(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】構造化高密度フルオロポリマーフィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20221031BHJP
B29C 59/18 20060101ALI20221031BHJP
B29K 27/12 20060101ALN20221031BHJP
B29L 7/00 20060101ALN20221031BHJP
【FI】
C08J5/18 CEW
B29C59/18
B29K27:12
B29L7:00
(21)【出願番号】P 2021518507
(86)(22)【出願日】2018-10-05
(86)【国際出願番号】 US2018054559
(87)【国際公開番号】W WO2020072072
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】マイケル イー.ケネディ
(72)【発明者】
【氏名】シャオフォン ラン
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-225955(JP,A)
【文献】特表2016-535693(JP,A)
【文献】特表2018-509295(JP,A)
【文献】特開平09-054178(JP,A)
【文献】特表2017-531918(JP,A)
【文献】特表2007-534523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J5/00-5/02、5/12-5/22、
B29C49/00-49/46、49/58-49/68、49/72-51/28、51/42、51/46、B29C53/00-53/84、57/00-59/18、
B29C55/00-55/30、61/00-61/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高密度フルオロポリマーフィルムを含む構造化フルオロポリマーフィルムであって、
該高密度フルオロポリマーフィルムは、対応する非構造化フルオロポリマーフィルムの厚さの少なくとも2倍の高さ
であって、かつ、2μm~1000μmの高さを有する複数の構造を含み、
125℃の温度における二軸引張曲線において測定したときに、対応する非構造化高密度フルオロポリマーフィルムと比較して、変位誘導期間が少なくとも20%増加して
おり、
該高密度フルオロポリマーフィルムは、0.015g*mm/m
2
/日以下の水蒸気透過係数、並びにx及びy方向の両方で少なくとも69MPaのマトリックス引張強度、を有し、
該高密度フルオロポリマーフィルムは0.5μm~250μmの厚さを有し、
該構造化フルオロポリマーフィルムは、対応する非構造化フルオロポリマーフィルムと比較して、単位面積あたりの質量が少なくとも5%増加し、さらに
該構造化フルオロポリマーフィルムは、500μg*μm/cm
2
/分未満のメタン透過度を有することを特徴とする、構造化フルオロポリマーフィルム。
【請求項2】
前記構造化フルオロポリマーフィルムは、少なくとも一方向において少なくとも1/mmの構造密度を有する、請求項1記載のフィルム。
【請求項3】
前記構造化フルオロポリマーフィルムは20%未満のボイド体積を有する、請求項1又は2記載のフィルム。
【請求項4】
前記構造化フルオロポリマーフィルムは、少なくとも一方向におい
て7.0MPa以上のマトリックス引張強度を有する、請求項1~3のいずれか1項記載のフィルム。
【請求項5】
前記変位誘導期間の増加は、対応する非構造化フルオロポリマーフィルムと比較して、少なくとも100%である、請求項1~4のいずれか1項記載のフィルム。
【請求項6】
前記構造化フルオロポリマーフィルムはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む、請求項1~5のいずれか1項記載のフィルム。
【請求項7】
前記PTFEは、PTFEホモポリマー、変性PTFE、テトラフルオロエチレン(TFE)コポリマー又はそれらの組み合わせである、請求項6記載のフィルム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項記載の構造化フルオロポリマーフィルムを含む複合材。
【請求項9】
フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ペルフルオロ(アルキルビニル)エーテル(PAVE)、ペルフルオロエラストマー材料、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンとのポリマー(THV)、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、エチレンとテトラフルオロエチレンとのコポリマー(ETFE)、及びポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)からなる群より選ばれる少なくとも1つの熱可塑性樹脂をさらに含む、請求項8記載の複合材。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項記載の構造化フルオロポリマーフィルムを含むラミネート。
【請求項11】
弾性基材を延伸すること、
延伸した該弾性基材上に高密度フルオロポリマーフィルムを適用し、該高密度フルオロポリマーフィルムを該弾性基材に可逆的に付着させること、及び
該高密度フルオロポリマーフィルムを載せた状態で該弾性基材を弛緩させることにより構造化フルオロポリマーフィルムを得ること、
を含む、構造化フルオロポリマーフィルムを製造する方法であって、
該構造化フルオロポリマーフィルムは、該適用工程の該高密度フルオロポリマーフィルムの厚さの少なくとも2倍の高さ
であって、かつ、2μm~1000μmの高さを有する複数の構造を含
み、
該高密度フルオロポリマーフィルムは、0.015g*mm/m
2
/日以下の水蒸気透過係数、並びにx及びy方向の両方で少なくとも69MPaのマトリックス引張強度、を有し、
該高密度フルオロポリマーフィルムは0.5μm~250μmの厚さを有し、
該構造化フルオロポリマーフィルムは、対応する非構造化フルオロポリマーフィルムと比較して、単位面積あたりの質量が少なくとも5%増加し、さらに
該構造化フルオロポリマーフィルムは、少なくとも一方向において7.0MPa以上のマトリックス引張強度を有することを特徴とする、方法。
【請求項12】
前記構造化フルオロポリマーフィルムを、複合材及びラミネートからなる群より選ばれる材料の表面に接着させることをさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記構造化フルオロポリマーフィルムはPTFEを含む、請求項11又は12記載の方法。
【請求項14】
