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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】安全装置、乗客コンベアおよび取付方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 29/04 20060101AFI20221031BHJP
【FI】
B66B29/04 C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021109121
(22)【出願日】2021-06-30
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中谷 竜
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-150808(JP,A)
【文献】特開2019-206425(JP,A)
【文献】実開昭52-125294(JP,U)
【文献】特開昭51-039888(JP,A)
【文献】実公昭48-022479(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 25/00-31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環移動する複数の踏段と、前記複数の踏段の両側に配置された保護部と、を有する乗客コンベアの前記保護部に設けられた安全装置であって、
前記踏段と前記保護部とで挟まれた隙間の上方で前記踏段側に突出し、前記踏段の上面である踏み面と略平行状態から非平行状態に変化する板状に形成されたカバー部、を備え、
前記カバー部は、前記踏み面に対向する面である第1の面のみに低摩擦部を有する、
安全装置。
【請求項2】
前記第1の面には、前記低摩擦部としての溝部が設けられている、
請求項1に記載の安全装置。
【請求項3】
前記溝部は、前記第1の面において、前記踏段の進行方向と交差する方向に設けられている、
請求項2に記載の安全装置。
【請求項4】
前記溝部は、前記第1の面において、前記踏段の進行方向と略平行な方向に設けられている、
請求項2に記載の安全装置。
【請求項5】
前記低摩擦部は、前記第1の面の中央部から前記乗客コンベアの乗降口側の範囲のみに設けられている、
請求項1から4のいずれか一つに記載の安全装置。
【請求項6】
前記カバー部は、前記低摩擦部としての低摩擦部材で形成されている、
請求項1または5に記載の安全装置。
【請求項7】
前記低摩擦部材は、フッ素樹脂である、
請求項6に記載の安全装置。
【請求項8】
前記カバー部の前記第1の面は、前記低摩擦部としてのシリコンが塗布されている、
請求項6に記載の安全装置。
【請求項9】
前記カバー部は、前記踏段の端部を超えた位置まで突出している、
請求項1から8のいずれか一つに記載の安全装置。
【請求項10】
前記カバー部は、前記踏み面と略平行に設けられている、
請求項1から9のいずれか一つに記載の安全装置。
【請求項11】
循環移動する複数の踏段と、
前記複数の踏段の両側に配置された保護部と、
前記保護部に設けられた安全装置と、を備え、
前記安全装置は、
前記踏段と前記保護部とで挟まれた隙間の上方で前記踏段側に突出し、前記踏段の上面である踏み面と略平行状態から非平行状態に変化する板状に形成されたカバー部、を備え、
前記カバー部は、前記踏み面に対向する面である第1の面のみに低摩擦部を有する、
乗客コンベア。
【請求項12】
前記安全装置は、前記踏段が下降移動する場合において、前記乗客コンベアの上階側の前記保護部に設けられている、
請求項11に記載の乗客コンベア。
【請求項13】
前記安全装置は、前記踏段の片側の前記保護部に設けられている、
請求項11に記載の乗客コンベア。
【請求項14】
循環移動する複数の踏段と、前記複数の踏段の両側に配置された保護部と、を有する乗客コンベアの前記保護部へ、カバー部を有する安全装置の取付方法であって、
前記カバー部の前記踏段の踏み面に対向する面である第1の面のみに、低摩擦部を形成されており、
前記取付方法は、
