(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】制御装置、プログラム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
H04W 84/20 20090101AFI20221031BHJP
H04W 84/22 20090101ALI20221031BHJP
H04W 84/06 20090101ALI20221031BHJP
H04W 88/06 20090101ALI20221031BHJP
【FI】
H04W84/20
H04W84/22
H04W84/06
H04W88/06
(21)【出願番号】P 2021519258
(86)(22)【出願日】2020-01-24
(86)【国際出願番号】 JP2020002460
(87)【国際公開番号】W WO2020230371
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-08-06
(31)【優先権主張番号】P 2019089813
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新畑 香緒莉
(72)【発明者】
【氏名】鷹見 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】石井 孝治
(72)【発明者】
【氏名】河上 寛
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 雄一朗
(72)【発明者】
【氏名】北村 康裕
【審査官】▲高▼木 裕子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0048925(US,A1)
【文献】特開2019-051839(JP,A)
【文献】特開2018-195869(JP,A)
【文献】特開2007-110359(JP,A)
【文献】特開2009-207050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信網を介して無線通信を行う第1無線通信部と、前記通信網を介さずに無線通信を行う第2無線通信部とを各々備えた複数の飛行体が飛行する予定の位置及び時期を含む飛行予定情報を取得する予定取得部と、
前記通信網を介した無線通信の通信品質に関する、位置及び時期ごとの通信品質情報を取得する通信品質取得部と、
前記複数の飛行体の飛行予定情報における通信品質情報に基づいて、前記複数の飛行体の各々の動作モードを、第1の動作モードと第2の動作モードのいずれかに設定する設定部と
を備え、
前記飛行体の前記第1の動作モードは、自飛行体において生成されたデータと、他の飛行体から前記第2無線通信部によって受信したデータとを、当該データを処理する処理装置に対して前記第1無線通信部によって送信する動作モードであり、
前記飛行体の前記第2の動作モードは、自飛行体において生成されたデータを前記第2無線通信部によって他の飛行体に送信する動作モードである
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記設定部は、
前記第1の動作モードで動作している飛行体について、当該飛行体の飛行が前記飛行予定情報から乖離する可能性がある条件を満たすと判断した場合に、当該飛行体の動作モードの設定を変更するか否かを判断する
ことを特徴とする請求項1記載の制御装置。
【請求項3】
前記条件は、前記飛行体において不具合乃至故障が発生することである
ことを特徴とする請求項2記載の制御装置。
【請求項4】
前記条件は、前記飛行体の飛行空域において、飛行に対する障害物が発生することである
ことを特徴とする請求項2記載の制御装置。
【請求項5】
前記条件は、前記飛行体の飛行空域において、当該飛行体の前記第1無線通信部が行う通信に対する障害が発生することである
ことを特徴とする請求項2記載の制御装置。
【請求項6】
前記条件は、前記飛行体に対する制御が自動制御から手動制御に切り替えられたことである
ことを特徴とする請求項2記載の制御装置。
【請求項7】
前記設定部は、
複数の前記飛行体の飛行予定情報における前記通信品質情報に基づいて、前記第1の動作モードで動作している第1の飛行体を前記第2の動作モードに設定する時期よりも前に、前記第2の動作モードで動作している第2の飛行体の少なくともいずれか1の飛行体を、他の飛行体から前記第2無線通信部によってデータを受信する第3の動作モードに設定し、
その後に、前記第1の動作モードで動作している前記第1の飛行体を第2の動作モードに設定するとともに、前記第3の動作モードで動作している前記第2の飛行体を第1の動作モードに設定する
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記設定部は、
複数の前記飛行体の飛行予定情報における前記通信品質情報に基づいて、前記第1の動作モードで動作している第1の飛行体を前記第2の動作モードに設定する時期よりも前に、各飛行体を、自飛行体において生成されたデータを一時的に記憶する第4の動作モードに設定し、
その後に、前記第1の動作モードで動作している前記第1の飛行体を第2の動作モードに設定するとともに、前記第4の動作モードで動作している1以上の第2の飛行体のいずれかを第1の動作モードに設定し、さらに、前記第4の動作モードで動作している他の前記第2の飛行体を第2の動作モードに設定する
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項9】
コンピュータを、
通信網を介して無線通信を行う第1無線通信部と、前記通信網を介さずに無線通信を行う第2無線通信部とを各々備えた複数の飛行体が飛行する予定の位置及び時期を含む飛行予定情報を取得する予定取得部と、
前記通信網を介した無線通信の通信品質に関する、位置及び時期ごとの通信品質情報を取得する通信品質取得部と、
前記複数の飛行体の飛行予定情報における通信品質情報に基づいて、前記複数の飛行体の各々の動作モードを、第1の動作モードと第2の動作モードのいずれかに設定する設定部と
して機能させ、
前記飛行体の前記第1の動作モードは、自飛行体において生成されたデータと、他の飛行体から前記第2無線通信部によって受信したデータとを、当該データを処理する処理装置に対して前記第1無線通信部によって送 信する動作モードであり、
前記飛行体の前記第2の動作モードは、自飛行体において生成されたデータを前記第2無線通信部によって他の飛行体に送信する動作モードであるプログラム。
【請求項10】
コンピュータが、通信網を介して無線通信を行う第1無線通信部と、前記通信網を介さずに無線通信を行う第2無線通信部とを各々備えた複数の飛行体が飛行する予定の位置及び時期を含む飛行予定情報を取得するステップと、
