なくとも1つのフレームワークを形成するように組み合わされた多数の電解セルを備え、かつ陽極液側および陰極液側を有する電解槽を有し、当該電解装置は、電解液(または二相混合物)をセルから排出し(第1の機能)、電解液(または二相混合物)を、特に電解槽のそれぞれの側で、2つの相に相分離する(さらに、特に第2の機能)ように適合され、当該電解装置は、電解装置用のポンプシステム、特に電解液を循環させるように適合されたポンプシステムの上流で電解液を収集または一時的に貯蔵する(さらに、特に第3の機能)ようにさらに適合され、そして当該電解装置は、セルに結合可能である/結合された少なくとも1つの多機能収集容器を備え、それにより、多機能収集容器に統合された少なくとも2つの機能、即ち、排出(第1の機能)および収集または一時的貯蔵(さらに、特に第3の機能)を、それぞれ、特に電解槽のそれぞれの側にある多機能収集容器によって、一体的に提供するように適合されている。このようにして、電解装置に関して、またそれに結合された構成要素に関して、様々な装置の利点を達成することができる。プロセスの利点と変形の可能性がさらにまた得られる。例えば、陽極液容器または陰極液容器からのガス抽出は、それぞれ、完全に不要になる可能性がある。この場合、多機能収集容器は、バッファ付きポンプ供給のために適合されて配置されてもよいし、相互接続されてもよいし、または配管が設けられてもよい。
【0010】
本発明による配置は、「単一セル」設計に限定されるものではなく、電解装置の他の従来の設計概念にも適用され得ることが判明した。また、本発明による配置はまた、他の任意の物質の電気分解においても本明細書に記載された利点を提供するので、例えば、水の電気分解に限定される必要はない。
【0011】
個々の機能によって決定される構造、または設計概念は、機能統合によって本発明に従って分解されてもよく、特に、プラントをより柔軟に構成または設計されてもよく、例えば、建設高さの点でも最適化されてもよいという利点がある。特に、本発明による配置に関して、機器、パイプ、鉄骨構造建設に関するコスト削減、プラントサイズの小規模化、建設高さの低減、建設時間の短縮、多機能収集容器のフラッディングに関するリスクの低減、運転信頼性の向上、計装とプロセス管理の面での支出の削減、などの利点を挙げることができる。例えば、装置を格納する建屋ホールでも、建設高さを数メートル節約することができる。多機能収集容器の容積が比較的大きく、多機能収集容器がセルの下方に配置されている場合であっても、別個の収集容器を避けることにより、建設高さを大幅に低減することができる。
【0012】
多機能収集容器はまた、特に、統合された機能範囲を備えた多機能流出ヘッダーMFHと呼ばれることもある。多機能収集容器は、特に、自由レベル収集容器、特に、自由レベル収集フロー容器と呼ばれることもある。この場合の「自由レベル」という用語は、従来、完全に充填されていないライン、例えば、半分だけ充填されているラインを指している。従来、自由レベルラインとして構成されていた流出ヘッダーは、電解液用の多数の供給口(多数の電解セルの流出口に対応)、さらにまた液相用の少なくとも1つの出口および気相用の1つの出口を有する。この場合、「自由レベル」という用語は、液相とは別にラインから気相を引き出すことができる方法の選択肢を示すものとして理解してもよい。本発明によるMFHは、必ずしも既知の容器とは異なる構造を有する必要はないが、本発明によるMFHは、本発明によるプラント概念への本発明による統合、および多機能(特に、最大6つの機能)のための本発明による設計を特徴とすることができる。
【0013】
この場合、電解槽は、好ましくは、電気分解に適合した装置として理解されるべきである。電解液は、セルからの排出の瞬間(方法)であれ、ポンプシステムを介した再循環の瞬間(方法)であれ、任意の方法の瞬間に、電解装置の任意の相組成において、任意のタイプの流体として理解することが好ましい。定義上、電解液という用語は、陽極液/陰極液とガスの二相混合物も含み、概念的には気相も含む。したがって、現在の定義によれば、電解液という用語は、特に、電気分解中に生成されるあらゆるタイプの流体または二相混合物、特に、発泡体を包含する。
【0014】
この場合、セルは、好ましくは、電解槽のユニットとして理解されるべきであり、そこでは、特に、他の隣接するセルとは独立して、電気分解を実行することができる。複数のセルを組み合わせて、例えば、100個のセルのフレームワークを形成することができる。
【0015】
この場合、ポンプシステムは、好ましくは、陽極液に関連して、および/または陰極液に関連してであろうとなかろうと、電解液を循環させるように適合されたシステムとして理解されるべきである。
【0016】
この場合、「統合」とは、好ましくは、多数の機能、多数のプラント構成要素、および/または多数の方法ステップの統合または合併として理解されるべきである。
【0017】
以下、水の電気分解について、具体的には、陽極側(陽極液、または酸素)を参照して、実施例を挙げて説明する。この説明は、陰極側(陰極液、または水素)にも同様に当てはまる。
【0018】
従来技術によれば、陽極液流出ヘッダー(流出ライン)の機能は、陽極液容器の機能とは分離されている。この場合、それぞれの陽極液流出ヘッダーは、電解槽の個々の構成要素(特に、セル)からの陽極液二相混合物(特に、酸素を含む)をまとめるために使用される。一方、陽極液容器は、バッファ付きポンプ供給または陽極液の一時的な貯蔵場所として使用される。
【0019】
本発明によれば、従来の陽極液流出ヘッダーの機能と従来の陽極液容器の機能は、これらの機器項目の技術的な装置と方法の組合せによって結合されて、共通の統合された陽極液ヘッダータンク(多機能収集容器、または多機能流出ヘッダーMFH)を形成する。本発明によれば、従来技術に開示されるような従来の陽極液容器を置き換えることはできるが、別の陽極液容器が余剰となる場合がある。本発明によれば、これまでの従来の陽極液流出ヘッダーの容積を増加させてもよい。全てのセルからの陽極液と酸素の二相混合物を、それによって提供される多機能ヘッダータンク(MFH)にて収集してもよい。さらに、バッファ付きポンプ供給機能および陽極液回路用中間貯蔵機能もまたMFHによって提供されていてもよい。この場合、十分に完全な相分離(気相と液相)が対応する低い流速によって確保され、さらにまた十分に大きな容積がバッファ付きポンプ供給として提供されてもよいので、MFH用の運転容積および充填レベルもまた、十分に大きくなるように選択してもよく、または調整してもよい。さらにまた、この場合、MFHの総容積が十分に大きくなるように選択されていてもよいので、電解槽のそれぞれのフレームワークの個々の構成要素またはセルがMFHに完全に流れ込むことができる(ドレイン機能)。