前記踏段と前記保護部とで挟まれた隙間の上方の位置に、前記踏段側に突出し、前記踏段の前記踏み面と略平行状態から非平行状態に変化する状態となるように前記カバー部を前記保護部に取り付ける工程、
を含む取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、安全装置、乗客コンベアおよび取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エスカレータ等の乗客コンベアにおいて、乗客コンベアの踏み段の両側に設置されたスカートガードパネル等の保護部に安全装置を設置する場合がある。この安全装置は、踏段と保護部との間の溝の上方に、ブラシ状のディフレクターや樹脂状のディフレクタ等のカバー部を有して構成される。そして、これらのカバー部により、乗降口において利用者のロングスカートが、踏段とスカートガードパネル等の保護部との間の溝に挟まれることを防止する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5618735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、安全装置のディフレクター等のカバー部と踏段の間にベビーカー等の車輪等の物体が引っ掛かったり、挟まる場合がある。このような状況になった場合において、カバー部が樹脂などの剛性がある素材で形成されている場合には、車輪等の物体がカバー部と踏段の間から外れにくくなる恐れがあった。
【0005】
本実施形態は、物体がカバー部と踏段の間に引っ掛かったり、挟まれた場合でも容易に外れやすくすることができる安全装置、乗客コンベアおよび取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の安全装置は、循環移動する複数の踏段と、複数の踏段の両側に配置された保護部と、を有する乗客コンベアに設けられている。安全装置は、カバー部を備える。カバー部は、踏段と前記保護部で挟まれた隙間の上方で踏段側に突出し、踏段の上面である踏み面と略平行状態から非平行状態に変化する板状に形成される。カバー部は、踏み面に対向する面である第1の面のみに低摩擦部を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本実施形態に係る乗客コンベアの一例を示す側面図である。
図2図2は、図1のVI-VI断面図である。
図3図3は、図2の要部を拡大して示す図である。
図4図4は、本実施形態の安全装置がスカートガードパネルに取り付けられた状態を示す斜視図である。
図5図5は、本実施形態の安全装置の拡大図であり、図5(a)は、図4の安全装置をB方向から見た拡大図であり、図5(b)は、安全装置の左端部側の拡大斜視図である。
図6図6は、本実施形態のディフレクターの裏面を示す図である。
図7図7は、本実施の形態において踏み面とディフレクターとの間に車輪が挟まった状態を示す模式図である。
図8図8は、本実施形態のV字溝を備えたディフレクター裏面と車輪との間に車輪17が挟まった状態を示す模式図である。
図9図9は、変形例1のディフレクターの裏面を示す模式図である。
図10図10は、変形例2のディフレクターの裏面を示す模式図である。
図11図11は、変形例3の基台およびディフレクターの構成を示す図である。
図12図12は、変形例4の基台およびディプレクターの構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
(実施形態)
図1は、本実施形態にかかる乗客コンベアの一例を示す側面図である。図2は、図1のVI-VI断面図である。図3は、図2の要部を拡大して示す図である。本実施形態の乗客コンベア1は、例えば、建物の上下階に跨って傾斜して設置されたエスカレータである。この乗客コンベア1は、図1に示すように、多数の踏段2を上階側の乗降口8と下階側の乗降口9との間で循環移動させることで、踏段2の上面である踏み面2aに搭乗した乗客を上階と下階とにわたって搬送するものである。本実施形態では、踏段2が下階側の乗降口9から上階側の乗降口8に上昇して巡回する乗客コンベア1を例として説明する。
【0010】