コンピュータが、前記通信網を介した無線通信の通信品質に関する、位置及び時期ごとの通信品質情報を取得するステップと、
コンピュータが、前記複数の飛行体の飛行予定情報における通信品質情報に基づいて、前記複数の飛行体の各々の動作モードを、第1の動作モードと第2の動作モードのいずれかに設定するステップと
を有し、
前記飛行体の前記第1の動作モードは、自飛行体において生成されたデータと、他の飛行体から前記第2無線通信部によって受信したデータとを、当該データを処理する処理装置に対して前記第1無線通信部によって送信する動作モードであり、
前記飛行体の前記第2の動作モードは、自飛行体において生成されたデータを前記第2無線通信部によって他の飛行体に送信する動作モードである
ことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体における通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ドローンと呼ばれる無人飛行体が普及しつつある。この飛行体が複数で集団飛行を行うような場合、複数の飛行体のいずれかが親機となって他の飛行体からのデータを集約して地上に送信するというケースが想定される。この種の技術として、例えば特許文献1には、受信品質や電力残量等の情報に基づいて複数の端末装置から親機が選択され、親機となった端末装置が他の端末装置から収集したデータを集約して中継局へ送信する仕組みが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された仕組みにおいて、端末装置は、空中を飛行する飛行体に搭載されたものではなく、地上において利用されるものに過ぎない。
【0005】
そこで、本発明は、複数の飛行体のうちいずれかの飛行体が他の飛行体からのデータを集約して送信する場合に、各飛行体の動作モードを適切に制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、通信網を介して無線通信を行う第1無線通信部と、前記通信網を介さずに無線通信を行う第2無線通信部とを各々備えた複数の飛行体が飛行する予定の位置及び時期を含む飛行予定情報を取得する予定取得部と、前記通信網を介した無線通信の通信品質に関する、位置及び時期ごとの通信品質情報を取得する通信品質取得部と、前記複数の飛行体の飛行予定情報における通信品質情報に基づいて、前記複数の飛行体の各々の動作モードを、第1の動作モードと第2の動作モードのいずれかに設定する設定部とを備え、前記飛行体の前記第1の動作モードは、自飛行体において生成されたデータと、他の飛行体から前記第2無線通信部によって受信したデータとを、当該データを処理する処理装置に対して前記第1無線通信部によって送信する動作モードであり、前記飛行体の前記第2の動作モードは、自飛行体において生成されたデータを前 記第2無線通信部によって他の飛行体に送信する動作モードであることを特徴とする制御装置を提供する。
【0007】
前記設定部は、前記第1の動作モードで動作している飛行体について、当該飛行体の飛行が前記飛行予定情報から乖離する可能性がある条件を満たすと判断した場合に、当該飛行体の動作モードの設定を変更するか否かを判断するようにしてもよい。
【0008】
前記条件は、前記飛行体において不具合乃至故障が発生することであってもよい。
【0009】
前記条件は、前記飛行体の飛行空域において、飛行に対する障害物が発生することであってもよい。
【0010】
前記条件は、前記飛行体の飛行空域において、当該飛行体の前記第1無線通信部が行う通信に対する障害が発生することであってもよい。
【0011】
前記条件は、前記飛行体に対する制御が自動制御から手動制御に切り替えられたことであってもよい。
【0012】
前記設定部は、複数の前記飛行体の飛行予定情報における前記通信品質情報に基づいて、前記第1の動作モードで動作している第1の飛行体を前記第2の動作モードに設定する時期よりも前に、前記第2の動作モードで動作している第2の飛行体の少なくともいずれか1の飛行体を、他の飛行体から前記第2無線通信部によってデータを受信する第3の動作モードに設定し、その後に、前記第1の動作モードで動作している前記第1の飛行体を第2の動作モードに設定するとともに、前記第3の動作モードで動作している前記第2の飛行体を第1の動作モードに設定するようにしてもよい。
【0013】
前記設定部は、複数の前記飛行体の飛行予定情報における前記通信品質情報に基づいて、前記第1の動作モードで動作している第1の飛行体を前記第2の動作モードに設定する時期よりも前に、各飛行体を、自飛行体において生成されたデータを一時的に記憶する第4の動作モードに設定し、その後に、前記第1の動作モードで動作している前記第1の飛行体を第2の動作モードに設定するとともに、前記第4の動作モードで動作している1以上の第2の飛行体のいずれかを第1の動作モードに設定し、さらに、前記第4の動作モードで動作している他の前記第2の飛行体を第2の動作モードに設定するようにしてもよい。
【0014】
また、本発明は、コンピュータを、通信網を介して無線通信を行う第1無線通信部と、前記通信網を介さずに無線通信を行う第2無線通信部とを各々備えた複数の飛行体が飛行する予定の位置及び時期を含む飛行予定情報を取得する予定取得部と、前記通信網を介した無線通信の通信品質に関する、位置及び時期ごとの通信品質情報を取得する通信品質取得部と、前記複数の飛行体の飛行予定情報における通信品質情報に基づいて、前記複数の飛行体の各々の動作モードを、第1の動作モードと第2の動作モードのいずれかに設定する設定部として機能させ、前記飛行体の前記第1の動作モードは、自飛行体において生成されたデータと、他の飛行体から前記第2無線通信部によって受信したデータとを、当該データを処理する処理装置に対して前記第1無線通信部によって送 信する動作モードであり、前記飛行体の前記第2の動作モードは、自飛行体において生成されたデータを前記第2無線通信部によって他の飛行体に送信する動作モードであるプログラムを提供する。
【0015】
また、本発明は、コンピュータが、通信網を介して無線通信を行う第1無線通信部と、前記通信網を介さずに無線通信を行う第2無線通信部とを各々備えた複数の飛行体が飛行する予定の位置及び時期を含む飛行予定情報を取得するステップと、コンピュータが、前記通信網を介した無線通信の通信品質に関する、位置及び時期ごとの通信品質情報を取得するステップと、コンピュータが、前記複数の飛行体の飛行予定情報における通信品質情報に基づいて、前記複数の飛行体の各々の動作モードを、第1の動作モードと第2の動作モードのいずれかに設定するステップとを有し、前記飛行体の前記第1の動作モードは、自飛行体において生成されたデータと、他の飛行体から前記第2無線通信部によって受信したデータとを、当該データを処理する処理装置に対して前記第1無線通信部によって送信する動作モードであり、前記飛行体の前記第2の動作モードは、自飛行体において生成されたデータを前記第2無線通信部によって他の飛行体に送信する動作モードであることを特徴とする制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の飛行体のうちいずれかの飛行体が他の飛行体からのデータを集約して送信する場合に、各飛行体の動作モードを適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】飛行制御システム1の構成の一例を示す図である。