前記高密度フルオロポリマーフィルムは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、変性PTFE、TFEコポリマー及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれるフルオロポリマーを含む、請求項11又は12記載の方法。
【請求項15】
前記弾性基材は、ポリシロキサン、フルオロシリコーンゴム及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる材料を含む、請求項11~14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記弾性基材は、少なくとも一方向において1.1~11の処理比で延伸される、請求項11~14のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記高密度フルオロポリマーフィルムを形成することは、
二軸延伸PTFEフィルムを提供すること、
前記延伸PTFEフィルムを高密度化して高密度化PTFEフィルムを形成すること、及び
PTFEの結晶融解温度よりも高い温度で前記高密度化PTFEフィルムを延伸して、高密度フルオロポリマーフィルムを形成すること
を含む、請求項11~15のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記二軸延伸PTFEフィルムは、延伸PTFEフィルムを高密度化させる前に焼結される、請求項17記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、構造化高密度フルオロポリマーフィルム、及び、該構造化高密度フルオロポリマーフィルムを含む物品、ならびにそのようなフィルムを製造する関連方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロポリマーフィルムは、液体及び気体を含む一連の流体に対するバリアを提供するために、様々な製品及びデバイスで使用されている。モノリシック及び多成分多層フィルムの両方が構築されてきた。しかしながら、変形が比較的低い温度で起こる製品及びデバイスの製造及び使用中に、熱安定性、高強度、薄さ、化学的不活性及び水蒸気透過に対する耐性などのバリア特性の保持を提供する適切なフルオロポリマーフィルムは見出されていない。
【0003】
バリア層として使用されるフルオロポリマーフィルムの1つの例はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。PTFEは化学的に不活性であり、広範囲の温度にわたる過酷な化学環境に耐えることができる。例えば、PTFEは、他のポリマーが急速に劣化する過酷な化学環境で使用するための材料としての有用性を示してきた。
【0004】
幾つかの例において、PTFEの代わりに延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を使用することができる。ePTFEのノード及びフィブリルの微細構造は、PTFEの化学的不活性及び広い温度範囲の適合性を維持しながら、PTFEよりも高い強度をもたらす。しかしながら、表面張力が約50ダインcm未満の流体はePTFEフィルムを通過する可能性があるため、ePTFEの多孔性は低表面張力流体に対するバリア層としての使用には適さないことがある。
【0005】
1つの解決策は、高密度化ePTFEなどの高密度フルオロポリマーフィルムを使用することである。高密度フィルムは、水蒸気に対する高い耐性(すなわち、低い水蒸気透過率)を特徴とする。高密度フィルムは、優れた耐薬品性及び耐水蒸気透過性を備えた薄い材料を必要とする多くの用途で成功裡に実装されてきた一方、高密度フィルムのバリア特性は、フィルムが受けるひずみ量が変動する場合、例えば、製品又はデバイスの製造時又は使用中に、低下又は劣化することがよくある。したがって、高い耐ひずみ性を示し、製造及び/又は使用中にバリア特性を保持する高密度フルオロポリマーフィルムに対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【0006】
1つの例(「例1」)によれば、構造化フルオロポリマーフィルムは高密度フルオロポリマーフィルムを含む。高密度フルオロポリマーフィルムは、対応する非構造化フルオロポリマーフィルムの厚さの少なくとも2倍の高さを有する複数の構造を含む。構造化フルオロポリマーフィルムは、約125℃の温度における二軸引張曲線において測定したときに、対応する非構造化高密度フルオロポリマーフィルムと比較して、変位誘導期間が少なくとも20%増加している。
【0007】
例1に加えて、別の例(「例2」)によれば、構造化フルオロポリマーフィルムは少なくとも一方向に少なくとも1/mmの構造密度を有する。
【0008】
例1又は2に加えて、別の例(「例3」)によれば、構造化フルオロポリマーフィルムは、500μg*μm/cm2/分未満のメタン透過度を有する。
【0009】
例1~3のいずれかに加えて、別の例(「例4」)によれば、構造化フルオロポリマーフィルムは20%未満のボイド体積を有する。
【0010】
例1~4のいずれかに加えて、別の例(「例5」)によれば、構造化フルオロポリマーフィルムは、少なくとも一方向で約7.0MPa以上のマトリックス引張強度を有する。
【0011】
例1~5のいずれかに加えて、別の例(「例6」)によれば、構造化フルオロポリマーフィルムの変位誘導期間の増加は、対応する非構造化フルオロポリマーフィルムの変位誘導期間と比較して、少なくとも20%である。
【0012】
例1~6のいずれかに加えて、別の例(「例7」)によれば、構造化フルオロポリマーフィルムはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む。
【0013】
例7に加えて、別の例(「例8」)によれば、PTFEは、PTFEホモポリマー、変性PTFE、テトラフルオロエチレン(TFE)コポリマー又はそれらの組み合わせである。
【0014】
請求項1~8のいずれかに加えて、別の例(「例9」)によれば、構造化フルオロポリマーフィルムは、対応する非構造化フルオロポリマーフィルムと比較して、単位面積あたりの質量が少なくとも5%増加する。
【0015】
別の例(「例10」)によれば、複合材は、例1~9のいずれかの構造化フルオロポリマーフィルムを含む。
【0016】
例10に加えて、別の例(「例11」)によれば、複合材は、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ペルフルオロ(アルキルビニル)エーテル(PAVE)、ペルフルオロエラストマー材料、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンとのポリマー(THV)、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、エチレンとテトラフルオロエチレンとのコポリマー(ETFE)及びポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)からなる群より選ばれる少なくとも1つの熱可塑性樹脂を含む。