多数の踏段2は、無端状の踏段チェーン3によって連結されており、建物の床下に設置されたトラスと呼ばれる主枠4内に配置されている。
【0011】
主枠4の内部の上階側にはスプロケット5と駆動モータ及び減速機を備えた駆動装置6とが配置され、主枠4の内部の下階側にはスプロケット7が配置されている。
【0012】
上階側のスプロケット5と下階側のスプロケット7との間には、踏段チェーン3が架け渡されており、駆動装置6がスプロケット5を回転駆動させることに伴って、踏段チェーン3がスプロケット5及びスプロケット7の間を循環移動し、踏段2も踏段チェーン3と一体に循環移動する。
【0013】
踏段2の両側部には左右一対の欄干10が設けられ、これら欄干10の外周部に踏段2と同期して循環移動する手摺ベルト12が装着されている。欄干10の下部には、踏段2の側面との間に隙間Sをあけて保護部としてのスカートガードパネル14が取り付けられており、踏段2がスカートガードパネル14の長手方向に沿って移動する。スカートガードパネル14は、分割された複数枚の例えば鋼板製のパネルを欄干10の長手方向に沿ってつなぎ合わせることで構成されている。
【0014】
図2に示すように、欄干10は、建屋に設けられた主枠4に取り付けられて垂直に支持されており、この欄干10の下部にスカートガードパネル14と内デッキ16とが配設されている。内デッキ16は、スカートガードパネル14の上端部と欄干10の内側(踏段側)との間に取り付けられ、スカートガードパネル14に向かうほど低くなるように傾斜した形状をなしている。
【0015】
スカートガードパネル14の内側には、安全装置20が設けられている。安全装置20は、下階側の乗降口9近傍に設けられている。本実施形態では、安全装置20は、踏段2の両側のスカートガードパネル14の双方に設けられている。安全装置20は、基台22と、カバー部としてのディフレクター24とを備える。
【0016】
基台22は、踏段2の側面とスカートガードパネル14とで挟まれた隙間Sから上方に離れた位置に配され、ネジやボルト等の締結具26によってスカートガードパネル14に固定されている。
【0017】
図2、3に示すように、基台22は、踏段2の踏み面2aに対向する面、つまり、基台22の下面が、水平面28と、傾斜面30とから構成されている。水平面28は、スカートガードパネル14から離れるように水平方向に延出している。傾斜面30は、水平面28の先端から湾曲面31を介してなだらかに繋がっており、スカートガードパネル14から離れるほど上方に向かって傾斜している。
【0018】
傾斜面30には、基台22をスカートガードパネル14に固定するための締結具26を挿通する挿通孔38が設けられている。挿通孔38は、踏段2の移動方向に間隔をあけて複数個設けられている。挿通孔38の傾斜面側(すなわち、踏段側)の端部には、締結具26の頭部26aを収納する座ぐり部39が設けられ、挿通孔38のスカートガードパネル側の端部には、挿通孔38より大きな内径を有した凹部40が設けられている。
【0019】
スカートガードパネル14には、かしめナット42が設けられている。このかしめナット42は、例えば、ポップナットであって、図3に示すように、一端にフランジ部42aを有する円筒状をなしている。このかしめナット42は、固定孔15に嵌め込まれており、スカートガードパネル14に対して固定されている。
【0020】
そして、基台22は、挿通孔38に挿通された締結具26が、かしめナット42に螺合することでスカートガードパネル14に対して固定されている。
【0021】
また、基台22には、傾斜面30より上方に取付部44が設けられ、この取付部44にカバー部としてのディフレクター24が取り付けられている。ディフレクター24は、取付部44から踏段2側に向けて斜め下方にスカートガードパネル14から離れるように傾斜して設けられている。また、ディフレクター24は、踏段2の側端部で踏み面2aの高さが突出したデマケーションクリート51(デマクリート51とも称する)を越えて延在している。
【0022】
