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特許7167269吊り金具用補助部材及びそれを備えた吊り金具
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】吊り金具用補助部材及びそれを備えた吊り金具
(51)【国際特許分類】
   F16L 3/14 20060101AFI20221031BHJP
   F16L 3/133 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
F16L3/14 Z
F16L3/133
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021124849
(22)【出願日】2021-07-29
(62)【分割の表示】P 2020003224の分割
【原出願日】2015-12-28
(65)【公開番号】P2021169866
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】391039302
【氏名又は名称】株式会社昭和コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100113804
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 敏
(72)【発明者】
【氏名】堀越 信一
(72)【発明者】
【氏名】津久井 慎
(72)【発明者】
【氏名】中原 啓忠
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06224025(US,B1)
【文献】特開2010-048339(JP,A)
【文献】特開2009-133430(JP,A)
【文献】特開2007-309510(JP,A)
【文献】登録実用新案第3143248(JP,U)
【文献】特開2008-196692(JP,A)
【文献】米国特許第06959898(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0160970(US,A1)
【文献】米国特許第08297561(US,B1)
【文献】特開2009-052611(JP,A)
【文献】特開2010-001978(JP,A)
【文献】特開2014-052013(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0208979(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/14
F16L 3/133
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管を保持する吊り金具のバンド部と配管との間に介在するようにして配管管軸方向に延びて配管を支持する吊り金具用補助部材であって、
当該吊り金具用補助部材は、吊り金具に対して、配管管軸方向から挿入することで取り付けられることを特徴とし
当該吊り金具用補助部材は、配管に当接して支持する本体部と、その本体部から延びて吊り金具のバンド部と係止又は/及びその本体部の一部が吊り金具のバンド部と係止することにより配管管軸方向への摺動を規制する1又は2以上の係止部とを備えるとともに、
当該吊り金具用補助部材は、吊り金具のバンド部と嵌合することにより少なくとも配管管周方向への摺動を規制する嵌合構造を備えることを特徴とし、
当該嵌合構造は、吊り金具のバンド部の平面又は/及び端縁に設けられた突起に嵌合する嵌合穿孔を、当該吊り金具用補助部材の本体部又は/及び係止部に設けることを特徴とする吊り金具用補助部材。
【請求項2】
当該嵌合構造は、吊り金具のバンド部の外周側に設けられた嵌合凸部に、当該吊り金具用補助部材の係止部を嵌合させることを特徴とする請求項記載の吊り金具用補助部材。
【請求項3】
当該嵌合構造は、吊り金具のバンド部の端縁を外側へ折り返した折返片の両方又は一方に形成した切り欠きに、当該吊り金具用補助部材の係止部を嵌合させることを特徴とする請求項1又は2に記載の吊り金具用補助部材。