【0017】
別の例(「例12」)によれば、ラミネートは、請求項1~9のいずれか1項記載の構造化フルオロポリマーフィルムを含む。
【0018】
別の例(「例13」)によれば、構造化フルオロポリマーフィルムを製造する方法は、弾性基材を延伸すること、延伸した弾性基材上に高密度フルオロポリマーフィルムを適用して、高密度フルオロポリマーフィルムを弾性基材に可逆的に付着させること、及び、高密度フルオロポリマーフィルムを載せた状態で弾性基材を弛緩させて、構造化フルオロポリマーフィルムを得ることを含む。構造化フルオロポリマーフィルムは、適用工程からの高密度フルオロポリマーフィルムの厚さの少なくとも2倍である高さを有する複数の構造を含む。
【0019】
例13に加えて、別の例(「例14」)によれば、この方法はまた、構造化フルオロポリマーフィルムを複合材又はラミネートの表面に接着することを含む。
【0020】
例13に加えて、別の例(「例15」)によれば、前記構造化フルオロポリマーフィルムは、約7.0MPa以上である少なくとも一方向のマトリックス引張強度を有する。
【0021】
例13及び14のいずれかに加えて、別の例(「例16」)によれば、構造化フルオロポリマーフィルムはPTFEを含む。
【0022】
例13~15のいずれかに加えて、別の例(「例17」)によれば、高密度フルオロポリマーフィルムは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、変性PTFE、TFEコポリマー及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれるフルオロポリマーを含む。
【0023】
例13~16のいずれかに加えて、別の例(「例18」)によれば、高密度フルオロポリマーフィルムは、約0.5μm~250μmの厚さを有する。
【0024】
例13~17のいずれかに加えて、別の例(「例19」)によれば、弾性基材は、ポリシロキサン、フルオロシリコーンゴム及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる材料を含む。
【0025】
例13~18のいずれかに加えて、別の例(「例20」)によれば、弾性基材は、少なくとも一方向に1.1~11の処理比で延伸される。
【0026】
例13~19のいずれかに加えて、別の例(「例21」)によれば、高密度フルオロポリマーフィルムを形成することは、二軸延伸PTFEフィルムを提供すること、延伸PTFEフィルムを高密度化して高密度化PTFEフィルムを形成すること、及び、PTFEの結晶融解温度よりも高い温度で高密度化PTFEフィルムを延伸して、高密度フルオロポリマーフィルムを形成することを含む。
【0027】
例21に加えて、別の例(「例22」)によれば、高密度フルオロポリマーフィルムは、約0.015g*mm/m2/日の水蒸気透過係数を有する。
【0028】
例21に加えて、別の例(「例23」)によれば、二軸延伸PTFEフィルムは、延伸PTFEフィルムを高密度化させる前に焼結される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
添付の図面は、本開示のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に取り込まれ、その一部を構成し、実施形態を示し、記載とともに、本開示の原理を説明するのに役立つ。
【0030】
【
図1】
図1は、1つの実施形態による、延伸された基材の表面に接着された非構造化フルオロポリマーフィルムの概略図である。
【0031】
【
図2A】
図2Aは、1つの実施形態による、弛緩した基材の表面に接着された構造化フルオロポリマーフィルムの概略図である。
【0032】
【
図2B】
図2Bは、1つの実施形態による、構造化フルオロポリマーフィルムの概略図である。
【0033】
【
図3】
図3は、1つの実施形態による、構造化フルオロポリマーフィルムを形成する方法のフローダイアグラムである。
【0034】
【
図4】
図4は、1つの実施形態による、構造化フルオロポリマーフィルムの構造の最大高さを示すグラフである。そして、
【0035】
【
図5】
図5は、1つの実施形態による、非構造化フルオロポリマーフィルムの光学顕微鏡写真画像である。
【0036】
【
図6】
図6は、1つの実施形態による、構造化フルオロポリマーフィルムの光学顕微鏡写真画像である。
【0037】
【
図7】
図7は、1つの実施形態による、
図6の構造化フルオロポリマーフィルムの顕微鏡写真画像である。そして、
【0038】
【
図8】
図8は、1つの実施形態による、構造化フルオロポリマーフィルムの変位誘導期間を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
当業者は、本開示の様々な態様が、意図された機能を発揮するように構成された任意の数の方法及び装置によって実現できることを容易に理解するであろう。本明細書で参照される添付の図は、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではなく、本開示の様々な態様を説明するために誇張されている場合があり、その点で、図は限定として解釈されるべきではないことにも留意されたい。
【0040】
本開示は、非構造化高密度フルオロポリマーフィルムと比較して改善されたひずみ対バリア特性を有する構造化高密度フルオロポリマーフィルムに関する。高密度フルオロポリマーフィルムは、メディカルデバイス、保護衣服及びゴム製Oリングなどの他の様々な物品及びデバイスのバリア保護としてしばしば使用される。しかしながら、高密度フルオロポリマーフィルムは、例えば、物品の形成又は使用などの比較的少量のひずみにさらされると、バリア性能の低下を示す可能性がある。したがって、フィルムを事前に構造化することによって高密度フルオロポリマーフィルムにひずみ能力を導入すると、様々な量のひずみを受けたときにフィルムのバリア特性を改善及び/又は保持することができる。言い換えれば、このビルトインフィルム構造は、フィルムのバリア性能を損なうことなくフィルムの変形を可能にする。
【0041】
図1は、1つの実施形態による、延伸された基材又は物品110上の非構造化フルオロポリマーフィルム100の概略図である。示されるように、非構造化フルオロポリマーフィルム100は、実質的に平坦であり、略二次元で平面である(例えば、
図1では水平平面である)。言い換えると、非構造化フィルムは、フィルム内にシワ、折り目又はその他の面外構造が含まない。幾つかの実施形態において、非構造化フルオロポリマーフィルム100は高密度フルオロポリマーフィルムである。
【0042】
本明細書で使用されるときに、「フィルム」という用語は、一般に、任意の種類の薄いフルオロポリマー材料(すなわち、残りの寸法の延在部と比較して大きい、例えば、少なくとも10倍、少なくとも100倍又は100倍を超える二次元の延在部を有するフルオロポリマー材料)を意味する。このような薄いポリマー材料は、「二次元構造」とも呼ばれる。
