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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】FBG基盤のねじれセンサ装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/26 20060101AFI20221031BHJP
【FI】
G01B11/26 G
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021500835
(86)(22)【出願日】2019-07-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 KR2019008493
(87)【国際公開番号】W WO2020013601
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-02-19
(31)【優先権主張番号】10-2018-0081178
(32)【優先日】2018-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】304039548
【氏名又は名称】コリア・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジンソク
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ソンウク
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ミンス
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジュンシク
(72)【発明者】
【氏名】カン,キュミン
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ボム-ジェ
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0201503(US,A1)
【文献】特開平04-001543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
FBG(Fiber bragg gratings)センサを利用して測定対象のねじれ度合を測定するねじれセンサ装置であって、
光ファイバの一部の区間に形成されたセンシング部を含むFBGセンサ;及び
前記測定対象の動きに応じて前記FBGセンサの変位を引き起こすように前記FBGセンサを固定支持する固定装置を含み、
前記固定装置は、前記測定対象の動きに応じて前記センシング部が曲げ変位なしにねじれ変位を引き起こすようにする曲げ防止部材を含み、
前記曲げ防止部材は、
前記センシング部のねじれ変位が可能になるように前記FBGセンサを支持する二つの支持体;及び
前記二つの支持体間を連結して各支持体間の相対的な曲げ動きを防止する補強体を含み、
前記固定装置は、
前記FBGセンサが取り付けられ、前記測定対象のねじれ動きに対応してねじれ運動するビームをさらに含み、
前記ビームは、前記二つの支持体を横切って配置されて前記支持体に固定され、
前記ビームは、
前記センシング部が螺旋状に巻き付けられるねじれビームと、
前記ねじれビームの両端から延びて前記FBGセンサを固定する延長ビームを含み、
前記支持体は、ボールベアリングであり、
前記ねじれビームの両端は、前記ボールベアリングの内輪(innerring)に噛み合って固定され、
前記補強体は、前記ボールベアリングの外輪に固定されることを特徴とするねじれセンサ装置。
【請求項2】
前記補強体は、前記センシング部の周りを囲むチューブであることを特徴とする請求項に記載のねじれセンサ装置。
【請求項3】
前記支持体間で、前記ビームの外周に前記センシング部が螺旋状に巻き付けられていることを特徴とする請求項に記載のねじれセンサ装置。
【請求項4】
前記ねじれビームは、前記延長ビームよりも大径で形成されることを特徴をする請求項に記載のねじれセンサ装置。
【請求項5】
前記固定装置は、前記ビームの両端に位置し、前記測定対象に取り付けられて前記ねじれセンサ装置を前記測定対象に固定する固定部材をさらに含む請求項に記載のねじれセンサ装置。
【請求項6】
前記固定部材は、前記測定対象に固定される固定体と、
前記固定体に形成されたスリットに挿入されるキー部材を含む請求項に記載のねじれセンサ装置。
【請求項7】
前記キー部材は、前記ビームが固定される胴部、及び前記キー部材が前記固定体に対して回転しないようにする回転防止部を含むことを特徴とする請求項に記載のねじれセンサ装置。
