(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】作業システム、および情報処理装置
(51)【国際特許分類】
H05K 13/02 20060101AFI20221031BHJP
H05K 13/04 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
H05K13/02 B
H05K13/04 A
(21)【出願番号】P 2021095901
(22)【出願日】2021-06-08
(62)【分割の表示】P 2020531860の分割
【原出願日】2018-07-24
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】櫻山 岳史
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-073929(JP,A)
【文献】特開平07-297593(JP,A)
【文献】特開2014-045074(JP,A)
【文献】特開2008-218970(JP,A)
【文献】特開2015-149407(JP,A)
【文献】国際公開第2009/063740(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定されている基準の供給位置と実際の供給位置とのズレ量を記憶したメモリを有するテープフィーダと、
前記テープフィーダが装着される複数のフィーダ装着部と、
作業ヘッドが有する2以上の保持具によって保持される保持対象の部品を供給する2以上の前記テープフィーダの前記メモリの各々からズレ量を読み込み、前記2以上のテープフィーダのメモリから読み込んだズレ量
の差が所定の範囲内となるように、当該2以上のテープフィーダの装着位置を前記複数のフィーダ装着部のうちの何れかに決定するコントローラと、
を備える作業システム。
【請求項2】
前記複数のフィーダ装着部のうちの前記コントローラにより決定されたフィーダ装着部に、前記2以上のテープフィーダを装着するローダを備える請求項
1に記載の作業システム。
【請求項3】
作業ヘッドが有する2以上の保持具によって2以上の
予め設定されている基準の供給位置と実際の供給位置とのズレ量を記憶したメモリを有するテープフィーダの供給位置から部品を同時に保持できるように、
前記テープフィーダの前記メモリの各々からズレ量を読み込み、前記2以上のテープフィーダのメモリから読み込んだズレ量の差が所定の範囲内となるように、前記2以上のテープフィーダを含む複数のテープフィーダのなかから当該2以上のテープフィーダを決定する情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業ヘッドが有する2以上の保持具によって2以上のテープフィーダから部品を保持する作業システム等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、作業機に形成されたフィーダ装着部に着脱可能に装着されるテープフィーダが記載されている。また、下記特許文献2には、作業機に配設される作業ヘッドが、複数の保持具を有しており、それら複数の保持具により複数の部品を保持することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-188608号公報
【文献】国際公開第2014/010084号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2以上の保持具によって、2以上のテープフィーダから部品を適切に保持することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本明細書は、予め設定されている基準の供給位置と実際の供給位置とのズレ量を記憶したメモリを有するテープフィーダと、前記テープフィーダが装着される複数のフィーダ装着部と、作業ヘッドが有する2以上の保持具によって保持される保持対象の部品を供給する2以上の前記テープフィーダの前記メモリの各々からズレ量を読み込み、前記2以上のテープフィーダのメモリから読み込んだズレ量の差が所定の範囲内となるように、当該2以上のテープフィーダの装着位置を前記複数のフィーダ装着部のうちの何れかに決定するコントローラと、を備える作業システムを開示する。
【0006】
【0007】
