(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】銀ナノワイヤ保護層構造体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 1/102 20220101AFI20221031BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20221031BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20221031BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
B22F1/102
B22F1/00 K
H01B5/14 Z
H01B13/00 503Z
(21)【出願番号】P 2021037875
(22)【出願日】2021-03-09
【審査請求日】2021-03-10
(31)【優先権主張番号】202011264100.7
(32)【優先日】2020-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520384910
【氏名又は名称】カンブリオス フィルム ソリューションズ(シアメン) コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Cambrios Film Solutions (Xiamen) Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ワン イェシェン
(72)【発明者】
【氏名】ファン ウェイチア
(72)【発明者】
【氏名】チュー チュンフン
(72)【発明者】
【氏名】シャオ チュンチン
(72)【発明者】
【氏名】リン ヤーチン
(72)【発明者】
【氏名】チェン シーチン
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0316955(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105960298(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103588166(CN,A)
【文献】特表2009-505358(JP,A)
【文献】特開2012-132082(JP,A)
【文献】特表2017-520894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00-9/30
H01B 1/00-19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板;
前記第1の基板上に配置され、前記第1の基板の表面の部分領域のみを覆い、複数の銀ナノワイヤ(SNW)チャネルを含むSNW層;および
前記SNW層上に配置され、前記複数のSNWチャネルに対応する領域
を覆い、耐光性酸化防止剤を含むSNW保護層、
を含むSNW保護層構造体であり、前記SNW保護層構造体のb
*は0.96以下であることを特徴とする、SNW保護層構造体。
【請求項2】
前記SNW保護層の被覆面積が、前記第1の基板の表面の6%~60%を占めることを特徴とする請求項1に記載のSNW保護層構造体。
【請求項3】
前記SNW保護層の幅が、2μm~1mmの範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載のSNW保護層構造体。
【請求項4】
前記SNW保護層の厚さが、10nm~2000nmの範囲内であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のSNW保護層構造体。
【請求項5】
前記複数のSNWチャネルが、波形状であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のSNW保護層構造体。
【請求項6】
前記SNW層が、さらに、前記複数のSNWチャネルの間に配置される複数のSNWダミーを含み、前記SNWダミーは銀ナノワイヤを
含むことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のSNW保護層構造体。
【請求項7】
さらに、前記SNW層と前記第1の基板との間に配置される複数の導電性ワイヤを含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のSNW保護層構造体。
【請求項8】
さらに、前記SNW保護層上に配置される被覆層を含むことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のSNW保護層構造体。
【請求項9】
さらに、