【0020】
さらにまた、本発明による多機能収集容器MFHにより、必要な機器部品の数を削減することができ、したがってコストも節約することができる。この場合、全体の建設高さは、例えば、約3~4メートル減少する可能性がある。このようにして、セル領域の総建設高さへの直接的な影響(または間接的に機械ホール、貯蔵ホールの高さ)もまた有利に確保され得る。これにより、特に、鉄骨構造建設やパイプライン建設の点で、さらなるコスト削減も可能になる。
【0021】
多機能収集容器MFHは、この場合、好ましくは、ラインとは対照的に、収集される流体の最小滞留時間と、特に、少なくとも一時的に静止した流体(静的に配置された流体)(タンク機能)によって定義される最小滞留時間の下限しきい値と、特に、収集コンテナの容量によって定義される最小滞留時間とに適合した容器として理解されるべきである。MFHは、流体の流速を、特に、最小滞留時間中、流速ゼロ(0)まで減少させることによって流体を収集するように適合されている。
【0022】
統合された多機能性のために、MFHは比較的大きな容量が備わっている可能性がある。それとは対照的に、これまで、流出ヘッダーの個別の機能にとって大容量は好都合ではなかった。同様に、特に、クロルアルカリ混合物の場合には、これまで、機能統合を想定することはできなかったが、これは、陽極液容器のバッファ容積の削減が許容されなければならなかったからである。
【0023】
機能統合は、効率的で魅力的な方法およびプラント概念に関連して、特に、水の電気分解のために実行され得ることが判明した。サイクルプロセスという用語は、純粋に、水の電気分解の場合に使用してもよい。特に、クロルアルカリ混合物の生産プロセスとは対照的に、比較的小さな充填レベルの変動が発生する。特に、水の電気分解の場合、それぞれの陽極液ヘッダータンク(MFH)または陰極液ヘッダータンクから供給される電解液(流体)の全量を、対応するヘッダータンクに戻して再循環させてもよいことが判明した。
【0024】
MFHを特定の数のセルまたはフレームワーク(例えば、それぞれ100セルの2つのフレームワークに対して1つの陽極液MFH)に選択的に結合する可能性から、電解装置のモジュール構造という用語を使用することができ、この場合、MFHによってクロスモジュラー機能の統合が確保される。この場合、MFHは、特に、結合されるセルの機能として、例えば、容量依存的に、例えば、MFHの充填レベルの好ましい範囲を視野に入れて設計されてもよい。
【0025】
本発明によれば、MFHへの機能統合およびMFHの適合設計により、特に、以下の機能は、単一の方法コンポーネント(多機能方法段階)によって、一体的かつ一緒に提供または確保され得ることが判明したが、この場合のそれぞれの機能は、多数のセル、特に、少なくとも1つのフレームワークの全てのセルに関連している:セルから電解液を排出すること(第1の機能)、相分離(第2の機能)、収集(第3の機能)、特に、相変化または発泡による体積変化の点でも電解液をバッファリングすること(第4の機能)、ポンプ回路用またはプラント内循環用の電解液を使用可能にするか供給すること(第5の機能)、特に、保守または交換の目的で、多数のセルを空にすること(ドレイン)(第6の機能)。ここで選択された機能の順序は重要ではなく、全ての機能が統合的に実行されることから、この順序はプロセス階層にも、方法ステップのシーケンスにも関係しない。
【0026】
プラント概念によっては、MFHは圧力容器の規定に該当しない容器である可能性がある。言い換えれば、電解プラントは、最大で数百ミリバール[mbar]の範囲内の圧力で運転されていてもよいので、MFHを圧力容器として設計する必要はない。
【0027】
本発明によれば、全ての機能、特に、少なくとも排出、収集、バッファリング、相分離などの機能は、これらの機能のために追加の容器やプラント構成要素を備える必要はなく、MFHに完全に統合されている可能性がある。プラント概念によっては、バッファ付きポンプ供給機能とドレイン機能もMFHによって完全に統合的に提供されてもよい。後者の構成では、個別の収集/タンクを空にすることが、特に、不要になる可能性がある。これまで、従来提供されていた個別の収集/タンクを空にすることは、これまでめったに使用されず、せいぜい年に数回しか使用されず、比較的大きなスペース/部屋を占有し、さらにまた、かなりの追加コストを必然的に伴う。
【0028】
1つの例示的な実施形態によれば、さらにまた、電解装置は、MFHに統合された相分離機能(さらに、特に、第2の機能)を、MFHによって、特に、それぞれの側で一体的に提供するように適合される。このようにして、方法の柔軟性も実現できる。
【0029】
本発明によれば、MFHは、さらにまた、事前定義可能な最小滞留時間の間に(特に、相変化や発泡による体積変化の観点からも)電解液をバッファリングする機能と、バッファ付きポンプ供給として最小容積を使用可能な状態にするために事前定義可能な最小容積でまたは最小充填レベルで電解液を一時的に貯蔵する機能とを、統合的に提供するように適合されている。これにより、また、合理化された設計建設および効率的な方法の相互接続も可能になる。
【0030】
1つの例示的な実施形態によれば、電解装置は、特に、保守目的のために、MFHによってセルを空にする(ドレイン)機能も一体的に提供するようにさらに適合される。このようにして、スペース要件と装置費用を節約することができる。
【0031】
1つの例示的な実施形態によれば、MFHは、ポンプシステムに結合可能である/結合される。これにより、適切な方法の相互接続も可能になる。
【0032】
1つの例示的な実施形態によれば、(それぞれの)MFHは、電解槽の下方に、特に、それぞれの側にそれぞれ配置される。技術的なプラントの利点に加えて、これはコンパクトな構造も提供する。それによって、電解液の重力駆動による排出または転送が容易になり得る。電解液の排出および転送は、「自由に動く方法」で実施してもよい。
【0033】
1つの例示的な実施形態によれば、(それぞれの)MFHは、電解槽に対して少なくともほぼ中央に配置される。これにより、コンパクトな配置も可能になる。この場合、特に、2つのMFHの中央の、特に、わずかにオフセットされた配置もまた、建設スペースおよび付属品の節約という点で利点を提供する。
【0034】
1つの例示的な実施形態によれば、(それぞれの)MFHは、特に、それぞれの側で、陽極液容器または陰極液容器の従来の高さ位置とは無関係の高さ位置に配置される。機能統合により、さらなる構成要素の分離が可能になる。個別の収集容器は不要になったため、MFHは、必ずしも陽極液容器若しくは陰極液容器またはドレインタンクよりも高く配置されている必要はない。これにより、設計の自由度も高まる。
