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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/20 20060101AFI20221031BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20221031BHJP
   H01L 23/473 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
G06F1/20 C
G06F1/20 A
H05K7/20 N
H01L23/46 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021182153
(22)【出願日】2021-11-08
(62)【分割の表示】P 2018023709の分割
【原出願日】2018-02-14
(65)【公開番号】P2022028759
(43)【公開日】2022-02-16
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】515028492
【氏名又は名称】大訊科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】大槻 登
【審査官】豊田 真弓
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-28122(JP,A)
【文献】特開2017-145793(JP,A)
【文献】特開2007-3108(JP,A)
【文献】特開2005-19907(JP,A)
【文献】特開2017-33427(JP,A)
【文献】特開2014-107425(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110159553(CN,A)
【文献】特開2005-129812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/20
H05K 7/20
H01L 23/473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部品に取り付けられるとともに内部を冷却用の液体である冷却媒体が通過する冷却体と、前記冷却体で加熱された前記冷却媒体を冷却するためのラジエータと、前記冷却体と前記ラジエータとの間で前記冷却媒体を循環させるための第1遠心ポンプおよび第2遠心ポンプの2個の遠心ポンプとを備え、
前記ラジエータは、前記冷却媒体が通過する複数の冷却管と、前記冷却管の外周面に繋がる複数の放熱用のフィンと、複数の前記冷却管の一端が繋がる第1タンク室と、複数の前記冷却管の他端が繋がる第2タンク室とを備え、
前記第1タンク室には、前記第1遠心ポンプの吸込口が繋がり、
前記第2タンク室には、前記第2遠心ポンプの吸込口が繋がることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記第1遠心ポンプは、前記第1タンク室に固定され、
前記第2遠心ポンプは、前記第2タンク室に固定されていることを特徴とする請求項1記載の冷却装置。
【請求項3】
前記ラジエータは、細長い直方体状に形成され、
複数の前記冷却管は、直線状に形成され、
前記第1タンク室は、前記ラジエータの長手方向における前記ラジエータの一端部を構成し、
前記第2タンク室は、前記ラジエータの長手方向における前記ラジエータの他端部を構成し、
前記第1遠心ポンプは、前記ラジエータの長手方向における前記ラジエータの一端に固定され、
前記第2遠心ポンプは、前記ラジエータの長手方向における前記ラジエータの他端に固定されていることを特徴とする請求項2記載の冷却装置。
【請求項4】
前記ラジエータの長手方向は、水平方向と一致しており、
前記遠心ポンプには、前記吸込口から吸い込まれた前記冷却媒体が吐出口に向かって通過するポンプ室が形成され、
前記ポンプ室の、前記冷却媒体の出口は、前記吸込口よりも上側に配置されていることを特徴とする請求項3記載の冷却装置。
【請求項5】
前記ラジエータの長手方向は、水平方向と一致しており、
前記第1遠心ポンプの、前記吸込口が形成された吸込口形成部には、前記第1タンク室の内部に配置される第1配管の一端側が接続され、