前記第1の基板の下に配置される第2の基板;
前記第2の基板上に配置され、前記第1の基板の下に位置し、前記第2の基板の表面の部分領域のみを覆い、複数の第2のSNWチャネルを含む第2のSNW層;
前記第2のSNW層上に配置され、前記第1の基板の下に位置し、前記複数の第2のSNWチャネルに対応する領域
を覆い、少なくとも1つの前記耐光性酸化防止剤または他の耐光性酸化防止剤を含む第2のSNW保護層;および
前記第2のSNW保護層上に配置され、前記第1の基板の下に位置する第2の被覆層、
を含むことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のSNW保護層構造体。
【請求項10】
さらに、
前記第1の基板の下に配置され、前記第1の基板の第2の表面の部分領域のみを覆い、複数の第2のSNWチャネルを含む第2のSNW層;
前記第2のSNW層の下に配置され、前記複数の第2のSNWチャネルに対応する領域
を覆い、少なくとも1つの前記耐光性酸化防止剤または他の耐光性酸化防止剤を含む第2のSNW保護層;および
前記第2のSNW保護層の下に配置される第2の被覆層、
を含むことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のSNW保護層構造体。
【請求項11】
第1の基板を用意するステップ;
前記第1の基板上に、前記第1の基板の表面の部分領域のみを覆い、複数の銀ナノワイヤ(SNW)チャネルを含むSNW層を配置するステップ;および
前記SNW層上に、前記複数のSNWチャネルに対応する領域
を覆い、耐光性酸化防止剤を含むSNW保護層を配置するステップ、
を含むSNW保護層構造体の製造方法であり、前記SNW保護層構造体のb
*は0.96以下であることを特徴とするSNW保護層構造体の製造方法。
【請求項12】
前記SNW保護層の被覆面積が、前記第1の基板の表面の6%~60%を占めることを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記SNW保護層の幅が、2μm~1mmの範囲内であることを特徴とする請求項11または12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記SNW保護層の厚さが、10nm~2000nmの範囲内であることを特徴とする請求項11~13のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
前記複数のSNWチャネルが、波形状であることを特徴とする請求項11~14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
前記SNW層が、さらに、前記複数のSNWチャネルの間に配置される複数のSNWダミーを含み、前記SNWダミーは銀ナノワイヤを
含むことを特徴とする請求項11~15のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項17】
さらに、前記第1の基板上に、前記SNW層と前記第1の基板との間に配置される複数の導電性ワイヤを配置するステップを含むことを特徴とする請求項11~16のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項18】
さらに、前記SNW保護層上に被覆層を配置するステップを含むことを特徴とする請求項11~17のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項19】
さらに、
前記第1の基板の下に第2の基板を配置するステップ;
前記第2の基板上に、前記第1の基板の下に配置され、前記第2の基板の表面の部分領域のみを覆い、複数の第2のSNWチャネルを含む第2のSNW層を配置するステップ;
前記第2の基板上に、前記第2のSNW層上に配置され、前記第1の基板の下に位置し、前記複数の第2のSNWチャネルに対応する領域
を覆い、少なくとも1つの前記耐光性酸化防止剤または他の耐光性酸化防止剤を含む第2のSNW保護層を配置するステップ;および
前記第2のSNW保護層上に、前記第1の基板の下に位置する第2の被覆層を配置するステップ、
を含むことを特徴とする請求項11~18のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項20】
さらに、
前記第1の基板の下に、前記第1の基板の第2の表面の部分領域のみを覆い、複数の第2のSNWチャネルを含む第2のSNW層を配置するステップ;
前記第2のSNW層の下に、前記複数の第2のSNWチャネルに対応する領域
を覆い、少なくとも1つの前記耐光性酸化防止剤または他の耐光性酸化防止剤を含む第2のSNW保護層を配置するステップ;および
前記第2のSNW保護層の下に、第2の被覆層を配置するステップ、
