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特許7167336小型化されたデバイスからのペイロード放出の磁気機械的トリガー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】小型化されたデバイスからのペイロード放出の磁気機械的トリガー
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20221031BHJP
【FI】
A61M37/00 550
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021523360
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(86)【国際出願番号】 US2019059135
(87)【国際公開番号】W WO2020092750
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-06-04
(31)【優先権主張番号】62/754,998
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519392030
【氏名又は名称】バイオナット ラブス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュピゲルマッハー、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】キセリョフ、アレックス
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、スヒョン
(72)【発明者】
【氏名】サルキシャン、ホヴハンネス
【審査官】黒田 暁子
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-146031(JP,A)
【文献】特表2011-526288(JP,A)
【文献】特表2004-520088(JP,A)
【文献】特開2017-158603(JP,A)
【文献】特開2005-124708(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0011874(US,A1)
【文献】国際公開第2013/145855(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0226265(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0013304(US,A1)
【文献】国際公開第2006/035550(WO,A1)
【文献】特表2012-508071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織に移植して、前記組織または別の組織内に機能性材料を放出するためのデバイスであって、
前記デバイスの外面を貫通する開口部を有する空洞と、
機能性材料を含むマトリックスであって、前記空洞内に収容されている、マトリックスと、
前記空洞内に収容され、前記空洞内で移動可能な磁気構成要素であって、磁気トリガーが適用されると、前記磁気構成要素が、前記空洞の開口部を通して前記マトリックスを押し出し、前記組織内に放出されるように配置されている、磁気構成要素と、を備え、
前記空洞が、前記マトリックスが前記磁気構成要素によって押し出されると開放する、可撓性シールによって密封されるか、または前記可撓性シールで覆われている、デバイス。
【請求項2】
前記マトリックスが、ヒドロゲルマトリックスである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記マトリックスが、ポリカプロラクトン、(ポリ)エチレングリコール、グリシンベタイン、アルギネート、コラーゲン、またはコラーゲン複合材料マトリックスである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記磁気トリガーが、磁気勾配、空間内でその方向を変える均一な磁場、磁気信号の存在/不在、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
外部刺激に応答して前記デバイスの推進のために推進力を実現する推進構成要素をさらに含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記推進構成要素が応する前記外部刺激が、超音波(US)、磁気、電気、電磁気、光学(例えば、近赤外線(NIR))、電磁放射、またはそれらの組み合わせから選択され、前記推進構成要素への前記刺激の適用が、前記デバイスを推進する、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記外部刺激が、磁気であり、前記デバイスを推進方向に推進する、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記空洞の前記開口部が、前記推進方向と反対の方向または直交する方向にある、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
記推進構成要素および前記移動可能な磁気構成要素が、引力による干渉を防ぐために、互いに所定の距離に位置している、請求項7に記載のデバイス。
【請求項10】
