(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】調整フラップ減速機構
(51)【国際特許分類】
F16H 57/031 20120101AFI20221031BHJP
F24F 13/14 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
F16H57/031
F24F13/14 H
(21)【出願番号】P 2021553067
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(86)【国際出願番号】 EP2019085504
(87)【国際公開番号】W WO2020177914
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-12-08
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521400246
【氏名又は名称】グルーナー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Gruner Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Buerglestrasse 15-17, 78564 Wehingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン ディリンガー
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング シュプライツァー
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0146256(US,A1)
【文献】特開昭62-126840(JP,A)
【文献】特開2004-076794(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102011009061(DE,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0077365(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/031
F24F 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に暖房、換気、空調、防火または防煙の分野における気体または液体の体積流量を調整するための電気駆動式の調整フラップ用の調整フラップ減速機構(1)であって、
互いに平行な2つのエンドプレート(5,6)であって、相互間に複数の伝動機構部材(3,4)が回動可能に配置されている、エンドプレート(5,6)と、
前記2つのエンドプレート(5,6)を互いに間隔を置いて保持する複数のスペーサと
を備
え、
前記複数のスペーサは、一方の第1の前記エンドプレート(5)の舌片(7a~7e)として形成されており、該舌片(7a~7e)は、前記第1のエンドプレート(5)の平面から90°だけ折り曲げられていて、少なくとも1つの側方の突出部(8)を有し、
前記舌片(7a~7e)の少なくとも1つの側方の突出部(8)が他方の第2の前記エンドプレート(6)に接触するまで、前記舌片(7a~7e)の舌片自由端(9)が、前記第2のエンドプレート(6)に設けられた差込み開口(10)内に差し込まれている
、
調整フラップ減速機構(1)において、
回動可能な前記伝動機構部材(3,4)のうちの1つの伝動機構部材は、2つの終端位置の間で旋回可能であり、該2つの終端位置のうちの少なくとも一方の終端位置で前記舌片(7a,7b)のうちの1つの舌片に接触しており、
前記第1のエンドプレート(5)は、旋回可能な前記伝動機構部材(4)用の支持開口(15)を有し、該支持開口(15)の周囲のうち、旋回可能な前記伝動機構部材(4)が前記終端位置で接触する前記舌片(7a,7b)の領域において補強されており、
前記第1のエンドプレート(5)は、旋回可能な前記伝動機構部材(4)が接触する前記舌片(7a,7b)の前記領域において、前記支持開口(15)内に半径方向内向きに突出した湾出部(17)によって補強されている
ことを特徴とする、調整フラップ減速機構(1)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの側方の突出部(8)は、前記舌片(7a~7e)の平面内に位置していることを特徴とする、請求項1に記載の調整フラップ減速機構。
【請求項3】
前記舌片(7a~7e)は、両側にそれぞれ1つの側方の突出部(8)を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の調整フラップ減速機構。
【請求項4】
前記第2のエンドプレート(6)内に差し込まれた前記舌片自由端(9)および/または前記第2のエンドプレート(6)に接触している前記少なくとも1つの側方の突出部(8)は、前記第2のエンドプレート(6)に材料接続的に結合されていて、特に溶接されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載の調整フラップ減速機構。