を含むことを特徴とする請求項11~18のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明(本開示)は、銀ナノワイヤ(SNW)保護層構造体(protection layer structure)、特に、SNW保護層が複数のSNWチャネルに対応する領域のみを覆うSNW保護層構造体に関する。本発明は、さらに、上記SNW保護層構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の銀ナノワイヤ(SNW)保護層構造体10およびその製造方法は、
図1に示す通りである。従来のSNW保護層構造体10では、パターン化されたSNW層12が基板11上に配置された後、SNW層12上に配置されたSNW保護層13が基板11の全領域を覆う。
【0003】
SNW保護層の主な機能は、導電性を低下させるおそれのある光酸化のためにSNW層が無効にならないように、SNW層を保護することである。
【0004】
しかしながら、従来のSNW保護層構造体のSNW保護層の構成要素に含まれる耐光性酸化防止剤が青色光および紫色光を吸収し、SNW保護層が基板上の全領域を覆ってしまい、従来のSNW保護層構造体全体が著しく黄変する現象が発生する。本発明に関連する先行技術文献としては、下記特許文献1および2が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】中国特許出願公開第109243677号明細書
【文献】中国特許出願公開第109686476号明細書
【発明の概要】
【0006】
従来技術における従来のSNW保護層構造体全体の著しい黄変の問題を改善するために、本発明は、新規な銀ナノワイヤ(SNW)保護層構造体およびその製造方法を提供する。
【0007】
上記および他の目的を達成するために、本発明は、以下を含むSNW保護層構造体を提供する:(第1の)基板;前記(第1の)基板上に配置され、前記(第1の)基板の表面の部分領域(一部の領域)のみを覆う(第1の)SNW層であって、複数の(第1の)SNWチャネルを含む(第1の)SNW層;および、(第1の)SNW層上に配置され、複数の(第1の)SNWチャネルに対応する領域のみを覆い、耐光性酸化防止剤を含む(第1の)SNW保護層。
【0008】
上述したSNW保護層構造体では、(第1の)SNW保護層の被覆面積(カバー領域)(cover area)は、前記(第1の)基板の表面の6%~60%を占めることができる。
【0009】
上述したSNW保護層構造体では、(第1の)SNW保護層の幅は、2μm~1mmの範囲内とすることができる。
【0010】
上述したSNW保護層構造体では、(第1の)SNW保護層の厚さは、10nm~2000nmの範囲内とすることができる。
【0011】
上述したSNW保護層構造体では、複数の(第1の)SNWチャネルは波形状(波形、corrugate)とすることができる。
【0012】
上述したSNW保護層構造体では、(第1の)SNW層は、さらに、複数の(第1の)SNWチャネルの間に配置された複数のSNWダミー(dummy)を含むことができる。
【0013】
上述したSNW保護層構造体は、さらに、(第1の)SNW層と(第1の)基板との間に配置される複数の導電性ワイヤを含むことができる。
【0014】
上述したSNW保護層構造体は、さらに、(第1の)SNW保護層上に配置される(第1の)被覆層を含むことができる。
【0015】
上述したSNW保護層構造体は、さらに、以下を含むことができる:(第1の)SNW保護層構造体の下に配置される第2のSNW保護層構造体であって、第2の基板を含む第2のSNW保護層構造体;前記第2の基板上に配置され、前記第2の基板の表面の部分領域のみを覆う、第2のSNW層であって、複数の第2のSNWチャネルを含む第2のSNW層;前記第2のSNW層上に配置され、前記複数の第2のSNWチャネルに対応する領域のみを覆う第2のSNW保護層であって、少なくとも1つの前記耐光性酸化防止剤または他の耐光性酸化防止剤を含む第2のSNW保護層;および、前記第2のSNW保護層上に配置される第2の被覆層。
【0016】
上述したSNW保護層構造体は、さらに、以下を含むことができる:(第1の)基板の下に配置され、該(第1の)基板の第2の表面の部分領域のみを覆う第2のSNW層であって、複数の第2のSNWチャネルを含む第2のSNW層;前記第2のSNW層の下に配置され、前記複数の第2のSNWチャネルに対応する領域のみを覆う第2のSNW保護層であって、少なくとも1つの前記耐光性酸化防止剤または他の耐光性酸化防止剤を含む第2のSNW保護層;および、前記第2のSNW保護層の下に配置される第2の被覆層。
【0017】