【
図2】飛行体10のハードウェア構成を示す図である。
【
図3】サーバ装置20のハードウェア構成を示す図である。
【
図4】飛行制御システム1の機能構成の一例を示す図である。
【
図5】サーバ装置20の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[構成]
図1は、飛行制御システム1の構成の一例を示す図である。飛行制御システム1は、例えばドローンと呼ばれる無人の飛行体10a,10b,10cと、サーバ装置20と、これらを通信可能に接続する通信網2とを備える。サーバ装置20は、飛行体10a,10b,10cの動作モードを制御する制御装置として機能するとともに、飛行体10a,10b,10cから取得したデータを処理する処理装置として機能する。通信網2は、例えばLTE(Long Term Evolution)等の無線通信網である。飛行体10は複数機存在している。
図1では、3機の飛行体10a,10b,10cを図示しているが、これ未満での数であってもよいし、これ以上の数であってもよい。飛行体10は、図示せぬ操縦者による操縦端末の操作に応じて飛行(いわゆる手動操縦飛行)する飛行体であってもよいし、図示せぬ飛行管理装置による管理のもとで自律的に飛行(いわゆる自動操縦飛行)する飛行体であってもよいし、これらの手動操縦飛行及び自動操縦飛行を併用する飛行体であってもよい。なお、以下の説明において、飛行体10というときには、複数の飛行体のそれぞれのことを指す。
【0019】
これらの飛行体10a,10b,10cは、互いに閾値以内の距離を保ったまま、集団で飛行する。このとき、複数の飛行体10のうちいずれかの飛行体10が他の飛行体10からのデータを集約してサーバ装置20に送信する。サーバ装置20は、飛行体10から受け取ったデータを処理する。
【0020】
図2は、飛行体10のハードウェア構成を示す図である。飛行体10は、物理的には、プロセッサ1001、メモリ1002、ストレージ1003、第1無線通信装置1004、第2無線通信装置1005、入力装置1006、出力装置1007、飛行装置1008、測位装置1009及びこれらを接続するバス、さらには図示せぬ電池などを含むコンピュータ装置として構成されている。これらの各装置は図示せぬ電池から供給される電力によって動作する。なお、以下の説明では、「装置」という文言は、回路、デバイス、ユニットなどに読み替えることができる。飛行体10のハードウェア構成は、図に示した各装置を1つ又は複数含むように構成されてもよいし、一部の装置を含まずに構成されてもよい。
【0021】
飛行体10における各機能は、プロセッサ1001、メモリ1002などのハードウェア上に所定のソフトウェア(プログラム)を読み込ませることによって、プロセッサ1001が演算を行い、通信装置1004による通信を制御したり、メモリ1002及びストレージ1003におけるデータの読み出し及び書き込みの少なくとも一方を制御したりすることによって実現される。
【0022】
プロセッサ1001は、例えば、オペレーティングシステムを動作させてコンピュータ全体を制御する。プロセッサ1001は、周辺装置とのインターフェース、制御装置、演算装置、レジスタなどを含む中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)によって構成されてもよい。また、例えばベースバンド信号処理部や呼処理部などがプロセッサ1001によって実現されてもよい。
【0023】
プロセッサ1001は、プログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュール、データなどを、ストレージ1003及び通信装置1004の少なくとも一方からメモリ1002に読み出し、これらに従って各種の処理を実行する。プログラムとしては、後述する動作の少なくとも一部をコンピュータに実行させるプログラムが用いられる。飛行体10の機能ブロックは、メモリ1002に格納され、プロセッサ1001において動作する制御プログラムによって実現されてもよい。各種の処理は、1つのプロセッサ1001によって実行されてもよいが、2以上のプロセッサ1001により同時又は逐次に実行されてもよい。プロセッサ1001は、1以上のチップによって実装されてもよい。なお、プログラムは、電気通信回線を介して通信網2から飛行体10に送信されてもよい。
【0024】
メモリ1002は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、RAM(Random Access Memory)などの少なくとも1つによって構成されてもよい。メモリ1002は、レジスタ、キャッシュ、メインメモリ(主記憶装置)などと呼ばれてもよい。メモリ1002は、本実施形態に係る方法を実施するために実行可能なプログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールなどを保存することができる。
【0025】
ストレージ1003は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、CD-ROM(Compact Disc ROM)などの光ディスク、ハードディスクドライブ、フレキシブルディスク、光磁気ディスク(例えば、コンパクトディスク、デジタル多用途ディスク、Blu-ray(登録商標)ディスク)、スマートカード、フラッシュメモリ(例えば、カード、スティック、キードライブ)、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気ストリップなどの少なくとも1つによって構成されてもよい。ストレージ1003は、補助記憶装置と呼ばれてもよい。ストレージ1003は、例えば飛行体10の識別情報や飛行予定識別情報等の、飛行体10の属性に関する情報を記憶する。
【0026】
第1無線通信装置1004は、通信網2を介して遠隔地と通信を行うためのハードウェア(送受信デバイス)であり、例えばLTEに準拠したアンテナや通信モジュールなどを含む。第1無線通信装置1004は主として、飛行体10がサーバ装置20と通信を行うために利用される。
【0027】