【請求項5】
旋回可能な前記伝動機構部材(4)は、前記2つの終端位置でそれぞれ異なる2つの舌片(7a,7b)に接触していることを特徴とする、請求項
1から4までのいずれか一項に記載の調整フラップ減速機構。
【請求項6】
旋回可能な前記伝動機構部材(4)は、回動方向に向けられた2つの端面(12)を有し、該端面(12)は、前記2つの終端位置でそれぞれ1つの舌片(7a,7b)に接触していることを特徴とする、請求項
1から
5までのいずれか一項に記載の調整フラップ減速機構。
【請求項7】
前記2つの端面(12)は、旋回可能な前記伝動機構部材(4)の円弧状の歯車(11)に設けられていることを特徴とする、請求項
6に記載の調整フラップ減速機構。
【請求項8】
旋回可能な前記伝動機構部材(4)は、前記調整フラップ減速機構(1)の、調整フラップが相対回動不能に取り付けられた被駆動要素を形成していることを特徴とする、請求項
1から7までのいずれか一項に記載の調整フラップ減速機構。
【請求項9】
前記第1および/または第2のエンドプレート(5,6)は、金属から形成されていることを特徴とする、請求項1から
8までのいずれか一項に記載の調整フラップ減速機構。
【請求項10】
前記第1および/または第2のエンドプレート(5,6)は、打抜き部材、レーザ切断片、3Dプリントされた金属部材または焼結部材であることを特徴とする、請求項1から
9までのいずれか一項に記載の調整フラップ減速機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に暖房、換気、空調、防火または防煙の分野における気体または液体の体積流量を調整するための電気駆動式の調整フラップ用の調整フラップ減速機構であって、互いに平行な2つのエンドプレートであって、相互間に複数の伝動機構部材が回動可能に配置されている、エンドプレートと、2つのエンドプレートを互いに間隔を置いて保持する複数のスペーサとを備える、調整フラップ減速機構に関する。
【0002】
公知の調整フラップ減速機構では、減速機構の複数の伝動機構部材が、互いに平行な2つのエンドプレートの間に回動可能に配置されている。この場合、これら2つのエンドプレートは、両者間のスペーサとしても同時に働くねじ山付きピンにねじ締結されている。
【0003】
国際公開第2005/090831号には、気体または液体の体積流量を調整するための電気式のアクチュエータの減速機構が記載されている。この減速機構は、2つのハウジングモジュール内に実現されており、これによって、被駆動要素が種々異なる駆動モータに組合せ可能である。
【0004】
これに対して、本発明の課題は、調整フラップ減速機構において構造をさらに簡単化することである。
【0005】
この課題は、本発明によれば、複数のスペーサが、一方の第1のエンドプレートの舌片として形成されており、これらの舌片が、第1のエンドプレートの平面から90°だけ折り曲げられていて、少なくとも1つの側方の突出部を有し、舌片の少なくとも1つの側方の突出部が他方の第2のエンドプレートに接触するまで、舌片の舌片自由端が、第2のエンドプレートに設けられた差込み開口内に差し込まれていることによって解決される。
【0006】
本発明によれば、結合要素が第1のエンドプレートと一体に形成されている。組立ておよび分解の際に処理する必要のある個別部材がより少ないので、調整フラップ減速機構のより簡単な構造が得られる。さらに、舌片が良好な安定性を有する。なぜならば、舌片が第1のエンドプレートと同じ厚さで形成されているからである。好適には、両方のエンドプレートは金属から製造されていて、それぞれ打抜き部材またはレーザ切断片である(金属の3Dプリントまたは焼結金属なども別の可能な製造法である)。
【0007】
好適には、少なくとも1つの側方の突出部が、舌片の平面内に位置しており、舌片が、両側にそれぞれ1つの側方の突出部を両側に有する。
【0008】
第2のエンドプレート内に差し込まれた舌片自由端および/または第2のエンドプレートに接触している少なくとも1つの側方の突出部は、第2のエンドプレートに材料接続的に結合されていて、特に(レーザ)溶接されており、これによって、両方のエンドプレートと、その相互間に配置された伝動機構部材とが、互いに持続的に取り付けられている。
【0009】
本発明の好適な実施形態では、回動可能な伝動機構部材のうちの1つの伝動機構部材が、2つの終端位置の間で旋回可能であり、これら2つの終端位置のうちの少なくとも一方の終端位置で舌片のうちの1つの舌片に接触している。したがって、舌片は、回動可能な伝動機構部材に対する回動ストッパを形成している。好適には、旋回可能な伝動機構部材が、2つの終端位置でそれぞれ異なる2つの舌片に接触している。回動ストッパを実現するための別体の構成部材が不要となり、これによって、調整フラップ減速機構の構成がさらに簡単化される。
【0010】