上記および他の目的を達成するために、本発明は、さらに、以下のステップ(工程)を含む、SNW保護層構造体の製造方法を提供する:(第1の)基板を用意する(provide)ステップ;前記(第1の)基板上に、複数の(第1の)SNWチャネルを含みかつ前記(第1の)基板の表面の部分領域のみを覆う(第1の)SNW層を配置するステップ;および、前記(第1の)SNW層上に、耐光性酸化防止剤を含みかつ複数の(第1の)SNWチャネルに対応する領域のみを被覆する、(第1の)SNW保護層を配置するステップ。
【0018】
上述した製造方法では、前記(第1の)SNW保護層の被覆面積は、前記(第1の)基板の表面の6%~60%を占めることができる。
【0019】
上述した製造方法では、前記(第1の)SNW保護層の幅は、2μm~1mmの範囲内とすることができる。
【0020】
上述した製造方法では、前記(第1の)SNW保護層の厚さは、10nm~2000nmの範囲内とすることができる。
【0021】
上述した製造方法では、前記複数の(第1の)SNWチャネルは波形状とすることができる。
【0022】
上述した製造方法では、前記(第1の)SNW層は、さらに、前記複数の(第1の)SNWチャネルの間に配置される複数のSNWダミーを含むことができる。
【0023】
上述した製造方法は、さらに、以下のステップを含むことができる:前記(第1の)基板上に、前記(第1の)SNW層と前記(第1の)基板との間に配置される、複数の導電性ワイヤを配置するステップ。
【0024】
上述した製造方法は、さらに、以下のステップを含むことができる:前記(第1の)SNW保護層上に、前記(第1の)被覆層を配置するステップ。
【0025】
上述した製造方法は、さらに、以下のステップを含むことができる:前記(第1の)基板の下に第2の基板を配置するステップ;前記(第1の)基板の下に配置され、前記第2の基板の表面の部分領域のみを覆いかつ複数の第2のSNWチャネルを含む第2のSNW層を、前記第2の基板上に配置するステップ;前記第2のSNW層上かつ前記(第1の)基板の下に配置され、前記複数の第2のSNWチャネルに対応する領域のみを覆い、前記耐光性酸化防止剤または他の耐光性酸化防止剤の少なくとも1つを含む第2のSNW保護層を、前記第2の基板上に配置するステップ;および、前記(第1の)基板の下に位置する第2の被覆層を、前記第2のSNW保護層上に配置するステップ。
【0026】
上述した製造方法は、さらに、以下のステップを含むことができる:前記(第1の)基板の第2の表面の部分領域のみを覆いかつ複数の第2のSNWチャネルを含む第2のSNW層を、前記(第1の)基板の下に配置するステップ;複数の第2のSNWチャネルに対応する領域のみを覆いかつ前記耐光性酸化防止剤または他の耐光性酸化防止剤の少なくとも1つを含む第2のSNW保護層を、前記第2のSNW層の下に配置するステップ。
【0027】
本発明のSNW保護層構造体およびその製造方法は、従来技術における従来のSNW保護層構造体全体の顕著な黄変の問題を効果的に改善することができる。さらに、本発明のSNW保護層構造体およびその製造方法は、それらを適用するタッチセンサの光学性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、従来技術における銀ナノワイヤ(SNW)保護層構造体である。
【0029】
【
図2】
図2は、第1の実施形態におけるSNW保護層構造体の概略図である。
【0030】
【
図3】
図3は、第1の実施形態におけるSNW保護層構造体の断面線A-Aに沿った概略断面図である。
【0031】
【
図4】
図4は、第1の実施形態におけるSNW保護層構造体の断面線B-Bに沿った概略断面図である。
【0032】
【
図5】
図5は、第1の実施形態におけるSNW保護層構造体の製造方法のフローチャートである。
【0033】
【
図6】
図6は、第2の実施形態におけるSNW保護層構造体の概略図である。
【0034】
【
図7】
図7は、第2の実施形態におけるSNW保護層構造体の断面線A-Aに沿った概略断面図である。
【0035】
【
図8】
図8は、第2の実施形態におけるSNW保護層構造体の断面線B-Bに沿った概略断面図である。
【0036】
【
図9】
図9は、第3の実施形態におけるSNW保護層構造体の概略図である。
【0037】
【
図10】
図10は、第3の実施形態におけるSNW保護層構造体の上部構造の製造工程を示す概略図である。
【0038】
【
図11】
図11は、第3の実施形態におけるSNW保護層構造体の下部構造の製造工程を示す概略図である。
【0039】
【
図12】
図12は、第4の実施形態におけるSNW保護層構造体およびその製造方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の目的、特徴、および効果の理解を容易にするために、本発明の詳細な説明のための添付図面とともに実施形態を提供する。
