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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】X線位相差検出器
(51)【国際特許分類】
   G01T 7/00 20060101AFI20221031BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20221031BHJP
   G01T 1/24 20060101ALI20221031BHJP
   G01T 1/20 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
G01T7/00 A
A61B6/00 331Z
G01T1/24
G01T1/20 G
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021013763
(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公開番号】P2021128153
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2021-06-02
(31)【優先権主張番号】16/789,100
(32)【優先日】2020-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 亮一
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ・ヴィードマン
(72)【発明者】
【氏名】ビジュ・ジェイコブ
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・マイケル・エディック
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・デビッド・ヤノフ
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-236986(JP,A)
【文献】特表2018-528408(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0246765(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0323679(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0192980(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0224564(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03447538(EP,A1)
【文献】国際公開第2012/056724(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 7/00
A61B 6/00
G01T 1/24
G01T 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相差画像検出器(14)であって、
複数のピクセル(92)であって、各ピクセル(92)が、
X線光子(104)に応答して測定可能なパラメータを生成する検出材料と、
位相差干渉パターンに対応する交互パターンである複数のサブピクセル解像度読み出し構造体(98)であって、前記複数のサブピクセル解像度読み出し構造体が、3つのインターリーブされた櫛形構造を含む交互のアームのパターンを含む、前記複数のサブピクセル解像度読み出し構造体と
を含む、複数のピクセル(92)と、
前記複数のサブピクセル解像度読み出し構造体(98)から信号を読み出すように構成された読み出し回路(96)と、を含む位相差画像検出器(14)。
【請求項2】
X線源から照射されるX線放射ビームの経路が、前記X線放射ビームの経路の方向に並ぶ複数のピクセル上に位置し、
前記複数のピクセルが、前記X線放射ビームの経路の方向において異なる長さを有する、請求項1に記載の位相差画像検出器(14)。
【請求項3】
前記X線放射ビームの経路の方向における前記ピクセルの深さが増加するに従って、前記X線放射ビームの経路の方向における前記ピクセルの長さが増加する、請求項2に記載の位相差画像検出器(14)。
【請求項4】
前記検出材料は、各X線光子(104)に応答して電荷雲(120)を生成することができる直接変換材料を含み、前記電荷雲(120)は前記複数のサブピクセル解像度読み出し構造体によって測定される、請求項2に記載の位相差画像検出器(14)。
【請求項5】
前記複数のサブピクセル解像度読み出し構造体(98)は、複数の交互のフォトダイオード(110)を含む、請求項1に記載の位相差画像検出器(14)。
【請求項6】
前記検出材料は、各X線光子(104)に応答して1つまたは複数の低エネルギー光子を生成することができるシンチレータ(106)を含み、前記1つまたは複数の低エネルギー光子は前記1つまたは複数のフォトダイオード(110)によって検出される、請求項5に記載の位相差画像検出器(14)。
【請求項7】
前記複数のサブピクセル解像度読み出し構造体(98)は、位相差撮像システム(10)において検出器側アナライザグレーティング(84)として機能する、請求項1に記載の位相差画像検出器(14)。
【請求項8】
前記複数のサブピクセル解像度読み出し構造体(98)から取得された信号は、アナライザグレーティング(84)の異なる位相ステップでの複数の取得なしに、前記位相差干渉パターンの振幅、オフセット、および位相を決定するために使用可能である、請求項1に記載の位相差画像検出器(14)。
【請求項9】
前記読み出し回路(96)は、一致論理(140)を使用して、電荷雲(120)の中心をそれぞれのサブピクセル解像度読み出し構造体(98)に局在化するように構成され、前記電荷雲(120)は、入射X線光子(104)に応答して生成される、請求項1に記載の位相差画像検出器(14)。
【請求項10】
位相差撮像システム(10)であって、
動作中に撮像ボリュームを通してX線を放出するように構成されたX線源(12)と、
前記撮像ボリュームを通るX線の経路にある少なくとも1つのグレーティング位置であって、前記X線は、前記少なくとも1つのグレーティングを通過すると、位相差干渉パターンを有する、少なくとも1つのグレーティング位置と、
前記X線源(12)によって放出され、前記少なくとも1つのグレーティングを通過するX線に応答して信号を生成するように構成された位相感応型検出器(14A)と、を含み、前記位相感応型検出器(14A)は、
複数のピクセル(92)であって、前記ピクセル(92)の一部またはすべてが、複数のサブピクセル解像度読み出し構造体(98)を各々含み、前記サブピクセル解像度読み出し構造体(98)は、前記位相差干渉パターンに対応する交互パターンであ前記サブピクセル解像度読み出し構造体が、3つのインターリーブされた櫛形構造を含む交互のアームのパターンを含む、複数のピクセル(92)と、
臨床画像を生成するために前記複数のサブピクセル解像度読み出し構造体(98)によって生成された前記信号を処理するように構成された1つまたは複数の処理構成要素(56)と、を含む、位相差撮像システム(10)。