【請求項8】
前記ビームの両端に形成された固定部材のうちの、第1固定部材は、前記ビームと固定されており、第2固定部材は、前記ビームと固定されておらず前記ビームが前記第2固定部材に対して摺動することを特徴とする請求項に記載のねじれセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、ねじれセンサ装置に係り、より詳しくは、FBGセンサを基盤に測定対象の軸ねじれを測定することができるセンサ装置に関する。
【0002】
[国家支援の研究開発に関する説明]
本発明のための研究は、韓国科学技術研究院の主観の下、科学技術情報通信部のグローバルフロンティア研究事業(管理機関:韓国研究財団、課題固有番号:1711073374)の支援によって行われたものである。
【背景技術】
【0003】
3Dモーションキャプチャーシステムは、全世界的にスポーツ、ロボティックス、医療、ゲーム、及びグラフィック&アニメーションなどの様々な分野で使用されており、これを利用する世界市場の規模は漸次増加する傾向にある。
【0004】
3Dモーションキャプチャーシステムを具現するためには、リアルタイムで上下半身の全身動作及び指の動作を同時に測定するためのシステムに関する技術開発が必要であり、現在多様な製品の開発及び研究が進行中の状態である。
【0005】
既存のマーカーを使用した光学式センサ、慣性センサ、EMGセンサ、映像カメラ、位置検知エンコーダ、可変抵抗を用いた方式を利用した人体の上下半身の全身動作又は指の動作を検知するための研究が進んでおり且つ当該製品が商用化されているが、慣性センサは経時的に累積誤差(Drift)が発生し、マーカーを利用した光学式及び位置検知エンコーダの場合は陰影域による測定不可域の発生、EMGセンサの場合は付着及び外部的なエラーによる誤差の発生などの不具合を持っている。
【0006】
近年、このような不具合を補うためにFBGセンサを利用して人体の多様な動作などを検知しようとする試みがある。例えば、FBGセンサは、歪センサ(strain sensor)として使用されて測定対象の軸方向に加えられる引張力を測定し、形状センサ(shape sensor)として使用されて測定対象に発生する曲げ(bending)の方向と度合を測定し、傾斜計(tiltmeter)として使用されて測定対象の傾きを検知することができる。
【0007】
人体は、腕が動く場合と同様、軸方向に動き、曲げられ、傾くだけでなく、ねじれることがある。このため、人体の動作をさらに精度よく測定するためには、人体のねじれに対する測定が必要である。
【0008】
しかし、FBGを利用して軸方向のねじれ運動を測定するセンサについての開発はそれほどなされておらず、これはFBGにねじれによるせん断力(Shear force)が印加される場合、同時に曲げ及び引張(tensility)による力も伝達されることになり、これらの複合的な力を分離するのに困難がある。
【0009】
また、曲げとねじれによって発生する複合的な反射された波長の結果を選り分けられる方法を数式的に接近した事例があるが、ねじれによる波長の変化よりも曲げによる波長の変化のほうが非常に大きいため、リアルタイム分類作業によるエラー発生の可能性が高い。したがって、実際にリアルタイム3Dモーションキャプチャーシステムに適用する場合、膨大な量の波長変化データを数式的に分類及び区分しさらにグラフィックユーザインターフェース(graphic user interface、GUI)や実際のモデルに位置や角度、ねじれ情報を伝達するには限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】韓国特許公開公報第10-2006-0061564号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の一側面では、ねじれセンサ装置に関するものであって、より具体的には、FBG基盤の軸ねじれの度合の測定が可能なセンサ装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面によれば、FBG(Fiber bragg gratings)センサを利用して測定対象のねじれ度合を測定するねじれセンサ装置であって、長尺の光ファイバの一部の区間に形成されたセンシング部を含むFBGセンサ、及び前記測定対象の動きに応じて前記FBGセンサの変位を引き起こすように前記FBGセンサを固定支持する固定装置を含み、前記固定装置は、前記測定対象の動きに応じて前記センシング部が曲げ変位なしにねじれ変位を引き起こすようにする曲げ防止部材を含む、ねじれセンサ装置が提供される。
【0013】