【0041】
なお、文脈において別段の指定がない限り、詳細な説明および添付の特許請求の範囲において使用される単数形の用語である「a/an」および「the」は、複数の形態の意味を含む(カバーする)ものとする。
【0042】
文脈において別段の指定がない限り、詳細な説明および添付の特許請求の範囲において使用される用語「または(or)」は、「および/または」の意味を包むものとする。
【0043】
文脈において使用される用語「ピッチ(pitch)」は、銀ナノワイヤ(SNW)チャネルの中心軸と、別のSNWチャネルの中心軸との間の最短距離を指す。
【0044】
(第1の実施形態)
図2~
図4に示すように、第1の実施形態のSNW保護層構造体20は、以下のものを含む:基板21(
図2には示されていない);基板21上に配置され、基板21の表面の一部の領域のみを覆い、複数のSNWチャネル221を含むSNW層22;および、SNW層22上に配置され、複数のSNWチャネル221に対応する領域のみを覆い、耐光性酸化防止剤を含むSNW保護層23。限定ではなく例として、耐光性酸化防止剤は、ベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、オクタベンゾンを挙げることができる。
【0045】
第1の実施形態のSNW保護層構造体20は、
図5に示す製造方法により製造することができる。
図5に示すように、第1の実施形態のSNW保護層構造体20の製造方法は、以下のステップを含む:S1、基板21を用意する;S2、SNW層22を基板21上に配置し、SNW層22は基板21の表面の一部の領域のみを覆い、複数のSNWチャネル221を含む;および、S3、SNW保護層23をSNW層22上に配置し、SNW保護層23は、複数のSNWチャネル221に対応する領域のみを覆い、耐光性酸化防止剤を含む。
【0046】
従来技術と比較して、第1の実施形態のSNW保護層構造体20およびその製造方法では、SNW保護層23は、複数のSNWチャネル221に対応する領域のみをカバーしているため、SNW保護層23の被覆面積を減らすことができ、さらに、従来のSNW保護層構造体全体の重大な黄変の問題を効果的に改善するとともに、導電性不良の原因となる光酸化による無効化を効果的に防止することができる。
【0047】
第1の実施形態のSNW保護層構造体20およびその製造方法においては、SNW保護層23の被覆面積は特に限定されない。好ましい実施形態では、SNW保護層23の被覆面積は、基板21の表面の6%~60%を占める。
【0048】
第1の実施形態のSNW保護層構造体20およびその製造方法においては、SNW保護層23の幅は特に規定されていない。好ましい実施形態では、SNW保護層23の幅は、2μm~1mmの範囲内にある。例えば、幅が2μm未満の場合、SNW保護層23が折れ曲がった状態でクラックを生じる可能性があり、幅が1mmを超える場合、SNW保護層23の視認性(visibility)に影響を及ぼす可能性がある(例えば、SNW保護層23の透明度は、400nm~700nmの間の波長を有する可視光に曝されたときに、特定の閾値未満に低下する可能性がある)。
【0049】
第1の実施形態のSNW保護層構造体20およびその製造方法においては、SNW保護層23の厚さは特に規定されていない。好ましい実施形態では、SNW保護層23の厚さは、10nm~2000nmの範囲内である。例えば、厚さが10nm未満の場合、SNW保護層23が折れ曲がった状態でクラックを生じる可能性があり、厚さが2000nmを超える場合、視認性に影響を及ぼす可能性がある。
【0050】
(第2の実施形態)
図6~
図8に示すように、第2の実施形態のSNW保護層構造体30は、以下のものを含む:基板31(
図6には示されていない);基板31上に配置され、基板31の表面の一部の領域のみを覆い、複数のSNWチャネル321を含むSNW層32;および、SNW層32上に配置され、複数のSNWチャネル321に対応する領域のみを覆い、耐光性酸化防止剤を含むSNW保護層33。
【0051】
第1の実施形態と比較して、第2の実施形態のSNW保護層構造体30における複数のSNWチャネル321は波形状である。
【0052】
第1の実施形態と比較して、第2の実施形態のSNW保護層構造体30は、さらに、以下のものを含む:複数のSNWチャネル321の間に配置される、複数のSNWダミー322。本明細書で使用される場合、複数のSNWダミー322は、互いにおよび複数のSNWチャネル321から絶縁された(すなわち、分離されている)複数のSNWチャネル321間に画定される構造である。複数のSNWダミー322および複数のSNWチャネル321は、同じ材料で形成されてもよいが、複数のSNWダミー322は、信号を搬送することを意図せず、いくつかの実施形態では、SNW保護層構造体30の表面にわたる視認性を帰化させる(すなわち、実質的に均一な視認性を維持する)ために使用される。