【請求項11】
前記ピクセル(92)は、各X線光子(104)に応答して電荷雲(120)を生成することができる直接変換材料をさらに含み、前記電荷雲(120)は、前記サブピクセル解像度読み出し構造体(98)によって測定される、請求項10に記載の位相差撮像システム(10)。
【請求項12】
前記X線源から照射されるX線放射ビームの経路が、前記X線放射ビームの経路の方向に並ぶ複数のピクセル上に位置し、
前記複数のピクセルが、前記X線放射ビームの経路の方向において異なる長さを有し、
前記X線放射ビームの経路の方向における前記ピクセルの深さが増加するに従って、前記X線放射ビームの経路の方向における前記画像の長さが増加する、請求項10に記載の位相差撮像システム(10)。
【請求項13】
前記ピクセル(92)は、各X線光子(104)に応答して1つまたは複数の低エネルギー光子を生成することができるシンチレータ(106)をさらに含み、前記1つまたは複数の低エネルギー光子は、前記サブピクセル解像度読み出し構造体(98)によって検出される、請求項10に記載の位相差撮像システム(10)。
【請求項14】
前記複数のサブピクセル解像度読み出し構造体(98)は、複数の交互のフォトダイオード(110)を含む、請求項10に記載の位相差撮像システム(10)。
【請求項15】
前記臨床画像は、位相画像、吸収画像、または暗視野画像のうちの1つまたは複数を含む、請求項10に記載の位相差撮像システム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する主題は、X線撮像、特に位相差撮像技術に関する。
【背景技術】
【0002】
非侵襲的撮像技術は、患者に侵襲的処置を施すことなく患者の内部構造または特徴の画像を得ることを可能にする。特に、そのような非侵襲的撮像技術は、データを取得し、画像を構築するか、あるいは患者の観察された内部特徴を表すために、様々な物理的原理(ターゲットボリュームを通過するX線の差動透過、ボリューム内の音波の反射、ボリューム内の異なる組織および材料の常磁性、体内のターゲット放射性核種の破壊など)に依存している。
【0003】
例として、X線吸収撮像技術の文脈では、X線はX線源によって生成され、対象物または患者を通過して放射線検出器に到達する。X線は、ビーム経路内の材料の組成に基づいて、対象物または患者を通過するときに異なって吸収される。この示差的なX線吸収により、検出されたX線を使用して画像を生成し、対象物または患者の内部構造に関する情報を提供することができる。従来のX線画像と考えられるこのような画像は、骨などのX線を強く吸収する材料(すなわち、高い原子量または高Z材料)に関する情報を伝達するのに有用であり、より吸収性の低い材料との高いコントラストを示す。しかし、そのようなX線吸収ベースの撮像手法は、そのような高Z材料の位置に関係のない情報を生成するのにあまり有用ではない。この欠陥に対処するために、他の撮像技術を使用することができる。X線も使用するそのような技術の1つは、位相差撮像であり、これは、従来の吸収X線撮像では利用できない情報を生成することができる。位相差撮像では、一連のグレーティングまたはより少ないグレーティングと組み合わせて使用されるコヒーレント線源を使用して、X線ビームに位相特性および干渉特性を与えることができる。結果として得られるX線ビームは、検出されると、特にビーム経路内の低原子量構造および微細構造に関して追加情報を生成する。しかし、グレーティングを使用することの1つの結果は、放出されたX線の一部がグレーティングによって吸収される可能性があり、それは適切な画像を得るためにより高いX線線量を必要とする場合があるということである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2018/0328863号明細書
【発明の概要】
【0005】
本明細書に開示された特定の実施形態の概要を以下に記載する。これらの態様は、単にこれらのある特定の実施形態の簡単な要約を読者に提供するために提示されており、これらの態様は、本開示の範囲を限定することを意図していないことを理解されたい。実際、本開示は、以下に記載されていない可能性がある様々な態様を包含することができる。
一実施形態では、位相差画像検出器が提供される。この実施形態によれば、位相差画像検出器は、複数のピクセルを含む。各ピクセルは、X線光子に応答して測定可能なパラメータを生成する検出材料と、複数のサブピクセル解像度読み出し構造体と、を含む。サブピクセル解像度読み出し構造体は、位相差干渉パターンに対応する交互パターンである。位相差画像検出器は、複数のサブピクセル解像度読み出し構造体から信号を読み出すように構成された読み出し回路をさらに含む。
【0006】
さらなる実施形態では、位相差撮像システムが提供される。この実施形態によれば、位相差撮像システムは、動作中に撮像ボリュームを通してX線を放出するように構成されたX線源と、撮像ボリュームを通るX線の経路内の少なくとも1つのグレーティング位置と、を含む。X線は、少なくとも1つのグレーティングを通過すると、空間干渉パターンを生成する。位相差撮像システムは、X線源によって放出され、少なくとも1つのグレーティングを通過するX線に応答して信号を生成するように構成された位相感応型検出器をさらに含む。位相感応型検出器は、複数のピクセルを含む。ピクセルの一部またはすべては、複数のサブピクセル解像度読み出し構造体を各々含む。サブピクセル解像度読み出し構造体は、位相差干渉パターンに対応する交互パターンである。位相差撮像システムは、臨床画像を生成するために複数のサブピクセル解像度読み出し構造体によって生成された信号を処理するように構成された1つまたは複数の処理構成要素をさらに含む。
【0007】
追加の実施形態では、位相差撮像のための方法が提供される。この方法によれば、撮像システムのX線源は、撮像ボリュームを通してX線を放出するように動作される。X線は、X線が空間干渉パターンをX線に与える少なくとも1つのグレーティングを通過した後に、位相感応型検出器で受け取られる。位相感応型検出器は、複数のピクセルを含む。ピクセルの一部またはすべては、複数のサブピクセル解像度読み出し構造体を各々含む。サブピクセル解像度読み出し構造体は、位相差干渉パターンに対応する交互パターンである。複数のサブピクセル解像度読み出し構造体によって生成された信号は、位相差干渉パターンの振幅、オフセット、および位相を決定するために処理される。位相画像、吸収画像、または暗視野画像は、位相、振幅、およびオフセットのうちの少なくとも1つまたは複数を使用して生成される。
【0008】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読解すればより良好に理解され、添付の図面においては、図面全体を通して同一の符号は同一の部分を表している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の態様による、画像を生成する際に使用するための撮像システムの概略図である。
図2】3つのグレーティングを使用する位相差撮像システムの例を示す図である。
図3】本開示の態様による、空間干渉パターンのパラメータを示す一般化された波形を示す図である。
