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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】エレベータシステム
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/14 20060101AFI20221031BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
B66B1/14 L
B66B3/00 K
B66B3/00 U
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021109837
(22)【出願日】2021-07-01
【審査請求日】2021-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 道臣
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-003785(JP,A)
【文献】特開2018-090400(JP,A)
【文献】国際公開第2012/081082(WO,A1)
【文献】特開2017-095213(JP,A)
【文献】特開2019-135184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00-31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が所持している携帯端末を利用して呼び登録を行うエレベータシステムであって、
乗りかごの運転を制御するエレベータ制御装置と、
任意の階の乗場に設置され、上記携帯端末に予めインストールされた呼び登録用のアプリケーションソフトを起動するとともに、少なくとも現時点で未登録の行先階と現在階を有し、上記乗りかごの運転状態に応じて更新される情報を発信する無線信号装置とを備え、
上記携帯端末は、
利用者の乗車階と行先階を含む乗車情報を記憶した記憶手段と、
上記アプリケーションソフトの起動により、上記乗場から上記乗車情報を上記エレベータ制御装置に送信して、乗場呼びとかご呼びの登録処理を行う制御手段とを具備し、
上記制御手段は、
上記乗場で上記無線信号装置から受信した上記情報に基づいて、上記利用者の行先階が既に登録済みであるか否かを判断し、登録済みであった場合に上記登録処理を省略し、上記乗車情報を上記エレベータ制御装置に送らずに、上記アプリケーションソフト内の処理で上記乗場呼びと上記かご呼びの登録を完了させることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
上記制御手段は、
上記利用者の行先階が未登録であった場合には、上記乗場から上記乗車情報を上記エレベータ制御装置に送信して、上記登録処理を行うことを特徴とする請求項1記載のエレベータシステム。
【請求項3】
上記乗車情報は、複数の物件毎に設定されており、
上記制御手段は、
上記乗場で上記無線信号装置から発信される物件情報に基づいて、上記記憶手段から現在の物件に対応した上記乗車情報を読み出すことを特徴とする請求項1記載のエレベータシステム。
【請求項4】
利用者が所持している携帯端末を利用して呼び登録を行うエレベータシステムであって、
乗りかごの運転を制御するエレベータ制御装置と、
任意の階の乗場に設置され、上記携帯端末に予めインストールされた呼び登録用のアプリケーションソフトを起動するとともに、少なくとも現時点で登録済みの行先方向と現在階を有し、上記乗りかごの運転状態に応じて更新される第1の情報を発信する第1の無線信号装置と、
上記乗りかご内に設置され、少なくとも現時点で未登録の行先階と現在階を有し、上記乗りかごの運転状態に応じて更新される第2の情報を発信する第2の無線信号装置とを備え、
上記携帯端末は、
利用者の乗車階と行先階を含む乗車情報を記憶した記憶手段と、
上記アプリケーションソフトの起動により、上記乗場から上記乗車情報を上記エレベータ制御装置に送信して乗場呼びの登録処理を行うと共に、上記乗りかご内から上記乗車情報を上記エレベータ制御装置に送信してかご呼びの登録処理を行う制御手段とを具備し、
上記制御手段は、
上記乗場で上記第1の無線信号装置から受信した上記第1の情報に基づいて、上記利用者の行先方向が既に登録済みであるか否かを判断し、登録済みであった場合に上記乗場呼びの登録処理を省略し、上記乗車情報を上記エレベータ制御装置に送らずに、上記アプリケーションソフト内の処理で上記乗場呼びの登録を完了させ、
上記乗りかご内で上記第2の無線信号装置から受信した上記第2の情報に基づいて、上記利用者の行先階が既に登録済みであるか否かを判断し、登録済みであった場合に上記かご呼びの登録処理を省略し、上記乗車情報を上記エレベータ制御装置に送らずに、上記アプリケーションソフト内の処理で上記かご呼びの登録を完了させることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項5】
上記制御手段は、
上記利用者の行先方向が未登録であった場合には、上記乗場から上記乗車情報を上記エレベータ制御装置に送信して、上記乗場呼びの登録処理を行い、
上記利用者の行先階が未登録であった場合には、上記乗りかご内から上記乗車情報を上記エレベータ制御装置に送信して、上記かご呼びの登録処理を行うことを特徴とする請求項4記載のエレベータシステム。
【請求項6】
上記乗車情報は、複数の物件毎に設定されており、
上記制御手段は、
上記乗場で上記第1の無線信号装置から発信される物件情報に基づいて、上記記憶手段から現在の物件に対応した上記乗車情報を読み出すことを特徴とする請求項4記載のエレベータシステム。
【請求項7】
上記エレベータ制御装置に接続されたクラウドサーバを備え、
上記携帯端末は、
上記クラウドサーバを介して上記エレベータ制御装置に上記乗車情報を送ることを特徴とする請求項1または4記載のエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、利用者の携帯端末を利用して呼び登録を行うエレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建物の各階の乗場には、乗場呼びを登録するための乗場呼びボタンが設置されている。エレベータの利用者が乗場呼びボタンを操作すると、乗りかごが乗場呼びの登録階に応答する。利用者が乗りかごに乗り込み、かご操作盤の行先階ボタンを操作すると、行先階が登録され、乗りかごがその行先階に移動する。
【0003】
