(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】粒状物、読取装置、および印刷装置
(51)【国際特許分類】
A61K 9/44 20060101AFI20221031BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20221031BHJP
A61K 9/28 20060101ALI20221031BHJP
A23L 5/40 20160101ALI20221031BHJP
A61J 3/06 20060101ALI20221031BHJP
B41J 2/21 20060101ALI20221031BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
A61K9/44
A61K9/20
A61K9/28
A23L5/40
A61J3/06 Q
A61J3/06 R
B41J2/21
B41J2/01 123
B41J2/01 451
(21)【出願番号】P 2021096599
(22)【出願日】2021-06-09
(62)【分割の表示】P 2017001716の分割
【原出願日】2017-01-10
【審査請求日】2021-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】中野 信行
(72)【発明者】
【氏名】内田 直樹
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0222702(US,A1)
【文献】特開2017-158632(JP,A)
【文献】特開2015-224270(JP,A)
【文献】特表2003-535923(JP,A)
【文献】特開2014-114280(JP,A)
【文献】米国特許第05693693(US,A)
【文献】特表2007-510796(JP,A)
【文献】特開2006-089741(JP,A)
【文献】実開昭49-147005(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A23L 5/40- 5/49
A61J 1/00-19/06
B41M 5/00- 5/52
B41J 2/21
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にインクジェット方式で画像が印刷された可食性の粒状物であって、
前記画像は、
通常の環境光下において視認可能な主画像と、
通常の環境光下において前記主画像よりも視認性の低い副画像と、
を含み、
前記副画像が、前記主画像と同一の面に印刷され、
前記副画像の特定波長の光に対する吸光度は、前記表面の前記光に対する吸光度および前記主画像の前記光に対する吸光度と相違
し、
前記主画像および前記副画像は、有色のインクにより印刷され、
前記副画像の色相および明度は、前記主画像の色相および明度よりも、前記表面の色相および明度に近い粒状物。
【請求項2】
請求項
1に記載の粒状物であって、
前記副画像は、文字毎に記号化されたコード画像を含む粒状物。
【請求項3】
請求項
2に記載の粒状物であって、
前記コード画像は、点字である粒状物。
【請求項4】
請求項1から請求項
3までのいずれか1項に記載の粒状物であって、
前記副画像が、酸化亜鉛または酸化チタンを含むインクにより印刷される粒状物。
【請求項5】
可食性の粒状物の表面にインクジェット方式で印刷された画像に含まれる情報を読み取る読取装置であって、
粒状物の表面における、有色のインクにより印刷された主画像と同一の面に有色のインクにより印刷された副画像であって、通常の環境光下において視認可能な前記主画像よりも視認性が低く、かつ、特定波長の光に対する吸光度が、前記表面の前記光に対する吸光度および前記前記主画像の前記光に対する吸光度と相違する副画像であって、色相および明度が、前記主画像の色相および明度よりも前記表面の色相および明度に近い副画像を撮影可能な撮影部と、
前記撮影部の撮影結果から情報を取得する情報取得部と、
を備え、
前記撮影部は、前記光を照射
する光照射部、を有する読取装置。
【請求項6】
請求項
5に記載の読取装置であって、
前記副画像が、酸化亜鉛または酸化チタンを含むインクにより印刷される読取装置。
【請求項7】
可食性の粒状物の表面にインクジェット方式で画像を印刷する印刷装置であって、
