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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】多気筒エンジンの吸気構造
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/10 20060101AFI20221031BHJP
   F02M 26/19 20160101ALI20221031BHJP
【FI】
F02M35/10 301T
F02M35/10 301P
F02M26/19 331
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021065386
(22)【出願日】2021-04-07
(62)【分割の表示】P 2017250495の分割
【原出願日】2017-12-27
(65)【公開番号】P2021120571
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2021-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】内堀 正崇
(72)【発明者】
【氏名】霜野 慎
(72)【発明者】
【氏名】池谷 亜以
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0061825(US,A1)
【文献】実開昭54-163213(JP,U)
【文献】特開2016-079814(JP,A)
【文献】特開平07-133725(JP,A)
【文献】実開昭63-113757(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/10
F02M 26/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気筒に吸気される新気に対して排気ガスの一部をEGRガスとして還流させる多気筒エンジンの吸気構造であって、
空気が導入される空気導入口と、前記EGRガスが導入されるEGRガス導入口と、吸気ポートに通じる第1連通口とが開口するガス収集室と、を備え、
前記第1連通口は、前記空気と前記EGRガスとの混合ガスの通流方向において、前記空気導入口及び前記EGRガス導入口のいずれよりも下流側の位置に配置され、
前記ガス収集室は、前記ガス収集室の長手方向における前記第1連通口から見て前記空気導入口及び前記EGRガス導入口とは反対側の位置に空間を有している多気筒エンジンの吸気構造。
【請求項2】
前記複数の気筒の各吸気ポートに通じる複数の新気分配口が開口する新気分配室を更に備え、
前記新気分配室が、シリンダヘッドの側面部に設けられ、
前記ガス収集室が、前記シリンダヘッドの側面部における前記新気分配室に対応する位置に取り付けられたコレクタに設けられる請求項1に記載の多気筒エンジンの吸気構造。
【請求項3】
前記新気分配室と前記ガス収集室との間に、前記第1連通口が形成された仕切り板を更に備える請求項2に記載の多気筒エンジンの吸気構造。
【請求項4】
前記混合ガスの通流方向において前記第1連通口よりも下流側に配置され、前記第1連通口よりも小径に形成された第2連通口を更に備える請求項1~3の何れか1項に記載の多気筒エンジンの吸気構造。
【請求項5】
前記第1連通口が、長穴状である請求項1~4の何れか1項に記載の多気筒エンジンの吸気構造。
【請求項6】
前記ガス収集室は、前記複数の気筒が並ぶ気筒配列方向に沿って延長され、
前記気筒配列方向における前記ガス収集室の途中の位置に前記第1連通口が配置されている請求項1~5の何れか1項に記載の多気筒エンジンの吸気構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の気筒に吸気される新気に対して排気ガスの一部をEGRガスとして還流させる多気筒エンジンの吸気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
所謂EGRを行う多気筒エンジンにおいて、新気におけるEGRガスの拡散が十分に行われない場合には、新気におけるEGRガスの還流割合であるEGR率の各気筒間でのばらつきや変動が生じ、それに起因して排気ガス中のNOx濃度が増加するなどの排気エミッションの悪化が発生する。