また、本明細書は、作業ヘッドが有する2以上の保持具によって2以上の予め設定されている基準の供給位置と実際の供給位置とのズレ量を記憶したメモリを有するテープフィーダの供給位置から部品を同時に保持できるように、前記テープフィーダの前記メモリの各々からズレ量を読み込み、前記2以上のテープフィーダのメモリから読み込んだズレ量の差が所定の範囲内となるように、前記2以上のテープフィーダを含む複数のテープフィーダのなかから当該2以上のテープフィーダを決定する情報処理装置を開示する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、2以上のテープフィーダのメモリから読み込んだズレ量に基づいて、それら2以上のテープフィーダの装着位置が決定される。また、2以上のテープフィーダの供給位置を示す位置情報に基づいて、それら2以上のテープフィーダの装着位置が決定される。また、2以上の保持具によって2以上のテープフィーダの供給位置から部品を同時に保持できるように、それら2以上のテープフィーダが決定される。これにより、2以上のテープフィーダから部品を、2以上の保持具によって適切に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】装着ヘッドを下方からの視点で示す図である。
【
図6】2つの吸着ノズルによって同時に部品が保持される2台のテープフィーダを示す概略図である。
【
図7】2つの吸着ノズルによって同時に部品が保持される2台のテープフィーダを示す概略図である。
【
図8】2つの吸着ノズルによって同時に部品が保持される2台のテープフィーダを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。
【0011】
(A)電子部品装着装置の構成
図1に、電子部品装着システム10を示す。電子部品装着システム10は、装着作業機12とローダ14と制御装置(
図5参照)16とを備えている。
【0012】
装着作業機12は、装着機本体20、搬送装置22、装着ヘッド移動装置(以下、「移動装置」と略す)24、装着ヘッド26、供給装置27、マークカメラ(
図5参照)28、パーツカメラ30を備えている。装着機本体20は、フレーム部32と、そのフレーム部32に上架されたビーム部34とによって構成されている。
【0013】
搬送装置22は、2つのコンベア装置40,42を備えている。それら2つのコンベア装置40,42は、互いに平行、かつ、所定の方向に延びるようにフレーム部32に配設されている。なお、コンベア装置40,42の延びる方向を、X軸方向と称し、その方向に直角な水平の方向をY軸方向と称する。それら2つのコンベア装置40,42の各々は、電磁モータ(
図5参照)46によって各コンベア装置40,42に支持される回路基板をX軸方向に搬送する。また、回路基板は、所定の位置において、基板保持装置(
図5参照)48によって保持される。
【0014】
移動装置24は、XYロボット型の移動装置である。移動装置24は、スライダ50をX軸方向にスライドさせる電磁モータ(
図5参照)52と、Y軸方向にスライドさせる電磁モータ(
図5参照)54とを備えている。スライダ50には、装着ヘッド26が取り付けられており、その装着ヘッド26は、2つの電磁モータ52,54の作動によって、フレーム部32上の任意の位置に移動する。
【0015】
装着ヘッド26は、回路基板に部品を装着するものである。装着ヘッド26は、
図2に示すように、8本の棒状の装着ユニット60を備えており、それら8本の装着ユニット60の各々の先端部には、吸着ノズル62が装着されている。なお、
図2では、カバーの取り外された状態の装着ヘッド26が図示されている。
【0016】
吸着ノズル62は、負圧エア,正圧エア通路を介して、正負圧供給装置(
図5参照)66に通じている。吸着ノズル62は、負圧によって部品を吸着保持し、保持した部品を正圧によって離脱する。また、8本の装着ユニット60は、ユニット保持体68の外周部に、等角度ピッチで、軸方向が垂直となる状態に保持されており、吸着ノズル62は、ユニ
ット保持体68の下面から下方に向かって延び出している。これにより、吸着ノズル62は、
図3に示すように、8等配の位置に配置される。なお、
図3は、装着ヘッド26を下方からの視点において示す図である。
【0017】
また、ユニット保持体68は、
図2に示すように、保持体回転装置70の電磁モータ(
図5参照)72によって、装着ユニット60の配設角度毎に間欠回転する。また、複数の装着ユニット60の停止位置のうちの2つの停止位置が昇降ステーションとされており、それら2つの昇降ステーションに停止する2つの装着ユニット60が、ユニット昇降装置76の電磁モータ(