前記第2遠心ポンプの、前記吸込口が形成された吸込口形成部には、前記第2タンク室の内部に配置される第2配管の一端側が接続され、
前記第1配管の他端は、前記第1タンク室の内部の下端側に配置され、
前記第2配管の他端は、前記第2タンク室の内部の下端側に配置されていることを特徴とする請求項3または4記載の冷却装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品等の発熱部品を冷却するための冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CPU(Central Processing Unit)を冷却するための冷却装置(冷却システム)が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の冷却装置は、CPUが搭載されるとともに内部を冷却媒体が通過する受熱ジャケットと、受熱ジャケットで加熱された冷却媒体を冷却するためのラジエータ部と、受熱ジャケットとラジエータ部との間で冷却媒体を循環させる2個の循環ポンプとを備えている。循環ポンプには、循環ポンプの吸込口側と吐出口側とを繋ぐバイパス用のチューブが接続されている。バイパス用のチューブの出口側には、逆止弁が接続されている。
【0003】
2個の循環ポンプは、チューブ(配管)を介して直列に繋がれている。すなわち、2個の循環ポンプのうちの一方の循環ポンプの吐出口と他方の循環ポンプの吸込口とがチューブを介して繋がれている。2個の循環ポンプのうちの一方の循環ポンプの吸込口とラジエータ部とはチューブを介して繋がれ、他方の循環ポンプの吐出口と受熱ジャケットとはチューブを介して繋がれている。また、受熱ジャケットとラジエータ部とはチューブを介して繋がれている。
【0004】
特許文献1に記載の冷却装置では、CPUを冷却するときに、2個の循環ポンプが駆動する。2個の循環ポンプが正常に動作しているときには、冷却媒体は、2個の循環ポンプの働きで受熱ジャケットとラジエータ部との間で循環する。一方で、2個の循環ポンプのうちの一方の循環ポンプが故障等で停止すると、冷却媒体は、他方の循環ポンプの働きで受熱ジャケットとラジエータ部との間で循環する。また、他方の循環ポンプが故障等で停止すると、冷却媒体は、一方の循環ポンプの働きで受熱ジャケットとラジエータ部との間で循環する。
【0005】
そのため、特許文献1に記載の冷却装置では、2個の循環ポンプのうちの1個の循環ポンプが故障等で停止しても、受熱ジャケットとラジエータ部との間で冷却媒体を循環させてCPUの冷却を行うことが可能となっている。なお、特許文献1に記載の冷却装置では、一方の循環ポンプが故障等で停止すると、他方の循環ポンプの回転速度は、通常の回転速度(2個の循環ポンプが正常に動作しているときの回転速度)の1.5~2倍となる。また、このときには、冷却媒体は、一方の循環ポンプに接続されたバイパス用のチューブを通過する。同様に、他方の循環ポンプが故障等で停止すると、一方の循環ポンプの回転速度は、通常の回転速度の1.5~2倍となる。このときには、冷却媒体は、他方の循環ポンプに接続されたバイパス用のチューブを通過する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-228237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、特許文献1に記載の冷却装置では、2個の循環ポンプのうちの1個の循環ポンプが故障等で停止しても、受熱ジャケットとラジエータ部との間で冷却媒体を循環させてCPUの冷却を行うことが可能となっている。一方で、特許文献1に記載の冷却装置では、2個の循環ポンプが直列に繋がれており、2個の循環ポンプによって受熱ジャケットとラジエータ部との間で冷却媒体を循環させることが前提となっているため、1個の循環ポンプが故障したときに、もう1個の循環ポンプの回転速度を上げなければならない。
【0008】
また、特許文献1に記載の冷却装置では、2個の循環ポンプによって受熱ジャケットとラジエータ部との間で冷却媒体を循環させることが前提となっているため、1個の循環ポンプが故障して、回転速度が上がっているもう1個の循環ポンプによって冷却媒体を循環させるときに、故障した循環ポンプが冷却媒体の循環の妨げとならないように、バイパス用のチューブおよび逆止弁が必要になる。したがって、この冷却装置では、冷却装置の構成が複雑になる。