【0003】
従来の多気筒エンジンとして、新気におけるEGRガスの拡散を促進させるための機構を備えたものが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。例えば、特許文献1に記載の多気筒エンジンでは、空気を導入する空気導入管の吸気チャンバーへの接続部の外周部に沿って、EGRガスが導入される排気分散室が形成される。更に、吸気チャンバーの空気導入管出口の周囲に沿って排気分散室の吐出口が開口されている。この構成により、新気の大きな脈動に起因するEGRガスの逆流を防止しながら、導入空気を囲むようにEGRガスを吸気チャンバーに導入することで、空気とEGRガスとの混合の促進が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-131812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の多気筒エンジンでは、複数の気筒の各吸気ポートに通じる複数の新気分配口が開口する吸気チャンバーにおいて、空気とEGRガスとの夫々が導入されて合流して混合ガスが生成される。そのため、例えそれらの混合を促進させた場合であっても、混合が不十分な段階で混合ガスが新気として各吸気ポートに流入して各気筒に吸気される可能性がある。また、このような多気筒エンジンでは、吸気チャンバーをシリンダヘッドに取り付けられる吸気マニホールド内の空間として形成すると共に、その吸気マニホールドにおいて、吸気チャンバーへの空気導入管の接続部の周囲に排気分散室を形成することから、当該吸気マニホールドの構造が複雑なものとなり、コストアップの要因となる。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、EGRを行う多気筒エンジンにおいて、簡単且つ合理的な構成を採用しながら、EGRガスが略均質に拡散した混合ガスを新気として各吸気ポートに分配して各気筒に吸気させて、EGR率のばらつきに起因する排気エミッションの悪化を抑制する技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は、複数の気筒に吸気される新気に対して排気ガスの一部をEGRガスとして還流させる多気筒エンジンの吸気構造であって、
前記複数の気筒の各吸気ポートに通じる複数の新気分配口が開口する新気分配室と、
前記空気が導入される空気導入口と、前記EGRガスが導入されるEGRガス導入口と、前記新気分配室に通じる第1連通口とが開口するガス収集室と、を備え、
前記ガス収集室が、前記第1連通口が開口する連通領域と、前記空気導入口及び前記EGRガス導入口が開口すると共に前記空気と前記EGRガスとの混合ガスの通流方向に沿って前記連通領域よりも上流側に位置する第1混合領域と、前記混合ガスの通流方向に沿って前記連通領域よりも下流側に位置する第2混合領域とを有する点にある。
【0008】
本構成によれば、EGRを行う多気筒エンジンにおいて、複数の新気分配口に対して新気を分配するための新気分配室に加えて、当該新気分配室に対して第1連通口を介して連通すると共に空気とEGRガスとが導入されるガス収集室が設けられている。即ち、ガス収集室では、空気に対してEGRガスが合流されることで空気とEGRガスとの混合ガスが生成され、その混合ガスが第1連通口から新気分配室に導入された後に、新気として各新気分配口に分配されて各吸気ポートから各気筒に吸気されることになる。
【0009】
更に、ガス収集室において、混合ガスの通流方向に沿って、上流側には空気導入口及びEGRガス導入口が開口する第1混合領域が設けられており、その第1混合領域の下流側には、第1連通口が開口する連通領域が設けられており、更に、その連通領域の下流側には、第2混合領域が設けられている。そして、ガス収集室の上流側に位置する第1混合領域では、生成された直後の混合ガスが連通領域に向かう流れが形成されることになる。一方、ガス収集室の下流側に位置する第2混合領域では、第1連通口から流出せずに連通領域を通過した混合ガスが折返して再度連通領域に向かう流れが形成されることになる。更に、ガス収集室の中間部に位置する連通領域では、第1混合領域から到達した混合ガスと第2混合領域から到達した混合ガスとの衝突が生じることになる。