図4】本開示の態様による、2つのグレーティングおよび位相感応型検出器を使用する位相差撮像システムの例を示す図である。
図5】検出器モジュールおよびピクセルの例を示す図である。
図6】本開示の態様による、位相感応型検出器モジュールの例を示す図である。
図7】本開示の態様による、位相感応型検出器モジュールの別の例を示す図である。
図8】本開示の態様による、シンチレータベースの位相感応型検出器ピクセルの側面図および上面図である。
図9】本開示の態様による、3つのインターリーブされた櫛形構造を含むピクセルの例を示す図である。
図10】本開示の態様による、一致論理の実装の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1つまたは複数の具体的な実施形態を、以下で説明する。これらの実施形態の簡潔な説明を提供しようと努力しても、実際の実施態様のすべての特徴を本明細書に記載することができるというわけではない。エンジニアリングまたは設計プロジェクトなどの実際の実施態様の開発においては、開発者らの特定の目的を達成するために、例えばシステム関連および事業関連の制約条件への対応など実施態様に特有の決定を数多くしなければならないし、また、これらの制約条件は実施態様ごとに異なる可能性があることを理解されたい。さらに、このような開発努力は、複雑で時間がかかるが、それでもなお本開示の利益を有する当業者にとっては、設計、製作、および製造の日常的な仕事であることを理解されたい。
【0011】
本発明の様々な実施形態の要素を紹介するとき、「1つの(a、an)」、「この(the)」、および「前記(said)」という冠詞は、それらの要素が1つまたは複数存在することを意味するように意図される。「備える(comprising)」、「含む(including)」、および「有する(having)」という用語は、包括的であることを意図し、列挙された要素以外にもさらなる要素が存在してもよいことを意味する。さらに、以下の説明におけるあらゆる数値例は非限定的なものであることを意図し、したがって追加の数値、範囲、および百分率は開示される実施形態の範囲内にあるものとする。
【0012】
X線撮像は、患者の体内の構造に関する情報を非侵襲的に取得するために、医師によって頻繁に使用される。従来のX線撮像は、体内の様々な組成の構造によるX線の吸収差に依存して有用なデータを提供する。特に、そのような示差的に吸収されたX線は、体内の高原子量(すなわち、高Z)材料に対して良好なコントラストを示す画像を生成するために使用され得るが、X線を容易に吸収しない特徴部については限定的な情報を提供する。
【0013】
位相差撮像もX線ベースの撮像技術であり、それは、X線ビームに位相および空間干渉特性を与えるために一連のグレーティング(例えば、吸収または位相グレーティング)をしばしば利用する。検出されたX線は、従来のX線吸収画像だけでなく、位相画像(組織などの低Z材料に対して良好なコントラストを有する)および暗視野画像(これにより、例えば肺胞などのサブピクセル微細構造を、分解されないが検出することができる)を再構成するために使用することができる。特に、位相画像は、高Zの特徴部も含む環境で臨床医が表示または検出したい低Zの対象物が存在する状況で有用であり得る。そのような例の1つは、肝臓実質組織内の病変であり、その場合、肝臓と病変との間の組織特性はわずかに異なる。このような位相画像を生成するために、光電吸収なしでコンプトン吸収効果を測定する。しかし、そのような画像を生成するために位相差撮像で使用されるグレーティングは、通常、撮像のために放出されたX線のかなりの部分を吸収する。結果として、位相差撮像では、通常、従来の吸収撮像よりも高いX線線量が使用される。
【0014】
本明細書に開示した技術は、これらの問題に対処するのに役立つ。特に、本明細書に開示するように、本発明の特定の実施態様は、位相差撮像で通常使用されるグレーティング(すなわち、検出器側グレーティングであり、アナライザグレーティングと示す)のうちの1つを除去し、このグレーティングの機能を検出器自体に統合した検出器を用いる。このようにして、このグレーティングに起因する線量の損失が回避される。これは、検出器側のグレーティングによって吸収されたX線がすでに患者を通過し、それによって検出器に到達しない患者に追加のX線線量を生成する医用撮像で特に重要である。さらに、この機能を検出器に組み込むことで、本明細書でより詳細に説明するように、異なる位相ステップでアナライザグレーティングを使用して複数の収集を行う必要もなくなる。
【0015】
上記を念頭に置いて、本明細書で説明するような再構成のためのデータを取得するのに適したX線撮像システム10の例が図1に提供される。理解され得るように、X線ベースの撮像システム10は、任意の適切なX線撮像モダリティ、例えば、コンピュータ断層撮影(CT)撮像システム、Cアーム型撮像システム、トモシンセシス撮像システム、従来のX線撮像システム、マンモグラフィ撮像システム、透視撮像システムなどであってもよい。
【0016】
図1に示す実施形態では、撮像システム10は、X線放射源12および検出器14を含む。X線源12は、X線管であってもよいし、または医療または他の画像の取得に適した1つまたは複数の他のX線放射源を含んでもよい。線源12によって生成されたX線16は、撮像される対象物(例えば、非破壊評価または試験を受ける部分)、撮像される組織サンプル、セキュリティスクリーニングを受けるバッグまたはパッケージ、撮像プロトコルを受ける患者などが配置され得る撮像領域内を通過する。図示する例では、撮像を受けている患者18は、処置中に撮像ボリューム内に配置される。図示する例では、X線16は、撮像されるボリュームを通過する扇形(平面)または円錐形(体積)ビーム、例えば、ファンビームまたはコーンビームになるようにコリメートされている。
【0017】
X線放射20の一部は、患者18(または他の関心のある被験者)を通過するか、またはその周りを通過し、一般に検出器14として表される検出器アレイに衝突する。検出器14の検出器要素(例えば、ピクセル)は、検出器14の検出器素子への入射X線20の強度を表す電気信号を生成する。これらの信号は、本明細書で説明するように、患者18内の特徴部の画像を再構成するために、取得および処理される。
【0018】
本明細書で使用される検出器14に関して、本発明による位相差撮像に適することができる様々なタイプの検出器が企図される。一般に、本明細書で使用される検出器14は、ピクセルのアレイを含む。各ピクセルは、X線が相互作用する媒体と、X線と媒体との相互作用に応答して生成される何らかのプロパティまたは信号を測定するサブピクセル解像度電極と、に関連付けられている。本明細書で説明される特定の実施形態では、所与のピクセルに関連する電極は、実際には、所与のピクセル内のサブピクセル解像度で信号を識別する能力を提供するインターリーブまたは他の不連続な構成(すなわち、1次元または2次元の連続した電極のアレイではない)であり、これは、特定の実施態様において、検出器14の表面にアナライザグレーティングを提供することによって達成され得るものに匹敵する機能を提供するために活用され得る。
【0019】