第2無線通信装置1005は、通信網2を介さずに比較的近距離の無線通信を行うためのハードウェア(送受信デバイス)であり、例えば無線LAN(Local Area Network)やブルートゥース(登録商標)に準拠したアンテナや通信モジュールなどを含む。第2無線通信装置1005は主として、飛行体10が他の飛行体10と通信を行うために利用される。
【0028】
入力装置1006は、外部からの入力を受け付ける入力デバイス(例えば、キー、マイクロフォン、スイッチ、ボタン、センサ、カメラなど)である。例えば入力装置1006がカメラである場合には、入力装置1006は撮像した画像を示す撮像データを生成する。また、例えば入力装置1006がセンサである場合には、入力装置1006はセンシングした結果を示すセンシングデータを生成する。出力装置1007は、外部への出力を実施する出力デバイス(例えば、ディスプレイ、スピーカー、LEDランプなど)である。
【0029】
飛行装置1008は、飛行体10を空中で飛行させるための機構であり、例えばプロペラや、そのプロペラを駆動するためのモータ及び駆動機構を含む。さらに、飛行装置1008は、例えばモータの回転数を検知する回転数センサ、電流/電圧等の何らかの入力/出力に関する値を検出するセンサ(例えば電池の電力残量センサ)、ジャイロセンサ、加速度センサ、気圧(高度)センサ、磁気(方位)センサ、超音波センサ等のセンサ群を含む。これらセンサの検出結果により、飛行体10の飛行方向及び飛行速度が特定される。
【0030】
測位装置1009は、飛行体10の三次元の位置を測定する。測位装置1009は、例えばGPS(Global Positioning System)受信機であり、複数の衛星から受信したGPS信号に基づいて飛行体10の位置を測定する。この測位装置の測位結果により、飛行体10の位置が特定される。
【0031】
プロセッサ1001、メモリ1002などの各装置は、情報を通信するためのバスによって接続される。バスは、単一のバスを用いて構成されてもよいし、装置間ごとに異なるバスを用いて構成されてもよい。
【0032】
飛行体10は、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP:Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウェアを含んで構成されてもよく、当該ハードウェアにより、各機能ブロックの一部又は全てが実現されてもよい。例えば、プロセッサ1001は、これらのハードウェアの少なくとも1つを用いて実装されてもよい。
【0033】
図3は、サーバ装置20のハードウェア構成を示す図である。サーバ装置20は、物理的には、プロセッサ2001、メモリ2002、ストレージ2003、通信装置2004、入力装置2005、出力装置2006及びこれらを接続するバスなどを含むコンピュータ装置として構成されている。サーバ装置20における各機能は、プロセッサ2001、メモリ2002などのハードウェア上に所定のソフトウェア(プログラム)を読み込ませることによって、プロセッサ2001が演算を行い、通信装置2004による通信を制御したり、メモリ2002及びストレージ2003におけるデータの読み出し及び書き込みの少なくとも一方を制御したりすることによって実現される。プロセッサ2001、メモリ2002、ストレージ2003、入力装置2005、出力装置2006及びこれらを接続するバスは、飛行体10について説明したプロセッサ1001、メモリ1002、ストレージ1003、入力装置1006、出力装置1007及びこれらを接続するバスと、ハードウェアとしては同様であるため、その説明を省略する。通信装置1004は、通信網2を介して通信を行うためのハードウェア(送受信デバイス)であり、例えば通信網デバイス、通信網コントローラ、通信網カード、通信モジュールなどともいう。
【0034】
図4は、飛行制御システム1の機能構成の一例を示す図である。飛行体10bにおいて、第1無線通信部11bは、
図2の第1無線通信装置1004によって実現される機能であり、通信網2を介して無線通信を行う。第2無線通信部12bは、
図2の第2無線通信装置1005によって実現される機能であり、通信網2を介さずに無線通信を行う。飛行体10a,10cにおいても同様に、第1無線通信部11a,11cは通信網2を介して無線通信を行い、第2無線通信部12a,12cは、通信網2を介さずに無線通信を行う。なお、以下の説明において、第1無線通信部11又は第2無線通信部12というときには、全ての飛行体10において共通の構成としての第1無線通信部又は第2無線通信部を指す。
【0035】
図4の例では、飛行体10bが他の飛行体10a,10cからのデータを集約してサーバ装置20に送信する場合を例示している。ここで、各飛行体10の動作モードには、2つの動作モードがある。第1の動作モード(以下、親機モードという)は、自飛行体10において生成されたデータ及び他の飛行体10(子機モードで動作する飛行体10)から第2無線通信部12によって受信したデータをサーバ装置20に対して第1無線通信部11によって送信する動作モードである。第2の動作モード(以下、子機モードという)は、自飛行体10において生成されたデータを第2無線通信部12によって他の飛行体10(親機モードで動作する飛行体10)に送信する動作モードである。つまり、
図4では、飛行体10bが親機モードで動作し、飛行体10a,10cが子機モードで動作している例である。以降、親機モードで動作する飛行体を親機と言い、子機モードで動作する飛行体を子機と言う。1機の親機に対して複数機の子機が第2無線通信部12によって通信を行う。また、或る飛行体を親機モードから子機モードに設定すると同時に他の飛行体を子機モードから親機モードに設定することを、親機の切り替えという。このような親機モード/子機モードの設定は、通信網2を介した無線通信の通信品質を基準として行われる。つまり、集団で飛行する複数の飛行体10のうち、通信網2を介した通信を行うときの通信品質が最良又は閾値以上の飛行体10が、親機として設定される。
【0036】
サーバ装置20において、データ取得部21は、飛行体10bの第1無線通信部11bから送信されてくるデータを取得する。このデータは、例えば飛行体10bの識別情報や、飛行体10bの位置(緯度、経度及び高度を含む)、飛行方向、飛行速度といった飛行状態を示す情報や、飛行体10bの飛行装置1008の回転数及び電流/電圧等の何らかの入力/出力に関する値等の飛行体10の駆動状態に関する情報や、飛行体10bにおいて生成されたデータ(上述した撮像データやセンシングデータ)や、飛行体10bが他の飛行体10a、10cから取得した情報を含む。飛行体10bが他の飛行体10a、10cから取得した情報は、例えば飛行体10a,10cの識別情報や、飛行体10a,10cの飛行状態を示す情報や、飛行体10の駆動状態に関する情報や、飛行体10a,10cにおいて生成されたデータ(上述した撮像データやセンシングデータ)を含む。
【0037】