ここで、近年、利用者が持つ携帯端末を利用して呼び登録を行うエレベータシステムが考えられている。これは、携帯端末に予め呼び登録のためのアプリケーションソフトをインストールしておき、利用者が任意の階の乗場に来たときに、「ビーコン」と呼ばれる無線信号装置から発信される無線電波を用いて当該アプリケーションソフトを起動して乗りかごを呼び、その乗りかごに利用者の行先階を登録するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6321124号公報
【文献】特開2018-111606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、携帯端末を利用して呼び登録する場合に、例えばクラウドサーバ経由でエレベータの情報を取得し、呼びの可否を行うと、クラウドサーバへのアクセス数が多くなり、設備投資や通信速度に影響を及ぼす。これは、携帯端末からローカルネットワーク経由でエレベータ制御装置に直接アクセスする場合も同様である。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、呼び登録に必要な通信を効率化して、エレベータ制御装置にアクセスが集中する場合の負担を軽減して、効率的に運転サービスを行うことのできるエレベータシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係るエレベータシステムは、利用者が所持している携帯端末を利用して呼び登録を行う。上記エレベータシステムは、乗りかごの運転を制御するエレベータ制御装置と、任意の階の乗場に設置され、上記携帯端末に予めインストールされた呼び登録用のアプリケーションソフトを起動するとともに、少なくとも現時点で未登録の行先階と現在階を有し、上記乗りかごの運転状態に応じて更新される情報を発信する無線信号装置とを備える。上記携帯端末は、利用者の乗車階と行先階を含む乗車情報を記憶した記憶手段と、上記アプリケーションソフトの起動により、上記乗場から上記乗車情報を上記エレベータ制御装置に送信して、乗場呼びとかご呼びの登録処理を行う制御手段とを具備し、上記制御手段は、上記乗場で上記無線信号装置から受信した上記情報に基づいて、上記利用者の行先階が既に登録済みであるか否かを判断し、登録済みであった場合に上記登録処理を省略し、上記乗車情報を上記エレベータ制御装置に送らずに、上記アプリケーションソフト内の処理で上記乗場呼びと上記かご呼びの登録を完了させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は第1の実施形態に係るエレベータシステムの構成を示す図である。
図2図2は上記エレベータシステムに備えられたエレベータ制御装置の構成を示すブロック図である。
図3図3は上記エレベータシステムに備えられた無線信号装置の構成を示すブロック図である。
図4図4は上記エレベータシステムで用いられる携帯端末の外観構成の一例を示す図である。
図5図5は上記携帯端末の機能構成を示すブロック図である。
図6図6は上記携帯端末に設けられた物件乗車テーブルの一例を示す図である。
図7図7は上記エレベータシステムで用いられるクラウドサーバの構成を示す図である。
図8図8は一般的な呼び登録を説明するための図であり、利用者Aが呼び登録するときの状態を示す図である。
図9図9は上記一般的な呼び登録を説明するための図であり、利用者Bが呼び登録するときの状態を示す図である。
図10図10は上記一般的な呼び登録を説明するための図であり、利用者Cが呼び登録するときの状態を示す図である。
図11図11は第1の実施形態における各階の乗場ビーコンから発信される情報の一例を示す図である。
図12図12は第1の実施形態における乗場ビーコンを用いた呼び登録を説明するための図であり、利用者Aが呼び登録するときの状態を示す図である。
図13図13は上記乗場ビーコンを用いた呼び登録を説明するための図であり、利利用者Bが呼び登録するときの状態を示す図である。
図14図14は上記乗場ビーコンを用いた呼び登録を説明するための図であり、利用者Cが呼び登録するときの状態を示す図である。
図15図15は上記乗場ビーコンを用いた呼び登録を説明するための図であり、乗りかごが利用者A,B,Cを乗せて出発したときの状態を示す図である。
図16図16は第1の実施形態におけるエレベータシステムの処理動作を示すフローチャートである。
図17図17は第2の実施形態に係るエレベータシステムの構成を示す図である。
図18図18は第2の実施形態における乗場ビーコンとかご内ビーコンを用いた呼び登録を説明するための図であり、利用者Aが乗場呼びを登録するときの状態を示す図である。
図19図19は上記乗場ビーコンとかご内ビーコンを用いた呼び登録を説明するための図であり、利用者Aがかご呼びを登録するときの状態を示す図である。
図20図20は上記乗場ビーコンとかご内ビーコンを用いた呼び登録を説明するための図であり、利用者Bが乗場呼びを登録するときの状態を示す図である。
図21図21は上記乗場ビーコンとかご内ビーコンを用いた呼び登録を説明するための図であり、利用者Bがかご呼びを登録するときの状態を示す図である。
図22図22は上記乗場ビーコンとかご内ビーコンを用いた呼び登録を説明するための図であり、利用者Cが乗場呼びを登録するときの状態を示す図である。
図23図23は上記乗場ビーコンとかご内ビーコンを用いた呼び登録を説明するための図であり、利用者Cがかご呼びを登録するときの状態を示す図である。
図24図24は上記乗場ビーコンとかご内ビーコンを用いた呼び登録を説明するための図であり、乗りかごが利用者A,B,Cを乗せて出発したときの状態を示す図である。
図25図25は上記乗場ビーコンとかご内ビーコンを用いた呼び登録を説明するための図であり、乗りかごが最下階に到着したときの状態を示す図である。
図26図26は第2の実施形態におけるエレベータシステムの乗場呼び登録時の処理動作を示すフローチャートである。
図27図27は第2の実施形態におけるエレベータシステムのかご呼び登録時の処理動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態に係るエレベータシステムの構成を示す図である。
例えばオフィスビルなどの建物にエレベータ11が設置されている。エレベータ11は、乗りかご12とエレベータ制御装置13を備える。乗りかご12は、昇降路内に立設された一対のガイドレールに昇降自在に支持されており、乗場呼びまたはかご呼びに応答して各階を移動する。
【0011】
「乗場呼び」とは、各階の乗場で登録される呼びの信号のことであり、登録階と行先方向の情報を含む。「かご呼び」とは、かご室内で登録される呼びの信号のことであり、行先階の情報を含む。後述するように、本システムでは、利用者の携帯端末25を利用して乗場呼びとかご呼びを登録可能であり、乗場やかご室内でのボタン操作(乗場ボタン23や行先階ボタン17の操作)は不要となる。なお、「かご呼びの登録」のことを「行先階の登録」とも言う。
【0012】