記推進構成要素および前記移動可能な磁気構成要素が、磁気遮蔽材料によって、引力による干渉を防ぐために遮蔽されている、請求項7に記載のデバイス。
【請求項11】
前記磁気トリガーが取り外されると、前記可撓性シールが閉鎖する、請求項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記デバイスが、複数の空洞を有し、それぞれが機能性材料を含むマトリックスおよび磁気構成要素有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記複数の空洞および各磁気構成要素の構成が、各空洞からのペイロード放出を独立して制御できるように適合されている、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記磁気構成要素が、強磁性ステンレス鋼を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
前記機能性材料が水溶性である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
前記空洞の前記開口部を覆い、1つ以上の開口部を有する回転可能なキャップをさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項17】
前記キャップが、前記デバイスの残りの部分に対して一方向にのみ回転する、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
前記キャップが、前記磁気トリガーとは異なる第2の磁気トリガーに応答して回転する、請求項16に記載のデバイス。
【請求項19】
前記デバイスが、前記磁気トリガーが適用され、かつ前記キャップが前記第2の磁気トリガーによって回転され、それにより前記空洞の前記開口部が前記キャップ内の開口部と位置合わせしたときにのみ、前記マトリックスを放出するように構成されている、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
前記マトリックスが、複数の部分を有し、前記磁気トリガーの適用が、前記複数の部分のなかの1つの部分を前記空洞から排出する、請求項16に記載のデバイス。
【請求項21】
システムであって、
・請求項1~20のいずれか一項に記載の前記デバイスと、
・遠隔ユニットと、を備え、
前記遠隔ユニットが、外部刺激を前記デバイスに適用するように構成されている、システム。
【請求項22】
前記外部刺激が、
・前記磁気トリガー、
・前記デバイスを推進するための磁気/電気、電磁気、もしくは超音波刺激、または
・それらの組み合わせを含む、請求項21に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、小型化されたデバイスからのペイロード放出の磁気機械的トリガーに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、生体組織に埋め込まれた粒子またはデバイスから、薬物および診断補助具などの医療用ペイロードの放出を遠隔でトリガーするための諸方法が存在する。そのような方法の目的は、生体組織内のそのようなペイロードを格納するキャリア(例えば、粒子または移植可能なデバイス)からのペイロード放出(薬物または診断)のための外部トリガーを生成することである。遠隔でトリガーされるペイロードの放出は、次のような特定の臨床目標をサポートする上で望ましい。
・キャリア粒子が治療(腫瘍など)に適した位置にある場合にのみの医療用ペイロードの放出、
・機が熟した場合(例えば、臨床手順の途中)にのみの医療用ペイロードの放出、または
・所定の時間、所定の領域を治療するための、時間依存もしくはストップアンドゴー方式での医療用ペイロードの放出。
【0003】
既存のトリガー方法は、次のような様々な効果に依存している。
・空洞形成に基づく熱的/機械的効果(振動による局所的な加熱、および拡散速度の増加、および/または拡散を増加させる局所的な化学的特性の変化につながる)、
・ペイロードの放出につながるキャリアの機械的劣化/破裂、
・キャリアもしくはその統合部品の形状変更、または
・ペイロードが放出されている周囲の生体組織の特性への変更(ソノポレーションなど)、その結果、組織を介してペイロードの拡散/吸収が改善されること。
【0004】
これらの方法の一般的な欠点は、各方法が臨床的観点から望まれる典型的な技術的特徴のサブセットのみをサポートすることである。臨床ペイロード放出のための超音波ベースの遠隔トリガーシステムのこれらの特徴は、以下を含む。
・カスタマイズ可能な組織穿通深さ(10cm以上)。
・制御可能な期間にわたる段階的なペイロード放出、または(単一の放出パルスではなく)オン/オフの切り替え可能な放出機能性のサポート。例えば、ペイロードを包む均一なポリマーの分解に依存する方法は、設計上不可逆的であり、段階的な放出機能を有せず、
・単一の組織体積単位内の複数のペイロードキャリアの個別制御(例えば、同じ臓器内に位置する多くの粒子からの単一の粒子のみからペイロードを選択的に放出すること)。既存の方法はこの機能性を提供しない。
【0005】
したがって、現在の能力の上記の制限を克服する移植可能なデバイスおよびその方法を有することが望ましいであろうこの目標は、本発明の実施形態によって達成される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の様々な実施形態によれば、移植可能なペイロードキャリアデバイスが提供される。キャリアデバイスは、デバイスの外面を貫通する開口部を有する空洞を有する。キャリアデバイスは、磁気トリガー(磁石トリガー)に敏感な少なくとも1つの移動可能な磁気要素を含む。磁気トリガーが組織に適用されると、移動可能な磁気要素は、空洞開口部を通して医療用ペイロードまたは機能性材料の放出を提供する。