【0035】
1つの例示的な実施形態によれば、(それぞれの)MFHは、セルに対してより低い高さ位置、特に、それぞれの側に配置される。これはまた、少なくともいくつかの機能に関して、純粋に重力駆動の流れを提供する。
【0036】
1つの例示的な実施形態によれば、(それぞれの)MFHは、その背面のパイプによって、システムのさらなるプラント構成要素に接続される。これにより、特に、MFHの相対的な向きや配置に関して、装置にとって技術的に有利な統合も可能になる。
【0037】
1つの例示的な実施形態によれば、(それぞれの)MFHは、電気分解ハーフセルの全体積の少なくとも15%の体積を有し、特に、MFHに結合された全ての(ハーフ)セルのセルまたはフレームワークの体積に関して、全体積は10~60立方メートル[m]の範囲である。1つの例示的な実施形態によれば、MFHに結合された(ハーフ)セルの体積に対するMFHのパーセンテージ体積は、30~150パーセントの範囲である。このことは、それぞれ、技術的なプロセスの柔軟性を提供し、機能を拡張する可能性がある。また、優れたバッファリング機能も提供する。
【0038】
1つの例示的な実施形態によれば、(それぞれの)MFHの長さ/幅の比は10~75の範囲である。さらにまた、このことは設計上の利点を有しており、機能統合も促進される。
【0039】
1つの例示的な実施形態によれば、(それぞれの)MFHは、円筒形状、または電解液用の少なくとも部分的に円筒形のバッファ容積を提供するための形状を有する。技術的なプラントの利点(特に、建設スペース)に加えて、これにより、材料輸送の観点からの最適化と、構成要素の相対的な配置の最適化も可能になる。
【0040】
1つの例示的な実施形態によれば、(それぞれの)MFHの直径は、450~1000mmの範囲、特に、500~800mmの範囲にある。
【0041】
1つの例示的な実施形態によれば、(それぞれの)MFHの最大直径は、特に円筒形の断面形状で800~1000mmの範囲にある。これにより、それぞれ有利な技術プラント統合が可能になる。本発明によるMFHの比較的大きな直径はまた、長い滞留時間を可能にし、その結果、相分離を促進することができる(相分離の包括的機能統合)。
【0042】
例示的な一実施形態によれば、(それぞれの)MFHは、セル数の関数として定義される長さを有し、特に、150セルの場合は10~15m(メートル)の範囲、または最大300セルの場合は20~30m(メートル)の範囲である。セル数の関数として長さを定義することは、適切な設計と機能統合を可能にし、とりわけ電解液にかなりの自由行路長を与えることもでき、このことはプロセスに利点を与えることになる。
【0043】
1つの例示的な実施形態によれば、(それぞれの)MFHは、特に、10~60m(立方メートル)の範囲のセルまたはフレームワークの体積に関して、少なくとも100mmの電解液充填レベルを有する。このことにより、特に、複数の機能の時間的な重なり合いや充填レベルのばらつきなどの点で、高い技術的方法の柔軟性が確保され得る。
【0044】
1つの例示的な実施形態によれば、(それぞれの)MFHは、最大0.2m/秒の電解液の流速に適合され、または設計されている。これにより、特に、包括的な機能統合も可能になる。
【0045】
この場合、MFHの長さは、単一要素の数の関数として調節または選択してもよい。計装および付属品に関して、約2mの追加の長さが有利である可能性があることが判明した。用途に応じて適切な長さを、広い範囲、例えば、5~30mの間から選択してもよい。
【0046】
1つの例示的な実施形態によれば、MFHは、少なくとも1つの統合された測定センサユニット、特に、電解液用の少なくとも1つの充填レベルセンサ、および/または少なくとも1つの温度センサを備える。このようにして、それぞれのプロセスをより簡単に調節することができる。プロセスの段階によっては、MFHの監視により、重要な情報が簡単に提供される場合がある。
【0047】
充填レベルの監視と調節を可能な限り大きな容量と組み合わせることで、簡単で運転上信頼できる方法でバッファ付きポンプ供給としてMFHを使用することも可能になる。さらにまた、窒素導入および安全装置(いわゆるXVおよびレベルスイッチ)が提供される場合がある。充填レベル調節を使用することにより、包括的な機能統合が簡単な方法で可能であることが判明した。それとは対照的に、充填レベルの調節は、これまで、従来使用されていた流出ライン(単に調節されない自由流出)では実行されていなかった。
【0048】
1つの例示的な実施形態によれば、MFHは、受け取る電解液の領域または電解液に提供されるバッファ容積の領域内に、少なくとも1つの静的な流路障害物、特に、バリアを備える。このようにして、流路または流速に影響を与えることが可能である。例えば、プレートまたはバッフルはMFHの下半分に配置される。流路障害物を相分離プロセスを最適化するための設置部品として説明してもよい。
【0049】
1つの例示的な実施形態によれば、(それぞれの)MFHは、2~5分の範囲の電解液(または二相混合物、または二相)滞留時間に適合される。このようにして、特に、相分離の機能も効果的な方法で統合することができる。
【0050】
1つの例示的な実施形態によれば、(それぞれの)MFHは、0.01~0.2m/秒(メートル/秒)の範囲の電解液(または二相混合物、または二相)の流速に適合される。これにより、MFHに統合された効果的な相分離も可能になる。
【0051】
1つの例示的な実施形態によれば、MFHは、収集される電解液(または二相混合物)の最小滞留時間に適合され、特に、その流速を、特に、最小滞留時間中、流速ゼロまで減少させることによって電解液(または二相混合物)を収集するように適合されている。このようにして、包括的な機能統合も確保される。
【0052】
1つの例示的な実施形態によれば、電解装置は、セルに結合可能である/結合された2つのMFH、即ち、陽極液用および陰極液用の電解槽のそれぞれの側にある2つのMFHを備え、これらMFHは、特に、互いに対して横方向にオフセットして、特に、電解槽に対して少なくともほぼ中央に配置される。この配置は、最大限に包括的な機能統合された、技術的装置および方法の利点を提供する。
【0053】
1つの例示的な実施形態によれば、電解装置は、セルに結合可能である/結合された2つのMFHを備え、これらは、平衡化ラインによって互いに接続され、ならびに/または充填レベルに依存する流量調節部および/またはバイパス流量調節部(調節されたバイパス)によって互いに結合される。これはまた、電解装置の異なる運転モード(特に、「クロス運転」または「並行運転」)に関して柔軟性も提供する。