乗りかご12の出入口にはかごドア14が開閉自在に取り付けられており、そのかごドア14の近傍にはかご操作盤15が設けられている。かご操作盤15には、乗りかご12の現在位置や運転方向などを表示するための表示器16の他、建物の各階に対応した行先階ボタン17、戸開ボタン18a、戸閉ボタン18bなどを含む各種操作ボタンが配設されている。
【0013】
エレベータ制御装置13は、「制御盤」とも呼ばれ、建物内の最上部に設けられた図示せぬ機械室あるいは昇降路内の上部に設置され、乗りかご12の運転制御を含むエレベータ全体の制御を行う。
【0014】
一方、各階の乗場20において、乗りかご12の到着口に乗場ドア21が開閉自在に取り付けられており、その乗場ドア21の近傍には乗場操作盤22が設けられている。乗場ドア21は、乗りかご12が到着したときに、かごドア14と共に開閉動作する。駆動源(ドアモータ)はかごドア14側にあり、乗場ドア21は、かごドア14に係合して開閉動作する。乗場操作盤22には、乗りかご12を乗場20に応答させるための乗場ボタン23が設けられている。乗場ボタン23は、利用者の行先方向を指定するための上方向ボタンと下方向ボタンからなる(最下階では上方向ボタンのみ、最上階では下方向ボタンのみで構成される)。
【0015】
ここで、本実施形態において、乗場20の任意の箇所に例えばBluetooth(登録商標)等からなる無線信号装置27が設置されている。無線信号装置27は、「乗場ビーコン(beacon)」として用いられ、所定周波数帯の無線信号を発信する。無線信号装置27の設置箇所は、例えば乗場ドア21付近の壁などであるが、特に限定されるものではなく、乗場20に来た利用者(乗客)が持つ携帯端末25に無線信号が届く範囲であればどこでも良い。
【0016】
無線信号装置27は、基準階を含む各階の乗場20に設置されている。無線信号装置27は、エレベータ制御装置13と乗場操作盤22に有線あるいは無線で接続されており、エレベータ11(乗りかご12)の運転中は常時ONして、呼び登録に関する情報を所定周波数帯の電波で発信する機能を有する。上記呼び登録に関する情報には、「物件情報」,「現在階」の他に、「登録可能階」が含まれる。「登録可能階」は、現時点で登録可能な行先階を示す。この無線信号装置27から発信される情報は、エレベータ制御装置13が呼び登録装置(乗場操作盤22,かご操作盤15)を既登録状態にするのに同期して変更される。
【0017】
利用者が所持する携帯端末25は、一般的な携帯電話機やスマートフォンなどである。この携帯端末25には、予め呼び登録用のアプリケーションソフト26がインストールされている。この呼び登録用のアプリケーションソフト26は、エレベータ11の関連企業によって開発されたものであり、携帯端末25のOS(Operating System)に依存するWebサイトから自由にダウンロードできる。
【0018】
このアプリケーションソフト26を用いて、複数の物件毎に利用者の乗車情報を設定しておくことができる。ここで言う「物件」とは、本システムを有するエレベータが設置された建物のことである。後述するように、利用者の乗車情報には、物件毎にグループ名,乗車階,行先階の情報が含まれる(図6参照)。
【0019】
また、本実施形態では、エレベータ制御装置13にクラウドサーバ29が接続されている。クラウドサーバ29は、インターネット上に設けられ、エレベータ制御装置13と協働して、エレベータの呼び登録に関する各種処理を実行する。上記アプリケーションソフト26は、クラウドサーバ29にインターネット接続して、携帯端末25に備えられた制御部43(図5参照)に乗場呼びとかご呼びの登録処理を実行させる機能を有する。
【0020】
図2はエレベータ制御装置13の構成を示すブロック図である。
エレベータ制御装置13は、制御部31と記憶部32と通信部33とを備える。制御部31は、プログラムの起動によりエレベータ11の運転に必要な各種処理を実行する部分であり、ここでは運転制御部31a、かご位置検出部31b、戸開閉制御部31cを有する。
【0021】
運転制御部31aは、乗りかご12の運転制御を行う。詳しくは、運転制御部31aは、乗場20で登録された乗場呼びに基づいて乗りかご12を利用者の乗車階に応答させた後、利用者の行先階に向けて乗りかご12を運転する。かご位置検出部31bは、乗りかご12の現在位置を検出する。検出方法としては、例えば巻上機の回転に同期して出力されるパルスエンコーダのパルス信号をカウントした値から乗りかご12の現在位置を算出するなどの方法がある。
【0022】
戸開閉制御部31cは、乗りかご12が乗場20に到着したときのかごドア14の開閉動作を制御する。詳しくは、戸開閉制御部31cは、図示せぬ着床検出装置によって乗りかご12が乗場20に着床したことを検出すると、かごドア14を戸開方向に移動させて全開する。そして、所定時間経過後に、戸開閉制御部31cは、かごドア14を戸閉方向に移動させて全閉する。なお、かごドア14の移動と共に乗場ドア21も同じ方向に移動する。
【0023】
記憶部32は、利用者の携帯端末25から送られてきた乗場呼びとかご呼びの情報を記憶する。制御部31は、記憶部32に記憶された情報に基づいて乗りかご12の運転制御を行う。通信部33は、携帯端末25やエレベータ制御装置13との間の通信処理を行う。
【0024】
図3は無線信号装置27の構成を示すブロック図である。
上述したように、無線信号装置27は、「乗場ビーコン」として用いられる。無線信号装置27は、制御部34と通信部35とを備える。制御部34は、呼び登録に関わる無線信号の処理を行う。通信部35は、予め設定された周波数帯の無線信号の送信/受信処理を行う。
【0025】
図4は携帯端末25の外観構成の一例を示す図である。
乗客の携帯端末25は、例えば携帯電話機やスマートフォンなどであり、通信機能を備えた小型の端末装置からなる。携帯端末25には、上述した呼び登録用のアプリケーションソフト26がインストールされている。図中の26aはアプリケーションソフト26がインストールされていることを示すアイコンである。上述したように、乗場20に設置された無線信号装置(乗場ビーコン)27から所定周波数帯の無線信号を携帯端末25が受信すると、このアプリケーションソフト26が起動される。
【0026】
図5は携帯端末25の機能構成を示すブロック図である。
利用者が持つ携帯端末25には、入力部41、表示部42、制御部43、音声入出力部44、記憶部45、GPS(Global Positioning System)モジュール46、通信部47などが備えられている。
【0027】
入力部41は、各種キーやボタンなどからなり、データの入力や指示を行う。表示部42は、例えばLCDからなり、データの表示を行う。なお、入力部41として、例えば透明のタッチパネルを用い、表示部42の画面上でデータ入力・指示を行う構成でも良い。