サーバ装置20において、予定取得部22は、各飛行体10の飛行予定情報を取得する。この飛行予定情報は、飛行体10の識別情報と、その飛行体10が飛行する予定の位置を連ねた飛行経路と、その各位置を飛行する予定となる飛行時期を含む。この飛行予定情報は、例えばサーバ装置20のストレージ2003や、サーバ装置20に接続された図示せぬ記憶装置において、各飛行予定を識別する飛行予定識別情報に対応付けて記憶されている。予定取得部22は、これらの記憶手段から任意の飛行体10の飛行予定情報を取得する。
【0038】
サーバ装置20において、通信品質取得部23は、通信網2を介した無線通信の通信品質に関する通信品質情報を取得する。この通信品質情報は、位置及び時期ごとの通信品質を表したマッピング情報であり、例えばサーバ装置20のストレージ2003や、サーバ装置20に接続された図示せぬ記憶装置に記憶されている。通信品質取得部23は、これらの記憶手段から任意の位置及び時期に対応する通信品質情報を取得する。これらの通信品質情報は、過去の各位置及び各時期において通信品質が実測された結果から統計的に求められたものであってもよいし、通信網2の各基地局の位置や過去の出力データからシミュレーション解析されて求められたものであってもよい。サーバ装置20は、この通信品質情報により、将来のどの位置及びどの時期においてどのような通信品質であるかを推定することができる。
【0039】
設定部24は、集団で飛行する複数の飛行体10の予定経路における通信品質情報に基づいて、その複数の飛行体10の各々の動作モードの設定を行う。具体的には、まず、設定部24は、集団で飛行する複数の飛行体10の飛行予定情報から、各飛行体10が飛行する予定となる位置及び時期を特定する。次に、設定部24は、特定した位置及び時期の通信品質を表す通信品質情報から、これら各位置及び各時期における各飛行体10の第1無線通信部11の通信品質を特定する。そして、設定部24は、これら複数の飛行体10のうち、特定した通信品質が最良又は閾値以上の飛行体10を親機とし、それ以外の飛行体10を子機とする、親機モード/子機モードの動作モード設定スケジュールを特定する。なお、通信品質が閾値以上となる飛行体10が複数ある場合には、電池の電力残量が最大の飛行体10を親機とする。この動作モード設定スケジュールには、各位置及び各時期における各々の飛行体10の動作モードを指定する情報が含まれている。これにより、実際に飛行が開始される前に、各飛行体10の将来の動作モードが、飛行予定に含まれる位置及び時期ごとに設定されることになる。各飛行体10は飛行が開始されると、この動作モード設定スケジュールに基づくサーバ装置20からの指示に従い、自らの動作モードを切り替える。
【0040】
なお、親機の切り替え時には、切替前の親機(第1の飛行体)と切替後の親機(第2の飛行体)との間で次のようなデータの授受が行われる。具体的には、第1の飛行体10から第2の飛行体10に親機が切り替えられる前に第1の飛行体10が他の飛行体10(第2の飛行体10を含む)からサーバ装置20に送信すべきデータを収集しておいたデータを、第1の飛行体10から第2の飛行体10に親機が切り替えられたのちに、第1の飛行体10が第2の飛行体10に送信する。そして、第2の飛行体10は、第1の飛行体から受信したデータをサーバ装置20に送信する。また、第2の飛行体10は、親機の切り替え後に他の飛行体10(第1の飛行体10を含む)から収集したデータをサーバ装置20に送信する。このようにすることで、親機の切り替え前後で、サーバ装置20に送信すべきデータが欠損することがなくなる。
【0041】
ただし、複数の飛行体10の飛行が開始されたのち、いずれかの飛行体10の飛行が飛行予定情報の内容から乖離する場合がある。例えば、飛行体10において何らかの不具合乃至故障が発生した場合、その飛行体10は飛行予定情報で定められた位置又は時期から乖離した位置又は時期に飛行するようなケースがある。動作モード設定スケジュールによって仮に親機モードで動作するよう決められていた飛行体10において、上記のような不具合乃至故障が発生した場合、その飛行体10は飛行予定情報で定められた位置及び時期とは異なる位置又は時期に飛行することになるため、親機モードで動作するのに適した通信品質で通信網2を介した無線通信を行うことができない可能性がある。
【0042】
そこで、設定部24は、親機モードで動作している飛行体10について、その飛行体10の飛行が飛行予定情報の内容から乖離する可能性がある条件を満たすと判断した場合には、動作モード設定スケジュールの内容に関わらず、その飛行体10の動作モードの設定を変更するか否かを都度判断する。具体的には、設定部24は、集団で飛行する飛行体10のうち、飛行予定情報の内容から乖離する可能性がある条件を満たす飛行体10を除外した、その他の飛行体10であって、飛行する予定となる位置及び時期における第1無線通信部11の通信品質が閾値以上となる飛行体10があれば、動作モードの設定を変更すると判断する。このとき、通信品質が閾値以上となる飛行体10が複数ある場合には、電池の電力残量が最大の飛行体10を親機とする。一方、設定部24は、集団で飛行する飛行体10のうち、飛行予定情報の内容から乖離する可能性がある条件を満たす飛行体10を除外した、その他の飛行体10であって、飛行する予定となる位置及び時期における第1無線通信部11の通信品質が閾値以上となる飛行体10がなければ、動作モードの設定を変更しないと判断する。
【0043】
そして、設定部24は、飛行体10の動作モードの設定を変更すると判断した場合には、過去に親機として動作していた飛行体10の動作モードを親機モードから子機モードに設定し、その飛行体10と第2無線通信部12により無線通信を行っている1以上の飛行体10から、将来における親機として選択した1の飛行体10の動作モードを、子機モードから親機モードに設定する。
【0044】
処理部25は、飛行体10において生成されてデータ取得部21が取得したデータ(撮像データやセンシングデータ)を用いて何らかの処理を行う。この処理には、データの蓄積、加工、編集、解析、出力等が含まれる。
【0045】
[動作]
次に、サーバ装置20の動作について説明する。なお、以下の説明において、サーバ装置20を処理の主体として記載する場合には、具体的にはプロセッサ2001、メモリ2002などのハードウェア上に所定のソフトウェア(プログラム)を読み込ませることで、プロセッサ2001が演算を行い、通信装置2004による通信や、メモリ2002及びストレージ2003におけるデータの読み出し及び/又は書き込みを制御することにより、処理が実行されることを意味する。飛行体10についても同様である。
【0046】
図5において、サーバ装置20の予定取得部22は、集団で飛行する各飛行体10の飛行予定情報を取得する(ステップS11)。
【0047】
次に、サーバ装置20の通信品質取得部23は、予定取得部22によって取得された飛行予定情報に含まれる位置及び時期に対応する通信品質情報を取得する(ステップS12)。