図1の図示の実施形態において、例えば、フィルム100は、比較的長い長さL(
図1では水平x方向で測定される)、比較的大きな幅(図示せず)(
図1では水平y方向で測定される)を有し、そして比較的薄い厚さt(これは、
図1の垂直z方向で測定される)を有する。
【0043】
「高密度フィルム」という用語は、本明細書で使用されるときに、水蒸気に対する高い耐性(すなわち、低い水蒸気透過性)及びx方向及びy方向の両方で高いマトリックス引張強度を有するフィルムを意味する。本明細書で使用されるときに、「x方向」という用語は、機械方向又は長手方向を示すことが意図され、「y方向」という用語は、横断方向(例えば、長手方向の反対)を示すことが意図される。幾つかの実施形態において、高密度フィルムは、例えば、約0.015g-mm/m2/日以下、約0.010g-mm/m2/日以下又は約0.003g-mm/m2/日以下の水蒸気透過係数を有することができる。。幾つかの実施形態において、高密度フィルムは、x及びy方向の両方で少なくとも69MPaのマトリックス引張強度、少なくとも一方向で約100MPa~約200MPaのマトリックス引張強度(例えば、少なくとも一方向で少なくとも103MPaのマトリックス引張強度又は少なくとも一方向で少なくとも172MPaのマトリックス引張強度)を有することができる。幾つかの実施形態において、高密度フィルムは、約20%未満のボイド体積を有することができる。
【0044】
そのような高密度フィルムを製造する方法は、適切なフルオロポリマーを押出すること、ポリマーを乾燥すること、ポリマーを圧縮(すなわち、高密度化)すること、圧縮工程の前及び/又は後にポリマーを延伸(すなわち、伸長)すること、及び、ポリマーを焼結することを含むことができる。1つの実施形態において、この方法は、PTFEフィルムを二軸延伸すること、ePTFEフィルムを高密度化すること、及び、高密度化されたePTFEフィルムを、PTFEフィルムの結晶融解温度よりも高い温度で延伸することを含む。延伸後でも、高密度ePTFEフィルムは、適切なバリア特性を維持するために、約20%未満、約15%未満、約10%未満又は約5%未満のボイド体積を有することができる。高密度ePTFEフィルムを形成するための他の適切な方法は存在し、当業者に知られている。
【0045】
幾つかの実施形態において、非構造化フルオロポリマーフィルム100は、延伸された基材110(すなわち、例えば、物品又はフィルムにひずみを導入することによって延伸された適切な物品又はフィルム)の表面に接着されうる。幾つかの例において、非構造化フルオロポリマーフィルム100は、フィルムの分離した複数の特定部分で、延伸された基材110の表面に接着されうる。例えば、非構造化フルオロポリマーフィルム100の複数の特定部分は、延伸された基材110の表面に接着され、一方、非構造化フルオロポリマーフィルム100の他の部分は、接着されないままである。非構造化フルオロポリマーフィルム100は平坦であるため、非構造化フルオロポリマーフィルム100は、非構造化フルオロポリマーフィルム100が接着されている部分の上で、延伸された基材110の表面と同一平面上にある。延伸された基材110を弛緩及び収縮させると、非構造化フルオロポリマーフィルム100の非接着部分は、延伸された基材110の表面から浮き上がり、変形し、しわ、折り目及び/又は他の面外構造を形成して、
図2Aに示される構造化フルオロポリマーフィルム200を形成する。
【0046】
図2Aは、1つの実施形態による、弛緩した(例えば、伸ばされていない)物品210上の構造化フルオロポリマーフィルム200の概略図である。示されるように、構造化フィルム200は複数の構造220を含む。構造220は、しわ、折り目及び/又は他のそのような同様の構造などの任意の種類の幾何学的な面外又は三次元構造を含む。構造220は、サイズ、形状及び/又は高さが実質的に均一であることができるか、又は、構造220は、ランダムであることができる(すなわち、サイズ、形状及び/又は高さが変化しうる)。構造220は、一般に、物品210の表面から隆起している。構造220は、非構造化高密度フィルム100の表面と比較して、構造化フルオロポリマーフィルム200に増加した表面積を提供し、ひずみが物品200に導入されると伸長及び/又は展開することができる。結果として、構造化フルオロポリマーフィルム200は、バリア性能を低下させることなくひずみを経験し、フィルムのバリア特性は無傷のままである。
【0047】
一般に、構造化フルオロポリマーフィルム200の構造220のそれぞれの高さは、そのバリア特性が影響を受ける前にフィルムが耐えることができるひずみの量に関連している。例えば、構造220の高さが高いほど、フィルム200がより多くのひずみに耐えることができる。したがって、構造220の高さは、構造化フィルム200及び/又はそれが接着されている物品210の所望の最終用途によることができる。幾つかの実施形態において、構造220は、対応する非構造化フィルム100の厚さの少なくとも2倍の高さ(例えば、
図2Aの垂直高さ)を有することができる。例えば、非構造化フィルム100が約5μmの平均厚さを有するならば、対応する構造化フィルム200の構造220は、少なくとも約10μmの平均高さを有することができる。非構造化フィルム100の平均厚さが約1μmであるならば、対応する構造化フィルム200の構造220は、少なくとも約2μmの平均高さを有することができる。他の例において、複数の構造220は、対応する非構造化フィルム100の厚さの3倍、4倍、5倍又は5倍を超える高さを有することができる。
【0048】
幾つかの実施形態において、非構造化フルオロポリマーフィルム100は、約1μm~約50μm又は約5μm~約25μmの厚さを有することができる。幾つかの実施形態において、構造220は、非構造化フルオロポリマーフィルム100の厚さに応じて、約2μm、約20μm、約200μm、約500μm又は約1000μmの高さを有することができ、又は、約2μm~約1000μmの範囲であることができる。
【0049】
図2Bは、1つの実施形態による、構造化フルオロポリマーフィルム200の概略図である。示されるように、構造化フルオロポリマーフィルム200は、弛緩した物品210から除去された後でも構造220を保持する(
図2A)。
【0050】
本明細書で論じられるように、構造化フルオロポリマーフィルム200の任意のサブサンプルは、構造220のために、非構造化フルオロポリマーフィルム100と比較して増加した表面積を提供する。幾つかの実施形態において、構造化フルオロポリマーフィルム200は、非構造化フルオロポリマーフィルム100と比較して、少なくとも約1.8、少なくとも約3.0又は少なくとも約5.0の全体としての面積増加係数を有する。本明細書で使用されるときに、「面積増加係数」という用語は、非構造化フルオロポリマーフィルム100の全表面積と比較した、構造化フルオロポリマーフィルム200の全表面積の増加を特性化することが意図される。非構造化フッ素樹脂フィルム100の。言い換えれば、面積増加係数は、構造化フルオロポリマーフィルム200のサンプルの表面積の、非構造化フルオロポリマーフィルム100の同じ又は対応する部分の同じサイズのサンプルの表面積に対する比である。