【0028】
制御部43は、CPUからなり、所定のプログラムの起動により各種機能を実行する。制御部43は、呼び登録用のアプリケーションソフト26の起動により、利用者の乗車情報をクラウドサーバ29を介してエレベータ制御装置13に送信して、乗場呼びとかご呼びの登録処理を行う。その際、制御部43は、乗場20で無線信号装置27から受信した呼び登録に関する情報に基づいて、利用者の行先階が既に登録済みであるか否かを判断し、登録済みであった場合に乗場呼びとかご呼びの登録処理を省略する。
【0029】
上記「乗場呼びとかご呼びの登録処理を省略する」とは、乗場呼びとかご呼びの登録に必要な利用者の乗車情報(乗車階,行先階)のエレベータ制御装置13に送らずに、アプリケーションソフト26の処理内で完了することを言う。
【0030】
音声入出力部44は、音声を入力するためのマイクと、音声を出力するためのスピーカで構成される。記憶部45は、ROMやRAM等のメモリデバイスからなり、アプリケーションソフト26を含む各種プログラムが記憶されている。また、この記憶部45には、物件乗車テーブルT1が設けられている。
【0031】
図6に示すように、物件乗車テーブルT1には、予めアプリケーションソフト26を使用して、物件毎に任意に設定された利用者の乗車情報が記憶されている。乗車情報には、利用者の乗車階と行先階の情報を含む。図中の物件a,b,cは、例えば住居マンション、本社ビル、支店ビルなどであり、利用者が日常的に利用しているエレベータが設置された物件である。さらに、上記乗車情報に、例えばバンクなどのグループ名を含めても良い。例えば高層ビルでは、複数の乗りかごを低層バンクと高層バンクに分けて運転することがある。利用者は、自分の行先階に応じて低層バンクの乗りかご、または、高層バンクの乗りかごに乗車する。図中のAバンク,Bバンクは、例えば低層バンクと高層バンクのことである。
【0032】
GPSモジュール46は、現在位置を検出するために用いられる。通信部47は、外部との間で無線通信を行うための汎用のインタフェフェースであり、公衆回線網を利用した長距離無線通信及びBluetooth(登録商標)、Wi-Fi等の近接無線通信を可能とする。
【0033】
図7はクラウドサーバ29の機能構成を示すブロック図である。
クラウドサーバ29は、一般的なコンピュータの構成として、制御部51、記憶部52、通信部53などを備える。制御部51は、エレベータ制御装置13と協働して、利用者の携帯端末25を利用した呼び登録に関わる各種処理を実行する。記憶部52には、制御部51の動作に必要なプログラを含む各種情報が記憶される。また、記憶部52は、利用者の携帯端末25から送られて来る乗車情報などをユーザIDと関連付けて履歴として保持する。通信部53は、携帯端末25やエレベータ制御装置13との間の通信処理を行う。
【0034】
次に、1台の乗りかごを有するエレベータシステムを想定し、利用者の端末装置からクラウド経由で呼び登録を行う場合の手順について、(a)一般的な呼び登録と、(b)本システムによる呼び登録の手順に分けて説明する。
【0035】
以下では、乗場20に設置された無線信号装置27のことを「乗場ビーコン27」と称する。また、「乗場呼びの登録」のことを「行先方向の登録」、「かご呼びの登録」のことを「行先階の登録」と言うこともある。
【0036】
(a)一般的な呼び登録
図8乃至図10は一般的な呼び登録を説明するための図である。図中の丸数字は呼び登録の順番を表している。エレベータ制御装置を便宜的に「EL制御装置」と表記している。図中の22-7,23-7は7階の乗場に設置された乗場操作盤と乗場ボタン、27-7は7階の乗場に設置された乗場ビーコンを示す。この例では、乗場ビーコンから現在階(7F)の情報だけが固定的に発信されているものとする。
【0037】
いま、利用者A,B,Cが順に7階の乗場に来て、クラウド経由で呼び登録を行う場合を想定する。利用者A,B,Cは、それぞれに携帯端末25a,25b,25cを持つ。携帯端末25a,25b,25cには、予め呼び登録用のアプリケーションソフト26がダウンロードされている。
【0038】
図8に示すように、利用者Aが7階の乗場に来ると、乗場ビーコン27-7から発信される信号によってアプリケーションソフト26が起動される。これにより、携帯端末25aから利用者Aの乗車情報(乗車階:7F,行先階:3F,行先方向:DN)が利用者ID(001)と共にクラウドサーバ29を介してエレベータ制御装置13に送られる。なお、行先方向は、利用者の乗車階と行先階との関係から定められる。DNはDOWNの略であり、下方向を示す。エレベータ制御装置13は、利用者Aの行先方向(DN)を乗場呼びとして乗場操作盤22-7に登録し、利用者Aの行先階(3F)をかご呼びとしてかご操作盤15に登録する。
【0039】
続いて、図9に示すように、利用者Bが7階の乗場に来ると、携帯端末25bから利用者Bの乗車情報(乗車階:7F,行先階:4F,行先方向(DN)が利用者ID(002)と共にクラウドサーバ29を介してエレベータ制御装置13に送られる。この場合、利用者Bの行先方向は利用者Aと同じであり、乗場操作盤22-7に既に登録済みである。利用者Bの行先階4Fがかご呼びとしてかご操作盤15に追加登録される。
【0040】
ここで、図10に示すように、利用者Cが7階の乗場に来たときに、携帯端末25cから利用者Cの乗車情報(乗車階:7F,行先階:3F,行先方向:DN)が利用者ID(002)と共にクラウドサーバ29を介してエレベータ制御装置13に送られる。この場合、利用者Cの乗車情報は利用者Aと同じであり、既に行先階を含めて呼び登録済みである。しかしながら、同じ呼びが既に登録されていても、その都度、クラウドサーバ29とエレベータ制御装置13との間の通信は行われる。このため、多数の利用者が乗場に来た場合に、クラウドサーバ29やエレベータ制御装置13の通信負担が増え、それに伴い運行効率の低下を招く可能性がある。
【0041】
(b)本システムによる呼び登録
本システムによる呼び登録は、以下のような特徴を有する。
・乗場ビーコンから現時点で登録可能な行先階を示す登録可能階を有する情報が発信される。図11に各階の乗場ビーコンから発信される情報の一例を示す。この例では、3階:最下階、5階:中間階、7階:最上階としている。物件IDや現在階は固定であるが、登録可能階は乗りかごの運転状態に応じて更新される。
・乗場ビーコンとエレベータ制御装置は有線または無線で接続される。エレベータ制御装置は、乗りかごの運転方向と登録済みの呼び情報とに基づいて、現時点で登録可能な行行先階を判断し、乗場ビーコンを通じて発信する。
・利用者の行先階の乗りかごへの転送は、乗りかごの運転方向が利用者の行先方向と一致し、乗りかごが利用者の乗車階で戸開したときのタイミングで行われる。
【0042】