【0007】
特定の実施形態では、医療用ペイロードを放出するために使用される磁気トリガーは、磁気勾配、空間内でその方向を変える均一な磁場、磁気信号の存在/不在、またはそれらの組み合わせを介して制御される。本発明のいくつかの実施形態は、生体組織に埋め込まれたキャリアの遠隔トリガーおよびナビゲーションのために磁場に依存している。他の実施形態は、磁場勾配を他の外部の物理的刺激と組み合わせ、その非限定的な例としては、超音波、圧電、光学(例えば、近赤外(NIR))、電磁場現象および効果、ならびに、熱力学現象および効果(温度および圧力効果の両方を含む)が挙げられる。
【0008】
本明細書における「キャリアデバイス」および「キャリア」という用語は、生体組織に移植可能であり、かつ医療用ペイロード(機能性材料)を組織内に運び、放出することができる任意の物体を示す。「デバイス」という用語または「粒子」という用語は、キャリアまたはキャリアデバイスを説明するためにも使用される。「医療用ペイロード」という用語、または同等に医療の文脈で使用される「ペイロード」という用語は、本明細書では、医学的に治療的または診断的性質の任意の物質または材料を含むと理解される。特定の実施形態では、医療用ペイロードまたはペイロードは、「機能性材料」と同等であり、その機能は、治療に関連するか、または向けられ、または診断目的である。本明細書における「デバイス」という用語(キャリアに関して)は、リソグラフィ、薄膜技術、沈着技術、エッチング、コーティング、成形、自己組織化、化学合成などを含むがこれらに限定されない製造技法によって製造されるキャリアを意味する。
【0009】
本発明の特定の実施形態では、キャリアデバイスは、生体組織への移植のために小型化されている。本明細書における「小型化された」(キャリアに関して)という用語は、ミリメートルからセンチメートル規模のキャリア、「キャリアマイクロデバイス」と称されるマイクロメートル(「ミクロン」)規模のキャリア、「キャリアナノデバイス」と称されるナノメートル規模のキャリアを含むがこれらに限定されない、小さいサイズのキャリアを意味する。上に示したサイズ規模のキャリアそれ自体だけではなく、「キャリア」の個別の構成要素も同等のサイズである。特定のキャリア寸法は、異なるスケールであり得る、例えば、キャリアは、ナノメートル範囲の1つの寸法とマイクロメートル範囲の別の寸法を有し得ることに留意されたい。そのようなすべての小型デバイスは、本発明の実施形態に含まれる。
【0010】
一実施形態では、本発明は、その組織または別の組織内に医療用ペイロードまたは機能性材料を放出するために、生体組織に移植するためのキャリアデバイスであって、
デバイスの外面を貫通する開口部を有する空洞と、
医療用ペイロードまたは機能性材料を備える磁気マトリックスであって、空洞内に収容されている、磁気マトリックスと、
空洞内に収容され、空洞内で移動可能な磁気構成要素であって、磁気トリガーが適用されると、磁気構成要素が、空洞の開口部を通してマトリックスを押し出し、組織内に放出されるように配置されている、磁気構成要素と、を備える、キャリアデバイスを提供する。
マトリックスの代表的な例としては、ヒドロゲル、ポリカプロラクトン、(ポリ)エチレングリコール、グリシンベタイン、アルギネート、コラーゲン、またはコラーゲン複合体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0011】
一実施形態では、本発明は、その組織または別の組織内に医療用ペイロードまたは機能性材料を放出するために、生体組織に移植するためのキャリアデバイスであって、デバイスの外面を貫通する開口部を有する空洞と、医療用ペイロードまたは機能性材料を備える磁気マトリックスであって、空洞内に収容されている、磁気マトリックスと、を備え、磁気マトリックスは、磁気トリガーが適用されると、マトリックスが、空洞の開口部を通してそれ自体で押し出されて、組織内に放出されるように配置されている、キャリアデバイスを提供する。例えば、マトリックスは、医療用ペイロードでコーティングされた磁気ナノ粒子を含む。
【0012】
一実施形態では、本発明は、その組織または別の組織内に医療用ペイロードまたは機能性材料を放出するために、生体組織に移植するためのキャリアデバイスであって、デバイスの表面を貫通する開口部を有する空洞と、機能性材料を含むマトリックスであって、マトリックスが、空洞内に収容され、空洞内部の圧力源が、マトリックスを空洞開口部に向かって押す、マトリックスと、空洞の開口部を覆い、1つ以上の開口部を有する回転可能な磁気キャップであって、磁気トリガーが適用されたとき、キャップが回転して、それにより空洞開口部が、キャップ内の開口部と位置合わせして放出し、マトリックスが、空洞の開口部を通して押し出され、組織内に放出されるように配置されている、回転可能な磁気キャップと、を備える、キャリアデバイスを提供する。
【0013】
一実施形態では、デバイスは、推進構成要素をさらに含む。一実施形態では、推進構成要素は、外部刺激に応答する。一実施形態では、刺激は、超音波(US)、圧電、磁気、電気、電磁気、電磁放射、またはそれらの組み合わせから選択される。一実施形態では、推進構成要素への刺激の適用は、デバイスを推進する。一実施形態では、外部刺激は、超音波である。一実施形態では、外部刺激は、推進構成要素を推進するための磁気刺激と、デバイスまたはその構成要素から機能性材料を放出するための他の磁気刺激と、を含む。これらの実施形態のいくつかでは、キャリアの磁気推進方向に対するその空洞開口部は、干渉を回避するように配向されている(すなわち、開口部は、推進方向に対して後方にあるかまたは直交している)。
