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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】耐火材
(51)【国際特許分類】
   F27D 1/00 20060101AFI20221031BHJP
   F27B 9/24 20060101ALI20221031BHJP
   F27D 3/12 20060101ALI20221031BHJP
   C04B 35/577 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
F27D1/00 N
F27B9/24 R
F27B9/24 W
F27D3/12 Z
C04B35/577
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021568109
(86)(22)【出願日】2021-04-02
(86)【国際出願番号】 JP2021014378
(87)【国際公開番号】W WO2022049818
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2021-11-12
(31)【優先権主張番号】P 2020150060
(32)【優先日】2020-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000237868
【氏名又は名称】エヌジーケイ・アドレック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古宮山 常夫
(72)【発明者】
【氏名】松葉 浩臣
(72)【発明者】
【氏名】臼杵 裕樹
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-310474(JP,A)
【文献】特開2000-130951(JP,A)
【文献】特開2003-090685(JP,A)
【文献】特開2006-003376(JP,A)
【文献】特開2001-174165(JP,A)
【文献】特開2003-071555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/577
C04B 35/66
F27D 1/00
F27B 9/24
F27D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨材としてSiC粒子を主体とし、前記SiC粒子間に金属Siが含まれるSi-SiC質の耐火材であって、
前記SiC粒子の平均粒子径が15μm以下であり、
断面を観察したときに、0.05μm以上25μm以下の気孔が、100μm×100μmの範囲に100個以上存在しており、
100μm×100μmの範囲における、前記SiC粒子の最大粒子径が30μm以下である耐火材。
【請求項2】
100μm×100μmの範囲における、前記SiC粒子の最小粒子径が0.05μm以上である請求項に記載の耐火材。
【請求項3】
耐火材の見掛け気孔率が1%以下である請求項1または2に記載の耐火材。
【請求項4】
前記金属Siの割合が20質量%以上60質量%以下である請求項1から3のいずれか一項に記載の耐火材。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の耐火材によって形成されているローラー。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載の耐火材によって形成されている焼成用セッター。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか一項に記載の耐火材によって形成されている加熱炉用ビーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年9月7日に出願された日本国特許出願第2020-150060号に基づく優先権を主張する。その出願の全ての内容は、この明細書中に参照により援用されている。本明細書は、耐火材に関する技術を開示する。特に、SiC粒子間に金属Siが含まれるSi-SiC質の耐火材に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
特開2004-18332号公報(以下、特許文献1と称する)に、Si-SiC質の耐火材(シリコン/炭化ケイ素複合材料)に関する技術が開示されている。特許文献1の耐火材は、平均粒径が0.01~2μmのSiC粒子と、平均粒径が0.1~10μmのSiC粒子と、SiC粒子間に分散した金属Siによって構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