図5参照)78によって昇降する。なお、2つの昇降ステーションは、ユニット保持体68の中心を挟んで対称的に位置している。そして、それら2つの昇降ステーションに位置する装着ユニット60を、昇降ユニット60a(
図3参照)と記載し、昇降ユニット60aに装着される吸着ノズル62を、昇降ノズル62a(
図3参照)と記載する場合がある。
【0018】
また、供給装置27は、
図1に示すように、フィーダ型の供給装置であり、複数のテープフィーダ80を有している。テープフィーダ80は、テープ化部品を巻回させた状態で収容している。テープ化部品は、電子部品がテーピング化されたものである。そして、テープフィーダ80は、送り装置(
図5参照)82によって、テープ化部品を送り出す。これにより、フィーダ型の供給装置27は、テープ化部品の送り出しによって、電子部品を供給位置において供給する。
【0019】
また、テープフィーダ80は、フレーム部32の前方側の端部に固定的に設けられたテープフィーダ保持台100に着脱可能に装着される。具体的には、テープフィーダ保持台100は、
図4に示すように、スライド部102と立設部106とにより構成されており、スライド部102がフレーム部32の上面に配設され、立設部106がスライド部102の搬送装置22に近い側の端部に立設されている。
【0020】
スライド部102には、Y軸方向に延びるように複数のスライド溝108が形成されている。そして、テープフィーダ80の下縁部をスライド溝108に嵌合させることで、スライド部102の上面において、テープフィーダ80を立設部106に接近、若しくは離間させる方向にスライドさせることが可能となっている。また、立設部106には、コネクタ接続部112が設けられている。一方、テープフィーダ80の前端面には、コネクタ(図示省略)が設けられている。そして、テープフィーダ80をスライド溝108に嵌合させた状態で立設部106に接近させる方向にスライドさせることで、コネクタがコネクタ接続部112に接続される。
【0021】
また、テープフィーダ保持台100の立設部106には、コネクタ接続部112を上下方向に挟むように、1対の嵌合穴116が形成されている。一方、テープフィーダ80の前端面には、コネクタを上下方向に挟むように、1対の立設ピン(図示省略)が設けられている。これにより、テープフィーダ80のコネクタが、テープフィーダ保持台100のコネクタ接続部112に接続された際に、1対の立設ピンが1対の嵌合穴116に嵌合される。これにより、テープフィーダ80がテープフィーダ保持台100において位置決めされる。
【0022】
なお、テープフィーダ80は、メモリ(
図5参照)118を有している。そして、テープフィーダ80がテープフィーダ保持台100に装着され、テープフィーダ80のコネクタが、テープフィーダ保持台100のコネクタ接続部112に接続されることで、メモリ118に記憶されている各種情報が、制御装置16に送信される。
【0023】
また、マークカメラ28は、移動装置24のスライダ50に下を向いた状態で固定され
ており、移動装置24の作動により任意の位置に移動する。これにより、マークカメラ28は、フレーム部32の任意の位置を撮像する。また、パーツカメラ30は、フレーム部32の上面において、搬送装置22と供給装置27との間に、上を向いた状態で配設されている。これにより、パーツカメラ30は、装着ヘッド26に装着された吸着ノズル62に保持された部品などを撮像する。
【0024】
また、ローダ14は、テープフィーダ80のテープフィーダ保持台100への装着および、テープフィーダ80のテープフィーダ保持台100から取り外しを自動で行う装置であり、供給装置27と対向するように配設されている。ローダ14は、本出願人が既に出願している国際公開第2014/010083号に詳しく記載されているため、以下に簡略的に説明する。
【0025】
ローダ14は、交換装置(
図5参照)120を有しており、その交換装置120は、ローダ14に収容されているテープフィーダ80を把持する。そして、交換装置120により把持されたテープフィーダ80が、空のスライド溝108に嵌合され、前方に向かってスライドされる。これにより、ローダ14に収容されているテープフィーダ80がテープフィーダ保持台100に装着される。一方、テープフィーダ保持台100に装着されているテープフィーダ80が交換装置120により把持され、後方に向かってスライドされる。これにより、テープフィーダ80がテープフィーダ保持台100から取り外され、ローダ14に収容される。
【0026】
また、制御装置16は、