【0014】
一実施形態では、本発明は、システムであって、
・本明細書に開示されるデバイスと、
・遠隔ユニットと、を備え、
遠隔ユニットは、外部刺激を当該デバイスに適用するように構成されている、システムを提供する。
【0015】
一実施形態では、外部刺激は、磁気刺激を含む。一実施形態では、外部刺激は、磁気刺激および超音波(US)を含む。一実施形態では、外部刺激は、デバイスを推進するための磁気/電気、電磁気、もしくは超音波刺激、またはそれらの組み合わせを含む。
【0016】
一実施形態では、本発明は、生体組織内に医療用ペイロードまたは機能性材料を放出するための方法であって、
・本明細書に記載のデバイスを生体組織に挿入することと、
・磁気トリガーをデバイスに適用して、組織内のマトリックスを放出することと、を含む、方法を提供する。
【0017】
一実施形態では、デバイスを組織に挿入した後、外部刺激を適用して、組織内の定義された位置にデバイスを推進する。一実施形態では、外部刺激は、超音波(US)、磁気、電気、電磁気、圧電、光学(例えば、近赤外線(NIR))、電磁放射、またはそれらの組み合わせを含む。一実施形態では、外部刺激の適用に続いて、機能性材料は、組織と、または組織の/組織内の成分と相互作用する。一実施形態では、相互作用は、治療効果、診断効果、またはそれらの組み合わせをもたらす。一実施形態では、方法は、組織内のデバイスの位置を画像化することをさらに含む。
【0018】
一実施形態では、本発明は、対象を治療する方法であって、
・本明細書に記載のデバイスを対象に挿入することと、
・デバイスに磁気トリガーを適用して、マトリックスを対象内に放出することと、を含む、方法を提供する。
【0019】
一実施形態では、デバイスを挿入することは、対象内の特定の組織にデバイスを挿入することを含む。一実施形態では、デバイスを組織に挿入した後、外部刺激を適用して、対象内の定義された位置にデバイスを推進する。一実施形態では、外部刺激は、超音波(US)、磁気、電気、電磁気、圧電、光学(例えば、近赤外線(NIR))、電磁放射、またはそれらの組み合わせを含む。一実施形態では、外部刺激の適用に続いて、機能性材料は、組織と、または組織の/組織内の成分と相互作用する。一実施形態では、相互作用は、治療効果、診断効果、またはそれらの組み合わせをもたらす。一実施形態では、方法は、対象内のデバイスの位置を画像化することをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
開示された主題は、添付の図面とともに読むときに、以下の詳細な説明を参照することによって最もよく理解され得る。
【0021】
図1】(a)ローダミン溶解水に浸漬する前の乾燥した透明なヒドロゲルである。ヒドロゲル球の直径は2.1mmと測定される。(b)ペレットの直径は、ローダミンBに溶解した水を一晩吸収すると、10.1mmに増加する。
図2】(a)容器およびその機構の概略図である。暗線はPFAチューブの境界を示している。点線の領域は、密封するのに使用されるエポキシを表し、黒い実線の球は、強磁性ステンレス鋼の球を表し、市松模様の領域は、マトリックスを表す。外部磁気勾配(細い矢印で示されている)が存在する場合、強磁性球は、太い矢印で示されているように、勾配に沿って移動する。このプロセス中に、強磁性球がマトリックスを押し出しする。変形した口は、球が容器から出るのを妨げる。(b)容器の代表的な画像である。チューブの左側は、0.5mmの直を有するステンレス鋼球とともにエポキシで密封されており、マゼンタ色のゲルは、容器から押し出されることになるマトリックスである。
図3】ローダミンBに浸したヒドロゲルの複数の放出を示す画像である。(a)容器(画像内の赤い円で強調表示されている)が一片の寒天ゲルに埋め込まれている。(b)寒天に埋め込まれた容器を大きな磁気勾配に近づけたとき、容器内部のステンレス鋼球が勾配に向かって移動し、ローダミンBに浸したヒドロゲルを押し出しする。(c)最初の押し出しが発生した後、容器全体を寒天ゲルにさらに押し込んで、超小型ロボットの別の領域への移動をシミュレートした。(d)この新しい位置で、2回目の押し出しを実行し、残りのヒドロゲルを磁場勾配の入射時に押し出した。
図4】本発明の特定の実施形態による微粒子を示す。
図5】本発明の特定の実施形態による微粒子を示す。
図6】本発明の特定の実施形態による微粒子を示す。
【0022】
図を簡潔かつ明確にするために、図に示されている要素は、必ずしも一定の縮尺に従って描かれているわけではなく、いくつかの要素の寸法は他の要素に比べて誇張されている場合がある。加えて、対応する要素または類似の要素を示すために、参照番号が図の間で繰り返され得る。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の様々な実施形態は、要求に応じてキャリアから放出される機能性材料または医療用ペイロードを収容するキャリアデバイスを提供する。「機能性材料」という用語は、医学的に治療的または診断的な性質の物質、化合物、または材料を含む。外部刺激が加えられると、機能性材料がキャリアから放出される。外部刺激は、電気、磁気、電磁気、電磁放射(例えば、近赤外線(NIR))、超音波、またはそれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、機能性材料は、ヒドロゲルマトリックスなどのマトリックスの一部として提供される。