本実施形態の乗客コンベア1では、踏段2の側面とスカートガードパネル14との間の隙間Sの上方が基台22及びディフレクター24によって覆われているため、隙間Sに乗客が近づかないようにして踏段2上に搭乗した乗客の靴等の挟まれを防止することができるとともに、異物を落としても基台22あるいはディフレクター24に接触して踏段2の踏み面2a上に落下し、隙間Sから主枠4内へ入り込むことを防止することができる。
【0023】
図4は、本実施形態の安全装置20がスカートガードパネル14に取り付けられた状態を示す斜視図である。図5は、本実施形態の安全装置20の拡大図であり、図5(a)は、図4の安全装置20をB方向から見た拡大図であり、図5(b)は、安全装置20の左端部側の拡大斜視図である。
【0024】
本実施形態の安全装置20は、図4に示すように、基台22と基台22に保持されたディフレクター24の双方が、下階の乗降口9側から上階に向けて、踏段2の踏み面2aと略平行な状態で延在し、中央部付近で踏み面2aと非平行な状態に湾曲して延在している。基台22は、上記のとおり、踏み面2aと略平行な状態から非平行に変化した柱形状で形成されている。また、図4図5(b)に示すように、基台22の両端部には、略角柱形状でかつ先細り形状のキャップ32が装着されている。
【0025】
ディフレクター24は、略平板状に形成されている。ディフレクター24は、図4に示すように、上方からみて幅方向、すなわち踏段2と移動方向と略垂直な方向の長さより、長手方向、すなわち踏段2と移動方向と平行な方向の長さが長い帯状となっている。ディフレクター24は、図4図5(b)に示すように、上方から観て、中央部から両端部それぞれの手前にかけて、基台22側の縁部と踏段2の中央部側の縁部の距離が同一の距離(すなわち、同一幅)で延在している。そして、ディフレクター24は、両端部のそれぞれに近づくにつれて次第にスカートガードパネル14と反対側(踏段2側)に凸形状となるように湾曲し、両端部のそれぞれで基台22側の縁部と踏段2の中央部側の縁部とがつながる形状となっている。
【0026】
また、ディフレクター24の厚さは、中央部から両端部それぞれの手前にかけて同一の厚さとなっているは、図5(a)に示すように、両端部のそれぞれに近づくにつれて、その厚さは次第に薄くなるように形成されている。
【0027】
また、ディフレクター24は、図4のB方向からの視線でみると、踏み面2aと略平行な状態から次第に上方に湾曲して踏み面2aに非平行に変化して形成されている。このため、踏み面2aとディフレクター24の裏面との間の距離は、湾曲して踏み面2aと非平行になるに従って大きくなる。
【0028】
また、ディフレクター24は、本実施形態のディフレクター24はウレタン等の樹脂で形成されている。ただし、材質は樹脂に限定されるものではない。ここで、ディフレクター24の裏面は、踏み面2a側の面であり、第1の面に相当する。
【0029】
図5(a)、(b)に示されるように、ディフレクター24の裏面には、低摩擦部および溝部としてのV字溝が切削加工により形成されている。本実施形態では、踏段2の左右双方のスカートガードパネル14の安全装置20のディフレクター24の裏面に形成されている。
【0030】
図6は、本実施形態のディフレクター24の裏面を示す図である。図6に示すように、本実施形態のディフレクター24の裏面には、その全域にわたってV字溝24aが、ディフレクター24の幅方向、すなわち、踏段2の移動方向と略垂直な方向に延在して設けられている。なお、V字溝24aは、踏段2の移動方向と交差する方向に設けられていればよく、踏段2の移動方向と略垂直な方向に限定されるものではない。
【0031】
このように構成された本実施形態の安全装置20は、以下のようにスカートガードパネル14に取り付けられる。ここで、取付時において、ディフレクター24の裏面の全面には、幅方向に亘ってV字溝24aが切削加工されている。なお、作業者は、予め、ディフレクター24の裏面の全面に、幅方向に亘ってV字溝24aを切削加工してもよい。
【0032】
スカートガードパネル14の上階側と下階側には、予め、それぞれポップナットがスカートガードパネル14を貫通して設けられている。このポップナットは、上階側のキャップ32と下階側のキャップ32がそれぞれ取り付けられる位置に設けられている。
【0033】