【0051】
幾つかの実施形態において、構造化フィルム200はまた、非構造化フィルム100と比較して単位面積当たりの質量が増加しうる。例えば、構造化フルオロポリマーフィルム200は、非構造化フルオロポリマーフィルム100と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%又は少なくとも約15%、単位面積当たりの質量が増加しうる。
【0052】
幾つかの実施形態において、構造化フルオロポリマーフィルム200はまた、少なくとも一方向(例えば、x方向又はy方向のいずれか)又はx方向とy方向の両方において、最小で約1/mm~最大で約10/mmの構造密度を有することができる。本明細書で使用されるときに、「構造密度」という用語は、構造化フルオロポリマーフィルム200の所与の長さに存在する構造220の数として規定される。言い換えれば、構造化フルオロポリマーフィルム200の所与の長さに対して、構造密度は、構造化フルオロポリマーフィルム200の長さで構造220の数を割った値に等しい。構造220の高さと同様に、構造密度もまた、構造化フルオロポリマーフィルム200がそのバリア特性に影響を与える前に耐えることができるひずみの量に影響を与える。例えば、構造密度が高いほど、一般に、構造化フルオロポリマーフィルム200がより多くのひずみに耐えることができる。
【0053】
幾つかの実施形態において、構造化プロセスによって構造化フルオロポリマーフィルム200に組み込まれる構造の量は、構造化フルオロポリマーフィルム200の変位誘導期間を測定することによって定量化することができる。本明細書で使用されるときに、「変位誘導期間」という用語は、構造化フルオロポリマーフィルム200が、負荷が有意になる前に延伸することができる量の尺度である。例えば、本明細書で規定されるように、変位誘導期間は、負荷が125℃の温度で約0.1lbf(約0.445N)に達する前のボール破裂試験中のボールの変位量である。一般に、変位誘導期間が長いほど、バリア特性の完全性が有意に低下する前に、構造化フィルムが耐えることができるひずみが大きくなる。変位誘導期間を試験するときに、ボールは一定の速度で移動し、そのため、変位誘導期間は変位距離又は変位時間として測定できる。変位誘導期間の増加は、非構造化フルオロポリマーフィルム100と比較して、構造化フルオロポリマーフィルム200について測定された変位誘導期間の距離又は時間のパーセント増加として報告することができる。幾つかの実施形態において、構造化フルオロポリマーフィルム200は、対応する非構造化フルオロポリマーフィルム100と比較して、変位誘導期間が少なくとも20%増加、少なくとも100%増加、少なくとも200%増加又は少なくとも300%増加している。さらに、構造化フルオロポリマーフィルムは、500μg*μm/cm2/分未満のメタン透過度を有する。
【0054】
構造化フルオロポリマーフィルム200は、その下にある物品210に対して適切なバリア層を形成することができる任意の材料を含むことができる。幾つかの実施形態において、構造化フルオロポリマーフィルム200は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、PTFEホモポリマー、変性PTFE、延伸変性PTFE、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)コポリマー、PTFEの延伸コポリマーから選ばれることができ、例えば、Brancaの米国特許第5,708,044号明細書、Baillieの米国特許第6,541,589号明細書、Sabolらの米国特許第7,531,611号明細書、Fordの米国特許第8,637,144号明細書及びXuらの米国特許第9,139,669号明細書に記載されている。Bacinoらの米国特許第7,306,729号明細書、Goreの米国特許第3,953,566号明細書、Bacinoの米国特許第5,476,589号明細書又はBrancaらの米国特許第5,183,545号明細書に記載されている方法によって調製される延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)膜もここで使用できる。高密度フルオロポリマーフィルムはまた、Kennedyらの米国特許第7,521,010号明細書、Fordらの米国特許第9,644,054号明細書、Fordらの米国特許第9,650,479号明細書に記載されている方法に従って調製することができる。
【0055】
図3は、1つの実施形態による、構造化フルオロポリマーフィルム200を形成する方法を示すフローダイアグラムである。この方法は、
図1及び
図2に関して本明細書に記載されている。この方法は、第一の工程300(
図1)で弾性基材を延伸して、延伸された弾性基材110を形成することを含む。例えば、基材110は、初期の弛緩状態から延伸状態に延伸されうる。様々な実施形態において、延伸された基材110は、適切な伸長性を有し、適用された高密度フィルム(例えば、非構造化フルオロポリマーフィルム100)への十分な接着性を提供する任意の弾性材料を含むことができる。例えば、幾つかの実施形態において、延伸された基材110は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、シリコンゴム又は他のポリマーエラストマーなどの材料を含むことができる。
【0056】
幾つかの実施形態において、弾性基材は、少なくとも一方向に延伸される。例えば、弾性基材は、一軸(例えば、機械方向又はx方向又は横断方向又はy方向)又は二軸(例えば、機械方向又はx方向及び横断方向又はy方向)に延伸されうる。二軸延伸は、同時に又は続いて実施することができる。同時にとは、弾性基材が機械方向と横断方向の両方に同時に延伸されることを意味する。例えば、弾性基材は、x方向及びy方向の両方に同時に延伸されうる。続いてとは、弾性基材が最初に一方向(例えば、x方向)に所望の量まで延伸され、次に別の方向(例えば、y方向又は第一の方向に垂直な方向)に延伸されることを意味する。
【0057】
弾性基材の延伸の程度は、本明細書で使用されるときに、以下の式(1)によって規定される処理比pによって規定される。
【数1】
(上式中、L=延伸状態の弾性基材の最終的な長さ又は幅であり、そして
Lo=延伸されていない弛緩状態の弾性基材の初期の長さである)。
【0058】
例えば、pが2である処理比は、延伸状態での最終的な長さLが、弛緩状態での初期の長さLoの2倍であることを意味する。幾つかの実施形態において、弾性基材は、一方向に1.1、1.5又は2.0、又は、一方向に6.0、8.5又は11の処理比pによって延伸されうるか、又は、1.1~11、1.5~8.5又は2.0~6.0の範囲にあることができる。