【0009】
そこで、本発明の課題は、発熱部品を冷却するための冷却体とラジエータとの間で冷却媒体を循環させるための2個の遠心ポンプを備え、1個の遠心ポンプが故障等で停止しても冷却体とラジエータとの間で冷却媒体を循環させることが可能な冷却装置において、構成を簡素化することが可能な冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の冷却装置は、発熱部品に取り付けられるとともに内部を冷却用の液体である冷却媒体が通過する冷却体と、冷却体で加熱された冷却媒体を冷却するためのラジエータと、冷却体とラジエータとの間で冷却媒体を循環させるための第1遠心ポンプおよび第2遠心ポンプの2個の遠心ポンプとを備え、ラジエータは、冷却媒体が通過する複数の冷却管と、冷却管の外周面に繋がる複数の放熱用のフィンと、複数の冷却管の一端が繋がる第1タンク室と、複数の冷却管の他端が繋がる第2タンク室とを備え、第1タンク室には、第1遠心ポンプの吸込口が繋がり、第2タンク室には、第2遠心ポンプの吸込口が繋がることを特徴とする。
【0011】
本発明の冷却装置は、第1遠心ポンプと第2遠心ポンプとの2個の遠心ポンプを備えている。そのため、本発明では、1個の遠心ポンプが故障等で停止しても、もう1個の遠心ポンプによって、冷却体とラジエータとの間で冷却媒体を循環させることが可能になる。
【0012】
また、本発明では、第1遠心ポンプまたは第2遠心ポンプのみが駆動して1個の遠心ポンプのみによって冷却体とラジエータとの間で冷却媒体を循環させており、2個の遠心ポンプが設けられていても、1個の遠心ポンプのみによって冷却体とラジエータとの間で冷却媒体を循環させることが前提となっている。そのため、本発明では、特許文献1に記載の冷却装置で必要となるバイパス用のチューブおよび逆止弁が設けられていなくても、1個の遠心ポンプによって冷却体とラジエータとの間で冷却媒体を循環させることが可能になる。すなわち、本発明では、特許文献1に記載の冷却装置が備えるバイパス用のチューブおよび逆止弁が不要になる。したがって、本発明では、冷却装置の構成を簡素化することが可能になる。
【0013】
また、本発明では、第1遠心ポンプの吸込口が第1タンク室に繋がり、第2遠心ポンプの吸込口が第2タンク室に繋がっているため、第1遠心ポンプのみが駆動するときには、ラジエータで冷却された後の冷却媒体が駆動中の第1遠心ポンプの中を通過し、第2遠心ポンプのみが駆動するときには、ラジエータで冷却された後の冷却媒体が駆動中の第2遠心ポンプの中を通過する。すなわち、本発明では、ラジエータで冷却される前の冷却媒体は、駆動用のコイル等が発熱していない停止中の遠心ポンプの中は通過するが、駆動用のコイル等が発熱している駆動中の遠心ポンプの中は通過しない。したがって、本発明では、熱の影響による遠心ポンプの不具合の発生を抑制することが可能になる。
【0014】
なお、第1遠心ポンプと第2遠心ポンプとを直列に繋げるとともに、たとえば、第1遠心ポンプの吸込口を第1タンク室に繋げ、第1遠心ポンプの吐出口と第2遠心ポンプの吸込口とを繋げることでも、熱の影響による遠心ポンプの不具合の発生を抑制することは可能になる。しかしながら、この場合には、第1遠心ポンプの吐出口と第2遠心ポンプの吸込口とを繋ぐ配管が必要になる。また、この配管によって、第1遠心ポンプの径方向の外側部分に配置される第1遠心ポンプの吐出口と、第2遠心ポンプの中心部に配置される第2遠心ポンプの吸込口とを繋ぐ必要があるため、配管の引き回しが煩雑になる。
【0015】
本発明において、第1遠心ポンプは、第1タンク室に固定され、第2遠心ポンプは、第2タンク室に固定されていることが好ましい。このように構成すると、第1遠心ポンプおよび第2遠心ポンプの設置状態を安定させることが可能になる。なお、本発明では、第1遠心ポンプの中心部に配置される第1遠心ポンプの吸込口が第1タンク室に繋がっているため、第1遠心ポンプの径方向の外側部分に配置される第1遠心ポンプの吐出口が第1タンク室に繋がっている場合と比較して、第1タンク室に第1遠心ポンプを固定したときに無駄なスペースが生じにくくなる。同様に、本発明では、第2遠心ポンプの中心部に配置される第2遠心ポンプの吸込口が第2タンク室に繋がっているため、第2遠心ポンプの径方向の外側部分に配置される第2遠心ポンプの吐出口が第2タンク室に繋がっている場合と比較して、第2タンク室に第2遠心ポンプを固定したときに無駄なスペースが生じにくくなる。また、特許文献1に記載の冷却装置では、2個の循環ポンプがチューブを介して繋がれ、2個の循環ポンプのうちの一方の循環ポンプとラジエータ部とがチューブを介して繋がれ、他方の循環ポンプと受熱ジャケットとがチューブを介して繋がれているため、2個の循環ポンプの設置状態は安定しない。