図5に示すように、コントローラ130と、複数の駆動回路132と画像処理装置134とを備えている。複数の駆動回路132は、装着作業機12の電磁モータ46,52,54,72,78、基板保持装置48、正負圧供給装置66、送り装置82および、ローダ14の交換装置120に接続されている。コントローラ130は、CPU,ROM,RAM等を備え、コンピュータを主体とするものであり、複数の駆動回路132に接続されている。これにより、装着作業機12およびローダ14の作動が、コントローラ130によって制御される。また、コントローラ130は、画像処理装置134にも接続されている。画像処理装置134は、マークカメラ28及びパーツカメラ30により撮像された撮像データを処理するための装置である。これにより、コントローラ130は、撮像データから各種情報を取得する。さらに、コントローラ130は、テープフィーダ80のメモリ118にも接続されている。これにより、コントローラ130は、テープフィーダ80からテープフィーダ80に関する情報を取得する。
【0027】
(B)装着作業機による装着作業
装着作業機12では、上述した構成によって、搬送装置22に保持された回路基板に対して、装着ヘッド26によって装着作業を行うことが可能である。具体的には、コントローラ130の指令により、回路基板が作業位置まで搬送され、その位置において、回路基板が、基板保持装置48によって固定的に保持される。次に、マークカメラ28が、コントローラ130の指令により、回路基板の上方に移動し、回路基板を撮像する。これにより、回路基板の保持位置等に関する情報が得られる。
【0028】
また、テープフィーダ80は、コントローラ130の指令により、テープ化部品を送り出し、電子部品を供給位置において供給する。そして、装着ヘッド26が、コントローラ130の指令により、電子部品の供給位置の上方に移動し、吸着ノズル62によって電子部品を吸着保持する。なお、電子部品を保持する吸着ノズル62は、2つの昇降ステーションのうちの一方に位置する装着ユニット60の吸着ノズル62である。つまり、2個の昇降ノズル62aのうちの一方の昇降ノズル62aが、電磁モータ78の作動により下降し、電子部品を吸着保持する。
【0029】
続いて、昇降ノズル62aによる電子部品の保持が完了し、その昇降ノズル62aが上昇した後に、装着ヘッド26が、パーツカメラ30の上方に移動する。この際、昇降ノズル62aによって保持された電子部品が、パーツカメラ30によって撮像される。これにより、部品の保持位置等に関する情報が得られる。そして、装着ヘッド26が、回路基板の上方に移動し、回路基板の保持位置,電子部品の保持位置等に基づいて、電子部品を回路基板に装着する。つまり、回路基板の保持位置,電子部品の保持位置等に基づいて、移動装置24の作動が制御され、電子部品を保持する昇降ノズル62aが下降されることで、昇降ノズル62aに保持された電子部品が回路基板に装着される。
【0030】
(C)ローダによるテープフィーダの装着作業
上述したように、装着作業機12では、装着ヘッド26の吸着ノズル62により供給装置27から電子部品が保持され、その保持された電子部品が回路基板に装着される。また、装着ヘッド26には、8個の吸着ノズル62が配設されているため、供給装置27において、8個の吸着ノズル62により8個の電子部品が保持された後に、それら8個の電子部品が回路基板に装着される場合がある。このように、8個の吸着ノズル62により8個の電子部品が保持された後に、それら8個の電子部品が回路基板に装着されることで、供給装置27と回路基板との間での装着ヘッド26の移動回数を減らし、サイクルタイムの短縮を図ることできる。
【0031】
また、従来の装着作業機では、1つの吸着ノズル62毎に、供給装置27のテープフィーダ80から電子部品が吸着保持されていた。つまり、1つの昇降ステーションに位置する1つの装着ユニット60が下降し、その装着ユニット60の吸着ノズル62が、テープフィーダ80の供給位置において電子部品を保持する。次に、その吸着ノズル62による電子部品の保持が完了すると、装着ヘッド26において、ユニット保持体68が回転する。これにより、その昇降ステーションに、電子部品を保持した吸着ノズル62が装着された装着ユニット60と異なる装着ユニット60が移動する。そして、その昇降ステーションに新たに移動した装着ユニット60が下降し、その装着ユニット60の吸着ノズル62が、テープフィーダ80の供給位置において電子部品を保持する。このように、1つの吸着ノズル62による電子部品の保持と、ユニット保持体68の回転とが繰り返されることで、装着ヘッド26において、8個の吸着ノズル62により8個の電子部品が保持される。
【0032】