【0054】
前述の目的はまた、本発明によれば、少なくとも排出、相分離、収集または一時的貯蔵、バッファリング、ポンプシステム用のまたはポンプシステムへの電解液の供給、セル、特に、上記のような電解装置を空にすることを含む機能群から、少なくとも電解液排出機能および電解液収集機能ならびにバッファリングおよびバッファ付きポンプ供給機能の統合された組合せを有するMFHを備えた電解装置によって達成され、ここで、電解装置は、特に、電解液の総量の少なくとも10または20または30%のバッファ容積を備えた状態で、バッファ付きポンプ供給機能が、MFHによって(電解液に関して)排他的かつ一体的に提供され得るようにポンプシステムに接続されている。このことは、上記の利点につながる。この場合、MFHは自由レベルの収集ヘッダーと呼ばれ、それに応じて構成および配置される。この場合、パーセンテージの指定は、特に、電解セル内の電解液の体積を指す場合がある。実行される機能とは無関係に、または運転状態とは無関係に、このようなバッファ容積により、気相の電解セル内への変位を補償することが可能になる。特定のプラント構成では、わずか5%の範囲のバッファ容積でも十分な場合がある。プラントの運転中に最大の柔軟性を得るためには、例えば、30%の比較的大きなバッファ容積が有利であることが判明した。
【0055】
前述の目的はまた、本発明によれば、電解装置、特に、上記の電解装置用のMFHによって達成され、ここで、MFHは、以下の機能群から、少なくとも第1、第3、第4、第5の機能を含む複数の機能を一体的に提供するように適合される、
-第1の機能として、電解装置のセルからの電解液の排出、
-第2の機能として、相分離、
-第3の機能として、セルからの電解液の収集、
-第4の機能として、特に、電気分解中の相変化に対して、電解液のバッファリング、
-第5の機能として、電解液を電解装置のポンプ回路で使用可能にすること、
-第6の機能として、セルを完全に空にする目的で電解液を受け取ること。
【0056】
このことは、上記の利点につながる。
【0057】
前述の目的はまた、本発明によれば、電気分解によって電解液または二相混合物を供給するための少なくとも1つのフレームワークを形成するように組み合わされた多数の電解セルを有する電解槽によって、電気分解、特に、水の電気分解によって、少なくとも1つの製品ストリーム、特に、水素を供給する方法によって達成される。ここで、電解液はセルから排出され(第1の機能)、2つの相に分離され(さらに、特に、第2の機能)、電解液、または二相混合物、または相は、ポンプシステム、特に、電解液を循環させるためのポンプシステム(さらに、特に、第3の機能)の上流で収集されるか、または一時的に貯蔵され、少なくとも電解液または二相混合物を排出し、電解液または二相混合物または二相を収集または一時的に貯蔵する機能は、特に、セルに結合可能である/結合された、充填レベル調節ができる少なくとも1つのMFHによって、MFH内または統合型方法ステップ内で一体的かつ一緒に実施される。このことは、上記の利点につながる。
【0058】
一実施形態によれば、相分離の機能はまた、特に、バッファ付きポンプ供給としても使用される充填レベル調節が行われるMFHによって、統合型MFHおよび/または統合型方法ステップにおける排出および収集の機能と一体的に実行される。このようにして、可能性のある機能統合の広い範囲を使用することができる。
【0059】
一実施形態によれば、ポンプシステムによる電解液のポンピング(特に、循環中)、特に、セルへの再循環は、収集または一時的貯蔵の下流で行われ、電解液は、統合型MFHまたは統合型方法ステップ(バッファ付きポンプ供給機能を備えたMFH)によってポンピング用に供給される。これにより、包括的な機能統合または合併がなされる。
【0060】
本発明によれば、収集はまた、特に、相分離のために、事前定義可能な最小滞留時間中に電解液をバッファリングすること、および最小容積をバッファ付きポンプ供給として使用可能な状態にするために、事前定義可能な最小容積または最小充填レベルで電解液を一時的に貯蔵することの2つのサブ機能を含む。これにより、統合型方法ステップにおいて、または多機能収集容器を使用して幅広い機能が提供される。この幅広い機能には、特に、発泡による体積変化の観点からの利点も有する。
【0061】
一実施形態によれば、電解液(または二相混合物、または二相)の相分離のための2~50分の範囲の滞留時間が、特に、MFHにおいて遵守される。
【0062】
一実施形態によれば、相分離のために、特に、MFHにおいて、電解液(または二相混合物、または二相)の流速が0.01~0.2メートル/秒[m/s]の範囲で遵守される。このようにして、機能統合もそれぞれ拡張することができる。
【0063】
一実施形態によれば、収集には、電解液の総体積の5~30パーセントの範囲の体積変動を考慮して、電解液のバッファリングが含まれる。一実施形態によれば、収集には、内部ポンプ回路用のバッファ付きポンプ供給として最小体積の電解液を使用可能にすることが含まれる。これにより、それぞれ機能統合が拡張される可能性がある。
【0064】
一実施形態によれば、水素は、水の電気分解によって、特に、5~20MWの電力範囲の電解装置によって供給される。本発明による方法、または本発明による装置は、特に、前述の電力範囲において、水の電気分解に重要な利点を提供できることが判明した。電解装置の性能(または生産能力)は、体積流量[通常の立方メートル/時]を参照して表してもよい。電解装置は、1000~4500Nm3/h[Nm/h](水素生産速度)の範囲の容量を有することが好ましい。
【0065】
一実施形態によれば、(それぞれの)MFHから供給される全ての電解液は、全体として、対応するMFH内へ再循環される(完全な再循環)。この運転モードでは、MFHを回路の構成要素として使用してもよい。
【0066】
一実施形態によれば、機能的に統合された方法は、個別運転モードまたは複合運転モードで実行されるが、特に、陽極液側のMFHと陰極液側のMFHとの間に平衡化ライン(および/または調節された体積補償のための同等の機能を備えたライン)を備えた複合運転モードで実行される。これにより、柔軟性がさらに向上する可能性がある。
【0067】