前記粒状物を搬送する搬送機構と、
前記搬送機構により搬送される前記粒状物の表面に、通常の環境光下において視認可能な主画像を
有色インクにより印刷する第1印刷部と、
前記搬送機構により搬送される前記粒状物の表面に、通常の環境光下において前記主画像よりも視認性が低く、特定波長の光に対する吸光度が、前記表面の前記光に対する吸光度および前記主画像の前記光に対する吸光度と相違する副画像
であって、色相および明度が、前記主画像の色相および明度よりも、前記表面の色相および明度に近い副画像を、前記主画像と同一の面に
有色インクにより印刷する第2印刷部と、
を備えた印刷装置。
【請求項8】
請求項
7に記載の印刷装置であって、
前記第2印刷部は、前記第1印刷部よりも、前記粒状物の搬送方向の下流側に配置される印刷装置。
【請求項9】
請求項
7または請求項
8に記載の印刷装置であって、
前記第2印刷部は、酸化亜鉛または酸化チタンを含むインクで前記副画像を印刷する印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可食性の粒状物、可食性の粒状物の表面に印刷された画像に含まれる情報を読み取る読取装置、および可食性の粒状物の表面にインクジェット方式で画像を印刷する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品である錠剤の表面には、薬品名などの文字列が記録される。このような文字列は、刻印により記録される場合もあるが、刻印では視認性が低いという問題があった。特に、近年では、後発医薬品の普及により錠剤の種類が多様化している。このため、錠剤を確実に識別できるように、錠剤の表面に鮮明に文字列を記録することが求められている。また、錠剤は圧力に弱いため、印字の際に錠剤に加わる圧力は、小さくすることが好ましい。これらの事情から、近年、錠剤の表面にインクジェット方式で画像を印刷する技術が注目されている。
【0003】
錠剤の表面にインクジェット方式で画像を印刷する従来の印刷装置については、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の印刷装置では、錠剤の表面の極めて狭いスペースに、多くの情報を印刷することが求められる。例えば、薬品名等の消費者に対して表示すべき情報だけではなく、錠剤の製造者または薬剤師のみが確認すべき管理情報も印刷画像に含めることが求められる。しかしながら、錠剤の表面に単純に多くの情報を印刷すると、個々の情報の表示が小さくなる。また、消費者の目に入る情報量が多過ぎると、消費者が混乱する虞もある。
【0006】
特許文献1には、錠剤の表面に、2次元バーコードを印刷する例が記載されている。当該例では、2次元バーコードに、多くの情報を含めることができる。しかしながら、2次元バーコードの印刷には、ある程度のスペースが必要となる。このため、消費者に対して表示すべき薬品名等を大きく印刷して、残りのスペースに2次元バーコードを印刷することは、スペース上困難な場合がある。また、錠剤の種類によっては、インクの染み込みや滲みによって、2次元バーコードを精細に印刷すること自体が難しい場合もある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、消費者に混乱が生じにくい態様で、多くの情報が印刷された可食性の粒状物と、当該粒状物から情報を読み取る装置と、当該粒状物の表面に印刷を行う印刷装置と、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の第1発明は、表面にインクジェット方式で画像が印刷された可食性の粒状物であって、前記画像は、通常の環境光下において視認可能な主画像と、通常の環境光下において前記主画像よりも視認性の低い副画像と、を含み、前記副画像が、前記主画像と同一の面に印刷され、前記副画像の特定波長の光に対する吸光度は、前記表面の前記光に対する吸光度および前記主画像の前記光に対する吸光度と相違し、前記主画像および前記副画像は、有色のインクにより印刷され、前記副画像の色相および明度は、前記主画像の色相および明度よりも、前記表面の色相および明度に近い。
【0011】
本願の第2発明は、第1発明の粒状物であって、前記副画像は、文字毎に記号化されたコード画像を含む。
【0012】
本願の第3発明は、第2発明の粒状物であって、前記コード画像は、点字である。
【0013】