シンチレータベースの実施形態(例えば、高エネルギーX線光子を検出されるより低いエネルギーの光学光子に変換するためにシンチレータが使用される実施形態)の文脈では、各ピクセルに関連する電極は、光学光子に応答して生成された信号を読み出すのに適したインターレースまたは他の不連続フォトダイオード電極構造の形態をとることができる。直接変換検出器(つまり、シンチレータによって生成される二次光子とは対照的に、X線光子自体が検出され、半導体材料との相互作用などを介して応答信号を生成する検出器)の文脈では、各ピクセルに関連する電極は、同様に、インターレースまたは他の非連続的な電極のセットとして提供され得る。そのような直接変換型検出器は、エネルギー積分型および/または光子計数型検出器であるなど、特定の追加機能を提供するように構成することができる。光子計数の文脈では、一致検出および/またはスペクトル情報はまた、検出器14を使用して取得され得る。
【0020】
図示する例では、グレーティング22、24(例えば、吸収グレーティングまたは位相グレーティング)は、X線ビームの経路に配置されている。グレーティング22は、線源12が十分に小さいか、および/またはコヒーレントである場合に提供される唯一のグレーティングであり得る。しかし、実際には、追加の線源側グレーティングが線源12の近くに存在して、より大きなおよび/または非コヒーレントな線源12を、位相差の文脈において多数の空間的にコヒーレントな線源として効果的に知覚させることができる。そのようなグレーティングは、位相差撮像を容易にするために存在することができる。図示する例では、線源12に対して患者18の反対側(すなわち、検出器側)にあるアナライザグレーティング24も提供されている。
【0021】
この例では、線源12および検出器14(ならびに任意のグレーティング、フィルタ、コリメータなど)は、イメージャサブシステム30の一部であってもよい。特定の撮像モダリティ(例えば、コンピュータ断層撮影(CT)、Cアーム血管造影、トモシンセシス)では、イメージャ30の線源12および検出器14は、投影データが取得される走査手順中に1つまたは複数の軸に沿って患者または撮像対象物に対して移動され得る。例えば、イメージャ30は、第1の回転軸、第2の回転軸、または第3の回転軸、またはそれらの任意の組み合わせの周りを移動することができる。一実施形態では、イメージャ30の並進および回転は、指定されたプロトコルに従って決定または調整され得る。あるいは、非破壊検査アプリケーションなどで、対象物が再配置されている間、イメージャ30を一定に保つことができる。
【0022】
イメージャ30の動きは、もしあれば、1つまたは複数の線形/回転サブシステム46によって開始および/または制御され得る。線形/回転サブシステム46は、イメージャ30の相対的な回転および/または並進運動を可能にする支持構造体、モータ、歯車、ベアリングなどを含むことができる。一実施形態では、線形/回転サブシステム46は、線源12および検出器14、あるいは、対象物または患者18を支持する構造装置(例えば、Cアーム、回転ガントリ、ターンテーブルなど)を含むことができる。
【0023】
システムコントローラ48は、イメージャ30の構成要素の動きを開始および/または制御する線形/回転サブシステム46を制御することができる。実際には、システムコントローラ48は、撮像操作の実行を容易にするために、1つまたは複数のプロセッサによって実行可能な命令を集合的に格納する、有形の非一時的な機械可読媒体を含む、またはそれと通信する、1つまたは複数の処理装置を組み込むことができる。システムコントローラ48はまた、例えば、特定の撮像シーケンス中に取得されたX線データの取得を制御するために、線源12の活性化のタイミングを制御する特徴部を含むことができる。システムコントローラ48はまた、ダイナミックレンジの初期調整、デジタル投影データのインターリーブなどのための、様々な信号処理およびフィルタリング機能を実行することができる。したがって、一般に、システムコントローラ48は、検査プロトコルを実行するように撮像システム10の動作を命令するとみなすことができる。説明を容易にするために、イメージャ30を使用して、取得、移動などを制御するユニットであるとして、システムコントローラ48を以下で参照することに留意されたい。しかし、システムコントローラ48が他の制御装置(例えば、イメージャに局在する、またはシステム10から遠隔にある他の制御回路)と連動して動作する実施形態もまた、本開示に含まれる。
【0024】
本文脈では、システムコントローラ48は、システムコントローラ48がイメージャ30および線形/回転サブシステム46の動作を制御することを可能にする信号処理回路および様々な他の回路を含む。図示する実施形態では、回路は、X線源12を動作させるように構成されたX線コントローラ50を含むことができる。システムコントローラ48の回路はまた、1つまたは複数のモータコントローラ52を含むことができる。モータコントローラ52は、線源12および検出器14の移動に関与する様々な構成要素の起動を制御することができる。言い換えれば、モータコントローラは、イメージャ30の構成要素の相対運動のための特定の取得軌道または運動を実施することができる。
【0025】
システムコントローラ48はまた、1つまたは複数のデータ収集システム54を含むものとして示されている。一般に、検出器14は、システムコントローラ48、より具体的にはデータ収集システム54に結合されてもよい。データ収集システム54は、検出器14の読み出し電子機器によって収集されたデータを受信することができ、特定の実施形態では、(例えば、アナログ信号をデジタル信号に変換することによって、または他のフィルタリング、変換、または同様の操作を実行することによって)データを処理することができる。
【0026】
システム10に存在する、有形の非一時的な機械可読媒体、およびこの媒体に格納された命令を実行するように構成されたプロセッサは、システムコントローラ48またはシステム10の他の構成要素の様々な構成要素間で共有され得ることに留意されたい。例えば、図示するように、X線コントローラ50、モータコントローラ52、およびデータ収集システム54は、処理構成要素56によって実行されると画像取得および再構成技術を実行する命令を格納する1つまたは複数のメモリデバイス58と協調するように各々特別に構成された1つまたは複数の処理構成要素56を共有することができる。さらに、処理構成要素56およびメモリ構成要素58は、様々な画像再構成プロセスを実行するために調整することができる。
【0027】
システムコントローラ48およびそれが含む様々な回路、ならびに処理構成要素56およびメモリ構成要素58は、オペレータワークステーション60を介してオペレータによってアクセスまたは制御され得る。オペレータワークステーション60は、本明細書に記載の技術に対するオペレータ入力を可能にすることができる1つまたは複数のプログラム(例えば、1つまたは複数の撮像プログラム)を含むことができる任意の特定用途向けまたは汎用のコンピュータを含むことができる。オペレータワークステーション60は、マウス、キーボード、トラックボール、またはオペレータがコンピュータと対話することを可能にする他の同様の特徴部などの様々な入力デバイスを含むことができる。オペレータワークステーション60は、例えば、メモリデバイス58に格納された特定の命令を調整することによって、オペレータが様々な撮像パラメータを制御することを可能にすることができる。