しかしながら、1つの吸着ノズル62毎に、テープフィーダ80から電子部品が保持されていては、電子部品の保持作業に要する時間が長くなり、生産効率が悪い。このため、2つの吸着ノズル62において、同時に、電子部品の保持作業を行うことが望まれる。つまり、2つの装着ユニット60を同時に下降させ、それら2つの装着ユニット60に装着されている吸着ノズル62により、2つの電子部品を同時に保持することが望まれる。
【0033】
そこで、装着作業機12では、2つの吸着ノズル62の間の距離(以下、「ノズル間距離」と記載する)L1(
図6参照)と、2台のテープフィーダ80の供給位置の間の距離(以下、「供給位置間距離」と記載する)L2(
図6参照)とが同じとされている。なお、ノズル間距離L1は、2つの昇降ステーションに位置する2つの装着ユニット60、つまり、2つの昇降ユニット60aに装着される2つの昇降ノズル62aの間の距離である。また、供給位置距離L2は、それら2つの昇降ノズル62aによる保持対象の電子部品を供給する2台のテープフィーダ80の供給位置の間の距離である。
【0034】
これにより、2つの昇降ノズル62aにおいて、同時に、電子部品の保持作業を行うことができそうであるが、テープフィーダ80の供給位置のズレにより、2つの昇降ノズル62aにおいて、同時に、電子部品の保持作業を行うことができない場合がある。具体的には、例えば、テープフィーダ80がテープフィーダ保持台100に装着される際に、テ
ープフィーダ80が傾いて、テープフィーダ80の供給位置がズレる場合がある。このような場合には、
図7に示すように、ノズル間距離L1と供給位置距離L2とが異なり、2つの昇降ノズル62aにおいて、同時に、電子部品の保持作業を行うことができない虞がある。また、装着ヘッド26の機械的な公差に起因して、ノズル間距離L1が一定でない場合もあるため、ノズル間距離L1と供給位置距離L2とが異なり、2つの昇降ノズル62aにおいて、同時に、電子部品の保持作業を行うことができない虞がある。特に、保持対象の電子部品が小さいほど、ノズル間距離L1と供給位置距離L2との差が少なくても、2つの昇降ノズル62aにおいて、同時に、電子部品の保持作業を行うことができない可能性が高い。また、2つの昇降ノズル62aにおいて、同時に、電子部品の保持作業を行うことができたとしても、昇降ノズル62aによる電子部品の保持位置がズレるため、適切な装着作業が担保されない。
【0035】
なお、テープフィーダ80は、上述したように、1対の立設ピンと1対の嵌合穴116とにより位置決めされている。ただし、1対の立設ピンの一方と1対の嵌合穴116の一方とにより、テープフィーダ80の左右方向の位置決めが行われ、1対の立設ピンの他方と1対の嵌合穴116の他方とにより、テープフィーダ80の上下方向の位置決めが行われている。つまり、テープフィーダ80では、1本の立設ピンが1個の嵌合穴116に嵌合されることで、左右方向の位置決めが行われている。このため、テープフィーダ80は、立設ピンと嵌合穴116とにより位置決めされていても、傾く虞がある。
【0036】
また、供給位置距離L2をノズル間距離L1と殆ど誤差なく同じとするためには、非常に精度よくテープフィーダ80などを製造する必要があり、製造コストが高くなる。そこで、テープフィーダ80などの製造に対して、公差が設定されており、公差内での製造が許容されている。このため、テープフィーダ80の製造時において、テープフィーダ80の供給位置が、公差の範囲内でズレている場合がある。
【0037】
このため、テープフィーダ80が製造され、出荷される前に、供給位置に関する情報(以下、「出荷前位置情報」と記載する)が演算され、テープフィーダ80のメモリ118に記憶されている。詳しくは、テープフィーダ80が製造されると、出荷前の段階において、テープフィーダ80にメタル製のテープが、テープ化部品と同様にセットされる。このメタル製のテープの所定の位置には、マークが形成されている。そのメタル製のテープがセットされた状態のテープフィーダ80が、テープフィーダ保持台100と同じ構造のテープフィーダ保持台に装着される。
【0038】