一実施例によれば、前記曲げ防止部材は、前記センシング部のねじれ変位が可能になるように前記FBGセンサを支持する二つの支持体及び前記二つの支持体間を連結して各支持体間の相対的な曲げ動きを防止する補強体を含んでよい。
【0014】
一実施例によれば、前記補強体は、前記センシング部の周りを囲むチューブであってよい。
【0015】
一実施例によれば、前記固定装置は、前記FBGセンサが取り付けられ前記測定対象のねじれ動きに対応してねじれ運動をするビームをさらに含み、前記ビームは、前記二つの支持体を横切って配置され前記支持体に固定されていてよい。
【0016】
一実施例によれば、前記支持体は、ボールベアリングであり、前記ビームは、前記ボールベアリングの内輪に固定され、前記補強体は、前記ボールベアリングの外輪に固定されていてよい。
【0017】
一実施例によれば、前記支持体間で、前記ビームの外周に前記センシング部が螺旋状に巻き付けられている。
【0018】
一実施例によれば、前記ビームは、前記センシング部が螺旋状に巻き付けられるねじれビームと、前記ねじれビームの両端から延びて前記FBGセンサを固定する延長ビームを含み、前記ねじれビームは、前記延長ビームよりも大径で形成される。
【0019】
一実施例によれば、前記固定装置は、前記ビームの両端に位置し、前記測定対象に取り付けられて前記ねじれセンサ装置を前記測定対象に固定する固定部材をさらに含む。
【0020】
一実施例によれば、前記固定部材は、前記測定対象に固定される固定体と、前記固定体に形成されたスリットに挿入されるキー部材を含む。
【0021】
一実施例によれば、前記キー部材は、前記ビームが固定される胴部、及び前記キー部材が前記固定体に対して回転しないようにする回転防止部を含む。
【0022】
一実施例によれば、前記ビームの両端に形成された固定部材のうちの、第1固定部材は、前記ビームと固定されており、第2固定部材は、前記ビームと固定されておらず前記ビームが前記第2固定部材に対して摺動する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1a】一実施例によるFBGセンサの構造を概略的に示した図である。
図1b図1aのFBGセンサの光入口から出射する反射光の波長スペクトルを示したグラフ図である。
図2】一実施例によるねじれセンサ装置の斜視図である。
図3図2のねじれセンサ装置を部分的に拡大して示した図である。
図4図3から補強体を図示省略した図である。
図5図2のねじれセンサ装置の固定部材を示した図である。
図6図5の固定部材のキー部材の斜視図である。
図7図2のねじれセンサ装置の両端の固定状態を説明する図である。
図8図2のFBGセンサ装置を使用して得たビームのねじれ角度-波長変化量に対する実験データを示したグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、複数の実施例について添付の図面を参照して説明することにする。なお、ここに開示された原理は種々の異なる形態で具現することもでき、ここに記載された実施例に制限して考えられてはならない。発明の詳細な説明において、周知の特徴や技術についての詳細な説明が実施例の特徴を不要に不明瞭にすることを避けるために省略することもある。
【0025】
図中において、参照符号は構成要素を示す。また、図中の模様や、大きさ、領域、及びその他同様なものは明確性のために誇張して示されることもある。
【0026】
測定対象は、人、動物、機械、ロボットなどのように自分の一部分及び/又は全体を運動し及び/又は動くことができる種々の対象を意味する。
【0027】
本明細書において「曲げる」、「曲げられる」とは、曲げ後に測定対象の軸方向中心軸が曲げ前の軸方向中心軸からずれていることを意味する。本明細書において測定対象の「曲げ動き(bending movement)」、「曲げ動作(bending action)」、「曲げ運動(bending motion)」とは、測定対象の一部又は全部で曲げを発生させる、測定対象自体の動き及び/又は運動、第3者の動き及び/又は運動のことを指す。
【0028】
本明細書において「ねじれる(being twisted)」、「ねじる(twist)」とは、ねじれ後の軸方向中心軸がねじれ前の軸方向中心軸からずれておらず、単に断面が軸方向中心軸を基準に回転することを意味する。本明細書において測定対象の「ねじれ動き」、「ねじれ動作」、「ねじれ運動」とは、測定対象の一部又は全部でねじれを発生させる、測定対象自体の動き及び/又は運動、第3者の動き及び/又は運動のことを指す。本明細書においてねじれは、トーション(torsion)を含む。
【0029】
本明細書においてFBGセンサの「曲げ変位」とは、測定対象及び/又は第3者による、「曲げ運動」及び/又は「曲げ動き」によって発生するFBGセンサの格子間の間隔変位を意味する。