【0016】
本発明において、たとえば、ラジエータは、細長い直方体状に形成され、複数の冷却管は、直線状に形成され、第1タンク室は、ラジエータの長手方向におけるラジエータの一端部を構成し、第2タンク室は、ラジエータの長手方向におけるラジエータの他端部を構成し、第1遠心ポンプは、ラジエータの長手方向におけるラジエータの一端に固定され、第2遠心ポンプは、ラジエータの長手方向におけるラジエータの他端に固定されている。この場合には、たとえば、細長い直方体状に形成されるラジエータの一端に第1遠心ポンプおよび第2遠心ポンプが固定されている場合と比較して、第1遠心ポンプおよび第2遠心ポンプを配置しやすくなる。
【0017】
本発明において、ラジエータの長手方向は、水平方向と一致しており、遠心ポンプには、吸込口から吸い込まれた冷却媒体が吐出口に向かって通過するポンプ室が形成され、ポンプ室の、冷却媒体の出口は、吸込口よりも上側に配置されていることが好ましい。遠心ポンプが停止しているときには、ポンプ室の中の空気は、ポンプ室の上部に溜まるため、このように構成すると、遠心ポンプの起動時に、ポンプ室の中の空気をポンプ室の外部へ排出しやすくなる。したがって、遠心ポンプの起動、停止を繰り返すことで、ポンプ室の中の空気を確実に抜きやすくなる。
【0018】
本発明において、ラジエータの長手方向は、水平方向と一致しており、第1遠心ポンプの、吸込口が形成された吸込口形成部には、第1タンク室の内部に配置される第1配管の一端側が接続され、第2遠心ポンプの、吸込口が形成された吸込口形成部には、第2タンク室の内部に配置される第2配管の一端側が接続され、第1配管の他端は、第1タンク室の内部の下端側に配置され、第2配管の他端は、第2タンク室の内部の下端側に配置されていることが好ましい。このように構成すると、第1タンク室の中の上部に空気があっても、第1遠心ポンプが第1タンク室の中の空気を吸い込むのを防止することが可能になる。また、第2タンク室の中の上部に空気があっても、第2遠心ポンプが第2タンク室の中の空気を吸い込むのを防止することが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明では、発熱部品を冷却するための冷却体とラジエータとの間で冷却媒体を循環させるための2個の遠心ポンプを備え、1個の遠心ポンプが故障等で停止しても冷却体とラジエータとの間で冷却媒体を循環させることが可能な冷却装置において、冷却装置の構成を簡素化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態にかかる冷却装置の構成を説明するための概略図である。
図2図1に示すラジエータの構成を説明するための概略図である。
図3図1に示す遠心ポンプの設置方向を説明するための断面図である。
図4図1に示す遠心ポンプの構成および第1遠心ポンプと第1タンク室との接続部分の構成を説明するための断面図である。
図5】本発明の他の実施の形態にかかる第1遠心ポンプと第1タンク室との接続部分の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
(冷却装置の構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる冷却装置1の構成を説明するための概略図である。図2は、図1に示すラジエータ4の構成を説明するための概略図である。図3は、図1に示す遠心ポンプ6の設置方向を説明するための断面図である。図4は、図1に示す遠心ポンプ6の構成および遠心ポンプ6Aと第1タンク室11との接続部分の構成を説明するための断面図である。なお、図4では、図3のE-E断面に相当する断面が図示されている。
【0023】