・同じ呼びが重複する場合に、クラウドサーバとエレベータ制御装置との間の通信が省略される。
【0043】
以下に、本システムによる呼び登録について詳しく説明する。
図12乃至図15は第1の実施形態における乗場ビーコンを用いた呼び登録を説明するための図である。図中の四角で囲った数字は呼び登録の順番を表している。エレベータ制御装置を便宜的に「EL制御装置」と表記している。図中の22-7,23-7は7階の乗場に設置された乗場操作盤と乗場ボタン、27-7は7階の乗場に設置された乗場ビーコンを示す。
【0044】
利用者A,B,Cが順に7階の乗場に来て、クラウド経由で呼び登録を行う場合を想定する。上記(a)の一般的な呼び登録と異なる点は、乗場ビーコン27-7から発信される情報(登録可能階)が乗りかご12の運転状態に応じて更新されることである。
【0045】
図12に示すように、利用者Aが7階の乗場に来たとき、乗場ビーコン27-7から物件ID、現在階と共に登録可能階が発信されている。初期状態では、乗りかご12に行先階が未登録であるため、現在階の7階を除くすべての階(6~3階)が登録可能階として発信される。
【0046】
携帯端末25aに予めダウロードされているアプリケーションソフト26の起動により、当該物件に対応した利用者Aの乗車情報(乗車階:7F,行先階:3F,行先方向:DN)が利用者ID(001)、物件IDなどの情報と共にクラウドサーバ29を送られる。これらの情報は、クラウドサーバ29内で利用者毎の履歴として保存される。また、利用者Aの乗車情報(乗車階:7F,行先階:3F、行先方向:DN)がクラウドサーバ29を介してエレベータ制御装置13に送られる。これにより、エレベータ制御装置13によって、7階の乗場に設置された乗場操作盤22-7に行先方向(DN)が乗場呼びとして登録され、乗りかご12内のかご操作盤15に行先階(3F)がかご呼びとして登録される。
【0047】
なお、乗りかご12が利用者Aの乗車階に到着していない状態で行先階を登録してしまうと、乗りかご12が方向反転したとき、エレベータの「反転呼びキャンセル機能」によって登録済みの行先階がキャンセルされる。したがって、乗りかご12の運転方向と利用者Aの行先方向とが一致し、乗りかご12が戸開したときのタイミングで行先階を登録することが好ましい。
【0048】
続いて、図13に示すように、利用者Bが7階の乗場に来たとする。このとき、乗場ビーコン27-7から発信される登録可能階から利用者Aの行先階である3階が除かれている。利用者Bの携帯端末25bからクラウドサーバ29を介してエレベータ制御装置13に利用者Bの乗車情報(乗車階:7F,行先階:4F)が送られる。これにより、利用者Bの乗場呼びとして行先方向(DN)、かご呼びとして行先階(4F)が登録される。なお、行先方向(DN)は利用者Aと同じであり、乗場操作盤22-7に既に登録済みである。
【0049】
ここで、図14に示すように、利用者Cが7階の乗場に来たとする。このとき、乗場ビーコン27-7から発信される登録可能階から利用者A,Bの行先階である3階と4階が除かれている。利用者Cの携帯端末25cは、乗場ビーコン27-7から発信される情報から利用者Cの行先階である4階が既に登録済みであることを確認すると、当該行先階を含めた乗場呼びの登録処理を省略し、アプリ内で呼び登録を完了させる(アプリ内処理)。これにより、クラウドサーバ29からエレベータ制御装置13への情報送信が不要となり、両者の通信負担が軽減される。なお、クラウドサーバ29側で利用者の履歴情報を保持するシステムの場合であれば、携帯端末25cからクラウドサーバ29への情報送信だけは行われる。
【0050】
図15は乗りかご12が利用者A,B,Cを乗せて下方向に出発したときの状態を示している。乗りかご12の出発に伴い、乗場ビーコン27-7から発信される登録可能階が元の状態に初期化される。
【0051】
次に、第1の実施形態の動作について説明する。
図16は第1の実施形態におけるエレベータシステムの処理動作を示すフローチャートであり、主として利用者の携帯端末25(制御部43)の処理を示している。
いま、利用者が携帯端末25を持って、予め物件毎に設定された乗車階に来たとする。携帯端末25には予め呼び登録用のアプリケーションソフト26がインストールされている。エレベータ11が正常に運転している間、乗場ビーコン27は常にONしている(ステップS11)。なお、停電等の何らかの異常によりエレベータ11の運転が停止あるいは管制運転している場合には、エレベータ制御装置13から出力されるビーコン制御信号によって、乗場ビーコン27はOFFされている。
【0052】
乗場ビーコン27がONしているとき、所定周波数帯の無線信号が発信される(ステップS12)。このとき、乗場ビーコン27から現時点で登録可能な行先階を示す登録可能階を有する情報が発信される。携帯端末25が乗場ビーコン27の無線信号を受信すると(ステップS13のYes)、アプリケーションソフト26が起動される(ステップS14)。
【0053】
なお、アプリケーションソフト26の起動時に、例えば携帯端末25の表示部42に乗車の有無を確認するための確認画面を表示し、乗車の意思が確認された場合に呼び登録を行うようにしても良い。これにより、例えば利用者が乗場20を通過しただけ、あるいは、別の階に行くような場合に不用意に呼び登録することを回避できる。
【0054】
アプリケーションソフト26の起動に伴い、携帯端末25に備えられた制御部43は、
乗場ビーコン27に無線接続して、乗場呼びとかご呼びの登録処理を行う。その際、制御部43は、まず、物件に対応した利用者の乗車情報(乗車階,行先階)を取得する(ステップS15)。詳しくは、制御部43は、乗場ビーコン27から発信される物件情報に基づいて、図6の物件乗車テーブルT1から現在の物件に対応した利用者の乗車情報を読み出す。
【0055】
ここで、制御部43は、乗場ビーコン27から発信される情報の登録可能階と、利用者の乗車情報の行先階とを比較し、利用者の行先階が既に登録済みであるか否かを判断する(ステップS16)。この場合、利用者の行先階が登録可能階に含まれていれば、利用者の行先階がまだ登録されていないことを意味する。利用者の行先階が登録されていない場合には(ステップS16のNo)、制御部43は、乗場呼びとかご呼びの登録処理を実行する(ステップS17)。
【0056】
詳しくは、制御部43は、クラウドサーバ29にインターネット接続し、利用者の乗車情報をクラウドサーバ29を介してエレベータ制御装置13に送信する処理を行う。これにより、エレベータ制御装置13によって、利用者の行先方向が乗場操作盤22に乗場呼びとして登録されると共に、所定のタイミングで利用者の行先階が乗りかご12のかご操作盤15にかご呼びとして登録されることになる。「所定のタイミング」とは、上述した「反転呼びキャンセル機能」を考慮したタイミングであり、具体的には、乗りかご12の運転方向と利用者の行先方向とが一致し、乗りかご12が戸開したときのタイミングである。