【0030】
本明細書においてFBGセンサの「ねじれ変位」とは、測定対象及び/又は第3者による、「ねじれ運動」及び/又は「ねじれ動き」によって発生するFBGセンサの格子間の間隔変位を意味する。
【0031】
以下、本発明を実施するための具体的な内容を、添付の図面を参照して詳しく説明することにする。
【0032】
理解を助けるために、先ず、FBGセンサ1について説明する。
【0033】
図1aは、一実施例によるFBGセンサ1の構造を概略的に示した図である。
【0034】
FBGセンサ1は、長尺の光ファイバ11の一部の区間に複数の格子T~Tを形成してなる。本明細書では、複数の格子が形成された光ファイバ11の一部の領域を「センシング部16」と呼ぶ。
【0035】
図1aでは、便宜上、センシング部16を中心に示しており、センシング部16の左右に格子を含まない光ファイバ11の残余部分が延在していてよいことが理解できるはずである。センシング部16の左右に延在している光ファイバ11の残余部分は、光ファイバ11内部に光を伝達する通路の役割をし、その長さ及び変位が動きの検知には影響を及ぼさない。言い換えれば、センシング部16以外の光ファイバ11の残余部分は必要に応じてその長さが調節されてよく、延在方向などを種々に調整することができる。
【0036】
本実施例によれば、光ファイバ11は、ガラス材質から形成され屈折自在なクラディング(cladding)12と、前記クラディング12の中心でクラディング12の長さ方向に沿って形成されたコア(core)13を含む。クラディング12の屈折率とコア13の屈折率とは互いに異なる。例えば、クラディング12の屈折率はnで、コア13の屈折率はnであって、互いに異なる。光ファイバ11の両端には、光源(図示せず)から光が入射する光入口14と、コア13を通って光が出射する光出口15が形成される。
【0037】
光ファイバ11の一部の領域のコア13には、それぞれn個(n≧2、自然数)の格子が一集合をなして形成された複数の格子ノードT~Tが形成されて、センシング部16を形成する。
【0038】
格子は、光ファイバ11の製作過程で紫外線光によってコア13の一部分の物性を変化させた部分であって、クラディング12及びコア13とは異なる屈折率(例えば、n+Δn)を有する。
【0039】
複数個の格子は、格子間の間隔Λをあけて配置される。格子間の間隔Λは多様であってよい。例えば、格子間の間隔Λは同一であってもよい。又は、FBGセンサがn個の格子を含む場合、n-1個の格子間の間隔はそれぞれΛ、Λ、…Λa、…Λn-1と互いに異なってもよい。例えば、それぞれの格子ノードT~Tをなす各格子間の間隔Λ~Λは漸次増加する関係を有してよい(すなわち、Λ<Λ<Λ<Λ)。それぞれの格子ノード間の間隔は、格子ノードを形成する格子間の間隔Λ、Λ、Λ、Λに比べて顕著に大きい。
【0040】
前記のような構成によれば、光ファイバ11の光入口14に入射した入射光は、格子ノードによる干渉が発生する。光入口14から出射する反射光は、各格子ノードに対応するピークが存在する波長スペクトルを示す。
【0041】
図1bは、図1aのFBGセンサ1の光入口14から出射する反射光の波長スペクトルを示したグラフである。
【0042】
格子ノードの格子間の間隔Λと反射光の波長λは、下記の式1で表すような関係を有する。
【数1】
【0043】
前記式中、neffは、コアの有効屈折率を示す指標である。
【0044】
図1bの波長スペクトルに示される波長λ、λ、λ、λは、各格子ノードの格子間の間隔Λ、Λ、Λ、Λを前記式1に代入して求めた値に該当する。言い換えれば、波長λ、λ、λ、λは、それぞれ一つの格子ノードによって反射されて出射する反射光の波長を示すものである。
【0045】
第1格子ノードTが位置した部分でFBGセンサ1の変位が発生した場合、第1格子ノードTを構成する格子間の間隔Λが変化するはずであり、その結果、前記式1で表すような関係によって図1bの波長曲線のうち波長λに対する曲線が左右に移動する(shift)ことが測定できるようになる。したがって、波長λに対する曲線が左右に移動することが測定できると、第1格子ノードTの位置でFBGセンサ1の変位が発生したと判断することができる。
【0046】
一般的に測定対象がFBGセンサを装着した状態で動く場合、測定対象の動きは、FBGセンサ1の曲げ変位及び/又はねじれ変位を併せてもたらすことがある。この場合、波長変化情報は、測定対象のねじれ度合だけでなく曲げ度合についての情報も含むはずである。そのため、測定対象のねじれ度合だけをFBGセンサ1にて測定するためには、FBGセンサ1の曲げ変位を防止することが必要となる。