【請求項4】
当該嵌合構造は、吊り金具のバンド部の端縁に形成した切り欠き又は/及び平面に形成した穿孔に、本体部が単体又は分割された2以上の複合体からなる当該吊り金具用補助部材の係止部を嵌合又は固定させることを特徴とする請求項からのいずれかに記載の吊り金具用補助部材。
【請求項5】
係止部との協働により、吊り金具のバンド部に対する吊り金具用補助部材の固定をより確実なものとする第2係止部を本体部に備えたことを特徴とする請求項からのいずれかに記載の吊り金具用補助部材。
【請求項6】
請求項1からのいずれかに記載の吊り金具用補助部材を備えた吊り金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管を支持するための吊り金具に用いられる補助部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
吊り金具によって略水平方向に支持された配管(横引き配管)が、吊り金具の支持部分(バンド部)においてその自重により「配管被覆部の潰れ」や「配管被覆部の破れ」等の不具合による保温・断熱機能の低下を招き、結露・熱ロス等の発生という重大な欠陥を生じさせることがある。
【0003】
このため、平成25年版国土交通省公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)において、横引き配管支持の場合の断熱材の食込みを防止するために、断熱材被覆銅管と吊り金物との間に、合成樹脂等の保護プレート(本願でいう「吊り金具用補助部材」のこと)の設置が推奨されている。
そして、これまでに配管を保持する吊り金具のバンド部と配管との間に介在するようにして配管管軸方向に延びて配管を支持する吊り金具用補助部材が種々研究・開発され存在している(例えば、特許文献1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-48339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先行技術文献をみれば、確かに、吊り金具のバンド部の支持面積を大きくすることで、配管の自重が分散され、「配管被覆部の潰れ」や「配管被覆部の破れ」等の不具合を防止し得る。
しかし、これまでの吊り金具用補助部材には、以下のような問題を有していた。
(1)吊り金具用補助部材の効果を最大限発揮するには、配管の自重を受けるために吊り金具のバンド部と配管との間にバランス良く設置(配置)されなければならない。理想としては、吊り金具のバンド部を中心に配管管軸方向に均等に、さらに、配管の下側周軸方向に均等に設置(配置)される必要がある。吊り金具用補助部材が吊り金具のバンド部と配管との間に偏って設置(配置)されると、配管の特定部分のみに負荷がかかり、「配管被覆部の潰れ」や「配管被覆部の破れ」等の不具合を生じかねないからである。
(2)しかしながら、実際に配管を吊り金具に敷設する施工作業においては、配管を吊り金具に橋渡す際の配管の動きに連動して吊り金具用補助部材も摺動してしまい、吊り金具のバンド部と配管との間にバランス良く設置(配置)できずに、配管の敷設後に吊り金具用補助部材の位置を調整する必要があった。また、設備の運転が開始されると、配管の伸縮による吊り金具用補助部材の摺動が起こることもあり、この場合には、吊り金具用補助部材の位置調整・維持は現実的に無理である(なお、配管そのものに起因しない地震や人・物の接触といった外的要因による振動・揺れの場合も同様である)。
(3)例えば、特許文献1に開示されている支持プレートB(本願でいう「吊り金具用補助部材」に相当)なども、差込み係合体12があるので、配管管軸方向(配管長手方向)への摺動は規制されるが、配管管周方向(配管短手方向)への摺動は規制されないので、配管の真下に確実に設置(配置)されるものではない。従って、配管の敷設後に吊り金具用補助部材の位置を配管管周方向について調整する必要があった。
【0006】