本願の第4発明は、第1発明から第3発明までのいずれか1発明の粒状物であって、前記副画像が、酸化亜鉛または酸化チタンを含むインクにより印刷される。
【0014】
本願の第5発明は、可食性の粒状物の表面にインクジェット方式で印刷された画像に含まれる情報を読み取る読取装置であって、粒状物の表面における、有色のインクにより印刷された主画像と同一の面に有色のインクにより印刷された副画像であって、通常の環境光下において視認可能な前記主画像よりも視認性が低く、かつ、特定波長の光に対する吸光度が、前記表面の前記光に対する吸光度および前記前記主画像の前記光に対する吸光度と相違する副画像であって、色相および明度が、前記主画像の色相および明度よりも前記表面の色相および明度に近い副画像を撮影可能な撮影部と、前記撮影部の撮影結果から情報を取得する情報取得部と、を備え、前記撮影部は、前記光を照射する光照射部を有する。
【0015】
本願の第6発明は、第5発明の読取装置であって、前記副画像が、酸化亜鉛または酸化チタンを含むインクにより印刷される。
【0016】
本願の第7発明は、可食性の粒状物の表面にインクジェット方式で画像を印刷する印刷装置であって、前記粒状物を搬送する搬送機構と、前記搬送機構により搬送される前記粒状物の表面に、通常の環境光下において視認可能な主画像を有色インクにより印刷する第1印刷部と、前記搬送機構により搬送される前記粒状物の表面に、通常の環境光下において前記主画像よりも視認性が低く、特定波長の光に対する吸光度が、前記表面の前記光に対する吸光度および前記主画像の前記光に対する吸光度と相違する副画像であって、色相および明度が、前記主画像の色相および明度よりも、前記表面の色相および明度に近い副画像を、前記主画像と同一の面に有色インクにより印刷する第2印刷部と、を備える。
【0017】
本願の第8発明は、第7発明の印刷装置であって、前記第2印刷部は、前記第1印刷部よりも、前記粒状物の搬送方向の下流側に配置される。
【0018】
本願の第9発明は、第7発明または第8発明の印刷装置であって、前記第2印刷部は、酸化亜鉛または酸化チタンを含むインクで前記副画像を印刷する。
【発明の効果】
【0019】
本願の第1発明~第4発明によれば、消費者に対して表示すべき情報を主画像に含めるとともに、特定の関係者のみが確認すべき情報を副画像に含めることができる。副画像に含まれる情報は、消費者に意識されにくいため、消費者が多くの情報により混乱することを避けることができる。
【0020】
特に、本願の第1~第4発明によれば、有色のインクのみで、主画像と副画像とを印刷できる。
【0022】
また、本願の第1発明~第4発明によれば、吸光度の差を利用して、副画像に含まれる情報を読み取ることができる。
【0023】
特に、本願の第2発明によれば、特定の関係者以外の者が、副画像に含まれる情報を認識することを、より困難とすることができる。
【0024】
特に、本願の第3発明によれば、インクジェット方式により、点字のコード画像を精細に印刷できる。
【0025】
また、本願の第5発明および第6発明によれば、消費者に対して表示すべき情報を主画像に含めるとともに、特定の関係者のみが確認すべき情報を副画像に含め、後者の情報を読取装置で読み取ることができる。副画像に含まれる情報は、消費者に意識されにくいため、消費者が多くの情報により混乱することを避けることができる。
【0026】
また、本願の第5発明および第6発明によれば、視認性の低い副画像を、吸光度の差を利用して明瞭に撮影できる。このため撮影結果から情報を容易に取得できる。
【0027】
また、本願の第7発明~第9発明によれば、消費者に対して表示すべき情報を主画像に含めるとともに、特定の関係者のみが確認すべき情報を副画像に含めることができる。副画像に含まれる情報は、消費者に意識されにくいため、消費者が多くの情報により混乱することを避けることができる。
【0028】
特に、本願の第8発明によれば、主画像を印刷した後に、主画像の上に副画像を重ねて印刷できる。これにより、主画像の印刷範囲によって制約を受けることなく、副画像を広範囲に印刷できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図4】制御部と印刷装置内の各部との接続を示したブロック図である。
【
図5】主画像および副画像が印刷された錠剤の例を示した図である。
【
図6】主画像および副画像が印刷された錠剤の例を示した図である。
【