【0024】
本発明の様々な実施形態によれば、移植可能なペイロードキャリアデバイスが提供される。キャリアデバイスは、デバイスの外面を貫通する開口部を有する空洞を有する。キャリアデバイスは、磁気トリガー(磁石トリガー)に敏感な少なくとも1つの移動可能な磁気要素を含む。磁気トリガーが組織に適用されると、移動可能な磁気要素は、空洞開口部を通して医療用ペイロードまたは機能性材料の放出を提供する。
【0025】
特定の実施形態では、医療用ペイロードを放出するために使用される磁気トリガーは、磁気勾配、空間内でその方向を変える均一な磁場、磁気信号の存在/不在、またはそれらの組み合わせを介して制御される。
【0026】
いくつかの実施形態では、空洞開口部は、マトリックスが磁気構成要素によって押し出されると開放する、可撓性シールによって密封されるか、または覆われる。いくつかの実施形態では、磁気トリガーが取り外されると、可撓性シールが閉鎖する。いくつかの実施形態では、空洞開口部は、磁気アクチュエータ(外部勾配または別の磁気トリガーに応答して開閉する)である、可撓性シールによって密封されるか、または覆われる。
【0027】
いくつかの実施形態では、キャリアは、複数の空洞を有し、それぞれが異なる機械磁気構成(例えば、異なるアクチュエータサイズ/膜弾性)を有するので、それらは独立して制御することができる。
【0028】
特定の実施形態では、ペイロード放出のためにいくつかの磁場要素が使用される。例えば、空洞は、磁気勾配に応答して、ペイロードを開口部に向かって押す強磁性球を有し得る。加えて、開口部は、所与の位置に開口部を有する円形のキャップで覆われ得る(塩容器と同様)。キャップは、直径方向に磁化されたキャップである場合とそうでない場合があり、所与の方向(時計回りまたは反時計回り)にのみ回転できるようにする機械的機構を有する場合と有しない場合がある。ペイロードの放出は、勾配が開口部に向かって適用され、かつキャップがキャリア本体に対して適切な方向(時計回り/反時計回り)に回転して部分的または完全に取り外され、空洞内の開口部がキャップ内の開口部と位置合わせされる場合にのみ発生することになる。これにより、二重の安全機構が作製され、ペイロードの放出を制御する精度が増加する(実施例4を参照)。
【0029】
回転磁界、磁気勾配、またはその2つの組み合わせを使用して推進力を実現する場合は、磁気推進力とペイロード放出との間の干渉を防止するための特定の方法が必要とされる。これらには、反対の勾配(ペイロード放出のための)を適用する前にキャリアを停止すること、またはペイロード放出と推進のために反対方向に回転することが含まれる。一方向回転キャップを使用して、推進に使用される回転磁場(例えば、時計回り)に応答してキャップが本体に対して回転しないことを確実にし得る。例えば、キャップは非磁気であり得る。キャリア本体の時計回りの回転は、キャップおよび空洞内の開口部の位置合わせを変化させることなく、キャリアと一緒にキャップが回転する。キャリア本体の反時計回りの回転は、キャップに対してキャリア本体が回転し、開口部の位置合わせおよびペイロードの放出を可能にする。この方法は、キャップの回転速度を制御することにより、ペイロードの放出速度のより正確な制御を可能にする。
【0030】
特定の実施形態では、空洞の開口部は、干渉を回避するために、キャリアの磁気推進方向に直交しているか、または反対である。後方に(すなわち、運動方向と反対の)開口部を有することの1つの潜在的な利点は、ペイロードが、キャリアデバイスがすでに通過した領域に後方に押し出されることである(それは、乱され、より密度の低い組織であり、したがってより低い圧力であり、ペイロードの放出を容易にする)。
【0031】
いくつかの実施形態では、推進のための組み込み磁気構成要素は、推進に必要とされる磁気構成要素へのペイロード放出アクチュエータの引力による干渉を防ぐために、ペイロード放出アクチュエータから所定の距離に位置する。基本的に、推進に使用される磁石が、ペイロードの押し出しに使用される磁気球または他の磁気要素に近すぎる場合、それらは互いに引き付けあう可能性があり、ペイロードの押し出しは発生しないことになる。その場合、それらは互いに距離を置く必要があるか、または磁気遮蔽に使用される材料(例えば、ミューメタル)によって遮蔽される必要がある。
【0032】
特定の実施形態では、キャップおよび空洞は、運動方向に直交または反対のいくつかの開口部を含み得、キャップの回転は、拡散を介してまたは勾配ベースの押し出しと組み合わせて(空洞内の別の磁気アクチュエータを使用する)、ペイロードの放出を可能にするために、開口部を位置合わせさせる(実施例5を参照)。例えば、開口部パターンの特定の設計は、ペイロード放出パルスの特定のシーケンスを生み出すことができ、各開口部に1つは、キャップの各回転で周囲の組織に露出される。
【0033】