【0059】
弾性基材を延伸して延伸された基材110を形成した後に、工程310において、高密度フルオロポリマーフィルム(例えば、非構造化フルオロポリマーフィルム100)を、非構造化フルオロポリマーフィルム100の一部が、延伸された基材110の表面に接着され、一方、非構造化フルオロポリマーフィルム100の他の部分が接着されていないように、延伸された基材110に適用される(
図1)。「接着」は、本明細書で使用されるときに、非構造化フルオロポリマーフィルム100が、延伸された基材110の表面に物理的に付着していることを表すことが意図される。例えば、非構造化フルオロポリマーフィルム100は、例えば、ファンデルワールス力、静的力、又は、非構造化フルオロポリマーフィルム100と、延伸された基材110との間に永久的結合が生じないような非永久的接着を生成することができる他の方法によって、延伸された基材110の表面に接着されうる。構造化されたら、構造化フルオロポリマーフィルム200は、非破壊的な方法で弛緩した物品210から容易に除去することができる。
【0060】
非構造化フルオロポリマーフィルム100が、延伸された基材110に接着されると、次に、延伸された基材110は、工程320で弛緩されて(
図3)、弛緩物品210を形成する(
図2A)。延伸された基材110が弛緩されると、フィルムのセクションが弛緩物品210の表面から浮き上がるにつれて、小さなスペース、ギャップ及び/又は三次元構造220が形成され、したがって、構造化フルオロポリマーフィルム200を形成する。例えば、延伸された基材110に接着されなかった非構造化フルオロポリマーフィルム100の部分は、弛緩物品210の表面から浮き上がって構造220を形成する、構造化フルオロポリマーフィルム200のセクションであることができる。幾つかの実施形態において、構造化プロセスを室温で実施することができる。他の実施形態において、構造化プロセスは高温で実施することができる。例えば、処理チャンバを室温(約23℃±3℃)~約220℃、又は、約室温~約180℃の温度に加熱されることができ、処理チャンバの制限温度及び/又は基材及び高密度膜の熱安定性又は融解温度などの様々な要因に依存しうる。
【0061】
この方法はまた、工程330(
図3)において、緩和物品210(
図2B)から構造化フルオロポリマーフィルム200を除去することを含む。
【0062】
構造化フルオロポリマーフィルム200の形成及び緩和物品210からの構造化フルオロポリマーフィルム200の除去後に、構造化フルオロポリマーフィルム200は、圧力ロールなどを介して、複合材の表面に接着し又はラミネートに統合して、構造化複合材又は構造化ラミネートを形成することができる。構造化ラミネートは、例えば、ePTFEの少なくとも1つの層を含むことができる。しかしながら、ラミネートは、所望に応じて、任意の数及び/又はタイプの層を含むことができる。幾つかの実施形態において、構造化フルオロポリマーフィルム200は構造化複合材であることができる。
【0063】
幾つかの実施形態において、構造化複合材は、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ペルフルオロ(アルキルビニル)エーテル(PAVE)、ペルフルオロエラストマー材料、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンとのポリマー(THV)、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、エチレンとテトラフルオロエチレンとのコポリマー(ETFE)、及び/又はポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)のような、熱可塑性ポリマーを含むことができる。幾つかの例において、構造化複合材は、例えば、様々なメディカルデバイス(すなわち、ゴム製シール、バルーン及び他のそのようなデバイス)などの三次元物品に成形されうる。
【実施例】
【0064】
試験方法
特定の方法及び装置を以下に記載するが、当業者によって適切であると決定される他の方法又は装置を代替的に利用できることを理解されたい。
【0065】
引張測定
引張特性を、ASTM標準D412F(ASTM Internatiomnal, West Conshohocken, PA)に基づいて、INSTRON(登録商標)引張試験機(モデル5965, Illinois Tool Works Inc., Glenview, IL)で測定した。
【0066】
バルク密度測定
バルク密度は、フィルムを円形のクーポンサンプルにダイカットすることによって測定された。フィルムの厚さは、例えば、Mitutoyo Litematic VL-50Aコンタクトゲージデジタル測定ユニット(Mitutoyo America Corp., Aurora, IL)を使用して、各クーポンサンプルの3つの異なる場所で測定した。厚さ測定に続いて、各サンプルを秤量し、バルク密度を当業者に知られている従来の方法によって計算した。
【0067】
骨格密度測定
骨格密度を、ACCUPYC(登録商標)1340(Micromeritics Instrument Corp., Norcross, GA)などのヘリウムピクノメータによって測定した。測定する前に、既知の体積の鋼球を使用してピクノメータを校正した。
【0068】
ボイド体積
フィルムのボイド体積を、バルク密度と骨格密度との間の差を計算することによって評価した。ボイド率を以下の式(2)で計算した。
【数2】
【0069】
メタン透過度
メタン透過度を、メタンテスタを使用して測定した。メタンテスタは、システム内に背圧のない拡散装置であった。2つのハーフからなるステンレス鋼のチャンバをデバイスの中央に配置した。フィルムを2つのハーフの間に挟んだ。メタンガスをフィルムに向け、次に、デバイスの底部から流した。圧縮空気を触媒床を通して流して、空気中の炭化水素を除去し(例えば、ゼロ空気)、次に、キャリアガスとしてチャンバの上部に流した。水素炎イオン化(FID)検出器をデバイスの上部に配置し、フィルムを透過したメタンガスの量を測定するために使用した。
【0070】
次に、メタン濃度をFID電圧及び検量曲線によって決定した。メタンフラックスを以下の式(3)で計算した。
【数3】
(上式中、C=FIDで測定されたメタンのppm単位での濃度であり、
R=mL/分単位でのゼロ空気の流量であり、そして
A=cm
2単位でのチャンバ面積である。)
【0071】
面積ひずみ
面積ひずみを、フィルムを円形のクーポンサンプルにダイカットすることによって測定した。各サンプルの重量を測定した。次に、面積あたりの質量(MPA)を以下の式(4)で計算した。
【数4】
【0072】
次に、構造化高密度フィルムのMPAと非構造化高密度フィルムのMPAとの間の比を決定することによって、面積ひずみを計算した。面積ひずみを以下の式(5)で計算した。
【数5】
【0073】
ボール破裂試験