【0010】
以上のことから、ガス収集室の第2混合領域では、混合ガスの流れを折返すという簡単且つ合理的な構成により、空気に対するEGRガスの混合が促進されることになる。更に、ガス収集室の連通領域では、混合ガスを衝突させるという簡単且つ合理的な構成により、空気に対するEGRガスの混合が一層促進されることになる。よって、ガス収集室の連通領域には、十分に混合された空気とEGRガスとの混合ガスが存在することになる。そして、十分に混合された混合ガスを第1連通口から新気分配室に導入させて、新気として各吸気ポートに分配して各気筒に吸気させることができる。
【0011】
従って、本発明により、EGRを行う多気筒エンジンにおいて、簡単且つ合理的な構成を採用しながら、EGRガスが略均質に拡散した混合ガスを新気として各吸気ポートに分配して各気筒に吸気させて、EGR率のばらつきに起因する排気エミッションの悪化を抑制する技術を提供することができる。
【0012】
本発明の第2特徴構成は、前記新気分配室が、シリンダヘッドの側面部に形成された凹状の内部空間であり、
前記ガス収集室が、前記新気分配室の開放部を覆う状態で前記シリンダヘッドの側面部に取り付けられたコレクタの内部空間であり、
前記シリンダヘッドの側面部と前記コレクタの取付面部との間に介装されて前記新気分配室と前記ガス収集室とを仕切ると共に、前記第1連通口が形成された仕切り板を備えた点にある。
【0013】
本構成によれば、シリンダヘッドの側面部に新気分配室が凹状の内部空間として形成されているので、当該シリンダヘッドとは別体の吸気マニホールドの設置を省略することができる。また、新気分配室を覆う状態でシリンダヘッドの側面部に、上記吸気マニホールドのように複雑な分岐流路を有する必要がない単純な形状のコレクタを取り付けるだけで、そのコレクタの内部空間をガス収集室として利用することができる。更には、シリンダヘッドの側面部とコレクタの取付面部との間に第1連通口を有する仕切り板を介装するという簡単な構成を採用するだけで、シリンダヘッド側の新気分配室とコレクタ側のガス収集室とを好適に仕切りながら、それらを第1連通口で連通させることができる。そして、このような構成を採用することにより、仕切り板に形成される第1連通口のサイズや形状や位置等を簡単に変更することができ、それによりガス収集室における空気とEGRガスとの混合状態を好適なものに簡単に調整することができる。
【0014】
本発明の第3特徴構成は、前記新気分配室が、シリンダヘッドの側面部に形成された凹状の内部空間であり、
前記ガス収集室が、前記新気分配室の開放部を覆う状態で前記シリンダヘッドの側面部に取り付けられたコレクタの内部空間であり、
前記シリンダヘッドの側面部に対する前記コレクタの取り付け部に取り付け用ボルトが内挿されるボス部が複数設けられ、
前記複数のボス部の外周部が、前記ガス収集室の内壁面に形成される混合促進用の凸部として構成されている点にある。
【0015】
本構成によれば、空気に対してEGRガスが合流して混合ガスが生成されるガス収集室の内壁面に混合促進用の凸部が形成されているので、混合ガスの流れが凸部に沿って流れることにより発生する乱流等により、当該混合ガスでの空気とEGRガスとの混合を一層促進させることができる。
【0016】
また、ガス収集室が、シリンダヘッドの側面部に凹状の内部空間として形成された新気分配室の開放部を覆う状態で取り付けられたコレクタの内部空間であるので、シリンダヘッドの側面部に対するコレクタの取り付け部に取り付け用ボルトが内挿されるボス部を複数設け、そのボス部の外周部を、上記ガス収集室の内壁面に形成される混合促進用の凸部として利用することができる。
【0017】
本発明の第4特徴構成は、前記ガス収集室の第2混合領域と前記新気分配室とを連通させると共に前記第1連通口よりも小径に形成された第2連通口を備えた点にある。
【0018】