そして、そのテープフィーダ80にセットされたメタル製のテープが、撮像装置(図示省略)により撮像される。この際、テープフィーダ80に形成されている基準マークと、メタル製のテープに形成されているマークとが撮像される。そして、その撮像により得られる撮像データに基づいて、出荷前位置情報が演算される。つまり、テープフィーダ80に形成されている基準マークと、メタル製のテープに形成されているマークとの相対的な位置のズレ量に基づいて、そのテープフィーダ80の供給位置と、予め設定されている基準の供給位置とのズレ量を示す出荷前位置情報が演算される。なお、出荷前位置情報には、テープフィーダ80の供給位置と基準の供給位置との間の距離と、基準の供給位置からテープフィーダ80の供給位置に向かう方向(ズレ方向)とが含まれる。具体的には、例えば、XY座標での所定の方向に1mmズレているという情報が含まれる。そして、集荷前位置情報が演算されると、その出荷前位置情報がメモリ118に記憶され、テープフィーダ80は出荷される。
【0039】
テープフィーダ80が出荷され、電子部品装着システム10を導入している工場に、そのテープフィーダ80が入荷されると、電子部品装着システム10の装着作業機12において、テープフィーダ保持台100に装着される。この際、テープフィーダ80のメモリ
118に記憶されている出荷前位置情報が、制御装置16のコントローラ130に送信され、コントローラ130において、テープフィーダ80を識別するための識別情報と、出荷前位置情報とが関連付けて記憶される。このため、コントローラ130には、装着作業機12のテープフィーダ保持台100に装着された複数のテープフィーダ80の各々に対して、テープフィーダ80の識別情報と、出荷前位置情報とが関連付けて記憶されている。
【0040】
そして、コントローラ130は、2つの昇降ノズル62aによる保持対象の電子部品を供給する2台のテープフィーダ80の装着位置を、コントローラ130に記憶されている出荷前位置情報に基づいて、決定する。この際、コントローラ130は、2つの昇降ノズル62aによる保持対象の電子部品を供給する2台のテープフィーダ80の供給位置のズレ量が同じとなるように、それら2台のテープフィーダ80の装着位置を決定する。
【0041】
具体的には、第1のテープフィーダ80の出荷前位置情報が、所定の方向、例えば、R方向に3mmズレていることを示す情報であり、第2のテープフィーダ80の出荷前位置情報が、何れの方向にも殆どズレていないことを示す情報であると仮定する。また、第3のテープフィーダ80の出荷前位置情報が、第1のテープフィーダ80の出荷前位置情報と同じ、R方向に3mmズレていることを示す情報であると仮定する。このような場合に、第1のテープフィーダ80の装着位置が、2つの昇降ノズル62aの一方に電子部品を供給可能な位置に決定され、第2のテープフィーダ80の装着位置が、2つの昇降ノズル62aの他方に電子部品を供給可能な位置に決定されると、
図7に示すように、ノズル間距離L1と供給位置距離L2とが異なる。
【0042】
一方、第1のテープフィーダ80の装着位置が、2つの昇降ノズル62aの一方に電子部品を供給可能な位置に決定され、第3のテープフィーダ80の装着位置が、2つの昇降ノズル62aの他方に電子部品を供給可能な位置に決定されると、
図8に示すように、ノズル間距離L1と供給位置距離L2とが同じになる。別の言い方をすれば、第1のテープフィーダ80が、2つの昇降ノズル62aの一方に電子部品を供給するデバイスとして決定され、第3のテープフィーダ80が、2つの昇降ノズル62aの他方に電子部品を供給するデバイスとして決定されることで、ノズル間距離L1と供給位置距離L2とが同じになる。
【0043】
つまり、2つの昇降ノズル62aによる保持対象の電子部品を供給する2台のテープフィーダ80の装着位置を、それら2台のテープフィーダ80の供給位置のズレ量が同じとなるように、決定することで、ノズル間距離L1と供給位置距離L2とが同じになる。そこで、コントローラ130は、2つの昇降ノズル62aによる保持対象の電子部品を供給する2台のテープフィーダ80の装着位置を、上述した手法により決定すると、その決定した装着位置に基づいて、ローダ14の交換装置120の作動を制御する。
【0044】
このため、テープフィーダ保持台100において、
図8に示すように、第1のテープフィーダ80が、2つの昇降ノズル62aの一方に電子部品を供給可能な位置に装着され、第3のテープフィーダ80が、2つの昇降ノズル62aの他方に電子部品を供給可能な位置に装着される。これにより、2つの昇降ノズル62aにおいて、同時に、電子部品の保持作業を行うことができる。また、2つの昇降ノズル62aにおいて、同時に、電子部品の保持作業が実行された際に、昇降ノズル62aによる電子部品の保持位置のズレを抑制し、適切な装着作業を担保することができる。なお、テープフィーダ80の装着作業は、段取作業として実行される。つまり、装着作業機12による電子部品の装着作業が実行される前に、ローダ14により、テープフィーダ80がテープフィーダ保持台100に装着される。