作業者は、まず、上階側のポップナットに上階側用のキャップ32をネジで固定する。次に、作業者は、スカートガードパネル14に基台22を取り付ける。具体的には、作業者は、まず、基台22の上階側の端部を、スカートガードパネル14に取り付けた上階側のキャップ32に嵌める。そして、作業者は、図3に示すように、かしめナット42を、フランジ部42aとは反対側の端部を先頭にした姿勢で基台22が取り付けられる側(つまり、内側)からスカートガードパネル14に設けられた固定孔15に嵌め込む。かしめナット42を固定孔15に嵌め込んだ後、かしめナット42にスカートガードパネル14の内側から専用ツール(図示せず)を挿入し、この専用ツールでかしめナット42を軸方向に圧縮してかしめる。
【0034】
この結果、かしめナット42の途中に、図3に示すような周方向に連続する膨出部43が形成され、この膨出部43とフランジ部42aとの間でスカートガードパネル14が挾持される。これにより、かしめナット42はスカートガードパネル14に対して固定される。
【0035】
次いで、作業者は、挿通孔38に挿通された締結具26を、スカートガードパネル14に設けられたかしめナット42に螺合させる。これにより、基台22がスカートガードパネル14に対して固定される。
【0036】
次に、作業者は、V字溝24aが形成されたディフレクター24を、V字溝24aが形成されている面を下側、すなわち、踏み面2a側にして、基台22の取付部44に嵌め込む。そして、ネジ等でディフレクター24を取付部44に固定する。これにより、ディフレクター24が基台22に装着される。
【0037】
最後に、作業者は、スカートガードパネル14に取り付けた基台22の下階側の端部に、下階側用のキャップ32を嵌めて、下階側のポップナットにキャップ32をネジで固定する。以上により、安全装置20のスカートガードパネル14への取り付けが完了する。
【0038】
このように本実施形態の安全装置20、乗客コンベア1では、ディフレクター24の裏面に低摩擦部としてのV字溝24aが設けられているので、踏み面2aとディフレクター24との間に物体が引っ掛かったり、挟まった場合においても、V字溝24aによる間隙によって、物体とディフレクター24の裏面との間の摩擦力は低減され、物体を踏み面2aとディフレクター24との間から外すことが容易になる。
【0039】
図7は、本実施の形態において踏み面2aとディフレクター24との間に車輪17が挟まった状態を示す模式図である。例えば、ベビーカーが乗客コンベア1の乗降口8から踏段2に乗ってきて、図7に示すように、踏み面2aとディフレクター24との間にベビーカーの車輪17が挟まってしまった場合を考える。このような場合、ディフレクターが例えば樹脂等の固い材料で形成されていると、従来の安全装置を備えた乗客コンベアでは、車輪17の上面とディフレクター裏面とが密着して強い摩擦力が生じるため、この摩擦力により、車輪17がなかなかディフレクター裏面と踏み面2aとの間から外すのが難しい。
【0040】
図8は、本実施形態のV字溝24aを備えたディフレクター24の裏面と車輪17との間に車輪17が挟まった状態を示す模式図である。これに対して本実施形態の安全装置20を備えた乗客コンベア1では、ディフレクター24の裏面にV字溝24aが形成されているため、図8に示すように、V字溝24aによりディフレクター24の裏面と車輪17との間に複数の間隙が生じ、ディフレクター24の裏面と車輪17と密着性が弱まる。このため、車輪17の上面とディフレクター裏面との間の摩擦力が低減される。この結果、本実施形態によれば、ディフレクター裏面と踏み面2aとの間に車輪17の物体が引っ掛かったり、挟まった場合でも、車輪17等の物体をディフレクター裏面と踏み面2aとの間から外すことが容易となる。
【0041】
(変形例1)
以下、本実施形態の変形例について説明する。
上記実施形態では、V字溝24aは、ディフレクター24の裏面の全面に亘って設けられていたが、これに限定されるものではない。例えば、変形例1として、V字溝24aを、ディフレクター24の裏面の所定の範囲に形成するように構成してもよい。
【0042】