本構成によれば、ガス収集室の第2混合領域と新気分配室とを連通させる第2連通口が設けられているので、第2混合領域と新気分配室との間で第2連通口を通じて適宜ガス交換が行われることになる。よって、ガス収集室において、第1混合領域から連通領域を通過して到達した混合ガスの流れが折返される第2混合領域でのEGRガスの滞留に起因するデポジットの生成を抑制することができる。更に、第2混合領域を新気分配室に連通させる第2連通口の大きさが、連通領域を新気分配室に連通させる第1連通口の大きさよりも小径に形成されているので、連通領域に存在する混合が十分に促進された混合ガスを第1連通口から新気分配室に流入させながら、第2混合領域に存在する混合が不十分な混合ガスが第2連通口から新気分配室へ流入することを抑制することができる。
【0019】
本発明の第5特徴構成は、前記第1混合領域が、前記第1連通口の中心軸方向に交差する方向に沿って前記混合ガスが流れる領域であり、
前記第2混合領域が、前記第1混合領域での前記混合ガスの通流方向に沿って前記連通領域よりも奥側に位置する領域である点にある。
【0020】
本構成によれば、ガス収集室において、第1混合領域から第1連通口が開口する連通領域に対して、第1連通口の中心軸方向に交差する方向に沿って混合ガスが流入するので、その第1混合領域から連通領域に流入した混合ガスの多くを、その混合ガスの通流方向に沿って連通領域よりも奥側にある第2混合領域に対して、通流方向を変化させることなく良好に流入させて、その混合ガスでの空気とEGRガスとの混合を一層促進させることができる。更に、第1連通口から新気分配室に流入する混合ガスは、ガス収集室の連通領域において通流方向を変化させて第1連通口を通過したものとなるため、その通流方向の変化時においても混合を促進させることができる。
【0021】
本発明の第6特徴構成は、前記第1混合領域が、前記EGRガス導入口から導入されたEGRガスが前記混合ガスの通流方向に沿って通流すると共に、当該通流するEGRガスに対して前記空気導入口から導入された新気を前記混合ガスの通流方向と交差する方向に沿って合流させる領域である点にある。
【0022】
本構成によれば、ガス収集室の第1混合領域において、混合ガスの通流方向に沿って第1連通口が開口する連通領域に向けて通流するEGRガスに対して、当該EGRガスの通流方向と交差する方向に空気を合流させることができる。即ち、空気とEGRガスとの夫々が互いに交差する方向で合流するため、それらの混合が促進される。更に、EGRガスと比べて大流量である空気が、連通領域に向かうEGRガスの通流方向に対して交差する方向に沿って、空気導入口からガス収集室に流入するため、その流入した空気がEGRガスと合流した直後にガス収集室の内壁に衝突し、その衝突により発生する乱流により、空気とEGRガスとの混合を一層促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】多気筒エンジンのシリンダヘッド部分の斜視図
図2】多気筒エンジンのシリンダヘッド部分の平断面図
図3】多気筒エンジンの吸気構造部分の側面図
図4】多気筒エンジンの吸気構造部分の分解斜視図
図5】コレクタ及び仕切り板の分解状態を示す斜視図
図6】コレクタ及び仕切り板の組み立て状態を示す斜視図
図7】コレクタの開放部側の側面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る多気筒エンジンの吸気構造の実施形態について、図1図7に基づいて説明する。
本実施形態の多気筒エンジン(以下、「本エンジン」と略称する場合がある。)は、図1及び図2に示すように、4つの気筒10を直列で配列して備えたエンジン本体1を備えた直列4気筒型のディーゼルエンジンとして構成されている。更に、本エンジンは、各気筒10に吸気される新気に対して排気ガスEの一部をEGRガスRとして還流させるEGRを行うものとして構成されている。
【0025】
エンジン本体1の上面部には、シリンダヘッド2が設けられている。シリンダヘッド2の一方側の側面部2aには、主に図2に示すように、平面視における複数の気筒10の配列方向(以下、「気筒配列方向」と呼ぶ。)に沿って延在する凹状の内部空間である新気分配室20が形成されている。また、この新気分配室20には、4つの気筒10の各吸気ポート12に通じる4つの新気分配口25が外方に向けて開口する状態で設けられている。このように、新気分配室20がシリンダヘッド2の内部空間として形成されているので、シリンダヘッド2とは別体の吸気マニホールドの設置が省略されている。
【0026】