【0028】
オペレータワークステーション60は、画像、患者データなどを印刷するためにプリンタ62に通信可能に結合され得る。オペレータワークステーション60はまた、オペレータが様々なパラメータをリアルタイムで表示すること、取得されたデータによって生成された画像などを表示することを可能にするディスプレイ64と通信することができる。オペレータワークステーション60はまた、特定の実施形態では、画像保管通信システム(PACS)66に通信可能に結合され得る。そのようなシステムは、患者データ、患者画像、画像取得パラメータなどの保存を可能にすることができる。この格納された情報は、撮像施設全体で共有されてもよく、また、他の施設、例えば、リモートクライアント68と共有されてもよい。リモートクライアント68は、病院、診療所、または他の同様のクライアントを含むことができる。
【0029】
本手法の様々な態様は、従来の位相差撮像技術の特徴を示す図2に関してさらに理解され得る。このような位相差撮像技術は、通常、ビーム経路内の対象物で観察された空間干渉パターンを、対象物が存在しない場合の空間干渉パターンと比較することによって、各ボクセルの位相シフト角度を決定する。従来の位相差コンピュータ断層撮影(CT)撮像システムの文脈において、その態様は図2に示され、グレーティング(通常は3つのグレーティング)が干渉パターンを生成するために使用され得る。この例では、線源側グレーティングG(符号80で示す)がX線源12の近くに配置されて、空間コヒーレンスを確保し、非コヒーレントX線源の動作に応答して、個々にコヒーレントであるが相互に非コヒーレントな放射のアレイを効果的に形成する。ビーム経路内の位相対象物は、X線のコヒーレントサブセットごとにわずかな屈折を引き起こす。そのように導入された角度偏差は、X線検出器14(図1に示すように)によって検出され得るグレーティングGおよびG(それぞれ符号82および84で示す)のペアを介して局所的に伝達される強度の変化をもたらす。特に、そのような配置のグレーティングG82は、線源12と検出器14との間に配置され、波面に周期的な干渉パターンを刻印する。グレーティングG84は、検出器の近くに配置され(すなわち、Gは検出器側グレーティングである)、サブピクセル解像度の干渉パターン変調を解像する。実際には、グレーティングは、必要に応じてフォトリソグラフィと電気めっきを使用してシリコンウェーハから製造することができる。可能な限り最高の感度(図2に示す距離Lの関数である)を得るために、Gグレーティング82が線源12の近くにあることが望ましい場合がある。
【0030】
位相差撮像で作成された空間干渉パターンに関して、図3に目を向けると、簡単な説明が以下の説明を理解するのに役立ち得る。特に、位相差撮像で作成された干渉パターンには、測定可能な3つのパラメータがある(周期は設計により既知である)、すなわち、(1)オフセット、(2)位相、および(3)振幅である。本明細書で使用されるオフセットは、従来のX線撮像の場合のように、全体的な減衰から生じる。位相は、基準に対する干渉パターンの空間シフトであり、テスト対象の対象物を通過するX線によって見られる総屈折率の実数部の勾配に対応する。干渉パターンの振幅は、パターンの山と谷の差であり、微細構造が存在すると減少する可能性がある。これらの3つのパラメータは、サンプルパターンまたは波形の文脈で図3に示されている。
【0031】
上記を念頭に置いて、図2に示す従来の配置は位相差撮像に適しているが、X線の一部が3つのグレーティングの各々によって吸収され、検出器14に到達するX線束を減少させるので、そのような配置は高いX線束を必要とすることができる。例として、X線束のすべて(患者18によって吸収された部分を除く)が検出器14に到達する従来のCT(すなわち、吸収ベースの撮像)とは対照的に、グレーティングベースの位相差撮像では、様々なグレーティングによる偶発的な吸収のために、放出された線束の限られた部分(例えば、25%)のみが検出器14に到達することができる。医療の文脈では、これにより、患者の動きを凍結し、有用な画像を取得するために、より高い線束が使用される場合がある。グレーティングG84は、患者を通過するX線束の一部を吸収し、それにより、イメージャサブシステム30の線量効率を低下させる。
【0032】
位相差撮像におけるグレーティングに起因する磁束の損失を低減するために、本発明は、図4に示すように、検出器側グレーティングG84を排除し、このグレーティングの機能を位相感応型検出器14Aに統合する。グレーティングGによるX線吸収によるX線束(および関連する患者線量)の損失を排除することに加えて、この技術には、位相差撮像プロトコルに典型的なように、異なる位相ステップで複数の取得を行う必要がないというさらなる利点がある。特に、従来の位相差撮像取得では、アナライザグレーティングG84が標準CT検出器の前で使用される場合、各ピクセルに対して一度に1回の測定しか行うことができない。このため、干渉パターンの周波数に等しい周期性のアパーチャを備えたアナライザグレーティングG84は、通常、シフトされ、追加の(例えば、合計3回の測定)後続の測定が行われる。位相感応型検出器14A(例えば、以下でより詳細に説明するように、複数のピクセル電極が干渉パターンの周期に対応するサブピクセル解像度を提供する検出器)を使用することにより、3つの独立した測定をすべて同時に行うことができる。
【0033】
これを念頭に置いて、図5図6、および図7は、検出器14Aを形成するために使用され得る検出器モジュール90の例、および検出器モジュール90に提供されるピクセル92の例を示す。一実施形態では、検出器モジュール90は、ケイ素、テルル化カドミウム亜鉛(CZT)、テルル化カドミウム(CdTe)、またはシンチレータ中間成分なしでX線に応答して信号を生成する他の適切な検出器材料、すなわち、直接変換検出器材料を使用して形成された複数のピクセル92を含む。しかし、他の実施形態では、シンチレータは、図8および図9に関してより詳細に説明するように、検出器14の一部として存在してもよい。図5図7に示すように、ピクセル92は、検出器内の異なる深さで同様の応答を可能にするように、X線ビーム経路20の方向に長さが増加することができる。あるいは、X線ビームの方向と整列する単一の長いピクセルが提供され得る。読み出し回路96は、検出器モジュール90の側面または底部に設けられているように描かれているので、検出器モジュール90を横から横へ、または端から端へと組み合わせることができ、広い視野または構成可能な視野を提供することができる。
【0034】
これらの図に関して、図5は、X線が相互作用するピクセル92に関連する検出材料または変換材料94(半導体材料など)を示している。図5の例では、それぞれのピクセル内で、単一の連続電極98が、ピクセル92の変換材料94に関連付けられている。逆に、図6および図7は、それぞれのピクセル92内で、複数の非連続電極98A、98B、98Cが、サブピクセル解像度測定を提供するために、各それぞれのピクセル92の変換材料94に関連付けられることを示す。図示する例では、図6および図7の電極は、インターレース櫛形パターンとして提供され、一実施形態では、所与の位相差撮像システムの空間干渉パターンの周波数に対応するサブピクセル解像度距離および分離を有することができる。