【0045】
なお、上記説明では、2台のテープフィーダ80の供給位置のズレ量が一致するように、テープフィーダ80の装着位置が決定されているが、2台のテープフィーダ80の供給位置のズレ量の差が少なくなるように、テープフィーダ80の装着位置が決定されてもよい。つまり、「2台のテープフィーダ80の供給位置のズレ量が同じとなるように」という概念は、「2台のテープフィーダ80の供給位置のズレ量が一致する」という概念だけでなく、「2台のテープフィーダ80の供給位置のズレ量の差が少なくなるように」という概念も含む。このため、2台のテープフィーダ80の供給位置のズレ量の差が所定の範囲内となるように、テープフィーダ80の装着位置が決定されてもよい。また、コントローラ130に記憶されている出荷前位置情報の中に、2台のテープフィーダ80の供給位置のズレ量の差が所定の範囲内となる組合せが存在しない場合がある。このような場合に、コントローラ130は、エラー画面を表示パネル(図示省略)に表示する。これにより、作業者に何らかの改善を要求することができる。なお、閾値は、供給対象の部品のサイズに応じて変更される。
【0046】
また、出荷前位置情報は、上述したように、テープフィーダ80の出荷前に取得された情報であり、装着作業機12のテープフィーダ保持台100に装着されたテープフィーダ80の供給位置のズレ量を適切に反映していない虞がある。つまり、出荷前位置情報は、テープフィーダ保持台100と同じ構造のテープフィーダ保持台に装着された状態のテープフィーダ80の情報であり、装着作業機12のテープフィーダ保持台100に装着されたテープフィーダ80の情報でない。このため、装着作業機12のテープフィーダ保持台100に装着されたテープフィーダ80の供給位置のズレ量は、出荷前位置情報に含まれるズレ量と異なる虞がある。
【0047】
そこで、装着作業機12では、電子部品の装着作業時に、テープフィーダ80の供給位置のズレ量が演算され、その演算されたズレ量を含む供給位置の情報(以下、「作業時位置情報」と記載する)がコントローラ130に記憶される。そして、コントローラ130に記憶された作業時位置情報に基づいて、2つの昇降ノズル62aによる保持対象の電子部品を供給する2台のテープフィーダ80の装着位置が決定される。
【0048】
具体的には、装着作業機12では、装着作業時に、上述したように、吸着ノズル62により保持された電子部品が、パーツカメラ30により撮像されており、撮像データに基づいて、コントローラ130において、吸着ノズル62による電子部品の保持位置が演算されている。このため、コントローラ130は、吸着ノズル62による電子部品の保持位置に基づいて、吸着ノズル62による電子部品の保持位置のズレ量を演算することで、テープフィーダ80の供給位置のズレ量も演算する。そして、コントローラ130は、演算したテープフィーダ80の供給位置のズレ量を、作業時位置情報として記憶する。この際、コントローラ130は、先に記憶している出荷前位置情報と関連付けて、作業時位置情報を記憶する。
【0049】
そして、コントローラ130は、作業時位置情報を記憶すると、その作業時位置情報に基づいて、2つの昇降ノズル62aによる保持対象の電子部品を供給する2台のテープフィーダ80の装着位置を決定する。なお、作業時位置情報に基づくテープフィーダ80の装着位置の決定手法は、出荷前位置情報に基づくテープフィーダ80の装着位置の決定手法と同じであるため、作業時位置情報に基づくテープフィーダ80の装着位置の決定手法の説明は省略する。このように、作業時位置情報に基づいてテープフィーダ80の装着位置を決定することで、装着作業機12における供給位置のズレ量が出荷前位置情報と異なる場合であっても、2つの昇降ノズル62aによる保持作業を適切に行うことができる。
【0050】
また、コントローラ130は、作業時位置情報に基づいてテープフィーダ80の装着位置を決定すると、その決定した装着位置に基づいて、ローダ14の交換装置120の作動
を制御し、ローダ14によりテープフィーダ80がテープフィーダ保持台100に装着される。なお、作業時位置情報に基づいてテープフィーダ80の装着位置が決定された場合は、テープフィーダ80の装着作業を、電子部品の装着作業前だけでなく、電子部品の装着作業中に行ってもよい。テープフィーダ80の装着作業を、電子部品の装着作業中に行うことで、基板生産中の装着作業の精度を高めることができる。
【0051】