【0047】
本発明は、後述するように、FBGセンサ1の曲げ変位を防止して測定された波長変化情報が、測定対象の一般的な動きのうちのねじれ動きについての情報だけを示すようにすることができる。
【0048】
図2は、本発明の一実施例によるねじれセンサ装置100の斜視図である。
【0049】
図2に示されたように、本実施例によるねじれセンサ装置100は、FBGセンサ1と、測定対象の動きに応じてFBGセンサ1の変位が発生するようにFBGセンサ1を測定対象(図示せず)に固定支持する固定装置2を含む。
【0050】
固定装置2は、FBGセンサ1が取り付けられ、前記測定対象のねじれ動きに対応して少なくとも一部分がねじれ運動するビーム4と、前記ビーム4を測定対象に固定させる固定部材5を含む。
【0051】
本実施例によれば、測定対象は、例えば、人の腕であってよい。ヒジ関節は運動時に曲げ運動及び/又はねじれ運動が複合的に起きる多自由度関節であり、本実施例によるねじれセンサ装置100は、ヒジの運動のうちのねじれ運動を機械的に分離してヒジ関節のねじれ度合を測定する。
【0052】
このために、本実施例による固定装置2は、測定対象の動きに応じてFBGセンサ1が曲げ変位なしにねじれ変位を引き起こすようにする曲げ防止部材3を含む。
【0053】
図2に示されたように、固定部材5は、ねじれセンサ装置100の両端部に形成される。二つの固定部材5は、それぞれユーザの上膊と下膊に取り付けられる(例えば、ユーザが着服した衣服に固定される)。ビーム4は、二つの固定部材5の間を延びて、ユーザのヒジを横切るように形成される。
【0054】
ビーム4は、例えばポリマー材質からなる可撓性を有する。ユーザがヒジ関節を動かすと、二つの固定部材5の相対変位が発生し、その結果、ビーム4は曲げ変位及び/又はねじれ変位をするようになる。
【0055】
FBGセンサ1は、ビーム4の表面に取り付けられるか(図3参照)、中空のビーム4の内部を通過してビーム4の内周面に取り付けられる。このため、ビーム4の曲げ運動及び/又はねじれ運動に対応してFBGセンサ1は曲げ変位及び/又はねじれ変位する。
【0056】
センシング部16の左右に延在する光ファイバ11の部分は如何なる変位を起こしても構わないが、ヒジ関節のねじれ動きだけを分離測定するために、本実施例によれば、曲げ防止部材3によって少なくともセンシング部16の曲げ変位を制限する。
【0057】
図面には詳しく示されていないが、FBGセンサ1は、曲げ防止部材3の外側でビーム4に形成された通孔からビーム4内部を通っていき、曲げ防止部材3の内側でビーム4に形成された他の通孔からビーム4の外部に通り抜けるように延びている。
【0058】
このとき、FBGセンサ1のセンシング部16が曲げ防止部材3の内部に位置するように配置される。
【0059】
センシング部16を囲む曲げ防止部材3によってセンシング部16の曲げ変位が防止される。曲げ防止部材3は、ビーム5の中間に位置し、好ましくは、曲げ防止部材3及びセンシング部16はヒジ関節の位置などの測定位置に対応して配置される。
【0060】
図3は、図2のねじれ測定センサ100を部分的に拡大した拡大図であり、図4は、図3から補強体34を省略して示した図である。
【0061】
曲げ防止部材3は、ビーム4のねじれ運動を許容してFBGセンサ1がねじれ変位を引き起こし得るようにFBGセンサ1を支持する二つの支持体32、及び二つの支持体32間を連結して二つの支持体32間の相対的な曲げ動きを防止する補強体34を含む。
【0062】
本実施例による補強体34は、FBGセンサ1の周りを完全に囲むチューブであり、支持体32は、ボールベアリングである。ボールベアリングの内輪322は、ビーム4に噛み合って固定され、ボールベアリング32の外輪321は補強体34の両端に固定される。
【0063】
本実施例による補強体34は、金属又はポリマーのような多様な種類の材料から形成されてよいが、人体の動きによって曲げ変位を引き起こさない強度と長さを有する。
【0064】
その結果、補強体34及びそれに連結された支持体32から構成される曲げ防止部材3は、測定対象の動きによっても如何なる方向へも曲げ変位を引き起こさない。さらに、曲げ防止部材3に囲まれたFBGセンサ1のセンシング部16は曲げ変位を引き起こさない。
【0065】
一方、外輪321に対して相対的に回転可能な内輪322に固定されたビーム4は、ねじれ運動が可能であり、ビーム4に固定されたセンシング部16がねじれ変位を引き起こすことが可能となる。
【0066】
補強体34は、二つの支持体32間の相対的な曲げ動きを防止する、例えば、支持体32間を連結する一つ以上のバー(bar)状の形態で形成されてもよいが、チューブ状の形態を有することで、測定対象の動き方向に関係なくFBGセンサ1の曲げ変位を防止することができる。