【0053】
第2の実施形態のSNW保護層構造体30は、複数の波形状SNWチャネル321および複数のSNWダミー322により、SNW保護層33を適用するタッチセンサにおけるモアレパターンの発生を防止し、さらに、タッチセンサの光学特性をより向上させることができる。
【0054】
(第3の実施形態)
図9~
図11に示すように、第3の実施形態のSNW保護層構造体40は、以下のものを含む:基板41;基板41上に配置され、基板41の表面の一部の領域のみを覆い、複数のSNWチャネル421(
図9には示されていない)と、複数のSNWチャネル421の間に配置される複数のSNWダミー422(
図9には示されていない)とを含むSNW層42;および、SNW層42上に配置され、複数のSNWチャネル421に対応する領域のみを覆い、耐光性酸化防止剤を含む、SNW保護層43。
【0055】
第2の実施形態と比較して、第3の実施形態のSNW保護層構造体40は、さらに、以下のものを含む:SNW層42と基板41との間に配置される、複数の導電性ワイヤ45;しかしながら、本発明は、上記レイアウトに限定されるものではない。
【0056】
第2の実施形態と比較して、第3の実施形態のSNW保護層構造体40は、さらに、以下のものを含む:SNW保護層43上に配置される被覆層46;しかしながら、本発明は、上記レイアウトに限定されるものではない。
【0057】
第2の実施形態と比較して、第3の実施形態のSNW保護層構造体40は、さらに、以下のものを含む:基板41の下に配置された第2の基板41’;第2の基板41’上に配置され、基板41の下に位置し、第2の基板41’の表面の一部の領域のみを覆い、複数の第2のSNWチャネル421’と、複数の第2のSNWダミー422’とを含む第2のSNW層42’;第2のSNW層42’上に配置され、基板41の下に位置し、複数の第2のSNWチャネル421’に対応する領域のみを覆い、耐光性酸化防止剤を含む第2のSNW保護層43’;第2のSNW層42’と第2の基板41’との間に配置される複数の第2の導電性ワイヤ45’;第2のSNW保護層43’上に配置され、基板41の下に位置する第2の被覆層46’。
【0058】
第3の実施形態のSNW保護層構造体40の製造工程は、
図9~
図11に示す通りである。
図10に示すように、SNW保護層構造体40の上部構造は、以下のステップによって作製することができる:基板41を提供するステップ;複数の導電性ワイヤ45を基板41上に配置するステップ、その際、複数の導電性ワイヤ45を複数のSNWチャネル421と基板41との間に配置する;SNW層42を基板41上に配置するステップ、その際、SNW層42を基板41の表面の一部の領域のみを覆うようにし、SNW層42が複数のSNWチャネル421と、複数のSNWチャネル421の間に配置された複数のSNWダミー422とを含むようにする;フレキソ印刷技術を適用することにより、SNW保護層43をSNW層42上に配置するステップ、その際、SNW保護層43が複数のSNWチャネル421に対応する領域のみを覆い、耐光性酸化防止剤を含むようにする;および、被覆層46をSNW保護層43上に配置するステップ。
【0059】
図11に示すように、SNW保護層構造体40の下部構造は、以下のステップによって作製することができる:第2の基板41’を提供するステップ;複数の第2の導電性ワイヤ45’を第2の基板41’上に配置するステップ、その際、複数の第2の導電性ワイヤ45’を複数の第2のSNWチャネル421’と第2の基板41’との間に配置する;第2のSNW層42’を第2の基板41’上に配置するステップ、その際、第2のSNW層42’を第2の基板41’の表面の一部の領域のみを覆うようにし、第2のSNW層42’を複数の第2のSNWチャネル421’と、複数の第2のSNWチャネル421’の間に配置される複数の第2のSNWダミー422’とを含むようにする;フレキソ印刷技術を適用することにより、第2のSNW保護層43’を第2のSNW層42’上に配置するステップ、その際、第2のSNW保護層43’が複数の第2のSNWチャネル421’に対応する領域のみを覆い、耐光性酸化防止剤を含むようにする;および、第2の被覆層46’を第2のSNW保護層43’上に配置するステップ。
【0060】
最後に、
図10に示すSNW保護層構造体40の上部構造と、
図11に示すSNW保護層構造体40の下部構造とを重ね合わせることにより、第3の実施形態のSNW保護層構造体40が得られる。
【0061】
第3の実施形態のSNW保護層構造体40における、SNW保護層43および第2のSNW保護層43’は、フレキソ印刷技術によって製造される;しかしながら、本発明は、上記の製造方法に限定されるものではなく、グラビア印刷技術によって、SNW保護層43および第2のSNW保護層43’を製造することもできる。