【0048】
次に、サーバ装置20の設定部24は、通信品質取得部23によって取得された通信品質情報に基づいて、集団で飛行する複数の飛行体10の各々の動作モードの事前設定を行う(ステップS13)。つまり、設定部24は、集団で飛行する複数の飛行体10の飛行予定情報から、各飛行体10が飛行する予定となる位置及び時期を特定し、特定した位置及び時期の通信品質を表す通信品質情報から、これら各位置及び各時期における各飛行体10の第1無線通信部11の通信品質を特定する。そして、設定部24は、これら複数の飛行体10のうち、特定した通信品質が最良又は閾値以上の飛行体10を親機とし、それ以外の飛行体10を子機とする動作モード設定スケジュールを特定する。
【0049】
次に、サーバ装置20の設定部24は、上記の複数の飛行体10の飛行が開始されたことを、その複数の飛行体10に含まれる親機からの飛行開始通知等により認識する(ステップS14)。これ以降、親機は、子機の識別情報や、子機の飛行状態を示す情報や、子機の駆動状態に関する情報や、子機において生成されたデータ(上述した撮像データやセンシングデータ)を、各子機から第2無線通信部12によって受信する。そして、親機は、自飛行体10の識別情報や、自飛行体10の飛行の状態を示す情報や、自飛行体10の駆動状態に関する情報や、自飛行体10において生成されたデータ(上述した撮像データやセンシングデータ)に加えて、子機から取得した情報を第1無線通信部11からサーバ装置20に所定のタイミングで送信する。
【0050】
複数の飛行体10の飛行が開始されると、設定部14は、親機モードで動作している飛行体10について、その飛行体10の飛行が飛行予定情報の内容から乖離する可能性がある条件(乖離条件)を満たすか否かを判断する(ステップS15)。具体的には、設定部24は、親機モードで動作している飛行体10から取得した、その飛行体10の駆動状態に関する情報に基づいて、不具合乃至故障が発生する可能性が閾値(第1の閾値)以上であると認められる場合には、その飛行体10の飛行が飛行予定情報の内容から乖離する可能性がある条件を満たすと判断する(ステップS15;YES)。飛行体10において不具合乃至故障が発生する前には、飛行体10の駆動状態に関する情報に異常値が含まれることが多いから、過去の不具合乃至故障の内容と飛行体10の駆動状態に関す情報に含まれる異常値との関係を機械学習等により解析しておき、飛行体10の駆動状態に関する情報と不具合乃至故障が発生する可能性との関係をアルゴリズムとしてサーバ装置20のストレージ2003に記憶しておく。設定部24はそのアルゴリズムに従って、飛行体10の飛行が飛行予定情報の内容から乖離する可能性を求め、閾値と比較すればよい。なお、上記乖離の可能性の程度が閾値未満である場合には(ステップS15;NO)、設定部24の処理はステップS18に進む。
【0051】
次に、設定部24は、親機モードで動作している飛行体10の飛行が飛行予定情報から乖離する可能性がある条件を満たすと判断した場合には(ステップS15;YES)、動作モードの設定を変更するか否かを判断する(ステップS16)。ここで、動作モードの設定を変更しないと判断した場合には(ステップS16;NO)、設定部24の処理はステップS18に進む。
【0052】
設定部24は、親機モードで動作している飛行体10の動作モードの設定を変更すると判断した場合には(ステップS16;YES)、動作モードの設定を変更する(ステップS17)。この動作モードの設定内容は、設定部24から各飛行体10に通知される。各飛行体10は、この通知に従い、自らの動作モードを切り替える。
【0053】
以上のような処理は、飛行が終了するまで(ステップS18;NO)、繰り返される。この間、サーバ装置20の処理部25は、飛行体10において生成されてデータ取得部21が取得したデータ(撮像データやセンシングデータ)を用いた処理を行う。
【0054】
以上説明した実施形態によれば、複数の飛行体10のうちいずれかの飛行体10が他の飛行体10からのデータを集約して送信する場合に、各飛行体10の動作モードを予め把握されている通信品質情報に応じて適切に制御することが可能となる。
【0055】
[変形例]
本発明は、上述した実施形態に限定されない。上述した実施形態を以下のように変形してもよい。また、以下の2つ以上の変形例を組み合わせて実施してもよい。
[変形例1]
動作モードの設定に関する制御を行う制御装置は、実施形態で例示したようにサーバ装置20に実装されていてもよいし、各飛行体10に実装されていてもよい。制御装置が各飛行体10に実装されている場合、親機モードで動作する飛行体10がその制御装置による制御を行う。また、本発明に係る制御装置の機能は、複数の装置によって分散して備えられていてもよい。
【0056】
[変形例2]
上記実施形態において、親機モードで動作している飛行体10の飛行が飛行予定情報から乖離する可能性がある条件は、不具合乃至故障が発生することであったが、この条件は実施形態の例示に限定されない。例えばこの条件を、飛行体10の飛行空域において、その飛行に対する障害物が発生することとしてもよい。この障害物とは、例えば風、降雨降雪、鳥、飛来物等の、飛行体10の飛行空域に存在して、飛行体10の飛行を阻害する何らかの物体又は事象である。なお、ここでいう空域とは、飛行体10の飛行対象となる全空間が予め決められた規則によって区分された各空間のことである。障害物が風の場合は、天気予報や気圧配置図を提供する装置或いは地上等に設置された風速計によってその風の風速や風向を検出し、その検出結果をサーバ装置20が取得すればよい。障害物が降雨降雪の場合は、天気予報や気圧配置図を提供する装置或いは地上等に設置された降雨降雪計によってその降雨降雪の状態を検出し、その検出結果をサーバ装置20が取得すればよい。障害物が鳥や飛来物の場合は、例えば空域を撮像して画像認識により鳥や飛来物の存在を認識する撮像装置によってその状態を検出し、その検出結果をサーバ装置20が取得すればよい。この撮像装置は飛行体10に実装されていてもよい。サーバ装置20の設定部24は、これらの検出結果に基づいて、飛行体10の飛行に対する障害のレベルを判断し、そのレベルが閾値以上の場合には、親機モードで動作している飛行体10の飛行が飛行予定情報から乖離する可能性がある条件(乖離条件)を満たすと判断する。
【0057】
[変形例3]