そこで、上記課題を解決し、吊り金具用補助部材を吊り金具に対して配管管軸方向及び配管管周方向へ確実に固定できる吊り金具用補助部材及び吊り金具を提供すべく鋭意試験・研究を行い、本願発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明は、配管を保持する吊り金具のバンド部と配管との間に介在するようにして配管管軸方向に延びて配管を支持する吊り金具用補助部材であって、当該吊り金具用補助部材は、配管に当接して支持する本体部と、その本体部から延びて吊り金具のバンド部と係止又は/及びその本体部の一部が吊り金具のバンド部と係止することにより配管管軸方向への摺動を規制する1又は2以上の係止部とを備えるとともに、当該吊り金具用補助部材は、吊り金具のバンド部と嵌合することにより少なくとも配管管周方向への摺動を規制する嵌合構造を備えることを特徴とするものである。ここで「本体部の一部が吊り金具のバンド部と係止する係止部」とは、本体部の一部分が係止部を構成するものであって、例えば、本体部の中央にコ字形の切り抜き部分を形成し、この切り抜き部分をバンド部と係止するようにした構造などが挙げられる。
第2の発明は、当該嵌合構造が、吊り金具のバンド部の平面に設けられた穿孔に嵌合する嵌合突起を、当該吊り金具用補助部材の本体部又は/及び係止部に設けることを特徴とする同吊り金具用補助部材である。
第3の発明は、当該嵌合構造が、吊り金具のバンド部の平面又は/及び端縁に設けられた突起に嵌合する嵌合穿孔を、当該吊り金具用補助部材の本体部又は/及び係止部に設けることを特徴とする同吊り金具用補助部材である。
第4の発明は、当該嵌合構造が、吊り金具のバンド部の外周側に設けられた嵌合凸部に、当該吊り金具用補助部材の係止部を嵌合させることを特徴とする同吊り金具用補助部材である。ここで「嵌合凸部」には、係止部と嵌合するために設けられたものの他に、吊り金具のバンド部を開閉するために設けられている蝶番部や吊り金具のバンド部を組み合わせる組合せ部であってもよい。
第5の発明は、当該嵌合構造が、吊り金具のバンド部の端縁を外側へ折り返した折返片の両方又は一方に形成した切り欠きに、当該吊り金具用補助部材の係止部を嵌合させることを特徴とする同吊り金具用補助部材である。
第6の発明は、当該嵌合構造が、吊り金具のバンド部の端縁に形成した切り欠き又は/及び平面に形成した穿孔に、本体部が単体又は分割された2以上の複合体からなる当該吊り金具用補助部材の係止部を嵌合又は固定させることを特徴とする同吊り金具用補助部材である。
第7の発明は、係止部との協働により、吊り金具のバンド部に対する吊り金具用補助部材の固定をより確実なものとする第2係止部を(本体部に)備えたことを特徴とする同吊り金具用補助部材である。
第8の発明は、当該嵌合構造にバンド部からの離脱を防止する離脱防止手段をそなえることで係止部を不要とするとともに、当該吊り金具用補助部材の本体部の端部にかかる応力によって当該吊り金具用補助部材の脱落を防止する脱落防止手段を備えたことを特徴とする同吊り金具用補助部材である。
第9の発明は、上記第1乃至第8の発明である吊り金具用補助部材を備えた吊り金具である。
【発明の効果】
【0008】
上記本願発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)本願発明の吊り金具用補助部材は、配管に当接して支持する本体部の他に、その本体部から延びて吊り金具のバンド部と係止又は/及びその本体部の一部が吊り金具のバンド部と係止することにより配管管軸方向への摺動を規制する1又は2以上の係止部と、吊り金具のバンド部と嵌合することにより少なくとも配管管周方向への摺動を規制する嵌合構造を備えることで、吊り金具用補助部材を吊り金具に対して配管管軸方向及び配管管周方向へ確実に固定できる。これによって、配管の動きに連動した吊り金具用補助部材の脱落及び摺動を防止できて、配管の敷設後に吊り金具用補助部材の位置調整も不要となる。
(2)当該嵌合構造が、吊り金具のバンド部の平面に設けられた穿孔に嵌合する嵌合突起を、当該吊り金具用補助部材の本体部又は/及び係止部に設けることで、当該吊り金具用補助部材の配管管周方向(配管管軸方向も当然に含まれる)への摺動を規制することができる。
(3)当該嵌合構造が、吊り金具のバンド部の平面又は/及び端縁に設けられた突起に嵌合する嵌合穿孔を、当該吊り金具用補助部材の本体部又は/及び係止部に設けることで、当該吊り金具用補助部材の配管管周方向(配管管軸方向も当然に含まれる)への摺動を規制することができる。