本形態の冷却装置1は、発熱部品2を冷却するための装置である。具体的には、冷却装置1は、2個の発熱部品2を冷却するための装置である。本形態の発熱部品2は、電子部品である。具体的には、2個の発熱部品2のうちの一方の発熱部品2は、CPUであり、他方の発熱部品2は、GPU(Graphics Processing Unit)である。本形態の冷却装置1は、サーバに取り付けられて使用される。なお、冷却装置1は、パーソナルコンピュータに取り付けられて使用されても良い。
【0024】
冷却装置1は、発熱部品2に取り付けられるとともに内部を冷却用の液体である冷却媒体が通過する2個の冷却体3と、冷却体3で加熱された冷却媒体を冷却するためのラジエータ4と、ラジエータ4に取り付けられる複数の冷却用のファン5とを備えている。冷却媒体は、たとえば、冷却水である。ただし、冷却媒体は、冷却水以外の液体であっても良い。
【0025】
また、冷却装置1は、冷却体3とラジエータ4との間で冷却媒体を循環させるための2個の遠心ポンプ6を備えている。以下の説明では、2個の遠心ポンプ6を区別して表す場合には、2個の遠心ポンプ6のうちの一方の遠心ポンプ6を「遠心ポンプ6A」とし、他方の遠心ポンプ6を「遠心ポンプ6B」とする。本形態の遠心ポンプ6Aは、第1遠心ポンプであり、遠心ポンプ6Bは、第2遠心ポンプである。
【0026】
冷却体3は、平板状に形成された冷却プレートである。平板状に形成される冷却体3の一方の面は、発熱部品2に接触している。冷却体3の内部には、冷却媒体が通過する流路が形成されている。2個の冷却体3は、ラジエータ4に対して直列に接続されている。具体的には、2個の冷却体3は、樹脂製のチューブ等からなる配管8を介して直列に接続されている。
【0027】
ラジエータ4は、細長い直方体状に形成されている。ラジエータ4は、ラジエータ4の長手方向と水平方向とが一致するように配置されている。すなわち、ラジエータ4の長手方向は、水平方向と一致している。ラジエータ4は、冷却媒体が通過する複数の冷却管9と、冷却管9の外周面に繋がる複数の放熱用のフィン10と、複数の冷却管9の一端が繋がる第1タンク室11と、複数の冷却管9の他端が繋がる第2タンク室12とを備えている。複数のファン5は、ラジエータ4の側面に固定されており、複数のフィン10に向かって送風する。
【0028】
本形態のラジエータ4は、たとえば、3本の冷却管9を備えている。冷却管9は、細長い直線状に形成されている。冷却管9の長手方向は、ラジエータ4の長手方向と一致している。冷却管9の断面形状は、扁平な長円形状となっている。第1タンク室11は、ラジエータ4の長手方向におけるラジエータ4の一端部を構成している。第2タンク室12は、ラジエータ4の長手方向におけるラジエータ4の他端部を構成している。
【0029】
第1タンク室11および第2タンク室12は、中空状に形成されている。冷却管9の内周側は、第1タンク室11の内部および第2タンク室12の内部に通じている。冷却管9を通過する前の冷却媒体は、第1タンク室11および第2タンク室12のいずれか一方の内部に溜まり、冷却管9を通過した後の冷却媒体は、第1タンク室11および第2タンク室12のいずれか他方の内部に溜まっている。
【0030】
遠心ポンプ6は、キャンドポンプ(キャンドモータポンプ)と呼ばれるタイプのポンプである。図4に示すように、遠心ポンプ6は、モータ15と、モータ15の動力で回転する羽根車16と、モータ15を制御するための回路基板17とを備えている。モータ15は、DCブラシレスモータである。モータ15は、ロータ19とステータ20とを備えている。本形態のモータ15は、アウターロータ型のモータである。羽根車16は、ポンプケース21に収容されている。ポンプケース21は、モータ15の一部を構成するモータケース22と、モータケース22に固定されるケース体23とから構成されている。
【0031】
ケース体23には、冷却媒体の吸込口23aと、冷却媒体の吐出口23bとが形成されている。ポンプケース21の内部には、吸込口23aから吸い込まれた冷却媒体が吐出口23bに向かって通過するポンプ室24が形成されている。すなわち、遠心ポンプ6には、ポンプ室24が形成されている。モータケース22とケース体23との接合部分には、ポンプ室24の密閉性を確保するための環状のシール部材25が配置されている。シール部材25は、Oリングである。モータケース22とケース体23とは、ネジによって互いに固定されている。