構造化高密度フィルムの二軸機械的特性を、機械的特性テスタ又はボール破裂テスタで試験した。フィルムを筒形のカップに取り付けた。次に、INSTRON(登録商標)モデル5567(Illinois Tool Works Inc., Glenview, IL)に接続されたステンレス鋼ロッドによってステンレス鋼ボールをフィルム上に押し付けて、フィルムの二軸特性を決定した。
【0074】
例1:高密度フルオロポリマーフィルムの調製
PTFE樹脂を、0.184g/gの濃度でイソパラフィン系炭化水素潤滑剤(ISOPAR(登録商標)K、Exxon, Houston, TX)と混合した。次に、混合物をブレンドし、圧縮して筒形ペレットにした。ペレットを49℃の温度で約24時間熱調整した。次に、ペレットを182:1の縮小比で矩形ダイを通して押出し、0.635mmの厚さを有するテープを形成した。次に、残っている潤滑剤が除去されるようにテープを乾燥させた。
【0075】
乾燥後に、テープは、330℃の温度及び約3.4:1の延伸比で長手方向(例えば、機械方向)に延伸した。次に、テープを300℃の温度及び約9.4:1の延伸比で横断方向に延伸し、未焼結のePTFE膜を形成した。
【0076】
次に、Fordらの米国特許第9,650,479B2号明細書に記載されている方法に従って、ローラ又は他の適切な圧縮装置の間にて、細孔を実質的に排除する温度及び圧力で圧縮することによって、膜を高密度化した。
【0077】
圧縮後に、膜をパンタグラフ機に装填した。次に、材料を、PTFEの結晶融解温度を超える温度(例えば、約370℃の温度)に約10分間加熱した。次に、加熱された膜を、長手方向に約1.5:1、横断方向に約3.3:1の比率が達成されるまで、毎秒約10%のひずみ速度で延伸した。マトリックス引張強度(MTS)を、機械方向及び横断方向の両方で測定した。結果を表1に提供する。
【表1】
【0078】
例2:構造化フルオロポリマーフィルムの調製
例1の高密度フルオロポリマーフィルムを、本明細書に記載の構造化プロセスに従って、延伸された弾性基材に接着した。チャンバを180℃の温度に加熱した。約5分後に、延伸された弾性基材は、約5mm/秒の速度で弛緩し、それにより、それを事前設定された、より延伸されていない状態に戻した。様々なひずみ設定点(エラストマー基材の最大伸びの%)を、x軸(すなわち、機械方向)とy軸(すなわち、横断方向)の両方で試験した。延伸された弾性基材の弛緩は、接着されたフィルムにしわを生じさせ、構造化フルオロポリマーフィルムを形成した。面積あたりの質量(MPA)及び面積ひずみを前述のように計算した。結果を表2に示す。
【表2】
【0079】
例3:高密度フルオロポリマーフィルムの調製
例1に記載のように、PTFE樹脂混合物を調製し、筒形ペレットに成形した。次に、ペレットを、182:1の縮小率で矩形ダイを通して押出して、0.635mmの厚さを有するテープを形成した。次に、残っている潤滑剤が除去されるようにテープを乾燥させた。
【0080】
乾燥後に、テープを、330℃の温度及び約3.4:1の延伸比で加熱されたドラムの間で長手方向に延伸した。次に、テープを300℃の温度及び9.4:1の延伸比で横断方向に延伸し、未焼結のePTFE膜を形成した。
【0081】
次に、例1に記載されるように、膜を高密度化した。圧縮後に、膜をパンタグラフ機に装填した。次に、材料を約370℃の温度に約10分間加熱した。次に、加熱された膜を、長手方向に約1.8:1、横断方向に約3.9:1の比率が達成されるまで、毎秒約10%のひずみ速度で延伸した。マトリックス引張強度(MTS)を、機械方向及び横断方向の両方で測定した。結果を表3に提供する。
【表3】
【0082】
例4:構造化フルオロポリマーフィルムの調製
例3の高密度フルオロポリマーフィルムを、本明細書に記載の構造化プロセスに従って、延伸された弾性基材に接着した。チャンバを180℃の温度に加熱した。約5分後に、延伸された弾性基材を、約5mm/秒の速度で弛緩し、それにより、それを事前設定された、より延伸されていない状態に戻した。様々なひずみ設定点(エラストマー基材の最大伸びの%)を、x軸(すなわち、機械方向)とy軸(すなわち、横断方向)の両方で試験した。延伸された弾性基材の弛緩は、接着されたフィルムにしわを生じさせ、構造化フルオロポリマーフィルムを形成した。面積あたりの質量(MPA)及び面積ひずみを前述のように計算した。結果を表4に示す。
【表4】
【0083】
構造の最大高さも測定し、延伸された弾性基材のひずみ及び/又は伸びの量と比較した。例4の結果は、一般に、基材のひずみ及び/又は伸びが少ないほど、構造が短くなることを示している。例えば、面積ひずみが26.5%であるときに、構造物の最大高さは約250μm~約450μmの範囲であった。しかしながら、面積ひずみが117.5%であるときに、構造の最大高さは約350μm~約900μmの範囲であった。
【0084】
例5:高密度フルオロポリマーフィルムの調製
例1に記載のように、PTFE樹脂混合物を調製し、筒形ペレットに成形した。次に、ペレットを、182:1の縮小率で矩形ダイを通して押出して、0.635mmの厚さを有するテープを形成した。次に、残っている潤滑剤が除去されるようにテープを乾燥させた。
【0085】
乾燥後に、テープを、320℃の温度及び約6.4:1の延伸比で、加熱されたドラムの間で長手方向に延伸した。次に、テープを330℃の温度及び6.1:1の延伸比で横断方向に延伸し、未焼結のePTFE膜を形成した。
【0086】
次に、例1に記載されるように、膜を高密度化した。圧縮後に、膜をパンタグラフ機に装填した。次に、材料を約370℃の温度に約10分間加熱した。次に、加熱された膜を、長手方向に約1.5:1、横断方向に約3.8:1の比率が達成されるまで、毎秒約10%のひずみ速度で延伸した。マトリックス引張強度(MTS)を、機械方向及び横断方向の両方で測定した。結果を表5に提供する。
【表5】
【0087】
例6:構造化フルオロポリマーフィルムの調製
構造化フルオロポリマーフィルムを、例2に記載のプロセスに従って、例5の高密度フルオロポリマーフィルムから形成した。結果を表6に示す。構造の最大高さも測定し、延伸された弾性基材におけるひずみ及び/又は伸びの量と比較し、
図4に示す。
図5は、構造化前の、例5で上述したような、非構造化高密度フルオロポリマーフィルムの光学顕微鏡写真画像を示す。
図6は、二軸ひずみが約251.8%である構造化フルオロポリマーフィルムの光学顕微鏡写真画像を示している。
図7は、
図6の構造化フルオロポリマーフィルムの顕微鏡写真画像を示している。
【表6】
【0088】
例7:高密度フルオロポリマーフィルムの調製
例1に記載のように、PTFE樹脂混合物を調製し、筒形ペレットに成形した。次に、ペレットを、182:1の縮小率で矩形ダイを通して押出して、0.635mmの厚さを有するテープを形成した。次に、残っている潤滑剤が除去されるようにテープを乾燥させた。
【0089】
乾燥後に、テープを、320℃の温度及び約3.3:1の延伸比で加熱されたドラムの間で長手方向に延伸した。次に、テープを320℃の温度及び9.3:1の延伸比で横断方向に延伸し、未焼結のePTFE膜を形成した。