特定の実施形態では、キャリア空洞内部の磁気アクチュエータは、機能性材料(例えばカプセル/カートリッジ)の個別の部分を排出する(磁気勾配または別の磁気信号によって制御されて、空洞内の開口部を介してそれらを機械的に押すことによって)ために使用される(実施例6を参照)。機構は「ニュートンの振り子」装置に似ており、球が互いに接触して一列に積み重ねられる。球が片側の列に当たることによって生成された運動量は、反対側の最後の球に伝達されるが、中央の他の球は静止したままである。この原理を使用して、一実施形態では、衝撃を生成する元の球は、(キャリア空洞内部の)磁気アクチュエータによって置き換えられ、一方、球の列は、個別のペイロード部分の列によって置き換えられる。磁気アクチュエータ(例えば、空洞内の強磁性球)によって生成された運動量は、ペイロード部分の列全体を通って移動し、ペイロードの最後の部分に伝達され、それは開口部を介して空洞から排出される。開口部は、十分な運動量で押された場合を除いて、キャリアの移動中にペイロード部分が偶発的に逃げるのを防止するために、柔軟な膜または別の機械的機構(例えば、小さな傾斜したリップ)で覆うことができる。この方法を効率的に使用するために、磁気アクチュエータの動作を開始するための磁気刺激が一方向に適用され(ペイロード部分の列に対するアクチュエータの最初の衝撃のため)、次いで、他の方向に反転して、アクチュエータを初期位置に後退させる。これは現在の設計によって行われ、推進方向への磁気勾配が、前方への動きを生み出し、キャリアの後方への勾配の反転が、空洞内部の磁気アクチュエータを作動させ、後方へのペイロード放出をもたらす(上記の機構を使用して)。明確にするために、この方法は、空洞から単一の部分を放出するために、1つ以上の磁気勾配パルスを必要とし得る。
【0034】
特定の実施形態では、空洞内部の磁気アクチュエータの代わりに、空洞内部に恒久的な圧力源(例えば、ばね)を配置して、ペイロードを空洞内の1つ以上の開口部に向かって絶えず押すことが可能である。上記空洞は、1つ以上の開口部を有するねじれ可能なキャップで覆われている。(本明細書の他の実施形態で説明されるように)磁場を使用するキャップの単一の回転は、キャップ内の開口部を空洞内の開口部と位置合わせさせ、一貫して高圧による空洞からのペイロードの放出を可能にする。この方法の利点は、それが、ペイロードを空洞から押し出すために磁気勾配に依存しなくなり、放出が、回転磁場(均一磁場でも)によって制御できるのに対し、投与量が、キャップの回転数、ならびに空洞およびキャップの開口部の機械的位置合わせによって制御されることである。
【0035】
他の実施形態は、回転磁場、勾配磁場、均一磁場、またはそれらの組み合わせを組み合わせて、空洞内部の圧力の増加およびペイロードを収容する空洞の開閉を使用してペイロードの押し出しを制御して、ペイロードの放出を可能にすることができる。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態では、キャリアデバイスおよびその構成部品は小型化されている。デバイスおよび/またはデバイスに含まれる構造は、マイクロスケール、ナノスケール、またはそれらの組み合わせで少なくとも1つの寸法を有する。いくつかの実施形態によれば、デバイス全体の直径または実際の長さは、100~5000マイクロメートル、10~100マイクロメートル、1~10マイクロメートル、200~1000ナノメートル、およびそれらの任意の組み合わせから選択される。いくつかの実施形態によれば、デバイス全体の直径または実際の長さは、200ナノメートル~最大5000マイクロメートルである。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態では、キャリアデバイスは、細長い、軸対称、中心対称、キラル、ランダム、またはそれらの組み合わせから選択される形状を含む。本発明のいくつかの実施形態では、移動可能な磁気要素は、球、細長い形状、ストリップ、シート、プラグ、コイル、ヘリックス、アーム、ジョイント、およびそれらの組み合わせから選択される構成を含む。
【0038】
上記の図面および説明に示される実施形態は非限定的である。本発明に一致して、他の磁気に敏感な構成も可能である。特に、異なる形状および材料の1つ以上の移動可能な磁気応答性構成要素は、ペイロード放出の効果を達成するために上記の原理に依存して、空洞内部の異なる位置に位置し得る。
【0039】
一実施形態では、本発明は、外部から印加される電磁場を使用してキャリアの遠隔制御運動を潜在的にサポートしながら、事前定義された磁気勾配の外部磁気トリガー/刺激に基づいてペイロードを放出できる、ペイロードキャリアを製造するための方法を提供する。一実施形態では、ペイロードは、機能性材料であるか、または機能性材料を含む。一実施形態では、ペイロードを放出するとき、粒子は停止している。他の実施形態では、ペイロードを放出している間、粒子は移動している。
【0040】
本発明の実施形態によるキャリアデバイスは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2018年5月3日に出願された「METHODS AND SYSTEMS TO CONTROL PARTICLES AND IMPLANTABLE DEVICES」と題された国際特許出願第PCT/US2018/030960号に記載された粒子を含むことになることが企図される。簡単に言えば、そのような粒子は、(i)アクチュエータと、(ii)応答性要素と、(iii)センサーと、(iv)電子回路と、を備える、微小電気機械(MEM)キャリアデバイスであり、上記アクチュエータは、上記応答性要素を制御および操作し、上記電子回路は、上記アクチュエータを制御し、上記センサーは、遠隔ユニットによって送信された信号を受信する。本発明の実施形態によるキャリアデバイスは、国際特許出願第PCT/US2018/030960号に記載されているプラットフォームに含まれることになることも企図されている。簡単に言えば、そのようなプラットフォームは、以下のモジュール:(a)本明細書に記載され、組み込まれたロジックおよび様々なMEM構成要素を含む1つ以上のキャリアデバイスと、(b)デバイスを送達および/または収縮するように構成されている送達および/または収縮モジュールと、(c)外部信号発生器と、(d)上記粒子を監視するように構成されている画像化モジュールと、(e)他のモジュールから入力を受信し、他のモジュールに出力制御コマンドを提供するように構成されている統合モジュールと、を含み、上記モジュールは、互いに相互作用/通信するように構成されており、上記のモジュールは、内部制御、外部制御、またはその両方であり、上記プラットフォームは、インビトロ、インビボ、および/または患者において、上記デバイスの能動的で、事前に決定された、完全に制御された、正確な送達を提供する。