(4)当該嵌合構造が、吊り金具のバンド部の外周側に設けられた嵌合凸部に、当該吊り金具用補助部材の係止部を嵌合させることで、当該吊り金具用補助部材の配管管周方向(配管管軸方向も当然に含まれる)への摺動を規制することができる。
(5)当該嵌合構造が、吊り金具のバンド部の端縁を外側へ折り返した折返片の両方又は一方に形成した切り欠きに、当該吊り金具用補助部材の係止部を嵌合させることで、当該吊り金具用補助部材の配管管周方向(配管管軸方向も当然に含まれる)への摺動を規制することができる。
(6)当該嵌合構造が、吊り金具のバンド部の端縁に形成した切り欠きに、本体部が単体又は分割された2以上の複合体からなる当該吊り金具用補助部材の係止部を嵌合させることで、当該吊り金具用補助部材の配管管周方向(配管管軸方向も当然に含まれる)への摺動を規制することができる。なお、本体部が複合体である場合、その連結手段を本体部に備える他に、係止部と切り欠きの嵌合によってその連結が維持できる場合もある。
(7)また、本願発明の吊り金具用補助部材は、上記する吊り金具に対する配管管軸方向及び配管管周方向への確実な固定の他に、吊り金具に対して配管管軸方向に沿って挿入するだけのワンタッチの取り付け機能が備わっている。
(8)さらに、本願発明の吊り金具用補助部材は、配管施工後(既設配管へ)の取り付け(後付け施工)が可能である。
(9)本願発明の吊り金具用補助部材が、係止部と協働する第2係止部を備えることにより、吊り金具のバンド部に対する吊り金具用補助部材の固定をより確実なものとすることができる。
(10)本願発明の吊り金具用補助部材が、当該嵌合構造にバンド部からの離脱を防止する離脱防止手段をそなえることで係止部を不要とするとともに、当該吊り金具用補助部材の本体部の端部にかかる応力によって当該吊り金具用補助部材の脱落を防止する脱落防止手段を備えたことで、吊り金具用補助部材を吊り金具に対して配管管軸方向及び配管管周方向へ確実に固定できる。これによって、配管の動きに連動した吊り金具用補助部材の脱落及び摺動を防止できて、配管の敷設後に吊り金具用補助部材の位置調整も不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本願発明に係る吊り金具用補助部材の第1実施形態を示す説明図(1)。
図2】本願発明に係る吊り金具用補助部材の第1実施形態を示す説明図(2)。
図3】本願発明に係る吊り金具用補助部材の第1実施形態を示す説明図(3)。
図4】本願発明に係る吊り金具用補助部材の第1実施形態を示す説明図(4)。
図5】本願発明に係る吊り金具用補助部材の第1実施形態を示す説明図(5)。
図6】本願発明に係る吊り金具用補助部材の第1実施形態を示す説明図(6)。
図7】本願発明に係る吊り金具用補助部材の第1実施形態を示す説明図(7)。
図8】本願発明に係る吊り金具用補助部材の第1実施形態を示す説明図(8)。
図9】本願発明に係る吊り金具用補助部材の第1実施形態を示す説明図(9)。
図10】本願発明に係る吊り金具用補助部材の第1実施形態を示す説明図(10)。
図11】本願発明に係る吊り金具用補助部材の第1実施形態を示す説明図(11)。
図12】本願発明に係る吊り金具用補助部材の第1実施形態を示す説明図(12)。
図13】本願発明に係る吊り金具用補助部材の第1実施形態を示す説明図(13)。
図14】本願発明に係る吊り金具用補助部材の第1実施形態を示す説明図(14)。
図15】本願発明に係る吊り金具用補助部材の第1実施形態を示す説明図(15)。
図16】本願発明に係る吊り金具用補助部材の第2実施形態を示す説明図(1)。
図17】本願発明に係る吊り金具用補助部材の第2実施形態を示す説明図(2)。
図18】本願発明に係る吊り金具用補助部材の第2実施形態を示す説明図(3)。
図19】本願発明に係る吊り金具用補助部材の第3実施形態を示す説明図(1)。
図20】本願発明に係る吊り金具用補助部材の第3実施形態を示す説明図(2)。
図21】本願発明に係る吊り金具用補助部材の第4実施形態を示す説明図。
図22】本願発明に係る吊り金具用補助部材の第5実施形態を示す説明図(1)。