また、親機モードで動作している飛行体10の飛行が飛行予定情報から乖離する可能性がある条件を、飛行体10の飛行空域において、その飛行体10の第1無線通信部11が行う通信に対する障害が発生することとしてもよい。第1無線通信部11が行う通信に対する障害とは、例えば通信網2の基地局における出力制御によって発生する干渉波によるものがある。具体的には、飛行体10からサーバ装置20へのデータ送信において、アップリンクでの高速のデータ伝送が行われる。このため、飛行体10からのデータ送信時の出力が増大するが、このとき、飛行体10から送信される無線信号が、その飛行体10から見通せる他の基地局の無線セルへの干渉波となる。この干渉波は通信網2の通信品質や容量に影響を与える。そこで、3GPP標準規格によれば、この影響を軽減する目的で、通信網2は、この通信網2経由の無線通信を行う飛行体10のデータ送信を制限する場合がある。この制限により、飛行体10の第1無線通信部11の出力が抑制され、その結果、飛行体10からサーバ装置20へのデータ送信が所望のデータ速度、データ誤り率、信号遅延量等を実現できないことが起こり得る。これが飛行体10の第1無線通信部11が行う通信に対する障害となる。この制限は、通信網2から飛行体10単位で行われるため、サーバ装置20の設定部24は、この制限の対象となる飛行体10が親機モードで動作している場合には、その飛行体10の飛行が飛行予定情報から乖離する可能性がある条件(乖離条件)を満たすと判断する。
【0058】
[変形例4]
親機モードで動作している飛行体10の飛行が飛行予定情報から乖離する可能性がある条件を、飛行体10の制御が自動操縦飛行(自動制御)から手動操縦飛行(手動制御)へ切り替えられたこととしてもよい。手動操縦飛行の場合は、自動操縦飛行と比較して、飛行体10の飛行が飛行予定情報から乖離する可能性が高くなる場合があるから(特に手動操縦飛行に未熟な操縦者が操縦する場合)、サーバ装置20の設定部24は、自動操縦飛行から手動操縦飛行へ切り替えられた場合には、親機モードで動作している飛行体10の飛行が飛行予定情報から乖離する可能性がある条件(乖離条件)を満たすと判断する。
【0059】
[変形例5]
飛行体10が子機モードで動作する際には、親機モードで動作する飛行体10を識別してその飛行体10を宛先として第2無線通信部12からデータを送信してもよいし、親機モードで動作する飛行体10を識別せずに、第2無線通信部12からデータをブロードキャスト送信してもよい。
【0060】
[変形例6]
動作モード設定スケジュールにおいて、第1の飛行体10から第2の飛行体10に親機が切り替えられる前に、第2の飛行体10が他の飛行体10(第1の飛行体10を含む)から、サーバ装置20に送信すべきデータを収集しておいて、第1の飛行体10から第2の飛行体10に親機が切り替えられると、第2の飛行体10が他の飛行体10(第1の飛行体を含む)から収集しておいたデータをサーバ装置20に送信するようにしてもよい。この場合、第2の飛行体10は、他の飛行体10(第1の飛行体を含む)からデータを収集し始めるときから、第1の飛行体10から第2の飛行体10に親機が切り替えられるまでは、第3の動作モード(切替前データ受信モードという)で動作する。具体的には、設定部24は、動作モード設定スケジュールを参照しながら各飛行体10に指示することにより、親機モードで動作している第1の飛行体10を子機モードに設定する時期よりも或る期間だけ前の時点で、子機モードで動作している第2の飛行体10のうち少なくともいずれか1の飛行体10を、他の飛行体10から第2無線通信部12によってデータを受信する切替前データ受信モードに設定する。そして、設定部24は、親機モードで動作している第1の飛行体10を子機モードに設定する時期が到来すると、親機モードで動作している第1の飛行体10を子機モードに設定するとともに、切替前データ受信モードで動作している第2の飛行体10を親機モードに設定する。
【0061】
[変形例7]
動作モード設定スケジュールにおいて、第1の飛行体10から第2の飛行体10に親機が切り替えられる前に、全ての飛行体10群が、親機又はサーバ装置20に送信すべきデータを一時的に記憶しておいて、第1の飛行体10から第2の飛行体10に親機が切り替えられると、上記飛行体群が一時的に記憶しておいたデータを第2の飛行体10に送信するようにしてもよい。この場合、上記飛行体群は、親機又はサーバ装置20に送信すべきデータを一時的に記憶し始めるときから、第1の飛行体10から第2の飛行体10に親機が切り替えられるまでは、第4の動作モード(切替前データバッファモードという)で動作する。具体的には、設定部24は、動作モード設定スケジュールを参照しながら各飛行体10に指示することにより、親機モードで動作している第1の飛行体10を子機モードに設定する時期よりも前に、各飛行体10を、自飛行体10において生成されたデータを一時的に記憶する切替前データバッファモードに設定し、その後に、親機モードで動作している第1の飛行体10を子機モードに設定するとともに、切替前データバッファモードで動作している1以上の第2の飛行体10のいずれかを親機モードに設定し、さらに、切替前データバッファモードで動作している他の第2の飛行体10を子機モードに設定する。
【0062】
[その他の変形例]
なお、上記実施形態の説明に用いたブロック図は、機能単位のブロックを示している。これらの機能ブロック(構成部)は、ハードウェア及びソフトウェアの少なくとも一方の任意の組み合わせによって実現される。また、各機能ブロックの実現方法は特に限定されない。すなわち、各機能ブロックは、物理的又は論理的に結合した1つの装置を用いて実現されてもよいし、物理的又は論理的に分離した2つ以上の装置を直接的又は間接的に(例えば、有線、無線などを用いて)接続し、これら複数の装置を用いて実現されてもよい。機能ブロックは、上記1つの装置又は上記複数の装置にソフトウェアを組み合わせて実現されてもよい。
【0063】
機能には、判断、決定、判定、計算、算出、処理、導出、調査、探索、確認、受信、送信、出力、アクセス、解決、選択、選定、確立、比較、想定、期待、見做し、報知(broadcasting)、通知(notifying)、通信(communicating)、転送(forwarding)、構成(configuring)、再構成(reconfiguring)、割り当て(allocating、mapping)、割り振り(assigning)などがあるが、これらに限られない。たとえば、送信を機能させる機能ブロック(構成部)は、送信制御部(transmitting unit)や送信機(transmitter)と呼称される。いずれも、上述したとおり、実現方法は特に限定されない。
【0064】
例えば、本開示の一実施の形態におけるサーバ装置などは、本開示の処理を行うコンピュータとして機能してもよい。
【0065】