図8】撮影光が照射された錠剤の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明においては、複数の錠剤が搬送される方向を「搬送方向」と称し、搬送方向に対して垂直かつ水平な方向を「幅方向」と称する。
【0031】
<1.印刷装置について>
図1は、本発明の一実施形態に係る印刷装置1の構成を示した図である。この印刷装置1は、可食性の粒状物である複数の錠剤9を搬送しながら、各錠剤9の表面に、インクジェット方式で画像を印刷する装置である。
図1に示すように、本実施形態の印刷装置1は、搬送機構10、第1印刷部20、第2印刷部30、乾燥機構40、および制御部50を備えている。
【0032】
搬送機構10は、複数の錠剤9を保持しつつ搬送する機構である。搬送機構10は、一対のプーリ11と、一対のプーリ11の間に掛け渡された環状の搬送ベルト12とを有する。印刷装置1に投入された複数の錠剤9は、振動フィーダや搬送ドラム等により構成される搬入機構101によって、等間隔に整列されるとともに、搬送ベルト12の外周面に供給される。一対のプーリ11の一方は、搬送用モータ13から得られる動力により回転する。これにより、搬送ベルト12が、
図1中の矢印の方向に回動する。このとき、一対のプーリ11の他方は、搬送ベルト12の回動に伴い従動回転する。
【0033】
図2は、搬送機構10の部分斜視図である。
図2に示すように、搬送ベルト12には、複数の吸着孔14が設けられている。複数の吸着孔14は、搬送方向および幅方向に、等間隔に配列されている。また、
図1に示すように、搬送機構10は、搬送ベルト12の内側の空間から気体を吸い出す吸引機構15を有する。吸引機構15を動作させると、搬送ベルト12の内側の空間が、大気圧よりも低い負圧となる。複数の錠剤9は、当該負圧によって、吸着孔14に吸着保持される。
【0034】
このように、搬送機構10は、複数の錠剤9を、複数の吸着孔14に一定の間隔で保持しつつ、搬送ベルト12の回動によって、複数の錠剤9を搬送する。第1印刷部20および第2印刷部30の下方では、複数の錠剤9は、水平方向に搬送される。
【0035】
また、
図1に示すように、搬送機構10は、搬送ベルト12の内側に、ブロー機構16を有する。ブロー機構16を動作させると、搬送ベルト12の複数の吸着孔14のうち、搬出機構102に対向する吸着孔14のみが、大気圧よりも高い陽圧となる。これにより、当該吸着孔14における錠剤9の吸着が解除され、搬送ベルト12から搬出機構102へ、錠剤9が受け渡される。搬出機構102は、搬送ベルト12から受け渡された錠剤9を、例えば他の搬送ベルトによって、印刷装置1の外部へ搬出する。
【0036】
第1印刷部20は、搬送ベルト12により搬送される錠剤9の表面に、主画像を記録する部位である。主画像には、例えば、錠剤9の製品名、会社名、ロゴマーク、重量等の、消費者に対して表示すべき情報が含まれる。
図1に示すように、本実施形態の第1印刷部20は、4つのヘッド21を有する。4つのヘッド21は、搬送ベルト12の上方に位置し、錠剤9の搬送方向に沿って、一列に配置されている。各ヘッド21は、通常の環境光下において視認可能な有色のインクを、錠剤9の表面に向けて吐出する。例えば、4つのヘッド21は、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックのインク滴を、それぞれ吐出する。その結果、錠剤9の表面に、多色画像である主画像が印刷される。
【0037】
なお、各ヘッド21から吐出されるインクには、食品衛生法で認可された原料により製造された可食性インクが使用される。
【0038】
図3は、1つのヘッド21の下面図である。
図3には、搬送ベルト12と、搬送ベルト12に保持された複数の錠剤9とが、二点鎖線で示されている。
図3中に拡大して示したように、ヘッド21の下面である吐出面210には、インク滴を吐出可能な複数のノズル211が設けられている。本実施形態では、ヘッド21の下面に、複数のノズル211が、搬送方向および幅方向に二次元的に配列されている。各ノズル211は、幅方向に位置をずらして配列されている。このように、複数のノズル211を二次元的に配置すれば、各ノズル211の幅方向の位置を、互いに接近させることができる。ただし、複数のノズル211は、幅方向に沿って一列に配列されていてもよい。
【0039】