シリンダヘッド2において新気分配室20が形成された側の側面部2aには、当該新気分配室20の開放部を覆う状態でコレクタ3が取り付けられている。このコレクタ3の内部にはガス収集室30が形成されている。即ち、コレクタ3は、吸気マニホールドのように複雑な分岐流路を内部に有するものではなく、シリンダヘッド2側の面に開放する凹状空間としてガス収集室30を形成した単純な形状のものとして構成されている。
【0027】
一方、シリンダヘッド2の他方側の側面部2bには、複数の気筒10の各排気ポート14に通じる4つの排気流出口27が形成されている。この排気流出口27が形成された側のシリンダヘッド2の側面部2bには、当該排気流出口27に接続する状態で排気マニホールド8が取り付けられている。この排気マニホールド8の内部には、気筒配列方向に沿って延在する排気ガス集合室80が形成されている。
【0028】
そして、この種の多気筒エンジンでは、図2に示すように、空気AとEGRガスRとがコレクタ3内部のガス収集室30に導入されて合流し、当該ガス収集室30にて空気AとEGRガスRとの混合ガスMが生成される。その混合ガスMは、シリンダヘッド2内部の新気分配室20に流入して、新気として各新気分配口25に分配され、各吸気ポート12を通じて各気筒10に吸気される。
【0029】
一方、各気筒10から各排気ポート14を通じて排出された排気ガスEは、各排気流出口27から排気マニホールド8内部の排気ガス集合室80に導入される。この排気ガス集合室80に導入された排気ガスEの殆どは、排気ガス集合室80に開口する排気ガス排出口81から排ガス処理部(図示省略)に送られて適宜無害化処理が施された上で大気に放出される。
また、排気ガス集合室80に導入された排気ガスEの一部は、EGRガスRとして、排気マニホールド8に設けられたEGRガス取出管部82を通じてEGRガス管路29に取り出される。この取り出されたEGRガスRは、EGRガス導入管5及びEGR制御弁6(図1及び図3参照)を通じてコレクタ3内部のガス収集室30に導入される。
【0030】
本エンジンには、簡単且つ合理的な構成を採用しながら、EGRガスRが略均質に拡散した混合ガスMを新気として各吸気ポート12に分配して各気筒10に吸気させて、EGR率のばらつきに起因する排気エミッションの悪化を抑制するための吸気構造が採用されている。その吸気構造の詳細について、以下に説明を加える。
【0031】
図4及び図5に示すように、新気分配室20が形成された側のシリンダヘッド2の側面部2aとコレクタ3の取付面部3aとの間には、鋼板製の仕切り板7が介装されている。この仕切り板7には、第1連通口7a及びそれよりも小径の第2連通口7bが形成されている。即ち、シリンダヘッド2の内部空間として形成された新気分配室20と、コレクタ3の内部空間として形成されたガス収集室30とは、第1連通口7a及び第2連通口7bにより互いに連通しながら、上記仕切り板7により互いに仕切られることになる。
【0032】
尚、仕切り板7において、第1連通口7a及び第2連通口7bのサイズや形状や数や形成位置等については適宜変更することができ、これらを変更することにより、ガス収集室30における空気AとEGRガスRとの混合状態を好適なものに簡単に調整することができる。
また、仕切り板7の外周縁部と、シリンダヘッド2の側面部2aやコレクタ3の取付面部3aとの間にはガスケット72が介装されている。尚、仕切り板7を、ガスケット機能を有する材質で構成すれば、別途追加したガスケット72を省略することもできる。
【0033】
図2に示すように、シリンダヘッド2の内部空間として形成された新気分配室20は、気筒配列方向に沿って延在する空間として形成されている。よって、仕切り板7に形成された第1連通口7aから気筒配列方向に直交する方向に沿って導入された混合ガスMは、気筒配列方向に沿った方向に通流方向を変化させた後に、各新気分配口25に分配されることになる。
【0034】
図1及び図3に示すように、コレクタ3の上面部には、空気導入管4が接続される接続部31や、EGR制御弁6が接続される接続部32が設けられている。そして、主に図5及び図7に示すように、そのコレクタ3の内部空間として形成されたガス収集室30の天井面部には、空気導入管4から空気Aが導入される空気導入口31aや、空気導入管4からEGRガスRが導入されるEGRガス導入口32aが開口している。これら空気導入口31a及びEGRガス導入口32aは何れも、空気A及びEGRガスRを鉛直下向きに導入する開口となる。