【0057】
一方、利用者の行先階が登録済みであった場合、つまり、利用者の行先階が現時点の登録可能階から除外されている場合には(ステップS16のYes)、制御部43は、上述した登録処理を省略する(ステップS18)。この場合、利用者の乗車情報をエレベータ制御装置13に送ることはせず、アプリ内で呼び登録を完了させる。これにより、利用者は特に意識せずとも、自分と同じ呼びで応答した乗りかご12に乗って行先階に行くことができる。
【0058】
このように第1の実施形態によれば、同じ呼びが既に登録されている場合に、クラウドサーバからエレベータ制御装置への情報送信を不要とし、他の利用者の呼びで応答した乗りかごに乗って行先階に行くことができる。したがって、クラウドサーバとエレベータ制御装置の通信負担を軽減でき、多数の利用者を効率的に乗りかごに乗せて運転サービスすることができる。
【0059】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
上記第1の実施形態では、1台の乗りかごを有するエレベータシステムを想定し、乗場に設置された無線信号装置(乗場ビーコン)だけで、乗場呼びと同時にかご呼び(行先階)を登録する構成とした。これに対し、複数台の乗りかごを有するエレベータシステムを想定し、乗場に設置された無線信号装置(乗場ビーコン)と乗りかご内に設置された無線信号装置(かご内ビーコン)を用いて、乗場呼びとかご呼びを登録する構成とする。
【0060】
図17は第2の実施形態に係るエレベータシステムの構成を示す図である。なお、上記第1の実施形態における図1の構成と同じ部分には同一符号を付して、その詳しい説明は省略するものとする。
【0061】
第2の実施形態におけるエレベータシステムは、乗場20に設置された無線信号装置27と、乗りかご12内に設置された無線信号装置28とを備える。無線信号装置27は、「乗場ビーコン(beacon)」として用いられ、呼び登録に必要な第1の情報を所定周波数帯の電波で発信する機能を有する。第2の実施形態において、上記第1の情報には、「物件情報」,「現在階」の他に、「登録方向」が含まれる。「登録方向」は、現時点で登録済みの行先方向を示す。この無線信号装置27から発信される第1の情報は、エレベータ制御装置13が呼び登録装置(乗場操作盤22)を既登録状態にするのに同期して変更される。
【0062】
無線信号装置28は、「かご内ビーコン(beacon)」として用いられ、所定周波数帯の無線信号を発信する。なお、無線信号装置28の構成は、図3に示した無線信号装置27と同様である。無線信号装置28の設置箇所は、例えばかごドア14付近の壁などであるが、特に限定されるものではなく、乗場20に来た利用者(乗客)が持つ携帯端末25に無線信号が届く範囲であればどこでも良い。無線信号装置28は、エレベータ制御装置13とかご操作盤15に有線または無線で接続されており、エレベータ11(乗りかご12)の運転中は常時ONして、呼び登録に必要な第2の情報を所定周波数帯の電波で発信する機能を有する。第2の実施形態において、上記第2の情報には、「物件情報」,「現在階」の他に、「登録可能階」が含まれる。「登録可能階」は、現時点で登録可能な行先階を示す。この無線信号装置28から発信される第2の情報は、エレベータ制御装置13が呼び登録装置(かご操作盤15)を既登録状態にするのに同期して変更される。
【0063】
携帯端末25が乗場20で無線信号装置27から発信される無線信号を受信すると、アプリケーションソフト26が自動的に起動される。アプリケーションソフト26は、乗場呼び登録モードとかご呼び登録モードを有する。アプリケーションソフト26の起動時に、まず、乗場呼び登録モードが設定される。乗場呼び登録モードが設定されると、携帯端末25は、乗場20に設置された無線信号装置27を介して乗場呼びの登録処理を行う。乗場呼びの登録が完了すると、かご呼び登録モードが設定される。かご呼び登録モードが設定されると、携帯端末25は、乗りかご12内に設置された無線信号装置28を介してかご呼びの登録処理を行う。
【0064】
以下では、乗場20に設置された無線信号装置27を「乗場ビーコン27」、乗りかご12内に設置された無線信号装置28を「かご内ビーコン28」と称する。
【0065】
図18乃至図24は第2の実施形態における乗場ビーコンとかご内ビーコンを用いた呼び登録を説明するための図である。図中の四角で囲った数字は呼び登録の順番を表している。エレベータ制御装置を便宜的に「EL制御装置」と表記している。図中の22-7,23-7は7階の乗場に設置された乗場操作盤と乗場ボタン、27-7は7階の乗場に設置された乗場ビーコンを示す。28は乗りかご内に設置されたかご内ビーコンを示す。
【0066】
利用者A,B,Cが順に7階の乗場に来て、クラウド経由で呼び登録を行う場合を想定する。利用者A,B,Cは、それぞれに携帯端末25a,25b,25cを持つ。携帯端末25a,25b,25cには、予め呼び登録用のアプリケーションソフト26がダウンロードされている。
【0067】
図18に示すように、利用者Aが7階の乗場に来たとき、乗場ビーコン27-7から物件ID、現在階と共に登録方向が第1の情報として発信されている。7階は最上階であり、運転方向は下方向(DN)である。初期状態では、行先方向は未登録であるため、下方向(DN)の登録が可能であることが発信される。
【0068】
携帯端末25aに予めダウロードされているアプリケーションソフト26の起動により、当該物件に対応した利用者Aの乗車情報(乗車階:7F,行先階:3F,行先方向:DN)が利用者ID(001)、物件IDなどの情報と共にクラウドサーバ29を送られる。これらの情報は、クラウドサーバ29内で利用者毎の履歴として保存される。また、利用者Aの乗車情報(乗車階:7F,行先方向:DN)がクラウドサーバ29を介してエレベータ制御装置13に送られる。これにより、エレベータ制御装置13によって、7階の乗場に設置された乗場操作盤22-7に行先方向(DN)が乗場呼びとして登録される。
【0069】
ここで、乗りかご12が利用者Aの乗場呼びに応答して、7階に到着したものとする。この乗りかご12内に設置されたかご内ビーコン28からは、物件IDや現在階と共に登録可能階が第2の情報として発信される。なお、複数台のエレベータ(乗りかご)を有する群管理システムであれば、上記第2の情報に利用者Aの乗場呼びに応答した乗りかご12の号機情報が含まれる。
【0070】
図19に示すように、利用者Aが乗りかご12内に乗車すると、携帯端末25aからクラウドサーバ29に利用者Aの乗車情報(乗車階:7F,行先階:3F)が利用者ID(001)、物件IDなどの情報と共にクラウドサーバ29を送られる。物件IDには、かご内ビーコン28から受信した当該号機の情報が含まれている。