Si-SiC質(Si含浸SiC)は、骨材であるSiC粒子間に金属Siが分散しており、耐火材の靭性及び機械的強度等の特性が向上する。しかしながら、耐火材の薄肉化、あるいは、高耐久化(長寿命化)のため、さらなる特性の向上が必要とされている。本明細書は、Si-SiC質の耐火材において、高強度の耐火材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書で開示する耐火材は、骨材としてSiC粒子を主体とし、そのSiC粒子間に金属Siが含まれるSi-SiC質であってよい。また、骨材であるSiC粒子の平均粒子径が10μm以下であり、耐火材の断面を観察したときに、0.05μm以上25μm以下の気孔が、100μm×100μmの範囲に100個以上存在していてよい。なお、この耐火材は、ローラー、焼成用セッター、加熱炉用ビームを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】耐火材の一例(ローラー)を示す。
図2】耐火材の一例(焼成用セッター)を示す。
図3】耐火材の一例(加熱炉用ビーム)であり、(a)は加熱炉用ビームの外観を示し、(b)は加熱炉用ビームの断面を示す。
図4】実施例の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書で開示する耐火材は、加熱炉の構成部品、あるいは、加熱炉内で用いられる部品として利用することができる。具体的には、加熱炉の壁材、ビーム(梁)、連続式加熱炉のローラー、被焼成物(被加熱物)を載置するための焼成用セッター等として利用することができる。
【0007】
耐火材は、骨材としてSiC粒子を主体とし、SiC粒子間に金属Siが含まれるSi-SiC質の耐火材であってよい。耐熱性に優れたSiC粒子を骨材の主体とすることにより、耐火材の耐熱性を向上させることができる。なお、「骨材としてSiC粒子を主体とする」とは、骨材の全質量に占めるSiC粒子の割合が50質量%以上であることを意味している。すなわち、耐火材を構成する骨材は、SiC粒子以外の粒子を含んでいてもよい。なお、骨材に占めるSiC粒子の割合は、60質量%以上であってよいし、70質量%以上であってよいし、80質量%以上であってよいし、90質量%以上であってよいし、95質量%以上であってもよい。なお、耐火材は、骨材としてSiC粒子に加え、例えば、BC粒子、C粒子を含んでいてもよい。
【0008】
SiC粒子の平均粒子径は、15μm以下であってよい。これにより、耐火材の構造(組織構造)が緻密化し、耐火材の機械的強度を向上させることができる。骨材(SiC粒子)の平均粒子径は、10μm以下であってよいし、7μm以下であってよいし、5μm以下であってよいし、3μm以下であってよいし、1μm以下であってもよい。なお、骨材の最小粒子径は、0.05μm以上であってよい。耐火材を製造する際、骨材(粒子)が凝集することを抑制することができる。また、骨材の最大粒子径は、15μm以下であってよい。耐火材の組織構造内において骨材自体が欠陥となることが抑制され、耐火材の機械的強度の低下を抑制することができる。SiC粒子の粒径(平均粒子径、最小粒子径、最大粒子径)は、走査型顕微鏡(SEM)等を利用し、耐火材の断面観察によって確認することができる。
【0009】
耐火材は、耐火材の断面100μm×100μmの範囲に、0.05μm以上25μm以下の気孔が100個以上存在していてよい。換言すると、小サイズの気孔(0.05μm以上25μm以下の気孔)が、耐火材の内部に分散して存在していてよい。耐火材の内部に大サイズの気孔(例えば50μm超の気孔)が存在することを抑制でき、耐火材の機械的強度を向上させることができる。すなわち、破壊の起点となり得る大サイズの気孔が耐火材の内部に存在することを抑制することにより、耐火材の機械的強度が向上する。なお、気孔の大きさは、骨材の粒径と同様に、走査型顕微鏡等を利用し、耐火材の断面観察によって確認することができる。具体的には、気孔の大きさは、耐火材の断面100×100μmの範囲を観察し、その範囲に現れる気孔の最大径を測定することにより確認することができる。
【0010】
また、耐火材の気孔率(見掛け気孔率)は、1%以下であってよい。これにより、耐火材の機械的強度が向上する。耐火材の気孔率(見掛け気孔率)は、0.8%以下であってよく、0.6%以下であってよく、0.5%以下であってよい。なお、耐火材の気孔率は、JIS R2205-1992に準拠して測定することができる。
【0011】
上記したように、本明細書で開示する耐火材は、SiC粒子間に金属Siが含まれている。耐火材に占める金属Siの割合は、20質量%以上、60質量%以下であってよい。耐火材に占める金属Siの割合が60質量%以下であれば、耐火材の製造過程(主として焼成工程)において、内部クラックの発生を抑制することができる。なお、耐火材に占める金属Siの割合は、55質量%以下であってよく、50質量%以下であってよく、45質量%以下であってよく、40質量%以下であってよく、35質量%以下であってもよい。また、耐火材に占める金属Siの割合が20質量%以上であれば、金属SiがSiC粒子間の隙間を十分に充填することができる(見掛け気孔率が増大することが抑制される)。耐火材に占める金属Siの割合は、30質量%以上であってよく、40質量%以上であってもよい。
【0012】
図1は、加熱炉(図示省略)で用いられるローラー10を示している。ローラー10は、貫通孔12を有する円筒状であり、Si-SiC質で形成されている。ローラー10は、耐火材の一例である。ローラー10は、骨材として、粒径0.4~15μm、平均粒子径30μmのSiC粒子で構成されている。また、SiC粒子間には、金属Siが存在している。なお、骨材(SiC粒子)の粒径は、ローラー10の中央部分の断面のSEM画像を取得し、画像内の100μm×100μmの範囲に存在する骨材の形状を測定し、算出した。また、骨材(SiC粒子)及び骨材間の物質(金属Si)は、取得したSEM画像についてEDSを用いて元素分析を行うことにより特定した。