【0035】
図2に示すように、コレクタ3の内部空間として形成されたガス収集室30は、シリンダヘッド2内部の新気分配室20の外方に隣接すると共に、当該新気分配室20と同様に気筒配列方向に沿って延在する空間として形成されている。即ち、ガス収集室30において、空気導入口31a及びEGRガス導入口32aの夫々から鉛直下向きに導入された空気A及びEGRガスRは、ガス収集室30の底面部に衝突して気筒配列方向に沿った方向(図2において符号FMで示す方向)に通流方向を変化させた後に、ガス収集室30を通流することになる。
【0036】
図7に示すように、コレクタ3において、EGRガス導入口32aは、気筒配列方向に沿ったガス収集室30の一方側の端部に隣接して開口しており、空気導入口31aは、そのEGRガス導入口32aに対して気筒配列方向に沿って中央部側に隣接して開口している。即ち、ガス収集室30において、EGRガス導入口32aから鉛直下向きに導入されたEGRガスRが通流方向を気筒配列方向に沿った方向(図7において符号FRで示す方向)に変化させて通流する。更に、その気筒配列方向に沿って通流するEGRガスRに対して導入された空気Aが空気導入口31aから鉛直下向きの方向(図7において符号FAで示す方向)に沿って合流されて混合ガスMが生成される。そして、その混合ガスMが、気筒配列方向(図7において符号FMで示す方向)沿って通流することになる。
【0037】
図2に示すように、コレクタ3内部のガス収集室30とシリンダヘッド2内部の新気分配室20とを連通させる第1連通口7aは、平面視において気筒配列方向に平行な仕切り板7に設けられている。よって、ガス収集室30における混合ガスMの通流方向は、第1連通口7aの中心軸A7a方向に直交し、気筒配列方向に沿った方向となる。
【0038】
図2及び図7に示すように、コレクタ3内部のガス収集室30は、仕切り板7の第1連通口7aが開口する連通領域30Bと、空気導入口31a及びEGRガス導入口32aが開口すると共に混合ガスMの通流方向FMに沿って連通領域30Bよりも上流側に位置する第1混合領域30Aと、混合ガスMの通流方向FMに沿って連通領域30Bよりも下流側に位置する第2混合領域30Cとを有するものとなる。即ち、ガス収集室30には、混合ガスMの通流方向FMに沿って上流側から順に、第1混合領域30Aと連通領域30Bと第2混合領域30Cとが設けられている。
【0039】
ガス収集室30の最も上流側に位置する第1混合領域30Aでは、EGRガス導入口32aから導入されたEGRガスRが混合ガスMの通流方向FMである気筒配列方向に沿って通流する。更に、その通流するEGRガスRに対して空気導入口31aから導入された空気Aが混合ガスMの通流方向FMである気筒配列方向と交差する鉛直下向き方向FAに沿って合流して、混合ガスMが生成される。そして、その生成された直後の混合ガスMが、第1連通口7aの中心軸A7a方向に略直交して交差する気筒配列方向である通流方向FMに沿って連通領域30Bに向けて流れることになる。
【0040】
即ち、空気AとEGRガスRとの夫々が互いに交差する方向で合流するため、それらの混合が促進される。更に、EGRガスRと比べて大流量である空気Aが、連通領域30Bに向かうEGRガスRの通流方向FMに対して交差する方向FAに沿って、空気導入口31aからガス収集室30に流入してEGRガスRに合流する。そのため、その流入した空気AがEGRガスRと合流した直後にガス収集室30の内壁に衝突し、その衝突により発生する乱流により、空気AとEGRガスRとの混合が一層促進される。
尚、この第1混合領域30Aにおいて、空気Aの導入量が、EGRガスRの導入量よりも大きいため、EGRガスRは天井部付近に巻き上げられる。このことで、連通領域30Bに向かう混合ガスMでは、上方ほどEGRガスRの濃度が高い状態となる。
【0041】