本開示において説明した各態様/実施形態は、LTE(Long Term Evolution)、LTE-A(LTE-Advanced)、SUPER 3G、IMT-Advanced、4G(4thgeneration mobile communication system)、5G(5th generation mobile communication system)、FRA(Future Radio Access)、NR(new Radio)、W-CDMA(登録商標)、GSM(登録商標)、CDMA2000、UMB(Ultra Mobile Broadband)、IEEE 802.11(Wi-Fi(登録商標))、IEEE 802.16(WiMAX(登録商標))、IEEE 802.20、UWB(Ultra-WideBand)、Bluetooth(登録商標)、その他の適切なシステムを利用するシステム及びこれらに基づいて拡張された次世代システムの少なくとも一つに適用されてもよい。また、複数のシステムが組み合わされて(例えば、LTE及びLTE-Aの少なくとも一方と5Gとの組み合わせ等)適用されてもよい。
【0066】
本開示において説明した各態様/実施形態の処理手順、シーケンス、フローチャートなどは、矛盾の無い限り、順序を入れ替えてもよい。例えば、本開示において説明した方法については、例示的な順序を用いて様々なステップの要素を提示しており、提示した特定の順序に限定されない。
【0067】
入出力された情報等は特定の場所(例えば、メモリ)に保存されてもよいし、管理テーブルを用いて管理してもよい。入出力される情報等は、上書き、更新、又は追記され得る。出力された情報等は削除されてもよい。入力された情報等は他の装置へ送信されてもよい。
【0068】
判定は、1ビットで表される値(0か1か)によって行われてもよいし、真偽値(Boolean:true又はfalse)によって行われてもよいし、数値の比較(例えば、所定の値との比較)によって行われてもよい。
【0069】
本開示において説明した実施形態/変形例は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよいし、実行に伴って切り替えて用いてもよい。また、所定の情報の通知(例えば、「Xであること」の通知)は、明示的に行うものに限られず、暗黙的(例えば、当該所定の情報の通知を行わない)ことによって行われてもよい。
以上、本開示について詳細に説明したが、当業者にとっては、本開示が本開示中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本開示は、請求の範囲の記載により定まる本開示の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本開示の記載は、例示説明を目的とするものであり、本開示に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【0070】
ソフトウェアは、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語と呼ばれるか、他の名称で呼ばれるかを問わず、命令、命令セット、コード、コードセグメント、プログラムコード、プログラム、サブプログラム、ソフトウェアモジュール、アプリケーション、ソフトウェアアプリケーション、ソフトウェアパッケージ、ルーチン、サブルーチン、オブジェクト、実行可能ファイル、実行スレッド、手順、機能などを意味するよう広く解釈されるべきである。また、ソフトウェア、命令、情報などは、伝送媒体を介して送受信されてもよい。例えば、ソフトウェアが、有線技術(同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、デジタル加入者回線(DSL:Digital Subscriber Line)など)及び無線技術(赤外線、マイクロ波など)の少なくとも一方を使用してウェブサイト、サーバ、又は他のリモートソースから送信される場合、これらの有線技術及び無線技術の少なくとも一方は、伝送媒体の定義内に含まれる。
【0071】
本開示において説明した情報、信号などは、様々な異なる技術のいずれかを使用して表されてもよい。例えば、上記の説明全体に渡って言及され得るデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、シンボル、チップなどは、電圧、電流、電磁波、磁界若しくは磁性粒子、光場若しくは光子、又はこれらの任意の組み合わせによって表されてもよい。
なお、本開示において説明した用語及び本開示の理解に必要な用語については、同一の又は類似する意味を有する用語と置き換えてもよい。
【0072】
また、本開示において説明した情報、パラメータなどは、絶対値を用いて表されてもよいし、所定の値からの相対値を用いて表されてもよいし、対応する別の情報を用いて表されてもよい。
【0073】
本開示において使用する「に基づいて」という記載は、別段に明記されていない限り、「のみに基づいて」を意味しない。言い換えれば、「に基づいて」という記載は、「のみに基づいて」と「に少なくとも基づいて」の両方を意味する。
【0074】
本開示において使用する「第1の」、「第2の」などの呼称を使用した要素へのいかなる参照も、それらの要素の量又は順序を全般的に限定しない。これらの呼称は、2つ以上の要素間を区別する便利な方法として本開示において使用され得る。したがって、第1及び第2の要素への参照は、2つの要素のみが採用され得ること、又は何らかの形で第1の要素が第2の要素に先行しなければならないことを意味しない。
【0075】
上記の各装置の構成における「部」を、「手段」、「回路」、「デバイス」等に置き換えてもよい。
【0076】
本開示において、「含む(include)」、「含んでいる(including)」及びそれらの変形が使用されている場合、これらの用語は、用語「備える(comprising)」と同様に、包括的であることが意図される。さらに、本開示において使用されている用語「又は(or)」は、排他的論理和ではないことが意図される。
【0077】
本開示において、例えば、英語でのa, an及びtheのように、翻訳により冠詞が追加された場合、本開示は、これらの冠詞の後に続く名詞が複数形であることを含んでもよい。
【0078】
本開示において、「AとBが異なる」という用語は、「AとBが互いに異なる」ことを意味してもよい。なお、当該用語は、「AとBがそれぞれCと異なる」ことを意味してもよい。「離れる」、「結合される」などの用語も、「異なる」と同様に解釈されてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1:飛行制御システム、10,10a,10b,10c:飛行体、11,11a,11b,11c:第1無線通信部、12,12a,12b,12c:第2無線通信部、1001:プロセッサ、1002:メモリ、1003:ストレージ、1004:第1無線通信装置、1005:第2無線通信装置、1006:入力装置、1007:出力装置、1008:飛行装置、1009:測位装置、20:サーバ装置、21:データ取得部、22:予定取得部、23:通信品質取得部、24:設定部、25:処理部、2001:プロセッサ、2002:メモリ、2003:ストレージ、2004:通信装置、2005:入力装置、2006:出力装置。