【0041】
様々な用途について、外部から印加される電磁場を使用して動きを遠隔で制御できるペイロードキャリア(マイクロ/ナノ粒子など)を製造することが有益な場合がある。そのような粒子の例は、米国特許第8,768,501号に記載されており、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。そのような例示された粒子は、磁気作動式プロペラ(MAP)である。プロペラは、1つの空間次元で20nm~100μmの範囲の典型的特徴サイズを有する構造である。一実施形態では、MAPは、ナノ構造表面から大量に生成することができる。MAPは、磁場によって推進および制御される。MAP形態はねじ状の形態である。ねじ状のMAPは回転し、回転磁界によって駆動される。MAPの長軸を中心とした回転により、MAPが前方に推進される。ペイロードキャリアの設計方法を以下に説明する。これは、そのような機能性をサポートする一方で、超音波信号に基づく遠隔制御ペイロード放出に関連する上に要約した特徴もサポートする。
【0042】
いくつかの実施形態では、磁気構成成分は、強磁性または常磁性材料を含む。磁気構成成分は、強磁性/常磁性材料で作られた粒子/構造であり得るか、または強磁性/常磁性コーティング層によってコーティングされた非強磁性/非常磁性材料で作られ得る。強磁性/常磁性構成要素は、互いに取り付けられた強磁性/常磁性部分および非強磁性/非常磁性部分を含み得る。いくつかの実施形態では、非強磁性/非常磁性材料上の強磁性/常磁性コーティング層は、非磁気材料の少なくとも一部分をコーティングするか、または非磁気材料の露出面全体をコーティングする。
【0043】
強磁性または常磁性粒子が部分的にコーティングされているか、コーティングされているか、または非磁気材料と接触している、または非磁気材料によって接触している実施形態では、そのような非磁気材料の非限定的な例としては、反磁性誘電体材料(SiO、アルミナ)、反磁性金属(Cu、Ag、Au、Ti、Ti/Ni合金)、および反磁性有機コーティング(有機ポリマー、小分子、キラル化合物など)が挙げられる。
【0044】
いくつかの実施形態では、強磁性部分または常磁性部分は、当技術分野で知られている好適な強磁性または常磁性基板であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、強磁性部分は、Co、Fe、Ni、Gd、Tb、Dy、Eu、それらの酸化物、それらの合金、またはそれらの混合物を含む。他の実施形態では、常磁性部分は、磁気ドープされた半導体を含む。
【0045】
本発明の代表的な実施形態では、粒子(キャリアデバイス構造)のサイズは、20nm~5mmで変動し得る。いくつかの実施形態では、デバイスはマイクロメートルの範囲にある。いくつかの実施形態では、デバイスはナノメートルの範囲にある。特定の範囲内とは、デバイスの最大測定寸法がその範囲内にあることを意味する。ミリメートル範囲内のデバイスも本発明の一部である。本発明のマイクロデバイスは、ナノメートルおよびマイクロメートルの範囲の両方の寸法を有し得る。ミリメートル範囲のデバイスは、mm、μm、nmの範囲、またはそれらの組み合わせの寸法を有し得る。サイズ(または本発明のデバイスの最大寸法サイズ)は、20nm~100nm、10nm~10mm、20nm~1mm、10nm~1μm、10nm~10μm、20nm~100μm、1μm~10μm、10μm~100μm、100μm~1mm、1mm~10mm、1μm~5mm、10nm~1mm、100nm~1μm、100nm~10μm、100nm~100μm、100nm~1000μmの範囲にある。異なるサイズ、異なるサイズ範囲の粒子、および様々な/異なるサイズの粒子の組み合わせを含む組成物が、本発明の実施形態に含まれる。
【0046】
本発明の代表的な実施形態では、粒子(キャリアデバイス構造)のサイズは、20nm~5mmで変動し得、関心のある媒体を介したそれらの能動的な外部誘導輸送を強化するために特別に選択された様々な幾何形状を呈する。例としては、経細胞または傍細胞空間と、生体膜と、血液脳関門または腫瘍周辺関門によって例示される特定の生物学的および/または疾患関連関門と、細胞外マトリックスと、特定の組織、臓器、血/リンパ容器とが挙げられる。形状の代表的な例としては、らせん(ウォーム、ねじ状)、マイクロ/ナノプロペラ、ねじ山および/またはリボン状の、滑らかな、エッチングされた表面の球/回転楕円体、1つまたは複数の外部付属物(繊毛、鞭毛、フィンによって例示されるような)を有するまたは有しない粒子が挙げられるが、これらに限定されない。その上、粒子の能動輸送(迅速な標的、組織、および/または臓器の送達、ペイロードの放出)と、粒子の収縮との両方のために、粒子-(in vivo)システムの相互作用は、注意深く制御され、制限され、免疫学的、炎症性、および/または代謝反応によって例示されるような望ましくない生理学的効果をトリガーしそうにない。インビボ副作用の可能性をさらに最小化するために、生体適合性、非毒性生分解性ポリマー、またはそれらの組み合わせの特定の選択を使用することができる。代表的なポリマーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(N-2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、ポリ(N-イソプロピル)アクリルアミド、ポリ乳酸、キトサン、およびポリグリコリドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