前述の通り、複数のMFHを互いに接続してもよく、特に、陰極液のMFHと陽極液のMFHとを接続してもよい。例えば、体積流量が正確に等しくない場合に発生する可能性がある体積変動は、前述の平衡化ライン(連通パイプ)によって、および/またはそれぞれ2つの電解液ポンプのポンプバイパスによって補償されてもよく、したがって、第1のMFHからの部分的な流れを、ポンプ吐出側からポンプ吸込側に戻してもよい。これにより、有効体積流量が減少する可能性がある。第1のMFHの充填レベルが増加した場合、対応するポンプバイパスを開放してもよい。一方、第2のMFHの充填レベルが上昇した場合、もう一方の(第2の)バイパスが開放する可能性がある。したがって、この運転モードでは、少なくとも2つのMFH内の少なくとも2つの充填レベルセンサの充填レベル測定データを分析し、制御/調節の基礎として使用してもよい。
【0068】
前述の目的はまた、本発明によれば、少なくとも排出/流出、バッファリング、相分離、収集または一時的貯蔵、特に、電解液を循環させるためのポンプシステム用の電解液を、またはポンプシステムに電解液を供給すること、特に、上記の電解装置においてセルを完全に空にする目的で電解液を受け取ることを含む機能群から、少なくとも電解液の排出(流出)機能および電解液の収集機能、ならびにポンプシステム用の、またはポンプシステムへの電解液のバッファリング機能および供給機能を組み合わせた統合機能を提供するための電解装置における少なくとも1つのMFHの使用によって達成されるが、前記電解液を受け取る場合、相分離は、MFHにおいても、特に、上記のような方法においても実施されることが好ましい。この場合、MFHを、特に、電解液の全体積の少なくとも10%、20%、または30%のバッファ容積を有するバッファ付きポンプ供給のために配置し、適合させてもよい。
【0069】
前述の目的はまた、本発明によれば、少なくとも1つのフレームワークを形成するように組み合わされた多数の電解セルを有する電解槽による電気分解によって、少なくとも1つの製品ストリーム、特に、水素を供給する方法によって達成される。ここで、電解液はセルから排出され、2つの相に分離され、電解液は、特に、上記のような方法でポンプシステムの上流で収集され、セルを空にすることを含む少なくとも1つのさらなる機能は、特に、セルに結合された少なくとも1つの充填レベル調節可能なMFHによって、特に、電解槽の保守のために、MFHにおける排出機能、およびまた排出機能と空にする機能と一体的かつ一緒に収集機能も、一体的に提供されるまたは一緒に実行される。これは、上記の利点を提供する。特に、個別のドレインタンクを節約することが可能である。複数のフレームワークの場合、すでに提供されているMFHの容量を、ドレイン機能用にも都合よく使用してもよい。
【0070】
本発明のより包括的な説明のために、特に、5MWクラスの水電解モジュールを、特に、以下に説明する。この場合、「ヘッダー」という用語は「MFH」という用語と同義語として使用され、特に、明記されていない限り、「MFH」と省略される。
【0071】
前述の目的はまた、本発明によれば、上記のような方法によって達成され、ここで、充填レベル調節は、それぞれのMFHで充填レベル測定を実施し、現在のACTUAL充填レベルをSETPOINT充填レベル、または充填レベルの下限しきい値および/または上限しきい値と比較することによって、特に、所望の/事前定義された充填レベル範囲内で充填レベルを調節するために媒体を供給または排出する目的のために実施される。この場合の充填レベル調節には、それぞれ、陽極液MFHまたは陰極液MFHの充填レベル測定が含まれることが好ましい。それぞれのMFH内の体積(電解液の量)と電解装置内の全体積(電解液の量)は、充填レベルによって決定される。例えば、水の供給(特に脱塩水)もまた、全体積の関数として調節されてもよい。この場合、それぞれの測定された(ACTUAL)充填レベルによって、2つのMFH間の体積変動も、特に、切替えやバルブ作動を必要とせずに、補償ライン(平衡化ライン)によって調節または回避することができる。
【0072】
例示的なプラント構成を以下に説明する。
【0073】
特に、5MWクラスの水電解モジュール(電解装置)を使用して、水酸化カリウム中での水の電気分解によって水素と酸素を得る。このモジュールは、電解槽と電解液システム、変圧器/整流器、水素処理と酸素処理を有するセル領域で構成され、冷却水システムが追加されている。
【0074】
脱塩水が電解液システムのプロセスに供給され、電解槽のセル内で電気化学的に水素と酸素に分解される。形成された水素は、その後、水素処理で冷却および濾過され、内部バッテリリミットに送られる。生成された酸素も同様に、酸素処理で冷却および濾過される。
【0075】
電解槽の電流負荷または水素生産速度を、水の電気分解の基準変数として使用してもよい。脱塩水の体積流量は、水の電気分解の生産速度に依存し、電流負荷によって調節してもよい。この場合、電解液システムの総量は、2つの充填レベル測定によって測定され、微調節の制御変数として使用されてもよい。基準製品構成要素としての水素は、数百ミリバール[mbar g]の過圧状態に調節してもよい。酸素圧は、数ミリバールの差圧でこの調節に従う。水素は、過圧による水素圧縮のために内部バッテリリミットを出る。電解液は、複数のポンプによる一定の体積流量で回路内を運ばれる。電気化学反応により電解液内の濃度シフトがセル内で発生するため、陽極液と陰極液の体積流量が異なる。この相違は、2つのMFHを互いに結合する平衡化ラインによって補償されていてもよい。
【0076】
電解槽の個々のセルは、例えば、双極方式で、即ち直列に配置してもよく、この目的のために、電気的接触を確実にするために、鉄骨フレームに吊るし、一緒にプレスしてもよい。各セルは、特に、ニッケル製の陽極と陰極のハーフシェル、セパレータ、および陽極と陰極のハーフシェルを互いにシールし、セルを外部でシールするシールシステムで構成される。この場合、セルの陽極と陰極のハーフシェルは、電気的絶縁およびイオン伝導の方法で、セパレータによって互いに分離される。陽極および陰極ハーフシェルの流入および流出ヘッダーは、特に、それぞれ、セルに対して横方向またはセルの下に配置されている。
【0077】
電荷平衡のために、正に帯電したカリウムイオンは、セルの陽極側からセパレータを通って陰極側に移動する。この場合、水分子も陰極側に輸送される。セルの陽極側で形成される酸素と陽極液の二相混合物は、特に、接続された波形パイプを通って下向きに排出され、セルまたは全てのセルから電解槽の多機能陽極液ヘッダータンク(MFH)に収集される。形成された酸素の陽極液からの分離を、統合されたバッファ付き供給機能を備えたMFHの自由レベル体積で行ってもよい。酸素は酸素冷却器に向かって上向きに運ばれ、酸素飽和した陽極液は陽極液ポンプによって電解液回路にフィードバックされる。この場合、MFHはバッファ付きポンプ供給機能を果たすことができる。