図23】本願発明に係る吊り金具用補助部材の第5実施形態を示す説明図(2)。
図24】本願発明に係る吊り金具用補助部材の第5実施形態を示す説明図(3)。
図25】本願発明に係る吊り金具用補助部材の第5実施形態を示す説明図(4)。
図26】本願発明に係る吊り金具用補助部材の第6実施形態を示す説明図(1)。
図27】本願発明に係る吊り金具用補助部材の第6実施形態を示す説明図(2)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1乃至図15は、本願発明に係る吊り金具用補助部材の第1実施形態を示す説明図である。
図1に示すように、吊り金具用補助部材10は、配管80を保持する吊り金具70のバンド部71と配管80との間に介在するようにして配管管軸方向に延びて配管80を支持するものである。
図2に示すように、吊り金具用補助部材10は、吊り金具70に対して、配管管軸方向から挿入することで、取り付けられる。従って、吊り金具70に配管80を敷設した後でも、吊り金具用補助部材の取り付け(後付け施工)が容易である。
【0011】
図3及び図4に示すように、吊り金具用補助部材10は、配管80に当接して配管80を支持する本体部11を備える。この本体部11は、平坦形状又はR形状のものであって吊り金具70に取り付けるとバンド部71又は配管80の形状に追随してR形状になるものであってもよいし、予めバンド部71又は配管80の形状に合致したR形状のものであってもよい(その他の実施形態においても同じ)。
【0012】
また、吊り金具用補助部材10は、本体部11から延びて吊り金具70のバンド部71と係止と係止する2つの係止部12,12を備える。係止部12は、バンド部71の端縁を外側へ折り返した折返片72と係止する係止爪13を有している。図示では係止部に2つの係止爪13を有しているが、1つの係止爪であってもよい。係止部12に係止爪13を有することにより、吊り金具用補助部材10が配管管軸方向への摺動することを規制する。なお、係止爪13は折返片72がなくてもバンド部71の板厚に係止させることで、配管管軸方向への摺動を規制することもできる。また、係止部12の先端14には勾配(傾斜面)を設けて、吊り金具用補助部材10を吊り金具70へ挿入する作業を容易にしている。また、係止部12の最先端部15を丸くすることで、怪我や軍手に引っかかるなどの不具合を防止できる。
【0013】
さらに、吊り金具用補助部材10は、吊り金具70のバンド部71と嵌合することにより少なくとも配管管周方向への摺動を規制する嵌合構造を備える。図3及び図4に示す嵌合構造は、吊り金具70のバンド部71の平面に設けられた穿孔73に嵌合する嵌合突起20を、吊り金具用補助部材10の本体部11に設けるものである。この嵌合構造を備えることで、吊り金具用補助部材10は、吊り金具70に対して配管管軸方向への摺動のみならず、配管管周方向への摺動も規制できて、吊り金具70に確実に固定できる。
【0014】
図5乃至図10は、嵌合突起20のバリエーションを例示したものである。(a)は嵌合突起20A~20Fの形状を図示し、(b)は嵌合突起20A~20Fと穿孔73との嵌合状態を図示したものである。なお、図示のものは、あくまで嵌合突起20の例示であり、これに限定されるものではない。また、図3乃至図9では嵌合突起20を本体部11に設けているが、図10はこれを係止部12に設けたものである。なお、突起部20を本体部11と係止部12の双方に設けてもよい。
図11乃至図14は、穿孔73のバリエーションを例示したものである。なお、図示のものは、あくまで穿孔73の例示であり、これに限定されるものではない。
【0015】
図15は、上記した図1乃至図14と異なり、吊り金具70のバンド部71の方に突起77を設けて、これに嵌合する嵌合穿孔17を吊り金具用補助部材10の方に設けた嵌合構造を示したものである。なお、突起77は、バンド部71の平面ではなく端縁あるいは平面と端面の両方に、そして、この突起77に対応する嵌合穿孔17を、吊り金具用補助部材10の図示する係止部12の他、本体部11に設けてもよい。
【0016】
図16乃至図18は、本願発明に係る吊り金具用補助部材の第2実施形態を示す説明図である。