【0071】
クラウドサーバ29は、乗りかご12内の利用者Aの携帯端末25aから送られてきた乗車情報,利用者ID(001)、物件IDと、図18に示した乗場で利用者Aの携帯端末25aから送られてきた乗車情報,利用者ID、物件IDとを照合する。両者が一致した場合、クラウドサーバ29は、利用者Aが乗りかご12に乗車しているものと判断し、利用者Aの乗車情報(乗車階:7F,行先階:3F)と号機情報をエレベータ制御装置13に送信する。これにより、エレベータ制御装置13では、乗りかご12のかご操作盤15に利用者Aの行先階3Fをかご呼びとして登録する。
【0072】
続いて、図20に示すように、利用者Bが7階の乗場に来たとする。このとき、乗場ビーコン27-7から発信される登録方向は下方向(DN)である。また、かご内ビーコン28から発信される登録可能階から利用者Aの行先階である3階が除かれている。利用者Bの携帯端末25bは、乗場ビーコン27-7から発信される第1の情報から利用者Bの行先方向(DN)が既に登録済みであることを確認すると、乗場呼びの登録処理を省略する(アプリ内処理)。
【0073】
図21に示すように、利用者Bが乗りかご12内に乗車すると、携帯端末25bからクラウドサーバ29に利用者Bの乗車情報(乗車階:7F,行先階:4F)が利用者ID(002)、物件IDなどの情報と共にクラウドサーバ29を送られる。物件IDには、かご内ビーコン28から受信した当該号機の情報が含まれている。これにより、利用者Aの場合と同様にクラウドサーバ29側で利用者Bが認証されると、クラウドサーバ29からエレベータ制御装置13に利用者Bの乗車情報(乗車階:7F,行先階:4F)と号機情報が送られて、乗りかご12のかご操作盤15に利用者Bの行先階4Fがかご呼びとして追加登録される。
【0074】
ここで、図22に示すように、利用者Cが7階の乗場に来たときに、乗場ビーコン27-7から発信される登録方向は下方向(DN)であり、既に登録済みである。利用者Cの携帯端末25cは、乗場ビーコン27-7から発信される第1の情報から利用者Cの行先方向である下方向が既に登録済みであることを確認すると、乗場呼びの登録処理を省略する(アプリ内処理)。
【0075】
また、図23に示すように、かご内ビーコン28から発信される登録可能階から利用者A,Bの行先階である3階と4階が除かれている。利用者Cの携帯端末25cは、かご内ビーコン28から発信される第2の情報から利用者Cの行先階である4階が既に登録済みであることを確認すると、かご呼びの登録処理を省略する(アプリ内処理)。したがって、利用者Cについては、乗場呼びの登録時とかご呼びの登録時に、クラウドサーバ29からエレベータ制御装置13への情報送信が不要となり、両者の通信負担が大幅に軽減される。
【0076】
図24は乗りかご12が利用者A,B,Cを乗せて下方向に出発したときの状態を示している。乗りかご12の出発に伴い、乗場ビーコン27-7から発信される登録方向は下方向(DN)の登録可の状態に変更される。一方、かご内ビーコン28から発信される登録可能階は、利用者A,B,Cのそれぞれの行先階を除いた6階と5階である。
【0077】
かご内ビーコン28から発信される登録可能階は、乗りかご12の移動に伴い、そのときの呼び登録状態に応じて更新される。つまり、例えば乗りかご12が利用者Bの行先階である4階に到着すると、4階のかご呼びがクリアされるので、かご内ビーコン28から発信される登録可能階は「6-5F」から「6-5-4F」に更新される。
【0078】
また、乗りかご12が利用者A,Cの行先階である3階に到着すると、3階のかご呼びがクリアされる。この例では、3階は最下階である。したがって、図25に示すように、乗りかご12が3階に到着すると、かご内ビーコン28から発信される登録可能階は、3階を除き、すべての階となる。
【0079】
なお、図中の22-3,23-3は3階の乗場に設置された乗場操作盤と乗場ボタン、27-3は3階の乗場に設置された乗場ビーコンを示す。また、25e,25dは、3階の乗場にいた利用者E,Dの携帯端末を示す。3階の乗場に設置された乗場ビーコン27-3からは現在階として3階が発信されると共に、登録可能な方向として上方向(UP)が登録可能であることが発信される。
【0080】
次に、本システムの動作について、(a)乗場呼び登録時、(b)かご呼び登録時に分けて説明する。
【0081】
(a)乗場呼び登録時
図26は第2の実施形態におけるエレベータシステムの乗場呼び登録時の処理動作を示すフローチャートであり、主として利用者の携帯端末25(制御部43)の処理を示している。
【0082】
いま、利用者が携帯端末25を持って、予め物件毎に設定された乗車階に来たとする。携帯端末25には予め呼び登録用のアプリケーションソフト26がインストールされている。エレベータ11が正常に運転している間、乗場ビーコン27は常にONしている(ステップS21)。なお、停電等の何らかの異常によりエレベータ11の運転が停止あるいは管制運転している場合には、エレベータ制御装置13から出力されるビーコン制御信号によって、乗場ビーコン27はOFFされている。
【0083】
乗場ビーコン27がONしているとき、所定周波数帯の無線信号が発信される(ステップS22)。このとき、乗場ビーコン27から現時点で登録済みの行先方向を示す登録方向を有する第1の情報が発信される。携帯端末25が乗場ビーコン27の無線信号を受信すると(ステップS23のYes)、アプリケーションソフト26が起動される(ステップS24)。
【0084】
なお、アプリケーションソフト26の起動時に、例えば携帯端末25の表示部42に乗車の有無を確認するための確認画面を表示し、乗車の意思が確認された場合に呼び登録を行うようにしても良い。これにより、例えば利用者が乗場20を通過しただけ、あるいは、別の階に行くような場合に不用意に呼び登録することを回避できる。
【0085】
アプリケーションソフト26の起動に伴い、まず、乗場呼び登録モードが設定される(ステップS25)。乗場呼び登録モードにおいて、携帯端末25に備えられた制御部43は、乗場ビーコン27に無線接続して乗場呼びの登録を行う。その際、制御部43は、まず、物件に対応した利用者の乗車情報(乗車階,行先階)を取得する(ステップS26)。詳しくは、制御部43は、乗場ビーコン27から発信される物件情報に基づいて、図6の物件乗車テーブルT1から現在の物件に対応した利用者の乗車情報を読み出す。
【0086】
ここで、制御部43は、乗場ビーコン27から発信される第1の情報の登録方向と、利用者の乗車情報の行先方向とを比較し、利用者の行先方向が既に登録済みであるか否かを判断する(ステップS27)。利用者の行先方向が登録されていない場合には(ステップS27のNo)、制御部43は、乗場呼びの登録処理を実行する(ステップS28)。詳しくは、制御部43は、クラウドサーバ29にインターネット接続し、利用者の乗車情報をクラウドサーバ29を介してエレベータ制御装置13に送る。これにより、エレベータ制御装置13によって、利用者の行先方向が乗場操作盤22に乗場呼びとして登録される。