ガス収集室30の中間部に位置する連通領域30Bでは、第1連通口7aが平面視において気筒配列方向に平行な仕切り板7に設けられている。このことから、第1混合領域30Aから気筒配列方向である通流方向FMに沿って到達した混合ガスMの一部は、その流れと直交する方向に中心軸A7aを有する第1連通口7aから新気分配室20側に流出することなく、当該連通領域30Bを通過して第2混合領域30Cに向けて流れることになる。
【0042】
また、前述のように、第1混合領域30Aから連通領域30Bに到達した混合ガスMでは、上方ほどEGRガスRの濃度が高い。よって、その混合ガスM中のEGRガスRを積極的に第2混合領域30Cに送り込むためには、上記第1連通口7aを下方側に設けることができる。また、第1連通口7aを下方側に設けることで、底部付近でのEGRガスRの滞留に起因するデポジットの生成が好適に抑制されることになる。
【0043】
ガス収集室30の最も下流側に位置する第2混合領域30Cでは、連通領域30Bを通過した混合ガスMが到達し、その混合ガスMが折返して再度連通領域30Bに向かう流れが形成されることになる。よって、連通領域30Bでは、第1混合領域30Aから到達した混合ガスMと第2混合領域30Cから到達した混合ガスMとの衝突が生じ、その衝突した混合ガスMが、第1連通口7aから新気分配室20に流出することになる。
【0044】
ガス収集室30において上述のような混合ガスMの流れが形成されることで、ガス収集室30の第2混合領域30Cでは、混合ガスMの流れを折返すという簡単且つ合理的な構成により、空気Aに対するEGRガスRの混合が促進されることになる。更に、ガス収集室30の連通領域30Bでは、混合ガスMを衝突させるという簡単且つ合理的な構成により、空気Aに対するEGRガスRの混合が一層促進されることになる。よって、ガス収集室30の連通領域30Bには、十分に混合された空気AとEGRガスRとの混合ガスMが存在することになる。そして、十分に混合された混合ガスMが、仕切り板7の第1連通口7aから新気分配室20に流入し、それが新気として各吸気ポート12に分配されて各気筒10に吸気されることになる。
【0045】
第2混合領域30Cは、第1混合領域30Aでの混合ガスMの通流方向FMである気筒配列方向に沿って連通領域30Bよりも奥側に位置する領域となっている。このことから、ガス収集室30において、第1混合領域30Aから気筒配列方向である通流方向FMに沿って通流して連通領域30Bに到達した混合ガスMは、通流方向を変化させることなく良好に第2混合領域30Cに向かわせることができる。これにより、できるだけ多くの混合ガスMが第2混合領域30Cに流入して、その混合ガスMでの空気AとEGRガスRとの混合が一層促進されることになる。
更に、連通領域30Bにおいて、混合ガスMは、通流方向を略直角に変化させた上で第1連通口7aから新気分配室20側に流出する。このような通流方向の変化時においても混合ガスMにおける混合が促進されることになる。
【0046】
尚、第1連通口7aの形状は、円形、楕円形、矩形など適宜設定することができるが、本実施形態では、流路面積をできるだけ大きくしながら均質な流れを生成するために長穴状とされている。このことで、第1連通口7aから新気分配室20へ流入する混合ガスMの流速をできるだけ低下させながら均質なものとして、当該新気分配室20における各新気分配口25への偏流が防止されている。
【0047】
シリンダヘッド2の側面部2aにおける新気分配室20の開放部の外周縁部及びコレクタ3の取付面部3aにおけるガス収集室30の開放部の外周縁部には、シリンダヘッド2とコレクタ3とを結合するための複数のボルトが内挿されるボス部22,36が複数設けられている。そして、これらボス部22,36の外周部は、新気分配室20及びガス収集室30の夫々の内壁面である底面及び天井面において内方に突出する混合促進用の凸部21,35として形成されている。即ち、ガス収集室30及び新気分配室20において、混合ガスMが、複数の凸部21,35が形成された底部と天井面との間を気筒配列方向に沿って通流することになる。このことで、凸部21,35の近傍では混合ガスMが通流することで乱流が生じ、この乱流により混合ガスMでの空気AとEGRガスRとの混合が促進されることになる。
【0048】