【0078】
次に、陰極液と水素の二相混合物がセルの陰極側で形成され、陽極液と同様の方法で、特に波形パイプを介して多機能陰極液ヘッダータンク(MFH)に排出されてもよい。そこで、水素は陰極液から分離されてもよい。水素は水素冷却器に上向きに運ばれてもよい。水素飽和した陰極液は、陰極液ポンプによって電解液回路に供給されてもよい。この場合、対応するMFHは、バッファ付きポンプ供給機能を果たすことができる。
【0079】
陰極スペースと陽極スペースとの間の一定の差圧は、セルの信頼できる運転にとって有利である。水素圧は、特に、酸素圧よりも数ミリバール高くなるように調節されてもよい。
【0080】
運転モードに関しては以下の通りである。セルからの陽極液および陰極液は、特に、一般的なクロスオーバ電解液システムで輸送することができる。電解槽の陽極ハーフシェルからの陽極液は、陽極液MFHに収集される場合がある。そこから、陽極液を陽極液ポンプによって電解槽の陰極液流入ヘッダーに送り込んでもよい。水の電気分解中は常に水が消費されるため、脱塩水が陽極液ポンプの吸入側に供給されてもよい。供給量は、電解槽の電流負荷および電解液の充填レベルによって調節することができる。同様に、陰極液を陰極液MFH内の陰極ハーフシェルから収集することができる。そこから、陰極液を、温度調節のために陰極液ポンプを介して、陰極液冷却器によって電解槽の陽極液流入ヘッダーに運ぶことができる。
【0081】
最適運転のために、電解槽のセルを、電解槽の電流負荷の関数として調節された所定の温度で運転してもよい。通常運転では、電解液システムを、陰極液冷却器によって温度調節の方法で冷却してもよい。電解液システムを空にするために(例えば、保守の目的で)、陽極液および陰極液のMFH内に電解液を受け入れてもよい(省略可能なドレイン機能)。
【0082】
陽極液MFHからの酸素は、酸素冷却器内の冷却水で冷却してもよい。それによって形成されたアルカリ補償は、電解液システムに供給されてもよい。冷却後、特に、アルカリ性エアロゾルを除去するために、酸素を酸素フィルタで濾過し、屋根から(上向きに)放出してもよい。水酸化物による酸素フィルタの目詰まりを避けるために、フィルタを脱塩水で洗浄してもよい。酸素フィルタからの凝縮液も同様に再循環してもよい。
【0083】
陰極液MFHからの水素は、水素冷却器の冷却水で冷却され、続いて、メタノール合成時のCO蒸発からの水/グリコール混合物で、水素再冷却器で再冷却されてもよい。冷却中に形成されたアルカリ性凝縮物は、電解液システムに供給されてもよい。続いて、水素については、特に、同伴されたアルカリ性エアロゾルを除去するために、水素フィルタで濾過してもよく、その後、メタノール合成に運んでもよい。水酸化物による水素フィルタの目詰まりを避けるために、フィルタを脱塩水で洗浄してもよい。必要に応じて、水素を水素煙道から放出してもよい。煙道は、煙道内の水素点火の場合に火炎がガスシステムに侵入するのを防ぐことができる逆火安全性を備えていることが好ましい。
【0084】
陰極液冷却器、酸素冷却器および水素冷却器を組み合わせて供給するために、冷却水は、冷却水熱交換器によって循環され、空気に対して冷却されてもよい。この場合、冷却器はそれぞれのプロセス温度によって調節してもよい。水素再冷却器は、メタノール合成とは別の水/グリコール回路によって冷却してもよい。
【0085】
本発明のより包括的な説明のために、さらなる水電解モジュールを特に以下に説明する。
【0086】
さらなる例示的なプラント構成を以下に説明する。
【0087】
水電解によって水素を得るための以下に説明するプラント(電解装置)は、電解槽、関連する変圧器/整流器、陽極液システムおよび陰極液システムからなる電解液システム、ならびに水素調整部および酸素調整部を有するセル領域からなる。脱塩水は2つの電解液システムのプロセスに供給され、電解槽のセル内で電気化学的に水素と酸素に分割される。形成された水素は、その後、水素調整部で冷却され、濾過され、煙道を通って大気に放出される。分析のため、および省略可能であるが水素のさらなる処理のため、フランジおよびシャットオフも同様に供給されてもよい。生成された酸素は、酸素調整部内で冷却され、濾過され、同様に煙道を通して大気に放出される。
【0088】
電解槽の電流負荷または水素の生産速度は、水の電気分解の基準変数として使用してもよい。供給される脱塩水の必要な体積流量は、電流負荷によって調節される。電解槽への体積流量は、運転モードに応じて、電流負荷または電解液容器の充填レベルの関数として流量調節される。陽極液/陰極液ポンプは、電解液流入ヘッダーの前の圧力の関数として調節される。基準製品構成要素としての酸素は、数百ミリバールの過圧状態に調節してもよい。水素圧は、数ミリバールの差圧でこの調節に従う。
【0089】
電解槽は、水酸化ナトリウム(水酸化カリウムであってもよい)での水の電気分解によるガス状の水素と酸素の生産に使用される。電解槽は、双極式で、即ち直列に配置された複数のセルからなり、この目的のために、例えば、鉄骨フレームに吊り下げられ、一緒にプレスされる。各セルは、ニッケル製の陽極と陰極のハーフシェル、陽イオン交換膜、および陽極側と陰極側を互いにシールし、セルを外部でシールするシールシステムから成る。この場合、陽極側と陰極側は、膜によって電気絶縁性およびイオン伝導性の方法で互いに分離されている。陽極側と陰極側の流入ラインと流出ラインは、それぞれセルに対して横方向またはセルの下に配置されている。陽極と陰極への流入液には、運転モードに応じて、例えば、約10~20重量パーセントの灰汁が含まれる。陽極液と酸素、および陰極液と水素の新しい相混合物も同様に、それぞれ、陽極液または陰極液セルヘッダーMFH内へ下方に排出される。
【0090】
個々の要素またはセルでは、酸素と水は、灰汁の水酸化物イオンの電気化学的酸化によって陽極側に形成される。水素イオンと水酸化物イオンは、水の電気化学的還元によって陰極側に形成される。したがって、全体的な正味の反応では、生成される水素分子ごとに1分子の水が消費される。電荷平衡化のために、正に帯電したナトリウム(またはカリウム)イオンは、セルの陽極側から膜を通って陰極側に移動する。この場合、水分子も膜を通って陰極側に輸送される。これにより、陽極液のpHが低下し、陰極液のpHが上昇する。同時に、2つの電解液の体積流量は、水の消費量および関連する輸送プロセスの関数として変化する。
【0091】
電解槽のセルには、運転モードに応じて、陽極流入ヘッダーと陰極流入ヘッダーによって、陽極液と陰極液のシステムから熱的に調節された灰汁が供給される。この場合、体積流量は、供給が不十分な場合に電解槽をオフにする流量計と流量調節弁によって調節できる。この場合、特に、比較的長く細いパイプによって調節できる圧力降下により、個々のセルへの陽極と陰極の流入体積流量が均一に分配される。