所定の範囲としては、例えば、ベビーカー等が乗降口8から乗ってきてその車輪が挟まりやすい範囲とすることができる。図9は、変形例1のディフレクター124の裏面を示す模式図である。上述したとおり、安全装置20は、下階の乗降口9側から上階に向けて、踏段2の踏み面2aと略平行な状態で延在し、中央部付近で踏み面2aと非平行な状態に湾曲して延在している。
【0043】
このため、当該平行な中央部付近までのディフレクター裏面と踏み面2aとの距離は、中央部付近から湾曲した上方の部分におけるディフレクター裏面と踏み面2aとの距離より狭く、かかる範囲で車輪が挟まったり、引っかかったりしやすくなる。このため、車輪が挟まりやすい範囲として、図9に示すように、ディフレクター124の中央部から乗降口8側の端部までの領域にV字溝24aを形成することができる。
【0044】
この場合には、物体が挟まりやすい範囲のみにV字溝24aが形成されているため、ディフレクターの製造工程を簡略化することが可能となる。
【0045】
(変形例2)
上記実施形態の安全装置20では、ディフレクター24の裏面においてディフレクター24の幅方向、すなわち、踏段2の進行方向と略垂直な方向にV字溝24aが設けられていた。この変形例2では、V字溝は、ディフレクター24の長さ方向、すなわち、踏段2の進行方向と略平行な方向に設けられている。
【0046】
図10は、変形例2のディフレクター224の裏面を示す模式図である。図10に示すとおり、変形例2のディフレクター224では、その長さ方向に亘ってV字溝24aが設けられている。この変形例2のディフレクター224を有する安全装置20を備えた乗客コンベア1によれば、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0047】
(変形例3)
上記実施形態および変形例の安全装置20のディフレクター24、124,224は、その両端部が湾曲形状に形成されているが、これに限定されるものではない。図11は、変形例3の基台およびディフレクターの構成の一例を示す図である。例えば、図11に示すように、変形例3のディフレクター324として、その両端が角部として形成されていてもよい。
【0048】
この変形例3のディフレクター224を有する安全装置20を備えた乗客コンベア1によれば、上記実施形態と同様の効果を奏する他、ディフレクター324の両端部が角部で形成されているため、乗降口9から乗り込んでくる利用者に対して当該角部によって基台22のボルト等の部材が隠れて見えにくくなる。このため、この変形例の安全装置20を備えた乗客コンベア1によれば、利用者に対する視認性を向上することができる。
【0049】
(変形例4)
上記実施形態の安全装置20では、ディフレクター24は、基台22から踏段2の中央部へ向かって下方に傾斜した形状となっていた。図12は、変形例4の基台およびディプレクターの構成の一例を示す断面図である。変形例4のディフレクター424は、図12に示すように、基台22から踏段2の中央部へ向かって踏段2と略平行に突出するように形成されている。ディフレクター424の裏面には、V字溝24aは上記実施形態または変形例と同様に形成されている。
【0050】
このため、例えば、ディフレクター424と踏段2の間に、ベビーカー等の車輪が引っ掛かったり、挟まった場合でも、変形例4のディフレクター424は、傾斜しておらず踏段2と略平行であるため、車輪とディフレクター424との間の摩擦力は傾斜している場合よりも低減され、さらに裏面のV字溝24による間隙と相俟って、さらに摩擦力が低減されて、引っ掛かったり、挟まった車輪等の物体を、ディフレクター424と踏段2の間からより容易に外すことが可能となる。
【0051】
(変形例5)
上記実施形態および変形例では、ディフレクター24の裏面に低摩擦部としてのV字溝24aを設けていたが、低摩擦機能を有するものであれば、V字溝24a等の溝部に限定されるものではない。例えば、V字溝24aに代えて、ディフレクター24自体を、例えば、フッ素樹脂等の低摩擦部材として形成するように構成してもよい。
【0052】