ガス収集室30の第2混合領域30Cでは、第1混合領域30Aから連通領域30Bを通過して到達した混合ガスMの流れが折返されるので、そのままでは例えば底部付近においてEGRガスRが滞留し、それに起因してデポジットが生成されやすくなる。そこで、仕切り板7の第2混合領域30Cに臨む部分の例えば下方側には、第1連通口7aよりも小径の第2連通口7bが開口されており、この第2連通口7bにより、第2混合領域30Cと新気分配室20とが連通されている。即ち、第2混合領域30Cと新気分配室20とが、小径の第2連通口7bで連通しているので、それら第2混合領域30Cと新気分配室20との間で、第2連通口7bを通じて適宜ガス交換が行われる。このことで、第2混合領域30CにおけるEGRガスRの滞留が抑制されて、デポジットの生成が好適に防止されることになる。また、第2連通口7bが第1連通口7aよりも小径であることから、第2混合領域30Cに存在する混合が不十分な混合ガスMが、第2連通口7bから新気分配室20へ流入することが好適に抑制されている。
【0049】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0050】
(1)上記実施形態では、本エンジンを直列4気筒型のディーゼルエンジンとして構成したが、気筒の数や配置状態並びに燃料の種類等については適宜変更しても構わない。
【0051】
(2)上記実施形態では、新気分配室20をシリンダヘッド2の内部空間として形成すると共に、その新気分配室20に各吸気ポート12に通じる複数の新気分配口25を設けることで、吸気マニホールドの設置を省略したが、シリンダヘッド2の側面部2aに複数の新気分配口を形成し、それら新気分配口に接続する状態で吸気マニホールドを取り付けるように構成しても構わない。
【0052】
(3)上記実施形態では、シリンダヘッド2において新気分配室20が形成された側の側面部2aに、第1連通口7a等を形成した仕切り板7を介在させてコレクタ3を取り付け、そのコレクタ3の内部に新気分配室20に対して第1連通口7aを介して連通するガス収集室30を形成したが、これら第1連通口7aやガス収集室30の構成については適宜改変することができる。例えば、ガス収集室を新気分配室に対して離間させて配置し、これらを連通管で接続して、当該連通管のガス収集室に対する接続口を第1連通口としても構わない。
【0053】
(4)上記実施形態では、ガス収集室30の開放部の外周縁部に設けられた複数のボス部36の外周部を、ガス収集室30の夫々の底面及び天井面において内方に突出する混合促進用の凸部21,35として形成したが、このような混合促進用の凸部については適宜省略又は改変することができる。例えば、ボス部36とは関係なく、混合促進に適した位置に凸部を配置しても構わない。
【0054】
(5)上記実施形態では、第1混合領域30Aにおいて混合ガスMを第1連通口7aの中心軸A7a方向に直交する気筒配列方向である通流方向FMに沿ったものとすると共に、第2混合領域を、第1混合領域30Aでの混合ガスMの通流方向FMに沿って連通領域30Bよりも奥側に位置する領域としたが、第1連通口7aの中心軸A7a方向に対する第1混合領域30Aでの混合ガスMの通流方向FMの交差角度については、当該第1混合領域30Aから連通領域30Bに到達した混合ガスMの殆どが直接第1連通口7aから流出することを適切に抑制することができる範囲において適宜変更することができる。
【0055】
(6)上記実施形態では、第1混合領域30aにおいて、混合ガスMの通流方向FMに沿ってEGRガス導入口32aから導入されたEGRガスRを通流させながら、そのEGRガスRに対して混合ガスMの通流方向FMと直交する方向FAに沿って空気導入口31aから導入された新気を合流させるように構成したが、第1混合領域30aにおけるEGRガスRと空気Aとの合流状態については適宜改変しても構わない。
【符号の説明】
【0056】
2 シリンダヘッド
2a 側面部
2b 側面部
3 コレクタ
3a 取付面部
7 仕切り板
7a 第1連通口
7b 第2連通口
10 気筒
12 吸気ポート
20 新気分配室
21 凸部
25 新気分配口
30 ガス収集室
30A 第1混合領域
30B 連通領域
30C 第2混合領域
30a 第1混合領域
31a 空気導入口
32a EGRガス導入口
A 空気
E 排気ガス
M 混合ガス
R EGRガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7