【0035】
例えば、図6では、電極98A、98Bは、2つのインターリーブされた櫛形を含む交互のアームのパターンを形成する。図7では、電極98A、98B、98Cは、3つのインターリーブされた櫛形を含む交互のアームのパターンを形成し、そのうちの1つは、各電極への個別の電気的接続を可能にするように、他の導電性トレースの平面の外側に提供される導電性ブリッジ100によってスパンされる。検出器モジュール90のすべてのピクセル92が複数のサブピクセル解像度電極を有する実施形態が企図され、また、検出器モジュール90の一部のピクセル92のみが複数のサブピクセル解像度電極を有する実施形態、例えば、検出器モジュール90の一部またはすべてのピクセル92などの実施形態が企図されることに留意されたい。本明細書で説明するように、電極98のインターレースパターンは、位相差干渉パターンの周期に対応する間隔を有することができ、したがって、アナライザグレーティングがシフトされる複数の離散的な測定を必要とし、追加の取得時間および患者の線量を必要とするのとは対照的に、関心のある3つのパラメータ(すなわち、オフセット、位相、および振幅)のすべてを同時に測定することが可能である。2つおよび3つのインターリーブされたサブピクセル解像度電極のパターンがそれぞれ図6および図7に示されているが、位相差信号を正確に推定するために必要に応じて追加のインターリーブされたサブピクセル解像度電極を使用する代替構成が企図される。
【0036】
電極98(またはフォトダイオードなどの他のパターン化された特徴部)が走る方向は、実施形態に応じて変化してもよく、X線ビーム20の方向(図示するように)か、X線ビーム20に直交するかのいずれかであり得る。X線ビーム20に平行に走る場合、櫛形98の線は、図6および図7に示すように、X線ビーム20の方向に線パターンを形成する。逆に、パターン特徴がX線ビーム20に直交する場合、上記のように、位相差干渉パターンに対応する間隔を有する符号化アパーチャを含む任意のパターンを使用することができる。
【0037】
図8に目を向けると、フォトダイオードベースの位相差検出器に関連する別の実施形態が示されている。この例では、様々な特徴部をより適切に表現するために、側面図(上)と上面図(下)が共に示されている。単一の検出器ピクセル92が示され、側面図は、検出器ピクセル92に関連する構成要素のスタックを示し、上面図は、空間干渉パターンの様々な位相1、2、および3に対応する関連の別個の読み出し経路(a、a、a)を有するサブピクセルフォトダイオード配置のみを示す。
【0038】
特に、図8に示す上面図は、光結合層108を介して複数のサブピクセルフォトダイオード110と光通信する高解像度シンチレータ106を示すが、それは特定の実施形態では存在しなくてもよい。シンチレータ106は、高Z材料から形成されてもよく、ピクセル92に対応する列または他の構造に配置されてもよく(すなわち、シンチレータ106がピクセル化されてもよく)、あるいは検出器表面に対してモノリシックであってもよい。
【0039】
図示する例では、X線光子20は、シンチレータ106と相互作用して、サブピクセルフォトダイオード110によって検出することができる低エネルギー光子(例えば、光学光子)を生成する。図示するように、サブピクセルフォトダイオード110は、交互の分離されたパターンにグループ化されて、3つのインターリーブされたフォトダイオード110A、110B、110Cを形成し、位相差撮像システムの空間干渉パターンの周波数に対応する分離距離を有する。この例では、ピクセル92は、3つの別個のインターリーブされたサブピクセルフォトダイオード110A、100B、110Cを使用して読み取られ、その結果、ピクセル92に関連する読み出しチャネルが複数のサブピクセルから構成される。特定の実施態様では、サブピクセルフォトダイオード110は、幅が数μm(例えば、2~5μm)から数十μm(例えば、30~80μm)の範囲である。一実施形態では、サブピクセルフォトダイオード110は、相補型金属酸化物半導体(CMOS)デバイス、横方向金属半導体金属(MSM)デバイスなどとして製造され得る。前の例のように、そして以下のさらなる説明のために、対応する(すなわち、同じ位相の)サブピクセルフォトダイオード110の信号は、事前読み出し(すなわち、アナログ)ドメインまたは読み出し後(すなわち、デジタル)ドメインのいずれかで「位相」櫛形を形成するために組み合わされる。上記のように、3つのインターリーブされたサブピクセル解像度電極のパターンが図8に示されているが、位相差信号を正確に推定するために必要に応じて2つ以上のインターリーブされたサブピクセル解像度フォトダイオードを使用する代替構成が企図される。
【0040】
図9に目を向けると、図7に見られるような3つのインターリーブされた櫛形98A、98B、98Cのパターンを有するパターン化されたピクセルが、ピクセル92のために読み出され得る測定信号a、a、aを生成するために検出材料(例えば、直接変換材料、または代替的にシンチレータ材料)と相互作用するX線光子104と関連して図示されている。検出された各X線光子104について、電荷雲が形成され、それは、検出材料または中間基板を通って移動する間に広がり、1つまたは複数のサブピクセル解像度電極98(または、代替的にフォトダイオード110)によって測定または検出される信号を生成する。このようにして、イベント中に(つまり、所与のX線光子相互作用によって)蓄積された総エネルギーを決定することができる。一致検出論理(以下でより詳細に説明する)を備えた検出器システムでは、異なる電極98(または必要に応じてフォトダイオード110)での測定は、時間的に一致し、したがって同じX線光子に起因すると決定され得る。さらに、電荷雲の中心(すなわち、干渉パターン内の位置)は、サブピクセル解像度で局在化することができ、電荷雲の大きさ(これは、光子が吸収される検出材料内の深さに依存してもよく、光子のエネルギーに依存してもよい)をより正確に決定することができる。これを念頭に置いて、X線光子イベントを検出する異なるそれぞれの電極98(またはフォトダイオード110)に関連する測定値a、a、aを使用して、単一のX線光子について関心のある3つのパラメータを決定することができる。
【0041】
例えば、図3を参照すると、干渉パターンは、以下の形態の強度分布I(x)を有すると仮定することができる。
【0042】
【数1】
【0043】
周期p、オフセットADC、振幅A、位相φ。このパターンが、周期の3分の1(1/3)の間隔で、測定された振幅a、a、aを有する3つの場所でサンプリングされると仮定すると、a=I(0)、a=I(p/3)、およびa=I(2p/3)となる。理解され得るように、周期pはシステムの形状または設定によって決定されるので、それを測定する必要はない。次に、干渉パターンのパラメータは、測定された振幅a、a、aから次のように計算することができる。
【0044】
オフセット(ADC):
【数2】
【0045】
振幅(A):
【数3】
【0046】
位相(φ):
【0047】
【数4】
【0048】