ノズル211からのインク滴の吐出方式には、例えば、圧電素子であるピエゾ素子に電圧を加えて変形させることにより、ノズル211内のインクを加圧して吐出する、いわゆるピエゾ方式が用いられる。ただし、インク滴の吐出方式は、ヒータに通電してノズル211内のインクを加熱膨張させることにより吐出する、いわゆるサーマル方式であってもよい。
【0040】
第2印刷部30は、搬送ベルト12により搬送される錠剤9の表面に、副画像を記録する部位である。副画像には、錠剤9の製造者または薬剤師等の特定の関係者のみが確認すべき管理情報が含まれる。例えば、錠剤9の製造年月日、使用期限、製造工場、含有成分等を、副画像に含めることができる。本実施形態の第2印刷部30は、1つのヘッド31を有する。ヘッド31は、搬送ベルト12の上方、かつ、第1印刷部20の4つのヘッド21よりも搬送方向の下流側に、配置されている。本実施形態では、第2印刷部30のヘッド31は、錠剤9の表面に向けて、無色透明のインクを吐出する。これにより、錠剤9の表面に、通常の環境光下において主画像よりも視認性の低い副画像が印刷される。
【0041】
なお、ヘッド31から吐出されるインクには、食品衛生法で認可された原料により製造された可食性インクが使用される。また、ヘッド31の構造は、
図3に示したヘッド21の構造と同等である。すなわち、ヘッド31は、下面に設けられた複数のノズル211から、インク滴を吐出する。
【0042】
乾燥機構40は、錠剤9の表面に付着したインクを乾燥させる機構である。乾燥機構40は、搬送ベルト12の周囲の、第2印刷部30よりも搬送方向下流側の位置に設けられている。乾燥機構40には、例えば、搬送ベルト12により搬送される錠剤9へ向けて、加熱された気体(熱風)を吹き付ける、熱風供給機構が用いられる。第1印刷部20および第2印刷部30から吐出されたインクは、熱風により乾燥して、錠剤9の表面に定着する。
【0043】
なお、この乾燥機構40とは別に、第1印刷部20と第2印刷部30との間に、さらに乾燥機構(中間乾燥機構)が設けられていてもよい。そして、副画像が印刷される前に、主画像を構成する有色インクのみを、中間乾燥機構において乾燥させてもよい。
【0044】
制御部50は、印刷装置1内の各部を動作制御するための手段である。
図4は、制御部50と、印刷装置1内の各部との接続を示したブロック図である。
図4中に概念的に示したように、制御部50は、CPU等のプロセッサ51、RAM等のメモリ52、およびハードディスクドライブ等の記憶部53を有するコンピュータにより構成される。記憶部53内には、印刷処理を実行するためのコンピュータプログラムPが、インストールされている。
【0045】
また、
図4に示すように、制御部50は、上述した搬送用モータ13、吸引機構15、ブロー機構16、第1印刷部20の4つのヘッド21、第2印刷部30のヘッド31、乾燥機構40、搬入機構101、および搬出機構102と、それぞれ通信可能に接続されている。制御部50は、記憶部53に記憶されたコンピュータプログラムPやデータをメモリ52に一時的に読み出し、当該コンピュータプログラムPに基づいて、プロセッサ51が演算処理を行うことにより、上記の各部を動作制御する。これにより、複数の錠剤9に対する印刷処理が進行する。
【0046】
<2.主画像および副画像について>
続いて、錠剤9の表面に印刷される主画像91および副画像92について、より詳細に説明する。
図5は、主画像91および副画像92が印刷された錠剤9の例を示した図である。
【0047】
図5の例では、錠剤9の表面に、主画像91として、製品名である「TABLET A」の文字列と、重量を示す「200mg」の文字列とが、印刷されている。これらの主画像91は、有色のインクにより、鮮明に印刷される。このため、錠剤9の消費者は、通常の環境光下において、主画像91を容易に視認することができる。
【0048】