第2実施形態では、第1実施形態と異なる嵌合構造を備えるものである。すなわち、第2実施形態では、吊り金具70のバンド部71の外周側に設けられた嵌合凸部に、吊り金具用補助部材10の係止部12を嵌合させるものである。
【0017】
図16に示す第2実施形態は、吊り金具70のバンド部71の外周側幅方向に略L字形の形成された嵌合片30,30を設け、これに吊り金具用補助部材10の係止部12,12を嵌合させたものである(図示では、係止部12の係止爪13は、バンド部71の端縁に係止しているが、嵌合片30のいずれかの端縁又は嵌合片30に穿孔を形成しこれに係止させてもよい)。これによって、吊り金具用補助部材10は、吊り金具70に対して配管管周方向(配管管軸方向も当然に含まれる)への摺動が規制される。
【0018】
同様に、図17に示す第2実施形態は、吊り金具70のバンド部71の外周側幅方向に略コ字形の形成された嵌合片31を設け、これに吊り金具用補助部材10の係止部12を嵌合させたものである(図示では、係止部12の係止爪13は、嵌合片31の端縁に係止しているが、嵌合片30のいずれかの端縁又は嵌合片30に穿孔を形成しこれに係止させてもよい)。これによって、吊り金具用補助部材10は、吊り金具70に対して配管管周方向(配管管軸方向も当然に含まれる)への摺動が規制される。
【0019】
さらに、図18に示す第2実施形態は、吊り金具70のバンド部71の外周側幅方向に元々設けられている蝶番74を利用して、これに吊り金具用補助部材10の係止部12,12を嵌合させたものである(係止部12の係止爪13は、バンド部71の端縁に係止する)。これによっても、吊り金具用補助部材10は、吊り金具70に対して配管管周方向(配管管軸方向も当然に含まれる)への摺動が規制される。
【0020】
図19及び図20は、本願発明に係る吊り金具用補助部材の第3実施形態を示す説明図である。
第3実施形態では、第1実施形態及び第2実施形態と異なる嵌合構造を備えるものである。すなわち、第3実施形態では、吊り金具70のバンド部71の端縁を外側へ折り返した折返片72の両方又は一方に形成した切り欠き75に、吊り金具用補助部材10の係止部12を嵌合させるものである。
【0021】
図19及び図20に示すように、吊り金具70のバンド部71の端縁を外側へ折り返した折返片72,72にそれぞれ切り欠き75,75を形成する。そして、この切り欠き75,75に挿入した係止部12の係止爪13,13を嵌合させたものである。これによって、吊り金具用補助部材10は、吊り金具70に対して配管管周方向(配管管軸方向も当然に含まれる)への摺動が規制される。
【0022】
図21は、本願発明に係る吊り金具用補助部材の第4実施形態を示す説明図である。
第4実施形態では、第1実施形態乃至第3実施形態と異なる嵌合構造を備えるものである。すなわち、第4実施形態では、吊り金具70のバンド部71の端縁に形成した切り欠き76に、吊り金具用補助部材10の係止部12を嵌合させるものである。
【0023】
図21に示すように、吊り金具用補助部材10の2分割された複合体からなる本体部11,11の各々に配管管軸方向に相対する一対の係止部16,16を備えるとともに、吊り金具70のバンド部71の端縁に切り欠き76,76を形成する。そして、この切り欠き76,76に挿入した係止部16,16を嵌合させたものである。これによって、吊り金具用補助部材10は、吊り金具70に対して配管管周方向(配管管軸方向も当然に含まれる)への摺動が規制される。
なお、2分割された複合体からなる本体部11,11の連結手段は、公知のものを本体部11,11に備えてもよいし、係止部16,16と切り欠き76,76との嵌合のみによってその連結を維持する方法もある。
【0024】
図22乃至図25は、本願発明に係る吊り金具用補助部材の第5実施形態を示す説明図である。