この例では、対象の3つのパラメータを明確に測定するために、3つのサブピクセル測定チャネル(すなわち、a、a、a)が必要である。個々のサブピクセル解像度の電極またはフォトダイオードのサイズ、異なる数のサブピクセル解像度の電極またはフォトダイオードを説明するために、ノイズの存在下でのロバスト性を改善するなどのために、代替的な公式を使用することができる。特定の実施形態では、個々のサブピクセルチャネルの検出しきい値は、信号の損失を回避するために、すなわち、X線光子イベントに関連する信号が単一のチャネルに起因するのとは対照的に複数のチャネル間で分割されてもよいことを考慮して、単一のピクセル読み出しチャネルに使用されるものと比較して低くされてもよい。すなわち、しきい値ベースのカットオフは、所与の信号が、有効な測定値を破棄することを防ぐために、単一の電極読み出しチャネルではなく、2つ以上の電極読み出しチャネル間で分割され得ることを考慮に入れるように調整されてもよい。一致検出論理は、すべてのチャネルの合計が適切な集計しきい値を超えているX線光子イベントのみをカウントするために使用できる。すなわち、個々のサブピクセル電極チャネルの検出しきい値は、単一の電極の読み出しに使用され得るしきい値と比較して低くすることができるが、それでも、すべてのサブピクセルチャネルの合計が、単一の電極読み出しチャネルのみが使用された場合に使用されるしきい値に少なくとも等しいことが要求される。
【0049】
X線光子イベントに関連する電荷雲および上述の一致検出論理の使用に関して、そのような論理の意義は、前の議論から分かるように、X線光子イベント(複数のサブピクセル解像度電極98またはフォトダイオード110に広がってもよい)のために検出された電荷のすべてを、単一または1次サブピクセル解像度電極98またはフォトダイオード110に割り当てるか、またはそうでなければ関連付けることができることに部分的に関係している。図10に目を向けると、複数のサブピクセル解像度電極98(または代替的な文脈ではフォトダイオード)の文脈での一致検出の一例が示されている。この例では、検出器14のそれぞれのピクセル92の検出材料と相互作用するX線光子(例えば、チャネルごとにアナログ-デジタル変換(ADC)が組み込まれた光子計数検出器)が初期電荷雲120を発生させる。上部電極98と下部電極(図示せず)との間に印加される電圧により、電荷雲120が上部電極(すなわち、サブピクセル解像度電極98)に向かって移動して広がり(符号122で示す)、その結果、測定可能な信号(a、a、a)が複数の電極98で生成される。この例では、各電極98での信号(例えば、誘起された電荷)は、チャネルごとにそれぞれの電荷感応型増幅器(CSA)およびシェーパ126によって収集および処理される。各チャネルの信号は、しきい値電圧Vthに基づく比較器出力によってトリガされるADC回路128に渡され、Vthはノイズフロア(例えば、5keV~10keV)の近くであるがそれより上に設定される。
【0050】
検出された各イベントは、関連する各電極(またはフォトダイオード)のタイムスタンプtおよびデジタル出力dを生成する。タイムスタンプtは、一致論理140に渡され、一致論理140は、それぞれのタイムスタンプtの時間的近接性に基づいて、電荷が電極98間で共有されているかどうかを判定する。X線光子イベントからの電荷が電極98の間で共有されたという判定に基づいて、「勝者独占」論理を作動させることができ、(最大の測定信号などに基づいて)X線光子イベントの位置に対応するように決定された電極(またはフォトダイオード)に対して、正しい(すなわち、入射)カウンタが増分される。特定の実施態様では、「勝者独占」論理では、適切なカウンタを増分するために、X線イベントに対して測定された総エネルギーがエネルギーしきい値よりも大きいことも必要になり得る。特定の実施形態では、ピクセル92間の潜在的な電荷共有(2つ以上のピクセル92の縁部の近くに入射するX線光子などによる)を説明するために、さらなる「勝者独占」の集約ステップが発生してもよい。
【0051】
本発明の技術的効果には、パターン化されたピクセル表面(例えば、インターレースまたはインターリーブされたフォトダイオードまたは電極)を含む検出器を有する位相差画像検出器が含まれる。このような検出器を使用するシステムは、位相差撮像を実行するために3つのグレーティングの代わりに2つのグレーティングのみを使用することができ、第3のグレーティングの機能は、ピクセル電極またはフォトダイオードの不連続パターンによって実行される。検出器を使用して取得された測定値は、アナライザグレーティングの異なる位相ステップで複数の取得を行うことなく、位相差干渉パターンのオフセット、振幅、および位相を決定するために使用することができる。
【0052】
本明細書は、最良の様式を含む本発明を開示するため、およびどのような当業者も、任意の装置またはシステムの作製および使用ならびに任意の組み込まれた方法の実行を含む本発明の実践を可能にするために、実施例を使用している。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が想到する他の実施例を含むことができる。そのような他の実施例は、特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を有する場合、または特許請求の範囲の文言と実質的な差のない等価の構造要素を含む場合、特許請求の範囲内にあることが意図されている。
[実施態様1]
位相差画像検出器(14)であって、
複数のピクセル(92)であって、各ピクセル(92)が、
X線光子(104)に応答して測定可能なパラメータを生成する検出材料と、
位相差干渉パターンに対応する交互パターンである複数のサブピクセル解像度読み出し構造体(98)と、を含む、複数のピクセル(92)と、
前記複数のサブピクセル解像度読み出し構造体(98)から信号を読み出すように構成された読み出し回路(96)と、を含む位相差画像検出器(14)。
[実施態様2]
前記複数のサブピクセル解像度読み出し構造体(98)は、交互のアームを有する2つ以上の電極を含む、実施態様1に記載の位相差画像検出器(14)。
[実施態様3]
前記2つ以上の電極はインターリーブされた櫛形構造を形成する、実施態様2に記載の位相差画像検出器(14)。
[実施態様4]
前記検出材料は、各X線光子(104)に応答して電荷雲(120)を生成することができる直接変換材料を含み、前記電荷雲(120)は2つ以上の電極によって測定される、実施態様2に記載の位相差画像検出器(14)。
[実施態様5]
前記複数のサブピクセル解像度読み出し構造体(98)は、複数の交互のフォトダイオード(110)を含む、実施態様1に記載の位相差画像検出器(14)。
[実施態様6]
前記検出材料は、各X線光子(104)に応答して1つまたは複数の低エネルギー光子を生成することができるシンチレータ(106)を含み、前記1つまたは複数の低エネルギー光子は前記1つまたは複数のフォトダイオード(110)によって検出される、実施態様5に記載の位相差画像検出器(14)。
[実施態様7]
前記複数のサブピクセル解像度読み出し構造体(98)は、位相差撮像システム(10)において検出器側アナライザグレーティング(84)として機能する、実施態様1に記載の位相差画像検出器(14)。
[実施態様8]