【0087】
一方、利用者の行先階が登録済みであった場合には(ステップS27のYes)、制御部43は、上述した登録処理を省略する(ステップS29)。この場合、利用者の乗車情報をエレベータ制御装置13に送ることはせず、アプリ内で呼び登録を完了させる。これにより、利用者は特に意識せずとも、自分と同じ行先方向に向かう乗りかご12に乗車することができる。
【0088】
(b)かご呼び登録時
図27は第2の実施形態におけるエレベータシステムのかご呼び登録時の処理動作を示すフローチャートであり、主として利用者の携帯端末25(制御部43)の処理を示している。
【0089】
エレベータ11が正常に運転している間、かご内ビーコン28は常にONしている(ステップS31)。なお、停電等の何らかの異常によりエレベータ11の運転が停止あるいは管制運転している場合には、エレベータ制御装置13から出力されるビーコン制御信号によって、かご内ビーコン28はOFFされている。
【0090】
かご内ビーコン28がONしているとき、所定周波数帯の無線信号が発信される(ステップS32)。このとき、かご内ビーコン28から現時点で登録可能な行先階を有する第2の情報が発信される。携帯端末25がかご内ビーコン28の無線信号を受信すると(ステップS33のYes)、かご呼び登録モードが設定される(ステップS34)。詳しくは、既に乗場呼び登録モードで乗場呼びが登録済みなので、乗場呼び登録モードからかご呼び登録モードに切り替えられる。
【0091】
ここで、携帯端末25に備えられた制御部43は、現在の物件に対応した利用者の乗車情報(乗車階,行先階)を取得し、利用者IDなどの情報と共にクラウドサーバ29に送信する(ステップS35)。クラウドサーバ29には、乗場呼び登録時に携帯端末25から取得した利用者の乗車情報(乗車階,行先階)が利用者IDに関連付けられて保持されている。クラウドサーバ29では、これらの保持情報と携帯端末25から送られてきた情報とを比較して、乗りかご12内の利用者が乗場呼びの登録を済ませた利用者であるか否かを認証する(ステップS36)。
【0092】
利用者が認証されると(ステップS36のYes)、制御部43は、かご内ビーコン28から発信される第2の情報の登録可能階と、利用者の乗車情報の行先階とを比較し、利用者の行先階が既に登録済みであるか否かを判断する(ステップS37)。この場合、利用者の行先階が登録可能階に含まれていれば、利用者の行先階がまだ登録されていないことを意味する。
【0093】
利用者の行先階が登録されていない場合には(ステップS37のNo)、制御部43は、かご呼びの登録処理を実行する(ステップS38)。詳しくは、制御部43は、クラウドサーバ29にインターネット接続し、利用者の乗車情報をクラウドサーバ29を介してエレベータ制御装置13に送る。これにより、エレベータ制御装置13によって、所定のタイミングで利用者の行先階が乗りかご12のかご操作盤15にかご呼びとして登録されることになる。
【0094】
一方、利用者の行先階が登録済みであった場合、つまり、利用者の行先階が現時点の登録可能階から除外されている場合には(ステップS37のYes)、制御部43は、上述した登録処理を省略する(ステップS39)。この場合、利用者の乗車情報をエレベータ制御装置13に送ることはせず、アプリ内で呼び登録を完了させる。これにより、利用者は特に意識せずとも、自分と同じ呼びで応答した乗りかご12に乗って行先階に行くことができる。
【0095】
このように第2の実施形態によれば、乗場ビーコンとかご内ビーコンを用いて、呼び登録に関する情報を乗りかごの運転状態に応じて更新して発信することでも、同じ呼びが既に登録されている場合に、クラウドサーバからエレベータ制御装置への情報送信を不要として、他の利用者の呼びで応答した乗りかごに乗って行先階に行くことができる。したがって、クラウドサーバとエレベータ制御装置の通信負担が軽減され、多数の利用者を効率的に乗りかごに乗せて運転サービスすることができる。
【0096】
なお、上記各実施形態では、利用者の端末装置からクラウドサーバを介してエレベータ制御装置に情報を送る場合を例にして説明したが、利用者の端末装置から建物内に構築されたローカルネットワークを介してエレベータ制御装置に直接情報送信する構成としても良い。このような構成でも、同じ呼びが既に登録されている場合には、利用者の端末装置からエレベータ制御装置への情報送信がなくなるので、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0097】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、呼び登録に必要な通信を効率化して、エレベータ制御装置にアクセスが集中する場合の負担を軽減して、効率的に運転サービスを行うことのできるエレベータシステムを提供することができる。
【0098】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0099】
11…エレベータ、12…乗りかご、13…エレベータ制御装置、14…かごドア、15…かご操作盤、16…表示器、17…行先階ボタン、18a…戸開ボタン、18b…戸閉ボタン、20…乗場、21…乗場ドア、22…乗場操作盤、23…乗場ボタン、25…携帯端末、26…呼び登録用のアプリケーションソフト、26a…アイコン、27…無線信号装置(乗場ビーコン)、28…無線信号装置(かご内ビーコン)、29…クラウドサーバ、31…制御部、32…記憶部、33…通信部、34…制御部、35…通信部、41…入力部、42…表示部、43…制御部、44…音声入出力部、45…記憶部、46…GPSモジュール、47…通信部。
【要約】
【課題】呼び登録に必要な通信を効率化して、エレベータ制御装置にアクセスが集中する場合の負担を軽減して、効率的に運転サービスを行う。
【解決手段】一実施形態に係るエレベータシステムは、乗りかごの運転を制御するエレベータ制御装置と、任意の階の乗場に設置され、上記携帯端末に予めインストールされた呼び登録用のアプリケーションソフトを起動するとともに、少なくとも現時点で登録可能な行先階を有し、上記乗りかごの運転状態に応じて更新される情報を発信する無線信号装置とを備える。上記携帯端末は、上記乗場で上記無線信号装置から受信した上記情報に基づいて、利用者の行先階が既に登録済みであるか否かを判断し、登録済みであった場合に乗場呼びとかご呼びの登録処理を省略する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27