【0090】
次に、例1に記載されるように、膜を高密度化した。圧縮後に、膜をパンタグラフ機に装填した。次に、材料を約370℃の温度に約10分間加熱した。次に、加熱された膜を、横断方向に約4.7:1の比率が達成されるまで、毎秒約8%のひずみ速度で延伸した。マトリックス引張強度(MTS)を、機械方向及び横断方向の両方で測定した。結果を表7に提供する。
【表7】
【0091】
例8:構造化フルオロポリマーフィルムの調製
構造化フルオロポリマーフィルムを、例2に記載のプロセスに従って、例7の高密度フルオロポリマーフィルムから形成した。結果を表8に示す。
【表8】
【0092】
例9:高密度フルオロポリマーフィルムの調製
PTFE樹脂を、0.201g/gの濃度でイソパラフィン系炭化水素潤滑剤(ISOPAR(登録商標)K、Exxon, Houston, TX)と混合した。次に、混合物をブレンドし、圧縮して筒形のペレットにした。ペレットを49℃の温度で約24時間熱調整した。次に、ペレットを182:1の縮小率で矩形ダイを通して押出し、0.635mmの厚さを有するテープを形成した。次に、残っている潤滑剤が除去されるようにテープを乾燥させた。
【0093】
乾燥後に、テープを、300℃の温度及び約11.5:1の延伸比で長手方向(例えば、機械方向)に延伸した。次に、テープを300℃の温度及び約4:1の延伸比で横断方向に延伸し、未焼結のePTFE膜を形成した。
【0094】
次に、例1に記載されるように、膜を高密度化した。圧縮後に、膜をパンタグラフ機に装填した。次に、材料を約370℃の温度に約10分間加熱した。次に、加熱された膜を、横断方向に約2.6:1の比率が達成されるまで、毎秒約3%のひずみ速度で延伸した。マトリックス引張強度(MTS)を、機械方向及び横断方向の両方で測定した。結果を表9に提供する。
【表9】
【0095】
例10:構造化フルオロポリマーフィルムの調製
一軸構造フルオロポリマーフィルム及び二軸構造フルオロポリマーフィルムの両方を、例2に記載のプロセスに従って、例9の高密度フルオロポリマーフィルムから形成した。結果を表10に示す。
【表10】
【0096】
例11:高密度化ラミネートの調製
PTFE樹脂を、0.184g/gの濃度でイソパラフィン系炭化水素潤滑剤(ISOPAR(登録商標)K、Exxon, Houston, TX)と混合した。次に、混合物をブレンドし、圧縮して筒形のペレットにした。ペレットを49℃の温度で約18時間熱調整した。次に、ペレットを矩形ダイを通して78:1の縮小率で押出し、0.559mmの厚さを有するテープを形成した。次に、テープを2つのロール間で50℃の温度及び約4.57m/分の速度でカレンダ加工して、0.305mmの厚さにした。次に、カレンダ加工したテープを乾燥させた。
【0097】
乾燥後に、テープを300℃の温度及び約3:1の延伸比で加熱されたドラムの間で長手方向(例えば、機械方向)に延伸した。テープを300℃の温度で0.076mmの厚さのFEPフィルム(DowDuPont, Wilmington, DE)と組み合わせた。次に、テープ及びフィルムを約1.83m/分の速度で1.8:1の延伸比で延伸して、ePTFE/FEPラミネートを形成した。
【0098】
次に、ラミネートを、300℃の温度及び毎秒約101%のひずみ速度で約7:1の延伸比で横断方向に延伸した。
【0099】
次に、例1に記載されるように、ラミネートを高密度化した。圧縮後に、ラミネートをパンタグラフ機に装填した。次に、材料を約370℃の温度に約10分間加熱した。次に、加熱された膜を、横断方向に約4.5:1の比率が達成されるまで、毎秒約7.5%のひずみ速度で延伸した。マトリックス引張強度(MTS)を機械方向及び横断方向の両方で測定した。結果を表11に提供する。
【表11】
【0100】
例12:構造化ラミネートの調製
構造化ラミネートを、例2に記載されたプロセスに従って、例11の高密度ラミネートから形成した。結果を表12に示す。
【表12】
【0101】
例13:高密度フルオロポリマーフィルムの調製
ペルフルオロ(エチルビニルエーテル)-テトラフルオロエチレン(PEVE-TFE)コポリマー樹脂を、Fordらの米国特許第9,644,054号明細書に概説されているプロセスに従って調製した。
【0102】
PEVE-TFEコポリマー樹脂をPTFEと50:50の比率でブレンドした。次に、混合物を、0.217g/gの濃度でイソパラフィン系潤滑剤(ISOPAR(登録商標)K)と組み合わせた。混合物を圧縮して筒形のペレットにした。ペレットを49℃の温度で約18時間熱調整した。次に、ペレットを矩形ダイを通して77:1の縮小率で押出し、0.610mmの厚さを有するテープを形成した。次に、テープを、0.229mmの厚さが達成されるまで、3.05m/分の速度で2つのロールの間でカレンダ加工した。次に、カレンダ加工したテープを乾燥させた。
【0103】
乾燥後に、テープをパンタグラフ機において、約370℃の温度及び毎秒約100%のひずみ速度で、長手方向に約3.9:1及び横断方向に10:1の比率になるまで延伸した。マトリックス引張強度(MTS)を長手方向及び横断方向の両方で測定した。結果を表13に提供する。
【表13】
【0104】
例14:構造化フルオロポリマーフィルムの調製
構造化フルオロポリマーフィルムを、例2に記載されたプロセスに従って、例13の高密度フルオロポリマーフィルムから形成した。結果を表14に提供する。
【表14】
【0105】
例15:構造化フルオロポリマーフィルムの変位誘導期間(DIP)
例1~6の構造化フルオロポリマーフィルムを、本明細書に記載のボール破裂試験に供し、変位誘導期間(DIP)を決定した。結果を表15に示す。
【表15】
【0106】
示されるように、サンプル内で、構造化フルオロポリマーフィルムの面積ひずみが増加するにつれて、変位誘導期間も増加した。したがって、所与のフルオロポリマーフィルムについて、構造化フルオロポリマーフィルムの単位面積あたりの質量が大きいほど、構造化フルオロポリマーフィルムの変位誘導期間が長くなり、一般に、バリア特性が低下する前にフィルムが耐えることができるひずみが大きくなる。
【0107】
図8は、様々な量の面積ひずみでのサンプル3の変位誘導期間のグラフを示している。グラフは、より大きな面積ひずみを有する構造化フルオロポリマーフィルムが、非構造化フルオロポリマーフィルム及びより少ない面積ひずみを有する構造化フルオロポリマーフィルムと比較して、それぞれのボール破裂荷重でより大きなボール破裂変位(例えば、より大きな変位誘導期間)を示すことを示す。
【0108】
本出願の発明は、一般的に及び特定の実施形態に関しての両方で上記に記載されてきた。本開示の範囲から逸脱することなく、実施形態において様々な変更及び変形を行うことができることは当業者に明らかであろう。したがって、実施形態は、それらが添付の特許請求の範囲及びそれらの均等形態の範囲内に入るかぎり、本発明の変更及び変形を網羅することが意図されている。