【0092】
セルの陽極側で形成された酸素とアルカリ性陽極液の二相混合物は、接続された波形パイプを通って下向きに排出され、電解槽の陽極液セルヘッダーMFH内の全てのセルから収集される。形成された酸素を陽極液から分離することは、この自由レベルの収集容器で行ってもよい。酸素は上向きに酸素冷却(ガス出口)に運ばれ、酸素飽和した陽極液は下向きに陽極液容器(液体出口)へ流れ出る。
【0093】
次に、陰極液と水素の二相混合物がセルの陰極側で形成され、波形パイプを通って陰極液セルヘッダーに陽極液と同様の方法で排出される。そこで、水素は同様に陰極液から分離され、水素冷却器へ上向きに運ばれ、水素飽和した陰極液は陰極液容器MFHへ流れ出てそこで収集される。
【0094】
陰極スペースと陽極スペースとの間の一定の正の差圧は、セルの信頼できる運転にとって有利である。水素圧は、酸素圧よりも数ミリバール高くなるように調節されることが好ましい。酸素圧、水素圧、または差圧が対応する制限を超えるか下回ると、安全メカニズムが起動し(特に、電解槽でのロック、過圧調節)、最大許容運転圧力の遵守が確保される。言及される可能性のある例は、電解槽の電源切断、電解槽の負荷低減、過度に高い/低い差圧から電解槽の防護、電解槽の陽極液および陰極液セルヘッダーの圧力防護、水素と酸素の窒素システムへの逆流防止、水素システムの過圧防護、水素システムの減圧防護、および/またはセル領域に関する窒素の圧力防護である。
【0095】
セルの陰極液セルヘッダーからの陰極液は、陰極液容器に流れ込む。セルの陽極液セルヘッダーからの陽極液は、陽極液容器に流れ込む。シャットダウン後に電解槽を空にすることができるようにするために、必要に応じてシステムの液体の全量を受け取ることができるように、MFHは寸法設定されていてもよい。本発明によれば、MFHは、機能統合のためにとにかくすでにかなりの量を有しており、追加してドレイン機能を統合しても、特に、高い余分な出費をもたらさないことが判明した。陽極液および陰極液は、1つまたは複数のMFHから、それぞれ陽極液熱交換器または陰極液熱交換器を介して、温度調節するための陽極液/陰極液ポンプによって、圧力調節方式で、ポンプで電解槽に送られる。陽極液/陰極液ポンプは共通の予備ポンプを有することが好ましい。電解液を、熱交換器から、インタレース回路(「クロス運転」)で、代替的に相互に分離された2つの陽極液回路および陰極液回路(「並行運転」)で、電解槽の流入ヘッダーに送ってもよい。クロス運転では、陽極液は、陽極液熱交換器を介して陽極液容器から陽極液ポンプを通って、電解槽の陰極流入ヘッダーへの陰極流入液として、運ばれる。それに対応して、陰極液は、陰極液熱交換器を介して陰極液容器から陰極液ポンプを通って、電解槽の陽極流入ヘッダーへの陽極流入液として、運ばれる。並行運転では、陽極液は、陽極液熱交換器を介して陽極液容器から陽極液ポンプを通って、電解槽の陽極流入ヘッダーへの陽極流入液として、ポンプで送られる。同様に、陰極液は、陰極液熱交換器を介して陰極液容器から陰極液ポンプを通って、電解槽の陰極流入ヘッダーへの陰極流入液として、運ばれる。陰極液システムでの灰汁の蓄積と陽極液システムでの灰汁の枯渇は並行運転で発生する可能性があるため、液補償を可能にするために陽極液容器と陰極液容器を相互に接続する。この場合、ガス側での水素と酸素の分離を確実にすることができる。水の電気分解の間、水は継続的に消費されるため、両方の運転モードで、脱塩水が陽極液ポンプ/陰極液ポンプの吸込側に補充されてもよい。
【0096】
流量調節器によって、一方では電流負荷の関数としての脱塩水の供給を、他方では電解槽の陽極流入液および陰極流入液の体積流量を、可能な限り一定に保つことができる。この場合、陽極液と陰極液の容器MFHを使用して、例えば、給水または電解液と凝縮液の再循環(統合されたバッファ機能)に起因するそれぞれの電解液の体積の変動を補正する。電解槽への陽極液および陰極液の体積流量は、主に、電解槽の電流負荷、または電解槽の充填または循環に必要な体積流量によって決定される。陽極流入ヘッダー内および陰極流入ヘッダー内の圧力は、特に、陽極液/陰極液ポンプの周波数によって調節されてもよく、流入液の一定の圧力条件を確保する。そのために提供された圧力トランスミッタを、陽極液/陰極液熱交換器の後ろに配置してもよい。自然な圧力降下の場合、予備ポンプを始動するインターロックが作動することがある。
【0097】
クロス運転では、陽極液システムから電解槽の陰極流入ヘッダーへの陰極流入液は、電解槽の電流負荷の関数として流量調節されることが好ましい。そのために提供される流量調節部は、陰極流入ヘッダーの前にある。この場合、陰極液収集容器MFHの充填レベル調節は、陽極流入液の体積流量を規定してもよい。流量調整部は、陽極流入ヘッダーの前に配置される。並行運転では、陽極流入ヘッダーへの陽極流入液と陰極流入液の両方が、電流負荷の関数として流量調節される。過充填保護、またはポンプ保護は、陽極液ポンプ/陰極液ポンプに作用する充填レベルメータによって実施される。
【0098】
脱塩水の供給は、水の電気分解での消費によって決定され、したがって、電解槽の電流負荷によって調節される。供給は主に陰極流入液で行われる。クロス運転では、脱塩水は、陽極液ポンプの吸入側を介して流量調節する方法で補充され、並行運転では、陰極液ポンプの吸入側を介して補充される。
【0099】
最適運転のために、電解槽のセルは、所定の温度で起動されてもよく、この温度は、運転モードおよび電解槽の電流負荷の関数として調節されてもよい。プラントを起動するために、低負荷で、電解液システムの加熱は熱交換器によって行われる。通常運転では、電解液システムはこれらの熱交換器によって冷却される。熱交換器にはそれぞれ温度調節部があり、その温度センサはそれぞれ熱交換器の下流に配置されている。温度設定値は、電解槽の運転ウィンドウによって決定される。熱交換器は、過圧バルブによって熱膨張による損傷から保護されている。言及される可能性のある安全メカニズムの例は、容器の過充填防護、ポンプの空運転防護、ポンプの運転および自動起動、停電後のポンプの再起動、および/または陽極液回路および陰極液回路の過熱防護である。
【0100】
陽極液セルヘッダーMFHからの酸素は、酸素調整部内で結合され、酸素冷却器内の冷却水で冷却される。それによって形成されたわずかにアルカリ性の凝縮物は、MFHに流れ出る。冷却後、酸素は、特に、同伴されたアルカリ性エアロゾルを除去するために、酸素フィルタで濾過され、酸素煙道を介して放出される。水酸化物による酸素フィルタの目詰まりを防ぐために、フィルタは定期的に脱塩水で洗浄される。言及される可能性のある安全メカニズムの例は、酸素の逆流防護、酸素煙道の不活性化、および/または酸素の過圧防護である。