【0067】
支持体32としては、ボールベアリングの他にも、ビーム4を支持しながら、ビーム4のねじれ運動を邪魔しない多様な部品が使用されてよい。
【0068】
図3及び図4に示されたように、FBGセンサ1のセンシング部16は、曲げ防止部材3の内部を通過するビーム4の外周に螺旋状に巻き付けられている。FBGセンサ1がセンシング部16を螺旋状に配置することで、ビーム4のねじれによってセンシング部16により大きな変位が発生するようにして、測定に必要な十分な量の波長変化を誘導する。
【0069】
本実施例によれば、FBGセンサ1にテンション(tension)を加えてねじれビーム42に巻き付けることで、センシング部16の格子間の間隔がテンションが加えられていない状態よりも若干増加した状態で形成されるようにする。この状態の格子間の間隔をねじれセンサ装置1が初期状態としてセットする。
【0070】
ヒジ関節が一方向に動いてビーム4がセンシング部16の巻き付けられた方向にねじれると、ねじれビーム42上のセンシング部16が引っ張られて格子間の間隔が増加する。一方、ヒジ関節が他方向に動いてビーム4がセンシング部16の巻き付けられた方向と逆方向にねじれると、ねじれビーム42上のセンシング部16が弛緩し弾性復元によって収縮しながら格子間の間隔が減少するようになる。
【0071】
格子間の間隔が増加すると、波長変化の方向が正の方向になり、格子間の間隔が減少すると、波長変化の方向が負の方向になる。この結果、波長変化の方向(符号)から測定対象のねじれ方向を区分することができる。
【0072】
さらに、格子間の間隔の変化からビーム4のねじれ度合(すなわち、測定対象のねじれ度合)を測定することができる。
【0073】
例えば、センシング部16のねじれ変位とビーム4のねじれ運動は、下記の式2で表すような関係を有する。
【数2】
【0074】
式2中、ΔΛは、円形ビーム4に取り付けられたセンシング部16のねじれ変位、dは、FBGセンサが取り付けられた円形ビームの直径、lは、FBGセンサが取り付けられた円形ビームの長さ、Δδは、FBGセンサが取り付けられた円形ビームのねじれ角を示す。格子間の間隔が分かると、ビーム4のねじれ角が分かる。
【0075】
ビーム4のねじれ角と測定対象のねじれ度合とは比例する関係を有するので、ビーム4のねじれ角から測定対象のねじれ度合を類推して求めることができる。
【0076】
FBGセンサ1がねじれビーム42に巻き付けられた回数、巻き付けられた形態、巻き付けられた角度などは、センサ装置の用途及び大きさなどに応じて適宜調節されてよい。
【0077】
一方、本実施例によるビーム4は、FBGセンサ1のセンシング部16を固定するねじれビーム42と前記ねじれビーム42の両端から延びて曲げ防止部材3の外部でFBGセンサ1を固定する延長ビーム44を含む。
【0078】
図示されたように、ねじれビーム42は、延長ビーム44よりも大径で形成される。ねじれビーム42の直径は、曲げ防止部材3の内部でFBGセンサ1が補強体34に接触しない程度に形成される。
【0079】
本実施例によれば、ねじれビーム42は、例えば、ポリマー材質で可撓性を有する材質から形成され、延長ビーム44は、例えば、金属などの剛性を有する材質から形成される。
【0080】
したがって、本実施例によれば、測定対象がねじれ運動をする場合、二つの延長ビーム44自体は、ねじれることなく互いに相対回転しながら、ねじれビーム42にトルクを伝達する役割をする。すなわち、本実施例によれば、ビーム4で実質的なねじれ変位が起きる部分はねじれビーム42である。
【0081】
このように、ビーム4がねじれ運動をすることは、ビーム4全体がねじれ変位を引き起こす場合だけではなく、ビーム4の少なくとも一部分がねじれ変位を引き起こす場合も含むと理解されるべきである。
【0082】
本発明の実施例は、ヒジ関節などの測定部位に位置するねじれビーム42だけが実質的にねじれ変位を引き起こすようにすることで、センシング部16の格子間の間隔が、測定対象の動きに直ちに反応して変化する。その結果、長尺のビーム4全体がねじれ変位する場合に比べて測定誤差を低減することができる。
【0083】
本実施例のように、より大径を有するねじれビーム42の表面にセンシング部16を螺旋配置すると、前記式2で円形ビームの直径dが増加するようになる。同じ量の波長変化に対してより精度良いねじれ角Δδを求めることができ、センサ装置の分解能(resolution)が良好になる。
【0084】
一方、ビーム4のねじれ角から測定対象のねじれ度合を求めるためには、センシング部16とねじれビーム42とが測定対象と極力密着していることが要求される。