要約すると、ここで説明する実施形態は、正確な位置で標的ペイロードを送達および放出するために、能動的にナビゲートされ、かつ扱いやすい磁気複合ナノ微粒子を提供する。磁気トリガーおよび粒子組成および幾何形状の物理的パラメーターを含む複数の特定の要因は、エキソビボまたはインビボでの標的への選択的、正確、安全、かつ効果的なペイロード送達を達成するための最適化に適している。
【0048】
ヒドロゲルとペイロードとの組み合わせの磁気機械的放出。
【0049】
この実施例では、磁気機械的機構を介してヒドロゲルマトリックスを輸送および放出できる容器の製造が実証されている。容器は、強磁性ピストンを収容し、それは、外部磁気勾配の存在下で、ヒドロゲルマトリックスを容器から押し出す過程で勾配に向かって外側に移動する。これは、磁場勾配の外部トリガーによる親水性薬剤の制御放出の可能性を実証している。
【0050】
方法
【0051】
A.ヒドロゲルマトリックスの調製
【0052】
有機染料(ローダミンBおよびブリリアントグリーン)を水に溶解した。この染料の水に、一片の透明な乾燥したヒドロゲルを一晩浸漬した。
【0053】
B.容器
【0054】
0.559mmの内径および1mmの外径を有するパーフルオロアルコキシ(PFA)チューブを3mmの長さに切断した。PFAチューブの一端をエポキシで覆い、一晩硬化させた。一旦エポキシが硬化したら、0.5mmの直径の強磁性440Cステンレス鋼球(Bal-tec)をPFAチューブに挿入した。続いて、マトリックスが容器に装填された。最後に、内径の短軸が0.4mmを超えないように、容器の口をわずかにクランプした。
【0055】
結果
【0056】
図1は、ヒドロゲルマトリックスをローダミンB溶解水に浸漬する前後のヒドロゲルマトリックスの変化を示している。図1(a)に実証されるように、浸漬前に、乾燥ヒドロゲル球状ペレットは透明で、2.1mmの直径を有した。ペレットをローダミンB水に一晩浸した後、ヒドロゲルは溶液を吸収し、その直径を10.2mmに拡大した(図1(b))。この直径の増加は、透明から深紅への色の変化とともに、それらヒドロゲルペレットが水およびローダミンBの両方を吸収したことを示している。これは、水溶性マトリックスをゲル状に統合して送達できるプラットフォームを提供する。
【0057】
一旦この色素を注入したヒドロゲルマトリックスを調製したら、それを方法のセクションで説明したように容器に装填した。図2(a)は、最終的な容器およびその機構を示す概略図である。外部磁気勾配が存在する場合、強磁性ステンレス鋼ピストンは、勾配が増加する向きに移動する。このプロセスでは、ピストンがヒドロゲルマトリックスを物理的に押し出しする。図2(b)は、製造された容器の代表的な画像である。左側に存在する約1mmの厚さの透明な層は、容器の一端を密封するために使用されるエポキシである。次に、0.5mmの直径を有する強磁性ステンレス鋼球を容器に挿入し、続いてローダミンに浸したヒドロゲルを挿入した。次に、ピストンが容器から出るのを防止するために、容器の口をクリッパーで変形させた。
【0058】
図3(a)に示すように、準備した容器を20Gの針を使用して寒天の小片に挿入し、周囲の培地への不要な損傷を最小限にした。一旦容器を寒天に埋め込んだら、容器を大きな磁石に垂直な小さなステージ上に置き、押し出しを監視しながら徐々に磁石に近づけた。図3(b)に実証されるように、容器を磁石に十分に近づけると(磁場勾配が約15T/m)、少量のヒドロゲルの押し出しが目に見えた。最初の押し出し後、ボットの別の位置への移動を模倣するために、容器を20Gの針で寒天の奥深くに移動した(図3(c))。容器を埋め込まれた寒天が、約15T/mの大きな磁気勾配に曝露すると、残りのマトリックスが容器から押し出された。これは、図3(d)の容器の口にある赤いゲルによって証明されている。
【0059】
この機械磁気的概念は、(1)水溶性薬剤に浸した強磁性ピストンおよびヒドロゲルマトリックスを装填した容器の製造、および(2)約15T/mの外部磁場勾配の存在下でのヒドロゲルマトリックスの複数の押し出しを実証した。これにより、磁場勾配などの外部磁気トリガーの適用時にマトリックスを複数回放出することができる、ミリメートル規模の容器を設計および製造する機会が開かれる。
【0060】
本明細書では本発明の特定の特徴が図示され、説明されてきたが、多くの修正、置換、変更、および同等物がここで、当業者に思いつくであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神趣旨に収まるように、すべてのそのような修正および変更を網羅することを意図することを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6