【0032】
ロータ19は、円筒状に形成される駆動用磁石28と、駆動用磁石28が固定される円筒状の磁石保持部材29とを備えている。駆動用磁石28は、磁石保持部材29の内周面に固定されている。駆動用磁石28の内周面には、N極とS極とが周方向において交互に着磁されている。磁石保持部材29の一端は、羽根車16に固定されている。羽根車16およびロータ19は、ポンプ室24の内部に配置されている。
【0033】
羽根車16およびロータ19は、固定軸30に回転可能に支持されている。固定軸30は、羽根車16に形成される貫通穴に挿通されている。固定軸30は、固定軸30の軸方向と水平方向とが一致するように配置されている。固定軸30の一端部は、ケース体23に保持され、固定軸30の他端部は、モータケース22に保持されている。ケース体23と羽根車16との間には、スラスト軸受部材31が配置され、モータケース22と羽根車16との間には、スラスト軸受部材32が配置されている。
【0034】
ステータ20は、駆動用磁石28の内周側に配置されている。ステータ20は、複数の駆動用コイル34と、ステータコア35とを備えている。駆動用コイル34は、樹脂等の絶縁性材料で形成されたインシュレータ36を介してステータコア35の突極部に巻回されている。また、駆動用コイル34は、回路基板17に電気的に接続されている。回路基板17およびステータコア35は、モータケース22に固定されている。なお、回路基板17およびステータ20は、ポッティング樹脂によって覆われている。
【0035】
モータケース22は、ポンプ室24とステータ20とを隔てるようにポンプ室24とステータ20との間に配置される隔壁22aと、固定軸30の他端部を保持する軸保持部22bとを備えている。隔壁22aは、ステータ20および回路基板17の配置箇所へのポンプ室24内の冷却媒体の流入を防止する機能を果たしている。軸保持部22bは、モータ15の径方向における中心に配置されており、隔壁22aに繋がっている。
【0036】
ケース体23は、筒状に形成される筒部23cと筒部23cの一端を塞ぐ底部23dとを有する有底の筒状に形成されている。モータケース22は、筒部23cの他端側に接合されている。ケース体23は、筒部23cの軸方向と水平方向とが一致するように配置されている。ケース体23は、固定軸30の一端部を保持する軸保持部23eと、先端に吸込口23aが形成される円筒状の吸込口形成部23fと、先端に吐出口23bが形成される円筒状の吐出口形成部23gとを備えている。
【0037】
軸保持部23eは、モータ15の径方向における中心に配置されている。また、軸保持部23eは、筒部23cの径方向における底部23dの中心に配置されており、底部23dの中心部に繋がっている。吸込口形成部23fは、筒部23cの径方向における底部23dの中心から水平方向の外側に突出している。円筒状に形成される吸込口形成部23fの軸心は、固定軸30の軸心と一致している。吐出口形成部23gは、筒部23cの外周面から外周側に向かって突出している。
【0038】
遠心ポンプ6Aは、ラジエータ4の長手方向におけるラジエータ4の一端に固定されている。すなわち、遠心ポンプ6Aは、第1タンク室11に固定されている。遠心ポンプ6Aは、ネジによって第1タンク室11の側面に固定されている。また、遠心ポンプ6Aは、遠心ポンプ6Aの固定軸30の軸方向とラジエータ4の長手方向とが一致するように第1タンク室11に固定されている。
【0039】
第1タンク室11には、遠心ポンプ6Aの吸込口23aが繋がっている。すなわち、遠心ポンプ6Aの吸込側は、第1タンク室11の内部に通じている。図4に示すように、第1タンク室11の、遠心ポンプ6Aが固定される側面11aには、吸込口形成部23fが挿入される貫通穴11bが形成されている。遠心ポンプ6Aの吐出口23bは、樹脂製のチューブ等からなる配管37を介して2個の冷却体3のうちの一方の冷却体3に繋がっている。遠心ポンプ6Aでは、図3に示すように、ポンプ室24の、冷却媒体の出口24aが吸込口23aよりも上側に配置されている。
【0040】