主画像91を構成する有色のインクには、顔料系または染料系のインクを用いることができる。顔料系のインクとしては、例えば、カーボンブラック、酸化鉄(黄酸化鉄、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、ベンガラ、黒色酸化鉄等)を挙げることができる。また、染料系のインクは、例えば、合成食用色素、天然色素誘導体、天然系合成色素、天然食用色素等から適宜選択することができる。合成食用色素としては、例えば、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色40号、食用赤色102号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用青色1号、食用青色2号、食用緑色3号が挙げられる。天然色素誘導体としては、例えば、銅クロロフィリンナトリウムが挙げられる。天然系合成色素としては、例えば、β-カロテンが挙げられる。天然食用色素としては、例えば、アントシアニン系色素、カロチノイド系色素、キノン系色素、フラボノイド系色素が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、主画像91を構成するインクは、これらの例に限定されるものではない。
【0049】
また、
図5の例では、錠剤9の表面に、副画像92として、点字が印刷されている。
図5の点字は、錠剤9の消費期限である「20170404」の文字列を、点字化したものである。この印刷装置1の印刷方式は、インクジェット方式であるため、ヘッド31から吐出されるインク滴によって、精細な点字を印刷することができる。
【0050】
本実施形態では、副画像92は、無色透明のインクにより印刷される。無色透明のインクには、例えば、酸化亜鉛または酸化チタンを用いることができる。副画像92は、通常の環境光下において、主画像91よりも視認性が低い。したがって、錠剤9の消費者は、通常の環境光下において、副画像92を認識することが困難である。ただし、錠剤9の製造者または薬剤師等の特定の関係者は、後述する読取装置2を用いて、副画像92に含まれる情報を確認することが可能である。
【0051】
このように、錠剤9の表面に、主画像91と、主画像91よりも視認性の低い副画像92とを印刷すれば、錠剤9の消費者に対して表示すべき情報と、特定の関係者のみが確認すべき情報とを、区別することができる。また、副画像92は、消費者に視認されにくいため、消費者が意識するのは、主画像91に含まれる情報のみとなる。これにより、消費者の目に入る情報量を減らして消費者の混乱を防止できるとともに、特定の関係者には、より多くの情報を示すことができる。
【0052】
特に、
図5の例では、副画像92の一部分が、主画像91の上に重ねて印刷されている。副画像92は無色透明であるため、主画像91の上に重ねて印刷しても、主画像91の視認性には殆ど影響がない。また、主画像91の上に副画像92を重ねて印刷すれば、主画像91の印刷範囲によって制約を受けることなく、副画像92を広範囲に印刷できる。したがって、副画像92に、より多くの情報を含めることができる。
【0053】
なお、本実施形態では、副画像92に無色透明のインクを用いたが、副画像92に有色のインクを用いてもよい。その場合、錠剤9の表面の色に近い色のインクを用いることが好ましい。例えば、副画像92の色相は、主画像91の色相よりも、錠剤9の表面の色相に近くするとよい。好ましくは、副画像92の色相を、錠剤9の表面の色相と、略同一にするとよい。また、副画像92の明度は、主画像91の明度よりも、錠剤9の表面の明度に近くするとよい。好ましくは、副画像92の明度を、錠剤9の表面の明度と、略同一にするとよい。これにより、通常の環境光下における副画像92の視認性を低くすることができる。
【0054】
また、副画像92を有色のインクで印刷する場合、第1印刷部20の4つのヘッド21とは別に、ヘッド31を設ける必要はない。したがって、ヘッド31を省略して、4つのヘッド21が、主画像91を印刷する第1印刷部20と、副画像92を印刷する第2印刷部30と、の双方の役割を果たしてもよい。
【0055】
また、
図5の例では、副画像92として点字が印刷されていた。このように、点字を用いれば、特定の関係者以外の者が、副画像92に含まれる情報を認識することを、より困難とすることができる。ただし、副画像92は、点字に代えて、あるいは点字とともに、文字毎に記号化された他のコード画像を含んでいてもよい。また、
図6のように、副画像92は、数字等の通常の文字列であってもよい。また、副画像92は、主画像91と重なっていなくてもよい。
【0056】
<3.読取装置について>
続いて、錠剤9に印刷された画像に含まれる情報を読み取る読取装置2について、説明する。
図7は、読取装置2の構成を示した図である。錠剤9の製造者または薬剤師等の特定の関係者は、読取装置2を用いて、副画像92に含まれる情報を確認することができる。