まず、図22及び図23に示すように、吊り金具用補助部材10は、係止部12,12の他に、この係止部12,12と協働して吊り金具70のバンド部71に対する吊り金具用補助部材10の固定をより確実なものとする凸型の第2係止部40,40(図面では一方の第2係止部40のみが図示されているが、もう一方の第2係止部40もこれと対称となる位置に設けられている)を備えている。係止部12,12と第2係止部40,40を備えることで、吊り金具用補助部材10の配管管軸方向への摺動を完全に規制するとともに、それ以外の方向への移動(例えば、本体部11の配管管軸方向端部へ鉛直方向に負荷がかかった場合の斜め下方への移動=脱落・落下など)を規制できるので、吊り金具70のバンド部71に対する吊り金具用補助部材10の固定をより確実なものとすることができる。
【0025】
次に、図24及び図25に示すように、吊り金具用補助部材10は、係止部12,12の他に、この係止部12,12と協働して吊り金具70のバンド部71に対する吊り金具用補助部材10の固定をより確実なものとする相対するツノ型の第2係止部45,45(図面では一方の第2係止部45のみが図示されているが、もう一方の第2係止部45もこれと対称となる位置に設けられている)を備えている。係止部12,12と第2係止部45,45を備えることで、吊り金具用補助部材10の配管管軸方向への摺動を完全に規制するとともに、それ以外の方向への移動(例えば、本体部11の配管管軸方向端部へ鉛直方向に負荷がかかった場合の斜め下方への移動=脱落・落下)を規制できるので、吊り金具70のバンド部71に対する吊り金具用補助部材10の固定をより確実なものとすることができる。
なお、第2係止部は、図示のものに限られず、係止部と協働することによって吊り金具のバンド部に対する吊り金具用補助部材の固定をより確実なものとすることができるものであればよい。
【0026】
図26及び図27は、本願発明に係る吊り金具用補助部材の第6実施形態を示す説明図である。
図26に図示するように、吊り金具用補助部材10は、本体部11のバンド部71側に図8の嵌合突起20Dを備える。嵌合突起20Dは、その先端を拡張した形状にしているので、バンド部71の穿孔73に嵌合した場合にバンド部71からの離脱を防止する離脱防止手段が備わっていることになる(図7の嵌合突起20Cも同様である)。そのため、配管管軸方向への摺動を規制する係止部を不要にできる。
【0027】
また、吊り金具用補助部材10は、本体部11のバンド部71側にバンド部71の両端を挟むように脱落防止手段50,50を備える。この脱落防止手段50,50は、本体部11の端部に応力がかかった場合に吊り金具用補助部材10が脱落する可能性があるので(本体部11の端部に応力がかかると、その負荷が嵌合突起20Dに集中するため、嵌合突起20Dが破損し、吊り金具用補助部材10が脱落するおそれがある)、それを防止するためのものである。なお、脱落防止手段50,50は、本体部11からなだらかに傾斜する形状とすることで、吊り金具用補助部材10を吊り金具70に取り付ける場合、この脱落防止手段50,50が障害にならず、むしろ脱落防止手段50,50に沿ってバンド部71へ通すことで吊り金具用補助部材10をスムーズに吊り金具70に取り付けることができる。
【0028】
このように、吊り金具用補助部材10が、本体部11のバンド部71側にバンド部71からの離脱を防止する離脱防止手段が備わった嵌合突起20Dを備えるとともに、本体部11のバンド部71側にバンド部71の両端を挟むように吊り金具用補助部材10の脱落を防止する脱落防止手段50,50を備えることで、吊り金具用補助部材10を吊り金具70に対して配管管軸方向及び配管管周方向へ確実に固定できる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本願発明に係る吊り金具用補助部材は、配管を支持する吊り金具に広く利用できるものであり、「吊り金具」という名称にかかわらず配管を支持する支持材に利用できる。
【符号の説明】
【0030】
10 吊り金具用補助部材
11 本体部
12 係止部
13 係止爪
14 先端
15 最先端部
16 係止部
17 嵌合穿孔
20 嵌合突起
30 嵌合片
40 第2係止部(凸型)
45 第2係止部(ツノ型)
50 脱落防止手段
70 吊り金具
71 バンド部
72 折返片
73 穿孔
74 蝶番
75 切り欠き
76 切り欠き
77 突起
80 配管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図27