図4に示すように、遠心ポンプ6Aのケース体23の底部23dと側面11aとの間には、遠心ポンプ6Aと第1タンク室11との間からの冷却媒体の漏れを防止するための環状のシール部材38が配置されている。シール部材38は、Oリングである。シール部材38は、吸込口形成部23fを囲むように底部23dの外周側に配置されている。シール部材38の内周側の、底部23dと側面11aとの間には、遠心ポンプ6Aと第1タンク
室11との間からの冷却媒体の漏れを防止するための接着剤39が塗布されている。接着剤39は、シール部材38の内周側で全周に亘って塗布されている。
【0041】
遠心ポンプ6Bは、ラジエータ4の長手方向におけるラジエータ4の他端に固定されている。すなわち、遠心ポンプ6Bは、第2タンク室12に固定されている。遠心ポンプ6Bは、ネジによって第2タンク室12の側面に固定されている。また、遠心ポンプ6Bは、遠心ポンプ6Bの固定軸30の軸方向とラジエータ4の長手方向とが一致するように第2タンク室12に固定されている。
【0042】
第2タンク室12には、遠心ポンプ6Bの吸込口23aが繋がっており、遠心ポンプ6Bの吸込側は、第2タンク室12の内部に通じている。第1タンク室11と同様に、第2タンク室12の、遠心ポンプ6Bが固定される側面には、遠心ポンプ6Bの吸込口形成部23fが挿入される貫通穴が形成されている。遠心ポンプ6Bの吐出口23bは、樹脂製のチューブ等からなる配管40を介して2個の冷却体3のうちの他方の冷却体3に繋がっている。また、遠心ポンプ6Aと同様に、遠心ポンプ6Bでは、ポンプ室24の、冷却媒体の出口24aが吸込口23aよりも上側に配置されている。
【0043】
遠心ポンプ6Bのケース体23の底部23dと第2タンク室12の側面との間にも、遠心ポンプ6Bと第2タンク室12との間からの冷却媒体の漏れを防止するための環状のシール部材38が配置されている。また、シール部材38の内周側には、遠心ポンプ6Bと第2タンク室12との間からの冷却媒体の漏れを防止するための接着剤39が塗布されている。
【0044】
以上のように構成された冷却装置1では、遠心ポンプ6Aまたは遠心ポンプ6Bのみが駆動して1個の遠心ポンプ6のみによって冷却体3とラジエータ4との間で冷却媒体を循環させる。たとえば、通常、遠心ポンプ6Aのみが駆動して1個の遠心ポンプ6Aのみによって冷却体3とラジエータ4との間で冷却媒体を循環させる。このときには、図1(A)の矢印で示すように、冷却媒体は、図1の反時計回りの方向に流れる。また、このときには、停止している遠心ポンプ6Bのポンプ室24の中を冷却媒体が流れる。
【0045】
また、遠心ポンプ6Aが故障等によって停止すると、遠心ポンプ6Bのみが駆動して1個の遠心ポンプ6Bのみによって冷却体3とラジエータ4との間で冷却媒体を循環させる。このときには、図1(B)の矢印で示すように、冷却媒体は、図1の時計回りの方向に流れる。また、このときには、停止している遠心ポンプ6Aのポンプ室24の中を冷却媒体が流れる。
【0046】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の冷却装置1は、2個の遠心ポンプ6を備えている。そのため、本形態では、1個の遠心ポンプ6が故障等で停止しても、もう1個の遠心ポンプ6によって、冷却体3とラジエータ4との間で冷却媒体を循環させることが可能になる。
【0047】
本形態では、1個の遠心ポンプ6のみによって冷却体3とラジエータ4との間で冷却媒体を循環させており、2個の遠心ポンプ6が設けられていても、1個の遠心ポンプ6のみによって冷却体3とラジエータ4との間で冷却媒体を循環させることが前提となっている。そのため、本形態では、特許文献1に記載の冷却装置で必要となるバイパス用のチューブおよび逆止弁が設けられていなくても、1個の遠心ポンプ6によって冷却体3とラジエータ4との間で冷却媒体を循環させることが可能になる。したがって、本形態では、バイパス用のチューブおよび逆止弁が不要になり、その結果、冷却装置1の構成を簡素化することが可能になる。
【0048】
本形態では、遠心ポンプ6Aの吸込口23aが第1タンク室11に繋がり、遠心ポンプ6Bの吸込口23aが第2タンク室12に繋がっている。そのため、本形態では、遠心ポンプ6Aのみが駆動するときに、ラジエータ4で冷却された後の冷却媒体が駆動中の遠心ポンプ6Aの中を通過し、遠心ポンプ6Bのみが駆動するときに、ラジエータ4で冷却された後の冷却媒体が駆動中の遠心ポンプ6Bの中を通過する。すなわち、本形態では、ラジエータ4で冷却される前の冷却媒体は、駆動用コイル34が発熱していない停止中の遠心ポンプ6のポンプ室24の中は通過するが、駆動用コイル34が発熱している駆動中の遠心ポンプ6のポンプ室24の中は通過しない。したがって、本形態では、熱の影響による遠心ポンプ6の不具合の発生を抑制することが可能になる。