前記複数のサブピクセル解像度読み出し構造体(98)から取得された信号は、アナライザグレーティング(84)の異なる位相ステップでの複数の取得なしに、前記位相差干渉パターンの振幅、オフセット、および位相を決定するために使用可能である、実施態様1に記載の位相差画像検出器(14)。
[実施態様9]
前記読み出し回路(96)は、一致論理(140)を使用して、電荷雲(120)の中心をそれぞれのサブピクセル解像度読み出し構造体(98)に局在化するように構成され、前記電荷雲(120)は、入射X線光子(104)に応答して生成される、実施態様1に記載の位相差画像検出器(14)。
[実施態様10]
位相差撮像システム(10)であって、
動作中に撮像ボリュームを通してX線を放出するように構成されたX線源(12)と、
前記撮像ボリュームを通るX線の経路にある少なくとも1つのグレーティング位置であって、前記X線は、前記少なくとも1つのグレーティングを通過すると、位相差干渉パターンを有する、少なくとも1つのグレーティング位置と、
前記X線源(12)によって放出され、前記少なくとも1つのグレーティングを通過するX線に応答して信号を生成するように構成された位相感応型検出器(14A)と、を含み、前記位相感応型検出器(14A)は、
複数のピクセル(92)であって、前記ピクセル(92)の一部またはすべてが、複数のサブピクセル解像度読み出し構造体(98)を各々含み、前記サブピクセル解像度読み出し構造体(98)は、前記位相差干渉パターンに対応する交互パターンである、複数のピクセル(92)と、
臨床画像を生成するために前記複数のサブピクセル解像度読み出し構造体(98)によって生成された前記信号を処理するように構成された1つまたは複数の処理構成要素(56)と、を含む、位相差撮像システム(10)。
[実施態様11]
前記ピクセル(92)は、各X線光子(104)に応答して電荷雲(120)を生成することができる直接変換材料をさらに含み、前記電荷雲(120)は、前記サブピクセル解像度読み出し構造体(98)によって測定される、実施態様10に記載の位相差撮像システム(10)。
[実施態様12]
前記複数のサブピクセル解像度読み出し構造体(98)は、交互のアームを有する2つ以上の電極を含む、実施態様10に記載の位相差撮像システム(10)。
[実施態様13]
前記ピクセル(92)は、各X線光子(104)に応答して1つまたは複数の低エネルギー光子を生成することができるシンチレータ(106)をさらに含み、前記1つまたは複数の低エネルギー光子は、前記サブピクセル解像度読み出し構造体(98)によって検出される、実施態様10に記載の位相差撮像システム(10)。
[実施態様14]
前記複数のサブピクセル解像度読み出し構造体(98)は、複数の交互のフォトダイオード(110)を含む、実施態様10に記載の位相差撮像システム(10)。
[実施態様15]
前記臨床画像は、位相画像、吸収画像、または暗視野画像のうちの1つまたは複数を含む、実施態様10に記載の位相差撮像システム(10)。
[実施態様16]
位相差撮像方法であって、
撮像ボリュームを通してX線を放出するように、撮像システム(10)のX線源(12)を動作させるステップと、
前記X線が前記X線に位相差干渉パターンを与える少なくとも1つのグレーティングを通過した後に、位相感応型検出器(14A)で前記X線を受け取るステップであって、前記位相感応型検出器(14A)は複数のピクセル(92)を含み、前記ピクセル(92)の一部またはすべては、複数のサブピクセル解像度読み出し構造体(98)を各々含み、前記サブピクセル解像度読み出し構造体(98)は、前記位相差干渉パターンに対応する交互パターンである、ステップと、
前記位相差干渉パターンの振幅、オフセット、および位相を決定するために、前記複数のサブピクセル解像度読み出し構造体(98)によって生成された信号を処理するステップと、
前記位相、前記振幅、および前記オフセットのうちの少なくとも1つを使用して、位相画像、吸収画像、または暗視野画像を生成するステップと、を含む位相差撮像方法。
[実施態様17]
前記位相、前記振幅、および前記オフセットは、アナライザグレーティング(84)の異なる位相ステップでの複数の取得なしに決定される、実施態様16に記載の位相差撮像方法。
[実施態様18]
入射X線光子(104)を局在化するために、前記複数のサブピクセル解像度読み出し構造体(98)によって生成された前記信号を処理するステップをさらに含む、実施態様16に記載の位相差撮像方法。
[実施態様19]
前記信号は測定された電圧を含み、前記信号を処理するステップは、
各信号をしきい値電圧と比較するステップと、
前記しきい値電圧を超える信号のタイムスタンプおよびデジタル出力を生成するステップと、
前記タイムスタンプを使用して、それぞれのX線光子(104)に応答して生成された信号が前記サブピクセル解像度読み出し構造体(98)の2つ以上で測定されたことを識別するステップと、
前記それぞれのX線光子(104)に応答して生成された信号が2つ以上の前記サブピクセル解像度読み出し構造体(98)で測定されたことについて、前記2つ以上のサブピクセル解像度読み出し構造体(98)からのそれぞれの信号から前記それぞれのX線光子(104)の位置を決定するステップと、
前記それぞれのサブピクセル解像度読み出し構造体(98)に関連するカウンタをインクリメントするステップと、
を含む、実施態様16に記載の位相差撮像方法。
[実施態様20]
前記信号を処理するステップは、
各信号を前記しきい値電圧と比較する前に、各入射X線光子(104)に応答して、生成された電荷雲(120)ならびに1つまたは複数の低エネルギー光子のうちの少なくとも1つから生成された信号を成形および増幅するステップをさらに含む、実施態様19に記載の位相差撮像方法。
【符号の説明】
【0053】
10 X線撮像システム
12 X線源
14 X線検出器
14A 位相感応型検出器
16 X線
18 患者
20 X線ビーム/X線光子/X線ビーム経路/入射X線
22 グレーティング
24 アナライザグレーティング
30 イメージャサブシステム
46 線形/回転サブシステム
48 システムコントローラ
50 X線コントローラ
52 モータコントローラ
54 データ収集システム
56 処理構成要素
58 メモリデバイス/メモリ構成要素
60 オペレータワークステーション
62 プリンタ
64 ディスプレイ
66 画像保管通信システム(PACS)
68 リモートクライアント
80 線源側グレーティングG
82 グレーティングG
84 グレーティングG
90 検出器モジュール
92 検出器ピクセル
94 変換材料
96 読み出し回路
98 サブピクセル解像度電極/櫛形
98A 非連続電極/櫛形
98B 非連続電極/櫛形
98C 非連続電極/櫛形
100 導電性ブリッジ
100A サブピクセルフォトダイオード
100B サブピクセルフォトダイオード
100C サブピクセルフォトダイオード
104 X線光子
106 高解像度シンチレータ
108 光結合層
110 サブピクセルフォトダイオード
110A サブピクセルフォトダイオード
110B サブピクセルフォトダイオード
110C サブピクセルフォトダイオード
120 初期電荷雲
122 電荷雲が上部電極に向かって移動して広がること
126 シェーパ
128 ADC回路
140 一致論理
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10