図7に示すように、読取装置2は、撮影部60、情報取得部70、および表示部80を有する。
【0057】
撮影部60は、少なくとも副画像92を撮影することが可能な装置である。撮影部60は、光照射部61とカメラ62とを有する。撮影部60を動作させると、光照射部61から錠剤9に向けて光を照射しつつ、カメラ62が錠剤9の表面を撮影する。ここで、副画像92は、通常の環境光下においては、明瞭に撮影することが困難である。ただし、特定波長の光に対する副画像92の吸光度が、当該特定波長の光に対する錠剤9の表面の吸光度および当該特定波長の光に対する主画像91の吸光度と、相違する場合には、その吸光度の差を利用して、副画像92を撮影することができる。この場合、光照射部61は、当該特定波長の撮影光Lを出射する。撮影光Lを受けると、例えば
図8のように、吸光度の差によって、副画像92が明瞭化される。この状態で、撮影部60は、カメラ62による撮影を行う。これにより、副画像92が明瞭に現れた撮影結果を得ることができる。
【0058】
なお、副画像92の反射率が、錠剤9の表面の反射率および主画像91の反射率と相違する場合には、その反射率の差を利用して、副画像92を撮影してもよい。例えば、光照射部61から副画像92に向けて、斜めに撮影光Lを照射しながら、反射光を撮影すればよい。
【0059】
また、副画像92は、特定波長の光(例えば、通常の環境光よりも短波長のブラックライトなど)によって発光する蛍光材料を含むインクにより印刷されていてもよい。その場合、光照射部61は、当該特定波長の撮影光Lを出射する。撮影光Lを受けると、副画像92を構成する蛍光材料が発光する。これにより、副画像92が明瞭化される。この状態で、撮影部60は、カメラ62による撮影を行う。これにより、副画像92が明瞭に現れた撮影結果を得ることができる。
【0060】
情報取得部70は、カメラ62の撮影結果から情報を取得する処理部である。情報取得部70には、例えば、プロセッサおよびメモリを有するコンピュータが用いられる。情報取得部70は、カメラ62の撮影結果から、画像処理により点字を抽出する。そして、抽出された点字を、文字列に変換して、表示部80に表示する。表示部80には、例えば、液晶ディスプレイが用いられる。
【0061】
このような読取装置2を用いれば、通常の環境光下では視認性の低い副画像92を、明瞭に撮影できる。したがって、錠剤9の製造者または薬剤師等の特定の関係者は、副画像92に含まれる情報を、容易に読み取ることができる。
【0062】
<4.変形例>
以上、本発明の主たる実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0063】
上記の実施形態では、錠剤9の表裏面のうち、一方の面のみに画像を印刷していた。しかしながら、錠剤9の表裏面の両方に画像を印刷してもよい。例えば、錠剤9の一方の面に主画像91を印刷し、錠剤9の他方の面に副画像92を印刷してもよい。また、錠剤9の表裏面の両方に、主画像と副画像とを印刷してもよい。
【0064】
また、上記の実施形態では、第1印刷部20に、4つのヘッド21が設けられていた。しかしながら、第1印刷部20に含まれるヘッド21の数は、1~3つであってもよく、5つ以上であってもよい。また、上記の実施形態では、第2印刷部30に、1つのヘッド31が設けられていた。しかしながら、第2印刷部30に含まれるヘッド31の数は、2つ以上であってもよい。
【0065】
また、本発明における「可食性の粒状物」は、
図5、
図6、および
図8に示したような割線錠であってもよく、素錠、口腔内崩壊錠(OD錠)、フィルムコーティング錠(FC錠)、糖衣錠、カプセル錠などであってもよい。また、本発明における「可食性の粒状物」は、医薬品としての錠剤に限らず、健康食品としての錠剤や、ラムネ等の錠菓であってもよい。
【0066】
また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 印刷装置
2 読取装置
9 錠剤
10 搬送機構
11 プーリ
12 搬送ベルト
13 搬送用モータ
14 吸着孔
15 吸引機構
16 ブロー機構
20 第1印刷部
21 ヘッド
30 第2印刷部
31 ヘッド
40 乾燥機構
50 制御部
60 撮影部
61 光照射部
62 カメラ
70 情報取得部
80 表示部
91 主画像
92 副画像
101 搬入機構
102 搬出機構
210 吐出面
211 ノズル
L 撮影光