【0062】
第3の実施形態のSNW保護層構造体40の上部構造および下部構造における、SNWチャネル421および第2のSNWチャネル421’は、90°交差するため、上部構造および下部構造は、タッチセンサの送信(Tx)層および受信(Rx)層として機能できる。
【0063】
(第4の実施形態)
図12に示すように、第4の実施形態のSNW保護層構造体50は、以下のものを含む:基板51;基板51上に配置され、基板51の表面の一部の領域のみを覆い、複数のSNWチャネル521と、複数のSNWチャネル521の間に配置される複数のSNWダミー522とを含むSNW層52;SNW層52上に配置され、複数のSNWチャネル521に対応する領域のみを覆い、耐光性酸化防止剤を含むSNW保護層53;SNW層52と基板51との間に配置される複数の導電性ワイヤ55;および、SNW保護層53上に配置される被覆層56。
【0064】
第4の実施形態のSNW保護層構造体50は、さらに、以下のものを含む:基板51の下に配置され、基板51の第2の表面の一部の領域のみを覆い、複数の第2のSNWチャネル521’と、複数の第2のSNWチャネル521’の間に配置される複数の第2のSNWダミー522’とを含む、第2のSNW層52’;第2のSNW層52’の下に配置され、複数の第2のSNWチャネル521’に対応する領域のみを覆い、耐光性酸化防止剤を含む、第2のSNW保護層53’;第2のSNW層52’と基板51との間に配置される複数の第2の導電性ワイヤ55’;および、第2のSNW保護層53’の下に配置される第2の被覆層56’。
【0065】
(第1の比較例)
第1の比較例は、SNW保護層を備えていないSNW構造体であり、以下のもののみ含む:基板;前記基板上に配置され、前記基板の表面の部分領域のみを覆い、複数のSNWチャネルと、前記複数のSNWチャネルの間に配置される複数のSNWダミーとを含む、SNW層。第1の比較例における基板およびSNW層は、前記第2の実施形態のものと同じであり、相違点は、第1の比較例のSNW構造体がSNW保護層を含まないことだけである。
【0066】
(第2の比較例)
第2の比較例のSNW保護層構造体は、前記第2の実施形態のSNW保護層構造体とほぼ同じであり、相違点は、第1の比較例のSNW保護層構造体において、SNW保護層が基板の表面の全領域を覆っていることだけである。
【0067】
(試験例)
従来技術における従来のSNW保護層構造体全体の顕著な黄変の問題を改善することに関して、本発明のSNW保護層構造体の効果を理解するために、第2の実施形態、第1の比較例および第2の比較例におけるSNW保護層構造体またはSNW構造体の光学特性を試験する。
【0068】
第2の実施形態、第1の比較例および第2の比較例におけるSNW保護層構造体またはSNW構造体は、同一の基板およびSNW層を有する;相違点は、以下の通りである:第2の実施形態のSNW保護層は、複数のSNWチャネルに対応する領域のみを覆い、第1の比較例は、SNW保護層を含まず、第2の比較例のSNW保護層は、基板表面の全領域を覆う。
【0069】
具体的には、第2の実施形態、第1の比較例、および第2の比較例のSNW保護層構造体またはSNW構造体における基板の寸法は、15cm×15cmである。第2の実施形態、第1の比較例、および第2の比較例のSNW保護層構造体またはSNW構造体におけるSNWチャネルのピッチは5.26mmであり、幅は0.1823mmであり、SNWチャネルは基板表面の10.4%を占め、SNW層におけるSNWの濃度は0.07wt%である。第2の実施形態および第2の比較例のSNW保護層構造体におけるSNW保護層の厚さは90nmである。
【0070】
第2の実施形態、第1の比較例、および第2の比較例のSNW保護層構造体またはSNW構造体について2回の繰り返し試験を行い、その平均値を算出する。試験結果を下記表1に示す。
【0071】
【0072】
L、a*、およびb*は、CIELAB色空間における様々な値を表す。L*は黒(0)から白(100)までの明度を表し、a*は赤-緑軸上で緑(-)から赤(+)までを表し、b*は黄-青軸上で青(-)から黄(+)までを表す。表1のb*の値は、SNW保護層構造体の黄変指数として機能できる。本発明の第2の実施形態のSNW保護層構造体は、第2の比較例と比較して、b*値が小さい。本発明のSNW保護層構造体およびその製造方法が、従来技術のSNW保護層構造体全体の重大な黄変の問題を効果的に改善することができることは明らかである。
【0073】
本発明は、特定の実施形態によって説明されてきたが、当業者は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲および精神から逸脱することなく、多くの修正および変形を行うことができる。