【0101】
陰極液セルヘッダーMFHからの水素は、水素調整部内で結合され、水素冷却器内の冷却水で冷却される。それによって形成されたわずかにアルカリ性の凝縮物は、MFHへ再循環される。冷却後、水素は、特に、同伴されたアルカリ性エアロゾルを除去するために、水素フィルタで濾過され、水素煙道から放出される。水酸化物による水素フィルタの目詰まりを防ぐために、フィルタは定期的に脱塩水で洗浄される。言及される可能性のある安全メカニズムの例は、水素の逆流防護、水素煙道の不活性化、蒸気による火炎消火、および/または過圧防護である。
【0102】
上記の構成は、特定の構成の例を使用して、以下で再び説明される。
【0103】
本発明のさらなる特徴および利点は、図面の助けを借りた少なくとも1つの例示的な実施形態の説明から、および図面自体から見出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
図1】1つの例示的な実施形態による電解装置を概略的に示す側面図である。
図2】1つの例示的な実施形態による電解装置を概略的に示す斜視図である。
図3】従来技術による電解プラントを概略的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0105】
個々の図に関連して明示的に説明されていない参照については、他の図を参照する。
【0106】
図面の詳細な説明
図1および図2は、電解槽13および多機能収集容器MFH15(それぞれ、陽極液用、陰極液用)を有する電解装置10を示す。電解装置10の構造は、特に、対称配置において、それぞれ、陽極液側13aおよび陰極液側13bについて同等であってもよい。この目的のために、1つのMFH15aが陽極液側に提供され、1つのMFH13bが陰極液側に提供されてもよい。いずれかの側にあるこれらのMFHは、特に、いわゆるクロス運転のために、平衡化ライン(図示せず)によって互いに連通されていてもよい。さらにまた、電解装置10は、多数のセル16.1を有する少なくとも1つのフレームワーク16を備える。
【0107】
電解液Eは、ポンプシステム17およびプラント内部の電解液回路によって、電解装置10を介して運ばれてもよい。測定センサユニットまたは電解液分析部18は、特に、少なくとも1つの充填レベルセンサ18.1および少なくとも1つの温度センサ18.2を備え、この場合、測定センサユニットは、それぞれのMFH内に少なくとも部分的に配置されてもよい。
【0108】
それぞれのMFHを使用することにより、単純なプラント技術によって、または1つの技術的なプラント構成要素のみによって、特に、有利な設計建設と一緒に、多数の機能を累積的に実行できる。本発明によるMFHは、以下の少なくとも6つの機能の機能的統合を可能にすることができることが判明した。
【0109】
第1の機能F1として、セルからの電解液の排出、
第2の機能F2として、相分離、
第3の機能F3として、収集、
第4の機能F4として、電解液のバッファリング、
第5の機能F5として、電解液をポンプ回路(バッファ付きポンプ供給)で使用可能にすること、
第6の機能F6として、特に、保守の目的で、少なくともセルを空にすること(ドレイン)。
【0110】
それぞれのMFH15によって、特に、プラントの総スペース要件が比較的中程度のままであるような方法で、有意な収集容積またはバッファ容積Viがさらに提供されてもよい。図1によれば、MFH15は長手方向xに延在し、それにより、MFHの内部容積Vi内にかなりの自由行路長×15、特に、セルの、またはフレームワーク16の長手方向範囲よりも長い自由行路長×15を提供する。換言すれば、それぞれのMFHは、同時に複数のフレームワークにサービスを提供するか、または複数のフレームワークに結合することができ、このことにより機器の出費が同様に削減される。この場合、MFHは、プロセスの柔軟性を最大限に高めるために、大きなバッファ容積も提供する。省略可能な第6の機能F6(ドレイン)を説明するために、ここでは、内部容積Viの電解液充填レベルをE15で示す。
【0111】
高さ方向zでは、特に、MFHとセル16.1との間の垂直距離z3が最小化されて、電解プラント全体の比較的低い建設高さz1を確保できる。
【0112】
図3は、従来技術による電解プラント1を説明している。電解槽3および多数のフレームワーク6は、それぞれが多数のセルを有し、陽極液容器または陰極液容器5の上方の構造/取付け面上に配置されている。フレームワーク6は、それぞれ、陽極液用、陰極液用の1つまたは複数の(自由レベルの)流出ライン3.1(流出ヘッダー)を介して容器5に結合されている。電解液の循環は、ポンプシステムおよび電解液回路を有する電解液システム7によって実施することができる。
【0113】
従来技術による電解プラント1は、非常に高い高さを有する。これには、例えば、高い高さの取付け/機械ホールが必要になるなど、(コスト面での)欠点もある。さらにまた、比較的大きな技術装置(機器)の費用が必要である。
【符号の説明】
【0114】
1 従来技術による電解プラント
3 従来技術による電解槽
3.1(自由レベル)流出ラインまたは流出ヘッダー(それぞれ、陽極液用、陰極液用)
5 従来技術による陽極液容器または陰極液容器
6 セルを含むフレームワーク
7 ポンプシステムと電解液回路を備えた電解液システム
10 電解装置
13 電解槽
13a 陽極液側
13b 陰極液側
15 多機能流出ヘッダー「MFH」(特に、それぞれ陽極液用、陰極液用)
15a 陽極液側のMFH
15b 陰極液側のMFH
16 フレームワーク
16.1 セル
17 電解液システムまたはポンプシステム、およびプラント内部の電解液回路
18 測定センサユニットまたは電解液分析部
18.1 充填レベルセンサ
18.2 温度センサ
E 電解液
E15 MFH内の電解液充填レベル
F1 第1の機能で、特に、セルからの電解液の排出
F2 第2の機能で、特に、相分離
F3 第3の機能で、特に、収集
F4 第4の機能で、特に、電解液のバッファリング
F5 第5の機能で、特に、電解液をポンプ回路(バッファ付きポンプ供給)で使用可能にすること
F6 第6の機能、特に、保守のために空にすること(ドレイン)
Vi 収集容積またはバッファ容積
x 縦方向
x15 MFHの内部容積における長さ、または自由行路の長さ
z 高さ方向
z1 電解プラント全体の建設高さ
z3 電解槽またはセルとMFHへの流出液との間の垂直距離
図1
図2
図3