これにより、ディフレクター24と踏段2の間に車輪等の物体が引っ掛かったり、挟まった場合でも、ディフレクター24がフッ素樹脂等の低摩擦部材で形成されているため、車輪等の物体によってディフレクター24が上方にめくりやすくなり、摩擦力が低減されて、引っ掛かったり、挟まった車輪等の物体を、ディフレクター424と踏段2の間からより容易に外すことが可能となる。
【0053】
また、ディフレクター24の裏面に、V字溝24aに代えて、低摩擦部材としてのシリコンを塗布してもよい。この場合においても、ディフレクター24と踏段2の間に車輪等の物体が引っ掛かったり、挟まった場合でも、ディフレクター24が、車輪等の物体によって上方にめくりやすくなり、摩擦力が低減されて、引っ掛かったり、挟まった車輪等の物体を、ディフレクター424と踏段2の間からより容易に外すことが可能となる。
【0054】
(変形例6)
上記実施形態では、安全装置20は、踏段2の左右両側に設けられ、双方のディフレクター24の裏面にV字溝a等の低摩擦部が設けられているが、これに限定されるものではない。例えば、ベビーカー等を折りたたんで荷物として踏段2に載せる一方の側(左側等)の安全装置20のディフレクター24の裏面のみにV字溝a等の低摩擦部を設け、他方の側(右側等)の安全装置20のディフレクター裏面には低摩擦部を設けない構成としてもよい。
【0055】
これにより、車輪等の物体が踏段2とディフレクター24との間に挟まる部分を考慮して低摩擦部を設けているので、不要な箇所に低摩擦部を形成する必要がなく、安全装置20の製造工程を簡易にすることができる。
【0056】
(変形例7)
上述の実施形態では、ディフレクター24の裏面にV字溝24aが設けられているが、溝部であればよく、その溝の形状はV字形状に限定されるものではなく、例えばU字形状などの形状であってもよい。さらに、本実施形態では、V字溝24aは、ディフレクター24の裏面の幅方向に亘って設けられているが、当該幅方向に複数のV字溝24aが途切れ途切れに設けられていても良い。
【0057】
さらには、ディフレクター24の裏面に、V字溝24a等の溝部に代えて、複数の凹部が形成されていてもよい。
【0058】
(変形例8)
上述の実施形態および変形例の安全装置20は、いずれも踏段2が上階の乗降口8から下階の乗降口9に下降運転する乗客コンベア1の下階側のスカートガードパネル14に設けられていたが、踏段2が上階の乗降口8から下階の乗降口9に下降運転する乗客コンベア1の上階側のスカートガードパネル14に安全装置20を設けてもよい。
【0059】
この場合、安全装置20は、上階側の踏段2の動作に応じて、下階側から下降する踏段2の動きの傾斜角度に沿って湾曲した非平行な状態から踏段2に略平行な状態に変化する形状として形成し、ディフレクター24の裏面にV字溝24a等の低摩擦部を設ければよい。
【0060】
この変形例8の安全装置20および乗客コンベア1によれば、下降運転時においても、ディフレクター裏面と踏み面2aとの間に車輪17の物体が引っ掛かったり、挟まった場合でも、車輪17等の物体をディフレクター裏面と踏み面2aとの間から外すことが容易となる。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1…乗客コンベア、2…踏段、2a…踏み面、10…欄干、12…手摺ベルト、14…スカートガードパネル(保護部)、15…固定孔、16…内デッキ、17…車輪、20…安全装置、22…基台、24,124,224,324,424…ディフレクター(カバー部)、24a…V字溝(溝部)、26…締結具、26a…頭部、32…キャップ、42…かしめナット、44…取付部、S…隙間、51…デマケーションクリート
【要約】
【課題】物体がカバー部と踏段の間に引っ掛かったり、挟まった場合でも容易に外れやすくすること。
【解決手段】実施形態の安全装置は、循環移動する複数の踏段と、複数の踏段の両側に配置された保護部と、を有する乗客コンベアに設けられている。安全装置は、カバー部を備える。カバー部は、踏段と前記保護部で挟まれた隙間の上方で踏段側に突出し、踏段の上面である踏み面と略平行状態から非平行状態に変化する板状に形成される。カバー部は、踏み面側の面である第1の面に低摩擦部を有する。
【選択図】図5
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