また、コントローラ130は、作業時位置情報を記憶する際に、その情報の演算時にテープフィーダ80にセットされていたテープ化部品の種類を示す情報(以下、「テープ化部品情報」と記載する)を、作業時位置情報と関連付けて記憶する。なお、テープ化部品情報は、テープの素材を示す情報を含む。つまり、テープ化部品のテープには、紙素材のもの、樹脂素材のもの等があり、テープ化部品情報には、紙素材のテープ,樹脂素材のテープを示す情報が含まれる。このため、コントローラ130は、テープ化部品情報に紙素材のテープを示す情報が含まれている場合の作業時位置情報と、テープ化部品情報に樹脂素材のテープを示す情報が含まれている場合の作業時位置情報とを区別して記憶している。これは、紙素材のテープのテープ化部品がテープフィーダ80にセットされた際の供給位置のズレ量と、樹脂素材のテープのテープ化部品がテープフィーダ80にセットされた際の供給位置のズレ量とが異なるためである。
【0052】
このように、コントローラ130では、テープ化部品のテープの素材毎に、作業時位置情報が記憶されているため、テープフィーダ80にセットされたテープ化部品のテープの素材も考慮して、テープフィーダ80の装着位置が決定される。つまり、テープフィーダ80にセットされたテープ化部品が、紙素材のテープである場合は、紙素材のテープを示すテープ化部品情報と関連付けられた作業時位置情報に基づいて、テープフィーダ80の装着位置が演算される。また、テープフィーダ80にセットされたテープ化部品が、樹脂素材のテープである場合は、樹脂素材のテープを示すテープ化部品情報と関連付けられた作業時位置情報に基づいて、テープフィーダ80の装着位置が演算される。これにより、テープフィーダ80にセットされているテープ化部品に応じて、供給位置が変化した場合であっても、2つの昇降ノズル62aによる保持作業を適切に行うことができる。
【0053】
また、テープ化部品情報は、テープの素材を示す情報だけでなく、キャビティピッチを示す情報,テープ化部品のメーカ,製造工場を示す情報などを含んでもよい。これにより、メーカ,製造工場によるテープ化部品の癖等とも考慮して、昇降ノズル62aによる保持作業を適切に行うことができる。
【0054】
ちなみに、上記実施例において、装着作業機12は、作業システムの一例である。ローダ14は、フィーダ装着装置の一例である。制御装置16は、情報処理装置及び制御装置の一例である。装着ヘッド26は、作業ヘッドの一例である。パーツカメラ30は、撮像装置の一例である。吸着ノズル62は、保持具の一例である。テープフィーダ80は、テープフィーダの一例である。スライド溝108は、フィーダ装着部の一例である。メモリ118は、記憶部の一例である。
【0055】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。具体的には、例えば、上記実施例では、コントローラ130により決定されたテープフィーダ80の装着位置に基づいて、ローダ14の作動が制御されるが、コントローラ130により決定されたテープフィーダ80の装着位置を、表示パネルなどの報知装置により作業者に報知してもよい。これにより、作業者が、報知された装着位置にテープフィーダ80を装着することができる。つまり、ローダ14を用いてテープフィーダ80の装着作業を自動で行ってもよく、作業者がテープフィーダ80の装着作業を行ってもよい。
【0056】
また、上記実施例では、2つの吸着ノズル62による電子部品の同時保持に本発明が適用されているが、3以上の吸着ノズル62による電子部品の同時保持に本発明が適用されてもよい。つまり、3以上の吸着ノズル62により同時に電子部品を保持するべく、それら3以上の吸着ノズル62による保持対象の部品を供給するテープフィーダ80の装着位置が、出荷前位置情報、若しくは、作業時位置情報に基づいて決定されてもよい。
【0057】
なお、複数の吸着ノズル62による電子部品の同時保持に関して、「同時」という概念は、全く同じタイミングという概念だけでなく、ある程度の時間的な幅を有する概念をも含む。例えば、装着ヘッド26を装着位置において移動させず、つまり、移動装置24により装着ヘッド26を移動させることなく、1の吸着ノズル62により部品を保持した後に、別の1の吸着ノズル62により部品を保持する態様も、複数の吸着ノズル62による電子部品の同時保持に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
12:装着作業機(作業システム) 14:ローダ(フィーダ装着装置) 16:制御装置(情報処理装置) 26:装着ヘッド(作業ヘッド) 30:パーツカメラ(撮像装置) 62:吸着ノズル(保持具) 80:テープフィーダ 108:スライド溝(フィーダ装着部) 118:メモリ(記憶部)