【0085】
二つの固定部材5が測定対象に固定された状態でビーム4が固定部材5に拘束されていると、測定対象の曲げ動きの方向に応じてビーム4が曲がりながら、センシング部16とねじれビーム42が測定対象から離れられ得る。
【0086】
図5は、本発明の一実施例による固定部材5の構造を説明する図である。
【0087】
本実施例による固定部材5は、測定対象に取り付けられる固定体51と、前記固定体51に形成されたスリット53に挿入されるキー部材55を含む。
【0088】
キー部材55は、延長ビーム44の端部に固定される。キー部材55は、固定体51に形成されたスリット53に挿入され、スリット53の内部で摺動自在である。
【0089】
図6は、一実施例によるキー部材55の斜視図である。
【0090】
キー部材55は、延長ビーム44に固定される胴部552、及び胴部552の一方側に突出する回転防止部554を含む。スリット53は、キー部材55の形状に対応して形成される。
【0091】
正確な測定のためには、測定対象の動きによって固定部材5が動く場合、それに連動してビーム4も動かなければならない。固定部材5が動くときにビーム4が固定部材5に対して空回りすると、正確なねじれ運動が伝達されない。
【0092】
本実施例によれば、回転防止部554が形成されることで、キー部材55が固定体51に対して回転しないので、測定対象のねじれ運動によるねじれ力(例えば、トルク(torque))をビーム4に正確に伝達することができる。
【0093】
キー部材55は、必ずしも一部が突出した鍵状である必要はなく、角ばった隅や突出部を回転防止部として有して固定体51に対する相対回転をしない構造であればよい。
【0094】
図7は、ねじれセンサ装置1の両端の固定状態を説明する図である。
【0095】
本実施例によれば、延長ビーム4の一端に固定される第1固定部材57は、延長ビーム4と相対運動しないように固定される。一方、延長ビーム4の他端に固定される第2固定部材59は、上述したキー部材が固定体に対して摺動自在な構造で形成され延長ビーム4と固定されない。
【0096】
第1固定部材57は、第2固定部材59とは異なる構造であってもよく、第2固定部材59と同様な構造であるが、キー部材55が固定体51に対して位置固定されて摺動しない構造であってもよい。
【0097】
図7に示されたように、測定対象が曲げ変位をするとき、第2固定部材59のキー部材55が第2固定部材の固定体51に固定されていない。このため、第2固定部材59のキー部材55は、第2固定部材59のスリット53上で摺動する。
【0098】
その結果、測定対象が大きく曲げ動作をしても、ビーム4の曲げ変位は最小化する。ビーム4の両端に作用するせん断力などのような要因がFBGセンサ1のねじれ変位に影響を与えることを防止することができ、且つセンシング部16が測定対象に密着した状態を保持することができる。
【0099】
図8は、FBGセンサ装置100を使用して得たビームのねじれ角度-波長変化量についての実験データを示したグラフ図である。
【0100】
図8に示されたように、ねじれセンサ装置100は、1°のビームのねじれ角当たりに約2.1pmのねじれ変位を有する分解能を有し得る。これは、単に実験的結果に過ぎず、式1及び式2に基づいてビームの規格を設計すると、ねじれセンサ装置の分解能を調節することができる。また、既に製作されたねじれセンサ装置が測定対象のねじれ運動を測定することができない場合、装置全体を再度製作する必要がなく、ビームを再度設計して問題を解決することができる。
【0101】
本明細書では好適な実施例について図示し説明したが、本明細書は上述した特定の実施例に限定されるものではなく、請求の範囲で請求する要旨を逸脱することなく当該明細書が属する技術分野における通常の知識を有する者によって多様な変形実施が可能であることは勿論であり、このような変形実施が本明細書の技術的思想や展望から別個のものに理解されてはならない。
【0102】
(産業上の利用可能性)
全世界的に多様な分野でロボットに対する需要が増加している。特に、関節のないロボット(エコンデ、軟性内視鏡ロボット、snake robotなど)に対する需要があるが、このようなロボットの正確な性能を測定するためには、当該ロボットのねじれを測定することが必要である。
【0103】
また、仮想現実の発展と市場拡大に伴い、より精密なモーションセンサを製作するために、モーション測定対象のねじれを測定することもまた必要である。
【0104】
したがって、本発明の実施例は、前述したロボット及びモーションセンサの分野で活用度が高いものと予想される。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8