【0013】
取得したSEM画像の100μm×100μmの範囲には、0.05μm以上25μm以下の気孔が722個確認され、15μm超の気孔は確認されなかった。ローラー10の気孔率(見掛け気孔率)は、0.5%であった。ローラー10について、JIS R1601-2008に準拠して曲げ強度試験を行った結果、448MPaであった。なお、ローラー10は、押出成型法により作製した。押出成形法については、公知のため、説明を省略する。
【0014】
図2は、加熱炉(図示省略)で用いられるセッター14を示している。セッター14は、ローラー10と同様の特性を有している。セッター14は、プレス法により作製することができる。
【0015】
図3は、加熱炉(図示省略)を構成するビーム16を示している。(a)及び(b)に示すように、ビーム16は円柱状であり、中実である。ビーム16は、押出成型法により作製することができる。
【実施例
【0016】
骨材(SiC粒子)の粒径(平均粒子径)が異なる耐火材(試料1~9)を作製し、曲げ強度の測定を行った。図4に、各試料を作製する際に用いた骨材の粒径を示す。具体的な耐火物の作成方法としては、まず、図4に示す骨材を用い、押出成形機にて外径38mm、内径25mm、長さ1000mmの円筒状(ローラー状)の成形体を作製し、温度100℃、大気雰囲気下で24時間以上乾燥させた。その後、金属Siを含浸させた後、不活性ガス(Ar)雰囲気下で1600℃にて焼成し、Si-SiC質のローラー状耐火材を得た。
【0017】
得られた試料1~9について曲げ強度の測定を行った。曲げ強度は、JIS R1601-2008に準拠して測定した。図4に、曲げ強度の測定結果を示す。なお、図4には、曲げ強度の測定結果と併せ、曲げ強度が350MPa以上の試料に「◎」、300MPa以上350MPa未満の試料に「〇」、200MPa以上300MPa未満の試料に「△」、200MPa未満の試料に「×」を付して示している。「◎」及び「〇」が合格レベルである。また、試料1~9について、曲げ強度の他、SiC粒子の粒径(平均粒子径、最小粒子径、最大粒子径)、100μm×100μm範囲の断面観察における気孔数、気孔率、成形性、保形性の評価も行った。
【0018】
SiC粒子の粒径(平均粒子径、最小粒子径、最大粒子径)は、耐火材の断面をSEM観察し、100μm×100μm範囲内に現れたSiC粒子を全てについて測定し、算出した。気孔数は、耐火材の断面をSEM観察し、100μm×100μm範囲内の気孔(0.05μm以上25μm以下の気孔)を目視でカウントした。また、気孔率(見掛け気孔率)は、JIS R2205-1992に準拠して測定した。なお、断面のSEM観察は、(株)日立ハイテクノロジーズ社製のTM4000を用いて行った。気孔数及び気孔率の結果を図4に示す。
【0019】
成形性は、押出成形後の試料を目視で観察し、異常が確認されない試料を「◎」とし、変形が確認された試料を「〇」とし、変形及び切れ(シート切れ)が確認された試料に「△」、押出中にシート切れが頻繁に発生し、成形不能であった試料を「×」として評価した。
【0020】
保形性は、押出成形後の試料を目視で観察し、設計公差の範囲内の試料を「◎」とし、設計公差からのずれが2mm未満の試料を「〇」とし、設計公差からのずれが2mm超の試料を「△」とし、実質的に測定不能(形状を維持していない)の試料を「×」として評価した。
【0021】
図4に示すように、SiC粒子の平均粒子径が15μm以下であり、0.05μm以上25μm以下の気孔の数が100個以上の試料(試料1~6)は、良好な強度(300MPa以上)が得られることが確認された。また、SiC粒子の最大粒子径が30μm以下の試料(試料1~5)は、特に良好な強度(350MPa以上)が得られることが確認された。なお、SiC粒子の最大粒子径が15μm以下の試料(試料1~3)は、極めて良好な強度(400MPa以上)が得られることが確認された。なお、良好な強度を示した試料(試料1~6)は、何れも最小粒子径が0.05μm以上であり、見掛け気孔率が1%以下であった。なお、試料1~6は、試料7~9と比較して、何れも成形性、保形性が良好であることが確認された。
【0022】
上述したように、試料1~3は、極めて高強度の耐火材が得れることが確認された。試料1~3と試料4~6について比較すると、試料1~3は、見掛け気孔率が0.5%以下であるという特徴を有している。この結果より、耐火材の見掛け気孔率を0.5%以下にすることにより、耐火材の強度をさらに向上させることができることが確認された。
【0023】
上記実施例において、耐火材を利用したローラー、セッター、ビームの例を示したが、本明細書で開示する耐火材は、高温環境下で用いられる部品であれば、上記実施例以外の部品(製品)として利用することもできる。また、上記実施例では、円柱状のビームの例を示したが、ビームは角柱状であってもよい。
【0024】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0025】
10:ローラー
14:焼成用セッター
16:加熱炉用ビーム
図1
図2
図3
図4