【0049】
本形態では、遠心ポンプ6Aは第1タンク室11に固定され、遠心ポンプ6Bは第2タンク室12に固定されている。そのため、本形態では、2個の遠心ポンプ6の設置状態を安定させることが可能になる。また、本形態では、遠心ポンプ6Aの中心部に配置される吸込口23aが第1タンク室11に繋がっているため、遠心ポンプ6Aの外周側に配置される吐出口23bが第1タンク室11に繋がっている場合と比較して、第1タンク室11に遠心ポンプ6Aを固定したときに無駄なスペースが生じにくくなる。同様に、本形態では、遠心ポンプ6Bの中心部に配置される吸込口23aが第2タンク室12に繋がっているため、遠心ポンプ6Bの外周側に配置される吐出口23aが第2タンク室12に繋がっている場合と比較して、第2タンク室12に遠心ポンプ6Bを固定したときに無駄なスペースが生じにくくなる。
【0050】
本形態では、ポンプ室24の、冷却媒体の出口24aは、吸込口23aよりも上側に配置されている。そのため、本形態では、遠心ポンプ6の起動時に、ポンプ室24の中の空気をポンプ室24の外部へ排出しやすくなる。すなわち、遠心ポンプ6が停止しているときには、ポンプ室24の中の空気は、ポンプ室24の上部に溜まるため、ポンプ室24の、冷却媒体の出口24aが吸込口23aよりも上側に配置されていると、遠心ポンプ6の起動時に、ポンプ室24の中の空気をポンプ室24の外部へ排出しやすくなる。したがって、本形態では、遠心ポンプ6の起動、停止を繰り返すことで、ポンプ室24の中の空気を確実に抜きやすくなる。
【0051】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0052】
上述した形態において、図5に示すように、遠心ポンプ6Aの吸込口形成部23fに、第1タンク室11の内部に配置される樹脂製のチューブ等の第1配管43の一端側が接続され、第1配管43の他端が第1タンク室11の内部の下端側に配置されていても良い。この場合には、第1タンク室11の中の上部に空気があっても、遠心ポンプ6Aが第1タンク室11の中の空気を吸い込むのを防止することが可能になる。なお、図5では、シール部材38および接着剤39等の図示を省略している。
【0053】
同様に、上述した形態において、遠心ポンプ6Bの吸込口形成部23fに、第2タンク室12の内部に配置される樹脂製のチューブ等の第2配管の一端側が接続され、第2配管の他端が第2タンク室12の内部の下端側に配置されていても良い。この場合には、第2タンク室12の中の上部に空気があっても、遠心ポンプ6Bが第2タンク室12の中の空気を吸い込むのを防止することが可能になる。
【0054】
上述した形態において、遠心ポンプ6Aは、樹脂製のチューブ等の配管を介して第1タンク室11に繋がっていても良い。すなわち、遠心ポンプ6Aは、第1タンク室11に固定されていなくても良い。同様に、上述した形態において、遠心ポンプ6Bは、樹脂製のチューブ等の配管を介して第2タンク室12に繋がっていても良い。また、上述した形態において、ポンプ室24の、冷却媒体の出口24aは、吸込口23aと同じ高さに配置されていても良いし、吸込口23aより下側に配置されていても良い。
【0055】
上述した形態において、2個の冷却体3は、ラジエータ4に対して並列に接続されていても良い。また、上述した形態において、冷却装置1が備える冷却体3の数は、1個であっても良いし、3個以上であっても良い。さらに、上述した形態において、ラジエータ4の長手方向は、水平方向に対して傾いていても良い。また、上述した形態において、発熱部品2は、電子部品以外の部品であっても良い。
【符号の説明】
【0056】
1 冷却装置
2 発熱部品
3 冷却体
4 ラジエータ
6 遠心ポンプ
6A 第1遠心ポンプ
6B 第2遠心ポンプ
9 冷却管
10 フィン
11 第1タンク室
12 第2タンク室
23a 吸込口
23b 吐出口
23f 吸込口形成部
24 ポンプ室
24a 冷却媒体の出口
43 第1配管


図1
図2
図3
図4
図5