好適には、第1のエンドプレートは、旋回可能な伝動機構部材用の支持開口を有し、この支持開口の周囲のうち、旋回可能な伝動機構部材が終端位置で接触する舌片の領域において補強されている。この補強は、たとえば、支持開口内に半径方向内向きに突出した凸状の2つの湾出部によって形成されていてよい。これら2つの湾出部は、対向して位置する支持開口壁と共に、調整フラップの、支持開口内に収容された被駆動軸に対する遊びなしの3点支持部を形成している。
【0011】
旋回可能な伝動機構部材は、好適には、回動方向に向けられた2つの端面を有し、これら2つ端面は、2つの終端位置でそれぞれ1つの舌片に接触している。たとえば、旋回可能な伝動機構部材の円弧状の歯車が、これら2つの端面を有することができる。
【0012】
好適には、旋回可能な伝動機構部材は、調整フラップ減速機構の、調整フラップが相対回動不能に取り付けられた被駆動要素を形成している。調整フラップ減速機構によって、調整フラップを極めて微調整することができ、これによって、調整フラップの所望の位置を正確に得ることができる。
【0013】
本発明の更なる利点は、明細書および図面から明らかである。また、前述した特徴および以下にさらに記載する特徴は、それぞれ単独で用いてもよいし、複数を任意に組み合わせて用いてもよい。図説した実施形態は、確定した列挙と解釈すべきではなく、むしろ、本発明を説明するための例示的な特徴を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る調整フラップ減速機構の分解図である。
【
図2】
図1の調整フラップ減速機構の第1のエンドプレートの平面図である。
【0015】
図1に示された調整フラップ減速機構1は、電気モータ2により駆動され、複数の伝動機構部材3,4を有する。これら複数の伝動機構部材3,4は、互いに平行な2つのエンドプレート5,6の間に回動可能に配置されている。好適には、両方のエンドプレート5,6は金属から成り、それぞれ打抜き部材またはレーザ切断片である。
【0016】
一方の上側のエンドプレート5は、複数の、ここでは例示的に5つの舌片7a~7eを有する。これらの舌片7a~7eは、上側のエンドプレート5のプレート平面から90°だけ折り曲げられている。舌片7a~7eは、両側にそれぞれ1つの側方の突出部8を有する。この側方の突出部8は舌片平面内に位置している。減速機構1の組付け状態では、舌片7a~7eの両方の側方の突出部8が、他方の下側のエンドプレート6に接触するまで、舌片7a~7eの舌片自由端9が、下側のエンドプレート6に設けられた差込み開口10内に正確に嵌合するようにもしくは遊びなしに差し込まれている。したがって、舌片7a~7eは、両方のエンドプレート5,6を互いに間隔を置いて保持するスペーサを成している。下側のエンドプレート6に差し込まれた舌片自由端9および/または下側のエンドプレート6に接触している側方の突出部8は、下側のエンドプレート6に溶接、特にレーザ溶接されており、これによって、両方のエンドプレート5,6と、その相互間に配置された伝動機構部材3,4とが、互いに持続的に取り付けられている。
【0017】
調整フラップ(図示せず)が相対回動不能に取り付けられている、動力伝達系において最終の伝動機構部材4は、調整フラップ減速機構1の被駆動要素を成していて、回動方向に向けられた2つの端面12を備える90°の円弧状の歯車11を有する。最終の伝動機構部材4は、上側および下側の支持スリーブ13,14を介して、両方のエンドプレート5,6の支持開口15,16内に回動可能に支持されていて、しかも、円弧状の歯車11の端面12が2つの舌片7a,7bの狭幅面に当接する2つの終端位置の間で約270°だけ旋回可能に支持されている。したがって、両方の舌片7a,7bは、最終の伝動機構部材4に対する2つの回動ストッパを成している。2つの舌片7c,7dは、舌片7a,7bよりも大きな半径で支持開口15の周囲に配置されていて、それゆえ、円弧状の歯車11の回動範囲外に位置している。
【0018】
図2に示されているように、上側のエンドプレート5は、支持開口15の周囲のうち、ストッパを成す2つの舌片7a,7bの領域において、支持開口15内に半径方向内向きに突出した凸状の2つの湾出部17によって補強されている。これら2つの湾出部17は、対向して位置する開口壁18と共に、調整フラップの、支持開口15内に収容された被駆動軸に対する遊びなしの3点支持部を形成している。両湾出部17によって、舌片7a,7bへの当接の際に被駆動軸に作用するトルクを上側のプレート5に最適に導入することができる。
【0019】
調整フラップ減速機構1は、その上さらに、上側および下側のエンドプレート5,6から成る複合体に外嵌されるカバー19を有する。
【0020】
以上のように説明した減速機構1によって、たとえば1Nm以上の高いトルクを伝達することが可能となる。被駆動軸における作動時間は、90°当たり0.5秒以上であってよい。この場合、最終の伝動機構部材4の、舌片7a,7bによって規定された2つの終端位置は、たとえば、流路内での調整フラップの閉鎖されたフラップ位置および全開のフラップ位置に相当していてよい。